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JP2004302086A - パターン形成体の製造方法 - Google Patents

パターン形成体の製造方法 Download PDF

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JP2004302086A JP2003094406A JP2003094406A JP2004302086A JP 2004302086 A JP2004302086 A JP 2004302086A JP 2003094406 A JP2003094406 A JP 2003094406A JP 2003094406 A JP2003094406 A JP 2003094406A JP 2004302086 A JP2004302086 A JP 2004302086A
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Abstract

【課題】本発明は、簡易な方法で、高精細な表面の特性の異なるパターンを、短時間で効率よく形成可能なパターン形成体の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、基材と、前記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層とを有するパターン形成体用基板上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を、乾式法により形成する特性変化層形成工程と、前記特性変化層上に、エネルギーを照射することにより、前記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程とを有することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーフィルタやプリント基板をはじめとして各種の用途に使用可能な、高精細なパターンを有するパターン形成体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、基材上に図案、画像、文字、回路等の種々のパターンを形成するパターン形成体の製造方法としては、各種のものが製造されている。
【0003】
例えば、印刷を例に挙げて説明すると、印刷方法の一種である平版印刷に使用する平版印刷版は、インクを受容する親油性部位と、印刷インクを受容しない部位とからなるパターンを有する平版を製造し、この平版を用いて親油性部位に印刷すべきインクの画像を形成し、形成した画像を紙等に転写して印刷している。こうした印刷では、このように印刷版原版に、文字、図形等のパターンを形成してパターン形成体である印刷版を製造し、印刷機に装着して使用している。代表的な平版印刷版であるオフセット印刷用の印刷版原版には、数多くのものが提案されている。
【0004】
例えば、オフセット印刷用の印刷版は、印刷版原版にパターンを描いたマスクを介して露光して現像する方法、あるいは電子写真方式によって直接に露光して印刷版原版上に直接に製版する方法等によって作製することができる。電子写真式のオフセット印刷版原版は、導電性基材上に酸化亜鉛等の光導電性粒子および結着樹脂を主成分とした光導電層を設け、これを感光体として電子写真方式によって露光し、感光体表面に親油性の高い画像を形成させ、続いて不感脂化液で処理し非画像部分を親水化することによってオフセット原版、すなわちパターン形成体を得る方法によって作製されている。親水性部分は水等によって浸漬して疎油性とされ、親油性の画像部分に印刷インクが受容されて紙等に転写される。しかしながら、パターン形成に当たっては不感脂化液での処理等の種々の露光後の処理が必要となる。
【0005】
また、高精細なパターンを形成する方法として、基材上に塗布したフォトレジスト層にパターン露光を行い、露光後、フォトレジストを現像し、さらにエッチングを行ったり、フォトレジストに機能性を有する物質を用いて、フォトレジストの露光によって目的とするパターンを直接形成する等のフォトリソグラフィーによるパターン形成体の製造方法が知られている。
【0006】
フォトリソグラフィーによる高精細パターンの形成は、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタの着色パターンの形成、マイクロレンズの形成、精細な電気回路基板の製造、パターンの露光に使用するクロムマスクの製造等に用いられているが、これらの方法によっては、フォトレジストを用いると共に、露光後に液体現像液によって現像を行ったり、エッチングを行う必要があるので、廃液を処理する必要が生じる等の問題点があり、またフォトレジストとして機能性の物質を用いた場合には、現像の際に使用されるアルカリ液等によって劣化する等の問題点もあった。
【0007】
カラーフィルタ等の高精細なパターンを印刷等によって形成することも行われているが、印刷で形成されるパターンには、位置精度等の問題があり、高精度なパターンの形成は困難であった。
【0008】
一方、このような問題点を解決するために、光触媒の作用により濡れ性が変化する物質等をコーティング法により基材上に形成し、エネルギー照射を行うことによりパターンを形成するパターン形成体の製造方法等が本発明者等において検討されてきた(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0009】
上述したパターン形成体の製造方法においては、エネルギーが照射された部分の特性を、光触媒の作用を利用することにより変化させて、特性の異なるパターンを形成するものである。これにより、光触媒の作用が及んだ領域のみの特性変化層の特性が変化することから、特性の差を生じさせるのに所定の時間がかかる。この時間を短縮することができれば、さらなる効率化を図ることが可能である。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−272774号公報
【特許文献2】
特開2000−249821号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、簡易な方法で、高精細な表面の特性の異なるパターンを、短時間で効率よく形成可能なパターン形成体の製造方法の提供が望まれている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層とを有するパターン形成体用基板上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を、乾式法により形成する特性変化層形成工程と、
上記特性変化層上に、エネルギーを照射することにより、上記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程と
を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
【0013】
本発明によれば、上記特性変化層を形成することから、エネルギーを照射することにより、容易に表面に特性の異なる特性変化パターンが形成されたパターン形成体を製造することができる。また、本発明においては、上記特性変化層を、乾式法により形成することから、例えば単分子膜等の、均一な膜厚の薄い特性変化層を形成することが可能となる。これにより、例えば特性変化層が濡れ性変化層である場合には、均一に表面の濡れ性が変化したパターン形成体とすることができる。また、例えば特性変化層が分解除去層である場合には、エネルギー照射部の分解除去層を、短時間で効率よく完全に分解除去することが可能となる。
【0014】
また、本発明は、基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を、乾式法により形成する特性変化層形成工程と、
上記特性変化層と、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板とを、上記特性変化層および上記光触媒処理層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射し、上記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程と
を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、上記特性変化層を形成することから、エネルギーを照射することにより、容易に表面に特性の異なる特性変化パターンが形成されたパターン形成体を製造することができる。また、本発明においては、上記特性変化層を乾式法により形成することから、例えば単分子膜等の、均一な膜厚の薄い特性変化層を形成することが可能となる。これにより、特性変化パターン形成工程において、上記特性変化層に、特性の変化したパターンを均一に効率よく形成することができるのである。
【0016】
上記発明においては、上記乾式法が、CVD法であることが好ましい。これにより、形成された特性変化層を緻密でより均一な薄膜とすることが可能となるからである。
【0017】
本発明においては、上記特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する濡れ性変化層であってもよい。これにより、パターン形成体表面に、エネルギー照射部である親液性領域と、エネルギー未照射部である撥液性領域とを形成することができ、この濡れ性の差を利用して、容易に機能性部が形成可能なパターン形成体とすることができるからである。
【0018】
また、上記濡れ性変化層が、フルオロアルキルシランを含有する層であることが好ましい。これにより、濡れ性変化層を均一な単分子膜とすることができ、均一に濡れ性変化層表面の濡れ性を変化させることができるからである。さらに、濡れ性変化層におけるエネルギー照射部である親液性領域と、エネルギー未照射部である撥液性領域との濡れ性を大きなものとすることが可能となるからである。
【0019】
本発明においてはまた、上記特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、分解除去される分解除去層であってもよい。これにより、製造されたパターン形成体表面に凹凸を有するものとすることができ、この凹凸を利用して、容易に機能性部が形成可能なパターン形成体とすることが可能となるからである。
【0020】
また、本発明は、上記記載のパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体の、特性変化パターン上に機能性部を形成する工程を有することを特徴とする機能性素子の製造方法を提供する。
【0021】
本発明によれば、上記パターン形成体の特性変化パターン上に、その特性の差を利用して機能性部を形成することから、高精細な機能性部を形成することが可能である。また、上記パターン形成体においては、特性変化層の膜厚を、均一かつ膜厚の薄いものとすることが可能であることから、機能性素子を均一に形成することができる。また上記特性変化層の膜厚が薄いことから、例えば、機能性素子が有機EL素子である場合に、正孔を通過させることができ、基材上に形成された電極層と特性変化層上に形成された有機EL層との導通をはかること等が可能となるのである。
【0022】
また、本発明は、上記機能性素子の製造方法により製造された機能性部が、画素部であることを特徴とするカラーフィルタを提供する。本発明によれば、上記パターン形成体上の特性変化パターンにおける特性の差を利用して、容易に高精細な画素部が形成されたカラーフィルタとすることができる。
【0023】
さらに本発明は、上記機能性素子の製造方法により製造された機能性部が、有機EL層であることを特徴とする有機EL素子を提供する。本発明によれば、上記特性変化パターンの特性の差を利用して、容易に高精細な有機EL層が形成された有機EL素子とすることができる。
【0024】
また、本発明は上記機能性素子の製造方法により製造された機能性部が、金属配線であることを特徴とする導電性パターン形成体を提供する。本発明によれば、上記特性変化パターンの特性の差を利用して、容易に高精細な金属配線が形成された導電性パターン形成体とすることができる。
【0025】
さらに、本発明は上記能性素子の製造方法により製造された機能性部が、有機半導体層であることを特徴とする有機半導体素子を提供する。本発明によれば、上記特性変化パターンの特性の差を利用して、容易に高精細な機能性部が形成された有機半導体とすることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明は、カラーフィルタやプリント基板をはじめとして各種の用途に使用可能な、高精細なパターンを有するパターン形成体の製造方法、およびそのパターンを利用して機能性部を形成する機能性素子の製造方法に関するものである。以下、それぞれについて詳しく説明する。
【0027】
A.パターン形成体の製造方法
まず、本発明のパターン形成体の製造方法について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法には、2つの実施態様がある。まず、第1実施態様としては、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層とを有するパターン形成体用基板上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を、乾式法により形成する特性変化層形成工程と、上記特性変化層上に、エネルギーを照射することにより、上記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程とを有することを特徴とするものである。第2実施態様としては、基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を、乾式法により形成する特性変化層形成工程と、上記特性変化層と、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板とを、上記特性変化層および上記光触媒処理層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射し、上記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程とを有することを特徴とするものである。
【0028】
本発明によれば、上記どちらの実施態様においても、上記特性変化層を有することから、特性変化パターン形成工程において、エネルギー照射を行うことにより、特性変化層の特性を変化させることができ、表面に特性の異なる特性変化パターンを有するパターン形成体を製造することができる。また、本発明においては、その特性変化層を乾式法で形成することから、特性変化層を均一かつ膜厚の薄い層とすることができる。これにより、特性変化パターン形成工程においてより均一に特性を変化させることができ、また、特性変化層が分解除去層である場合等には、短時間で効率的にエネルギーが照射された領域の分解除去層を完全に分解除去することができるのである。
【0029】
以下、上記の各実施態様についてわけて説明する。
【0030】
1.第1実施態様
まず、本発明の第1実施態様について説明する。本発明の第1実施態様におけるパターン形成体の製造方法は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層とを有するパターン形成体用基板上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を、乾式法により形成する特性変化層形成工程と、上記特性変化層上に、エネルギーを照射することにより、上記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程とを有することを特徴とするものである。
【0031】
本実施態様のパターン形成体の製造方法は、例えば図1に示すように、基材1と、その基材1上に形成された光触媒含有層2とを有するパターン形成体用基板3を準備し(図1(a))、そのパターン形成体用基板3における光触媒含有層2上に乾式法により特性変化層4を形成する特性変化層形成工程を行う(図1(b))。次に、その特性変化層4上に、例えばフォトマスク5を用いて、エネルギー6を照射することにより(図1(c))、特性変化層4の特性が変化した特性変化パターン7を形成する特性変化パターン形成工程(図1(d))を行う方法である。
【0032】
本実施態様によれば、特性変化層形成工程により、上記特性変化層を形成することから、特性変化パターン形成工程におけるエネルギー照射により、表面の特性が変化した特性変化パターンを有するパターン形成体を製造することができるのである。また、本実施態様によれば、上記特性変化層が乾式法により形成されることから、特性変化層を均一な膜厚の薄い層とすることが可能となる。これにより、特性変化パターン形成工程において均一に特性を変化させることができ、また、特性変化層が分解除去層である場合等には、短時間で効率的にエネルギーが照射された領域の分解除去層を完全に分解除去することができるのである。
【0033】
以下、本実施態様の各工程について説明する。
【0034】
(1)特性変化層形成工程
まず、本実施態様の特性変化層形成工程について説明する。本実施態様の特性変化層形成工程は、基材と、上記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層とを有するパターン形成体用基板上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を、乾式法により形成する工程である。以下、本工程の各構成について説明する。
【0035】
(特性変化層)
まず、本工程より形成される特性変化層について説明する。本工程において形成される特性変化層は、後述するパターン形成体用基板上に、乾式法により形成される層であり、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する層である。本実施態様により形成される特性変化層は、上記の特性を有する層であれば、その特性変化の種類等は特に限定されるものではない。
【0036】
ここで、乾式法による成膜とは、金属、金属酸化物、金属化合物、有機物などをガス化して基材表面に成膜する方法をいう。
【0037】
本実施態様においては、パターン形成体の用途等の点から、特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する濡れ性変化層である場合、または特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、分解除去される分解除去層である場合であることが好ましい。以下、本工程に用いられる濡れ性変化層および分解除去層について説明する。
【0038】
a.濡れ性変化層
まず、本実施態様により形成される濡れ性変化層とは、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する層である。これにより、後述する特性変化パターン形成工程において、隣接する光触媒含有層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された領域を親液性領域、エネルギー照射されていない領域を撥液性領域とすることができ、表面の濡れ性の異なる特性変化パターンを有するパターン形成体とすることができる。
【0039】
ここで、親液性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、例えば機能性部を形成する機能性部形成用組成物等に対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、機能性部形成用組成物等に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
【0040】
なお、本実施態様においては、隣接する領域の液体との接触角より、液体との接触角が1°以上低い場合には親液性領域、隣接する領域の液体との接触角より、液体との接触角が1°以上高い場合には撥液性領域とすることとする。
【0041】
ここで、エネルギー照射により形成される親液性領域と、エネルギー未照射の撥液性領域との、機能性部を形成する機能性部形成用組成物に対する接触角が、少なくとも1°以上、好ましくは5°以上、特に10°以上異なることが好ましい。
【0042】
また、本実施態様に用いられる濡れ性変化層は、エネルギー照射していない部分、すなわち撥液性領域においては、表面張力40mN/mの液体との接触角が10°以上、好ましくは表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上の濡れ性を示すことが好ましい。エネルギー照射していない部分は、本発明においては撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、例えばパターン形成体上に機能性部を形成する際に、上記機能性部形成用組成物が残存する可能性が生じるため好ましくないからである。
【0043】
また、本実施態様に用いられる濡れ性変化層は、エネルギー照射すると液体との接触角が低下して、表面張力40mN/mの液体との接触角が9°以下、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下となるような層であることが好ましい。エネルギー照射した部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高いと、例えばパターン形成体上に機能性部を形成する際に、この部分での機能性部形成用組成物の広がりが劣る可能性があり、機能性部の欠け等の問題が生じる可能性があるからである。
【0044】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
【0045】
ここで、本実施態様においては、上述したような濡れ性を有する濡れ性変化層は、乾式法により形成されるものである。本実施態様においては、乾式法であれば、特に限定されるものではなく、乾式法として具体的には、熱CVD法やプラズマCVD法等を含むCVD法、または蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法等を含むPVD法等が挙げられる。
【0046】
本実施態様においては、上記方法の中でも、プラズマCVD法や、熱CVD法を含むCVD法を用いることが好ましい。これにより、濡れ性変化層を均一かつ緻密な層とすることが可能となるからである。
【0047】
本実施態様においては、CVD法の中でも、プラズマCVD法、または熱CVD法であることが好ましい。
【0048】
プラズマCVD法は、高分子基材に熱的ダメージが加わらない程度の低温(およそ−10〜200℃程度の範囲)で所望の材料を成膜でき、さらに原料ガスの種類・流量、成膜圧力、投入電力によって、得られる膜の種類や物性を制御できるという利点があることから、後述するパターン形成体用基板に熱的ダメージを与える可能性が少ない。これにより、パターン形成体用基板として例えば熱的耐性の弱い高分子基材等を使用することが可能となり、種々の用途に使用できるパターン形成体とすることが可能となるからである。
【0049】
本実施態様における具体的な濡れ性変化層のプラズマCVD法による成膜方法としては、まず成膜時のパターン形成体用基板の温度が−20〜100℃の範囲内、中でも−10〜30℃の範囲内であることが好ましい。次に原料ガスとして下記のいずれかの材料を用い、プラズマCVD装置のプラズマ発生手段における単位面積当たりの投入電力を有機薄膜が形成可能な大きさで設定し、成膜圧力をパーティクルの発生がない程度の高い圧力(50〜300mTorr)の範囲で設定する。また、マグネット等プラズマの閉じ込め空間を形成しその反応性を高めることにより、その効果がより高く得られる。
【0050】
また、本実施態様における濡れ性変化層の形成は、常圧プラズマ装置を用いてもよい。これにより、常圧で行うことができることから、低コストで大面積の濡れ性変化層も形成することが可能となる。
【0051】
本実施態様のプラズマCVD法により形成される濡れ性変化層の原料ガスとしては、例えば有機鎖を有する珪素化合物等が挙げられる。これにより、形成された濡れ性変化層の、エネルギーが未照射の領域を有機鎖により撥液性領域とすることができ、またエネルギーが照射された領域は、光触媒の作用により、この有機鎖が分解された親液性領域とすることができるからである。
【0052】
これらの材料として、具体的には、具体的には、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラメチルシラン(TMS)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンを好ましく用いることができる他、テトラメチルジシロキサン、ノルマルメチルトリメトキシシラン等の従来公知のものを、一種または二種以上用いることができる。
【0053】
また、本実施態様における濡れ性変化層が、熱CVD法を用いて形成される場合、熱CVD法においては、原料となる物質を気化し、基材上に均一になるように材料を送り込み、酸化、還元、置換等の反応を行わせることから、例えば自己組織化単分子膜等を形成することが可能である。
【0054】
ここで、自己組織化単分子膜とは、固体/液体もしくは固体/気体界面で、有機分子同士が自発的に集合し、会合体を形成しながら自発的に単分子膜を形作っていく有機薄膜である。例として、ある特定の材料でできた基板を、その基板材料と化学的親和性の高い有機分子の溶液または蒸気にさらすと、有機分子は基板表面で化学反応し吸着する。その有機分子が、化学的親和性の高い官能基と、基板との化学反応を全く起こさないアルキル基との2つのパートからなり、親和性の高い官能基がその末端にある場合、分子は反応性末端が基板側を向き、アルキル基が外側を向いて吸着する。アルキル基同士が集合すると、全体として安定になるため、化学吸着の過程で有機分子同士は自発的に集合する。分子の吸着には、基板と末端官能基との間で化学反応が起こることが必要であることから、いったん基板表面が有機分子でおおわれ単分子膜ができあがると、それ以降は分子の吸着は起こらない。その結果、分子が密に集合し、配向性のそろった有機単分子膜ができるものである。
【0055】
濡れ性変化層が自己組織化単分子膜である場合には、後述する特性変化パターン形成工程において、濡れ性変化層表面に存在する撥水性を有する基を、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により除去することにより、容易に表面を親水性とすることが可能であり、効率的に特性変化パターンの形成を行うことが可能となるのである。
【0056】
本実施態様における熱CVD法の好ましい成膜条件としては、後述するパターン形成体用基板の耐熱温度以下であれば、原料となる物質の気化温度以上であり、かつ分解温度以下であれば特に限定されるものではないが、通常50℃〜200℃の範囲内であることが好ましい。
【0057】
また、本実施態様においては、公知である減圧熱CVD法を用いてもよい。この減圧熱CVD処理時における真空度として、十分な材料の蒸気圧が得られるように設定することができる。この蒸気圧は材料の種類により適宜選択されるものであるが、通常0.01Torr〜10Torr、中でも5Torr以下とすることができる。またこの際、基板表面との反応を促進するために、基板を加熱しながら減圧CVD法を行い、濡れ性変化層を形成することが好ましい。この場合の加熱温度は、基板および濡れ性変化層の材料によって適宜選択されるものではあるが、通常40℃〜100℃の範囲内、中でも80℃以下とされる。
【0058】
また、本実施態様において濡れ性変化層が形成される場合において、好ましい原料としては、フルオロアルキル基を分子内に有する材料を用いることができ、例えば、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを1種、または2種以上の混合物、加水分解物、もしくは共加水分解縮合物等を用いることができる。
【0059】
このような材料として具体的には、
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
(CFCF(CFCHCHSiCH(OCH
(CFCF(CFCHCHSi CH(OCH
(CFCF(CFCHCHSi CH(OCH
CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFSON(C)CCHSi(OCH
等が挙げられる。
【0060】
また、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンも用いることができる。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0061】
具体的には、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン;エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン;n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン;n−ヘキシルトリクロルシラン、n−へキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−へキシルトリイソプロポキシシラン、n−へキシルトリt−ブトキシシラン;n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン;n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン;フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン;テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン;トリクロルヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリイソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン;トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン;および、それらの部分加水分解物;および、それらの混合物を使用することができる。
【0062】
本態様においては、上記の中でもフルオロアルキルシランを含有する層であることが好ましい。濡れ性変化層がフルオロアルキルシランを含有する層である場合には、後述するパターン形成体用基板上に、上述した自己組織化単分子膜を形成することが可能であり、またエネルギー未照射部の表面に存在するフルオロアルキル基の作用により、撥液性を大きなものとすることができることから、親液性領域と撥液性領域との濡れ性の差を大きくすることが可能であるからである。
【0063】
本実施態様において形成される濡れ性変化層の膜厚としては、1nm〜1000nmの範囲内、特に5nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。
【0064】
b.分解除去層
次に、本工程により形成される分解除去層について説明する。本工程により形成される分解除去層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、分解除去される層であり、乾式法により形成された層である。これにより後述する特性変化パターン形成工程において、エネルギー照射を行うことにより、パターン形成体表面に凹凸を形成することが可能となり、この凹凸を利用して容易に機能性部を形成可能なパターン形成体とすることができるのである。また、この分解除去層が、乾式法により形成された層であることにより、均一かつ膜厚の薄い層とすることができることから、効率的にエネルギー照射された領域の分解除去層を完全に分解除去することができるのである。
【0065】
このように分解除去層は、エネルギー照射した部分が光触媒の作用により分解除去されることから、現像工程や洗浄工程を行うことなく分解除去層のある部分と無い部分からなるパターン、すなわち凹凸を有するパターンを形成することができる。
【0066】
なお、この分解除去層は、エネルギー照射による光触媒の作用により酸化分解され、気化等されることから、現像・洗浄工程等の特別な後処理なしに除去されるものであるが、分解除去層の材質によっては、洗浄工程等を行ってもよい。
【0067】
また、本実施態様に用いられる分解除去層は、凹凸を形成するのみならず、この分解除去層が、後述するパターン形成体用基板における光触媒含有層表面と比較して、液体との接触角が高いことが好ましい。これにより、分解除去層が分解除去され、光触媒含有層が露出した領域を親液性領域、上記分解除去層が残存する領域を撥液性領域とすることが可能となり、種々のパターンを形成することが容易となるからである。
【0068】
ここで、上記エネルギー照射により光触媒含有層が露出した領域である親液性領域と、エネルギー未照射の残存する分解除去層からなる領域である撥液性領域との特性が、機能性部を形成する機能性部形成用組成物が有する表面張力と同等の表面張力の液体に対する接触角において、少なくとも1°以上、好ましくは5°以上、特に10°以上異なる親液性領域および撥液性領域から形成されたパターンであることが好ましい。
【0069】
また、本実施態様の分解除去層表面の液体との接触角は、表面張力40mN/mの液体との接触角が10°以上、好ましくは表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上の値を示すことが好ましい。
【0070】
また、本実施態様において、特性変化層が分解除去層である場合には、後述する光触媒含有層が親液性であることが好ましく、具体的には、表面張力40mN/mの液体との接触角として9°以下であることが好ましく、さらに好ましくは、表面張力40mN/mの液体との接触角として5°以下、特に好ましくは1°以下であることである。
【0071】
分解除去層および光触媒含有層の濡れ性が、上記範囲内であることにより、光触媒含有層が露出した領域を親液性領域、分解除去層が残存する領域を撥液性領域とすることが可能となり、高精細なパターンの形成が容易となるからである。ここで、液体との接触角は、上述した方法により測定した値である。
【0072】
この場合、後述する光触媒含有層は表面を親液性となるように、表面処理したものであってもよい。材料の表面を親液性となるように表面処理した例としては、アルゴンや水などを利用したプラズマ処理による親液性表面処理が挙げられ、光触媒含有層上に形成する親液性の層としては、例えばテトラエトキシシランのゾルゲル法によるシリカ膜等を挙げることができる。本実施態様においては、通常光触媒含有層が露出した部分が親液性領域とされる。
【0073】
ここで、本実施態様において、上述したような分解除去層は、乾式法により形成されるものである。本実施態様の分解除去層の形成方法としては、上述した濡れ性変化層と同様に形成することができ、分解除去層の場合においても、CVD法であることが好ましい。
【0074】
分解除去層の形成がプラズマCVD法により行なわれる場合には、原料ガスとして用いられる材料としては、炭化水素系材料や、フッ素含有有機材料等を挙げることができる。具体的に炭化水素系材料としては、CH、C、C、およびCを挙げることができる。また、フッ素含有有機材料としては、CF、C、C、C,C,C、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオロエチレン)、PVF(ポリビニルフルオリド)、ETFE(エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体)等を挙げることができる。
【0075】
分解除去層の形成が、熱CVD法により行われる場合の原料としては、フッ素系や炭素系の撥液性を有する樹脂等を挙げることができる。これらのフッ素系や炭素系の材料の樹脂は、撥液性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、これらの樹脂を溶媒に溶解させて、熱CVD法により成膜することができる。
【0076】
なお、プラズマCVD法および熱CVD法の成膜条件、分解除去層の膜厚等については、上述した濡れ性変化層で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0077】
(パターン形成体用基板)
次に、本実施態様に用いられるパターン形成体用基板について説明する。本実施態様に用いられるパターン形成体用基板は、基材と、その基材上に形成された光触媒含有層とを有するものである。以下、基材および光触媒含有層について説明する。
【0078】
a.光触媒含有層
まず、本実施態様に用いられる光触媒含有層について説明する。本実施態様に用いられる光触媒含有層は、光触媒含有層中の光触媒が、隣接する特性変化層の特性を変化させるような構成であれば、特に限定されるものではなく、光触媒とバインダとから構成されているものであってもよく、光触媒単体で製膜されたものであってもよい。また、その表面の特性は特に親液性であっても撥液性であってもよいが、上述したように、特性変化層が分解除去層である場合には、表面が親液性であることが好ましい。
【0079】
光触媒含有層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本実施態様においては、このキャリアが光触媒含有層に隣接して配置される特性変化層中の化合物に作用を及ぼすものであると思われる。
【0080】
本実施態様で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0081】
本実施態様においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本実施態様ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0082】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0083】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0084】
本実施態様における光触媒含有層は、上述したように光触媒単独で形成されたものであってもよく、またバインダと混合して形成されたものであってもよい。
【0085】
光触媒のみからなる光触媒含有層の場合は、特性変化層上の特性の変化に対する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒とバインダとからなる光触媒含有層の場合は、光触媒含有層の形成が容易であるという利点を有する。
【0086】
光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能であり、これにより特性変化層上の特性を均一に変化させることが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に特性変化層上の特性を変化させることが可能となる。
【0087】
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法の他の例としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0088】
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0089】
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することかできる。
【0090】
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiXで表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0091】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基材上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0092】
バインダを用いた場合の光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0093】
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0094】
さらに、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0095】
b.基材
次に、本実施態様のパターン形成体用基板に用いられる基材について説明する。本実施態様のパターン形成体用基板に用いられる基材は、上記光触媒含有層が形成可能なものであれば、その材料等は特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途等に応じて、適宜選択されるものである。
【0096】
また本実施態様に用いられる基材は、可撓性を有するもの、例えば樹脂性フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。これは、後述するエネルギー照射工程におけるエネルギー照射方法により適宜選択されるものである。
【0097】
このように、本実施態様における基材は特にその材料を限定されるものではないが、所定の強度を有し、かつその表面が光触媒含有層との密着性が良好である材料が好適に用いられる。具体的には、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等を挙げることができる。
【0098】
なお、基材表面と光触媒含有層との密着性を向上させるために、基材上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0099】
また、本実施態様に用いられる基材は、必要とされる部材、例えばカラーフィルタにおけるブラックマトリックス等が形成されているものであってもよい。
【0100】
c.その他
また、本実施態様において、上記光触媒含有層上に、上記特性変化層の形成が困難である場合や、上記光触媒含有層と上記特性変化層との密着性が悪い場合には、上記光触媒含有層上に、密着性向上させる密着性向上層を設けてもよい。このような密着性向上層としては、例えば、ポリイミド、水酸基を含有する酸化珪素膜(シリカ膜)等が挙げられる。このような密着性向上層の形成方法は特に限定されるものではなく、例えば熱CVD法やプラズマCVD法等による化学的気相成長法、真空蒸着法、スパッタリング法等による物理的気相成長法、ゾル−ゲル法等の液相法により形成することができる。本実施態様においては、中でも高純度で均質な膜が形成可能である等の理由から、ゾル−ゲル液相法であることが好ましい。このようなゾルゲル法に用いられる材料として、シリコンアルコキシドが挙げられ、アルコキシドの種類としてはエトキシド、イソプロポキシド、ブトキシド等が挙げられる。具体的にはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等を用いることができる。
【0101】
また、有機材料と無機材料との密着性を向上させるために、シランカップリング剤を用いることも可能であり、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0102】
(2)特性変化パターン形成工程
次に、本実施態様における特性変化パターン形成工程について説明する。本実施態様における特性変化パターン形成工程は、上述した特性変化層上に、エネルギーを照射することにより、上記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成する工程である。これにより、上記特性変化層の表面の特性を変化させることができ、その表面の特性を利用することにより、容易に機能性部が形成可能なパターン形成体とすることができる。なお、本発明でいうエネルギー照射(露光)とは、光触媒含有層による光触媒の作用により、特性変化層表面の特性を変化させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
【0103】
通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒含有層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0104】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0105】
上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0106】
また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、特性変化層表面が光触媒含有層中の光触媒の作用により特性変化層表面の特性の変化が行われるのに必要な照射量とする。
【0107】
この際、光触媒含有層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な特性の変化を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0108】
2.第2実施態様
次に、本発明のパターン形成体の製造方法における第2実施態様について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法における第2実施態様は、基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を、乾式法により形成する特性変化層形成工程と、上記特性変化層と、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板とを、上記特性変化層および上記光触媒処理層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射し、上記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程とを有することを特徴とする方法である。
【0109】
本実施態様のパターン形成体の製造方法は、例えば図2に示すように、基材1上に、特性変化層4を乾式法により形成する(特性変化層形成工程、図2(a))。次に、基体8と、光触媒を含有する光触媒処理層9とを有するパターン形成体用基板10を準備し、特性変化層4と光触媒処理層9とが、所定の間隙となるように配置してエネルギーを照射する(特性変化パターン形成工程、図(b))。これにより、特性変化層4表面に、パターン状に特性の変化した特性変化パターン7が形成されるのである。
【0110】
本実施態様によれば、上記特性変化層を有することにより、上記光触媒処理層側基板を用いて、容易に特性変化層上に特性の異なる特性変化パターンを形成することが可能である。また、その特性変化層を乾式法により形成することから、特性変化層を膜厚の薄い均一な層とすることができる。これにより、特性変化パターン形成工程において、均一かつ効率的に特性変化パターンを形成することが可能となるのである。
【0111】
以下、本実施態様の各構成について説明する。
【0112】
(1)特性変化層形成工程
まず、本実施態様における特性変化層形成工程について説明する。本実施態様における特性変化層形成工程は、基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を、乾式法により形成する工程である。以下、本工程の各構成について説明する。
【0113】
(特性変化層)
まず、本工程により形成される特性変化層について説明する。本工程において形成される特性変化層は、後述する基材上に乾式法により形成される層であり、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用に特性が変化する層である。本実施態様により形成される特性変化層は、その特性変化の種類等は特に限定されるものではないが、本実施態様においては、パターン形成体の用途等の点から、特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する濡れ性変化層である場合、または特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、分解除去される分解除去層であることが好ましい。
【0114】
ここで、本工程において形成される濡れ性変化層および分解除去層の特性や形成方法等については、上述した第1実施態様の特性変化層の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0115】
(基材)
次に、本実施態様に用いられる基材について説明する。本実施態様に用いられる基材としては、上述した特性変化層が乾式法により形成されるものであれば、特に限定されるものではなく、パターン形成体の用途等に応じて、適宜選択されるものである。本実施態様に用いられる基材については、上述した第1実施対応におけるパターン形成体用基板の欄で説明した基材と同様のものを用いることが可能であるので、ここでの説明は省略する。
【0116】
なお、上記特性変化層が分解除去層である場合には、表面を親液性となるように、表面処理したものであってもよい。材料の表面を親液性となるように表面処理した例としては、アルゴンや水などを利用したプラズマ処理による親液性表面処理が挙げられ、基材上に形成する親液性の層としては、例えばテトラエトキシシランのゾルゲル法によるシリカ膜等を挙げることができる。
【0117】
また、本実施態様において、基材上に、上記特性変化層の形成が困難である場合や、基材と上記特性変化層との密着性が悪い場合には、基材上に、密着性向上させる密着性向上層を設けてもよい。このような密着性向上層としては、上述した第1実施態様のパターン形成体用基板の項で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0118】
また、本実施態様に用いられる基材は、必要とされる部材、例えばカラーフィルタにおけるブラックマトリックス等が形成されているものであってもよい。
【0119】
(2)特性変化パターン形成工程
次に、本実施態様における特性変化パターン形成工程について説明する。本実施態様における特性変化パターン形成工程は、上述した特性変化層と、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板とを、上記特性変化層および上記光触媒処理層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射し、上記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成する工程である。
【0120】
以下、本工程における各構成について説明する。
【0121】
(光触媒処理層側基板)
まず、本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板について説明する。本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板は、少なくとも光触媒処理層と基体とを有するものであり、通常は基体上に所定の方法で形成された薄膜状の光触媒処理層が形成されてなるものである。また、この光触媒処理層側基板には、パターン状に形成された光触媒処理層側遮光部やプライマー層が形成されたものも用いることができる。以下、この光触媒処理層側基板の各構成について説明する。
【0122】
a.光触媒処理層
本実施態様に用いられる光触媒処理層は、少なくとも光触媒を含有するものであり、バインダを有していても、有していなくてもよく、上述した第1実施態様の光触媒含有層と同様のものを用いることができる。
【0123】
ここで、本実施態様において用いられる光触媒処理層は、例えば図2に示すように、基体8上に全面に形成されたものであってもよいが、例えば図3に示すように、基体8上に光触媒処理層9がパターン状に形成されたものであってもよい。
【0124】
このように光触媒処理層をパターン状に形成することにより、エネルギーを照射する際に、フォトマスク等を用いてパターン照射をする必要がなく、全面に照射することにより、特性変化層上に特性の変化した特性変化パターンを形成することができるからである。
【0125】
この光触媒処理層のパターニング方法は、特に限定されるものではないが、例えばフォトリソグラフィー法等により行うことが可能である。
【0126】
また、光触媒処理層と特性変化層とを例えば密着させてエネルギー照射を行う場合には、実際に光触媒処理層の形成された部分のみの特性が変化するものであるので、エネルギーの照射方向は上記光触媒処理層と特性変化層とが対向する部分にエネルギーが照射されるものであれば、いかなる方向から照射されてもよく、さらには、照射されるエネルギーも特に平行光等の平行なものに限定されないという利点を有するものとなる。
【0127】
b.基体
本実施態様においては、図2に示すように、光触媒処理層側基板は、少なくとも基体8とこの基体8上に形成された光触媒処理層9とを有するものである。この際、用いられる基体を構成する材料は、後述するエネルギーの照射方向や、得られるパターン形成体が透明性を必要とするか等により適宜選択される。
【0128】
また本実施態様に用いられる基体は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。これは、エネルギー照射方法により適宜選択されるものである。
【0129】
なお、基体表面と光触媒処理層との密着性を向上させるために、基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0130】
c.光触媒処理層側遮光部
本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板には、パターン状に形成された光触媒処理層側遮光部が形成されたものを用いても良い。このように光触媒処理層側遮光部を有する光触媒処理層側基板を用いることにより、エネルギー照射に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行う必要がない。したがって、光触媒処理層側基板とフォトマスクとの位置合わせが不要であることから、簡便な工程とすることが可能であり、また描画照射に必要な高価な装置も不必要であることから、コスト的に有利となるという利点を有する。
【0131】
このような光触媒処理層側遮光部を有する光触媒処理層側基板は、光触媒処理層側遮光部の形成位置により、下記の二つの態様とすることができる。
【0132】
一つが、例えば図4に示すように、基体8上に光触媒処理層側遮光部11を形成し、この光触媒処理層側遮光部11上に光触媒処理層9を形成して、光触媒処理層側基板とする態様である。もう一つは、例えば図5に示すように、基体8上に光触媒処理層9を形成し、その上に光触媒処理層側遮光部11を形成して光触媒処理層側基板とする態様である。
【0133】
いずれの態様においても、フォトマスクを用いる場合と比較すると、光触媒処理層側遮光部が、上記光触媒処理層と特性変化層との配置部分の近傍に配置されることになるので、基体内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができることから、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。
【0134】
さらに、上記光触媒処理層上に光触媒処理層側遮光部を形成する態様においては、光触媒処理層と特性変化層とを所定の位置に配置する際に、この光触媒処理層側遮光部の膜厚をこの間隙の幅と一致させておくことにより、上記光触媒処理層側遮光部を上記間隙を一定のものとするためのスペーサとしても用いることができるという利点を有する。
【0135】
すなわち、所定の間隙をおいて上記光触媒処理層と特性変化層とを対向させた状態で配置する際に、上記光触媒処理層側遮光部と特性変化層とを密着させた状態で配置することにより、上記所定の間隙を正確とすることが可能となり、そしてこの状態で光触媒処理層側基板からエネルギーを照射することにより、特性変化層上に特性変化パターンを精度良く形成することが可能となるのである。
【0136】
このような光触媒処理層側遮光部の形成方法は、特に限定されるものではなく、光触媒処理層側遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられる。
【0137】
例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成されてもよい。このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
【0138】
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このよう樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0139】
なお、上記説明においては、光触媒処理層側遮光部の形成位置として、基体と光触媒処理層との間、および光触媒処理層表面の二つの場合について説明したが、その他、基体の光触媒処理層が形成されていない側の表面に光触媒処理層側遮光部を形成する態様も採ることが可能である。この態様においては、例えばフォトマスクをこの表面に着脱可能な程度に密着させる場合等が考えられ、特性変化パターンを小ロットで変更するような場合に好適に用いることができる。
【0140】
d.プライマー層
次に、本実施態様の光触媒処理層側基板に用いられるプライマー層について説明する。本実施態様において、上述したように基体上に光触媒処理層側遮光部をパターン状に形成して、その上に光触媒処理層を形成して光触媒処理層側基板とする場合においては、上記光触媒処理層側遮光部と光触媒処理層との間にプライマー層を形成してもよい。
【0141】
このプライマー層の作用・機能は必ずしも明確なものではないが、光触媒処理層側遮光部と光触媒処理層との間にプライマー層を形成することにより、プライマー層は光触媒の作用による特性変化層の特性変化を阻害する要因となる光触媒処理層側遮光部および光触媒処理層側遮光部間に存在する開口部からの不純物、特に、光触媒処理層側遮光部をパターニングする際に生じる残渣や、金属、金属イオン等の不純物の拡散を防止する機能を示すものと考えられる。したがって、プライマー層を形成することにより、高感度で特性変化の処理が進行し、その結果、高解像度のパターンを得ることが可能となるのである。
【0142】
なお、本実施態様においてプライマー層は、光触媒処理層側遮光部のみならず光触媒処理層側遮光部間に形成された開口部に存在する不純物が光触媒の作用に影響することを防止するものであるので、プライマー層は開口部を含めた光触媒処理層側遮光部全面にわたって形成されていることが好ましい。
【0143】
本実施態様におけるプライマー層は、光触媒処理層側基板の光触媒処理層側遮光部と光触媒処理層とが接触しないようにプライマー層が形成された構造であれば特に限定されるものではない。
【0144】
このプライマー層を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、光触媒の作用により分解されにくい無機材料が好ましい。具体的には無定形シリカを挙げることができる。このような無定形シリカを用いる場合には、この無定形シリカの前駆体は、一般式SiXで示され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物であり、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0145】
また、プライマー層の膜厚は、0.001μmから1μmの範囲内であることが好ましく、特に0.001μmから0.1μmの範囲内であることが好ましい。
【0146】
(エネルギー照射)
次に、本工程におけるエネルギー照射について説明する。本実施態様においては、上記特性変化層と、上記光触媒処理層側基板における光触媒処理層とを、所定の間隙をおいて配置し、所定の方向からエネルギーを照射することにより、特性変化層の特性が変化したパターンを形成することができる。
【0147】
上記の配置とは、実質的に光触媒の作用が特性変化層表面に及ぶような状態で配置された状態をいうこととし、実際に物理的に接触している状態の他、所定の間隔を隔てて上記光触媒処理層と特性変化層とが配置された状態とする。この間隙は、200μm以下であることが好ましい。
【0148】
本実施態様において上記間隙は、パターン精度が極めて良好であり、光触媒の感度も高く、したがって特性変化層の特性変化の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積の特性変化層に対して特に有効である。
【0149】
一方、例えば300mm×300mmといった大面積の特性変化層に対して処理を行う場合は、接触することなく、かつ上述したような微細な間隙を光触媒処理層側基板と特性変化層との間に形成することは極めて困難である。したがって、特性変化層が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して特性変化の効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに特性変化層上の特性変化にムラが発生しないといった効果を有するからである。
【0150】
このように比較的大面積の特性変化層をエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒処理層側基板と特性変化層との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、パターン精度の大幅な低下や光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ光触媒処理層側基板と特性変化層とが接触することなく配置することが可能となるからである。
【0151】
このように光触媒処理層と特性変化層表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。すなわち、上記範囲より光触媒処理層と特性変化層との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に特性変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が特性変化層に届き難くなり、この場合も特性変化の速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
【0152】
本実施態様においては、このような配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0153】
このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒処理層と特性変化層とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができると共に、このスペーサが接触する部分は、光触媒の作用が特性変化層表面に及ばないことから、このスペーサを上述した特性変化パターンと同様のパターンを有するものとすることにより、特性変化層上に所定の特性変化パターンを形成することが可能となる。
【0154】
本実施態様においては、このような配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0155】
ここで、照射されるエネルギーの種類や、照射方法等については、上述した第1実施態様における特性変化パターン形成工程の欄で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0156】
B.機能性素子の製造方法
次に、本発明における機能性素子の製造方法について説明する。本発明の機能性素子の製造方法は、上述したパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体の特性変化パターン上に機能性部を形成する機能性部形成工程を有することを特徴とするものである。
【0157】
本発明によれば、上記パターン形成体上に形成された特性変化パターンの特性の差を利用して、機能性部を形成することから、容易に高精細な機能性部を形成することが可能となるのである。また、上記パターン形成体においては、特性変化層の膜厚を、均一かつ膜厚の薄いものとすることが可能であることから、機能性素子を均一に形成することができる。また、上記特性変化層の膜厚が薄いことから、例えば機能性素子が有機EL素子である場合等には、正孔等を通過させることが可能となり、基材と機能性部との導通をはかることができるのである。
【0158】
ここで機能性とは、光学的(光選択吸収、反射性、偏光性、光選択透過性、非線形光学性、蛍光あるいはリン光等のルミネッセンス、フォトクロミック性等)、磁気的(硬磁性、軟磁性、非磁性、透磁性等)、電気・電子的(導電性、絶縁性、圧電性、焦電性、誘電性等)、化学的(吸着性、脱着性、触媒性、吸水性、イオン伝導性、酸化還元性、電気化学特性、エレクトロクロミック性等)、機械的(耐摩耗性等)、熱的(伝熱性、断熱性、赤外線放射性等)、生体機能的(生体適合性、抗血栓性等)のような各種の機能を意味するものである。
【0159】
本発明において用いられる機能性部を形成する機能性部形成用組成物としては、上述したように機能性素子の機能、機能性素子の形成方法等によって大きく異なるものであるが、例えば、紫外線硬化型モノマー等に代表される溶剤で希釈されていない組成物や、溶剤で希釈した液体状の組成物等を用いることができる。また、機能性部形成用組成物としては粘度が低いほど短時間にパターンが形成できることから特に好ましい。ただし、溶剤で希釈した液体状組成物の場合には、パターン形成時に溶剤の揮発による粘度の上昇、表面張力の変化が起こるため、溶剤が低揮発性であることが望ましい。
【0160】
本発明に用いられる機能性部形成用組成物としては、上記親液性領域に付着等させて配置されることにより機能性部となるものであってもよく、また親液性領域上に配置された後、薬剤により処理され、もしくは紫外線、熱等により処理された後に機能性部となるものであってもよい。この場合、機能性部形成用組成物の結着剤として、紫外線、熱、電子線等で効果する成分を含有している場合には、硬化処理を行うことにより素早く機能性部が形成できることから好ましい。
【0161】
本発明においては、上記機能性部を形成する機能性部形成工程を行う方法としては、ディップコート、ロールコート、ブレードコート、スピンコート等の塗布手段、インクジェット、電界ジェット、ディスペンサーを用いる方法等を含むノズル吐出手段等の手段を用いることが好ましい。これらの方法を用いることにより、機能性部を均一かつ高精細に形成することが、可能となるからである。
【0162】
本発明により形成される機能性素子としては、例えば、図6に示すように、特性変化層4が濡れ性変化層である場合には、その濡れ性変化層の濡れ性が変化した領域7上に、濡れ性を利用して機能性部12が形成されるものであってもよい。また、例えば図7に示すように、特性変化層4が分解除去層である場合には、その分解除去層4が形成された領域に機能性部12が形成されるものであってもよい。また、例えば図8に示すように、基材1上に遮光部13が設けられており、その基材1および遮光部13を覆うように形成された濡れ性変化層4の濡れ性変化層が変化したパターン7上に、機能性部12が形成されるものであってもよい。また、さらに例えば図9に示すように、基材1上に遮光部13が設けられており、その基材1および遮光部13を覆うように形成された分解除去層4が分解除去されたパターン7上に、機能性部12が形成されるもの等であってもよい。
【0163】
本発明により機能性部が形成される機能性素子の例としては、機能性部が画素部であるカラーフィルタ、機能性部が有機EL層である有機EL素子、機能性部が金属配線である導電性パターン形成体等が挙げられる。
【0164】
C.カラーフィルタ
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、上述した機能性素子の製造方法により製造された機能性素子の機能性部が画素部であることを特徴とするものである。本発明によれば、画素部が上述した特性変化パターンにおける特性の差を利用して形成されることから、例えば表面の濡れ性の差や凹凸等を利用して、容易にインクジェット法等を用いて、高精細に形成することが可能となるのである。また、上述した濡れ性変化層が、蒸着法により、均一に形成されていることから、高精細な画素部を形成することができ、高品質なカラーフィルタとすることができるのである。
【0165】
ここで、本発明のカラーフィルタの画素部を形成する材料としては、特に限定されるものではなく、通常、カラーフィルタの製造に用いられているものを用いることができる。また画素部の形状は、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の公知のいずれの配列とすることも可能である。
【0166】
また、上述した基材上に遮光部が形成されている場合には、ブラックマトリックスとして用いることが可能となる。したがって、上述した本発明のパターン形成体上に機能性部としての画素部(着色層)を形成すれば、別途ブラックマトリックスを形成すること無しに、カラーフィルタを得ることが可能である。
【0167】
D.有機EL素子
次に、本発明の有機EL素子について説明する。本発明の有機EL素子は、上述した機能性素子の製造方法における機能性部が有機EL層であることを特徴とするものである。本発明によれば、上記機能性部が有機EL層であることにより、上述した特性変化パターンを利用して、容易に有機EL層の塗り分け等を行うことが容易であり、高精細な有機EL素子を製造することが可能となる。また、本発明においては、上記特性変化層が蒸着法により形成された均一かつ膜厚の薄い膜とすることができ、例えば表面に第1電極層が形成された基材上に、特性変化層を形成した場合であっても、特性変化層が薄いことから、正孔等を通過させることができ、これにより特性変化層上の特性変化パターンを利用して形成された有機EL層と、第1電極層との間で導通をはかることが可能となるのである。本発明の有機EL素子は、この有機EL層上に第2電極層を形成すること等により得ることができる。
【0168】
ここで、本発明の有機EL素子に用いられる有機EL層や、第1電極層、第2電極層等は、通常有機EL素子に用いられる材料を用いることが可能である。
【0169】
E.導電性パターン形成体
次に、本発明の導電性パターン形成体について説明する。本発明の導電性パターン形成体は、上述した機能性素子の製造方法において、機能性部が金属配線であることを特徴とするものである。本発明によれば、金属配線を、上述した特性変化パターンの例えば表面の濡れ性の差や凹凸沿って、例えば電界ジェット法等を用いて金属ペースト等を塗布することにより、高精細な金属配線が形成された導電性パターン形成体とすることができる。
【0170】
また、本発明においては、上記特性変化層が蒸着法により形成された均一な膜とすることができることから、導電性パターンを高精細に形成することができるのである。
【0171】
ここで本発明の場合、上記特性変化層上に導電性パターンが形成されていることから、特性変化層の電気抵抗が、1×10Ω・cm〜1×1018Ω・cm、中でも1×1012Ω・cm〜1×1018Ω・cmの範囲内であるパターン形成体用塗布液を用いることが好ましい。これにより、優れた導電性パターン形成体とすることが可能となるからである。
【0172】
F.有機半導体素子
次に、本発明の有機半導体素子について説明する。本発明の有機半導体素子は、上述した機能性素子の製造方法における機能性部が有機半導体層であることを特徴とするものである。本発明によれば、上記機能性部を、上述した特性変化パターンを利用して、容易に高精細に形成することが可能である。
【0173】
本発明の有機半導体素子は、上述した特性変化パターンの、例えば表面の濡れ性の差や凹凸に沿って、インクジェット法等により可溶性の高分子系有機半導体材料を塗布することにより、高精細な有機半導体素子とすることができるのである。
【0174】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0175】
【実施例】
以下、本発明について、実施例を通じてさらに詳述する。
【0176】
<実施例1>
(熱CVD法による濡れ性変化層の作製方法)
フルオロアルキルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、品名;TSL8233)1.42gと、イソプイソプロピルアルコール30gとからなる溶液を容器に入れ、240℃に加熱したオーブンに投入し、フルオロアルキルシランを気化させることにより、オーブン内をフルオロアルキルシラン雰囲気にした。前記フルオロアルキルシラン雰囲気のオーブン内にガラス基板を投入し、ガラス基板表面にフルオロアルキルシランを蒸着させた。このようにして作製した濡れ性変化性基板は透明で、水との接触角は100°であり、表面張力が40mN/mの液体との接触角は79°であった。
【0177】
(光触媒含有層側基板の作製方法)
アルコキシシラン含有酸化チタンゾル無機コーティング剤(石原産業製 ST−K03)をパターンピッチが76μm×259μmで、且つ、上記ブラックマトリックスの線幅(23μm)よりも狭い幅(10μm)の遮光パターンを有するフォトマスクにスピンコーティング法によりコートし、10分間150℃で加熱後、厚さ0.1μmの光触媒処理層側基板を調整した。
【0178】
(露光による特性変化パターンの形成)
上記の光触媒処理層側基板を介して、上記濡れ性変化層に超高圧水銀ランプにより、30mW/cm(356nm)の照度で3分間紫外線照射を行い、上記濡れ性変化層上に親液性領域を形成した。この際、エネルギー未照射部である撥液性領域における濡れ標準試薬(40mN/m)に対する接触角を接触角測定器(協和界面科学社製 CA−Z製)で測定した結果、78°であり、エネルギー照射部である親液性領域における接触角は9°であった。
【0179】
(カラーフィルタ)
次に、インクジェットヘッドに下記に示す組成よりなる各色の画素部用着色インクを充填した。
【0180】
[青色画素部用着色インクの組成]
・顔料(C.I.ピグメントブルー15:6):5重量部
・高分子分散剤(AVECIA社製、ソルスパース24000):2重量部
・バインダー(ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体):3重量部
・モノマー1(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート):2重量部
・モノマー2(トリプロピレングリコールジアクリレート):5重量部
・開始剤(2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モンフォリノプロパン)−1−オン:2重量部
・溶剤(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、29.9dyn/cm):81重量部
[赤色画素部用着色インクの組成]
・顔料(CC.I.ピグメントレッド254):5重量部
・高分子分散剤(AVECIA社製、ソルスパース24000):2重量部
・バインダー(ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体):3重量部
・モノマー1(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート):2重量部
・モノマー2(トリプロピレングリコールジアクリレート):5重量部
・開始剤(2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モンフォリノプロパン)−1−オン:2重量部
・溶剤(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、29.9dyn/cm):81重量部
[緑色画素部用着色インクの組成]
・顔料(C.I.ピグメントグリーン36):5重量部
・高分子分散剤(AVECIA社製、ソルスパース24000):2重量部
・バインダー(ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体):3重量部
・モノマー1(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート):2重量部
・モノマー2(トリプロピレングリコールジアクリレート):5重量部
・開始剤(2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モンフォリノプロパン)−1−オン:2重量部
・溶剤(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、29.9dyn/cm):81重量部
次に、当該ヘッドから青色画素部用着色インクを、基板上に点在する青色用の各画素部形成領域の中心部にドロップ径30μmで滴下した。インクは親液性の画素部形成領域にのみ濡れ広がった。
【0181】
続いて上述したパターン露光により基板上に赤色画素部形成領域を形成し、赤色画素部用着色インクをヘッドから基板上に点在する赤色用の各画素部形成領域の中心部に、ドロップ径30μmで滴下した。さらに、基板上に緑色画素部形成領域を形成し、緑色画素部用着色インクを、ヘッドから緑色用の各画素部形成領域の中心部に、ドロップ径30μmで滴下した。その後、各色の着色インク層を80℃、3分間乾燥させて、水銀灯(波長365nm)により70mW/cmの照度で30秒間、光線を照射して、さらに、230℃で30分間熱処理を行ってカラーフィルタを形成した。
【0182】
<実施例2>
(プラズマCVD法による濡れ性変化層の作製方法)
反応室内を5×10−4Pa以下の圧力に排気した後、放電ガスとしてArをTa製パイプから約30sccm導入した。この時反応室内の圧力は約0.1Paであった。この状態にしてプラズマビ−ム発生陰極を加熱した後約50Aの放電電流(陰極電流)の定常的なプラズマを発生させた。この電流の約90%は陽極から流れ、残りは電子加速用電極から流れた。この際、電子加速用電極の陰極に対する電圧は約40Vであった。この状態で反応ガス供給ノズルから酸素ガスを300sccm導入した。次に、ペンタデカフルオロ−1、1、2、2−テトラヒドロデシル−1−トリエトキシシラン(CO)Si(C17)を恒温容器に入れて60℃の温度に保持し、そこにキャリアガスArを一定流量200sccm流し込んでバブリングを行い、原料の蒸気を含んだ供給ガスを生成し、高温に保温された配管を通して原料ガス供給ノズルより反応室に導入した。
【0183】
あらかじめITO基板を約300℃になるように加熱しておき、前述のプラズマの発生した状態にしてから、これらの基板を反応室に移動し保持した。一定時間原料ガスを流した後、放電を停止し基板を反応室より取り出した。このようにして作製した濡れ性変化層は透明で、純水との接触角は110°であり、表面張力が40mN/mの液体との接触角は83°であった。
【0184】
(光触媒含有層側基板の作製方法)
アルコキシシラン含有酸化チタンゾル無機コーティング剤(石原産業製 ST−K03)を厚さ50μmのラインアンドスペースで厚さ0.4μmのクロム製ブラックマトリックスが形成された石英ガラス基板上にスピンコーティング法によりコートし、10分間150℃で加熱後、厚さ0.1μmの光触媒含有層側基板を調整した。
【0185】
(露光による特性変化パターンの形成)
上記工程により得られた濡れ性変化層に上記光触媒含有層側基板を介して、有機EL素子における絶縁層と絶縁層との間となるようにパターン状に光照射し、濡れ性を変化させた。光照射は、水銀灯(365nm)により、70mW/cmの照度で50秒間パターン照射することにより行った。
【0186】
(有機EL素子の作製)
下記の組成の発光材料を含む発光材料を含むEL層(発光層)形成用塗布液を調製した。
【0187】
[EL層形成用塗布液の組成]
・ポリビニルカルバゾール:7重量部
・発光色素(R,GまたはB ):0.1重量部
・オキサジアゾール化合物:3重量部
・トルエン:5050重量部
上記のR,G,Bの各色のEL層(発光層)形成用塗布液をインクジェット塗布装置を使用して、パターン状に光照射した濡れ性変化層上に、交互に配列するように塗り分けた後、80℃で30分間乾燥させて、それぞれ膜厚1000Åの3色の発光層を光照射部のみ交互形成した。
【0188】
次に、第2電極としてLiFを5nm、Alを2000Åの膜厚で300μmのライン幅、ピッチ100μmでマスク蒸着によりITOラインと直交する方向に形成し、フルカラーのディスプレイを作製した。
【0189】
このようにして作製した有機EL素子は、特性変化層が薄いことから、正孔を通過させることができ、これにより特性変化層上の特性変化パターンを利用して形成された有機EL層と、第1電極(ITO)との間で導通をはかることができた。
【0190】
<実施例3>
(熱CVD法による濡れ性変化層の作製方法)
オクタデシルトリエトキシシラン(信越化学製)1.0g、エタノール18.5gからなる溶液を容器に入れ、165℃に加熱したオーブンに投入し、オクタデシルトリエトキシシランを気化させることにより、オーブン内をオクタデシルトリエトキシシラン雰囲気にした。前記オクタデシルトリエトキシシラン雰囲気のオーブン内にガラス基板を投入し、ガラス基板表面にオクタデシルトリエトキシシランを蒸着させた。このようにして作製した濡れ性変化層は透明で、水との接触角は88°であり、表面張力が40mN/mの液体との接触角は58°であった。
【0191】
(光触媒含有層側基板の作製方法)
アルコキシシラン含有酸化チタンゾル無機コーティング剤(石原産業製 ST−K03)を厚さ50μmのラインアンドスペースで厚さ0.4μmのクロム製ブラックマトリックスが形成された石英ガラス基板上にスピンコーティング法によりコートし、10分間150℃で加熱後、厚さ0.1μmの光触媒含有層側基板を調整した。
【0192】
(露光による特性変化パターンの形成)
この光触媒含有層側基板を介して、超高圧水銀ランプにより、30mW/cm(356nm)の照度で10分間紫外線照射を行い基板内に親液性領域を形成した。この際、撥液性領域における濡れ標準試薬(40mN/m)に対する接触角を接触角測定器(協和界面科学社製 CA−Z製)で測定した結果、58°であり、親液性領域における接触角は9°であった。
【0193】
(金属配線パターンの形成)
上記基板を銀コロイド水溶液(濃度20wt%)に浸漬し、10mm/sec.で引き上げることにより、親水性領域のみ上記銀コロイド水溶液がパターン上に付着していた。この銀コロイド水溶液のパターンを300℃で20分間加熱することにより基板上に銀がパターニングされた導電性パターン形成体を得た。
【0194】
<比較例1>
シリコンテトラエトキシドとペンタデカフルオロ‐1、1、2、2、‐テトラヒドロデシル‐1−トリエトキシシランを50:1のモル比で含有するエチルアルコール溶液を作製し、この溶液にITO基板を漬けてゆっくり垂直にして引き上げ、300℃で1時間加熱して、ITO基板上にフッ素を含有する撥水性二酸化珪素被膜を被覆した。この被膜は約200nmの厚みを有していた。実施例2と同じ方法で有機EL素子を作製した結果、特性変化層が厚いことから、正孔を通過させることができず、これにより特性変化層上の特性変化パターンを利用して形成された有機EL層と、第1電極(ITO)との間で導通をとることが出来なかった。
【0195】
<実施例4>
(パターン形成体用基板の作製方法)
アルコキシシラン含有酸化チタンゾル無機コーティング剤(石原産業製 ST−K01)をパターンピッチが100μm×259μmで、且つ、ブラックマトリックスの線幅23μmの遮光パターンを有するBMガラス基板上にスピンコーティング法によりコートし、30分間150℃で加熱後、厚さ0.15μmの透明なパターン形成体用基板を調整した。
【0196】
(濡れ性変化層の製造方法)
フルオロアルキルシラン(東芝シリコーン(株)製、品名;TSL8233)1.42gと、イソプロピルアルコール30gとからなる濡れ性変化層用溶液を容器に入れ、240℃に加熱したオーブンに投入し、フルオロアルキルシランを気化させることにより、オーブン内をフルオロアルキルシラン雰囲気にした。前記フルオロアルキルシラン雰囲気のオーブン内にガラス基板を投入し、ガラス基板表面にフルオロアルキルシランを蒸着させた。このようにして作製した濡れ性変化層の接触角を接触角測定器(協和界面科学社製 CA−Z製)で測定した結果、水との接触角は100°であり、表面張力が40mN/mの液体との接触角は79°であった。
【0197】
(露光による濡れ性変化パターンの形成)
次に、パターンピッチが76μm×259μmで、且つ、上記ブラックマトリックスの線幅(23μm)よりも狭い幅(10μm)の遮光パターンを有するフォトマスクを介して、前記濡れ性変化層側から、超高圧水銀ランプにより、70mW/cm(356nm)の照度で1分間紫外線照射を行い、パターン形成体を得た。
【0198】
(カラーフィルタ)
このパターン形成体の露光部(濡れ性変化部位、親インク性領域)に以下の組成の各色画素部用組成物を液体精密塗布装置(EED社製ディスペンサー、商品名;1500XL−15)にて吐出し、100℃、45分間の加熱処理を施して赤色パターン、青色パターン、および緑色パターンからなる画素部を形成した。さらに、保護層として2液混合型熱硬化剤(JSR(株)製、商品名;SS7265)をスピンコートして画素部上に塗布し、200℃、30分の硬化処理を施して保護層を形成し、カラーフィルタを得た。
【0199】
[画素部形成用組成]
・顔料(ピグメントレッド168、ピグメントグリーン36、あるいはピグメントブルー):3重量部
・非イオン界面活性剤(日光ケミカルズ(株)製、商品名;NIKKOL BO−10TX):0.05重量部
ポリビニルアルコール(信越化学工業(株)、商品名;信越ポバールAT):0.6重量部
水:97重量部
【0200】
【発明の効果】
本発明によれば、上記特性変化層を形成することから、エネルギーを照射することにより、容易に表面に特性の異なる特性変化パターンが形成されたパターン形成体を製造することができる。また、本発明においては、上記特性変化層を、乾式法により形成することから、例えば単分子膜等の、均一な膜厚の薄い特性変化層を形成することが可能となる。これにより、例えば特性変化層が濡れ性変化層である場合には、均一に表面の濡れ性が変化したパターン形成体とすることができる。また、例えば特性変化層が分解除去層である場合には、エネルギー照射部の分解除去層を、短時間で効率よく完全に分解除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパターン形成体の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明のパターン形成体の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図3】本発明における光触媒処理層側基板の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明における光触媒処理層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明における光触媒処理層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明における機能性素子の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明における機能性素子の他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明における機能性素子の他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明における機能性素子の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 … 基材
2 … 光触媒含有層
3 … パターン形成体用基板
4 … 特性変化層
5 … フォトマスク
6 … エネルギー
7 … 特性変化パターン
8 … 基体
9 … 光触媒処理層
10 … 光触媒処理層側基板
11 … 光触媒処理層側遮光部

Claims (11)

  1. 基材と、前記基材上に形成された少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層とを有するパターン形成体用基板上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を、乾式法により形成する特性変化層形成工程と、
    前記特性変化層上に、エネルギーを照射することにより、前記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程と
    を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法。
  2. 基材上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層を、乾式法により形成する特性変化層形成工程と、
    前記特性変化層と、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板とを、前記特性変化層および前記光触媒処理層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、エネルギーを照射し、前記特性変化層の特性が変化した特性変化パターンを形成する特性変化パターン形成工程と
    を有することを特徴とするパターン形成体の製造方法。
  3. 前記乾式法が、CVD法であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターン形成体の製造方法。
  4. 前記特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する濡れ性変化層であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
  5. 前記濡れ性変化層が、フルオロアルキルシランを含有する層であることを特徴とする請求項4に記載のパターン形成体の製造方法。
  6. 前記特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、分解除去される分解除去層であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法により製造されたパターン形成体の、特性変化パターン上に機能性部を形成する工程を有することを特徴とする機能性素子の製造方法。
  8. 請求項7に記載の機能性素子の製造方法により製造された機能性部が、画素部であることを特徴とするカラーフィルタ。
  9. 請求項7に記載の機能性素子の製造方法により製造された機能性部が、有機EL層であることを特徴とする有機EL素子。
  10. 請求項7に記載の機能性素子の製造方法により製造された機能性部が、金属配線であることを特徴とする導電性パターン形成体。
  11. 請求項7に記載の機能性素子の製造方法により製造された機能性部が、有機半導体層であることを特徴とする有機半導体素子。
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