JP2004325222A - 光ファイバプローブの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造プロセスを簡単化することで、製造時間の短縮及び製造コストの低減化を図ることができる光ファイバプローブの製造方法を提供する。
【解決手段】コア3とクラッド5からなる光ファイバ1の一端をクラッド5の外周からコア3の中心にかけて端部の先端角度が所定角となるように円錐研磨する円錐研磨工程と、円錐状に先鋭化された先端部7の研磨面を熱源で溶融する加熱溶融工程と、加熱溶融されたコアの先端部をエッチングにより先鋭化して、テーパ面の断面直径を光の波長以上とする検出端部を形成する先鋭化工程により光ファイバプローブを製造することで、従来の製造方法と比較し、製造コスト及び製造時間を短縮及び低減させることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】コア3とクラッド5からなる光ファイバ1の一端をクラッド5の外周からコア3の中心にかけて端部の先端角度が所定角となるように円錐研磨する円錐研磨工程と、円錐状に先鋭化された先端部7の研磨面を熱源で溶融する加熱溶融工程と、加熱溶融されたコアの先端部をエッチングにより先鋭化して、テーパ面の断面直径を光の波長以上とする検出端部を形成する先鋭化工程により光ファイバプローブを製造することで、従来の製造方法と比較し、製造コスト及び製造時間を短縮及び低減させることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プローブ走査顕微鏡の1つである近接場光学顕微鏡において、エバネッセント光を検出又は照射する光プローブとして使用される光ファイバプローブの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光の波長以下、即ちナノスケールの構造体を測定する顕微鏡としてニアフィールド光学顕微鏡(Near−field scanning optical microscope、以下、NSOMという)が用いられている。
【0003】
NSOMは、一般的な光学顕微鏡がレンズを用いて結像を行うのに対し、光ファイバプローブを用いて光の波長より小さい分解能で光学像を結像するものである。
【0004】
図5(a)は、NSOM等の近接場光学顕微鏡の一構成例を示す図である。この顕微鏡は、試料表面からの距離Lが光の波長よりも小さい、つまり極めて近接した領域に局在するエバネッセント波をプローブ102を介して検出し、試料の形状を測定するものである。
【0005】
具体的には、全反射条件下で試料にレーザ光を照射することにより生じたエバネッセント波100を、プローブ102の先鋭部101(ナノメートルサイズに設計されている)の先端で錯乱させ、錯乱されたこの光を、先鋭部101を介して光ファイバのコア内に導き、光ファイバの他端に設けられている検出器で検出することで試料の表面形状を測定している。プローブ102を試料全体上で走査させた場合、試料表面の2次元画像を得ることができる。
【0006】
ここで図5(b),(c)を参照して、従来の光ファイバプローブ102の構造を説明する。図5(b)はチッププローブの縦断面図であり、図5(c)は開口プローブの縦断面図である。
【0007】
チッププローブは、円錐状に形成された先鋭部101の先端101aが、ナノメートルサイズに先鋭化されたものである。開口プローブは、先鋭部101の先端を除き、その外周が金属等からなる遮光性被覆層104で覆われており、遮光性被覆層104が形成されていない先端が散乱光の開口部104aとなるものである。この開口部104aは、ナノメートルサイズで開口されており、この状態で光ファイバプローブ102として使用される。
【0008】
近接場光学顕微鏡の分解能は、この光ファイバプロ−ブ先端の開口径に依存する。高分解能を得るためには、チッププローブの場合、試料とプローブ102の大きさを近くすること、開口プローブの場合、試料とプローブ102の間の距離がプローブ102の大きさ以下とすることが必要である。
【0009】
そこで所定の開口径を得る光ファイバプローブの製造方法を説明する。
図5(b)に示したチッププローブの開口部101aの形成方法は、光ファイバの一端を化学エッチング液に浸漬し、光ファイバの外周から中心にかけて一端を円錐状に先鋭化することで開口部101aを形成する。
【0010】
このとき先端の開口径が小さく、且つ、分解能の高いプローブを得るためには、先鋭部101の先鋭角θをできるだけ小さくし鋭い形状とすることが必要である。しかし、先鋭角θを小さくし過ぎると、先鋭部101での光の損失が大きくなり、透過効率が低下する。そのため先鋭角θを無闇に小さくするわけにはいかず、分解能の向上に限界がある。
【0011】
一方、開口プローブの開口部104aの作製方法は、光ファイバの一端に上記円錐状の先鋭部101を形成した後、例えば真空蒸着法により先鋭部101の先端を除いてその外周に遮光性被覆層104を形成することで開口部104aを形成する。
【0012】
このような開口プローブは、先鋭部101の断面直径が波長以下となる領域(以下、先端部から断面直径が波長と等しくなる位置までの寸法をチップ長Lとする)において、光が金属に著しく吸収され透過効率が低下する。そこで透過効率を確保するために先鋭部101の先鋭角θを大きくし、チップ長Lを短くすることが必要である。しかし先鋭角θを大きくすると、遮光性被覆層104の開口部近傍での遮光性被覆層104の厚みが薄くなり、光が十分に遮蔽されないため実質的に開口径が大きくなることから分解能の低下を招くという問題がある。
【0013】
上記方法で先鋭化されたチッププローブや開口プローブは、透過効率と分解能の両立が難しい。そこで高透過効率を有しつつ高分解能が得られる光ファイバープローブの製造方法が提案された。
【0014】
図6は、特許第3260300号公報記載の上記効果を有する光ファイバプローブの製造方法を示す工程図である。
【0015】
図6(a)に示す図は、加工前の光ファイバの断面図である。同図に示すように、光ファイバ110は、コア径が10μm、クラッド径が125μmの一般的なシングルモード光ファイバである。
【0016】
次いでこの光ファイバ110を、図6(b)に示すように、一端をエッチング液に浸漬して、クラッド112の外周に形成されるエッチング液のメニスカスを利用して傾斜部113を形成する。
【0017】
このエッチング液は、液面上にこのエッチング液よりも比重の小さい液体が滴下されており、この液体を浮かせてなる浮遊層との2層からなる。その中に光ファイバ110を挿入することで、挿入した位置から表面張力により光ファイバ側面上に伝い上ってきたエッチング液(メニスカス)でクラッドの外周を溶解する。ここで具体的に浮遊層とは、エッチング液の蒸発を防止するためのものであり、例えば低粘度ジメチルシリコーンオイル等の有機溶液が用いられる。
【0018】
このようにエッチング液と接触しているクラッド112のみがエッチングにより溶解されるため、これによりクラッド112の直径が減少する。このときメニスカスの高さは、光ファイバ110の直径が減少するにつれて低くなるので、メニスカスの初期高さに相当する位置ではエッチング液と接触する時間が短く、それより下側になる程エッチング液と接触する時間が長くなる。
【0019】
従って、図6(b)に示すように、メニスカスの初期高さSに相当する位置から下側では下に行くほど直径が小さくなり、外周から内周に向かって傾斜する傾斜部113が形成される。
【0020】
このようにしてクラッド112に傾斜部113を形成した後、図6(c)に示す第1先鋭化工程により、コア111の一端をクラッド112から突出させると共に円錐状に先鋭化する。
【0021】
つまり第1先鋭化工程では、コア111のエッチング速度をR12とし、クラッド112のエッチング速度をR22とした場合に、R12<R22となるようなエッチング条件のエッチング溶液を生成し、このエッチング液で先鋭化を行う。
【0022】
このエッチング液に、先のクラッド傾斜工程で傾斜部113が形成された光ファイバ110の一端を浸漬すると、光ファイバ110の先端側ではクラッド112のエッチング速度R22がコア111のエッチング速度R12よりも大きいので、クラッド112の方がコア111よりも先にエッチングされ、コア111がクラッド112から突出してくる。光ファイバ110の外周面側では、外周面に露出しているクラッド112がエッチングされると共に、クラッド112がエッチングされることによって先端側からコア111の外周面が露出しはじめ、この外周面に露出したコア111も引き続きエッチングされる。このときコア111の外周面を先端側から露出させることにより、先端側に行く程エッチング量が多くなり直径が小さくなる。このエッチングを一定時間続けることで、図6(c)に示すように、クラッド112から突出した円錐状のコア111の一端に、先鋭部114が形成される。
【0023】
次いで図6(d)に示すように、第2先鋭化工程で先鋭部114の傾斜角を2段階に変化させる先鋭化を行う。まずコア111のエッチング速度をR13とし、クラッド112のエッチング速度をR23とした場合に、R13>R23となるようなエッチング条件のエッチング溶液を生成し、このエッチング液で先鋭化を行う。
【0024】
このエッチング液に、先の第1先鋭化工程で先鋭部114が形成された光ファイバ110の一端を浸漬すると、光ファイバ110の先端側ではコア111のエッチング速度R13がクラッド112のエッチング速度R23よりも大きいので、コア111の方がクラッド112よりも先にエッチングされ、クラッド112から突出するコア111の先端部の長さが徐々に短くなっていく。光ファイバ110の外周面側では、外周面に露出しているコア111がエッチングされると共に、クラッド112がエッチングされることによって先端側からコア111の外周面が新たに露出し、エッチングされる。このとき、コア111の外周面を先端側から露出させることにより、先端側に行く程エッチング量が多くなり傾斜状となる。
【0025】
これによりコア111には、傾斜角が異なる第1のテーパ面115と第2のテーパ面116が形成され、クラッド112には第3のテーパ面117が形成される。このようにメニスカスを利用したエッチング方法を、一般にメニスカスエッチング法という。
【0026】
次に、図7(a)〜(d)を参照して、上記製造方法と異なる光ファイバプローブの製造方法を説明する。この製造方法は、光ファイバを溶融延伸して作製することから溶融延伸法といわれている。
【0027】
まず図7(a)に示すように、コア径が10μm、クラッド径が125μmの一般的なシングルモード光ファイバを用意する。
【0028】
次いで、図7(b)に示すように、光ファイバ130の所定部分を熱源を用いて溶融し、光ファイバの両側を引きながら延伸分離する。これにより同図に示すように、クラッド132に傾斜部を形成する。
【0029】
分離後の光ファイバ130は、図7(c)に示すように、溶融延伸された一端部のクラッド132上に傾斜部133を有し、傾斜部133よりも先端側で角度の鋭い糸を引いたような形状を有している。このコア131は、延伸されたことにより先端部分の開口径が減少しており、先端面がクラッド131に埋まった形となっている。
【0030】
次に図7(d),(e)に示すように、第1先鋭化工程と第2先鋭化工程を行う。これら工程は、図6(c),(d)で説明したメニスカスエッチング法の第1及び第2先鋭化工程と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0031】
このようにして図7(d)に示すように、コア131には、傾斜角が異なる第1のテーパ面135と第2のテーパ面136が形成され、クラッド132には第3のテーパ面137が形成される。
【0032】
【特許文献1】
特許第3260300号公報
【0033】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術で述べたように、光ファイバプローブの作製には、メニスカスエッチング法、或いは溶融延伸法が適用されている。
【0034】
メニスカスエッチング法を適用した場合は、浮遊層の粘度や石英光ファイバへの漏れ性等でメニスカスの状態が決まることから、自由な傾斜角を得ること難しいという問題がある。
【0035】
また、図7(b)に示したように、光ファイバを延伸分離した場合は、分離された先端側面の平滑性が劣るため、正常なエッチング処理が行なえず、所望の先端部を得られないという問題がある。
【0036】
また、エッチング液に光ファイバを浸漬すると、光ファイバとエッチング液が反応し、エッチング液に溶解した反応生成物の作用により、浮遊層とエッチング層の境界の液組成が変化するため、エッチング液を反復使用できず、製造コストが高くつくという問題がある。
【0037】
一方、溶融延伸法を適用した場合は、溶融延伸法の最大の欠点である傾斜部のコアの細径化が起きるという問題がある。
【0038】
また、コア131を覆うクラッド132の厚みが延伸条件により異なるため、その厚みに応じてエッチング速度比の異なるエッチング溶液を生成しなければない。これは非常に手間がかかり煩雑となる他、製造時間及び製造コストが増加するため歩留まりを悪くする。
【0039】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、製造プロセスを簡単化することで、製造時間及び製造コストを低減することができる光ファイバプローブの製造方法を提供することにある。
【0040】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために請求項1記載の本発明は、コアとクラッドからなる光ファイバの一端にクラッドの外周からコアの中心にかけて円錐状に先鋭化された検出部を有する光ファイバプローブの製造方法であって、コアとクラッドからなる光ファイバの一端をクラッドの外周からコアの中心にかけてこの一端の先端角度が所定角となる円錐研磨を行う円錐研磨工程と、円錐研磨されてなる先端部のテーパ表面を熱源で溶融する加熱溶融工程と、加熱溶融されたコアの先端部をエッチングにより先鋭化する第1先鋭化工程と、エッチングにより先鋭化されたコアの先端部を、エッチングにより傾斜角を2段階に変化させて、先端部の先端側の第1テーパ面の傾斜角が、この第1のテーパ面に連続した第2のテーパ面の傾斜角よりも小さく、第2テーパ面の後端側の断面直径を光の波長以上とし、第1テーパ面の後端側の断面直径を光の波長以下とする第2先鋭化工程とを有することを要旨とする。
【0041】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の光ファイバプローブの製造方法において、加熱溶融工程は、円錐研磨されてなる先端部を、アーク放電で加熱することを要旨とする。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0043】
本発明の光ファイバプローブの製造方法は、従来のエッチング法において傾斜部を形成するときはエッチングにより形成していたこと、又、溶融延伸法において傾斜部を形成するときは延伸分離により形成していたことに代えて、円錐研磨により傾斜部を形成する点に特徴がある。
【0044】
この製造方法は、光ファイバの先端を所望の角度で研磨できることを基本とし、研磨により生じる特有の欠点を消去する作用も含んでいる。
【0045】
つまり、本発明の製造方法によれば、先端部を自由な選択角で加工することができるという特長を有する反面、後工程のエッチング処理工程において、研磨面に研磨傷が残っているとエッチングにより研磨傷が拡大される恐れがある。
【0046】
研磨傷が拡大された場合、拡大された傷が亀裂となって破断することや、亀裂部分から欠ける等の問題が生じる可能性がある。そのため研磨面の傷は極力消去しなければならない。また、先端部を自由な選択角で加工できることから極めて鋭く研磨することが可能であるが、その反面、先端部が脆くなり欠ける等の問題が生じる。
【0047】
そこで本発明の製造方法は、これら2点の欠点を解消するために、研磨後のテーパ表面をアーク放電等により半溶融させることで、研磨による傷を消去すると共に、先端部を曲面化させ先端部の欠けを防止するものである。
【0048】
具体的には、研磨によって先鋭化したコア先端部が曲面化するようにアーク放電等により研磨したテーパ面を半溶融させる加熱処理を施す。これにより無傷のテーパ表面が得られるほか、他の利点として、先端部の偏心解消効果も得られる。
【0049】
この偏心解消効果とは、つまり従来のエッチング法によるコアの先鋭化は、コアとクラッドのエッチング液に対する溶解度の差を利用するため光ファイバの平面切断面(クリーブカット、平面研磨など)では、仮にコアが1μm偏心していても先鋭化に支障は無いが、研磨法で先端を先鋭化したものでは、研磨による偏心と同時に光ファイバ自身の偏心を含めて研磨先端をコア中心に一致させることは不可能である。この問題の解決方法としては、先鋭化されたコアの先端部をアーク放電等によって半溶融させ曲面化することが効果的である。
【0050】
このようなことから本発明の製造方法では、コアとクラッドからなる光ファイバの一端をクラッドの外周からコアの中心にかけてこの一端の先端角度が所定角となる円錐研磨を行う円錐研磨工程と、円錐研磨されてなる先端部のテーパ表面を熱源で溶融する加熱溶融工程と、加熱溶融されたコアの先端部をエッチングにより先鋭化する第1先鋭化工程と、エッチングにより先鋭化されたコアの先端部を、エッチングにより傾斜角を2段階に変化させて、先端部の先端側の第1テーパ面の傾斜角が、この第1のテーパ面に連続した第2のテーパ面の傾斜角よりも小さく、第2テーパ面の後端側の断面直径を光の波長以上とし、第1テーパ面の後端側の断面直径を光の波長以下とする第2先鋭化工程とで構成することで、光ファイバプローブを作製する。
【0051】
具体的に、図1を参照して、本発明の製造方法を説明する。
図1(a)〜(e)は、本発明の光ファイバプローブ1の製造方法を示す工程図である。
【0052】
図1(a)は、加工前の光ファイバ1の縦断面図である。同図に示すように、光ファイバ1は、長尺のコア3の外周を覆うようにクラッド5が形成された一般的なシングルモード型光ファイバである。コア3は、二酸化ゲルマニウムがドープされた石英系ガラスであり、クラッド5は純粋石英ガラスである。コア3の外径は10μm程度であり、クラッド5の外径は125μm程度である。
【0053】
この光ファイバ1の一端を、図1(b)に示すように、円錐研磨機を用いてクラッド5の外周からコア3の中心にかけて先端角度φ1が55°となるまで円錐研磨し傾斜部7を形成する。これにより55°の先端角度を有する円錐状の先端部を形成することができる。
【0054】
続いて、図1(c)に示すように、円錐状の先端が半溶融する程度にアーク放電によって加熱する。これにより研磨後の傾斜部(テーパ表面)7表面の研磨傷を消去し鏡面化できる共に、円錐状の先端を曲面化することができる。具体的に形成される先端の曲率半径Rは3〜10μmの範囲となる。
【0055】
次に、図1(d)に示すように、従来のエッチング法と同様に第1先鋭化工程のエッチングを行うことでクラッド5からコア3を突出させて先鋭部9を形成する。
【0056】
つまり第1先鋭化工程では、コア3のエッチング速度をR12とし、クラッドのエッチング速度をR22とした場合に、R12<R22となるようなエッチング条件のエッチング溶液を生成し、このエッチング液に、先のクラッド傾斜工程で円錐研磨して得た傾斜部7を有する光ファイバ1の一端を浸漬する。
【0057】
光ファイバ1の先端側では、クラッド5のエッチング速度R22がコア3のエッチング速度R12よりも大きいので、クラッド5の方がコア3よりも先にエッチングされ、コア3がクラッド5から突出してくる。
【0058】
光ファイバ1の外周面側では、外周面に露出しているクラッド5がエッチングされると共に、クラッド5がエッチングされることによって先端側からコア3の外周面が露出しはじめ、この外周面に露出したコア3も引き続きエッチングされる。
【0059】
このときコア3の外周面を先端側から露出させることにより、先端側に行く程エッチング量が多くなり直径が小さくなる。このエッチングを一定時間続けることで、図1(d)に示すように、クラッド5から突出した円錐状のコア3の一端に先鋭部9が形成される。尚、このとき先鋭部9の先鋭角φ2は、80°である。
【0060】
次いで、図1(e)に示すように、第2先鋭化工程で先鋭部9の傾斜角を2段階に変化させる先鋭化を行う。
つまり第2先鋭化工程では、コア3のエッチング速度をR13とし、クラッド5のエッチング速度をR23とした場合に、R13>R23となるようなエッチグ条件のエッチング溶液を生成し、このエッチング液に、先の第1先鋭化工程で先鋭部9が形成された光ファイバ1の一端を浸漬する。光ファイバ1の先端側では、コア3のエッチング速度R13がクラッド5のエッチング速度R23よりも大きいので、コア3の方がクラッド5よりも先にエッチングされ、クラッド5から突出するコア3の先端部の長さが徐々に短くなっていく。
【0061】
光ファイバ1の外周面側では、外周面に露出しているコア3がエッチングされると共に、クラッド5がエッチングされることによって先端側からコア3の外周面が新たに露出し、エッチングされる。
【0062】
このときコア3の外周面を先端側から露出させることにより、先端側に行く程エッチング量が多くなり傾斜状となる。これによりコア3には傾斜角が異なる第1のテーパ面11と第2のテーパ面13が形成され、クラッド5には第3のテーパ面15が形成される。
【0063】
上記工程において第1先鋭化工程で行う円錐研磨は、図2に示す様な方法で円錐研磨を行う。
この円錐研磨を行なう研磨機は、円盤状の研磨板21と、この研磨板21を回転させる回転制御部(図示せず)と、光ファイバ1を握持する握持部(図示せず)と、この握持部をxyz方向に自由自在に移動させる移動制御部(図示せず)とを有し、研磨板21の表面には研磨布又は研磨紙が貼り付けられている。
【0064】
この研磨機で円錐研磨を行う場合は、まず握持部に光ファイバ1を設定し、移動制御部の制御により光ファイバ1の先端を研磨板21上に移動させる。このとき光ファイバ1と研磨板21がなす角θが所定の角度となるように調節する。そして角度調節完了後、研磨板21の回転を開始し、同時に移動制御部の制御により光ファイバ1の先端を研磨板21に接触させつつ光ファイバ1自身をコア中心軸を軸にして円周方向に回転させる。これにより光ファイバ1のクラッド5が外周から内周に向って研磨される。このとき移動制御部の制御により、光ファイバ1を研磨板21に押し付けながら研磨することで先端部が先鋭化されてゆき、最終的に先鋭角φ1を有する先端部が形成される。
【0065】
また、本発明の加熱溶融工程において、研磨機で研磨された先端部を鏡面化及び曲面化するためには光ファイバ融着器を用いる。図3は、光ファイバ融着器の概略構成を示す図である。
【0066】
この光ファイバ融着器は、対向配置された電極端子23と、この電極端子23に高電圧を供給する電圧供給部(図示せず)と、対向配置された電極端子23間に光ファイバ1を配置固定させる保持部(図示せず)と、この保持部を移動させる移動制御部とを少なくとも有している。
【0067】
この光ファイバ融着器で溶融を行う場合は、まず保持部に円錐研磨された光ファイバ1の先端部を設定し、移動制御部の制御により先端部を電極端子23間に移動させる。次いで、電圧供給部の電圧供給により電極端子23間に円錐研磨された先端部が半溶融する程度にアーク放電によって加熱すると、円錐研磨された光ファイバ1の研磨面が鏡面化及び曲面化される。
【0068】
このように円錐研磨された光ファイバ1の先端部をアーク放電を用いて加熱溶融させることで、研磨面が平滑化されると共に、先端部の曲率Rを3〜10μm程度に曲面化することができる。
【0069】
更に、本発明の製造工程において第1先鋭化工程で用いるエッチング液としては、次のようなものが適当である。
濃度40重量%NH4F水溶液:濃度50重量%HF酸:H2O の体積比が、10:1:Y(但し、Y>30)、或いは1.7:1:Y(但し、Y>1)の緩衝フッ化水素溶液である。
【0070】
従って、本発明の製造方法によれば、研磨機を用いて円錐研磨を行うので、光ファイバ1の先端を自由な角度で先鋭研磨することができる。また光ファイバ1の先端角を55°まで円錐研磨し、その後加熱溶融して曲率半径R=3〜20μmとし、更にエッチング溶液に浸漬して細径化を行うことで、光ファイバの先端に開口径を50〜100nmとする検出部を形成することができる。
【0071】
また、本発明の製造方法によれば、クラッド傾斜工程(円錐研磨)、加熱工程(先端溶融)及び第1及び第2先鋭化工程で作製することができる。これにより従来のクラッド傾斜工程で必要であったエッチング液と時間のかかるエッチング工程が、本発明では不要となる。その結果、製造コストを低減化することができると共に製造時間を短縮化できる。
【0072】
更に、本発明の製造方法によれば、円錐研磨後の研磨面をアーク放電で加熱溶融することで、研磨面に刻まれた微小傷を消去することができるので、その後のエッチング工程で研磨傷が拡大することを防止することができる。
【0073】
また、本発明の製造方法によれば、加熱溶融を行うことで、軸ずれ補正の効果を得ることができる。図4(a)は、円錐研磨によりコアの軸ずれが生じた場合の先端部の縦断面図である。同図に示すように、光ファイバ1のコア3は光ファイバ1の中心軸17に沿って必ずしも正確に設けられておらず、多くの場合、光ファイバの中心軸17から若干ずれた位置にコア3の中心軸19がある。そのため、このような光ファイバ1を円錐研磨した場合、コア先端部は必ずしもコアの中心と一致する様には露出されない。
【0074】
そこで図4(a)に示した円錐研磨後の光ファイバ先端部分に、アーク放電を行うと、図4(b)に示すように、先端部が曲面化されてコア先端が全体的に丸みを帯びた状態に均一化されるので、その後のエッチング工程において、ファイバの先端をコアの中心軸19により近づけた状態で先鋭化することができる。
【0075】
即ち、曲面化された状態でエッチング処理を行うと、先端部の露出径D1が大きく取れると共に、露出されたコアの軸方向の長さD2が短くなるので、エッチング処理の際に、均一にコア部を突出させることができる。これによりコアの軸ずれを起こしていても、その影響を小さくし、最小限の軸ずれに抑えることができる。
【0076】
上記実施の形態に係る光ファイバプローブの製造方法は、いわゆるチッププローブの製造方法であったが、光ファイバプローブはこれに限らず、このチッププローブの先鋭部先端を除いたテーパ表面に金属等からなる遮光性被覆層を形成し、遮光性被覆層で覆われていない先端の開口部から光の検出或いは照射を行うようにすることで開口プローブを作製することもできる。
【0077】
このようにプローブの外周に遮光性被覆層を形成すると、遮光性被覆層が形成された部分では光の入射が遮られ、微小開口でのみ光が選択的に取り込まれるようになるので、分解能が向上し、よりS/N比を改善することができる。
【0078】
この遮光性被覆層を形成方法は、真空蒸着法やスパッタリング法、無電解めっき法によって先鋭部に遮光性の金属膜を形成した後、この上に先端部を除いてエッチングマスクを形成して、その後エッチング処理を行い、先端部の金属膜を除去することによって形成することができる。
【0079】
また、この遮光性被覆層の材料としては、遮光性が高く、導電性が高い材質のものが望ましいことから、例えば、アルミニウム、金、銀、白金等が適切であり、中でも、アルミニウムが最も好適である。
【0080】
(実施例)
以下、本発明の具体的な実施例について実験結果に基づいて説明する。
【0081】
本実施例において使用する光ファイバは、酸化ゲルマニウム(GeO2)を添加した石英(SiO2)からなるコアと、純粋石英からなるクラッドで構成された、外径125μm、開口数NAが0.28のシングルモード型光ファイバである。この光ファイバ1の一端に、次のクラッド傾斜工程、加熱工程、第1先鋭化工程、及び第2先鋭化工程を行うことで検出部を形成した。
【0082】
(1)加工前工程
まず、上記光ファイバの先端のUV樹脂被覆を除去したのち、被覆除去部が16mmとなるように切断した。
【0083】
(2)クラッド傾斜工程(円錐研磨)
次いで、被覆を除去した光ファイバ1の一端を円錐研磨機の握持部に設定し、光ファイバ1をxyz方向に自在に移動・回転が可能な状態にする。次に、光ファイバ1の中心軸と研磨板21とのなす角θを27.5°となるように設定し、この調節完了後、研磨板21の回転を開始させる。これと共に移動制御部の制御により光ファイバ1をコア中心軸を軸に円周方向に回転させ、先端角φ1が55°となるように円錐研磨した。
【0084】
(3)加熱工程
続いて、光ファイバ融着器で円錐研磨されたコア先端部をアーク放電により加熱し、研磨後の研磨面に刻まれた研磨傷を消去して鏡面化すると共に、コア先端を曲面化した。このときの加熱溶融による先端曲率半径Rは約3.0μmであった。
【0085】
(4)第1及び第2先鋭化工程
次いで、鏡面化及び曲面化された光ファイバ1の先端を、濃度40重量%のフッ化アンモニウム水溶液と、濃度50重量%のフッ化水酸溶液と、水とからなる、体積比が10:1:1(30℃)のエッチング溶液に90分間浸漬した。
【0086】
その結果、図1(e)に示すように、円錐状に先鋭化された検出部を有する光ファイバプローブが作製できた。この検出部は、第1のテーパ面11、第2のテーパ面及び第3のテーパ面を有し、第1のテーパ面で構成される先鋭角αは20°を有していた。また第2のテーパ面で構成される先鋭角βは105°を有していた。更に、第1のテーパ面の後端側の断面直径D1は0.1μmであり、光の波長以下であった。また、第2のテーパ面の後端側の断面直径D2は0.2μmであり、光の波長以上となった。
【0087】
【発明の効果】
従って、本発明によれば、コアとクラッドからなる光ファイバの一端をクラッドの外周からコアの中心にかけて先端角度が所定角となるように円錐研磨を行い、この研磨面に生じた微小傷を加熱溶融することで鏡面化すると共に先端を曲面化することで、従来よりも製造プロセスを簡単化しつつ、従来と同等のコア軸ずれの少ない光ファイバプローブが得られる光ファイバプローブの製造方法を提供することができる。
【0088】
また、円錐研磨を行うため、コア先端の先鋭角度を目的とする角度に種々調節することができるので、使用目的に適した光ファイバプローブを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバプローブの製造工程を示す図である。
【図2】本発明の第1先鋭化工程における円錐研磨の概略構成図である。
【図3】本発明の加熱溶融工程において円錐研磨した光ファイバの先端部分を半溶融させるための装置の概略構成図である。
【図4】軸ずれ調整の作用を説明するための光ファイバプローブ断面図である。
【図5】近接場光学顕微鏡の原理を示す模式図(a)、従来の製造方法で作製されたチッププローブの断面図(b)、従来の製造方法で作製された開口プローブの断面図(c)である。
【図6】従来の光ファイバプローブの製造方法1を示す工程図である。
【図7】従来の光ファイバプローブの製造方法2を示す工程図である。
【符号の説明】
1…光ファイバ,光ファイバプローブ
3…コア
5…クラッド
7…傾斜部
9…先端部
11…第1のテーパ面
13…第2のテーパ面
15…第3のテーパ面
21…研磨板
23…電極端子
100…エバネッセント波
101,114…先鋭部
101a…先端
102…光ファイバプローブ
104…遮光性被覆層
104a…開口部
110,130…光ファイバ
111,131…コア
112,132…クラッド
113,133…傾斜部
【発明の属する技術分野】
本発明は、プローブ走査顕微鏡の1つである近接場光学顕微鏡において、エバネッセント光を検出又は照射する光プローブとして使用される光ファイバプローブの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光の波長以下、即ちナノスケールの構造体を測定する顕微鏡としてニアフィールド光学顕微鏡(Near−field scanning optical microscope、以下、NSOMという)が用いられている。
【0003】
NSOMは、一般的な光学顕微鏡がレンズを用いて結像を行うのに対し、光ファイバプローブを用いて光の波長より小さい分解能で光学像を結像するものである。
【0004】
図5(a)は、NSOM等の近接場光学顕微鏡の一構成例を示す図である。この顕微鏡は、試料表面からの距離Lが光の波長よりも小さい、つまり極めて近接した領域に局在するエバネッセント波をプローブ102を介して検出し、試料の形状を測定するものである。
【0005】
具体的には、全反射条件下で試料にレーザ光を照射することにより生じたエバネッセント波100を、プローブ102の先鋭部101(ナノメートルサイズに設計されている)の先端で錯乱させ、錯乱されたこの光を、先鋭部101を介して光ファイバのコア内に導き、光ファイバの他端に設けられている検出器で検出することで試料の表面形状を測定している。プローブ102を試料全体上で走査させた場合、試料表面の2次元画像を得ることができる。
【0006】
ここで図5(b),(c)を参照して、従来の光ファイバプローブ102の構造を説明する。図5(b)はチッププローブの縦断面図であり、図5(c)は開口プローブの縦断面図である。
【0007】
チッププローブは、円錐状に形成された先鋭部101の先端101aが、ナノメートルサイズに先鋭化されたものである。開口プローブは、先鋭部101の先端を除き、その外周が金属等からなる遮光性被覆層104で覆われており、遮光性被覆層104が形成されていない先端が散乱光の開口部104aとなるものである。この開口部104aは、ナノメートルサイズで開口されており、この状態で光ファイバプローブ102として使用される。
【0008】
近接場光学顕微鏡の分解能は、この光ファイバプロ−ブ先端の開口径に依存する。高分解能を得るためには、チッププローブの場合、試料とプローブ102の大きさを近くすること、開口プローブの場合、試料とプローブ102の間の距離がプローブ102の大きさ以下とすることが必要である。
【0009】
そこで所定の開口径を得る光ファイバプローブの製造方法を説明する。
図5(b)に示したチッププローブの開口部101aの形成方法は、光ファイバの一端を化学エッチング液に浸漬し、光ファイバの外周から中心にかけて一端を円錐状に先鋭化することで開口部101aを形成する。
【0010】
このとき先端の開口径が小さく、且つ、分解能の高いプローブを得るためには、先鋭部101の先鋭角θをできるだけ小さくし鋭い形状とすることが必要である。しかし、先鋭角θを小さくし過ぎると、先鋭部101での光の損失が大きくなり、透過効率が低下する。そのため先鋭角θを無闇に小さくするわけにはいかず、分解能の向上に限界がある。
【0011】
一方、開口プローブの開口部104aの作製方法は、光ファイバの一端に上記円錐状の先鋭部101を形成した後、例えば真空蒸着法により先鋭部101の先端を除いてその外周に遮光性被覆層104を形成することで開口部104aを形成する。
【0012】
このような開口プローブは、先鋭部101の断面直径が波長以下となる領域(以下、先端部から断面直径が波長と等しくなる位置までの寸法をチップ長Lとする)において、光が金属に著しく吸収され透過効率が低下する。そこで透過効率を確保するために先鋭部101の先鋭角θを大きくし、チップ長Lを短くすることが必要である。しかし先鋭角θを大きくすると、遮光性被覆層104の開口部近傍での遮光性被覆層104の厚みが薄くなり、光が十分に遮蔽されないため実質的に開口径が大きくなることから分解能の低下を招くという問題がある。
【0013】
上記方法で先鋭化されたチッププローブや開口プローブは、透過効率と分解能の両立が難しい。そこで高透過効率を有しつつ高分解能が得られる光ファイバープローブの製造方法が提案された。
【0014】
図6は、特許第3260300号公報記載の上記効果を有する光ファイバプローブの製造方法を示す工程図である。
【0015】
図6(a)に示す図は、加工前の光ファイバの断面図である。同図に示すように、光ファイバ110は、コア径が10μm、クラッド径が125μmの一般的なシングルモード光ファイバである。
【0016】
次いでこの光ファイバ110を、図6(b)に示すように、一端をエッチング液に浸漬して、クラッド112の外周に形成されるエッチング液のメニスカスを利用して傾斜部113を形成する。
【0017】
このエッチング液は、液面上にこのエッチング液よりも比重の小さい液体が滴下されており、この液体を浮かせてなる浮遊層との2層からなる。その中に光ファイバ110を挿入することで、挿入した位置から表面張力により光ファイバ側面上に伝い上ってきたエッチング液(メニスカス)でクラッドの外周を溶解する。ここで具体的に浮遊層とは、エッチング液の蒸発を防止するためのものであり、例えば低粘度ジメチルシリコーンオイル等の有機溶液が用いられる。
【0018】
このようにエッチング液と接触しているクラッド112のみがエッチングにより溶解されるため、これによりクラッド112の直径が減少する。このときメニスカスの高さは、光ファイバ110の直径が減少するにつれて低くなるので、メニスカスの初期高さに相当する位置ではエッチング液と接触する時間が短く、それより下側になる程エッチング液と接触する時間が長くなる。
【0019】
従って、図6(b)に示すように、メニスカスの初期高さSに相当する位置から下側では下に行くほど直径が小さくなり、外周から内周に向かって傾斜する傾斜部113が形成される。
【0020】
このようにしてクラッド112に傾斜部113を形成した後、図6(c)に示す第1先鋭化工程により、コア111の一端をクラッド112から突出させると共に円錐状に先鋭化する。
【0021】
つまり第1先鋭化工程では、コア111のエッチング速度をR12とし、クラッド112のエッチング速度をR22とした場合に、R12<R22となるようなエッチング条件のエッチング溶液を生成し、このエッチング液で先鋭化を行う。
【0022】
このエッチング液に、先のクラッド傾斜工程で傾斜部113が形成された光ファイバ110の一端を浸漬すると、光ファイバ110の先端側ではクラッド112のエッチング速度R22がコア111のエッチング速度R12よりも大きいので、クラッド112の方がコア111よりも先にエッチングされ、コア111がクラッド112から突出してくる。光ファイバ110の外周面側では、外周面に露出しているクラッド112がエッチングされると共に、クラッド112がエッチングされることによって先端側からコア111の外周面が露出しはじめ、この外周面に露出したコア111も引き続きエッチングされる。このときコア111の外周面を先端側から露出させることにより、先端側に行く程エッチング量が多くなり直径が小さくなる。このエッチングを一定時間続けることで、図6(c)に示すように、クラッド112から突出した円錐状のコア111の一端に、先鋭部114が形成される。
【0023】
次いで図6(d)に示すように、第2先鋭化工程で先鋭部114の傾斜角を2段階に変化させる先鋭化を行う。まずコア111のエッチング速度をR13とし、クラッド112のエッチング速度をR23とした場合に、R13>R23となるようなエッチング条件のエッチング溶液を生成し、このエッチング液で先鋭化を行う。
【0024】
このエッチング液に、先の第1先鋭化工程で先鋭部114が形成された光ファイバ110の一端を浸漬すると、光ファイバ110の先端側ではコア111のエッチング速度R13がクラッド112のエッチング速度R23よりも大きいので、コア111の方がクラッド112よりも先にエッチングされ、クラッド112から突出するコア111の先端部の長さが徐々に短くなっていく。光ファイバ110の外周面側では、外周面に露出しているコア111がエッチングされると共に、クラッド112がエッチングされることによって先端側からコア111の外周面が新たに露出し、エッチングされる。このとき、コア111の外周面を先端側から露出させることにより、先端側に行く程エッチング量が多くなり傾斜状となる。
【0025】
これによりコア111には、傾斜角が異なる第1のテーパ面115と第2のテーパ面116が形成され、クラッド112には第3のテーパ面117が形成される。このようにメニスカスを利用したエッチング方法を、一般にメニスカスエッチング法という。
【0026】
次に、図7(a)〜(d)を参照して、上記製造方法と異なる光ファイバプローブの製造方法を説明する。この製造方法は、光ファイバを溶融延伸して作製することから溶融延伸法といわれている。
【0027】
まず図7(a)に示すように、コア径が10μm、クラッド径が125μmの一般的なシングルモード光ファイバを用意する。
【0028】
次いで、図7(b)に示すように、光ファイバ130の所定部分を熱源を用いて溶融し、光ファイバの両側を引きながら延伸分離する。これにより同図に示すように、クラッド132に傾斜部を形成する。
【0029】
分離後の光ファイバ130は、図7(c)に示すように、溶融延伸された一端部のクラッド132上に傾斜部133を有し、傾斜部133よりも先端側で角度の鋭い糸を引いたような形状を有している。このコア131は、延伸されたことにより先端部分の開口径が減少しており、先端面がクラッド131に埋まった形となっている。
【0030】
次に図7(d),(e)に示すように、第1先鋭化工程と第2先鋭化工程を行う。これら工程は、図6(c),(d)で説明したメニスカスエッチング法の第1及び第2先鋭化工程と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0031】
このようにして図7(d)に示すように、コア131には、傾斜角が異なる第1のテーパ面135と第2のテーパ面136が形成され、クラッド132には第3のテーパ面137が形成される。
【0032】
【特許文献1】
特許第3260300号公報
【0033】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術で述べたように、光ファイバプローブの作製には、メニスカスエッチング法、或いは溶融延伸法が適用されている。
【0034】
メニスカスエッチング法を適用した場合は、浮遊層の粘度や石英光ファイバへの漏れ性等でメニスカスの状態が決まることから、自由な傾斜角を得ること難しいという問題がある。
【0035】
また、図7(b)に示したように、光ファイバを延伸分離した場合は、分離された先端側面の平滑性が劣るため、正常なエッチング処理が行なえず、所望の先端部を得られないという問題がある。
【0036】
また、エッチング液に光ファイバを浸漬すると、光ファイバとエッチング液が反応し、エッチング液に溶解した反応生成物の作用により、浮遊層とエッチング層の境界の液組成が変化するため、エッチング液を反復使用できず、製造コストが高くつくという問題がある。
【0037】
一方、溶融延伸法を適用した場合は、溶融延伸法の最大の欠点である傾斜部のコアの細径化が起きるという問題がある。
【0038】
また、コア131を覆うクラッド132の厚みが延伸条件により異なるため、その厚みに応じてエッチング速度比の異なるエッチング溶液を生成しなければない。これは非常に手間がかかり煩雑となる他、製造時間及び製造コストが増加するため歩留まりを悪くする。
【0039】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、製造プロセスを簡単化することで、製造時間及び製造コストを低減することができる光ファイバプローブの製造方法を提供することにある。
【0040】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために請求項1記載の本発明は、コアとクラッドからなる光ファイバの一端にクラッドの外周からコアの中心にかけて円錐状に先鋭化された検出部を有する光ファイバプローブの製造方法であって、コアとクラッドからなる光ファイバの一端をクラッドの外周からコアの中心にかけてこの一端の先端角度が所定角となる円錐研磨を行う円錐研磨工程と、円錐研磨されてなる先端部のテーパ表面を熱源で溶融する加熱溶融工程と、加熱溶融されたコアの先端部をエッチングにより先鋭化する第1先鋭化工程と、エッチングにより先鋭化されたコアの先端部を、エッチングにより傾斜角を2段階に変化させて、先端部の先端側の第1テーパ面の傾斜角が、この第1のテーパ面に連続した第2のテーパ面の傾斜角よりも小さく、第2テーパ面の後端側の断面直径を光の波長以上とし、第1テーパ面の後端側の断面直径を光の波長以下とする第2先鋭化工程とを有することを要旨とする。
【0041】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の光ファイバプローブの製造方法において、加熱溶融工程は、円錐研磨されてなる先端部を、アーク放電で加熱することを要旨とする。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0043】
本発明の光ファイバプローブの製造方法は、従来のエッチング法において傾斜部を形成するときはエッチングにより形成していたこと、又、溶融延伸法において傾斜部を形成するときは延伸分離により形成していたことに代えて、円錐研磨により傾斜部を形成する点に特徴がある。
【0044】
この製造方法は、光ファイバの先端を所望の角度で研磨できることを基本とし、研磨により生じる特有の欠点を消去する作用も含んでいる。
【0045】
つまり、本発明の製造方法によれば、先端部を自由な選択角で加工することができるという特長を有する反面、後工程のエッチング処理工程において、研磨面に研磨傷が残っているとエッチングにより研磨傷が拡大される恐れがある。
【0046】
研磨傷が拡大された場合、拡大された傷が亀裂となって破断することや、亀裂部分から欠ける等の問題が生じる可能性がある。そのため研磨面の傷は極力消去しなければならない。また、先端部を自由な選択角で加工できることから極めて鋭く研磨することが可能であるが、その反面、先端部が脆くなり欠ける等の問題が生じる。
【0047】
そこで本発明の製造方法は、これら2点の欠点を解消するために、研磨後のテーパ表面をアーク放電等により半溶融させることで、研磨による傷を消去すると共に、先端部を曲面化させ先端部の欠けを防止するものである。
【0048】
具体的には、研磨によって先鋭化したコア先端部が曲面化するようにアーク放電等により研磨したテーパ面を半溶融させる加熱処理を施す。これにより無傷のテーパ表面が得られるほか、他の利点として、先端部の偏心解消効果も得られる。
【0049】
この偏心解消効果とは、つまり従来のエッチング法によるコアの先鋭化は、コアとクラッドのエッチング液に対する溶解度の差を利用するため光ファイバの平面切断面(クリーブカット、平面研磨など)では、仮にコアが1μm偏心していても先鋭化に支障は無いが、研磨法で先端を先鋭化したものでは、研磨による偏心と同時に光ファイバ自身の偏心を含めて研磨先端をコア中心に一致させることは不可能である。この問題の解決方法としては、先鋭化されたコアの先端部をアーク放電等によって半溶融させ曲面化することが効果的である。
【0050】
このようなことから本発明の製造方法では、コアとクラッドからなる光ファイバの一端をクラッドの外周からコアの中心にかけてこの一端の先端角度が所定角となる円錐研磨を行う円錐研磨工程と、円錐研磨されてなる先端部のテーパ表面を熱源で溶融する加熱溶融工程と、加熱溶融されたコアの先端部をエッチングにより先鋭化する第1先鋭化工程と、エッチングにより先鋭化されたコアの先端部を、エッチングにより傾斜角を2段階に変化させて、先端部の先端側の第1テーパ面の傾斜角が、この第1のテーパ面に連続した第2のテーパ面の傾斜角よりも小さく、第2テーパ面の後端側の断面直径を光の波長以上とし、第1テーパ面の後端側の断面直径を光の波長以下とする第2先鋭化工程とで構成することで、光ファイバプローブを作製する。
【0051】
具体的に、図1を参照して、本発明の製造方法を説明する。
図1(a)〜(e)は、本発明の光ファイバプローブ1の製造方法を示す工程図である。
【0052】
図1(a)は、加工前の光ファイバ1の縦断面図である。同図に示すように、光ファイバ1は、長尺のコア3の外周を覆うようにクラッド5が形成された一般的なシングルモード型光ファイバである。コア3は、二酸化ゲルマニウムがドープされた石英系ガラスであり、クラッド5は純粋石英ガラスである。コア3の外径は10μm程度であり、クラッド5の外径は125μm程度である。
【0053】
この光ファイバ1の一端を、図1(b)に示すように、円錐研磨機を用いてクラッド5の外周からコア3の中心にかけて先端角度φ1が55°となるまで円錐研磨し傾斜部7を形成する。これにより55°の先端角度を有する円錐状の先端部を形成することができる。
【0054】
続いて、図1(c)に示すように、円錐状の先端が半溶融する程度にアーク放電によって加熱する。これにより研磨後の傾斜部(テーパ表面)7表面の研磨傷を消去し鏡面化できる共に、円錐状の先端を曲面化することができる。具体的に形成される先端の曲率半径Rは3〜10μmの範囲となる。
【0055】
次に、図1(d)に示すように、従来のエッチング法と同様に第1先鋭化工程のエッチングを行うことでクラッド5からコア3を突出させて先鋭部9を形成する。
【0056】
つまり第1先鋭化工程では、コア3のエッチング速度をR12とし、クラッドのエッチング速度をR22とした場合に、R12<R22となるようなエッチング条件のエッチング溶液を生成し、このエッチング液に、先のクラッド傾斜工程で円錐研磨して得た傾斜部7を有する光ファイバ1の一端を浸漬する。
【0057】
光ファイバ1の先端側では、クラッド5のエッチング速度R22がコア3のエッチング速度R12よりも大きいので、クラッド5の方がコア3よりも先にエッチングされ、コア3がクラッド5から突出してくる。
【0058】
光ファイバ1の外周面側では、外周面に露出しているクラッド5がエッチングされると共に、クラッド5がエッチングされることによって先端側からコア3の外周面が露出しはじめ、この外周面に露出したコア3も引き続きエッチングされる。
【0059】
このときコア3の外周面を先端側から露出させることにより、先端側に行く程エッチング量が多くなり直径が小さくなる。このエッチングを一定時間続けることで、図1(d)に示すように、クラッド5から突出した円錐状のコア3の一端に先鋭部9が形成される。尚、このとき先鋭部9の先鋭角φ2は、80°である。
【0060】
次いで、図1(e)に示すように、第2先鋭化工程で先鋭部9の傾斜角を2段階に変化させる先鋭化を行う。
つまり第2先鋭化工程では、コア3のエッチング速度をR13とし、クラッド5のエッチング速度をR23とした場合に、R13>R23となるようなエッチグ条件のエッチング溶液を生成し、このエッチング液に、先の第1先鋭化工程で先鋭部9が形成された光ファイバ1の一端を浸漬する。光ファイバ1の先端側では、コア3のエッチング速度R13がクラッド5のエッチング速度R23よりも大きいので、コア3の方がクラッド5よりも先にエッチングされ、クラッド5から突出するコア3の先端部の長さが徐々に短くなっていく。
【0061】
光ファイバ1の外周面側では、外周面に露出しているコア3がエッチングされると共に、クラッド5がエッチングされることによって先端側からコア3の外周面が新たに露出し、エッチングされる。
【0062】
このときコア3の外周面を先端側から露出させることにより、先端側に行く程エッチング量が多くなり傾斜状となる。これによりコア3には傾斜角が異なる第1のテーパ面11と第2のテーパ面13が形成され、クラッド5には第3のテーパ面15が形成される。
【0063】
上記工程において第1先鋭化工程で行う円錐研磨は、図2に示す様な方法で円錐研磨を行う。
この円錐研磨を行なう研磨機は、円盤状の研磨板21と、この研磨板21を回転させる回転制御部(図示せず)と、光ファイバ1を握持する握持部(図示せず)と、この握持部をxyz方向に自由自在に移動させる移動制御部(図示せず)とを有し、研磨板21の表面には研磨布又は研磨紙が貼り付けられている。
【0064】
この研磨機で円錐研磨を行う場合は、まず握持部に光ファイバ1を設定し、移動制御部の制御により光ファイバ1の先端を研磨板21上に移動させる。このとき光ファイバ1と研磨板21がなす角θが所定の角度となるように調節する。そして角度調節完了後、研磨板21の回転を開始し、同時に移動制御部の制御により光ファイバ1の先端を研磨板21に接触させつつ光ファイバ1自身をコア中心軸を軸にして円周方向に回転させる。これにより光ファイバ1のクラッド5が外周から内周に向って研磨される。このとき移動制御部の制御により、光ファイバ1を研磨板21に押し付けながら研磨することで先端部が先鋭化されてゆき、最終的に先鋭角φ1を有する先端部が形成される。
【0065】
また、本発明の加熱溶融工程において、研磨機で研磨された先端部を鏡面化及び曲面化するためには光ファイバ融着器を用いる。図3は、光ファイバ融着器の概略構成を示す図である。
【0066】
この光ファイバ融着器は、対向配置された電極端子23と、この電極端子23に高電圧を供給する電圧供給部(図示せず)と、対向配置された電極端子23間に光ファイバ1を配置固定させる保持部(図示せず)と、この保持部を移動させる移動制御部とを少なくとも有している。
【0067】
この光ファイバ融着器で溶融を行う場合は、まず保持部に円錐研磨された光ファイバ1の先端部を設定し、移動制御部の制御により先端部を電極端子23間に移動させる。次いで、電圧供給部の電圧供給により電極端子23間に円錐研磨された先端部が半溶融する程度にアーク放電によって加熱すると、円錐研磨された光ファイバ1の研磨面が鏡面化及び曲面化される。
【0068】
このように円錐研磨された光ファイバ1の先端部をアーク放電を用いて加熱溶融させることで、研磨面が平滑化されると共に、先端部の曲率Rを3〜10μm程度に曲面化することができる。
【0069】
更に、本発明の製造工程において第1先鋭化工程で用いるエッチング液としては、次のようなものが適当である。
濃度40重量%NH4F水溶液:濃度50重量%HF酸:H2O の体積比が、10:1:Y(但し、Y>30)、或いは1.7:1:Y(但し、Y>1)の緩衝フッ化水素溶液である。
【0070】
従って、本発明の製造方法によれば、研磨機を用いて円錐研磨を行うので、光ファイバ1の先端を自由な角度で先鋭研磨することができる。また光ファイバ1の先端角を55°まで円錐研磨し、その後加熱溶融して曲率半径R=3〜20μmとし、更にエッチング溶液に浸漬して細径化を行うことで、光ファイバの先端に開口径を50〜100nmとする検出部を形成することができる。
【0071】
また、本発明の製造方法によれば、クラッド傾斜工程(円錐研磨)、加熱工程(先端溶融)及び第1及び第2先鋭化工程で作製することができる。これにより従来のクラッド傾斜工程で必要であったエッチング液と時間のかかるエッチング工程が、本発明では不要となる。その結果、製造コストを低減化することができると共に製造時間を短縮化できる。
【0072】
更に、本発明の製造方法によれば、円錐研磨後の研磨面をアーク放電で加熱溶融することで、研磨面に刻まれた微小傷を消去することができるので、その後のエッチング工程で研磨傷が拡大することを防止することができる。
【0073】
また、本発明の製造方法によれば、加熱溶融を行うことで、軸ずれ補正の効果を得ることができる。図4(a)は、円錐研磨によりコアの軸ずれが生じた場合の先端部の縦断面図である。同図に示すように、光ファイバ1のコア3は光ファイバ1の中心軸17に沿って必ずしも正確に設けられておらず、多くの場合、光ファイバの中心軸17から若干ずれた位置にコア3の中心軸19がある。そのため、このような光ファイバ1を円錐研磨した場合、コア先端部は必ずしもコアの中心と一致する様には露出されない。
【0074】
そこで図4(a)に示した円錐研磨後の光ファイバ先端部分に、アーク放電を行うと、図4(b)に示すように、先端部が曲面化されてコア先端が全体的に丸みを帯びた状態に均一化されるので、その後のエッチング工程において、ファイバの先端をコアの中心軸19により近づけた状態で先鋭化することができる。
【0075】
即ち、曲面化された状態でエッチング処理を行うと、先端部の露出径D1が大きく取れると共に、露出されたコアの軸方向の長さD2が短くなるので、エッチング処理の際に、均一にコア部を突出させることができる。これによりコアの軸ずれを起こしていても、その影響を小さくし、最小限の軸ずれに抑えることができる。
【0076】
上記実施の形態に係る光ファイバプローブの製造方法は、いわゆるチッププローブの製造方法であったが、光ファイバプローブはこれに限らず、このチッププローブの先鋭部先端を除いたテーパ表面に金属等からなる遮光性被覆層を形成し、遮光性被覆層で覆われていない先端の開口部から光の検出或いは照射を行うようにすることで開口プローブを作製することもできる。
【0077】
このようにプローブの外周に遮光性被覆層を形成すると、遮光性被覆層が形成された部分では光の入射が遮られ、微小開口でのみ光が選択的に取り込まれるようになるので、分解能が向上し、よりS/N比を改善することができる。
【0078】
この遮光性被覆層を形成方法は、真空蒸着法やスパッタリング法、無電解めっき法によって先鋭部に遮光性の金属膜を形成した後、この上に先端部を除いてエッチングマスクを形成して、その後エッチング処理を行い、先端部の金属膜を除去することによって形成することができる。
【0079】
また、この遮光性被覆層の材料としては、遮光性が高く、導電性が高い材質のものが望ましいことから、例えば、アルミニウム、金、銀、白金等が適切であり、中でも、アルミニウムが最も好適である。
【0080】
(実施例)
以下、本発明の具体的な実施例について実験結果に基づいて説明する。
【0081】
本実施例において使用する光ファイバは、酸化ゲルマニウム(GeO2)を添加した石英(SiO2)からなるコアと、純粋石英からなるクラッドで構成された、外径125μm、開口数NAが0.28のシングルモード型光ファイバである。この光ファイバ1の一端に、次のクラッド傾斜工程、加熱工程、第1先鋭化工程、及び第2先鋭化工程を行うことで検出部を形成した。
【0082】
(1)加工前工程
まず、上記光ファイバの先端のUV樹脂被覆を除去したのち、被覆除去部が16mmとなるように切断した。
【0083】
(2)クラッド傾斜工程(円錐研磨)
次いで、被覆を除去した光ファイバ1の一端を円錐研磨機の握持部に設定し、光ファイバ1をxyz方向に自在に移動・回転が可能な状態にする。次に、光ファイバ1の中心軸と研磨板21とのなす角θを27.5°となるように設定し、この調節完了後、研磨板21の回転を開始させる。これと共に移動制御部の制御により光ファイバ1をコア中心軸を軸に円周方向に回転させ、先端角φ1が55°となるように円錐研磨した。
【0084】
(3)加熱工程
続いて、光ファイバ融着器で円錐研磨されたコア先端部をアーク放電により加熱し、研磨後の研磨面に刻まれた研磨傷を消去して鏡面化すると共に、コア先端を曲面化した。このときの加熱溶融による先端曲率半径Rは約3.0μmであった。
【0085】
(4)第1及び第2先鋭化工程
次いで、鏡面化及び曲面化された光ファイバ1の先端を、濃度40重量%のフッ化アンモニウム水溶液と、濃度50重量%のフッ化水酸溶液と、水とからなる、体積比が10:1:1(30℃)のエッチング溶液に90分間浸漬した。
【0086】
その結果、図1(e)に示すように、円錐状に先鋭化された検出部を有する光ファイバプローブが作製できた。この検出部は、第1のテーパ面11、第2のテーパ面及び第3のテーパ面を有し、第1のテーパ面で構成される先鋭角αは20°を有していた。また第2のテーパ面で構成される先鋭角βは105°を有していた。更に、第1のテーパ面の後端側の断面直径D1は0.1μmであり、光の波長以下であった。また、第2のテーパ面の後端側の断面直径D2は0.2μmであり、光の波長以上となった。
【0087】
【発明の効果】
従って、本発明によれば、コアとクラッドからなる光ファイバの一端をクラッドの外周からコアの中心にかけて先端角度が所定角となるように円錐研磨を行い、この研磨面に生じた微小傷を加熱溶融することで鏡面化すると共に先端を曲面化することで、従来よりも製造プロセスを簡単化しつつ、従来と同等のコア軸ずれの少ない光ファイバプローブが得られる光ファイバプローブの製造方法を提供することができる。
【0088】
また、円錐研磨を行うため、コア先端の先鋭角度を目的とする角度に種々調節することができるので、使用目的に適した光ファイバプローブを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバプローブの製造工程を示す図である。
【図2】本発明の第1先鋭化工程における円錐研磨の概略構成図である。
【図3】本発明の加熱溶融工程において円錐研磨した光ファイバの先端部分を半溶融させるための装置の概略構成図である。
【図4】軸ずれ調整の作用を説明するための光ファイバプローブ断面図である。
【図5】近接場光学顕微鏡の原理を示す模式図(a)、従来の製造方法で作製されたチッププローブの断面図(b)、従来の製造方法で作製された開口プローブの断面図(c)である。
【図6】従来の光ファイバプローブの製造方法1を示す工程図である。
【図7】従来の光ファイバプローブの製造方法2を示す工程図である。
【符号の説明】
1…光ファイバ,光ファイバプローブ
3…コア
5…クラッド
7…傾斜部
9…先端部
11…第1のテーパ面
13…第2のテーパ面
15…第3のテーパ面
21…研磨板
23…電極端子
100…エバネッセント波
101,114…先鋭部
101a…先端
102…光ファイバプローブ
104…遮光性被覆層
104a…開口部
110,130…光ファイバ
111,131…コア
112,132…クラッド
113,133…傾斜部
Claims (2)
- コアとクラッドからなる光ファイバの一端にクラッドの外周からコアの中心にかけて円錐状に先鋭化された検出部を有する光ファイバプローブの製造方法であって、
コアとクラッドからなる光ファイバの一端をクラッドの外周からコアの中心にかけて該一端の先端角度が所定角となる円錐研磨を行う円錐研磨工程と、
円錐研磨されてなる先端部のテーパ表面を熱源で溶融する加熱溶融工程と、
加熱溶融されたコアの先端部をエッチングにより先鋭化する第1先鋭化工程と、
前記エッチングにより先鋭化されたコアの先端部を、エッチングにより傾斜角を2段階に変化させて、前記先端部の先端側の第1テーパ面の傾斜角が、該第1のテーパ面に連続した第2のテーパ面の傾斜角よりも小さく、第2テーパ面の後端側の断面直径を光の波長以上とし、第1テーパ面の後端側の断面直径を光の波長以下とする第2先鋭化工程と、
を有することを特徴とする光ファイバプローブの製造方法。 - 前記加熱溶融工程は、
円錐研磨されてなる先端部をアーク放電で加熱することを特徴とする請求項1記載の光ファイバプローブの製造方法。
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KR100661265B1 (ko) | 2005-04-06 | 2006-12-26 | 김흥기 | 피디피의 전극 테스트용 핀 선단부의 연마장치 |
JP2008209907A (ja) * | 2007-01-23 | 2008-09-11 | Alcon Inc | 熱に強い照射プローブチップ |
CN100447603C (zh) * | 2006-12-01 | 2008-12-31 | 哈尔滨工程大学 | 抛物线形微结构单光纤光镊的熔拉制作方法 |
KR101134265B1 (ko) | 2010-04-23 | 2012-04-12 | 가천대학교 산학협력단 | 광섬유 탐침 제조 방법 및 장치 |
CN103197380A (zh) * | 2013-03-27 | 2013-07-10 | 合肥工业大学 | 一种基于光纤拉锥技术的接触式光纤微探头的制备方法 |
-
2003
- 2003-04-24 JP JP2003119746A patent/JP2004325222A/ja active Pending
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