JP2004350427A - 回転電機とその回転子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】径方向に交互にNS磁極を形成すべく着磁された極数個の主磁極磁石32と、主磁極磁石32の周方向両側面より磁束を流通させる極数個のヨーク磁石33と、主磁極磁石32とヨーク磁石33とが密着固定された内側円筒部310、外側円筒部311等からなる熱良導性の金属放熱部材としての通風部を有するハブとを備えて車両用交流発電機100の回転子3が構成されている。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二輪車、乗用車、トラックやその他の一般産業用に用いられる回転電機とその回転子に関する。
【0002】
【従来の技術】
径方向に交互にNS磁極を形成すべく着磁した極数個の主磁極磁石と、この主磁極磁石の周方向両側面より磁束を流通させる極数個のヨーク磁石とをいわゆるハルバッハアレイといわれる交互配列とした磁石回転子は、その磁極において磁束の集中を高めることができ、また継鉄を必要としないので、小型軽量高性能の回転電機を実現できることが知られている。例えば、このような回転電機の具体的な構成として、主磁極磁石とヨーク磁石の磁石群とを樹脂製ハブに内包した継鉄のない樹脂製ロータを用いた軽量のモータが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−197287号公報(第4−8頁、図1−16)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1等に開示されたハルバッハアレイの回転子には以下のような問題があった。
(1)主磁極磁石とヨーク磁石とが相互に対向しており、減磁作用を及ぼし合うため、自己減磁が生じやすいという問題点があった。モータの場合には過大な電流を流せない、すなわち動力負荷耐量が低く、また発電機の場合には電機子反作用も加わることから高温下において磁石特性が低下した際に磁石が不可逆減磁しやすい懸念があり、高温に弱いあるいは小型高性能を得にくいという問題点があった。
【0005】
(2)主磁極磁石とヨーク磁石とは相互に強い力で反発しあうため磁石間に空間隙間が生じやすく、そのため回転バランスが崩れたり、バランス修正がしにくいという問題点があった。
(3)主磁極磁石とヨーク磁石とは外周部において同一極性が対向して減磁しあう配列であるため、ヨーク磁石が強すぎると主磁極磁石が減磁し、主磁極磁石が強すぎるとヨーク磁石が減磁しやすく、特に反作用磁界の位置が制御されない発電機においては電機子反作用電流がさまざまな位置で磁石に逆磁界を加えるため、これらの減磁を避けることが困難であるという問題点があった。
【0006】
(4)ロータ全周に磁気回路通路も兼ねる高磁束密度の磁石を配列する構造であるため、性能はよくても高価にならざるを得ないという問題点があった。
(5)磁束の集中する主磁極が磁石材であるために鉄心磁極のような局部的高磁束密度がとれないことから、磁束集中効果を与えるハルバッハアレイにしても固定子に鎖交できる磁束はトータルとして少ないものにとどまるという問題点があった。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、(1)高温でしかもさまざまな位置に逆磁界が加わりやすい発電機での熱的減磁の低減、(2)バランス確保、(3)信頼性確保、(4)磁石の低コスト化、(5)有効磁束の増加、を実現することができる回転電機およびその回転子を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の回転電機の回転子は、径方向に交互にNS磁極を形成すべく着磁された極数個の主磁極磁石と、主磁極磁石の周方向両側面より磁束を流通させる極数個のヨーク磁石と、主磁極磁石とヨーク磁石とが密着固定された熱良導性の金属放熱部材とを備えている。このように、主磁極磁石とヨーク磁石とを熱良導性の金属放熱部材に密着固定することにより、これらの磁石の温度を低減することが可能になり、温度上昇に伴う特性低下(熱的減磁)を防止することができ、高温環境下での信頼性を向上させることが可能になる。
【0009】
また、上述した金属放熱部材を固定する回転軸をさらに備え、金属放熱部材と回転軸との間を中空構造とした冷却通風部が形成されていることが望ましい。これにより、中空構造の冷却通風部を通る冷却風によって冷却された金属放熱部材の吸熱効果により主磁極磁石とヨーク磁石の大幅な温度低減が可能になり、特性低下の防止による信頼性向上が可能になる。
【0010】
また、上述した金属放熱部材は、主磁極磁石とヨーク磁石のそれぞれの外周を覆う円筒部も形成していることが望ましい。これにより、主磁極磁石とヨーク磁石の温度がその外周の円筒部の吸熱効果によって低減されるため、さらに特性低下の防止が可能になる。また、主磁極磁石とヨーク磁石の外周を円筒部で拘束することにより、回転中あるいはそれぞれの磁石同士の反発力によって空間隙間が生じにくくなり、回転バランスが崩れたり、バランス修正がしにくくなることを防止することができる。すなわち、高温となる回転電機での熱的減磁信頼性とバランス安定性の維持向上が可能になる。
【0011】
また、上述した金属放熱部材は、主磁極磁石とヨーク磁石のそれぞれの軸方向両端に設けられて主磁極磁石とヨーク磁石の軸方向移動を規制する基板部と羽根状放熱部とを有することが望ましい。これにより、基板部の吸熱効果および回転時の羽根状放熱部の放熱効果によって主磁極磁石とヨーク磁石のさらなる温度低減にともなう特性低下の防止が可能になる。また、主磁極磁石とヨーク磁石の軸方向両端が基板部によって拘束されるため、回転中あるいはこれらの磁石同士の反発力による空間隙間が生じにくくなり、回転バランスが崩れたり、バランス修正がしにくくなることを防止することができる。
【0012】
また、上述した主磁極磁石とヨーク磁石のそれぞれとその周囲部材との間に形成された隙間には、空気よりも熱伝導率が良好な熱伝導固着材が充填されていることが望ましい。これにより、主磁極磁石とヨーク磁石の熱が周囲に伝わりやすくなるため、これらの磁石の温度をさらに低減することが可能になる。また、主磁極磁石とヨーク磁石が固定されるため、回転バランスが崩れることをさらに防止することができる。
【0013】
また、本発明の回転電機の回転子は、径方向に交互にNS磁極を形成すべく着磁された極数個の主磁極磁石と、主磁極磁石の周方向両側面より磁束を流通させる極数個のヨーク磁石とを備え、少なくとも主磁極磁石は、径方向外側に向かうに従って周方向に沿った幅が広くなるように設定されている。このように、主磁極磁石の形状を外径側に末広がり形状とすることにより、ヨーク磁石から流入する磁束の流れが妨げられることがなく、所定の磁石使用量において多くの磁束を流すことが可能になり、コスト上昇を抑えつつ高出力化を図ることができる。
【0014】
また、本発明の回転電機の回転子は、径方向に交互にNS磁極を形成すべく着磁された極数個の主磁極磁石と、主磁極磁石の周方向両側面より磁束を流通させる極数個のヨーク磁石とを備え、主磁極磁石とヨーク磁石のアークレシオをほぼ2対1に設定している。これにより、ヨーク磁石から合流する磁束を主磁極磁石自身の磁束とほぼ同じにすることができ、所定の磁石使用量において多くの磁束を流すことが可能になる。
【0015】
また、本発明の回転電機の回転子は、径方向に交互にNS磁極を形成すべく着磁された極数個の主磁極磁石と、主磁極磁石の外径側に配置された熱良導性の鉄心磁極片と、主磁極磁石および鉄心磁極片の周方向両側面より磁束を流通させる極数個のヨーク磁石とを備えている。これにより、鉄心磁極片に大量の磁束を集中させて出力向上を図ることが可能になり、コストパフォーマンスに優れ、小型軽量化を実現することができる。また、主磁極磁石とヨーク磁石に鉄心磁極片が接することになるため、これらの磁石の熱が鉄心磁極片に伝わりやすくなり、高温時の特性低下を防止することができる。
【0016】
また、上述した主磁極磁石は希土類磁石が用いられ、ヨーク磁石はフェライト永久磁石が用いられることが望ましい。主磁極磁石として希土類磁石を用いることにより、両側面に配置されるヨーク磁石として低コスト、低磁束密度のフェライト磁石を用いた場合でも主磁極磁石の磁束密度を高くすることが可能になり、回転電機の高出力化を実現することができる。
【0017】
また、本発明の回転電機の回転子は、径方向に交互にNS磁極を形成すべく着磁された極数個の主磁極磁石と、主磁極磁石の周方向両側面より磁束を流通させる極数個のヨーク磁石とを有する回転子と、回転子の外周に対向配置された分布巻固定子とを備えている。これにより、起電力を確保するために多くの巻数を設定してその結果電機子電流が流れると大きな電機子反作用が発生する集中巻固定子のように大きな減磁作用が発生しないため、減磁に対して配慮が必要なハルバッハアレイにおける減磁信頼性を向上させることが可能になる。また、集中巻固定子の場合には、永久磁石(主磁極磁石)の磁束密度が限られていることから、固定子の鉄心(積層鉄心)の狭い歯状部への磁束流入には困難が伴って有効磁束は限定的となるが、分布巻固定子を用いることにより、固定子の鉄心の複数の歯状部から主磁極磁石の磁束を固定子側に流入させることができるため、有効磁束の総量を増すことができる。
【0018】
また、上述した主磁極磁石の外径とヨーク磁石の外径をほぼ同じに形成して、回転子の全周を磁極としている。これにより、電気角が180°の範囲にある主磁極磁石とヨーク磁石の双方から固定子に磁束を流入させることが可能になり、より有効磁束の総量を増すことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用交流発電機について、図面に基づいて詳細に説明する。
〔第1の実施形態〕
図1は、第1の実施形態の車両用交流発電機の全体構成を示す断面図である。また、図2は第1の実施形態の車両用交流発電機の径方向に沿った部分的な断面図である。図3は、回転子3の径方向に沿った部分的な断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の車両用交流発電機100は、フレーム1、固定子2、回転子3を含んで構成されている。
固定子2は、周方向に複数の歯状部が形成された積層鉄心20と、周方向に隣接する歯状部間に形成されたスロットに巻装された三相の電機子巻線21とを含んで構成されている。電機子巻線21は、一の磁極ピッチ(電気角180°)の間に3つの歯状部を含むように、積層鉄心20の各スロットに電気角180°ピッチで巻装されている。また、積層鉄心20は、その外周面がフレーム1の内周面に拘束されており、フレーム1に収納固定されている。
【0021】
回転子3は、回転することによって固定子2と交差する回転磁界を発生するためのものであり、回転軸30、ハブ31、主磁極磁石32およびヨーク磁石33を含んで構成されている。フレーム1には、一対の軸受け10、11が固定して設けられており、エンジンのクランクプーリによって回転駆動される発電機プーリ(図示せず)に締結固定された回転軸30がこれらの軸受け10、11によって回転自在に支持されている。
【0022】
また、回転軸30の一部にはローレット加工部が形成されており、熱良導性の非磁性金属放熱部としてのジュラルミン製のハブ31がこのローレット加工部の外周に嵌入固定される。このハブ31は、径方向延在部310、内側円筒部311、外側円筒部312、基板部313、羽根状放熱部314を備えている。径方向延在部310は、回転軸30に対する嵌合面のほぼ中央から径方向外側に向かって延在しており、さらにその外周に内側円筒部311が形成されている。この内側円筒部311は、径方向延在部310の外周端から軸方向に沿った両側に延在しており、その両端は径方向外側に向かってさらに延在した後、軸方向中央部に向かって延在する外側円筒部312を形成し、さらに両端部は軸方向中央部において溶接により接合された閉じた構造になっている。
【0023】
内側円筒部311と外側円筒部312の間の袋状の部分には、径方向に交互にNS磁極を形成すべく着磁された極数個(極数と同じ数)の主磁極磁石32と、この主磁極磁石32の周方向両側面より磁束を流通させる極数個のヨーク磁石33とが周方向に交互に配置された状態で収納されている。主磁極磁石32は、径方向に沿ってNS磁極が形成されるように着磁されており、しかも周方向に隣接する各主磁極磁石32の着磁方向が交互に反対となるように配置されている。したがって、一の主磁極磁石32が外周側がN極になるように着磁されているものとすると、その周方向両側に配置された他の主磁極磁石32は外周側がS極になるように着磁されている。また、ヨーク磁石33は、周方向に沿ってNS磁極が形成されるように着磁されており、外周側がN極に着磁された主磁極磁石32に対向する側がN極に、外周側がS極に着磁された主磁極磁石32に対向する側がS極になるように着磁されている。また、主磁極磁石32とヨーク磁石33は、ともに希土類ネオジウム鉄ボロン永久磁石が用いられている。
【0024】
このように、回転子3は、主磁極磁石32、ヨーク磁石33とこれらの径方向両側に配置されたジュラルミン製の内側円筒部311、外側円筒部312によって構成されており、磁性材料である鉄心を含まない構造となっている。例えば、内側円筒部311の厚みは5mmに、外側円筒部312の厚みは0.8mmに設定されている。また、内側円筒部311と外側円筒部312の軸方向の両端には、主磁極磁石32とヨーク磁石33とが互いの反発力によって軸方向にずれることを規制するために、基板部313を有する羽根状放熱部314が形成されている。さらに、内側円筒部311の内径側には空洞部315が形成されており、径方向延在部310にはこの空洞部315につながる通風孔316が設けられている。
【0025】
また、図2および図3に示すように、積層鉄心20の歯状部に対向する主磁極磁石32の外径側のアーク長Aと、ヨーク磁石33の外径側のアーク長Bとの比(アークレシオ)は2対1に設定されている。
また、主磁極磁石32は、径方向外側に向かうに従って周方向に沿った幅が広くなる末広がり断面形状を有しており、反対に、ヨーク磁石33は、径方向内側に向かうに従って周方向に沿った幅が広くなる末広がり断面形状を有している。これらの主磁極磁石32とヨーク磁石33は、内側円筒部311と外側円筒部312との間に介在固定されているが、これら磁石の間やこれらの磁石とその周辺部材(内側円筒部311や外側円筒部312等)との間には、隙間317が磁石反発力等により形成されている。本実施形態では、この隙間317には、熱伝導固着材318が充填されており、主磁極磁石32およびヨーク磁石33を相互に移動不可能にくさび効果にて充填拘束するとともに接着している。
【0026】
図4は、本実施形態の車両用交流発電機100の結線図である。電機子巻線21はY結線された三相分布巻線であり、3つの出力端子は、三相の整流器4に接続されている。整流器4の出力端子(B端子)は、車両に搭載されたバッテリ5と、各種のランプ類を含む各種の電気負荷6に接続されている。
【0027】
本実施形態の車両用交流発電機100はこのような構成を有しており、次にその作用を説明する。
主磁極磁石32にヨーク磁石33が側面より密着しているので、それらの起磁力が合成され、これらの磁石を磁束通路として固定子2の積層鉄心20に対して磁束を供給することができる。すなわち、継鉄となる鉄心が不要となる。このようにして供給される磁束が固定子2に鎖交した状態で回転軸30を回転させることにより、この回転とともにNS極を交番させることができ、電機子巻線21を巻装した固定子2には起電力が発生し、この起電力を整流器4で整流して外部のバッテリ5や電気負荷6に導くことができる。
【0028】
このようにして固定子2に電流が生じると、そのジュール損失による発熱が生じて固定子2の電機子巻線21から積層鉄心20へと熱が伝わる。また、固定子2の交番する鎖交磁束によりヒステリシス損失や渦電流損失が積層鉄心20に発生して、同様に積層鉄心20を加熱することとなる。これらの熱は、固定子2に対向する主磁極磁石32やヨーク磁石33に熱伝達や熱輻射により伝わって、これらの温度を上昇させることとなる。
【0029】
また、主磁極磁石32とヨーク磁石33とは互いに着磁方向が半ば対向する向きであるとともに、車両用発電機100ではこれら磁石の与える界磁磁化作用の反作用として電機子電流による電機子反作用、すなわち反磁界が与えられる。このため、主磁極磁石32とヨーク磁石33は、そもそも減磁しやすい状況にあるところにおいて、上述したように温度が高くなるとこれらの磁石の減磁特性すなわちBH特性は原点側に近寄り、大きく特性低下が生じたときには永久減磁が生じやすいという問題がある。しかし、本実施形態の構造では、ハブ31によって主磁極磁石32とヨーク磁石33を冷却する放熱部材が構成され、これらの磁石に密着させているので、これらの磁石の温度が低くなって特性低下による永久減磁が防止できる。
【0030】
また、熱良導性金属部材としてのジュラルミン製のハブ31の内側円筒部311とこのハブ31を固定する回転軸30との間を中空構造として冷却通風部が形成されている。これにより、主磁極磁石32やヨーク磁石33の温度が、冷却通風部を流れる冷却風によって冷却された熱良導性金属部材としてのバブ31の吸熱効果により、大幅に低下して特性低下を防止することができる。
【0031】
また、主磁極磁石32とヨーク磁石33の外周面も外側円筒部332で覆って拘束しているため、これらの磁石の温度がこの外側円筒部332の吸熱効果により大幅に低下して特性低下を防止することができるとともに、回転中あるいはこれらの磁石自身の反発力による空間隙間が生じにくいので回転バランスが崩れる問題もない。
【0032】
また、主磁極磁石32とヨーク磁石33のそれぞれの軸方向両端には、これらの磁石の軸方向移動を規制するジュラルミン製の基板部313と羽根状放熱部314とが設けられており、これらの吸熱効果によって主磁極磁石32とヨーク磁石33の磁石の温度が大幅に低下してこれらの磁石の特性低下を防止することができるともに、回転中あるいはこれらの磁石自身の反発力による空間隙間が生じにくいので回転バランスが崩れる問題もない。
【0033】
また、主磁極磁石32およびヨーク磁石33の間の隙間317あるいはこれらの周囲部材との隙間には、空気よりも熱伝導率のよい熱伝導固着材318が充填されている。これにより、主磁極磁石32とヨーク磁石33の熱が周囲に伝熱しやすく、温度を大幅に低減して、特性低下を防止することができるともに、回転中あるいはこれらの磁石自身の反発力による軸方向のずれや空間隙間が生じにくいので回転偶力バランスが崩れてしまう問題もない。
【0034】
また、主磁極磁石32は外径側に末広がりの台形状断面としている。これにより、ヨーク磁石33の磁束は主磁極磁石32が径方向着磁であるにもかかわらずその側面より流入するが、この磁束は主磁極磁石32が径方向外側に断面が漸増するために、合流磁束が主磁極磁石32の磁化に妨げられることがなく、磁束の流れが円滑になって所定の磁石使用量において多くの磁束を流すことができ、車両用交流発電機100の小型高出力化を実現することができる。
【0035】
また、主磁極磁石32とヨーク磁石33は、それらのアークレシオがほぼ2対1に設定されている。これにより、主磁極磁石32の周方向両側面から合流する磁束は、その磁束密度を主磁極磁石32の磁束密度とほぼ同じにすることができ、所定の磁石使用量において多くの磁束を流すことができる。
【0036】
また、本実施形態の車両用交流発電機100には、主磁極磁石32の周方向両側面より磁束を流通する極数個のヨーク磁石33を有する回転子3に対向配置した分布巻の電機子巻線21を有する固定子2が備わっている。これにより、起電力をかせぐために多くの巻数を施してその結果電機子電流が流れると大きな電機子反作用が作用する集中巻のような大きな減磁作用が発生しないので、減磁に対して配慮が必要なハルバッハアレイにおいて減磁に関する信頼性向上を計ることが可能になる。また、集中巻としたときは、永久磁石の磁束密度が限られていることから、積層鉄心の狭い歯状部への磁束流入には困難性が伴って有効磁束は限定的となるが、分布巻とすることで積層鉄心20の複数の歯状部から主磁極磁石32の磁束が固定子2側に進入することができるため、有効磁束の総量が増す効果もある。
【0037】
また、主磁極磁石32とヨーク磁石33の外径を同じに設定してこれらの全周を磁極としており、電気角180°の範囲にある主磁極磁石32とヨーク磁石33の双方から、固定子2の積層鉄心20の複数の歯状部に磁束が進入できるため、より有効磁束の総量を増すことができる。
【0038】
以上により、(1)高温でしかもさまざまな位置に逆磁界が加わりやすい発電機での熱的減磁、(2)バランス確保の困難性、(3)信頼性確保の困難性、(4)磁石が高コストになりがち、(5)トータル有効磁束が稼ぎにくい、という5つの課題が解決され、目的とする小型軽量高性能の車両用発電機100を実現することができる。
【0039】
この結果、従来は14V−150Aクラスの車両用交流発電機は固定子2の外径が128mmで重量が5kg程度であったものが、本実施形態の構造を採用することにより、固定子2の外径が100mmで重量が3kg程度に、著しく小型化、軽量化を図ることができた。
【0040】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態の車両用交流発電機の回転子について説明する。車両用交流発電機の全体構成は、図1に示した第1の実施形態の車両用交流発電機と同じであり、構造が異なる回転子について説明を行うものとする。
【0041】
図5は、第2の実施形態の車両用交流発電機の径方向に沿った部分的な断面図である。
本実施形態の車両用交流発電機に含まれる回転子3Aは、主磁極磁石32Aとヨーク磁石33Aの形状あるいは材質を変更した点が第1の実施形態の回転子3と異なっている。
【0042】
主磁極磁石32Aは、第1の実施形態の主磁極磁石32と同様に、希土類ネオジウム鉄ボロン永久磁石が用いられている。一方、ヨーク磁石33Aは、フェライト永久磁石が用いられている。一般に、フェライト永久磁石は希土類磁石に比べて低磁束密度であるため、第1の実施形態のヨーク磁石33に比べて、径方向および周方向の厚みが厚く設定されており、これにより、大量の磁束を主磁極磁石32Aに側面から供給することができるようになっている。また、ヨーク磁石33Aの外径は、主磁極磁石32Aの外径と同じであり、ヨーク磁石33Aの径方向外側に向かう漏れ磁束も、主磁極磁石32Aの磁束とともに固定子2に鎖交することができる。
【0043】
〔第3の実施形態〕
次に、第3の実施形態の車両用交流発電機の回転子について説明する。車両用交流発電機の全体構成は、図1に示した第1の実施形態の車両用交流発電機と同じであり、構造が異なる回転子について説明を行うものとする。
【0044】
図6は、第3の実施形態の車両用交流発電機の径方向に沿った部分的な断面図である。
本実施形態の車両用交流発電機に含まれる回転子3Bは、径方向に交互にNS磁極を形成すべく着磁された極数個の外径が小さな主磁極磁石32Bと、この主磁極磁石32Bの周方向両側面に対向する極数個の外径が大きなヨーク磁石33Bと周方向に交互に配列されている。また、この主磁石磁極32Bの外径側には、熱良導性の鉄心磁極片34が当接配置されている。この鉄心磁極片34には、主磁極磁石32Bと同様にヨーク磁石33Bが両側面より当接している。このような構造とすることにより、鉄心磁極片34に大量の磁束を集中させることができ、車両用交流発電機の出力向上を図るとともに、コストパフォーマンスにすぐれ小型軽量となるばかりでなく、各磁石の熱が効率よく吸熱されて、高温回転機での熱的減磁信頼性の課題が高いレベルで解決されることとなる。
【0045】
〔その他の実施形態〕
上述した各実施形態では、界磁として永久磁石(主磁極磁石32やヨーク磁石33等)のみを用いた構造について説明したが、永久磁石と界磁コイルとを併用する構造であってもよい。これにより、本発明と同様の効果が得られることはいうまでもない。例えば、図7に示すように、第三の実施形態で説明した磁極片34の部分が軸方向に延在してさらに回転軸30の中心側に延在し回転軸30の周囲を通って元に戻るいわゆるランデル型爪状磁極320を用いてももよい。すなわち、回転軸周囲の鉄心部321に界磁コイル322を巻回してこの界磁コイル322を励磁源とするとともに、主磁石磁極32Cとヨーク磁石33Cとを励磁源とした混成励磁であってもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では車両用発電機について説明したが、その他の用途の発電機や各種の直流機に本発明を適用することができる。例えば、外周を放熱性がよく、しかも軽量の非磁性金属であるアルミ円筒部としてその円筒の内部に主磁極磁石とヨーク磁石を配置し、その内部に電機子回転子を配置する。これにより、これらの磁石の放熱性がよく減磁のおそれもないため、過負荷に耐える小型で高出力軽量の直流モータを実現することができる。
【0047】
また、電気自動車やハイブリッド自動車などの高温のエンジンに近いあるいは閉塞空間におかれ、かつ小型高出力が求められて高温になりがちな回転機に本発明を適用することもできる。また、小型軽量が求められる電車駆動用や低慣性が求められる数値制御加工用ACサーボモータなどにも有用であり、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態の車両用交流発電機の全体構成を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態の車両用交流発電機の径方向に沿った部分的な断面図である。
【図3】回転子の径方向に沿った部分的な断面図である。
【図4】本実施形態の車両用交流発電機の結線図である。
【図5】第2の実施形態の車両用交流発電機の径方向に沿った部分的な断面図である。
【図6】第3の実施形態の車両用交流発電機の径方向に沿った部分的な断面図である。
【図7】変形例の車両用交流発電機の径方向に沿った部分的な断面図である。
【符号の説明】
1 フレーム
2 固定子
3 回転子
4 整流器
5 バッテリ
6 電気負荷
10、11 軸受け
20 積層鉄心
21 電機子巻線
30 回転軸
31 ハブ
32、32A、32B、32C 主磁極磁石
33、33A、33B、33C ヨーク磁石
311 内側円筒部
312 外側円筒部
313 基板部
314 羽根状放熱部
315 空洞部
316 通風孔
317 隙間
318 熱伝導固着材
320 ランデル型爪状磁極
321 鉄心部
322 界磁コイル
Claims (11)
- 径方向に交互にNS磁極を形成すべく着磁された極数個の主磁極磁石と、
前記主磁極磁石の周方向両側面より磁束を流通させる極数個のヨーク磁石と、
前記主磁極磁石と前記ヨーク磁石とが密着固定された熱良導性の金属放熱部材と、
を備えることを特徴とする回転電機の回転子。 - 請求項1において、
前記金属放熱部材を固定する回転軸をさらに備え、
前記金属放熱部材と前記回転軸との間を中空構造とした冷却通風部が形成されていることを特徴とする回転電機の回転子。 - 請求項1または2において、
前記金属放熱部材は、非磁性であり、前記主磁極磁石と前記ヨーク磁石のそれぞれの外周を覆う円筒であることを特徴とする回転電機の回転子。 - 請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記金属放熱部材は、前記主磁極磁石と前記ヨーク磁石のそれぞれの軸方向両端に設けられて前記主磁極磁石と前記ヨーク磁石の軸方向移動を規制する基板部と羽根状放熱部とを有することを特徴とする回転電機の回転子。 - 請求項3または4において、
前記主磁極磁石と前記ヨーク磁石のそれぞれとその周囲部材との間に形成された隙間には、空気よりも熱伝導率が良好な熱伝導固着材が充填されていることを特徴とする回転電機の回転子。 - 径方向に交互にNS磁極を形成すべく着磁された極数個の主磁極磁石と、
前記主磁極磁石の周方向両側面より磁束を流通させる極数個のヨーク磁石と、
を備え、少なくとも前記主磁極磁石は、径方向外側に向かうに従って周方向に沿った幅が広くなるように設定されていることを特徴とする回転電機の回転子。 - 径方向に交互にNS磁極を形成すべく着磁された極数個の主磁極磁石と、
前記主磁極磁石の周方向両側面より磁束を流通させる極数個のヨーク磁石と、
を備え、前記主磁極磁石と前記ヨーク磁石のアークレシオをほぼ2対1に設定することを特徴とする回転電機の回転子。 - 径方向に交互にNS磁極を形成すべく着磁された極数個の主磁極磁石と、
前記主磁極磁石の外径側に配置された熱良導性の鉄心磁極片と、
前記主磁極磁石および前記鉄心磁極片の周方向両側面より磁束を流通させる極数個のヨーク磁石と、
を備えることを特徴とする回転電機の回転子。 - 請求項1〜8のいずれかにおいて、
前記主磁極磁石は希土類磁石が用いられ、前記ヨーク磁石はフェライト永久磁石が用いられることを特徴とする回転電機の回転子。 - 径方向に交互にNS磁極を形成すべく着磁された極数個の主磁極磁石と、前記主磁極磁石の周方向両側面より磁束を流通させる極数個のヨーク磁石とを有する回転子と、
前記回転子の外周に対向配置された分布巻固定子と、
を備えることを特徴とする回転電機。 - 請求項10において、
前記主磁極磁石の外径と前記ヨーク磁石の外径をほぼ同じに形成して、前記回転子の全周を磁極としたことを特徴とする回転電機。
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