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JP2005046944A - 工作機械の熱変位補正方法およびその装置 - Google Patents

工作機械の熱変位補正方法およびその装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 一つの移動体位置検出器を移動体に簡単に取付けてボールねじの熱変位による移動体の位置変化量を容易に測定することができ、ボールねじの熱変位に対する補正を高精度に行なって加工誤差を補正する工作機械の熱変位補正方法を提供する。
【解決手段】 熱変位補正方法は、X軸方向に関する加工位置の近傍の一箇所の測定位置P2で、ボールねじの熱変位による移動体20の位置変化量λ1,λ2を検出器42により直接測定し、この測定された移動体の位置変化量に対応して、移動体に支持されている工作物の座標系の原位置を補正し、この補正された新たな原位置に基づいて、移動体のX軸方向の移動動作を制御する。
【選択図】 図7

Description

本発明は、一箇所の測定位置で移動体位置検出器によりボールねじの熱変位による移動体の位置変化量を測定して熱変位補正を行う、工作機械の熱変位補正方法およびその装置に関する。
工作機械には、工作物または工具を支持する移動体を移動させるのに、ボールねじを用いた送り機構を使用する場合が多い。ボールねじは、そのねじ軸をサーボモータで回転させることにより、ねじ軸に螺合しているボールナットを直線移動させて、ボールナットに固定された移動体を移動させる。
しかしながら、ボールねじを駆動すると、ねじ軸,ボールナットおよび内部の鋼球の摩擦によって熱が発生し、ねじ軸が熱膨張により伸びるので、このねじ軸の変形は工作機械の加工精度に大きく影響する。
そこで、ボールねじの熱変位を補正する技術が、特許第2698069号公報(特許文献1)に提案されている。
特許第2698069号公報
前記特許文献1に記載されたボールねじの熱変位補正装置は、ボールねじのねじ軸に二つの測定部位を設け、二個の変位センサをボールねじの変形の影響を受けない位置に配置し、それぞれ二つの測定部位のうちの一方の変位を測定するように構成している。
すなわち、この従来技術は、ボールねじの熱変位による移動体の位置変化量を、加工位置またはその近傍で直接測定するようにはなっておらず、ボールねじの軸線と平行な方向に関して測定部位は加工位置とは離れている。
また、移動体の位置変化量を直接測定するのではなく、ボールねじのねじ軸に設けられた二つの測定部位でそれぞれ測定した二つの隙間寸法のデータに基づいて、移動体の位置変化量を間接的に演算するようにしている。
したがって、この従来技術では、ボールねじの熱変位に対する補正の精度が低下する恐れがあった。
この従来技術は、ボールねじのねじ軸の全体が均一に熱膨張して伸びるのを前提として、二つの測定部位での測定結果に基づいて、移動体の位置変化量を演算している。その結果、もし、ボールねじのねじ軸全体が不均一に熱膨張した場合には、熱変位補正の精度が低下する恐れがあった。
また、ボールねじのねじ軸に二つの測定部位を設けるのは、スペース的,構造的に困難な場合が多かった。
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、一つの移動体位置検出器を移動体に簡単に取付けてボールねじの熱変位による移動体の位置変化量を容易に測定することができ、ボールねじの熱変位に対する補正を高精度に行なって加工誤差を補正することができる工作機械の熱変位補正方法およびその装置を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するため、本発明にかかる工作機械の熱変位補正方法は、工作物または工具を支持する移動体がボールねじを介して少なくともこのボールねじの軸線と平行な第1の方向に移動し、加工位置で前記工具により前記工作物を加工する工作機械における熱変位補正方法であって、前記第1の方向に関する前記加工位置またはその近傍の一箇所の測定位置で、前記ボールねじの熱変位による前記移動体の位置変化量を一つの移動体位置検出器により直接測定し、この測定された前記移動体の位置変化量に対応して、前記移動体に支持されている前記工作物または前記工具の座標系の原位置を補正し、この補正された新たな原位置に基づいて、前記移動体の少なくとも前記第1の方向の移動動作を制御する。
前記方法を実施する上で好適な熱変位補正装置は、工作物または工具を支持する移動体がボールねじを介して少なくともこのボールねじの軸線と平行な第1の方向に移動し、加工位置で前記工具により前記工作物を加工する工作機械における熱変位補正装置であって、前記第1の方向に関する前記加工位置またはその近傍の一箇所の測定位置で、前記ボールねじの熱変位による前記移動体の位置変化量を直接測定する一つの移動体位置検出器と、この移動体位置検出器で測定された前記移動体の位置変化量に対応して、前記移動体に支持されている前記工作物または前記工具の座標系の原位置を補正する補正演算部と、この補正演算部で補正された新たな原位置に基づいて、前記移動体の少なくとも前記第1の方向の移動動作を制御する移動体制御部とを備えている。
前記移動体は主軸台を有しており、前記工作機械は、床面に対してほぼ垂直方向を向いている軸線を有し先端にチャックが設けられた主軸と、この主軸を回転可能に支持し、この主軸の軸線と平行な第2の方向に移動可能な前記主軸台と、一つまたは複数の前記工具を取付け可能に前記工作機械の基体に設けられた刃物台とを備え、前記主軸台が前記刃物台に対して前記第1の方向および前記第2の方向に相対移動して前記工作物を加工する主軸移動型立形工作機械であるのが好ましい。
前記移動体位置検出器は、前記工作機械の基体に設定された非移動側基準位置に対して、前記移動体側に設定された移動側基準位置が前記ボールねじの熱変位により前記測定位置でどれだけ変位しているかを示す前記位置変化量を測定するのが好ましい。
本発明の工作機械の熱変位補正方法およびその装置は、上述のように構成したので、一つの移動体位置検出器を移動体に簡単に取付けてボールねじの熱変位による移動体の位置変化量を容易に測定することができ、ボールねじの熱変位に対する補正を高精度に行なって加工誤差を補正することができる。
下記の実施例では、ボールねじの熱変位による移動体の位置変化量を一つの移動体位置検出器により直接測定することにより、ボールねじの熱変位に対する補正を高精度に行うという目的を実現している。
本発明における工作機械は、NC(数値制御)装置により制御されており、工作物または工具を支持する移動体を移動させるのに、ボールねじを用いた送り機構を使用している。そして、移動体がボールねじを介して少なくともこのボールねじの軸線と平行な第1の方向に移動し、加工位置で工具により工作物を加工する。
このような工作機械として、下記の実施例では、主軸移動型工作機械の場合を示している。この主軸移動型工作機械の主軸の軸線が、床面に対して垂直方向を向いている場合を示しているが、主軸軸線は、この垂直方向に対して所定角度傾斜した方向(この場合も、「床面に対してほぼ垂直方向」とする)を向いている場合でもよい。
下記の実施例では、主軸移動型立形工作機械として立て旋盤を例にとって示しており、この立て旋盤は、主軸の軸線が床面に対してほぼ垂直方向を向いている立形の主軸移動型工作機械の一つである。
なお、本発明にかかる熱変位補正方法およびその装置が適用される工作機械として、工作物または工具を支持する移動体がボールねじを介して少なくともこのボールねじの軸線と平行な第1の方向に移動し、加工位置で工具により工作物を加工する構成とした、立て旋盤以外のNC旋盤,マシニングセンタ,ターニングセンタ,旋削盤などであってもよい。
このような各種工作機械において、工作物または工具を支持して第1の方向に移動する移動体は、主軸台,主軸頭,刃物台またはテーブルなどを有していることになる。
以下、本発明にかかる一実施例を、図1ないし図8を参照して説明する。
図1ないし図8は本発明の一実施例を示す図で、図1はブロック図、図2は主軸移動型の立て旋盤の正面図、図3,図4は、それぞれ図2に示す立て旋盤の平面図,右側面図である。
図5は、図2に示す立て旋盤の拡大概略正面図、図6は図5の概略平面図、図7は、図6の部分拡大図で、熱変位補正のための動作を示す平面図である。
図1ないし図6に示すように、熱変位補正装置1が設けられた主軸移動型立形工作機械としての立て旋盤(以下、旋盤と記載)2には、工作物搬送装置3が設けられている。
工作物搬送装置3は、旋盤2の基体5の近傍に設けられている。工作物搬送装置3は、旋盤2が未加工工作物(未加工の工作物で、たとえば素材ワーク)7を受け取るための未加工工作物受け取り位置B1に、未加工工作物7を搬送するとともに載置する。
工作物搬送装置3は、旋盤2が加工済工作物(加工済の工作物で、たとえば完成品ワーク)8を渡すための加工済工作物渡し位置B2で、旋盤2から加工済工作物8を受け取って載置するとともに搬出する。工作物7,8を載置するための複数の工作物載置台3aの旋回割出し動作は、自動制御されている。
旋盤2は、主軸10を回転可能に支持する主軸台11を備えている。主軸10は、床面に対して垂直方向に軸線CL1を有し、主軸10の下方端部(主軸の先端)にはチャック12が設けられている。
サドル13は、主軸台11を主軸軸線CL1と平行なZ軸方向(第2の方向)に移動可能に支持するとともに、Z軸方向に対して直交するX軸方向(第1の方向)に移動する。主軸台11,主軸10およびサドル13などにより、X軸方向に移動可能な移動体20が構成されている。
移動体20は、この移動体20をX軸方向に移動させるX軸用送り機構を構成するX軸用のボールねじを介して、少なくともX軸用ボールねじの軸線CL3と平行なX軸方向に移動する。したがって、主軸台11は、Z軸方向およびX軸方向に移動可能であり、加工位置P1では工具15により工作物が加工される。
移動体20において、加工動作(加工サイクル)時には、主軸10の軸線CL1は加工ストロークST1(たとえば、ST1=約200mm)内でX軸方向に移動し、工作物を搬出入するための搬出入動作時には、主軸軸線CL1は搬出入ストロークST2(たとえば、ST2=約1,000mm)内でX軸方向に移動する。
刃物台14は、割出し用の駆動モータを有して基体5に設けられ、一つまたは複数の工具15を取付け可能である。刃物台14には、工具15を取付けるためのタレット16が、所定の方向(たとえば、X軸方向)と平行な軸線CL2を中心に、旋回割出し可能に設けられている。
タレット16には、工作物を所定の形状に旋削加工するための一つまたは複数の工具(内径工具,外径工具など)15が取付けられている。
なお、主軸台11がZ軸方向のほかX軸方向にも移動し、刃物台14が移動しないタイプの旋盤2で説明を行なっているが、変形例として、主軸台がZ軸方向にのみ移動し、刃物台がX軸方向に移動するタイプの主軸移動型工作機械であってもよい。その場合には、刃物台が移動体となって、主軸台に対してX軸方向に相対的に移動することになる。
旋盤2は、主軸10のチャック12に把持された工作物を加工するための加工領域21を有している。加工領域21では、チャック12に把持された工作物を主軸10により所定の回転速度で回転させるとともに、刃物台14の工具15と工作物とをX軸方向,Z軸方向に相対移動させて、工作物を所定の形状に加工する。
主軸10の中心は、X軸方向と平行な移動軌跡C0上を、加工領域21内で加工が行われる位置(加工位置P1)と、加工領域21外の未加工工作物受け取り位置B1および加工済工作物渡し位置B2との間で移動する。
旋盤2のベッド22は、前部ベッド23と後部ベッド24を有し、側面視でほぼL字状をなしている。加工領域21の下方に位置する前部ベッド23より、後部ベッド24の方が高くなっている。
後部ベッド24の前面には刃物台14が取付けられ、後部ベッド24の上部前面には、一対の平行なX軸用ガイドレール25がX軸方向に設けられている。
サドル13には、スライド本体26が固定されている。X軸用ガイドレール25とスライド本体26は、直動転がり案内を構成している。サドル13は、X軸用ガイドレール25に沿ってX軸方向に移動可能に配置されている。
二本のX軸用ガイドレール25の間には、X軸用のボールねじのねじ軸30が、X軸用ガイドレール25と平行に配置されている。ねじ軸30には、サドル13に固定されたボールナットがねじ込まれている。
基体5にはX軸用サーボモータ31が取付けられている。X軸用サーボモータ31は、その出力軸とねじ軸30とを連結する連結部材を介して、ねじ軸30を正逆方向に回転駆動するようになっている。
X軸用サーボモータ31に駆動されてねじ軸30が回転すると、ボールナットが固定されているサドル13が、一対のX軸用ガイドレール25に案内支持されてX軸方向に往復移動する。サドル13を含む移動体20の移動動作が、工具15に対する主軸台11のX軸方向の移動となる。
この旋盤2では、X軸方向へのサドル13の移動可能な距離が、工作物搬送装置3の方向に長くなっている。
サドル13の前面には、一対の平行なZ軸用ガイドレール35がZ軸方向に設けられている。主軸台11にはスライド本体36が固定されている。Z軸用ガイドレール35とスライド本体36は、直動転がり案内を構成している。主軸台11は、Z軸用ガイドレール35に沿ってZ軸方向に移動可能に配置されている。
二本のZ軸用ガイドレール35の間には、主軸台11をZ軸方向に移動させるZ軸用送り機構を構成するZ軸用のボールねじのねじ軸が、Z軸用ガイドレール35と平行に配置されている。Z軸用のボールねじのねじ軸には、主軸台11に固定されたボールナットがねじ込まれている。
サドル13の上部には、Z軸用サーボモータ37が取付けられている。Z軸用サーボモータ37は、その出力軸とZ軸用のボールねじのねじ軸とを連結する連結部材を介して、このねじ軸を正逆方向に回転駆動する。
Z軸用サーボモータ37に駆動されてねじ軸が回転すれば、ボールナットが固定されている主軸台11が、Z軸用ガイドレール35に案内支持されてZ軸方向に往復移動する。主軸台11の移動動作が、工具15に対する主軸台11のZ軸方向の移動となる。
主軸台11の上部には、チャック12の複数の爪(たとえば、三つ爪)12aを駆動するための、中空型のチャックシリンダ38が設けられている。チャック12の爪12aは、チャックシリンダ38に駆動されて開閉動作を行い、工作物の把持,把持解除を行う。
主軸台11の内部には、ビルトイン型の主軸モータが組み込まれている。主軸台11に回転可能に支持されている主軸10は、チャック12で工作物を把持した状態で、主軸モータにより所定の回転速度で回転駆動される。
旋盤2には、スプラッシュガードが設けられている。このスプラッシュガードは、主軸台11が加工領域21内で工作物を加工しているとき、加工領域21内の切りくずや切削油剤(クーラント)などが加工領域21の外部に飛散するのを防止している。
チャック12は、旋盤2でこれから加工を行う予定の未加工の工作物7を、未加工工作物受け取り位置B1で爪12aで直接把持して工作物搬送装置3から受け取る。このとき、チャック12の爪12aは、チャックシリンダ38に駆動されて開閉動作を行い、工作物の把持,把持解除を行う。
その後、主軸台11は加工領域21に移動し、加工領域21の加工位置P1では、主軸台11と刃物台14との相対移動により未加工工作物7が加工される。このときの加工のサイクルとしては、一つの加工サイクルの場合と、複数の加工サイクルの場合とがある。
加工が完了すると、主軸台11は加工領域21から加工済工作物渡し位置B2に移動し、チャック12は、加工済工作物渡し位置B2で加工済工作物8の把持を解除して、この加工済工作物8を工作物搬送装置3に渡す。
主軸台11がX軸方向およびZ軸方向に移動する旋盤2では、主軸台11の移動動作が、工作物の搬送(搬出入)の機能も発揮している。
工作物搬送装置3は、未加工工作物受け取り位置B1において、チャック12との間で未加工工作物7の授受を行う。未加工工作物7は、一つまたは複数の工作物載置台3aに載置される。
未加工工作物受け取り位置B1では、旋盤2でこれから未加工工作物7を加工するために移動してきたチャック12と対向するように、工作物載置台3aが割り出されて位置決めされる。そして、工作物載置台3aに載置された未加工工作物7を、チャック12の爪12aで把持して受け取る。
工作物搬送装置3の一部(たとえば、未加工工作物受け取り位置B1と加工済工作物渡し位置B2の部位)は、工作物授受領域AR1に位置し、他の部位は、作業領域AR2に位置している。作業領域AR2では、作業者による未加工工作物7の載置作業や加工済工作物8の取外し作業などが行われる。
加工済工作物渡し位置B2では、旋盤2での加工が完了した加工済工作物8を把持して移動してきたチャック12と対向して、たとえば空の工作物載置台3aが加工済工作物8を載置可能に割り出されて位置決めされる。そして、チャック12は、加工済工作物渡し位置B2で、加工済工作物8を工作物載置台3a上に載置したのち把持解除して渡す。
このようなことから、未加工工作物受け取り位置B1,加工済工作物渡し位置B2および加工位置P1は、主軸10のほぼ移動軌跡C0上に配置されている。
工作物搬送装置3が付設された旋盤2は、NC(数値制御)装置4とPLC(プログラマブルロジックコントローラ)40とを有する制御装置41により制御されている。
熱変位補正装置1は、X軸用のボールねじの熱変位(主として、ねじ軸30の熱変位)による移動体20の熱変位補正のために設けられている。
熱変位補正装置1は、一つの移動体位置検出器(以下、検出器と記載)42と補正演算部43と移動体制御部44とを備え、必要に応じて熱変位補正を行うようになっている。なお、変形例として、熱変位補正装置は、第1の方向としてのZ軸方向に主軸台11を移動させるためのZ軸用のボールねじの熱変位を補正する場合であってもよい。
検出器42は非接触式の検出器である。検出器42は、X軸方向(第1の方向)に関する加工位置P1またはその近傍(本実施例では、加工位置P1の近傍)の一箇所の測定位置P2で、X軸用のボールねじの熱変位による移動体20の位置変化量(たとえば、位置変化量λ1または位置変化量λ2)を直接測定している。
X軸用のボールねじの熱変位により移動体20が位置変化すると、主軸軸線CL1の位置も、ほぼ同じ位置変化量λ1,λ2だけ熱変位することになる(図5)。図5中、実線と鎖線は、ボールねじが熱変位する前と熱変位した後の、移動体20の各位置をそれぞれ示している。
補正演算部43は、検出器42で測定された移動体20の位置変化量λ1,λ2に対応して、移動体20に支持されている工作物または工具(本実施例では、工作物)の座標系の原位置を補正している。本実施例における「座標系の原位置」は、X軸方向の座標の原点位置(または、基準となる位置)のことである。
移動体制御部44は、補正演算部43で補正された新たな原位置(工作物の座標系の新たな原位置)に基づいて、移動体20の少なくともX軸方向(本実施例では、X軸方向とZ軸方向)の移動動作を制御している。
検出器42は、旋盤2の基体5に設定された非移動側基準位置E1に対して、移動体20側に設定された移動側基準位置E2が、X軸用のボールねじの熱変位により測定位置P2でどれだけ変位しているかを示す位置変化量λ1,λ2を測定している。この位置変化量λ1,λ2は、ねじ軸30が温度変化により伸縮した結果、移動体20に生じた変位量に相当するものである。
検出器42は、移動側に設けられた被検出体50と、固定側(非移動側)に設けられた検出部51とを有している。主軸台11が加工ストロークST1内でX軸方向に移動するときに、被検出体50が検出部51に対向可能なように、一箇所の測定位置P2が設定されている。
被検出体50は、移動側であるサドル13の後側に取付けられている。検出部51は、固定側であるベッド22の上部に取付けられ、被検出体50を検出可能になっている。なお、被検出体50を固定側に取付け、検出部51を移動側に取付けた場合であってもよい。
検出部51には、一つまたは複数の巻線コイル(または、永久磁石)が所定位置に配置されている。検出部51は、巻線コイルと被検出体50との間のリラクタンスによるインピーダンス変化で、検出部51側の非移動側基準位置E1に対する被検出体50側の移動側基準位置E2のオフセット量(位置変化量λ1,位置変化量λ2など)を測定している。
このタイプの検出器42は、たとえば、分解能が約0.1〜0.2μm,繰り返し精度が±0.25μm,検出幅が±5mmであるので、位置変化量λ1,λ2がたとえば1.0μm程度であっても検出可能である。
また、検出器42は、前記従来技術のように検出部と被検出体との間の隙間寸法を測定するのではなく、検出部51に対する被検出体50の微小な位置ずれ(すなわち、オフセット量であり位置変化量λ1,λ2など)を測定できるので、本発明に適用可能である。
補正演算部43は、記憶部45と、工作物の座標系の原位置を演算する座標系原位置演算部46とを有している。記憶部45には、非移動側基準位置E1,移動側基準位置E2,前回補正済みの座標系の原位置O1など各種データが記憶されている。
座標系原位置演算部46は、記憶部45に記憶されたデータE1,E2,O1に基づいて、今回の座標系の原位置を演算し、移動体制御部44の主演算部47に信号を出力するとともに、今回の座標系の原位置を記憶部45に出力して記憶させる。
移動体制御部44は、移動体20を少なくともX軸方向に移動させるための演算を行う主演算部47と、主演算部47の演算結果に基づいて、X軸用サーボモータ31を制御するためのX軸用サーボモータ制御部48とを有している。
なお、本実施例では、移動体制御部44は、Z軸用サーボモータ37を制御するためのZ軸用サーボモータ制御部も有している。また、主演算部47は、主軸台11をZ軸方向に移動させるための演算も行なっている。
検出器42で測定された移動体20の位置変化量λ1,λ2は、座標系原位置演算部46に出力される。座標系原位置演算部46は、記憶部45に記憶された非移動側基準位置E1,移動側基準位置E2,前回補正済みの座標系の原位置O1などに基づいて、今回の座標系の原位置を演算する。
すなわち、座標系原位置演算部46は、検出器42で測定された移動体20の位置変化量λ1,λ2に対応して、移動体20に支持されている工作物の今回の座標系の原位置を補正し、その結果を主演算部47に出力している。
移動体制御部44の信号はNC装置4に送信される。PLC40は、NC装置4の指令を受けて旋盤2の動作シーケンスを管理する。
主演算部47は、NCデータ(NC加工データ)52に基づいてNCプログラム(NC加工プログラム)を実行する。NCデータ52には、X軸用のボールねじによる熱変位を検出器42で検出して監視するための監視間隔T,監視回数Nなどに関する指令が含まれている。
次に、旋盤2の動作および熱変位補正の手順について、図1ないし図8を参照して説明する。図8は、熱変位補正の手順を示すフローチャートである。
図1ないし図8に示すように、旋盤2における熱変位補正方法は、少なくとも第1の手順ないし第3の手順を有し、必要に応じて熱変位補正を行うようになっている。
第1の手順では、X軸方向(X軸用のボールねじの軸線CL3と平行な第1の方向)に関する加工位置P1またはその近傍(本実施例では、加工位置P1の近傍)の一箇所の測定位置P2で、X軸用のボールねじの熱変位による移動体20の位置変化量λ1,λ2を、一つの検出器42により直接測定する。
次に、第2の手順では、この測定された移動体20の位置変化量λ1,λ2に対応して、移動体20に支持されている工作物の座標系の原位置(たとえば、前回補正済みの座標系の原位置O1)を補正する。
次いで、第3の手順では、この補正された新たな原位置(今回の座標系の原位置O1)に基づいて、移動体20の少なくともX軸方向の移動動作を制御する。
旋盤2で加工するためのサイクルが開始し、電源が投入された後(ステップ101)、油圧ポンプによる油圧の所定値までの上昇や運転条件の設定などの初期処理が行われる(ステップ102)。
運転開始時には、工作物搬送装置3の所定数の工作物載置台3aには、未加工工作物7を載置しておく。待機状態の工作物搬送装置3では、未加工工作物7が載置されている一つの工作物載置台3aは、未加工工作物受け取り位置B1に割り出されて位置決めされている。加工済工作物8を載置するためのたとえば空の他の工作物載置台3aは、加工済工作物渡し位置B2に割り出されて位置決めされている。
旋盤2の運転が開始されると、主軸台11が移動軌跡Co上を移動して、図7(A)に示すように測定位置合わせを行う(ステップ103)。
この測定位置合わせでは、被検出体50を検出部51に対向させ、移動側基準位置E2を非移動側基準位置E1に一致させる。移動側基準位置E2が非移動側基準位置E1に一致したとき、一致した旨の信号が検出器42から補正演算部43に出力される。
すると、座標系原位置演算部46は、互いに一致した二つの基準位置E1,E2に基づいて、工作物の座標系の原位置O1を演算する。こうして、検出器42における基準位置が設定される(ステップ104)。
ステップ103の測定位置合わせと、ステップ104の検出器42における基準位置の設定は、旋盤2におけるサイクル開始後に一回だけ行われる。
主演算部47は、補正演算部43から出力された非移動側基準位置E1,移動側基準位置E2および座標系の原位置O1に基づいて、X軸用サーボモータ制御部48に指令を出力する。指令を受けたX軸用サーボモータ制御部48は、X軸用サーボモータ31を動作させることにより、移動体20のX軸方向の移動動作を制御する。
また、主演算部47は、Z軸用サーボモータ制御部にも指令を出力し、Z軸用サーボモータ制御部は、Z軸用サーボモータ37を動作させることにより、主軸台11のZ軸方向の移動動作を制御する。
次に、図7(B)に示すように、搬出入サイクルに移行する(ステップ105)。この搬出入サイクルでは、主軸台11が、移動軌跡C0上を矢印Gに示すようにX軸方向に移動する。そして、チャック12が、未加工工作物受け取り位置B1で、工作物搬送装置3から未加工工作物7を受け取る。その後、主軸台11が、移動軌跡C0上を工作物搬送装置3から加工領域21に移動する。
次いで、熱変位補正を行う必要があるか否かが判別される(ステップ106)。熱変位補正を行う旨を選択した場合には、図7(C)に示すように、移動体20を測定位置P2に位置決めして位置補正を行う(ステップ107)。
すなわち、X軸方向に関する加工位置P1の近傍の一箇所の測定位置P2で、X軸用のボールねじの熱変位による移動体20の位置変化量λ1を、検出器42で測定する。移動体20の位置変化量λ1が、主としてねじ軸30が熱により変形した熱変位量に相当する。位置変化量λ1は、測定位置P2において、非移動側基準位置E1に対する移動側基準位置E2のX軸方向のオフセット量である。
検出器42で測定された移動体20の位置変化量λ1に対応して、補正演算部43は、工作物(ここでは、未加工工作物7)の座標系の原位置を補正するという熱変位補正を行う(ステップ108)。
こうして熱変位補正された状態で、図7(D)に示すように、加工サイクル1に移行する(ステップ109)。加工サイクル1では、主軸台11と刃物台14との相対移動により、加工位置P1で未加工工作物7に対する加工サイクル1の加工(たとえば、外径の旋削加工)を行う。
このとき、移動体制御部44は、補正演算部43で補正された新たな原位置(工作物の座標系の新たな原位置)に基づいて、移動体20のX軸方向(矢印G)の移動動作を制御する。また、移動体制御部44は、主軸台11のZ軸方向の移動動作も制御する。
そして、チャック12に把持された未加工工作物7が所定の回転速度で回転し、主軸台11が刃物台14の工具15に対して相対的にX軸方向およびZ軸方向に移動することにより、未加工工作物7が所定の形状に旋削加工される。切削加工中は、切削油剤が工具15の刃先部に供給される。
工具15の種類を変更する場合には、タレットインデックスを行う(ステップ110)。この場合、主軸台11を待避位置に移動させた後、タレット16を旋回させて所望の工具15を加工位置に割り出す。なお、工具15の種類を変えない場合には、タレットインデックス(ステップ110)を省略して次のステップ111に移行する。
熱変位補正を行う必要がなく、ステップ106で熱変位補正を行わないことを選択すれば、ステップ107,108を省略してステップ109の加工サイクル(この場合には、加工サイクル1)に移行する。
この場合には、加工誤差の補正の精度は低下するが、次行程の加工サイクルに早く移行できるので、全体のサイクル時間が短縮する。
ステップ110のタレットインデックスを行なった後(または、タレットインデックスを省略して)、加工サイクル1の加工動作が終了すると、次の工程の加工に移行するか否かが判別される(ステップ111)。
次行程で次工具による加工を行う場合には、前記タレットインデックスで加工位置に次工具15が割り出された状態で、ステップ106に戻って、ステップ106からステップ111までの手順を繰り返して次工具による加工を行う。
ステップ111で、次行程で次の工作物の加工を行う場合には、搬出入サイクル(ステップ105)に戻り、主軸台11を加工領域21と工作物搬送装置3との間で移動させて工作物を搬出入する。そして、ステップ105からステップ111までの手順を繰り返して、次の工作物の加工を行う。
搬出入サイクル105に移行する場合、現在の工作物に対する加工が終了すると、主軸台11は、加工領域21の加工位置P1から移動軌跡C0上を加工済工作物渡し位置B2まで移動する。
そして、主軸台11は、この加工済工作物渡し位置B2で加工済工作物8を工作物載置台3a上に載置して渡したのち、未加工工作物受け取り位置B1に移動し、この未加工工作物受け取り位置B1に位置決めされた工作物載置台3a上の未加工工作物7を受け取る。その後、主軸台11は、未加工工作物受け取り位置B1から移動軌跡C0上を加工領域21に移動する。
こうして、ステップ105の搬出入サイクルが行われる。その後、工作物搬送装置3は、必要に応じて工作物載置台3aを旋回割出し動作させる。
このようにして、ステップ111で次工程の加工(たとえば、次工具による加工)があり、ステップ106で熱変位補正を繰り返す場合には、図7(E)に示すように、移動体20を測定位置P2に位置決めする(ステップ107)。
すなわち、測定位置P2で、X軸用のボールねじの熱変位による移動体20の位置変化量λ2を、検出器42により直接測定する。検出器42で測定された移動体20の位置変化量λ2に対応して、補正演算部43は、移動体20に支持されている工作物の座標系の原位置を補正する。
このとき、補正演算部43は、非移動側基準位置E1,移動側基準位置E2,前回補正済みの座標系の原位置O1と、今回測定された移動体20の位置変化量λ2とを用いて、工作物の今回の座標系の新たな原位置を演算する。
移動体制御部44は、補正演算部43で得られた新たな原位置に基づいて、移動体20のX軸方向の移動動作を制御し、また、主軸台11のZ軸方向の移動動作も制御する。
こうして熱変位補正がされた状態で(ステップ108)、ステップ109の加工サイクル(この場合には、加工サイクル2)に移行する。図7(F)に示すように、加工サイクル2では、主軸台11と刃物台14との相対移動により、加工領域21の加工位置P1で工作物に対する加工サイクル2の加工(たとえば、内径の旋削加工)を行う。
このとき、移動体制御部44は、補正演算部43で補正された新たな原位置(工作物の座標系の新たな原位置)に基づいて、移動体20のX軸方向(矢印G)の移動動作を制御し、また、主軸台11のZ軸方向の移動動作も制御する。
その後、必要な場合にはステップ110のタレットインデックス動作を行なったのち、ステップ111に移行する。ステップ111で次工程の加工がなく、全工作物の加工が完了すると、一連の加工のためのサイクルが終了する。
上述の熱変位補正方法および熱変位補正装置1によれば、一つの検出器42を移動体20に簡単に取付けて、X軸用のボールねじの熱変位による移動体20の位置変化量λ1,λ2を容易に測定することができる。そして、X軸用のボールねじの熱変位に対する補正を高精度に行なって、加工誤差を補正することができる。
測定位置P2と加工位置P1との間のX軸方向の距離Dは、たとえば最大でも約25mm程度である。このように、測定位置P2が加工位置P1とほぼ一致するかまたは極めて近いので、高精度の熱変位補正ができる。
しかも、一箇所の測定位置P2で、一つの検出器42により移動体20の位置変化量λ1,λ2を直接測定することにより、熱変位補正を行なっている。したがって、従来のような二つの検出データから移動体20の位置変化量を間接的に演算する必要がなく、また、ねじ軸30全体の熱変形が不均一な場合であっても高精度な熱変位補正が可能である。
検出器42は、旋盤2の外部に配置すればよく、しかもその数が一つですむので、取付け用のスペースの制約が少なく取付け作業も容易である。
検出器42は非接触式なので、ステップ103,ステップ107の手順のときに、移動体20を高速で移動させて、被検出体50を検出部51に短時間で対向させることができる。したがって、これらの手順にかかる時間を短縮することができる。
なお、本発明における、「検出器42により直接測定された移動体20の位置変化量λ1,λ2に対応して、工作物または工具の座標系の原位置を補正し、この補正された新たな原位置に基づいて、移動体20の少なくともX軸方向の移動動作を制御する」という構成には、「工作物の座標系の原位置を補正する」という本実施例の場合のほか、「各工具のオフセットを変更(補正)する場合」や、「原位置からある範囲までのボールねじピッチ誤差の補正データを変更する場合」も含まれ、これらの場合にも本実施例と同様の作用効果を奏する。
以上、本発明の一実施例を説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形,付加などが可能である。
なお、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
本発明は、上述の主軸移動型の立て旋盤など主軸移動型工作機械のほか、旋盤,マシニングセンタ,ターニングセンタ,研削盤などに適用可能である。
図1ないし図8は本発明の一実施例を示す図で、図1はブロック図である。 主軸移動型の立て旋盤の正面図である。 図2に示す立て旋盤の平面図である。 図2に示す立て旋盤の右側面図である。 図2に示す立て旋盤の拡大概略正面図である。 図5の概略平面図である。 図6の部分拡大図で、熱変位補正のための動作を示す平面図である。 熱変位補正の手順を示すフローチャートである。
符号の説明
1 熱変位補正装置
2 主軸移動型の立て旋盤(工作機械)
5 基体
7 未加工工作物(工作物)
8 加工済工作物(工作物)
10 主軸
11 主軸台
12 チャック
14 刃物台
15 工具
20 移動体
30 ねじ軸(X軸用のボールねじのねじ軸)
42 移動体位置検出器
43 補正演算部
44 移動体制御部
CL1 主軸の軸線
CL3 ボールねじの軸線(X軸用のボールねじの軸線)
E1 非移動側基準位置
E2 移動側基準位置
P1 加工位置
P2 測定位置
X軸方向 第1の方向
Z軸方向 第2の方向
λ1,λ2 位置変化量

Claims (4)

  1. 工作物または工具を支持する移動体がボールねじを介して少なくともこのボールねじの軸線と平行な第1の方向に移動し、加工位置で前記工具により前記工作物を加工する工作機械における熱変位補正方法であって、
    前記第1の方向に関する前記加工位置またはその近傍の一箇所の測定位置で、前記ボールねじの熱変位による前記移動体の位置変化量を一つの移動体位置検出器により直接測定し、
    この測定された前記移動体の位置変化量に対応して、前記移動体に支持されている前記工作物または前記工具の座標系の原位置を補正し、
    この補正された新たな原位置に基づいて、前記移動体の少なくとも前記第1の方向の移動動作を制御することを特徴とする工作機械の熱変位補正方法。
  2. 工作物または工具を支持する移動体がボールねじを介して少なくともこのボールねじの軸線と平行な第1の方向に移動し、加工位置で前記工具により前記工作物を加工する工作機械における熱変位補正装置であって、
    前記第1の方向に関する前記加工位置またはその近傍の一箇所の測定位置で、前記ボールねじの熱変位による前記移動体の位置変化量を直接測定する一つの移動体位置検出器と、
    この移動体位置検出器で測定された前記移動体の位置変化量に対応して、前記移動体に支持されている前記工作物または前記工具の座標系の原位置を補正する補正演算部と、
    この補正演算部で補正された新たな原位置に基づいて、前記移動体の少なくとも前記第1の方向の移動動作を制御する移動体制御部とを備えたことを特徴とする工作機械の熱変位補正装置。
  3. 前記移動体は主軸台を有しており、
    前記工作機械は、
    床面に対してほぼ垂直方向を向いている軸線を有し先端にチャックが設けられた主軸と、この主軸を回転可能に支持し、この主軸の軸線と平行な第2の方向に移動可能な前記主軸台と、一つまたは複数の前記工具を取付け可能に前記工作機械の基体に設けられた刃物台とを備え、
    前記主軸台が前記刃物台に対して前記第1の方向および前記第2の方向に相対移動して前記工作物を加工する主軸移動型立形工作機械であることを特徴とする請求項2に記載の工作機械の熱変位補正装置。
  4. 前記移動体位置検出器は、前記工作機械の基体に設定された非移動側基準位置に対して、前記移動体側に設定された移動側基準位置が前記ボールねじの熱変位により前記測定位置でどれだけ変位しているかを示す前記位置変化量を測定することを特徴とする請求項2または3に記載の工作機械の熱変位補正装置。
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