JP2004331768A - エポキシ基含有多分岐化合物、それを含有する硬化性組成物及び該硬化性組成物を用いたプリント配線板 - Google Patents
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Abstract
【課題】加熱により、あるいは紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、その硬化物は基材との密着性や耐熱性、可撓性、機械的特性に優れ、種々の分野において熱硬化性成分及び/又は熱硬化性成分として有利に用いることができるエポキシ基含有多分岐化合物、それを含有する硬化性組成物及び該硬化性組成物を用いたプリント配線板を提供する。
【解決手段】(a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(b)1分子中に2つ以上(但し、上記(a)成分が2つのエポキシ基を有する化合物の場合、3つ以上)のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物との反応により得られ、かつ末端にエポキシ基を有することを特徴とするエポキシ基含有多分岐化合物(A)である。硬化性組成物の基本的な態様は、(A)上記記載のエポキシ基含有多分岐化合物、(B)硬化剤及び/又は硬化触媒を含有している。
【選択図】 なし
【解決手段】(a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(b)1分子中に2つ以上(但し、上記(a)成分が2つのエポキシ基を有する化合物の場合、3つ以上)のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物との反応により得られ、かつ末端にエポキシ基を有することを特徴とするエポキシ基含有多分岐化合物(A)である。硬化性組成物の基本的な態様は、(A)上記記載のエポキシ基含有多分岐化合物、(B)硬化剤及び/又は硬化触媒を含有している。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子材料、特にプリント配線板製造に有用なエポキシ基含有多分岐化合物に関する。さらに本発明は、該エポキシ基含有多分岐化合物を含有し、加熱により、あるいは紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、かつ、基材との密着性、機械的特性、耐熱性、可撓性等に優れた硬化物を与える硬化性組成物及びこれらの硬化性組成物を回路形成されたプリント配線板のソルダーレジスト被膜として用いたプリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂に代表されるエポキシ樹脂は、その優れた密着性や耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性を有することから、従来から広く接着剤や注型剤、積層材、塗料、封止剤などの用途に使用されている。
【0003】
このエポキシ樹脂に関し、最近では、電気産業や半導体産業の発展に伴い、例えば耐熱性、強靱性、耐水性、耐薬品性などの特性向上が要求され、かかる特性を満足すべく種々の新規なエポキシ化合物が提案されている。
【0004】
例えば、耐熱性の優れたエポキシ化合物としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂などの多核エポキシ樹脂が挙げられる。しかし、これらのエポキシ樹脂は、確かに耐熱性には優れているものの、硬化時の収縮が大きく、伸びが少なく、強靱性に欠けるため、熱衝撃によるクラックが発生し易いという欠点があった。
【0005】
これに対し、上記欠点を解消し得る技術として、エポキシ樹脂にゴム成分をブレンドする方法(例えば、特許文献1参照)、二種類のエポキシ樹脂をブレンドする方法(例えば、特許文献2参照)、ビフェニル骨格とビスフェノール骨格との共重合エポキシ樹脂(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0006】
しかし、これらの技術によっても、依然として耐熱性と強靱性とを共に満足し得るエポキシ化合物を提供できないというのが実情であった。
【0007】
また、塗膜の物性は、組成物中のメイン樹脂の一次分子量に依存する。そのためエポキシ樹脂の分子量を大きくし、塗膜の特性向上を図ることが望ましいが、高分子の分子鎖の絡み合いが増大し、溶解性の低下を生じ、塗膜内での相分離が起き易くなるため、十分な塗膜特性が得られないのが実情であった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭63−199218号公報
【0009】
【特許文献2】
特許第2783116号公報
【0010】
【特許文献3】
特許第2789325号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、加熱により、あるいは紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、その硬化物は基材との密着性や耐熱性、可撓性、機械的特性に優れ、種々の分野において熱硬化性成分及び/又は光硬化性成分として有利に用いることができるエポキシ基含有多分岐化合物を提供することにある。
【0012】
さらに本発明の目的は、加熱により、あるいは紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、基材に対する密着性に優れると共に、機械的特性や耐熱性、熱安定性、可撓性、耐薬品性、電気絶縁性等の諸特性に優れた硬化物が得られる硬化性組成物及びその硬化物を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の第一の側面によれば、エポキシ基含有多分岐化合物が提供され、その基本的な第一の態様は、(a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(b)1分子中に2つ以上(但し、上記(a)成分が2つのエポキシ基を有する化合物の場合、3つ以上)のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物との反応により得られ、かつ末端にエポキシ基を有することを特徴とするエポキシ基含有多分岐化合物(A)である。
【0014】
また、本発明のエポキシ基含有多分岐化合物の第二の態様は、前記エポキシ化合物(a)とフェノール化合物(b)との反応割合が、前記エポキシ化合物(a)のエポキシ基1当量に対して、フェノール化合物(b)のフェノール性水酸基が0.1当量以上1.0当量未満であることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の第二の側面によれば、前記エポキシ基含有多分岐化合物を含有する硬化性組成物が提供され、その基本的な第一の態様は、(A)上記記載のエポキシ基含有多分岐化合物、及び(B)硬化剤及び/又は硬化触媒を含むことを特徴とする硬化性組成物である。
【0016】
また、本発明の硬化性組成物の第二の態様は、上記記載の硬化性組成物において、硬化剤及び/又は硬化触媒(B)が、(B−1)1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物又はその酸無水物、(B−2)1分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物、(B−3)イミダゾール誘導体、(B−4)カチオン重合触媒、及び(B−5)1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物のいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴としている。
【0017】
本発明の硬化性組成物は、液状のまま用いてもよいし、ドライフィルムの形態として用いてもよい。
【0018】
さらに本発明の第三の側面によれば、所定の回路パターンの導体層を有する回路基板上に永久保護膜としてのソルダーレジスト被膜が形成されたプリント配線板において、前記ソルダーレジスト被膜が、前記硬化性組成物を加熱及び/又は活性エネルギー線照射により硬化させて得られる硬化塗膜からなることを特徴とするプリント配線板が提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、(a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(以下、多官能エポキシ化合物という)と、(b)1分子中に2つ以上(但し、上記(a)成分が2つのエポキシ基を有する二官能エポキシ化合物の場合、3つ以上)のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物(以下、ポリフェノール類という)との反応により得られるエポキシ基含有多分岐化合物(A)は、以下に示す特性を有することを見出した。すなわち、エポキシ基含有多分枝化合物(A)は、エポキシ基の開環反応によって生成する二級水酸基と、末端にエポキシ基を併せ持つ特定の構造を有し、しかも1分子当たりのエポキシ基の含有量が多いため、加熱及び/又は短時間の活性エネルギー線の照射により速やかに硬化することが可能である。また、上記側鎖の二級水酸基が存在するため水酸基と反応し得る硬化剤(例えば、イソシアネート類)の添加により加熱硬化も可能であること、かつ、二級水酸基の水素結合性によって、得られる硬化物は各種基材に対して優れた密着性を示すこと、さらに、エーテル結合を有する多分岐構造のため、これを硬化性成分として含有する組成物は、硬化収縮が少なく、強度、伸び、靭性等の機械的特性や耐熱性、電気絶縁性に優れた硬化物を与える。また、多分岐構造のため、同じ分子量の線状ポリマーと比較すると、分子同士の絡み合いがなくなるため、種々の溶媒に対する高い溶解性を示し、また溶液粘度を低下できるという特徴を有する。その結果、溶剤量を低減することが可能となり、さらに従来よりも分子量の大きいエポキシ樹脂の使用が可能となる。さらに合成時のモノマー選択に自由度があるため、これまで扱い難かった結晶性が高いモノマーでも予め骨格内に取りこむことによって溶解性が向上し、成膜性も良好になる。
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
まず、本発明のエポキシ基含有多分岐化合物(A)は、反応促進剤の存在下、多官能エポキシ化合物(a)と、ポリフェノール類(b)との重付加反応により製造することができる。但し、多官能エポキシ化合物(a)とポリフェノール類(b)のいずれか一方が二官能化合物(すなわち、1分子中に二つのエポキシ基又はフェノール性水酸基を有する化合物)である場合、他方は3官能以上の化合物(すなわち、1分子中に3つ以上のエポキシ基又はフェノール性水酸基を有する化合物)である。
【0022】
例えば、多官能エポキシ化合物(a)とポリフェノール類(b)のいずれか一方を二官能、他方を三官能の化合物とした場合において、ポリフェノール類として三官能フェノール化合物をXで表わし、多官能エポキシ化合物として二官能エポキシ化合物をYで表わすと、例えば下記一般式(1)で示されるような多分岐構造のポリマーが得られる。
【0023】
【化1】
【0024】
二官能化合物と三官能化合物を逆にした場合、即ち1分子中に3つのエポキシ基を有する三官能エポキシ化合物と1分子中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物との重付加反応の場合も同様な多分岐構造となる。同様に、多官能エポキシ化合物(a)とポリフェノール類(b)の双方共に三官能以上の化合物とした場合にも、さらに分岐の状態は複雑になるが、多分岐構造となる。
【0025】
前記の構造を、化学式を用いてより具体的に説明すると、例えば、多官能エポキシ化合物(a)として後述するような二官能エポキシ化合物を用い、ポリフェノール類(b)として後述するような三官能フェノール化合物を用いた場合、例えば下記一般式(2)で示されるような骨格構造単位を有するエポキシ基含有多分岐化合物(A)が得られる。また、例えば多官能エポキシ化合物(a)として三官能エポキシ化合物を用い、ポリフェノール類(b)として二官能フェノールを用いた場合、例えば下記一般式(3)で示されるような骨格構造単位を有するエポキシ基含有多分岐化合物(A)が得られる。
【0026】
【化2】
【0027】
(式中、R1は多官能エポキシ残基、R2は多官能フェノール残基を表わす。nは1以上の整数であり、その上限は所望の分子量に応じて適宜制御できる。)
また、前記一般式(2)の末端基は、下記一般式(4)となり、前記一般式(3)の末端基は、下記一般式(5)又は(6)で示されるエポキシ基となる。
【0028】
【化3】
【0029】
(式中、R1は前記と同じ意味であり、多官能エポキシ残基を表わす。)
尚、上記一般式(2)、(3)、(4)、(5)、及び(6)の多官能エポキシ化合物は、ポリグリシジルエーテル化合物を例に記載したが、ポリグリシジルエステル化合物、ポリグリシジルアミン化合物を使用することもできる。
【0030】
前記反応は、多官能エポキシ化合物(a)とポリフェノール類(b)とを一括して混合し、反応させる方法と多官能エポキシ化合物(a)の溶液中にポリフェノール類(b)溶液を滴下していく(ポリフェノール類(b)の溶液中に多官能エポキシ化合物(a)溶液を滴下でも良い)方法のどちらも適応できる。この反応は、多官能エポキシ化合物(a)とポリフェノール類(b)の仕込み比によりある程度制御できるが、より反応を制御するためには後者の方法が好ましい。
【0031】
前記反応において、多官能エポキシ化合物(a)とポリフェノール類(b)との割合(反応混合物中の仕込み割合)は、前記多官能エポキシ化合物(a)のエポキシ基1当量に対して、前記フェノール化合物(b)のフェノール性水酸基の反応割合が、0.1当量以上1.0当量未満、より好ましくは0.2当量以上0.8当量以下の範囲である。前記フェノール化合物のフェノール性水酸基の反応割合が0.1当量未満であると、生成する多分岐化合物中へのポリフェノール酸骨格の導入量が少なくなり、所望の分子量の樹脂が得られず、充分な塗膜物性が得られないので好ましくない。一方、上記フェノール化合物のフェノール性水酸基の反応割合が1.0当量以上の場合、ゲル化、又は末端がフェノール性水酸基となり、所望の多分岐化合物が得られなくなり好ましくない。反応時間や反応温度等の反応条件を変えることにより、また、前記した当量比の範囲内においてポリフェノール類(b)の使用量を制御することにより、生成する多分岐化合物の分子量及び分岐状態をある程度制御することが可能となる。
【0032】
本発明に用いられる多官能エポキシ化合物(a)のうち、1分子中に2つのエポキシ基を有する化合物の代表例としては、以下のものが挙げられる。
【0033】
例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールA、ビフェノール、ビキシレノール、ナフタレンジオールなどの二官能フェノール化合物、又はアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などのジカルボン酸にエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるジグリシジルエーテル類、ジグリシジルエステル類などが挙げられる。また、ビニルシクロヘキセンなどの環状オレフィン化合物を過酢酸などで酸化して得られる脂環式エポキシ化合物も挙げられる。市販品としては、ジャパンエポキシレジン社製のエピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004やダウ・ケミカル社製のDER−330、DER−337や東都化成社製のYD−115、YD−128、YD−7011R、YD−7017などのビスフェノールA型エポキシ樹脂;ナガセケムテックス社製のデナコールEX−251、デナコールEX−251AなどのビスフェノールS型エポキシ樹脂;東都化成製のYDF−170などのビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のYDB−360、YDB−400、YDB−405などのテトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂;ナガセケムテックス社製のデナコールEX−201などのレソルシノールジグリシジルエーテル類;ジャパンエポキシレジン社製のYX−4000などのビフェノールジグリシジルエーテル類;大日本インキ化学工業社製のエピクロンHP−4032、HP−4032Dなどのナフタレン型エポキシ樹脂;ナガセケムテックス社製のデナコールEX−721などのフタル酸ジグリシジルエステル類等が挙げられる。又、例えばダイセル化学社製のセロキサイド2021シリーズ、セロキサイド2080シリーズ、セロキサイド3000などの脂環式エポキシ樹脂;丸善石油化学社製のHBPA−DGEやジャパンエポキシレジン社製のYL−6663などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ナガセケムテックス社製のデナコールEX−212、デナコールEX−701などの脂肪族型エポキシ樹脂;その他アミノ基含有エポキシ樹脂;カルド型エポキシ樹脂など公知慣用のエポキシ樹脂を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
1分子中に3つのエポキシ基を有する化合物の代表例としては、以下のものが挙げられる。例えば、ナガセケムテックス社製のデナコールEX−301;ダイセル化学社製のエポリードGT400;日産化学工業社製のTEPICなど1分子中に3つのエポキシ基を有する化合物であれば特に限定は無く、公知慣用のエポキシ樹脂を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに分岐の状態が複雑になるが4官能以上のエポキシ化合物も単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0035】
本発明に用いられるポリフェノール類(b)のうち、1分子中に2つの水酸基を有する化合物の代表例としては、例えば、カテコール、1,1’−ビフェニルー4,4’−ジオール、メチレンビスフェノール、4,4’−エチリデンビスフェノール、2,2’−メチリデンビス(4−メチルフェノール)、4,4’−メチリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−(1−メチル−エチリデン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−(1,3ジメチルブチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、5,5’−(1−メチルエチリデン)ビス(1,1’−ビフェニルー2−オール)、4,4’−オキシビスフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタノン、2,2’−メチレンビスフェノール、3,5,3’、5’−テトラメチルビフェニルー4,4’−ジオール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジブロモフェノール)など公知慣用の2官能フェノールを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
1分子中に3つの水酸基を有する化合物の代表例としては、例えば、ピロガロール、フロログルシノール、4,4’,4”−メチリデントリスフェノール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ビス[(2−ヒドロキシー5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノールなど公知慣用の3官能フェノールを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに分岐の状態が複雑になるが4官能以上のポリフェノール類も単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0037】
前記エポキシ基含有多分岐化合物(A)の合成に使用する反応促進剤としては、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体、又はホスホニウムイリドの中から任意に選択することが可能であり、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
三級アミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン)、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン)、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジンなどが挙げられる。
【0039】
三級アミン塩としては、例えば、サンアプロ(株)製のU−CATシリーズなどが挙げられる。
【0040】
四級オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、スチボニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、スタンノニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。特に好ましいものは、アンモニウム塩及びホスホニウム塩である。アンモニウム塩の具体例としては、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド(TBAC)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、テトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)等のテトラ−n−ブチルアンモニウムハライドや、テトラ−n−ブチルアンモニウムアセテート(TBAAc)などが挙げられる。ホスホニウム塩の具体例としては、テトラ−n−ブチルホスホニウムクロライド(TBPC)、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミド(TBPB)、テトラ−n−ブチルホスホニウムアイオダイド(TBBI)等のテトラ−n−ブチルホスホニウムハライド、テトラフェニルホスホニウムクロライド(TPPC)、テトラフェニルホスホニウムブロミド(TPPB)、テトラフェニルホスホニウムアイオダイド(TPPI)等のテトラフェニルホスホニウムハライドや、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド(ETPPB)、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート(ETPPAc)などが挙げられる。
【0041】
三級ホスフィンとしては、炭素数1〜12のアルキル基及び/又は炭素数6〜8のアリール基を有する、三価の有機リン化合物であればよい。具体例としては、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。
【0042】
さらに、三級アミン又は三級ホスフィンと、カルボン酸あるいは酸性の強いフェノールとの付加反応により形成される四級オニウム塩も反応促進剤として使用可能である。これらは、反応系に添加する前に四級塩を形成するか、もしくはそれぞれを別に添加して反応系中で四級塩形成を行なわせるいずれの方法でもよい。具体的には、トリブチルアミンと酢酸より得られるトリブチルアミン酢酸塩、トリフェニルホスフィンと酢酸より形成されるトリフェニルホスフィン酢酸塩などが挙げられる。
【0043】
また、クラウンエーテル錯体の具体例としては、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジベンゾ18−クラウン−6、21−クラウン−7、24−クラウン−8等のクラウンエーテル類と、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウムなどのアルカリ金属塩との錯体が挙げられる。
【0044】
ホスホニウムイリドとしては、ホスホニウム塩と塩基との反応により得られる化合物であれば公知のものが使用可能であるが、取扱いの容易さから安定性の高いものの方が好ましい。具体的な例としては、(ホルミルメチレン)トリフェニルホスフィン、(アセチルメチレン)トリフェニルホスフィン、(ピバロイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(ベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(p−メトキシベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(p−メチルベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(p−ニトロベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(ナフトイル)トリフェニルホスフィン、(メトキシカルボニル)トリフェニルホスフィン、(ジアセチルメチレン)トリフェニルホスフィン、(アセチルシアノ)トリフェニルホスフィン、(ジシアノメチレン)トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
【0045】
これら反応促進剤の使用量は、多官能エポキシ化合物(a)のエポキシ基1モルに対して約0.1〜25モル%の割合であることが望ましく、さらに好ましくは0.5〜20モル%の割合であり、より好ましくは1〜15モル%の割合である。反応促進剤の使用量がエポキシ基1モルに対して0.1モル%よりも少ない割合の場合、実用的な速度で反応が進行し難く、一方、25モル%を超えて多量に存在しても顕著な反応促進効果は見られないため、経済性の点で好ましくない。
【0046】
前記エポキシ基含有多分岐化合物(A)合成の反応温度としては、基本的には反応速度を遅くして分岐構造を形成していくのに適切な温度とすることが好ましい。それゆえ約50〜200℃の範囲が望ましく、さらに好ましくは70〜130℃である。反応温度が50℃よりも低い場合には、反応が進行し難くなり、反応時間が長くなるため好ましくない。一方、200℃を超えた場合には、反応速度が速く分岐構造を形成する前にゲル化をおこすので好ましくない。反応時間は、原料の反応性、反応温度に応じて適時選択すればよいが、約5〜72時間が好適である。
【0047】
前記反応は無溶剤下でも進行するが、反応時の攪拌効率を改善するために希釈剤の存在下で行なうことも可能である。用いる希釈剤としては反応温度を維持できるものであれば特に限定されないが、好ましくは原料を溶解するものが良い。また、合成時の希釈剤として有機溶媒を用いた場合は、減圧蒸留などの公知の方法にて溶媒を除去してもよい。さらには、製造時に後述する(D)反応性希釈剤の存在下で行なうことも可能である。
【0048】
有機溶剤は、反応に悪影響を与えず、反応温度を維持できるものであれば公知のものが使用できる。具体的には、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの炭化水素類が挙げられる。
【0049】
前記のようにして得られた本発明のエポキシ基含有多分岐化合物(A)に、硬化剤及び/又は硬化触媒(B)として、(B−1)1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物又はその酸無水物、(B−2)1分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物、(B−3)イミダゾール誘導体、(B−4)カチオン重合触媒、及び(B−5)1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物の一種を、または2種以上を混合して用いることにより、熱硬化性及び/又は光硬化性を有する硬化性組成物が得られ、加熱及び/又は紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、あるいはさらに加熱硬化することにより、基材との密着性、機械的特性、耐薬品性等に優れた硬化物を形成することができる。
【0050】
本発明に用いられる1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物又はその酸無水物(B−1)のうち、1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸、アコニット酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの脂肪族又は芳香族ポリカルボン酸類;アクリル酸又はメタクリル酸などの共重合樹脂;メチルセルロースなどのポリオールに多塩基酸無水物を付加した樹脂などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0051】
前記の酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水コハク酸、オクテニル無水フタル酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水マレイン酸、無水テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸などの二塩基又は三塩基酸無水物、あるいはビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの四塩基酸二無水物などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0052】
本発明に用いられる1分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物(B−2)としては前記したフェノール化合物の他に、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ザイロック樹脂、コプナ樹脂、テルペンフェノール変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類など公知慣用のものを、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
本発明に用いられるイミダゾール誘導体(B−3)としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。市販されているものとしては、例えば四国化成(株)製の2MZ、2E4MZ、1B2MZ、2E4MZ−CN、2P4MHZ、2PHZ、2MZ−A、2MZ−OKなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。また、前記1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物又はその酸無水物(B−1)や、1分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物(B−2)による硬化時の硬化促進剤としても、使用できる。
【0054】
前記カチオン重合触媒(B−4)は、前記エポキシ基含有多分岐化合物(A)と混合することにより、光硬化性及び/又は熱硬化性を有する硬化性組成物が得られる。前記カチオン重合触媒(B−4)としては、活性エネルギー線の照射及び/又は加熱により酸を発生する化合物であれば任意に選択して使用することができる。例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、ブロモニウム塩、クロロニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩;トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン(例えば2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン)、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化化合物;スルホン酸の2−ニトロベンジルエステル;イミノスルホナート;1−オキソ−2−ジアゾナフトキノン−4−スルホナート誘導体;N−ヒドロキシイミド=スルホナート;トリ(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン誘導体;ビススルホニルジアゾメタン類;スルホニルカルボニルアルカン類;スルホニルカルボニルジアゾメタン類;ジスルホン化合物;鉄アレン錯体等を挙げることができる。市販されているものとしては、例えばユニオン・カーバイト社製のCYRACURE(登録商標)UVI−6950,UVI−6970、旭電化社製のオプトマーSP−150,SP−151,SP−152,SP−170,SP−171、日本曹達社製のCI−2855、デグサ社製のDegacere KI 85 Bなどのトリアリールスルホニウム塩やチバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガキュア261などのフェロセニウム塩などが挙げられる。これらのカチオン重合触媒(B−4)は、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0055】
前記1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物(B−5)は、前記エポキシ基含有多分岐化合物(A)と共に、(C)光ラジカル開始剤を混合することにより、光硬化性・熱硬化性を有する硬化性組成物が得られる。この光硬化性・熱硬化性を有する硬化性組成物は、その塗膜を露光・現像することで画像形成が可能であり、さらに現像後加熱することで、硬化収縮を生じることなく、基材との密着性、機械的特性、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性、耐クラック性等の諸特性に優れた硬化被膜を形成することができる。
【0056】
さらに前記のような光硬化性、もしくは光硬化性・熱硬化性を有する硬化性組成物に、(D)反応性希釈剤として後述するような反応性モノマーを添加することにより、光硬化性を向上させることができる。
【0057】
前記1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物(B−5)としては、
(1)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物に、不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に、さらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させたもの、
(2)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能のエポキシ化合物に、不飽和モノカルボン酸と、1分子中にエポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物、より好ましくは1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基とエポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物を反応させた後、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させたもの、
(3)不飽和カルボン酸とエチレン性二重結合を有する化合物との共重合体のカルボキシル基の一部に、1分子中に1個のエポキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物を反応させたもの、
(4)不飽和カルボン酸とエチレン性二重結合を有する化合物との共重合体に、1分子中に1個のエポキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物を反応させ、生成した水酸基に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させたもの、及び
(5)無水マレイン酸等の不飽和二塩基酸無水物とエチレン性二重結合を有する化合物との共重合体に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させたものなどを挙げることができる。このような化合物(B−5)の酸価は、その種類によって好適な範囲は異なるが、通常は50〜150mgKOH/gの範囲にあることが必要であり、好ましい範囲は60〜120mgKOH/gである。酸価が50mgKOH/gより小さい場合にはアルカリ水溶液への溶解性が悪くなり、逆に150mgKOH/gより大きすぎると、硬化膜の耐アルカリ性、電気特性等のレジストとしての特性を下げる要因となるので、いずれも好ましくない。
【0058】
上記1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物(B−5)と共に使用される光ラジカル開始剤(C)としては、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する公知の化合物が使用可能であり、その具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチルチオ−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアミノアセトフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド等のアルキルホスフィン類;9−フェニルアクリジン等のアクリジン類などが挙げられる。
【0059】
これらの光ラジカル重合開始剤(C)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの光ラジカル重合開始剤(C)の配合量は、前記1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物(B−5)100質量部当り0.1〜30質量部の割合が好ましい。光ラジカル重合開始剤(C)の配合量が上記範囲よりも少ない場合、活性エネルギー線の照射を行なっても硬化しないか、もしくは照射時間を増やす必要があり、適切な塗膜物性が得られ難くなる。一方、上記範囲よりも多量に光ラジカル重合開始剤(C)を添加しても、硬化性に変化は無く、経済的に好ましくない。
【0060】
前記光硬化性、もしくは光硬化性・熱硬化性を有する硬化性組成物には、組成物の粘度調整等を目的として必要に応じて、前記有機溶剤もしくは(D)反応性希釈剤を加えることができる。
【0061】
反応性希釈剤(D)としては、硬化反応に関与することができる重合性基を有する化合物を好適に用いることができ、単官能(メタ)アクリレート類及び/又は多官能(メタ)アクリレート類などの公知の反応性希釈剤が使用可能である。具体的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及び二塩基酸無水物と1分子中に少なくとも1個以上の不飽和基を有するアルコールとの反応物などを挙げることができる。 反応性希釈剤(D)は、単独で又は2種以上の混合物で用いられ、その使用量は、硬化物の特性に悪影響を及ぼさない範囲、好ましくは前記1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物(B−5)と、前記エポキシ基含有多分岐化合物(A)の合計量100質量部に対して、70質量部以下であり、より好ましくは5〜40質量部である。
【0062】
さらに、熱硬化反応を促進するために、三級アミン類、四級オニウム塩類、三級ホスフィン類、クラウンエーテル錯体などや、ジシアンジアミドなどの公知の硬化促進剤を少量併用することができる。硬化促進剤は、これらの中から任意に選択することが可能であり、これらを単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。その他、ホスホニウムイリドなど、公知の硬化促進剤を使用できる。
【0063】
本発明の硬化性組成物には、さらに必要に応じて硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウムなどの公知慣用の充填剤、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カーボンブラックなどの公知慣用の着色顔料、消泡剤、密着付与剤、レベリング剤などの各種添加剤を加えてもよい。
【0064】
このようにして得られた硬化性組成物は、希釈剤の添加により粘度を調整した後、スクリーン印刷法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、ディップコーティング法、及びスピンコーティング法などの塗布方法により塗布し、例えば約80〜150℃の温度で加熱硬化、又は例えば約60〜100℃の温度で仮乾燥することで組成物中に含まれる有機溶剤を除去し、その後、活性エネルギー線を照射することにより、速やかに硬化する。
【0065】
また、光硬化性成分として1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物(B−5)を含有する硬化性組成物の場合、所定の露光パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により、又は直接描画法により露光し、未露光部をアルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成できる。
【0066】
さらに、上記露光・現像後に約140〜200℃の温度で加熱して熱硬化させることにより、密着性、機械的強度、はんだ耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐電蝕性などの諸特性に優れた硬化被膜が形成できる。またさらには、熱硬化前又は後にポストUV硬化を行なうことにより、諸特性をさらに向上させることができる。
【0067】
上記現像に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウム、アンモニア、有機アミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキシドなどの水溶液が使用できる。現像液中のアルカリの濃度は概ね0.1〜5質量%であればよい。現像方式はディップ現像、パドル現像、スプレー現像などの公知の方法を用いることができる。
【0068】
前記光硬化性組成物もしくは光硬化性・熱硬化を有する硬化性組成物を硬化させるための照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが適当である。また、レーザー光線なども露光用活性光源として利用できる。その他、電子線、α線、β線、γ線、X線中性子線なども利用可能である。
【0069】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明についてより具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断わりのない限り、全て質量基準である。
【0070】
実施例1
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに、大日本インキ化学工業社製のナフタレン型エポキシ樹脂HP−4032D(エポキシ当量=136)13.6部(エポキシ基0.1当量)、フロログルシノール2.3部(フェノール性水酸基0.055当量)、トリフェニルホスフィン2.62部、及びN−メチルピロリドン50mlを仕込み、100℃にて12時間反応を行なった。その後、反応液を室温まで冷却後、大量のエタノールに注ぎ、沈澱した固体を回収した。さらに、この固体をテトラヒドロフランに溶解し、大量のジエチルエーテルに注ぐことで精製を行なった。得られた沈澱をろ別し、減圧乾燥することで、エポキシ基含有多分岐化合物(A−1)を14.1部得た。
【0071】
得られたエポキシ基含有多分岐化合物(A−1)の構造は、1H−NMR及びIRスペクトルにて確認した。図1に得られたエポキシ基含有多分岐化合物(A−1)のIRスペクトルを示す。付加反応が進行したことを示すエーテル結合に起因するνC−O−Cの吸収が1114cm−1、1172cm−1に見られ、さらに末端基であるエポキシ環のνC−O−C由来の吸収が913cm−1に検出されたことから、目的の構造であることが判明した。GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)による測定結果から、重量平均分子量は12,000であった。またエポキシ基含有多分岐化合物(A−1)のエポキシ基当量は797.8g/eq.であった。
【0072】
実施例2
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに、大日本インキ化学工業社製のナフタレン型エポキシ樹脂HP−4032D(エポキシ当量=136)13.6部(エポキシ基0.1当量)、トリフェノールメタン3.2部(フェノール性水酸基0.033当量)、トリフェニルホスフィン2.62部、及びN−メチルピロリドン50mlを仕込み、100℃にて24時間反応を行なった。その後、反応液を室温まで冷却後、大量のエタノールに注ぎ、沈澱した固体を回収した。さらに、この固体をテトラヒドロフランに溶解し、大量のジエチルエーテルに注ぐことで精製を行なった。得られた沈澱をろ別し、減圧乾燥することで、エポキシ基含有多分岐化合物(A−2)を11.1部得た。
【0073】
得られたエポキシ基含有多分岐化合物(A−2)の構造は、1H−NMR及びIRスペクトルにて確認した。図2に得られたエポキシ基含有多分岐化合物のIRスペクトルを示す。付加反応が進行したことを示すエーテル結合に起因するνC−O−Cの吸収が1114cm−1、1172cm−1に見られ、さらに末端基であるエポキシ環のνC−O−C由来の吸収が913cm−1に検出されたことから、目的の構造であることが判明した。GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)による測定結果から、重量平均分子量は3,000であった。またエポキシ基含有多分岐化合物(A−2)のエポキシ基当量は490.1g /eq.であった。
【0074】
応用実施例1、及び比較例1、2、3、4
実施例1で得られたエポキシ基含有多分岐化合物(A−1)と、比較サンプルとして下記エポキシ樹脂をそれぞれ表1に示す配合割合で各成分を配合し、3本ロールミルを用いて混練し、熱硬化性組成物を調製し、硬化塗膜の特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
応用実施例2、3及び比較例5
実施例2で得られたエポキシ基含有多分岐化合物(A−2)と、比較サンプルとして下記ノボラック型エポキシアクリレート系樹脂をそれぞれ表3に示す配合割合で各成分を配合し、3本ロールミルを用いて混練し、活性エネルギー線硬化性組成物を調製し、硬化塗膜の特性を評価した。その結果を表4に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
<化合物(B−5)の合成>
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−695、大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量=220)330部を、ガス導入管、撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート400部を加え、加熱溶解し、ハイドロキノン0.46部と、トリフェニルホスフィン1.38部を加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸108部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80〜90℃まで冷却し、無水テトラヒドロフタル酸163部を加え、8時間反応させた。反応は、電位差滴定による反応液の酸価、全酸価測定を行ない、得られる付加率にて追跡し、反応率95%以上を終点とする。このようにして得られた1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物(B−5)ワニスは、不揮発分58%、固形物の酸価102mgKOH/gであった。
【0080】
【表4】
【0081】
表2に示す結果から明らかなように、本発明の実施例1により製造されたエポキシ含有多分岐化合物(A−1)を用いた応用実施例1の熱硬化性組成物は一般的なエポキシ樹脂を用いた場合である比較例1〜4と比較して、耐熱性、強靭性、可撓性等に優れた硬化物を与えることがわかる。
【0082】
また、表4に示す結果から明らかなように、本発明の実施例2により製造されたエポキシ含有多分岐化合物(A−2)を用いた応用実施例2、3の光硬化性組成物は、一般的な多官能エポキシ樹脂を用いた場合である比較例5と比較して強靭性、可撓性等に優れた硬化物を与えることがわかる。
【0083】
なお、表2、4中の特性評価の方法は以下の通りである。
【0084】
ゲルタイム:
応用実施例1及び比較例1〜4の熱硬化性組成物を、JIS C−2104に準じて、150℃に設定した日新科学社製のゲル化試験器上に、0.4ml載せ、撹拌しながら、ゲル化し糸が引かなくなるまで時間(秒)を測定した。
【0085】
180°折り曲げ性:
応用実施例1及び比較例1〜4の熱硬化性組成物を、バーコーターを用いてアルミ箔に50μmの膜厚で塗布し、150℃,60分間、熱風循環式乾燥炉で加熱硬化し、硬化塗膜を作成した。この塗膜を180°に折り曲げた際のクラックの有無を目視にて観察した。
【0086】
また、応用実施例2、3及び比較例5の各光硬化性組成物を、バーコーターを用いてアルミ箔に50μmの膜厚で塗布し、高圧水銀灯にて120秒間光照射を行ない、硬化塗膜を作成した。この塗膜を180°に折り曲げた際のクラックの有無を目視にて観察した。
【0087】
◯:クラックが認められないもの
×:クラックが認められるもの
引張弾性率、引張強度(引張破壊強さ)、伸び率(引張破壊伸び):
JIS K 7127に準拠して、下記の方法で作製した評価サンプルの引張弾性率、引張強度(引張破壊強さ)、伸び率(引張破壊伸び)を引張−圧縮試験機(株式会社島津製作所製)によって測定した。
【0088】
予め水洗・乾燥を行なったテフロン板に、上記各応用実施例及び比較例の組成物をスクリーン印刷法で塗布し、応用実施例1及び比較例1〜4の熱硬化性組成物は、熱風循環式乾燥炉で150℃,60分間、熱硬化させた。また、応用実施例2,3及び比較例5の光硬化性組成物は、高圧水銀灯で500mJ/cm2、露光し、光硬化させた。これを室温まで冷却した後、テフロン板から硬化塗膜をはがし、評価サンプルを得た。
【0089】
ガラス転位点(Tg):
上記試験と同様にして評価サンプルを作製し、JIS C 6481 5.17.2に従って、DMA法にて動的粘弾性測定装置により測定した。
【0090】
はんだ耐熱性:
前記応用実施例2、3及び比較例5の各光硬化性組成物を、回路形成されたプリント配線板にスクリーン印刷で約20μmの膜厚でパターン印刷し、次いで80℃,30分加熱乾燥させた。その後、応用実施例2は、500mJ/cm2の露光量にて光硬化を行なって評価基板を作製し、また、応用実施例3及び比較例5は、500mJ/cm2の露光量にて露光を行ない、さらに150℃×60分の熱硬化を施して評価基板を作製した。
【0091】
このようにして得られた各評価基板について、ロジン系フラックスを塗布して予め260℃に設定したはんだ槽に30秒間浸漬する操作を3回行ない、目視による塗膜の膨れ・剥がれ・変色について評価した。
【0092】
○:全く変化が認められないもの
△:僅かに変化したもの
×:塗膜の膨れ、剥がれがあったもの
密着性試験:
前記はんだ耐熱性試験を実施した評価基板を用い、JIS D0202の試験方法に従って碁盤目状のクロスカットを入れ、次いで粘着テープによるピーリングテストを行ない、塗膜の剥離状態を目視観察し、評価した。
【0093】
○:全く剥がれのないもの
△:クロスカット部が少し剥がれたもの
×:剥がれたもの
【0094】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のエポキシ基含有多分岐化合物(A)は、エポキシ基の開環付加反応によって生成する水酸基と、末端にエポキシ基を併せ持つ特定の構造を有し、しかも1分子当たりの反応性基の含有量が多いため、短時間の活性エネルギー線の照射により速やかに硬化すると共に、加熱による硬化も可能であり、かつ、水酸基の水素結合性によって、得られた硬化物は各種基材に対して優れた密着性を示し、さらに、エーテル結合を有する多分岐構造のため、硬化収縮が少なく、強度、伸び、靭性等の機械的特性に優れた硬化物を与える。また、多分岐構造のため、種々の溶媒に対する高い溶解性を示し、また溶液粘度を低下できるという特徴を有する。
【0095】
従って、本発明のエポキシ基含有多分岐化合物(A)は、前記したような優れた特性を有するため、種々の分野において光硬化性成分及び/又は熱硬化性成分として有利に用いることができる。
【0096】
さらに前記エポキシ基含有多分岐化合物(A)を硬化剤及び/又は硬化触媒(B)と共に含有する本発明の熱硬化性及び/又は光硬化性を有する硬化性組成物は、紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、及び/又は加熱によって硬化し、基材に対する密着性に優れると共に、強度、靭性等の機械的特性や、耐熱性、熱安定性、可撓性、耐薬品性、電気絶縁性等の諸特性に優れた硬化物が得られるため、接着剤、コーティング剤、プリント配線板の製造時に使用されるソルダーレジスト、エッチングレジスト、ビルドアップ基板用層間絶縁材、メッキレジスト、ドライフィルムなど広範囲に利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で製造されたエポキシ基含有多分岐化合物のIRスペクトルを示すグラフである。
【図2】実施例2で製造されたエポキシ基含有多分岐化合物のIRスペクトルを示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子材料、特にプリント配線板製造に有用なエポキシ基含有多分岐化合物に関する。さらに本発明は、該エポキシ基含有多分岐化合物を含有し、加熱により、あるいは紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、かつ、基材との密着性、機械的特性、耐熱性、可撓性等に優れた硬化物を与える硬化性組成物及びこれらの硬化性組成物を回路形成されたプリント配線板のソルダーレジスト被膜として用いたプリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂に代表されるエポキシ樹脂は、その優れた密着性や耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性を有することから、従来から広く接着剤や注型剤、積層材、塗料、封止剤などの用途に使用されている。
【0003】
このエポキシ樹脂に関し、最近では、電気産業や半導体産業の発展に伴い、例えば耐熱性、強靱性、耐水性、耐薬品性などの特性向上が要求され、かかる特性を満足すべく種々の新規なエポキシ化合物が提案されている。
【0004】
例えば、耐熱性の優れたエポキシ化合物としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂などの多核エポキシ樹脂が挙げられる。しかし、これらのエポキシ樹脂は、確かに耐熱性には優れているものの、硬化時の収縮が大きく、伸びが少なく、強靱性に欠けるため、熱衝撃によるクラックが発生し易いという欠点があった。
【0005】
これに対し、上記欠点を解消し得る技術として、エポキシ樹脂にゴム成分をブレンドする方法(例えば、特許文献1参照)、二種類のエポキシ樹脂をブレンドする方法(例えば、特許文献2参照)、ビフェニル骨格とビスフェノール骨格との共重合エポキシ樹脂(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0006】
しかし、これらの技術によっても、依然として耐熱性と強靱性とを共に満足し得るエポキシ化合物を提供できないというのが実情であった。
【0007】
また、塗膜の物性は、組成物中のメイン樹脂の一次分子量に依存する。そのためエポキシ樹脂の分子量を大きくし、塗膜の特性向上を図ることが望ましいが、高分子の分子鎖の絡み合いが増大し、溶解性の低下を生じ、塗膜内での相分離が起き易くなるため、十分な塗膜特性が得られないのが実情であった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭63−199218号公報
【0009】
【特許文献2】
特許第2783116号公報
【0010】
【特許文献3】
特許第2789325号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、加熱により、あるいは紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、その硬化物は基材との密着性や耐熱性、可撓性、機械的特性に優れ、種々の分野において熱硬化性成分及び/又は光硬化性成分として有利に用いることができるエポキシ基含有多分岐化合物を提供することにある。
【0012】
さらに本発明の目的は、加熱により、あるいは紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、基材に対する密着性に優れると共に、機械的特性や耐熱性、熱安定性、可撓性、耐薬品性、電気絶縁性等の諸特性に優れた硬化物が得られる硬化性組成物及びその硬化物を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の第一の側面によれば、エポキシ基含有多分岐化合物が提供され、その基本的な第一の態様は、(a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(b)1分子中に2つ以上(但し、上記(a)成分が2つのエポキシ基を有する化合物の場合、3つ以上)のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物との反応により得られ、かつ末端にエポキシ基を有することを特徴とするエポキシ基含有多分岐化合物(A)である。
【0014】
また、本発明のエポキシ基含有多分岐化合物の第二の態様は、前記エポキシ化合物(a)とフェノール化合物(b)との反応割合が、前記エポキシ化合物(a)のエポキシ基1当量に対して、フェノール化合物(b)のフェノール性水酸基が0.1当量以上1.0当量未満であることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の第二の側面によれば、前記エポキシ基含有多分岐化合物を含有する硬化性組成物が提供され、その基本的な第一の態様は、(A)上記記載のエポキシ基含有多分岐化合物、及び(B)硬化剤及び/又は硬化触媒を含むことを特徴とする硬化性組成物である。
【0016】
また、本発明の硬化性組成物の第二の態様は、上記記載の硬化性組成物において、硬化剤及び/又は硬化触媒(B)が、(B−1)1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物又はその酸無水物、(B−2)1分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物、(B−3)イミダゾール誘導体、(B−4)カチオン重合触媒、及び(B−5)1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物のいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴としている。
【0017】
本発明の硬化性組成物は、液状のまま用いてもよいし、ドライフィルムの形態として用いてもよい。
【0018】
さらに本発明の第三の側面によれば、所定の回路パターンの導体層を有する回路基板上に永久保護膜としてのソルダーレジスト被膜が形成されたプリント配線板において、前記ソルダーレジスト被膜が、前記硬化性組成物を加熱及び/又は活性エネルギー線照射により硬化させて得られる硬化塗膜からなることを特徴とするプリント配線板が提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、(a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(以下、多官能エポキシ化合物という)と、(b)1分子中に2つ以上(但し、上記(a)成分が2つのエポキシ基を有する二官能エポキシ化合物の場合、3つ以上)のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物(以下、ポリフェノール類という)との反応により得られるエポキシ基含有多分岐化合物(A)は、以下に示す特性を有することを見出した。すなわち、エポキシ基含有多分枝化合物(A)は、エポキシ基の開環反応によって生成する二級水酸基と、末端にエポキシ基を併せ持つ特定の構造を有し、しかも1分子当たりのエポキシ基の含有量が多いため、加熱及び/又は短時間の活性エネルギー線の照射により速やかに硬化することが可能である。また、上記側鎖の二級水酸基が存在するため水酸基と反応し得る硬化剤(例えば、イソシアネート類)の添加により加熱硬化も可能であること、かつ、二級水酸基の水素結合性によって、得られる硬化物は各種基材に対して優れた密着性を示すこと、さらに、エーテル結合を有する多分岐構造のため、これを硬化性成分として含有する組成物は、硬化収縮が少なく、強度、伸び、靭性等の機械的特性や耐熱性、電気絶縁性に優れた硬化物を与える。また、多分岐構造のため、同じ分子量の線状ポリマーと比較すると、分子同士の絡み合いがなくなるため、種々の溶媒に対する高い溶解性を示し、また溶液粘度を低下できるという特徴を有する。その結果、溶剤量を低減することが可能となり、さらに従来よりも分子量の大きいエポキシ樹脂の使用が可能となる。さらに合成時のモノマー選択に自由度があるため、これまで扱い難かった結晶性が高いモノマーでも予め骨格内に取りこむことによって溶解性が向上し、成膜性も良好になる。
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
まず、本発明のエポキシ基含有多分岐化合物(A)は、反応促進剤の存在下、多官能エポキシ化合物(a)と、ポリフェノール類(b)との重付加反応により製造することができる。但し、多官能エポキシ化合物(a)とポリフェノール類(b)のいずれか一方が二官能化合物(すなわち、1分子中に二つのエポキシ基又はフェノール性水酸基を有する化合物)である場合、他方は3官能以上の化合物(すなわち、1分子中に3つ以上のエポキシ基又はフェノール性水酸基を有する化合物)である。
【0022】
例えば、多官能エポキシ化合物(a)とポリフェノール類(b)のいずれか一方を二官能、他方を三官能の化合物とした場合において、ポリフェノール類として三官能フェノール化合物をXで表わし、多官能エポキシ化合物として二官能エポキシ化合物をYで表わすと、例えば下記一般式(1)で示されるような多分岐構造のポリマーが得られる。
【0023】
【化1】
【0024】
二官能化合物と三官能化合物を逆にした場合、即ち1分子中に3つのエポキシ基を有する三官能エポキシ化合物と1分子中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物との重付加反応の場合も同様な多分岐構造となる。同様に、多官能エポキシ化合物(a)とポリフェノール類(b)の双方共に三官能以上の化合物とした場合にも、さらに分岐の状態は複雑になるが、多分岐構造となる。
【0025】
前記の構造を、化学式を用いてより具体的に説明すると、例えば、多官能エポキシ化合物(a)として後述するような二官能エポキシ化合物を用い、ポリフェノール類(b)として後述するような三官能フェノール化合物を用いた場合、例えば下記一般式(2)で示されるような骨格構造単位を有するエポキシ基含有多分岐化合物(A)が得られる。また、例えば多官能エポキシ化合物(a)として三官能エポキシ化合物を用い、ポリフェノール類(b)として二官能フェノールを用いた場合、例えば下記一般式(3)で示されるような骨格構造単位を有するエポキシ基含有多分岐化合物(A)が得られる。
【0026】
【化2】
【0027】
(式中、R1は多官能エポキシ残基、R2は多官能フェノール残基を表わす。nは1以上の整数であり、その上限は所望の分子量に応じて適宜制御できる。)
また、前記一般式(2)の末端基は、下記一般式(4)となり、前記一般式(3)の末端基は、下記一般式(5)又は(6)で示されるエポキシ基となる。
【0028】
【化3】
【0029】
(式中、R1は前記と同じ意味であり、多官能エポキシ残基を表わす。)
尚、上記一般式(2)、(3)、(4)、(5)、及び(6)の多官能エポキシ化合物は、ポリグリシジルエーテル化合物を例に記載したが、ポリグリシジルエステル化合物、ポリグリシジルアミン化合物を使用することもできる。
【0030】
前記反応は、多官能エポキシ化合物(a)とポリフェノール類(b)とを一括して混合し、反応させる方法と多官能エポキシ化合物(a)の溶液中にポリフェノール類(b)溶液を滴下していく(ポリフェノール類(b)の溶液中に多官能エポキシ化合物(a)溶液を滴下でも良い)方法のどちらも適応できる。この反応は、多官能エポキシ化合物(a)とポリフェノール類(b)の仕込み比によりある程度制御できるが、より反応を制御するためには後者の方法が好ましい。
【0031】
前記反応において、多官能エポキシ化合物(a)とポリフェノール類(b)との割合(反応混合物中の仕込み割合)は、前記多官能エポキシ化合物(a)のエポキシ基1当量に対して、前記フェノール化合物(b)のフェノール性水酸基の反応割合が、0.1当量以上1.0当量未満、より好ましくは0.2当量以上0.8当量以下の範囲である。前記フェノール化合物のフェノール性水酸基の反応割合が0.1当量未満であると、生成する多分岐化合物中へのポリフェノール酸骨格の導入量が少なくなり、所望の分子量の樹脂が得られず、充分な塗膜物性が得られないので好ましくない。一方、上記フェノール化合物のフェノール性水酸基の反応割合が1.0当量以上の場合、ゲル化、又は末端がフェノール性水酸基となり、所望の多分岐化合物が得られなくなり好ましくない。反応時間や反応温度等の反応条件を変えることにより、また、前記した当量比の範囲内においてポリフェノール類(b)の使用量を制御することにより、生成する多分岐化合物の分子量及び分岐状態をある程度制御することが可能となる。
【0032】
本発明に用いられる多官能エポキシ化合物(a)のうち、1分子中に2つのエポキシ基を有する化合物の代表例としては、以下のものが挙げられる。
【0033】
例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールA、ビフェノール、ビキシレノール、ナフタレンジオールなどの二官能フェノール化合物、又はアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などのジカルボン酸にエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるジグリシジルエーテル類、ジグリシジルエステル類などが挙げられる。また、ビニルシクロヘキセンなどの環状オレフィン化合物を過酢酸などで酸化して得られる脂環式エポキシ化合物も挙げられる。市販品としては、ジャパンエポキシレジン社製のエピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004やダウ・ケミカル社製のDER−330、DER−337や東都化成社製のYD−115、YD−128、YD−7011R、YD−7017などのビスフェノールA型エポキシ樹脂;ナガセケムテックス社製のデナコールEX−251、デナコールEX−251AなどのビスフェノールS型エポキシ樹脂;東都化成製のYDF−170などのビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のYDB−360、YDB−400、YDB−405などのテトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂;ナガセケムテックス社製のデナコールEX−201などのレソルシノールジグリシジルエーテル類;ジャパンエポキシレジン社製のYX−4000などのビフェノールジグリシジルエーテル類;大日本インキ化学工業社製のエピクロンHP−4032、HP−4032Dなどのナフタレン型エポキシ樹脂;ナガセケムテックス社製のデナコールEX−721などのフタル酸ジグリシジルエステル類等が挙げられる。又、例えばダイセル化学社製のセロキサイド2021シリーズ、セロキサイド2080シリーズ、セロキサイド3000などの脂環式エポキシ樹脂;丸善石油化学社製のHBPA−DGEやジャパンエポキシレジン社製のYL−6663などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ナガセケムテックス社製のデナコールEX−212、デナコールEX−701などの脂肪族型エポキシ樹脂;その他アミノ基含有エポキシ樹脂;カルド型エポキシ樹脂など公知慣用のエポキシ樹脂を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
1分子中に3つのエポキシ基を有する化合物の代表例としては、以下のものが挙げられる。例えば、ナガセケムテックス社製のデナコールEX−301;ダイセル化学社製のエポリードGT400;日産化学工業社製のTEPICなど1分子中に3つのエポキシ基を有する化合物であれば特に限定は無く、公知慣用のエポキシ樹脂を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに分岐の状態が複雑になるが4官能以上のエポキシ化合物も単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0035】
本発明に用いられるポリフェノール類(b)のうち、1分子中に2つの水酸基を有する化合物の代表例としては、例えば、カテコール、1,1’−ビフェニルー4,4’−ジオール、メチレンビスフェノール、4,4’−エチリデンビスフェノール、2,2’−メチリデンビス(4−メチルフェノール)、4,4’−メチリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−(1−メチル−エチリデン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−(1,3ジメチルブチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、5,5’−(1−メチルエチリデン)ビス(1,1’−ビフェニルー2−オール)、4,4’−オキシビスフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタノン、2,2’−メチレンビスフェノール、3,5,3’、5’−テトラメチルビフェニルー4,4’−ジオール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジブロモフェノール)など公知慣用の2官能フェノールを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
1分子中に3つの水酸基を有する化合物の代表例としては、例えば、ピロガロール、フロログルシノール、4,4’,4”−メチリデントリスフェノール、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ビス[(2−ヒドロキシー5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノールなど公知慣用の3官能フェノールを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに分岐の状態が複雑になるが4官能以上のポリフェノール類も単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0037】
前記エポキシ基含有多分岐化合物(A)の合成に使用する反応促進剤としては、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体、又はホスホニウムイリドの中から任意に選択することが可能であり、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
三級アミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン)、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン)、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジンなどが挙げられる。
【0039】
三級アミン塩としては、例えば、サンアプロ(株)製のU−CATシリーズなどが挙げられる。
【0040】
四級オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、スチボニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、スタンノニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。特に好ましいものは、アンモニウム塩及びホスホニウム塩である。アンモニウム塩の具体例としては、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド(TBAC)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、テトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)等のテトラ−n−ブチルアンモニウムハライドや、テトラ−n−ブチルアンモニウムアセテート(TBAAc)などが挙げられる。ホスホニウム塩の具体例としては、テトラ−n−ブチルホスホニウムクロライド(TBPC)、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミド(TBPB)、テトラ−n−ブチルホスホニウムアイオダイド(TBBI)等のテトラ−n−ブチルホスホニウムハライド、テトラフェニルホスホニウムクロライド(TPPC)、テトラフェニルホスホニウムブロミド(TPPB)、テトラフェニルホスホニウムアイオダイド(TPPI)等のテトラフェニルホスホニウムハライドや、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド(ETPPB)、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート(ETPPAc)などが挙げられる。
【0041】
三級ホスフィンとしては、炭素数1〜12のアルキル基及び/又は炭素数6〜8のアリール基を有する、三価の有機リン化合物であればよい。具体例としては、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。
【0042】
さらに、三級アミン又は三級ホスフィンと、カルボン酸あるいは酸性の強いフェノールとの付加反応により形成される四級オニウム塩も反応促進剤として使用可能である。これらは、反応系に添加する前に四級塩を形成するか、もしくはそれぞれを別に添加して反応系中で四級塩形成を行なわせるいずれの方法でもよい。具体的には、トリブチルアミンと酢酸より得られるトリブチルアミン酢酸塩、トリフェニルホスフィンと酢酸より形成されるトリフェニルホスフィン酢酸塩などが挙げられる。
【0043】
また、クラウンエーテル錯体の具体例としては、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジベンゾ18−クラウン−6、21−クラウン−7、24−クラウン−8等のクラウンエーテル類と、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウムなどのアルカリ金属塩との錯体が挙げられる。
【0044】
ホスホニウムイリドとしては、ホスホニウム塩と塩基との反応により得られる化合物であれば公知のものが使用可能であるが、取扱いの容易さから安定性の高いものの方が好ましい。具体的な例としては、(ホルミルメチレン)トリフェニルホスフィン、(アセチルメチレン)トリフェニルホスフィン、(ピバロイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(ベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(p−メトキシベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(p−メチルベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(p−ニトロベンゾイルメチレン)トリフェニルホスフィン、(ナフトイル)トリフェニルホスフィン、(メトキシカルボニル)トリフェニルホスフィン、(ジアセチルメチレン)トリフェニルホスフィン、(アセチルシアノ)トリフェニルホスフィン、(ジシアノメチレン)トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
【0045】
これら反応促進剤の使用量は、多官能エポキシ化合物(a)のエポキシ基1モルに対して約0.1〜25モル%の割合であることが望ましく、さらに好ましくは0.5〜20モル%の割合であり、より好ましくは1〜15モル%の割合である。反応促進剤の使用量がエポキシ基1モルに対して0.1モル%よりも少ない割合の場合、実用的な速度で反応が進行し難く、一方、25モル%を超えて多量に存在しても顕著な反応促進効果は見られないため、経済性の点で好ましくない。
【0046】
前記エポキシ基含有多分岐化合物(A)合成の反応温度としては、基本的には反応速度を遅くして分岐構造を形成していくのに適切な温度とすることが好ましい。それゆえ約50〜200℃の範囲が望ましく、さらに好ましくは70〜130℃である。反応温度が50℃よりも低い場合には、反応が進行し難くなり、反応時間が長くなるため好ましくない。一方、200℃を超えた場合には、反応速度が速く分岐構造を形成する前にゲル化をおこすので好ましくない。反応時間は、原料の反応性、反応温度に応じて適時選択すればよいが、約5〜72時間が好適である。
【0047】
前記反応は無溶剤下でも進行するが、反応時の攪拌効率を改善するために希釈剤の存在下で行なうことも可能である。用いる希釈剤としては反応温度を維持できるものであれば特に限定されないが、好ましくは原料を溶解するものが良い。また、合成時の希釈剤として有機溶媒を用いた場合は、減圧蒸留などの公知の方法にて溶媒を除去してもよい。さらには、製造時に後述する(D)反応性希釈剤の存在下で行なうことも可能である。
【0048】
有機溶剤は、反応に悪影響を与えず、反応温度を維持できるものであれば公知のものが使用できる。具体的には、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの炭化水素類が挙げられる。
【0049】
前記のようにして得られた本発明のエポキシ基含有多分岐化合物(A)に、硬化剤及び/又は硬化触媒(B)として、(B−1)1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物又はその酸無水物、(B−2)1分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物、(B−3)イミダゾール誘導体、(B−4)カチオン重合触媒、及び(B−5)1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物の一種を、または2種以上を混合して用いることにより、熱硬化性及び/又は光硬化性を有する硬化性組成物が得られ、加熱及び/又は紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、あるいはさらに加熱硬化することにより、基材との密着性、機械的特性、耐薬品性等に優れた硬化物を形成することができる。
【0050】
本発明に用いられる1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物又はその酸無水物(B−1)のうち、1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸、アコニット酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの脂肪族又は芳香族ポリカルボン酸類;アクリル酸又はメタクリル酸などの共重合樹脂;メチルセルロースなどのポリオールに多塩基酸無水物を付加した樹脂などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0051】
前記の酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水コハク酸、オクテニル無水フタル酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水マレイン酸、無水テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸などの二塩基又は三塩基酸無水物、あるいはビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの四塩基酸二無水物などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0052】
本発明に用いられる1分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物(B−2)としては前記したフェノール化合物の他に、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ザイロック樹脂、コプナ樹脂、テルペンフェノール変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類など公知慣用のものを、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
本発明に用いられるイミダゾール誘導体(B−3)としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。市販されているものとしては、例えば四国化成(株)製の2MZ、2E4MZ、1B2MZ、2E4MZ−CN、2P4MHZ、2PHZ、2MZ−A、2MZ−OKなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。また、前記1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物又はその酸無水物(B−1)や、1分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物(B−2)による硬化時の硬化促進剤としても、使用できる。
【0054】
前記カチオン重合触媒(B−4)は、前記エポキシ基含有多分岐化合物(A)と混合することにより、光硬化性及び/又は熱硬化性を有する硬化性組成物が得られる。前記カチオン重合触媒(B−4)としては、活性エネルギー線の照射及び/又は加熱により酸を発生する化合物であれば任意に選択して使用することができる。例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、ブロモニウム塩、クロロニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩;トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン(例えば2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン)、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化化合物;スルホン酸の2−ニトロベンジルエステル;イミノスルホナート;1−オキソ−2−ジアゾナフトキノン−4−スルホナート誘導体;N−ヒドロキシイミド=スルホナート;トリ(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン誘導体;ビススルホニルジアゾメタン類;スルホニルカルボニルアルカン類;スルホニルカルボニルジアゾメタン類;ジスルホン化合物;鉄アレン錯体等を挙げることができる。市販されているものとしては、例えばユニオン・カーバイト社製のCYRACURE(登録商標)UVI−6950,UVI−6970、旭電化社製のオプトマーSP−150,SP−151,SP−152,SP−170,SP−171、日本曹達社製のCI−2855、デグサ社製のDegacere KI 85 Bなどのトリアリールスルホニウム塩やチバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガキュア261などのフェロセニウム塩などが挙げられる。これらのカチオン重合触媒(B−4)は、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0055】
前記1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物(B−5)は、前記エポキシ基含有多分岐化合物(A)と共に、(C)光ラジカル開始剤を混合することにより、光硬化性・熱硬化性を有する硬化性組成物が得られる。この光硬化性・熱硬化性を有する硬化性組成物は、その塗膜を露光・現像することで画像形成が可能であり、さらに現像後加熱することで、硬化収縮を生じることなく、基材との密着性、機械的特性、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性、耐クラック性等の諸特性に優れた硬化被膜を形成することができる。
【0056】
さらに前記のような光硬化性、もしくは光硬化性・熱硬化性を有する硬化性組成物に、(D)反応性希釈剤として後述するような反応性モノマーを添加することにより、光硬化性を向上させることができる。
【0057】
前記1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物(B−5)としては、
(1)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物に、不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に、さらに飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させたもの、
(2)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能のエポキシ化合物に、不飽和モノカルボン酸と、1分子中にエポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物、より好ましくは1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基とエポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物を反応させた後、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させたもの、
(3)不飽和カルボン酸とエチレン性二重結合を有する化合物との共重合体のカルボキシル基の一部に、1分子中に1個のエポキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物を反応させたもの、
(4)不飽和カルボン酸とエチレン性二重結合を有する化合物との共重合体に、1分子中に1個のエポキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物を反応させ、生成した水酸基に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させたもの、及び
(5)無水マレイン酸等の不飽和二塩基酸無水物とエチレン性二重結合を有する化合物との共重合体に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させたものなどを挙げることができる。このような化合物(B−5)の酸価は、その種類によって好適な範囲は異なるが、通常は50〜150mgKOH/gの範囲にあることが必要であり、好ましい範囲は60〜120mgKOH/gである。酸価が50mgKOH/gより小さい場合にはアルカリ水溶液への溶解性が悪くなり、逆に150mgKOH/gより大きすぎると、硬化膜の耐アルカリ性、電気特性等のレジストとしての特性を下げる要因となるので、いずれも好ましくない。
【0058】
上記1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物(B−5)と共に使用される光ラジカル開始剤(C)としては、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する公知の化合物が使用可能であり、その具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチルチオ−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアミノアセトフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド等のアルキルホスフィン類;9−フェニルアクリジン等のアクリジン類などが挙げられる。
【0059】
これらの光ラジカル重合開始剤(C)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの光ラジカル重合開始剤(C)の配合量は、前記1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物(B−5)100質量部当り0.1〜30質量部の割合が好ましい。光ラジカル重合開始剤(C)の配合量が上記範囲よりも少ない場合、活性エネルギー線の照射を行なっても硬化しないか、もしくは照射時間を増やす必要があり、適切な塗膜物性が得られ難くなる。一方、上記範囲よりも多量に光ラジカル重合開始剤(C)を添加しても、硬化性に変化は無く、経済的に好ましくない。
【0060】
前記光硬化性、もしくは光硬化性・熱硬化性を有する硬化性組成物には、組成物の粘度調整等を目的として必要に応じて、前記有機溶剤もしくは(D)反応性希釈剤を加えることができる。
【0061】
反応性希釈剤(D)としては、硬化反応に関与することができる重合性基を有する化合物を好適に用いることができ、単官能(メタ)アクリレート類及び/又は多官能(メタ)アクリレート類などの公知の反応性希釈剤が使用可能である。具体的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及び二塩基酸無水物と1分子中に少なくとも1個以上の不飽和基を有するアルコールとの反応物などを挙げることができる。 反応性希釈剤(D)は、単独で又は2種以上の混合物で用いられ、その使用量は、硬化物の特性に悪影響を及ぼさない範囲、好ましくは前記1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物(B−5)と、前記エポキシ基含有多分岐化合物(A)の合計量100質量部に対して、70質量部以下であり、より好ましくは5〜40質量部である。
【0062】
さらに、熱硬化反応を促進するために、三級アミン類、四級オニウム塩類、三級ホスフィン類、クラウンエーテル錯体などや、ジシアンジアミドなどの公知の硬化促進剤を少量併用することができる。硬化促進剤は、これらの中から任意に選択することが可能であり、これらを単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。その他、ホスホニウムイリドなど、公知の硬化促進剤を使用できる。
【0063】
本発明の硬化性組成物には、さらに必要に応じて硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、炭酸カルシウムなどの公知慣用の充填剤、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カーボンブラックなどの公知慣用の着色顔料、消泡剤、密着付与剤、レベリング剤などの各種添加剤を加えてもよい。
【0064】
このようにして得られた硬化性組成物は、希釈剤の添加により粘度を調整した後、スクリーン印刷法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、ディップコーティング法、及びスピンコーティング法などの塗布方法により塗布し、例えば約80〜150℃の温度で加熱硬化、又は例えば約60〜100℃の温度で仮乾燥することで組成物中に含まれる有機溶剤を除去し、その後、活性エネルギー線を照射することにより、速やかに硬化する。
【0065】
また、光硬化性成分として1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物(B−5)を含有する硬化性組成物の場合、所定の露光パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により、又は直接描画法により露光し、未露光部をアルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成できる。
【0066】
さらに、上記露光・現像後に約140〜200℃の温度で加熱して熱硬化させることにより、密着性、機械的強度、はんだ耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐電蝕性などの諸特性に優れた硬化被膜が形成できる。またさらには、熱硬化前又は後にポストUV硬化を行なうことにより、諸特性をさらに向上させることができる。
【0067】
上記現像に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウム、アンモニア、有機アミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキシドなどの水溶液が使用できる。現像液中のアルカリの濃度は概ね0.1〜5質量%であればよい。現像方式はディップ現像、パドル現像、スプレー現像などの公知の方法を用いることができる。
【0068】
前記光硬化性組成物もしくは光硬化性・熱硬化を有する硬化性組成物を硬化させるための照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが適当である。また、レーザー光線なども露光用活性光源として利用できる。その他、電子線、α線、β線、γ線、X線中性子線なども利用可能である。
【0069】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明についてより具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断わりのない限り、全て質量基準である。
【0070】
実施例1
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに、大日本インキ化学工業社製のナフタレン型エポキシ樹脂HP−4032D(エポキシ当量=136)13.6部(エポキシ基0.1当量)、フロログルシノール2.3部(フェノール性水酸基0.055当量)、トリフェニルホスフィン2.62部、及びN−メチルピロリドン50mlを仕込み、100℃にて12時間反応を行なった。その後、反応液を室温まで冷却後、大量のエタノールに注ぎ、沈澱した固体を回収した。さらに、この固体をテトラヒドロフランに溶解し、大量のジエチルエーテルに注ぐことで精製を行なった。得られた沈澱をろ別し、減圧乾燥することで、エポキシ基含有多分岐化合物(A−1)を14.1部得た。
【0071】
得られたエポキシ基含有多分岐化合物(A−1)の構造は、1H−NMR及びIRスペクトルにて確認した。図1に得られたエポキシ基含有多分岐化合物(A−1)のIRスペクトルを示す。付加反応が進行したことを示すエーテル結合に起因するνC−O−Cの吸収が1114cm−1、1172cm−1に見られ、さらに末端基であるエポキシ環のνC−O−C由来の吸収が913cm−1に検出されたことから、目的の構造であることが判明した。GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)による測定結果から、重量平均分子量は12,000であった。またエポキシ基含有多分岐化合物(A−1)のエポキシ基当量は797.8g/eq.であった。
【0072】
実施例2
撹拌機、還流冷却管、温度計を備えた200mlの4つ口フラスコに、大日本インキ化学工業社製のナフタレン型エポキシ樹脂HP−4032D(エポキシ当量=136)13.6部(エポキシ基0.1当量)、トリフェノールメタン3.2部(フェノール性水酸基0.033当量)、トリフェニルホスフィン2.62部、及びN−メチルピロリドン50mlを仕込み、100℃にて24時間反応を行なった。その後、反応液を室温まで冷却後、大量のエタノールに注ぎ、沈澱した固体を回収した。さらに、この固体をテトラヒドロフランに溶解し、大量のジエチルエーテルに注ぐことで精製を行なった。得られた沈澱をろ別し、減圧乾燥することで、エポキシ基含有多分岐化合物(A−2)を11.1部得た。
【0073】
得られたエポキシ基含有多分岐化合物(A−2)の構造は、1H−NMR及びIRスペクトルにて確認した。図2に得られたエポキシ基含有多分岐化合物のIRスペクトルを示す。付加反応が進行したことを示すエーテル結合に起因するνC−O−Cの吸収が1114cm−1、1172cm−1に見られ、さらに末端基であるエポキシ環のνC−O−C由来の吸収が913cm−1に検出されたことから、目的の構造であることが判明した。GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)による測定結果から、重量平均分子量は3,000であった。またエポキシ基含有多分岐化合物(A−2)のエポキシ基当量は490.1g /eq.であった。
【0074】
応用実施例1、及び比較例1、2、3、4
実施例1で得られたエポキシ基含有多分岐化合物(A−1)と、比較サンプルとして下記エポキシ樹脂をそれぞれ表1に示す配合割合で各成分を配合し、3本ロールミルを用いて混練し、熱硬化性組成物を調製し、硬化塗膜の特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
応用実施例2、3及び比較例5
実施例2で得られたエポキシ基含有多分岐化合物(A−2)と、比較サンプルとして下記ノボラック型エポキシアクリレート系樹脂をそれぞれ表3に示す配合割合で各成分を配合し、3本ロールミルを用いて混練し、活性エネルギー線硬化性組成物を調製し、硬化塗膜の特性を評価した。その結果を表4に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
<化合物(B−5)の合成>
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−695、大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量=220)330部を、ガス導入管、撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート400部を加え、加熱溶解し、ハイドロキノン0.46部と、トリフェニルホスフィン1.38部を加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸108部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80〜90℃まで冷却し、無水テトラヒドロフタル酸163部を加え、8時間反応させた。反応は、電位差滴定による反応液の酸価、全酸価測定を行ない、得られる付加率にて追跡し、反応率95%以上を終点とする。このようにして得られた1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物(B−5)ワニスは、不揮発分58%、固形物の酸価102mgKOH/gであった。
【0080】
【表4】
【0081】
表2に示す結果から明らかなように、本発明の実施例1により製造されたエポキシ含有多分岐化合物(A−1)を用いた応用実施例1の熱硬化性組成物は一般的なエポキシ樹脂を用いた場合である比較例1〜4と比較して、耐熱性、強靭性、可撓性等に優れた硬化物を与えることがわかる。
【0082】
また、表4に示す結果から明らかなように、本発明の実施例2により製造されたエポキシ含有多分岐化合物(A−2)を用いた応用実施例2、3の光硬化性組成物は、一般的な多官能エポキシ樹脂を用いた場合である比較例5と比較して強靭性、可撓性等に優れた硬化物を与えることがわかる。
【0083】
なお、表2、4中の特性評価の方法は以下の通りである。
【0084】
ゲルタイム:
応用実施例1及び比較例1〜4の熱硬化性組成物を、JIS C−2104に準じて、150℃に設定した日新科学社製のゲル化試験器上に、0.4ml載せ、撹拌しながら、ゲル化し糸が引かなくなるまで時間(秒)を測定した。
【0085】
180°折り曲げ性:
応用実施例1及び比較例1〜4の熱硬化性組成物を、バーコーターを用いてアルミ箔に50μmの膜厚で塗布し、150℃,60分間、熱風循環式乾燥炉で加熱硬化し、硬化塗膜を作成した。この塗膜を180°に折り曲げた際のクラックの有無を目視にて観察した。
【0086】
また、応用実施例2、3及び比較例5の各光硬化性組成物を、バーコーターを用いてアルミ箔に50μmの膜厚で塗布し、高圧水銀灯にて120秒間光照射を行ない、硬化塗膜を作成した。この塗膜を180°に折り曲げた際のクラックの有無を目視にて観察した。
【0087】
◯:クラックが認められないもの
×:クラックが認められるもの
引張弾性率、引張強度(引張破壊強さ)、伸び率(引張破壊伸び):
JIS K 7127に準拠して、下記の方法で作製した評価サンプルの引張弾性率、引張強度(引張破壊強さ)、伸び率(引張破壊伸び)を引張−圧縮試験機(株式会社島津製作所製)によって測定した。
【0088】
予め水洗・乾燥を行なったテフロン板に、上記各応用実施例及び比較例の組成物をスクリーン印刷法で塗布し、応用実施例1及び比較例1〜4の熱硬化性組成物は、熱風循環式乾燥炉で150℃,60分間、熱硬化させた。また、応用実施例2,3及び比較例5の光硬化性組成物は、高圧水銀灯で500mJ/cm2、露光し、光硬化させた。これを室温まで冷却した後、テフロン板から硬化塗膜をはがし、評価サンプルを得た。
【0089】
ガラス転位点(Tg):
上記試験と同様にして評価サンプルを作製し、JIS C 6481 5.17.2に従って、DMA法にて動的粘弾性測定装置により測定した。
【0090】
はんだ耐熱性:
前記応用実施例2、3及び比較例5の各光硬化性組成物を、回路形成されたプリント配線板にスクリーン印刷で約20μmの膜厚でパターン印刷し、次いで80℃,30分加熱乾燥させた。その後、応用実施例2は、500mJ/cm2の露光量にて光硬化を行なって評価基板を作製し、また、応用実施例3及び比較例5は、500mJ/cm2の露光量にて露光を行ない、さらに150℃×60分の熱硬化を施して評価基板を作製した。
【0091】
このようにして得られた各評価基板について、ロジン系フラックスを塗布して予め260℃に設定したはんだ槽に30秒間浸漬する操作を3回行ない、目視による塗膜の膨れ・剥がれ・変色について評価した。
【0092】
○:全く変化が認められないもの
△:僅かに変化したもの
×:塗膜の膨れ、剥がれがあったもの
密着性試験:
前記はんだ耐熱性試験を実施した評価基板を用い、JIS D0202の試験方法に従って碁盤目状のクロスカットを入れ、次いで粘着テープによるピーリングテストを行ない、塗膜の剥離状態を目視観察し、評価した。
【0093】
○:全く剥がれのないもの
△:クロスカット部が少し剥がれたもの
×:剥がれたもの
【0094】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のエポキシ基含有多分岐化合物(A)は、エポキシ基の開環付加反応によって生成する水酸基と、末端にエポキシ基を併せ持つ特定の構造を有し、しかも1分子当たりの反応性基の含有量が多いため、短時間の活性エネルギー線の照射により速やかに硬化すると共に、加熱による硬化も可能であり、かつ、水酸基の水素結合性によって、得られた硬化物は各種基材に対して優れた密着性を示し、さらに、エーテル結合を有する多分岐構造のため、硬化収縮が少なく、強度、伸び、靭性等の機械的特性に優れた硬化物を与える。また、多分岐構造のため、種々の溶媒に対する高い溶解性を示し、また溶液粘度を低下できるという特徴を有する。
【0095】
従って、本発明のエポキシ基含有多分岐化合物(A)は、前記したような優れた特性を有するため、種々の分野において光硬化性成分及び/又は熱硬化性成分として有利に用いることができる。
【0096】
さらに前記エポキシ基含有多分岐化合物(A)を硬化剤及び/又は硬化触媒(B)と共に含有する本発明の熱硬化性及び/又は光硬化性を有する硬化性組成物は、紫外線又は電子線などの活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、及び/又は加熱によって硬化し、基材に対する密着性に優れると共に、強度、靭性等の機械的特性や、耐熱性、熱安定性、可撓性、耐薬品性、電気絶縁性等の諸特性に優れた硬化物が得られるため、接着剤、コーティング剤、プリント配線板の製造時に使用されるソルダーレジスト、エッチングレジスト、ビルドアップ基板用層間絶縁材、メッキレジスト、ドライフィルムなど広範囲に利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で製造されたエポキシ基含有多分岐化合物のIRスペクトルを示すグラフである。
【図2】実施例2で製造されたエポキシ基含有多分岐化合物のIRスペクトルを示すグラフである。
Claims (5)
- (a)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(b)1分子中に2つ以上(但し、上記(a)成分が2つのエポキシ基を有する化合物の場合、3つ以上)のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物との反応により得られ、かつ末端にエポキシ基を有することを特徴とするエポキシ基含有多分岐化合物。
- 前記エポキシ化合物(a)とフェノール化合物(b)との反応割合が、エポキシ化合物(a)のエポキシ基1当量に対してフェノール化合物(b)のフェノール性水酸基が0.1当量以上1.0当量未満であることを特徴とする、請求項1に記載のエポキシ基含有多分岐化合物。
- (A)請求項1又は2に記載のエポキシ基含有多分岐化合物、及び(B)硬化剤及び/又は硬化触媒を含むことを特徴とする硬化性組成物。
- 前記硬化剤及び/又は硬化触媒(B)が、(B−1)1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物又はその酸無水物、(B−2)1分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物、(B−3)イミダゾール誘導体、(B−4)カチオン重合触媒、及び(B−5)1分子中に2つ以上のカルボキシル基を有し、更に感光性の不飽和二重結合を有する化合物、のいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項3に記載の硬化性組成物。
- 所定の回路パターンの導体層を有する回路基板上に永久保護膜としてのソルダーレジスト被膜が形成されたプリント配線板において、上記ソルダーレジスト被膜が、請求項3又は4に記載の硬化性組成物の硬化塗膜からなることを特徴とするプリント配線板。
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