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JP2005191421A - 電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

電解コンデンサの製造方法 Download PDF

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JP2005191421A JP2003433371A JP2003433371A JP2005191421A JP 2005191421 A JP2005191421 A JP 2005191421A JP 2003433371 A JP2003433371 A JP 2003433371A JP 2003433371 A JP2003433371 A JP 2003433371A JP 2005191421 A JP2005191421 A JP 2005191421A
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睦子 中野
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Abstract

【課題】 誘電体層を高品質に形成することにより、作動特性が確保された高性能な電解コンデンサを製造することが可能な電解コンデンサの製造方法を提供する。
【解決手段】 あらかじめ誘電体層部分12A,12Bが部分的に形成された陽極11を使用して誘電体層12(誘電体層部分12A〜12D)を形成する際に、陽極酸化反応を促進するための前処理溶液(例えばアジピン酸二アンモニウム水溶液)を使用して陽極11に前処理を施したのち、化成溶液(例えばアジピン酸二アンモニウム水溶液)を使用して陽極11を陽極酸化することにより、誘電体層部分12C,12Dを形成する。化成処理時に陽極11の露出面PC,PDにおいて陽極酸化反応が促進されるため、その露出面PC,PDを十分に覆うように誘電体層部分12C,12Dが高品質に形成される。
【選択図】 図2

Description

本発明は、電解コンデンサの製造方法に係り、特に、固体電解質層を備えた電解コンデンサの製造方法に関する。
近年、高周波用途に適した電子部品のうちの1つとして、多様な電子機器に電解コンデンサが搭載されている。この電解コンデンサに関しては、例えば、電子機器のデジタル化、小型化および高速化が加速的に進行している情勢下において、大容量化や低インピーダンス化が要望されていると共に、動作安定性や動作信頼性の確保、ならびに高寿命化も併せて要望されている。
電解コンデンサは、主に、陽極と、誘電体層と、電解質層と、陰極とがこの順に積層された積層構造を有している。この陽極は、弁作用金属の金属箔などにより構成されており、誘電体層は、陽極に誘電体層を形成するための処理(化成処理)が施され、すなわち陽極の表層が陽極酸化されることにより形成された薄い酸化皮膜により構成されている。この電解コンデンサでは、一般に、高容量化を実現することを目的として、陽極が拡面化(または粗面化)されて微細な表面凹凸構造を有しているため、この陽極の表層として形成された誘電体層も同様に微細な凹凸構造を有している。なお、陽極は、例えば、拡面化された弁作用金属の金属箔に代えて、弁作用金属微粒子の焼結体により構成される場合もある。
この電解コンデンサは、主に、電解質層の種類に応じて2種類に大別される。すなわち、液体材料により構成された電解質層(電解液)を備え、主にイオン伝導性を利用した導電機構を有する液体電解コンデンサと、例えば導電性高分子などの固体材料により構成された電解質層(固体電解質層)を備え、主に電子伝導性を利用した導電機構を有する固体電解コンデンサである。
これらの2種類の電解コンデンサは、例えば、作動特性の観点において性能的に差異を有している。すなわち、低導電性の電解液を利用している液体電解コンデンサでは、その電解液の低導電性に起因して等価直列抵抗(ESR;Equivalent Series Resistance)が増大するため、作動時に電気的損失が大きくなるという特性的問題を抱えている。これに対して、高導電性の固体電解質層を利用している固体電解コンデンサでは、ESRが増大する液体電解コンデンサとは異なり、その固体電解質層の高導電性に起因してESRが減少するため、作動時に電気的損失が小さくなるという特性的利点が得られる。
また、2種類の電解コンデンサは、例えば、作動特性の安定性の観点においても性能的に差異を有している。すなわち、電解液を備えた液体電解コンデンサでは、外的要因に起因して誘電体層が損傷することにより部分的に欠損したとしても、定格電圧が印加されれば電解液(主に電解液中の水分)を利用して陽極が再酸化(陽極酸化)され、すなわち誘電体層が新たに追加形成されることにより欠損箇所が修復されるため、その誘電体層の欠損箇所を通じて陽極と電解液との間に不要な電流(漏れ電流)が流れにくくなるという機能的利点が得られる。この誘電体層の追加形成に伴う欠損箇所の修復機能は、一般に「電解コンデンサの自己修復機能」と呼ばれている。液体電解コンデンサに関して誘電体層の欠損を誘発する「外的要因」としては、例えば、電解コンデンサの製造工程中のハンドリングなどに起因する物理的ダメージなどが挙げられる。これに対して、電解液を備えていない固体電解コンデンサでは、自己修復機能を有している液体電解コンデンサとは異なり、本質的に自己修復機能を有しておらず、外的要因に起因して誘電体層が欠損した際に欠損箇所を修復し得ないため、その誘電体層の欠損箇所を通じて漏れ電流が流れやすくなるという問題を抱えている。固体電解コンデンサに関して誘電体層の欠損を誘発する「外的要因」としては、例えば、固体電解質層の形成工程(例えば導電性高分子の重合工程)時の化学的ダメージなどが挙げられる。漏れ電流が発生すると、その漏れ電流に起因して短絡が発生しやすくなる。なお、固体電解コンデンサでは、本質的に自己修復機能を有していないものの、誘電体層に生じた欠損箇所が極小である場合には、漏れ電流に起因して発生したジュール熱の影響を受けて固体電解質層が部分的に不導体化するため、結果として漏れ電流の電流経路が遮断され得るが、誘電体層の欠損箇所が大きい場合には、上記した固体電解質層の不導体化現象を利用しても漏れ電流の電流経路を遮断しきれなくなる。
上記した2種類の電解コンデンサ間の性能的差異を考慮した上で、例えば、漏れ電流の発生を抑制することにより固体電解コンデンサの作動特性を確保するためには、誘電体層を外的要因に起因して欠損しにくくするために、その欠損を誘発し得る欠陥を含まないように誘電体層を可能な限り高品質に形成する必要がある。この「欠陥」とは、例えば、誘電体層の形成プロセス上の要因に起因して部分的に厚さが薄くなっている箇所や、部分的に物理的強度が脆くなっている箇所などである。なお、固体電解コンデンサの製造工程では、例えば、誘電体層に意図せずに欠陥が含まれる場合を考慮して、高温高湿環境中において完成後の固体電解コンデンサに定格電圧を印加しながらエージング処理を施すことにより、その欠陥に誘電体層を追加形成し、すなわち誘電体層の欠陥を一時的に修復する作業も行われている。ところが、上記したように、本質的に自己修復機能を有していない固体電解コンデンサでは、誘電体層の欠損状況によっては漏れ電流の電流経路を遮断し得ない可能性があり、すなわちエージング処理では誘電体層の欠陥を十分に修復し得ない可能性があるため、漏れ電流に起因する短絡の発生を防止する上では、根本的に誘電体層を高品質に形成することが可能な製造技術が望まれている。
この誘電体層を高品質に形成する技術に関しては、既に具体的な技術が提案されている。具体的には、例えば、弁作用金属の焼結体に2段階の化成処理を施すことにより誘電体層を形成する技術が知られている。この技術では、相対的に高い電流密度で化成処理を施したのちに相対的に低い電流密度で化成処理を施すことにより誘電体層を形成したり、あるいは相対的に高い電気伝導度を有する化成溶液を使用して化成処理を施したのちに相対的に低い電気伝導度を有する化成溶液を使用して化成処理を施すことにより誘電体層を形成している(例えば、特許文献1参照。)。
特許第3362600号明細書
ところで、固体電解コンデンサの製造工程では、例えば、陽極としてあらかじめ化成処理が施されておらず、すなわちあらかじめ誘電体層が全く形成されていない未処理の弁作用金属箔を入手したのち、その弁作用金属箔に化成処理を施すことにより誘電体層を形成する手順の他に、あらかじめ化成処理が施されており、すなわちあらかじめ誘電体層が部分的に形成された処理済みの弁作用金属箔を入手したのち、その弁作用金属箔にあらためて化成処理(いわゆる再化成処理)を施すことにより誘電体層を追加形成する手順も利用されている。この処理済みの弁作用金属箔は、例えば、弁作用金属箔の周囲を覆うように誘電体層が形成されたのち、その弁作用金属箔が誘電体層と共に所定の寸法となるように切断されたものであり、誘電体層が形成されていない箇所(切断面)に弁作用金属箔が部分的に露出しているものである。この処理済みの弁作用金属箔を使用する場合には、上記したように、弁作用金属箔が部分的に露出している構造的要因に起因して、その弁作用金属箔に固体電解質層を直接形成すると、固体電解質層が弁作用金属箔の露出面と接触することにより短絡してしまうため、その短絡を防止する上で、弁作用金属箔に再化成処理を施すことにより誘電体層を追加形成する必要があるのである。
しかしながら、処理済みの弁作用金属箔を使用して固体電解コンデンサを製造する場合には、未処理の弁作用金属箔を使用して固体電解コンデンサを製造する場合とは異なり、再化成処理を経て弁作用金属箔を被覆するように誘電体層を高品質に形成するに際して、あらかじめ弁作用金属箔に部分的に形成されている誘電体層に欠陥(再化成処理に伴う化学的ダメージに起因する欠陥)を生じさせることなく、その弁作用金属箔の露出面を十分に被覆するように誘電体層を追加形成しなければならない。この点に関して、上記した電流密度や電気伝導度を変化させた2段階の化成処理を使用する従来の製造技術では、その製造技術を処理済みの弁作用金属箔に適用した場合に2段階の化成処理が誘電体層の品質にいかなる影響を及ぼすかに関しては何ら考慮されていないため、その従来の製造技術を使用して誘電体層を高品質に形成可能であるか否かは定かでない。したがって、処理済みの弁作用金属箔を使用して、作動特性が確保された高性能な固体電解コンデンサを製造するためには、漏れ電流の発生を抑制する上で、再化成処理を経て誘電体層を高品質に形成することが可能な製造技術が必要である。特に、固体電解コンデンサの急速な小型化・高容量化が進行しているため、誘電体層が極薄化しており、その極薄の誘電体層が極めてダメージを受けやすくなっている技術的背景を考慮すれば、上記した製造技術の確立は急務である。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、誘電体層を高品質に形成することにより、作動特性が確保された高性能な電解コンデンサを製造することが可能な電解コンデンサの製造方法を提供することにある。
本発明の第1の観点に係る電解コンデンサの製造方法は、弁作用金属により構成された電極層と、この電極層が陽極酸化されることにより形成された誘電体層と、固体電解質層とがこの順に積層された積層構造を有する電解コンデンサを製造する方法であり、電極層の陽極酸化反応を促進するための前処理溶液を使用してその電極層に前処理を施したのち、化成溶液を使用して電極層を陽極酸化することにより誘電体層を形成する工程を含むようにしたものである。
本発明の第1の観点に係る電解コンデンサの製造方法では、電極層の陽極酸化処理を促進するための前処理溶液を使用して電極層に前処理が施されたのち、化成溶液を使用して前処理済みの電極が陽極酸化されることにより誘電体層が形成される。この場合には、例えば、あらかじめ誘電体層(第1の誘電体層部分)が部分的に形成された電極層を使用し、前処理溶液を使用して電極層に前処理が施されたのち、化成溶液を使用して電極層が陽極酸化されることにより第2の誘電体層部分が形成される結果、これらの第1および第2の誘電体層部分を含む誘電体層が電極層を覆うように形成されるようにすれば、この前処理により、電極層の陽極酸化反応が促進されるため、その電極層の露出箇所(あらかじめ第1の誘電体層部分が形成されていない箇所)を十分に覆うように第2の誘電体層部分が高品質に形成される。
本発明の第2の観点に係る電解コンデンサの製造方法は、弁作用金属により構成された電極層と、この電極層が陽極酸化されることにより形成された誘電体層と、固体電解質層とがこの順に積層された積層構造を有する電解コンデンサを製造する方法であり、誘電体層を修復するための前処理溶液を使用してその電極層に前処理を施したのち、化成溶液を使用して電極層を陽極酸化することにより誘電体層を形成する工程を含むようにしたものである。
本発明の第2の観点に係る電解コンデンサの製造方法では、誘電体層を修復するための前処理溶液を使用して電極層に前処理が施されたのち、化成溶液を使用して前処理済みの電極が陽極酸化されることにより誘電体層が形成される。この場合には、例えば、あらかじめ誘電体層(第1の誘電体層部分)が部分的に形成された電極層を使用し、前処理溶液を使用して電極層に前処理が施されたのち、化成溶液を使用して電極層が陽極酸化されることにより第2の誘電体層部分が形成される結果、これらの第1および第2の誘電体層部分を含む誘電体層が電極層を覆うように形成されるようにすれば、この前処理により、第1の誘電体層部分が修復されるため、その第1の誘電体層部分が欠陥を含まないように高品質化される。
本発明の第1の観点に係る電解コンデンサの製造方法では、第2の工程において、前処理溶液として電解質溶液を使用し、その電解質溶液に電極層を浸漬させるようにしてもよい。この電解質溶液としては、化成溶液を使用するのが好ましい。この場合には、特に、前処理溶液の濃度を化成溶液の濃度よりも高くするのが好ましい。
本発明の第2の観点に係る電解コンデンサの製造方法では、第2の工程において、前処理溶液として水を使用し、その水に前記電極層を浸漬させるようにしてもよい。この場合には、水として沸騰水を使用するのが好ましい。
また、本発明の第1または第2の観点に係る電解コンデンサの製造方法では、第1の工程において、電極層として、電極層の周囲を覆うように第1の誘電体層部分が形成されたのち、その電極層が第1の誘電体層部分と共に切断されたものを準備するようにしてもよい。
本発明の第1の観点に係る電解コンデンサの製造方法によれば、第2の誘電体層部分が高品質に形成される製法的特徴に基づき、その第2の誘電体層部分を含む誘電体層が高品質に形成されることにより漏れ電流の発生が抑制されるため、作動特性が確保された高性能な電解コンデンサを製造することができる。
また、本発明の第2の観点に係る電解コンデンサの製造方法によれば、第1の誘電体層部分が高品質化される製法的特徴に基づき、その第1の誘電体層部分を含む誘電体層が高品質に形成されることにより漏れ電流の発生が抑制されるため、作動特性が確保された高性能な電解コンデンサを製造することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る電解コンデンサの製造方法を使用して製造される電解コンデンサの構成について簡単に説明する。図1および図2は電解コンデンサの主要部(コンデンサ素子10)の構成を表しており、図1は外観構成を示し、図2は図1に示したII−II線に沿った断面構成を拡大して示している。
本実施の形態において製造される電解コンデンサは、図1および図2に示したコンデンサ素子10に陽極リードおよび陰極リード(いずれも図示せず)が接続され、これらの陽極リードおよび陰極リードの双方が部分的に露出するようにコンデンサ素子10がモールド樹脂(図示せず)により被覆された構造を有するものである。このコンデンサ素子10は、電解コンデンサの主要部として電気的反応を生じるものであり、例えば、図1および図2に示したように、陽極11と、この陽極11の周囲(一端部)を部分的に覆うように設けられた誘電体層12と、この誘電体層12の周囲を覆うように設けられた固体電解質層13と、この固体電解質層13の周囲を覆うように設けられた陰極14とを含み、すなわち陽極11、誘電体層12、固体電解質層13および陰極14がこの順に積層された積層構造を有している。
陽極11は、電気的反応を生じさせるための電極層として機能するものである。この陽極11は、例えば、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)またはアンチモン(Sb)などの弁作用金属により構成されている。具体的には、陽極11は、例えば、拡面化(または粗面化)された表面凹凸構造を有するアルミニウムなどの金属箔により構成されており、その厚さは約1μm〜500μmである。この陽極11の表面凹凸構造に関しては後述する(図3参照)。なお、陽極11は、例えば、上記したアルミニウムなどの金属箔に代えて、タンタルなどの金属粒子の焼結体により構成される場合もある。
誘電体層12は、例えば、陽極11に誘電体層12を形成するための処理(化成処理)が施され、すなわち弁作用金属により構成された陽極11の表層が陽極酸化されることにより形成された酸化皮膜である。この誘電体層12は、例えば、陽極11がアルミニウムより構成されている場合には、そのアルミニウムの酸化物である酸化アルミニウムにより構成されており、その厚さは約5nm〜1μmである。特に、誘電体層12は、例えば、図2に示したように、陽極11を挟んで互いに対向するように設けられた誘電体層部分12A,12Bと、これらの誘電体層部分12A,12Bと共に陽極11を覆うように設けられた誘電体層部分12C,12Dとを含んで構成されている。
固体電解質層13は、例えば化学酸化重合反応や電解酸化重合反応を経て単量体が重合されることにより生成された導電性高分子(共役系高分子)を含んで構成されており、その厚さは約20nm〜1μmである。なお、固体電解質層13の厚さは、例えば、高絶縁耐圧型の電解コンデンサでは約20nm〜10μmとなる場合もある。この導電性高分子は、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンおよびこれらの誘導体を含む群のうちの少なくとも1種により構成されており、具体的には、ポリアニリン、ポリピロール、あるいはポリチオフェンの誘導体であるポリエチレンジオキシチオフェンなどにより構成されている。この固体電解質層13を備えたコンデンサ素子10は、いわゆる固体電解コンデンサ素子である。特に、固体電解質層13は、例えば、必要に応じて、導電性高分子の導電率を高めるためのドーパントを含み、すなわちドーパントがドープされた導電性高分子を含んで構成される場合もある。このドーパントとしては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、アルキルナフタレンスルホン酸およびその塩、ならびにリン酸を含む群のうちの少なくとも1種が挙げられ、具体的にはアルキルナフタレンスルホン酸塩であるアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
陰極14は、陽極11と同様の機能を有するものである。この陰極14は、例えば、カーボン(グラファイト)や金属などの導電性材料により構成されており、具体的にはカーボン層14Aと銀(Ag)層14Bとが積層された2層構造を有している。なお、陰極14は、例えば、必ずしも2層構造を有している必要はなく、単層構造を有していてもよいし、あるいは3層以上の積層構造を有していてもよい。
なお、参考までに、陽極リードおよび陰極リードは、例えば、いずれも鉄(Fe)または銅(Cu)などの金属や、これらの金属にめっき処理が施されためっき処理済みの金属により構成されており、それぞれコンデンサ素子10のうちの陽極11および陰極14に接続されている。上記した「めっき処理」としては、たとえば、錫(Sn)めっき処理や錫鉛(SnPb)めっき処理などが挙げられる。モールド樹脂は、例えば、絶縁性樹脂により構成されており、具体的には、接着性や耐溶剤性などに優れたフェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂またはポリエステル樹脂などにより構成されている。
次に、図3を参照して、コンデンサ素子10の詳細な構成について説明する。図3は、図2に示したコンデンサ素子10の断面構成を部分的に拡大して表している。
コンデンサ素子10では、例えば、図3に示したように、陽極11を覆うように、誘電体層12、固体電解質層13および陰極14(カーボン層14A,銀層14B)がこの順に積層されている。このコンデンサ素子10では、上記したように、陽極11の表面積を増大させることにより高容量化を実現するために、その陽極11が拡面化(または粗面化)されており、すなわち陽極11が微細な表面凹凸構造を有している。これに伴い、陽極11を覆うように形成されている誘電体層12も同様に、微細な凹凸構造を有している。特に、誘電体層12は、凹凸構造のうちの凹部として複数の細孔12Hを構成しており、固体電解質層13は誘電体層12の細孔12Hに部分的に入り込んでいる。
次に、図1〜図7を参照して、本実施の形態に係る電解コンデンサの製造方法として図1〜図3に示したコンデンサ素子10を備えた電解コンデンサの製造方法について説明する。図4は電解コンデンサの製造工程の流れを説明するためのものであり、図5は電解コンデンサの製造工程において使用される一連の溶液(前処理溶液,化成溶液,単量体溶液,酸化剤溶液)の組成を説明するためのものである。また、図6および図7は化成処理前後の陽極11の断面構成を表しており、図6は化成処理前の状態を示し、図7は化成処理後の状態を示している。なお、図6および図7に示した断面構成は、いずれも図2に対応している。
電解コンデンサを製造する際には、まず、弁作用金属の拡面化処理済みの金属箔(例えばアルミニウム拡面化箔)により構成された陽極11(図3参照)として、例えば、図6に示したように、誘電体層12の一部を構成する誘電体層部分12A,12B(第1の誘電体層部分)があらかじめ部分的に形成されており、すなわち誘電体層部分12A,12Bによりあらかじめ部分的に覆われた陽極11を準備する(ステップS101)。図6に示した陽極11では、例えば、矩形状の断面を構成する4つの面、すなわち互いに対向する2組の面PA,PB,PC,PDのうち、一方の組の面PA,PBにそれぞれあらかじめ誘電体層部分12A,12Bが形成されており、他方の組の面PC,PDがいずれも露出している。この陽極11としては、例えば、広幅の陽極11にあらかじめ化成処理が施され、その陽極11の周囲を覆うように誘電体層部分12A,12Bが形成されたのち、例えば打ち抜き機を使用して広幅の陽極11が誘電体層部分12A,12Bと共に所定の寸法(例えば短冊状)となるように切断されることにより、面PC,PDが切断後の切断面として形成されたものを準備する。なお、陽極11としては、例えば、打ち抜き機に代えて、カッター、ダイシングソー、スリッター、せん断シャーまたはレーザなどの手法を使用して切断されたものを使用してもよい。この誘電体層部分12A,12Bは、例えば、図3に示したように、陽極11の表面凹凸構造に対応した凹凸構造を有し、その凹凸構造のうちの凹部として複数の細孔12Hを構成していると共に、陽極11の構成材料がアルミニウム拡面化箔である場合には酸化アルミニウムにより構成されている。
誘電体層部分12A,12Bがあらかじめ部分的に形成された陽極11を準備したのち、陽極11の周囲を覆うように、その誘電体層部分12A,12Bを含む誘電体層12を形成する(ステップS102)。この誘電体層12を形成する際には、陽極11の陽極酸化反応を促進するための前処理溶液を使用して、その陽極11に前処理を施したのち、化成溶液を使用して陽極11を陽極酸化(いわゆる再化成)する。
この誘電体層12の形成手順は、以下の通りである。すなわち、まず、例えば、図5に示したように、前処理溶液として、溶媒に電解質が溶解された電解質溶液を調製する(ステップS1021)。この前処理溶液(電解質溶液)としては、例えば、後工程において使用する化成溶液を使用し、すなわち化成溶液と同一の溶液組成を有するものを使用する。この「同一の溶液組成を有する」という表現は、前処理溶液を構成する電解質および溶媒の種類が化成溶液を構成する電解質および溶媒の種類と同一であることを意味しており、前処理溶液の濃度が化成溶液の濃度と同一であることまでは意味していない。特に、前処理溶液を調製する際には、例えば、その前処理溶液の濃度C1が化成溶液の濃度C2よりも高くなるようにする(C1>C2)。
続いて、前処理溶液を使用して、陽極11に前処理を施す(ステップS1022)。具体的には、前処理溶液に陽極11を浸漬させることにより、その陽極11の露出面PC,PDに前処理溶液を付着させる。この前処理により、後述する化成処理工程において陽極11が陽極酸化される際に、その陽極11の露出面PC,PDにおいて陽極酸化反応が促進されることとなる。
続いて、前処理済みの陽極11を前処理溶液から引き上げ、その陽極11を必要に応じて乾燥させたのち、例えば、図5に示したように、溶媒に電解質が溶解された化成溶液を調製する(ステップS1023)。この化成溶液を調製する際には、例えば、電解質としてホウ酸塩、リン酸塩またはアジピン酸塩などを使用し、具体的にはアジピン酸二アンモニウムを使用すると共に、溶媒として蒸留水を使用する。特に、化成溶液を調製する際には、例えば、その化成溶液の濃度C2が前処理溶液の濃度C1よりも低くなるようにする(C2<C1)。確認までに、化成溶液の調製は必ずしも前処理後に行わなければならないわけではなく、その化成溶液の調製時期は自由に変更可能である。具体的には、例えば、前処理溶液を調製する際に化成溶液も併せて調製しておくようにしてもよい。
続いて、化成溶液を使用して、陽極11に化成処理を施す(ステップS1024)。具体的には、化成溶液に陽極11を浸漬させながら電圧(=約1V〜40V)を印加することにより、その陽極11において陽極酸化反応を進行させる。なお、化成処理時の印加電圧値は、例えば、必ずしも上記した電圧値に限らず、陽極11の絶縁耐圧や誘電体層12の形成厚さ等に応じて自由に設定可能である。この化成処理により、陽極11の露出面PC,PDを覆うように誘電体層12の他の一部を構成する誘電体層部分12C,12D(第2の誘電体層部分)が形成されるため、その陽極11の周囲を覆うように誘電体層部分12A〜12Dを含む誘電体層12が形成される。特に、化成処理では、前処理工程において陽極11に前処理が施されたことに基づき、その陽極11の露出面PC,PDにおいて陽極酸化反応が促進されるため、その露出面PC,PDを十分に覆うように誘電体層部分12C,12Dが形成される。
続いて、誘電体層12を形成したのち、例えば、図5に示したように、溶媒に単量体およびドーパントが溶解された単量体溶液を調製し、その単量体溶液に化成処理済みの陽極11を浸漬させることにより、誘電体層12の表面に単量体溶液を付着させる。この単量体溶液を調製する際には、例えば、単量体としてアニリン、ピロール、チオフェンおよびこれらの誘導体のうちの少なくとも1種を使用し、具体的にはチオフェンの誘導体である3,4−エチレンジオキシチオフェンを使用すると共に、ドーパントとしてアルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、アルキルナフタレンスルホン酸およびその塩、ならびにリン酸を含む群のうちの少なくとも1種を使用し、具体的にはアルキルナフタレンスルホン酸塩であるアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムを使用する。なお、溶媒としては、例えば、エタノールなどを使用する。
続いて、単量体溶液から陽極11を引き上げて乾燥させたのち、例えば、図5に示したように、溶媒に酸化剤が溶解された酸化剤溶液を調整し、この酸化剤溶液に単量体溶液に浸漬済みの陽極11を浸漬させる。この酸化剤溶液を調整する際には、例えば、酸化剤として金属ハロゲン化物、プロトン酸、三酸化硫黄、酸素化合物(例えば二酸化窒素)、硫酸塩(例えば硫酸セリウム)、過硫酸塩(例えば過硫酸ナトリウム)、硝酸塩(例えば硝酸セリウム)または過酸化物(例えば過マンガン酸カリウム)などを使用する。なお、溶媒としては、例えば、蒸留水などを使用する。この浸漬処理により、誘電体層12に付着した単量体溶液中の単量体が重合するため、誘電体層12(誘電体層部分12A〜12D)の周囲を覆うように固体電解質層13が形成される(ステップS103)。具体的には、例えば、単量体が酸化剤を使用して化学酸化重合することにより導電性高分子が生成されるため、その導電性高分子と共にドーパントを含み、すなわちドーパントがドープされた導電性高分子を含むように固体電解質13が形成される。この導電性高分子としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンおよびこれらの誘導体のうちの少なくとも1種が生成され、具体的には、単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェンを使用した場合にはポリエチレンジオキシチオフェンが生成される。
続いて、固体電解質層13を水洗することにより、例えば、導電性高分子に含まれている未反応の単量体、導電性高分子にドープされなかった余剰なドーパント、ならびに使用済みの酸化剤などを洗い流す(ステップS104)。なお、固体電解質層13を形成する際には、例えば、上記した「固体電解質層13の形成工程(ステップS103)」および「固体電解質層13の水洗工程(ステップS104)」の組み合わせを1回に限らず、複数回に渡って繰り返し行うようにしてもよい。これらの工程の組み合わせを複数回に渡って行うことにより、固体電解質層13の形成厚さを所望の厚さとなるように調整可能である。
続いて、固体電解質層13の周囲を覆うように陰極14を形成する(ステップS105)。この陰極14を形成する際には、例えば、固体電解質層13の周囲にカーボンペーストを塗布して乾燥させることによりカーボン層14Aを約10μmの厚さとなるように形成したのち、そのカーボン層14A上にさらに銀ペーストを塗布して乾燥させることにより銀層14Bを約30μmの厚さとなるように形成し、すなわちカーボン層14Aと銀層14Bとがこの順に積層された2層構造を有するように陰極14を形成する。これにより、陽極11、誘電体層12、固体電解質層13および陰極14がこの順に積層された積層構造を有するコンデンサ素子10が完成する(図1〜図3参照)。
コンデンサ素子10を形成したのち、そのコンデンサ素子10を使用して電解コンデンサを組み立てる。すなわち、例えば、抵抗溶接、超音波溶接またはかしめ加工などの接合技術を使用してコンデンサ素子10のうちの陽極11に陽極リードを接続させると共に、陰極14に陰極リードを接続させたのち(ステップS106)、陽極リードおよび陰極リードの双方が部分的に露出するようにコンデンサ素子10をモールド樹脂で被覆する(ステップS107)。これにより、コンデンサ素子10に陽極リードおよび陰極リードが接続され、これらの陽極リードおよび陰極リードを部分的に露出するようにコンデンサ素子10がモールド樹脂により被覆された構造を有する電解コンデンサが完成する。なお、電解コンデンサを完成させたのちには、必要に応じて電解コンデンサにエージング処理を施すようにしてもよい。このエージング処理としては、例えば、高温高湿環境中において電解コンデンサに定格電圧を印加するようにする。
本実施の形態に係る電解コンデンサの製造方法では、あらかじめ誘電体層部分12A,12Bが部分的に形成された陽極11を使用して、その陽極11に誘電体層12(誘電体層部分12A〜12D)を形成する際に、陽極酸化反応を促進するための前処理溶液を使用して陽極11に前処理を施したのち、化成溶液を使用して陽極11を陽極酸化することにより誘電体層部分12C,12Dを形成するようにしたので、上記したように、前処理により陽極11の露出面PC,PDに前処理溶液が付着することに基づき、化成処理時に露出面PC,PDにおいて陽極酸化反応が促進される。この場合には、陽極11の露出面PC,PDを十分に覆うように誘電体層部分12C,12Dが形成され、すなわち露出面PC,PDを覆う部分の厚さが十分に大きくなると共にピンホールなどの欠陥を含まないように誘電体層部分12C,12Dが高品質に形成される。この結果、誘電体層部分12C,12Dの高品質化に基づき、その誘電体層部分12C,12Dを含む誘電体層12が高品質に形成される。したがって、本実施の形態では、誘電体層12の高品質化に基づいて漏れ電流の発生が抑制されるため、作動特性が確保された高性能な電解コンデンサを製造することができる。これにより、電解コンデンサを製造する際に、その電解コンデンサの製造歩留まりを向上させることができる。
また、上記した他、本実施の形態では、前処理溶液の濃度C1が化成溶液の濃度C2よりも高くなるようにしたので(C1>C2)、その前処理溶液を使用した前処理に基づく陽極酸化反応の促進作用が、陽極11の露出面PC,PDを十分に覆うように誘電体層部分12C,12Dを形成可能な程度に確保される。したがって、誘電体層部分12C,12Dを安定的に高品質に形成することができる。
また、本実施の形態では、前処理溶液として化成溶液を使用するようにしたので、前処理工程および化成工程の双方を経て陽極11が処理される過程において、その陽極11が実質的に二度に渡って化成溶液に接触することとなる。この場合には、化成溶液を使用して誘電体層部分12C,12Dを形成することを考慮した場合に、前処理工程において陽極11を前処理溶液(=化成溶液)に十分に接触させておけば、化成処理において陽極11を化成溶液に十分に接触させなくても済むため、前処理溶液として化成溶液を使用しない場合と比較して、化成溶液の濃度C2が低くて済む。したがって、化成溶液の濃度C2を低減させることができる。特に、化成溶液の濃度C2を低減させることにより、蒸発に起因して化成溶液の濃度C2が変化しやすい場合に、その濃度C2の変化に基づいて化成作用の進行度(陽極酸化反応の進行度)が変動することを実質的に抑制することができる。
なお、本実施の形態では、前処理溶液を使用した前処理工程において、陽極11に前処理溶液を付着させるために、その陽極11を前処理溶液に浸漬させるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、陽極11に前処理溶液を付着させることが可能な限り、その付着方法は自由に変更可能である。具体的には、例えば、陽極11を前処理溶液に浸漬させる方法に代えて、前処理溶液を陽極11に滴下したり、あるいは前処理溶液を陽極11に塗布するようにしてもよい。これらの場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、図5に示したように、1種類の化成溶液を使用して、陽極11に一度だけ化成処理を施すことにより誘電体層部分12C,12Dを形成するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、その誘電体層部分12C,12Dを高品質に形成することが可能な限り、互いに異なる反応速度を有する複数の化成溶液を順次使用して、陽極11に複数回に渡って化成処理を施すことにより誘電体層部分12C,12Dを形成するようにしてもよい。具体的には、相対的に速い反応速度を有する化成溶液(前化成溶液)を使用して陽極11に化成処理(前化成処理)を施したのち、相対的に遅い反応速度を有する化成溶液(後化成溶液)を使用して陽極11に化成処理(後化成処理)を施すようにしてもよい。一例を挙げれば、図8に示したように、相対的に高い濃度C21(C21>C22)を有する前化成溶液を使用して陽極11に前化成処理を施したのち、相対的に低い濃度C22(C22<C21)を有する後化成溶液を使用して陽極11に後化成処理を施すようにすれば、これらの前化成処理および後化成処理を経ることにより誘電体層12C,12Dが形成される。前処理溶液を構成する電解質および溶媒の種類と後化成溶液を構成する電解質および溶媒の種類とは互いに同一であってもよいし、あるいは互いに異なってもよい。なお、図8に示した前化成溶液(濃度C21)および後化成溶液(濃度C22)を使用して陽極11に化成処理(前化成処理,後化成処理)を施す場合には、例えば、前化成溶液の温度を後化成溶液の温度よりも高くしたり、前化成処理の処理時間を後化成処理の処理時間よりも短くするようにしてもよい。この場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明に関する第2の実施の形態について説明する。
本実施の形態に係る電解コンデンサの製造方法は、陽極酸化反応を促進するための前処理溶液を使用して陽極11に前処理を施した上記第1の実施の形態とは異なり、誘電体層部分12A,12Bを修復するための前処理溶液を使用して陽極11に前処理を施す点を除き、上記第1の実施の形態において説明した電解コンデンサの製造方法と同様の手順(図4、図6および図7参照)を実施するものである。
図9は、電解コンデンサの製造工程において使用される一連の溶液(前処理溶液,化成溶液,単量体溶液,酸化剤溶液)の組成を説明するためのものである。本実施の形態に係る電解コンデンサの製造方法を使用して図1〜図3に示した電解コンデンサを製造する際には、上記第1の実施の形態において図4を参照して説明した製造工程において、図6に示した処理済みの陽極11を準備したのち(ステップS101)、その陽極11に誘電体層12を形成する際に(ステップS102)、上記したように、陽極11にあらかじめ部分的に形成されている誘電体層部分12A,12Bを修復するための前処理溶液を使用して、その陽極11に前処理を施したのち、化成溶液を使用して陽極11を陽極酸化(いわゆる再化成)する。
すなわち、誘電体層12を形成する際には、まず、例えば、図9に示したように、前処理溶液として水を準備する(ステップS1021)。この前処理溶液(水)としては、例えば、蒸留水を使用する。特に、前処理溶液(水)としては、例えば、沸騰水(沸騰蒸留水)を使用するのが好ましい。この沸騰蒸留水とは、例えば、実測温度が約95℃〜100℃の蒸留水である。続いて、前処理溶液を使用して陽極11に前処理を施し、すなわち前処理溶液に陽極11を浸漬させることにより、誘電体層部分12A,12Bの表面に水を付着させる。(ステップS1022)。この前処理により、化成処理時に陽極11の被覆面PA,PBが陽極酸化されることにより誘電体層部分12A,12Bが修復されることとなる。なお、前処理溶液を使用して陽極11に前処理を施したのちに化成溶液を調製する工程(ステップS1023)以降の工程は、上記第1の実施の形態の電解コンデンサの製造工程と同様であるので、その説明を省略する。この電解コンデンサの製造工程においても、化成溶液を使用して陽極11に化成処理が施されることにより陽極11の露出面PC,PDを覆うように誘電体層部分12C,12Dがそれぞれ形成されるため、図7に示したように、その陽極11を覆うように誘電体層部分12A〜12Dを含む誘電体層12が形成される。
本実施の形態に係る電解コンデンサの製造方法では、あらかじめ誘電体層部分12A,12Bが部分的に形成された陽極11を使用して、その陽極11に誘電体層12(誘電体層部分12A〜12D)を形成する際に、誘電体層部分12A,12Bを修復するための前処理溶液を使用して陽極11に前処理を施したのち、化成溶液を使用して陽極11を陽極酸化することにより誘電体層部分12C,12Dを形成するようにしたので、上記したように、前処理により誘電体層部分12A,12Bの表面に前処理溶液が付着することに基づき、化成処理時に誘電体層部分12A,12Bが修復される。具体的には、電解コンデンサを製造するために使用した処理済みの陽極11に関して、その陽極11にあらかじめ部分的に形成されている誘電体層部分12A,12Bに意図せずに欠陥が含まれていたとしても、前処理時に誘電体層部分12A,12Bの表面に水(すなわち水酸基)が付着すると、その水の存在に基づいて化成処理時に誘電体層部分12A,12Bの欠陥が電気的に保護されるため、その誘電体層部分12A,12Bの欠陥に電気的な作用(すなわち電界)が集中することが抑制される。これにより、欠陥の存在に起因して誘電体層部分12A,12Bを電気的に損傷させることなく、その誘電体層部分12A,12Bの欠陥を埋め込んで修復しながら誘電体層部分12C,12Dが形成されるため、誘電体層部分12A,12Bが高品質化される。この結果、誘電体層部分12A,12Bの高品質化に基づき、誘電体層12が高品質に形成される。したがって、本実施の形態では、誘電体層12の高品質化に基づいて漏れ電流の発生が抑制されるため、作動特性が確保された高性能な電解コンデンサを製造することができる。
また、上記した他、本実施の形態では、前処理溶液として沸騰水を使用するようにすれば、その沸騰水の熱的作用を利用して誘電体層部分12A,12Bに対する前処理溶液の付着が促進されるため、前処理を短時間で行うことができる。
なお、本実施の形態に係る電解コンデンサの製造方法に関する上記以外の製造工程、変形例ならびに電解コンデンサの製造方法を使用して製造される電解コンデンサの構成は、上記第1の実施の形態と同様である。
次に、本発明に関する具体的な実施例について説明する。
上記実施の形態において説明した電解コンデンサの製造方法を使用して電解コンデンサを製造した。すなわち、まず、広幅の前処理済みのアルミニウム箔、すなわちあらかじめ拡面化されていると共に誘電体層部分12A,12Bが部分的に形成されているアルミニウム箔(アルミニウム拡面化箔)を準備したのち、打ち抜き機を使用して所定の寸法(15mm×30mm)となるようにアルミニウム箔を打ち抜くことにより、陽極11(陽極11の厚さ=20μm,誘電体層部分12A,12Bの厚さ=40μm;図6参照)を準備した。打ち抜き機を使用して前処理済みのアルミニウム箔を打ち抜く際には、スペーサを使用して切断刃の切りこみ深さを調整した。
続いて、電解コンデンサとして機能する領域(コンデンサ領域)を画定するために、所定の寸法角の領域が選択的に露出するように陽極11にシール処理を施した。続いて、前処理溶液を調製したのち、その前処理溶液に陽極11を浸漬させることにより、陽極11に前処理を施した。続いて、化成溶液を調整したのち、その化成溶液に前処理済みの陽極11を浸漬させながら電圧を印加して化成処理を行うことにより、その陽極11において陽極酸化反応を進行させた。この化成処理を行う際には、化成溶液としてアジピン酸二アンモニウム水溶液を使用すると共に、印加電圧=23Vとした。この化成処理により、陽極11の露出面PC,PDを覆うように誘電体層部分12C,12Dがそれぞれ形成され、すなわち陽極11の周囲を覆うように誘電体層12(誘電体層部分12A〜12D)が形成された。
続いて、溶媒としてのエタノール30mLに単量体としての3.4−エチレンジオキシチオフェン0.56gとドーパントとしてのアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム3.2gとが溶解された単量体溶液を調整し、その単量体溶液に化成処理済みの陽極11を30秒間に渡って浸漬させることにより、誘電体層12の表面に単量体溶液を付着させたのち、陽極11を引き上げて室温下で1分間に渡って乾燥させた。続いて、溶媒としての蒸留水20mLに酸化剤としての硫酸セリウム1.2gが溶解された酸化剤溶液を調整したのち、その酸化剤溶液に単量体溶液に浸漬済みの陽極11を30秒間に渡って浸漬させた。これにより、単量体溶液に含まれている単量体が酸化剤を使用して化学酸化重合することにより導電性高分子としてポリエチレンジオキシチオフェンが生成され、ドーパントがドープされた導電性高分子を含む固体電解質層13が誘電体層12を覆うように形成された。この固体電解質層13を形成する際には、上記した固体電解質層13の形成手順を10回繰り返すと共に、特に、化学酸化重合反応の完了時ごとに固体電解質層13を水洗することにより、未反応の単量体、余剰なドーパントまたは使用済みの酸化剤を随時除去した。
続いて、固体電解質層13の周囲にカーボンペーストを塗布して乾燥させることによりカーボン層14Aを10μmの厚さとなるように形成したのち、さらにカーボン層14A上に銀ペーストを塗布して乾燥させることにより銀層14Bを30μmの厚さとなるように形成し、これらのカーボン層14Aと銀層14Bとがこの順に積層された2層構造を有するように陰極14を形成した。これにより、陽極11、誘電体層12、固体電解質層13および陰極14がこの順に積層された積層構造を有するコンデンサ素子10が形成された(図1〜図3参照)。
続いて、溶接を使用してコンデンサ素子10に銅製の陽極リードおよび陰極リードを接続させたのち、これらの陽極リードおよび陰極リードを使用して電圧を印加することによりコンデンサ素子10にエージング処理を施し、陽極11を陽極酸化した。最後に、モールド樹脂としてエポキシ樹脂で陽極リードおよび陰極リードが部分的に露出するようにコンデンサ素子10を被覆することにより、電解コンデンサが完成した。
上記した電解コンデンサの製造方法を使用して製造された電解コンデンサの作動特性を調べるために、前処理溶液の組成、前処理の処理温度および処理時間、化成溶液の組成、ならびに化成処理の処理温度および処理時間を以下のように設定して、一連の電解コンデンサを製造した。
(実施例1)
静電容量=78μF/cm2 、定格皮膜耐電圧=23Vの前処理済みアルミニウム箔を使用すると共に前処理溶液としてアジピン酸二アンモニウム水溶液を使用し、前処理溶液の濃度=15重量%、前処理の処理温度=25℃,処理時間=40時間、化成溶液の濃度=7重量%、化成処理の処理温度=70℃,処理時間=2分間として電解コンデンサを製造した。この際、コンデンサ領域のサイズ=15mm×15mm、化成処理時の印加電圧=23V、電解コンデンサの定格電圧=6.3Vとすると共に、エージング処理として高温高湿環境(温度=110℃、湿度=85%)中において印加電圧を0Vから14Vまで段階的に上昇させた。
(実施例2)
前処理溶液として蒸留水を使用し、前処理の処理温度=25℃とした点を除き、実施例1と同様の手順を経て電解コンデンサを製造した。
(実施例3)
前処理溶液として沸騰蒸留水を使用し、前処理の処理温度=100℃、前処理の処理時間=1時間とした点を除き、実施例1と同様の手順を経て電解コンデンサを製造した。
(実施例4)
静電容量=363μF/cm2 、定格皮膜耐電圧=4Vの前処理済みアルミニウム箔を使用すると共に前処理溶液として沸騰蒸留水を使用し、前処理の処理温度=100℃,処理時間=1時間、化成溶液の濃度=7重量%、化成処理の処理温度=70℃,処理時間=2分間として電解コンデンサを製造した。この際、コンデンサ領域のサイズ=15mm×1.2mm、化成処理時の印加電圧=4V、電解コンデンサの定格電圧=2.5Vとすると共に、エージング処理として高温高湿環境(温度=110℃)中において印加電圧を0Vから2.2Vまで段階的に上昇させた。
(比較例1)
前処理溶液を使用して前処理を行った実施例1〜3とは異なり、その前処理を行わなかった点を除き、実施例1〜3と同様の手順を経て電解コンデンサを製造した。
(比較例2)
前処理溶液を使用して前処理を行った実施例4とは異なり、その前処理を行わなかった点を除き、実施例4と同様の手順を経て電解コンデンサを製造した。
上記した実施例1〜4ならびに比較例1,2の電解コンデンサの作動特性を調べたところ、表1〜表4に示した結果が得られた。表1〜表4は電解コンデンサの作動特性を表しており、表1は実施例1および比較例1の比較結果を示し、表2は実施例2および比較例1の比較結果を示し、表3は実施例3および比較例1の比較結果を示し、表4は実施例4および比較例2の比較結果を示している。これらの表1〜表4では、電解コンデンサの作動特性として、120Hzにおける「容量」ならびに「tanδ(いわゆる誘電損失)」と共に、「漏れ電流特性」を示している。この「漏れ電流特性」としては、エージング処理後の「漏れ電流(μA)」と共に、その漏れ電流に基づいて電解コンデンサの作動特性を「◎(漏れ電流<1μA)」、「○(1μA≦漏れ電流<50μA)」または「×(漏れ電流≧50μA)」と評価した結果(「評価」)を示している。特に、実施例4および比較例2に関しては、エージング処理後の「漏れ電流(μA)」および「評価」のみを示している一方で、実施例1〜3および比較例1に関しては、エージング処理後の残留水分の影響を受けて電解コンデンサの漏れ電流が経時的に変化することを考慮して、エージング処理後の「漏れ電流(μA)」および「評価」と共に、エージング処理後から120時間経過後の「漏れ電流(μA)」および「評価」も併せて示している。電解コンデンサの漏れ電流を調べる際には、実施例1〜3および比較例1に関しては定格電圧=6.3Vを5分間に渡って印加したのちに漏れ電流を測定すると共に、実施例4および比較例2に関しては定格電圧=2.5Vを5分間に渡って印加したのちに漏れ電流を測定するようにし、特に、電解コンデンサに定格電圧を印加する際にはいずれの場合においても急速充電を抑制するために保護抵抗(=1kΩ)を使用した。
なお、電解コンデンサの作動特性を調べる際には、その作動特性を簡略かつ高精度に調べるために、完成体の電解コンデンサに代えて、図10に示した簡易型の電解コンデンサとしてコンデンサ素子10を使用して作動特性試験を行った。図10に示したコンデンサ素子10は、陽極リードおよび陰極リードの代わりに試験用のテストリード15,16がそれぞれ陽極11,陰極14に接続されていると共に、陽極11と陰極14との間を絶縁するために、その陽極11に絶縁層17(例えばシリコン樹脂)が設けられている点を除き、図1〜図3に示したコンデンサ素子10と同様の構造を有している。このテストリード15は、最終的にコンデンサ素子10を駆動させるための電極として使用される他に、そのコンデンサ素子10の製造工程において化成処理時の電極として使用されるものである。なお、絶縁層17は、例えば、化成溶液が毛細管現象に起因して陽極11へ這い上がることを防止するために、図10に示したコンデンサ素子10に限らず、図1に示したコンデンサ素子10にも設けられる場合がある。
Figure 2005191421
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表1に示した結果から判るように、前処理溶液としてアジピン酸二アンモニウム水溶液を使用して前処理を行った実施例1の電解コンデンサでは、漏れ電流がエージング処理後において0.86μA(評価=◎)、さらに120時間経過後において0.85μA(評価=◎)であったのに対して、前処理を行わなかった比較例1の電解コンデンサでは、漏れ電流がエージング処理後において0.24μA(評価=○)、さらに120時間経過後において370μA(評価=×)であった。すなわち、実施例1の電解コンデンサでは、エージング処理後において漏れ電流の発生が抑制された上、その漏れ電流の抑制状態が経時的に維持されたのに対して、比較例1の電解コンデンサでは、エージング処理後において漏れ電流の発生が一時的に抑制されたものの、その漏れ電流の抑制状態は経時的に維持されず、すなわち漏れ電流が経時的に増大してしまった。このことは、実施例1の電解コンデンサでは、前処理により陽極11の露出面PC,PDを十分に覆うように誘電体層部分12C,12Dが高品質に形成されたのに対して、比較例1の電解コンデンサでは、陽極11の露出面PC,PDを十分に覆うように誘電体層部分12C,12Dが形成されず、その誘電体層部分12C,12Dが高品質に形成されなかったためであると考えられる。このことから、実施例1の電解コンデンサでは、比較例1の電解コンデンサとは異なり、誘電体層12の高品質化に基づいて漏れ電流の発生が抑制されるため、作動特性が安定に確保されることが確認された。
続いて、表2に示した結果から判るように、前処理溶液として蒸留水を使用して前処理を行った実施例2の電解コンデンサでは、漏れ電流がエージング処理後において3.73μA(評価=○)、さらに120時間経過後において3.71μA(評価=○)であった。すなわち、実施例2の電解コンデンサでは、上記した実施例1の電解コンデンサと同様に、エージング処理後において漏れ電流の発生が抑制された上、その漏れ電流の抑制状態が経時的に維持された。このことは、実施例2の電解コンデンサでは、前処理により誘電体層部分12A,12Bが修復されたため、その誘電体層部分12A,12Bが高品質化されたためであると考えられる。このことから、実施例2の電解コンデンサにおいても、誘電体層12の高品質化に基づいて漏れ電流の発生が抑制されるため、作動特性が安定に確保されることが確認された。
続いて、表3に示した結果から判るように、前処理溶液として沸騰蒸留水を使用して前処理を行った実施例3の電解コンデンサでは、漏れ電流がエージング処理後において0.95μA(評価=◎)、さらに120時間経過後において41.53μA(評価=○)であった。すなわち、実施例3の電解コンデンサでは、上記した実施例1の電解コンデンサと同様に、エージング処理後において漏れ電流の発生が抑制された上、その漏れ電流の抑制状態が経時的に維持された。このことは、実施例3の電解コンデンサでは、上記した実施例2の電解コンデンサと同様に、前処理に基づく誘電体層部分12A,12Bの修復作用を利用して誘電体層部分12A,12Bが高品質化されたためであると考えられる。このことから、実施例3の電解コンデンサにおいても、誘電体層12の高品質化に基づいて漏れ電流の発生が抑制されるため、作動特性が安定に確保されることが確認された。
最後に、表4に示した結果から判るように、前処理溶液として沸騰蒸留水を使用して前処理を行った実施例4の電解コンデンサでは、漏れ電流がエージング処理後において0.11μA(評価=◎)であった。なお、前処理を行わなかった比較例2の電解コンデンサでは、漏れ電流がエージング処理後において35.11μA(評価=○)であった。すなわち、実施例4の電解コンデンサにおいてもエージング処理後において漏れ電流の発生が抑制された上、その漏れ電流の抑制状態が経時的に維持された。このことから、実施例4の電解コンデンサにおいても、誘電体層12の高品質化に基づいて漏れ電流の発生が抑制されるため、作動特性が安定に確保されることが確認された。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態や実施例に限定されず、種々の変形が可能である。
具体的には、上記第1の実施の形態および実施例では、陽極11の陽極酸化反応を促進するための前処理溶液として、ホウ酸塩、リン酸塩またはアジピン酸塩に代表される電解質を含む電解質溶液を使用するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、前処理溶液を使用した前処理を施すことにより陽極11の陽極酸化反応を促進することが可能な限り、その電解質の種類は自由に変更可能である。この場合においても、上記第1の実施の形態および実施例と同様の効果を得ることができる。
また、上記第2の実施の形態および実施例では、誘電体層部分12A,12Bを修復するための前処理溶液として、蒸留水に代表される水や沸騰水を使用するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、前処理溶液を使用した前処理を施すことにより誘電体層部分12A,12Bを修復することが可能な限り、その水以外の他の液体を使用するようにしてもよい。この場合においても、上記第2の実施の形態および実施例と同様の効果を得ることができる。
本発明に係る電解コンデンサの製造方法は、電気的反応を生じる主要部が固体材料(導電性高分子)により構成された固体電解コンデンサの製造工程に適用することが可能である。
本発明の第1の実施の形態に係る電解コンデンサの製造方法を使用して製造される電解コンデンサの主要部(コンデンサ素子)の外観構成を表す外観図である。 図1に示したコンデンサ素子のII−II線に沿った断面構成を拡大して表す断面図である。 図2に示したコンデンサ素子の断面構成を部分的に拡大して表す断面図である。 本発明の第1の実施の形態に係る電解コンデンサの製造方法における製造工程の流れを説明するための流れ図である。 本発明の第1の実施の形態に係る電解コンデンサの製造方法において使用される一連の溶液(前処理溶液,化成溶液,単量体溶液,酸化剤溶液)の組成を説明するための図である。 本発明の第1の実施の形態に係る電解コンデンサの製造方法において使用する化成処理前の陽極の断面構成を表す断面図である。 化成処理後の陽極の断面構成を表す断面図である。 本発明の第1の実施の形態に係る電解コンデンサの製造方法に関する変形例を説明するための図である。 本発明の第2の実施の形態に係る電解コンデンサの製造方法において使用される一連の溶液(前処理溶液,化成溶液,単量体溶液,酸化剤溶液)の組成を説明するための図である。 試験用の電解コンデンサ(コンデンサ素子)の外観構成を表す外観図である。
符号の説明
10…コンデンサ素子、11…陽極、12…誘電体層、12A〜12D…誘電体層部分、13…固体電解質層、14…陰極、14A…カーボン層、14B…銀層、15,16…テストリード、17…絶縁層、PA,PB…面(被覆面)、PC,PD…面(露出面)。

Claims (11)

  1. 弁作用金属により構成された電極層と、この電極層が陽極酸化されることにより形成された誘電体層と、固体電解質層とがこの順に積層された積層構造を有する電解コンデンサの製造方法であって、
    電極層の陽極酸化反応を促進するための前処理溶液を使用して、その電極層に前処理を施したのち、化成溶液を使用して前記電極層を陽極酸化することにより、前記誘電体層を形成する工程を含む
    ことを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
  2. 前記誘電体層を形成する工程が、
    前記誘電体層の一部を構成する第1の誘電体層部分があらかじめ部分的に形成された前記電極層を準備する第1の工程と、
    前記前処理溶液を使用して前記電極層に前処理を施す第2の工程と、
    前記化成溶液を使用し、前処理済みの前記電極層を陽極酸化して前記誘電体層の他の一部を構成する第2の誘電体層部分を形成することにより、これらの第1および第2の誘電体層部分を含んで前記電極層の周囲を覆うように前記誘電体層を形成する第3の工程と
    を含むことを特徴とする請求項1記載の電解コンデンサの製造方法。
  3. 前記第2の工程において、前記前処理溶液として電解質溶液を使用し、その電解質溶液に前記電極層を浸漬させる
    ことを特徴とする請求項2記載の電解コンデンサの製造方法。
  4. 前記電解質溶液として、前記化成溶液を使用する
    ことを特徴とする請求項3記載の電解コンデンサの製造方法。
  5. 前記前処理溶液の濃度を前記化成溶液の濃度よりも高くする
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
  6. 前記第1の工程において、前記電極層として、前記電極層の周囲を覆うように前記第1の誘電体層部分が形成されたのち、その電極層が前記第1の誘電体層部分と共に切断されたものを準備する
    ことを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
  7. 弁作用金属により構成された電極層と、この電極層が陽極酸化されることにより形成された誘電体層と、固体電解質層とがこの順に積層された積層構造を有する電解コンデンサの製造方法であって、
    誘電体層を修復するための前処理溶液を使用して、その電極層に前処理を施したのち、化成溶液を使用して前記電極層を陽極酸化することにより、前記誘電体層を形成する工程を含む
    ことを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
  8. 前記誘電体層を形成する工程が、
    前記誘電体層の一部を構成する第1の誘電体層部分があらかじめ部分的に形成された前記電極層を準備する第1の工程と、
    前記前処理溶液を使用して前記電極層に前処理を施す第2の工程と、
    前記化成溶液を使用し、前処理済みの前記電極層を陽極酸化して前記誘電体層の他の一部を構成する第2の誘電体層部分を形成することにより、これらの第1および第2の誘電体層部分を含んで前記電極層の周囲を覆うように前記誘電体層を形成する第3の工程と
    を含むことを特徴とする請求項7記載の電解コンデンサの製造方法。
  9. 前記第2の工程において、前記前処理溶液として水を使用し、その水に前記電極層を浸漬させる
    ことを特徴とする請求項8記載の電解コンデンサの製造方法。
  10. 前記水として、沸騰水を使用する
    ことを特徴とする請求項9記載の電解コンデンサの製造方法。
  11. 前記第1の工程において、前記電極層として、前記電極層の周囲を覆うように前記第1の誘電体層部分が形成されたのち、その電極層が前記第1の誘電体層部分と共に切断されたものを準備する
    ことを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
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