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JP2005135655A - 拡散層を積層した膜電極接合体の製造方法と装置および膜電極接合体 - Google Patents

拡散層を積層した膜電極接合体の製造方法と装置および膜電極接合体 Download PDF

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JP2005135655A JP2003368002A JP2003368002A JP2005135655A JP 2005135655 A JP2005135655 A JP 2005135655A JP 2003368002 A JP2003368002 A JP 2003368002A JP 2003368002 A JP2003368002 A JP 2003368002A JP 2005135655 A JP2005135655 A JP 2005135655A
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Abstract

【課題】 反りのない膜電極接合体を製造する。
【解決手段】 長尺状のカーボンクロス50aから拡散層50を切り出すに際して、カーボンクロス50aにカッター70により多数の横糸方向の切り込み52を入れて、縦糸を裁断しておく。切り出された拡散層50、50を、送られてくる電解質膜3に触媒層4を積層した部材1aの上下の触媒層に加熱ローラ10a、10bによって、ホットプレスする。拡散層50、50の剛性(引っ張り強さ)の差異に起因する反りは、切り込み52を形成することにより解消される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料電池のセルとして用いられる拡散層を積層した膜電極接合体の製造方法と装置に関する。
図9は、固体高分子型燃料電池の要部を示しており、膜電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)1がセパレータ2を挟持して多数配置されている。膜電極接合体1は、イオン交換膜からなる電解質膜3と、その両面に積層されたアノードおよびカソードとして機能する触媒層4と、各触媒層に接着積層された拡散層5とで構成される。拡散層5にはセパレータ2に形成された流路6から燃料ガス(水素)および酸化ガス(酸素、通常は空気)が供給される。
膜電極接合体1の製造には、電解質膜に触媒インクを塗布し乾燥させて両面に触媒層を形成し、そこに、カーボンクロスのような材料である拡散層を触媒層の両面に平板プレスを用いてホットプレスして、接着積層する方法が通常行われる。この方法は、いわゆるバッチ処理であり、多数の膜電極接合体を連続的に製造するには有効ではない。そこで、長尺状の電解質膜の両面に一定間隔で触媒層を連続的に形成した部材を作り、それを上下一対の加熱ローラの間に通過させる一方、例えば特許文献1(特開2003−48190号公報)に記載されるようなロータリーカッターを備えた薄膜切断装置を用いて、ロール状のカーボンクロスから所定の大きさの拡散層を切断し、それを前記した触媒層を両面に積層した部材の触媒層と加熱ローラとの間に通過させることによって、触媒層の両面に拡散層を連続的に接着積層していくようにした、膜電極接合体を連続的に製造する方法が行われる。
図10aは、そのような膜電極接合体の連続的な製造方法と装置の一例を示す。長尺状の電解質膜3の両面に所定の間隔をおいて触媒層4、4が積層した部材1aが上下一対の吸着機能を兼ね備えた加熱ローラ10a、10bの間を通過するようにされている。加熱ローラ10a、10bにはロータリーカッター20が対設しており、加熱ローラ10a、10bとロータリーカッター20との間には長尺状のカーボンクロスのような拡散層材料5aが送り込まれ、ロータリーカッター20により所定の大きさに拡散層5が切断される。切断された拡散層5、5は、吸着機能を兼ね備えた加熱ローラ10a、10bにより吸着された状態で、加熱ローラ10a、10bの回転により部材1aの両面に送られる。なお、上記した加熱ローラ10とロータリーカッター20とで構成される薄膜切断装置の一例が上記特許文献1に示される。
加熱ローラ10a、10b間の部材1aが位置決めされる一方、拡散層5、5は上下の加熱ローラ10a,10bで送られる。その後、例えば下側の加熱ローラ10bが上昇して上側の加熱ローラ10aに圧接した状態となることによって、加熱ローラ10a、10bの回転と共に、電解質膜3に形成された触媒層4、4の上に次第にホットプレスされて接着積層され膜電極接合体1が形成される。その接合と同時にロータリーカッター20によって次の拡散層5が切断され、加熱ローラ10a,10bに吸着される。その工程が繰り返されることにより、長尺状の電解質膜3には膜電極接合体1が一定間隔で連続的に形成され、下流側で図示しない切断装置により個々の膜電極接合体1に切断・分離される。
特開2003−48190号公報
本発明者らは、上記のような手法を用いて両面に拡散層5、5を積層した膜電極接合体1を多く製造してきているが、その過程において、図10bに示すように、形成された膜電極接合体1に反りが生じる場合があることを経験した。このような反りが生じた膜電極接合体1は後工程でセパレータと組み付けるときに、組み付け作業が困難となることから、可能な限り回避しなければならない。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、加熱ローラを用いて触媒層の両面に拡散層を連続的にホットプレスしていく膜電極接合体の製造方法において、得られる膜電極接合体に反りが生じるのを大きく抑制することを目的とする。
本発明者らは、反り発生の原因を見つけ出すべく、反りの発生した膜電極接合体と反りの生じない膜電極接合体とについて多くの検証を行った。それにより、反りの発生は、
(a)触媒層を上下に挟むようにして重ね合わされて加熱ローラによりホットプレスされる上下2枚の拡散層(例えば、カーボンクロス)の物性の違い、特に剛性(引っ張り強さ)の違いが、大きな要因となっていること、
(b)拡散層は、上下の加熱ローラによりホットプレスされるとき、加熱ローラの回転方向と軸方向の両方に、加熱ローラの回転によってしごかれるような作用を受けて伸ばされながら触媒層に圧着されること、
(c)その伸び量は拡散層となる材料の持つ剛性(引っ張り強さ)、特に加熱ローラの回転方向(加熱ローラへの進入方向)の剛性の強さに影響を受けること、
(d)拡散層は、加熱ローラ間での加圧状態から開放されると、大きく伸ばされたものは大きく縮もうとし、逆に伸びの小さかったものはあまり縮まないこと、
(e)上下の拡散層に収縮量の違いがあったときに軸方向は収縮力が弱いために反らず、回転方向はその力が強いために、上に凸または下に凸(図10b参照)の反りが膜電極接合体に発生すること、を知見した。
上記のことから、上下2枚の拡散層の材料として、少なくとも加熱ローラへの進入方向の剛性(引っ張り強さ)がほぼ等しい材料を用いれば、あるいは、剛性が異なっている場合には、ほぼ等しくなるような工程(手段)を施しておけば、造られる膜電極接合体に反りが生じるのをほぼ抑制することが可能となることがわかった。
本発明は、本発明者らが得た上記の知見に基づいており、第1の発明は、電解質膜の両面に触媒層を積層した部材の双方の触媒層面に拡散層となる材料を加熱ローラでホットプレスしながら接着積層して両面に拡散層を積層した膜電極接合体を製造する方法であって、上下の拡散層となる材料として、少なくとも加熱ローラへの進入方向の剛性がほぼ等しい材料を用いることを特徴とする。そうすることにより、上下の材料の剛性の違いに起因して膜電極接合体に反りが生じるのを効果的に抑制することができる。
図10に示したような方法により膜電極接合体を連続的に製造していく場合には、拡散層の材料として長尺状のものをロール状に巻き込んだもの(原反ロール)が通常用いられる。拡散層の材料がカーボンクロスのような材料の場合、各原反ロールの剛性(引っ張り強さ)が同じであることは少なく、製造過程において剛性にバラツキが生じるのを避けられない。また、1つの原反ロールにおいても、長手方向において剛性の異なる部分が存在することも十分に考えられる。また、原反ロールが織布の場合、長尺状の織布としての性質上、縦糸方向の剛性は横糸方向の剛性と比較して大きく、また、各ロールでの剛性のバラツキは縦糸方向で顕著であり、横糸方向ではバラツキはあるが、剛性の絶対値が小さいので差は少ない。
従って、拡散層となる材料に長尺状の織布を用い、そこから適宜の手段により所要の大きさの拡散層を切断して、それを加熱ローラによりホットプレスするような場合、長尺状の織布に対して少なくとも縦糸方向の剛性を低下させる工程を上下の長尺状の織布に加えることにより、剛性に差異がある場合であっても、接合時、上下織布の伸びの差を少なくすることができ、造られる膜電極接合体に反りが生じるのをほぼ抑制できる。
従って、第2の発明は、電解質膜の両面に触媒層を積層した部材の双方の触媒層面に拡散層となる材料を加熱ローラでホットプレスしながら接着積層して両面に拡散層を積層した膜電極接合体を製造する方法であって、拡散層となる材料が長尺状の織布であり、当該織布に少なくとも縦糸方向の剛性を低下させる工程を行った後、当該織布の縦糸方向を加熱ローラへの進入方向として送り込むことを特徴とする。送り込みの途中で、適宜の手段により所要の大きさの拡散層が切断分離され、それが加熱ローラに送られてホットプレスにより積層一体化される。
縦糸方向の剛性を低下させる工程としては、多数の切り込みを拡散層となる材料に入れて少なくとも縦糸を分断する工程が好ましく、より具体的には、その工程をロータリーカッターを用いて行うことが好ましい。拡散層に形成した切り込みが拡散層の触媒層に接する面にまで達していると、その開口部が触媒層を傷つけて膜電極接合体の寿命を短くする恐れがある。従って、多数の切り込みを拡散層となる材料に入れる工程は、形成される切り込みが触媒層に接着積層される面には達しないようにして行うことが推奨される。
前記したように、長尺状の織布の場合、通常、横糸方向での剛性のバラツキはあるが、その収縮力は非常に小さい(反るまでに至らない)。従って、長尺状の織布から切り出した2枚の拡散層をその横糸方向が加熱ローラへの進入方向として加熱ローラに送り込むようにすれば、造られる膜電極接合体に反りが生じるのをほぼ抑制することができる。
従って、第3の発明は、電解質膜の両面に触媒層を積層した部材の双方の触媒層面に拡散層となる材料を加熱ローラでホットプレスしながら接着積層して両面に拡散層を積層した膜電極接合体を製造する方法であって、拡散層となる材料が長尺状の織布であり、当該織布から切り出した拡散層をその横糸方向が加熱ローラへの進入方向とし加熱ローラに送り込むことを特徴とする。送り込まれた拡散層はホットプレスにより触媒層に積層一体化されて膜電極接合体が形成される。
本発明の方法は、不織布やペーパーのように基本的には方向性のない材料を拡散層の材料として用いる場合にも適用できる。そのような材料を加熱ローラに送り込む場合であっても、少なくとも加熱ローラの軸線方向に(すなわち、加熱ローラへの進入方向と直交する方向に)多数の切り込みを入れた状態とすることにより、上下の材料の間にわずかとはいえ剛性の違いがあるような場合に、それに起因して製造される膜電極接合体に反りが生じるのを効果的に抑制することができる。
本発明はさらに、上記の製造方法を実施するのに好適な装置として、電解質膜の両面に触媒層を積層した部材の双方の触媒層面に拡散層となる材料を加熱ローラでホットプレスしながら同時に接着積層して両面に拡散層を積層した膜電極接合体を製造する装置であって、上下一対の加熱ローラと、上下一対の加熱ローラの間に前記電解質膜の両面に触媒層を積層した部材を送り込む手段と、拡散層となる材料を電解質膜の両面に触媒層を積層した部材と加熱ローラとの間に送り込む拡散層材料送り手段とを備えており、該拡散層材料送り手段は送り込まれる拡散層となる材料に多数の切り込みを入れる手段をさらに備えていることを特徴とする膜電極接合体を製造装置をも開示する。この製造装置を用いることにより、膜電極接合体を反りのない状態で、かつ、連続的に製造することができる。
本発明はさらに、上記の製造方法あるいは製造装置により製造される膜電極接合体として、電解質膜と、その両面に積層した触媒層と、その両面に積層した拡散層とを少なくとも備えた膜電極接合体であって、拡散層には触媒層に接しない面側から多数の切り込みが形成されていることを特徴とする膜電極接合体を開示する。このように拡散層に多数の切り込みが形成されることにより、製造の過程で膜電極接合体に反りが生じるのはほぼ抑制され、ほぼ平坦な膜電極接合体となる。そのために、後工程でセパレータと組み付けるときの作業も円滑に行うことが可能となる。また、拡散層が多数の切り込みを有することから、ガス拡散性が向上し膜電極接合体の性能を上げることもできる。
本発明によれば、反りのない状態の膜電極接合体を連続的に製造することができる。それにより、燃料電池の単セル製造コストを低減することができる。
以下、本発明を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の製造方法により膜電極接合体を製造するのに好適な製造装置の一例を示す。本発明においても、先に図10に基づき説明したと同様、長尺状の電解質膜3の両面に所定の間隔をおいて触媒層4、4を積層した部材1aが用いられ、それが上下一対の吸着機能を兼ね備えた加熱ローラ10a、10bの間を図で左から右に向けて移送される。そして、その過程で、部材1aにおける上下の触媒層4、4に対し本発明による拡散層50がホットプレスされ、膜電極接合体1が連続的に製造される。
この例において拡散層50にはカーボンクロス50aを用いており、図2に模式的に示す長尺状のカーボンクロス50aがロール状に巻き込まれて原反ロール51とされたものが、図1に示すように、部材1aの移送路の上下位置に鏡面対照的に配置される。長尺状のカーボンクロス50aは縦糸方向aと横糸方向bとを有しており、上下に配置される2つの原反ロール51、51において、それぞれの縦糸方向aの剛性(引っ張り強さ)は異なっている場合が多い。なお、図1では図解を分かりやすくするためにカーボンクロス50aの厚さを誇張して示しているが、燃料電池の拡散層として用いられるカーボンクロスの厚みは、実際には0.3〜0.4mm程度である。
各原反ロール51は支軸61に支承されており、そこから引き出される長尺状のカーボンクロス50aは、アンビルローラ62、テンションローラ63、案内ローラ64などにより案内されて加熱ローラ10a、10bに達し、そこからさらに下流側に案内されて巻き取りローラ65により巻き取られる。なお、支軸61には送り出されるカーボンクロス50aにゆるみが生じないように、逆方向のトルクを付与しておくことが望ましい。
アンビルローラ62に対向して切り込み加工用のロータリーカッター70が取り付けてあり、カーボンクロス50aがアンビルローラ62とロータリーカッター70との間を通過するときに、図3に示すように、ロータリーカッター70の刃先71によって、カーボンクロス50aには、その全横幅にわたり、かつ厚みの1/4〜1/5程度のクリアランスcを残すようにして、少なくとも横糸方向bに沿う切り込み52が形成される。
図4a〜dは形成される切り込み52のいくつかの例を示しており、図4aではカーボンクロス50aの横糸方向bに平行な複数本の直線群により切り込み52が形成され、図4bでは該直線群が破線状の直線群とされている。図4cでは横糸方向bに平行な複数本の波線群により切り込み52が形成され、図4dでは交差する2方向の直線群により切り込み52が形成されている。このような切り込み52をカーボンクロス50aに入れることにより、カーボンクロス50aの縦糸は細断され、それにより縦糸方向aの剛性(引っ張り強さ)は大きく低減する。
そのために、もし上下の原反ロール51、51において、巻き出されるカーボンクロス50a、50aの縦糸方向の剛性に差異がある場合でも、その差異は解消され、上下のカーボンクロス50a、50aの縦糸方向の剛性はほぼ同じ値となる。切り込み52の細かさや深さの程度によって剛性の低減度合いは変化するが、カーボンクロス50aが巻き取りロール65により巻き取られるまでにかかるテンションに耐えるだけの強度を備えることを条件に、より細かく、より深い切り込みを形成することが望ましい。
切り込み52が形成されたカーボンクロス50aはテンションローラ63によりゆるみのない状態を維持しながら、加熱ローラ10a、10bに至る。加熱ローラ10a、10bに対向して、カーボンクロス50aから所定形状の拡散層50を切り出すためのロータリーカッター20が位置しており、ロータリーカッター20の1回転毎に、その刃21の形状に応じて、図5に一例を示すように拡散層50がカーボンクロス50aから切り出される。拡散層50が切り出された後のカーボンクロス50aは巻き取りローラ65により巻き取られる一方、切り出された拡散層50は吸引機能を備えた加熱ローラ10a、10bの周面に引き取られ、加熱ローラ10a、10bの回転と共に、部材1aの上下両面に向けて送られる。なお、吸着機能を備えた加熱ローラ10とロータリーカッター20とからなる連続する薄膜(カーボンクロス50a)から所定形状の薄膜製品(拡散層50)を切り出す装置の一例は前記した特許文献1に記載されており、上記実施の形態においてもその装置をそのまま用いることができる。
部材1aの送りとロータリーカッター20による拡散層50の切断タイミングは同期が取られており、拡散層50をホットプレスするときを除いて、2つの加熱ローラ10a、10bはわずかに離間している。拡散層50を部材1aの触媒層4にホットプレスする時点で上下の加熱ローラ10a、10bは部材1aを圧接した状態となる。この例では、下側の加熱ローラ10bが上昇して上側の加熱ローラ10aに圧接する。
加熱ローラ10a、10bの回転と共に、拡散層50、50は、その切り込み52を形成した面と反対側の面が電解質膜3側となるようにして、触媒層4、4に上に次第にホットプレスされていき、触媒層4の上に拡散層50が接着積層された膜電極接合体1が造られる。この工程が繰り返されることにより、電解質膜3を繋ぎ材として膜電極接合体1が一定間隔をおいて連続的に製造され、下流位置において、図示しない装置により個々の膜電極接合体1に分離される。
前述したように、拡散層50、50は、加熱ローラ10a、10bの回転によってしごかれるような作用を受け、伸ばされながら触媒層4、4に圧着(ホットプレス)される。そして、加熱ローラ10a、10b間での加圧状態から開放されたとき、原寸法まで縮もうとする。従来の製造方法では、上下のカーボンクロスの縦糸方向の剛性に差異がある場合でも、そのまま剛性の調整を行うことなく切り出された触媒層を触媒層に加熱ローラによってホットプレスしていたために、上下の拡散層でのこの収縮量の違いから、上に凸または下に凸の反りが製造後の膜電極接合体に発生することがあったが、上記のように本発明では、双方のカーボンクロス50a、50aに切り込み52を入れることによって縦糸方向の剛性を低下させ、それにより、上下のカーボンクロスの剛性に差異がある場合でも、その差異を解消できるようにしているので、製造される膜電極接合体1に反りが生じるのは効果的に解消される。
図6は、本発明者らが行った、カーボンクロスの2つの原反ロールを上下に用いて、図1に示す装置により膜電極接合体1を実際に製造した例を示している。図6aは、図1の装置から切り込み加工用のロータリーカッター70を取り外して膜電極接合体1を製造したときのものであり、幅w:50mmの膜電極接合体1に高さh:20mm程度の反り、すなわち約40%の反りが生じた。そこで、刃先71のピッチP:20mm(図6b)、P:10mm(図6c)の2つのロータリーカッター70を用意し、それを取り付け、他の条件は同じとして、図4aに示す形状の平行な直線群である切り込み52をカーボンクロス50aに形成して、膜電極接合体1を製造した。その結果、図6bのものでは高さh:5〜10mm程度の反りとなり、図6cでは高さh:3mm程度の反りとなって、本発明の有効性が確認された。また、このことから、切り込み52のピッチPが細かくなる程、反りの高さhは小さくなるなることもわかる。
なお、上記の例では、カーボンクロス50aに切り込み52を形成する手段としてアンビルローラ62とロータリーカッター70とからなる手段を用いたが、図7に示すような、カーボンクロス50aの横糸方向bに移動するロータリーカッター73のような手段で切り込み52を形成することもできる。また、切り込み52をカーボンクロス50aの横幅全部にわたるようにして形成したが、ロータリーカッター20を用いて拡散層50を切り出すような場合には、特に図示しないが、少なくとも切り出される拡散層に相当する領域にのみ切り込み52を形成してもよい。その一例としては、外形を切り出すロータリーカッター20の内側に切り込み52用の第2の刃を持たせ、外形を切り出すと同時に切り込み52を入れる方法がある。ただし、その場合には切り込み52の形成面が図1に示す場合とは反対面となるので、切り出された拡散層50を反転させる何らかの手段を加熱ローラ10とカーボンクロス50aとの間に介在させる必要がある。
また、図示しない別途用意する切り出し手段によりカーボンクロス50aから拡散層50を切り出し、それを、図8に示すように、縦糸方向aが加熱ローラ10a、10bの軸線方向と平行となった姿勢(横糸方向bが加熱ローラへの進入方向となった姿勢)で加熱ローラ10a、10bに送り込むようにする場合には、上記した切り込み52を拡散層に形成しなくても、製造される膜拡散層1に反りが生じるのを回避することができる。その理由は、前記したように、長尺状の織布の場合、通常、横糸方向での剛性のバラツキはあるが、その収縮力が非常に小さいことによる。
また、上記の例では、拡散層の材料としてカーボンクロスを示したが、カーボンクロスに限らず、従来、燃料電池の拡散層として用いられてきているすべての材料に対して、本発明の方法を適用することができる。例えば、不織布やペーパーの場合には、本質的に繊維の方向性はなく、上下の拡散層の剛性の違いによる反りの発生は比較的少ないといえる。しかし、そのような材料を加熱ローラに送り込む場合に、少なくとも加熱ローラへの進入方向と直交する方向に多数の切り込みを入れておくことにより、上下の拡散層の間にわずかとはいえ剛性の違いがあるような場合に、それに起因して製造される膜電極接合体に反りが生じるのを効果的に抑制することが可能となる。
本発明の製造方法により膜電極接合体を製造するのに好適な製造装置の一例を示す図。 カーボンクロスの原反ロールを模式的に示す図。 カーボンクロスに切り込みを入れる状態を示す模式図。 形成される切り込みのいくつかの例を示す図。 切り込みが形成された拡散層がカーボンクロスから切り出されること説明する図。 拡散層に形成した切り込みの効果を実験結果に基づき説明する図。 カーボンクロスに切り込みを入れる他の例を示す図。 本発明の他の態様である、織布から切り出した拡散層をその横糸方向が加熱ローラへの進入方向とし加熱ローラに送り込む方法を説明する図。 膜電極接合体を説明する図。 従来の膜電極接合体の製造方法と装置の一例を説明する図。
符号の説明
1…膜電極接合体、1a…電解質膜の両面に触媒層を積層した部材、2…セパレータ、3…電解質膜、4…触媒層、10a、10b…加熱ローラ、20…拡散層を切り出すためのロータリーカッター、5、50…拡散層、5a、50a…カーボンクロス、51…長尺状のカーボンクロスの原反ロール、52…拡散層に形成された切り込み、62…アンビルローラ、65…巻き取りローラ、70…切り込み加工用のロータリーカッター、71…刃先、73…ロータリーカッター、a…長尺状のカーボンクロスの縦糸方向、b…横糸方向、c…クリアランス、p…切り込みのピッチ、h…反り

Claims (10)

  1. 電解質膜の両面に触媒層を積層した部材の双方の触媒層面に拡散層となる材料を加熱ローラでホットプレスしながら接着積層して両面に拡散層を積層した膜電極接合体を製造する方法であって、上下の拡散層となる材料として、少なくとも加熱ローラへの進入方向の剛性がほぼ等しい材料を用いることを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
  2. 電解質膜の両面に触媒層を積層した部材の双方の触媒層面に拡散層となる材料を加熱ローラでホットプレスしながら接着積層して両面に拡散層を積層した膜電極接合体を製造する方法であって、拡散層となる材料が長尺状の織布であり、当該織布に少なくとも縦糸方向の剛性を低下させる工程を行った後、当該織布の縦糸方向を加熱ローラへの進入方向として送り込むことを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
  3. 縦糸方向の剛性を低下させる工程は、多数の切り込みを拡散層となる材料に入れて少なくとも縦糸を分断する工程であることを特徴とする請求項2に記載の膜電極接合体の製造方法。
  4. 多数の切り込みを拡散層となる材料に入れる工程をロータリーカッターを用いて行うことを特徴とする請求項3に記載の膜電極接合体の製造方法。
  5. 多数の切り込みを拡散層となる材料に入れる工程を、形成される切り込みが触媒層に接着積層される面には達しないようにして行うことを特徴とする請求項3または4に記載の膜電極接合体の製造方法。
  6. 電解質膜の両面に触媒層を積層した部材の双方の触媒層面に拡散層となる材料を加熱ローラでホットプレスしながら接着積層して両面に拡散層を積層した膜電極接合体を製造する方法であって、拡散層となる材料が長尺状の織布であり、当該織布から切り出した拡散層をその横糸方向が加熱ローラへの進入方向とし加熱ローラに送り込むことを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
  7. 電解質膜の両面に触媒層を積層した部材の双方の触媒層面に拡散層となる材料を加熱ローラでホットプレスしながら同時に接着積層して両面に拡散層を積層した膜電極接合体を製造する装置であって、上下一対の加熱ローラと、上下一対の加熱ローラの間に前記した電解質膜の両面に触媒層を積層した部材を送り込む手段と、拡散層となる材料を加熱ローラと電解質膜の両面に触媒層を積層した部材との間に送り込む拡散層材料送り手段とを備えており、前記拡散層材料送り手段は送り込まれる拡散層となる材料に多数の切り込みを入れる手段をさらに備えていることを特徴とする膜電極接合体を製造装置。
  8. 送り込まれる拡散層となる材料に多数の切り込みを入れる手段は、ロータリーカッターによる切り込み手段であることを特徴とする請求項7に記載の膜電極接合体を製造装置。
  9. 送り込まれる拡散層となる材料に多数の切り込みを入れる手段は、形成される切り込みが触媒層に接着積層される面には達しないように切り込み深さが調整されていることを特徴とする請求項7または8に記載の膜電極接合体の製造装置。
  10. 電解質膜と、その両面に積層した触媒層と、その両面に積層した拡散層とを少なくとも備えた膜電極接合体であって、拡散層には触媒層に接しない面側から多数の切り込みが形成されていることを特徴とする膜電極接合体。
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