JP2004516934A - 電磁気能動振動制御システムおよび電磁気アクチュエータ - Google Patents
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Abstract
Description
発明の背景
[発明の属する技術分野]
本発明は、可変状態の機械的及び/又は工業的構造体における振動を減少する、排除する、及び/又は、監視する電磁気システムに係る。本発明は更に、工業機器及び他の装置と関連して使用する電磁気アクチュエータに係る。本発明は更に、被制御構造体の変化する物理的及び/又は環境的特性(位置、質量、スループット速度等)に動的に反応する振動制御システムに係る。
【0002】
[関連技術の議論]
米国特許第5,796,849号(コールマン外)は、雑音及び構造体上の振動を能動的に制御するシステムを記載する。コールマン外による特許は、アクチュエータ装置と残りのセンサとの間の伝達関数の力学が時間の経過に伴い変化する状況に関連する。コールマン外によるシステムでは、プローブ信号を用いて、プラント伝達関数の現在の推定値を得る。米国特許第5,816,122号(ベニング外)は、機械的外乱に対するエコーのような応答を制御するシステムを記載する。ベニング外によるシステムは、金属切削機器における振動の適応抑制を提供する。特に、ベニング外による特許は、可動機械工具における振動を能動的に抑制するために、中ぐり棒と回転ワークピースの減法成形(subtractive shaping)が関る特定の技術について述べている。米国特許第5,713,438号(ロゼッティ(Rossetti)外)は、飛行機の胴体又は自動車構造体の振動を制御する適応フィードフォワードシステムを記載する。ロゼッティ外によるシステムは、フィードフォワード制御と共にフィードバック制御を用いず、また、このシステムは、プラント伝達関数の測定は行わない。ロゼッティ外によるシステムは、シェーカ型の電磁気素子を用いるが、この電磁気素子は、設置及び維持することが困難且つ高価であり得、非線形の挙動及び高調波歪みの傾向がある。コールマン外、ベニング外、及びロゼッティ外による特許は、以下により詳細に説明する。
【0003】
[発明の概要]
従来技術の不利点は、本発明によって、大部分が解決される。本発明の1つの面によると、可変状態の機械構造体における振動を制御するシステムが提供される。このシステムは、多数のセンサ及び他の装置を用いて、振動及び環境の制御データを得る。このシステムは、この振動及び環境の制御データに反応して1つ以上の電磁気アクチュエータを動作する。
【0004】
本発明は、振動入力に敏感である高共振の可変状態構造体の振動を制御するのに非常に適している。本発明のこの面によると、被制御構造体の共振特性は静的ではなく、むしろ、構造体の質量、位置、及び/又は、他の変化する物理的特性と共に変化する。本発明は、固定周波数励振を生成するポンプやランダムな過渡振動発生源といった1つ以上の振動発生源からの振動に常にさらされる構造体を制御するために用いられる。所望の振動制御を達成するために、本発明は、動的な制御パラメータを用いて、多数の制御ストラテジを並列で用いる。
【0005】
本発明の1つの面によると、デジタル制御部は、1つ以上のセンサ及び1つ以上のアクチュエータからの情報と、予め測定した特性データとを用いて、被制御構造体の1つ以上の所定の部分における振動を最小にするアクチュエータ力を計算する。制御部は、所望のアクチュエータ信号をリアルタイムで計算し、それを対応するアクチュエータに送信する。アクチュエータは、所定の場所において被制御構造体に振動を投入する。投入場所は、振動抑制が望まれる領域から離れている場合がある。このようにすると、振動制御を得るための機器が、振動抑制が望まれる場所にある機器又は材料を干渉しない。アクチュエータによって被制御構造体に投入される振動は、構造体を伝わり、所望の場所において不必要な振動を相殺する。この不必要な振動は、被制御構造体の上述した所望の場所に、別の経路で到達する。本発明を用いると、ワークピース、又は、被制御構造体の一部が、外部の機械装置が依然として入射振動を形成していても、静止することが可能となる。
【0006】
本発明の1つの重要な面は、アクチュエータの改善された構成にある。本発明の1つの好適な実施例では、各アクチュエータは、空隙の1つの側にあるアーマチュアと、その空隙のもう1つの側にある磁石コイルによって特徴付けられる。空隙に磁力が生成され、この磁力は、磁束フィードバックにより線形化される。本発明の比較的複雑でないアクチュエータは、(特に、低周波数において)従来技術の慣性シェーカより正確であり、ロバストであり、及び、効率がよい。
【0007】
本発明の1つの好適な実施例では、アクチュエータは、上述した所定の投入場所に一体化して固定されるコイル状にされた電磁石である。アーマチュアは、アーマチュア面が電磁石と対向するよう外部構造体に固定される。アーマチュアは、取付け板によって外部構造体に固定され得る。本発明は、本願に詳細に説明及び図示する特定の構造及び手段に制限されるものではない。磁束センサは、電磁石の面上に位置付けられ得る。制御システムは、磁束センサを用いて、電磁石を動作するために必要な入力信号を計算する。磁束センサを、電磁石と一体のユニットとして位置付けることにより、アクチュエータにつながる又はアクチュエータから出てくる信号線路を一体化することができ、それにより、工業環境において、制御システムをより耐性があり、ロバストであり、設置且つ維持することが容易であるようにする。本発明の別の実施例では、磁束センサは、コイルとアーマチュアの間の磁束を効果的に感知するよう動作上構成されるならば、コイル磁石とアーマチュア間の空隙の外側に物理的に位置付けられ得る。
【0008】
本発明のアクチュエータを、能動振動制御に提案されてきた他の装置と区別する幾つかの特徴がある。公知のシステムは、一般的に、反応−質量シェーカ、気圧式又は油圧式アクチュエータを用いる。このような技術は、軸受、シール、又はバネといった可動部を有し、これらは、定期的な総点検が必要である。電磁石は、可動部がなく、流体及び塵が入らないようにすることが容易であり、保守管理をほとんど又は全く必要とせずに何年も動作することが可能である。更に、電磁石は、他の装置より安価である。更に、シェーカや他の公知の装置は、低周波数(一般的に、20Hz以下)での有用な力レベルを達成するには、一般的に大きくてかさ張る。公知の装置は、非線形の挙動及び高調波歪みの傾向がある。対称的に、本発明により構成される電磁石は、適切なリアルタイム制御によって、既存の機械装置空間に容易に組込むことができるコンパクト且つ単純なアクチュエータと共に必要な力を生成することができる。アクチュエータは、必要である場合には、大きい力を生成するためにクラスタ又は分散される群に配置し得る。
【0009】
本発明は、ペイロード又はワークロード又は他の可変状態の構造体における振動を減少するよう用いられ得る。更に、本発明は、特定の工業処理に使用する構造素子に被制御振動を投入するよう用いられ得る。本発明は、所望される場合には、処理時の振動レベルを監視し且つ記録し、且つ、過渡振動といった特定の事象をログするよう用い得る。
【0010】
本発明は、一般的に、様々な機械的及び工業的構造体に適用可能である。被制御構造体は、略どの形状又は寸法でもあり得る。例えば、本発明は、振動源が、外部の機械装置及び/又は管を流れる材料の乱流からの運動量移動である複雑な配管システムにおける振動を制御するよう用い得る。被制御構造体の動的特性は、管中の材料の密度、動作圧力、質量流量等といった動作条件に依存し得る。本発明は、被制御構造体の振動特性を変化する様々な可変の物理的条件に反応し得る。
【0011】
流体送り管(又は他の長い構造体)における振動を制御するには、振動センサは、管に直接取付けられ得、1つ以上のアクチュエータ装置は、床や、スタンチョン又はバルクヘッドといった何らかの静止した外部構造体に取付けられることが可能である。アクチュエータは、センサ及び制御部と合わせて、構造体の一部の所定の部分(又は構造体全体内)における振動を減少するよう管構造体に力を与える。所望される場合は、システムは、構造体の動的特性を監視するよう任意の他のセンサを含むことも可能である。このようなセンサ及び他の入力装置は、例えば、流量計、タコメーター、サーモカップル、圧力ゲージ等を含む。このようなセンサは全て、制御システムによって用いられて、構造体の特定の要点における振動を減少するアクチュエータ信号を決定する。
【0012】
本発明の1つの好適な実施例では、デジタル制御部は、フィードフォワード制御ストラテジとフィードバック制御ストラテジの両方をタンデムで用いるようプログラムされる。本発明のこの面によると、適応フィードフォワード制御ユニットとモードフィードバック制御ユニットからの出力は互いに加えられ、制御システムは、被制御構造体の可変物理的特性に動的に適応される。例えば、フィードフォワードユニット用のプラント伝達関数と、フィードバックユニット用の利得は、感知される物理的変数(場所、質量等)の関数として測定又は計算され、プラント伝達関数推定値は、動的に修正されて、時間変動するフィードバック制御利得を反映する。
【0013】
所望される場合は、制御システムは、工業処理における低周波振動(<20Hz)を相殺するよう使用し得る。アクチュエータは、工業環境において存在し得る流体(油、水、及び他の化学物質)及び塵が入らないよう密閉され得る。
【0014】
本発明の別の面によると、振動制御システムは、被制御構造体に選択的に力を与える電磁気アクチュエータから形成され、デジタル制御システムが、アクチュエータを動作するために設けられる。1つの好適な実施例では、制御システムは、(1)構造体の感知された振動、(2)フィードフォワード基準の感知された振動(例えば、被制御構造体の外部にあるポンプによってもたらされる振動)、及び、(3)被制御構造体の可変物理的状態に基づいて計算を行う。所望される場合は、デジタル制御システムは、アクチュエータが、振動センサからの信号に反応して動作するようモードフィードバックループを行うようプログラムされ得る。所望される場合は、モードフィードバックループの利得は、被制御構造体の機械的又は物理的状態の関数として制御可能である。
【0015】
本発明の更なる面によると、1つ以上のフィードフォワード基準の振動を感知するために用いる1つ以上のフィードフォワードセンサが設けられる。このようなフィードフォワード基準の1つの例としては、原則的に固定低周波数(例えば、20Hz以下)で動作するポンプである。この基準は、被制御構造体の外部にあるが、その振動は、被制御構造体内に伝えられる。本発明の1つの好適な実施例では、デジタル制御システムは、フィードフォワードセンサからの信号に反応して電磁気アクチュエータを制御する1つ以上のフィードフォワードループを含む。この実施例では、フィードフォワードセンサは、被制御構造体から物理的に離れている。
【0016】
本発明は、振動制御システムの制御下にあるときに、その特性及びプラント伝達関数が変化する機械的及び工業的構造体での使用に適応し得る。一部の適応システムは、フィルタ値等を調節し、追加の情報なくして小さな変化に対応することができる。他の場合、良好な適応は、制御システムが新しいプラント伝達関数推定値を利用可能とした場合にのみ可能である。システムの動作時に「システム同定(system identification)」を行うことは、一般的に、制御システムは、プラント応答を引出すために物理システムにエネルギー(プローブ)を投入しなければならず、その結果、雑音レベルが上がるという欠点を有する。ロゼッティ外による特許に示するシステムは、プラント推定値を全く必要としない制御ストラテジを提供することにより、この問題を完全に解決する。このことは、必然的に、アクチュエータ配置、制御技術(例えば、フィードバック無し)、及び、制御性能におけるトレードオフを形成する。コールマン外によるシステムは、プローブ信号を形成するために投入される余剰制御システムエネルギーは、スペクトル特性が制御されて、受入れられるほど低いレベルであることを保証する。このことは、一部のシステムを比較的静かにするのには有用である。しかし、これは、プラント伝達関数の変化を追跡することのできる速度を制限してしまい、というのは、信頼度の高い推定値を達成するために、長い時間の間、弱いプローブへの応答を積算しなければならないからである。
【0017】
本発明は、プラント伝達関数が、予測可能及び予測不可能な理由の両方により変化することがあるという事実を利用する。予測可能な理由を説明するに、例えば、延長可能な梁が伸ばされると、その梁の共振における変化は、原則的に、リアルタイム長さ測定が与えられて予測可能である。これが予め特徴付けられて、位置の関数として記憶されていると、プローブエネルギーのリアルタイム投入は必要でなく、そして、プラント特性は、測定積算遅延なく常に既知となる。予測不可能な理由を説明するに、例えば、飛行機の客室において、その中で旅客が動いている際のスピーカからマイクロホンへの伝達関数が考え得る。実用的な目的に対し、旅客の行動の影響は予測不可能であり、従って、測定しなければならない。
【0018】
従って、本発明の1つの面は、(1)プラント推定値の推論/計算を可能にするために先験的に既知の環境の変数を監視することと、(2)「制御オン」(即ち、活性)レジームに入る前に、全ての予想されたこれらの変数の組合せに対しシステムを同定することに関連する。実際には、同定は、離散的な、n次元のグリッド、1つの変数につき1つの次元に亘って行われ、結果は、必要に応じて後で補間される。システム同定の完全なマップによって、伝達関数を調べることができるのみならず、所与の環境の変数の組合せと共に最良に機能するよう予め計算された値及び制御利得を取り除くことができる。
【0019】
本発明の好適な実施例では、制御オンレジーム(即ち、活性モード)の間は、プローブ信号を生成する必要がない。
【0020】
本発明の上述の及び他の特徴は、以下の好適な実施例の詳細な説明から明らかとなろう。
【0021】
[好適な実施例の詳細な説明]
同一の参照番号は、同一の素子を示す図面を参照するに、図1は、ワークプロダクト12を支持する工業装置10を示す。ワークプロダクト12は、例えば、工業装置10によって処理されるペイロード材料であってよい。工業装置10は、剛性外部体18に一体化して固定される支持機構14、16を有する。細い延長可能な梁20が、支持機構16に接続され、可動に支持される。支持機構16の上又は中に置かれる好適な機構22は、ワークプロダクト12が第1の位置と第2の位置の間で往復して動くよう梁20を往復させる。支持されるワークプロダクト12の第2の位置は、図2に示す。
【0022】
不活性モードでは、外部の回転機械装置(図示せず)が、外部体18内に低周波入射振動を生成する。この振動は、支持構造体14、16、及び、延長可能な梁20を通り、ワークプロダクト12に伝わる。図示する配置では、ワークプロダクト12及び梁20は、入射振動を増幅する高共振動的システムを形成し、それにより、ワークプロダクト12は、受入れられないレベルで振動する傾向がある。図示するシステム10の動的(振動)特性は、ワークプロダクト12の質量や支持構造体14、16に対する梁20の位置といった機械的及び/又は工業的動作条件に強く依存する。
【0023】
活性(即ち、「制御オン」)モードでは、引き起こされたワークプロダクト12の振動は、デジタル制御システム30によって減衰及び/又は相殺される。制御システム30は、例えば、好適にプログラムされたマイクロプロセッサを含み得る。制御システム30は、(A)動作及び/又は加速センサ32、34、36からの振動データと、(B)位置センサ38及び1つ以上の他の入力装置40からの環境(物理的特性)データと、(C)磁束密度センサ42、44からの磁束データを受信する。制御システム30は、入力データ(信号線路52、54、56、58、60、62、64を介して受信する)を処理し、線路70、72上に出力信号を生成する。出力信号(70、72)は、支持構造体16に好適な力を加えるよう電磁気アクチュエータ74、76を動作するために用い、それにより、ワークプロダクト12に発生する振動を好適に減衰及び/又は相殺することを達成する。つまり、出力信号(70、72)は、アクチュエータ74、76に与えられて、ワークプロダクト12の付近で感知される振動(32)を選択的に低いレベルにする。
【0024】
図3に、デジタル制御器30の動作を示す。一般的に、被制御構造体12、20の共振モードは、フィードバック制御部80を用いて抑制される。調性(tonal)振動は、構造体12、20の共振周波数であろうとなかろうと、適応フィードフォワード制御部82を用いて制御される。動的状態及びプラント推定器84は、システムの特定の動的特徴を追跡する(データ入力装置38、40からの信号58、60を介して)。追跡される動的特徴は、延長可能な梁20の位置、処理されているワークプロダクト12の質量、工業装置10の周囲温度、工業装置10のスループット生産速度等といった様々な機械的及び産業的パラメータを含み得る。本発明の1つの好適な実施例では、動的状態及びプラント推定器84は、略瞬間のプラント伝達関数推定値86をフィードフォワード制御部82に、及び、適切な制御利得88をフィードバック制御部80に与える。このようにして、フィードフォワード制御部82及びフィードバック制御部80からの組合わされた力要求は、適当な電流を電磁気アクチュエータ74、76に投入する力制御サーボループ90を駆動させるよう使用することが可能である。各アクチュエータ74、76につき1つの力制御サーボループ90が存在する。
【0025】
説明を明確にするために、図1及び図2は、2つの振動センサ32、34、1つの基準センサ36、及び、2つの電磁気アクチュエータ74、76のみを示す。しかし、実際には、工業装置10は、多数のセンサ及びアクチュエータを有し得る。つまり、装置10は、N個の振動センサ32、34、M個の電磁気アクチュエータ74、76、P個の制御するモード、及び、Q個の調性励振(tonal excitation)に対する基準(36)で構成され得る。全てのセンサ32乃至44は、毎秒S個のサンプルでデジタル化され、制御装置30における全ての計算は、同じ速度でデジタルに更新される
図3を参照するに、本発明の1つの好適な実施例では、Q個の数値制御される発振器(NCO)92がある。各基準センサ36に対し1つのNCO92がある。マルチプレクサ94は、ハードウェアタコメータ96、NCO92の出力、又は、他の好適な手段によって基準信号(56)を追跡するよう用いられる。NCO92は、各サイクル、その複素フェーザ出力を更新して、その動作周波数における正弦波及び余弦波を生成する。
【0026】
振動センサ32、34からの入力52、54は、モード分解行列98による乗算によりモード形に変換される。モード分解行列98は、1つの点で感知可能な非常に独立したモードを有するシステムの単位行列であり得る。モード分解行列98は、P個の出力150を生成する。各モード推定値150は、モード設定値100と比較され、モード誤差推定値102を生成する。ワークプロダクト12における振動の略完全な抑制を得ることを望む図示する実施例では、モード設定値100は、ゼロである。
【0027】
環境データ(58、60)は、位置センサ38及び他のデータ入力装置40から得られる。計算部104が、環境データ(58、60)を、瞬間プラント伝達関数推定値106と可変制御利得108に変換する。計算部104は、環境データ(58、60)が時間の経過と共に変化するに従って、滑らかな更新を与えるよう補間ルックアップテーブル、多項式による曲線のあてはめ(polynomial curve fitting)、又は、他の技術を用い得る。
【0028】
論理部110は、プラント伝達関数推定値106と可変制御利得108を修正するよう用いる。手動で入力される利得調整112を、自動的に生成された制御利得108に加えて、最終的なフィードバック制御利得88を生成することができる。フィードバックループ80内に含まれるシステム素子の伝達関数は、フィードバック利得88によって修正され、結果として、最終的なフィードフォワードプラント推定値86が得られる。
【0029】
制御システム30の数値動作を更に理解するために、監視される振動に対する力要求からの複素伝達関数Hを有するシステム素子を考慮し得る。フィードバック制御がない場合、プラント伝達関数は、単純に、Hである。そのシステム素子が、補償伝達関数(compensator transfer function)Gを有する負のフィードバックループによって制御される場合、フィードフォワードの観点から、実効プラント伝達関数は、H/(1+GH)となる。フィードバックループが、追加の利得k(例えば、オペレータのオーバライドから)を有する場合、実効プラント伝達関数は、H/(1+kGH)となる。そのシステム同定及び環境監視から複素伝達関数Hを知っていて、リアルタイムでG及びkを計算する制御システム30は、H/(1+kGH)もリアルタイムで計算することができる。
【0030】
モード誤差推定値102は、固定フィルタ118及び調節可能な利得フィルタ130、132を通され、安定したフィードバック制御ループを生成する。図示する実施例では、調節可能な利得フィルタ130、132は、矩象にある2つの帯域通過フィルタを含み、それにより、誤差信号102の任意の位相シフトを、フィードバック制御利得88に対し好適な選択によって達成することができる。制御利得88は、増幅器131、133に与えられる。合計部134は、調節可能な利得フィルタ130、132からの出力を合計し、それにより、P個のフィードバック制御ループのそれぞれに対しモード力出力136を形成する。出力信号136は、外乱信号140に加算(138)される。外乱信号140は、システムの同定に意図的なモード振動をもたらす。モード力再構成行列142(単位行列であり得る)は、個々のアクチュエータ74、76の電磁石182の力要求をモード制御するために必要な力を割当てる。
【0031】
計算部144、146が、Q個の選択された基準148とP個のモード推定値150を、それぞれ、狭帯域複素フェーザ表現152、154に変換する。使用される処理は、複素ヘテロダイニング(complex heterodyning)の処理である。各基準又はモード推定値に対し、その機能は、NCO92と同一であり得るデジタル局部発振器(LO)156が、フィルタリング処理の中心周波数を決める。最初に、LOの複素共役が、モード推定値によって乗算され、DC(「ベースバンド」)付近の所望の純音成分(tonal component)と、モード入力とLOの周波数の合計におけるイメージトーンの両方を含む複素信号を形成する。デジタル低域フィルタは次に、イメージ成分を取り除き、ベースバンドにおいて所望の調性情報を分離させる。LOによる最終の複素乗算は、信号をその元の周波数に、今回は、複素解析信号としてアップコンバートする。本発明の別の実施例では、デジタルヒルベルト(Hilbert)変換を用い得る。複素ヘテロダイニングとヒルベルト変換に基づいた技術は、レーダ信号処理及び通信適用においてよく知られている。これらの技術は、アラン V.オッペンハイム及びロナルド・W.シェファーによる「Digital Signal Processing」(1975年、ISBN 0−13−214635−5、7.4節)により詳細に説明される。この開示内容は、本願に参考として組込む。
【0032】
別の計算部158は、様々な基準148に対し、Q×P個の誤差の推定値を生成する。j番目の基準に対するi番目のモードにおける誤差の推定値Eijは、単純に、複素値Ei/Rjであり、ここで、Eiは、モード推定値を表すフェーザ154であり、Rjは、基準を表すフェーザ152である。計算部160は、周波数が近いために、適応時間に匹敵する積分時間の間に相関し得る基準148を補償する。計算部160の動作は、以下の通りであり、これは、基準j1と基準j2の周波数が近い場合を説明する。誤差推定値Ei−j1は、1からPまでの全てのiに対しVi1を形成するよう時間平均される。誤差推定値Ei−j2は、1からPまでの全てのiに対しVi2を形成するよう時間平均される。Rj2/Rj1の比は、B12を与えるよう時間平均される。適応に用いる前に、Ei−j1は、Ei−j1’=Vi1−Vi2*B12に置き換えられる。同様に、Ei−j2も、Ei−j2’=Vi2−Vi1*共役(B12)に置き換えられる。本発明のこの実施例では、計算部において同じ種類の時間平均を用いることが重要である。
【0033】
複素乗算器162は、最適な複素利得を各基準148に与え、各モードに対する相殺力要求を形成する。別の計算部164は、誤差信号(158、160)と瞬間のプラント伝達関数推定値86に基づいて複素乗算器162を更新する。モード力再構成行列142は、次に、フィードフォワード力を様々なアクチュエータ74、76に割当てるよう用いられる。計算部164は、複素乗算器162の利得を制御する。
【0034】
計算部170は、各アクチュエータ電磁石182に対する力要求70、72を合計するよう用いられる。合計部170への入力は、以下を含む。即ち、意図的な外乱の期間(term)172、フィードフォワードユニット82により計算されるフィードフォワード成分174、フィードバックユニット80により計算されるフィードバック成分176である。計算/合計部170は、倍率をかけ、全体の力要求(172+174+176)の平方根をとり、それぞれの電磁気の磁束センサ42(即ち、アクチュエータ電磁石182と対応するアーマチュア184との間の空隙180)にあるべき磁束密度178を計算し、それにより、支持機構又は素子16上の好適な力を達成する。
【0035】
動作時には、磁束センサ42は、空隙180における実際の磁束186を感知する。感知、即ち、達成された磁束186は、所望の磁束178から引算され(計算部188)、それにより、磁束誤差値190を得る。磁束誤差値190は、デジタル補償フィルタ192を通され、アナログ入力194に再変換され、電磁石182の電力増幅器196に送られる。アナログ入力194は、使用する補償フィルタ192の種類に応じて、電圧要求又は電流要求であり得る。電力増幅器196は、電磁石182を駆動して、所望の磁束178を生成し、従って、支持構造体16への適当な力が生成される。
【0036】
本発明は、様々な工業的構造体、及び、乱流体211が、延長管212を流れる複雑な配管システム210(図4)を含む他の構造体を制御するために用い得る。図4に示すシステムは、好適な信号線路52、54、220、222、224を介してデジタル制御部30に振動データを供給する複数の振動センサ32、34、214、216、218を有する。更に、システム210は、管212の可変状態の特性を感知する環境センサ40を有する。図示する実施例では、環境センサ40は、管212を流れる流体211の質量流量を感知するよう配置される。制御部30に供給され得る他の環境データは、流体圧、温度等を含む。制御部30は、被制御構造体212の振動、フィードフォワードされた基準(図4には示さず)の振動、及び、管212の可変状態に関する入力データを受信し、多数のアクチュエータ74、76の電磁石182に適切な信号を与える。従って、図4の実施例における制御システム30の動作は、図1及び図2の実施例における動作と同様である。
【0037】
上述した説明及び図面は、本発明の特徴及び利点を達成する好適な実施例を単に例示するものであり、本発明を制限することを意図するものではない。特許請求の範囲の技術的思想に入る本発明の任意の修正は、本発明の一部であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
工業装置に接続され、本発明の1つの実施例により構成される振動制御システムを示す側面図である。
【図2】
次の処理位置にある工業装置を有する図1の振動制御システムを示す側面図である。
【図3】
図1及び図2の振動制御システムにおける信号の流れを示す図である。
【図4】
本発明の別の実施例により構成される流体を扱うシステムを示す側面図である。
Claims (22)
- アーマチュア、磁石コイル、及び、磁束センサで、原則的に構成され、被制御構造体に選択的に力を与える電磁気アクチュエータと、
上記アーマチュアと上記磁気コイルとの間の空隙に、感知された振動の関数として、力‐形化された磁束を生成させるデジタル制御システムと、を含む低周波振動制御システムであって、
上記磁束センサは、上記アーマチュアと上記磁気コイルとの間の空隙に生成した磁束を表す信号を、上記デジタル制御システムに送る、振動制御システム。 - 上記磁石コイルは、上記被制御構造体に一体化して固定される請求項1記載の振動制御システム。
- 上記磁束センサは、上記磁石コイルに接続される請求項2記載の振動制御システム。
- 可変状態の構造体の振動制御システムであって、
上記可変状態の構造体に選択的に力を与える電磁気アクチュエータと、
上記可変状態の構造体の感知された振動、フィードフォワード基準の感知された振動、及び、上記可変状態の構造体の可変状態の関数として上記電磁気アクチュエータを動作するデジタル制御システムと、を含む振動制御システム。 - 上記可変状態の構造体の振動を感知する振動センサを更に含む請求項4記載の振動制御システム。
- 上記デジタル制御システムは、上記振動センサからの信号に反応して上記電磁気アクチュエータを制御するモードフィードバックループを含む請求項5記載の振動制御システム。
- 上記モードフィードバックループの利得は、上記可変状態の構造体の上記可変状態の関数として制御される請求項6記載の振動制御システム。
- フィードフォワード基準の振動を感知する1つ以上のフィードフォワードセンサを更に含む請求項4記載の振動制御システム。
- 上記デジタル制御システムは、上記フィードフォワードセンサからの信号に反応して上記電磁気アクチュエータを制御する1つ以上のフィードフォワードループを含む請求項8記載の振動制御システム。
- 上記フィードフォワードループのプラント伝達関数は、上記可変状態の構造体の上記可変状態の関数として制御される請求項9記載の振動制御システム。
- 上記可変状態の構造体の可変位置を感知する位置センサを更に含む請求項10記載の振動制御システム。
- 上記可変状態の構造体の質量を表すデータを入力する装置を更に含む請求項10記載の振動制御システム。
- 可変状態の構造体の振動を制御する方法であって、
上記可変状態の構造体の振動を表す第1のデータを得る段階と、
上記可変状態の構造体の可変機械的特性を表す第2のデータを得る段階と、
上記第1のデータ及び上記第2のデータの関数として、上記可変状態の構造体に電磁気力を選択的に与える段階と、を含む方法。 - 上記可変状態の構造体の外部にある固定周波数基準に基づいてフィードフォワードループを動作する段階を更に含む請求項13記載の方法。
- 上記第2のデータの関数として、上記フィードフォワードループのプラント伝達関数推定値を変える段階を更に含む請求項14記載の方法。
- 上記第1のデータの関数として、上記フィードフォワードループの特性を変える段階を更に含む請求項15記載の方法。
- 上記第1のデータに基づいてモードフィードバックループを動作する段階を更に含む請求項16記載の方法。
- 上記第1のデータの関数として、上記フィードバックループの利得を変える段階を更に含む請求項17記載の方法。
- 電磁石、アーマチュア、及び、磁束密度センサを含み、上記磁束密度センサは、上記電磁石と上記アーマチュアとの間の磁束を感知するよう動作的に位置付けられる、可変状態の構造体に力を与えるアクチュエータと、
上記可変状態の構造体の可変状態を表すデータを入力するデータ入力装置と、
上記電磁石に信号を与えるプロセッサと、を含み、
上記プロセッサは、上記データ入力装置及び上記磁束密度センサと動作上接続される、振動制御システム。 - 上記プロセッサは、上記磁束密度センサによって感知される磁束密度と、上記アクチュエータに要求される磁束密度の間の差を計算して、上記可変状態の構造体の振動を制御するよう構成される請求項19記載の振動制御システム。
- 上記電磁石は、上記可変状態の構造体と一体化して接続され、
上記アーマチュアは、外部構造体に一体化して接続される請求項20記載の振動制御システム。 - 上記電磁石は、流体及び塵によって劣化することを阻止するよう密閉される請求項21記載の振動制御システム。
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