JP2004334025A - 直描型水なし平版印刷版原版 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐傷性、耐刷性、画像再現性に優れ、反射濃度計などで印刷版の網点面積率を測定することが可能な直描型水なし平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】基板上に、少なくとも断熱層、感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有し、該断熱層の波長400〜650nmの光に対する透過率が、全ての波長において15%以下であり、かつ、該断熱層の初期弾性率が5〜500MPaである直描型水なし平版印刷版原版。
【選択図】なし
【解決手段】基板上に、少なくとも断熱層、感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有し、該断熱層の波長400〜650nmの光に対する透過率が、全ての波長において15%以下であり、かつ、該断熱層の初期弾性率が5〜500MPaである直描型水なし平版印刷版原版。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザー光で直接製版できる直描型水なし平版印刷版原版に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
製版用フィルムを使用しないで、原稿から直接オフセット印刷版を作製する、いわゆる直描型製版は、熟練度を必要としない簡易性、短時間で印刷版が得られる迅速性、多様なシステムから品質とコストに応じて選択可能である合理性などの特徴を生かして、軽印刷業界のみでなく、一般オフセット印刷、フレキソ印刷の分野にも進出し始めている。
【0003】
特に最近では、プリプレスシステムやイメージセッター、レーザープリンターなどの出力システムの急激な進歩によって新しいタイプの各種直描型平版印刷版が開発されている。
【0004】
これらの直描型平版印刷版を製版方法から分類すると、レーザー光を照射する方法、サーマルヘッドで書き込む方法、ピン電極で電圧を部分的に印加する方法、インクジェットでシリコーンゴム層またはインキ着肉層を形成する方法などが挙げられる。なかでも、レーザー光を用いる方法は解像度、および製版速度の面で他の方式よりも優れており、その種類も多い。
【0005】
このレーザー光を用いる印刷版はさらに、光反応によるフォトンモードと、光熱変換を行って熱反応を起こさせるヒートモードの2つのタイプに分けられる。特にヒートモードの方式は、明室で取り扱えるといった利点がある。また光源となる半導体レーザーの急激な進歩によって、最近その有用性が見直されてきている。
【0006】
ヒートモード方式の直描型水なし平版印刷版としては、これまで以下のような提案がなされている。
【0007】
例えば、レーザー光を光源として用いる、熱破壊方式の直描型水なし平版印刷版(例えば、特許文献1、2参照)が開示されている。
【0008】
この印刷版原版の感熱層は、レーザー光吸収化合物として主としてカーボンブラックを用い、熱分解化合物としてニトロセルロースを使用している。そしてこのカーボンブラックがレーザー光を吸収することによって熱エネルギーに変換され、その熱で感熱層が破壊される。そして最終的に、現像によってこの部分を除去することによって、表面のシリコーンゴム層が同時に剥離され、画線部となる。
【0009】
しかしながらこの熱破壊方式の印刷版は、感熱層を破壊して画像を形成することから画線部のセルの深さが深くなり、微小網点でのインキ着肉性が悪く、また、インキマイレージが悪いという問題点があった。さらに、感熱層を熱破壊させ易くするために、架橋構造を形成しており、印刷版の耐刷性が悪いという問題もあった。さらに、この印刷版は感度が低く、感熱層を破壊させるために高いレーザー光の強度が必要という問題点もあった。
【0010】
このような欠点を改良する方法として、基板上に、感熱層およびシリコーンゴム層を有し、レーザー光を熱に変換することにより感熱層とシリコーンゴム層との密着性が低下することによって画像が形成できる直描型水なし平版印刷原版が開示されている(例えば、特許文献3、4参照)。基板と感熱層の間に断熱層を設けることも開示されている。
【0011】
近年、印刷版の反射濃度を濃度計で読み取るなどの方法による、機械読み取りによる検版が求められている。しかしながら、上記のような従来の印刷版では、反射濃度計などで印刷版の網点面積率を実用上十分な精度で測定できないという問題があった。
【0012】
また、従来公知の印刷版では印刷版取り扱い時、版面の洗浄時及び印刷時に印刷版に傷が入りやすく、傷にインキが着肉して、非画線部が汚れる問題があった。
【0013】
【特許文献1】
特開平6−55723号公報(第2−4頁)
【特許文献2】
特開平7−164773号公報(第4−5頁)
【特許文献3】
特開2000−330266号公報(第3−8頁)
【特許文献4】
特開平11−268436号公報(第3−15頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、レーザーによる描き込みが可能で、耐傷性、耐刷性、画像再現性に優れ、反射濃度計などで印刷版の網点面積率を測定することが可能な直描型水なし平版印刷版原版を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基板上に、少なくとも断熱層、感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有し、該断熱層の波長400〜650nmの光に対する透過率が、全ての波長において15%以下であり、かつ、該断熱層の初期弾性率が5〜500MPaであることを特徴とする直描型水なし平版印刷版原版である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳しく説明する。
【0017】
本発明の直描型水なし平版印刷版原版は、基板上に、少なくとも断熱層、感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有する。本発明の直描型水なし平版印刷版原版は、露光工程および現像工程を経て、露光部のシリコーンゴム層が除去され、所望の画像が形成される。シリコーンゴム層が除去された部分が画線部となり、シリコーンゴム層が残存した部分が非画線部となるネガ型の水なし平版印刷版となる。
【0018】
本発明における基板としては、寸法的に安定な板状物が好ましく用いられる。このような寸法的に安定な板状物としては、従来印刷版の基板として使用されたものが含まれる。かかる基板としては、紙、ステンレス、アルミニウムなどのような金属板、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのようなプラスチックフィルム、アルミニウムなどの金属がラミネートもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフィルムなどが好ましく使用される。これらの基板のうち、アルミニウム板は寸法安定性に優れており、しかも安価であるので特に好ましい。
【0019】
本発明は、特に基板が圧延後、粗面化処理を行わないアルミ基板である場合に有効である。このような基板は、通常、反射濃度計を用いて測定した角度による反射濃度差が0.1以上ある。本発明の直描型水なし平版印刷版原版は、角度による反射濃度差が0.1以上である基板を用いても、印刷版原版の角度による反射濃度差を0.04未満にすることができ、機械読み取りによる検版が可能である。なお、アルミ基板の粗面化処理を行うことによっても、基板の角度による反射濃度差を小さくすることができるが、コストが高くなるので、粗面化処理を行わないことが好ましい。
【0020】
本発明において使用する断熱層は、400〜650nmの光透過率を本発明の範囲とするために、顔料を含むことが好ましい。顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、リトポン等の無機白色顔料や、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、オーカー、チタンイエロー等の無機黄色顔料、有機黄色顔料としては、アセト酢酸アリライド系モノアゾ顔料、アセト酢酸アリライド系ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料等のアゾ顔料やイソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリノン系顔料、金属錯体顔料、アントラピリミジン系顔料、アシルアミノイエロー系顔料、キノフタロン系顔料、フラバントロン系顔料等の多環式顔料を用いることが好ましい。これらの顔料の中で、隠蔽力、着色力の点から酸化チタンが特に好ましい。
【0021】
酸化チタン粒子としては、アナタース型、ルチル型、ブルッカイト型があるが、安定性の面からルチル型、アナタース型が好ましい。さらに、酸化チタン表面をアルミニウム、シリコン、チタニウム、亜鉛、ジルコニウムなどによって処理しているものを使用しても良い。
【0022】
酸化チタン粒子の粒子径は、一次粒子径が0.2〜0.3μmであることが好ましい。一次粒子径が0.2μm以上であれば本発明の目的とする隠蔽性能を得ることができ、0.3μm以下であれば自然沈降しにくく、分散が安定した断熱層組成物液が得られ、光沢のある良好な塗膜を得ることができる。
【0023】
また、本発明においては、酸化チタン粒子表面をチタネート系カップリング剤で処理しても良い。酸化チタン粒子表面をチタネート系カップリング剤で処理することによって、酸化チタン粒子の分散性を向上させ、酸化チタン粒子量を多量に添加することが可能となる。さらには酸化チタン粒子を添加した塗液の分散安定性が良好になる。
【0024】
酸化チタンの添加量は、断熱層中に2体積%以上、30体積%以下が好ましい。2体積%以上であれば良好な隠蔽性能が得られ、30体積%以下であれば、良好な塗工性能を示す。
【0025】
本発明の断熱層には、成膜性を付与する目的から樹脂を含むことが好ましい。例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、尿素樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、カゼイン、ゼラチン等が挙げられる。これらの中では、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、尿素樹脂を単独、あるいは2種以上を混合して用いることが好ましい。
【0026】
断熱層の好ましい特性は、基板あるいは感熱層と良好な接着性を有し、経時において安定であり、さらに現像液あるいは印刷時に使用する溶剤に対する耐性が高いことである。これらの特性を得るために、断熱層に金属キレート化合物を含むことが好ましい。
【0027】
本発明で言う金属キレート化合物としては、例えば、金属に有機配位子が配位した有機錯塩、金属に有機配位子および無機配位子が配位した有機無機錯塩、および金属と有機分子が酸素を介して共有結合している金属アルコキシド類を挙げることができる。
【0028】
有機錯化合物を形成する主な金属としては、Al、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn、Zr、Hfが好ましい。着色性の少ない点でAl、Zrが好ましく、さらに反応性の点でAlがより好ましい。
【0029】
配位子としては、O(酸素原子)、N(窒素原子)、S(硫黄原子)等をドナー原子として有する以下のような配位基を有する化合物が挙げられる。
【0030】
配位基の具体例としては、酸素原子をドナー原子とするものとしては、−OH(アルコール、エノールおよびフェノール)、−COOH(カルボン酸)、>C=O(アルデヒド、ケトン、キノン)、−O−(エーテル)、−COOR(エステル)、−N=O(ニトロソ化合物、N−ニトロソ化合物)、−NO2(ニトロ化合物)、>N−O(N−オキシド)、−SO3H(スルホン酸)、−PO3H2(亜リン酸)等、窒素原子をドナー原子とするものとしては、−NH2(1級アミン、アミド、ヒドラジン)、>NH(2級アミン、ヒドラジン)、>N−(3級アミン)、−N=N−(アゾ化合物、複素環化合物)、=N−OH(オキシム)、−NO2(ニトロ化合物)、−N=O(ニトロソ化合物)、>C=N−(シッフ塩基、複素環化合物)、>C=NH(イミン)等、硫黄原子をドナー原子とするものとしては、−SH(チオール)、−S−(チオエーテル)、>C=S(チオケトン、チオアルデヒド)、=S−(複素環化合物)、−C(=O)−SHあるいは−C(=S)−OHおよび−C(=S)−SH(チオカルボン酸)、−SCN(チオシアナート、イソチオシアナート)等が挙げられる。
【0031】
これらの配位基を2個以上含み、金属との間で1個またはそれ以上の環状構造を形成する配位子、具体的には、β−ジケトン類、ケトエステル類、ジエステル類、ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルや塩類、ケトアルコール類、アミノアルコール類、エノール性活性水素化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
このような配位子の具体的な化合物としては以下のようなものが挙げられる。
(1)β−ジケトン類:2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘプタンジオン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、ベンゾイルアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセトン等。
(2)ケトエステル類:アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸オクチル等。
(3)ジエステル類:マロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステル等。
(4)ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルや塩類:乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸アンモニウム塩、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸、リンゴ酸メチル、リンゴ酸エチル、酒石酸、酒石酸メチル、酒石酸エチル等。
(5)ケトアルコール類:4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノン等。
(6)アミノアルコール類:モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、N−エチル−モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン等。
(7)エノール性活性水素化合物:メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド等。
【0033】
本発明に使用する金属キレート化合物は上記した配位子を持つことができるが、中でも、アルコール類、フェノール類、エノール類、ジエステル類およびケトエステル類から選ばれる配位子が1つ以上配位したアルミキレート化合物が好ましい。これらのアルミキレート化合物は活性水素含有化合物との間で容易に交換反応を起こすため、加熱時にアルミキレート化合物そのものが昇華、または蒸発することが抑えられる。
【0034】
また、ケトエステル類が2つ以上配位したアルミキレート化合物を用いることが特に好ましい。このようなアルミキレート化合物を用いることで、湿気の影響を受けにくくなり、また断熱層組成物溶液の貯蔵安定性が飛躍的に改善される。
【0035】
金属キレート化合物の添加量は、断熱層組成物に対して1〜30重量%であることが好ましく、2〜20%であることがより好ましい。金属キレート化合物が1重量%以上であれば、基板あるいは感熱層と良好な接着性が得られ、溶剤に対する耐性も高い。一方、金属キレート化合物が30重量%以下であれば、金属キレート化合物が未反応のまま残存し、感熱層組成物溶液を塗布する際に感熱層組成物溶液中に抽出され、印刷版の性能に悪影響を与えることがない。
【0036】
本発明の断熱層には、塗工性を改良する目的で、アルキルエーテル類(例えばエチルセルロース、メチルセルロースなど)、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、または、ノニオン系界面活性剤を添加することもできる。
【0037】
さらに、断熱層の柔軟性を向上させる目的で、天然ゴムや合成ゴム、およびポリウレタン等の柔軟性付与剤を添加しても良い。これら柔軟性付与剤の添加量としては、10〜80重量%が好ましく、30〜80重量%がより好ましい。10重量%以上であれば断熱層の柔軟性が向上し、80重量%以下であればエポキシ樹脂と金属キレート化合物の硬化反応の阻害は僅かであり、実質的に無視できる。
【0038】
断熱層を構成する成分は、好ましくは溶剤を用いて溶解される。断熱層組成物液に用いられる溶剤には、樹脂、金属キレート化合物、その他の添加物を良く溶かす性質を有することが好ましい。溶剤は単独で用いることもできるし、二種以上を混合して用いることもできる。また、顔料を添加する場合には、顔料表面を良く濡らし、良好な顔料分散性が得られる溶剤を選択することが好ましい。
【0039】
断熱層組成物溶液の作製方法としては、例えば、容器に酸化チタン分散液を入れ、撹拌を開始し、そこに順次樹脂、金属キレート化合物、その他の添加剤を添加し、高濃度の断熱層組成物溶液を得た後、さらに溶剤で任意の濃度まで希釈することで断熱層組成物溶液を得ることができる。
【0040】
酸化チタン分散液は、例えば、溶剤中に酸化チタンを添加し、ペイントシェイカー、ボールミル等で分散することにより得られる。
【0041】
本発明における断熱層の厚みは1〜30g/m2が好ましく、より好ましくは2〜20g/m2である。1g/m2以上であれば、隠蔽性が得られ、30g/m2以下であれば、経済的にも有利となる。
【0042】
本発明は、断熱層の光透過率が、400〜650nmの全ての波長において15%以下であることを特徴とする。光透過率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0043】
断熱層の光透過率の測定方法は、例えば可視分光光度計を用いて測定できる。基板が透明なものであれば、透過法により、基板が不透明なものであれば、反射法で測定が可能である。このような可視分光光度計としては、日立製作所製U−3210自記分光光度計が挙げられる。
【0044】
本発明は、断熱層の初期弾性率が5〜500MPa、好ましくは5〜300MPaにすることが重要である。初期弾性率が500MPa以下であれば、十分な耐傷性が得られ、耐刷性においても問題が生じにくい。
【0045】
また、破断伸度は10%以上が好ましく、15%以上がより好ましい。破断伸度が10%以上であれば、断熱層が脆いために、印刷時に断熱層が損傷し、耐刷性が低くなる問題が生じにくい。
【0046】
これらの引張特性は、JIS K6301にしたがって測定することができる。
【0047】
具体的には、“テフロン(登録商標)”シャーレに断熱層組成物溶液を均一に展開し、溶媒を揮散させた後、キュア温度200℃、キュア時間1時間で加熱硬化させる。この後、“テフロン(登録商標)”シャーレからシートを剥がすことで、約100μmの厚みのシートを得る。このシートから5mm×40mmの短冊状サンプルを切り取り、テンシロンRTM−100(オリエンテック(株)製)を用いて、引張速度20cm/分で初期弾性率及び破断伸度を測定する。
【0048】
本発明に用いられる感熱層は描き込みに使用されるレーザー光を熱に変換(光熱変換)する機能を有する層である。本発明の感熱層には、少なくとも(a)光熱変換物質、(b)金属含有有機化合物、(c)活性水素基含有化合物を含むことが好ましい。
【0049】
本発明の印刷版原版においては、ネガ型の直描型水なし平版印刷版が得られる。すなわち、レーザー光照射部の感熱層とシリコーンゴム層間の接着力が低下し、その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分のシリコーンゴム層が除去される。その詳細なメカニズムは未解明であるが、おそらく版作製時に(b)金属含有有機化合物と(c)活性水素基含有化合物との反応で架橋構造が形成されていたものが、レーザー照射により(a)光熱変換物質の作用によって生じた熱で一部分解したものと考えられる。その結果、シリコーンゴム層と感熱層の界面の耐溶剤性が低下し、現像処理によりレーザー照射部のシリコーンゴム層が除去されるものと考えられる。現像によって除去されるのは、シリコーンゴム層だけでも、シリコーンゴム層と感熱層を同時に除去しても良いが、感熱層は残存した方がインキマイレージが良好になるため好ましい。
【0050】
(a)光熱変換物質
光熱変換物質としてはレーザー光を吸収するものであれば特に限定されるものではなく、例えばカーボンブラック、アニリンブラック、シアニンブラックなどの黒色顔料、フタロシアニン、ナフタロシアニン系の緑色顔料、カーボングラファイト、鉄粉、ジアミン系金属錯体、ジチオール系金属錯体、フェノールチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、結晶水含有無機化合物、硫酸銅、硫化クロム、珪酸塩化合物や、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化タングステンなどの金属酸化物、これらの金属の水酸化物、硫酸塩、さらにビスマス、鉄、マグネシウム、アルミニウムの金属粉などの添加剤を添加することが好ましい。
【0051】
これらのなかでも、光熱変換率、経済性および取り扱い性の面から、カーボンブラックが好ましい。
【0052】
また上記の物質以外に、赤外線または近赤外線を吸収する染料も、光熱変換物質として好ましく使用される。
【0053】
これら染料としては400nm〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有する全ての染料が使用できるが、好ましい染料としては、エレクトロニクス用、記録用色素であるシアニン系、フタロシアニン系、フタロシアニン金属錯体系、ナフタロシアニン系、ナフタロシアニン金属錯体系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、アントラキノン系、インドフェノール系、インドアニリン系、ピリリウム系、チオピリリウム系、スクワリリウム系、クロコニウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フェノチアジン系、フェノキサジン系、フルオラン系、チオフルオラン系、キサンテン系、インドリルフタリド系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、ロイコオーラミン系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系、フルオレノン系、モノアゾ系、ケトンイミン系、ジズアゾ系、ポリメチン系、オキサジン系、ニグロシン系、ビスアゾ系、ビスアゾスチルベン系、ビスアゾオキサジアゾール系、ビスアゾフルオレノン系、ビスアゾヒドロキシペリノン系、アゾクロム錯塩系、トリスアゾトリフェニルアミン系、チオインジゴ系、ペリレン系、ニトロソ系、1:2型金属錯塩系、分子間型CT系、キノリン系、キノフタロン系、フルギド系の酸性染料、塩基性染料、色素、油溶性染料や、トリフェニルメタン系ロイコ色素、カチオン染料、アゾ系分散染料、ベンゾチオピラン系スピロピラン、3,9−ジブロモアントアントロン、インダンスロン、フェノールフタレイン、スルホフタレイン、エチルバイオレット、メチルオレンジ、フルオレセイン、メチルビオロゲン、メチレンブルー、ジムロスベタインなどが挙げられる。
【0054】
これらのなかでも、エレクトロニクス用や記録用の染料で、最大吸収波長が700nm〜900nmの範囲にある、シアニン系染料、アズレニウム系染料、スクアリリウム系染料、クロコニウム系染料、アゾ系分散染料、ビスアゾスチルベン系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、ペリレン系染料、フタロシアニン系染料、ナフタロシアニン金属錯体系染料、ポリメチン系染料、ジチオールニッケル錯体系染料、インドアニリン金属錯体染料、分子間型CT染料、ベンゾチオピラン系スピロピラン、ニグロシン染料などが好ましく使用される。
【0055】
さらにこれらの染料のなかでも、モル吸光度係数の大きなものが好ましく使用される。具体的にはε=1×104以上が好ましく、より好ましくは1×105以上である。εが1×104より小さいと、感度の向上効果が発現しにくいためである。
【0056】
これらの光熱変換物質は単独でも感度の向上効果はあるが、2種以上を併用して用いることによって、さらに感度を向上させることも可能である。
【0057】
また、吸収波長の異なる2種以上の光熱変換物質を併用することにより、2種以上の発信波長の異なるレーザーに対応出来るようにすることも可能である。
【0058】
これら光熱変換物質の含有量は、全感熱層組成物に対して0.1〜70重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜40重量%である。0.1重量%よりも少ない場合にはレーザー光に対する感度の向上効果が見られず、70重量%よりも多い場合には印刷版の耐刷性が低下しやすい。
【0059】
(b)金属含有有機化合物
本発明でいう金属含有有機化合物は、中心金属と有機置換基からなり、中心金属に対して有機置換基が配位結合している錯体化合物、または、中心金属が有機置換基と共有結合している有機金属化合物のことをいう。金属酸化物のような無機化合物はその範疇ではない。これらの金属含有有機化合物は、活性水素基を含有する化合物と置換反応をおこすことが特徴である。
【0060】
中心金属としては周期表の第2周期から第6周期の金属および半導体原子が挙げられ、なかでも第3周期から第5周期の金属および半導体原子が好ましく、第3周期金属のAl、Si、第4周期金属のTi、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、第5周期金属のIn、Snが特に好ましい。
【0061】
以上のような金属を中心にして有機置換基との間で金属含有有機化合物が形成されるが、それらの形態としては例えば以下の様な具体例が挙げられる。
【0062】
(1)金属ジケテネート
ジケトンのエノール水酸基の水素原子が金属原子と置換したもので、中心金属は酸素原子を介して結合している。ジケトンのカルボニルがさらに金属に対して配位結合することができるため、比較的に安定な化合物である。
【0063】
具体的には、有機置換基が、2,4−ペンタジオネート(アセチルアセトネート)、フルオロペンタジオネート、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、ベンゾイルアセトネート、テノイルトリフルオロアセトネートや1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオネートなどである金属ペンタンジオネート(金属アセトネート)類や、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、メタクリルオキシエチルアセトアセテートやアリルアセトアセテートなどである金属アセトアセテート類、サリチルアルデヒド錯塩が挙げられる。
【0064】
(2)金属アルコキサイド
中心金属に対して、酸素原子を介して有機置換基が結合している化合物である。有機置換基が、メトキサイド、エトキサイド、プロポキサイド、ブトキサイド、フェノキサイド、アリルオキサイド、メトキシエトキサイド、アミノエトキサイドなどである金属アルコキサイドが挙げられる。
【0065】
(3)アルキル金属
中心金属に直接有機置換基が結合しているものであり、この場合金属は炭素原子と結合している。有機置換基がジケトンであっても、金属が炭素原子で結合していればこちらに分類される。なかでもアセチルアセトン金属が好ましく用いられる。
【0066】
(4)金属カルボン酸塩類
酢酸金属塩、乳酸金属塩、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、ステアリン酸金属塩などが挙げられる。
【0067】
(5)その他
チタンオキサイドアセトネートのような酸化金属キレート化合物、チタノセンフェノキサイドのような金属錯体や、2種以上の金属原子を1分子中に有するヘテロ金属キレート化合物が挙げられる。
【0068】
以上のような金属含有有機化合物のうち好ましく用いられる金属含有有機化合物の具体例としては、例えば、以下のような化合物が挙げられる。
【0069】
アルミニウムキレート化合物の具体例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、プロピルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、ブチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、ヘプチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、ヘキシルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、オクチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、ノニルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、エチルアセテートアルミニウムジエチレート、エチルアセテートアルミニウムジブチレート、エチルアセテートアルミニウムジヘプチレート、エチルアセテートアルミニウムジノニレート、ジエチルアセテートアルミニウムイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(プロピルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ブチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ヘキシルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ノニルアセトアセテート)、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムジアセチルアセトネートエチルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスプロピルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスブチルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスヘキシルアセトアセテート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスプロピルアセトセトネート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスブチルアセトアセトネート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスヘキシルアセトアセトネート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスノニルアセトアセトネート、アルミニウムジブトキシドモノアセトアセテート、アルミニウムジプロポキシドモノアセトアセテート、アルミニウムジブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムオキシドアクリレート、アルミニウムオキシドオクテート、アルミニウムオキシドステアレート、トリスアリザリンアルミニウム、アルミニウム−s−ブトキシドビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジ−s−ブトキシドエチルアセトアセテート、アルミニウム−9−オクタデセニルアセトアセテートジイソプロポキシド、アルミニウムフェノキシド、アクリル酸アルミニウム、メタクリル酸アルミニウムなど。
【0070】
チタンキレート化合物の具体例としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリn−ステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、トリス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルジイソステアロイルクミルフェニルチタネート、イソプロピルジステアロイルメタクリルチタネート、イソプロピルジイソステアロイルアクリルチタネート、イソプロピル4−アミノベンゼンスルホニルジ(ドデシルベンゼンスルホニル)チタネート、イソプロピルトリメタクリルチタネート、イソプロピルジ(4−アミノベンゾイル)イソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリアクリルチタネート、イソプロピルトリ(N,N−ジメチルエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリアントラニルチタネート、イソプロピルオクチル,ブチルパイロホスフェートチタネート、イソプロピルジ(ブチル,メチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルジ(ジラウロイルホスファイト)チタネート、ジイソプロピルオキシアセテートチタネート、イソステアロイルメタクリルオキシアセテートチタネート、イソステアロイルアクリルオキシアセテートチタネート、ジ(ジオクチルホスフェート)オキシアセテートチタネート、4−アミノベンゼンスルホニルドデシルベンゼンスルホニルオキシアセテートチタネート、ジメタクリルオキシアセテートチタネート、ジクミルフェノレートオキシアセテートチタネート、4−アミノベンゾイルイソステアロイルオキシアセテートチタネート、ジアクリルオキシアセテートチタネート、ジ(オクチル,ブチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソステアロイルメタクリルエチレンチタネート、ジ(ジオクチルホスフェート)エチレンチタネート、4−アミノベンゼンスルホニルドデシルベンゼンスルホニルエチレンチタネート、ジメタクリルエチレンチタネート、4−アミノベンゾイルイソステアロイルエチレンチタネート、ジアクリルエチレンチタネート、ジアントラニルエチレンチタネート、ジ(ブチル,メチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタンメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンメチルフェノキサイド、チタンオキシドビス(ペンタンジオネート)など。
【0071】
鉄(III)アセチルアセトネート、ジベンゾイルメタン鉄(II)、トロポロン鉄、トリストロポロノ鉄(III)、ヒノキチオール鉄、トリスヒノキチオロ鉄(III)、アセト酢酸エステル鉄(III)、鉄(III)ベンゾイルアセトネート、鉄(III)トリフルオロペンタンジオネート、サリチルアルデヒド銅(II)、銅(II)アセチルアセトネート、サリチルアルデヒドイミン銅、コウジ酸銅、ビスコウジャト銅(II)、トロポロン銅、ビストロポロノ銅(II)、ビス(5−オキシナフトキノン−1,4)銅、ビス(1−オキシアントラキノン)ニッケル、アセト酢酸エステル銅、サリチルアミン銅、o−オキシアゾベンゼン銅、銅(II)ベンゾイルアセテート、銅(II)エチルアセトアセテート、銅(II)メタクリルオキシエチルアセトアセテート、銅(II)メトキシエトキシエトキサイド、銅(II)2,4−ペンタンジオネート、銅(II)2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、亜鉛N,N−ジメチルアミノエトキサイド、亜鉛2,4−ペンタンジオネート、亜鉛2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートなども本発明に好ましく用いられる。
【0072】
その他、サリチルアルデヒドコバルト、o−オキシアセトフェノンニッケル、ビス(1−オキシキサントン)ニッケル、ピロメコン酸ニッケル、サリチルアルデヒドニッケル、アリルトリエチルゲルマン、アリルトリメチルゲルマン、アンモニウムトリス(オキザレート)ゲルマネート、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]ゲルマニウム(II)、カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキサイド、シクロペンタジエニルトリメチルゲルマン、ジ−n−ブチルジアセトキシゲルマン、ジ−n−ブチルジクロロゲルマン、ジメチルアミノトリメチルゲルマン、ジフェニルゲルマン、ヘキサアリルジゲルマノキサン、ヘキサエチルジゲルマノキサン、ヘキサメチルジゲルマン、ヒドロキシゲルマトラン1水和物、メタクリルオキシメチルトリメチルゲルマン、メタクリルオキシトリエチルゲルマン、テトラアリルゲルマン、テトラ−n−ブチルゲルマン、テトライソプロポキシゲルマン、トリ−n−ブチルゲルマン、トリメチルクロロゲルマン、トリフェニルゲルマン、ビニルトリエチルゲルマン、ビス(2,4−ペンタンジオネート)ジクロロスズ、ジ−n−ブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ、カルシウム2,4−ペンタンジオネート、セリウム(III)2,4−ペンタンジオネート、コバルト(II)2,4−ペンタンジオネート、コバルト(III)2,4−ペンタンジオネート、ユーロピウム2,4−ペンタンジオネート、ユーロピウム(III)テノイルトリフルオロアセトネート、インジウム2、4−ペンタンジオネート、マンガン(II)2,4−ペンタンジオネート、マンガン(III)2,4−ペンタンジオネートなども本発明に用いられる。
【0073】
これらの具体例のうち、特に好ましく用いられる金属含有有機化合物としては、アルミニウム、鉄(III)、チタンのアセチルアセトネート(ペンタンジオネート)、ヘキサンジオネート、ヘプタンジオネート、エチルアセトアセテート、プロピルアセトアセテート、テトラメチルヘプタンジオネート、ベンゾイルアセトネートなどが挙げられる。
【0074】
これら金属含有有機化合物はそれぞれ単独でも使用できるし、2種以上を混合して使用することもでき、その含有量は活性水素基含有化合物100重量部に対して5〜300重量部が好ましく、10〜150重量部がさらに好ましい。含有量が5重量部より少ないと画像形成しにくくなり、300重量部よりも多い場合には感熱層の物性が低下しやすく、印刷版としては例えば耐刷性という問題が生じやすくなるためである。
【0075】
(c)活性水素基含有化合物
本発明の印刷版原版の感熱層は、金属含有有機化合物と架橋構造を形成させるために、活性水素基含有化合物を含むことが好ましい。活性水素基含有化合物としては、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、チオール基含有化合物などが挙げられるが、水酸基含有化合物が好ましい。
【0076】
さらに、水酸基含有化合物としてはフェノール性水酸基含有化合物、アルコール性水酸基含有化合物のいずれも本発明に使用できる。
【0077】
フェノール性水酸基含有化合物としては、例えば以下のような化合物を挙げることができる。
【0078】
ヒドロキノン、カテコール、グアヤコール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、ジヒドロキシアントラキノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、レゾルシンベンズアルデヒド樹脂、ピロガロールアセトン樹脂、ヒドロキシスチレンの重合体および共重合体、ロジン変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、リグニン変性フェノール樹脂、アニリン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、ビスフェノール類などが挙げられる。
【0079】
また、アルコール性水酸基含有化合物としては、例えば以下のような化合物を挙げることができる。
【0080】
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、7−オクテン−1,2−ジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリビニルアルコール、セルロースおよびその誘導体、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの重合体および共重合体など。
【0081】
また、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリビニルブチラール樹脂、および公知の方法によって水酸基を導入したポリマーなども本発明に使用可能である。
【0082】
これら水酸基含有化合物としては、金属含有有機化合物との反応性という観点から特にフェノール性水酸基含有化合物が好ましく用いられる。特に、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、レゾルシンベンズアルデヒド樹脂、ピロガロールアセトン樹脂、ヒドロキシスチレンの重合体および共重合体、ロジン変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、リグニン変性フェノール樹脂、アニリン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂などのフェノール性水酸基含有樹脂がより好ましい。
【0083】
これら活性水素基含有化合物はそれぞれ単独でも使用できるし、2種以上を混合して使用することもでき、その含有量は、全感熱層組成物に対して5〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜60重量%である。含有量が5重量%よりも少ないと印刷版の感度が低下し、逆に80重量%よりも多いと印刷版の溶剤耐性が低下しやすい。
【0084】
(d)バインダーポリマー
本発明の印刷版原版の感熱層は、耐刷性の観点からバインダーポリマーを含有することが好ましい。バインダーポリマーとしては、有機溶剤に可溶でかつフィルム形成能のあるものであれば特に限定されないが、ガラス転移温度(Tg)が20℃以下のものが好ましく、さらに好ましくはガラス転移温度が0℃以下のものである。
【0085】
有機溶剤に可溶でかつフィルム形成能があり、さらに形態保持の機能をも果たすバインダーポリマーの具体例としては、ビニルポリマー類、未加硫ゴム、ポリオキシド類(ポリエーテル類)、ポリエステル類、ポリウレタン類、ポリアミド類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0086】
これらのバインダーポリマーの含有量は、全感熱層組成物に対して5〜70重量%が好ましく、より好ましくは10〜50重量%である。含有量が5%よりも少ないと耐刷性が低下しやすく、70重量%よりも多いと感度が低下しやすい。
【0087】
バインダーポリマーは単独で用いてもよいし、また数種のポリマーを混合して使用してもよい。
【0088】
(e)その他の成分
さらに、本発明において、感熱層には、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、可塑剤等を必要に応じて添加してもよい。また、断熱層あるいはシリコーンゴム層との接着性を高めるためにシランカップリング剤などの各種カップリング剤を添加することは極めて好ましく行われる。
【0089】
このようにして得られる感熱層の物性に関しては、得られる印刷版の印刷特性の観点から、その物性が特定の範囲にあることが好ましい。この様な物性としては引張特性、その中でも引張時の初期弾性率を代表として挙げることが出来る。具体的には、印刷版における感熱層の引張時の初期弾性率が50MPa〜800MPaの範囲、さらには100MPa〜600MPaの範囲にあることが好ましい。
【0090】
感熱層の初期弾性率を以上のような範囲に設定することにより、印刷版としての特性、特に耐刷性を向上させることが出来る。逆に、初期弾性率が50MPa未満である場合には画線部を形成する感熱層がベタ着き易くなるため印刷時にヒッキーが発生し易くなる。また、初期弾性率が800MPa以上である場合には、印刷時に加わる繰り返し応力により感熱層とシリコーンゴム層との接着界面で破壊が起こりやすくなり、耐刷性低下の原因となるためである。
【0091】
感熱層の厚さは、被覆層にして0.1〜10g/m2であると、印刷版の耐刷性や、希釈溶剤を揮散し易く生産性に優れる点で好ましく、より好ましくは0.5〜7g/m2である。
【0092】
本発明に使用するシリコーンゴム層としては、付加反応型のもの、縮合反応型のものいずれでも用いられる。
【0093】
付加反応型のシリコーンゴム層を構成する成分としては、好ましくは、ビニル基含有ポリジメチルシロキサン、SiH基含有ポリシロキサン、さらには硬化速度を制御する目的で反応抑制剤、および硬化触媒が挙げられる。
【0094】
ビニル基含有ポリジメチルシロキサンは、下記一般式(I)で表される構造を有し、分子末端および/もしくは主鎖中にビニル基を有するものである。
【0095】
【化1】
【0096】
(式中、nは2以上の整数を示し、R1、R2は炭素数1〜50の置換あるいは非置換のアルキル基、炭素数2〜50の置換あるいは非置換のアルケニル基、炭素数4〜50の置換あるいは非置換のアリール基の群から選ばれる少なくとも1種の基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい)。
【0097】
上記式中のR1、R2は全体の50%以上がメチル基であることが、印刷版のインキ反発性の面で好ましい。また、ビニル基含有ポリジメチルシロキサンの分子量としては数千〜数十万のものが使用できるが、その取扱い性や得られる印刷版のインキ反発性、耐傷性などの観点から重量平均分子量1万〜100万、さらには5万〜60万のものを用いることが好ましい。
【0098】
SiH基含有ポリシロキサンとしては、分子鎖中、または末端にSiH基を有する、例えば下記一般式(II)〜(V)で表されるような化合物を挙げることができる。
【0099】
【化2】
【0100】
(上記一般式(II)〜(V)中、nは2以上の整数、mは1以上の整数を示す)。
【0101】
SiH基含有ポリシロキサン中におけるSiH基の量としては、2個以上、さらには3個以上であることが好ましい。SiH基含有ポリシロキサンの添加量としては、シリコーンゴム層中に0.1〜20重量%であることが好ましく、さらに好ましくは1〜15重量%である。ポリジメチルシロキサンとの量比ということで言えば、SiH基/ポリジメチルシロキサンのビニル基のモル比が1.5〜30であることが好ましく、さらに好ましくは10〜20である。このモル比が1.5未満である場合には、シリコーンゴム層の硬化が不足する場合があり、逆に30よりも大きい場合にはゴムの物性がもろくなり、印刷版の耐傷性などに悪影響を与え易くなるためである。
【0102】
反応抑制剤としては、含窒素化合物、リン系化合物、不飽和アルコールなどが挙げられるが、アセチレン基含有のアルコールなどが好ましく用いられる。反応抑制剤の好ましい添加量としては、シリコーンゴム層中の0.01〜10重量%、さらには0.1〜5重量%である。
【0103】
硬化触媒としては、例えば、VIII族遷移金属化合物であり好ましくは、白金化合物である。具体的には、白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金、白金のアルコール変性錯体、白金のメチルビニルポリシロキサン錯体などを一例として挙げることができる。このような硬化触媒の量は、シリコーンゴム層中に固形分として好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%であることが好ましい。添加する触媒量が0.01重量%未満である場合にはシリコーンゴム層の硬化が不十分となり、さらに感熱層との接着性に問題を生じる場合があるためである。他方、20重量%より多い場合にはシリコーンゴム層溶液のポットライフに悪影響をもたらすためである。シリコーンゴム層組成物中における白金などの金属の量で言えば、好ましくは10〜1000ppm、より好ましくは100〜500ppmであることが好ましい。
【0104】
また、シリコーンゴム層には上記した化合物の他に、水酸基含有オルガノポリシロキサンや加水分解性官能基含有シランもしくはシロキサン、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤、接着性を向上させる目的で公知のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などを含有してもよい。シランカップリング剤としては、アルコキシシラン類、アセトキシシラン類、ケトキシミンシラン類等が好ましく、特にビニル基を有するものや、ケトキシミンシラン類が好ましい。
【0105】
縮合反応型のシリコーンゴム層を構成する成分としては、水酸基含有ポリジメチルシロキサン、架橋剤(脱酢酸型、脱オキシム型、脱アルコール型、脱アミン型、脱アセトン型、脱アミド型、脱アミノキシ型など)、および硬化触媒が挙げられる。ここで、水酸基含有ポリジメチルシロキサンは、下記一般式(I)で表される構造を有する。
【0106】
【化3】
【0107】
(式中、nは2以上の整数を示し、R1、R2は炭素数1〜50の置換あるいは非置換のアルキル基、炭素数2〜50の置換あるいは非置換のアルケニル基、炭素数4〜50の置換あるいは非置換のアリール基の群から選ばれる少なくとも1種の基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい)。
【0108】
R1、R2については、全体の50%以上がメチル基であることが、印刷版のインキ反発性の面で好ましい。水酸基は分子末端および/または主鎖中に位置することができるが、好ましく用いられるものは分子鎖末端に水酸基を有するものである。また、分子量としては数千〜数十万のものが使用できるが、その取扱い性や得られた印刷版のインキ反発性、耐傷性などの観点から重量平均分子量1万〜20万、さらには3万〜15万のものを用いることが好ましい。
【0109】
架橋剤としては、下記一般式(VI)で表される、アセトキシシラン類、アルコキシシラン類、ケトキシミンシラン類、アリロキシシラン類などを挙げることができる。
【0110】
(R3)4−nSiXn (VI)
(式中、nは2〜4の整数を示し、R3は炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシミン基、アミノオキシ基、アミド基、アルケニルオキシ基から選ばれる官能基を示す)。
【0111】
上記式において、加水分解性基の数nは3または4であることが好ましい。
【0112】
一般式(VI)で表される具体的な化合物としては、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリスイソプロペノキシシラン、ビニルメチルビス(メチルエチルケトキシミン)シラン、メチルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン、ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン、テトラ(メチルエチルケトキシミン)シラン、ジイソプロペノキシジメチルシラン、トリイソプロペノキシメチルシラン、テトラアリロキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、インキ反発層の硬化速度、取扱い性などの観点から、アセトキシシラン類、ケトキシミンシラン類が好ましい。
【0113】
一般式(VI)で表される架橋剤の添加量としては、シリコーンゴム層全組成物の1.5〜20重量%であることが好ましく、さらに好ましくは3〜10重量%である。ポリジメチルシロキサンとの量比ということで言えば、官能基X/ポリジメチルシロキサンの水酸基のモル比が1.5〜10.0であることが好ましい。このモル比が1.5未満である場合には、シリコーンゴム層溶液のゲル化が起こり易く、逆に10.0よりも大きい場合にはゴムの物性が脆くなり、印刷版の耐傷性などに悪影響を与え易くなるためである。
【0114】
硬化触媒としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸などの有機カルボン酸、トルエンスルホン酸、ホウ酸等の酸類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ、アミン、およびチタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどの金属アルコキシド、鉄アセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナートジプロポキシドなどの金属ジケテネート、金属の有機酸塩などを挙げることができる。これらの中では、金属の有機酸塩を添加することが好ましく、特に、錫、鉛、亜鉛、鉄、コバルト、カルシウム、マンガンから選ばれる金属の有機酸塩であることが好ましい。このような化合物の具体例の一部としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄などを挙げることができる。このような硬化触媒の量は、シリコーンゴム層中に固形分として好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%であることが好ましい。添加する触媒量が0.01重量%未満である場合にはシリコーンゴム層の硬化が不十分となり、さらに感熱層との接着性に問題を生じる場合があるためである。他方、20重量%より多い場合にはシリコーンゴム層溶液のポットライフに悪影響をもたらすためである。
【0115】
また、シリコーンゴム層には、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤、接着性を向上させる目的で公知のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などを含有してもよい。
【0116】
本発明に使用するシリコーンゴム層の膜厚は重量換算で0.5〜20g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜4g/m2である。膜厚が0.5g/m2よりも小さい場合には印刷版のインキ反発性や耐傷性、耐刷性が低下する傾向があり、20g/m2よりも大きい場合には経済的見地から不利であるばかりでなく、現像性、インキマイレージが悪くなる。
【0117】
本発明における直描型水なし平版印刷版原版の製造方法および製版方法について説明する。
【0118】
基板上に、リバースロールコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、メーヤバーコーターなどの通常のコーターあるいはホエラーのような回転塗布装置を用い、断熱層組成物溶液を塗布し100〜300℃で数分間加熱あるいは活性光線照射により硬化させた後、感熱層組成物溶液を塗布し100〜180℃で数十秒から数分間加熱乾燥させる。この後、シリコーンゴム組成物溶液を塗布し100〜200℃の温度で数分間熱処理してシリコーンゴム層を得る。
【0119】
必要に応じて保護フィルムをラミネートするか、あるいは保護層を形成する。保護フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、また各種金属を蒸着したフィルムなどが挙げられる。
【0120】
次に、直描型水なし平版印刷版原版から、印刷版を製造する製版方法について説明する。製版方法は、通常、少なくとも(1)露光工程、(2)レーザー照射部のシリコーンゴム層と感熱層間の接着力を低下させる「前処理工程」、および(3)レーザー照射部のシリコーンゴム層を剥離させる「現像工程」からなる。また、(4)画線部の感熱層を染色液で染色する「後処理工程」、および(5)処理液や染色液を完全に洗い落とす「水洗工程」を加えてもよい。各工程について、詳述する。
【0121】
(1)露光工程
直描型水なし平版印刷版原版を、保護フィルムを剥離してから、あるいは保護フィルム上からレーザー光で所望の画像状に露光する。
【0122】
露光工程で用いられるレーザー光源としては、通常、発光波長領域が300nm〜1500nmの範囲にあるものが用いられるが、これらの中でも近赤外領域付近に発光波長領域が存在する半導体レーザーやYAGレーザーが好ましく用いられる。具体的には、明室での版材の取扱い性などの観点から、780nm、830nm、1064nmの波長のレーザー光が製版に好ましく用いられる。
【0123】
レーザー照射により光熱変換物質の作用によって感熱層表面は高温になり、分解物が生じる。一方、感熱層内部では感熱層表面に比べて低い温度に加熱されるため、分解は起こらず、硬化が進むのである。
【0124】
(2)前処理工程
前処理工程は、所定温度に保持した前処理液中に、一定時間だけ版を浸漬させる工程である。
【0125】
露光工程におけるレーザーの照射エネルギーが大きければ、前処理工程を経ずに、そのまま現像工程に進んでも、レーザー照射部のシリコーンゴム層を剥離させることは可能である。しかし、照射エネルギーが小さい場合には、感熱層の変性が小さいため、現像工程のみでレーザー照射のON/OFFを感知することは難しく、現像不能となりやすい。そこで、レーザー照射のON/OFFの差を増幅し、低エネルギーのレーザー照射部の現像を行うために、前処理液で版を処理する。
【0126】
前処理工程では、30〜60℃の温度の前処理液に版を10〜100秒浸漬させることが好ましい。30℃未満の温度の前処理液に浸漬した場合、もしくは10秒未満の時間浸漬した場合には、感熱層の膨潤あるいは溶解が十分でなく、シリコーンゴム層と感熱層間の接着力を十分に低下させることができない。また、60℃を超えた温度の前処理液に浸漬した場合、もしくは100秒を超える時間浸漬した場合には、非画線部のシリコーンゴム層が剥離するなどの問題が生じる場合がある。
【0127】
前処理液中に版を浸漬させると、前処理液はシリコーンゴム層中に浸透し、やがて感熱層まで到達する。照射部の感熱層はその上部において、熱分解物が生じていたり、あるいは前処理液に対する溶解性が増大していたりするので、感熱層上部は前処理液によって膨潤、あるいは一部溶解して、シリコーンゴム層と感熱層との間の接着力が低下する。この状態で印刷版面を軽く擦ると、レーザー照射部のシリコーンゴム層は剥離し、下層の感熱層は露出してインキ着肉層となる。一方、未照射部の感熱層は前処理液に対して不溶あるいは難溶なため、シリコーンゴム層は、感熱層と強力に接着しており、強く擦っても剥がれない。このようにして、未照射部のシリコーンゴム層は現像されることなく、この部分がインキを反発し、水なし平版印刷版の画像形成がなされる。
【0128】
このような機構によって印刷版の高感度化が行われるため、前処理液の選択は重要である。感熱層の溶解能が高い前処理液を用いると、未照射部のシリコーンゴム層が剥離し、その度合いによっては感熱層までもが現像されてしまう。その結果、前処理液などを汚染することによって、前処理液の寿命を縮める。一方、感熱層の溶解能が低い前処理液を用いると、照射部のシリコーンゴム層さえも現像することができず、印刷版の高感度化は果たされない。
【0129】
このような前処理液としては、水にアルコールやケトン、エステル、カルボン酸、アミンなどの極性溶媒を添加したものや、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などの少なくとも1種類からなる溶媒に極性溶媒を少なくとも1種類添加したもの、あるいは極性溶媒が用いられる。さらに、下記一般式(VII)で示されるグリコール化合物あるいはグリコールエーテル化合物を主成分として用いることが好ましい。
【0130】
【化4】
【0131】
(ここで、R3は水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基を示し、R4およびR5は水素原子あるいは炭素数1〜15のアルキル基を示し、kは1〜12の整数である)。
【0132】
概して、グリコール化合物に比べると、グリコールエーテル化合物の方が感熱層に対する溶解能は高い。よって、両者の中で適当な化合物を選択するか、両者を混合することによって、感熱層の硬化具合の異なる版材に対して、最適な選択的溶解性を有する前処理液を得ることができる。前処理液としての効果は、感熱層の選択的溶解性だけでなく、シリコーンゴム層の膨潤能も加味される。シリコーンゴム層が膨潤すると、シリコーンゴム層を剥がしやすくなるため、たとえ感熱層の溶解性が低い前処理液でも現像しやすくなる。ただし、シリコーンゴム層が膨潤しすぎると現像時に擦り傷が付きやすくなるので、適当な範囲にとどめる必要がある。具体的には、シリコーンゴム層の膨潤率が30%以下のものが好ましく、さらに好ましくは10%以下である。例えば、グリコール化合物では、シリコーンゴム層の膨潤率はほぼ0%であり、単に感熱層の選択的溶解性のみが前処理液としての適性に影響する。一方、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどの繰り返し単位が少なく、R4やR5にある程度長い直鎖の官能基を導入すると、シリコーンゴム層の膨潤能が高くなる。グリコールモノエーテルとグリコールジエーテルとでは、ジエーテルの方が、シリコーンゴムの膨潤能が一般的に高い。このような場合には、感熱層の選択的溶解性とシリコーンゴムの膨潤能の両者を考慮して前処理液の設計を行う。
【0133】
グリコール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール(1,2−ブタンジオール)、2,3−ブタンジオール、k=2〜12のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらのグリコール化合物は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。これらの中で、選択的溶解性の面から、k=2〜4であるジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールが前処理液として特に好ましく用いられる。
【0134】
グリコールエーテル化合物として、上記グリコール化合物のモノアルキルエーテルおよびジアルキルエーテルが挙げられる。R4やR5のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デカニル基、ウンデカニル基、ドデカニル基が挙げられる。好ましく用いられるグリコールエーテル化合物としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等が挙げられる。
【0135】
上記一般式(VII)で表されるグリコール化合物あるいはグリコールエーテル化合物の前処理液中の含有量は、50重量%〜100重量%が好ましく、70重量%〜95重量%がより好ましい。50重量%より少ないと感熱層の選択的溶解性に劣るため、画像の再現性が低下する。
【0136】
また、前処理液には、アミン化合物を共存させることも好ましい。アミン化合物は選択的溶解性には劣るが、感熱層の溶解能が高いため、高感度化の目的で、前処理液中に副成分として加えてもよい。
【0137】
アミン化合物として、エチレングリコールアミン、ジエチレングリコールアミン、トリエチレングリコールアミン、テトラエチレングリコールアミン、プロピレングリコールアミン、ジプロピレングリコールアミン、トリプロピレングリコールアミンのようなグリコールアミン化合物や、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、メチルジエチルアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジプロピルベンジルアミン、o−、またはm−、p−メトキシ、またはメチルベンジルアミン、N,N−ジ(メトキシベンジル)アミン、β−フェニルエチルアミン、γ−フェニルプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、モノメチルアニリン、ジメチルアニリン、トルイジン、α−またはβ−ナフチルアミン、o−、またはm−、またはp−フェニレンジアミン、アミノ安息香酸、2−(2−アミノエチル)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
【0138】
アミン化合物の前処理液中の含有量は、25重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。25重量%より多いと、感熱層に対する溶解力が強くなるため、画線部のシリコーンゴム層のみでなく、非画線部のシリコーンゴム層まで剥離しやすくなるため、画像を再現することが困難になる。
【0139】
また前処理液中には、必要に応じて、水、アルコール類、カルボン酸類、エステル類、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタンなど)、脂肪族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(トリクレンなど)を添加してもよい。また、現像時に版面を擦るときに、傷が入るのを防止するために、前処理液中に硫酸塩、燐酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などの界面活性剤を加えてもよい。
【0140】
(3)現像工程
前処理により、レーザー照射部では、感熱層表面が膨潤あるいは一部溶解しているため、選択的にシリコーンゴム層が剥がれやすくなっている。そこで、水、その他の溶剤を用いて版面を擦ることにより現像を行う。水による現像が排液の点から最も好ましい。また、前処理液は親水性化合物を主成分とする。したがって、印刷版に浸透している処理液を水で洗い落とすことができるため、水による現像が好ましい。温水や水蒸気を版面に噴射することによっても現像を行ってもよい。現像性を上げるために、水に前処理液を加えたものを用いてもよい。現像液の温度は任意でよいが、10℃〜50℃が好ましい。
【0141】
(4)後処理工程
現像により形成された画線部の確認を容易にするために、染色液で染色する後処理工程を設けてもよい。染色液に用いられる染料としては、塩基性染料、酸性染料、直接染料、分散染料、および反応性染料などの中から単独で、あるいは2種以上のものを混合して用いることができる。なかでも、水溶性の塩基性染料および酸性染料が好ましく用いられる。
【0142】
塩基性染料としては、”クリスタルバイオレット”、”エチルバイオレット”、”ビクトリアピュアブルー”、”ビクトリアブルー”、”メチルバイオレット”、”DIABACIS MAGENTA”(三菱化学(株)製)、”AIZEN BASIC CYANINE 6GH”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、”PRIMOCYANINE BX CONC.”(住友化学(株)製)、”ASTRAZON BLUE G”(FARBENFARRIKEN BAYER 製)、”DIACRYL SUPRA BRILLIANT 2B”(三菱化学(株)製)、”AIZEN CATHILON TURQUOISE BLUE LH”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、”AIZEN DIAMOND GREEN GH”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、”AIZEN MALACHITE GREEN”(保土ヶ谷化学工業(株)製)などが用いられる。
【0143】
酸性染料としては、”ACID VIORET 5B”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、”KITON BLUE A”(CIBA 製)、”PATENT BLUE AF”(BASF 製)、”RAKUTO BRILLIANT BLUE FCF”(洛東化学工業(株)製)、”BRILLIANT ACID BLUE R”(GEIGY 製)、”KAYANOL CYANINE 6B”(日本化薬(株)製)、”SUPRANOL CYANINE G”(FARBENFARRIKEN BAYER 製)、”ORIENT SOLUBLE BLUE OBB”(オリエント化学工業(株)製)、”ACID BRILLIANT BLUE 5G”(中外化成(株)製)、”ACID BRILLIANT BLUE FFR”(中外化成(株)製)、”ACID GREEN GBH”(高岡化学工業(株)製)、”ACID BRILLIANT MILLING GREEN B”(保土ヶ谷化学工業(株)製)などが用いられる。
【0144】
これら染料の染色液中の含有量は、0.01重量%〜10重量%が好ましく、0.1重量%〜5重量%がより好ましい。
【0145】
染色液の溶媒としては、水、アルコール類、グリコール類、グリコールモノアルキルエーテル類、グリコールジアルキルエーテル類が用いられ。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合して用いられる。グリコール類、グリコールモノアルキルエーテル類、グリコールジアルキルエーテル類は、処理液としての効果を有するので、仮に現像工程でレーザー照射部のインキ反発層が現像できず付着していても、後処理工程で現像させることもできる。
【0146】
その他、染色助剤、有機酸、無機酸、消泡剤、可塑剤、界面活性剤を任意に添加してもよい。
【0147】
染色液の温度は任意でよいが、10℃〜50℃が好ましい。また、現像液中に上記染料を添加しておいて、現像と同時に画像部の染色化を行うこともできる。
【0148】
(5)水洗工程
版面に前処理液や染色液が浸透したままになっていると、経時により非画線部のシリコーンゴム層が剥離しやすくなる場合があるため、処理液や染色液を版面から完全に洗い落とす水洗工程を設けてもよい。水洗水の温度は任意でよいが、10℃〜50℃が好ましい。
【0149】
これまで述べてきた工程による現像方法としては、手による現像でも自動現像装置による現像のどちらでも良い。手による現像では、これらの処理液、現像液および染色液を順次不織布、脱脂綿、布、スポンジなどに含浸させて版面を拭き取ることによって行うことができる。自動現像装置を用いる場合には、前処理部、現像部および後処理部がこの順に設けられているものが好ましい。場合によっては後処理部の後方にさらに水洗部が設けられていてもよい。このような自動現像機としては東レ(株)製の”TWL−1160”、”TWL−650”、あるいは特開平4−2265号、特開平5−2272号、特開平5−6000号などに開示されている現像装置が挙げられる。
【0150】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0151】
<断熱層の初期弾性率及び破断伸度の測定方法>
“テフロン(登録商標)”シャーレに断熱層溶液を均一に展開し、溶媒を揮散させた後、キュア温度200℃、キュア時間1時間で加熱硬化させた。この後、“テフロン(登録商標)”シャーレからシートを剥がすことで、約100μmの厚みのシートを得た。このシートから5mm×40mmの短冊状サンプルを切り取り、テンシロンRTM−100(オリエンテック(株)製)を用いて、引張速度20cm/分で初期弾性率及び破断伸度を測定した。
【0152】
<断熱層の光透過率の測定方法>
断熱層溶液を、厚さ150μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”)に塗布し、キュア温度200℃、キュア時間1分で所望の膜厚の断熱層を塗設した。得られたフィルムについて、分光光度計U−3210(日立製作所(株)製)を用い、波長400〜650nmの光の透過率を測定した。
【0153】
<画像再現性の測定方法>
直描型水なし平版印刷版原版を露光および現像して、2400dpiで、それぞれ1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99%の網点が設けられた印刷版を作製した。
【0154】
得られた印刷版をルーペで観察し、それぞれの網点の再現性を調べた。1〜99%の網点の全てが再現できていれば、良好な画像再現性を有すると言える。
【0155】
<網点読み取り性の測定方法>
直描型水なし平版印刷版原版を露光および現像して、2400dpiで、それぞれ1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99%の網点が設けられた印刷版を作製した。
【0156】
得られた印刷版を網点面積率測定装置“ccDot4 type3”(センターファックス社製)を用いて、網点面積率を測定した。印刷版の基板のアルミ延伸目に対して直角方向と平行方向から測定し、方向の違いによる測定結果の違いを比較した。この違いが1.0%以下であれば、良好な網点読み取り性を有するといえる。
【0157】
<耐傷性の測定方法>
直描型水なし平版印刷版原版を露光および現像して印刷版を作製した。この印刷版の比露光部(非画線部)に対して、連続加重式引掻強度試験機HEIDON−18(新東科学(株)製)を使用し、直径0.05mmのサファイア針上に無荷重から50gまで連続的に加重しながら印刷版を30cm/分で移動して傷をつけた。この印刷版を印刷し、傷にインキが着肉し、印刷物上で傷が観察された最小の荷重(g)を耐傷性の値とした。耐傷性が5g以上であれば、印刷版取り扱い時、版面の洗浄時及び印刷時に印刷版に傷が入りにくく、傷にインキが着肉して、非画線部が汚れる問題が発生しにくい。
【0158】
<耐刷性の測定方法>
直描型水なし平版印刷版原版を露光および現像して印刷版を作製した。得られた印刷版を、オフセット印刷機(小森スプリント4色機)に取り付け、“ドライオカラー”(大日本インキ化学工業(株)製)墨、紅、藍、黄インキを用いて、上質紙に印刷を行い耐刷テストを行った。非画線部のシリコーンゴム層がピンホール状に剥離するなどして、印刷紙面に汚れが発生した印刷枚数を耐刷性とした。
【0159】
<酸化チタン分散液の作製>
N,N−ジメチルホルムアミド10重量部中に、酸化チタン”CR−50”(石原産業(株)製)10重量部を添加して5分間撹拌した。さらに、ガラスビーズ(No.08)を15重量部添加し、20分間激しく撹拌し、その後ガラスビーズを取り去ることで酸化チタン分散液を得た。
【0160】
<断熱層溶液1の組成>
(a)エポキシ樹脂:“エピコート(登録商標)”1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):18重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):285重量部(ポリウレタン:57重量部)
(c)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):4重量部
(d)ビニル系重合物:“ディスパロン(登録商標)”LC951(楠本化成(株)製):0.1重量部
(e)酸化チタン分散液(濃度50%):42重量部(酸化チタン:21重量部)
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:48重量部
(g)メチルエチルケトン:270重量部。
【0161】
<断熱層溶液2の組成>
(a)エポキシ樹脂:“エピコート(登録商標)”1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):16重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−SZ18D(三洋化成工業(株)製、濃度15%、N,N−ジメチルホルムアミド溶液):480重量部(ポリウレタン:72重量部)
(c)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):4重量部
(d)ビニル系重合物:“ディスパロン(登録商標)”LC951(楠本化成(株)製):0.1重量部
(e)酸化チタン分散液(濃度50%):16重量部(酸化チタン:8重量部)
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:151重量部。
【0162】
<断熱層溶液3の組成>
(a)エポキシ樹脂:“エピコート(登録商標)”1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):28重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):160重量部(ポリウレタン:32重量部)
(c)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):6重量部
(d)ビニル系重合物:“ディスパロン(登録商標)”LC951(楠本化成(株)製):0.1重量部
(e)酸化チタン分散液(濃度50%):68重量部(酸化チタン:34重量部)
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:235重量部
(g)メチルエチルケトン:170重量部。
【0163】
<断熱層溶液4の組成>
(a)エポキシ樹脂:“エピコート(登録商標)”1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):36重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):110重量部(ポリウレタン:22重量部)
(c)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):8重量部
(d)ビニル系重合物:“ディスパロン(登録商標)”LC951(楠本化成(株)製):0.1重量部
(e)酸化チタン分散液(濃度50%):68重量部(酸化チタン:34重量部)
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:275重量部
(g)メチルエチルケトン:170重量部。
【0164】
<断熱層溶液5の組成>
(a)エポキシ樹脂:“エピコート(登録商標)”1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):46重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):50重量部(ポリウレタン:10重量部)
(c)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):10重量部
(d)ビニル系重合物:“ディスパロン(登録商標)”LC951(楠本化成(株)製):0.1重量部
(e)酸化チタン分散液(濃度50%):68重量部(酸化チタン:34重量部)
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:323重量部
(g)メチルエチルケトン:170重量部。
【0165】
<断熱層溶液6の組成>
(a)エポキシ樹脂:“エピコート(登録商標)”1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):41重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):235重量部(ポリウレタン:47重量部)
(c)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):9重量部
(d)ビニル系重合物:“ディスパロン(登録商標)”LC951(楠本化成(株)製):0.1重量部
(e)酸化チタン分散液(濃度50%):6重量部(酸化チタン:3重量部)
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:206重量部
(g)メチルエチルケトン:170重量部。
【0166】
<感熱層溶液1の組成>
(a)赤外線吸収染料:“PROJET”825LDI((株)Avecia製):10重量部
(b)チタンジ−n−ブトキサイドビス(2,4−ペンタンジオネート):“ナーセム(登録商標)チタン”(日本化学産業(株)製、チタン濃度約8.8%、n−ブタノール溶液):22重量部
(c)フェノールノボラック樹脂:“スミライトレジン(登録商標)”PR54652(住友デュレズ(株)製):60重量部
(d)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):50重量部(ポリウレタン:10重量部)
(e)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:15重量部
(f)テトラヒドロフラン:668重量部
(g)エタノール:40重量部。
【0167】
<感熱層溶液2の組成>
(a)赤外線吸収染料:“YKR−2900”(山本化成(株)製):16重量部
(b)チタンジ−n−ブトキサイドビス(2,4−ペンタンジオネート):“ナーセム(登録商標)チタン”(日本化学産業(株)製、チタン濃度約8.8%、n−ブタノール溶液):38重量部
(c)フェノールノボラック樹脂:“スミライトレジン(登録商標)”PR54652(住友デュレズ(株)製):60重量部
(d)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):200重量部(ポリウレタン:40重量部)
(e)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:15重量部
(f)テトラヒドロフラン:825重量
(g)N,N−ジメチルホルムアミド:64重量部。
【0168】
<シリコーンゴム層溶液の組成>
(a)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンDMS−V52(重量平均分子量110,000、GELEST Inc.製):100重量部
(b)両末端メチル(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメチルシロキサン)共重合体、SiH基含有ポリシロキサンHMS−151(MeHSiOのモル%:15〜18%、GELEST Inc.製):7重量部
(c)ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン:3重量部
(d)白金触媒:“SRX−212”(東レダウコーニングシリコーン(株)製):5重量部
(e)“アイソパー(登録商標)”E(エッソ化学(株)製):1035重量部。
【0169】
(実施例1)
厚さ0.24mmの脱脂したアルミ基板(三菱アルミ(株)製)上に断熱層溶液1を塗布し、200℃、1分間乾燥し、膜厚8g/m2の断熱層を設けた。この断熱層の上に前記の感熱層溶液1を塗布し、150℃、80秒間乾燥し、膜厚1.5g/m2の感熱層を設けた。この感熱層上に、前記のシリコーンゴム層溶液を塗布し、125℃、80秒間乾燥し、膜厚2.0g/m2のシリコーンゴム層を設け、直描型水なし平版印刷版原版を得た。さらに、シリコーンゴム層表面に6μmのポリプロピレンフィルムをラミネートした。
【0170】
得られた直描型水なし平版印刷版原版を、製版機“GX−3600”(東レ(株)製)に装着し、半導体レーザー(波長830nm)を用いて照射エネルギー150mJ/cm2で画像露光を行った。ポリプロピレンフィルムを剥離した後、自動現像機“TWL−860KII”(東レ(株)製)を使用し、前処理液“NP−1”(東レ(株)製)で30秒間の浸漬処理後、水洗浄下でブラシ現像し、後処理液“NA−1”(東レ(株)製))で染色した。この一連の操作によって、レーザー照射部のシリコーンゴム層が剥離し、その部分の露出した感熱層表面が染色されたネガ型の直描型水なし平版印刷版を得た。
【0171】
得られた印刷板をルーペで観察したところ、1〜99%の網点を再現しており、良好な画像再現性を有していた。また、アルミ延伸目に対して、直角方向および平行方向から測定した網点面積率の差が0.5%以下であり、良好な網点読み取り性を有していた。
【0172】
この印刷版をオフセット印刷機(小森スプリント4色機)に取り付け、“ドライオカラー”(大日本インキ化学工業(株)製)墨、紅、藍、黄インキを用いて、上質紙に印刷を行った。2万枚印刷後も非画線部に汚れがない良好な印刷物が得られた。また、印刷終了後の印刷版を検査した結果、非画線部のシリコーンゴム層がピンホール状に剥離するなどの損傷もなく、2万枚以上の耐刷性があることが確認できた。
【0173】
印刷版のレーザー非照射部(非画線部)に対して、連続加重式引掻強度試験機HEIDON−18(新東科学(株)製)を使用し、直径0.05mmのサファイア針上に無荷重から50gまで連続的に加重しながら印刷版を30cm/分で移動して傷をつけた。この印刷版を印刷したところ、荷重17gの位置から傷にインキが着肉しており、良好な耐傷性を有することが確認できた。
【0174】
また、厚さ150μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製”ルミラー(登録商標)”)上に断熱層溶液1を塗布し、200℃、1分間乾燥し、膜厚8g/m2の断熱層を設けた。得られたフィルムについて、分光光度計U−3210(日立製作所(株)製)を用い、波長400〜650nmの光の透過率を測定した結果、光透過率は全ての波長において1%以下であった。
【0175】
断熱層溶液1を“テフロン(登録商標)”シャーレに均一に展開し、溶媒を揮散させた後、キュア温度200℃、キュア時間1時間で加熱硬化させ、約100μmの厚みのシートを得た。このシートから5mm×40mmの短冊状サンプルを切り取り、テンシロンRTM−100(オリエンテック(株)製)で、引張速度20cm/分で測定したところ、初期弾性率157MPa、破断伸度395%であった。
【0176】
(実施例2〜4)
表1に示したとおりに断熱層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0177】
実施例1と同様に、画像露光及び現像を行い、直描型水なし平版印刷版を得た。
【0178】
得られた印刷板について、表2の結果となった。印刷版をルーペで観察したところ、1〜99%の網点を再現しており、良好な画像再現性を有していた。また、アルミ延伸目に対して、直角方向および平行方向から測定した網点面積率の差が1.0%以下であり、良好な網点読み取り性を有していた。
【0179】
この印刷版を用いて、印刷を行った結果、2万枚以上の耐刷性があることが確認できた。
【0180】
印刷版のレーザー非照射部(非画線部)に対して、耐傷性試験を行った結果、印刷物上で荷重5gを超える位置から傷にインキが着肉しはじめ、耐傷性は良好であった。
【0181】
また、厚さ150μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製”ルミラー(登録商標)”)上に塗布した、表1の膜厚の断熱層の波長400〜650nmの光の透過率を測定した結果、光透過率は全ての波長において15%以下であった。
【0182】
断熱層溶液から作製したシートの初期弾性率及び破断伸度は表1のとおりであった。
【0183】
(実施例5)
感熱層溶液2を使用したこと以外は実施例1と同様にして、直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0184】
実施例1と同様に、画像露光及び現像を行い、直描型水なし平版印刷版を得た。
【0185】
得られた印刷板をルーペで観察したところ、1〜99%の網点を再現しており、良好な画像再現性を有していた。また、アルミ延伸目に対して、直角方向および平行方向から測定した網点面積率の差が0.5%以下であり、良好な網点読み取り性を有していた。
【0186】
この印刷版を用いて、印刷を行った結果、2万枚以上の耐刷性があることが確認できた。
【0187】
印刷版のレーザー非照射部(非画線部)に対して、耐傷性試験を行った結果、印刷物上で荷重18gの位置から傷にインキが着肉しはじめ、耐傷性は良好であった。
【0188】
また、厚さ150μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製”ルミラー(登録商標)”)上に塗布した、表1の膜厚の断熱層の波長400〜650nmの光の透過率を測定した結果、光透過率は全ての波長において1%以下であった。
【0189】
(比較例1)
断熱層溶液5を使用したこと以外は実施例1と同様にして、直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0190】
実施例1と同様に、画像露光及び現像を行い、直描型水なし平版印刷版を得た。
【0191】
得られた印刷板をルーペで観察したところ、1〜99%の網点を再現しており、良好な画像再現性を有していた。また、アルミ延伸目に対して、直角方向および平行方向から測定した網点面積率の差が1.0%以下であり、良好な網点読み取り性を有していた。
【0192】
しかし、この印刷版を用いて、印刷を行った結果、耐刷性は1万枚以下であった。
【0193】
印刷版のレーザー非照射部(非画線部)に対して、耐傷性試験を行った結果、印刷物上で荷重3gの位置から傷にインキが着肉しはじめ、耐傷性は不十分であった。
【0194】
また、厚さ150μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製”ルミラー(登録商標)”)上に塗布した、表1の膜厚の断熱層の波長400〜650nmの光の透過率を測定した結果、光透過率は全ての波長において0.5%以下であった。
【0195】
断熱層溶液から作製したシートの初期弾性率は820MPa、破断伸度は5%であった。
【0196】
(比較例2)
断熱層溶液6を塗布し、膜厚16g/m2の断熱層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0197】
実施例1と同様に、画像露光及び現像を行い、直描型水なし平版印刷版を得た。
【0198】
得られた印刷板をルーペで観察したところ、1〜99%の網点を再現しており、良好な画像再現性を有していた。
【0199】
しかし、アルミ延伸目に対して、直角方向および平行方向から測定した網点面積率の差が2.0%以上であり、網点読み取り性は不十分であった。
【0200】
この印刷版を用いて、印刷を行った結果、2万枚以上の耐刷性があることが確認できた。
【0201】
印刷版のレーザー非照射部(非画線部)に対して、耐傷性試験を行った結果、印刷物上で荷重25gの位置から傷にインキが着肉しはじめ、耐傷性は良好であった。
【0202】
また、厚さ150μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製”ルミラー(登録商標)”)上に塗布した、表1の膜厚の断熱層の波長400〜650nmの光の透過率を測定した結果、光透過率は最大20%であった。
【0203】
断熱層溶液から作製したシートの初期弾性率は88MPa、破断伸度は160%であった。
【0204】
【表1】
【0205】
【表2】
【0206】
【発明の効果】
本発明によれば、耐傷性、耐刷性、画像再現性に優れ、反射濃度計などで印刷版の網点面積率を測定することが可能な直描型水なし平版印刷版原版が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザー光で直接製版できる直描型水なし平版印刷版原版に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
製版用フィルムを使用しないで、原稿から直接オフセット印刷版を作製する、いわゆる直描型製版は、熟練度を必要としない簡易性、短時間で印刷版が得られる迅速性、多様なシステムから品質とコストに応じて選択可能である合理性などの特徴を生かして、軽印刷業界のみでなく、一般オフセット印刷、フレキソ印刷の分野にも進出し始めている。
【0003】
特に最近では、プリプレスシステムやイメージセッター、レーザープリンターなどの出力システムの急激な進歩によって新しいタイプの各種直描型平版印刷版が開発されている。
【0004】
これらの直描型平版印刷版を製版方法から分類すると、レーザー光を照射する方法、サーマルヘッドで書き込む方法、ピン電極で電圧を部分的に印加する方法、インクジェットでシリコーンゴム層またはインキ着肉層を形成する方法などが挙げられる。なかでも、レーザー光を用いる方法は解像度、および製版速度の面で他の方式よりも優れており、その種類も多い。
【0005】
このレーザー光を用いる印刷版はさらに、光反応によるフォトンモードと、光熱変換を行って熱反応を起こさせるヒートモードの2つのタイプに分けられる。特にヒートモードの方式は、明室で取り扱えるといった利点がある。また光源となる半導体レーザーの急激な進歩によって、最近その有用性が見直されてきている。
【0006】
ヒートモード方式の直描型水なし平版印刷版としては、これまで以下のような提案がなされている。
【0007】
例えば、レーザー光を光源として用いる、熱破壊方式の直描型水なし平版印刷版(例えば、特許文献1、2参照)が開示されている。
【0008】
この印刷版原版の感熱層は、レーザー光吸収化合物として主としてカーボンブラックを用い、熱分解化合物としてニトロセルロースを使用している。そしてこのカーボンブラックがレーザー光を吸収することによって熱エネルギーに変換され、その熱で感熱層が破壊される。そして最終的に、現像によってこの部分を除去することによって、表面のシリコーンゴム層が同時に剥離され、画線部となる。
【0009】
しかしながらこの熱破壊方式の印刷版は、感熱層を破壊して画像を形成することから画線部のセルの深さが深くなり、微小網点でのインキ着肉性が悪く、また、インキマイレージが悪いという問題点があった。さらに、感熱層を熱破壊させ易くするために、架橋構造を形成しており、印刷版の耐刷性が悪いという問題もあった。さらに、この印刷版は感度が低く、感熱層を破壊させるために高いレーザー光の強度が必要という問題点もあった。
【0010】
このような欠点を改良する方法として、基板上に、感熱層およびシリコーンゴム層を有し、レーザー光を熱に変換することにより感熱層とシリコーンゴム層との密着性が低下することによって画像が形成できる直描型水なし平版印刷原版が開示されている(例えば、特許文献3、4参照)。基板と感熱層の間に断熱層を設けることも開示されている。
【0011】
近年、印刷版の反射濃度を濃度計で読み取るなどの方法による、機械読み取りによる検版が求められている。しかしながら、上記のような従来の印刷版では、反射濃度計などで印刷版の網点面積率を実用上十分な精度で測定できないという問題があった。
【0012】
また、従来公知の印刷版では印刷版取り扱い時、版面の洗浄時及び印刷時に印刷版に傷が入りやすく、傷にインキが着肉して、非画線部が汚れる問題があった。
【0013】
【特許文献1】
特開平6−55723号公報(第2−4頁)
【特許文献2】
特開平7−164773号公報(第4−5頁)
【特許文献3】
特開2000−330266号公報(第3−8頁)
【特許文献4】
特開平11−268436号公報(第3−15頁)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、レーザーによる描き込みが可能で、耐傷性、耐刷性、画像再現性に優れ、反射濃度計などで印刷版の網点面積率を測定することが可能な直描型水なし平版印刷版原版を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基板上に、少なくとも断熱層、感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有し、該断熱層の波長400〜650nmの光に対する透過率が、全ての波長において15%以下であり、かつ、該断熱層の初期弾性率が5〜500MPaであることを特徴とする直描型水なし平版印刷版原版である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳しく説明する。
【0017】
本発明の直描型水なし平版印刷版原版は、基板上に、少なくとも断熱層、感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有する。本発明の直描型水なし平版印刷版原版は、露光工程および現像工程を経て、露光部のシリコーンゴム層が除去され、所望の画像が形成される。シリコーンゴム層が除去された部分が画線部となり、シリコーンゴム層が残存した部分が非画線部となるネガ型の水なし平版印刷版となる。
【0018】
本発明における基板としては、寸法的に安定な板状物が好ましく用いられる。このような寸法的に安定な板状物としては、従来印刷版の基板として使用されたものが含まれる。かかる基板としては、紙、ステンレス、アルミニウムなどのような金属板、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのようなプラスチックフィルム、アルミニウムなどの金属がラミネートもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフィルムなどが好ましく使用される。これらの基板のうち、アルミニウム板は寸法安定性に優れており、しかも安価であるので特に好ましい。
【0019】
本発明は、特に基板が圧延後、粗面化処理を行わないアルミ基板である場合に有効である。このような基板は、通常、反射濃度計を用いて測定した角度による反射濃度差が0.1以上ある。本発明の直描型水なし平版印刷版原版は、角度による反射濃度差が0.1以上である基板を用いても、印刷版原版の角度による反射濃度差を0.04未満にすることができ、機械読み取りによる検版が可能である。なお、アルミ基板の粗面化処理を行うことによっても、基板の角度による反射濃度差を小さくすることができるが、コストが高くなるので、粗面化処理を行わないことが好ましい。
【0020】
本発明において使用する断熱層は、400〜650nmの光透過率を本発明の範囲とするために、顔料を含むことが好ましい。顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、リトポン等の無機白色顔料や、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、オーカー、チタンイエロー等の無機黄色顔料、有機黄色顔料としては、アセト酢酸アリライド系モノアゾ顔料、アセト酢酸アリライド系ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、ベンズイミダゾロン系モノアゾ顔料等のアゾ顔料やイソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリノン系顔料、金属錯体顔料、アントラピリミジン系顔料、アシルアミノイエロー系顔料、キノフタロン系顔料、フラバントロン系顔料等の多環式顔料を用いることが好ましい。これらの顔料の中で、隠蔽力、着色力の点から酸化チタンが特に好ましい。
【0021】
酸化チタン粒子としては、アナタース型、ルチル型、ブルッカイト型があるが、安定性の面からルチル型、アナタース型が好ましい。さらに、酸化チタン表面をアルミニウム、シリコン、チタニウム、亜鉛、ジルコニウムなどによって処理しているものを使用しても良い。
【0022】
酸化チタン粒子の粒子径は、一次粒子径が0.2〜0.3μmであることが好ましい。一次粒子径が0.2μm以上であれば本発明の目的とする隠蔽性能を得ることができ、0.3μm以下であれば自然沈降しにくく、分散が安定した断熱層組成物液が得られ、光沢のある良好な塗膜を得ることができる。
【0023】
また、本発明においては、酸化チタン粒子表面をチタネート系カップリング剤で処理しても良い。酸化チタン粒子表面をチタネート系カップリング剤で処理することによって、酸化チタン粒子の分散性を向上させ、酸化チタン粒子量を多量に添加することが可能となる。さらには酸化チタン粒子を添加した塗液の分散安定性が良好になる。
【0024】
酸化チタンの添加量は、断熱層中に2体積%以上、30体積%以下が好ましい。2体積%以上であれば良好な隠蔽性能が得られ、30体積%以下であれば、良好な塗工性能を示す。
【0025】
本発明の断熱層には、成膜性を付与する目的から樹脂を含むことが好ましい。例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、尿素樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、カゼイン、ゼラチン等が挙げられる。これらの中では、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、尿素樹脂を単独、あるいは2種以上を混合して用いることが好ましい。
【0026】
断熱層の好ましい特性は、基板あるいは感熱層と良好な接着性を有し、経時において安定であり、さらに現像液あるいは印刷時に使用する溶剤に対する耐性が高いことである。これらの特性を得るために、断熱層に金属キレート化合物を含むことが好ましい。
【0027】
本発明で言う金属キレート化合物としては、例えば、金属に有機配位子が配位した有機錯塩、金属に有機配位子および無機配位子が配位した有機無機錯塩、および金属と有機分子が酸素を介して共有結合している金属アルコキシド類を挙げることができる。
【0028】
有機錯化合物を形成する主な金属としては、Al、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn、Zr、Hfが好ましい。着色性の少ない点でAl、Zrが好ましく、さらに反応性の点でAlがより好ましい。
【0029】
配位子としては、O(酸素原子)、N(窒素原子)、S(硫黄原子)等をドナー原子として有する以下のような配位基を有する化合物が挙げられる。
【0030】
配位基の具体例としては、酸素原子をドナー原子とするものとしては、−OH(アルコール、エノールおよびフェノール)、−COOH(カルボン酸)、>C=O(アルデヒド、ケトン、キノン)、−O−(エーテル)、−COOR(エステル)、−N=O(ニトロソ化合物、N−ニトロソ化合物)、−NO2(ニトロ化合物)、>N−O(N−オキシド)、−SO3H(スルホン酸)、−PO3H2(亜リン酸)等、窒素原子をドナー原子とするものとしては、−NH2(1級アミン、アミド、ヒドラジン)、>NH(2級アミン、ヒドラジン)、>N−(3級アミン)、−N=N−(アゾ化合物、複素環化合物)、=N−OH(オキシム)、−NO2(ニトロ化合物)、−N=O(ニトロソ化合物)、>C=N−(シッフ塩基、複素環化合物)、>C=NH(イミン)等、硫黄原子をドナー原子とするものとしては、−SH(チオール)、−S−(チオエーテル)、>C=S(チオケトン、チオアルデヒド)、=S−(複素環化合物)、−C(=O)−SHあるいは−C(=S)−OHおよび−C(=S)−SH(チオカルボン酸)、−SCN(チオシアナート、イソチオシアナート)等が挙げられる。
【0031】
これらの配位基を2個以上含み、金属との間で1個またはそれ以上の環状構造を形成する配位子、具体的には、β−ジケトン類、ケトエステル類、ジエステル類、ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルや塩類、ケトアルコール類、アミノアルコール類、エノール性活性水素化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
このような配位子の具体的な化合物としては以下のようなものが挙げられる。
(1)β−ジケトン類:2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘプタンジオン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、ベンゾイルアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセトン等。
(2)ケトエステル類:アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸オクチル等。
(3)ジエステル類:マロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステル等。
(4)ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルや塩類:乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸アンモニウム塩、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸、リンゴ酸メチル、リンゴ酸エチル、酒石酸、酒石酸メチル、酒石酸エチル等。
(5)ケトアルコール類:4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノン等。
(6)アミノアルコール類:モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、N−エチル−モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン等。
(7)エノール性活性水素化合物:メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド等。
【0033】
本発明に使用する金属キレート化合物は上記した配位子を持つことができるが、中でも、アルコール類、フェノール類、エノール類、ジエステル類およびケトエステル類から選ばれる配位子が1つ以上配位したアルミキレート化合物が好ましい。これらのアルミキレート化合物は活性水素含有化合物との間で容易に交換反応を起こすため、加熱時にアルミキレート化合物そのものが昇華、または蒸発することが抑えられる。
【0034】
また、ケトエステル類が2つ以上配位したアルミキレート化合物を用いることが特に好ましい。このようなアルミキレート化合物を用いることで、湿気の影響を受けにくくなり、また断熱層組成物溶液の貯蔵安定性が飛躍的に改善される。
【0035】
金属キレート化合物の添加量は、断熱層組成物に対して1〜30重量%であることが好ましく、2〜20%であることがより好ましい。金属キレート化合物が1重量%以上であれば、基板あるいは感熱層と良好な接着性が得られ、溶剤に対する耐性も高い。一方、金属キレート化合物が30重量%以下であれば、金属キレート化合物が未反応のまま残存し、感熱層組成物溶液を塗布する際に感熱層組成物溶液中に抽出され、印刷版の性能に悪影響を与えることがない。
【0036】
本発明の断熱層には、塗工性を改良する目的で、アルキルエーテル類(例えばエチルセルロース、メチルセルロースなど)、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、または、ノニオン系界面活性剤を添加することもできる。
【0037】
さらに、断熱層の柔軟性を向上させる目的で、天然ゴムや合成ゴム、およびポリウレタン等の柔軟性付与剤を添加しても良い。これら柔軟性付与剤の添加量としては、10〜80重量%が好ましく、30〜80重量%がより好ましい。10重量%以上であれば断熱層の柔軟性が向上し、80重量%以下であればエポキシ樹脂と金属キレート化合物の硬化反応の阻害は僅かであり、実質的に無視できる。
【0038】
断熱層を構成する成分は、好ましくは溶剤を用いて溶解される。断熱層組成物液に用いられる溶剤には、樹脂、金属キレート化合物、その他の添加物を良く溶かす性質を有することが好ましい。溶剤は単独で用いることもできるし、二種以上を混合して用いることもできる。また、顔料を添加する場合には、顔料表面を良く濡らし、良好な顔料分散性が得られる溶剤を選択することが好ましい。
【0039】
断熱層組成物溶液の作製方法としては、例えば、容器に酸化チタン分散液を入れ、撹拌を開始し、そこに順次樹脂、金属キレート化合物、その他の添加剤を添加し、高濃度の断熱層組成物溶液を得た後、さらに溶剤で任意の濃度まで希釈することで断熱層組成物溶液を得ることができる。
【0040】
酸化チタン分散液は、例えば、溶剤中に酸化チタンを添加し、ペイントシェイカー、ボールミル等で分散することにより得られる。
【0041】
本発明における断熱層の厚みは1〜30g/m2が好ましく、より好ましくは2〜20g/m2である。1g/m2以上であれば、隠蔽性が得られ、30g/m2以下であれば、経済的にも有利となる。
【0042】
本発明は、断熱層の光透過率が、400〜650nmの全ての波長において15%以下であることを特徴とする。光透過率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0043】
断熱層の光透過率の測定方法は、例えば可視分光光度計を用いて測定できる。基板が透明なものであれば、透過法により、基板が不透明なものであれば、反射法で測定が可能である。このような可視分光光度計としては、日立製作所製U−3210自記分光光度計が挙げられる。
【0044】
本発明は、断熱層の初期弾性率が5〜500MPa、好ましくは5〜300MPaにすることが重要である。初期弾性率が500MPa以下であれば、十分な耐傷性が得られ、耐刷性においても問題が生じにくい。
【0045】
また、破断伸度は10%以上が好ましく、15%以上がより好ましい。破断伸度が10%以上であれば、断熱層が脆いために、印刷時に断熱層が損傷し、耐刷性が低くなる問題が生じにくい。
【0046】
これらの引張特性は、JIS K6301にしたがって測定することができる。
【0047】
具体的には、“テフロン(登録商標)”シャーレに断熱層組成物溶液を均一に展開し、溶媒を揮散させた後、キュア温度200℃、キュア時間1時間で加熱硬化させる。この後、“テフロン(登録商標)”シャーレからシートを剥がすことで、約100μmの厚みのシートを得る。このシートから5mm×40mmの短冊状サンプルを切り取り、テンシロンRTM−100(オリエンテック(株)製)を用いて、引張速度20cm/分で初期弾性率及び破断伸度を測定する。
【0048】
本発明に用いられる感熱層は描き込みに使用されるレーザー光を熱に変換(光熱変換)する機能を有する層である。本発明の感熱層には、少なくとも(a)光熱変換物質、(b)金属含有有機化合物、(c)活性水素基含有化合物を含むことが好ましい。
【0049】
本発明の印刷版原版においては、ネガ型の直描型水なし平版印刷版が得られる。すなわち、レーザー光照射部の感熱層とシリコーンゴム層間の接着力が低下し、その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分のシリコーンゴム層が除去される。その詳細なメカニズムは未解明であるが、おそらく版作製時に(b)金属含有有機化合物と(c)活性水素基含有化合物との反応で架橋構造が形成されていたものが、レーザー照射により(a)光熱変換物質の作用によって生じた熱で一部分解したものと考えられる。その結果、シリコーンゴム層と感熱層の界面の耐溶剤性が低下し、現像処理によりレーザー照射部のシリコーンゴム層が除去されるものと考えられる。現像によって除去されるのは、シリコーンゴム層だけでも、シリコーンゴム層と感熱層を同時に除去しても良いが、感熱層は残存した方がインキマイレージが良好になるため好ましい。
【0050】
(a)光熱変換物質
光熱変換物質としてはレーザー光を吸収するものであれば特に限定されるものではなく、例えばカーボンブラック、アニリンブラック、シアニンブラックなどの黒色顔料、フタロシアニン、ナフタロシアニン系の緑色顔料、カーボングラファイト、鉄粉、ジアミン系金属錯体、ジチオール系金属錯体、フェノールチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、結晶水含有無機化合物、硫酸銅、硫化クロム、珪酸塩化合物や、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化タングステンなどの金属酸化物、これらの金属の水酸化物、硫酸塩、さらにビスマス、鉄、マグネシウム、アルミニウムの金属粉などの添加剤を添加することが好ましい。
【0051】
これらのなかでも、光熱変換率、経済性および取り扱い性の面から、カーボンブラックが好ましい。
【0052】
また上記の物質以外に、赤外線または近赤外線を吸収する染料も、光熱変換物質として好ましく使用される。
【0053】
これら染料としては400nm〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有する全ての染料が使用できるが、好ましい染料としては、エレクトロニクス用、記録用色素であるシアニン系、フタロシアニン系、フタロシアニン金属錯体系、ナフタロシアニン系、ナフタロシアニン金属錯体系、ジチオール金属錯体系、ナフトキノン系、アントラキノン系、インドフェノール系、インドアニリン系、ピリリウム系、チオピリリウム系、スクワリリウム系、クロコニウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フェノチアジン系、フェノキサジン系、フルオラン系、チオフルオラン系、キサンテン系、インドリルフタリド系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、ロイコオーラミン系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系、フルオレノン系、モノアゾ系、ケトンイミン系、ジズアゾ系、ポリメチン系、オキサジン系、ニグロシン系、ビスアゾ系、ビスアゾスチルベン系、ビスアゾオキサジアゾール系、ビスアゾフルオレノン系、ビスアゾヒドロキシペリノン系、アゾクロム錯塩系、トリスアゾトリフェニルアミン系、チオインジゴ系、ペリレン系、ニトロソ系、1:2型金属錯塩系、分子間型CT系、キノリン系、キノフタロン系、フルギド系の酸性染料、塩基性染料、色素、油溶性染料や、トリフェニルメタン系ロイコ色素、カチオン染料、アゾ系分散染料、ベンゾチオピラン系スピロピラン、3,9−ジブロモアントアントロン、インダンスロン、フェノールフタレイン、スルホフタレイン、エチルバイオレット、メチルオレンジ、フルオレセイン、メチルビオロゲン、メチレンブルー、ジムロスベタインなどが挙げられる。
【0054】
これらのなかでも、エレクトロニクス用や記録用の染料で、最大吸収波長が700nm〜900nmの範囲にある、シアニン系染料、アズレニウム系染料、スクアリリウム系染料、クロコニウム系染料、アゾ系分散染料、ビスアゾスチルベン系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、ペリレン系染料、フタロシアニン系染料、ナフタロシアニン金属錯体系染料、ポリメチン系染料、ジチオールニッケル錯体系染料、インドアニリン金属錯体染料、分子間型CT染料、ベンゾチオピラン系スピロピラン、ニグロシン染料などが好ましく使用される。
【0055】
さらにこれらの染料のなかでも、モル吸光度係数の大きなものが好ましく使用される。具体的にはε=1×104以上が好ましく、より好ましくは1×105以上である。εが1×104より小さいと、感度の向上効果が発現しにくいためである。
【0056】
これらの光熱変換物質は単独でも感度の向上効果はあるが、2種以上を併用して用いることによって、さらに感度を向上させることも可能である。
【0057】
また、吸収波長の異なる2種以上の光熱変換物質を併用することにより、2種以上の発信波長の異なるレーザーに対応出来るようにすることも可能である。
【0058】
これら光熱変換物質の含有量は、全感熱層組成物に対して0.1〜70重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜40重量%である。0.1重量%よりも少ない場合にはレーザー光に対する感度の向上効果が見られず、70重量%よりも多い場合には印刷版の耐刷性が低下しやすい。
【0059】
(b)金属含有有機化合物
本発明でいう金属含有有機化合物は、中心金属と有機置換基からなり、中心金属に対して有機置換基が配位結合している錯体化合物、または、中心金属が有機置換基と共有結合している有機金属化合物のことをいう。金属酸化物のような無機化合物はその範疇ではない。これらの金属含有有機化合物は、活性水素基を含有する化合物と置換反応をおこすことが特徴である。
【0060】
中心金属としては周期表の第2周期から第6周期の金属および半導体原子が挙げられ、なかでも第3周期から第5周期の金属および半導体原子が好ましく、第3周期金属のAl、Si、第4周期金属のTi、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、第5周期金属のIn、Snが特に好ましい。
【0061】
以上のような金属を中心にして有機置換基との間で金属含有有機化合物が形成されるが、それらの形態としては例えば以下の様な具体例が挙げられる。
【0062】
(1)金属ジケテネート
ジケトンのエノール水酸基の水素原子が金属原子と置換したもので、中心金属は酸素原子を介して結合している。ジケトンのカルボニルがさらに金属に対して配位結合することができるため、比較的に安定な化合物である。
【0063】
具体的には、有機置換基が、2,4−ペンタジオネート(アセチルアセトネート)、フルオロペンタジオネート、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、ベンゾイルアセトネート、テノイルトリフルオロアセトネートや1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオネートなどである金属ペンタンジオネート(金属アセトネート)類や、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、メタクリルオキシエチルアセトアセテートやアリルアセトアセテートなどである金属アセトアセテート類、サリチルアルデヒド錯塩が挙げられる。
【0064】
(2)金属アルコキサイド
中心金属に対して、酸素原子を介して有機置換基が結合している化合物である。有機置換基が、メトキサイド、エトキサイド、プロポキサイド、ブトキサイド、フェノキサイド、アリルオキサイド、メトキシエトキサイド、アミノエトキサイドなどである金属アルコキサイドが挙げられる。
【0065】
(3)アルキル金属
中心金属に直接有機置換基が結合しているものであり、この場合金属は炭素原子と結合している。有機置換基がジケトンであっても、金属が炭素原子で結合していればこちらに分類される。なかでもアセチルアセトン金属が好ましく用いられる。
【0066】
(4)金属カルボン酸塩類
酢酸金属塩、乳酸金属塩、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、ステアリン酸金属塩などが挙げられる。
【0067】
(5)その他
チタンオキサイドアセトネートのような酸化金属キレート化合物、チタノセンフェノキサイドのような金属錯体や、2種以上の金属原子を1分子中に有するヘテロ金属キレート化合物が挙げられる。
【0068】
以上のような金属含有有機化合物のうち好ましく用いられる金属含有有機化合物の具体例としては、例えば、以下のような化合物が挙げられる。
【0069】
アルミニウムキレート化合物の具体例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、プロピルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、ブチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、ヘプチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、ヘキシルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、オクチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、ノニルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、エチルアセテートアルミニウムジエチレート、エチルアセテートアルミニウムジブチレート、エチルアセテートアルミニウムジヘプチレート、エチルアセテートアルミニウムジノニレート、ジエチルアセテートアルミニウムイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(プロピルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ブチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ヘキシルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ノニルアセトアセテート)、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムジアセチルアセトネートエチルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスプロピルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスブチルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスヘキシルアセトアセテート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスプロピルアセトセトネート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスブチルアセトアセトネート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスヘキシルアセトアセトネート、アルミニウムモノエチルアセトアセテートビスノニルアセトアセトネート、アルミニウムジブトキシドモノアセトアセテート、アルミニウムジプロポキシドモノアセトアセテート、アルミニウムジブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムオキシドアクリレート、アルミニウムオキシドオクテート、アルミニウムオキシドステアレート、トリスアリザリンアルミニウム、アルミニウム−s−ブトキシドビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジ−s−ブトキシドエチルアセトアセテート、アルミニウム−9−オクタデセニルアセトアセテートジイソプロポキシド、アルミニウムフェノキシド、アクリル酸アルミニウム、メタクリル酸アルミニウムなど。
【0070】
チタンキレート化合物の具体例としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリn−ステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、トリス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルジイソステアロイルクミルフェニルチタネート、イソプロピルジステアロイルメタクリルチタネート、イソプロピルジイソステアロイルアクリルチタネート、イソプロピル4−アミノベンゼンスルホニルジ(ドデシルベンゼンスルホニル)チタネート、イソプロピルトリメタクリルチタネート、イソプロピルジ(4−アミノベンゾイル)イソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリアクリルチタネート、イソプロピルトリ(N,N−ジメチルエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリアントラニルチタネート、イソプロピルオクチル,ブチルパイロホスフェートチタネート、イソプロピルジ(ブチル,メチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルジ(ジラウロイルホスファイト)チタネート、ジイソプロピルオキシアセテートチタネート、イソステアロイルメタクリルオキシアセテートチタネート、イソステアロイルアクリルオキシアセテートチタネート、ジ(ジオクチルホスフェート)オキシアセテートチタネート、4−アミノベンゼンスルホニルドデシルベンゼンスルホニルオキシアセテートチタネート、ジメタクリルオキシアセテートチタネート、ジクミルフェノレートオキシアセテートチタネート、4−アミノベンゾイルイソステアロイルオキシアセテートチタネート、ジアクリルオキシアセテートチタネート、ジ(オクチル,ブチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソステアロイルメタクリルエチレンチタネート、ジ(ジオクチルホスフェート)エチレンチタネート、4−アミノベンゼンスルホニルドデシルベンゼンスルホニルエチレンチタネート、ジメタクリルエチレンチタネート、4−アミノベンゾイルイソステアロイルエチレンチタネート、ジアクリルエチレンチタネート、ジアントラニルエチレンチタネート、ジ(ブチル,メチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタンメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリイソプロポキサイド、チタンメチルフェノキサイド、チタンオキシドビス(ペンタンジオネート)など。
【0071】
鉄(III)アセチルアセトネート、ジベンゾイルメタン鉄(II)、トロポロン鉄、トリストロポロノ鉄(III)、ヒノキチオール鉄、トリスヒノキチオロ鉄(III)、アセト酢酸エステル鉄(III)、鉄(III)ベンゾイルアセトネート、鉄(III)トリフルオロペンタンジオネート、サリチルアルデヒド銅(II)、銅(II)アセチルアセトネート、サリチルアルデヒドイミン銅、コウジ酸銅、ビスコウジャト銅(II)、トロポロン銅、ビストロポロノ銅(II)、ビス(5−オキシナフトキノン−1,4)銅、ビス(1−オキシアントラキノン)ニッケル、アセト酢酸エステル銅、サリチルアミン銅、o−オキシアゾベンゼン銅、銅(II)ベンゾイルアセテート、銅(II)エチルアセトアセテート、銅(II)メタクリルオキシエチルアセトアセテート、銅(II)メトキシエトキシエトキサイド、銅(II)2,4−ペンタンジオネート、銅(II)2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、亜鉛N,N−ジメチルアミノエトキサイド、亜鉛2,4−ペンタンジオネート、亜鉛2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートなども本発明に好ましく用いられる。
【0072】
その他、サリチルアルデヒドコバルト、o−オキシアセトフェノンニッケル、ビス(1−オキシキサントン)ニッケル、ピロメコン酸ニッケル、サリチルアルデヒドニッケル、アリルトリエチルゲルマン、アリルトリメチルゲルマン、アンモニウムトリス(オキザレート)ゲルマネート、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]ゲルマニウム(II)、カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキサイド、シクロペンタジエニルトリメチルゲルマン、ジ−n−ブチルジアセトキシゲルマン、ジ−n−ブチルジクロロゲルマン、ジメチルアミノトリメチルゲルマン、ジフェニルゲルマン、ヘキサアリルジゲルマノキサン、ヘキサエチルジゲルマノキサン、ヘキサメチルジゲルマン、ヒドロキシゲルマトラン1水和物、メタクリルオキシメチルトリメチルゲルマン、メタクリルオキシトリエチルゲルマン、テトラアリルゲルマン、テトラ−n−ブチルゲルマン、テトライソプロポキシゲルマン、トリ−n−ブチルゲルマン、トリメチルクロロゲルマン、トリフェニルゲルマン、ビニルトリエチルゲルマン、ビス(2,4−ペンタンジオネート)ジクロロスズ、ジ−n−ブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ、カルシウム2,4−ペンタンジオネート、セリウム(III)2,4−ペンタンジオネート、コバルト(II)2,4−ペンタンジオネート、コバルト(III)2,4−ペンタンジオネート、ユーロピウム2,4−ペンタンジオネート、ユーロピウム(III)テノイルトリフルオロアセトネート、インジウム2、4−ペンタンジオネート、マンガン(II)2,4−ペンタンジオネート、マンガン(III)2,4−ペンタンジオネートなども本発明に用いられる。
【0073】
これらの具体例のうち、特に好ましく用いられる金属含有有機化合物としては、アルミニウム、鉄(III)、チタンのアセチルアセトネート(ペンタンジオネート)、ヘキサンジオネート、ヘプタンジオネート、エチルアセトアセテート、プロピルアセトアセテート、テトラメチルヘプタンジオネート、ベンゾイルアセトネートなどが挙げられる。
【0074】
これら金属含有有機化合物はそれぞれ単独でも使用できるし、2種以上を混合して使用することもでき、その含有量は活性水素基含有化合物100重量部に対して5〜300重量部が好ましく、10〜150重量部がさらに好ましい。含有量が5重量部より少ないと画像形成しにくくなり、300重量部よりも多い場合には感熱層の物性が低下しやすく、印刷版としては例えば耐刷性という問題が生じやすくなるためである。
【0075】
(c)活性水素基含有化合物
本発明の印刷版原版の感熱層は、金属含有有機化合物と架橋構造を形成させるために、活性水素基含有化合物を含むことが好ましい。活性水素基含有化合物としては、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、チオール基含有化合物などが挙げられるが、水酸基含有化合物が好ましい。
【0076】
さらに、水酸基含有化合物としてはフェノール性水酸基含有化合物、アルコール性水酸基含有化合物のいずれも本発明に使用できる。
【0077】
フェノール性水酸基含有化合物としては、例えば以下のような化合物を挙げることができる。
【0078】
ヒドロキノン、カテコール、グアヤコール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、ジヒドロキシアントラキノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、レゾルシンベンズアルデヒド樹脂、ピロガロールアセトン樹脂、ヒドロキシスチレンの重合体および共重合体、ロジン変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、リグニン変性フェノール樹脂、アニリン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、ビスフェノール類などが挙げられる。
【0079】
また、アルコール性水酸基含有化合物としては、例えば以下のような化合物を挙げることができる。
【0080】
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、7−オクテン−1,2−ジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリビニルアルコール、セルロースおよびその誘導体、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの重合体および共重合体など。
【0081】
また、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリビニルブチラール樹脂、および公知の方法によって水酸基を導入したポリマーなども本発明に使用可能である。
【0082】
これら水酸基含有化合物としては、金属含有有機化合物との反応性という観点から特にフェノール性水酸基含有化合物が好ましく用いられる。特に、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、レゾルシンベンズアルデヒド樹脂、ピロガロールアセトン樹脂、ヒドロキシスチレンの重合体および共重合体、ロジン変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、リグニン変性フェノール樹脂、アニリン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂などのフェノール性水酸基含有樹脂がより好ましい。
【0083】
これら活性水素基含有化合物はそれぞれ単独でも使用できるし、2種以上を混合して使用することもでき、その含有量は、全感熱層組成物に対して5〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜60重量%である。含有量が5重量%よりも少ないと印刷版の感度が低下し、逆に80重量%よりも多いと印刷版の溶剤耐性が低下しやすい。
【0084】
(d)バインダーポリマー
本発明の印刷版原版の感熱層は、耐刷性の観点からバインダーポリマーを含有することが好ましい。バインダーポリマーとしては、有機溶剤に可溶でかつフィルム形成能のあるものであれば特に限定されないが、ガラス転移温度(Tg)が20℃以下のものが好ましく、さらに好ましくはガラス転移温度が0℃以下のものである。
【0085】
有機溶剤に可溶でかつフィルム形成能があり、さらに形態保持の機能をも果たすバインダーポリマーの具体例としては、ビニルポリマー類、未加硫ゴム、ポリオキシド類(ポリエーテル類)、ポリエステル類、ポリウレタン類、ポリアミド類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0086】
これらのバインダーポリマーの含有量は、全感熱層組成物に対して5〜70重量%が好ましく、より好ましくは10〜50重量%である。含有量が5%よりも少ないと耐刷性が低下しやすく、70重量%よりも多いと感度が低下しやすい。
【0087】
バインダーポリマーは単独で用いてもよいし、また数種のポリマーを混合して使用してもよい。
【0088】
(e)その他の成分
さらに、本発明において、感熱層には、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、可塑剤等を必要に応じて添加してもよい。また、断熱層あるいはシリコーンゴム層との接着性を高めるためにシランカップリング剤などの各種カップリング剤を添加することは極めて好ましく行われる。
【0089】
このようにして得られる感熱層の物性に関しては、得られる印刷版の印刷特性の観点から、その物性が特定の範囲にあることが好ましい。この様な物性としては引張特性、その中でも引張時の初期弾性率を代表として挙げることが出来る。具体的には、印刷版における感熱層の引張時の初期弾性率が50MPa〜800MPaの範囲、さらには100MPa〜600MPaの範囲にあることが好ましい。
【0090】
感熱層の初期弾性率を以上のような範囲に設定することにより、印刷版としての特性、特に耐刷性を向上させることが出来る。逆に、初期弾性率が50MPa未満である場合には画線部を形成する感熱層がベタ着き易くなるため印刷時にヒッキーが発生し易くなる。また、初期弾性率が800MPa以上である場合には、印刷時に加わる繰り返し応力により感熱層とシリコーンゴム層との接着界面で破壊が起こりやすくなり、耐刷性低下の原因となるためである。
【0091】
感熱層の厚さは、被覆層にして0.1〜10g/m2であると、印刷版の耐刷性や、希釈溶剤を揮散し易く生産性に優れる点で好ましく、より好ましくは0.5〜7g/m2である。
【0092】
本発明に使用するシリコーンゴム層としては、付加反応型のもの、縮合反応型のものいずれでも用いられる。
【0093】
付加反応型のシリコーンゴム層を構成する成分としては、好ましくは、ビニル基含有ポリジメチルシロキサン、SiH基含有ポリシロキサン、さらには硬化速度を制御する目的で反応抑制剤、および硬化触媒が挙げられる。
【0094】
ビニル基含有ポリジメチルシロキサンは、下記一般式(I)で表される構造を有し、分子末端および/もしくは主鎖中にビニル基を有するものである。
【0095】
【化1】
【0096】
(式中、nは2以上の整数を示し、R1、R2は炭素数1〜50の置換あるいは非置換のアルキル基、炭素数2〜50の置換あるいは非置換のアルケニル基、炭素数4〜50の置換あるいは非置換のアリール基の群から選ばれる少なくとも1種の基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい)。
【0097】
上記式中のR1、R2は全体の50%以上がメチル基であることが、印刷版のインキ反発性の面で好ましい。また、ビニル基含有ポリジメチルシロキサンの分子量としては数千〜数十万のものが使用できるが、その取扱い性や得られる印刷版のインキ反発性、耐傷性などの観点から重量平均分子量1万〜100万、さらには5万〜60万のものを用いることが好ましい。
【0098】
SiH基含有ポリシロキサンとしては、分子鎖中、または末端にSiH基を有する、例えば下記一般式(II)〜(V)で表されるような化合物を挙げることができる。
【0099】
【化2】
【0100】
(上記一般式(II)〜(V)中、nは2以上の整数、mは1以上の整数を示す)。
【0101】
SiH基含有ポリシロキサン中におけるSiH基の量としては、2個以上、さらには3個以上であることが好ましい。SiH基含有ポリシロキサンの添加量としては、シリコーンゴム層中に0.1〜20重量%であることが好ましく、さらに好ましくは1〜15重量%である。ポリジメチルシロキサンとの量比ということで言えば、SiH基/ポリジメチルシロキサンのビニル基のモル比が1.5〜30であることが好ましく、さらに好ましくは10〜20である。このモル比が1.5未満である場合には、シリコーンゴム層の硬化が不足する場合があり、逆に30よりも大きい場合にはゴムの物性がもろくなり、印刷版の耐傷性などに悪影響を与え易くなるためである。
【0102】
反応抑制剤としては、含窒素化合物、リン系化合物、不飽和アルコールなどが挙げられるが、アセチレン基含有のアルコールなどが好ましく用いられる。反応抑制剤の好ましい添加量としては、シリコーンゴム層中の0.01〜10重量%、さらには0.1〜5重量%である。
【0103】
硬化触媒としては、例えば、VIII族遷移金属化合物であり好ましくは、白金化合物である。具体的には、白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金、白金のアルコール変性錯体、白金のメチルビニルポリシロキサン錯体などを一例として挙げることができる。このような硬化触媒の量は、シリコーンゴム層中に固形分として好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%であることが好ましい。添加する触媒量が0.01重量%未満である場合にはシリコーンゴム層の硬化が不十分となり、さらに感熱層との接着性に問題を生じる場合があるためである。他方、20重量%より多い場合にはシリコーンゴム層溶液のポットライフに悪影響をもたらすためである。シリコーンゴム層組成物中における白金などの金属の量で言えば、好ましくは10〜1000ppm、より好ましくは100〜500ppmであることが好ましい。
【0104】
また、シリコーンゴム層には上記した化合物の他に、水酸基含有オルガノポリシロキサンや加水分解性官能基含有シランもしくはシロキサン、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤、接着性を向上させる目的で公知のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などを含有してもよい。シランカップリング剤としては、アルコキシシラン類、アセトキシシラン類、ケトキシミンシラン類等が好ましく、特にビニル基を有するものや、ケトキシミンシラン類が好ましい。
【0105】
縮合反応型のシリコーンゴム層を構成する成分としては、水酸基含有ポリジメチルシロキサン、架橋剤(脱酢酸型、脱オキシム型、脱アルコール型、脱アミン型、脱アセトン型、脱アミド型、脱アミノキシ型など)、および硬化触媒が挙げられる。ここで、水酸基含有ポリジメチルシロキサンは、下記一般式(I)で表される構造を有する。
【0106】
【化3】
【0107】
(式中、nは2以上の整数を示し、R1、R2は炭素数1〜50の置換あるいは非置換のアルキル基、炭素数2〜50の置換あるいは非置換のアルケニル基、炭素数4〜50の置換あるいは非置換のアリール基の群から選ばれる少なくとも1種の基を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい)。
【0108】
R1、R2については、全体の50%以上がメチル基であることが、印刷版のインキ反発性の面で好ましい。水酸基は分子末端および/または主鎖中に位置することができるが、好ましく用いられるものは分子鎖末端に水酸基を有するものである。また、分子量としては数千〜数十万のものが使用できるが、その取扱い性や得られた印刷版のインキ反発性、耐傷性などの観点から重量平均分子量1万〜20万、さらには3万〜15万のものを用いることが好ましい。
【0109】
架橋剤としては、下記一般式(VI)で表される、アセトキシシラン類、アルコキシシラン類、ケトキシミンシラン類、アリロキシシラン類などを挙げることができる。
【0110】
(R3)4−nSiXn (VI)
(式中、nは2〜4の整数を示し、R3は炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシミン基、アミノオキシ基、アミド基、アルケニルオキシ基から選ばれる官能基を示す)。
【0111】
上記式において、加水分解性基の数nは3または4であることが好ましい。
【0112】
一般式(VI)で表される具体的な化合物としては、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリスイソプロペノキシシラン、ビニルメチルビス(メチルエチルケトキシミン)シラン、メチルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン、ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン、テトラ(メチルエチルケトキシミン)シラン、ジイソプロペノキシジメチルシラン、トリイソプロペノキシメチルシラン、テトラアリロキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、インキ反発層の硬化速度、取扱い性などの観点から、アセトキシシラン類、ケトキシミンシラン類が好ましい。
【0113】
一般式(VI)で表される架橋剤の添加量としては、シリコーンゴム層全組成物の1.5〜20重量%であることが好ましく、さらに好ましくは3〜10重量%である。ポリジメチルシロキサンとの量比ということで言えば、官能基X/ポリジメチルシロキサンの水酸基のモル比が1.5〜10.0であることが好ましい。このモル比が1.5未満である場合には、シリコーンゴム層溶液のゲル化が起こり易く、逆に10.0よりも大きい場合にはゴムの物性が脆くなり、印刷版の耐傷性などに悪影響を与え易くなるためである。
【0114】
硬化触媒としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸などの有機カルボン酸、トルエンスルホン酸、ホウ酸等の酸類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ、アミン、およびチタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどの金属アルコキシド、鉄アセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナートジプロポキシドなどの金属ジケテネート、金属の有機酸塩などを挙げることができる。これらの中では、金属の有機酸塩を添加することが好ましく、特に、錫、鉛、亜鉛、鉄、コバルト、カルシウム、マンガンから選ばれる金属の有機酸塩であることが好ましい。このような化合物の具体例の一部としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄などを挙げることができる。このような硬化触媒の量は、シリコーンゴム層中に固形分として好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%であることが好ましい。添加する触媒量が0.01重量%未満である場合にはシリコーンゴム層の硬化が不十分となり、さらに感熱層との接着性に問題を生じる場合があるためである。他方、20重量%より多い場合にはシリコーンゴム層溶液のポットライフに悪影響をもたらすためである。
【0115】
また、シリコーンゴム層には、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤、接着性を向上させる目的で公知のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などを含有してもよい。
【0116】
本発明に使用するシリコーンゴム層の膜厚は重量換算で0.5〜20g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜4g/m2である。膜厚が0.5g/m2よりも小さい場合には印刷版のインキ反発性や耐傷性、耐刷性が低下する傾向があり、20g/m2よりも大きい場合には経済的見地から不利であるばかりでなく、現像性、インキマイレージが悪くなる。
【0117】
本発明における直描型水なし平版印刷版原版の製造方法および製版方法について説明する。
【0118】
基板上に、リバースロールコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、メーヤバーコーターなどの通常のコーターあるいはホエラーのような回転塗布装置を用い、断熱層組成物溶液を塗布し100〜300℃で数分間加熱あるいは活性光線照射により硬化させた後、感熱層組成物溶液を塗布し100〜180℃で数十秒から数分間加熱乾燥させる。この後、シリコーンゴム組成物溶液を塗布し100〜200℃の温度で数分間熱処理してシリコーンゴム層を得る。
【0119】
必要に応じて保護フィルムをラミネートするか、あるいは保護層を形成する。保護フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、また各種金属を蒸着したフィルムなどが挙げられる。
【0120】
次に、直描型水なし平版印刷版原版から、印刷版を製造する製版方法について説明する。製版方法は、通常、少なくとも(1)露光工程、(2)レーザー照射部のシリコーンゴム層と感熱層間の接着力を低下させる「前処理工程」、および(3)レーザー照射部のシリコーンゴム層を剥離させる「現像工程」からなる。また、(4)画線部の感熱層を染色液で染色する「後処理工程」、および(5)処理液や染色液を完全に洗い落とす「水洗工程」を加えてもよい。各工程について、詳述する。
【0121】
(1)露光工程
直描型水なし平版印刷版原版を、保護フィルムを剥離してから、あるいは保護フィルム上からレーザー光で所望の画像状に露光する。
【0122】
露光工程で用いられるレーザー光源としては、通常、発光波長領域が300nm〜1500nmの範囲にあるものが用いられるが、これらの中でも近赤外領域付近に発光波長領域が存在する半導体レーザーやYAGレーザーが好ましく用いられる。具体的には、明室での版材の取扱い性などの観点から、780nm、830nm、1064nmの波長のレーザー光が製版に好ましく用いられる。
【0123】
レーザー照射により光熱変換物質の作用によって感熱層表面は高温になり、分解物が生じる。一方、感熱層内部では感熱層表面に比べて低い温度に加熱されるため、分解は起こらず、硬化が進むのである。
【0124】
(2)前処理工程
前処理工程は、所定温度に保持した前処理液中に、一定時間だけ版を浸漬させる工程である。
【0125】
露光工程におけるレーザーの照射エネルギーが大きければ、前処理工程を経ずに、そのまま現像工程に進んでも、レーザー照射部のシリコーンゴム層を剥離させることは可能である。しかし、照射エネルギーが小さい場合には、感熱層の変性が小さいため、現像工程のみでレーザー照射のON/OFFを感知することは難しく、現像不能となりやすい。そこで、レーザー照射のON/OFFの差を増幅し、低エネルギーのレーザー照射部の現像を行うために、前処理液で版を処理する。
【0126】
前処理工程では、30〜60℃の温度の前処理液に版を10〜100秒浸漬させることが好ましい。30℃未満の温度の前処理液に浸漬した場合、もしくは10秒未満の時間浸漬した場合には、感熱層の膨潤あるいは溶解が十分でなく、シリコーンゴム層と感熱層間の接着力を十分に低下させることができない。また、60℃を超えた温度の前処理液に浸漬した場合、もしくは100秒を超える時間浸漬した場合には、非画線部のシリコーンゴム層が剥離するなどの問題が生じる場合がある。
【0127】
前処理液中に版を浸漬させると、前処理液はシリコーンゴム層中に浸透し、やがて感熱層まで到達する。照射部の感熱層はその上部において、熱分解物が生じていたり、あるいは前処理液に対する溶解性が増大していたりするので、感熱層上部は前処理液によって膨潤、あるいは一部溶解して、シリコーンゴム層と感熱層との間の接着力が低下する。この状態で印刷版面を軽く擦ると、レーザー照射部のシリコーンゴム層は剥離し、下層の感熱層は露出してインキ着肉層となる。一方、未照射部の感熱層は前処理液に対して不溶あるいは難溶なため、シリコーンゴム層は、感熱層と強力に接着しており、強く擦っても剥がれない。このようにして、未照射部のシリコーンゴム層は現像されることなく、この部分がインキを反発し、水なし平版印刷版の画像形成がなされる。
【0128】
このような機構によって印刷版の高感度化が行われるため、前処理液の選択は重要である。感熱層の溶解能が高い前処理液を用いると、未照射部のシリコーンゴム層が剥離し、その度合いによっては感熱層までもが現像されてしまう。その結果、前処理液などを汚染することによって、前処理液の寿命を縮める。一方、感熱層の溶解能が低い前処理液を用いると、照射部のシリコーンゴム層さえも現像することができず、印刷版の高感度化は果たされない。
【0129】
このような前処理液としては、水にアルコールやケトン、エステル、カルボン酸、アミンなどの極性溶媒を添加したものや、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などの少なくとも1種類からなる溶媒に極性溶媒を少なくとも1種類添加したもの、あるいは極性溶媒が用いられる。さらに、下記一般式(VII)で示されるグリコール化合物あるいはグリコールエーテル化合物を主成分として用いることが好ましい。
【0130】
【化4】
【0131】
(ここで、R3は水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基を示し、R4およびR5は水素原子あるいは炭素数1〜15のアルキル基を示し、kは1〜12の整数である)。
【0132】
概して、グリコール化合物に比べると、グリコールエーテル化合物の方が感熱層に対する溶解能は高い。よって、両者の中で適当な化合物を選択するか、両者を混合することによって、感熱層の硬化具合の異なる版材に対して、最適な選択的溶解性を有する前処理液を得ることができる。前処理液としての効果は、感熱層の選択的溶解性だけでなく、シリコーンゴム層の膨潤能も加味される。シリコーンゴム層が膨潤すると、シリコーンゴム層を剥がしやすくなるため、たとえ感熱層の溶解性が低い前処理液でも現像しやすくなる。ただし、シリコーンゴム層が膨潤しすぎると現像時に擦り傷が付きやすくなるので、適当な範囲にとどめる必要がある。具体的には、シリコーンゴム層の膨潤率が30%以下のものが好ましく、さらに好ましくは10%以下である。例えば、グリコール化合物では、シリコーンゴム層の膨潤率はほぼ0%であり、単に感熱層の選択的溶解性のみが前処理液としての適性に影響する。一方、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどの繰り返し単位が少なく、R4やR5にある程度長い直鎖の官能基を導入すると、シリコーンゴム層の膨潤能が高くなる。グリコールモノエーテルとグリコールジエーテルとでは、ジエーテルの方が、シリコーンゴムの膨潤能が一般的に高い。このような場合には、感熱層の選択的溶解性とシリコーンゴムの膨潤能の両者を考慮して前処理液の設計を行う。
【0133】
グリコール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール(1,2−ブタンジオール)、2,3−ブタンジオール、k=2〜12のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらのグリコール化合物は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。これらの中で、選択的溶解性の面から、k=2〜4であるジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールが前処理液として特に好ましく用いられる。
【0134】
グリコールエーテル化合物として、上記グリコール化合物のモノアルキルエーテルおよびジアルキルエーテルが挙げられる。R4やR5のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デカニル基、ウンデカニル基、ドデカニル基が挙げられる。好ましく用いられるグリコールエーテル化合物としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等が挙げられる。
【0135】
上記一般式(VII)で表されるグリコール化合物あるいはグリコールエーテル化合物の前処理液中の含有量は、50重量%〜100重量%が好ましく、70重量%〜95重量%がより好ましい。50重量%より少ないと感熱層の選択的溶解性に劣るため、画像の再現性が低下する。
【0136】
また、前処理液には、アミン化合物を共存させることも好ましい。アミン化合物は選択的溶解性には劣るが、感熱層の溶解能が高いため、高感度化の目的で、前処理液中に副成分として加えてもよい。
【0137】
アミン化合物として、エチレングリコールアミン、ジエチレングリコールアミン、トリエチレングリコールアミン、テトラエチレングリコールアミン、プロピレングリコールアミン、ジプロピレングリコールアミン、トリプロピレングリコールアミンのようなグリコールアミン化合物や、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、メチルジエチルアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジプロピルベンジルアミン、o−、またはm−、p−メトキシ、またはメチルベンジルアミン、N,N−ジ(メトキシベンジル)アミン、β−フェニルエチルアミン、γ−フェニルプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、モノメチルアニリン、ジメチルアニリン、トルイジン、α−またはβ−ナフチルアミン、o−、またはm−、またはp−フェニレンジアミン、アミノ安息香酸、2−(2−アミノエチル)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
【0138】
アミン化合物の前処理液中の含有量は、25重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。25重量%より多いと、感熱層に対する溶解力が強くなるため、画線部のシリコーンゴム層のみでなく、非画線部のシリコーンゴム層まで剥離しやすくなるため、画像を再現することが困難になる。
【0139】
また前処理液中には、必要に応じて、水、アルコール類、カルボン酸類、エステル類、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタンなど)、脂肪族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(トリクレンなど)を添加してもよい。また、現像時に版面を擦るときに、傷が入るのを防止するために、前処理液中に硫酸塩、燐酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などの界面活性剤を加えてもよい。
【0140】
(3)現像工程
前処理により、レーザー照射部では、感熱層表面が膨潤あるいは一部溶解しているため、選択的にシリコーンゴム層が剥がれやすくなっている。そこで、水、その他の溶剤を用いて版面を擦ることにより現像を行う。水による現像が排液の点から最も好ましい。また、前処理液は親水性化合物を主成分とする。したがって、印刷版に浸透している処理液を水で洗い落とすことができるため、水による現像が好ましい。温水や水蒸気を版面に噴射することによっても現像を行ってもよい。現像性を上げるために、水に前処理液を加えたものを用いてもよい。現像液の温度は任意でよいが、10℃〜50℃が好ましい。
【0141】
(4)後処理工程
現像により形成された画線部の確認を容易にするために、染色液で染色する後処理工程を設けてもよい。染色液に用いられる染料としては、塩基性染料、酸性染料、直接染料、分散染料、および反応性染料などの中から単独で、あるいは2種以上のものを混合して用いることができる。なかでも、水溶性の塩基性染料および酸性染料が好ましく用いられる。
【0142】
塩基性染料としては、”クリスタルバイオレット”、”エチルバイオレット”、”ビクトリアピュアブルー”、”ビクトリアブルー”、”メチルバイオレット”、”DIABACIS MAGENTA”(三菱化学(株)製)、”AIZEN BASIC CYANINE 6GH”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、”PRIMOCYANINE BX CONC.”(住友化学(株)製)、”ASTRAZON BLUE G”(FARBENFARRIKEN BAYER 製)、”DIACRYL SUPRA BRILLIANT 2B”(三菱化学(株)製)、”AIZEN CATHILON TURQUOISE BLUE LH”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、”AIZEN DIAMOND GREEN GH”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、”AIZEN MALACHITE GREEN”(保土ヶ谷化学工業(株)製)などが用いられる。
【0143】
酸性染料としては、”ACID VIORET 5B”(保土ヶ谷化学工業(株)製)、”KITON BLUE A”(CIBA 製)、”PATENT BLUE AF”(BASF 製)、”RAKUTO BRILLIANT BLUE FCF”(洛東化学工業(株)製)、”BRILLIANT ACID BLUE R”(GEIGY 製)、”KAYANOL CYANINE 6B”(日本化薬(株)製)、”SUPRANOL CYANINE G”(FARBENFARRIKEN BAYER 製)、”ORIENT SOLUBLE BLUE OBB”(オリエント化学工業(株)製)、”ACID BRILLIANT BLUE 5G”(中外化成(株)製)、”ACID BRILLIANT BLUE FFR”(中外化成(株)製)、”ACID GREEN GBH”(高岡化学工業(株)製)、”ACID BRILLIANT MILLING GREEN B”(保土ヶ谷化学工業(株)製)などが用いられる。
【0144】
これら染料の染色液中の含有量は、0.01重量%〜10重量%が好ましく、0.1重量%〜5重量%がより好ましい。
【0145】
染色液の溶媒としては、水、アルコール類、グリコール類、グリコールモノアルキルエーテル類、グリコールジアルキルエーテル類が用いられ。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合して用いられる。グリコール類、グリコールモノアルキルエーテル類、グリコールジアルキルエーテル類は、処理液としての効果を有するので、仮に現像工程でレーザー照射部のインキ反発層が現像できず付着していても、後処理工程で現像させることもできる。
【0146】
その他、染色助剤、有機酸、無機酸、消泡剤、可塑剤、界面活性剤を任意に添加してもよい。
【0147】
染色液の温度は任意でよいが、10℃〜50℃が好ましい。また、現像液中に上記染料を添加しておいて、現像と同時に画像部の染色化を行うこともできる。
【0148】
(5)水洗工程
版面に前処理液や染色液が浸透したままになっていると、経時により非画線部のシリコーンゴム層が剥離しやすくなる場合があるため、処理液や染色液を版面から完全に洗い落とす水洗工程を設けてもよい。水洗水の温度は任意でよいが、10℃〜50℃が好ましい。
【0149】
これまで述べてきた工程による現像方法としては、手による現像でも自動現像装置による現像のどちらでも良い。手による現像では、これらの処理液、現像液および染色液を順次不織布、脱脂綿、布、スポンジなどに含浸させて版面を拭き取ることによって行うことができる。自動現像装置を用いる場合には、前処理部、現像部および後処理部がこの順に設けられているものが好ましい。場合によっては後処理部の後方にさらに水洗部が設けられていてもよい。このような自動現像機としては東レ(株)製の”TWL−1160”、”TWL−650”、あるいは特開平4−2265号、特開平5−2272号、特開平5−6000号などに開示されている現像装置が挙げられる。
【0150】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0151】
<断熱層の初期弾性率及び破断伸度の測定方法>
“テフロン(登録商標)”シャーレに断熱層溶液を均一に展開し、溶媒を揮散させた後、キュア温度200℃、キュア時間1時間で加熱硬化させた。この後、“テフロン(登録商標)”シャーレからシートを剥がすことで、約100μmの厚みのシートを得た。このシートから5mm×40mmの短冊状サンプルを切り取り、テンシロンRTM−100(オリエンテック(株)製)を用いて、引張速度20cm/分で初期弾性率及び破断伸度を測定した。
【0152】
<断熱層の光透過率の測定方法>
断熱層溶液を、厚さ150μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製“ルミラー(登録商標)”)に塗布し、キュア温度200℃、キュア時間1分で所望の膜厚の断熱層を塗設した。得られたフィルムについて、分光光度計U−3210(日立製作所(株)製)を用い、波長400〜650nmの光の透過率を測定した。
【0153】
<画像再現性の測定方法>
直描型水なし平版印刷版原版を露光および現像して、2400dpiで、それぞれ1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99%の網点が設けられた印刷版を作製した。
【0154】
得られた印刷版をルーペで観察し、それぞれの網点の再現性を調べた。1〜99%の網点の全てが再現できていれば、良好な画像再現性を有すると言える。
【0155】
<網点読み取り性の測定方法>
直描型水なし平版印刷版原版を露光および現像して、2400dpiで、それぞれ1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99%の網点が設けられた印刷版を作製した。
【0156】
得られた印刷版を網点面積率測定装置“ccDot4 type3”(センターファックス社製)を用いて、網点面積率を測定した。印刷版の基板のアルミ延伸目に対して直角方向と平行方向から測定し、方向の違いによる測定結果の違いを比較した。この違いが1.0%以下であれば、良好な網点読み取り性を有するといえる。
【0157】
<耐傷性の測定方法>
直描型水なし平版印刷版原版を露光および現像して印刷版を作製した。この印刷版の比露光部(非画線部)に対して、連続加重式引掻強度試験機HEIDON−18(新東科学(株)製)を使用し、直径0.05mmのサファイア針上に無荷重から50gまで連続的に加重しながら印刷版を30cm/分で移動して傷をつけた。この印刷版を印刷し、傷にインキが着肉し、印刷物上で傷が観察された最小の荷重(g)を耐傷性の値とした。耐傷性が5g以上であれば、印刷版取り扱い時、版面の洗浄時及び印刷時に印刷版に傷が入りにくく、傷にインキが着肉して、非画線部が汚れる問題が発生しにくい。
【0158】
<耐刷性の測定方法>
直描型水なし平版印刷版原版を露光および現像して印刷版を作製した。得られた印刷版を、オフセット印刷機(小森スプリント4色機)に取り付け、“ドライオカラー”(大日本インキ化学工業(株)製)墨、紅、藍、黄インキを用いて、上質紙に印刷を行い耐刷テストを行った。非画線部のシリコーンゴム層がピンホール状に剥離するなどして、印刷紙面に汚れが発生した印刷枚数を耐刷性とした。
【0159】
<酸化チタン分散液の作製>
N,N−ジメチルホルムアミド10重量部中に、酸化チタン”CR−50”(石原産業(株)製)10重量部を添加して5分間撹拌した。さらに、ガラスビーズ(No.08)を15重量部添加し、20分間激しく撹拌し、その後ガラスビーズを取り去ることで酸化チタン分散液を得た。
【0160】
<断熱層溶液1の組成>
(a)エポキシ樹脂:“エピコート(登録商標)”1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):18重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):285重量部(ポリウレタン:57重量部)
(c)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):4重量部
(d)ビニル系重合物:“ディスパロン(登録商標)”LC951(楠本化成(株)製):0.1重量部
(e)酸化チタン分散液(濃度50%):42重量部(酸化チタン:21重量部)
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:48重量部
(g)メチルエチルケトン:270重量部。
【0161】
<断熱層溶液2の組成>
(a)エポキシ樹脂:“エピコート(登録商標)”1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):16重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−SZ18D(三洋化成工業(株)製、濃度15%、N,N−ジメチルホルムアミド溶液):480重量部(ポリウレタン:72重量部)
(c)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):4重量部
(d)ビニル系重合物:“ディスパロン(登録商標)”LC951(楠本化成(株)製):0.1重量部
(e)酸化チタン分散液(濃度50%):16重量部(酸化チタン:8重量部)
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:151重量部。
【0162】
<断熱層溶液3の組成>
(a)エポキシ樹脂:“エピコート(登録商標)”1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):28重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):160重量部(ポリウレタン:32重量部)
(c)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):6重量部
(d)ビニル系重合物:“ディスパロン(登録商標)”LC951(楠本化成(株)製):0.1重量部
(e)酸化チタン分散液(濃度50%):68重量部(酸化チタン:34重量部)
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:235重量部
(g)メチルエチルケトン:170重量部。
【0163】
<断熱層溶液4の組成>
(a)エポキシ樹脂:“エピコート(登録商標)”1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):36重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):110重量部(ポリウレタン:22重量部)
(c)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):8重量部
(d)ビニル系重合物:“ディスパロン(登録商標)”LC951(楠本化成(株)製):0.1重量部
(e)酸化チタン分散液(濃度50%):68重量部(酸化チタン:34重量部)
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:275重量部
(g)メチルエチルケトン:170重量部。
【0164】
<断熱層溶液5の組成>
(a)エポキシ樹脂:“エピコート(登録商標)”1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):46重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):50重量部(ポリウレタン:10重量部)
(c)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):10重量部
(d)ビニル系重合物:“ディスパロン(登録商標)”LC951(楠本化成(株)製):0.1重量部
(e)酸化チタン分散液(濃度50%):68重量部(酸化チタン:34重量部)
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:323重量部
(g)メチルエチルケトン:170重量部。
【0165】
<断熱層溶液6の組成>
(a)エポキシ樹脂:“エピコート(登録商標)”1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):41重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):235重量部(ポリウレタン:47重量部)
(c)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート):“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):9重量部
(d)ビニル系重合物:“ディスパロン(登録商標)”LC951(楠本化成(株)製):0.1重量部
(e)酸化チタン分散液(濃度50%):6重量部(酸化チタン:3重量部)
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:206重量部
(g)メチルエチルケトン:170重量部。
【0166】
<感熱層溶液1の組成>
(a)赤外線吸収染料:“PROJET”825LDI((株)Avecia製):10重量部
(b)チタンジ−n−ブトキサイドビス(2,4−ペンタンジオネート):“ナーセム(登録商標)チタン”(日本化学産業(株)製、チタン濃度約8.8%、n−ブタノール溶液):22重量部
(c)フェノールノボラック樹脂:“スミライトレジン(登録商標)”PR54652(住友デュレズ(株)製):60重量部
(d)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):50重量部(ポリウレタン:10重量部)
(e)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:15重量部
(f)テトラヒドロフラン:668重量部
(g)エタノール:40重量部。
【0167】
<感熱層溶液2の組成>
(a)赤外線吸収染料:“YKR−2900”(山本化成(株)製):16重量部
(b)チタンジ−n−ブトキサイドビス(2,4−ペンタンジオネート):“ナーセム(登録商標)チタン”(日本化学産業(株)製、チタン濃度約8.8%、n−ブタノール溶液):38重量部
(c)フェノールノボラック樹脂:“スミライトレジン(登録商標)”PR54652(住友デュレズ(株)製):60重量部
(d)ポリウレタン:“サンプレン(登録商標)”LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、濃度20%、N,N−ジメチルホルムアミド/2−エトキシエタノール溶液):200重量部(ポリウレタン:40重量部)
(e)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:15重量部
(f)テトラヒドロフラン:825重量
(g)N,N−ジメチルホルムアミド:64重量部。
【0168】
<シリコーンゴム層溶液の組成>
(a)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンDMS−V52(重量平均分子量110,000、GELEST Inc.製):100重量部
(b)両末端メチル(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメチルシロキサン)共重合体、SiH基含有ポリシロキサンHMS−151(MeHSiOのモル%:15〜18%、GELEST Inc.製):7重量部
(c)ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン:3重量部
(d)白金触媒:“SRX−212”(東レダウコーニングシリコーン(株)製):5重量部
(e)“アイソパー(登録商標)”E(エッソ化学(株)製):1035重量部。
【0169】
(実施例1)
厚さ0.24mmの脱脂したアルミ基板(三菱アルミ(株)製)上に断熱層溶液1を塗布し、200℃、1分間乾燥し、膜厚8g/m2の断熱層を設けた。この断熱層の上に前記の感熱層溶液1を塗布し、150℃、80秒間乾燥し、膜厚1.5g/m2の感熱層を設けた。この感熱層上に、前記のシリコーンゴム層溶液を塗布し、125℃、80秒間乾燥し、膜厚2.0g/m2のシリコーンゴム層を設け、直描型水なし平版印刷版原版を得た。さらに、シリコーンゴム層表面に6μmのポリプロピレンフィルムをラミネートした。
【0170】
得られた直描型水なし平版印刷版原版を、製版機“GX−3600”(東レ(株)製)に装着し、半導体レーザー(波長830nm)を用いて照射エネルギー150mJ/cm2で画像露光を行った。ポリプロピレンフィルムを剥離した後、自動現像機“TWL−860KII”(東レ(株)製)を使用し、前処理液“NP−1”(東レ(株)製)で30秒間の浸漬処理後、水洗浄下でブラシ現像し、後処理液“NA−1”(東レ(株)製))で染色した。この一連の操作によって、レーザー照射部のシリコーンゴム層が剥離し、その部分の露出した感熱層表面が染色されたネガ型の直描型水なし平版印刷版を得た。
【0171】
得られた印刷板をルーペで観察したところ、1〜99%の網点を再現しており、良好な画像再現性を有していた。また、アルミ延伸目に対して、直角方向および平行方向から測定した網点面積率の差が0.5%以下であり、良好な網点読み取り性を有していた。
【0172】
この印刷版をオフセット印刷機(小森スプリント4色機)に取り付け、“ドライオカラー”(大日本インキ化学工業(株)製)墨、紅、藍、黄インキを用いて、上質紙に印刷を行った。2万枚印刷後も非画線部に汚れがない良好な印刷物が得られた。また、印刷終了後の印刷版を検査した結果、非画線部のシリコーンゴム層がピンホール状に剥離するなどの損傷もなく、2万枚以上の耐刷性があることが確認できた。
【0173】
印刷版のレーザー非照射部(非画線部)に対して、連続加重式引掻強度試験機HEIDON−18(新東科学(株)製)を使用し、直径0.05mmのサファイア針上に無荷重から50gまで連続的に加重しながら印刷版を30cm/分で移動して傷をつけた。この印刷版を印刷したところ、荷重17gの位置から傷にインキが着肉しており、良好な耐傷性を有することが確認できた。
【0174】
また、厚さ150μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製”ルミラー(登録商標)”)上に断熱層溶液1を塗布し、200℃、1分間乾燥し、膜厚8g/m2の断熱層を設けた。得られたフィルムについて、分光光度計U−3210(日立製作所(株)製)を用い、波長400〜650nmの光の透過率を測定した結果、光透過率は全ての波長において1%以下であった。
【0175】
断熱層溶液1を“テフロン(登録商標)”シャーレに均一に展開し、溶媒を揮散させた後、キュア温度200℃、キュア時間1時間で加熱硬化させ、約100μmの厚みのシートを得た。このシートから5mm×40mmの短冊状サンプルを切り取り、テンシロンRTM−100(オリエンテック(株)製)で、引張速度20cm/分で測定したところ、初期弾性率157MPa、破断伸度395%であった。
【0176】
(実施例2〜4)
表1に示したとおりに断熱層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0177】
実施例1と同様に、画像露光及び現像を行い、直描型水なし平版印刷版を得た。
【0178】
得られた印刷板について、表2の結果となった。印刷版をルーペで観察したところ、1〜99%の網点を再現しており、良好な画像再現性を有していた。また、アルミ延伸目に対して、直角方向および平行方向から測定した網点面積率の差が1.0%以下であり、良好な網点読み取り性を有していた。
【0179】
この印刷版を用いて、印刷を行った結果、2万枚以上の耐刷性があることが確認できた。
【0180】
印刷版のレーザー非照射部(非画線部)に対して、耐傷性試験を行った結果、印刷物上で荷重5gを超える位置から傷にインキが着肉しはじめ、耐傷性は良好であった。
【0181】
また、厚さ150μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製”ルミラー(登録商標)”)上に塗布した、表1の膜厚の断熱層の波長400〜650nmの光の透過率を測定した結果、光透過率は全ての波長において15%以下であった。
【0182】
断熱層溶液から作製したシートの初期弾性率及び破断伸度は表1のとおりであった。
【0183】
(実施例5)
感熱層溶液2を使用したこと以外は実施例1と同様にして、直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0184】
実施例1と同様に、画像露光及び現像を行い、直描型水なし平版印刷版を得た。
【0185】
得られた印刷板をルーペで観察したところ、1〜99%の網点を再現しており、良好な画像再現性を有していた。また、アルミ延伸目に対して、直角方向および平行方向から測定した網点面積率の差が0.5%以下であり、良好な網点読み取り性を有していた。
【0186】
この印刷版を用いて、印刷を行った結果、2万枚以上の耐刷性があることが確認できた。
【0187】
印刷版のレーザー非照射部(非画線部)に対して、耐傷性試験を行った結果、印刷物上で荷重18gの位置から傷にインキが着肉しはじめ、耐傷性は良好であった。
【0188】
また、厚さ150μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製”ルミラー(登録商標)”)上に塗布した、表1の膜厚の断熱層の波長400〜650nmの光の透過率を測定した結果、光透過率は全ての波長において1%以下であった。
【0189】
(比較例1)
断熱層溶液5を使用したこと以外は実施例1と同様にして、直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0190】
実施例1と同様に、画像露光及び現像を行い、直描型水なし平版印刷版を得た。
【0191】
得られた印刷板をルーペで観察したところ、1〜99%の網点を再現しており、良好な画像再現性を有していた。また、アルミ延伸目に対して、直角方向および平行方向から測定した網点面積率の差が1.0%以下であり、良好な網点読み取り性を有していた。
【0192】
しかし、この印刷版を用いて、印刷を行った結果、耐刷性は1万枚以下であった。
【0193】
印刷版のレーザー非照射部(非画線部)に対して、耐傷性試験を行った結果、印刷物上で荷重3gの位置から傷にインキが着肉しはじめ、耐傷性は不十分であった。
【0194】
また、厚さ150μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製”ルミラー(登録商標)”)上に塗布した、表1の膜厚の断熱層の波長400〜650nmの光の透過率を測定した結果、光透過率は全ての波長において0.5%以下であった。
【0195】
断熱層溶液から作製したシートの初期弾性率は820MPa、破断伸度は5%であった。
【0196】
(比較例2)
断熱層溶液6を塗布し、膜厚16g/m2の断熱層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0197】
実施例1と同様に、画像露光及び現像を行い、直描型水なし平版印刷版を得た。
【0198】
得られた印刷板をルーペで観察したところ、1〜99%の網点を再現しており、良好な画像再現性を有していた。
【0199】
しかし、アルミ延伸目に対して、直角方向および平行方向から測定した網点面積率の差が2.0%以上であり、網点読み取り性は不十分であった。
【0200】
この印刷版を用いて、印刷を行った結果、2万枚以上の耐刷性があることが確認できた。
【0201】
印刷版のレーザー非照射部(非画線部)に対して、耐傷性試験を行った結果、印刷物上で荷重25gの位置から傷にインキが着肉しはじめ、耐傷性は良好であった。
【0202】
また、厚さ150μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製”ルミラー(登録商標)”)上に塗布した、表1の膜厚の断熱層の波長400〜650nmの光の透過率を測定した結果、光透過率は最大20%であった。
【0203】
断熱層溶液から作製したシートの初期弾性率は88MPa、破断伸度は160%であった。
【0204】
【表1】
【0205】
【表2】
【0206】
【発明の効果】
本発明によれば、耐傷性、耐刷性、画像再現性に優れ、反射濃度計などで印刷版の網点面積率を測定することが可能な直描型水なし平版印刷版原版が得られる。
Claims (3)
- 基板上に、少なくとも断熱層、感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有する直描型水なし平版印刷版原版において、該断熱層の波長400〜650nmの光に対する透過率が全ての波長において15%以下であり、かつ、該断熱層の初期弾性率が5〜500MPaであることを特徴とする直描型水なし平版印刷版原版。
- 断熱層の破断伸度が10%以上であることを特徴とする請求項1に記載の直描型水なし平版印刷版原版。
- 断熱層の膜厚が1〜30g/m2であることを特徴とする請求項1または2に記載の直描型水なし平版印刷版原版。
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