JP2004330067A - 振動子および小型無線機の振動発生装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】振動子20には、偏心荷重部21に回転軸22が嵌まり込む溝部23が形成されると共に、偏心荷重部から膨出して溝部の両側縁部を構成する側壁24が形成される。溝部は、回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部23aと、軸挿通部と当該溝部の開口との間に形成され、回転軸の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部23bとによって形成されている。側壁24は、溝部に沿って偏心荷重部から膨出する側壁下段部26と、側壁下段部の溝部側よりさらに膨出し側壁下段部より幅狭な側壁上段部27とにより2段に形成されている。側壁上段部がその幅方向全体に亘って溝部の開口側から底側に向けて加締められることで振動子が回転軸に固定される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話等の小型無線機の振動発生装置に組みこまれる振動子およびこれを用いた小型無線機の振動発生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ページング方式の小型無線呼び出し機やPHSあるいは携帯式電話機等の小型無線機の一種として、モータの回転軸に高比重金属製の振動子を偏心させて結合してなる振動発生装置を内蔵した形式のものが普及しつつある。このような振動発生装置を内蔵した小型無線呼び出し機等によれば、呼び出し音を発する代わりに、振動子の回転によって振動を発生させるため、例えば、人込みの中や会議中などにおいても他人に知られることなく受信を確認することができる。
【0003】
この種の小型無線機の振動発生装置は、小型無線機の信号発生回路に接続された小型モータの回転軸に、非円筒状に形成された振動子を一体的に結合させた構成となっている。ここで、上記従来の振動子は、粉末冶金法によって成形された高比重金属製のものであり、横断面略扇状の偏心荷重部に円筒状のボス部が一体形成されたものである。そして、上記振動子は、上記ボス部に形成された取付孔に回転軸を差し込み、当該ボス部を加締めて塑性変形させることにより、ボス部と回転軸とを密着させて回転軸に一体的に結合されている。
【0004】
このような従来の振動子を用いた振動発生装置によれば、振動子自体を加締めて回転軸に直接的に結合させているため、それまでの接着剤や他の結合部品を介して振動子を回転軸に固定したものと比較して、部品点数および製造に要する工数の削減が可能になるという利点がある。
【0005】
ところが、上記従来の振動子にあっては、円筒状をなすボス部の内部に、取付孔を形成しなければならないため、粉末原料をプレスして振動子を成形する際に、ボス部の成形型部については、特に外周が薄肉となると、粉末原料を充填することが難しく、歩留まりの低下をもたらすと共に、ボス部の取付孔が小径になると、金型の剛性が不十分となり、破損し易いという問題があった。
【0006】
また、近年における小型化の要請から、振動子自体を小径に形成しようとすると、取付孔の周囲のボス部が極薄肉になるために、大きな力で加締めるとクラックを発生しやすく、逆に加締め力が小さいと所望の引抜き強度が得られないために、当該加締め力の調整が困難になるという問題点もあった。
【0007】
そこで、図10に示すように、従来の他の振動発生装置用振動子1として、その扇型状をなす偏心荷重部2の円弧中央部に、回転軸3が嵌まり込む断面U字状の溝部4を形成し、この溝部4に沿って偏心荷重部2から膨出することにより溝部4の両側縁部となる側壁5を一体に形成したものが知られている。
上記振動子1によれば、側壁5の先端部における軸線方向の中央部分6を、先端がR形状や直方体状に形成された加締めパンチによって、溝部4の開口側から底側に向けて加締めることにより回転軸3に一体的に結合することができる。
【0008】
上記振動子1においては、取付孔が形成されたボス部を有する振動子よりも成形が容易であり、よって製造歩留まりを向上させることができるとともに、振動子1自体が小径になった場合においても、上記ボス部の外周部のような薄肉部分を加締める場合と比較して、クラックを生じるおそれが少ないという利点がある。
【0009】
しかしながら、図10に示した従来の振動発生装置用振動子1にあっては、側壁5の先端部端面を加締める際に、側壁5の溝側6aの部分は回転軸3によって剛性が高くなっているために、塑性変形する際に、もっぱら自由端となる外周6b側に膨出してしまい、この結果溝側6aへの変形量が小さくなって、大きな加締め力が必要になるにも拘わらず、高い引抜き強度が得られないという問題点があった。
【0010】
また、振動子1を小径にした場合には、所望の振動を得るために、タングステンの含有量を増加させる必要がある。ところが、タングステンの含有量が増加すると、振動子1自体が材質的に一層脆くなるために、上述した大きな加締め力によって、側壁5にクラックを生じやすくなるという問題点もあった。
【0011】
そこで、本発明者等は、先に、上記問題点を解消するために、回転軸12が挿通される溝部13を、図11および図12に示すように、回転軸12の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部13aと、この軸挿通部13aと当該溝部13の開口15との間に形成され、回転軸12の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部13bとによって形成した振動発生装置用振動子10を開発するとともに、これを特許文献1において開示している。
【0012】
この振動子10によれば、溝部13近傍が、いわば従来の振動子1が加締められて塑性変形した後の形状に近付いた形状に形成されていることになるので、当該溝部13の両側縁部となる側壁14を溝部13の開口15側から底側に向けて加締めると、側壁14が塑性変形して、回転軸12の外径寸法よりも狭い間隔の立壁部13b間が一層幅狭になるとともに、上記回転軸12を溝部13の底部および立壁部13b近傍の軸挿通部13aの天井部とによって強固に挟むことにより、振動子10を回転軸12に高い引抜き強度で固定することができる。また、その際に、図12に示すように、側壁14の外周側部分14bを残した溝部13側の部分14a(以下、加締め部と称する。)を、加締めパンチによって溝部13の開口15側から底側に向けて凹状に加締めるようにすれば、両側壁14を溝部13側に膨出するように塑性変形させることができ、これによって、振動子10を回転軸12にさらに強固にかつ安定的に固定することができる。
【0013】
このため、図10に示した従来の振動発生装置用振動子1に比べて、より小さな加締め力によって振動子10を回転軸12に結合させることができ、よって振動子10の製造が容易であることに加えて、さらに振動子10を小型化した場合においても、クラックを生じることなく、確実に高い引抜き強度で当該振動子10をモータの回転軸12に固定することができるという利点が得られる。
【0014】
【特許文献1】
特開2002−320920号公報(段落番号0020〜0028)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図12に示した従来の振動発生装置用振動子10において、側壁14の上記加締め部14aを加締める際には、両側壁14を均等に加締めるために、溝部13の幅方向に加締めパンチを正確に位置決めする必要がある。そのため、近年における小型無線機の小型化に伴って振動子自体もより小径になると、それに対応して上記加締め部14aも狭小となることから、加締めパンチの位置決めに非常に高い精度が要求され、その結果、振動発生装置の生産性が低下するという懸念があった。また、振動子が小径になると、その分重量も減少することから、小径であっても所望の振動を得られる振動効率に優れた振動子に対する強い要望も依然として存在する。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、振動効率に優れ、しかも加締めパンチの位置決めが容易で、小さな加締め力によっても高い引抜き強度でモータの回転軸に結合させることができ、よって装置全体の一層の小型化を図ることが可能となる振動子およびこれを用いた小型無線機の振動発生装置を提供することを目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、小型無線機の振動発生装置のモータ回転軸に加締めによって一体的に結合される振動子であって、偏心荷重部に上記回転軸が嵌まり込む溝部が形成されるとともに、上記偏心荷重部から膨出して上記溝部の両側縁部を構成する側壁が形成され、上記溝部は、上記回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部と、この軸挿通部と当該溝部の開口との間に形成され、上記回転軸の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部とによって形成される一方、上記側壁は、上記溝部に沿って上記偏心荷重部から膨出する側壁下段部と、この側壁下段部の上記溝部側よりさらに膨出し上記側壁下段部より幅狭な側壁上段部とにより2段に形成されてなることを特徴とするものである。
【0018】
そして、請求項2に記載の本発明に係る小型無線機の振動発生装置は、モータの回転軸に結合させる振動子として、請求項1に記載の振動子を用いるとともに、当該振動子は、上記側壁上段部がその幅方向全体に亘って、上記溝部の上記開口側から底側に向けて加締められることにより上記回転軸に固定されるようになっていることを特徴とするものである。
【0019】
また、請求項3に記載の本発明に係る小型無線機の振動発生装置は、モータの回転軸に結合させる振動子として、請求項1に記載の振動子を用いるとともに、当該振動子は、上記側壁上段部の外壁側部分を残した上記溝部側部分において、上記溝部に向かうに従って漸次深くなる凹部が形成されるように、上記溝部の上記開口側から底側に向けて加締められることにより、上記回転軸に固定されるようになっていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、回転軸が挿通される溝部を、回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部と、この軸挿通部と当該溝部の開口との間に形成され、回転軸の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部とによって形成しているので、上記溝部近傍が、いわば従来の振動子が加締められて塑性変形した後の形状に近付いた形状に形成されていることになる。このため、上記溝部の両側方に位置する側壁を加締めると、当該側壁が塑性変形して、回転軸の外径寸法よりも狭い間隔の立壁部間が一層幅狭になるとともに、上記回転軸を溝部の底部および立壁部近傍の軸挿通部の天井部とによって強固に挟むことにより、振動子を回転軸に高い引抜き強度で固定することができる。
【0021】
しかも、本発明においては、上記側壁を、溝部に沿って偏心荷重部から膨出する側壁下段部と、この側壁下段部の溝部側よりさらに膨出し側壁下段部より幅狭な側壁上段部とにより2段に形成したので、請求項2に記載の発明のように、側壁下段部より膨出する側壁上段部のみをその幅方向全体に亘って、溝部の開口側から底側に向けて加締めるようにすれば、側壁の溝部側のみを効率良く塑性変形させることができる。また、加締めパンチとして、側壁上段部間の寸法よりも広い幅寸法のものを用いることができるため、上記幅方向における加締め位置の微妙な調整を省略することができる。
【0022】
他方、請求項3に記載の発明のように、側壁上段部の外壁側部分を残した溝部側部分において、溝部に向かうに従って漸次深くなる凹部が形成されるように、溝部の開口側から底側に向けて加締めるようにすれば、上記と同様に、側壁の溝部側のみを無理なく塑性変形させることができる。また、この場合には、加締めパンチとして、中央部が最頂部となり両側部に向かって傾斜する形状(例えば、円弧状、V字状)の先端面を有する加締めパンチを用いることができるので、加締めパンチの先端面の中央部と、溝部の幅方向の中心とを自動的に一致させることが可能となり、上記幅方向における加締め位置の微妙な調整を省略することができる。
【0023】
したがって、上記構成からなる振動子によれば、従来の振動発生装置用振動子に比べて、より小さな加締め力によって振動子を回転軸に結合させることができる上に、加締め時においては加締めパンチを容易に位置決めすることができる。よって振動子の製造が容易であることに加えて、さらに振動子が小型化した場合においても、クラックを生じることなく、確実に高い引抜き強度で当該振動子をモータの回転軸に固定することができる。この結果、振動発生装置および小型無線機全体の小型軽量化を実現することが可能になる。また、加締め荷重を小さくし、かつ振動子のクラックの発生を防ぐことができるために、振動発生装置の生産性を向上させることができるとともに、振動子の高比重化による振動効率の向上も可能となる。さらに、側壁下段部と側壁上段部とにより側壁を2段に構成して、側壁上段部を側壁下段部より幅狭に形成したことにより、従来よりも回転軸と偏心荷重部の重心との距離が大きくなって偏心量が増大することとなるため、より一層振動効率に優れた振動子を提供することが可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
図1および図2は、本発明に係る振動子およびこれを用いた小型無線機の振動発生装置の第1の実施形態を示すもので、図中符号20が振動子である。この振動子20は、円弧半径が数mmの横断面視略半円形状に成形された超重合金製のものであり、その半円状部分全体が偏心荷重部21となっている。この偏心荷重部21は、その平坦面21aの中央部に、モータの回転軸22が嵌まり込む溝部23が軸線O方向に沿って形成されている。また、この溝部23の両側には、偏心荷重部21の平坦面21aから膨出して溝部23の両側縁部を構成する側壁24が一体に形成されている。
【0025】
この溝部23は、回転軸22の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部23aと、この軸挿通部23aと溝部23の開口25との間に形成された立壁部23bとによって構成されている。ここで、立壁部23bは、回転軸22の外径寸法よりも狭い間隔を介して平行に対向するように形成されており、さらに軸挿通部23a内の回転軸22の軸線Oから開口25に至る長さ寸法Tと、回転軸22の直径Dとの比(T/D)が、0.6〜1.2の範囲になるように形成されている。また、溝部23は、開口25の幅寸法Wと回転軸22の直径Dとの比(W/D)が、0.50〜0.95の範囲になるように形成されている。
【0026】
一方、側壁24は、溝部23に沿って偏心荷重部21の平坦面21aから帯状に膨出する側壁下段部26と、この側壁下段部26の溝部側端面から帯状にさらに膨出し側壁下段部26より幅狭な側壁上段部27とにより2段に形成されている。この側壁24は、平坦面21aから側壁下段部26の端面26aまでの高さ寸法S2と、平坦面21aから側壁上段部27の端面27aまでの高さ寸法S1との比(S2/S1)が、0.25〜0.84の範囲になるように形成されるとともに、側壁上段部27の幅寸法S3と開口25の幅寸法Wとの比(S3/W)が、0.25〜4.50の範囲になるように形成されている。また、側壁下段部26と側壁上段部27の外周側起立面26b、27bは、各々の端面26a、27aとのなす角度が90°以上となるように傾斜した平面または曲面となっている。
【0027】
そして、上記構成からなる振動子20は、図2に示すように、側壁上段部27の先端部端面27aのうち、軸線O方向の両端部を残した中央部分において、その幅方向全体に亘って、直方体状の加締めパンチ28によって溝部23の開口25側から底側に向けて加締められることにより、回転軸22に一体的に結合されるようになっている。この際に、側壁上段部27は、その加締められた端面27cにおける高さ寸法(平坦面21aから端面27cまでの高さ寸法)が、上記高さ寸法S2よりも大きくなる状態で圧縮されるようになっている。また、上記加締めパンチ28には、溝部23の両側方に位置する側壁上段部27の先端部端面27aを同時に加締めるのに十分な幅寸法を有する加締めパンチが用いられる。
【0028】
ちなみに、回転軸22としては、例えば、SUS420などのステンレス製のものを用いることができる。また、振動子20は、例えば、W−Ni系、W−Ni−Fe系、W−Ni−Cu系、W−Ni−Cu−Fe系、あるいはW−Mo−Ni−Fe系等の、比重が17〜19程度の超重合金材料を用いて、粉末冶金法または射出成形法により成形されたものである。粉末冶金法による具体例としては、W粉末;89〜98重量%およびNi粉末;1.0〜11重量%からなる組成の混合粉末、あるいは上記重量%の範囲のW粉末およびNi粉末に、Cu;0.1〜6重量%、Fe粉末;0.1〜6重量%、Mo粉末;0.1〜6重量%、およびCo粉末;0.1〜2重量%の1種または2種以上を含有する組成の混合粉末を、1ton/cm2 〜6ton/cm2 で扇板状に圧粉成形し、この圧粉体を600℃〜1000℃の温度範囲の水素気流中またはアンモニア分解ガス雰囲気中で予備焼結した後、さらに同じく水素気流中またはアンモニア分解ガス雰囲気中にて1300℃〜1500℃で液相焼結を行い、その後、必要に応じて、真空、中性もしくは還元性のいずれかの雰囲気中において1000℃〜1200℃の温度範囲で加熱した後に、少なくとも300℃まで40℃/min以上の冷却速度で急冷する熱処理を施したものである。
【0029】
上記振動子20の組成において、W(タングステン)の含有量が98重量%を超えると展性が低下し、また89重量%に満たない場合には所定の比重が得られなくなり、この種の振動子としては不都合となる。また、Ni(ニッケル)の含有量が11重量%を越えた場合にも所定の比重が得られなくなり、それが1.0重量%に満たない場合には焼結が進まなくなってしまう。さらに、Co(コバルト)は、Niと同様の効果があるものの、それが0.1重量%未満では充分な添加の効果が得られず、一方、それが2重量%を越えると、合金は著しく脆性を示すことになる。また、Cu粉末およびFe粉末は、これらを含有させることにより焼結温度を下げることができるものの、上記の上限値以上では所定の比重が得られなくなる。
【0030】
以上の構成からなる小型無線機の振動発生装置によれば、回転軸22が挿通される溝部23を、回転軸22の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部23aと、この軸挿通部23aと当該溝部23の開口25との間に形成され、回転軸22の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部23bとによって形成しているので、上記溝部23近傍が、いわば従来の振動子1が加締められて塑性変形した後の形状に近付いた形状に形成されていることになる。このため、上記溝部23の両側方に位置する側壁24を加締めると、当該側壁24が塑性変形して、回転軸22の外径寸法よりも狭い間隔の立壁部23b間が一層幅狭になるとともに、上記回転軸22を溝部23の底部および立壁部23b近傍の軸挿通部23aの天井部とによって強固に挟むことにより、振動子20を回転軸22に高い引抜き強度で固定することができる。
【0031】
しかも、本実施形態においては、上記側壁24を、溝部23に沿って偏心荷重部21から膨出する側壁下段部26と、この側壁下段部26の溝部23側よりさらに膨出し側壁下段部26より幅狭な側壁上段部27とにより2段に形成し、側壁下段部26より膨出する側壁上段部27のみをその幅方向全体に亘って、溝部23の開口25側から底側に向けて加締めるようにしたので、側壁24の溝部23側のみを効率良く塑性変形させることができる。また、加締めパンチ28として、側壁上段部27間の寸法よりも広い幅寸法のものを用いることができるため、上記幅方向における加締め位置の微妙な調整を省略することができる。
【0032】
したがって、上記構成からなる振動子20によれば、従来の振動発生装置用振動子1に比べて、より小さな加締め力によって振動子20を回転軸22に結合させることができる上に、加締め時においては加締めパンチ28を容易に位置決めすることができる。よって振動子20の製造が容易であることに加えて、さらに振動子20が小型化した場合においても、クラックを生じることなく、確実に高い引抜き強度で当該振動子20をモータの回転軸22に固定することができる。この結果、振動発生装置および小型無線機全体の小型軽量化を実現することが可能になる。また、加締め荷重を小さくし、かつ振動子20のクラックの発生を防ぐことができるために、振動発生装置の生産性を向上させることができるとともに、振動子20の高比重化による振動効率の向上も可能となる。さらに、側壁下段部26と側壁上段部27とにより側壁24を2段に構成して、側壁上段部27を側壁下段部26より幅狭に形成したことにより、従来よりも回転軸22と偏心荷重部21の重心との距離が大きくなって偏心量が増大することとなるため、より一層振動効率に優れた振動子20を提供することが可能となる。
【0033】
なお、本実施形態においては、偏心荷重部21を横断面視略半円形状に形成するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図3に示すように、横断面略扇型状に形成することも可能である。この場合には、偏心荷重部31の扇状を描く外周円弧の中心部に、回転軸22が嵌まり込む溝部33が形成され、この溝部33の両側に、偏心荷重部31の傾斜平面31a(上記外周円弧の両端を通る半径に沿って形成された平面)から膨出して溝部33の両側縁部を構成する側壁34が一体に形成される。そして、溝部33は、回転軸22の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部33aと、この軸挿通部33aと溝部33の開口35との間に形成され、回転軸22の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部33bとによって構成される。一方、側壁34は、溝部33に沿って偏心荷重部31の傾斜平面31aから膨出する側壁下段部36と、この側壁下段部36の溝部33側端面よりさらに膨出し側壁下段部36より幅狭な側壁上段部37とにより2段に形成される。このような、振動子30にあっても、上記実施形態に示した振動子20と同様の作用効果を得ることができる。
【0034】
また、本実施形態においては、側壁上段部27の先端部端面27aのうち、軸線O方向の両端部を残した中央部分において、その幅方向全体に亘って加締めるようにしたが、側壁上段部27の軸線O方向の長さ寸法が小さい場合には、例えば、図4(a)に示すように、上記端面27aの全長にわたって、その全幅寸法を加締めるようにしたり、図4(b)に示すように、上記端面27aの軸線O方向の片側約半分において、その幅方向全体に亘って加締めるようにしてもよい。
【0035】
また、溝部23の形状についても、図1に示した形状の他、回転軸22の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部と、この軸挿通部と開口25との間に形成され、回転軸22の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部とによって形成されたものであれば、例えば図5(a)〜(d)に示すような各種の形状のものを適用することが可能である。
【0036】
すなわち、図5(a)に示す溝部40は、回転軸22が挿通される軸挿通部40aが、中心角180°以上の範囲を内在させる対向する一対のV字状壁面によって全体として内角が90°の略菱形状に形成され、この軸挿通部40aと開口45との間に回転軸22の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部40bが形成されたものである。
【0037】
また、図5(b)に示す溝部50は、回転軸22が挿通される軸挿通部50aが、底面と垂直な側壁とによって全体として略正方形状に形成され、この軸挿通部50aと開口55との間に、回転軸22の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部50bが形成されたものである。さらに、図5(c)に示す溝部60は、上記溝部50の変形例であり、軸挿通部60aの立壁部60bに隣接する部分を、回転軸22の直径と曲率がほぼ等しい円弧状壁面によって形成したものである。また、図5(d)に示す溝部70は、図5(c)に示した溝部60の変形例であり、軸挿通部70aの底部をV字状の底面によって形成したものである。このように、溝部としては、図1に示した形状のものに限られるものではなく、各種の形状のものを適用することが可能である。
【0038】
[第2の実施形態]
図6および図7は、本発明の第2の実施形態を示すもので、この実施形態の振動子80は、側壁上段部87の外壁側部分87bを残した溝部側部分において、溝部83に向かうに従って漸次深くなる凹部(凹状の加締め部87c)が形成されるように、加締めパンチ88によって、溝部83の開口85側から底側に向けて加締められることにより、回転軸82に一体的に結合されるようになっている。
【0039】
上記加締めパンチ88は、加締め圧力を作用させる先端面88aが、円弧状に突出する曲面、即ち中央部が最頂部となり両側部に向かって傾斜する形状に形成された曲面となっている。そして、加締め部87cは、上記加締めパンチ88で加締められることにより、溝部83に向かうに従って円弧状に徐々に深くなるように形成されている。すなわち、加締め部87cの底面は、溝部83に向かうにしたがって、側壁上段部87の先端部端面87aに対して漸次深くなるように形成されているとともに、その深くなる率が徐々に小さくなる円弧状の曲面によって形成されている。そして、加締め部87cは、先端部端面87aにおける上記幅寸法S3のうち、溝部83側の縁部から0.25×S3〜0.9×S3の範囲となるように設定されている。
【0040】
以上の構成からなる小型無線機の振動発生装置によれば、第1の実施形態に示したものと同様の作用効果が得られる他、溝部83の両側縁部を形成する側壁84を、溝部83に沿って偏心荷重部81から膨出する側壁下段部86と、この側壁下段部86の溝部83側よりさらに膨出し側壁下段部86より幅狭な側壁上段部87とにより2段に形成し、側壁上段部87の先端部端面87aのうち、外壁側部分87bを残した溝部側部分において、溝部83に向かうに従って漸次深くなる凹状の加締め部87cが形成されるように、溝部83の開口85側から底側に向けて加締めるようにしたので、側壁84の溝部83側のみを無理なく塑性変形させることができる。
【0041】
すなわち、外壁側部分87b及び加締め部87cにおける深さの浅い側の部分は、振動子80の一部を溝部83側に押し出すための強固な支持壁部として作用するので、加締め部87cのほぼすべてが溝部83内に突出して回転軸82を保持するために使われることになる。しかも、加締め部87cを成形する加締めパンチ88の先端面88aが円弧状に突出する曲面によって形成されているので、加締めの際に、溝部83の幅方向の中心と、先端面88aの中心とが自動的に一致することになる。このため、加締めパンチ88を容易に位置決めすることができるとともに、溝部83の両側に同一の幅の加締め部87cを形成することができる。したがって、左右均等に形成された加締め部87c及びこの加締め部87cによって溝部83内に突出した部分と、当該溝部83の底部との3の部分によって、振動子80を回転軸82に、強固にかつ安定的に固定することができる。よって、従来の振動発生装置に比べて、より小さな加締め力によって振動子80を回転軸に強固に結合させることができる。
【0042】
[第3の実施形態]
図8および図9は、本発明の第3の実施形態における振動子90を示すもので、この振動子90は、加締め部97cが溝部93に向かうに従って直線状に徐々に深くなるように塑性変形させられるようになっている点で、上記第2の実施形態と異なる。
【0043】
すなわち、加締め部97cの底面は、溝部93に向かうにしたがって、側壁上段部97の先端部端面97aに対して漸次深くなるように傾斜した平面によって形成されている。そして、加締め部97cは、先端部端面97aにおける上記幅寸法S3のうち、溝部93側の縁部から0.25×S3〜0.9×S3の範囲となるように設定されている。
【0044】
上記加締め部97を成形する加締めパンチ98は、溝部93の両側の先端部端面97aに加締め圧力を作用させるため、先端面がV字状に交差する2つの四角形状の平面部(傾斜面)98aによって形成されている。各平面部98aは、加締めパンチ98の軸方向の中心線Cに対して左右対称に形成されている。この加締めパンチ98は、その中心線Cを、偏心荷重部91の扇型の中心線であって、溝部93の底部の中心線である軸線Oに向け、かつ先端部端面97aに直交させる方向に向けた状態で振動子90に加圧され、上記各加締め部97cを成形するようになっている。
【0045】
上記構成からなる振動発生装置においても、第2の実施形態に示したものと同様の作用効果が得られる。
なお、第2および第3の実施形態においては、側壁上段部87、97の先端部端面87a、97aのうち、軸線O方向の両端部を残した中央部分を加締めて、上記加締め部87c、97cを構成するようにしたが、こららの加締め部87c、97cは、軸線O方向のほぼ全体を加締めて構成するようにしたり、或いは軸線O方向の片側約半分を加締めて構成したりすることも可能である。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来の振動子に比べて、より小さな加締め力によって振動子を回転軸に結合させることができる上に、加締め時においては加締めパンチを容易に位置決めすることができる。よって振動子の製造が容易であることに加えて、さらに振動子が小型化した場合においても、クラックを生じることなく、確実に高い引抜き強度で当該振動子をモータの回転軸に固定することができる。この結果、振動発生装置および小型無線機全体の小型軽量化を実現することが可能になる。また、加締め荷重を小さくし、かつ振動子のクラックの発生を防ぐことができるために、振動発生装置の生産性を向上させることができるとともに、振動子の高比重化による振動効率の向上も可能となる。さらに、側壁下段部と側壁上段部とにより側壁を2段に構成して、側壁上段部を側壁下段部より幅狭に形成したことにより、従来よりも回転軸と偏心荷重部の重心との距離が大きくなるため、より一層振動効率に優れた振動子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る振動子の第1の実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の振動子を用いた小型無線機の振動発生装置の要部構成を示すもので、図1の振動子を回転軸に固定した状態を示す斜視図である。
【図3】図1の振動子の変形例を示す正面図である。
【図4】図2の加締め方法の変形例を示す斜視図である。
【図5】図1の振動子に備わる溝部の変形例を示す正面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す正面図である。
【図7】図6の振動発生装置の要部構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施形態を示す正面図である。
【図9】図8の振動発生装置の要部構成を示す斜視図である。
【図10】従来の振動子を回転軸に加締めて固定した状態を示す斜視図である。
【図11】従来の振動子のその他の例を示す正面図である。
【図12】図11の振動子を回転軸に加締めて固定した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
20、30、80、90 振動子
21、31、81、91 偏心荷重部
22、82、92 回転軸
23、33、40、50、60、70、83、93 溝部
23a、33a、40a、50a、60a、70a 軸挿通部
23b、33b、40b、50b、60b、70b 立壁部
24、34、84、94 側壁
26、36、86、96 側壁下段部
27、37、87、97 側壁上段部
Claims (3)
- 小型無線機の振動発生装置のモータ回転軸に加締めによって一体的に結合される振動子であって、
偏心荷重部に上記回転軸が嵌まり込む溝部が形成されるとともに、上記偏心荷重部から膨出して上記溝部の両側縁部を構成する側壁が形成され、
上記溝部は、上記回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部と、この軸挿通部と当該溝部の開口との間に形成され、上記回転軸の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部とによって形成される一方、
上記側壁は、上記溝部に沿って上記偏心荷重部から膨出する側壁下段部と、この側壁下段部の上記溝部側よりさらに膨出し上記側壁下段部より幅狭な側壁上段部とにより2段に形成されてなることを特徴とする振動子。 - モータの回転軸に結合させる振動子として、請求項1に記載の振動子を用いるとともに、当該振動子は、上記側壁上段部がその幅方向全体に亘って、上記溝部の上記開口側から底側に向けて加締められることにより、上記回転軸に固定されるようになっていることを特徴とする小型無線機の振動発生装置。
- モータの回転軸に結合させる振動子として、請求項1に記載の振動子を用いるとともに、当該振動子は、上記側壁上段部の外壁側部分を残した溝部側部分において、上記溝部に向かうに従って漸次深くなる凹部が形成されるように、上記溝部の上記開口側から底側に向けて加締められることにより、上記回転軸に固定されるようになっていることを特徴とする小型無線機の振動発生装置。
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