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JP2005149779A - 発光管、平面発光パネル、およびこの平面発光パネルを用いた画像表示素子 - Google Patents

発光管、平面発光パネル、およびこの平面発光パネルを用いた画像表示素子 Download PDF

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JP2005149779A JP2003382196A JP2003382196A JP2005149779A JP 2005149779 A JP2005149779 A JP 2005149779A JP 2003382196 A JP2003382196 A JP 2003382196A JP 2003382196 A JP2003382196 A JP 2003382196A JP 2005149779 A JP2005149779 A JP 2005149779A
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electron emission
gas
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grid
electrons
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Minoru Akeboshi
稔 明星
Shuzo Akutsu
秀三 圷
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Panasonic Holdings Corp
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

【課題】高効率化のための条件を見出し、高効率化を確実に実現する。
【解決手段】容器1内に、電子放出源3と、この電子放出源3から放出された電子を電界によって加速飛行させるためのコレクタ電極13とが設けられ、かつ飛行中の電子との衝突によって紫外線を放射する気体が封入されており、容器1の内面には紫外線を可視光に変換する蛍光体16が塗布されている発光管であって、電子放出源3はグリッド6を有する電界放出構造物からなり、そのグリッド電圧はコレクタ電極13への印加電圧より小さいとともに、気体が紫外線を放射するための励起準位電圧より高く、かつ気体の自続放電開始電圧より低い範囲に規定されており、気体中を飛行する電子の平均自由行程λは電子放出源3の電子放出点7とグリッド6との間の距離dより長く、かつ電子放出点7とコレクタ電極13との間の最短距離Dより短い。
【選択図】図1

Description

本発明は、発光管、平面発光パネル、およびこの平面発光パネルを用いた画像表示素子に関するものである。
平面発光パネルとしては、バックライト用冷陰極蛍光ランプやバリア放電方式の発光体等が数多く実用化されている。また、画像表示素子としては、例えばカソードレイチューブ(CRT)方式、液晶方式、プラズマディスプレイパネル(PDP)方式、無機エレクトロルミネッセンス(EL)方式、有機エレクトロルミネッセンス(EL)方式、電界放出型真空管(FED)方式といったフラットパネルディスプレイが知られている。
そして、従来から、これら平面発光パネルや画像表示素子に対して消費電力を抑え、発光効率を向上させることが強く求められており、そのために発光効率を向上させるための取り組みが種々なされてきた。
しかしながら、これら従来の平面発光パネルや画像表示素子のうち放電発光するものにおいて、その放電方式の発光原理上、発光効率の向上にも限界があることは明らかである。例えば、低圧放電ランプ等の蛍光ランプでは、放電中の電子エネルギーの広がりに関して、蛍光発光に寄与する紫外線(253.7nm)を放射させるための励起準位の電子温度(4.88eV前後)以外に、蛍光発光に寄与しない放電維持のための電子の弾性衝突エネルギーや電離衝突エネルギーも、電子温度分布がマクスウェル分布に従う限り必要なものである。
したがって、発光効率を大幅に向上させるためには、上記した従来の平面発光パネルや画像表示素子の発光原理とは異なる新しい着想が必要になる。
そこで、電子放出に必要な駆動電界を低下させること等を目的とし、複数のカソード電極が一面に形成された第1基板と、カソード電極の一面に形成された電界放出用陰極と、第1基板と所定の間隔をおいて配置され、密閉された空間部を形成するとともに、複数のアノード電極が一面に形成された第2基板と、アノード電極の一面に形成された蛍光層と、前記空間部に注入された放電ガスとを備え、電界が加えられる陰極から放出された電子が放電ガスを励起させ、このとき発生した紫外線を用いて蛍光層を発光させる平板ディスプレイが提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、低駆動電圧による動作で高い発光効率を得ること等を目的とし、パネル容器内に、電子線源とこの電子線源から放出された電子を電界によって加速させるための電極とが設けられ、かつ加速された電子との衝突によって紫外線を放射する気体が封入されており、パネル容器の内面には前記紫外線を可視光に変換する蛍光体が塗布された平面発光パネルが提案されている(例えば特許文献2参照)。
なお、電子線源の電界放出構造物としては、カーボンナノチューブのフィールドエミッタが知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、暗所始動を改善するために酸化セシウムを含浸させた冷陰極バックライト用の電極を応用したセシウム吸着系の金属界面を有する電界放出構造物が知られている(例えば、特許文献4参照)。
特開平11−250841号公報 特開2001−6565号公報 特開2000−223004号公報 特開平5−290811号公報
しかしながら、特開平11−250841号公報(特許文献1)に開示された条件、すなわち両基板間の距離(Cell Gap)を5〜50μmに設定し、真空度を10-6Torrに、また電子放出に必要な電界として106V/mに設定しても、原理的にうまく発光しないと考えられる。つまり、5〜50μmというCell Gapで、10-6Torrという真空度では、放出された電子の平均自由行程を考慮すると、封入された「放電ガス」を放電させることはできないと考えられる。したがって、この特許文献1には、発光効率が従来の平面発光パネルや画像表示素子の発光効率に比して大幅に向上させるための条件が十分に開示されていないと言える。
なお、仮にその「放電ガス」が放電し得たとしても、「放電」という言葉で表現されている以上、そのプラズマの電子温度はマクスウェル分布に従うと考えるのが妥当であり、その結果、上記した従来の平面発光パネルや画像表示素子の発光効率を超える高い発光効率を得ることができないことになる。
また、特開2001−6565号公報(特許文献2)についても、発光効率を大幅に向上させるため、駆動電圧を気体の励起準位電圧よりも高くしつつ、つまり電子線源から放出された電子が封入された気体の原子に衝突するまでの間に、その気体原子を紫外線励起させるのに十分な電子エネルギーを獲得する確率を高めつつ、その駆動電圧を気体の自続放電開始電圧よりも低くする、つまり放電させないことについては開示されているものの、その具体的な条件が開示されておらず、十分な発光効率を向上させることができない場合があった。しかも、特許文献2記載のものは、高い発光効率を得るためには平面形以外の形状への展開が困難であった。つまり、タングステンフィラメントの熱電子放出物からなる電子源(電子線源)や、スピント型モリブデンマイクロチップアレイのような電界放出構造物からなる電子源は、それを平板上に配置することによって有用な商品設計と高い発光効率とを得ることができるのである。特に、後者のスピント型モリブデンマイクロチップアレイを部分的な立体的構造物のチップにすることは製造的に困難であった。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、高効率化のための条件を見出し、高効率化を確実に実現することができる発光管、平面発光パネル、および画像表示素子を提供することを目的とする。
また、本発明は、平面形はもとより、形状に対する設計自由度を高くすることができる発光管、平面発光パネル、および画像表示素子を提供することを目的とする。
本発明の請求項1記載の発光管は、容器内に、電子放出源と、この電子放出源から放出された電子を電界によって加速飛行させるためのコレクタ電極とが設けられ、かつ飛行中の前記電子との衝突によって紫外線を放射する気体が封入されており、前記容器の内面には前記紫外線を可視光に変換する蛍光体が塗布されている発光管であって、前記電子放出源はグリッドを有する電界放出構造物からなり、そのグリッド電圧は前記コレクタ電極への印加電圧より小さいとともに、前記気体が紫外線を放射するための励起準位電圧より高く、かつ前記気体の自続放電開始電圧より低い範囲に規定されており、前記気体中を飛行する前記電子の平均自由行程λは前記電子放出源の電子放出点と前記グリッドとの間の距離dよりも長く、かつ前記電子放出点と前記コレクタ電極との間の最短距離Dよりも短いという構成を有している。
このとき、前記気体として希ガス、または希ガスおよび水銀からなることが好ましい。
また、前記コレクタ電極として透明導電膜を用いることが好ましい。
また、前記電子放出点と前記コレクタ電極との間の最短距離Dが前記電子放出点と前記グリッドとの間の距離dの1倍以上20倍以下であることが好ましい。
また、前記電子放出源として、カーボンナノチューブのエミッタを有する電界放出構造物、鉄表面へのカリウム吸着界面を有する電界放出構造物、またはセシウム吸着系の金属界面を有する電界放出構造物を用いることが好ましい。
また、本発明の請求項8記載の平面発光パネルは、容器内に、電子放出源と、この電子放出源から放出された電子を電界によって加速飛行させるためのコレクタ電極とが設けられ、かつ飛行中の前記電子との衝突によって紫外線を放射する気体が封入されており、前記容器の内面には前記紫外線を可視光に変換する蛍光体が塗布されている平面発光パネルであって、前記電子放出源はグリッドを有する電界放出構造物からなり、そのグリッド電圧は前記コレクタ電極への印加電圧より小さいとともに、前記気体が紫外線を放射するための励起準位電圧より高く、かつ前記気体の自続放電開始電圧より低い範囲に規定されており、前記気体中を飛行する前記電子の平均自由行程λは前記電子放出源の電子放出点と前記グリッドとの間の距離dよりも長く、かつ前記電子放出点と前記コレクタ電極との間の最短距離Dよりも短いという構成を有している。
さらに、本発明の請求項9記載の画像表示素子は、請求項8に記載された平面発光パネルを用いているという構成を有している。
本発明の請求項1記載の発光管の構成によれば、グリッド電圧をコレクタ電極への印加電圧より小さくするとともに、封入された気体が紫外線を放射するための励起準位電圧より高くし、かつその気体の自続放電開始電圧より低い範囲に規定されているので、その気体自体は放電させないようにさせつつ、電子放出源から放出された電子が封入された気体の原子に衝突するまでの間にその気体原子を紫外線放射レベルまで励起させるのに十分な電子エネルギーを獲得する確率を高めることができる。その結果、マクスウェル分布によらない電子温度で、放出された電子を気体原子に励起衝突させることができる、つまり放出された電子が獲得した電子エネルギーを、蛍光発光に寄与しない放電維持のための電子の弾性衝突エネルギーや電離衝突エネルギーに費やさずに、専ら気体原子の紫外線放射のための励起に費やすことができる。しかも、気体中を飛行する電子の平均自由行程が電子放出点とグリッドとの間の距離よりも長く、かつ電子放出点とコレクタ電極との間の距離よりも短いので、飛行する電子がコレクタ電極に入射する前に気体原子に励起衝突する確率を高めることができる。したがって、極めて高い発光効率を確実に実現することができる。
特に、前記コレクタ電極として透明導電膜を用いることにより、容器内で生成された光を容器の外部に取り出すことができる。
また、前記電子放出点と前記コレクタ電極との間の最短距離Dを前記電子放出点と前記グリッドとの間の距離dの1倍以上20倍以下とすることにより、飛行する電子がコレクタ電極に入射する前に気体原子に励起衝突する確率を一層高めることができ、極めて高い発光効率を一層確実に実現することができる。しかも、気体原子から放射された紫外線が同種の気体原子に自己吸収される確率を下げることができ、極めて高い発光効率を維持することができる。
また、前記電子放出源としてカーボンナノチューブのエミッタを有する電界放出構造物を用いることにより、電子放出能力が高い電子放出源を面状に広げ、発光効率が極めて高い平面形の発光管を実現することができる。
また、前記電子放出源として鉄表面へのカリウム吸着界面を有する電界放出構造物、またはセシウム吸着系の金属界面を有する電界放出構造物を用いることにより、平面加工プロセスを必要としないので、平面形以外の形状、例えば円柱形を容易に作製することができる。したがって、平面形はもとより、形状に対する設計自由度を高くすることができる。
本発明の請求項8記載の平面発光パネルの構成によれば、グリッド電圧をコレクタ電極への印加電圧より小さくするとともに、封入された気体が紫外線を放射するための励起準位電圧より高くし、かつその気体の自続放電開始電圧より低い範囲に規定されているので、その気体自体は放電させないようにさせつつ、電子放出源から放出された電子が封入された気体の原子に衝突するまでの間にその気体原子を紫外線放射レベルまで励起させるのに十分な電子エネルギーを獲得する確率を高めることができる。その結果、マクスウェル分布によらない電子温度で、放出された電子を気体原子に励起衝突させることができる、つまり放出された電子が獲得した電子エネルギーを、蛍光発光に寄与しない放電維持のための電子の弾性衝突エネルギーや電離衝突エネルギーに費やさずに、専ら気体原子の紫外線放射のための励起に費やすことができる。しかも、気体中を飛行する電子の平均自由行程が電子放出点とグリッドとの間の距離よりも長く、かつ電子放出点とコレクタ電極との間の距離よりも短いので、飛行する電子がコレクタ電極に入射する前に気体原子に励起衝突する確率を高めることができる。したがって、極めて高い発光効率を確実に実現することができる。
さらに、本発明の請求項9記載の画像表示素子の構成によれば、請求項8に記載された平面発光パネルを用いているので、極めて高い発光効率を確実に実現することができる画像表示素子を提供することができる。
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面を用いて説明する。
本発明の第1の実施の形態である発光管は、図1に示すように、全長Lが36mm、外径Rが16mmであり、円筒状のガラスからなる容器1とこの容器1の一端部に装着された有底筒状の口金2とを備えている。
なお、容器1の材質として、その用途や加工性等を考慮して適宜公知のガラス材、例えばソーダライムガラスを用いればよい。また、口金2の材質として、一般的な種々の口金に用いられている材料を使用することができる。
容器1の一端部には、ステム1aが封着されている。また、容器1内の中央部には、電子放出源3が配置されている。
この電子放出源3は、電界放出構造物からなり、図2(a)および図2(b)に示すように、清浄な表面を有する直径0.6mmの鉄線4と、この鉄線4の表面の一部を覆うように溶着され、かつその成分にカリウムを含む長円形のガラスビード5と、鉄線4の先端部に近接して配置された金属円板からなるグリッド6とを有している。
なお、鉄線4の表面を清浄にしておくのは、後述するようにカリウムを吸着させるためである。
この電界放出構造物において、鉄線4とガラスビード5との界面には、鉄線4の鉄表面にカリウムが吸着することによって仕事関数の極めて低い電子放出点7が形成されている。
鉄線4は、図1に示すように、一部がステム1aに封着された第1のリード線8を介して口金2の底部の外側に設けられた二つのピン端子9,10のうち、一方のピン端子9に電気的に接続されている。
ガラスビード5の成分は、その一例として、SiO2が67.3重量%、K2Oが23.3重量%、CaOが5.1重量%、MgOが2.3重量%、Al23が1.6重量%、その他、残部である。この成分以外にもカリウムを数重量%、例えば3重量%以上含めばよく、鉛ガラス等であってもよい。また、ガラスビード5の短径tは1.0mmである。
グリッド6は、材質がSUS304からなり、また図2(a)および図2(b)に示すように、その中央部に孔径rが0.8mmの孔11を有している。電子放出点7がこの孔11の開口端に近接するよう、鉄線4の先端部(ガラスビード5が溶着されていない部分)がこの孔11内に位置している。このとき、電子放出点7とグリッド6との間の距離dは0.1mmである。また、グリッド6は、図1に示すように、一部がステム1aに封着された第2のリード線12を介して口金2の底部の外側に設けられた他方のピン端子10に電気的に接続されている。
容器1の内面のうち、口金2で覆われていない部分全体には、例えば酸化インジウム等の透明導電膜からなるコレクタ電極13が形成されている。このようにコレクタ電極13として透明導電膜を用いることにより、容器1内で生成された光を容器1の外部に取り出すことができる。また、このコレクタ電極13は、一部がステム1aに封着された第3のリード線14を介して口金2の側面に設けられた側面端子15に電気的に接続されている。電子放出点7とコレクタ電極13との間の最短距離Dは2mmである。
なお、各リード線8,12,14は材質の異なる複数の線をそれぞれ接合し一体化したものを用いているが、それぞれ一本の線からなってもよい。
このコレクタ電極13の表面には、塗布密度が4.3mg/cm2、塗布面積が8.1cm2になるよう、例えば赤、緑、青の3種混合蛍光体16が塗布されている。一例として、赤色の蛍光体としてY23:Eu3+が、緑色の蛍光体としてZn2S:Mn2+が、青色の蛍光体としてBaMgAl1017:Eu2+がそれぞれ挙げられる。このようにコレクタ電極の表面に蛍光体16を塗布することにより、電子放出点7から放出された電子を蛍光体16へ向けて加速飛行させることができるので、脱励起放射の紫外線を効率よく蛍光発光をさせることができる。
また、容器1内には、気体、例えばキセノンガスが室温状態で230Pa封入されている。
次に、このような発光管の動作原理について説明する。
電子放出源3の電子放出点7を陰極、コレクタ電極13を陽極として、電子放出点7とコレクタ電極13との間には2つの電源17,18が接続されており、コレクタ電極13に駆動電圧VCが印加される。また、グリッド6と電子放出点7との間には数10MΩの抵抗19を介して電源17が接続されており、グリッド6にグリッド電圧VGが印加される。一例として、駆動電圧VCを50V、グリッド電圧VGを18Vとした。
まず、二つの電源17,18が投入されると、グリッド6と電子放出点7との間(電位差:グリッド電圧VG)、およびグリッド6とコレクタ電極13との間(電位差:駆動電圧VC−グリッド電圧VG)にはそれぞれ電界が形成される。
そして、電子放出源3の電子放出点7からは、局所的に106V/m〜107V/mの電界を得て電子が放出される。放出された電子は、グリッド6方向に飛行する過程で平均的に8.45eV(キセノン原子の励起エネルギー)を越えるエネルギーを獲得し、その後、コレクタ電極13に向かう途中でキセノン原子に励起衝突する。この励起衝突によってキセノン原子は紫外線(波長147nm)を放射する。この紫外線は蛍光体16によって可視光に変換される。変換された可視光は容器1の外部に放射され、発光管は発光する。そして、電子放出源3からの連続的な電子放出により、発光管は点灯状態を継続することができる。
上記点灯条件(駆動電圧50V、グリッド電圧18V、入力電力500mW)で点灯させた場合の発光管の発光効率は3.5lm/Wであった。これは、電子放出点7とコレクタ電極13との間の最短距離D(電極間の距離)が2mm程度と短い発光管にあってはかなり高い発光効率である。
ここで、このように高い発光効率が得られた理由について検討した。
封入されたキセノンガスの励起断面積を、その気体分子直径(4.85×10-10m:電気学会、放電ハンドブック改定新版、昭和62年、P.7)から1.85×10-192(実際には電子エネルギーに依存して変化する)と見積もると、そのキセノンガス中における電子の平均自由行程λ(m)は、気体の温度をT(K)、気体の封入圧をP(Pa)とした場合、(7.5×10-5)×(T/P)で表される。
キセノンガスの温度Tを320Kとすると、その封入圧Pは230Paであるから、キセノンガス中における電子の平均自由行程λはおよそ0.104 mmになる。
したがって、電子放出点7から放出された電子は、電界方向に加速されてグリッド6の付近までほとんど衝突することなく飛行し、平均して約15eVの電子エネルギーを獲得する。その後、コレクタ電極13の方向へ飛行を継続しようとしたところでキセノン原子に励起衝突するが、この間、グリッド電圧VGがキセノンガスの自続放電開始電圧よりも低いためにキセノンガス自体は放電しない。つまり、放出された電子が獲得した電子エネルギーは、蛍光発光に寄与しない放電維持のための電子の弾性衝突エネルギーや電離衝突エネルギーに費やされることはなく、専らキセノン原子の紫外線放射のための励起に費やされることになる。
このように蛍光発光は、放電ではなく電子放出源3の間断のない電子の放出によって連続的に行われるので、その電子温度分布がマクスウェル分布のような広がりは有さず、その結果、極めて高い発光効率を実現することができたと考えられる。また、電子放出源3の印加電圧を休止期間の短いパルス間欠印加とすることにより、電子温度のマクスウェル分布の依存性を一層遠ざけることができ、一層発光効率の高い連続発光を得ることができる。
しかも、キセノンガス中を飛行する電子の平均自由行程λが電子放出点7とグリッド6との間の距離(d=0.1mm)よりも長く、かつ電子放出点7とコレクタ電極13との間の最短距離(D=2.0mm)よりも短いので、飛行する電子がコレクタ電極13に入射する前にキセノン原子に励起衝突する確率を高めることができるので、極めて高い発光効率を確実に実現することができる。
以上のような実験パラメータを種々変えることにより、飛行する電子がコレクタ電極13に入射する前にキセノン原子に励起衝突する確率を一層高め、極めて高い発光効率を一層確実に実現するために、電子放出点7とコレクタ電極13との間の最短距離Dは、電子放出点7とグリッド6との間の距離dの1倍以上20倍以下であることが好ましいことがわかった。
以上のように本発明の第1の実施の形態にかかる発光管の構成によれば、グリッド電圧VGをコレクタ電極13への印加電圧(駆動電圧VC)より小さくするとともに、キセノンガスが紫外線を放射するための励起準位電圧より高くし、かつキセノンガスの自続放電開始電圧より低い範囲に規定されているので、キセノンガス自体は放電させないようにさせつつ、電子放出源3から放出された電子がキセノン原子に衝突するまでの間にその原子を紫外線放射レベルまで励起させるのに十分な電子エネルギーを獲得する確率を高めることができる。その結果、マクスウェル分布によらない電子温度で、放出された電子をキセノン原子に励起衝突させることができる、つまり放出された電子が獲得した電子エネルギーを、蛍光発光に寄与しない放電維持のための電子の弾性衝突エネルギーや電離衝突エネルギーに費やすことなく、専らキセノン原子の紫外線放射のための励起に費やすことができる。しかも、キセノンガス中を飛行する電子の平均自由行程λが電子放出点7とグリッド6との間の距離dよりも長く、かつ電子放出点7とコレクタ電極13との間の最短距離Dよりも短いので、飛行する電子がコレクタ電極13に入射する前にキセノン原子に励起衝突する確率を高めることができる。したがって、極めて高い発光効率を確実に実現することができる。
また、特に、電子放出源3として、鉄表面へのカリウム吸着界面を有する電界放出構造物を用いているため、平面加工プロセスを必要とせず、その結果、容器1の外形形状を平面形以外の形状、例えば円柱形を容易に作製することができる。したがって、平面形はもとより、形状に対する設計自由度を高くすることができる。
なお、上記実施の形態では、電子放出源3として、鉄表面へのカリウム吸着界面を有する電界放出構造物を用いた場合について説明したが、例えばセシウム吸着系の金属界面を有する電界放出構造物やカーボンナノチューブのエミッタを有する電界放出構造物を用いた場合でも上記と同様の作用効果を得ることができる。電子放出源として、セシウム吸着系の金属界面を有する電界放出構造物を用いた場合、鉄表面へのカリウム吸着界面を有する電界放出構造物を用いた場合と同様に、平面形以外の形状に対する設計自由度を高くすることができる。
また、上記実施の形態では、気体としてキセノンガスを用いた場合について説明したが、キセノンガス以外に例えばアルゴンガス等の希ガス、またはこれら希ガスと水銀とを組み合わせたものであっても、上記と同様の作用効果を得ることができる。特に、アルゴンガスと水銀とを組み合わせた場合、より低電圧駆動が可能となり、省電力化と電源設計の容易化とを実現することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態である平面発光パネルは、発光面がフラットであり、図3に示すように、発光面の幅が40mm、発光面の長さが50mmである容器20を備えている。
この容器20は、発光面を形成する例えばガラス等の透光性材料からなる平面板21と、背面を形成する断面が凹状の例えばガラスからなる背面容器22とが重ね合わせられて、それぞれの外周辺をガラスフリット(図示せず)等によって気密封着されて形成されている。
平面板21の内面には、マトリックスに配列された複数のストライプ状の例えば酸化インジウム等の透明導電膜からなるコレクタ電極(陽極)23が形成されている。
このコレクタ電極23の表面には、塗布密度が4.3mg/cm2、塗布面積が20cm2になるよう、例えば赤、緑、青の3種混合蛍光体24が塗布されている。
背面容器22の内面には、電子放出源25が形成されている。
この電子放出源25は、電界放出構造物からなり、背面容器22の底面に形成され、かつ表面に複数のエミッタ26が等間隔に配置されたシリコン基板からなる陰極27と、この陰極27の表面上で、かつ各エミッタ26の間に位置するよう、例えば酸化シリコン膜からなる絶縁層28を介して配置されたグリッド29とを有している。
エミッタ26は、容器20の内側に向かって突出した突起状のカーボンナノチューブからなり、その先端が電子放出点30となる。コレクタ電極23と電子放出点30との間の最短距離Dは2mmであり、グリッド29と電子放出点30との間の距離dは0.1mmである。
グリッド29は、その材質がSUS304からなり、複数の孔29aを有している。
容器20内には、希ガス、または希ガスおよび水銀からなる気体、例えばキセノンガス単体が室温状態で230Pa封入されている。
次に、このような平面発光パネルの動作原理について説明する。
コレクタ電極23と電子放出点30との間には2つの電源17,18が接続されており、コレクタ電極23に駆動電圧VCが印加される。また、グリッド29と電子放出点30との間には数10MΩの抵抗19を介して電源17が接続されており、グリッド29にグリッド電圧VGが印加される。一例として、駆動電圧VCを50V、グリッド電圧VGを18Vとした。
まず、二つの電源17,18が投入されると、グリッド29と電子放出点30との間(電位差:グリッド電圧VG)、およびコレクタ電極23とグリッド29との間(電位差:駆動電圧VC−グリッド電圧VG)にはそれぞれ電界が形成される。
そして、電子放出源25の電子放出点30からは、局所的に106V/m〜107V/mの電界を得て電子が放出される。放出された電子は、グリッド29方向に飛行する過程で平均的に8.45eV(キセノン原子の励起エネルギー)を越えるエネルギーを獲得し、その後、コレクタ電極23に向かう途中でキセノン原子に励起衝突する。この励起衝突によってキセノン原子は紫外線(波長147nm)を放射する。この紫外線は蛍光体24によって可視光に変換される。変換された可視光は容器20の外部に放射され、平面発光パネルは発光する。電子放出源25からの連続的な電子放出により、平面発光パネルは点灯状態を継続することができる。
上記点灯条件(駆動電圧50V、グリッド電圧18V、入力電力500mW)で点灯させた場合の平面発光パネルの発光効率は3.5lm/Wであった。
以上のように本発明の第2の実施の形態にかかる平面発光パネルの構成によれば、グリッド電圧VGをコレクタ電極23への印加電圧(駆動電圧VC)より小さくするとともに、キセノンガスが紫外線を放射するための励起準位電圧より高くし、かつキセノンガスの自続放電開始電圧より低い範囲に規定されているので、キセノンガス自体は放電させないようにさせつつ、電子放出源25から放出された電子がキセノン原子に衝突するまでの間にその原子を紫外線放射レベルまで励起させるのに十分な電子エネルギーを獲得する確率を高めることができる。その結果、マクスウェル分布によらない電子温度で、放出された電子をキセノン原子に励起衝突させることができる、つまり放出された電子が獲得した電子エネルギーを、蛍光発光に寄与しない放電維持のための電子の弾性衝突エネルギーや電離衝突エネルギーに費やすことなく、専らキセノン原子の紫外線放射のための励起に費やすことができる。しかも、キセノンガス中を飛行する電子の平均自由行程λが電子放出点30とグリッド29との間の距離dよりも長く、かつ電子放出点30とコレクタ電極23との間の最短距離Dよりも短いので、飛行する電子がコレクタ電極23に入射する前にキセノン原子に励起衝突する確率を高めることができる。したがって、極めて高い発光効率を確実に実現することができる。
また、このような平面発光パネルに映像信号ドライブ回路(図示せず)に接続することにより、極めて高い発光効率を確実に実現することができる映像表示素子を提供することができる。
なお、上記実施の形態では、電子放出源25のエミッタ26としてカーボンナノチューブを用いた場合について説明したが、これ以外にダイヤモンド薄膜やダイヤモンドライクカーボン(DLC)等のエミッタを用いた場合でも上記と同様の作用効果を得ることができる。
また、上記実施の形態では、電子放出源25として、カーボンナノチューブのエミッタを有する電界放出構造物を用いた場合について説明したが、例えばセシウム吸着系の金属界面を有する電界放出構造物や鉄表面へのカリウム吸着界面を有する電界放出構造物を用いた場合でも上記と同様の作用効果を得ることができる。
本発明の発光管、平面発光パネル、および画像表示素子は、容器内に、電子放出源と、この電子放出源から放出された電子を電界によって加速飛行させるためのコレクタ電極とが設けられ、かつ飛行中の前記電子との衝突によって紫外線を放射する気体が封入されているとともに、前記容器の内面には前記紫外線を可視光に変換する蛍光体が塗布されており、前記電子放出源はグリッドを有する電界放出構造物からなり、そのグリッド電圧は前記コレクタ電極への印加電圧より小さいとともに、前記気体が紫外線を放射するための励起準位電圧より高く、かつ前記気体の自続放電開始電圧より低い範囲に規定されており、前記気体中を飛行する前記電子の平均自由行程λは前記電子放出源の電子放出点と前記グリッドとの間の距離dよりも長く、かつ前記電子放出点と前記コレクタ電極との間の最短距離Dよりも短いという構成を有するものであって、極めて高い発光効率を確実に実現することが必要な用途にも適用することができる。
本発明の第1の実施の形態である発光管の一部切欠正面図 (a)同じく発光管に用いられている電子放出源の平面図、(b)同じく発光管に用いられている電子放出源の一部切欠正面図 本発明の第2の実施の形態である平面発光パネルの正面図
符号の説明
1,20 容器
1a ステム
2 口金
3,25 電子放出源
4 鉄線
5 ガラスビード
6,29 グリッド
7,30 電子放出点
8,12,14 リード線
9,10 ピン端子
11,29a 孔
13,23 コレクタ電極
15 側面端子
16,24 蛍光体
17,18 電源
19 抵抗
21 平面板
22 背面容器
26 エミッタ
27 陰極
28 絶縁層

Claims (9)

  1. 容器内に、電子放出源と、この電子放出源から放出された電子を電界によって加速飛行させるためのコレクタ電極とが設けられ、かつ飛行中の前記電子との衝突によって紫外線を放射する気体が封入されており、前記容器の内面には前記紫外線を可視光に変換する蛍光体が塗布されている発光管であって、前記電子放出源はグリッドを有する電界放出構造物からなり、そのグリッド電圧は前記コレクタ電極への印加電圧より小さいとともに、前記気体が紫外線を放射するための励起準位電圧より高く、かつ前記気体の自続放電開始電圧より低い範囲に規定されており、前記気体中を飛行する前記電子の平均自由行程λは前記電子放出源の電子放出点と前記グリッドとの間の距離dよりも長く、かつ前記電子放出点と前記コレクタ電極との間の最短距離Dよりも短いことを特徴とする発光管。
  2. 前記気体は、希ガス、または希ガスおよび水銀からなることを特徴とする請求項1記載の発光管。
  3. 前記コレクタ電極は、透明導電膜からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発光管。
  4. 前記電子放出点と前記コレクタ電極との間の最短距離Dは、前記電子放出点と前記グリッドとの間の距離dの1倍以上20倍以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発光管。
  5. 前記電子放出源は、カーボンナノチューブのエミッタを有する電界放出構造物からなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発光管。
  6. 前記電子放出源は、鉄表面へのカリウム吸着界面を有する電界放出構造物からなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発光管。
  7. 前記電子放出源は、セシウム吸着系の金属界面を有する電界放出構造物からなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発光管。
  8. 容器内に、電子放出源と、この電子放出源から放出された電子を電界によって加速飛行させるためのコレクタ電極とが設けられ、かつ飛行中の前記電子との衝突によって紫外線を放射する気体が封入されており、前記容器の内面には前記紫外線を可視光に変換する蛍光体が塗布されている平面発光パネルであって、前記電子放出源はグリッドを有する電界放出構造物からなり、そのグリッド電圧は前記コレクタ電極への印加電圧より小さいとともに、前記気体が紫外線を放射するための励起準位電圧より高く、かつ前記気体の自続放電開始電圧より低い範囲に規定されており、前記気体中を飛行する前記電子の平均自由行程λは前記電子放出源の電子放出点と前記グリッドとの間の距離dよりも長く、かつ前記電子放出点と前記コレクタ電極との間の最短距離Dよりも短いことを特徴とする平面発光パネル。
  9. 請求項8に記載された平面発光パネルを用いたことを特徴とする画像表示素子。
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