JP2005020951A - 超音波モータ及び超音波モータを備えた位置決め装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】定在波型の超音波モータにおいて、振動体が生じる摩擦駆動力の微視的変動を低減して、制御応答性を向上させる。
【解決手段】超音波モータ10の振動部24は、1個の振動体14と、振動体14に取り付けられる2対の励振素子16とを備える。制御部22は、2対の励振素子16のうち、各対を成す2個の励振素子16が、振動体14の駆動面12に楕円運動を生起する互いに位相の異なる高周波変位動作を生じるとともに、全ての励振素子16の高周波変位動作の位相が、互いに規則的にずれた状態になるように、それら2対の励振素子16を制御する。具体的には、第m番目(m=1又は2)の対を成す2個の励振素子16に対し、それぞれV=αsin{ωt−(m−1)π}、V=αcos{ωt−(m−1)π}の駆動電圧を印加する制御を遂行する。
【選択図】 図1
【解決手段】超音波モータ10の振動部24は、1個の振動体14と、振動体14に取り付けられる2対の励振素子16とを備える。制御部22は、2対の励振素子16のうち、各対を成す2個の励振素子16が、振動体14の駆動面12に楕円運動を生起する互いに位相の異なる高周波変位動作を生じるとともに、全ての励振素子16の高周波変位動作の位相が、互いに規則的にずれた状態になるように、それら2対の励振素子16を制御する。具体的には、第m番目(m=1又は2)の対を成す2個の励振素子16に対し、それぞれV=αsin{ωt−(m−1)π}、V=αcos{ωt−(m−1)π}の駆動電圧を印加する制御を遂行する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波モータに関する。さらに本発明は、超音波モータを備えた位置決め装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
振動体の超音波振動を用いて摩擦駆動力を生成する超音波モータは、近年、特に小型精密機器の分野で、様々な被駆動要素を直線又は回転駆動する小型アクチュエータとして広く利用されている。一般に超音波モータは、駆動面を有する振動体と、振動体を励振する励振素子と、振動体の駆動面に当接配置され、振動体の振動に応じて振動体に対し一方向へ移動する可動体(被駆動体)とを備えて構成される。振動体は通常、金属、セラミックス等の硬質の弾性体から作製され、また励振素子は通常、圧電セラミックス等の圧電素子から作製される。さらに超音波モータでは、振動体と可動体との間で効率良く摩擦駆動力を発生させるために、振動体の駆動面を所定圧力下で可動体の表面に押し付ける予圧構造が設けられる。
【0003】
この種の超音波モータにおいて、所望端面が駆動面として作用する短棒状の振動体と、振動体の駆動面以外の面に適宜配置で接合される複数の圧電素子とを備え、個々の圧電素子を所定位相差で変位動作させることにより、摩擦駆動力を発揮するための楕円運動を駆動面に生起させる構成を有した定在波型の超音波モータが知られている。この形式の超音波モータとしては従来、それぞれの一端に駆動面を有する1対の柱状脚部とそれら柱状脚部の他端同士を接続する梁状胴部とを有した門形の振動体を備え、振動体の両脚部と胴部との接続領域に形成される互いに略直交する1対の傾斜肩面に、2つの圧電素子をそれぞれ近傍の駆動面に対し45°の角度を成すように接合したもの(いわゆるπ形:例えば特許文献1参照)と、一端に駆動面を有するとともに他端に互いに略直交する1対の傾斜肩面を有する柱形の振動体を備え、それら傾斜肩面に2つの圧電素子をそれぞれ駆動面に対し45°の角度を成すように接合したもの(いわゆるY形:例えば特許文献2参照)とが提唱されている。
【特許文献1】
特開平6−284755号公報
【特許文献2】
実開平2−136485号公報
【0004】
また、上記特許文献1は、XYステージに用いられる直動案内(位置決め)装置の駆動部に、上記したπ形の超音波モータを組み込んだ構成を開示する。この案内装置では、リニアガイドを介して直線往復動作可能に組み合わされる1対の基台の一方に、超音波モータの振動体及び圧電素子が固定的に設置されるとともに、他方の基台が、振動体の駆動面に当接される表面を有する可動体を構成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述した短棒状の振動体を有する定在波型の超音波モータでは、振動体の駆動面に生起される周期的な楕円運動(円運動及び直線運動を含む)が、摩擦力を介して局所的に可動体に伝達されることにより、楕円運動の方向に対応する方向へ可動体が相対移動する。したがって微視的には、振動体の駆動面と可動体表面との間に摩擦駆動力を実質的に生じない時間が周期的に存在する。また、摩擦駆動力は、振動体の駆動面を可動体表面に押し付ける予圧力に依存し、負荷の慣性の影響を実質的に受けない。その結果、可動体の移動速度が微視的には不安定になっており、このことが、可動体の位置決め精度等の制御応答性に限界をもたらす要因となっている。さらに、可動体に、移動方向とは反対方向への制動作用が及ぼされている場合には、摩擦駆動力が減少する周期的微小時間に、可動体が制動作用により押し戻される傾向があり、結果として出力及び移動速度が低下することが懸念される。
【0006】
また、上記定在波型の超音波モータを搭載した従来の単軸や多軸のステージ等の案内/位置決め装置では、従来の超音波モータに内在していた上記諸課題に伴い、ステージの位置決め精度の限界や、ステージの出力及び移動速度の低下等の問題が生じていた。
【0007】
本発明の目的は、定在波型の超音波モータにおいて、振動体が生じる摩擦駆動力の微視的変動を低減することにより、制御応答性を向上させることができるとともに、可動体への制動作用に抗して出力及び移動速度を維持できる超音波モータを提供することにある。
本発明の他の目的は、駆動部に超音波モータを採用した位置決め装置において、ステージの位置決め精度、出力及び移動速度を向上させることができる位置決め装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、駆動面を有する振動体を備える振動部と、振動体の超音波振動を制御する制御部とを具備する超音波モータにおいて、振動部は、少なくとも1個の振動体と、少なくとも1個の振動体に取り付けられて、振動体を励振する複数対の励振素子とを備え、制御部は、複数対の励振素子のうち、各対を成す2個の励振素子が、振動体の駆動面に楕円運動を生起する互いに位相の異なる高周波変位動作を生じるとともに、全ての励振素子の高周波変位動作の位相が、互いに規則的にずれた状態になるように、複数対の励振素子を制御すること、を特徴とする超音波モータを提供する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波モータにおいて、振動部が、1個の振動体と、1個の振動体に取り付けられる複数対の励振素子とを備える超音波モータを提供する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の超音波モータにおいて、振動部が、複数の振動体と、それら振動体の各々に1対ずつ取り付けられる複数対の励振素子とを備える超音波モータを提供する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波モータを備えた位置決め装置を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1及び図2は、本発明の一実施形態による超音波モータ10を概略で示す。超音波モータ10は、駆動面12を有する振動体14と、振動体14を励振する励振素子16と、振動体14の駆動面12に当接配置され、振動体14の振動に応じて振動体14に対し移動する可動体18と、駆動面12を可動体18に押し付けた状態で振動体14を支持する押圧支持構造20と、振動体14の超音波振動を制御する制御部22とを備えて構成される。振動体14と励振素子16とは、超音波モータ10の振動部24を構成する。
【0013】
振動部24は、1個の振動体14と、振動体14に取り付けられる2対の励振素子16とを備える。振動体14は、短棒状(角柱形又は薄板形)の形態を有し、所望の一端面に平坦な駆動面12を備えるとともに、駆動面12から離れた他端側に、互いに略直交する方向へ平坦に延設される1対の傾斜肩面26と、それら肩面26の間で外方へ突設される支承部28とを備える。振動体14の駆動面12は、好ましくは図示のように、振動体14の一端面に固着された炭素繊維強化プラスチック等からなる摩擦材料30によって形成される。摩擦材料30は、振動体14の超音波振動による摩擦駆動力の発生効率を向上させるとともに、駆動面12及び可動体18の表面の寿命を向上させる効果を奏する。
【0014】
振動体14は、図1の正面視及び図2の側面視の双方で、一端の駆動面12の中心と他端の支承部28の中心とを通る軸線14a、14bに関して線対称の形状を有する。両肩面26は、いずれも駆動面12に対し略45°の角度を成して、軸線14aに関し左右対称に配置される。支承部28は、振動体14の本体部分14c(超音波が伝搬する部分)よりも薄い厚み(図1紙面に直交する方向への寸法)を有して本体部分14cから延長され、その末端に軸線14a方向へ延びる雌ねじ28aが凹設される。このような構成を有する振動体14は、アルミニウム、チタン、銅、鉄系金属等の金属材料や、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、これらの複合物等のセラミックスといった、硬質の弾性体から一体的に作製される。
【0015】
2対の励振素子16の各々は、振動体14の各肩面26に接合される圧電素子16からなる。各圧電素子16は、圧電セラミックス等の薄板状圧電材料を積層してなる角柱(薄板)状の形態を有し、積層方向一端面を振動体14の肩面26に密着させて、例えば接着剤により肩面26に強固に接合される。振動体14の各肩面26には、2個の圧電素子16が互いに離間して、振動体厚み方向へ位置的に重畳かつ整合して配置され、両肩面26上で2個ずつの圧電素子16が、軸線14aに関し対称位置に配置される。対称位置にある各1対の(すなわち制御上で対を成す)圧電素子16は、それぞれの積層方向へ延びる中心線16aがいずれも駆動面12に対し略45°の角度を成して配置される。対を成す2個の圧電素子16には、制御部22を含む制御回路を介して正弦波電圧がそれぞれに所定(例えば90°)の位相差で印加され、それによる両圧電素子16の差動的な変位動作が振動体14を励振して、摩擦駆動力を発揮するためのいわゆる楕円運動を駆動面12に生起させる。
【0016】
なお、各圧電素子16は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)からなる薄板状圧電材料の積層体から構成することが、低電圧で大駆動力を得る点で有利である。また、各圧電素子16を振動体14に接合する接着剤としては、十分な接着力が得られるものであれば特に限定されないが、例えばガラスフィラー入りの熱硬化型エポキシ接着剤を使用することができる。
【0017】
可動体18は、金属、樹脂等の硬質材料からなり、図示しない案内支持構造を介して、超音波モータ10の図示しない機台(又は外部構造体)上に所定方向へ移動可能に支持される。可動体18は、その所定表面領域32で、振動体14の駆動面12に所定圧力下で接触して配置され、振動体14の駆動面12に生起された楕円運動の方向に応じて、接触面間の摩擦力により一方向(図示矢印)へ移動する。可動体18の移動方向及び移動速度は、上記した1対の励振素子(圧電素子)16に印加する正弦波電圧の位相及び周波数制御により制御できる。
【0018】
なお可動体18は、案内支持構造の構成に応じて、直動及び回動のいずれかの出力動作を遂行できる。また、振動体14と可動体18との移動関係は相対的なものであり、可動体18が構造体上で固定されていた場合には、振動体14が押圧支持構造20と共に可動体18に対して移動する。さらに、振動体14の駆動面12を形成する摩擦材料30は、それに加えて又はその代わりに、可動体18の表面領域32に設置することもできる。
【0019】
上記した振動体14と励振素子16とを含む駆動部24及び可動体18の構成は、いわゆるY形の超音波モータにおいて採用されている構成に類似しているものであり、対を成す励振素子16の位相を反転することにより、可動体18の駆動方向を切り換えることができる。なお、本発明に係る駆動部及び制御部の構成は、このようなY形モータ構造に限らず、π形や他の種々のモータ構造に適用できるものである。
【0020】
押圧支持構造20は、基材34と、基材34と振動体14との間に配置され、振動体14を基材34上で支持しつつ駆動面12を可動体18に押し付けるばね力を発揮する支持ばね部材36と、支持ばね部材36のばね力を調整する予圧調整機構38とを備える。支持ばね部材36は、両端の取付部40及びそれら取付部40の間に位置する中間固定部42を有する板状組立体である。支持ばね部材36は、中間固定部42で振動体14に固定的に連結されるとともに、両取付部40で与圧調整機構38を介して基材34に取り付けられる。その状態で支持ばね部材36は、振動体14の駆動面12を可動体18の表面領域32に押し付けるばね力を発揮する。
【0021】
基材34は、矩形薄板状の主部44と、主部44の略平坦な一表面44a上でその矩形輪郭の一外縁44bに沿って互いに離間配置される角柱状の1対の取付基部46とを備える。主部44及び取付基部46は、金属、樹脂等の硬質材料からなり、両者が互いに一体に成形されるか、或いはボルト等によって互いに固定的に連結される。各取付基部46には、支持ばね部材36を取り付けるための雌ねじ46aが、主部44の表面44aに略平行な方向へ凹設される。なお、基材34の主部44は、前述した可動体18を可動支持する超音波モータ10の図示しない機台(又は外部構造体)に、固定的に連結することができる。
【0022】
支持ばね部材36は、中間固定部42を含む板ばね要素48と、それぞれに取付部40を含む1対の剛性支持要素50とを組み合わせて構成される。板ばね要素48は、平板状の金属板、樹脂板等のばね材からなり、長手方向中央の中間固定部42にボルト挿通孔48aが、また長手方向両端にボルト挿通孔48bが、それぞれ板厚方向(紙面に平行な方向)へ貫通形成される。一対の剛性支持要素50は、図1の正面視で互いに同一の略S字のクランク状外形に成形された金属板、樹脂板等の硬質材からなり、各々の一端の取付部40にボルト挿通孔50aが、かつ他端に雌ねじ50bが、それぞれ板厚方向(紙面に平行な方向)へ貫通形成される。
【0023】
支持ばね部材36は、板ばね要素48の両端に、取付部40を外側(相互離反側)に向けた両剛性支持要素50の他端を重ねて配置し、個々のボルト挿通孔48bに挿通したボルト52を雌ねじ50bに螺着して両要素48、50を相互に連結することにより、中間固定部42を中心として対称な基準組立体の形態を呈する。そして支持ばね部材36は、板ばね要素48の中間固定部42のボルト挿通孔48aに挿通したボルト54を、振動体14の支承部28に形成した雌ねじ28aに螺着することにより、振動体14に固定される。後述するように超音波モータ10を適正に組み立てたときに、板ばね要素48は、無負荷状態で、振動体14の軸線14aに直交する方向へ延設される。
【0024】
予圧調整機構38は、支持ばね部材36の両取付部40と基材34の両取付基部46との間にそれぞれ介在する一対の調整ばね56と、調整ばね56を介して支持ばね部材36の両取付部40を対応の取付基部46に取り付ける一対の取付ボルト58とを備える。一対の調整ばね56は、図1の正面視で互いに同一の略U字の外形に曲成された金属板、樹脂板等のばね材からなり、各々のU字の両腕部分の対応箇所にボルト挿通孔56aが、それぞれ板厚方向(紙面に平行な方向)へ貫通形成される。それら調整ばね56は、U字の中央部分を内側(相互対向側)に向けて、基材34の両取付基部46にそれぞれ載置される。その状態で、各取付ボルト58を、支持ばね部材36の各取付部40のボルト挿通孔50aと、対応の調整ばね56のボルト挿通孔56aとに、連続的に挿通して、対応の取付基部46の雌ねじ46aに螺着することにより、支持ばね部材36が基材34に取り付けられる。予圧調整機構38は、個々の取付ボルト58の締付けトルクを調整することにより、支持ばね部材36の板ばね要素48が発揮する予圧の調整を遂行する。
【0025】
超音波モータ10の上記構成要素群は、以下のようにして組み立てられる。
基材34は、その主部44の外縁44bが可動体18の表面領域32に非接触に近接して位置するように、可動体18の近傍に設置される。また、2対の圧電素子16を両肩面26に接合した振動体14は、基材34の両取付基部46の略中間位置で、駆動面12を表面領域32に当接させて可動体18上に搭載される。支持ばね部材36は、前述した基準組立体の形態で、ボルト54により中間固定部42を振動体14の支承部28に固定するとともに、両端の取付部40を、前述したように予圧調整機構38を介して、基材34の両取付基部46に取り付ける。
【0026】
ここで、1対の取付ボルト58を個々に調整ばね56の付勢に抗して適当なトルクで締め込むことにより、それら取付ボルト58から対応の取付部40に適当な圧力を負荷しつつ、基材34に対する両取付部40の取付位置を、可動体18に接近する方向へ変位させる。それにより、中間固定部42を支点として支持ばね部材36の板ばね要素48を撓ませて、板ばね要素48に中間固定部42を中心に平衡したばね力を発揮させる。このようにして、振動体14の駆動面12が、支持ばね部材36の予調整されたばね力による適当な接触圧力下で、可動体18の表面領域32に当接され、以って超音波モータ10の組み立てが完了する。
【0027】
本発明の特徴的構成として、超音波モータ10の制御部22は、2対の励振素子16のうち、各対を成す2個の励振素子16が、振動体14の駆動面12に楕円運動を生起する互いに位相の異なる高周波変位動作を生じるとともに、全ての励振素子16の高周波変位動作の位相が、互いに規則的にずれた状態になるように、それら2対の励振素子16を制御するように構成される。具体的には、一方の対を成す2個の励振素子16(1a)、16(1b)に対し、制御部22は、下記の駆動電圧を印加する制御を遂行する。
励振素子16(1a)の駆動電圧V=αsinωt
励振素子16(1b)の駆動電圧V=αcosωt
(ただし、αは最大駆動電圧、ωは駆動角速度)
これら駆動電圧により生じた各励振素子16(1a)、16(1b)の差動的変位動作により、振動体14に合成超音波振動が励起され、その結果として駆動面12に楕円運動が生起される。なお、駆動面12を詳細に分析すると、軸線14aの位置では正円運動が生じ、軸線14aから離れた位置では楕円運動が生じている。
【0028】
さらに制御部22は、他方の対を成す2個の励振素子16(2a)、16(2b)に対し、下記の駆動電圧を印加する制御を遂行する。
励振素子16(2a)の駆動電圧V=αsin(ωt−π)
励振素子16(2b)の駆動電圧V=αcos(ωt−π)
これにより、振動体14の駆動面12には、前述した1対目の励振素子16(1a)、16(1b)による楕円運動から半波長分位相がずれた楕円運動が生起される。そして、2対全ての励振素子16に対して同時にこれら駆動電圧を印加すれば、振動体14の駆動面12には、互いに半波長だけ位相がずれた楕円運動が相補的かつ相乗的に相互作用しつつ生起される。その結果、振動体14の駆動面12と可動体18の表面領域32との間の摩擦駆動力の微視的周期変動は、一対の励振素子16のみを備えた超音波モータに比べて、変動間隔が短縮されると共に変動幅が削減されることになる。
【0029】
したがって、上記構成を有する超音波モータ10によれば、可動体18の移動速度を微視的にも安定化することができ、それにより、可動体18の位置決め精度等の制御応答性を著しく向上させることができる。また、可動体18に、移動方向とは反対方向への制動作用が及ぼされている場合にも、可動体18が制動作用により押し戻されることが回避され、出力及び移動速度を安定して維持することができる。
【0030】
上記した超音波モータ10の振動部24及び制御部22の構成は、対を成す励振素子16の数が増える程、振動体14の駆動面12による摩擦駆動力の微視的周期変動の低減効果が向上する。すなわち、駆動部24が、1個の振動体14と、振動体14の一対の肩面26に取り付けられる複数(n)対の励振素子16とを備える構成において、制御部22は、n対の励振素子16のうち、各対を成す2個の励振素子16が、振動体14の駆動面12に楕円運動を生起する互いに位相の異なる高周波変位動作を生じるとともに、全ての励振素子16の高周波変位動作の位相が、互いに規則的にずれた状態になるように、それらn対の励振素子16を制御するように構成される。このとき制御部22は、第m番目(1≦m≦n)の対を成す2個の励振素子16(ma)、16(mb)に対し、下記の駆動電圧を印加する制御を遂行する。
励振素子16(ma)の駆動電圧V=αsin{ωt−2π(m−1)/n}
励振素子16(mb)の駆動電圧V=αcos{ωt−2π(m−1)/n}
【0031】
これら駆動電圧をn対の励振素子16(ma)、16(mb)に同時に印加することにより、振動体14の駆動面12には、1/n波長ずつ位相がずれたn種類の楕円運動が相補的かつ相乗的に相互作用しつつ生起される。その結果、振動体14の駆動面12と可動体18の表面領域32との間の摩擦駆動力の微視的周期変動の削減効果が著しく向上する。なお、励振素子16の対数を増すほど、駆動部24の寸法が増加するので、要求される制御応答性と許容モータ寸法との両者を考慮して励振素子16の対数を選定すれば良い。
【0032】
図3及び図4は、上記した超音波モータ10を駆動部に採用した本発明の一実施形態による位置決め装置60を示す。位置決め装置60は、超音波モータ10の押圧支持構造20の基材34を含む第1の基台62と、超音波モータ10の可動体18を含む第2の基台64と、それら第1及び第2の基台62、64を相対移動可能に相互支持して互いに直線状に案内するリニアガイド66と、第1及び第2の基台62、64の相対位置を検出する位置検出機構68とを備えて構成される。
【0033】
第1の基台62は、矩形平板状の固定ベース部材であって、それ自体、押圧支持構造20の基材34を構成し、その一表面62aの所定位置に1対の取付基部46が立設される。これら取付基部46には、前述したように押圧支持構造20の支持ばね部材36(図1)及び予圧調整機構38(図1)を介して、超音波モータ10の振動部24が取り付けられる。第2の基台64は、矩形平板状の移動ステージ部材であって、それ自体、超音波モータ10の可動体18を構成する。第2の基台64は、可動体18の表面領域32を構成する平坦な側面64aと、側面64aに略直交する平坦なステージ面64bとを有する。なお、第1及び第2の基台62、64は、いずれも金属、樹脂等の高い剛性を有する材料から作製される。
【0034】
リニアガイド66は、例えばボールスライドから構成され、第1の基台62の略中央でその表面62aと第2の基台64の裏面64cとの間に設置されて、基台64を基台62上で所与の負荷の下で直線往復移動可能に円滑に案内する。位置検出機構68は、第1の基台62の表面62a上で、リニアガイド66を挟んで超音波モータ10の反対側に設置される例えば光学式の位置センサ70と、位置センサ70に非接触に対向して第2の基台64に設置されるリニアスケール72とを備える。位置センサ70は、信号線74を介して、超音波モータ10の制御部22に接続される。
【0035】
上記構成を有する位置決め装置60は、駆動部に超音波モータ10を採用したことにより、ステージとなる第2の基台64の移動速度を微視的にも安定化することができ、それにより、基台64の位置決め精度等の制御応答性を著しく向上させることができる。また、基台64に、移動方向とは反対方向への制動作用が及ぼされている場合にも、基台64の出力及び移動速度を安定して維持することができる。
【0036】
図5及び図6は、本発明の第2の実施形態による超音波モータ80及びそれを搭載した位置決め装置82を示す。超音波モータ80及び位置決め装置82は、振動部84の構成以外は、図1〜図4に示す超音波モータ10及び位置決め装置60と実質的同一の構成を有するので、対応する構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。
【0037】
超音波モータ80の振動部84は、2個の振動体86と、それら振動体86の各々に1対ずつ取り付けられる2対の励振素子88とを備える。各振動体86は、前述した超音波モータ10における振動体14を肉薄化した構成を有するものであり、したがって一端の平坦な駆動面90と、他端の互いに略直交する1対の傾斜肩面92と、それら肩面92の間に突設される支承部94とを備える。1対の励振素子(圧電素子)88の各々は、振動体86の各肩面92に接合される。対を成す2個の圧電素子88には、制御部22を含む制御回路を介して正弦波電圧がそれぞれに所定(例えば90°)の位相差で印加され、それによる両圧電素子88の差動的な変位動作が振動体86を励振して、摩擦駆動力を発揮するためのいわゆる楕円運動を駆動面90に生起させる。
【0038】
超音波モータ80は、2個の振動体86の駆動面90に当接配置され、それら振動体86の振動に応じて振動部84に対し移動する共通の可動体18を備える。2個の振動体86は、可動体18の移動方向に略平行な方向へ互いに離間して配置され、個々の振動体86がそれぞれの押圧支持構造20により、駆動面90を可動体18に押し付けた状態で安定して支持される。
【0039】
上記超音波モータ80を駆動部に採用した位置決め装置82は、押圧支持構造20の基材34を含む第1の基台62と、可動体18を含む第2の基台64と、それら第1及び第2の基台62、64を相対移動可能に相互支持して互いに直線状に案内するリニアガイド66と、第1及び第2の基台62、64の相対位置を検出する位置検出機構68とを備える。第1の基台62は、それ自体、個々の振動体86に関連する押圧支持構造20の共通の基材34を構成し、その一表面62aの所定位置に3個の取付基部46が立設される。これら取付基部46には、前述したように押圧支持構造20の支持ばね部材36(図1)及び予圧調整機構38(図1)を介して、超音波モータ80の振動部84が取り付けられる。
【0040】
超音波モータ80の制御部22は、前述した超音波モータ10の制御部22と同様に、個々の振動体86に接合された各1対の励振素子88が、各振動体86の駆動面90に楕円運動を生起する互いに位相の異なる高周波変位動作を生じるとともに、全ての励振素子88の高周波変位動作の位相が、互いに規則的にずれた状態になるように、2対の励振素子88を制御する。この構成において、制御部22の制御下で各対の励振素子88に印加される駆動電圧は、前述した超音波モータ10におけるものと同様である。超音波モータ80では、2対全ての励振素子88に対して同時にこれら駆動電圧を印加することにより、2個の振動体86の駆動面90に、互いに半波長だけ位相がずれた楕円運動が独立して生起される。
【0041】
上記した制御部22による駆動電圧制御の結果、2個の振動体86の駆動面90と、両振動体86に共通する可動体18の表面領域32(すなわち第2の基台64の側面64a)との間の摩擦駆動力の微視的周期変動は、2個の駆動面90の楕円運動の協働により、変動間隔が短縮されると共に変動幅が削減されることになる。このように、上記構成を有する超音波モータ80及びそれを搭載した位置決め装置82においても、前述した超音波モータ10及び位置決め装置60と同等の作用効果が奏されることは理解されよう。
【0042】
上記第2実施形態のように互いに独立した複数個の振動体を有する振動部は、それら振動体の相対配置を変更することにより、種々の変形形態による超音波モータ及び位置決め装置を構成することができる。例えば図7に示すように、それぞれに1対の励振素子88(図5)を接合した2個の振動体86を、可動体18(第2の基台64)の移動方向に交差又は略直交する方向へ互いに離間して配置した振動部84を構成できる。この場合、それら振動体86は、両者に共通する基材34(第1の基台62)に立設された1対の取付基部46に、それぞれの押圧支持構造20の支持ばね部材36(図1)及び予圧調整機構38(図1)を介して取り付けられる。このような構成を有する超音波モータ100及びそれを搭載した位置決め装置102においても、前述した超音波モータ10及び位置決め装置60と同等の作用効果が奏されることは理解されよう。さらにこの構成では、上記第2実施形態による超音波モータ80及び位置決め装置82に比べて、小型化が促進される。
【0043】
また、図8及び図9に示すように、それぞれに1対の励振素子88を接合した2個の振動体86を、可動体18(第2の基台64)を挟んで互いに異なる側に配置した振動部84を構成できる。この場合、それら振動体86は、両者に共通する基材34(第1の基台62)に立設された2対の取付基部46に、それぞれの押圧支持構造20の支持ばね部材36(図1)及び予圧調整機構38(図1)を介して取り付けられる。また、可動体18(第2の基台64)の両側に、各振動体86の駆動面90を当接する表面領域32(側面64a)が設けられる。このような構成を有する超音波モータ110及びそれを搭載した位置決め装置112においても、前述した超音波モータ10及び位置決め装置60と同等の作用効果が奏されることは理解されよう。
【0044】
なお、図8及び図9に示す位置決め装置112は、位置検出機構を備えないものである。これに対し、図10及び図11に示すように、位置検出機構68を設置した位置決め装置114を構成することもできる。この場合には、第2の基台64の一方の側面64aに長手方向へ隣接して、位置検出機構68のリニアスケール72が設置される。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は図示実施形態の構成に限定されず、特許請求の範囲の記載内でさらに他の様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、本発明に係る超音波モータの振動部及び制御部の特徴的構成は、超音波モータの分野で公知の、様々な形状の振動体や様々に配置した励振素子を有する構成に適用でき、同等の作用効果を奏するものである。また、本発明に係る位置決め装置の特徴的構成は、多軸の位置決め装置にも適用でき、同等の作用効果を奏するものである。
【0046】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、定在波型の超音波モータにおいて、振動体が生じる摩擦駆動力の微視的変動を低減することにより、制御応答性を向上させることができるとともに、可動体への制動作用に抗して出力及び移動速度を維持できるようになる。
さらに本発明によれば、駆動部に超音波モータを採用した位置決め装置において、ステージの位置決め精度、出力及び移動速度を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による超音波モータの正面図である。
【図2】図1の超音波モータの主要部を線II−IIに沿って示す一部断面側面図である。
【図3】図1の超音波モータを搭載した本発明の第1実施形態による位置決め装置の平面図である。
【図4】図3の位置決め装置の側面図である。
【図5】本発明の第2実施形態による超音波モータ及びそれを搭載した位置決め装置の平面図である。
【図6】図5の超音波モータ及び位置決め装置の側面図である。
【図7】変形例による超音波モータ及びそれを搭載した位置決め装置の平面図である。
【図8】他の変形例による超音波モータ及びそれを搭載した位置決め装置の平面図である。
【図9】図8の超音波モータ及び位置決め装置の側面図である。
【図10】さらに他の変形例による超音波モータ及びそれを搭載した位置決め装置の平面図である。
【図11】図10の超音波モータ及び位置決め装置の側面図である。
【符号の説明】
10…超音波モータ
12…駆動面
14…振動体
16…励振素子
18…可動体
20…押圧支持構造
22…制御部
24…振動部
30…摩擦材料
32…表面領域
34…基材
36…支持ばね部材
38…予圧調整機構
40…取付部
42…中間固定部
46…取付基部
56…調整ばね
58…取付ボルト
60…位置決め装置
62…第1の基台
64…第2の基台
66…リニアガイド
68…位置検出機構
70…位置センサ
72…リニアスケール
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波モータに関する。さらに本発明は、超音波モータを備えた位置決め装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
振動体の超音波振動を用いて摩擦駆動力を生成する超音波モータは、近年、特に小型精密機器の分野で、様々な被駆動要素を直線又は回転駆動する小型アクチュエータとして広く利用されている。一般に超音波モータは、駆動面を有する振動体と、振動体を励振する励振素子と、振動体の駆動面に当接配置され、振動体の振動に応じて振動体に対し一方向へ移動する可動体(被駆動体)とを備えて構成される。振動体は通常、金属、セラミックス等の硬質の弾性体から作製され、また励振素子は通常、圧電セラミックス等の圧電素子から作製される。さらに超音波モータでは、振動体と可動体との間で効率良く摩擦駆動力を発生させるために、振動体の駆動面を所定圧力下で可動体の表面に押し付ける予圧構造が設けられる。
【0003】
この種の超音波モータにおいて、所望端面が駆動面として作用する短棒状の振動体と、振動体の駆動面以外の面に適宜配置で接合される複数の圧電素子とを備え、個々の圧電素子を所定位相差で変位動作させることにより、摩擦駆動力を発揮するための楕円運動を駆動面に生起させる構成を有した定在波型の超音波モータが知られている。この形式の超音波モータとしては従来、それぞれの一端に駆動面を有する1対の柱状脚部とそれら柱状脚部の他端同士を接続する梁状胴部とを有した門形の振動体を備え、振動体の両脚部と胴部との接続領域に形成される互いに略直交する1対の傾斜肩面に、2つの圧電素子をそれぞれ近傍の駆動面に対し45°の角度を成すように接合したもの(いわゆるπ形:例えば特許文献1参照)と、一端に駆動面を有するとともに他端に互いに略直交する1対の傾斜肩面を有する柱形の振動体を備え、それら傾斜肩面に2つの圧電素子をそれぞれ駆動面に対し45°の角度を成すように接合したもの(いわゆるY形:例えば特許文献2参照)とが提唱されている。
【特許文献1】
特開平6−284755号公報
【特許文献2】
実開平2−136485号公報
【0004】
また、上記特許文献1は、XYステージに用いられる直動案内(位置決め)装置の駆動部に、上記したπ形の超音波モータを組み込んだ構成を開示する。この案内装置では、リニアガイドを介して直線往復動作可能に組み合わされる1対の基台の一方に、超音波モータの振動体及び圧電素子が固定的に設置されるとともに、他方の基台が、振動体の駆動面に当接される表面を有する可動体を構成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述した短棒状の振動体を有する定在波型の超音波モータでは、振動体の駆動面に生起される周期的な楕円運動(円運動及び直線運動を含む)が、摩擦力を介して局所的に可動体に伝達されることにより、楕円運動の方向に対応する方向へ可動体が相対移動する。したがって微視的には、振動体の駆動面と可動体表面との間に摩擦駆動力を実質的に生じない時間が周期的に存在する。また、摩擦駆動力は、振動体の駆動面を可動体表面に押し付ける予圧力に依存し、負荷の慣性の影響を実質的に受けない。その結果、可動体の移動速度が微視的には不安定になっており、このことが、可動体の位置決め精度等の制御応答性に限界をもたらす要因となっている。さらに、可動体に、移動方向とは反対方向への制動作用が及ぼされている場合には、摩擦駆動力が減少する周期的微小時間に、可動体が制動作用により押し戻される傾向があり、結果として出力及び移動速度が低下することが懸念される。
【0006】
また、上記定在波型の超音波モータを搭載した従来の単軸や多軸のステージ等の案内/位置決め装置では、従来の超音波モータに内在していた上記諸課題に伴い、ステージの位置決め精度の限界や、ステージの出力及び移動速度の低下等の問題が生じていた。
【0007】
本発明の目的は、定在波型の超音波モータにおいて、振動体が生じる摩擦駆動力の微視的変動を低減することにより、制御応答性を向上させることができるとともに、可動体への制動作用に抗して出力及び移動速度を維持できる超音波モータを提供することにある。
本発明の他の目的は、駆動部に超音波モータを採用した位置決め装置において、ステージの位置決め精度、出力及び移動速度を向上させることができる位置決め装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、駆動面を有する振動体を備える振動部と、振動体の超音波振動を制御する制御部とを具備する超音波モータにおいて、振動部は、少なくとも1個の振動体と、少なくとも1個の振動体に取り付けられて、振動体を励振する複数対の励振素子とを備え、制御部は、複数対の励振素子のうち、各対を成す2個の励振素子が、振動体の駆動面に楕円運動を生起する互いに位相の異なる高周波変位動作を生じるとともに、全ての励振素子の高周波変位動作の位相が、互いに規則的にずれた状態になるように、複数対の励振素子を制御すること、を特徴とする超音波モータを提供する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波モータにおいて、振動部が、1個の振動体と、1個の振動体に取り付けられる複数対の励振素子とを備える超音波モータを提供する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の超音波モータにおいて、振動部が、複数の振動体と、それら振動体の各々に1対ずつ取り付けられる複数対の励振素子とを備える超音波モータを提供する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波モータを備えた位置決め装置を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1及び図2は、本発明の一実施形態による超音波モータ10を概略で示す。超音波モータ10は、駆動面12を有する振動体14と、振動体14を励振する励振素子16と、振動体14の駆動面12に当接配置され、振動体14の振動に応じて振動体14に対し移動する可動体18と、駆動面12を可動体18に押し付けた状態で振動体14を支持する押圧支持構造20と、振動体14の超音波振動を制御する制御部22とを備えて構成される。振動体14と励振素子16とは、超音波モータ10の振動部24を構成する。
【0013】
振動部24は、1個の振動体14と、振動体14に取り付けられる2対の励振素子16とを備える。振動体14は、短棒状(角柱形又は薄板形)の形態を有し、所望の一端面に平坦な駆動面12を備えるとともに、駆動面12から離れた他端側に、互いに略直交する方向へ平坦に延設される1対の傾斜肩面26と、それら肩面26の間で外方へ突設される支承部28とを備える。振動体14の駆動面12は、好ましくは図示のように、振動体14の一端面に固着された炭素繊維強化プラスチック等からなる摩擦材料30によって形成される。摩擦材料30は、振動体14の超音波振動による摩擦駆動力の発生効率を向上させるとともに、駆動面12及び可動体18の表面の寿命を向上させる効果を奏する。
【0014】
振動体14は、図1の正面視及び図2の側面視の双方で、一端の駆動面12の中心と他端の支承部28の中心とを通る軸線14a、14bに関して線対称の形状を有する。両肩面26は、いずれも駆動面12に対し略45°の角度を成して、軸線14aに関し左右対称に配置される。支承部28は、振動体14の本体部分14c(超音波が伝搬する部分)よりも薄い厚み(図1紙面に直交する方向への寸法)を有して本体部分14cから延長され、その末端に軸線14a方向へ延びる雌ねじ28aが凹設される。このような構成を有する振動体14は、アルミニウム、チタン、銅、鉄系金属等の金属材料や、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、これらの複合物等のセラミックスといった、硬質の弾性体から一体的に作製される。
【0015】
2対の励振素子16の各々は、振動体14の各肩面26に接合される圧電素子16からなる。各圧電素子16は、圧電セラミックス等の薄板状圧電材料を積層してなる角柱(薄板)状の形態を有し、積層方向一端面を振動体14の肩面26に密着させて、例えば接着剤により肩面26に強固に接合される。振動体14の各肩面26には、2個の圧電素子16が互いに離間して、振動体厚み方向へ位置的に重畳かつ整合して配置され、両肩面26上で2個ずつの圧電素子16が、軸線14aに関し対称位置に配置される。対称位置にある各1対の(すなわち制御上で対を成す)圧電素子16は、それぞれの積層方向へ延びる中心線16aがいずれも駆動面12に対し略45°の角度を成して配置される。対を成す2個の圧電素子16には、制御部22を含む制御回路を介して正弦波電圧がそれぞれに所定(例えば90°)の位相差で印加され、それによる両圧電素子16の差動的な変位動作が振動体14を励振して、摩擦駆動力を発揮するためのいわゆる楕円運動を駆動面12に生起させる。
【0016】
なお、各圧電素子16は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)からなる薄板状圧電材料の積層体から構成することが、低電圧で大駆動力を得る点で有利である。また、各圧電素子16を振動体14に接合する接着剤としては、十分な接着力が得られるものであれば特に限定されないが、例えばガラスフィラー入りの熱硬化型エポキシ接着剤を使用することができる。
【0017】
可動体18は、金属、樹脂等の硬質材料からなり、図示しない案内支持構造を介して、超音波モータ10の図示しない機台(又は外部構造体)上に所定方向へ移動可能に支持される。可動体18は、その所定表面領域32で、振動体14の駆動面12に所定圧力下で接触して配置され、振動体14の駆動面12に生起された楕円運動の方向に応じて、接触面間の摩擦力により一方向(図示矢印)へ移動する。可動体18の移動方向及び移動速度は、上記した1対の励振素子(圧電素子)16に印加する正弦波電圧の位相及び周波数制御により制御できる。
【0018】
なお可動体18は、案内支持構造の構成に応じて、直動及び回動のいずれかの出力動作を遂行できる。また、振動体14と可動体18との移動関係は相対的なものであり、可動体18が構造体上で固定されていた場合には、振動体14が押圧支持構造20と共に可動体18に対して移動する。さらに、振動体14の駆動面12を形成する摩擦材料30は、それに加えて又はその代わりに、可動体18の表面領域32に設置することもできる。
【0019】
上記した振動体14と励振素子16とを含む駆動部24及び可動体18の構成は、いわゆるY形の超音波モータにおいて採用されている構成に類似しているものであり、対を成す励振素子16の位相を反転することにより、可動体18の駆動方向を切り換えることができる。なお、本発明に係る駆動部及び制御部の構成は、このようなY形モータ構造に限らず、π形や他の種々のモータ構造に適用できるものである。
【0020】
押圧支持構造20は、基材34と、基材34と振動体14との間に配置され、振動体14を基材34上で支持しつつ駆動面12を可動体18に押し付けるばね力を発揮する支持ばね部材36と、支持ばね部材36のばね力を調整する予圧調整機構38とを備える。支持ばね部材36は、両端の取付部40及びそれら取付部40の間に位置する中間固定部42を有する板状組立体である。支持ばね部材36は、中間固定部42で振動体14に固定的に連結されるとともに、両取付部40で与圧調整機構38を介して基材34に取り付けられる。その状態で支持ばね部材36は、振動体14の駆動面12を可動体18の表面領域32に押し付けるばね力を発揮する。
【0021】
基材34は、矩形薄板状の主部44と、主部44の略平坦な一表面44a上でその矩形輪郭の一外縁44bに沿って互いに離間配置される角柱状の1対の取付基部46とを備える。主部44及び取付基部46は、金属、樹脂等の硬質材料からなり、両者が互いに一体に成形されるか、或いはボルト等によって互いに固定的に連結される。各取付基部46には、支持ばね部材36を取り付けるための雌ねじ46aが、主部44の表面44aに略平行な方向へ凹設される。なお、基材34の主部44は、前述した可動体18を可動支持する超音波モータ10の図示しない機台(又は外部構造体)に、固定的に連結することができる。
【0022】
支持ばね部材36は、中間固定部42を含む板ばね要素48と、それぞれに取付部40を含む1対の剛性支持要素50とを組み合わせて構成される。板ばね要素48は、平板状の金属板、樹脂板等のばね材からなり、長手方向中央の中間固定部42にボルト挿通孔48aが、また長手方向両端にボルト挿通孔48bが、それぞれ板厚方向(紙面に平行な方向)へ貫通形成される。一対の剛性支持要素50は、図1の正面視で互いに同一の略S字のクランク状外形に成形された金属板、樹脂板等の硬質材からなり、各々の一端の取付部40にボルト挿通孔50aが、かつ他端に雌ねじ50bが、それぞれ板厚方向(紙面に平行な方向)へ貫通形成される。
【0023】
支持ばね部材36は、板ばね要素48の両端に、取付部40を外側(相互離反側)に向けた両剛性支持要素50の他端を重ねて配置し、個々のボルト挿通孔48bに挿通したボルト52を雌ねじ50bに螺着して両要素48、50を相互に連結することにより、中間固定部42を中心として対称な基準組立体の形態を呈する。そして支持ばね部材36は、板ばね要素48の中間固定部42のボルト挿通孔48aに挿通したボルト54を、振動体14の支承部28に形成した雌ねじ28aに螺着することにより、振動体14に固定される。後述するように超音波モータ10を適正に組み立てたときに、板ばね要素48は、無負荷状態で、振動体14の軸線14aに直交する方向へ延設される。
【0024】
予圧調整機構38は、支持ばね部材36の両取付部40と基材34の両取付基部46との間にそれぞれ介在する一対の調整ばね56と、調整ばね56を介して支持ばね部材36の両取付部40を対応の取付基部46に取り付ける一対の取付ボルト58とを備える。一対の調整ばね56は、図1の正面視で互いに同一の略U字の外形に曲成された金属板、樹脂板等のばね材からなり、各々のU字の両腕部分の対応箇所にボルト挿通孔56aが、それぞれ板厚方向(紙面に平行な方向)へ貫通形成される。それら調整ばね56は、U字の中央部分を内側(相互対向側)に向けて、基材34の両取付基部46にそれぞれ載置される。その状態で、各取付ボルト58を、支持ばね部材36の各取付部40のボルト挿通孔50aと、対応の調整ばね56のボルト挿通孔56aとに、連続的に挿通して、対応の取付基部46の雌ねじ46aに螺着することにより、支持ばね部材36が基材34に取り付けられる。予圧調整機構38は、個々の取付ボルト58の締付けトルクを調整することにより、支持ばね部材36の板ばね要素48が発揮する予圧の調整を遂行する。
【0025】
超音波モータ10の上記構成要素群は、以下のようにして組み立てられる。
基材34は、その主部44の外縁44bが可動体18の表面領域32に非接触に近接して位置するように、可動体18の近傍に設置される。また、2対の圧電素子16を両肩面26に接合した振動体14は、基材34の両取付基部46の略中間位置で、駆動面12を表面領域32に当接させて可動体18上に搭載される。支持ばね部材36は、前述した基準組立体の形態で、ボルト54により中間固定部42を振動体14の支承部28に固定するとともに、両端の取付部40を、前述したように予圧調整機構38を介して、基材34の両取付基部46に取り付ける。
【0026】
ここで、1対の取付ボルト58を個々に調整ばね56の付勢に抗して適当なトルクで締め込むことにより、それら取付ボルト58から対応の取付部40に適当な圧力を負荷しつつ、基材34に対する両取付部40の取付位置を、可動体18に接近する方向へ変位させる。それにより、中間固定部42を支点として支持ばね部材36の板ばね要素48を撓ませて、板ばね要素48に中間固定部42を中心に平衡したばね力を発揮させる。このようにして、振動体14の駆動面12が、支持ばね部材36の予調整されたばね力による適当な接触圧力下で、可動体18の表面領域32に当接され、以って超音波モータ10の組み立てが完了する。
【0027】
本発明の特徴的構成として、超音波モータ10の制御部22は、2対の励振素子16のうち、各対を成す2個の励振素子16が、振動体14の駆動面12に楕円運動を生起する互いに位相の異なる高周波変位動作を生じるとともに、全ての励振素子16の高周波変位動作の位相が、互いに規則的にずれた状態になるように、それら2対の励振素子16を制御するように構成される。具体的には、一方の対を成す2個の励振素子16(1a)、16(1b)に対し、制御部22は、下記の駆動電圧を印加する制御を遂行する。
励振素子16(1a)の駆動電圧V=αsinωt
励振素子16(1b)の駆動電圧V=αcosωt
(ただし、αは最大駆動電圧、ωは駆動角速度)
これら駆動電圧により生じた各励振素子16(1a)、16(1b)の差動的変位動作により、振動体14に合成超音波振動が励起され、その結果として駆動面12に楕円運動が生起される。なお、駆動面12を詳細に分析すると、軸線14aの位置では正円運動が生じ、軸線14aから離れた位置では楕円運動が生じている。
【0028】
さらに制御部22は、他方の対を成す2個の励振素子16(2a)、16(2b)に対し、下記の駆動電圧を印加する制御を遂行する。
励振素子16(2a)の駆動電圧V=αsin(ωt−π)
励振素子16(2b)の駆動電圧V=αcos(ωt−π)
これにより、振動体14の駆動面12には、前述した1対目の励振素子16(1a)、16(1b)による楕円運動から半波長分位相がずれた楕円運動が生起される。そして、2対全ての励振素子16に対して同時にこれら駆動電圧を印加すれば、振動体14の駆動面12には、互いに半波長だけ位相がずれた楕円運動が相補的かつ相乗的に相互作用しつつ生起される。その結果、振動体14の駆動面12と可動体18の表面領域32との間の摩擦駆動力の微視的周期変動は、一対の励振素子16のみを備えた超音波モータに比べて、変動間隔が短縮されると共に変動幅が削減されることになる。
【0029】
したがって、上記構成を有する超音波モータ10によれば、可動体18の移動速度を微視的にも安定化することができ、それにより、可動体18の位置決め精度等の制御応答性を著しく向上させることができる。また、可動体18に、移動方向とは反対方向への制動作用が及ぼされている場合にも、可動体18が制動作用により押し戻されることが回避され、出力及び移動速度を安定して維持することができる。
【0030】
上記した超音波モータ10の振動部24及び制御部22の構成は、対を成す励振素子16の数が増える程、振動体14の駆動面12による摩擦駆動力の微視的周期変動の低減効果が向上する。すなわち、駆動部24が、1個の振動体14と、振動体14の一対の肩面26に取り付けられる複数(n)対の励振素子16とを備える構成において、制御部22は、n対の励振素子16のうち、各対を成す2個の励振素子16が、振動体14の駆動面12に楕円運動を生起する互いに位相の異なる高周波変位動作を生じるとともに、全ての励振素子16の高周波変位動作の位相が、互いに規則的にずれた状態になるように、それらn対の励振素子16を制御するように構成される。このとき制御部22は、第m番目(1≦m≦n)の対を成す2個の励振素子16(ma)、16(mb)に対し、下記の駆動電圧を印加する制御を遂行する。
励振素子16(ma)の駆動電圧V=αsin{ωt−2π(m−1)/n}
励振素子16(mb)の駆動電圧V=αcos{ωt−2π(m−1)/n}
【0031】
これら駆動電圧をn対の励振素子16(ma)、16(mb)に同時に印加することにより、振動体14の駆動面12には、1/n波長ずつ位相がずれたn種類の楕円運動が相補的かつ相乗的に相互作用しつつ生起される。その結果、振動体14の駆動面12と可動体18の表面領域32との間の摩擦駆動力の微視的周期変動の削減効果が著しく向上する。なお、励振素子16の対数を増すほど、駆動部24の寸法が増加するので、要求される制御応答性と許容モータ寸法との両者を考慮して励振素子16の対数を選定すれば良い。
【0032】
図3及び図4は、上記した超音波モータ10を駆動部に採用した本発明の一実施形態による位置決め装置60を示す。位置決め装置60は、超音波モータ10の押圧支持構造20の基材34を含む第1の基台62と、超音波モータ10の可動体18を含む第2の基台64と、それら第1及び第2の基台62、64を相対移動可能に相互支持して互いに直線状に案内するリニアガイド66と、第1及び第2の基台62、64の相対位置を検出する位置検出機構68とを備えて構成される。
【0033】
第1の基台62は、矩形平板状の固定ベース部材であって、それ自体、押圧支持構造20の基材34を構成し、その一表面62aの所定位置に1対の取付基部46が立設される。これら取付基部46には、前述したように押圧支持構造20の支持ばね部材36(図1)及び予圧調整機構38(図1)を介して、超音波モータ10の振動部24が取り付けられる。第2の基台64は、矩形平板状の移動ステージ部材であって、それ自体、超音波モータ10の可動体18を構成する。第2の基台64は、可動体18の表面領域32を構成する平坦な側面64aと、側面64aに略直交する平坦なステージ面64bとを有する。なお、第1及び第2の基台62、64は、いずれも金属、樹脂等の高い剛性を有する材料から作製される。
【0034】
リニアガイド66は、例えばボールスライドから構成され、第1の基台62の略中央でその表面62aと第2の基台64の裏面64cとの間に設置されて、基台64を基台62上で所与の負荷の下で直線往復移動可能に円滑に案内する。位置検出機構68は、第1の基台62の表面62a上で、リニアガイド66を挟んで超音波モータ10の反対側に設置される例えば光学式の位置センサ70と、位置センサ70に非接触に対向して第2の基台64に設置されるリニアスケール72とを備える。位置センサ70は、信号線74を介して、超音波モータ10の制御部22に接続される。
【0035】
上記構成を有する位置決め装置60は、駆動部に超音波モータ10を採用したことにより、ステージとなる第2の基台64の移動速度を微視的にも安定化することができ、それにより、基台64の位置決め精度等の制御応答性を著しく向上させることができる。また、基台64に、移動方向とは反対方向への制動作用が及ぼされている場合にも、基台64の出力及び移動速度を安定して維持することができる。
【0036】
図5及び図6は、本発明の第2の実施形態による超音波モータ80及びそれを搭載した位置決め装置82を示す。超音波モータ80及び位置決め装置82は、振動部84の構成以外は、図1〜図4に示す超音波モータ10及び位置決め装置60と実質的同一の構成を有するので、対応する構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。
【0037】
超音波モータ80の振動部84は、2個の振動体86と、それら振動体86の各々に1対ずつ取り付けられる2対の励振素子88とを備える。各振動体86は、前述した超音波モータ10における振動体14を肉薄化した構成を有するものであり、したがって一端の平坦な駆動面90と、他端の互いに略直交する1対の傾斜肩面92と、それら肩面92の間に突設される支承部94とを備える。1対の励振素子(圧電素子)88の各々は、振動体86の各肩面92に接合される。対を成す2個の圧電素子88には、制御部22を含む制御回路を介して正弦波電圧がそれぞれに所定(例えば90°)の位相差で印加され、それによる両圧電素子88の差動的な変位動作が振動体86を励振して、摩擦駆動力を発揮するためのいわゆる楕円運動を駆動面90に生起させる。
【0038】
超音波モータ80は、2個の振動体86の駆動面90に当接配置され、それら振動体86の振動に応じて振動部84に対し移動する共通の可動体18を備える。2個の振動体86は、可動体18の移動方向に略平行な方向へ互いに離間して配置され、個々の振動体86がそれぞれの押圧支持構造20により、駆動面90を可動体18に押し付けた状態で安定して支持される。
【0039】
上記超音波モータ80を駆動部に採用した位置決め装置82は、押圧支持構造20の基材34を含む第1の基台62と、可動体18を含む第2の基台64と、それら第1及び第2の基台62、64を相対移動可能に相互支持して互いに直線状に案内するリニアガイド66と、第1及び第2の基台62、64の相対位置を検出する位置検出機構68とを備える。第1の基台62は、それ自体、個々の振動体86に関連する押圧支持構造20の共通の基材34を構成し、その一表面62aの所定位置に3個の取付基部46が立設される。これら取付基部46には、前述したように押圧支持構造20の支持ばね部材36(図1)及び予圧調整機構38(図1)を介して、超音波モータ80の振動部84が取り付けられる。
【0040】
超音波モータ80の制御部22は、前述した超音波モータ10の制御部22と同様に、個々の振動体86に接合された各1対の励振素子88が、各振動体86の駆動面90に楕円運動を生起する互いに位相の異なる高周波変位動作を生じるとともに、全ての励振素子88の高周波変位動作の位相が、互いに規則的にずれた状態になるように、2対の励振素子88を制御する。この構成において、制御部22の制御下で各対の励振素子88に印加される駆動電圧は、前述した超音波モータ10におけるものと同様である。超音波モータ80では、2対全ての励振素子88に対して同時にこれら駆動電圧を印加することにより、2個の振動体86の駆動面90に、互いに半波長だけ位相がずれた楕円運動が独立して生起される。
【0041】
上記した制御部22による駆動電圧制御の結果、2個の振動体86の駆動面90と、両振動体86に共通する可動体18の表面領域32(すなわち第2の基台64の側面64a)との間の摩擦駆動力の微視的周期変動は、2個の駆動面90の楕円運動の協働により、変動間隔が短縮されると共に変動幅が削減されることになる。このように、上記構成を有する超音波モータ80及びそれを搭載した位置決め装置82においても、前述した超音波モータ10及び位置決め装置60と同等の作用効果が奏されることは理解されよう。
【0042】
上記第2実施形態のように互いに独立した複数個の振動体を有する振動部は、それら振動体の相対配置を変更することにより、種々の変形形態による超音波モータ及び位置決め装置を構成することができる。例えば図7に示すように、それぞれに1対の励振素子88(図5)を接合した2個の振動体86を、可動体18(第2の基台64)の移動方向に交差又は略直交する方向へ互いに離間して配置した振動部84を構成できる。この場合、それら振動体86は、両者に共通する基材34(第1の基台62)に立設された1対の取付基部46に、それぞれの押圧支持構造20の支持ばね部材36(図1)及び予圧調整機構38(図1)を介して取り付けられる。このような構成を有する超音波モータ100及びそれを搭載した位置決め装置102においても、前述した超音波モータ10及び位置決め装置60と同等の作用効果が奏されることは理解されよう。さらにこの構成では、上記第2実施形態による超音波モータ80及び位置決め装置82に比べて、小型化が促進される。
【0043】
また、図8及び図9に示すように、それぞれに1対の励振素子88を接合した2個の振動体86を、可動体18(第2の基台64)を挟んで互いに異なる側に配置した振動部84を構成できる。この場合、それら振動体86は、両者に共通する基材34(第1の基台62)に立設された2対の取付基部46に、それぞれの押圧支持構造20の支持ばね部材36(図1)及び予圧調整機構38(図1)を介して取り付けられる。また、可動体18(第2の基台64)の両側に、各振動体86の駆動面90を当接する表面領域32(側面64a)が設けられる。このような構成を有する超音波モータ110及びそれを搭載した位置決め装置112においても、前述した超音波モータ10及び位置決め装置60と同等の作用効果が奏されることは理解されよう。
【0044】
なお、図8及び図9に示す位置決め装置112は、位置検出機構を備えないものである。これに対し、図10及び図11に示すように、位置検出機構68を設置した位置決め装置114を構成することもできる。この場合には、第2の基台64の一方の側面64aに長手方向へ隣接して、位置検出機構68のリニアスケール72が設置される。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は図示実施形態の構成に限定されず、特許請求の範囲の記載内でさらに他の様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、本発明に係る超音波モータの振動部及び制御部の特徴的構成は、超音波モータの分野で公知の、様々な形状の振動体や様々に配置した励振素子を有する構成に適用でき、同等の作用効果を奏するものである。また、本発明に係る位置決め装置の特徴的構成は、多軸の位置決め装置にも適用でき、同等の作用効果を奏するものである。
【0046】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、定在波型の超音波モータにおいて、振動体が生じる摩擦駆動力の微視的変動を低減することにより、制御応答性を向上させることができるとともに、可動体への制動作用に抗して出力及び移動速度を維持できるようになる。
さらに本発明によれば、駆動部に超音波モータを採用した位置決め装置において、ステージの位置決め精度、出力及び移動速度を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による超音波モータの正面図である。
【図2】図1の超音波モータの主要部を線II−IIに沿って示す一部断面側面図である。
【図3】図1の超音波モータを搭載した本発明の第1実施形態による位置決め装置の平面図である。
【図4】図3の位置決め装置の側面図である。
【図5】本発明の第2実施形態による超音波モータ及びそれを搭載した位置決め装置の平面図である。
【図6】図5の超音波モータ及び位置決め装置の側面図である。
【図7】変形例による超音波モータ及びそれを搭載した位置決め装置の平面図である。
【図8】他の変形例による超音波モータ及びそれを搭載した位置決め装置の平面図である。
【図9】図8の超音波モータ及び位置決め装置の側面図である。
【図10】さらに他の変形例による超音波モータ及びそれを搭載した位置決め装置の平面図である。
【図11】図10の超音波モータ及び位置決め装置の側面図である。
【符号の説明】
10…超音波モータ
12…駆動面
14…振動体
16…励振素子
18…可動体
20…押圧支持構造
22…制御部
24…振動部
30…摩擦材料
32…表面領域
34…基材
36…支持ばね部材
38…予圧調整機構
40…取付部
42…中間固定部
46…取付基部
56…調整ばね
58…取付ボルト
60…位置決め装置
62…第1の基台
64…第2の基台
66…リニアガイド
68…位置検出機構
70…位置センサ
72…リニアスケール
Claims (4)
- 駆動面を有する振動体を備える振動部と、該振動体の超音波振動を制御する制御部とを具備する超音波モータにおいて、
前記振動部は、少なくとも1個の前記振動体と、該少なくとも1個の振動体に取り付けられて、該振動体を励振する複数対の励振素子とを備え、
前記制御部は、前記複数対の励振素子のうち、各対を成す2個の該励振素子が、前記振動体の前記駆動面に楕円運動を生起する互いに位相の異なる高周波変位動作を生じるとともに、全ての該励振素子の該高周波変位動作の位相が、互いに規則的にずれた状態になるように、該複数対の励振素子を制御すること、
を特徴とする超音波モータ。 - 前記振動部が、1個の前記振動体と、該1個の振動体に取り付けられる前記複数対の励振素子とを備える、請求項1に記載の超音波モータ。
- 前記振動部が、複数の前記振動体と、それら振動体の各々に1対ずつ取り付けられる前記複数対の励振素子とを備える、請求項1に記載の超音波モータ。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波モータを備えた位置決め装置。
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JP2008220031A (ja) * | 2007-03-02 | 2008-09-18 | Olympus Imaging Corp | 駆動装置および撮像装置 |
-
2003
- 2003-06-27 JP JP2003185062A patent/JP2005020951A/ja active Pending
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