JP2004231745A - 導電性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂及び相溶化剤の合計100重量部に対し、導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル0.1〜15重量部並びに無機フィラー0〜100重量部を配合してなり、かつ、以下のスペックを満たすことを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
▲1▼面衝撃強度が23℃において50J以上
▲2▼線膨張係数が9×10−5K−1以下
▲3▼体積抵抗率が1×109 Ωcm以下
【選択図】 なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、機械的強度、特に面衝撃強度、寸法安定性に優れ、かつ、導電性や帯電防止性等の電気的性質にも優れ、電気・電子機器のみならず自動車用外装部品にも適した導電性熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気絶縁性である熱可塑性樹脂に導電性物質を混合し、導電性や帯電防止性等の特性を発揮させることは広く行われており、この目的のために各種の導電性物質が提案されている。一般に用いられる導電性物質としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール単位やイオン性官能基を有する高分子帯電防止剤等の有機化合物の他に、カーボンブラック、炭素繊維、金属繊維、金属粉未、金属酸化物等の無機物等が挙げられる。特に、少量の導電性物質の混合で高い導電性を得るために、カーボンブラックが使用されている。
【0003】
自動車用外装部品に関しては、導電性を付与した樹脂成形品に電気を流し、それと反対の電荷を付加した塗料を吹き付ける「静電塗装」が行われている。これは、成形品表面と塗料とに反対の電荷を持たせることによって互いに引き合う性質を利用し、塗料の成形品表面への付着率を向上させたものである。
他方、例えば、OA機器や電子機器では小型軽量化や高集積化、高精度化が進み、これに伴い、電気電子部品への塵やほこりの付着を極力低減させるという、導電性樹脂に対する市場からの要求は年々多くかつ厳しくなってきている。例えば、半導体に使われるICチップ、ICトレーや、ウエハー、コンピューターに使われるハードディスクの内部部品等は、その要求が一層厳しく、帯電防止性を付与し、塵やほこりの付着を完全に防止することが必要である。また、電磁波シールド性の付与にも導電性が要求され、例えば、ノートパソコンのハウジング、PDAのハウジング、パチンコ部品の基盤、カメラシャッター、携帯電話のハウジング等がある。
【0004】
このような用途には、従来、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のブレンド物に導電性を付与した、導電性樹脂組成物が使用されている。しかしながら、樹脂組成物に優れた導電性を付与するためには、多量のカーボンブラックを配合する必要があるため、樹脂組成物の機械的強度や流動性が低下するという欠点があった。
【0005】
また、ポリカーボネート樹脂とポリオレフィン樹脂等とのブレンド物に、導電性を付与した導電性樹脂組成物が、特開平8−199012号公報に開示されている。しかし、機械的強度、特に衝撃強度や、流動性が低下するという欠点があった。
【0006】
また、従来から衝撃強度の評価には、アイゾット衝撃強度やシャルピー衝撃強度が重視されている。しかし、自動車用外装部品に要求される衝撃強度は、歪み速度との関係でアイゾット衝撃強度やシャルピー衝撃強度との相関性は低かった。また、一般的に自動車外板に要求される衝撃強度は、JIS K7124やISO7765で規定されている面衝撃強度と相関性が高いといわれているが、本発明者等の実験では満足できる結果は得られなかった。従って、自動車外板に適した樹脂組成物を開発するには、衝撃強度の評価法も再検討すべき大きな課題であった。
また、自動車外板に使用される樹脂組成物の線膨張係数は、鋼板とのすきまをなるべく小さくするためにも小さくする必要があり、ICトレーやカメラシャッター等もその品質上小さくする必要があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の諸欠点を解消した、導電性熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的として鋭意検討した結果、後記MEP法により適切な面衝撃強度の評価が可能となり、本発明の特定組成物に到達したものである。すなわち、本発明の目的は、成形性に優れると共に、少なくとも▲1▼面衝撃強度、▲2▼線膨張係数及び▲3▼体積抵抗率が特定の要求を満足する導電性熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、ポリカーボネート樹脂{(A)成分}、ポリオレフィン樹脂{(B)成分}及び相溶化剤{(C)成分}の合計100重量部に対し、導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル{(D成分}0.1〜15重量部並びに無機フィラー{(E)成分}0〜100重量部を配合してなり、かつ、以下のスペックを満たすことを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物に存する。
▲1▼面衝撃強度が23℃において50J以上(但し、試験法は後記MEP法による)
▲2▼線膨張係数が9×10−5K−1以下(但し、試験法はASTMD696による)
▲3▼体積抵抗率が1×109 Ωcm以下{但し、試験法は、平板状試験片(幅150mm×長さ150mm×厚さ3mm)の長さ方向(成形時の樹脂の流れ方向)の両端面に銀ペーストを全面塗布し、室温で乾燥した後に、該両端面間の抵抗値(RL:単位Ω)を測定し、体積抵抗率Rを、次式より算出した。}
R=RL×AL/L
(式中、ALは、試験片の断面積(単位cm2 )を、Lは、試験片の長さ(単位cm)を意味する。)
【0009】
【発明の実施の形態】
(A)成分:ポリカーボネート樹脂
本発明に使用するポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族−脂肪族ポリカーボネート等が挙げられる。中でも、芳香族ポリカーボネートが好ましい。芳香族ポリカーボネー卜樹脂としては、芳香族ヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性の芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体である。芳香族ポリカーボネートの製造法は特に限定されるものではなく、従来から知られているホスゲン法(界面重合法)又は溶融法(エステル交換法)等によって製造することができる。溶融法で製造された芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端基のOH基量を調整したものであってもよい。
【0010】
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等か挙げられる。中でも好ましいのは、ビスフェノールAである。この樹脂の難燃性を一層高める目的で、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムを1個以上結合させた化合物、及び/又は、シロキサン構造を有する両未端フェノール性OH基を含有したポリマー又はオリゴマー等を、少量共存させることができる。
【0011】
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3,1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)べンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等で示されるポリヒドロキシ化合物類、又は、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等を前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を置換して使用すればよく、その使用量は0.01〜10モル%の範囲が好ましく、特に好ましいのは0.1〜2モル%である。
【0012】
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、又は2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。さらに、この樹脂の難燃性を一層高める目的で、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーを共重合させることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂は、2種以上の組成の異なる樹脂の混合物であってもよい。
【0013】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度から換算した粘度平均分子量で、13,000〜30,000の範囲のものが好ましい。粘度平均分子量が13,000未満であると、樹脂組成物から得られる成形品の機械的強度が不足し、30,000を超えると樹脂組成物の成形性が悪く、いずれも好ましくない。粘度平均分子量のより好ましい範囲は15,000〜27,000であり、中でも好ましいのは17,000〜24,000である。
【0014】
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、原料として一価の芳香族ヒドロキシ化合物を使用すればよい。一価の芳香族ヒドロキシ化合物としては、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール及びp−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
【0015】
(B)成分:ポリオレフィン樹脂
ポリオレフィン樹脂としては、既知の方法による重合又は変性等により得られ、市販のものから適時選んで用いることもできる。ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1の単独重合体又はこれらを過半重量含む共重合体等が挙げられ、好ましくは、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂等の炭素数3以下のオレフィン単量体を主成分とするポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0016】
エチレン系樹脂としては、エチレンを主成分として重合された重合体であり、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。これらのポリエチレンは、共重合成分として、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等のα−オレフィン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等のビニル系単量体等を含む共重合体であってもよい。
【0017】
プロピレン系樹脂としては、プロピレンを主成分として重合された重合体であり、結晶性プロピレン単独重合体、プロピレンとα−オレフィンとのブロック若しくはランダム共重合による結晶性共重合体等が挙げられ、α−オレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等が挙げられる。好ましくは、結晶性ポリプロピレンが挙げられる。
【0018】
ポリオレフィン樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、230℃、荷重2.16kgの条件での測定で、好ましくは0.01〜300dg/minであり、より好ましくは0.05〜200dg/minであり、最も好ましくは0.1〜100dg/minである。MFRの値が低すぎると成形加工性に難点が生じ、高すぎると機械的物性バランスが低くなる。ポリオレフィン樹脂のMFRは、ラジカル発生剤、例えば有機過酸化物等の存在下でポリオレフィン樹脂を加熱処理することにより分子量を変化させて上記のMFRの範囲にすることもできる。
【0019】
ポリオレフィン樹脂の密度は、JIS K−7112に基づく測定で、好ましくは0.88〜0.95g/cm3であり、より好ましくは0.89〜0.94g/cm3である。密度が低すぎると耐クリープ性が不十分であり、高すぎるものは製造が困難である。かかる密度のポリオレフィン樹脂は、重合によって該密度のポリオレフィン樹脂を得る方法や、ポリオレフィン樹脂に核剤を添加することによって密度を向上させる方法等によって製造することができる。
【0020】
核剤としては、例えば、芳香族カルボン酸の金属塩、ソルビトール系誘導体、有機リン酸塩、芳香族アミド化合物等の有機系核剤や、タルク等の無機核剤を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これら核剤の使用量は少量で十分であり、通常、ポリオレフィン樹脂に対して0.01〜0.5重量%程度で十分である。
また、ポリオレフィン樹脂と後記(E)成分無機フィラーとの親和性を向上させる目的で、ポリオレフィン樹脂にカルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ヒドロキシル基等の官能基を導入することもできる。ポリオレフィン樹脂における官能基濃度は、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは0.03重量%以上である。
【0021】
(C)成分:相溶化剤
相溶化剤とは、(A)成分と(B)成分との混合組成物において、ミクロ形態がミクロンオーダーで分散(相溶化)させるために必要な機能をもつ組成物である。すなわち、それぞれの成分相の間に界面活性剤的な役割をするものであるから、相溶化剤の分子構造は1つの分子構造の中にそれぞれのポリマーとの親和性をもつ機能を持ったものでなくてはならない。よって、一般的には2つ以上の成分による共重合体が基本になり、以下のものとして、分類できる。
1.(A)成分及び(B)成分のグラフト共重合体
2.(A)成分及び(B)成分と各々物理混合可能な成分を持つ共重合体
3.(A)成分又は(B)成分のどちらかと化学反応を起こし、他のポリマーは他の成分と同等分子構造をもつもの
4.(A)成分又は(B)成分のどちらかと化学反応を起こし、他の成分と物理的相溶性を示す別の成分との重合体
【0022】
具体的な相溶化剤としては、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、ヒドロキシル基等の官能基を導入したポリオレフィン樹脂;ポリエステルとポリオレフィンとのグラフト体;ポリエステル−PPEグラフト体と部分水素添加アルケニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体との組み合わせが挙げられる。面衝撃強度及び体積抵抗率向上効果の点で、相溶化剤は、ポリエステル−PPEグラフト体と部分水素添加アルケニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体との組み合わせを選択するのが好ましい。この組合せにおいて、部分水素添加アルケニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体は市販品を容易に入手できるが、ポリエステル−PPEグラフト体は、例えばポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステルとポリフェニレンエーテル系樹脂とを、2軸押出機中で減圧下溶融混練することにより両者のグラフト体を、容易に調製することができる。両者の配合割合は、相溶化剤の観点から、ポリエステル/ポリフェニレンエーテルの重量比で40/60〜5/95が選ばれる。また、溶融混練は、酸化防止剤の存在下で行うのがよい。
【0023】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、その主たる樹脂成分である(A)成分及び(B)成分が相互に不溶性であるが、(C)成分の配合によって相溶化された状態にあるので、(A)成分及び(B)成分のいずれか一方が連続相(海相)を構成し、他方が該連続相中に分散した不連続相(島相)を構成する、いわゆる海−島構造のミクロ形態を有する。このミクロ形態は、電子顕微鏡で容易に確認することができる。例えば、熱可塑性樹脂組成物のペレット又は成形品から、小片を切り取り、ウルトラミクロトーム(例えば、ライヘルト社製、ウルトラカットN)を使用して超薄切片を作成し、表面の(A)成分を酸化ルテニウム(RuO4 )で薄く染色し、(C)成分を酸化オスミウム(OsO4 )で濃く染色したものを、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子社製、JEM100CX))によって観察することができる。このようなミクロ形態を有する熱可塑性樹脂組成物からは、機械的強度、特に自動車の外板に必要な面衝撃強度の優れた成形品が得られる。
【0024】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂からなる(A)成分とポリオレフィン樹脂からなる(B)成分の、どちらが海相でどちらが島相を構成しても構わない。しかし、導電性向上等の観点からは、(B)成分が島相を構成し、(A)成分が海相を構成し、(C)成分が(A)成分と(B)成分の界面を主に構成してなるものが好ましい。ここで、「主に」とは、(C)成分の半量以上が、好ましくは65%以上が、最も好ましくは85%以上が、上記界面を構成していることを意味する。相溶性向上の観点からは、(A)成分と(B)成分とのグラフト体が、全組成物の重量に対して、少なくとも1重量%が、上記界面に存在するものが、さらに好ましい。しかして、このような組成物は、溶融混練することによって、容易に調製することができる。
【0025】
(D)成分:導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル
(D)成分の導電性カーボンブラックとしては、原油を原料としフアーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラック、アセチレンガスを熱分解して得られるアセチレンブラックを挙げることができる。また、(D)成分の中空炭素フィブリルとしては、規則的に配列した炭素原子の本質的に連続的な多数層からなる外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とが実質的に同心的に配置されている、本質的に円柱状のフィブリルである。さらに、上記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、上記中空領域の直径が2〜20nmの範囲が好ましい。
このような(D)成分は、特表昭62−500943号公報や、米国特許第4,663,230号明細書等に詳細に記載されている。中空炭素フィブリルの製法は、後者の米国特許明細書に詳細に記載されているように、例えば、アルミナを支持体とする鉄、コバルト、ニッケル含有粒子等の遷移金属含有粒子を、一酸化炭素、炭化水素等の炭素含有ガスと、850〜1200℃の高温で接触させ、熱分解によって生じた炭素を、遷移金属を起点として、繊維状に成長させる方法が挙げられる。(D)成分の中空炭素フィブリルは、ハイペリオン・カタルシス社が、グラファイト・フィブリルという商品名で販売しており、容易に入手することができる。
【0026】
(E)成分:無機フィラー
主に線膨張係数の改良のため使用される無機フィラーの(E)成分には、ガラス繊維、ウォラストナイト、タルク等がある。
(E)成分のガラス繊維は、通常熱可塑性樹脂に使用されているものであればいずれも使用できるが、無アルカリガラス(Eガラス)が好ましい。ガラス繊維の直径は、好ましくは6〜20μmであり、より好ましくは9〜14μmである。繊維径が6μm未満では補強効果が不充分となり易く、20μmを超えると製品外観に悪影響を与えやすい。ガラス繊維は、好ましくは、長さ1〜6mmにカットされたチョップドストランド、ガラスミルドファイバーは長さ0.01〜0.5mmに粉砕されて市販されているもののいずれを用いても良く、両者を混合して用いてもよい。本発明で使用されるガラス繊維は、樹脂との密着性を向上させる目的で、アミノシラン、エポキシシラン等のカップリング剤等による表面処理、あるいは取扱い性を向上させる目的で、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等による集束処理を施して使用してもよい。
【0027】
(E)成分のウォラストナイトは、通常SiO2 が50重量%以上、CaOが約47重量%、そのほかFe2 O3 、Al2 O3 等を含んでおり、ウォラストナイト原石を粉砕、分級した白色針状粉末である。ウォラストナイトの加重平均繊維長は5〜50μmで、全個数100%中繊維径0.5〜5μmの個数が70%以上であるウォラストナイトが好ましい。さらに、加重平均繊維長が20〜40μmで、全個数100%中繊維径1〜5μmの個数が70%以上であるウォラストナイトが好ましい。ウォラストナイトは,通常公知の表面処理剤のカップリング剤で表面処理してもよい。
【0028】
(E)成分のタルクは、層状構造を持った鱗片状の粒子であり、化学組成的には含水珪酸マグネシュウムであり、通常SiO2 を28〜35重量%、MgOを28〜35重量%、H2 Oを約5重量%含んでいる。その他少量成分としてFe2 O3 が0.03〜1.2重量%、Al2 O3 が0.05〜1.5重量%、CaOが0.05〜1.2重量%、K2 Oが0.2重量%以下、Na2 Oが0.2重量%以下等含有しており、比重は約2.7である。タルクの粒子径は1〜15μm、好ましくは1〜10μmである。タルクを原石から粉砕する際の製法は特に制限はないが、タルクの取り扱い性の点で凝集状態であるものが好ましく、脱気圧縮による製法が好ましい。
【0029】
導電性熱可塑性樹脂組成物
前記の(A)成分ポリカーボネート樹脂、(B)成分ポリオレフィン樹脂及び(C)成分相溶化剤を構成成分とする本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量100重量部中、(A)成分5〜95重量部、好ましくは35〜90重量部、最も好ましくは40〜90重量部、(B)成分95〜5重量部、好ましくは65〜10重量部、最も好ましくは60〜10重量部、(C)成分0.1〜30重量部、好ましくは3〜15重量部の範囲で配合されたものが好ましい。しかして、(A)成分が5重量部未満又は(B)成分が95重量部を超えると、線膨張率、導電性、応力緩和、面衝撃強度等が劣り、(A)成分が95重量部を超え又は(B)成分が5重量部未満であると、成形性、耐薬品性が不満足であり、さらに(C)成分が0.1重量部未満では面衝撃強度が低下し、30重量部を超えると外観に悪影響を与え好ましくない。
【0030】
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物では、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100重量部に対し、(D)成分導電カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル0.1〜15重量部、並びに、(E)成分無機フィラー0〜100重量部が配合される。(D)成分は、好ましくは0.5〜7重量部、最も好ましくは1〜3重量部の範囲から選ばれる。(D)成分が0.1重量部未満であると、導電性、帯電防止性が劣り、15重量部を超えると機械的強度特に面衝撃強度、成形性等が劣り、いずれも好ましくない。(E)成分は、好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは5〜50重量部、最も好ましくは10〜30重量部の範囲から選ばれる。(E)成分が100重量部超過であると外観、面衝撃強度、成形性等が劣り好ましくない。特に、線膨張率の改善の観点からは、(E)成分が、ガラス繊維、ウォラストナイト及びタルクからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、その配合量が、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100重量部に対し、5〜50重量部であることが好ましい。
【0031】
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物では、上記のような配合成分として適切なものを、適切な量配合することにより、少なくとも次のスペックを満たすことが必要である。
▲1▼面衝撃強度が23℃において50J以上(但し、試験法は下記「MEP法」による)
▲2▼線膨張係数が9×10−5K−1以下(但し、試験法はASTMD696による)
▲3▼体積抵抗率が1×109 Ωcm以下{但し、試験法は、平板状試験片(幅150mm×長さ150mm×厚さ3mm)の長さ方向(成形時の樹脂の流れ方向)の両端面に銀ペーストを全面塗布し、室温で乾燥した後に、該両端面間の抵抗値を測定し、体積抵抗率を算出する。}
【0032】
(MEP法) 試験片に、厚さ3mmで縦横150mm×150mmの、上下両表面が正方形である平板状成形品を使用して測定した。
測定に際して、試験片を、表面の正方形の1辺に沿う15mm幅の長方形部分、及び、該長方形と対向する1辺の頂点の一方をその頂点とし30mmの2辺を有する直角2等辺三角形隅部分の2箇所において、上下から挟持する治具で試験台に固定した。
試験は、固定された試験片の中央に錘(重量10kg、錘の先端R=50mm、材質S55C)を自由落下させ、落下距離を5cm単位で増減して、破壊の有無を観察した。試験片が破壊しない最大の落下距離を測定して、衝撃エネルギーを算出し、面衝撃強度とする。
【0033】
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物は、さらに、導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル{(D)成分}が主に(A)成分中に存在し、無機フィラー{(E)成分}も主に(A)成分中に存在するミクロ形態を有するのが好ましい。ここで、「主に」とは、(D)成分及び(E)成分のそれぞれ半量以上が、好ましくは65%以上が、最も好ましくは85%以上が、(A)成分中に存在していることを意味する。すなわち、(D)成分と必要に応じ(E)成分とを併用し、上記のミクロ形態を有するように分散させることによって、熱可塑性樹脂組成物は、機械的強度、特に自動車の外板に必要な面衝撃強度や塗装性の優れた成形品が得られる。
【0034】
しかして、(D)成分及び必要に応じ(E)成分が主に(A)成分中に存在する導電性熱可塑性樹脂組成物の調製方法は特に制限はないが、工業的観点からは、溶融・混練法が好ましい。具体的方法としては、予め(D)成分及び必要に応じ(E)成分を(A)成分と溶融混練した中間組成物に、(B)成分及び(C)成分等を配合する方法、並びに、予め(A)成分、(B)成分及び(C)成分を溶融混練した中間組成物に、(D)成分及び必要に応じ(E)成分等を配合する方法が挙げられる。このような方法を採用することにより、所定のミクロ形態を有する導電性熱可塑性樹脂組成物を得ることが容易になる。
【0035】
上記溶融・混練法においては、所定量の樹脂成分(A)〜(C)と導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル(D)と、必要に応じさらに無機フィラー(E)とを、例えば、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラム等の各種溶融・混練機で溶融・混練した後、粒状化する。その際、あらかじめ導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリルの含有量の多いマスターバッチを調製し、このマスターバッチを熱可塑性樹脂と溶融・混練する方法によると、導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリルが良好に分散した樹脂組成物とすることができ好ましい。また、上記溶融・混練法によらずとも、適当な溶媒、例えば、ヘキサン、へプタン、べンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素、及びこれらの誘導体に、上記成分(A)〜(E)を添加し、溶解する成分同士又は溶解する成分と不溶解成分を懸濁状態で混合する溶液混合法により、本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物を調製することも可能である。
【0036】
なお、本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲で、他の各種樹脂添加剤を配合することができる。配合できる樹脂添加剤としては、例えば、着色剤、可塑剤、滑剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填材、発泡剤、難燃剤、防錆剤等が挙げられる。これら各種樹脂添加剤は、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を調製する際の最終工程で配合するのが好ましい。
【0037】
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物は、導電性や帯電防止性が要求される製品、例えばOA機器、電子機器、導電性包装用部品、帯電防止性包装用部品、静電塗装が適用される自動車用外板等の成形材料として好適に使用できる。これら製品を製造する際には、従来から知られている熱可塑性樹脂の成形法によることができる。成形法としては、例えば、射出成形法、中空成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法等が挙げられる。
【0038】
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物の大きな用途として自動車外板等の自動車用外装部品が期待される。従来から、熱可塑性樹脂組成物開発時の衝撃強度の評価には、アイゾット衝撃強度やシャルピー衝撃強度が重視されてきた。しかし、自動車用外装部品に要求される衝撃強度は、歪み速度との関係でアイゾット衝撃強度やシャルピー衝撃強度と必ずしも充分な相関性がなかった。また、一般的に自動車外板に要求される衝撃強度は、JIS K7124やISO7765で規定されている面衝撃強度と相関性が高いといわれているが、本発明者等の実験では満足できる結果は得られなかった。そこで、衝撃強度の評価法について種々検討の結果、前記のMEP法で得られた面衝撃強度が、自動車用外装部品に要求される衝撃強度と相関性が高いことを見出し、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度評価法として採用した。そのような部品には、バンパー、フェンダー、ドアパネル、ホイールキャップ、ドアハンドル、フードバルジ、オーバーフェンダー、フューエルリッド、リアパネル、各種エアロパーツ等も含まれる。
【0039】
本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物を、導電性の要求が厳しい用途、例えば半導体に使われるICチップ、ICトレーや、ウエハー、コンピューターに使われるハードディスクの内部部品等は、帯電防止性を付与し、塵やほこりの付着を完全に防止するために最適導電性が必要であり、高すぎても低すぎても満足しない。このような用途には、2×102 〜1×108 Ωcmの範囲の体積抵抗率が選ばれる。一方、電磁波シールド性の付与に導電性が要求される用途、例えば、ノートパソコンのハウジング、PDAのハウジング、パチンコ部品の基盤、カメラシャッター、携帯電話のハウジング等では、体積抵抗率が低くても問題はない。
【0040】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって、詳しく説明するが、本発明はこれらの範囲内に限定されるものではない。なお、以下に記載において、使用した各成分の物性等の詳細は、次のとおりであり、また、部及び%は、断りがない限り、重量部及び重量%を意味する。
【0041】
各成分
(A)ポリカーボネート樹脂: 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ユーピロンS−2000、粘度平均分子量23,000(以下、PCと略記する。)
【0042】
(B)ポリオレフィン
(B1)ポリプロピレン:日本ポリケム(株)製、ノバテックBC5D、MFR4.0dg/min、密度0.90g/cm3 (以下、PPと略記する。)
(B2)高密度ポリエチレン:日本ポリケム(株)製、ノバテックHF310、MFR0.06dg/min、密度0.951g/cm3 (以下、HDPEと略記する。)
(B3)変性樹脂:
<(B3)の調製>
上記の高密度ポリエチレン(ノバテックHF310)100部に、無水マレイン酸5部、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ社製、パーカドックス14)0.1部をスーパーミキサーにて十分混合し、得られた混合物を、二軸混練押出機((株)日本製鋼所製、TEX30XCT)にて溶融混練した後、ペレット化して変性樹脂(以下、M−HDPEと略記する。)を得た。この変性樹脂の、赤外線吸収スペクトル法によって測定された、無水マレイン酸グラフト含量は2.7%であった。
【0043】
(C)相溶化剤
(C1)ポリフェニレンエーテルと飽和ポリエステルとのグラフト体:
<原料成分>
ポリフェニレンエーテル: 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、30℃におけるクロロホルム中で測定した固有粘度が0.41dl/g(以下、PPEと略記する。)
ポリブチレンテレフタレート: 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のポリブチレンテレフタレート、ノバデュラン5020、固有粘度1.20dl/g(以下、PBTと略記する。)
亜リン酸エステル化合物: ビス(2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、旭電化(株)製、アデカスタブPEP−36(以下、PEP36と略記する。)
<(C1)の調製>
上記原料成分を十分に乾燥した後、下記の配合比でスーパーミキサーにて十分混合攪拌し、
PPE 80部
PBT 20部
PEP36 2部
次いで、これをベント口付きの(株)日本製鋼所製TEX44二軸型押出機を用いて、第1ホッパーより下流に設置したベント口より1.3kPaの減圧にし、設定温度210℃、スクリュー回転数250rpmの混練条件下で溶融混練し、ペレット化した。これを105℃で8時間熱風乾燥機にて乾燥し、相溶化剤(C1)を得た。
【0044】
(C2)部分水素添加アルケニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体:
(株)クラレ製、セプトン2104、アルケニル芳香族化合物に由来する繰り返し単位の占める割合60%、不飽和結合の割合1%、数平均分子量60,000(以下、SEPSと略記する。)
【0045】
(C3)エポキシ化ポリエチレン: 住友化学(株)製、エチレン−グリシジルメタアクリレート−酢酸ビニルコポリマー、ボンドファースト2B、グリシジルメタアクリレート含量12%
【0046】
(D)導電性カーボンブラック:
(D1)カーボンブラック: ライオン(株)製、導電性カーボンブラック、600JD、比表面積1270m2/g、DBP吸油量495ml/100g
(D2)中空炭素フィブリル: ハイペリオン・カタリシス社製、PC/15BN
ポリカーボネート85%と、外径15nm、内径5nm、長さ100〜10,000nmの中空炭素フィブリル(グラファイト・フィブリルBN)15%とを含有するマスターバッチ
【0047】
(E)無機フィラー
(E1)タルク: 富士タルク社製、KT300、レザー法による平均粒子径1.5μm
(E2)ウォラストナイト: 川鉄鉱業社製、PH330、平均繊維径(D)2.2μm、平均繊維長(L)20.9μm、平均L/D=9.5
【0048】
その他:
ハイインパクトポリスチレン: A&M社製、ダイヤレックスHT478、ゴム成分ポリブタジエン(以下、HIPSと略記する。)
【0049】
評価試験
また、以下の実施例、比較例において、得られた組成物についての評価試験は、下記の方法で行なった。
(1)MFR(単位:dg/min): JIS K7210に準拠し、温度280℃、荷重5kgとして測定した。
(2)曲げ弾性率(単位:MPa): ASTM D790に準拠して曲げ試験を行って測定した。
【0050】
(3)面衝撃強度(単位:J): (MEP法) 試験片に、厚さ3mmで縦横150mm×150mmの、上下両表面が正方形である平板状成形品を使用して測定した。
測定に際して、試験片を、表面の正方形の1辺に沿う15mm幅の長方形部分、及び、該長方形と対向する1辺の頂点の一方をその頂点とし30mmの2辺を有する直角2等辺三角形隅部分の2箇所において、上下から挟持する治具で試験台に固定した。
試験は、固定された試験片の中央に錘(重量10kg、錘の先端R=50mm、材質S55C)を自由落下させ、落下距離を5cm単位で増減して、破壊の有無を観察した。試験片が破壊しない最大の落下距離h(単位:m)を測定して、次式により衝撃エネルギー(単位:J)を算出し、面衝撃強度とする。
面衝撃強度=9.8(重力加速度)×10(錘の質量)×h
(4)Izod衝撃強度(単位:J/m): ASTM D256に準拠して測定した。
【0051】
(5)体積抵抗率(単位:Ωcm): 射出成形機(東芝機械社製、型式:IS−150、型締め力150トン)を使用し、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で平板状試験片(幅150mm×長さ150mm×厚さ3mm)を作成し、下記のような方法で測定した。
試験片の長さ方向(成形時の樹脂の流れ方向)の両端面に銀ペーストを全面塗布し、室温で乾燥した後に、テスターで該両端面間の抵抗値(RL:単位Ω)を測定し、体積抵抗率R(単位:Ωcm)を、次式より算出した。
R=RL×AL/L=RL×0.3
(式中、ALは、試験片の断面積(単位:cm2 )を、Lは、試験片の長さ(単位:cm)を意味する。)
(6)線膨張係数(単位:K−1): ASTM D696に準拠して線膨張係数を測定した。ただし、測定温度範囲は23〜80℃とした。
【0052】
(7)グラフト重合体量:
組成物の試料5gを塩化メチレン100ml(室温)で1時間攪拌後、ろ過し、塩化メチレンで洗浄し、乾燥させ、残留物を得る。次に得られた残留物からポリオレフィン成分を抽出し、グラフト体を得るため、残留物を熱キシレン100ml(reflux)で1時間撹拌後、熱ろ過し、塩化メチレンで洗浄し、乾燥させ、秤量する。
【0053】
[実施例1〜実施例7]
(A)〜(C)成分及び場合によってはその他の樹脂成分を表−1に示す割合で秤量し、タンブラーミキサーで均一に混合し、得られた混合物を二軸押出機(30mmφ)根本の第1ホッパーにフィードし、シリンダー温度250℃、スクリー回転数400rpmの条件下で十分溶融・混練した溶融配合物100部に、同じ押出機の途中に設けた中間ホッパーより、表−1に示す量の、(D)成分及び(E)成分をフィードし、十分混練して、ペレット化し、本発明に係る導電性熱可塑性樹脂組成物を調製した。実施例1における(A)成分と(B)成分とのグラフト重合体量は、全組成物の重量に対して、3.5%であった。
【0054】
この組成物を、射出成形機(住友ネスタール社製、型締め力75トン)によって、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で成形して、試験片を作成する。この試験片につき各種の評価試験を行なった。ただし、体積抵抗率測定用の試験片は、上記したとおりである。評価結果を、表−1に示す。
【0055】
また、各実施例で調製した組成物のペレットから、小片を切り取り、ウルトラミクロトーム(ライヘルト社製、ウルトラカットN)を使用して超薄切片を作成し、表面を酸化ルテニウム(RuO4)、酸化オスミウム(OsO4)等で染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM100CX)によってミクロ形態を観察した結果、以下の点が判明した。
▲1▼実施例1〜4、7の組成物は、(A)成分を海相とし、(B)成分を島相とすること。
▲2▼実施例5、6の組成物は、(B)成分を海相とし、(A)成分を島相とすること。
▲3▼いずれの実施例の組成物も、(C)成分が(A)成分と(B)成分の界面を構成していること。また、(A)成分と(B)成分とのグラフト重合体は、(C)成分とともに界面に存在すること。
▲4▼いずれの実施例の組成物も、(D)成分が(A)成分中に存在していること。
▲5▼実施例2〜4、6の組成物は、(E)成分が(A)成分中に存在していること。
【0056】
【表1】
【0057】
[比較例1]
表−1に示す通り、(C)成分(相溶化剤)を配合しなかった以外は、実施例1と同様の手順で、混合物とし、得られた混合物を二軸押出機によって溶融・混練してペレット化し熱可塑性樹脂組成物を調製した。(A)成分と(B)成分とのグラフト重合体量は0%であった。
実施例1と同様に、この組成物から作成された試験片につき、各種の評価試験を行なった。評価結果を、表−1に示す。また、実施例と同様の手順で、組成物のミクロ形態を観察した結果、(A)成分を海相とし、(B)成分を島相とすることが判明した。
【0058】
[比較例2]
表−1に示す通り、(D)成分(導電剤)を配合しなかった以外は、実施例5と同様の手順で組成物を調製し、試験片を作成し、各種の評価試験を行なった。評価結果を、表−1に示す。また、実施例と同様の手順で、組成物のミクロ形態を観察した結果、(B)成分を海相とし、(A)成分を島相とすること、及び、(C)成分が(A)成分と(B)成分の界面を構成していることが判明した。
【0059】
[比較例3]
表−1に示す通り、(B)成分及び(C)成分の両者とも配合しなかった以外は、実施例1と同様の手順でペレット化し、試験片を作成し、各種の評価試験を行なった。評価結果を、表−1に示す。
【0060】
[比較例4]
表−1に示す通り、(A)成分及び(C)成分の両者とも配合しなかった以外は、実施例1と同様の手順でペレット化し、試験片を作成し、各種の評価試験を行なった。評価結果を、表−1に示す。
【0061】
[比較例5]
実施例7において、二軸押出機の第1ホッパーに(A)〜(C)成分の混合物に代えて(B)成分及び(D)成分をフィードし、また、中間ホッパーには(D)成分及び(E)成分に代えて(A)成分及び(C)成分をフィードした以外は、実施例7と同様の手順でペレット化し、試験片を作成し、各種の評価試験を行なった。評価結果を、表−1に示す。また、実施例と同様の手順で、組成物のミクロ形態を観察した結果、(A)成分を海相とし、(B)成分を島相とすること、及び、(D)成分は(B)成分中に存在していることが判明した。
【0062】
[比較例6]
表−1に示す通り、(A)成分、(B)成分及び(E)成分の配合を変更し、かつ、(E)成分を二軸押出機の最下流に設けた第2中間ホッパーにフィードした以外は、比較例5と同様の手順でペレット化し、試験片を作成し、各種の評価試験を行なった。評価結果を、表−1に示す。また、実施例と同様の手順で、組成物のミクロ形態を観察した結果、(B)成分を海相とし、(A)成分を島相とすること、並びに、(D)成分及び(E)成分は(B)成分中に存在していることが判明した。
【0063】
また、前記表−1に示した評価結果から、以下の諸点が明らかになる。
(1)実施例1と比較例1とを対比すると、(C)成分相溶化剤の配合(実施例1)により、面衝撃強度及び体積抵抗率が、著しく改善されること、また、比較例3、4を参照することにより、(C)成分相溶化剤なしでの(A)成分と(B)成分との配合は、各成分単独の面衝撃強度及び体積抵抗率の発揮さえ抑圧すること
(2)実施例5と比較例2とを対比すると、(D)成分導電剤を配合し(A)成分中に存在させること(実施例5)により、体積抵抗率が、著しく改善されること
(3)実施例7と比較例5、6とを対比すると、(B)成分M−HDPEと(D)成分導電剤とを予め混練し、(D)成分が(B)成分中に存在する場合(比較例5、6)は、(D)成分が(A)成分中に存在する場合(実施例7)のように低い体積抵抗率が達成されず、導電性が不十分であること
(4)実施例1、5と実施例2〜4、6とを対比すると、(E)成分無機フィラーを配合すること(実施例2〜4、6)により、曲げ弾性率が向上し、Izodは低下すること、しかし、面衝撃強度、体積抵抗率、線膨張係数のバランスは十分実用範囲内であること
【0064】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおり顕著な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
本発明によれば、機械的強度、特に面衝撃強度、寸法安定性に優れ、かつ、導電性や帯電防止性等の電気的性質にも優れ、電気・電子機器のみならず自動車外装部品にも適した導電性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
Claims (11)
- ポリカーボネート樹脂{(A)成分}、ポリオレフィン樹脂{(B)成分}及び相溶化剤{(C)成分}の合計100重量部に対し、導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル{(D成分}0.1〜15重量部並びに無機フィラー{(E)成分}0〜100重量部を配合してなり、かつ、以下のスペックを満たすことを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
▲1▼面衝撃強度が23℃において50J以上(但し、試験法は後記MEP法による)
▲2▼線膨張係数が9×10−5K−1以下(但し、試験法はASTMD696による)
▲3▼体積抵抗率が1×109 Ωcm以下{但し、試験法は、平板状試験片(幅150mm×長さ150mm×厚さ3mm)の長さ方向(成形時の樹脂の流れ方向)の両端面に銀ペーストを全面塗布し、室温で乾燥した後に、該両端面間の抵抗値(RL:単位Ω)を測定し、体積抵抗率Rを、次式より算出した。}
R=RL×AL/L
(式中、ALは、試験片の断面積(単位cm2 )を、Lは、試験片の長さ(単位cm)を意味する。) - 体積抵抗率が2×102 〜1×108 Ωcmであることを特徴とする請求項1に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- (A)成分及び(B)成分のいずれか一方が連続相(以下、「海相」という。)を構成し、他方が該連続相中に分散した不連続相(以下、「島相」という。)を構成する、海−島構造のミクロ形態を有することを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- (B)成分が島相を構成し、(A)成分が海相を構成し、(C)成分が(A)成分と(B)成分の界面を主に構成してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- (D)成分が主に(A)成分中に存在することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- (E)成分が主に(A)成分中に存在することを特徴とする請求項5に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- (A)成分と(B)成分とのグラフト体が、全組成物の重量に対して、少なくとも1重量%存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- (C)成分が、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基およびヒドロキシル基から選ばれた少なくとも1種の官能基を導入したポリオレフィン樹脂;ポリエステルとポリオレフィンとのグラフト体;ポリエステル−ポリフェニレンエーテル(以下、「PPE」と略称する。)グラフト体と部分水素添加アルケニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体との組み合わせのいずれかであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- (C)成分が、ポリエステル−PPEグラフト体と部分水素添加アルケニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体との組み合わせであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- (E)成分が、ガラス繊維、ウォラストナイト及びタルクからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、その配合量が、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100重量部に対し、5〜50重量部であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
- 予め(A)成分、(B)成分及び(C)成分を溶融混練した中間組成物に、(D)成分及び必要に応じ(E)成分を配合することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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