JP2004339107A - 細胞外マトリックス濃縮液を利用した皮膚疾患治療剤及び皮膚疾患治療用被覆材。 - Google Patents
細胞外マトリックス濃縮液を利用した皮膚疾患治療剤及び皮膚疾患治療用被覆材。 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】より安全で、副作用がなく、長期間適用できる皮膚疾患治療剤又は皮膚疾患治療用被覆材を提供すること。特に、褥瘡及び乾癬の治療剤又は被覆材を提供すること。
【解決手段】ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を用いる皮膚疾患治療剤又は被覆材を提供する。この治療剤等は、線維芽細胞の増殖を促進し、角化細胞の増殖を抑制する作用を持つ。従って、特に、褥瘡及び乾癬の治療に有効である。
【選択図】図13
【解決手段】ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を用いる皮膚疾患治療剤又は被覆材を提供する。この治療剤等は、線維芽細胞の増殖を促進し、角化細胞の増殖を抑制する作用を持つ。従って、特に、褥瘡及び乾癬の治療に有効である。
【選択図】図13
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、皮膚疾患治療剤及び皮膚疾患治療用被覆材、特に、褥瘡(床づれ)、乾癬等の治療に用いる皮膚疾患治療剤及び皮膚疾患治療用被覆材に関する。より詳細には、組織培養上清より産生した細胞外マトリックスを利用した皮膚疾患治療剤及び皮膚疾患治療用被覆材に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒト又は動物の皮膚は、表皮、真皮、皮下組織により構成されている。表皮の大部分は角化細胞(上皮細胞)からなる。角化細胞は、表皮の最下層で分裂し、ケラチンを生成しながら上行していき、最終的には表層から脱落する。一方、真皮には、線維芽細胞が存在する。線維芽細胞は、結合組織産生細胞ともいい、コラーゲン等の細胞外マトリックスを産生して、結合組織形成に重要な役割を果たす。
【0003】
皮膚に損傷、欠損が生じた場合、ヒト又は動物の体内には、その「創部」を修復する機構が存在する。まず、創部において、炎症反応が発生し、免疫細胞等が、雑菌を排除したり、損傷によって壊死した細胞を除去したり等する。続いて、真皮にある線維芽細胞が、コラーゲン等を産生し、皮膚の欠損部を閉鎖する(肉芽の形成)。そして、最後に、表皮の角化細胞が増殖して、閉鎖された欠損部の上に上皮を形成し、皮膚が治癒する。
【0004】
皮膚に生じた損傷、欠損を治療する方法としては、まず、洗浄液や消毒液等により、創部を清潔にする方法や、抗生物質等の使用により、雑菌の繁殖を予防する方法がとられる。また、包帯や創傷被覆材によって創部を保護したり、皮膚を縫合して形態を保存する方法もとられる。その他、親水性薬剤を利用して、局所的に浸透圧を上昇させ、創部に浸潤する体液を吸収する方法も用いられている。いずれの場合も、皮膚が自ら創部を修復する機構を助けることにより、早期に皮膚損傷等を治癒させる方法である。
【0005】
皮膚組織の損傷、欠損を伴う難治性の皮膚疾患として、褥瘡(床づれ)及び乾癬がある。
【0006】
「褥瘡」とは、長時間、同一部位に持続的圧力が加わって血行障害を生じ、、摩擦、失禁等も重なって、組織が限局性に壊死に陥った状態をいう。仙骨部、坐骨部、肩甲骨部等の皮膚に好発する。皮膚に潰瘍を生じたり、壊死に陥ったりし、重症化すると、皮膚が完全に欠損して、筋等の下部組織が露出する。
【0007】
褥瘡の治療は、創部を清潔、湿潤に保ち(創の洗浄、消毒剤の利用、抗菌剤の投与)、皮膚組織を再生させる(壊死組織の除去、肉芽形成促進剤の投与)ことにより行う。
【0008】
褥瘡治療剤としては、例えば、「ユーパスタ(登録商標)」(興和株式会社)が、一般的に広く使用されている。ユーパスタは、主成分として、ポピドンヨードと白糖を含有する。ポピドンヨードは、ヨウ素による殺菌作用を示し、白糖は、浮腫軽減作用及び創傷治癒作用を示す。白糖は、親水性薬剤であり、局所的に浸透圧を上昇させることにより、創部に浸潤する体液を吸収し、浮腫を軽減させる。このことは、創内のコラーゲン繊維の増加を促し、結果的に、創部の治癒を早める。
【0009】
一方、「乾癬」とは、皮膚の複数の好発部位に紅斑や鱗屑(角化細胞が剥がれ落ちたもの)等を生じる炎症性角化症の一つで、原因のはっきりしない難治性の皮膚疾患である。組織学的には、角化細胞の分裂が異常に亢進する、表皮、血管周囲で白血球が多数観察される等の特徴がある。
【0010】
乾癬の治療法としては、光線療法、内服療法、外用剤を用いた治療法等がある。内服療法としては、ビタミンA誘導体、免疫抑制剤等を用いる方法がある。また、外用剤を用いた治療法としては、ステロイド軟膏、ビタミンD誘導体等を用いた治療法がある。
【0011】
内服療法としては、ビタミンA誘導体のエトレチナート製剤が一般に使われている。エトレチナート製剤は、詳細な作用機序は明らかでないが、異常な角化細胞の接着力を低下させるとともに、正常な上皮を再形成する働きがあると考えられている。また、白血球の働きを抑制するため、免疫抑制剤のシクロスポリン等が用いられることもある。一方、外用剤としては、ビタミンD誘導体のタカルシトールがよく用いられている。タカルシトールは、角化細胞の増殖抑制作用をもち、ステロイド軟膏と比べると、皮膚が薄くなる等の副作用がないため、広く用いられている。
【0012】
特許文献1は、褥瘡治療組成物についての文献であり、「ユーパスタ(登録商標)」(興和株式会社)についての記載がある。また、特許文献2は、乾癬治療医薬組成物についての文献であり、ビタミンD様の作用を持つ物質についての記載がある。
【0013】
【特許文献1】
特開平9−40563号公報
【特許文献2】
特開平9−2955号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の皮膚疾患治療剤、特に、褥瘡及び乾癬の治療剤には、以下のような解決すべき技術的課題があった。
【0015】
一般的に、皮膚の損傷、欠損に対して用いる治療剤は、創部を清潔にしたり、創部を保護したりすることにより、皮膚のもつ修復機構を補助する方法であり、直接、線維芽細胞の増殖を促し、皮膚の損傷部位を再生させるものではなかった。親水性薬剤についても、創部に湿潤する体液を吸収することにより、間接的に、創部の治癒を補助しているにすぎない。
【0016】
褥瘡の治療では、線維芽細胞が増殖して、結合組織が形成され、皮膚の損傷、欠損部位が再生されることが望ましい。褥瘡の治療で一般的に用いられているユーパスタは、含有する白糖の作用により、結合組織の形成がある程度促進されるが、線維芽細胞を直接増殖させるものではない。従って、線維芽細胞の増殖を促し、皮膚の損傷、欠損部位を再生させる治療剤が必要である。
【0017】
また、ユーパスタには、過敏症等の副作用の問題や、長期間にわたる広範囲の使用ができないという課題があり、より安全で効果的な褥瘡治療剤が必要である。
【0018】
一方、乾癬の治療では、異常な角化細胞の増殖を抑制し、正常な皮膚組織を再生させることが望ましい。乾癬の治療で一般的に用いられているビタミンA誘導体のエトレチナート製剤やビタミンD誘導体のタカルシトールは、作用機序は明らかでないが、角化細胞に影響を及ぼし、増殖異常を正常化させる作用がある。しかし、エトレチナート製剤は、催奇形性があり、妊娠中や妊娠の可能性のある場合、男女とも服用することができない。また、唇がカサカサしたり、ビタミンA過剰症になったりする等の副作用もある。外用剤であるタカルシトールについても、大量に適用すると血液中のカルシウム濃度が増加するという重大な副作用がある。乾癬は、難治性で長期間薬剤を適用する必要があり、また、複数箇所に発生することが多いため、大量に治療剤を使用しなければならない場合もある。したがって、より安全で、副作用がなく、長期間適用できる治療剤が必要である。
【0019】
そこで、本発明は、線維芽細胞の増殖を促進し、角化細胞の増殖を抑制する治療剤又は被覆材であって、より安全で、副作用がなく、長期間適用できる皮膚疾患治療剤又は皮膚疾患治療用被覆材を提供することを主な目的とする。特に、褥瘡及び乾癬の治療剤又は被覆材を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するために、本発明では、次の手段を採用する。
【0021】
まず、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を用いる皮膚疾患治療剤を提供する。この治療剤は、コラーゲンなどの細胞外タンパク質を主成分とすると考えられ、線維芽細胞の増殖を促進し、角化細胞の増殖を抑制する作用を持つ。線維芽細胞を増殖させるので、皮膚の損傷、欠損部位の修復を促進し、皮膚疾患を早期に治癒することができる。なお、産生した濃縮液は、限外濾過で分子量10万以上の画分に精製してもよい。限外濾過を行うことにより、濃縮液の構成成分は、タンパク質を中心としたものとなる。限外濾過を行うことは、タンパク質成分を濃縮できる、不純物等を排除できる等の効果もある。
【0022】
また、この濃縮液は、ヒト又は動物において、線維芽細胞を培養した際の培養上清から産生されるものであり、また、当該細胞の培養の際には、無血清培養を行っているので、プリオンなどの混入やアレルギーの発生などの危険性を極力排除し、安全性のより高い治療剤を提供できるという利点がある。
【0023】
この濃縮液は、ゲル化することにより、実際の皮膚疾患の治療の際に使いやすいものとなる。ゲル化する方法は、どのような方法を用いてもよい。例えば、従来の方法としては、トリメチレンカーボネート系、ポリエチレングリコール系等の生分解性ポリマーに細胞外マトリックス濃縮液を添加して、ガラス転移温度以下で攪拌、混合してゲル化する方法を採用できる。
【0024】
その他、この濃縮液をそのままワセリン等と混ぜたり、濃縮液を乾燥させたものをワセリン等と混ぜたりすることにより、軟膏として利用することができる。軟膏剤として用いることにより、患部に直接塗布したり注入したりすることができ、治療をより効果的にすることができる利点がある。
【0025】
さらに、この皮膚疾患治療剤を、線維芽細胞を採取したヒト又は動物の個体の皮膚疾患部位に用いることにより、アレルギーの発生や副作用を極力防ぎ、安全性の高い皮膚疾患治療剤を提供することができる。
【0026】
この皮膚疾患治療剤は、褥瘡治療に用いることができる。褥瘡は、皮膚の損傷、欠損が激しい場合が多いので、この治療剤は特に有効である。この治療剤を用いることにより、線維芽細胞が増殖し、直接、皮膚組織を再生することができる。
【0027】
また、この皮膚疾患治療剤を乾癬治療に用いることもできる。この治療剤は、角化細胞の増殖を抑制する。乾癬は、異常に角化細胞の増殖が促進した状態となるので、この治療剤を用いることにより、角化細胞の増殖を抑制し、正常な皮膚を再生することができる。
【0028】
次に、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を膜状に加工して得られる皮膚疾患治療用被覆材を提供する。濃縮液を「創傷被覆材」に加工して用いることにより、創部に数日間当てたままで取り替えずに使用することができる。創傷被覆材を数日間取り替えずに使用できるため、患者又は患畜の負担を軽減し、利便性を高めることができる。また、濃縮液の効果を保ったまま、さらに、創部の湿潤性を高めて、皮膚の再生を促すことができる等の利点があり、治療効果を高めることができる。なお、前記と同様に、産生した濃縮液は、限外濾過で分子量10万以上の画分に精製してもよい。この場合、精製した濃縮液を膜状に加工して用いる。限外濾過を行うことによって、濃縮液の構成成分は、タンパク質を中心としたものとなる。限外濾過を行うことは、タンパク質成分を濃縮できる、不純物等を排除できる等の効果もある。
【0029】
濃縮液を膜に加工する方法は、どのような方法を用いてもよい。例えば、従来の方法としては、細胞外マトリックス濃縮液を必要な大きさの容器に入れて、減圧又は凍結乾燥させることで、水分を蒸発させて該濃縮液の膜を形成させる方法を採用できる。
【0030】
この皮膚疾患治療用被覆材についても、前記治療剤と同様に、線維芽細胞を採取したヒト又は動物の皮膚疾患部位に用いることにより、アレルギーの発生や副作用を極力防ぎ、安全性の高い皮膚疾患治療剤を提供することができる。
【0031】
この被覆材は、褥瘡や乾癬の治療に用いることができる。両疾患は、長期間治療する場合が多いため、濃縮液を被覆材に加工して用いることにより、患者や医療従事者の負担を軽減することができる。ペット動物等は、創部をなめたり、自ら引っかいてしまったりする場合が多い。濃縮液を創傷被覆材に加工することにより、ペット動物等の治療にも使いやすいものになる。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を示す。なお、本発明の範囲は実施例により限定されない。
【0033】
実施例1。
実施例1は、本願に係る細胞外マトリックス濃縮液の産生手順を例示したものである。
【0034】
まず、ヒトの皮膚組織より分離した初代培養の線維芽細胞を、225cm2の培養フラスコを用いて、10%FBS(ウシ胎児血清)及び抗生物質を含むDMEM培地(日本製薬)でコンフルエントになるまで培養した。
【0035】
次に、同フラスコの培養液を捨て、30mlのPBS(リン酸バッファー溶液)で少なくとも3回洗浄した後、FBSを添加していないDMEM培地を35ml添加して5日間培養した。
【0036】
次に、前記無血清培地の培養上清を回収し、10〜30μmのフィルターで細胞残渣を除去した後、日本ミリポア製の分画フィルター(Pellicon,EL,100K)を用いて限外濾過し、濃縮した。
【0037】
そして、培養上清中のフェノール・レッド(色素)を除くため、更に、水で濃縮した。濃縮の過程で沈殿が生じた場合には、遠心をして、上清分画を試料とした。
【0038】
最後に、0.22μmのフィルターを通して滅菌し、得た液を本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液とした。
【0039】
実施例2。
実施例2は、実施例1で得た細胞外マトリックス濃縮液が線維芽細胞の増殖を促進することを示した実験例である。
【0040】
まず、ヒト(A氏、B氏)の皮膚組織より培養して得た線維芽細胞を、それぞれ、1×103個/ウェルになるように無添加DMEM培地で希釈して、96−ウェル培養プレートに播種した。
【0041】
そして、それぞれ、96−ウェル培養プレートを32ウェルずつ3等分し、最初の32ウェルには何も添加せず、次の32ウェルには5%FBSを添加し、最後の32ウェルには、実施例1の方法により得たA氏由来の細胞外マトリックス濃縮液(1mg/ml)を1/100量添加して、3日間培養した。
【0042】
そして、それぞれの96−ウェル培養プレートの各ウェルについてMTTアッセイを行った。その結果を、表1に示す。なお、MTTアッセイは、450nmの吸光度を測定することにより、細胞の増殖性を図る方法である。細胞の増殖性は、吸光度(450nm)の大きさであらわすことができ、増殖が促進されるほど、吸光度も大きな値となる。今回行ったMTTアッセイには、WST−1(TaKaRa)を用いた。
【0043】
【表1】
【0044】
前掲した表1に示されているように、細胞外マトリックス濃縮液を添加したものでは、何も添加しないものに比べて、吸光度が0.083nmから0.28nmに顕著に増加しており、線維芽細胞の増殖が促進されることがわかった。
【0045】
また、実験結果にばらつきはあるものの、A氏由来の細胞膜マトリックス濃縮液をB氏の線維芽細胞に添加した場合でも、A氏の線維芽細胞に添加した場合と同様に、線維芽細胞の増殖が促進されることがわかった。この実験の結果は、ヒトの細胞外マトリックス濃縮液は、自身の線維芽細胞から産生した場合でも、他個体から産生した場合でも、線維芽細胞の増殖を促進する効果があることを示している。
【0046】
実施例3。
実施例3は、本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液が、表皮角化細胞の増殖を抑制することを示した実験例である。
【0047】
まず、皮膚組織より分離した初代培養の表皮角化細胞を低Ca濃度の専用培地(例えば、GIBCOの角化細胞用無血清培地)で培養し、70%コンフルエントの状態で継代培養を行った。
【0048】
続いて、3.5mlシャーレを6つ用意し、それぞれに、表皮角化細胞を角化細胞用無血清培地で希釈したものを、1.1×103個になるように播種した。同時に、3つのシャーレには、本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液(2.8mg/ml)を1/100量添加した。培地交換は、3日又は4日間隔で行い、前記3つのシャーレについては培地交換ごとに該濃縮液を同量添加した。
【0049】
前記播種後、1日、7日、14日後に、上記濃縮液を添加したシャーレと添加しないシャーレについて、各々、細胞数を測定して、表皮角化細胞の増殖性を調べた。その結果を以下の表2に示す。なお、細胞数の測定は、培養細胞をトリプシンで剥がし、血球計測版で数える方法により行った。
【0050】
【表2】
【0051】
前掲した表2に示されているように、表皮角化細胞は、上記濃縮液を添加しない場合は、時間の経過とともに細胞数が増加するのに対し、濃縮液を添加した場合は、細胞数はあまり増加しなかった。即ち、本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液の添加により、表皮角化細胞の増殖は停止することがわかった。
【0052】
実施例4。
実施例4は、他個体から上記濃縮液を採取した場合でも、自らの線維芽細胞から濃縮液を採取した場合でも、同様に表皮角化細胞の増殖を抑制する効果があることを示している。
【0053】
まず、実施例1に基づいて、ヒト(C氏、D氏)の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して細胞外マトリックス濃縮液を産生した。
【0054】
次に、C氏の皮膚組織より表皮角化細胞を分離し、1.3×104個をGIBCO社製角化細胞用無血清培地に懸濁させて6cmシャーレ2枚に播種した。その際に、前記C氏又はD氏由来の細胞外マトリックス濃縮液5.9mg/mlを1/200量添加した。そして、それぞれ、12日間培養し、培養後、実施例3と同様の方法で、細胞数を測定した。なお、培地交換は3日又は4日間隔で行い、培地交換の際には、濃縮液を同量添加した。
【0055】
【表3】
【0056】
前掲した表3に示されているように、C氏から採取した表皮角化細胞は、C氏由来の濃縮液を添加した場合でも、D氏由来の濃縮液を添加した場合でも、無添加の場合に比べて、増殖が抑制された。従って、この結果は、本願発明にかかる細胞外マトリックス濃縮液が表皮角化細胞の増殖を抑制することを示すとともに、濃縮液は、線維芽細胞を採取した個体が同一であるか他個体であるかにかかわらず、同様に効果を有することを示している。
【0057】
実施例5。
実施例5は、無血清細胞培養により産生した培養上清を不溶化して作成した「濃縮粉末」が、表皮角化細胞の増殖を阻害することを示した実験例である。
【0058】
この実験では、(1)コラーゲン注入剤(コントロール)、(2)実施例1の手順により産生した培養上清を濃縮して作成した細胞外マトリックス濃縮液(可溶化ECM)、(3)実施例1の手順で産生した培養上清を不溶化したもの(不溶化ECM)、の三種類の試料について、表皮角化細胞に対する効果を比較した。
【0059】
不溶化ECMは、実施例1の手順により産生した培養上清を0.22μmのフィルターで濾過した後、エバポレーターで減圧濃縮して、蒸発乾燥させることにより作製した。培養上清を乾燥して作製した固形物(濃縮固形)には、培地に含まれていた(可溶性)物質が一部混入しているため、PBS(−)液で洗浄して、それらを除去した(洗浄することにより、不溶化ECMのみが、粉末状のまま残る)。実験には、洗浄後の濃縮粉末を、PBS液で懸濁して用いた。
【0060】
実施例5の実験手順は、以下のとおりである。
【0061】
まず、6穴プレートを用いて、9つのウエルのそれぞれに、表皮角化細胞を播種し、100%コンフルエントの状態なるまで培養した。
【0062】
一方、上記した三種類の試料は、それぞれ、PBS液で希釈し、0%、1%、5%の三つの濃度に調製した。コラーゲン注入剤(コントロール)は、1%コラーゲン注入剤(株式会社高研製)を、v/vで、0%、1%、5%の三つの濃度になるように調製した。可溶化ECM、不溶化ECMは、w/vで、0%、1%、5%の三つの濃度になるように調製した。
【0063】
そして、各ウエル(9つ)に目的の試料(三種類の試料、それぞれ0%、1%、5%の三つの濃度)を添加して、3日間培養し、3日後に細胞を観察した。
【0064】
図5、図6、図7は、コラーゲン注入剤(コントロール)を、それぞれ0%、1%、5%添加して、3日間培養したものである。図5(0%添加)と比較して、図6(1%添加)、図7(5%添加)では、細胞の形態の変化(線維芽細胞溶)が一部で見られ、細胞数も若干減少したが、細胞死は見られなかった。
【0065】
図8、図9、図10は、可溶化ECM(細胞外マトリックス濃縮液)を、それぞれ0%、1%、5%添加して、3日間培養したものである。図8(0%添加)と比較して、図9(1%添加)、図10(5%添加)では、全体的に、細胞の形態の変化(線維芽細胞様)が見られたが、細胞死は観察されなかった。
【0066】
図11、図12、図13は、不溶化ECM(濃縮粉末)を、それぞれ0%、1%、5%添加して、3日間培養したものである。図11(0%添加)と比較して、図12(1%添加)、図13(5%添加)では、全体的に、細胞の形態の変化(線維芽細胞様)が見られた。さらに、図13(5%添加)では、多くの細胞が細胞死をおこし、細胞数も著しく減少した。
【0067】
以上の結果より、可溶化ECM(細胞外マトリックス濃縮液)と不溶化ECM(濃縮粉末)は、表皮角化細胞の増殖を抑制する効果があることがわかった。特に、不溶化ECMは、可溶化ECMよりも強く表皮角化細胞の増殖を抑制することがわかった。これは、不溶化ECMの方が、可溶化ECMよりも、濃縮の度合いが高いためと考えられる。
【0068】
不溶化ECM(濃縮粉末)は、溶液と混合したり、ワセリン等と混ぜて軟膏として用いたりすることができる利点がある。この実験結果は、本発明の細胞外マトリックス濃縮液を不溶化して粉末状にしても、皮膚治療剤及び被覆材として有効であることを示している。
【0069】
なお、本実験では、3日間の培養後も、観察を続けた。その結果、不溶化ECMを添加した細胞は、その後も細胞死は観察されたが、完全に死滅することはなく、少数の細胞は生存し続けることがわかった。乾癬の治療では、異常角化細胞の増殖を抑制するとともに、皮膚の再生に必要な角化細胞は増殖し過ぎない程度に生存していることが必要である。不溶化ECMは、表皮角化細胞の増殖を抑制するとともに、一部の表皮角化細胞を死滅させず、生存させる作用を持つ。従って、このことは、不溶化ECMが、乾癬等の治療に有効であることを示している。
【0070】
【発明の効果】
本発明によって奏される主な効果は、以下のとおりである。
【0071】
本発明において産生された濃縮液は、繊維芽細胞の増殖を促し、角化細胞の増殖を抑制する効果を持つ。従って、この濃縮液を利用することにより、繊維芽細胞の増殖を促し、皮膚の損傷、欠損部位を再生させる皮膚疾患治療剤又は被覆材を提供することができる。
【0072】
この濃縮液は、無血清培養した培養上清を利用して産生されたものである。従って、プリオン等の混入やアレルギーの発生等を極力排除することができ、より安全性の高い皮膚疾患治療剤又は被覆材を提供することができる。特に、産生した濃縮液を、線維芽細胞を採取した個体の皮膚疾患に対して用いることにより、治療剤又は被覆材の安全性をさらに高めることができる。
【0073】
特に、本発明の皮膚疾患治療剤又は被覆材は、褥瘡の治療に有効である。本発明の治療剤又は被覆材は、繊維芽細胞の増殖を促し、皮膚の損傷、欠損を修復する効果がある。褥瘡は、皮膚の損傷が激しく皮膚の一部が欠損する場合も多いので、繊維芽細胞の増殖を促し、皮膚の修復を促進するこの治療剤又は被覆材は、褥瘡の治療に特に有効である。
【0074】
また、本発明の皮膚疾患治療剤又は被覆材は、乾癬の治療にも有効である。本発明の治療剤又は被覆材は、角化細胞の増殖を抑制する。乾癬は、角化細胞の増殖が異常に亢進するので、角化細胞の増殖を抑制し、なおかつ、皮膚の修復を促進するこの治療剤又は被覆材は、乾癬の治療に特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3に関して、本発明の細胞外マトリックス濃縮液を添加しないで7日間培養した際に、表皮角化細胞が増殖した様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図2】実施例3に関して、図1との比較において、本発明の細胞外マトリックス濃縮液を添加して7日間培養した際に、表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図3】実施例3に関して、本発明の細胞外マトリックス濃縮液を添加しないで14日間培養した際に、表皮角化細胞が増殖した様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図4】実施例3に関して、図3との比較において、本発明の細胞外マトリックス濃縮液を添加して7日間培養した際に、表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図5】実施例5に関して、コントロールとして、コラーゲン注入剤0%を添加して3日間培養した際の、表皮角化細胞の増殖の様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図6】実施例5に関して、コントロールとして、コラーゲン注入剤1%を添加して3日間培養した際の、表皮角化細胞の増殖の様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図7】実施例5に関して、コントロールとして、コラーゲン注入剤5%を添加して3日間培養した際の、表皮角化細胞の増殖の様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図8】実施例5に関して、図5との比較において、0%の可溶化ECM(細胞外マトリックス濃縮液)を添加して3日間培養した際の、表皮角化細胞の増殖を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図9】実施例5に関して、図6との比較において、1%の可溶化ECM(細胞外マトリックス濃縮液)を添加して3日間培養した際に、表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図10】実施例5に関して、図7との比較において、可溶化ECM(細胞外マトリックス濃縮液)を添加して3日間培養した際に、表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図11】実施例5に関して、図5、図8との比較において、0%の不溶化ECM(培養上清濃縮粉末)を添加して3日間培養した際の、表皮角化細胞の増殖を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図12】実施例5に関して、図6、図9との比較において、1%の不溶化ECM(培養上清濃縮粉末)を添加して3日間培養した際に、表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図13】実施例5に関して、図7、図10との比較において、5%の不溶化ECM(培養上清濃縮粉末)を添加して3日間培養した際に、表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【発明の属する技術分野】
本発明は、皮膚疾患治療剤及び皮膚疾患治療用被覆材、特に、褥瘡(床づれ)、乾癬等の治療に用いる皮膚疾患治療剤及び皮膚疾患治療用被覆材に関する。より詳細には、組織培養上清より産生した細胞外マトリックスを利用した皮膚疾患治療剤及び皮膚疾患治療用被覆材に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒト又は動物の皮膚は、表皮、真皮、皮下組織により構成されている。表皮の大部分は角化細胞(上皮細胞)からなる。角化細胞は、表皮の最下層で分裂し、ケラチンを生成しながら上行していき、最終的には表層から脱落する。一方、真皮には、線維芽細胞が存在する。線維芽細胞は、結合組織産生細胞ともいい、コラーゲン等の細胞外マトリックスを産生して、結合組織形成に重要な役割を果たす。
【0003】
皮膚に損傷、欠損が生じた場合、ヒト又は動物の体内には、その「創部」を修復する機構が存在する。まず、創部において、炎症反応が発生し、免疫細胞等が、雑菌を排除したり、損傷によって壊死した細胞を除去したり等する。続いて、真皮にある線維芽細胞が、コラーゲン等を産生し、皮膚の欠損部を閉鎖する(肉芽の形成)。そして、最後に、表皮の角化細胞が増殖して、閉鎖された欠損部の上に上皮を形成し、皮膚が治癒する。
【0004】
皮膚に生じた損傷、欠損を治療する方法としては、まず、洗浄液や消毒液等により、創部を清潔にする方法や、抗生物質等の使用により、雑菌の繁殖を予防する方法がとられる。また、包帯や創傷被覆材によって創部を保護したり、皮膚を縫合して形態を保存する方法もとられる。その他、親水性薬剤を利用して、局所的に浸透圧を上昇させ、創部に浸潤する体液を吸収する方法も用いられている。いずれの場合も、皮膚が自ら創部を修復する機構を助けることにより、早期に皮膚損傷等を治癒させる方法である。
【0005】
皮膚組織の損傷、欠損を伴う難治性の皮膚疾患として、褥瘡(床づれ)及び乾癬がある。
【0006】
「褥瘡」とは、長時間、同一部位に持続的圧力が加わって血行障害を生じ、、摩擦、失禁等も重なって、組織が限局性に壊死に陥った状態をいう。仙骨部、坐骨部、肩甲骨部等の皮膚に好発する。皮膚に潰瘍を生じたり、壊死に陥ったりし、重症化すると、皮膚が完全に欠損して、筋等の下部組織が露出する。
【0007】
褥瘡の治療は、創部を清潔、湿潤に保ち(創の洗浄、消毒剤の利用、抗菌剤の投与)、皮膚組織を再生させる(壊死組織の除去、肉芽形成促進剤の投与)ことにより行う。
【0008】
褥瘡治療剤としては、例えば、「ユーパスタ(登録商標)」(興和株式会社)が、一般的に広く使用されている。ユーパスタは、主成分として、ポピドンヨードと白糖を含有する。ポピドンヨードは、ヨウ素による殺菌作用を示し、白糖は、浮腫軽減作用及び創傷治癒作用を示す。白糖は、親水性薬剤であり、局所的に浸透圧を上昇させることにより、創部に浸潤する体液を吸収し、浮腫を軽減させる。このことは、創内のコラーゲン繊維の増加を促し、結果的に、創部の治癒を早める。
【0009】
一方、「乾癬」とは、皮膚の複数の好発部位に紅斑や鱗屑(角化細胞が剥がれ落ちたもの)等を生じる炎症性角化症の一つで、原因のはっきりしない難治性の皮膚疾患である。組織学的には、角化細胞の分裂が異常に亢進する、表皮、血管周囲で白血球が多数観察される等の特徴がある。
【0010】
乾癬の治療法としては、光線療法、内服療法、外用剤を用いた治療法等がある。内服療法としては、ビタミンA誘導体、免疫抑制剤等を用いる方法がある。また、外用剤を用いた治療法としては、ステロイド軟膏、ビタミンD誘導体等を用いた治療法がある。
【0011】
内服療法としては、ビタミンA誘導体のエトレチナート製剤が一般に使われている。エトレチナート製剤は、詳細な作用機序は明らかでないが、異常な角化細胞の接着力を低下させるとともに、正常な上皮を再形成する働きがあると考えられている。また、白血球の働きを抑制するため、免疫抑制剤のシクロスポリン等が用いられることもある。一方、外用剤としては、ビタミンD誘導体のタカルシトールがよく用いられている。タカルシトールは、角化細胞の増殖抑制作用をもち、ステロイド軟膏と比べると、皮膚が薄くなる等の副作用がないため、広く用いられている。
【0012】
特許文献1は、褥瘡治療組成物についての文献であり、「ユーパスタ(登録商標)」(興和株式会社)についての記載がある。また、特許文献2は、乾癬治療医薬組成物についての文献であり、ビタミンD様の作用を持つ物質についての記載がある。
【0013】
【特許文献1】
特開平9−40563号公報
【特許文献2】
特開平9−2955号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の皮膚疾患治療剤、特に、褥瘡及び乾癬の治療剤には、以下のような解決すべき技術的課題があった。
【0015】
一般的に、皮膚の損傷、欠損に対して用いる治療剤は、創部を清潔にしたり、創部を保護したりすることにより、皮膚のもつ修復機構を補助する方法であり、直接、線維芽細胞の増殖を促し、皮膚の損傷部位を再生させるものではなかった。親水性薬剤についても、創部に湿潤する体液を吸収することにより、間接的に、創部の治癒を補助しているにすぎない。
【0016】
褥瘡の治療では、線維芽細胞が増殖して、結合組織が形成され、皮膚の損傷、欠損部位が再生されることが望ましい。褥瘡の治療で一般的に用いられているユーパスタは、含有する白糖の作用により、結合組織の形成がある程度促進されるが、線維芽細胞を直接増殖させるものではない。従って、線維芽細胞の増殖を促し、皮膚の損傷、欠損部位を再生させる治療剤が必要である。
【0017】
また、ユーパスタには、過敏症等の副作用の問題や、長期間にわたる広範囲の使用ができないという課題があり、より安全で効果的な褥瘡治療剤が必要である。
【0018】
一方、乾癬の治療では、異常な角化細胞の増殖を抑制し、正常な皮膚組織を再生させることが望ましい。乾癬の治療で一般的に用いられているビタミンA誘導体のエトレチナート製剤やビタミンD誘導体のタカルシトールは、作用機序は明らかでないが、角化細胞に影響を及ぼし、増殖異常を正常化させる作用がある。しかし、エトレチナート製剤は、催奇形性があり、妊娠中や妊娠の可能性のある場合、男女とも服用することができない。また、唇がカサカサしたり、ビタミンA過剰症になったりする等の副作用もある。外用剤であるタカルシトールについても、大量に適用すると血液中のカルシウム濃度が増加するという重大な副作用がある。乾癬は、難治性で長期間薬剤を適用する必要があり、また、複数箇所に発生することが多いため、大量に治療剤を使用しなければならない場合もある。したがって、より安全で、副作用がなく、長期間適用できる治療剤が必要である。
【0019】
そこで、本発明は、線維芽細胞の増殖を促進し、角化細胞の増殖を抑制する治療剤又は被覆材であって、より安全で、副作用がなく、長期間適用できる皮膚疾患治療剤又は皮膚疾患治療用被覆材を提供することを主な目的とする。特に、褥瘡及び乾癬の治療剤又は被覆材を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するために、本発明では、次の手段を採用する。
【0021】
まず、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を用いる皮膚疾患治療剤を提供する。この治療剤は、コラーゲンなどの細胞外タンパク質を主成分とすると考えられ、線維芽細胞の増殖を促進し、角化細胞の増殖を抑制する作用を持つ。線維芽細胞を増殖させるので、皮膚の損傷、欠損部位の修復を促進し、皮膚疾患を早期に治癒することができる。なお、産生した濃縮液は、限外濾過で分子量10万以上の画分に精製してもよい。限外濾過を行うことにより、濃縮液の構成成分は、タンパク質を中心としたものとなる。限外濾過を行うことは、タンパク質成分を濃縮できる、不純物等を排除できる等の効果もある。
【0022】
また、この濃縮液は、ヒト又は動物において、線維芽細胞を培養した際の培養上清から産生されるものであり、また、当該細胞の培養の際には、無血清培養を行っているので、プリオンなどの混入やアレルギーの発生などの危険性を極力排除し、安全性のより高い治療剤を提供できるという利点がある。
【0023】
この濃縮液は、ゲル化することにより、実際の皮膚疾患の治療の際に使いやすいものとなる。ゲル化する方法は、どのような方法を用いてもよい。例えば、従来の方法としては、トリメチレンカーボネート系、ポリエチレングリコール系等の生分解性ポリマーに細胞外マトリックス濃縮液を添加して、ガラス転移温度以下で攪拌、混合してゲル化する方法を採用できる。
【0024】
その他、この濃縮液をそのままワセリン等と混ぜたり、濃縮液を乾燥させたものをワセリン等と混ぜたりすることにより、軟膏として利用することができる。軟膏剤として用いることにより、患部に直接塗布したり注入したりすることができ、治療をより効果的にすることができる利点がある。
【0025】
さらに、この皮膚疾患治療剤を、線維芽細胞を採取したヒト又は動物の個体の皮膚疾患部位に用いることにより、アレルギーの発生や副作用を極力防ぎ、安全性の高い皮膚疾患治療剤を提供することができる。
【0026】
この皮膚疾患治療剤は、褥瘡治療に用いることができる。褥瘡は、皮膚の損傷、欠損が激しい場合が多いので、この治療剤は特に有効である。この治療剤を用いることにより、線維芽細胞が増殖し、直接、皮膚組織を再生することができる。
【0027】
また、この皮膚疾患治療剤を乾癬治療に用いることもできる。この治療剤は、角化細胞の増殖を抑制する。乾癬は、異常に角化細胞の増殖が促進した状態となるので、この治療剤を用いることにより、角化細胞の増殖を抑制し、正常な皮膚を再生することができる。
【0028】
次に、ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を膜状に加工して得られる皮膚疾患治療用被覆材を提供する。濃縮液を「創傷被覆材」に加工して用いることにより、創部に数日間当てたままで取り替えずに使用することができる。創傷被覆材を数日間取り替えずに使用できるため、患者又は患畜の負担を軽減し、利便性を高めることができる。また、濃縮液の効果を保ったまま、さらに、創部の湿潤性を高めて、皮膚の再生を促すことができる等の利点があり、治療効果を高めることができる。なお、前記と同様に、産生した濃縮液は、限外濾過で分子量10万以上の画分に精製してもよい。この場合、精製した濃縮液を膜状に加工して用いる。限外濾過を行うことによって、濃縮液の構成成分は、タンパク質を中心としたものとなる。限外濾過を行うことは、タンパク質成分を濃縮できる、不純物等を排除できる等の効果もある。
【0029】
濃縮液を膜に加工する方法は、どのような方法を用いてもよい。例えば、従来の方法としては、細胞外マトリックス濃縮液を必要な大きさの容器に入れて、減圧又は凍結乾燥させることで、水分を蒸発させて該濃縮液の膜を形成させる方法を採用できる。
【0030】
この皮膚疾患治療用被覆材についても、前記治療剤と同様に、線維芽細胞を採取したヒト又は動物の皮膚疾患部位に用いることにより、アレルギーの発生や副作用を極力防ぎ、安全性の高い皮膚疾患治療剤を提供することができる。
【0031】
この被覆材は、褥瘡や乾癬の治療に用いることができる。両疾患は、長期間治療する場合が多いため、濃縮液を被覆材に加工して用いることにより、患者や医療従事者の負担を軽減することができる。ペット動物等は、創部をなめたり、自ら引っかいてしまったりする場合が多い。濃縮液を創傷被覆材に加工することにより、ペット動物等の治療にも使いやすいものになる。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を示す。なお、本発明の範囲は実施例により限定されない。
【0033】
実施例1。
実施例1は、本願に係る細胞外マトリックス濃縮液の産生手順を例示したものである。
【0034】
まず、ヒトの皮膚組織より分離した初代培養の線維芽細胞を、225cm2の培養フラスコを用いて、10%FBS(ウシ胎児血清)及び抗生物質を含むDMEM培地(日本製薬)でコンフルエントになるまで培養した。
【0035】
次に、同フラスコの培養液を捨て、30mlのPBS(リン酸バッファー溶液)で少なくとも3回洗浄した後、FBSを添加していないDMEM培地を35ml添加して5日間培養した。
【0036】
次に、前記無血清培地の培養上清を回収し、10〜30μmのフィルターで細胞残渣を除去した後、日本ミリポア製の分画フィルター(Pellicon,EL,100K)を用いて限外濾過し、濃縮した。
【0037】
そして、培養上清中のフェノール・レッド(色素)を除くため、更に、水で濃縮した。濃縮の過程で沈殿が生じた場合には、遠心をして、上清分画を試料とした。
【0038】
最後に、0.22μmのフィルターを通して滅菌し、得た液を本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液とした。
【0039】
実施例2。
実施例2は、実施例1で得た細胞外マトリックス濃縮液が線維芽細胞の増殖を促進することを示した実験例である。
【0040】
まず、ヒト(A氏、B氏)の皮膚組織より培養して得た線維芽細胞を、それぞれ、1×103個/ウェルになるように無添加DMEM培地で希釈して、96−ウェル培養プレートに播種した。
【0041】
そして、それぞれ、96−ウェル培養プレートを32ウェルずつ3等分し、最初の32ウェルには何も添加せず、次の32ウェルには5%FBSを添加し、最後の32ウェルには、実施例1の方法により得たA氏由来の細胞外マトリックス濃縮液(1mg/ml)を1/100量添加して、3日間培養した。
【0042】
そして、それぞれの96−ウェル培養プレートの各ウェルについてMTTアッセイを行った。その結果を、表1に示す。なお、MTTアッセイは、450nmの吸光度を測定することにより、細胞の増殖性を図る方法である。細胞の増殖性は、吸光度(450nm)の大きさであらわすことができ、増殖が促進されるほど、吸光度も大きな値となる。今回行ったMTTアッセイには、WST−1(TaKaRa)を用いた。
【0043】
【表1】
【0044】
前掲した表1に示されているように、細胞外マトリックス濃縮液を添加したものでは、何も添加しないものに比べて、吸光度が0.083nmから0.28nmに顕著に増加しており、線維芽細胞の増殖が促進されることがわかった。
【0045】
また、実験結果にばらつきはあるものの、A氏由来の細胞膜マトリックス濃縮液をB氏の線維芽細胞に添加した場合でも、A氏の線維芽細胞に添加した場合と同様に、線維芽細胞の増殖が促進されることがわかった。この実験の結果は、ヒトの細胞外マトリックス濃縮液は、自身の線維芽細胞から産生した場合でも、他個体から産生した場合でも、線維芽細胞の増殖を促進する効果があることを示している。
【0046】
実施例3。
実施例3は、本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液が、表皮角化細胞の増殖を抑制することを示した実験例である。
【0047】
まず、皮膚組織より分離した初代培養の表皮角化細胞を低Ca濃度の専用培地(例えば、GIBCOの角化細胞用無血清培地)で培養し、70%コンフルエントの状態で継代培養を行った。
【0048】
続いて、3.5mlシャーレを6つ用意し、それぞれに、表皮角化細胞を角化細胞用無血清培地で希釈したものを、1.1×103個になるように播種した。同時に、3つのシャーレには、本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液(2.8mg/ml)を1/100量添加した。培地交換は、3日又は4日間隔で行い、前記3つのシャーレについては培地交換ごとに該濃縮液を同量添加した。
【0049】
前記播種後、1日、7日、14日後に、上記濃縮液を添加したシャーレと添加しないシャーレについて、各々、細胞数を測定して、表皮角化細胞の増殖性を調べた。その結果を以下の表2に示す。なお、細胞数の測定は、培養細胞をトリプシンで剥がし、血球計測版で数える方法により行った。
【0050】
【表2】
【0051】
前掲した表2に示されているように、表皮角化細胞は、上記濃縮液を添加しない場合は、時間の経過とともに細胞数が増加するのに対し、濃縮液を添加した場合は、細胞数はあまり増加しなかった。即ち、本発明に係る細胞外マトリックス濃縮液の添加により、表皮角化細胞の増殖は停止することがわかった。
【0052】
実施例4。
実施例4は、他個体から上記濃縮液を採取した場合でも、自らの線維芽細胞から濃縮液を採取した場合でも、同様に表皮角化細胞の増殖を抑制する効果があることを示している。
【0053】
まず、実施例1に基づいて、ヒト(C氏、D氏)の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して細胞外マトリックス濃縮液を産生した。
【0054】
次に、C氏の皮膚組織より表皮角化細胞を分離し、1.3×104個をGIBCO社製角化細胞用無血清培地に懸濁させて6cmシャーレ2枚に播種した。その際に、前記C氏又はD氏由来の細胞外マトリックス濃縮液5.9mg/mlを1/200量添加した。そして、それぞれ、12日間培養し、培養後、実施例3と同様の方法で、細胞数を測定した。なお、培地交換は3日又は4日間隔で行い、培地交換の際には、濃縮液を同量添加した。
【0055】
【表3】
【0056】
前掲した表3に示されているように、C氏から採取した表皮角化細胞は、C氏由来の濃縮液を添加した場合でも、D氏由来の濃縮液を添加した場合でも、無添加の場合に比べて、増殖が抑制された。従って、この結果は、本願発明にかかる細胞外マトリックス濃縮液が表皮角化細胞の増殖を抑制することを示すとともに、濃縮液は、線維芽細胞を採取した個体が同一であるか他個体であるかにかかわらず、同様に効果を有することを示している。
【0057】
実施例5。
実施例5は、無血清細胞培養により産生した培養上清を不溶化して作成した「濃縮粉末」が、表皮角化細胞の増殖を阻害することを示した実験例である。
【0058】
この実験では、(1)コラーゲン注入剤(コントロール)、(2)実施例1の手順により産生した培養上清を濃縮して作成した細胞外マトリックス濃縮液(可溶化ECM)、(3)実施例1の手順で産生した培養上清を不溶化したもの(不溶化ECM)、の三種類の試料について、表皮角化細胞に対する効果を比較した。
【0059】
不溶化ECMは、実施例1の手順により産生した培養上清を0.22μmのフィルターで濾過した後、エバポレーターで減圧濃縮して、蒸発乾燥させることにより作製した。培養上清を乾燥して作製した固形物(濃縮固形)には、培地に含まれていた(可溶性)物質が一部混入しているため、PBS(−)液で洗浄して、それらを除去した(洗浄することにより、不溶化ECMのみが、粉末状のまま残る)。実験には、洗浄後の濃縮粉末を、PBS液で懸濁して用いた。
【0060】
実施例5の実験手順は、以下のとおりである。
【0061】
まず、6穴プレートを用いて、9つのウエルのそれぞれに、表皮角化細胞を播種し、100%コンフルエントの状態なるまで培養した。
【0062】
一方、上記した三種類の試料は、それぞれ、PBS液で希釈し、0%、1%、5%の三つの濃度に調製した。コラーゲン注入剤(コントロール)は、1%コラーゲン注入剤(株式会社高研製)を、v/vで、0%、1%、5%の三つの濃度になるように調製した。可溶化ECM、不溶化ECMは、w/vで、0%、1%、5%の三つの濃度になるように調製した。
【0063】
そして、各ウエル(9つ)に目的の試料(三種類の試料、それぞれ0%、1%、5%の三つの濃度)を添加して、3日間培養し、3日後に細胞を観察した。
【0064】
図5、図6、図7は、コラーゲン注入剤(コントロール)を、それぞれ0%、1%、5%添加して、3日間培養したものである。図5(0%添加)と比較して、図6(1%添加)、図7(5%添加)では、細胞の形態の変化(線維芽細胞溶)が一部で見られ、細胞数も若干減少したが、細胞死は見られなかった。
【0065】
図8、図9、図10は、可溶化ECM(細胞外マトリックス濃縮液)を、それぞれ0%、1%、5%添加して、3日間培養したものである。図8(0%添加)と比較して、図9(1%添加)、図10(5%添加)では、全体的に、細胞の形態の変化(線維芽細胞様)が見られたが、細胞死は観察されなかった。
【0066】
図11、図12、図13は、不溶化ECM(濃縮粉末)を、それぞれ0%、1%、5%添加して、3日間培養したものである。図11(0%添加)と比較して、図12(1%添加)、図13(5%添加)では、全体的に、細胞の形態の変化(線維芽細胞様)が見られた。さらに、図13(5%添加)では、多くの細胞が細胞死をおこし、細胞数も著しく減少した。
【0067】
以上の結果より、可溶化ECM(細胞外マトリックス濃縮液)と不溶化ECM(濃縮粉末)は、表皮角化細胞の増殖を抑制する効果があることがわかった。特に、不溶化ECMは、可溶化ECMよりも強く表皮角化細胞の増殖を抑制することがわかった。これは、不溶化ECMの方が、可溶化ECMよりも、濃縮の度合いが高いためと考えられる。
【0068】
不溶化ECM(濃縮粉末)は、溶液と混合したり、ワセリン等と混ぜて軟膏として用いたりすることができる利点がある。この実験結果は、本発明の細胞外マトリックス濃縮液を不溶化して粉末状にしても、皮膚治療剤及び被覆材として有効であることを示している。
【0069】
なお、本実験では、3日間の培養後も、観察を続けた。その結果、不溶化ECMを添加した細胞は、その後も細胞死は観察されたが、完全に死滅することはなく、少数の細胞は生存し続けることがわかった。乾癬の治療では、異常角化細胞の増殖を抑制するとともに、皮膚の再生に必要な角化細胞は増殖し過ぎない程度に生存していることが必要である。不溶化ECMは、表皮角化細胞の増殖を抑制するとともに、一部の表皮角化細胞を死滅させず、生存させる作用を持つ。従って、このことは、不溶化ECMが、乾癬等の治療に有効であることを示している。
【0070】
【発明の効果】
本発明によって奏される主な効果は、以下のとおりである。
【0071】
本発明において産生された濃縮液は、繊維芽細胞の増殖を促し、角化細胞の増殖を抑制する効果を持つ。従って、この濃縮液を利用することにより、繊維芽細胞の増殖を促し、皮膚の損傷、欠損部位を再生させる皮膚疾患治療剤又は被覆材を提供することができる。
【0072】
この濃縮液は、無血清培養した培養上清を利用して産生されたものである。従って、プリオン等の混入やアレルギーの発生等を極力排除することができ、より安全性の高い皮膚疾患治療剤又は被覆材を提供することができる。特に、産生した濃縮液を、線維芽細胞を採取した個体の皮膚疾患に対して用いることにより、治療剤又は被覆材の安全性をさらに高めることができる。
【0073】
特に、本発明の皮膚疾患治療剤又は被覆材は、褥瘡の治療に有効である。本発明の治療剤又は被覆材は、繊維芽細胞の増殖を促し、皮膚の損傷、欠損を修復する効果がある。褥瘡は、皮膚の損傷が激しく皮膚の一部が欠損する場合も多いので、繊維芽細胞の増殖を促し、皮膚の修復を促進するこの治療剤又は被覆材は、褥瘡の治療に特に有効である。
【0074】
また、本発明の皮膚疾患治療剤又は被覆材は、乾癬の治療にも有効である。本発明の治療剤又は被覆材は、角化細胞の増殖を抑制する。乾癬は、角化細胞の増殖が異常に亢進するので、角化細胞の増殖を抑制し、なおかつ、皮膚の修復を促進するこの治療剤又は被覆材は、乾癬の治療に特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3に関して、本発明の細胞外マトリックス濃縮液を添加しないで7日間培養した際に、表皮角化細胞が増殖した様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図2】実施例3に関して、図1との比較において、本発明の細胞外マトリックス濃縮液を添加して7日間培養した際に、表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図3】実施例3に関して、本発明の細胞外マトリックス濃縮液を添加しないで14日間培養した際に、表皮角化細胞が増殖した様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図4】実施例3に関して、図3との比較において、本発明の細胞外マトリックス濃縮液を添加して7日間培養した際に、表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図5】実施例5に関して、コントロールとして、コラーゲン注入剤0%を添加して3日間培養した際の、表皮角化細胞の増殖の様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図6】実施例5に関して、コントロールとして、コラーゲン注入剤1%を添加して3日間培養した際の、表皮角化細胞の増殖の様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図7】実施例5に関して、コントロールとして、コラーゲン注入剤5%を添加して3日間培養した際の、表皮角化細胞の増殖の様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図8】実施例5に関して、図5との比較において、0%の可溶化ECM(細胞外マトリックス濃縮液)を添加して3日間培養した際の、表皮角化細胞の増殖を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図9】実施例5に関して、図6との比較において、1%の可溶化ECM(細胞外マトリックス濃縮液)を添加して3日間培養した際に、表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図10】実施例5に関して、図7との比較において、可溶化ECM(細胞外マトリックス濃縮液)を添加して3日間培養した際に、表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図11】実施例5に関して、図5、図8との比較において、0%の不溶化ECM(培養上清濃縮粉末)を添加して3日間培養した際の、表皮角化細胞の増殖を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図12】実施例5に関して、図6、図9との比較において、1%の不溶化ECM(培養上清濃縮粉末)を添加して3日間培養した際に、表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
【図13】実施例5に関して、図7、図10との比較において、5%の不溶化ECM(培養上清濃縮粉末)を添加して3日間培養した際に、表皮角化細胞の増殖が抑えられた様子を示す図面代用光学顕微鏡写真
Claims (9)
- ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を用いることを特徴とする皮膚疾患治療剤。
- 前記細胞外マトリックス濃縮液をゲル化したことを特徴とする請求項1に記載の皮膚疾患治療剤。
- 前記線維芽細胞を採取した個体の皮膚疾患部位に用いられることを特徴とする請求項1に記載の皮膚疾患治療剤。
- 褥瘡治療に用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の皮膚疾患治療剤
- 乾癬治療に用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の皮膚疾患治療剤
- ヒト又は動物の線維芽細胞を無血清培養して得られる培養上清を精製して産生させた細胞外マトリックス濃縮液を膜状に加工して得られることを特徴とする皮膚疾患治療用被覆材。
- 前記線維芽細胞を採取した個体の皮膚疾患部位に用いられることを特徴とする請求項6に記載の皮膚疾患治療用被覆材。
- 褥瘡治療に用いることを特徴とする請求項6又は7のいずれか一項に記載の皮膚疾患治療用被覆材。
- 乾癬治療に用いることを特徴とする請求項6又は7のいずれか一項に記載の皮膚疾患治療用被覆材。
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JP2003135703A JP2004339107A (ja) | 2003-05-14 | 2003-05-14 | 細胞外マトリックス濃縮液を利用した皮膚疾患治療剤及び皮膚疾患治療用被覆材。 |
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2003
- 2003-05-14 JP JP2003135703A patent/JP2004339107A/ja active Pending
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US10900020B2 (en) | 2006-08-29 | 2021-01-26 | Fibrocell Technologies, Inc. | Methods for culturing minimally-passaged fibroblasts and uses thereof |
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