JP2004231787A - エポキシ樹脂希釈剤、エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物 - Google Patents
エポキシ樹脂希釈剤、エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】作業性に優れ、かつ熱・機械的特性、電気的特性に優れたエポキシ樹脂硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ当量が91〜102であり、かつ全塩素量が100ppm以下である下記一般式(1)で表される液状エポキシ化合物からなるエポキシ樹脂希釈剤。及びこのエポキシ樹脂希釈剤、固体又はエポキシ樹脂希釈剤より高粘度の液状のエポキシ樹脂及び硬化剤又は硬化触媒を必須成分として含むエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂希釈剤の配合量がこれらの合計に対し1〜60重量%であるエポキシ樹脂組成物。
【化1】
(式中、Rは水素、メチル基、エチル基又はグリシジルオキシメチル基を示す)
【選択図】 なし
【解決手段】エポキシ当量が91〜102であり、かつ全塩素量が100ppm以下である下記一般式(1)で表される液状エポキシ化合物からなるエポキシ樹脂希釈剤。及びこのエポキシ樹脂希釈剤、固体又はエポキシ樹脂希釈剤より高粘度の液状のエポキシ樹脂及び硬化剤又は硬化触媒を必須成分として含むエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂希釈剤の配合量がこれらの合計に対し1〜60重量%であるエポキシ樹脂組成物。
【化1】
(式中、Rは水素、メチル基、エチル基又はグリシジルオキシメチル基を示す)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エポキシ樹脂希釈剤及びこれを配合したエポキシ樹脂組成物に関し、作業性に優れるとともに、熱・機械的特性、電気的特性に優れたエポキシ樹脂硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にエポキシ樹脂は、機械的、電気的特性に優れ、接着性、耐溶剤性、耐水性、耐熱性等が良好であることから、電気・電子部品の絶縁材料、接着剤、塗料、土木建築用に広く用いられている。エポキシ樹脂組成物をこれらの用途に適用する場合、使用上液状状態で用いられることが好ましい場合が多く、その目的で希釈剤として各種溶剤が用いられているが、最近の環境志向の観点から無溶剤系が望まれている。更に、樹脂特性、主として熱的・機械的物性の向上等を求める場合においては無機フィラー等のマトリックス部分を増加させる手法が一般であるが、フィラーの増加に伴い樹脂組成物の粘度が上昇しやすくなるため、特に塗布・塗工時において良好な作業性を付与するためには、樹脂の低粘度化が必要となってくる。この目的のために特に液状系のエポキシ樹脂が多く使用されており、以下の化合物等が用いられている。例えば、エチレングリコールグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、グリセリングリシジルエーテル、トリメチロールプロパングリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、レゾルシングリシジルエーテル、キシリレングリコールグリシジルエーテル(特開平4−53821号公報)などである。
【0003】
これらの化合物中、脂肪族環式及び脂肪族系のエポキシ樹脂は低粘度の部類にあり優れた希釈効果を有する。中でもグリセリングリシジルエーテル、トリメチロールプロパングリシジルエーテル等のトリヒドロキシアルカンのグリシジルエーテル化合物は硬化に関与する官能基数が3であり自ら3次元構造を取ることから機械的物性においても優れた反応性希釈剤である。しかし脂肪族環式及び脂肪族系のエポキシ樹脂は、アルコール性水酸基のグリシジルエーテル化時の収率が悪く、未反応アルコール性水酸基が残存する。特に多価アルコールの場合は水酸基が残存したグリシジルエーテルが生成し、分離・精製が困難である等の問題点を有する。更に、脂肪族環式及び脂肪族系のエポキシ樹脂は、アルコール性水酸基のグリシジルエーテル化時の副反応に起因して、残存塩素量が高濃度の物が一般的であり、これらを電子材料用途に用いることは、その成型物の電気的信頼性低下が懸念される。脂肪族環式及び脂肪族系エポキシ樹脂の低塩素量化の手法として特開昭59−206429号公報が提示されているが理論量を遙かに越えたアルカリ金属水酸化物を用いるも収量が少なく、全塩素量も3000ppm以上と満足いくものではない。
【0004】
一方フェノール類系のエポキシ樹脂は比較的低塩素量であるが官能基数の増加に伴う粘度の増加が著しく、官能基の数が3以上のものは粘度が高くなり希釈剤としての効果を期待できない。
【特許文献1】
特開平4−53821号公報
【特許文献2】
特開昭59−206429号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、従来技術の問題点に着目されてなされたものである。その目的とするところは低粘度、多官能構造、低塩素量を同時に実現する液状エポキシ樹脂を使用することにより、作業性に優れ、かつ熱・機械的特性、電気的特性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、トリ及びテトラヒドロキシアルカンのグリシジルエーテル化物の合成処方に着目し鋭意研究した結果、低塩素量を具備した低粘度の多官能エポキシ化合物を得ることに成功し、更に本多官能エポキシ化合物を含有した樹脂組成物が低粘度かつ熱、機械的特性に優れた硬化物特性を発現することを見出した。
【0007】
本発明は、エポキシ当量が91〜102であり、かつ全塩素量が100ppm以下である下記一般式(1)で表される液状エポキシ化合物からなることを特徴とするエポキシ樹脂希釈剤である。
【化2】
(式中、Rは水素、メチル基、エチル基又はグリシジルオキシメチル基を示す。)
ここで、一般式(1)におけるRが水素の場合、メチル基の場合及びエチル基の場合のエポキシ当量がそれぞれ91〜93、95〜97及び100〜102の範囲であることが好ましい。
【0008】
また、本発明は、前記のエポキシ樹脂希釈剤、固体又はエポキシ樹脂希釈剤より高粘度の液状のエポキシ樹脂及び硬化剤又は硬化触媒を必須成分として含むエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂希釈剤の配合量がこれらの合計に対し1〜60重量%であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。更に、本発明は、前記のエポキシ樹脂組成物を硬化してなることを特徴とするエポキシ樹脂硬化物である。
【0009】
【発明の実施の形態】
一般式(1)で表される液状エポキシ化合物としては、Rが水素、メチル基、エチル基又はグリシジルオキシメチル基である4種の化合物があり、これらは1種又は2種以上を希釈剤として使用することができる。
ここで、Rがグリシジルオキシメチル基である場合は、下記式(4)で表される。
【化3】
【0010】
本発明の希釈剤として使用する低粘度エポキシ化合物の合成方法について、以下に示す反応式に基づいて詳細に説明する。
例えば、下記の一般式(1)で表されるエポキシ化合物は、下記の一般式(2)で表されるヒドロキシアルカン(RはH、メチル、エチル又はメチロール)を出発物質として、下記の一般式(3)で表されるアリルエーテル化合物(RはH、メチル、エチル又はアリロキシメチル)を経て、以下のような方法で合成される。
【0011】
【化4】
【0012】
上記一般式(2)で表される出発物質を、塩基として水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液に加え、80〜90℃で約一時間加温した後、40〜50℃で冷却し、その後触媒であるテトラブチルアンモニウムブロマイドを添加し、反応温度を40〜50℃に保ちながらアリルクロライドを滴下する。滴下終了後、40〜50℃で約5時間反応を行う。
【0013】
反応終了後、反応液を室温付近に冷却し、トルエン等の有機溶剤を加えることで分液処理した後、得られた有機層を濃縮更には、シリカゲルショートカラムによる精製後、上記一般式(3)で表されるアリルエーテル化合物を得ることができる。
上記出発物質としては、ヒドロキシメチルプロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等のトリヒドロキシアルカンと、ペンタエリスリトールが例示される。
【0014】
上記塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム等が好ましい。塩基の添加量としては、出発物質であるトリヒドロキシアルカンに対し20〜25当量が好ましい。
【0015】
また、触媒であるテトラブチルアンモニウムブロマイドの添加量は、出発物質に対して0.4〜0.6当量が好ましい。更に、アリルクロライドの添加量は、出発物質に対して4〜5当量が好ましい。
【0016】
次いで、上記一般式(3)で表されるアリルエーテル化合物を塩化メチレン等の有機溶剤に溶解後、反応溶液を0℃付近まで冷却し、m−塩化過安息香酸等の酸化剤を加え、室温で、8〜10時間反応を行う。
【0017】
反応終了後、アルカリ水溶液による酸化剤の中和、次いでトルエン等の有機溶剤を加えることで分液処理した後、有機層を濃縮することで上記一般式(1)で表されるエポキシ化合物(エポキシ樹脂希釈剤)を得ることができる。
【0018】
上記酸化剤のm−塩化過安息香酸の添加量としては、上記一般式(3)で表されるアリルエーテル化合物に対して4〜5当量になるよう加えることが好ましい上記溶媒としては、塩化メチレン等のハロゲン化合物や、ヘキサン、トルエン等の炭化水素類が好ましく、なかでも塩化メチレンが好ましい。上記溶媒中に溶解させる一般式(3)で表されるアリルエーテル化合物の添加量としては、0.2〜0.6mol/Lの範囲が好ましく、特に0.3〜0.5mol/Lの範囲が好ましい。
【0019】
このようにして得られたエポキシ化合物は未反応物が少ないため高純度の生成物となる。したがって、エポキシ当量もほぼ理論値近傍に制御可能となる。例えば前記一般式(1)において、Rが水素の場合のエポキシ当量は91〜93の範囲であり、メチルの場合のエポキシ当量は95〜97の範囲であり、またエチル基の場合のエポキシ当量は100〜102の範囲である。また、出発物質のヒドロキシアルカン類を選択するか、反応生成物を混合することによりエポキシ当量を91〜102の範囲に任意に調整することもできる。
【0020】
上記方法にて得られた液状エポキシ化合物は、未反応のアルコール基が残存しないため粘度が低く、具体的には25℃の粘度が50〜200mPa.secであり、従来の多官能液状エポキシ樹脂に比べて非常に低粘度である。また、本液状エポキシ化合物は未反応物が少なく、従来法とは異なる合成法を用いるため従来法による副反応に起因するようは残留塩素量が少なく、全塩素量で100ppm以下であり、更に電子材料用途などに用いる場合は好ましくは50ppm以下とすることができる。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂希釈剤は、このようにして得られるエポキシ化合物が使用できるが、電気的、電子材料用途に使用するためには全塩素量が100ppm以下である必要がある。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、液状エポキシ化合物からなるエポキシ樹脂希釈剤、固体又は希釈剤より高粘度のエポキシ樹脂(エポキシ化合物を含む意味で使用される)及びエポキシ樹脂硬化剤又は硬化触媒を必須成分として含む。エポキシ樹脂希釈剤は、上記必須成分の合計に対して1〜60重量%、好ましくは10〜40重量%含有することができる。1重量%未満の場合、エポキシ組成物の粘度が高くなるため作業性が著しく損なわれる。また60重量%を超えて含有する場合、脂肪族成分の増加により得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性、機械的強度が低下する。
【0023】
固体又は希釈剤より高粘度のエポキシ樹脂は、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、更には臭素化エポキシ樹脂等の分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂を用いることができる。これらのエポキシ樹脂は1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
硬化剤としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ポリアミドアミン等の第二級、三級アミン、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水コハク酸テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、シシアンジアミド及びその誘導体、アジピン酸ヒドラジド等の有機酸ヒドラジド、3−(3、4ージクロロフェニル)−1、1−ジメチル尿素、3−(p−クロロフェニル)−1、1−ジメチル尿素等の尿素誘導体、ポリメルカプタン系硬化剤、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等のメチロール基含有化合物、ポリイソシアネート、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が挙げられる。これらの硬化剤はその1種を単独で又は2種類以上を併用して用いられる。硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂(希釈剤のエポキシ化合物を含む)のエポキシ基に対して化学量論量以上であることが望ましい。
【0025】
また、硬化触媒としては、リン系、3級アミン系、イミダゾール系、有機金属系及び有機ホスフィン系等がある。硬化剤と硬化触媒は併用してもよいし、いずれか一方のみを使用してもよいが、硬化剤を使用することが硬化物の物性の点で好ましい。また、硬化剤及び硬化促進剤はそれぞれ2種類以上併用しても良い。
【0026】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて公知の各種カチオン重合触媒を配合することが出来る。カチオン重合触媒としては、ルイス酸を用いることが可能であり、例えば、BF3、PF5、AsF5、SbF6等がある。更には、これらのルイス酸とメチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン等の有機一級アミン類との錯体、好ましくはエチルアミンとのBF3錯体、及びトリフェニルホスフィン等を使用することも可能である。カチオン重合触媒の使用量としては、液状エポキシ化合物100重量部に対し、0.1〜20重量部、好ましくは、0.5〜10重量部が例示される。
【0027】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて公知の光重合触媒を配合することが出来る。光硬化触媒とは、エポキシ樹脂組成物に配合したままでは安定であり、紫外線又は可視光線の照射により該触媒が分解して硬化剤として作用する触媒のことである。例えば、芳香族ジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレニウム塩等が挙げられる。具体的には、p−クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェート、p−メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェート等の芳香族ジアゾニウム塩、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、4,4−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート等のジアリールヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、ビス−[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロフォスフェート等のトリアリールスルホニウム塩、トリフェニルセレニウムヘキサフルオロフォスフェート等のトリアリールセレニウム塩等が挙げられる。光硬化触媒の使用量としては、液状エポキシ化合物100重量部に対し、0.01〜10重量部、好ましくは、0.1〜6重量部が例示される
【0028】
硬化方法としては、上記液状エポキシ化合物、エポキシ樹脂、硬化剤又は硬化触媒を混合したエポキシ樹脂組成物を、20〜200℃に加熱して硬化する方法が例示される。
光硬化触媒をエポキシ樹脂組成物に配合した場合は、紫外線もしくは光を照射して硬化する。カチオン重合触媒をエポキシ樹脂組成物に配合した場合は、50〜150℃に加熱して硬化する方法が例示される。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて、更に公知の添加剤、例えば充填剤(炭酸カルシウム、クレー、シリカ、カーボンブラック、金属粉)、可塑剤、顔料、染料、難燃剤、耐炎剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、レベリング剤、チキソトロピー付与剤、消泡剤、たれ止め剤、溶剤等の各種添加剤を添加しても良い。
【0030】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のエポキシ樹脂希釈剤として使用する液状エポキシ化合物の合成例を以下に示す。また、合成した液状エポキシ化合物のエポキシ当量、粘度、全塩素量は以下の方法により測定し評価した。
【0031】
エポキシ当量:過塩素酸法(JIS K7236)により算出した。
粘度:25℃での粘度をB型粘度計にて測定した。
加水分解性塩素量:エポキシ樹脂4gを蒸留水200gで121℃、2気圧の条件で20時間抽出を行い、抽出液中の塩素イオン量をイオンクロマトグラフィーにて定量を行った。
【0032】
合成例1:1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)プロパン(TMP−3GE))
▲1▼1,1,1−トリ(アリルオキシメチル)プロパンの合成
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、滴下装置、冷却管を備えた内容量1リットルの四つ口ガラス製フラスコに、1,1,1−トリメチロールプロパン53.67gを加え、反応装置系内を窒素置換した後、水酸化ナトリウム水溶液(25mol/L)352mlを加え、80℃まで加熱して1時間攪拌した。その後、40℃に冷却し、テトラブチルアンモニウムブロマイド51.58gを添加した後、反応系内を水浴で約40℃に保ちながら、アリルクロライド122.2gを反応系内に1時間かけて滴下した。更に5時間反応を継続させ反応を完了させた。
反応終了後に、トルエン500mlを加え分液処理し、有機(トルエン)層を塩化ナトリウム水溶液で中性になるまで洗浄した。その後、洗浄した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮した。この濃縮物をシリカゲル500g、トルエンで精製することにより目的とする1,1,1−トリアリルオキシメチレンプロパン76.31gを得た。得られた化合物の収率は100%で、純度(ガスクロ)は99%であった。
【0033】
▲2▼1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)プロパンの合成
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管を備えた内容量3リットルの四つ口ガラス製フラスコに、塩化メチレン1200mlを加え、反応装置系内を窒素置換した後、上記▲1▼で得られた1,1,1−トリ(アリルオキシメチレン)プロパン76.31gを添加した。その後、氷浴にて反応系内を0℃に冷却した後、m−クロロ過安息香酸201.9gを4回に分けて加え、室温にて8時間攪拌し、反応を完了させた。
反応終了後に、反応液を氷浴にて10℃に冷却し、チオ硫酸ナトリウム水溶液(1N)を加え、室温に戻した後、1時間攪拌した。その後、塩化メチレン1200mlを加え分液処理し、有機(塩化メチレン)層を先ずは、水酸化ナトリウム水溶液(0.5N)で洗浄し、続いて塩化ナトリウム水溶液で中性になるまで洗浄した。その後、洗浄した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し後、塩化メチレンを留去することで目的とする1,1,1−トリグリシジルオキシメチレンプロパン93.31gを得た。得られた化合物の収率は80%で、純度(ガスクロ)は99%であった。また、得られた生成物は、無色の液状物質であり、粘度は60mPa.secであり、エポキシ当量は101であり、全塩素量は32ppmであった。
【0034】
合成例2:1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)エタン(TME−3GE))
▲1▼1,1,1−トリ(アリルオキシメチル)エタンの合成
出発物質としてトリス(ヒドロキシメチル)エタン48.06g、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロマイド40.43g、アリルクロライド95.79gを使用した以外は、実施例1の▲1▼と同様な方法により反応を行った。その結果、目的とする1,1,1−トリアリルオキシメチレンエタン63.20gを得た。得られた化合物の収率は100%で、純度(ガスクロ)は99%であった。
【0035】
▲2▼1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)エタンの合成
上記▲1▼で得られた1,1,1−トリアリルオキシメチレンエタン63.20g、酸化剤のm−クロロ過安息香酸167.3gを使用した以外は実施例1の▲2▼と同様な方法により反応を行った。その結果、目的とする1,1,1−トリグリシジルオキシメチレンエタン92.16gを得た。得られた化合物の収率は80%で、純度(ガスクロ)は99%であった。また、この反応生成物は、無色の液状物質であり、粘度は57mPa.secでありエポキシ当量は96であり、全塩素量は20ppmであった。
【0036】
合成例3:1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)メタン(TMM−3GE)
▲1▼1,1,1−トリアリルオキシメチレンメタンの合成
出発物質としてヒドロキシメチルプロパンジオール42.07g、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロマイド40.43g、アリルクロライド95.79gを使用した以外は、実施例1の▲1▼と同様な方法により反応を行った。その結果、目的とする1,1,1−トリアリルオキシメチレンメタン59.80gを得た。得られた化合物の収率は100%で、純度(ガスクロ)は99%であった。
【0037】
▲2▼1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)メタンの合成
上記▲1▼で得られた1,1,1−トリアリルオキシメチレンプロパン59.80g、酸化剤のm−クロロ過安息香酸158.3gを使用した以外は実施例1の▲2▼と同様な方法により反応を行った。その結果、目的とする1,1,1−トリグリシジルオキシメチレンメタン73.14gを得た。得られた化合物の収率は85%で、純度(ガスクロ)は99%であった。また、この反応生成物は、無色の液状物質であり、粘度は58mPa.sであり、エポキシ当量は92であり、全塩素量は26ppmであった。
【0038】
合成例4:1,1,1,1−テトラ(グリシジルオキシメチル)メタン(PE−4GE))
▲1▼1,1,1,1−テトラ(アリルオキシメチル)メタンの合成
攪拌装置、温度計、滴下装置、冷却管を備えた内容量1リットルの四つ口ガラス製フラスコに、ペンタエリスリトール40.84g(300mmol)を加え、反応装置系内を窒素置換した後、水酸化ナトリウム水溶液(25mol/L)240mlを加え、80℃まで加熱して1時間攪拌した。その後、40℃に冷却し、テトラブチルアンモニウムブロマイド38.68g(120mmol)を添加した後、反応系内を水浴で約40℃に保ちながら、アリルクロライド114.8g(1.5mol)を反応系内に1時間かけて滴下した。更に5時間反応を継続させ反応を完了させた。
反応終了後に、トルエン500mlを加え分液処理し、有機(トルエン)層を塩化ナトリウム水溶液で中性になるまで洗浄した。その後、洗浄した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮した。この濃縮物をシリカゲル500g、トルエンで精製することにより目的とする1,1,1,1−テトラアリルオキシメチレンブタン89gを得た。得られた化合物の収率は99%以上で、純度(ガスクロ)は99%以上であった。
【0039】
▲2▼1,1,1,1−テトラ(グリシジルオキシメチル)メタンの合成
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管を備えた内容量3リットルの四つ口ガラス製フラスコに、塩化メチレン1200mlを加え、反応装置系内を窒素置換した後、上記▲1▼で得られた1,1,1,1−テトラアリルオキシメチレンブタン59.28g(100mmol)を添加した。その後、氷浴にて反応系内を0℃に冷却した後、m−クロロ過安息香酸179.48g(520mmol)を4回に分けて加え、室温にて8時間攪拌し、反応を完了させた。
反応終了後に、反応液を氷浴にて10℃に冷却し、チオ硫酸ナトリウム水溶液(1N)を加え、室温に戻した後、1時間攪拌した。その後、塩化メチレン1200mlを加え分液処理し、有機(塩化メチレン)層を先ずは、水酸化ナトリウム水溶液(0.5N)で洗浄し、続いて塩化ナトリウム水溶液で中性になるまで洗浄した。その後、洗浄した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し後、塩化メチレンを留去することで目的とする1,1,1,1−テトラグリシジルオキシメチレンブタン 60gを得た。得られた化合物の収率は83%で、純度(ガスクロマトグラフィーで測定)は99%以上であった。また、この反応生成物は、無色の液状物質であり、粘度は160mPa.secであり、エポキシ当量は90であり、全塩素量は25ppmであった。
【0040】
上記合成例1〜4で得たエポキシ樹脂の他に、以下に示すエポキシ化物及び硬化剤を使用した。原料の略号を併せて示す。
・エポキシ樹脂A: 液状、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量173g/eq、全塩素量800ppm(東都化成社製YD−8125)
・エポキシ樹脂B: 液状、トリメチロールプロパンエポキシ化物、エポキシ当量123g/eq、粘度150mPa.sec /25℃、水酸基濃度3.0eq/kg、全塩素量800ppm (東都化成社製ZX−1542)
・エポキシ樹脂C: 液状、1,6−ヘキサンジオールエポキシ化物、エポキシ当量116g/eq、粘度16mPa.sec /25℃、水酸基濃度0.1eq/kg未満、全塩素量800ppm (ジャパンエポキシレジン社製YL−6996)
・硬化触媒D:2−メチルイミダゾール
・硬化触媒E:BF3−エチルアミン錯体
【0041】
実施例及び比較例における評価は以下の方法にて行った。
粘度:エポキシ樹脂組成物について、ブルックフィールド社製レオメータDV−IIIを用いて、25℃での粘度を測定した。
ガラス転移温度:エポキシ樹脂組成物を150℃にて30分間硬化させた後、得られた硬化物の動的粘弾性測定(UBM社DVE−V4)を行い、得られたtan dピーク温度をガラス転移温度とした。
曲げ強度:エポキシ樹脂組成物を150℃にて30分間硬化させた後、JIS−K6911に準じて試験片を作成し、曲げ強度を測定した。
電気的特性:ポリイミドフィルム厚さ25μm、銅箔厚さ12μm、錫メッキ厚さ1μmのポリイミドフレキシブル配線基板と、最小ピッチ60μmで金スタッドバンプを周辺配置した一片が10mmの正方形のシリコンチップを接合し、最小スペース20μmに調整された評価用半導体装置を用い、実施例及び比較例のエポキシ樹脂組成物について、岩下エンジニアリング製ディスペンサーを用いて80℃で塗布を行い、いわゆるアンダーフィルの要領で充填を行い続いて150℃の硬化炉の中で硬化させた後、以下の条件にてPCT試験を行い、評価を行った。
【0042】
耐湿試験(121℃・2atm)での接続不良発生時期
○:100時間超
△:50〜100時間
×:50時間未満
【0043】
実施例1
エポキシ樹脂Aを70重量部、TMP−3GEを20重量部及び硬化触媒2−MZを10重量部混合し、液状エポキシ樹脂組成物とした。液状エポキシ樹脂組成物の粘度は1.1Pa.sec/25℃であった。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、熱的特性、機械的特性、電気的特性を評価した。
【0044】
実施例2〜3
エポキシ樹脂組成物の組成を表1に示したように変化させたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0045】
比較例1〜4
エポキシ樹脂組成物の組成を表2に示したように変化させたこと以外は、実施例1と同様に行った。
液状エポキシ樹脂組成物の配合組成ならびに組成物の特性評価結果をまとめて表1及び表2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
表1の実施例1〜10で使用した樹脂組成物は、本発明の要件全部を満たしていたことから、粘度、熱的特性、機械的特性、PCTの評価における信頼性いずれも優れていた。一方、比較例1〜2で使用した樹脂組成物は、水酸基を一部含有しているエポキシ樹脂を用いたため粘度が比較的高く、更にエポキシ当量も高いため熱的・機械的特性に劣っていた。
また、比較例3〜4の樹脂組成物では、低粘度エポキシ樹脂を用いたことにより低い粘度を示したが、2官能のみのエポキシ樹脂を用いたため熱的・機械的特性に劣っていた。更に、すべての比較例の樹脂組成物は、全塩素量が高濃度の低粘度エポキシ化物を用いたためPCTの信頼性に劣った。
【0049】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物は低粘度、多官能構造、低塩素量を同時に実現する液状エポキシ樹脂を含有しているため、本エポキシ樹脂組成物を使用することによって、作業性に優れ、かつ熱・機械的特性、電気的特性に優れたエポキシ樹脂硬化物を得ることが可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、エポキシ樹脂希釈剤及びこれを配合したエポキシ樹脂組成物に関し、作業性に優れるとともに、熱・機械的特性、電気的特性に優れたエポキシ樹脂硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にエポキシ樹脂は、機械的、電気的特性に優れ、接着性、耐溶剤性、耐水性、耐熱性等が良好であることから、電気・電子部品の絶縁材料、接着剤、塗料、土木建築用に広く用いられている。エポキシ樹脂組成物をこれらの用途に適用する場合、使用上液状状態で用いられることが好ましい場合が多く、その目的で希釈剤として各種溶剤が用いられているが、最近の環境志向の観点から無溶剤系が望まれている。更に、樹脂特性、主として熱的・機械的物性の向上等を求める場合においては無機フィラー等のマトリックス部分を増加させる手法が一般であるが、フィラーの増加に伴い樹脂組成物の粘度が上昇しやすくなるため、特に塗布・塗工時において良好な作業性を付与するためには、樹脂の低粘度化が必要となってくる。この目的のために特に液状系のエポキシ樹脂が多く使用されており、以下の化合物等が用いられている。例えば、エチレングリコールグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、グリセリングリシジルエーテル、トリメチロールプロパングリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、レゾルシングリシジルエーテル、キシリレングリコールグリシジルエーテル(特開平4−53821号公報)などである。
【0003】
これらの化合物中、脂肪族環式及び脂肪族系のエポキシ樹脂は低粘度の部類にあり優れた希釈効果を有する。中でもグリセリングリシジルエーテル、トリメチロールプロパングリシジルエーテル等のトリヒドロキシアルカンのグリシジルエーテル化合物は硬化に関与する官能基数が3であり自ら3次元構造を取ることから機械的物性においても優れた反応性希釈剤である。しかし脂肪族環式及び脂肪族系のエポキシ樹脂は、アルコール性水酸基のグリシジルエーテル化時の収率が悪く、未反応アルコール性水酸基が残存する。特に多価アルコールの場合は水酸基が残存したグリシジルエーテルが生成し、分離・精製が困難である等の問題点を有する。更に、脂肪族環式及び脂肪族系のエポキシ樹脂は、アルコール性水酸基のグリシジルエーテル化時の副反応に起因して、残存塩素量が高濃度の物が一般的であり、これらを電子材料用途に用いることは、その成型物の電気的信頼性低下が懸念される。脂肪族環式及び脂肪族系エポキシ樹脂の低塩素量化の手法として特開昭59−206429号公報が提示されているが理論量を遙かに越えたアルカリ金属水酸化物を用いるも収量が少なく、全塩素量も3000ppm以上と満足いくものではない。
【0004】
一方フェノール類系のエポキシ樹脂は比較的低塩素量であるが官能基数の増加に伴う粘度の増加が著しく、官能基の数が3以上のものは粘度が高くなり希釈剤としての効果を期待できない。
【特許文献1】
特開平4−53821号公報
【特許文献2】
特開昭59−206429号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、従来技術の問題点に着目されてなされたものである。その目的とするところは低粘度、多官能構造、低塩素量を同時に実現する液状エポキシ樹脂を使用することにより、作業性に優れ、かつ熱・機械的特性、電気的特性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、トリ及びテトラヒドロキシアルカンのグリシジルエーテル化物の合成処方に着目し鋭意研究した結果、低塩素量を具備した低粘度の多官能エポキシ化合物を得ることに成功し、更に本多官能エポキシ化合物を含有した樹脂組成物が低粘度かつ熱、機械的特性に優れた硬化物特性を発現することを見出した。
【0007】
本発明は、エポキシ当量が91〜102であり、かつ全塩素量が100ppm以下である下記一般式(1)で表される液状エポキシ化合物からなることを特徴とするエポキシ樹脂希釈剤である。
【化2】
(式中、Rは水素、メチル基、エチル基又はグリシジルオキシメチル基を示す。)
ここで、一般式(1)におけるRが水素の場合、メチル基の場合及びエチル基の場合のエポキシ当量がそれぞれ91〜93、95〜97及び100〜102の範囲であることが好ましい。
【0008】
また、本発明は、前記のエポキシ樹脂希釈剤、固体又はエポキシ樹脂希釈剤より高粘度の液状のエポキシ樹脂及び硬化剤又は硬化触媒を必須成分として含むエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂希釈剤の配合量がこれらの合計に対し1〜60重量%であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。更に、本発明は、前記のエポキシ樹脂組成物を硬化してなることを特徴とするエポキシ樹脂硬化物である。
【0009】
【発明の実施の形態】
一般式(1)で表される液状エポキシ化合物としては、Rが水素、メチル基、エチル基又はグリシジルオキシメチル基である4種の化合物があり、これらは1種又は2種以上を希釈剤として使用することができる。
ここで、Rがグリシジルオキシメチル基である場合は、下記式(4)で表される。
【化3】
【0010】
本発明の希釈剤として使用する低粘度エポキシ化合物の合成方法について、以下に示す反応式に基づいて詳細に説明する。
例えば、下記の一般式(1)で表されるエポキシ化合物は、下記の一般式(2)で表されるヒドロキシアルカン(RはH、メチル、エチル又はメチロール)を出発物質として、下記の一般式(3)で表されるアリルエーテル化合物(RはH、メチル、エチル又はアリロキシメチル)を経て、以下のような方法で合成される。
【0011】
【化4】
【0012】
上記一般式(2)で表される出発物質を、塩基として水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液に加え、80〜90℃で約一時間加温した後、40〜50℃で冷却し、その後触媒であるテトラブチルアンモニウムブロマイドを添加し、反応温度を40〜50℃に保ちながらアリルクロライドを滴下する。滴下終了後、40〜50℃で約5時間反応を行う。
【0013】
反応終了後、反応液を室温付近に冷却し、トルエン等の有機溶剤を加えることで分液処理した後、得られた有機層を濃縮更には、シリカゲルショートカラムによる精製後、上記一般式(3)で表されるアリルエーテル化合物を得ることができる。
上記出発物質としては、ヒドロキシメチルプロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等のトリヒドロキシアルカンと、ペンタエリスリトールが例示される。
【0014】
上記塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム等が好ましい。塩基の添加量としては、出発物質であるトリヒドロキシアルカンに対し20〜25当量が好ましい。
【0015】
また、触媒であるテトラブチルアンモニウムブロマイドの添加量は、出発物質に対して0.4〜0.6当量が好ましい。更に、アリルクロライドの添加量は、出発物質に対して4〜5当量が好ましい。
【0016】
次いで、上記一般式(3)で表されるアリルエーテル化合物を塩化メチレン等の有機溶剤に溶解後、反応溶液を0℃付近まで冷却し、m−塩化過安息香酸等の酸化剤を加え、室温で、8〜10時間反応を行う。
【0017】
反応終了後、アルカリ水溶液による酸化剤の中和、次いでトルエン等の有機溶剤を加えることで分液処理した後、有機層を濃縮することで上記一般式(1)で表されるエポキシ化合物(エポキシ樹脂希釈剤)を得ることができる。
【0018】
上記酸化剤のm−塩化過安息香酸の添加量としては、上記一般式(3)で表されるアリルエーテル化合物に対して4〜5当量になるよう加えることが好ましい上記溶媒としては、塩化メチレン等のハロゲン化合物や、ヘキサン、トルエン等の炭化水素類が好ましく、なかでも塩化メチレンが好ましい。上記溶媒中に溶解させる一般式(3)で表されるアリルエーテル化合物の添加量としては、0.2〜0.6mol/Lの範囲が好ましく、特に0.3〜0.5mol/Lの範囲が好ましい。
【0019】
このようにして得られたエポキシ化合物は未反応物が少ないため高純度の生成物となる。したがって、エポキシ当量もほぼ理論値近傍に制御可能となる。例えば前記一般式(1)において、Rが水素の場合のエポキシ当量は91〜93の範囲であり、メチルの場合のエポキシ当量は95〜97の範囲であり、またエチル基の場合のエポキシ当量は100〜102の範囲である。また、出発物質のヒドロキシアルカン類を選択するか、反応生成物を混合することによりエポキシ当量を91〜102の範囲に任意に調整することもできる。
【0020】
上記方法にて得られた液状エポキシ化合物は、未反応のアルコール基が残存しないため粘度が低く、具体的には25℃の粘度が50〜200mPa.secであり、従来の多官能液状エポキシ樹脂に比べて非常に低粘度である。また、本液状エポキシ化合物は未反応物が少なく、従来法とは異なる合成法を用いるため従来法による副反応に起因するようは残留塩素量が少なく、全塩素量で100ppm以下であり、更に電子材料用途などに用いる場合は好ましくは50ppm以下とすることができる。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂希釈剤は、このようにして得られるエポキシ化合物が使用できるが、電気的、電子材料用途に使用するためには全塩素量が100ppm以下である必要がある。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、液状エポキシ化合物からなるエポキシ樹脂希釈剤、固体又は希釈剤より高粘度のエポキシ樹脂(エポキシ化合物を含む意味で使用される)及びエポキシ樹脂硬化剤又は硬化触媒を必須成分として含む。エポキシ樹脂希釈剤は、上記必須成分の合計に対して1〜60重量%、好ましくは10〜40重量%含有することができる。1重量%未満の場合、エポキシ組成物の粘度が高くなるため作業性が著しく損なわれる。また60重量%を超えて含有する場合、脂肪族成分の増加により得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性、機械的強度が低下する。
【0023】
固体又は希釈剤より高粘度のエポキシ樹脂は、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、更には臭素化エポキシ樹脂等の分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂を用いることができる。これらのエポキシ樹脂は1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
硬化剤としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ポリアミドアミン等の第二級、三級アミン、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水コハク酸テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、シシアンジアミド及びその誘導体、アジピン酸ヒドラジド等の有機酸ヒドラジド、3−(3、4ージクロロフェニル)−1、1−ジメチル尿素、3−(p−クロロフェニル)−1、1−ジメチル尿素等の尿素誘導体、ポリメルカプタン系硬化剤、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等のメチロール基含有化合物、ポリイソシアネート、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が挙げられる。これらの硬化剤はその1種を単独で又は2種類以上を併用して用いられる。硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂(希釈剤のエポキシ化合物を含む)のエポキシ基に対して化学量論量以上であることが望ましい。
【0025】
また、硬化触媒としては、リン系、3級アミン系、イミダゾール系、有機金属系及び有機ホスフィン系等がある。硬化剤と硬化触媒は併用してもよいし、いずれか一方のみを使用してもよいが、硬化剤を使用することが硬化物の物性の点で好ましい。また、硬化剤及び硬化促進剤はそれぞれ2種類以上併用しても良い。
【0026】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて公知の各種カチオン重合触媒を配合することが出来る。カチオン重合触媒としては、ルイス酸を用いることが可能であり、例えば、BF3、PF5、AsF5、SbF6等がある。更には、これらのルイス酸とメチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン等の有機一級アミン類との錯体、好ましくはエチルアミンとのBF3錯体、及びトリフェニルホスフィン等を使用することも可能である。カチオン重合触媒の使用量としては、液状エポキシ化合物100重量部に対し、0.1〜20重量部、好ましくは、0.5〜10重量部が例示される。
【0027】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて公知の光重合触媒を配合することが出来る。光硬化触媒とは、エポキシ樹脂組成物に配合したままでは安定であり、紫外線又は可視光線の照射により該触媒が分解して硬化剤として作用する触媒のことである。例えば、芳香族ジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレニウム塩等が挙げられる。具体的には、p−クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェート、p−メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェート等の芳香族ジアゾニウム塩、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、4,4−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート等のジアリールヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、ビス−[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロフォスフェート等のトリアリールスルホニウム塩、トリフェニルセレニウムヘキサフルオロフォスフェート等のトリアリールセレニウム塩等が挙げられる。光硬化触媒の使用量としては、液状エポキシ化合物100重量部に対し、0.01〜10重量部、好ましくは、0.1〜6重量部が例示される
【0028】
硬化方法としては、上記液状エポキシ化合物、エポキシ樹脂、硬化剤又は硬化触媒を混合したエポキシ樹脂組成物を、20〜200℃に加熱して硬化する方法が例示される。
光硬化触媒をエポキシ樹脂組成物に配合した場合は、紫外線もしくは光を照射して硬化する。カチオン重合触媒をエポキシ樹脂組成物に配合した場合は、50〜150℃に加熱して硬化する方法が例示される。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて、更に公知の添加剤、例えば充填剤(炭酸カルシウム、クレー、シリカ、カーボンブラック、金属粉)、可塑剤、顔料、染料、難燃剤、耐炎剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、レベリング剤、チキソトロピー付与剤、消泡剤、たれ止め剤、溶剤等の各種添加剤を添加しても良い。
【0030】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のエポキシ樹脂希釈剤として使用する液状エポキシ化合物の合成例を以下に示す。また、合成した液状エポキシ化合物のエポキシ当量、粘度、全塩素量は以下の方法により測定し評価した。
【0031】
エポキシ当量:過塩素酸法(JIS K7236)により算出した。
粘度:25℃での粘度をB型粘度計にて測定した。
加水分解性塩素量:エポキシ樹脂4gを蒸留水200gで121℃、2気圧の条件で20時間抽出を行い、抽出液中の塩素イオン量をイオンクロマトグラフィーにて定量を行った。
【0032】
合成例1:1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)プロパン(TMP−3GE))
▲1▼1,1,1−トリ(アリルオキシメチル)プロパンの合成
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、滴下装置、冷却管を備えた内容量1リットルの四つ口ガラス製フラスコに、1,1,1−トリメチロールプロパン53.67gを加え、反応装置系内を窒素置換した後、水酸化ナトリウム水溶液(25mol/L)352mlを加え、80℃まで加熱して1時間攪拌した。その後、40℃に冷却し、テトラブチルアンモニウムブロマイド51.58gを添加した後、反応系内を水浴で約40℃に保ちながら、アリルクロライド122.2gを反応系内に1時間かけて滴下した。更に5時間反応を継続させ反応を完了させた。
反応終了後に、トルエン500mlを加え分液処理し、有機(トルエン)層を塩化ナトリウム水溶液で中性になるまで洗浄した。その後、洗浄した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮した。この濃縮物をシリカゲル500g、トルエンで精製することにより目的とする1,1,1−トリアリルオキシメチレンプロパン76.31gを得た。得られた化合物の収率は100%で、純度(ガスクロ)は99%であった。
【0033】
▲2▼1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)プロパンの合成
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管を備えた内容量3リットルの四つ口ガラス製フラスコに、塩化メチレン1200mlを加え、反応装置系内を窒素置換した後、上記▲1▼で得られた1,1,1−トリ(アリルオキシメチレン)プロパン76.31gを添加した。その後、氷浴にて反応系内を0℃に冷却した後、m−クロロ過安息香酸201.9gを4回に分けて加え、室温にて8時間攪拌し、反応を完了させた。
反応終了後に、反応液を氷浴にて10℃に冷却し、チオ硫酸ナトリウム水溶液(1N)を加え、室温に戻した後、1時間攪拌した。その後、塩化メチレン1200mlを加え分液処理し、有機(塩化メチレン)層を先ずは、水酸化ナトリウム水溶液(0.5N)で洗浄し、続いて塩化ナトリウム水溶液で中性になるまで洗浄した。その後、洗浄した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し後、塩化メチレンを留去することで目的とする1,1,1−トリグリシジルオキシメチレンプロパン93.31gを得た。得られた化合物の収率は80%で、純度(ガスクロ)は99%であった。また、得られた生成物は、無色の液状物質であり、粘度は60mPa.secであり、エポキシ当量は101であり、全塩素量は32ppmであった。
【0034】
合成例2:1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)エタン(TME−3GE))
▲1▼1,1,1−トリ(アリルオキシメチル)エタンの合成
出発物質としてトリス(ヒドロキシメチル)エタン48.06g、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロマイド40.43g、アリルクロライド95.79gを使用した以外は、実施例1の▲1▼と同様な方法により反応を行った。その結果、目的とする1,1,1−トリアリルオキシメチレンエタン63.20gを得た。得られた化合物の収率は100%で、純度(ガスクロ)は99%であった。
【0035】
▲2▼1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)エタンの合成
上記▲1▼で得られた1,1,1−トリアリルオキシメチレンエタン63.20g、酸化剤のm−クロロ過安息香酸167.3gを使用した以外は実施例1の▲2▼と同様な方法により反応を行った。その結果、目的とする1,1,1−トリグリシジルオキシメチレンエタン92.16gを得た。得られた化合物の収率は80%で、純度(ガスクロ)は99%であった。また、この反応生成物は、無色の液状物質であり、粘度は57mPa.secでありエポキシ当量は96であり、全塩素量は20ppmであった。
【0036】
合成例3:1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)メタン(TMM−3GE)
▲1▼1,1,1−トリアリルオキシメチレンメタンの合成
出発物質としてヒドロキシメチルプロパンジオール42.07g、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロマイド40.43g、アリルクロライド95.79gを使用した以外は、実施例1の▲1▼と同様な方法により反応を行った。その結果、目的とする1,1,1−トリアリルオキシメチレンメタン59.80gを得た。得られた化合物の収率は100%で、純度(ガスクロ)は99%であった。
【0037】
▲2▼1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)メタンの合成
上記▲1▼で得られた1,1,1−トリアリルオキシメチレンプロパン59.80g、酸化剤のm−クロロ過安息香酸158.3gを使用した以外は実施例1の▲2▼と同様な方法により反応を行った。その結果、目的とする1,1,1−トリグリシジルオキシメチレンメタン73.14gを得た。得られた化合物の収率は85%で、純度(ガスクロ)は99%であった。また、この反応生成物は、無色の液状物質であり、粘度は58mPa.sであり、エポキシ当量は92であり、全塩素量は26ppmであった。
【0038】
合成例4:1,1,1,1−テトラ(グリシジルオキシメチル)メタン(PE−4GE))
▲1▼1,1,1,1−テトラ(アリルオキシメチル)メタンの合成
攪拌装置、温度計、滴下装置、冷却管を備えた内容量1リットルの四つ口ガラス製フラスコに、ペンタエリスリトール40.84g(300mmol)を加え、反応装置系内を窒素置換した後、水酸化ナトリウム水溶液(25mol/L)240mlを加え、80℃まで加熱して1時間攪拌した。その後、40℃に冷却し、テトラブチルアンモニウムブロマイド38.68g(120mmol)を添加した後、反応系内を水浴で約40℃に保ちながら、アリルクロライド114.8g(1.5mol)を反応系内に1時間かけて滴下した。更に5時間反応を継続させ反応を完了させた。
反応終了後に、トルエン500mlを加え分液処理し、有機(トルエン)層を塩化ナトリウム水溶液で中性になるまで洗浄した。その後、洗浄した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮した。この濃縮物をシリカゲル500g、トルエンで精製することにより目的とする1,1,1,1−テトラアリルオキシメチレンブタン89gを得た。得られた化合物の収率は99%以上で、純度(ガスクロ)は99%以上であった。
【0039】
▲2▼1,1,1,1−テトラ(グリシジルオキシメチル)メタンの合成
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管を備えた内容量3リットルの四つ口ガラス製フラスコに、塩化メチレン1200mlを加え、反応装置系内を窒素置換した後、上記▲1▼で得られた1,1,1,1−テトラアリルオキシメチレンブタン59.28g(100mmol)を添加した。その後、氷浴にて反応系内を0℃に冷却した後、m−クロロ過安息香酸179.48g(520mmol)を4回に分けて加え、室温にて8時間攪拌し、反応を完了させた。
反応終了後に、反応液を氷浴にて10℃に冷却し、チオ硫酸ナトリウム水溶液(1N)を加え、室温に戻した後、1時間攪拌した。その後、塩化メチレン1200mlを加え分液処理し、有機(塩化メチレン)層を先ずは、水酸化ナトリウム水溶液(0.5N)で洗浄し、続いて塩化ナトリウム水溶液で中性になるまで洗浄した。その後、洗浄した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し後、塩化メチレンを留去することで目的とする1,1,1,1−テトラグリシジルオキシメチレンブタン 60gを得た。得られた化合物の収率は83%で、純度(ガスクロマトグラフィーで測定)は99%以上であった。また、この反応生成物は、無色の液状物質であり、粘度は160mPa.secであり、エポキシ当量は90であり、全塩素量は25ppmであった。
【0040】
上記合成例1〜4で得たエポキシ樹脂の他に、以下に示すエポキシ化物及び硬化剤を使用した。原料の略号を併せて示す。
・エポキシ樹脂A: 液状、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量173g/eq、全塩素量800ppm(東都化成社製YD−8125)
・エポキシ樹脂B: 液状、トリメチロールプロパンエポキシ化物、エポキシ当量123g/eq、粘度150mPa.sec /25℃、水酸基濃度3.0eq/kg、全塩素量800ppm (東都化成社製ZX−1542)
・エポキシ樹脂C: 液状、1,6−ヘキサンジオールエポキシ化物、エポキシ当量116g/eq、粘度16mPa.sec /25℃、水酸基濃度0.1eq/kg未満、全塩素量800ppm (ジャパンエポキシレジン社製YL−6996)
・硬化触媒D:2−メチルイミダゾール
・硬化触媒E:BF3−エチルアミン錯体
【0041】
実施例及び比較例における評価は以下の方法にて行った。
粘度:エポキシ樹脂組成物について、ブルックフィールド社製レオメータDV−IIIを用いて、25℃での粘度を測定した。
ガラス転移温度:エポキシ樹脂組成物を150℃にて30分間硬化させた後、得られた硬化物の動的粘弾性測定(UBM社DVE−V4)を行い、得られたtan dピーク温度をガラス転移温度とした。
曲げ強度:エポキシ樹脂組成物を150℃にて30分間硬化させた後、JIS−K6911に準じて試験片を作成し、曲げ強度を測定した。
電気的特性:ポリイミドフィルム厚さ25μm、銅箔厚さ12μm、錫メッキ厚さ1μmのポリイミドフレキシブル配線基板と、最小ピッチ60μmで金スタッドバンプを周辺配置した一片が10mmの正方形のシリコンチップを接合し、最小スペース20μmに調整された評価用半導体装置を用い、実施例及び比較例のエポキシ樹脂組成物について、岩下エンジニアリング製ディスペンサーを用いて80℃で塗布を行い、いわゆるアンダーフィルの要領で充填を行い続いて150℃の硬化炉の中で硬化させた後、以下の条件にてPCT試験を行い、評価を行った。
【0042】
耐湿試験(121℃・2atm)での接続不良発生時期
○:100時間超
△:50〜100時間
×:50時間未満
【0043】
実施例1
エポキシ樹脂Aを70重量部、TMP−3GEを20重量部及び硬化触媒2−MZを10重量部混合し、液状エポキシ樹脂組成物とした。液状エポキシ樹脂組成物の粘度は1.1Pa.sec/25℃であった。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、熱的特性、機械的特性、電気的特性を評価した。
【0044】
実施例2〜3
エポキシ樹脂組成物の組成を表1に示したように変化させたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0045】
比較例1〜4
エポキシ樹脂組成物の組成を表2に示したように変化させたこと以外は、実施例1と同様に行った。
液状エポキシ樹脂組成物の配合組成ならびに組成物の特性評価結果をまとめて表1及び表2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
表1の実施例1〜10で使用した樹脂組成物は、本発明の要件全部を満たしていたことから、粘度、熱的特性、機械的特性、PCTの評価における信頼性いずれも優れていた。一方、比較例1〜2で使用した樹脂組成物は、水酸基を一部含有しているエポキシ樹脂を用いたため粘度が比較的高く、更にエポキシ当量も高いため熱的・機械的特性に劣っていた。
また、比較例3〜4の樹脂組成物では、低粘度エポキシ樹脂を用いたことにより低い粘度を示したが、2官能のみのエポキシ樹脂を用いたため熱的・機械的特性に劣っていた。更に、すべての比較例の樹脂組成物は、全塩素量が高濃度の低粘度エポキシ化物を用いたためPCTの信頼性に劣った。
【0049】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物は低粘度、多官能構造、低塩素量を同時に実現する液状エポキシ樹脂を含有しているため、本エポキシ樹脂組成物を使用することによって、作業性に優れ、かつ熱・機械的特性、電気的特性に優れたエポキシ樹脂硬化物を得ることが可能となる。
Claims (4)
- 一般式(1)におけるRが水素の場合、メチル基の場合及びエチル基の場合のエポキシ当量がそれぞれ91〜93、95〜97及び100〜102の範囲である請求項1記載のエポキシ樹脂希釈剤。
- 請求項1又は2記載のエポキシ樹脂希釈剤、固体又はエポキシ樹脂希釈剤より高粘度の液状のエポキシ樹脂及び硬化剤又は硬化触媒を必須成分として含むエポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂希釈剤の配合量がこれらの合計に対し1〜60重量%であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
- 請求項3記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなることを特徴とするエポキシ樹脂硬化物。
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