JP2005007578A - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】インクを凝集させる性質を有する反応液を用いながらも、記録速度の低下を招かずに、ミストや跳ね返りなどに起因する目詰まりや飛行曲がりを防止することが可能なインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】記録媒体に対してバンド単位で順次記録を行うインクジェット記録方法において、各バンド毎に、そのバンドにおけるインクの総記録デューティーの情報に応じて、記録モードA「記録ヘッドの往復走査の往路で反応液を吐出し、その復路でインクを吐出する」、又は記録モードB「記録ヘッドの往復走査の往路又は復路のいずれか一方で、反応液及びインクを吐出する」を使い分ける。特に、総記録デューティーが100%以上の場合には、そのバンドの記録を上記記録モードAで行い、100%未満の場合には、そのバンドの記録を上記記録モードBで行うことが好ましい。
【選択図】 図4
【解決手段】記録媒体に対してバンド単位で順次記録を行うインクジェット記録方法において、各バンド毎に、そのバンドにおけるインクの総記録デューティーの情報に応じて、記録モードA「記録ヘッドの往復走査の往路で反応液を吐出し、その復路でインクを吐出する」、又は記録モードB「記録ヘッドの往復走査の往路又は復路のいずれか一方で、反応液及びインクを吐出する」を使い分ける。特に、総記録デューティーが100%以上の場合には、そのバンドの記録を上記記録モードAで行い、100%未満の場合には、そのバンドの記録を上記記録モードBで行うことが好ましい。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関し、詳しくは、インク凝集能を有する反応液を使用し、画像濃度が高く、にじみやムラのない高画質の記録物を提供し得るインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
インクジェット記録方法は、記録ヘッドの吐出口からインクの液滴を吐出させ、紙などの記録媒体にインクを付着させて画像を記録する印刷方式である。従来から、インクと、該インクを瞬間的に凝集させる物質を含有させた反応液(処理液、記録性向上液などとも呼ばれる)とを使用し、これらを記録ヘッドから吐出させて記録媒体上で接触させることにより、画像濃度が高く、にじみやムラのない高画質の記録物を得る技術が知られている。
【0003】
上記技術に関し、例えば、1)記録媒体上に形成される記録ドットの分布状態に応じて、処理液用ヘッドによる処理液ドットの形成位置を制御するインクジェット記録装置(特許文献1参照)、2)被プリント材上へ少なくとも1回以上有色インクのプリントを行った後、当該有色インクプリント画像領域上に少なくとも1回以上プリント性向上液を付与し、かつ当該画像領域に少なくとも1回以上有色インクのプリントを行うインクジェットプリント方法(特許文献2参照)、3)画像を構成する複数の画素に対応した入力画像データに応じて、被記録材上の画像が形成される領域が、記録性向上液およびインクが吐出される領域とインクのみが吐出される領域とに分かれるようにして、インク中の染料を不溶化または凝集させるための記録性向上液を画像データに応じて本来のデータよりも減らして吐出させるインクジェット記録方法(特許文献3参照)、4)記録ヘッドの走査方向におけるインク吐出口群の両側に、第1、第2の処理液吐出口群を位置させ、インク吐出口群からインクを吐出させるためのデータに基づいて、第1、第2の処理液吐出口群から処理液を吐出させるための処理液データを生成することにより、処理液の吐出量を最適に設定したインクジェット記録方法(特許文献4参照)などが知られている。
【0004】
しかしながら、上記1)〜4)の如きインクジェット記録技術においては、記録ヘッドの吐出口あるいはその周縁部などに、反応液により凝集固化したインクや埃などの異物が付着し、いわゆる目詰まりや、吐出方向の不安定化(いわゆる飛行曲がり)などを引き起こすという問題がある。この異物の付着は、主液滴に続いて飛翔する微少な液滴(ミスト)や、吐出された液滴の記録媒体からの跳ね返りなどが原因と考えられている。上記1)〜4)の技術は、いずれも反応液の機能を最大限に発揮させて画質の改善を図ることを目的としており、上記特許文献1〜4には、このようなミストや跳ね返りに起因する問題については特に記載されておらず、自ずと、その回避手段については何等記載されていない。
【0005】
反応液を使用することによる上記問題を回避する技術としては、例えば、5)記録媒体の所定領域におけるインクの記録デューティに対応する値が所定値より大きいときは、該所定領域を複数回の走査に分割すると共に、複数種類のインクに対応した異なる分割方法で記録を行うインクジェット記録方法が知られている(特許文献5参照)。この方法によれば、例えば記録ヘッドの1回の走査で記録される所定領域の記録デューティーが所定値以上であるときは、その所定領域を複数回に分けて記録することにより、その複数回の記録の1回当りの記録デューティーを小さくすることができ、これにより、インク等液体の吐出頻度を低下させることができるため、ミストや跳ね返りによる記録ヘッドの汚れを低減することができるとされている。
【0006】
しかしながら上記の方法は、1走査当たりの記録デューティーを減少させることにより、反応液やインクの記録媒体からの跳ね返りはある程度抑制できても、1走査(パス)において反応液とインクとを実質的に時間を置かずに連続的に吐出させるため、両者のミストに起因する目詰まりや飛行曲がりを有効に防止することができない。また、上記の方法は、1バンド(ライン)の記録を行うのに3走査(パス)以上を要する場合があり、記録速度の大幅な低下は否めない。
【0007】
従って、本発明の目的は、インクを凝集させる性質を有する反応液を用いながらも、記録速度の低下を招かずに、ミストや跳ね返りなどに起因する目詰まりや飛行曲がりを防止することが可能で、画像濃度が高く、にじみやムラのない高画質の記録物を安定して提供し得るインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−52867号公報
【特許文献2】
特開平8−281933号公報
【特許文献3】
特開平8−281974号公報
【特許文献4】
特開2001−138554号公報
【特許文献5】
特開2000−127355号公報
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のインクジェット記録方法は、記録媒体を順次搬送すると共に、インクを吐出するインク吐出部及び該インクを凝集させる性質を有する反応液を吐出する反応液吐出部が、走査方向に並列に配置された記録ヘッドを、該記録媒体の搬送方向と直交する方向に往復走査させることにより、該記録媒体に対してバンド単位で順次記録を行うインクジェット記録方法において、上記各バンド毎に、そのバンドにおける上記インクの総記録デューティーの情報に応じて、(1)上記記録ヘッドの往復走査の往路で上記反応液を吐出し、その復路で上記インクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードA、又は(2)上記記録ヘッドの往復走査の往路又は復路のいずれか一方で、上記反応液及び上記インクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードBのいずれかを選択し、選択された記録モードに従ってそのバンドの記録を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体を順次搬送すると共に、インクを吐出するインク吐出部及び該インクを凝集させる性質を有する反応液を吐出する反応液吐出部が、走査方向に並列に配置された記録ヘッドを、該記録媒体の搬送方向と直交する方向に往復走査させることにより、該記録媒体に対してバンド単位で順次記録を行うインクジェット記録装置において、上記各バンド毎に、そのバンドにおける上記インクの総記録デューティーの情報に応じて、記録モードを選択するモード選択手段を備え、上記記録モードとして、少なくとも、(1)上記記録ヘッドの往復走査の往路で上記反応液を吐出し、その復路で上記インクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードA、及び(2)上記記録ヘッドの往復走査の往路又は復路のいずれか一方で、上記反応液及び上記インクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードBを有し、上記モード選択手段により選択された上記記録モードA又は上記記録モードBのいずれかに従って、1バンドの記録を行うようになしたことを特徴とする。
【0011】
上記のような構成の本発明によれば、1バンド当たりに吐出されるインクの総量(総記録デューティー)が一定以上の場合には、反応液とインクとを2回の走査で(往路と復路で)別々に吐出させるようにしたので、ミストや跳ね返りによる記録ヘッド(吐出部)の汚れを有効に防止することができ、目詰まりや飛行曲がりの少ない信頼性の高いインクジェット記録が可能となる。またこの方法では、1バンドの記録を行うのに要する走査回数(パス数)は、多くても2回であるため、記録速度の低下を最小限に抑えることができ、高画質の記録物を安定して出力することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置の概略構成を示した斜視図である。このインクジェット記録装置(プリンタ)1は、図示しない紙送りモータで駆動される紙送りローラ2によって、用紙スタッカ3から記録媒体Mを巻き取ってプラテン4位置に搬送し、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6により記録を行った後、矢標Yで示す方向(副走査方向)に記録媒体Mを搬送するようになしてある。キャリッジ5は、キャリッジモータ7によって駆動されるタイミングベルト8に連結されており、2本のガイドレール9によって、矢標X1又はX2方向(記録媒体Mの搬送方向Yと直交する主走査方向X)に往復走査可能に案内支持されている。キャリッジ5には、記録ヘッド6にインクや反応液を供給するインクタンクを含む記録ヘッドユニット12が搭載されている。本実施形態では、インクとして、イエロー(Y)、ブラック(K)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の4色の水性顔料インクが用いられている。
【0014】
また、キャリッジ5が移動可能な領域の一端側は、記録ヘッド6のホームポジションとなっており、その下部には、吐出不良を起こした記録ヘッドの吐出回復や吐出不良を未然に防止するために利用される回復ユニット10が配置されている。回復ユニット10は、キャップ部11により、記録ヘッド6の吐出口形成面(記録媒体Mと対向する面)を覆い、図示しない吸引ポンプを作動させて、吐出口から増粘あるいは固化したインクや埃などの異物や気泡などを強制的に排出させ、図示しない廃液タンクにこれらを貯蔵するようになっている。また、回復ユニット10には、記録ヘッド6の吐出口形成面に付着した不要なインクやゴミなどを掃除するクリーニング動作に使用する、ゴムなどの弾性材料で形成されたワイパー部材が設けられている(図示せず)。この回復ユニット10自体の構成は、この種のインクジェット記録装置における回復ユニットと同様である。
【0015】
図2は、記録ヘッド6の吐出口形成面(記録媒体Mと対向する面)の概略構成図である。記録ヘッド6は、上記YKMCの4色のインクをそれぞれ吐出する4つのインク吐出部6Y、6K、6M、6Cと、該インクを凝集させる性質を有する反応液を吐出する2つの反応液吐出部6R1、6R2とが、該記録ヘッド6の主走査方向Xに並列に集積配置された構成のいわゆるマルチヘッドである。各吐出部は、それぞれ、該主走査方向Xと直交する副走査方向Yに配列された複数の吐出口Nzを有し、各吐出口Nzからインク又は反応液を吐出する。複数の吐出口Nzがこのように配列された記録ヘッド6を、X1及び/又はX2方向に往復走査させて記録を行うことにより、一度の走査で帯状の記録領域(バンド)が記録媒体M上に形成される。このような記録ヘッド6の走査と、記録媒体Mの矢標Y方向への搬送とを繰り返すことにより、バンド単位で順次記録が行われ、最終的に所望の画像が形成されることになる。
【0016】
6つの上記各吐出部は、それぞれ基本的にこの種のインクジェット記録装置における記録ヘッドと同様に構成されており、インク供給路、該インク供給路の一部に設けられるエネルギー作用部、該エネルギー作用部にあるインク又は反応液に作用させる液滴形成エネルギーを発生するエネルギー発生手段(何れも図示せず)等を備えている。本実施形態では、エネルギー発生手段として、電気−機械変換素子を備えている。電気−機械変換方式の記録ヘッドは、他の方式の記録ヘッドに比して、顔料インクの吐出安定性に優れるため、顔料インクを用いたインクジェット記録に特に好適である。電気−機械変換素子としては、ピエゾ素子が好ましく用いられる。ピエゾ素子は、周知のように、電圧の印加により結晶構造が歪み、極めて高速に電気−機械エネルギーの変換を行う素子(圧電素子)である。上記各吐出部の適当な位置に配置されたピエゾ素子に、所定の時間幅の電圧を印加することにより、該ピエゾ素子が電圧の印加時間だけ伸張し、これによりインク供給路の容積が収縮して、この収縮分に相当するインク又は反応液が液滴となって吐出口Nzから高速吐出される。
【0017】
尚、上記各吐出部は、上記主走査方向Xに並列に配置されていればよく、各吐出部の配置順序は特に限定されるものではないが、好ましい配置順序は、上記反応液により凝集され易いインクを吐出するインク吐出部ほど、上記反応液吐出部から離間するような配置順序である。各吐出部をこのような順序で配置することにより、後述する特定の記録モードを用いることと相俟って、記録動作中に各吐出部から発生するミスト(主液滴に続いて飛翔する微小な液滴)や吐出された液滴の記録媒体からの跳ね返りなどに起因する吐出口の汚れをより有効に防止することができ、信頼性のより高いインクジェット記録が可能となる。例えば、後述する水溶性多価金属塩含有タイプの反応液を使用する場合、Y、K、M、Cの4色の水性顔料インクでは、通常、C、M、K、Yの順に該反応液との反応性が高いので、この場合の各インク吐出部の配置順序は、図2に示すように、記録ヘッド6の吐出口形成面の主走査方向Xの一端側に配置された反応液吐出部(6R1、6R2)に近い方から順に、6Y、6K、6M、6Cとすることが好ましい。
【0018】
図3は、上述したプリンタ1の制御構成を示すブロック図である。パーソナルコンピュータ等のホスト装置15から転送される文字や画像のデータ(画像データ)は、記録媒体Mの種別を示す情報その他の各種指示情報等と共に、入出力バッファ20に一時的に格納される。一方、入出力バッファ20からは、画像データの転送確認データの他、プリンタ1の動作状態を示すデータなどがホスト装置15に転送される。入出力バッファ20に格納された画像データは、制御部21によって読み出され、その内部で展開される。
【0019】
制御部21は、プリンタ1全体を制御するもので、マイクロコンピュータ等のCPU22、CPU22により実行される制御プログラムや各種データ等を格納したROM23、CPU22による処理の実行時におけるワークエリアとして使用されるRAM24などを備えている。25は、上記紙送りローラ2を駆動させるための紙送りモータ26を駆動するモータドライバ、27は、上記キャリッジ5をX1又はX2方向に走査させるための上記キャリッジモータ7を駆動するモータドライバ、28は、制御部21からの信号に基づいて記録ヘッド6を構成する上記各吐出部6R1、6R2、6Y、6K、6M、6Cを駆動するヘッドドライバである。
【0020】
また制御部21は、上記画像データに基づき、記録ヘッド6から吐出されるインクの記録デューティーを各バンド毎に計算するデューティー計算手段と、その計算結果に基づいて記録モードを選択するモード選択手段とを備える。「記録デューティー」とは、各色(本実施形態ではY、K、M、Cの4色)についての、記録ヘッドの一方向(X1又はX2方向)への1回の走査で可能な最大の吐出回数に対する実際の吐出回数の割合(%)を意味する。例えば、1ドットが1回の吐出によって形成される態様にあっては、1回の走査領域で記録可能な画素数に対する実際に形成されるドット数の割合が、該記録デューティーに相当する。尚、このようなデューティー計算手段及びモード選択手段としての機能は、ホスト装置15側に持たせることもできる。
【0021】
図4は、上述したプリンタ1の記録動作の手順を示すフローチャートである。先ず、ホスト装置から画像データを受信し(S1)、この受信した画像データに必要な処理を施して、記録ヘッドによる記録に適した記録データにする(S2)。次に、この記録データに基づき、上記デューティー計算手段により、各バンド毎にそのバンドに吐出すべき各インクの記録デューティーをそれぞれ計算し(S3)、求めた各インクの記録デューティーを各バンド毎に合計して、各バンドにおけるインクの総記録デューティーを求める(S4)。
【0022】
そして、上記ステップS4で求めた総記録デューティー(%)が、予め定められた基準値よりも大きいか否かを判断する(S5)。その結果、総記録デューティーが基準値以上であれば、そのバンドの記録は後述する記録モードAで行い(S6)、総記録デューティーが基準値未満であれば、そのバンドの記録は後述する記録モードBで行う(S7)。このような、バンド単位での記録モードの選択処理を繰り返すことにより、上記記録データ全体をどのように記録するか(記録態様)が決定され(S8)、決定された記録態様に従って、全てのバンドが終了するまで記録を行う(S9)。
【0023】
上記記録モードAは、上記のようにインクの総記録デューティーが基準値以上となるバンド、即ち、吐出されるインクの量が比較的多いバンドに対して適用されるもので、記録ヘッドの往復走査の往路で反応液を吐出し、その復路でインクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードである。一方、上記記録モードBは、記録モードAが適用されないバンド、即ち、吐出されるインクの量が比較的少ないバンドに対して適用されるもので、記録ヘッドの往復走査の往路又は復路のいずれか一方で(通常は往路で)、反応液及びインクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードである。このように、1バンド当たりに吐出されるインクの総量に着目し、該総量が一定以上の場合には、反応液とインクとを同一走査で吐出させず、2回の走査で(往路と復路で)別々に吐出させることで、ミストや跳ね返りによる記録ヘッド(吐出部)の汚れを有効に防止することができ、目詰まりや飛行曲がりの少ない信頼性の高いインクジェット記録が可能となる。またこの方法では、1バンドの記録を行うのに要する走査回数(パス数)は、多くても2回であるため、記録速度の低下を最小限に抑えることができる。
【0024】
このような記録モードの選択の基準となる上記基準値(総記録デューティー)は、使用するインクや反応液の種類などによって変化するが、好ましくは100%、さらに好ましくは80%である。即ち、上記総記録デューティーが100%以上、好ましくは80%以上の場合には、そのバンドの記録を上記記録モードAで行い、100%未満、好ましくは80%未満の場合には、そのバンドの記録を上記記録モードBで行うようにすることで、ミストや跳ね返りなどに起因する吐出口の目詰まりや飛行曲がりなどの弊害が回避され、より安定した高速記録が可能となる。
【0025】
上記記録モードAは、例えば、上述した実施形態において次のように実行することができる。即ち、記録ヘッド6がX1方向に走査される場合(往路)、反応液吐出部6R1及び/又は6R2から記録媒体Mに対して所定量の反応液が所定のパターンで吐出され、当該バンドに反応液付着領域が形成されていく。このとき、インク吐出部6Y、6K、6M、6Cからは何も吐出されない。X1方向への走査が終了すると、記録ヘッド6はX2方向に向かって走査される(復路)。この復路においては、インク吐出部6C、6M、6K、6Yから、往路で形成された上記反応液付着領域に対して所定量のインクが所定のパターンでそれぞれ吐出される。このとき、反応液吐出部6R1及び6R2からは何も吐出されない。そして、記録ヘッド6が記録可能領域のX2方向終端に到達すると、当該バンドの記録が終了となる。
【0026】
一方、上記記録モードBは、例えば、上述した実施形態において次のように実行することができる。即ち、記録ヘッド6がX1方向に走査される場合(往路)、先ず、反応液吐出部6R1及び/又は6R2から記録媒体Mに対して所定量の反応液が所定のパターンで吐出され、続いてインク吐出部6Y、6K、6M、6Cそれぞれから所定量のインクが所定のパターンで、先に吐出された反応液の付着領域に重ねて吐出される。そして、X1方向への走査が終了すると、今度はX2方向に向かって記録ヘッド6は走査されるが、この復路では各吐出部からは何も吐出されず、記録ヘッド6は所定の待機位置に戻るだけである。したがってこの例では、記録ヘッド6が記録可能領域のX1方向終端に到達した時点で、当該バンドの記録が終了となる。
【0027】
上記記録モードA又は上記記録モードBにおける反応液の吐出量は特に限定されず、使用する反応液の種類などに応じて適宜調整すればよい。反応液の1バンド当たりの好ましい吐出量は、吐出安定性と記録品質とのバランスの観点から、上記記録デューティーに換算して30〜60%、特に、40〜60%である。また、反応液の吐出パターンとしては、特に限定されず、バンドの全体に亘って均一に吐出させるパターンでもよく、インクを吐出させる箇所にのみ選択的に吐出させるパターンでもよい。
【0028】
以下、本発明に係るインク及び反応液について説明する。
【0029】
本発明に係るインクとしては、インクジェット記録で使用可能な水性インクであればよく、特に制限されないが、反応液による画質向上効果を最大限発揮させる観点から、水性顔料インクが好ましい。一般に、インクジェット記録用の水性顔料インクには、顔料系色材及び水の他に、印字品質の向上、乾燥防止などを目的として、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などの界面活性剤や、グリコール類、グリコールエーテル類などの各種有機溶剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤などが含有されている。顔料系色材の含有量は、インク中、通常、0.5〜30重量%程度である。尚、使用可能なインクの色種は、上記実施形態のようなYMCKの4色に限定されるものではなく、YMCの減法混色の3原色の組み合わせを用いてもよく、さらに、ライトマゼンタ、ライトシアンなどの所望の色のインクを組み合わせた5色以上のインクの組み合わせを用いてもよい。
【0030】
上記顔料系色材としては、例えば、酸化チタン及び酸化鉄、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックなどの無機系顔料;アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどの有機系顔料などが挙げられる。
【0031】
また、上記顔料系色材は、界面活性剤等の分散剤が無添加あるいはごく少量添加の水性媒体中に分散及び/又は溶解が可能ないわゆる自己分散型顔料(表面改質顔料などとも呼ばれる)でもよく、自己分散型ではない通常の顔料でもよい。自己分散型顔料は、一般に、顔料表面にカルボキシル基などのアニオン性基が結合されている。また、自己分散型ではない通常の顔料を使用する場合は、分散剤として、高級脂肪酸塩や高級アルコール硫酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、あるいはポリアクリル酸塩などのアニオン性高分子が顔料と共に併用される。本発明に係る反応液中の凝集化剤(水溶性多価金属塩など)は、このようなアニオン性基を有する自己分散型顔料やアニオン性分散剤とイオン的相互作用により会合体を形成する。
【0032】
また、本発明に係る反応液としては、水性インクと接触してその分散又は溶解状態を破壊し、該インクを凝集させ得るものであればよく、例えば、金属塩又は有機系カチオン物質等を凝集化剤とし、該凝集化剤を水に溶解又は分散させたものを用いることができる。特に好ましい反応液は、少なくとも水溶性多価金属塩及び水を含有するものである。水溶性多価金属塩は、二価以上の多価金属イオンとこれに結合する陰イオンとから構成される水に可溶な塩であり、無水物でもよく、水和物でもよい。多価金属イオンの具体例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+、Fe2+、Zr2+等などの二価金属イオン、Al3+、Fe3+、Cr3+、Zr3+、Zr4+などの三価金属イオンが挙げられる。一方、陰イオンの具体例としては、Cl−、NO3 −、I−、Br−、ClO3 −、CH3COO−、F−、SO4 2−、SO3 2−などが挙げられる。なかでも、Mg2+より構成される金属塩、とりわけ、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウムは、得られる記録物の品質、記録ヘッドに対する影響(腐食性)、安全性(毒性)、コストという4つの観点から、好適な結果を与える。水溶性多価金属塩の反応液中における含有量は、印字品質、吐出安定性、記録ヘッドの腐食防止などを考慮して適宜調整すればよいが、好ましくは0.5〜20重量%程度である。
【0033】
上記反応液には、印字品質の向上、乾燥防止などを目的として、必要に応じ、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などの界面活性剤や、グリコール類、グリコールエーテル類などの各種有機溶剤、トリエタノールアミン等のpH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤などを適宜含有させることができる。
【0034】
上記反応液は、記録媒体への適度な濡れ性及び吐出安定性の2つの観点から、表面張力20〜45mN/m、pH6.5〜10、液温20℃における粘度2〜10mPa・sであることが好ましい。インクについても、概ね、このような物性値を有することが好ましい。これらの物性値の調整は、上記の各成分の種類、含有量などを調整することで行うことができる。
【0035】
尚、本発明が適用可能な記録媒体については特に制限されるものではなく、基材上にシリカなどを主成分とするインク受容層を設けた構成のインクジェット専用紙は勿論のこと、このようなインクジェット記録方式に適合した特性が付与されていない普通紙も好適に用いることができる。例えば、上質紙、再生紙、コピー用紙、ボンド紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、樹脂被覆紙(レジンコート紙)、バライタ紙、板紙、和紙、不織布;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム等が挙げられる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、使用するインクの種類、記録ヘッドにおける各吐出部(複数のインク吐出部及び反応液吐出部)の配置形態、吐出口の配列パターン、インク及び反応液の吐出順序、吐出パターンなどは、上記実施形態に限定されず適宜変更可能である。
【0037】
また記録ヘッドは、上記のような電気−機械変換方式のものに限定されず、電極などの静電気力発生手段を利用したものでも良く、ヒータなどの電気−熱変換素子を利用したもの(電気−熱変換方式)でもよい。後者の電気−熱変換方式は、電気−熱変換素子により液体中に気体(バブル)を発生させ、この力で該液体を吐出させるインク吐出方式であり、この方式の記録ヘッドとしては、例えば、キャノン社製のバブルジェット(登録商標)ヘッドが挙げられる。さらに記録ヘッドは、上記実施形態のような、記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドでもよく、記録ヘッドとは別に配置されたインクタンクからチューブなどを介してインク又は反応液を供給するタイプの記録ヘッドでもよい。
【0038】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び本発明の効果を示す試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例により何等制限されるものではない。
【0039】
〔反応液の調製〕
下記〔表1〕に示す反応液1〜6をそれぞれ調製した。反応液の調製は、容器内で各成分を混合し、常温で30分攪拌した後、5μmのメンブランフィルターで濾過することにより行った。
【0040】
【表1】
【0041】
〔インクジェット記録〕
ピエゾ駆動型のマルチヘッドタイプの記録ヘッドを搭載した、市販の水性顔料インク対応のインクジェットプリンタ(PX−10000、セイコーエプソン製)において、その記録ヘッドにおける各ヘッドの配置を図2に示すような配置にし、その2つの反応液吐出用ヘッドに対応するインクカートリッジに、上記手順で調製した反応液を充填した。このインクジェットプリンタを用いて、記録媒体(OKトップコートN、王子製紙製)に対して、上記記録モードA又は上記記録モードBの選択基準となる上記基準値(バンド毎に算出されるインクの総記録デューティー)と、1バンド当たりの反応液の記録デューティーを適宜変更させて、インクジェット記録を行い、解像度720dpi×720dpi、1440dpi×720dpiのカラー画像(人物画)を出力した。これは、例えば該基準値を80%に設定した場合において、あるバンドについてのインクの総記録デューティーが80%以上の場合には、そのバンドの記録を上記記録モードAで行い、80%未満の場合には、上記記録モードBで行うことを意味する。尚、反応液は、インクを吐出させる箇所にのみ選択的に吐出させるようにした。
【0042】
〔吐出信頼性の評価〕
上記インクジェット記録により得られた記録物の記録面を目視で観察し、下記評価基準により評価した。反応液1〜6それぞれを用いて得られた該記録物についての評価結果は全て同じであったので、反応液1(硫酸マグネシウム含有)を用いた場合についての結果を下記〔表2〕に示す。
評価基準
A:ドット抜けや着弾位置のズレが全く観察されない。吐出信頼性に優れる。
B:着弾位置のズレが認められるが、自然に回復する。吐出信頼性良好。
C:着弾位置のズレが認められる。クリーニング動作で回復。実用上問題なし。
D:ドット抜けが発生。実用不可。
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、インクを凝集させる性質を有する反応液を用いながらも、インクジェット信頼性の低下や記録速度の低下といった、該反応液に起因する種々の弊害の発生を防止し、画像濃度が高く、にじみやムラのない高画質の記録物を安定して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のインクジェット記録装置の概略構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示す記録ヘッドの吐出口形成面の概略構成図である。
【図3】図1に示すインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示すインクジェット記録装置の記録動作の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…プリンタ
2…紙送りローラ
3…用紙スタッカ
4…プラテン
5…キャリッジ
6…記録ヘッド
6Y、6K、6M、6C…インク吐出部
6R1、6R2…反応液吐出部
7…キャリッジモータ
8…タイミングベルト
9…ガイドレール
10…回復ユニット
11…キャップ部
12…記録ヘッドユニット
Nz…吐出口
M…記録媒体
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関し、詳しくは、インク凝集能を有する反応液を使用し、画像濃度が高く、にじみやムラのない高画質の記録物を提供し得るインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
インクジェット記録方法は、記録ヘッドの吐出口からインクの液滴を吐出させ、紙などの記録媒体にインクを付着させて画像を記録する印刷方式である。従来から、インクと、該インクを瞬間的に凝集させる物質を含有させた反応液(処理液、記録性向上液などとも呼ばれる)とを使用し、これらを記録ヘッドから吐出させて記録媒体上で接触させることにより、画像濃度が高く、にじみやムラのない高画質の記録物を得る技術が知られている。
【0003】
上記技術に関し、例えば、1)記録媒体上に形成される記録ドットの分布状態に応じて、処理液用ヘッドによる処理液ドットの形成位置を制御するインクジェット記録装置(特許文献1参照)、2)被プリント材上へ少なくとも1回以上有色インクのプリントを行った後、当該有色インクプリント画像領域上に少なくとも1回以上プリント性向上液を付与し、かつ当該画像領域に少なくとも1回以上有色インクのプリントを行うインクジェットプリント方法(特許文献2参照)、3)画像を構成する複数の画素に対応した入力画像データに応じて、被記録材上の画像が形成される領域が、記録性向上液およびインクが吐出される領域とインクのみが吐出される領域とに分かれるようにして、インク中の染料を不溶化または凝集させるための記録性向上液を画像データに応じて本来のデータよりも減らして吐出させるインクジェット記録方法(特許文献3参照)、4)記録ヘッドの走査方向におけるインク吐出口群の両側に、第1、第2の処理液吐出口群を位置させ、インク吐出口群からインクを吐出させるためのデータに基づいて、第1、第2の処理液吐出口群から処理液を吐出させるための処理液データを生成することにより、処理液の吐出量を最適に設定したインクジェット記録方法(特許文献4参照)などが知られている。
【0004】
しかしながら、上記1)〜4)の如きインクジェット記録技術においては、記録ヘッドの吐出口あるいはその周縁部などに、反応液により凝集固化したインクや埃などの異物が付着し、いわゆる目詰まりや、吐出方向の不安定化(いわゆる飛行曲がり)などを引き起こすという問題がある。この異物の付着は、主液滴に続いて飛翔する微少な液滴(ミスト)や、吐出された液滴の記録媒体からの跳ね返りなどが原因と考えられている。上記1)〜4)の技術は、いずれも反応液の機能を最大限に発揮させて画質の改善を図ることを目的としており、上記特許文献1〜4には、このようなミストや跳ね返りに起因する問題については特に記載されておらず、自ずと、その回避手段については何等記載されていない。
【0005】
反応液を使用することによる上記問題を回避する技術としては、例えば、5)記録媒体の所定領域におけるインクの記録デューティに対応する値が所定値より大きいときは、該所定領域を複数回の走査に分割すると共に、複数種類のインクに対応した異なる分割方法で記録を行うインクジェット記録方法が知られている(特許文献5参照)。この方法によれば、例えば記録ヘッドの1回の走査で記録される所定領域の記録デューティーが所定値以上であるときは、その所定領域を複数回に分けて記録することにより、その複数回の記録の1回当りの記録デューティーを小さくすることができ、これにより、インク等液体の吐出頻度を低下させることができるため、ミストや跳ね返りによる記録ヘッドの汚れを低減することができるとされている。
【0006】
しかしながら上記の方法は、1走査当たりの記録デューティーを減少させることにより、反応液やインクの記録媒体からの跳ね返りはある程度抑制できても、1走査(パス)において反応液とインクとを実質的に時間を置かずに連続的に吐出させるため、両者のミストに起因する目詰まりや飛行曲がりを有効に防止することができない。また、上記の方法は、1バンド(ライン)の記録を行うのに3走査(パス)以上を要する場合があり、記録速度の大幅な低下は否めない。
【0007】
従って、本発明の目的は、インクを凝集させる性質を有する反応液を用いながらも、記録速度の低下を招かずに、ミストや跳ね返りなどに起因する目詰まりや飛行曲がりを防止することが可能で、画像濃度が高く、にじみやムラのない高画質の記録物を安定して提供し得るインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−52867号公報
【特許文献2】
特開平8−281933号公報
【特許文献3】
特開平8−281974号公報
【特許文献4】
特開2001−138554号公報
【特許文献5】
特開2000−127355号公報
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のインクジェット記録方法は、記録媒体を順次搬送すると共に、インクを吐出するインク吐出部及び該インクを凝集させる性質を有する反応液を吐出する反応液吐出部が、走査方向に並列に配置された記録ヘッドを、該記録媒体の搬送方向と直交する方向に往復走査させることにより、該記録媒体に対してバンド単位で順次記録を行うインクジェット記録方法において、上記各バンド毎に、そのバンドにおける上記インクの総記録デューティーの情報に応じて、(1)上記記録ヘッドの往復走査の往路で上記反応液を吐出し、その復路で上記インクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードA、又は(2)上記記録ヘッドの往復走査の往路又は復路のいずれか一方で、上記反応液及び上記インクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードBのいずれかを選択し、選択された記録モードに従ってそのバンドの記録を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体を順次搬送すると共に、インクを吐出するインク吐出部及び該インクを凝集させる性質を有する反応液を吐出する反応液吐出部が、走査方向に並列に配置された記録ヘッドを、該記録媒体の搬送方向と直交する方向に往復走査させることにより、該記録媒体に対してバンド単位で順次記録を行うインクジェット記録装置において、上記各バンド毎に、そのバンドにおける上記インクの総記録デューティーの情報に応じて、記録モードを選択するモード選択手段を備え、上記記録モードとして、少なくとも、(1)上記記録ヘッドの往復走査の往路で上記反応液を吐出し、その復路で上記インクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードA、及び(2)上記記録ヘッドの往復走査の往路又は復路のいずれか一方で、上記反応液及び上記インクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードBを有し、上記モード選択手段により選択された上記記録モードA又は上記記録モードBのいずれかに従って、1バンドの記録を行うようになしたことを特徴とする。
【0011】
上記のような構成の本発明によれば、1バンド当たりに吐出されるインクの総量(総記録デューティー)が一定以上の場合には、反応液とインクとを2回の走査で(往路と復路で)別々に吐出させるようにしたので、ミストや跳ね返りによる記録ヘッド(吐出部)の汚れを有効に防止することができ、目詰まりや飛行曲がりの少ない信頼性の高いインクジェット記録が可能となる。またこの方法では、1バンドの記録を行うのに要する走査回数(パス数)は、多くても2回であるため、記録速度の低下を最小限に抑えることができ、高画質の記録物を安定して出力することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置の概略構成を示した斜視図である。このインクジェット記録装置(プリンタ)1は、図示しない紙送りモータで駆動される紙送りローラ2によって、用紙スタッカ3から記録媒体Mを巻き取ってプラテン4位置に搬送し、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6により記録を行った後、矢標Yで示す方向(副走査方向)に記録媒体Mを搬送するようになしてある。キャリッジ5は、キャリッジモータ7によって駆動されるタイミングベルト8に連結されており、2本のガイドレール9によって、矢標X1又はX2方向(記録媒体Mの搬送方向Yと直交する主走査方向X)に往復走査可能に案内支持されている。キャリッジ5には、記録ヘッド6にインクや反応液を供給するインクタンクを含む記録ヘッドユニット12が搭載されている。本実施形態では、インクとして、イエロー(Y)、ブラック(K)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の4色の水性顔料インクが用いられている。
【0014】
また、キャリッジ5が移動可能な領域の一端側は、記録ヘッド6のホームポジションとなっており、その下部には、吐出不良を起こした記録ヘッドの吐出回復や吐出不良を未然に防止するために利用される回復ユニット10が配置されている。回復ユニット10は、キャップ部11により、記録ヘッド6の吐出口形成面(記録媒体Mと対向する面)を覆い、図示しない吸引ポンプを作動させて、吐出口から増粘あるいは固化したインクや埃などの異物や気泡などを強制的に排出させ、図示しない廃液タンクにこれらを貯蔵するようになっている。また、回復ユニット10には、記録ヘッド6の吐出口形成面に付着した不要なインクやゴミなどを掃除するクリーニング動作に使用する、ゴムなどの弾性材料で形成されたワイパー部材が設けられている(図示せず)。この回復ユニット10自体の構成は、この種のインクジェット記録装置における回復ユニットと同様である。
【0015】
図2は、記録ヘッド6の吐出口形成面(記録媒体Mと対向する面)の概略構成図である。記録ヘッド6は、上記YKMCの4色のインクをそれぞれ吐出する4つのインク吐出部6Y、6K、6M、6Cと、該インクを凝集させる性質を有する反応液を吐出する2つの反応液吐出部6R1、6R2とが、該記録ヘッド6の主走査方向Xに並列に集積配置された構成のいわゆるマルチヘッドである。各吐出部は、それぞれ、該主走査方向Xと直交する副走査方向Yに配列された複数の吐出口Nzを有し、各吐出口Nzからインク又は反応液を吐出する。複数の吐出口Nzがこのように配列された記録ヘッド6を、X1及び/又はX2方向に往復走査させて記録を行うことにより、一度の走査で帯状の記録領域(バンド)が記録媒体M上に形成される。このような記録ヘッド6の走査と、記録媒体Mの矢標Y方向への搬送とを繰り返すことにより、バンド単位で順次記録が行われ、最終的に所望の画像が形成されることになる。
【0016】
6つの上記各吐出部は、それぞれ基本的にこの種のインクジェット記録装置における記録ヘッドと同様に構成されており、インク供給路、該インク供給路の一部に設けられるエネルギー作用部、該エネルギー作用部にあるインク又は反応液に作用させる液滴形成エネルギーを発生するエネルギー発生手段(何れも図示せず)等を備えている。本実施形態では、エネルギー発生手段として、電気−機械変換素子を備えている。電気−機械変換方式の記録ヘッドは、他の方式の記録ヘッドに比して、顔料インクの吐出安定性に優れるため、顔料インクを用いたインクジェット記録に特に好適である。電気−機械変換素子としては、ピエゾ素子が好ましく用いられる。ピエゾ素子は、周知のように、電圧の印加により結晶構造が歪み、極めて高速に電気−機械エネルギーの変換を行う素子(圧電素子)である。上記各吐出部の適当な位置に配置されたピエゾ素子に、所定の時間幅の電圧を印加することにより、該ピエゾ素子が電圧の印加時間だけ伸張し、これによりインク供給路の容積が収縮して、この収縮分に相当するインク又は反応液が液滴となって吐出口Nzから高速吐出される。
【0017】
尚、上記各吐出部は、上記主走査方向Xに並列に配置されていればよく、各吐出部の配置順序は特に限定されるものではないが、好ましい配置順序は、上記反応液により凝集され易いインクを吐出するインク吐出部ほど、上記反応液吐出部から離間するような配置順序である。各吐出部をこのような順序で配置することにより、後述する特定の記録モードを用いることと相俟って、記録動作中に各吐出部から発生するミスト(主液滴に続いて飛翔する微小な液滴)や吐出された液滴の記録媒体からの跳ね返りなどに起因する吐出口の汚れをより有効に防止することができ、信頼性のより高いインクジェット記録が可能となる。例えば、後述する水溶性多価金属塩含有タイプの反応液を使用する場合、Y、K、M、Cの4色の水性顔料インクでは、通常、C、M、K、Yの順に該反応液との反応性が高いので、この場合の各インク吐出部の配置順序は、図2に示すように、記録ヘッド6の吐出口形成面の主走査方向Xの一端側に配置された反応液吐出部(6R1、6R2)に近い方から順に、6Y、6K、6M、6Cとすることが好ましい。
【0018】
図3は、上述したプリンタ1の制御構成を示すブロック図である。パーソナルコンピュータ等のホスト装置15から転送される文字や画像のデータ(画像データ)は、記録媒体Mの種別を示す情報その他の各種指示情報等と共に、入出力バッファ20に一時的に格納される。一方、入出力バッファ20からは、画像データの転送確認データの他、プリンタ1の動作状態を示すデータなどがホスト装置15に転送される。入出力バッファ20に格納された画像データは、制御部21によって読み出され、その内部で展開される。
【0019】
制御部21は、プリンタ1全体を制御するもので、マイクロコンピュータ等のCPU22、CPU22により実行される制御プログラムや各種データ等を格納したROM23、CPU22による処理の実行時におけるワークエリアとして使用されるRAM24などを備えている。25は、上記紙送りローラ2を駆動させるための紙送りモータ26を駆動するモータドライバ、27は、上記キャリッジ5をX1又はX2方向に走査させるための上記キャリッジモータ7を駆動するモータドライバ、28は、制御部21からの信号に基づいて記録ヘッド6を構成する上記各吐出部6R1、6R2、6Y、6K、6M、6Cを駆動するヘッドドライバである。
【0020】
また制御部21は、上記画像データに基づき、記録ヘッド6から吐出されるインクの記録デューティーを各バンド毎に計算するデューティー計算手段と、その計算結果に基づいて記録モードを選択するモード選択手段とを備える。「記録デューティー」とは、各色(本実施形態ではY、K、M、Cの4色)についての、記録ヘッドの一方向(X1又はX2方向)への1回の走査で可能な最大の吐出回数に対する実際の吐出回数の割合(%)を意味する。例えば、1ドットが1回の吐出によって形成される態様にあっては、1回の走査領域で記録可能な画素数に対する実際に形成されるドット数の割合が、該記録デューティーに相当する。尚、このようなデューティー計算手段及びモード選択手段としての機能は、ホスト装置15側に持たせることもできる。
【0021】
図4は、上述したプリンタ1の記録動作の手順を示すフローチャートである。先ず、ホスト装置から画像データを受信し(S1)、この受信した画像データに必要な処理を施して、記録ヘッドによる記録に適した記録データにする(S2)。次に、この記録データに基づき、上記デューティー計算手段により、各バンド毎にそのバンドに吐出すべき各インクの記録デューティーをそれぞれ計算し(S3)、求めた各インクの記録デューティーを各バンド毎に合計して、各バンドにおけるインクの総記録デューティーを求める(S4)。
【0022】
そして、上記ステップS4で求めた総記録デューティー(%)が、予め定められた基準値よりも大きいか否かを判断する(S5)。その結果、総記録デューティーが基準値以上であれば、そのバンドの記録は後述する記録モードAで行い(S6)、総記録デューティーが基準値未満であれば、そのバンドの記録は後述する記録モードBで行う(S7)。このような、バンド単位での記録モードの選択処理を繰り返すことにより、上記記録データ全体をどのように記録するか(記録態様)が決定され(S8)、決定された記録態様に従って、全てのバンドが終了するまで記録を行う(S9)。
【0023】
上記記録モードAは、上記のようにインクの総記録デューティーが基準値以上となるバンド、即ち、吐出されるインクの量が比較的多いバンドに対して適用されるもので、記録ヘッドの往復走査の往路で反応液を吐出し、その復路でインクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードである。一方、上記記録モードBは、記録モードAが適用されないバンド、即ち、吐出されるインクの量が比較的少ないバンドに対して適用されるもので、記録ヘッドの往復走査の往路又は復路のいずれか一方で(通常は往路で)、反応液及びインクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードである。このように、1バンド当たりに吐出されるインクの総量に着目し、該総量が一定以上の場合には、反応液とインクとを同一走査で吐出させず、2回の走査で(往路と復路で)別々に吐出させることで、ミストや跳ね返りによる記録ヘッド(吐出部)の汚れを有効に防止することができ、目詰まりや飛行曲がりの少ない信頼性の高いインクジェット記録が可能となる。またこの方法では、1バンドの記録を行うのに要する走査回数(パス数)は、多くても2回であるため、記録速度の低下を最小限に抑えることができる。
【0024】
このような記録モードの選択の基準となる上記基準値(総記録デューティー)は、使用するインクや反応液の種類などによって変化するが、好ましくは100%、さらに好ましくは80%である。即ち、上記総記録デューティーが100%以上、好ましくは80%以上の場合には、そのバンドの記録を上記記録モードAで行い、100%未満、好ましくは80%未満の場合には、そのバンドの記録を上記記録モードBで行うようにすることで、ミストや跳ね返りなどに起因する吐出口の目詰まりや飛行曲がりなどの弊害が回避され、より安定した高速記録が可能となる。
【0025】
上記記録モードAは、例えば、上述した実施形態において次のように実行することができる。即ち、記録ヘッド6がX1方向に走査される場合(往路)、反応液吐出部6R1及び/又は6R2から記録媒体Mに対して所定量の反応液が所定のパターンで吐出され、当該バンドに反応液付着領域が形成されていく。このとき、インク吐出部6Y、6K、6M、6Cからは何も吐出されない。X1方向への走査が終了すると、記録ヘッド6はX2方向に向かって走査される(復路)。この復路においては、インク吐出部6C、6M、6K、6Yから、往路で形成された上記反応液付着領域に対して所定量のインクが所定のパターンでそれぞれ吐出される。このとき、反応液吐出部6R1及び6R2からは何も吐出されない。そして、記録ヘッド6が記録可能領域のX2方向終端に到達すると、当該バンドの記録が終了となる。
【0026】
一方、上記記録モードBは、例えば、上述した実施形態において次のように実行することができる。即ち、記録ヘッド6がX1方向に走査される場合(往路)、先ず、反応液吐出部6R1及び/又は6R2から記録媒体Mに対して所定量の反応液が所定のパターンで吐出され、続いてインク吐出部6Y、6K、6M、6Cそれぞれから所定量のインクが所定のパターンで、先に吐出された反応液の付着領域に重ねて吐出される。そして、X1方向への走査が終了すると、今度はX2方向に向かって記録ヘッド6は走査されるが、この復路では各吐出部からは何も吐出されず、記録ヘッド6は所定の待機位置に戻るだけである。したがってこの例では、記録ヘッド6が記録可能領域のX1方向終端に到達した時点で、当該バンドの記録が終了となる。
【0027】
上記記録モードA又は上記記録モードBにおける反応液の吐出量は特に限定されず、使用する反応液の種類などに応じて適宜調整すればよい。反応液の1バンド当たりの好ましい吐出量は、吐出安定性と記録品質とのバランスの観点から、上記記録デューティーに換算して30〜60%、特に、40〜60%である。また、反応液の吐出パターンとしては、特に限定されず、バンドの全体に亘って均一に吐出させるパターンでもよく、インクを吐出させる箇所にのみ選択的に吐出させるパターンでもよい。
【0028】
以下、本発明に係るインク及び反応液について説明する。
【0029】
本発明に係るインクとしては、インクジェット記録で使用可能な水性インクであればよく、特に制限されないが、反応液による画質向上効果を最大限発揮させる観点から、水性顔料インクが好ましい。一般に、インクジェット記録用の水性顔料インクには、顔料系色材及び水の他に、印字品質の向上、乾燥防止などを目的として、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などの界面活性剤や、グリコール類、グリコールエーテル類などの各種有機溶剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤などが含有されている。顔料系色材の含有量は、インク中、通常、0.5〜30重量%程度である。尚、使用可能なインクの色種は、上記実施形態のようなYMCKの4色に限定されるものではなく、YMCの減法混色の3原色の組み合わせを用いてもよく、さらに、ライトマゼンタ、ライトシアンなどの所望の色のインクを組み合わせた5色以上のインクの組み合わせを用いてもよい。
【0030】
上記顔料系色材としては、例えば、酸化チタン及び酸化鉄、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックなどの無機系顔料;アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどの有機系顔料などが挙げられる。
【0031】
また、上記顔料系色材は、界面活性剤等の分散剤が無添加あるいはごく少量添加の水性媒体中に分散及び/又は溶解が可能ないわゆる自己分散型顔料(表面改質顔料などとも呼ばれる)でもよく、自己分散型ではない通常の顔料でもよい。自己分散型顔料は、一般に、顔料表面にカルボキシル基などのアニオン性基が結合されている。また、自己分散型ではない通常の顔料を使用する場合は、分散剤として、高級脂肪酸塩や高級アルコール硫酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、あるいはポリアクリル酸塩などのアニオン性高分子が顔料と共に併用される。本発明に係る反応液中の凝集化剤(水溶性多価金属塩など)は、このようなアニオン性基を有する自己分散型顔料やアニオン性分散剤とイオン的相互作用により会合体を形成する。
【0032】
また、本発明に係る反応液としては、水性インクと接触してその分散又は溶解状態を破壊し、該インクを凝集させ得るものであればよく、例えば、金属塩又は有機系カチオン物質等を凝集化剤とし、該凝集化剤を水に溶解又は分散させたものを用いることができる。特に好ましい反応液は、少なくとも水溶性多価金属塩及び水を含有するものである。水溶性多価金属塩は、二価以上の多価金属イオンとこれに結合する陰イオンとから構成される水に可溶な塩であり、無水物でもよく、水和物でもよい。多価金属イオンの具体例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+、Fe2+、Zr2+等などの二価金属イオン、Al3+、Fe3+、Cr3+、Zr3+、Zr4+などの三価金属イオンが挙げられる。一方、陰イオンの具体例としては、Cl−、NO3 −、I−、Br−、ClO3 −、CH3COO−、F−、SO4 2−、SO3 2−などが挙げられる。なかでも、Mg2+より構成される金属塩、とりわけ、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウムは、得られる記録物の品質、記録ヘッドに対する影響(腐食性)、安全性(毒性)、コストという4つの観点から、好適な結果を与える。水溶性多価金属塩の反応液中における含有量は、印字品質、吐出安定性、記録ヘッドの腐食防止などを考慮して適宜調整すればよいが、好ましくは0.5〜20重量%程度である。
【0033】
上記反応液には、印字品質の向上、乾燥防止などを目的として、必要に応じ、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などの界面活性剤や、グリコール類、グリコールエーテル類などの各種有機溶剤、トリエタノールアミン等のpH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤などを適宜含有させることができる。
【0034】
上記反応液は、記録媒体への適度な濡れ性及び吐出安定性の2つの観点から、表面張力20〜45mN/m、pH6.5〜10、液温20℃における粘度2〜10mPa・sであることが好ましい。インクについても、概ね、このような物性値を有することが好ましい。これらの物性値の調整は、上記の各成分の種類、含有量などを調整することで行うことができる。
【0035】
尚、本発明が適用可能な記録媒体については特に制限されるものではなく、基材上にシリカなどを主成分とするインク受容層を設けた構成のインクジェット専用紙は勿論のこと、このようなインクジェット記録方式に適合した特性が付与されていない普通紙も好適に用いることができる。例えば、上質紙、再生紙、コピー用紙、ボンド紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、樹脂被覆紙(レジンコート紙)、バライタ紙、板紙、和紙、不織布;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム等が挙げられる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、使用するインクの種類、記録ヘッドにおける各吐出部(複数のインク吐出部及び反応液吐出部)の配置形態、吐出口の配列パターン、インク及び反応液の吐出順序、吐出パターンなどは、上記実施形態に限定されず適宜変更可能である。
【0037】
また記録ヘッドは、上記のような電気−機械変換方式のものに限定されず、電極などの静電気力発生手段を利用したものでも良く、ヒータなどの電気−熱変換素子を利用したもの(電気−熱変換方式)でもよい。後者の電気−熱変換方式は、電気−熱変換素子により液体中に気体(バブル)を発生させ、この力で該液体を吐出させるインク吐出方式であり、この方式の記録ヘッドとしては、例えば、キャノン社製のバブルジェット(登録商標)ヘッドが挙げられる。さらに記録ヘッドは、上記実施形態のような、記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドでもよく、記録ヘッドとは別に配置されたインクタンクからチューブなどを介してインク又は反応液を供給するタイプの記録ヘッドでもよい。
【0038】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び本発明の効果を示す試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例により何等制限されるものではない。
【0039】
〔反応液の調製〕
下記〔表1〕に示す反応液1〜6をそれぞれ調製した。反応液の調製は、容器内で各成分を混合し、常温で30分攪拌した後、5μmのメンブランフィルターで濾過することにより行った。
【0040】
【表1】
【0041】
〔インクジェット記録〕
ピエゾ駆動型のマルチヘッドタイプの記録ヘッドを搭載した、市販の水性顔料インク対応のインクジェットプリンタ(PX−10000、セイコーエプソン製)において、その記録ヘッドにおける各ヘッドの配置を図2に示すような配置にし、その2つの反応液吐出用ヘッドに対応するインクカートリッジに、上記手順で調製した反応液を充填した。このインクジェットプリンタを用いて、記録媒体(OKトップコートN、王子製紙製)に対して、上記記録モードA又は上記記録モードBの選択基準となる上記基準値(バンド毎に算出されるインクの総記録デューティー)と、1バンド当たりの反応液の記録デューティーを適宜変更させて、インクジェット記録を行い、解像度720dpi×720dpi、1440dpi×720dpiのカラー画像(人物画)を出力した。これは、例えば該基準値を80%に設定した場合において、あるバンドについてのインクの総記録デューティーが80%以上の場合には、そのバンドの記録を上記記録モードAで行い、80%未満の場合には、上記記録モードBで行うことを意味する。尚、反応液は、インクを吐出させる箇所にのみ選択的に吐出させるようにした。
【0042】
〔吐出信頼性の評価〕
上記インクジェット記録により得られた記録物の記録面を目視で観察し、下記評価基準により評価した。反応液1〜6それぞれを用いて得られた該記録物についての評価結果は全て同じであったので、反応液1(硫酸マグネシウム含有)を用いた場合についての結果を下記〔表2〕に示す。
評価基準
A:ドット抜けや着弾位置のズレが全く観察されない。吐出信頼性に優れる。
B:着弾位置のズレが認められるが、自然に回復する。吐出信頼性良好。
C:着弾位置のズレが認められる。クリーニング動作で回復。実用上問題なし。
D:ドット抜けが発生。実用不可。
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、インクを凝集させる性質を有する反応液を用いながらも、インクジェット信頼性の低下や記録速度の低下といった、該反応液に起因する種々の弊害の発生を防止し、画像濃度が高く、にじみやムラのない高画質の記録物を安定して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のインクジェット記録装置の概略構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示す記録ヘッドの吐出口形成面の概略構成図である。
【図3】図1に示すインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示すインクジェット記録装置の記録動作の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…プリンタ
2…紙送りローラ
3…用紙スタッカ
4…プラテン
5…キャリッジ
6…記録ヘッド
6Y、6K、6M、6C…インク吐出部
6R1、6R2…反応液吐出部
7…キャリッジモータ
8…タイミングベルト
9…ガイドレール
10…回復ユニット
11…キャップ部
12…記録ヘッドユニット
Nz…吐出口
M…記録媒体
Claims (10)
- 記録媒体を順次搬送すると共に、インクを吐出するインク吐出部及び該インクを凝集させる性質を有する反応液を吐出する反応液吐出部が、走査方向に並列に配置された記録ヘッドを、該記録媒体の搬送方向と直交する方向に往復走査させることにより、該記録媒体に対してバンド単位で順次記録を行うインクジェット記録方法において、
上記各バンド毎に、そのバンドにおける上記インクの総記録デューティーの情報に応じて、(1)上記記録ヘッドの往復走査の往路で上記反応液を吐出し、その復路で上記インクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードA、又は(2)上記記録ヘッドの往復走査の往路又は復路のいずれか一方で、上記反応液及び上記インクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードBのいずれかを選択し、選択された記録モードに従ってそのバンドの記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。 - 上記総記録デューティーが100%以上の場合には、そのバンドの記録を上記記録モードAで行い、100%未満の場合には、そのバンドの記録を上記記録モードBで行うことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録方法。
- 上記反応液の1バンド当たりの記録デューティーを30〜60%とすることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録方法。
- 上記インクが水性顔料インクであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
- 上記反応液が、少なくとも水溶性多価金属塩及び水を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
- 上記水溶性多価金属塩が、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム及び硝酸マグネシウムからなる群から選ばれるいずれか1種以上であることを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録方法。
- 記録媒体を順次搬送すると共に、インクを吐出するインク吐出部及び該インクを凝集させる性質を有する反応液を吐出する反応液吐出部が、走査方向に並列に配置された記録ヘッドを、該記録媒体の搬送方向と直交する方向に往復走査させることにより、該記録媒体に対してバンド単位で順次記録を行うインクジェット記録装置において、
上記各バンド毎に、そのバンドにおける上記インクの総記録デューティーの情報に応じて、記録モードを選択するモード選択手段を備え、
上記記録モードとして、少なくとも、(1)上記記録ヘッドの往復走査の往路で上記反応液を吐出し、その復路で上記インクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードA、及び(2)上記記録ヘッドの往復走査の往路又は復路のいずれか一方で、上記反応液及び上記インクを吐出することにより、1バンドの記録を行う記録モードBを有し、
上記モード選択手段により選択された上記記録モードA又は上記記録モードBのいずれかに従って、1バンドの記録を行うようになしたことを特徴とするインクジェット記録装置。 - ホスト装置から転送される画像データに基づき、上記インクの記録デューティーを上記各バンド毎に計算するデューティー計算手段を備えることを特徴とする請求項7記載のインクジェット記録装置。
- 上記インク吐出部及び上記反応液吐出部が、それぞれ、上記インク又は上記反応液の吐出に利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生手段として、電気−機械変換素子を備えることを特徴とする請求項7又は8記載のインクジェット記録装置。
- 上記インク吐出部が複数色のインクに対応する複数のインク吐出部からなり、複数の該インク吐出部は、上記走査方向に並列に且つ上記反応液により凝集され易いインクを吐出するインク吐出部ほど上記反応液吐出部から離間するように、配置されていることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008238773A (ja) * | 2007-03-29 | 2008-10-09 | Brother Ind Ltd | 画像形成装置 |
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-
2003
- 2003-06-16 JP JP2003170695A patent/JP2005007578A/ja not_active Withdrawn
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