JP2004339801A - 流動性充填材の製造方法および製造プラント - Google Patents
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Abstract
【課題】建設工事現場から発生する泥水を大量に、効率良く処理でき、かつ適用用途に応じて配合することで、各用途ごとに高品質の充填材が得られる流動性充填材の製造方法および製造プラントを提供する。
【解決手段】シールド工事現場Aで発生したシールド泥水を分級・脱水した濃縮泥水をアジテータトラック9aで輸送し、プラント内の第1の貯留タンク1に貯留する。他の掘削工事現場Bで排出された濃縮泥水より密度の低い掘削安定液を、アジテータトラック9bで輸送し、第2の貯留タンク2に貯留する。配合設計に応じて、貯留タンク1,2に貯留された濃縮泥水と掘削安定液を所定の割合で混合タンク3に送り、密度1.2〜1.5g/cm2 の調整泥水を作製する。必要に応じ、添加剤や密度調整材6を加える。ミキサ5で固化材サイロ4から送り込まれるセメントと攪拌混合して、アジテータトラック9cに流動性充填材として積み込み、充填現場Cへ輸送する。
【選択図】 図1
【解決手段】シールド工事現場Aで発生したシールド泥水を分級・脱水した濃縮泥水をアジテータトラック9aで輸送し、プラント内の第1の貯留タンク1に貯留する。他の掘削工事現場Bで排出された濃縮泥水より密度の低い掘削安定液を、アジテータトラック9bで輸送し、第2の貯留タンク2に貯留する。配合設計に応じて、貯留タンク1,2に貯留された濃縮泥水と掘削安定液を所定の割合で混合タンク3に送り、密度1.2〜1.5g/cm2 の調整泥水を作製する。必要に応じ、添加剤や密度調整材6を加える。ミキサ5で固化材サイロ4から送り込まれるセメントと攪拌混合して、アジテータトラック9cに流動性充填材として積み込み、充填現場Cへ輸送する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、建設工事に伴って発生する泥水を用いた流動性充填材の製造方法および該製造方法に用いられる製造プラントに関するものであり、製造された流動性充填材は、建設構造物の裏込め・埋め戻し、地下空洞の充填、道路下の空隙の充填、水道管やガス管などの埋め戻し等に有効利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、建設構造物の裏込め・埋め戻し、地下空洞の充填等には、コンクリート、モルタル、砂などの他、建設発生土に泥水や固化材を加えた流動化処理土等も利用されている。
【0003】
建設発生土の利用に関しては、非特許文献1(「建設発生土利用技術マニュアル」)が発行され、その利用推進を促している。この建設発生土の中で第1種〜第4種に該当する発生土は比較的利用しやすく、再利用率も高い。
【0004】
これに対し、建設汚泥や泥土、あるいは泥水に当たるものは、その一部が脱水処理後、セメント等の固化材を加えることで、建設工事現場近傍での埋め戻しや空隙の充填等に用いられている程度であり、再利用の範囲が限られ、大部分は産業廃棄物として処理せざるを得ない状況にある。
【0005】
特に、シールド工事で発生するシールド泥水、浚渫土、アースドリル工法や連続地中壁工法での使用済み掘削安定液などの含水比の高いものはそのまま処分することができず、産業廃棄物として処分するにしろ、何らかの形で有効利用するにしろ、脱水しなければならない場合が多い。
【0006】
特許文献1には、地盤改良工事や連続地中壁の工事等で発生するベントナイトを含有する泥水に、セメントを含有する汚泥を乾燥させて粉砕したものを混合して流動性埋め戻し材として利用することが記載されている。
【0007】
特許文献2には、高含水率の泥水または汚泥に、含水率が50%以下の土または砂を添加して泥水や汚泥を改質し、それにセメント系または石灰系の固化材を添加して固化させることが記載されている。
【0008】
特許文献3や特許文献4には、泥水シールド工法などで用いる泥水の一部をサイクロン等を備えた設備で分級・脱水して濃縮泥水を取り出し、セメント系または石灰系の固化材を加えて埋め戻しや裏込めの材料として有効利用することが記載されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−140155号公報
【特許文献2】
特開平11−188392号公報
【特許文献3】
特開平04−312696号公報
【特許文献4】
特開2001−090480号公報
【特許文献5】
特開平07−082084号公報
【非特許文献1】
建設発生土利用技術マニュアル検討委員会編,「建設発生土利用技術マニュアル」第2版,財団法人土木技術センター発行,平成9年10月
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
建設工事現場の限られた敷地・空間には大規模な泥水処理設備を設置することができないのが一般的であるため、前述のように建設工事に伴って排出される泥水は、その一部がその工事現場近傍での埋め戻しや空隙の充填等に用いられる程度であり、大部分が産業廃棄物として多大なコストをかけて廃棄されることになる。
【0011】
また、上述のように、セメント等の固化材の添加により充填材として利用されている一部の泥水についても、建設工事現場の限られたスペースに設置された比較的簡易な設備での充填材の製造であるため、高品質のものを製造することは難しく、また泥水と固化材、添加剤等の配合設計における選択の幅も小さくならざるを得ないため、様々な用途に応じて、その充填材の特性、品質を変えるといったことができない。
【0012】
本願発明は、従来、そのほとんどを産業廃棄物として費用をかけて廃棄せざるを得なかった建設工事現場から発生する泥水を大量に、効率良く処理でき、かつ適用用途に応じて配合することで、各用途ごとに高品質の充填材が得られる流動性充填材の製造方法および製造プラントを提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に係る流動性充填材の製造方法は、建設工事に伴って発生する分級・脱水された濃縮泥水を用いた流動性充填材の製造方法であって、建設工事現場から輸送してきた前記濃縮泥水を攪拌手段を設けたタンクに貯留し、その後、該濃縮泥水と該濃縮泥水より密度の低い別のタンクに貯留してある第2の泥水または水とを攪拌手段を設けた混合タンクで混合することにより、密度が1.2g/cm3 以上、かつ1.5g/cm3 以下の調整泥水を作製し、該調整泥水に固化材を加えて攪拌混合することを特徴とするものである。
【0014】
請求項2は、請求項1に係る流動性充填材の製造方法において、前記第2の泥水が、建設工事現場で発生する使用済み掘削安定液である場合を限定したものである。
【0015】
請求項3は、請求項1または2に係る流動性充填材の製造方法において、前記濃縮泥水と第2の泥水または水とを混合した調整泥水中に含まれる固形分粒子における粒径75μm以下の細粒分の割合が70重量%以上である場合を限定したものである。
【0016】
請求項4は、請求項1、2または3に係る流動性充填材の製造方法において、前記固化材がセメントまたはセメントに石炭灰を混合したものである場合を限定したものである。
【0017】
本願の請求項5に係る流動性充填材製造プラントは、請求項1〜4記載の流動性充填材の製造を行うプラントであって、建設工事現場から輸送されてきた分級・脱水された濃縮泥水を貯留するための攪拌手段を有する第1の貯留タンクと、前記濃縮泥水と混合するための第2の泥水または水を貯留するための第2の貯留タンクと、前記第1の貯留タンクに貯留された濃縮泥水と該第2の貯留タンクに貯留された第2の泥水または水とを任意の割合で投入し混合するための攪拌手段を有する混合タンクと、固化材を貯蔵するためのサイロと、該混合タンクで混合し作製された調整泥水と該サイロに貯蔵された固化材とを任意の割合で投入し攪拌混合するためのミキサとを備えていることを特徴とするものである。
【0018】
なお、一般に「泥土」および「泥水」という言葉は、明確に区別されずに用いられている場合も多く、本願発明における「泥水」には、含水量が多い泥土であって泥水と区別できないもの、泥土に水その他の水分を加えたものや、その他の含水比が高い建設汚泥なども含まれる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の流動性充填材の製造方法の具体的な実施形態について説明する。
【0020】
本願発明で流動性充填材の主原料となる建設工事に伴って発生する分級・脱水された濃縮泥水の代表的なものとしては、シールド工法によるトンネル施工等におけるシールド発生泥水を、工事現場に設置したサイクロンや濾過装置、その他の分級・脱水装置を備えた泥水濃縮設備で処理し、主として微細な固形分粒子のみを含む密度が1.3〜1.6g/cm3 程度の濃縮泥水として取り出したものが挙げられるが、これと同等の密度あるいは固形分粒子の粒度分布を有する泥水であれば、建設工事の種類や、その建設工事に伴って発生する濃縮泥水の原材料としての泥水の種類は特に限定されない。
【0021】
密度が1.3g/cm3 未満の濃縮泥水も利用可能であるが、最終製品となる流動性充填材の硬化物において十分な強度が得られにくく、強度を上げるために固化材や添加剤の量を増やした場合には、コストが増大し、また濃縮泥水中に含まれる固形分粒子の量で考えた場合、輸送効率が悪くなる。
【0022】
また、密度が1.3g/cm3 未満の場合、該濃縮泥水と該濃縮泥水より密度の低い、別のタンクに貯留してある第2の泥水または水とを混合タンクで混合して調整泥水を作製する際、密度が1.2g/cm3 以上、かつ1.5g/cm3 以下となるように混合すべき調整泥水の密度が、1.2g/cm3 以上、かつ1.3g/cm3 未満に限定され、密度以外の要素についても選択の幅が大幅に限定され、それに伴い埋め戻し材や空隙充填材としての適用範囲も限定されるため、処理プラントを十分機能させられなくなる恐れがある。
【0023】
このようなことから、濃縮泥水は密度1.3g/cm3 以上のものが望ましい。
【0024】
また、密度が1.6g/cm3 を超える濃縮泥水も利用可能であるが、建設工事現場に設置される泥水濃縮設備の能力やコストの問題、さらに濃縮泥水の濃度が高い場合、タンク内における固形分粒子の硬化および攪拌のし難さ、流動性の低下などの問題がある。
【0025】
このようなことから、濃縮泥水は、密度1.6g/cm3 以下のものが望ましい。
【0026】
なお、密度については、例えば所定の容積の容器に入れたサンプルの重量を測定することで、サンプルの体積と重量の関係から求めることができる。
【0027】
このような濃縮泥水を、例えばアジテータトラックで建設工事現場から、流動性処理土の製造プラントへ輸送し、製造プラントに設けた攪拌手段を有するタンクに貯留する。
【0028】
攪拌手段は、濃縮泥水中の固形分粒子が沈降したり、濃縮泥水中に建設工事に用いられた水硬性成分や凝集成分が混入している場合に、タンク内の沈澱物が硬化したり、貯留中に流動性が低下するのを防止するのが主目的であり、その他、粒度調整材や流動化剤、増粘剤等の添加剤を加える必要がある場合の攪拌にも利用できる。攪拌手段については、後に製造プラントの説明において詳述する。
【0029】
本願発明で用いる濃縮泥水に含有される固形分粒子の粒度分布に関しては、粒径75μm以下の細粒分の割合が70重量%以上であることが望ましい。
【0030】
濃縮泥水を主原料とする本願発明の流動性充填材の製造においては、濃縮泥水を粒径75μm以下の細粒分の割合が70重量%以上となるようにすれば、上記調整泥水も同様の性状にしやすくなるため、該調整泥水に固化材を攪拌混合して製造される流動性充填材も砂等の大きな粒子成分が少ない、きめ細かな流動性充填材となり、粒径を調整しないものに比べ、材料分離することなく、充填材として高い流動性と充填性が得られ、かつ該流動性充填材の硬化後についても、裏込め材や埋め戻し材、空洞充填材等としてより緻密で高強度の硬化物が得られる。
【0031】
一方、濃縮泥水における粒径75μm以下の細粒分の割合が70重量%未満の場合、砂分が多くなり、材料分離が生じやすくなる。
【0032】
また、例えば、サイクロンで分級・脱水したものでは、粒径75μm以下の細粒分の割合が85重量%以上となる濃縮泥水も比較的容易に得ることができ、そのような濃縮泥水を用いた場合には、さらに流動性および充填性に優れた流動性充填材が得られ、硬化後についてもより緻密で高強度の硬化物が得られる。
【0033】
したがって、本願発明で用いる濃縮泥水に含有される固形分粒子の粒度分布に関しては、粒径75μm以下の細粒分の割合が85重量%以上であることがより好ましい。
【0034】
なお、上記固形分粒子の粒度分布の測定は、ふるいおよび浮ひょうを用いたJIS A 1204「土の粒度試験方法」が規格としての測定方法であるが、その他、X線透過法やレーザー回折/散乱法などの測定装置を用いて行われる。
【0035】
第2の泥水または水として、泥水を用いる場合の第2の泥水の種類は特に限定されないが、濃縮泥水より密度の低い泥水を用い、濃縮泥水との混合割合を変えることで、これらの混合物である調整泥水の密度を濃縮泥水と第2の泥水の中間の任意の密度に調整することができる。
【0036】
したがって、好ましい第2の泥水の密度は、1.0g/cm3 を超え、かつ1.3g/cm3 未満である。なお、第2の泥水の固形分粒子の粒径も上記の濃縮泥水と同様かそれより細かいことが望ましい。
【0037】
また、第2の泥水についても、建設工事現場から排出される泥水等を利用する場合は、それ自体、従来は費用をかけて脱水処理等を行って処分しなければならないものであったのに対し、本願発明では流動性充填材の原料の一部として取り込むことで、濃縮泥水とともに、大量の泥水の有効利用が図れることになる。
【0038】
また、従来の建設工事現場において、少量の泥水を処理する方法では、建設工事現場ごと、排出される泥水の特性等に応じて脱水処理を施し、あるいは逆に水を加えて流動化処理し、さらに添加剤や固化材の配合を決める必要があるため、少量であるにもかかわらず多大のコストを要していたのに対し、本願発明において濃縮泥水とそれより密度の低い第2の泥水とを混合して処理する場合、従来は別々に処理されていた特性の異なる泥水の処理が、最終的には一つの処理となり、同時に大量処理することができるので、処理コストを大幅に削減することができる。
【0039】
第2の泥水としては、例えば杭施工のためのアースドリル工法や連続地中壁工法等で排出される使用済み掘削安定液、シールド工法によるトンネル施工等におけるシールド発生泥水、その他の一般泥水が挙げられるが、第2の泥水として、一般泥水の他、上記濃縮泥水と異なる密度の他の濃縮泥水を用いることもあり得る。第2の泥水も、通常、各現場からアジテータトラックなどで輸送されてきて、タンクに貯留される。
【0040】
本願の請求項2は、この第2の泥水が、建設工事現場で発生する使用済み掘削安定液である場合を限定したものである。
【0041】
このような使用済み掘削安定液としては、杭施工のためのアースドリル工法や連続地中壁工法等で排出される使用済み掘削安定液などが挙げられる。なお、掘削工事における孔壁安定のため等に用いられるベントナイト等が混入した掘削安定液は、密度が1.0〜1.2g/cm3 程度の泥水であり、これを流動性充填材の材料として取り込んだ場合、流動性充填材の粘性を高くする効果があり、材料分離等に対して有効である。
【0042】
第2の泥水または水を貯留するためのタンクにも、前記濃縮泥水のタンクと同様、固形分粒子の沈澱やその硬化を防止したり、あるいは添加剤を混合する場合には、攪拌手段を設けるのが望ましい。しかし、添加剤等は、通常、後述する混合タンクあるいは濃縮泥水のタンクで加えることができるので、水または水の密度である1.0g/cm3 に近い低密度の泥水を貯留する場合には、攪拌手段を必ずしも必要としない。
【0043】
また、水を用いる場合については、水道水の使用も可能であるが、各種機材やタンクその他のプラント設備、輸送用のアジテータトラック、その他の洗浄に用いた水を回収したものを用いれば、資源の無駄がなく、また洗浄水の処理の手間と費用が省けるので合理的である。
【0044】
本願発明において、混合タンクで濃縮泥水と第2の泥水または水とを混合して得られる調整泥水の密度を、1.2g/cm3 以上、かつ1.5g/cm3 以下とした理由は以下の通りである。
【0045】
すわなち、調整泥水中の固形分粒子の粒度分布や泥水中に混入している他の成分の性質等にもよるが、通常、密度が1.25g/cm3 未満では一般的に含水比が大き過ぎ、該調整泥水に固化材を攪拌混合して得られる流動性充填材に材料分離が生じたり、ブリージング水が発生する恐れがあり、また固化材を大量に必要とする場合がある。
【0046】
ただし、調整泥水中にモンモリロナイト等の膨潤作用を持つ粘土が存在し、泥水としての粘性が高い場合等には、密度1.2g/cm3 程度の調整泥水として使用することができる。
【0047】
以上の理由から、本願発明では調整泥水の密度を1.2g/cm3 以上とした。万一、調整泥水の密度がこれよりも低くなってしまう場合には、脱水処理を行ったり、スラグ、石炭灰等の無機質微粉末を添加するか、あるいはさらに密度の異なる第3の泥水あるいは泥土等を混合するなどして調整泥水の密度を、適用対象に応じた密度に調整する。
【0048】
また、調整泥水の密度を1.5g/cm3 以下としたのは、それ以上では十分な流動性が得にくかったり、調整泥水を作製するために濃縮泥水と第2の泥水または水を混合した際に材料分離を生じやすくなったり、それらに伴い、多量の流動化剤、分散剤、その他の添加剤を必要とする場合があるためである。
【0049】
さらに、このときの調整泥水中に含まれる固形分粒子の粒径は、請求項3で限定したように、粒径75μm以下の細粒分の割合が70重量%以上(さらに好ましくは85重量%以上)であることが望ましい。
【0050】
前述の通り、用いる濃縮泥水や第2の泥水がそれらの固形分粒子の粒径を制御した特定のものであれば、上記範囲の調整泥水は容易に得られ、固化材との攪拌混合により得られる流動性充填材はきめ細かなものとなり、粒径を調整しないものに比べ、材料分離することなく、充填材として高い流動性と充填性が得られ、かつ該流動性充填材の硬化後についても、裏込め材や埋め戻し材、空洞充填材等としてより緻密で高強度の硬化物が得られる。
【0051】
上記調整泥水を作製する混合タンクも攪拌手段が設けられている。混合される濃縮泥水と第2の泥水または水との割合は特に限定されず、用途や注文に応じて、調整泥水の密度が目標値となるように配合すればよい。
【0052】
調整泥水と攪拌混合する固化材としては、市販のセメント系固化材、生石灰系固化材や、請求項4に記載したように、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメントなどの混合セメントといった各種セメント、あるいはこれらのセメントにさらに石炭灰を混合したものなどを用いることができる。
【0053】
特に、比重や粒度を調整した高品質の石炭灰をセメントに大量に混合したもの、例えばセメント:石炭灰=1:3の割合(重量)で混合したものを固化材として、該調整泥水に攪拌混合した場合、ブリージング率が小さく、流動性、減水性に優れた流動性充填材が得られるという効果がある。
【0054】
一般に上述した各種固化材の添加量は、用途や目的の他、固化材自体の特性、調整泥水の密度あるいは含水比、調整泥水中の固形分粒子の量、粒度分布等によっても異なるが、固化材としてセメント系固化材や生石灰系固化材を用いる場合は、通常、調整泥水に対し、概ね50〜300kg/m3 添加する。上記各種固化材は水に分散させたスラリーやミルクで添加してもよいが、通常は粉末のままで添加される。
【0055】
上記の条件において、十分な流動性が得られない場合、あるいはフローロスが著しい場合には、流動化剤を用いることもある。
【0056】
流動化剤としては、ポリカルボンサン系やナフタレン系等の流動化剤、コンクリート用のAE剤、AE減水剤、高性能AE減水剤等を用いると、初期のフロー値を高くすることができる。また、グルコン酸、クエン酸、単糖類、二糖類等のセメント水和反応遅延性のものを用いると、フローロスが小さくなり、安定した流動性を得ることができる。
【0057】
この他、本願の発明者は、固化材を攪拌混合する前の調整泥水中に、該固化材とは別に、少量(調整泥水に対し、0.1〜2.0重量%)のセメント系材料および石灰系材料のうちの少なくとも1種以上(添加剤)をあらかじめ加えて攪拌混合しておくことにより、調整泥水と粉末状の固化材とを混合しやすくなるとともに、流動性充填材の製造後における未硬化の状態でのフローロス、すなわち流動性の低下が抑制でき、かつブリージング水がより生じ難くなることを確認している。
【0058】
なお、製造される流動性充填材の性能は、例えば、調整泥水に固化材を攪拌混合した直後および一定時間経過後(例えば、60分あるいは120分後)のフロー値、24時間静置後のブリージング率、硬化後の一軸圧縮強等を基準として評価することができ、それらの試験結果に基づいて、適用対象に応じた配合設計がなされる。
【0059】
サンプリング試料あるいは供試体を用いたこれらの試験方法、および評価については後述する。
【0060】
図1は、本願発明の一実施形態における製造フローおよび製造プラントの構成を概略的に示したもので、基本的な設備として、プラント内に発生現場より輸送され受け入れた濃縮泥水を貯留するための第1の貯留タンク1、同様に受け入れた第2の泥水(水の場合もある。以下、同様。)を貯留するための第2の貯留タンク2、濃縮泥水と第2の泥水を混合するための混合タンク3、固化材を貯蔵するためのサイロ4、混合タンク3内で作製された調整泥水と固化材を攪拌混合するためのミキサ5(図1は内部にミキサが設置され、出荷設備も有する建物を図示している)などが配置されている。
【0061】
ただし、図1はプラントを概念的に示したものであり、濃縮泥水を貯留するための第1の貯留タンク1は、通常は複数の貯留タンク群で構成され、輸送されてくる濃縮泥水の種類と量や、プラントで製造して出荷される流動性充填材の量に応じて、複数の貯留タンク1間で貯留順序を調整したり、予備のタンクを設けておくことが望ましい。
【0062】
また、この濃縮泥水の貯留タンク1については、比較的泥水密度が高いことから、固形分粒子が沈降し、特に濃縮泥水中に硬化性成分や凝集成分が混入している場合、タンク内の沈澱物が硬化したり、貯留中に流動性が低下し、ポンプ等による濃縮泥水の混合タンクへの圧送に支障をきたしたり、製造される流動性充填材の品質低下をもたらすことが考えられるため、攪拌手段を設けて貯留されている濃縮泥水をアジテートできるようにしている。
【0063】
攪拌手段としては、水平翼をモーターの駆動により回転させる形式のものが一般的であるが、泥水中にエアーを送り込む形式のものなどでもよく、その形態や攪拌の方式は特に限定されない。また、濃縮泥水のアジテートは、必ずしも常時行う必要はなく、例えば処理対象となる個々の濃縮泥水の密度や特性に応じて、ある時間ごとインターバルを設けて行うのでもよい。
【0064】
第2の泥水を貯留するための第2の貯留タンク2も、必要に応じ複数設けられ、また必要に応じ攪拌手段を設けるが、前述したように条件によっては攪拌手段を設けない場合もある。
【0065】
アジテータトラック9a,9bなどによって、建設工事現場A(例えば、シールド工事現場)および建設工事現場B(例えば、基礎杭施工のためのアースドリルによる掘削工事現場)から輸送されてきた濃縮泥水および第2の泥水(例えば、使用済み掘削安定液)は、それぞれ別の受入れピットに投入され、圧送用のポンプで配管を通じて、それぞれ第1の貯留タンク1、第2の貯留タンク2に送られる。
【0066】
また、第1の貯留タンク1および第2の貯留タンク2から混合タンク3へも配管が設けられ、これらの貯留タンク1,2に貯留された濃縮泥水および第2の泥水を混合比に応じて、それぞれポンプで圧送できるようになっている。
【0067】
この他、図示しないが、必要に応じ、流動化剤、分散剤、増粘剤などの添加剤を添加するための貯留設備や配管などが設けられる。あるいは、必要に応じ、細砂や石炭灰、スラグなどの密度調整材6などを直接投入する場合もある。なお、添加剤の一部または全部は、混合タンク3以外に、第1の貯留タンク1や第2の貯留タンク2で添加したり、後述するミキサ5での固化材との攪拌混合の際に添加する場合もある。
【0068】
混合タンク3には、混合のために配管を通じて送り込まれた濃縮泥水と第2の泥水および必要に応じて添加される添加剤や密度調整材6等を混合するための攪拌手段が設けられている。攪拌手段については、第1の貯留タンク1について説明したのと同様、水平翼をモーターの駆動により回転させるものなどが利用できるが、形態や攪拌の方式は限定されない。
【0069】
これら第1の貯留タンク1、第2の貯留タンク2および混合タンク3には、泥水の水位および泥水の重量を測定するセンサーが取り付けられており、貯留された濃縮泥水および第2の泥水の密度がリアルタイムで判るようになっている。
【0070】
また、混合タンク3からは、ミキサ5に向けて配管が設けられ、混合タンク3で作製された調整泥水と、固化材サイロ4から空気圧送されてくる粉末状固化材および必要に応じて添加される添加剤がミキサ5で混練される。
【0071】
ミキサ5は、通常のコンクリート製造用のミキサでよく、投入された総重量が例えば1000〜2000kgとなる調整泥水およびセメントなどの固化材を配合に応じて所定時間(例えば、1〜2分程度)混練し、製造された流動性充填材を、直接、アジテータトラック9cなどに積み込むことができる。
【0072】
なお、濃縮泥水および第2の泥水の受け入れから、第1の貯留タンク1および第2の貯留タンク2への圧送、これらの貯留タンク1,2から混合タンク3への泥水の圧送、混合タンク3で作製された調整泥水のミキサへ圧送、サイロ4からミキサ5への粉末状固化材の空気圧送、さらにミキサ5あるいは途中での添加剤の添加、攪拌混合時間、製造された流動性充填材のミキサ5からの吐出等の一連の作業は、センサーなどから送られてくるデーターとあらかじめインプットされている濃縮泥水や第2の泥水に関する各種データーおよび配合試験のデーターなどに基づいて、プラント内に設けた制御室などで、一括制御・管理することが可能である。その場合、制御室内の作業員が制御盤やモニターの表示を見ながら、操作することができる。
【0073】
以上のようなプラントにおける流動性充填材の製造は、通常、注文に応じて行われる。
【0074】
このようにして製造された流動性充填材は、ミキサ5からアジテータトラック9cなどに積み込まれ、埋め戻しや裏込め、空洞の充填などが行われる建設工事現場Cに送り出されることになるが、その際、建設工事現場Cにおける流動性充填材の充填性や硬化後の強度の要求を満たし、また建設工事現場Cへ輸送する間におけるフローロスが少ないことなどが重要となる。
【0075】
これについては、配合設計の段階で、あらかじめサンプルについての、後述するフロー値やブリージング率、一軸圧縮強さの測定などが行われているが、出荷に際してもサンプル試験により性能の確認が行われる。
【0076】
また、上記の点からして、建設工事現場Cへの本願発明の流動性充填材の輸送可能時間は、通常3時間以内である。したがって、本願発明のプラントは需要が最近増えてきている大都市やその近辺に設置されるのがよい。
【0077】
次に、数種の濃縮泥水および第2の泥水を用い、その配合を変えて行った実施例および比較例の試験方法とその試験結果について説明する。
【0078】
実施例および比較例で使用した材料を表1に、配合を表2に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
表1におけるA〜Dの濃縮泥水は、シールド工事現場における発生泥水を、工事現場に設置したサイクロンを備えた泥水濃縮設備で分級・脱水したものである。
【0082】
濃縮泥水A〜Dの土粒子の75μm以下の細粒分は、それぞれ95%、99%、83%、98%で、平均粒径がそれぞれ10.0μm、12.1μm、11.6μm、13.5μmであった。
【0083】
また、表1におけるa、bの一般泥水は、基礎杭の施工現場から排出されたアースドリル掘削工事の使用済み掘削安定液である。75μm以下の細粒分は、両泥水a、bともに100%で、平均粒径がそれぞれ4.3μm、9.9μmであった。
【0084】
なお、表1における添加剤は、固化剤を加えた直後に著しい流動性の低下がある泥水に対して、これを抑制するために添加した。
【0085】
表2の配合における試料の作製および試験手順は以下の通りである。
【0086】
▲1▼ 添加剤を添加する場合、泥水に添加剤を加えてホバートミキサで10分混合し、1日以上置いたものを使用した。
【0087】
▲2▼ 固化材を1m3 に対して100kgとなるように加えて、ホバートミキサで2分混合して、流動性充填材を作製した。
【0088】
▲3▼ フロー値の測定
固化材の添加直後の試料、および60分間静置した後に再びホバートミキサで2分間攪拌した後の試料について、フロー値の測定を行った。
フロー値の測定は、日本道路公団規格JHS A 313「エアモルタル及びエアミルクの試験方法」1.コンシステンシー試験方法、1.2シリンダー法に準じて、水平板上に高さ80mm、直径80mmの中空円筒状シリンダーを置き、試料を充填して、シリンダーを引き上げた時の試料の広がりを測定した。
【0089】
▲4▼ ブリージング率の測定
ブリージング率は、土木学会基準のブリージング袋に試料500cm3 を充填し、24時間静置した後、浮き水量を測定し、ブリージング率を算出した。
【0090】
▲5▼ 一軸圧縮強さの測定
一軸圧縮強さは、直径50mm、高さ100mmの供試体を作成し、ビニール袋で密閉し、20℃で材齢28日まで養生した後、JIS A 1216「土の一軸圧縮試験方法」に準じて測定した。
【0091】
表3は、上記実施例および比較例についての試験結果をまとめたものである。
【0092】
【表3】
【0093】
表3に示されるように、本願発明の流動性充填材は、流動性がよく、ブリージングも発生せず、強度発現もよい。したがって、従来の流動化処理土や裏込め材と比べても同等以上の性能を有するものである。
【0094】
流動性充填材としての基準値は、充填する場所により異なるが、代表的な値として充填時のフロー値が160mm以上、ブリージング率1%未満、材令28日での一軸圧縮強さが200kN/m2 以上であることが好ましい。また、製造時における固化材添加直後のフロー値は180mm以上であることが好ましい。
【0095】
濃縮泥水および一般泥水または水を混合した調整泥水について流動性充填材を作製し、調整泥水の密度が1.2〜1.5g/cm3 の範囲になるように作製したもの(表2の試料No.1、2、3、4、6、7、9)は、基準値の範囲の特性を持つ流動性充填材が得られた。
【0096】
密度が1.5g/cm3 を上回るものについては、固化材としてのセメントを添加した直後に流動性を得ることができず、流動性充填材としては不適であった(表2の試料No.5)。
【0097】
また、密度が1.2g/cm3 を下回るものについては、ブリージング率が1%を超え、強度も200kN/m2 を下回った(表2の試料No.8)。
【0098】
よって、本願発明の密度が1.2g/cm3 以上、かつ1.5g/cm3 以下の調整泥水を使用することで流動性充填材として良好な特性が得られる。
【0099】
また、固化材に石炭灰を混合したもの(表2の試料No.9)は、製品としての流動性充填材の密度を高くすることができるばかりでなく、流動性を改善し、かつ高い強度が得られた。特に、固化材混練直後から60分後においてもフロー値の低下が少なかった。
【0100】
【発明の効果】
本願発明は、従来、そのほとんどを産業廃棄物として費用をかけて廃棄せざるを得なかった建設工事現場から発生する泥水を主原料として、流動性充填材として有効利用するものであり、かつ大量の濃縮泥水を効率良く処理することができる。
【0101】
また、従来の建設工事現場において、少量の泥水を処理する方法では、建設工事現場ごと、排出される泥水の特性等に応じて脱水処理を施し、あるいは逆に水を加えて流動化処理し、さらに添加剤や固化材の配合を決める必要があるため、少量であるにもかかよず多大のコストを要していたのに対し、濃縮泥水とそれより密度の低い第2の泥水とを混合して処理する場合、従来は別々に処理されていた特性の異なる泥水の処理が最終的には一つの処理となり、同時に大量処理することができるので処理コストを大幅に削減することができる。
【0102】
また、分級・脱水された微小な固形分粒子のみを含む濃縮泥水を用い、固形分粒子の粒径が小さい調整泥水にすることで、従来の流動化処理土等に比べきめ細かな流動性充填材となるので、粒径を調整しないものに比べ材料分離することなく、充填材として高い流動性と充填性が得られ、硬化後についても裏込め材や埋め戻し材、空洞充填材等としてより緻密でより強度の高い硬化物が得られる。
【0103】
さらに、本願発明のプラントを都市部やその近郊に設置することで、各泥水発生現場での処理設備を簡易にして、そのスペースを小さくできるとともに、これまで大量供給が難しかった都市部現場への流動性充填材の供給が可能となる。そして、その流動性充填材は用途や目的に応じた高品質のものが設計可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施形態における製造フローおよび製造プラントの構成を概略的に示した図である。
【符号の説明】
A…建設工事現場(濃縮泥水発生現場)、B…建設工事現場(第2の泥水発生現場)、C…建設工事現場(流動性充填材の使用現場)、
1…第1の貯留タンク、2…第2の貯留タンク、3…混合タンク、4…固化材サイロ、5…混合ミキサ、6…密度調整材、9a,9b,9c…アジテータトラック
【発明の属する技術分野】
本願発明は、建設工事に伴って発生する泥水を用いた流動性充填材の製造方法および該製造方法に用いられる製造プラントに関するものであり、製造された流動性充填材は、建設構造物の裏込め・埋め戻し、地下空洞の充填、道路下の空隙の充填、水道管やガス管などの埋め戻し等に有効利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、建設構造物の裏込め・埋め戻し、地下空洞の充填等には、コンクリート、モルタル、砂などの他、建設発生土に泥水や固化材を加えた流動化処理土等も利用されている。
【0003】
建設発生土の利用に関しては、非特許文献1(「建設発生土利用技術マニュアル」)が発行され、その利用推進を促している。この建設発生土の中で第1種〜第4種に該当する発生土は比較的利用しやすく、再利用率も高い。
【0004】
これに対し、建設汚泥や泥土、あるいは泥水に当たるものは、その一部が脱水処理後、セメント等の固化材を加えることで、建設工事現場近傍での埋め戻しや空隙の充填等に用いられている程度であり、再利用の範囲が限られ、大部分は産業廃棄物として処理せざるを得ない状況にある。
【0005】
特に、シールド工事で発生するシールド泥水、浚渫土、アースドリル工法や連続地中壁工法での使用済み掘削安定液などの含水比の高いものはそのまま処分することができず、産業廃棄物として処分するにしろ、何らかの形で有効利用するにしろ、脱水しなければならない場合が多い。
【0006】
特許文献1には、地盤改良工事や連続地中壁の工事等で発生するベントナイトを含有する泥水に、セメントを含有する汚泥を乾燥させて粉砕したものを混合して流動性埋め戻し材として利用することが記載されている。
【0007】
特許文献2には、高含水率の泥水または汚泥に、含水率が50%以下の土または砂を添加して泥水や汚泥を改質し、それにセメント系または石灰系の固化材を添加して固化させることが記載されている。
【0008】
特許文献3や特許文献4には、泥水シールド工法などで用いる泥水の一部をサイクロン等を備えた設備で分級・脱水して濃縮泥水を取り出し、セメント系または石灰系の固化材を加えて埋め戻しや裏込めの材料として有効利用することが記載されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−140155号公報
【特許文献2】
特開平11−188392号公報
【特許文献3】
特開平04−312696号公報
【特許文献4】
特開2001−090480号公報
【特許文献5】
特開平07−082084号公報
【非特許文献1】
建設発生土利用技術マニュアル検討委員会編,「建設発生土利用技術マニュアル」第2版,財団法人土木技術センター発行,平成9年10月
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
建設工事現場の限られた敷地・空間には大規模な泥水処理設備を設置することができないのが一般的であるため、前述のように建設工事に伴って排出される泥水は、その一部がその工事現場近傍での埋め戻しや空隙の充填等に用いられる程度であり、大部分が産業廃棄物として多大なコストをかけて廃棄されることになる。
【0011】
また、上述のように、セメント等の固化材の添加により充填材として利用されている一部の泥水についても、建設工事現場の限られたスペースに設置された比較的簡易な設備での充填材の製造であるため、高品質のものを製造することは難しく、また泥水と固化材、添加剤等の配合設計における選択の幅も小さくならざるを得ないため、様々な用途に応じて、その充填材の特性、品質を変えるといったことができない。
【0012】
本願発明は、従来、そのほとんどを産業廃棄物として費用をかけて廃棄せざるを得なかった建設工事現場から発生する泥水を大量に、効率良く処理でき、かつ適用用途に応じて配合することで、各用途ごとに高品質の充填材が得られる流動性充填材の製造方法および製造プラントを提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に係る流動性充填材の製造方法は、建設工事に伴って発生する分級・脱水された濃縮泥水を用いた流動性充填材の製造方法であって、建設工事現場から輸送してきた前記濃縮泥水を攪拌手段を設けたタンクに貯留し、その後、該濃縮泥水と該濃縮泥水より密度の低い別のタンクに貯留してある第2の泥水または水とを攪拌手段を設けた混合タンクで混合することにより、密度が1.2g/cm3 以上、かつ1.5g/cm3 以下の調整泥水を作製し、該調整泥水に固化材を加えて攪拌混合することを特徴とするものである。
【0014】
請求項2は、請求項1に係る流動性充填材の製造方法において、前記第2の泥水が、建設工事現場で発生する使用済み掘削安定液である場合を限定したものである。
【0015】
請求項3は、請求項1または2に係る流動性充填材の製造方法において、前記濃縮泥水と第2の泥水または水とを混合した調整泥水中に含まれる固形分粒子における粒径75μm以下の細粒分の割合が70重量%以上である場合を限定したものである。
【0016】
請求項4は、請求項1、2または3に係る流動性充填材の製造方法において、前記固化材がセメントまたはセメントに石炭灰を混合したものである場合を限定したものである。
【0017】
本願の請求項5に係る流動性充填材製造プラントは、請求項1〜4記載の流動性充填材の製造を行うプラントであって、建設工事現場から輸送されてきた分級・脱水された濃縮泥水を貯留するための攪拌手段を有する第1の貯留タンクと、前記濃縮泥水と混合するための第2の泥水または水を貯留するための第2の貯留タンクと、前記第1の貯留タンクに貯留された濃縮泥水と該第2の貯留タンクに貯留された第2の泥水または水とを任意の割合で投入し混合するための攪拌手段を有する混合タンクと、固化材を貯蔵するためのサイロと、該混合タンクで混合し作製された調整泥水と該サイロに貯蔵された固化材とを任意の割合で投入し攪拌混合するためのミキサとを備えていることを特徴とするものである。
【0018】
なお、一般に「泥土」および「泥水」という言葉は、明確に区別されずに用いられている場合も多く、本願発明における「泥水」には、含水量が多い泥土であって泥水と区別できないもの、泥土に水その他の水分を加えたものや、その他の含水比が高い建設汚泥なども含まれる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の流動性充填材の製造方法の具体的な実施形態について説明する。
【0020】
本願発明で流動性充填材の主原料となる建設工事に伴って発生する分級・脱水された濃縮泥水の代表的なものとしては、シールド工法によるトンネル施工等におけるシールド発生泥水を、工事現場に設置したサイクロンや濾過装置、その他の分級・脱水装置を備えた泥水濃縮設備で処理し、主として微細な固形分粒子のみを含む密度が1.3〜1.6g/cm3 程度の濃縮泥水として取り出したものが挙げられるが、これと同等の密度あるいは固形分粒子の粒度分布を有する泥水であれば、建設工事の種類や、その建設工事に伴って発生する濃縮泥水の原材料としての泥水の種類は特に限定されない。
【0021】
密度が1.3g/cm3 未満の濃縮泥水も利用可能であるが、最終製品となる流動性充填材の硬化物において十分な強度が得られにくく、強度を上げるために固化材や添加剤の量を増やした場合には、コストが増大し、また濃縮泥水中に含まれる固形分粒子の量で考えた場合、輸送効率が悪くなる。
【0022】
また、密度が1.3g/cm3 未満の場合、該濃縮泥水と該濃縮泥水より密度の低い、別のタンクに貯留してある第2の泥水または水とを混合タンクで混合して調整泥水を作製する際、密度が1.2g/cm3 以上、かつ1.5g/cm3 以下となるように混合すべき調整泥水の密度が、1.2g/cm3 以上、かつ1.3g/cm3 未満に限定され、密度以外の要素についても選択の幅が大幅に限定され、それに伴い埋め戻し材や空隙充填材としての適用範囲も限定されるため、処理プラントを十分機能させられなくなる恐れがある。
【0023】
このようなことから、濃縮泥水は密度1.3g/cm3 以上のものが望ましい。
【0024】
また、密度が1.6g/cm3 を超える濃縮泥水も利用可能であるが、建設工事現場に設置される泥水濃縮設備の能力やコストの問題、さらに濃縮泥水の濃度が高い場合、タンク内における固形分粒子の硬化および攪拌のし難さ、流動性の低下などの問題がある。
【0025】
このようなことから、濃縮泥水は、密度1.6g/cm3 以下のものが望ましい。
【0026】
なお、密度については、例えば所定の容積の容器に入れたサンプルの重量を測定することで、サンプルの体積と重量の関係から求めることができる。
【0027】
このような濃縮泥水を、例えばアジテータトラックで建設工事現場から、流動性処理土の製造プラントへ輸送し、製造プラントに設けた攪拌手段を有するタンクに貯留する。
【0028】
攪拌手段は、濃縮泥水中の固形分粒子が沈降したり、濃縮泥水中に建設工事に用いられた水硬性成分や凝集成分が混入している場合に、タンク内の沈澱物が硬化したり、貯留中に流動性が低下するのを防止するのが主目的であり、その他、粒度調整材や流動化剤、増粘剤等の添加剤を加える必要がある場合の攪拌にも利用できる。攪拌手段については、後に製造プラントの説明において詳述する。
【0029】
本願発明で用いる濃縮泥水に含有される固形分粒子の粒度分布に関しては、粒径75μm以下の細粒分の割合が70重量%以上であることが望ましい。
【0030】
濃縮泥水を主原料とする本願発明の流動性充填材の製造においては、濃縮泥水を粒径75μm以下の細粒分の割合が70重量%以上となるようにすれば、上記調整泥水も同様の性状にしやすくなるため、該調整泥水に固化材を攪拌混合して製造される流動性充填材も砂等の大きな粒子成分が少ない、きめ細かな流動性充填材となり、粒径を調整しないものに比べ、材料分離することなく、充填材として高い流動性と充填性が得られ、かつ該流動性充填材の硬化後についても、裏込め材や埋め戻し材、空洞充填材等としてより緻密で高強度の硬化物が得られる。
【0031】
一方、濃縮泥水における粒径75μm以下の細粒分の割合が70重量%未満の場合、砂分が多くなり、材料分離が生じやすくなる。
【0032】
また、例えば、サイクロンで分級・脱水したものでは、粒径75μm以下の細粒分の割合が85重量%以上となる濃縮泥水も比較的容易に得ることができ、そのような濃縮泥水を用いた場合には、さらに流動性および充填性に優れた流動性充填材が得られ、硬化後についてもより緻密で高強度の硬化物が得られる。
【0033】
したがって、本願発明で用いる濃縮泥水に含有される固形分粒子の粒度分布に関しては、粒径75μm以下の細粒分の割合が85重量%以上であることがより好ましい。
【0034】
なお、上記固形分粒子の粒度分布の測定は、ふるいおよび浮ひょうを用いたJIS A 1204「土の粒度試験方法」が規格としての測定方法であるが、その他、X線透過法やレーザー回折/散乱法などの測定装置を用いて行われる。
【0035】
第2の泥水または水として、泥水を用いる場合の第2の泥水の種類は特に限定されないが、濃縮泥水より密度の低い泥水を用い、濃縮泥水との混合割合を変えることで、これらの混合物である調整泥水の密度を濃縮泥水と第2の泥水の中間の任意の密度に調整することができる。
【0036】
したがって、好ましい第2の泥水の密度は、1.0g/cm3 を超え、かつ1.3g/cm3 未満である。なお、第2の泥水の固形分粒子の粒径も上記の濃縮泥水と同様かそれより細かいことが望ましい。
【0037】
また、第2の泥水についても、建設工事現場から排出される泥水等を利用する場合は、それ自体、従来は費用をかけて脱水処理等を行って処分しなければならないものであったのに対し、本願発明では流動性充填材の原料の一部として取り込むことで、濃縮泥水とともに、大量の泥水の有効利用が図れることになる。
【0038】
また、従来の建設工事現場において、少量の泥水を処理する方法では、建設工事現場ごと、排出される泥水の特性等に応じて脱水処理を施し、あるいは逆に水を加えて流動化処理し、さらに添加剤や固化材の配合を決める必要があるため、少量であるにもかかわらず多大のコストを要していたのに対し、本願発明において濃縮泥水とそれより密度の低い第2の泥水とを混合して処理する場合、従来は別々に処理されていた特性の異なる泥水の処理が、最終的には一つの処理となり、同時に大量処理することができるので、処理コストを大幅に削減することができる。
【0039】
第2の泥水としては、例えば杭施工のためのアースドリル工法や連続地中壁工法等で排出される使用済み掘削安定液、シールド工法によるトンネル施工等におけるシールド発生泥水、その他の一般泥水が挙げられるが、第2の泥水として、一般泥水の他、上記濃縮泥水と異なる密度の他の濃縮泥水を用いることもあり得る。第2の泥水も、通常、各現場からアジテータトラックなどで輸送されてきて、タンクに貯留される。
【0040】
本願の請求項2は、この第2の泥水が、建設工事現場で発生する使用済み掘削安定液である場合を限定したものである。
【0041】
このような使用済み掘削安定液としては、杭施工のためのアースドリル工法や連続地中壁工法等で排出される使用済み掘削安定液などが挙げられる。なお、掘削工事における孔壁安定のため等に用いられるベントナイト等が混入した掘削安定液は、密度が1.0〜1.2g/cm3 程度の泥水であり、これを流動性充填材の材料として取り込んだ場合、流動性充填材の粘性を高くする効果があり、材料分離等に対して有効である。
【0042】
第2の泥水または水を貯留するためのタンクにも、前記濃縮泥水のタンクと同様、固形分粒子の沈澱やその硬化を防止したり、あるいは添加剤を混合する場合には、攪拌手段を設けるのが望ましい。しかし、添加剤等は、通常、後述する混合タンクあるいは濃縮泥水のタンクで加えることができるので、水または水の密度である1.0g/cm3 に近い低密度の泥水を貯留する場合には、攪拌手段を必ずしも必要としない。
【0043】
また、水を用いる場合については、水道水の使用も可能であるが、各種機材やタンクその他のプラント設備、輸送用のアジテータトラック、その他の洗浄に用いた水を回収したものを用いれば、資源の無駄がなく、また洗浄水の処理の手間と費用が省けるので合理的である。
【0044】
本願発明において、混合タンクで濃縮泥水と第2の泥水または水とを混合して得られる調整泥水の密度を、1.2g/cm3 以上、かつ1.5g/cm3 以下とした理由は以下の通りである。
【0045】
すわなち、調整泥水中の固形分粒子の粒度分布や泥水中に混入している他の成分の性質等にもよるが、通常、密度が1.25g/cm3 未満では一般的に含水比が大き過ぎ、該調整泥水に固化材を攪拌混合して得られる流動性充填材に材料分離が生じたり、ブリージング水が発生する恐れがあり、また固化材を大量に必要とする場合がある。
【0046】
ただし、調整泥水中にモンモリロナイト等の膨潤作用を持つ粘土が存在し、泥水としての粘性が高い場合等には、密度1.2g/cm3 程度の調整泥水として使用することができる。
【0047】
以上の理由から、本願発明では調整泥水の密度を1.2g/cm3 以上とした。万一、調整泥水の密度がこれよりも低くなってしまう場合には、脱水処理を行ったり、スラグ、石炭灰等の無機質微粉末を添加するか、あるいはさらに密度の異なる第3の泥水あるいは泥土等を混合するなどして調整泥水の密度を、適用対象に応じた密度に調整する。
【0048】
また、調整泥水の密度を1.5g/cm3 以下としたのは、それ以上では十分な流動性が得にくかったり、調整泥水を作製するために濃縮泥水と第2の泥水または水を混合した際に材料分離を生じやすくなったり、それらに伴い、多量の流動化剤、分散剤、その他の添加剤を必要とする場合があるためである。
【0049】
さらに、このときの調整泥水中に含まれる固形分粒子の粒径は、請求項3で限定したように、粒径75μm以下の細粒分の割合が70重量%以上(さらに好ましくは85重量%以上)であることが望ましい。
【0050】
前述の通り、用いる濃縮泥水や第2の泥水がそれらの固形分粒子の粒径を制御した特定のものであれば、上記範囲の調整泥水は容易に得られ、固化材との攪拌混合により得られる流動性充填材はきめ細かなものとなり、粒径を調整しないものに比べ、材料分離することなく、充填材として高い流動性と充填性が得られ、かつ該流動性充填材の硬化後についても、裏込め材や埋め戻し材、空洞充填材等としてより緻密で高強度の硬化物が得られる。
【0051】
上記調整泥水を作製する混合タンクも攪拌手段が設けられている。混合される濃縮泥水と第2の泥水または水との割合は特に限定されず、用途や注文に応じて、調整泥水の密度が目標値となるように配合すればよい。
【0052】
調整泥水と攪拌混合する固化材としては、市販のセメント系固化材、生石灰系固化材や、請求項4に記載したように、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメントなどの混合セメントといった各種セメント、あるいはこれらのセメントにさらに石炭灰を混合したものなどを用いることができる。
【0053】
特に、比重や粒度を調整した高品質の石炭灰をセメントに大量に混合したもの、例えばセメント:石炭灰=1:3の割合(重量)で混合したものを固化材として、該調整泥水に攪拌混合した場合、ブリージング率が小さく、流動性、減水性に優れた流動性充填材が得られるという効果がある。
【0054】
一般に上述した各種固化材の添加量は、用途や目的の他、固化材自体の特性、調整泥水の密度あるいは含水比、調整泥水中の固形分粒子の量、粒度分布等によっても異なるが、固化材としてセメント系固化材や生石灰系固化材を用いる場合は、通常、調整泥水に対し、概ね50〜300kg/m3 添加する。上記各種固化材は水に分散させたスラリーやミルクで添加してもよいが、通常は粉末のままで添加される。
【0055】
上記の条件において、十分な流動性が得られない場合、あるいはフローロスが著しい場合には、流動化剤を用いることもある。
【0056】
流動化剤としては、ポリカルボンサン系やナフタレン系等の流動化剤、コンクリート用のAE剤、AE減水剤、高性能AE減水剤等を用いると、初期のフロー値を高くすることができる。また、グルコン酸、クエン酸、単糖類、二糖類等のセメント水和反応遅延性のものを用いると、フローロスが小さくなり、安定した流動性を得ることができる。
【0057】
この他、本願の発明者は、固化材を攪拌混合する前の調整泥水中に、該固化材とは別に、少量(調整泥水に対し、0.1〜2.0重量%)のセメント系材料および石灰系材料のうちの少なくとも1種以上(添加剤)をあらかじめ加えて攪拌混合しておくことにより、調整泥水と粉末状の固化材とを混合しやすくなるとともに、流動性充填材の製造後における未硬化の状態でのフローロス、すなわち流動性の低下が抑制でき、かつブリージング水がより生じ難くなることを確認している。
【0058】
なお、製造される流動性充填材の性能は、例えば、調整泥水に固化材を攪拌混合した直後および一定時間経過後(例えば、60分あるいは120分後)のフロー値、24時間静置後のブリージング率、硬化後の一軸圧縮強等を基準として評価することができ、それらの試験結果に基づいて、適用対象に応じた配合設計がなされる。
【0059】
サンプリング試料あるいは供試体を用いたこれらの試験方法、および評価については後述する。
【0060】
図1は、本願発明の一実施形態における製造フローおよび製造プラントの構成を概略的に示したもので、基本的な設備として、プラント内に発生現場より輸送され受け入れた濃縮泥水を貯留するための第1の貯留タンク1、同様に受け入れた第2の泥水(水の場合もある。以下、同様。)を貯留するための第2の貯留タンク2、濃縮泥水と第2の泥水を混合するための混合タンク3、固化材を貯蔵するためのサイロ4、混合タンク3内で作製された調整泥水と固化材を攪拌混合するためのミキサ5(図1は内部にミキサが設置され、出荷設備も有する建物を図示している)などが配置されている。
【0061】
ただし、図1はプラントを概念的に示したものであり、濃縮泥水を貯留するための第1の貯留タンク1は、通常は複数の貯留タンク群で構成され、輸送されてくる濃縮泥水の種類と量や、プラントで製造して出荷される流動性充填材の量に応じて、複数の貯留タンク1間で貯留順序を調整したり、予備のタンクを設けておくことが望ましい。
【0062】
また、この濃縮泥水の貯留タンク1については、比較的泥水密度が高いことから、固形分粒子が沈降し、特に濃縮泥水中に硬化性成分や凝集成分が混入している場合、タンク内の沈澱物が硬化したり、貯留中に流動性が低下し、ポンプ等による濃縮泥水の混合タンクへの圧送に支障をきたしたり、製造される流動性充填材の品質低下をもたらすことが考えられるため、攪拌手段を設けて貯留されている濃縮泥水をアジテートできるようにしている。
【0063】
攪拌手段としては、水平翼をモーターの駆動により回転させる形式のものが一般的であるが、泥水中にエアーを送り込む形式のものなどでもよく、その形態や攪拌の方式は特に限定されない。また、濃縮泥水のアジテートは、必ずしも常時行う必要はなく、例えば処理対象となる個々の濃縮泥水の密度や特性に応じて、ある時間ごとインターバルを設けて行うのでもよい。
【0064】
第2の泥水を貯留するための第2の貯留タンク2も、必要に応じ複数設けられ、また必要に応じ攪拌手段を設けるが、前述したように条件によっては攪拌手段を設けない場合もある。
【0065】
アジテータトラック9a,9bなどによって、建設工事現場A(例えば、シールド工事現場)および建設工事現場B(例えば、基礎杭施工のためのアースドリルによる掘削工事現場)から輸送されてきた濃縮泥水および第2の泥水(例えば、使用済み掘削安定液)は、それぞれ別の受入れピットに投入され、圧送用のポンプで配管を通じて、それぞれ第1の貯留タンク1、第2の貯留タンク2に送られる。
【0066】
また、第1の貯留タンク1および第2の貯留タンク2から混合タンク3へも配管が設けられ、これらの貯留タンク1,2に貯留された濃縮泥水および第2の泥水を混合比に応じて、それぞれポンプで圧送できるようになっている。
【0067】
この他、図示しないが、必要に応じ、流動化剤、分散剤、増粘剤などの添加剤を添加するための貯留設備や配管などが設けられる。あるいは、必要に応じ、細砂や石炭灰、スラグなどの密度調整材6などを直接投入する場合もある。なお、添加剤の一部または全部は、混合タンク3以外に、第1の貯留タンク1や第2の貯留タンク2で添加したり、後述するミキサ5での固化材との攪拌混合の際に添加する場合もある。
【0068】
混合タンク3には、混合のために配管を通じて送り込まれた濃縮泥水と第2の泥水および必要に応じて添加される添加剤や密度調整材6等を混合するための攪拌手段が設けられている。攪拌手段については、第1の貯留タンク1について説明したのと同様、水平翼をモーターの駆動により回転させるものなどが利用できるが、形態や攪拌の方式は限定されない。
【0069】
これら第1の貯留タンク1、第2の貯留タンク2および混合タンク3には、泥水の水位および泥水の重量を測定するセンサーが取り付けられており、貯留された濃縮泥水および第2の泥水の密度がリアルタイムで判るようになっている。
【0070】
また、混合タンク3からは、ミキサ5に向けて配管が設けられ、混合タンク3で作製された調整泥水と、固化材サイロ4から空気圧送されてくる粉末状固化材および必要に応じて添加される添加剤がミキサ5で混練される。
【0071】
ミキサ5は、通常のコンクリート製造用のミキサでよく、投入された総重量が例えば1000〜2000kgとなる調整泥水およびセメントなどの固化材を配合に応じて所定時間(例えば、1〜2分程度)混練し、製造された流動性充填材を、直接、アジテータトラック9cなどに積み込むことができる。
【0072】
なお、濃縮泥水および第2の泥水の受け入れから、第1の貯留タンク1および第2の貯留タンク2への圧送、これらの貯留タンク1,2から混合タンク3への泥水の圧送、混合タンク3で作製された調整泥水のミキサへ圧送、サイロ4からミキサ5への粉末状固化材の空気圧送、さらにミキサ5あるいは途中での添加剤の添加、攪拌混合時間、製造された流動性充填材のミキサ5からの吐出等の一連の作業は、センサーなどから送られてくるデーターとあらかじめインプットされている濃縮泥水や第2の泥水に関する各種データーおよび配合試験のデーターなどに基づいて、プラント内に設けた制御室などで、一括制御・管理することが可能である。その場合、制御室内の作業員が制御盤やモニターの表示を見ながら、操作することができる。
【0073】
以上のようなプラントにおける流動性充填材の製造は、通常、注文に応じて行われる。
【0074】
このようにして製造された流動性充填材は、ミキサ5からアジテータトラック9cなどに積み込まれ、埋め戻しや裏込め、空洞の充填などが行われる建設工事現場Cに送り出されることになるが、その際、建設工事現場Cにおける流動性充填材の充填性や硬化後の強度の要求を満たし、また建設工事現場Cへ輸送する間におけるフローロスが少ないことなどが重要となる。
【0075】
これについては、配合設計の段階で、あらかじめサンプルについての、後述するフロー値やブリージング率、一軸圧縮強さの測定などが行われているが、出荷に際してもサンプル試験により性能の確認が行われる。
【0076】
また、上記の点からして、建設工事現場Cへの本願発明の流動性充填材の輸送可能時間は、通常3時間以内である。したがって、本願発明のプラントは需要が最近増えてきている大都市やその近辺に設置されるのがよい。
【0077】
次に、数種の濃縮泥水および第2の泥水を用い、その配合を変えて行った実施例および比較例の試験方法とその試験結果について説明する。
【0078】
実施例および比較例で使用した材料を表1に、配合を表2に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
表1におけるA〜Dの濃縮泥水は、シールド工事現場における発生泥水を、工事現場に設置したサイクロンを備えた泥水濃縮設備で分級・脱水したものである。
【0082】
濃縮泥水A〜Dの土粒子の75μm以下の細粒分は、それぞれ95%、99%、83%、98%で、平均粒径がそれぞれ10.0μm、12.1μm、11.6μm、13.5μmであった。
【0083】
また、表1におけるa、bの一般泥水は、基礎杭の施工現場から排出されたアースドリル掘削工事の使用済み掘削安定液である。75μm以下の細粒分は、両泥水a、bともに100%で、平均粒径がそれぞれ4.3μm、9.9μmであった。
【0084】
なお、表1における添加剤は、固化剤を加えた直後に著しい流動性の低下がある泥水に対して、これを抑制するために添加した。
【0085】
表2の配合における試料の作製および試験手順は以下の通りである。
【0086】
▲1▼ 添加剤を添加する場合、泥水に添加剤を加えてホバートミキサで10分混合し、1日以上置いたものを使用した。
【0087】
▲2▼ 固化材を1m3 に対して100kgとなるように加えて、ホバートミキサで2分混合して、流動性充填材を作製した。
【0088】
▲3▼ フロー値の測定
固化材の添加直後の試料、および60分間静置した後に再びホバートミキサで2分間攪拌した後の試料について、フロー値の測定を行った。
フロー値の測定は、日本道路公団規格JHS A 313「エアモルタル及びエアミルクの試験方法」1.コンシステンシー試験方法、1.2シリンダー法に準じて、水平板上に高さ80mm、直径80mmの中空円筒状シリンダーを置き、試料を充填して、シリンダーを引き上げた時の試料の広がりを測定した。
【0089】
▲4▼ ブリージング率の測定
ブリージング率は、土木学会基準のブリージング袋に試料500cm3 を充填し、24時間静置した後、浮き水量を測定し、ブリージング率を算出した。
【0090】
▲5▼ 一軸圧縮強さの測定
一軸圧縮強さは、直径50mm、高さ100mmの供試体を作成し、ビニール袋で密閉し、20℃で材齢28日まで養生した後、JIS A 1216「土の一軸圧縮試験方法」に準じて測定した。
【0091】
表3は、上記実施例および比較例についての試験結果をまとめたものである。
【0092】
【表3】
【0093】
表3に示されるように、本願発明の流動性充填材は、流動性がよく、ブリージングも発生せず、強度発現もよい。したがって、従来の流動化処理土や裏込め材と比べても同等以上の性能を有するものである。
【0094】
流動性充填材としての基準値は、充填する場所により異なるが、代表的な値として充填時のフロー値が160mm以上、ブリージング率1%未満、材令28日での一軸圧縮強さが200kN/m2 以上であることが好ましい。また、製造時における固化材添加直後のフロー値は180mm以上であることが好ましい。
【0095】
濃縮泥水および一般泥水または水を混合した調整泥水について流動性充填材を作製し、調整泥水の密度が1.2〜1.5g/cm3 の範囲になるように作製したもの(表2の試料No.1、2、3、4、6、7、9)は、基準値の範囲の特性を持つ流動性充填材が得られた。
【0096】
密度が1.5g/cm3 を上回るものについては、固化材としてのセメントを添加した直後に流動性を得ることができず、流動性充填材としては不適であった(表2の試料No.5)。
【0097】
また、密度が1.2g/cm3 を下回るものについては、ブリージング率が1%を超え、強度も200kN/m2 を下回った(表2の試料No.8)。
【0098】
よって、本願発明の密度が1.2g/cm3 以上、かつ1.5g/cm3 以下の調整泥水を使用することで流動性充填材として良好な特性が得られる。
【0099】
また、固化材に石炭灰を混合したもの(表2の試料No.9)は、製品としての流動性充填材の密度を高くすることができるばかりでなく、流動性を改善し、かつ高い強度が得られた。特に、固化材混練直後から60分後においてもフロー値の低下が少なかった。
【0100】
【発明の効果】
本願発明は、従来、そのほとんどを産業廃棄物として費用をかけて廃棄せざるを得なかった建設工事現場から発生する泥水を主原料として、流動性充填材として有効利用するものであり、かつ大量の濃縮泥水を効率良く処理することができる。
【0101】
また、従来の建設工事現場において、少量の泥水を処理する方法では、建設工事現場ごと、排出される泥水の特性等に応じて脱水処理を施し、あるいは逆に水を加えて流動化処理し、さらに添加剤や固化材の配合を決める必要があるため、少量であるにもかかよず多大のコストを要していたのに対し、濃縮泥水とそれより密度の低い第2の泥水とを混合して処理する場合、従来は別々に処理されていた特性の異なる泥水の処理が最終的には一つの処理となり、同時に大量処理することができるので処理コストを大幅に削減することができる。
【0102】
また、分級・脱水された微小な固形分粒子のみを含む濃縮泥水を用い、固形分粒子の粒径が小さい調整泥水にすることで、従来の流動化処理土等に比べきめ細かな流動性充填材となるので、粒径を調整しないものに比べ材料分離することなく、充填材として高い流動性と充填性が得られ、硬化後についても裏込め材や埋め戻し材、空洞充填材等としてより緻密でより強度の高い硬化物が得られる。
【0103】
さらに、本願発明のプラントを都市部やその近郊に設置することで、各泥水発生現場での処理設備を簡易にして、そのスペースを小さくできるとともに、これまで大量供給が難しかった都市部現場への流動性充填材の供給が可能となる。そして、その流動性充填材は用途や目的に応じた高品質のものが設計可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施形態における製造フローおよび製造プラントの構成を概略的に示した図である。
【符号の説明】
A…建設工事現場(濃縮泥水発生現場)、B…建設工事現場(第2の泥水発生現場)、C…建設工事現場(流動性充填材の使用現場)、
1…第1の貯留タンク、2…第2の貯留タンク、3…混合タンク、4…固化材サイロ、5…混合ミキサ、6…密度調整材、9a,9b,9c…アジテータトラック
Claims (5)
- 建設工事に伴って発生する分級・脱水された濃縮泥水を用いた流動性充填材の製造方法であって、建設工事現場から輸送してきた前記濃縮泥水を攪拌手段を設けたタンクに貯留し、その後、該濃縮泥水と該濃縮泥水より密度の低い別のタンクに貯留してある第2の泥水または水とを攪拌手段を設けた混合タンクで混合することにより、密度が1.2g/cm3 以上、かつ1.5g/cm3 以下の調整泥水を作製し、該調整泥水に固化材を加えて攪拌混合することを特徴とする流動性充填材の製造方法。
- 前記第2の泥水が、建設工事現場で発生する使用済み掘削安定液である請求項1記載の流動性充填材の製造方法。
- 前記濃縮泥水と第2の泥水または水とを混合した調整泥水中に含まれる固形分粒子における粒径75μm以下の細粒分の割合が70重量%以上である請求項1または2記載の流動性充填材の製造方法。
- 前記固化材がセメントまたはセメントに石炭灰を混合したものである請求項1、2または3記載の流動性充填材の製造方法。
- 請求項1〜4記載の流動性充填材の製造を行うプラントであって、建設工事現場から輸送されてきた分級・脱水された濃縮泥水を貯留するための攪拌手段を有する第1の貯留タンクと、前記濃縮泥水と混合するための第2の泥水または水を貯留するための第2の貯留タンクと、前記第1の貯留タンクに貯留された濃縮泥水と該第2の貯留タンクに貯留された第2の泥水または水とを任意の割合で投入し混合するための攪拌手段を有する混合タンクと、固化材を貯蔵するためのサイロと、該混合タンクで混合し作製された調整泥水と該サイロに貯蔵された固化材とを任意の割合で投入し攪拌混合するためのミキサとを備えていることを特徴とする流動性充填材製造プラント。
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JP2011032826A (ja) * | 2009-08-05 | 2011-02-17 | Ryudoka Shori Koho Sogo Kanri:Kk | 流動化処理土の製造方法 |
JP2014009487A (ja) * | 2012-06-29 | 2014-01-20 | Tokuyama Corp | 流動化処理土 |
JP2020069452A (ja) * | 2018-11-01 | 2020-05-07 | 株式会社小池建材 | 改良土の製造方法 |
CN114474404A (zh) * | 2022-01-05 | 2022-05-13 | 中铁第四勘察设计院集团有限公司 | 盾构渣土制备注浆材料的系统与方法 |
-
2003
- 2003-05-15 JP JP2003137871A patent/JP2004339801A/ja active Pending
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