JP2004227843A - 色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】耐候変色性および透明性が良好な色素増感型太陽電池保護用のアクリル樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】波長380nmで10%以下かつ波長480nmで90%以上の光線透過率を有する色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムで、ベンゾトリアゾール系及びトリアジン系の紫外線吸収剤の少なくとも一種、更にインドール系及びゾメチン系の特定波長吸収剤の少なくとも一種を含有することが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】波長380nmで10%以下かつ波長480nmで90%以上の光線透過率を有する色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムで、ベンゾトリアゾール系及びトリアジン系の紫外線吸収剤の少なくとも一種、更にインドール系及びゾメチン系の特定波長吸収剤の少なくとも一種を含有することが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光線透過率が波長380nmで10%以下、かつ波長480nmで90%以上である色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、普及している太陽電池としては、シリコン系の半導体太陽電池が一般的である。一方で、製造が容易で、低コストの太陽電池として、色素増感型太陽電池の研究が進んでいる。その中でも、シリコン系の半導体太陽電池に匹敵する性能を実現するものとして、色素増感型太陽電池(非特許文献1)があり、各方面でさらに研究が進められている。
【0003】
色素増感型太陽電池は湿式太陽電池の一種であり、電極表面の酸化物半導体膜に色素を担持させた電極、電解質溶液、対電極が一般的な構成である。ここで、「色素増感」とは、色素が太陽光の主な波長帯である可視光領域エネルギーで励起され、効率よく光エネルギーを吸収し、励起された電子を酸化物半導体に受け渡す性質のことである。このような光エネルギーの受け渡しにより、酸化物半導体は、起電力を有することができる。
【0004】
電極として主に使用される酸化物半導体電極には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セレン等があるが、これらはバンドギャップエネルギーより大きなエネルギーの光を受けることにより強い酸化的光触媒作用を示すことが知られている。
【0005】
金属酸化物半導体のバンドギャップエネルギーは3〜4eV程度である。例えば、酸化チタンの場合は、バンドギャップエネルギーが3.2eV(波長に換算すると380nmに相当)であり、波長380nm以下の光線(すなわち紫外線)が照射されることによって、光触媒作用により色素や電解液等の有機物が分解される。また、正孔を生じるために、電子が再結合してしまう問題が生じる場合がある。
透明電極としてガラスを用いた場合には、通常のガラスでは波長約350nm以上の光線に対しては透過することから、波長380nm近傍の光線の透過が色素増感型太陽電池の性能および耐久性に大きく影響している。
【0006】
これらの問題から、屋外において長期にわたり太陽電池としての性能を発揮するためには、可視光線の十分な透過を確保しながらバンドギャップエネルギー相当波長より短波長の光線が電極に到達しない措置を施す必要がある。
紫外線吸収薄膜層を用いて紫外線をカットする方法(特許文献1及び2)や紫外線吸収フィルム層を色素増感型太陽電池に設ける方法(特許文献3及び4)が知られている。
【0007】
一方、アクリル樹脂フィルムとしては、従来、多種のフィルムが知られている。耐候性、透明性に優れ、かつ折曲白化等の耐ストレス白化に優れたアクリル樹脂フィルムが知られている(特許文献5)。特定のゴム含有重合体を含むアクリル樹脂をアクリル樹脂フィルムの構成成分とした耐候性、透明性に優れたアクリル樹脂フィルムが知られている(特許文献6)。艶消し性に優れたアクリル樹脂組成物と該フィルムを用いた積層体が知られている(特許文献7)。紫外線吸収剤を共重合させた多層構造重合体からなるアクリル樹脂フィルムが知られている(特許文献8)。波長400nm以下の紫外線をカットするアクリル樹脂フィルムが知られている(特許文献9及び10)。
【0008】
【非特許文献1】
Graetzelら著、J.Am.Chem.Soc.、1993年、115巻、第6382頁
【0009】
【特許文献1】
特開2002−94085号公報
【特許文献2】
特開2002−134178号公報
【特許文献3】
特開2002−25634号公報
【特許文献4】
特開平11−345991号公報記載
【特許文献5】
特公昭62−19309号公報
【特許文献6】
特公平2−42381号公報
【特許文献7】
特開平7−238202号公報
【特許文献8】
特開平8−319326号公報
【特許文献9】
特開2000−7873号公報
【特許文献10】
特開2000−169767号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
塗布法によって紫外線吸収薄膜層を形成する場合、工程が繁雑で溶剤が排出されるといった問題がある。スパッタリング法、CVD法によって紫外線吸収薄膜層を形成する場合、工程が繁雑で大規模な装置が必要となる。また、他の樹脂フィルムを使用した場合は、フィルム自体の十分な透明性が得られず耐候性も不十分な問題がある。
また、特許文献5〜10に記載のアクリル樹脂フィルムは、色素増感型太陽電池に耐候性及び耐久性を付与するための具体的な保護方法及びその効果については全く示唆されていない。
以上のような状況に鑑み、本発明においては、耐候変色性および透明性が良好な色素増感型太陽電池保護用のアクリル樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、光線透過率が波長380nmで10%以下、かつ波長480nmで90%以上であることを特徴とする色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムに関するものである。
本発明は更に、ベンゾトリアゾール系およびトリアジン系の紫外線吸収剤の少なくとも一種類を含有することを特徴とする色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムに関するものである。
本発明は更に、インドール系およびアゾメチン系の特定波長吸収剤の少なくとも一種類を含有することを特徴とする色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムに関するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムについて説明する。
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムは、光線透過率が波長380nmで10%以下、かつ波長480nmで90%以上であることが必要である。ここで、光線透過率は、JIS K6714に準拠して村上色彩研究所製の反射・透過率計HR100を使用して全光線透過率及びヘイズを測定する。
【0013】
波長380nmにおける光線透過率は、5%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。また、波長480nmにおける光線透過率は、91%以上が好ましく、92%以上がより好ましい。加えて、波長300〜380nmの範囲にわたって、光線透過率は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、1%以下が更に好ましい。波長380nmで光線透過率が10%以下であると、波長380nm以下の光線照射に起因する光触媒作用により電極の色素や電解液等の有機物の分解が生じ難い。波長380nm以下の光線照射に起因する正孔生成により電子が再結合してしまう問題も生じ難い。
【0014】
また、波長300〜380nmの範囲にわたって、光線透過率が10%以下であると、基材として波長約350nm以下の光線を透過しない通常のガラスではなく、波長350nm以下で透過性のある基材を使用した場合においても、波長380nm以下の光線照射に起因する光触媒作用により電極の色素や電解液等の有機物の分解が生じ難い。波長380nm以下の光線照射に起因する正孔生成により電子が再結合してしまう問題も生じ難い。
【0015】
また、波長480nmで光線透過率が90%以上であると、可視光エネルギーを捕獲するための電極上色素の吸収帯波長の透過を妨げる恐れがなく、色素増感型太陽電池のカバー材として用いることができ、工業的利用価値が著しく高い。本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムにおいて波長380nmの光線透過率を10%以下にするために、公知の紫外線吸収剤を使用することができるが、ベンゾトリアゾール系およびトリアジン系の紫外線吸収剤の少なくとも一種類の紫外線吸収剤を使用することが好ましい。
【0016】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムの厚さは、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、40μm以上が更に好ましい。また、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下が更に好ましい。10μm以上であると、適度な強度、剛性を有し、ラミネートや印刷等の二次加工時に取扱性が良好となる。また、製膜性が安定してフィルムの製造が容易となる。500μm以下であると、フィルムを巻き取ることができ、ラミネートや印刷等の連続的加工工程に適用することが可能となる。
【0017】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムにおいて使用される紫外線吸収剤の分子量は、300以上が好ましく、400以上がより好ましい。分子量が300以上であれば、加熱溶融加工時の揮発が少なくフィルム製造時のロール汚れを発生させる恐れがなく、フィルム製膜後の滲出も少ない。
【0018】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’、5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール及び2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等を使用することができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「チヌビン234」(チバスペシシャリティーケミカルズ社製;商品名)、「アデカスタブLA−31」(旭電化工業社製;商品名)等が挙げられる。
【0019】
トリアジン系の紫外線吸収剤としては、2−(4’,6’−ジフェニル−1’,3’,5’−トリアジン−2’−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール、2−[4’,6’−ビス(2’’,4’’−ジメチルフェニル)−1’,3’,5’−トリアジン−2’−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール等を使用することができる。
【0020】
トリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「チヌビン1577」(チバスペシシャリティーケミカルズ社製;商品名)、「CYASORB UV−1164」(サイテック社製;商品名)等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系及びトリアジン系の紫外線吸収剤は、熱および光に安定であり、汎用性が高く、様々な樹脂と共に使用することができる。
【0021】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を使用する場合、厚さ50μmのフィルムで波長380nmでの光線透過率10%以下とするには、フィルム中のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量は、ベンゾトリアゾール構造が3mmol/m2以上、5%以下とするには4.2mmol/m2以上、1%以下とするには7.3mmol/m2以上となるように添加すれば良い。ここで、「mmol/m2」とは、アクリル樹脂フィルム1m2当たりに含まれる紫外線吸収剤又は特定波長吸収剤の含有量を表す単位である。以下に記載する「mmol/m2」も同様の意味を表す。例えば、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]のように1分子中にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の基本構造を二つ以上持つ場合のベンゾトリアゾール含有量は、ベンゾトリアゾール構造モル当量で考える。
【0022】
波長300〜380nmの範囲において10%以下、5%以下及び1%以下とする場合でも、上記の波長380nmに関して着目した場合と同じ紫外線吸収剤の添加量を添加すればよい。また、フィルムの厚さにもよるが18mmol/m2以下であれば、フィルムの製膜性及び外観等が低下しない。
【0023】
トリアジン系紫外線吸収剤を使用する場合、厚さ50μmのフィルムで波長380nmでの光線透過率10%以下とするには、フィルム中のトリアジン系紫外線吸収剤の含有量はトリアジン構造が6.4mmol/m2以上、5%以下とするにはトリアジン構造が8.5mmol/m2以上、1%以下とするには15mmol/m2添加すれば良い。波長300〜380nmの範囲において10%以下、5%以下、1%以下とする場合でも、上記の波長380nmのみに着目した場合と同じ添加量を添加すればよい。また、フィルムの厚さにもよるが18mmol/m2以下であれば、フィルムの製膜性及び外観等が低下しない。
【0024】
ベンゾトリアゾール系及びトリアジン系の紫外線吸収剤を併用して用いても良い。ベンゾトリアゾール系とトリアジン系の紫外線吸収剤の使用比率は、本願発明の効果を達成できる範囲であれば良く、特に限定されない。
さらに、本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムにおいて波長380nmの光線透過率を10%以下にするために、インドール系およびアゾメチン系の特定波長吸収剤の少なくとも一種類の特定波長吸収剤を使用することも好ましい。
ここでいう特定波長吸収剤とは、近紫外域(290〜380nm)から可視域(波長380〜780nm)にまたがる少なくとも一つの吸収ピークをもつ物質をいう。
【0025】
インドール系特定波長吸収剤としては、下記一般式(I)で示されるインドール系化合物を含有するものである。
【0026】
【化1】
【0027】
(一般式(I)中、R1は分岐していてもよいアルキル基またはアラルキル基、R2はシアノ基または−COOR6を示す。但し、R6は置換基を有していてもよいアルキル基またはアラルキル基を示す。)
インドール系特定波長吸収剤の市販品としては、例えば、「ボナソーブUA−3901」(オリヱント化学工業社製;商品名)が挙げられる。
アゾメチン系特定波長吸収剤としては、下記一般式(II)で示されるアゾメチル系化合物を含有するものである。
【0028】
【化2】
【0029】
(一般式(II)中、R3は水素原子または炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、R4およびR5は相互に独立して、水素原子、カルボキシル基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基または炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基である。)
アゾメチン系化合物としては、3−[(フェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(3’−メチルフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(4’−プロピルフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(3’−メトキシフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(3’−エトキシフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(3’−クロロフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(2’,4’−ジメチルフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン等を使用することができる。アゾメチン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「ボナソーブUA−3701」(オリヱント化学工業社製;商品名)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0030】
インドール系およびアゾメチン系特定波長吸収剤は波長350〜400nmに大きな吸収ピークがあり、波長300〜350nmに大きな吸収ピークがあるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やトリアジン系紫外線吸収剤と比べ、少ない添加量で波長380nmの光線透過率を10%以下とすることができる。
インドール系特定波長吸収剤を使用する場合、厚さ50μmのフィルムで波長380nmでの光線透過率を10%以下とするには、フィルム中のインドール系特定波長吸収剤の含有量は、0.3mmol/m2以上、5%以下とするには0.38mmol/m2以上、1%以下とするには0.6mmol/m2以上添加すればよい。また、波長300〜380nmで10%以下とするには1.9mmol/m2以上、5%以下とするには2.5mmol/m2以上、1%以下とするには3.9mmol/m2以上添加すれば良い。また、フィルムの厚さにもよるが、21mmol/m2以下であれば製膜性、外観及び経済性等が低下しない傾向にある。
【0031】
アゾメチン系特定波長吸収剤を使用する場合、厚さ50μmのフィルムで波長380nmでの光線透過率10%以下とするには、フィルム中のアゾメチン系特定波長吸収剤の含有量はアゾメチン構造が0.3mmol/m2以上、5%以下とするには0.38mmol/m2以上、1%以下とするには0.6mmol/m2以上添加すればよい。また、波長300〜380nmで10%以下とするには5.7mmol/m2以上、5%以下とするには7.5mmol/m2以上、1%以下とするには11.7mmol/m2以上を添加すれば良い。また、フィルムの厚さにもよるが、22mmol/m2以下であれば製膜性、外観及び経済性等が低下しない。
【0032】
上記インドール系とアゾメチン系の特定波長吸収剤を併用して用いても良い。インドール系とトリアジン系の特定波長吸収剤を併用する場合の使用比率は、本願発明の効果を達成できる範囲であれば良く、特に限定されない。また、インドール系及びアゾメチン系の特定波長吸収剤とベンゾトリアゾール系及びトリアジン系の紫外線吸収剤とを併用して用いても良い。特定波長吸収剤と紫外線吸収剤を併用する場合の使用比率は、本願発明の効果を達成できる範囲であれば良く、特に限定されない。波長350〜400nmを主にインドール系特定波長吸収剤およびアゾメチン系特定波長吸収剤の効果で、波長300〜350nmを主にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やトリアジン系紫外線吸収剤の効果で、分担して吸収させることで、上述の各々単独でよりも少ない添加量で波長300〜380nmの光線透過率を10%以下とすることができる。
【0033】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムに用いられる紫外線吸収剤および特定波長吸収剤は、波長480nm以上の光線の吸収はほとんど無いため、これらの添加量にかかわらず波長480nmの光線透過率は90%以上となり、可視光エネルギーを捕獲するための電極上色素の吸収帯波長の透過を妨げる恐れがなく、色素増感型太陽電池のカバー材として用いることができ、工業的利用価値が著しく高い。
【0034】
さらに、上述した特定波長吸収剤および紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤、例えばサリチル酸誘導体、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、置換アクリロニトリル類及びニッケル錯体等からなる紫外線吸収剤をフィルムに含有させることもできる。サリチル酸誘導体としては、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート及びp−オクチルフェニルサリシレート等を挙げることができる。シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート及びエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等を挙げることができる。
【0035】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン及びビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等を挙げることができる。
【0036】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムに用いるアクリル樹脂としては、公知のものを用いることができるが、耐候性、耐汚染性、耐薬品性、製膜性の観点から、以下に述べるアクリル樹脂(A)を用いることが好ましい。
アクリル樹脂(A)は、多層構造を有する重合体と界面活性剤としてリン酸エステル塩とを含有するアクリル樹脂ラテックスから得られる固形物である。
【0037】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムは、アクリル樹脂(A)と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、インドール系特定波長吸収剤及びアゾメチン系特定波長吸収剤からなる群から選択されたいずれか少なくとも一種以上からなることが好ましい。アクリル樹脂フィルムの製造法としては、Tダイ法を用いることが好ましい。
ここで、アクリル樹脂(A)は、5〜35質量%の最内層重合体(A−a)、10〜45質量%の架橋弾性重合体(A−b)、5〜35質量%の中間層重合体(A−c)及び10〜80質量%の最外層重合体(A−d)の順に配されてなる多層重合体である。
【0038】
最内層重合体(A−a)は下記(A−a1)〜(A−a4)の成分の合計量100質量%に対し、
80質量%以上の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−a1)の少なくとも一種、
0.1〜5質量%のグラフト交叉剤(A−a2)、
20質量%以下の(A−a1)および(A−a2)の成分と共重合可能な他の単量体(A−a3)、
10質量%以下の多官能性単量体(A−a4)を乳化重合した共重合体である。
【0039】
架橋弾性重合体(A−b)は、下記(A−b1)〜(A−b4)の成分の合計量100質量%に対し、
80質量%以上の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(A−b1)、
0.1〜5質量%のグラフト交叉剤(A−b2)、
20質量%以下の(A−b1)および(A−b2)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−b3)、
10質量%以下の多官能性単量体(A−b4)を乳化重合した共重合体である。
【0040】
中間層重合体(A−c)は、下記(A−c1)〜(A−c4)の成分の合計量100質量%に対し、
65〜90質量%の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−c1)、
0.1〜5質量%のグラフト交叉剤(A−c2)、
20質量%以下の(A−c1)および(A−c2)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−c3)、
10質量%以下の多官能性単量体(A−c4)を乳化重合した共重合体である。
【0041】
最外層重合体(A−d)は、下記(A−d1)〜(A−d3)の成分の合計量100質量%に対し、
51質量%以上の炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−d1)、
49質量%以下の(A−d1)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−d3)を乳化重合した共重合体である。
【0042】
このように、多層からなるアクリル樹脂(A)と紫外線吸収剤、特定波長吸収剤を原料として用いることによって、耐候性、耐汚染性、耐薬品性、製膜性、加工性の良好なアクリル樹脂フィルムを得ることができる。
以下に、上述の多層構造を有する重合体の構成について具体的に説明する。
【0043】
[最内層重合体(A−a)]
最内層重合体(A−a)は、上記多層構造を有する重合体の中心部分を構成するものであって、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−a1)の少なくとも一種と、グラフト交叉剤(A−a2)を必須構成成分として含有し、必要に応じて、(A−a1)及び(A−a2)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−a3)と、多官能性単量体(A−a4)とを重合体の構成成分として含有するものである。
【0044】
炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートとしては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、その具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等が挙げられる。これらは、単独又は二種以上を混合して使用できる。
【0045】
また、上記炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、その具体例としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは単独又は二種以上を混合して使用できる。
【0046】
炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートおよび炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−a1)の少なくとも一種は、(A−a1)〜(A−a4)の成分の合計量100質量%に対し、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上含まれるのが良い。(A−a1)含量が80質量%以上であると、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の透明性が損なわれないとともに、アクリル樹脂成形体に優れた耐候性を有することができる。
【0047】
グラフト交叉剤(A−a2)は、その共役不飽和結合によって(A−a1)、(A−a3)、(A−a4)の成分と共重合した際にグラフト起点となる官能基を有するものである。グラフト起点となる官能基としては、アリル基、メタリル基またはクロチル基が挙げられる。すなわち、グラフト交叉剤(A−a2)では、主としてそのエステルの共役不飽和結合が、アリル基、メタリル基またはクロチル基よりはるかに早く反応し、アリル基、メタリル基、またはクロチル基の大部分が残存する。そして、これらの官能基がグラフト起点となって、架橋弾性重合体(A−b)をグラフト結合させることができる。
【0048】
最内層重合体(A−a)を構成するグラフト交叉剤(A−a2)としては、共重合性のα、β−不飽和カルボン酸またはジカルボン酸のアリル、メタリルまたはクロチルエステル等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸またはフマル酸のアクリルエステルが好ましく、さらに、これらの中でもアリルメタクリレートが特に好ましい。アリルメタクリレートを用いると、グラフト起点として効果的である。また上記以外にも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等もグラフト起点として効果的である。
【0049】
グラフト交叉剤(A−a2)の使用量は極めて重要であり、(A−a1)〜(A−a4)の成分の合計量100質量%に対し0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。グラフト交叉剤(A−a2)の使用量が0.1質量%以上のとき、グラフト起点を十分に得ることができる。また、5質量%以下のとき、最内層重合体(A−a)の外側に形成される架橋弾性重合体(A−b)との反応量が多くなく、最内層重合体(A−a)と架橋弾性重合体(A−b)とからなる二層架橋ゴム弾性体の弾性が低下する傾向を示さない。
【0050】
(A−a1)および(A−a2)の成分と共重合可能な他の単量体(A−a3)は、必要に応じて含有させればよい。その具体例としては、例えば、炭素数9以上のアルキル基を有する高級アルキルアクリレート、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート等のアクリレート単量体、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0051】
(A−a1)および(A−a2)の成分と共重合可能な他の単量体(A−a3)の使用量は、(A−a1)〜(A−a4)の成分の合計量100質量%に対し、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。20質量%以下で、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の透明性および耐候性を良好に保つことができる。
【0052】
多官能性単量体(A−a4)は、2つ以上の官能基を有し、(A−a1)〜(A−a3)の成分と共重合可能なものであれば制限されないが、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレートを用いることが好ましい。また、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼンなども使用可能である。
【0053】
多官能性単量体(A−a4)は、多層構造を有する重合体の安定性を向上させる場合に添加するが、最内層重合体(A−a)中で全く作用しなくても、グラフト交叉剤(A−a2)が存在していれば、安定な多層構造を有する重合体を得ることができるため、必要に応じて含有させればよい。例えば、熱間強度等を向上させる場合などに含有させればよい。
【0054】
多官能性単量体(A−a4)の使用量は、(A−a1)〜(A−a4)の成分の合計量100質量%に対し、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。10質量%以下とすることによって、良好な最内層重合体(A−a)の弾性を保ち、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の適度な柔軟性を維持することができる。
【0055】
[架橋弾性重合体(A−b)]
架橋弾性重合体(A−b)は、多層構造を有する重合体にゴム弾性を与える主要な成分であって、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(A−b1)及びグラフト交叉剤(A−b2)を必須構成成分として含有し、必要に応じて、(A−b1)および(A−b2)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−b3)と、多官能性単量体(A−b4)とを重合体の構成成分として含有するものである。
【0056】
(A−b1)〜(A−b4)の具体例としては、最内層重合体(A−a)を構成するそれぞれの成分(A−a1)〜(A−a4)で挙げたものと同様のものが挙げられる。
また、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(A−b1)の使用量は、(A−b1)〜(A−b4)の成分の合計量100質量%に対し、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。80質量%以上であると、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の透明性を維持するとともに、優れた耐候性を有することができる。
【0057】
また、グラフト交叉剤(A−b2)の使用量は、(A−b1)〜(A−b4)の成分の合計量100質量%に対して0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜2質量%であることがより好ましい。グラフト交叉剤(A−b2)の使用量が0.1質量%以上のとき、グラフト起点を十分に得ることができる。また、5質量%以下のとき、三段目に重合形成される中間層重合体(A−c)との反応量が多くなく、多層構造を有する重合体の弾性が低下しない。
【0058】
また、(A−b1)および(A−b2)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−b3)の使用量は、(A−b1)〜(A−b4)の成分の合計量100質量%に対して20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。20質量%以下のとき、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の透明性および耐候性が損なわれない。
【0059】
また、多官能性単量体(A−b4)の使用量は、(A−b1)〜(A−b4)の成分の合計量100質量%に対して10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。10質量%以下のとき、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の柔軟性及び加工性が低下しない。
また、架橋弾性重合体(A−b)単独のTgは、0℃以下が好ましく、−30℃以下がより好ましい。Tgが0℃以下であると優れた弾性を示す。
【0060】
[中間層重合体(A−c)]
中間層重合体(A−c)は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−c1)及びグラフト交叉剤(A−c2)を必須構成成分として含有し、必要に応じて、成分(A−c1)及び(A−c2)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−c3)及び多官能性単量体(A−c4)とを重合体の構成成分として含有するものである。また、(A−c1)の成分中のアルキルアクリレート含有割合は、架橋弾性重合体(A−b)から最外層重合体(A−d)に向かって単調減少させている。ここで、単調減少とは、架橋弾性重合体(A−b)から最外層重合体(A−d)に向かって連続的に減少すること、又は架橋弾性重合体(A−b)から最外層重合体(A−d)に向かって断続的に減少することを意味するだけでなく、中間層重合体(A−c)中のアルキルアクリレート含有割合が、架橋弾性重合体(A−b)と最外層重合体(A−d)との中間組成であることを、その意味として含む。
【0061】
(A−c1)〜(A−c4)で使用する物質の好ましい具体例は、最内層重合体(A−a)を構成するそれぞれ成分(A−a1)〜(A−a4)で挙げたものと同様のもが挙げられる。
また、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−c1)の使用量は、(A−c1)〜(A−c4)の成分の合計量100質量%に対して、65〜90質量%であることが好ましく、65〜85質量%であることがより好ましい。前記範囲外であると、架橋弾性重合体(A−b)と最外層重合体(A−d)とを密に結合させることができないことがある。
【0062】
グラフト交叉剤(A−c2)は、架橋弾性重合体(A−b)と最外層重合体(A−d)とを密に結合させることができるので、アクリル樹脂成形体の機械的強度の向上に非常に有効な成分である。グラフト交叉剤(A−c2)の使用量は、(A−c1)〜(A−c4)の成分の合計量100質量%に対して、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜2質量%であることがより好ましい。上記範囲外であると、架橋弾性重合体(A−b)と最外層重合体(A−d)とを密に結合させることができないことがある。
【0063】
また、(A−c1)および(A−c2)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−c3)の使用量は、(A−c1)〜(A−c4)の成分の合計量100質量%に対して、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。20質量%以下のとき、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の柔軟性及び加工性を損ねない。
【0064】
また、多官能性単量体(A−c4)の使用量は、(A−c1)〜(A−c4)の成分の合計量100質量%に対して10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。10質量%以下のとき、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の柔軟性及び加工性を低下させない。
【0065】
[最外層重合体(A−d)]
最外層重合体(A−d)は、多層構造を有する重合体の最外層を構成し、多層構造を有する重合体の成形性、機械的性質等に関与するものであって、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−d1)を必須構成成分として含有し、必要に応じて、(A−d1)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−d3)とを重合体の構成成分として含有するものである。
【0066】
(A−d1)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−d3)の好ましい具体例は、それぞれ最内層重合体(A−a)の成分(A−a1)の炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート、(A−a1)および(A−a2)の成分と共重合可能な他の単量体(A−a3)で挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0067】
また、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−d1)の使用量は、(A−d1)と(A−d3)の成分の合計量100質量%に対して、51質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。51質量%以上であると、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の強度および耐熱性が低下しない。
また、(A−d1)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−d3)の使用量は、(A−d1)と(A−d3)の成分の合計量100質量%に対して、49質量%以下であることが好ましい。49質量%以下のとき、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の強度および耐熱性が損なわれない。
【0068】
最外層重合体(A−d)単独のTgは、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。Tgが60℃以上であると、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の強度および耐熱性がさらに向上する。
多層構造を有する重合体において、最内層重合体(A−a)で用いた成分(A−a1)と同一種類のものを、架橋弾性重合体(A−b)、中間層重合体(A−c)、最外層重合体(A−d)にも含有させることが最も好ましい。その場合であっても、(A−a)〜(A−d)は、二種以上のアルキル(メタ)アクリレートが含まれていたり、別種のアクリレートが含まれても構わない。ここで、「(メタ)アクリレート」とは、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートおよび炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートの少なくとも一種を意味するものとする。
【0069】
また、多層構造を有する重合体(アクリル樹脂フィルム)中の最内層重合体(A−a)の含有量は5〜35質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。最内層重合体(A−a)が5〜35質量%含有されていれば、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の柔軟性及び加工性が良好である。
【0070】
また、重合体中の架橋弾性重合体(A−b)の含有量は、10〜45質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることがより好ましい。さらに、架橋弾性重合体(A−b)の含有量は、最内層重合体(A−a)の含有量よりも多いことが好ましい。架橋弾性重合体(A−b)が10〜45質量%含有されていれば、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の柔軟性及び加工性が良好である。
【0071】
また、重合体中の中間層重合体(A−c)の含有量は、5〜35質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。中間層重合体(A−c)の含有量が5〜35質量%であれば、優れた柔軟性、加工性を有するアクリル樹脂成形体を得ることができる。
【0072】
また、重合体中の最外層重合体(A−d)の含有量は、10〜80質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。最外層重合体(A−d)が10〜80質量%含有されていれば、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の柔軟性及び加工性が良好である。
次に、アクリル樹脂(A)の製造方法について説明する。アクリル樹脂(A)の製造方法の概略は、多層構造を有する重合体と、下述の一般式(III)で表されるリン酸エステル塩とを有するアクリル樹脂ラテックスを製造し、このアクリル樹脂ラテックスから固形物を分離回収する。以下、この製造方法について具体的に説明する。
【0073】
多層構造を有する重合体を含有するアクリル樹脂ラテックスの製造方法の一例では、まず、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートの少なくとも一種並びにグラフト交叉剤を含む第1の単量体混合物と、界面活性剤とを含む単量体混合物を反応容器に供給し、乳化重合させて最内層重合体(A−a)を形成させる。
【0074】
次いで、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートと、グラフト交叉剤とを含む第2の単量体混合物を反応容器内に供給し、最内層重合体(A−a)上にて第2の単量体混合物を重合させて架橋弾性重合体(A−b)を形成させる。
次いで、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート及びグラフト交叉剤を含む第3の単量体混合物を反応容器内に供給し、架橋弾性重合体(A−b)上にて第3の単量体混合物を重合させて中間層重合体(A−c)を形成させる。
【0075】
次いで、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを含む第4の単量体混合物を反応容器内に供給し、中間層重合体(A−c)上にて第4の単量体混合物を重合させて最外層重合体(A−d)を形成させてアクリル樹脂ラテックスを得る。
また、アクリル樹脂ラテックスの他の製造方法では、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−a1)の少なくとも一種と、グラフト交叉剤(A−a2)とを含む第1の単量体混合物に水及び界面活性剤と混合して乳化液を調製する。次いで、この乳化液を反応容器に供給し、重合して最内層重合体(A−a)を形成させる。
次いで、上述したアクリル樹脂ラテックスの製造方法と同様にして、架橋弾性重合体(A−b)、中間層重合体(A−c)、最外層重合体(A−d)を順に形成させ、アクリル樹脂ラテックスを得る。
【0076】
上述したアクリル樹脂ラテックスの製造方法における、乳化液を調製する方法としては、攪拌翼を備えた攪拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー等の各種強制乳化装置、膜乳化装置等の混合装置に、水と単量体混合物を仕込んだ後、界面活性剤を投入する方法、上記混合装置に水と界面活性剤を仕込んだ後、単量体混合物を投入する方法、混合装置に単量体混合物と界面活性剤を仕込んだ後、水を投入する方法等が挙げられる。
【0077】
乳化液を調製する際の単量体混合物と水との質量比としては、単量体混合物100質量部に対して水10〜500質量部が好ましく、100〜300質量部であることがより好ましい。単量体混合物100質量部に対し水10〜500質量部であると、アクリル樹脂ラテックスの製造が効率的となる。
また、乳化液はW/O型、O/W型のいずれの分散構造でも使用することができるが、特に水中に単量体混合物の油滴が分散したO/W型で、かつ分散相の油滴の直径が100μm以下であることが好ましい。より好ましい分散相の油滴の直径は50μm以下であり、更に好ましくは15μm以下である。分散相の油滴の直径が100μm以下のとき、得られるアクリル樹脂ラテックス中に1〜200μmの範囲に分布する巨大なポリマー粒子が大量に存在せず、それらがフィッシュアイの原因となって最終的に得られるアクリル樹脂成形体の外観を損なうことがない。
アクリル樹脂ラテックスの製造で使用される界面活性剤には、下記一般式(III)で表されるリン酸エステル塩を含む。
【0078】
【化3】
【0079】
一般式(III)において、R3は炭素数10〜18の直鎖または分岐アルキル基を示す。アルキル基の炭素数は12以上であることが好ましい。また、16以下であることが好ましい。具体的には、R3としては、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、イソトリデシル基が好ましい。
【0080】
R4は炭素数2または3の直鎖または分岐アルキレン基を示し、具体的には、エチレン基、プロピレン基が挙げられる。mが2以上の場合にはR4として複数の異なる基を含むことがあり、例えば、エチレン基とプロピレン基との両方を有することもある。
Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示し、具体的には、アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウムおよびセシウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としてはカルシウム、バリウム、マグネシウムおよびストロンチウム等が挙げられる。中でも、Mとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウムが好ましく、耐水白化性の点でカリウムが特に好ましい。Mがアルカリ金属のときqは1であり、Mがアルカリ土類金属のときqは1/2である。
【0081】
mは1〜20の整数であり、3以上の整数であることが好ましく、また、10以下の整数であることがより好ましい。nは1または2であり、pは1または2であり、p+nは3である。つまり、(n,p)=(1,2)または(2,1)である。
【0082】
上記一般式(III)で表される化合物としては、例えば、モノ−n−デシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−n−デシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−n−デシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、ジ−n−デシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸等の分岐アルキルオキシポリオキシエチレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩が挙げられる。
【0083】
また、モノ−n−デシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−n−デシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−n−デシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−n−デシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸等の直鎖アルキルオキシポリオキシエチレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩を挙げることができる。
【0084】
また、モノ−イソデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−イソデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−イソドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−イソドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−イソテトラデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−イソテトラデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−イソヘキサデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−イソヘキサデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−イソオクタデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−イソオクタデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸等の分岐アルキルオキシポリオキシエチレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩が挙げられる。
【0085】
また、モノ−イソデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−イソデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−イソドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−イソドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−イソテトラデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−イソテトラデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−イソヘキサデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−イソヘキサデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−イソオクタデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−イソオクタデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−イソデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−イソデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−イソドデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−イソドデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−イソトリデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−イソトリデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−イソテトラデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−イソテトラデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−イソヘキサデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−イソヘキサデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−イソオクタデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−イソオクタデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸等の分岐アルキルオキシポリオキシエチレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩が挙げられる。
【0086】
また、上記一般式(III)で表される化合物としては、他に、モノ−n−デシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−n−デシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−n−デシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−デシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸等の分岐アルキルオキシポリオキシプロピレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩が挙げられる。
【0087】
また、モノ−n−デシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−n−デシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−n−デシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−デシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸等の直鎖アルキルオキシポリオキシプロピレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩を挙げることができる。
【0088】
また、モノ−イソデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−イソデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−イソドデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−イソドデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−イソテトラデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−イソテトラデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−イソヘキサデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−イソヘキサデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−イソオクタデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−イソオクタデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸等の分岐アルキルオキシポリオキシプロピレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩が挙げられる。
【0089】
また、モノ−イソデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−イソデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−イソドデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−イソドデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−イソトリデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−イソトリデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−イソテトラデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−イソテトラデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−イソヘキサデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−イソヘキサデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−イソオクタデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−イソオクタデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−イソデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−イソデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−イソドデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−イソドデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−イソトリデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−イソトリデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−イソテトラデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−イソテトラデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−イソヘキサデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−イソヘキサデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−イソオクタデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−イソオクタデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸等の分岐アルキルオキシポリオキシプロピレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩が挙げられる。
【0090】
これらのリン酸エステル塩類は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、単量体混合物を乳化重合する過程で、リン酸エステルにアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水酸化物を添加し、中和して、所望のリン酸エステル塩としてもよい。
また、このリン酸エステル塩は、モノアルキルエステル、ジアルキルエステルの混合物であってもよい。その場合、モノアルキルエステル、ジアルキルエステルの混合量比は特に限定されない。また、非リン酸エステルの界面活性剤が含まれていてもよい。
【0091】
このような、リン酸エステル塩を含む界面活性剤の好ましい市販品としては、三洋化成工業(株)製のNC−718、東邦化学工業(株)製のフォスファノールLS−529、フォスファノールRS−610NA、フォスファノールRS−620NA、フォスファノールRS−630NA、フォスファノールRS−640NA、フォスファノールRS−650NA、フォスファノールRS−660NA、花王(株)製のラテムルP−0404、ラテムルP−0405、ラテムルP−0406、ラテムルP−0407等が挙げられる。
【0092】
乳化液中の単量体混合物を重合するには、例えば、反応容器に重合開始剤を投入して、重合温度まで昇温した後、乳化液を供給して重合する。重合開始剤としては、公知のものが使用できるが、その具体例としては、過酸化物、アゾ系開始剤、又は酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。また、これらの中でもレドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0093】
このようにして得られた多層構造を有する重合体を含有するアクリル樹脂ラテックスの粘度は、0.1〜1500mPa・sであることが好ましく、0.1〜1000mPa・s以下であることがより好ましい。アクリル樹脂ラテックスの粘度が0.1mP・s以上のとき、その後のアクリル樹脂の分離処理が容易となり、1500mPa・s以下のときアクリル樹脂ラテックスを濾過する際に目詰まりが生じにくい。
【0094】
また、アクリル樹脂ラテックス中の多層構造を有する重合体の平均粒子径としては、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の機械特性、透明性がともに優れることから、0.08〜0.2μmであることが好ましい。
アクリル樹脂ラテックスの固形分は、特に限定されないが、アクリル樹脂ラテックスの濾過性、生産効率が高いことから、20〜50質量%の範囲が好ましい。
【0095】
上述したアクリル樹脂ラテックスの製造方法で得られたアクリル樹脂ラテックスは、主に粒子径が0.03〜1μmの粒子からなるものであるが、凝集物や浮遊物の他に重合時における微細凝集物の発生などにより、粒子径が1〜200μmの範囲に分布する巨大なポリマー粒子も含有している。これらの凝集物、浮遊物および巨大なポリマー粒子は、フィルム状にした際にフィッシュアイ等の原因となり、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の外観を損なうため、除去する必要がある。巨大ポリマー粒子を除去する装置としては、例えば、円筒型濾過室内の内側面に円筒型の濾材を配し、該濾材内に攪拌翼を配した遠心分離型濾過装置、水平に設置された濾材が、該濾材の表面を基準として水平方向の円運動、及び垂直方向の振幅運動する濾過装置等が挙げられる。
【0096】
アクリル樹脂ラテックス中から多層構造を有する重合体を含む固形物を分離回収する方法としては、特に限定されないが、塩析、酸析凝固、噴霧乾燥、又は凍結乾燥等が挙げられる。これらの方法によれば、多層構造を有する重合体を含む固形物を粉状で回収できる。
【0097】
上述した分離回収方法の中でも、好ましい分離回収方法としては、例えば、線速度0.5m/秒以下となるように攪拌され、濃度0.1〜20質量%の酢酸カルシウムを含む水溶液からなる凝固剤溶液中に、アクリル樹脂ラテックスを流し込んで凝固させる方法が挙げられる。その際、凝固粉を得るための凝固剤溶液の温度は、ポリマーを形成し得る単量体の種類、量又は攪拌による剪断力などの凝固条件の影響を受けるため一概には決定できないが、80℃以上が好ましく、より好ましくは80〜100℃であるのが良い。凝固液温度が80℃以上のとき、凝固粉の含水量が低く、また微粉量も多くないので、生産性が悪化するといった問題が起こらない。一方、100℃以下のとき、耐圧仕様にする必要がなく、コスト高ともならない。また、酢酸カルシウム水溶液の濃度は、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。0.1質量%以上のとき、安定してポリマーを回収でき、凝固粉の含水率が高くなることもない。一方、20質量%以下のとき、酢酸カルシウム溶液の温度変化により酢酸カルシウムが析出することもない。
【0098】
アクリル樹脂ラテックスを凝固して得られた多層構造を有する重合体を含む固形物(湿潤状ポリマー)は、通常、固形物質量に対して1〜100倍程度の水で水洗される。その後、遠心脱水機やデカンタ脱水機により脱水後、圧搾脱水機や流動乾燥機などを用いて乾燥させる。このときの乾燥は、凝固粉の含水量が低いほど乾燥速度が速くなり、効率的である。
多層構造を有する重合体を含む固形物の残存金属含有量は500ppm以下であることが好ましい。残存金属含有量が500ppm以下であると、さらに耐水白化性が向上する傾向にあり、また、微量であるほど耐水白化性は向上する。
【0099】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムには、必要に応じて、公知の一般的な配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、抗菌剤及び防かび等を含むことができる。
本発明で用いられるアクリル樹脂フィルムの製造法としては、公知のTダイ法やインフレーション法などの溶融押出法、カレンダー法及び溶液流延法などいずれの方法を用いても良いが、経済性の点からTダイ法が好ましい。
【0100】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムは、他の基材上に積層することもできる。積層体製造に使用する基材としては、例えば樹脂成形品が挙げられる。この成形品を構成する樹脂としては、本発明のアクリル樹脂フィルムと溶融接着可能なものであればよく、例えば、ABS樹脂、ASA樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系樹脂又はこれらを主成分とする樹脂が挙げられる。中でも、接着性の点からABS樹脂、ASA樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、又はこれらを主成分とする樹脂が好ましく、特に、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂又はこれらを主成分とする樹脂がより好ましい。
【0101】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムを二次元形状の基材上に積層する場合、熱融着できる基材に対しては熱ラミネーション等の公知の方法を用いることができる。艶消しが好まれる場合には、エンボス加工された加熱ロールを使用しての熱ラミネーション法が一般的である。三次元形状の基材上に積層成形する場合は、インサート成形法やインモールド成形法等の公知の成形方法を用いることができる。中でも、生産性の観点からインモールド成形法が特に好ましい。また、共押出による積層も可能である。
【0102】
熱融着し難いポリオレフィン樹脂、熱硬化性樹脂、ガラス、鋼板、木材、布、紙等の基材に対しては、接着性の層を介在させることで、アクリル樹脂フィルムと基材を積層成形することができる。
また、本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムを積層してなる積層体は、アクリル樹脂フィルムと基材との間に必要に応じて中間層を設けることもできる。必要に応じて用いる中間層としては、印刷層、メッキ層、接着層、着色樹脂層等が挙げられる。
このように基材の表面にフィルムを設ける方法は、高価な特定波長吸収剤および紫外線吸収剤を効率よく表面に分散させることができる点でも、非常に有益な方法である。
【0103】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムを積層した積層体は、色素増感型太陽電池の前面フィルター等に用いることができ、また、従来からアクリル樹脂フィルムが被覆されていた家電の筐体、車輌内装部材、内装用建築材料、壁紙、化粧板、玄関ドア、窓枠、巾木等にも用いることができる。
特に、本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムの特徴である近紫外吸収性、透明性、耐候性等を最大限に利用できる用途としては、問題となる色素増感型太陽電池の保護部材等である。色素増感型太陽電池の保護部材として本発明のアクリル樹脂フィルムを積層してなる積層体を用いる場合は、特に優れた近紫外吸収能を発揮させることができる。
【0104】
図1は、本発明のアクリル樹脂フィルムを被覆した色素増感型太陽電池を表した模式図である。図1において符号1は本発明のアクリル樹脂フィルムを表す。2はガラス、プラスチック等の基板、3は透明導電膜、4はTiO2、SrTiO2、SnO2、ZnO、WO3、Nb2O5等からなる金属酸化物半導体電極、5はルテニウムビピリジル、亜鉛ポリフィリン、銅フタロシアニン、クロロフィル、ローズベンガル、エオシン等の色素、6はI−/I3 −、Br−/Br3 −等の酸化還元対を有する電解質、7はPt等からなる対向電極である。この太陽電池は上記2〜7よりなるセルに本発明のアクリル樹脂フィルム1を貼り合わせることによって形成される。光は図1の上方から入射する。
【0105】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中「部」とあるのは「質量部」を表す。また、実施例中の略号は以下のとおりである。
メチルメタクリレート:MMA
ブチルアクリレート:BA
アリルメタクリレート:AMA
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート:BD
t−ブチルハイドロパーオキサイド:tBH
クメンハイドロパーオキサイド:CHP
n−オクチルメルカプタン:n−OM
また、実施例中で用いた評価方法は下記の通りである。
【0106】
(1)乳化液中の分散相(多層構造を有する重合体)の平均粒子径測定
ガラス板上に乳化液を1滴滴下し、光学顕微鏡にて乳化液中の分散相20個の直径を計測し、これらの平均値より平均粒子径を求めた。
【0107】
(2)多層構造を有する重合体の質量平均粒子径
乳化重合にて得られた多層構造を有する重合体のポリマーラテックスを大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700を用い、動的光散乱法で測定し求めた。
【0108】
(3)スケール量
乳化重合後、重合槽および攪拌機に付着したスケールおよびラテックス中に浮遊しているスケールを500μmの目開きのメッシュにて回収して水洗、乾燥後その質量を測定した。この質量を重合槽に仕込んだ単量体混合物の総量により除してスケール量の割合を百分率で示した。
【0109】
(4)多層構造を有する重合体のゲル含有率
秤量した多層構造を有する重合体をアセトン溶媒中還流下で抽出処理し、この抽出処理液を遠心分離により分別した。次いで、得られた固形分を乾燥後、質量測定(抽出後質量)し、以下の式にて求めた。
ゲル含有率(%)=(抽出後質量(g)/抽出前質量(g))×100。
【0110】
(5)透明性
JIS K6714に準拠して村上色彩研究所製の反射・透過率計HR100を使用して全光線透過率及びヘイズを測定した。
【0111】
(6)吸収特性
島津製作所製の分光光度計UVmini−1240を使用してフィルムの分光光線透過率を測定した。
【0112】
(実施例1)
(アクリル樹脂(A)の製造)
攪拌機を備えた容器にイオン交換水8.5部を仕込んだ後、MMA0.3部、BA4.5部、BD0.2部、AMA0.05部、CHP0.025部からなる第1の単量体混合物を投入し、攪拌混合した。次いで、乳化剤として「フォスファノールRS−610NA」(東邦化学工業社製;商品名)1.1部を攪拌しながら上記容器に投入し、再度20分間攪拌を継続し、乳化液を調製した。得られた乳化液中の分散相の平均粒子径は、10μmであった。
次に、冷却器付き反応容器内にイオン交換水186.5部を投入し、これを70℃に昇温し、さらに、イオン交換水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部、EDTA0.0003部を加えて調製した混合物を一括投入した。
【0113】
続いて、窒素下で撹拌しながら、乳化液を8分間かけて反応容器に滴下した後、15分間反応を継続させて最内層重合体(A−a)を得た。続いて、MMA1.5部、BA22.5部、BD1.0部、AMA0.25部からなる第2の単量体混合物をCHP0.016部と共に90分間かけて反応容器に添加した後、60分間反応を継続させて架橋弾性重合体(A−b)を含む二層架橋ゴム弾性体を得た。
【0114】
続いて、MMA6部、BA4部、AMA0.075部、およびCHP0.0125部の第3の単量体混合物を45分間かけて反応容器に滴下した後、60分間反応を継続させて中間層重合体(A−c)を形成させた。
続いて、MMA55.2部、BA4.8部、n−OM0.19部、およびtBH0.08部からなる第4の単量体混合物を140分間かけて反応容器に滴下した後、60分間反応を継続させて最外層重合体(A−d)を形成して多層構造を有する重合体を含有するアクリル樹脂ラテックスを得た。重合後測定したスケール量は0.001%であり、質量平均粒子径は0.12μmであった。
【0115】
得られた多層構造を有する重合体を含有するアクリル樹脂ラテックスを、酢酸カルシウム1質量%を300部含有する水溶液中に投入して塩析させ、水洗し、分離回収後、乾燥して粉体状のアクリル樹脂(A)を得た。アクリル樹脂(A)のゲル含有率は60質量%であった。
このようにして得たアクリル樹脂(A)100部に対して、インドール系特定波長吸収剤(「ボナソーブUA−3901」(オリヱント化学工業社製;商品名))1.5部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(「アデカスタブLA−31RG」(旭電化工業社製;商品名))2.1部、抗酸化剤として「アデカスタブAO−50」(旭電化工業社製;商品名)0.1部をヘンシェルミキサーで混合した。
【0116】
得られた混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製PCM−30)に供給し、混練してペレットを得た。上記の方法で製造したペレットを80℃で一昼夜乾燥し、この乾燥ペレットを、300mm幅のTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)に供給して50μm厚さのフィルムを製膜した。その際の条件は、シリンダー温度200℃〜240℃、Tダイ温度250℃、冷却ロール温度70℃であった。評価結果を表1に示す。
【0117】
(実施例2)
実施例1において、特定波長吸収剤をアゾメチン系特定波長吸収剤(「ボナソーブUA−3701」(オリヱント化学工業社製;商品名))に変更する以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0118】
(実施例3)
実施例1において、紫外線吸収剤をトリアジン系紫外線吸収剤(「チヌビン1577」(チバスペシャリティケミカルズ社製;商品名)1部に変更する以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0119】
(実施例4)
実施例1において、紫外線吸収剤をベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(「チヌビン234」(チバスペシャリティケミカルズ社製;商品名))2.9部に変更する以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0120】
(実施例5)
実施例1において、紫外線吸収剤を1部、特定波長吸収剤を0.5部にする以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0121】
(実施例6)
実施例1において、紫外線吸収剤を0.5部、特定波長吸収剤を0.5部にする以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0122】
(実施例7)
実施例1において、特定波長吸収剤を添加しない以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0123】
(実施例8)
実施例1において、特定波長吸収剤を添加せずに紫外線吸収剤を4.4部にする以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0124】
(実施例9)
実施例1において、紫外線吸収剤を添加しない以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0125】
(比較例1)
実施例1において、特定波長吸収剤をおよび紫外線吸収剤を添加しない以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0126】
(比較例2)
実施例1において、特定波長吸収剤を添加せずに紫外線吸収剤を1部にする以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0127】
(比較例3)
実施例1において、紫外線吸収剤を添加せずに特定波長吸収剤を0.08部にする以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。表1の結果より、実施例1〜9で作製した紫外線吸収剤および特定波長吸収剤の少なくとも一つを含有するアクリル樹脂フィルムは、波長380nmでの光線透過率が10%以下であり、波長480nmでの光線透過率は90%以上となっている。これに対して、比較例1〜3で作製したアクリル樹脂フィルムはこれらの吸収剤を含有していないため、波長380nmでの光線透過率が10%を大きく超えていることが分かる。
【0128】
【表1】
【0129】
【発明の効果】
本発明により、光線透過率が波長380nmで10%以下かつ波長480nmで90%以上であり、耐候変色性および透明性が良好な色素増感型太陽電池保護用のアクリル樹脂フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の保護用アクリル樹脂フィルムを被覆した色素増感型太陽電池を表した模式図である。
【符号の説明】
1 アクリル樹脂フィルム
2 基板
3 透明導電膜
4 金属酸化物半導体電極
5 色素
6 酸化還元対を有する電解質
7 対向電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、光線透過率が波長380nmで10%以下、かつ波長480nmで90%以上である色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、普及している太陽電池としては、シリコン系の半導体太陽電池が一般的である。一方で、製造が容易で、低コストの太陽電池として、色素増感型太陽電池の研究が進んでいる。その中でも、シリコン系の半導体太陽電池に匹敵する性能を実現するものとして、色素増感型太陽電池(非特許文献1)があり、各方面でさらに研究が進められている。
【0003】
色素増感型太陽電池は湿式太陽電池の一種であり、電極表面の酸化物半導体膜に色素を担持させた電極、電解質溶液、対電極が一般的な構成である。ここで、「色素増感」とは、色素が太陽光の主な波長帯である可視光領域エネルギーで励起され、効率よく光エネルギーを吸収し、励起された電子を酸化物半導体に受け渡す性質のことである。このような光エネルギーの受け渡しにより、酸化物半導体は、起電力を有することができる。
【0004】
電極として主に使用される酸化物半導体電極には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セレン等があるが、これらはバンドギャップエネルギーより大きなエネルギーの光を受けることにより強い酸化的光触媒作用を示すことが知られている。
【0005】
金属酸化物半導体のバンドギャップエネルギーは3〜4eV程度である。例えば、酸化チタンの場合は、バンドギャップエネルギーが3.2eV(波長に換算すると380nmに相当)であり、波長380nm以下の光線(すなわち紫外線)が照射されることによって、光触媒作用により色素や電解液等の有機物が分解される。また、正孔を生じるために、電子が再結合してしまう問題が生じる場合がある。
透明電極としてガラスを用いた場合には、通常のガラスでは波長約350nm以上の光線に対しては透過することから、波長380nm近傍の光線の透過が色素増感型太陽電池の性能および耐久性に大きく影響している。
【0006】
これらの問題から、屋外において長期にわたり太陽電池としての性能を発揮するためには、可視光線の十分な透過を確保しながらバンドギャップエネルギー相当波長より短波長の光線が電極に到達しない措置を施す必要がある。
紫外線吸収薄膜層を用いて紫外線をカットする方法(特許文献1及び2)や紫外線吸収フィルム層を色素増感型太陽電池に設ける方法(特許文献3及び4)が知られている。
【0007】
一方、アクリル樹脂フィルムとしては、従来、多種のフィルムが知られている。耐候性、透明性に優れ、かつ折曲白化等の耐ストレス白化に優れたアクリル樹脂フィルムが知られている(特許文献5)。特定のゴム含有重合体を含むアクリル樹脂をアクリル樹脂フィルムの構成成分とした耐候性、透明性に優れたアクリル樹脂フィルムが知られている(特許文献6)。艶消し性に優れたアクリル樹脂組成物と該フィルムを用いた積層体が知られている(特許文献7)。紫外線吸収剤を共重合させた多層構造重合体からなるアクリル樹脂フィルムが知られている(特許文献8)。波長400nm以下の紫外線をカットするアクリル樹脂フィルムが知られている(特許文献9及び10)。
【0008】
【非特許文献1】
Graetzelら著、J.Am.Chem.Soc.、1993年、115巻、第6382頁
【0009】
【特許文献1】
特開2002−94085号公報
【特許文献2】
特開2002−134178号公報
【特許文献3】
特開2002−25634号公報
【特許文献4】
特開平11−345991号公報記載
【特許文献5】
特公昭62−19309号公報
【特許文献6】
特公平2−42381号公報
【特許文献7】
特開平7−238202号公報
【特許文献8】
特開平8−319326号公報
【特許文献9】
特開2000−7873号公報
【特許文献10】
特開2000−169767号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
塗布法によって紫外線吸収薄膜層を形成する場合、工程が繁雑で溶剤が排出されるといった問題がある。スパッタリング法、CVD法によって紫外線吸収薄膜層を形成する場合、工程が繁雑で大規模な装置が必要となる。また、他の樹脂フィルムを使用した場合は、フィルム自体の十分な透明性が得られず耐候性も不十分な問題がある。
また、特許文献5〜10に記載のアクリル樹脂フィルムは、色素増感型太陽電池に耐候性及び耐久性を付与するための具体的な保護方法及びその効果については全く示唆されていない。
以上のような状況に鑑み、本発明においては、耐候変色性および透明性が良好な色素増感型太陽電池保護用のアクリル樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、光線透過率が波長380nmで10%以下、かつ波長480nmで90%以上であることを特徴とする色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムに関するものである。
本発明は更に、ベンゾトリアゾール系およびトリアジン系の紫外線吸収剤の少なくとも一種類を含有することを特徴とする色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムに関するものである。
本発明は更に、インドール系およびアゾメチン系の特定波長吸収剤の少なくとも一種類を含有することを特徴とする色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムに関するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムについて説明する。
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムは、光線透過率が波長380nmで10%以下、かつ波長480nmで90%以上であることが必要である。ここで、光線透過率は、JIS K6714に準拠して村上色彩研究所製の反射・透過率計HR100を使用して全光線透過率及びヘイズを測定する。
【0013】
波長380nmにおける光線透過率は、5%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。また、波長480nmにおける光線透過率は、91%以上が好ましく、92%以上がより好ましい。加えて、波長300〜380nmの範囲にわたって、光線透過率は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、1%以下が更に好ましい。波長380nmで光線透過率が10%以下であると、波長380nm以下の光線照射に起因する光触媒作用により電極の色素や電解液等の有機物の分解が生じ難い。波長380nm以下の光線照射に起因する正孔生成により電子が再結合してしまう問題も生じ難い。
【0014】
また、波長300〜380nmの範囲にわたって、光線透過率が10%以下であると、基材として波長約350nm以下の光線を透過しない通常のガラスではなく、波長350nm以下で透過性のある基材を使用した場合においても、波長380nm以下の光線照射に起因する光触媒作用により電極の色素や電解液等の有機物の分解が生じ難い。波長380nm以下の光線照射に起因する正孔生成により電子が再結合してしまう問題も生じ難い。
【0015】
また、波長480nmで光線透過率が90%以上であると、可視光エネルギーを捕獲するための電極上色素の吸収帯波長の透過を妨げる恐れがなく、色素増感型太陽電池のカバー材として用いることができ、工業的利用価値が著しく高い。本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムにおいて波長380nmの光線透過率を10%以下にするために、公知の紫外線吸収剤を使用することができるが、ベンゾトリアゾール系およびトリアジン系の紫外線吸収剤の少なくとも一種類の紫外線吸収剤を使用することが好ましい。
【0016】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムの厚さは、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、40μm以上が更に好ましい。また、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下が更に好ましい。10μm以上であると、適度な強度、剛性を有し、ラミネートや印刷等の二次加工時に取扱性が良好となる。また、製膜性が安定してフィルムの製造が容易となる。500μm以下であると、フィルムを巻き取ることができ、ラミネートや印刷等の連続的加工工程に適用することが可能となる。
【0017】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムにおいて使用される紫外線吸収剤の分子量は、300以上が好ましく、400以上がより好ましい。分子量が300以上であれば、加熱溶融加工時の揮発が少なくフィルム製造時のロール汚れを発生させる恐れがなく、フィルム製膜後の滲出も少ない。
【0018】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’、5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール及び2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等を使用することができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「チヌビン234」(チバスペシシャリティーケミカルズ社製;商品名)、「アデカスタブLA−31」(旭電化工業社製;商品名)等が挙げられる。
【0019】
トリアジン系の紫外線吸収剤としては、2−(4’,6’−ジフェニル−1’,3’,5’−トリアジン−2’−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール、2−[4’,6’−ビス(2’’,4’’−ジメチルフェニル)−1’,3’,5’−トリアジン−2’−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール等を使用することができる。
【0020】
トリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「チヌビン1577」(チバスペシシャリティーケミカルズ社製;商品名)、「CYASORB UV−1164」(サイテック社製;商品名)等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系及びトリアジン系の紫外線吸収剤は、熱および光に安定であり、汎用性が高く、様々な樹脂と共に使用することができる。
【0021】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を使用する場合、厚さ50μmのフィルムで波長380nmでの光線透過率10%以下とするには、フィルム中のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量は、ベンゾトリアゾール構造が3mmol/m2以上、5%以下とするには4.2mmol/m2以上、1%以下とするには7.3mmol/m2以上となるように添加すれば良い。ここで、「mmol/m2」とは、アクリル樹脂フィルム1m2当たりに含まれる紫外線吸収剤又は特定波長吸収剤の含有量を表す単位である。以下に記載する「mmol/m2」も同様の意味を表す。例えば、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]のように1分子中にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の基本構造を二つ以上持つ場合のベンゾトリアゾール含有量は、ベンゾトリアゾール構造モル当量で考える。
【0022】
波長300〜380nmの範囲において10%以下、5%以下及び1%以下とする場合でも、上記の波長380nmに関して着目した場合と同じ紫外線吸収剤の添加量を添加すればよい。また、フィルムの厚さにもよるが18mmol/m2以下であれば、フィルムの製膜性及び外観等が低下しない。
【0023】
トリアジン系紫外線吸収剤を使用する場合、厚さ50μmのフィルムで波長380nmでの光線透過率10%以下とするには、フィルム中のトリアジン系紫外線吸収剤の含有量はトリアジン構造が6.4mmol/m2以上、5%以下とするにはトリアジン構造が8.5mmol/m2以上、1%以下とするには15mmol/m2添加すれば良い。波長300〜380nmの範囲において10%以下、5%以下、1%以下とする場合でも、上記の波長380nmのみに着目した場合と同じ添加量を添加すればよい。また、フィルムの厚さにもよるが18mmol/m2以下であれば、フィルムの製膜性及び外観等が低下しない。
【0024】
ベンゾトリアゾール系及びトリアジン系の紫外線吸収剤を併用して用いても良い。ベンゾトリアゾール系とトリアジン系の紫外線吸収剤の使用比率は、本願発明の効果を達成できる範囲であれば良く、特に限定されない。
さらに、本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムにおいて波長380nmの光線透過率を10%以下にするために、インドール系およびアゾメチン系の特定波長吸収剤の少なくとも一種類の特定波長吸収剤を使用することも好ましい。
ここでいう特定波長吸収剤とは、近紫外域(290〜380nm)から可視域(波長380〜780nm)にまたがる少なくとも一つの吸収ピークをもつ物質をいう。
【0025】
インドール系特定波長吸収剤としては、下記一般式(I)で示されるインドール系化合物を含有するものである。
【0026】
【化1】
【0027】
(一般式(I)中、R1は分岐していてもよいアルキル基またはアラルキル基、R2はシアノ基または−COOR6を示す。但し、R6は置換基を有していてもよいアルキル基またはアラルキル基を示す。)
インドール系特定波長吸収剤の市販品としては、例えば、「ボナソーブUA−3901」(オリヱント化学工業社製;商品名)が挙げられる。
アゾメチン系特定波長吸収剤としては、下記一般式(II)で示されるアゾメチル系化合物を含有するものである。
【0028】
【化2】
【0029】
(一般式(II)中、R3は水素原子または炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、R4およびR5は相互に独立して、水素原子、カルボキシル基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基または炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基である。)
アゾメチン系化合物としては、3−[(フェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(3’−メチルフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(4’−プロピルフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(3’−メトキシフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(3’−エトキシフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(3’−クロロフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(2’,4’−ジメチルフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン等を使用することができる。アゾメチン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「ボナソーブUA−3701」(オリヱント化学工業社製;商品名)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0030】
インドール系およびアゾメチン系特定波長吸収剤は波長350〜400nmに大きな吸収ピークがあり、波長300〜350nmに大きな吸収ピークがあるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やトリアジン系紫外線吸収剤と比べ、少ない添加量で波長380nmの光線透過率を10%以下とすることができる。
インドール系特定波長吸収剤を使用する場合、厚さ50μmのフィルムで波長380nmでの光線透過率を10%以下とするには、フィルム中のインドール系特定波長吸収剤の含有量は、0.3mmol/m2以上、5%以下とするには0.38mmol/m2以上、1%以下とするには0.6mmol/m2以上添加すればよい。また、波長300〜380nmで10%以下とするには1.9mmol/m2以上、5%以下とするには2.5mmol/m2以上、1%以下とするには3.9mmol/m2以上添加すれば良い。また、フィルムの厚さにもよるが、21mmol/m2以下であれば製膜性、外観及び経済性等が低下しない傾向にある。
【0031】
アゾメチン系特定波長吸収剤を使用する場合、厚さ50μmのフィルムで波長380nmでの光線透過率10%以下とするには、フィルム中のアゾメチン系特定波長吸収剤の含有量はアゾメチン構造が0.3mmol/m2以上、5%以下とするには0.38mmol/m2以上、1%以下とするには0.6mmol/m2以上添加すればよい。また、波長300〜380nmで10%以下とするには5.7mmol/m2以上、5%以下とするには7.5mmol/m2以上、1%以下とするには11.7mmol/m2以上を添加すれば良い。また、フィルムの厚さにもよるが、22mmol/m2以下であれば製膜性、外観及び経済性等が低下しない。
【0032】
上記インドール系とアゾメチン系の特定波長吸収剤を併用して用いても良い。インドール系とトリアジン系の特定波長吸収剤を併用する場合の使用比率は、本願発明の効果を達成できる範囲であれば良く、特に限定されない。また、インドール系及びアゾメチン系の特定波長吸収剤とベンゾトリアゾール系及びトリアジン系の紫外線吸収剤とを併用して用いても良い。特定波長吸収剤と紫外線吸収剤を併用する場合の使用比率は、本願発明の効果を達成できる範囲であれば良く、特に限定されない。波長350〜400nmを主にインドール系特定波長吸収剤およびアゾメチン系特定波長吸収剤の効果で、波長300〜350nmを主にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やトリアジン系紫外線吸収剤の効果で、分担して吸収させることで、上述の各々単独でよりも少ない添加量で波長300〜380nmの光線透過率を10%以下とすることができる。
【0033】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムに用いられる紫外線吸収剤および特定波長吸収剤は、波長480nm以上の光線の吸収はほとんど無いため、これらの添加量にかかわらず波長480nmの光線透過率は90%以上となり、可視光エネルギーを捕獲するための電極上色素の吸収帯波長の透過を妨げる恐れがなく、色素増感型太陽電池のカバー材として用いることができ、工業的利用価値が著しく高い。
【0034】
さらに、上述した特定波長吸収剤および紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤、例えばサリチル酸誘導体、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、置換アクリロニトリル類及びニッケル錯体等からなる紫外線吸収剤をフィルムに含有させることもできる。サリチル酸誘導体としては、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート及びp−オクチルフェニルサリシレート等を挙げることができる。シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート及びエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等を挙げることができる。
【0035】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン及びビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等を挙げることができる。
【0036】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムに用いるアクリル樹脂としては、公知のものを用いることができるが、耐候性、耐汚染性、耐薬品性、製膜性の観点から、以下に述べるアクリル樹脂(A)を用いることが好ましい。
アクリル樹脂(A)は、多層構造を有する重合体と界面活性剤としてリン酸エステル塩とを含有するアクリル樹脂ラテックスから得られる固形物である。
【0037】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムは、アクリル樹脂(A)と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、インドール系特定波長吸収剤及びアゾメチン系特定波長吸収剤からなる群から選択されたいずれか少なくとも一種以上からなることが好ましい。アクリル樹脂フィルムの製造法としては、Tダイ法を用いることが好ましい。
ここで、アクリル樹脂(A)は、5〜35質量%の最内層重合体(A−a)、10〜45質量%の架橋弾性重合体(A−b)、5〜35質量%の中間層重合体(A−c)及び10〜80質量%の最外層重合体(A−d)の順に配されてなる多層重合体である。
【0038】
最内層重合体(A−a)は下記(A−a1)〜(A−a4)の成分の合計量100質量%に対し、
80質量%以上の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−a1)の少なくとも一種、
0.1〜5質量%のグラフト交叉剤(A−a2)、
20質量%以下の(A−a1)および(A−a2)の成分と共重合可能な他の単量体(A−a3)、
10質量%以下の多官能性単量体(A−a4)を乳化重合した共重合体である。
【0039】
架橋弾性重合体(A−b)は、下記(A−b1)〜(A−b4)の成分の合計量100質量%に対し、
80質量%以上の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(A−b1)、
0.1〜5質量%のグラフト交叉剤(A−b2)、
20質量%以下の(A−b1)および(A−b2)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−b3)、
10質量%以下の多官能性単量体(A−b4)を乳化重合した共重合体である。
【0040】
中間層重合体(A−c)は、下記(A−c1)〜(A−c4)の成分の合計量100質量%に対し、
65〜90質量%の炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−c1)、
0.1〜5質量%のグラフト交叉剤(A−c2)、
20質量%以下の(A−c1)および(A−c2)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−c3)、
10質量%以下の多官能性単量体(A−c4)を乳化重合した共重合体である。
【0041】
最外層重合体(A−d)は、下記(A−d1)〜(A−d3)の成分の合計量100質量%に対し、
51質量%以上の炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−d1)、
49質量%以下の(A−d1)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−d3)を乳化重合した共重合体である。
【0042】
このように、多層からなるアクリル樹脂(A)と紫外線吸収剤、特定波長吸収剤を原料として用いることによって、耐候性、耐汚染性、耐薬品性、製膜性、加工性の良好なアクリル樹脂フィルムを得ることができる。
以下に、上述の多層構造を有する重合体の構成について具体的に説明する。
【0043】
[最内層重合体(A−a)]
最内層重合体(A−a)は、上記多層構造を有する重合体の中心部分を構成するものであって、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−a1)の少なくとも一種と、グラフト交叉剤(A−a2)を必須構成成分として含有し、必要に応じて、(A−a1)及び(A−a2)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−a3)と、多官能性単量体(A−a4)とを重合体の構成成分として含有するものである。
【0044】
炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートとしては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、その具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等が挙げられる。これらは、単独又は二種以上を混合して使用できる。
【0045】
また、上記炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、その具体例としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは単独又は二種以上を混合して使用できる。
【0046】
炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートおよび炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−a1)の少なくとも一種は、(A−a1)〜(A−a4)の成分の合計量100質量%に対し、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上含まれるのが良い。(A−a1)含量が80質量%以上であると、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の透明性が損なわれないとともに、アクリル樹脂成形体に優れた耐候性を有することができる。
【0047】
グラフト交叉剤(A−a2)は、その共役不飽和結合によって(A−a1)、(A−a3)、(A−a4)の成分と共重合した際にグラフト起点となる官能基を有するものである。グラフト起点となる官能基としては、アリル基、メタリル基またはクロチル基が挙げられる。すなわち、グラフト交叉剤(A−a2)では、主としてそのエステルの共役不飽和結合が、アリル基、メタリル基またはクロチル基よりはるかに早く反応し、アリル基、メタリル基、またはクロチル基の大部分が残存する。そして、これらの官能基がグラフト起点となって、架橋弾性重合体(A−b)をグラフト結合させることができる。
【0048】
最内層重合体(A−a)を構成するグラフト交叉剤(A−a2)としては、共重合性のα、β−不飽和カルボン酸またはジカルボン酸のアリル、メタリルまたはクロチルエステル等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸またはフマル酸のアクリルエステルが好ましく、さらに、これらの中でもアリルメタクリレートが特に好ましい。アリルメタクリレートを用いると、グラフト起点として効果的である。また上記以外にも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等もグラフト起点として効果的である。
【0049】
グラフト交叉剤(A−a2)の使用量は極めて重要であり、(A−a1)〜(A−a4)の成分の合計量100質量%に対し0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。グラフト交叉剤(A−a2)の使用量が0.1質量%以上のとき、グラフト起点を十分に得ることができる。また、5質量%以下のとき、最内層重合体(A−a)の外側に形成される架橋弾性重合体(A−b)との反応量が多くなく、最内層重合体(A−a)と架橋弾性重合体(A−b)とからなる二層架橋ゴム弾性体の弾性が低下する傾向を示さない。
【0050】
(A−a1)および(A−a2)の成分と共重合可能な他の単量体(A−a3)は、必要に応じて含有させればよい。その具体例としては、例えば、炭素数9以上のアルキル基を有する高級アルキルアクリレート、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート等のアクリレート単量体、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アルキル置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0051】
(A−a1)および(A−a2)の成分と共重合可能な他の単量体(A−a3)の使用量は、(A−a1)〜(A−a4)の成分の合計量100質量%に対し、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。20質量%以下で、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の透明性および耐候性を良好に保つことができる。
【0052】
多官能性単量体(A−a4)は、2つ以上の官能基を有し、(A−a1)〜(A−a3)の成分と共重合可能なものであれば制限されないが、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート等のアルキレングリコールジメタクリレートを用いることが好ましい。また、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼンなども使用可能である。
【0053】
多官能性単量体(A−a4)は、多層構造を有する重合体の安定性を向上させる場合に添加するが、最内層重合体(A−a)中で全く作用しなくても、グラフト交叉剤(A−a2)が存在していれば、安定な多層構造を有する重合体を得ることができるため、必要に応じて含有させればよい。例えば、熱間強度等を向上させる場合などに含有させればよい。
【0054】
多官能性単量体(A−a4)の使用量は、(A−a1)〜(A−a4)の成分の合計量100質量%に対し、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。10質量%以下とすることによって、良好な最内層重合体(A−a)の弾性を保ち、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の適度な柔軟性を維持することができる。
【0055】
[架橋弾性重合体(A−b)]
架橋弾性重合体(A−b)は、多層構造を有する重合体にゴム弾性を与える主要な成分であって、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(A−b1)及びグラフト交叉剤(A−b2)を必須構成成分として含有し、必要に応じて、(A−b1)および(A−b2)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−b3)と、多官能性単量体(A−b4)とを重合体の構成成分として含有するものである。
【0056】
(A−b1)〜(A−b4)の具体例としては、最内層重合体(A−a)を構成するそれぞれの成分(A−a1)〜(A−a4)で挙げたものと同様のものが挙げられる。
また、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(A−b1)の使用量は、(A−b1)〜(A−b4)の成分の合計量100質量%に対し、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。80質量%以上であると、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の透明性を維持するとともに、優れた耐候性を有することができる。
【0057】
また、グラフト交叉剤(A−b2)の使用量は、(A−b1)〜(A−b4)の成分の合計量100質量%に対して0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜2質量%であることがより好ましい。グラフト交叉剤(A−b2)の使用量が0.1質量%以上のとき、グラフト起点を十分に得ることができる。また、5質量%以下のとき、三段目に重合形成される中間層重合体(A−c)との反応量が多くなく、多層構造を有する重合体の弾性が低下しない。
【0058】
また、(A−b1)および(A−b2)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−b3)の使用量は、(A−b1)〜(A−b4)の成分の合計量100質量%に対して20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。20質量%以下のとき、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の透明性および耐候性が損なわれない。
【0059】
また、多官能性単量体(A−b4)の使用量は、(A−b1)〜(A−b4)の成分の合計量100質量%に対して10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。10質量%以下のとき、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の柔軟性及び加工性が低下しない。
また、架橋弾性重合体(A−b)単独のTgは、0℃以下が好ましく、−30℃以下がより好ましい。Tgが0℃以下であると優れた弾性を示す。
【0060】
[中間層重合体(A−c)]
中間層重合体(A−c)は、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−c1)及びグラフト交叉剤(A−c2)を必須構成成分として含有し、必要に応じて、成分(A−c1)及び(A−c2)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−c3)及び多官能性単量体(A−c4)とを重合体の構成成分として含有するものである。また、(A−c1)の成分中のアルキルアクリレート含有割合は、架橋弾性重合体(A−b)から最外層重合体(A−d)に向かって単調減少させている。ここで、単調減少とは、架橋弾性重合体(A−b)から最外層重合体(A−d)に向かって連続的に減少すること、又は架橋弾性重合体(A−b)から最外層重合体(A−d)に向かって断続的に減少することを意味するだけでなく、中間層重合体(A−c)中のアルキルアクリレート含有割合が、架橋弾性重合体(A−b)と最外層重合体(A−d)との中間組成であることを、その意味として含む。
【0061】
(A−c1)〜(A−c4)で使用する物質の好ましい具体例は、最内層重合体(A−a)を構成するそれぞれ成分(A−a1)〜(A−a4)で挙げたものと同様のもが挙げられる。
また、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−c1)の使用量は、(A−c1)〜(A−c4)の成分の合計量100質量%に対して、65〜90質量%であることが好ましく、65〜85質量%であることがより好ましい。前記範囲外であると、架橋弾性重合体(A−b)と最外層重合体(A−d)とを密に結合させることができないことがある。
【0062】
グラフト交叉剤(A−c2)は、架橋弾性重合体(A−b)と最外層重合体(A−d)とを密に結合させることができるので、アクリル樹脂成形体の機械的強度の向上に非常に有効な成分である。グラフト交叉剤(A−c2)の使用量は、(A−c1)〜(A−c4)の成分の合計量100質量%に対して、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜2質量%であることがより好ましい。上記範囲外であると、架橋弾性重合体(A−b)と最外層重合体(A−d)とを密に結合させることができないことがある。
【0063】
また、(A−c1)および(A−c2)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−c3)の使用量は、(A−c1)〜(A−c4)の成分の合計量100質量%に対して、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。20質量%以下のとき、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の柔軟性及び加工性を損ねない。
【0064】
また、多官能性単量体(A−c4)の使用量は、(A−c1)〜(A−c4)の成分の合計量100質量%に対して10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。10質量%以下のとき、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の柔軟性及び加工性を低下させない。
【0065】
[最外層重合体(A−d)]
最外層重合体(A−d)は、多層構造を有する重合体の最外層を構成し、多層構造を有する重合体の成形性、機械的性質等に関与するものであって、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−d1)を必須構成成分として含有し、必要に応じて、(A−d1)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−d3)とを重合体の構成成分として含有するものである。
【0066】
(A−d1)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−d3)の好ましい具体例は、それぞれ最内層重合体(A−a)の成分(A−a1)の炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート、(A−a1)および(A−a2)の成分と共重合可能な他の単量体(A−a3)で挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0067】
また、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−d1)の使用量は、(A−d1)と(A−d3)の成分の合計量100質量%に対して、51質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。51質量%以上であると、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の強度および耐熱性が低下しない。
また、(A−d1)の成分と共重合可能な二重結合を有する他の単量体(A−d3)の使用量は、(A−d1)と(A−d3)の成分の合計量100質量%に対して、49質量%以下であることが好ましい。49質量%以下のとき、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の強度および耐熱性が損なわれない。
【0068】
最外層重合体(A−d)単独のTgは、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。Tgが60℃以上であると、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の強度および耐熱性がさらに向上する。
多層構造を有する重合体において、最内層重合体(A−a)で用いた成分(A−a1)と同一種類のものを、架橋弾性重合体(A−b)、中間層重合体(A−c)、最外層重合体(A−d)にも含有させることが最も好ましい。その場合であっても、(A−a)〜(A−d)は、二種以上のアルキル(メタ)アクリレートが含まれていたり、別種のアクリレートが含まれても構わない。ここで、「(メタ)アクリレート」とは、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートおよび炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートの少なくとも一種を意味するものとする。
【0069】
また、多層構造を有する重合体(アクリル樹脂フィルム)中の最内層重合体(A−a)の含有量は5〜35質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。最内層重合体(A−a)が5〜35質量%含有されていれば、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の柔軟性及び加工性が良好である。
【0070】
また、重合体中の架橋弾性重合体(A−b)の含有量は、10〜45質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることがより好ましい。さらに、架橋弾性重合体(A−b)の含有量は、最内層重合体(A−a)の含有量よりも多いことが好ましい。架橋弾性重合体(A−b)が10〜45質量%含有されていれば、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の柔軟性及び加工性が良好である。
【0071】
また、重合体中の中間層重合体(A−c)の含有量は、5〜35質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。中間層重合体(A−c)の含有量が5〜35質量%であれば、優れた柔軟性、加工性を有するアクリル樹脂成形体を得ることができる。
【0072】
また、重合体中の最外層重合体(A−d)の含有量は、10〜80質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。最外層重合体(A−d)が10〜80質量%含有されていれば、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の柔軟性及び加工性が良好である。
次に、アクリル樹脂(A)の製造方法について説明する。アクリル樹脂(A)の製造方法の概略は、多層構造を有する重合体と、下述の一般式(III)で表されるリン酸エステル塩とを有するアクリル樹脂ラテックスを製造し、このアクリル樹脂ラテックスから固形物を分離回収する。以下、この製造方法について具体的に説明する。
【0073】
多層構造を有する重合体を含有するアクリル樹脂ラテックスの製造方法の一例では、まず、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートの少なくとも一種並びにグラフト交叉剤を含む第1の単量体混合物と、界面活性剤とを含む単量体混合物を反応容器に供給し、乳化重合させて最内層重合体(A−a)を形成させる。
【0074】
次いで、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートと、グラフト交叉剤とを含む第2の単量体混合物を反応容器内に供給し、最内層重合体(A−a)上にて第2の単量体混合物を重合させて架橋弾性重合体(A−b)を形成させる。
次いで、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート及びグラフト交叉剤を含む第3の単量体混合物を反応容器内に供給し、架橋弾性重合体(A−b)上にて第3の単量体混合物を重合させて中間層重合体(A−c)を形成させる。
【0075】
次いで、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを含む第4の単量体混合物を反応容器内に供給し、中間層重合体(A−c)上にて第4の単量体混合物を重合させて最外層重合体(A−d)を形成させてアクリル樹脂ラテックスを得る。
また、アクリル樹脂ラテックスの他の製造方法では、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート及び炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート(A−a1)の少なくとも一種と、グラフト交叉剤(A−a2)とを含む第1の単量体混合物に水及び界面活性剤と混合して乳化液を調製する。次いで、この乳化液を反応容器に供給し、重合して最内層重合体(A−a)を形成させる。
次いで、上述したアクリル樹脂ラテックスの製造方法と同様にして、架橋弾性重合体(A−b)、中間層重合体(A−c)、最外層重合体(A−d)を順に形成させ、アクリル樹脂ラテックスを得る。
【0076】
上述したアクリル樹脂ラテックスの製造方法における、乳化液を調製する方法としては、攪拌翼を備えた攪拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー等の各種強制乳化装置、膜乳化装置等の混合装置に、水と単量体混合物を仕込んだ後、界面活性剤を投入する方法、上記混合装置に水と界面活性剤を仕込んだ後、単量体混合物を投入する方法、混合装置に単量体混合物と界面活性剤を仕込んだ後、水を投入する方法等が挙げられる。
【0077】
乳化液を調製する際の単量体混合物と水との質量比としては、単量体混合物100質量部に対して水10〜500質量部が好ましく、100〜300質量部であることがより好ましい。単量体混合物100質量部に対し水10〜500質量部であると、アクリル樹脂ラテックスの製造が効率的となる。
また、乳化液はW/O型、O/W型のいずれの分散構造でも使用することができるが、特に水中に単量体混合物の油滴が分散したO/W型で、かつ分散相の油滴の直径が100μm以下であることが好ましい。より好ましい分散相の油滴の直径は50μm以下であり、更に好ましくは15μm以下である。分散相の油滴の直径が100μm以下のとき、得られるアクリル樹脂ラテックス中に1〜200μmの範囲に分布する巨大なポリマー粒子が大量に存在せず、それらがフィッシュアイの原因となって最終的に得られるアクリル樹脂成形体の外観を損なうことがない。
アクリル樹脂ラテックスの製造で使用される界面活性剤には、下記一般式(III)で表されるリン酸エステル塩を含む。
【0078】
【化3】
【0079】
一般式(III)において、R3は炭素数10〜18の直鎖または分岐アルキル基を示す。アルキル基の炭素数は12以上であることが好ましい。また、16以下であることが好ましい。具体的には、R3としては、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、イソトリデシル基が好ましい。
【0080】
R4は炭素数2または3の直鎖または分岐アルキレン基を示し、具体的には、エチレン基、プロピレン基が挙げられる。mが2以上の場合にはR4として複数の異なる基を含むことがあり、例えば、エチレン基とプロピレン基との両方を有することもある。
Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示し、具体的には、アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウムおよびセシウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としてはカルシウム、バリウム、マグネシウムおよびストロンチウム等が挙げられる。中でも、Mとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウムが好ましく、耐水白化性の点でカリウムが特に好ましい。Mがアルカリ金属のときqは1であり、Mがアルカリ土類金属のときqは1/2である。
【0081】
mは1〜20の整数であり、3以上の整数であることが好ましく、また、10以下の整数であることがより好ましい。nは1または2であり、pは1または2であり、p+nは3である。つまり、(n,p)=(1,2)または(2,1)である。
【0082】
上記一般式(III)で表される化合物としては、例えば、モノ−n−デシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−n−デシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−n−デシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、ジ−n−デシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシペンタオキシエチレンリン酸等の分岐アルキルオキシポリオキシエチレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩が挙げられる。
【0083】
また、モノ−n−デシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−n−デシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−n−デシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−n−デシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸等の直鎖アルキルオキシポリオキシエチレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩を挙げることができる。
【0084】
また、モノ−イソデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−イソデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−イソドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−イソドデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−イソテトラデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−イソテトラデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−イソヘキサデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−イソヘキサデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、モノ−イソオクタデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸、ジ−イソオクタデシルオキシテトラオキシエチレンリン酸等の分岐アルキルオキシポリオキシエチレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩が挙げられる。
【0085】
また、モノ−イソデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−イソデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−イソドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−イソドデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−イソトリデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−イソテトラデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−イソテトラデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−イソヘキサデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−イソヘキサデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−イソオクタデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、ジ−イソオクタデシルオキシヘキサオキシエチレンリン酸、モノ−イソデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−イソデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−イソドデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−イソドデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−イソトリデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−イソトリデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−イソテトラデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−イソテトラデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−イソヘキサデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−イソヘキサデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、モノ−イソオクタデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸、ジ−イソオクタデシルオキシオクタオキシエチレンリン酸等の分岐アルキルオキシポリオキシエチレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩が挙げられる。
【0086】
また、上記一般式(III)で表される化合物としては、他に、モノ−n−デシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−n−デシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−n−デシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−デシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシペンタオキシプロピレンリン酸等の分岐アルキルオキシポリオキシプロピレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩が挙げられる。
【0087】
また、モノ−n−デシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−n−デシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−n−デシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−デシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ドデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ドデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−テトラデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−テトラデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−ヘキサデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−ヘキサデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−n−オクタデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−n−オクタデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸等の直鎖アルキルオキシポリオキシプロピレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩を挙げることができる。
【0088】
また、モノ−イソデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−イソデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−イソドデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−イソドデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−イソテトラデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−イソテトラデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−イソヘキサデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−イソヘキサデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、モノ−イソオクタデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸、ジ−イソオクタデシルオキシテトラオキシプロピレンリン酸等の分岐アルキルオキシポリオキシプロピレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩が挙げられる。
【0089】
また、モノ−イソデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−イソデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−イソドデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−イソドデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−イソトリデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−イソトリデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−イソテトラデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−イソテトラデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−イソヘキサデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−イソヘキサデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−イソオクタデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、ジ−イソオクタデシルオキシヘキサオキシプロピレンリン酸、モノ−イソデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−イソデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−イソドデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−イソドデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−イソトリデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−イソトリデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−イソテトラデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−イソテトラデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−イソヘキサデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−イソヘキサデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、モノ−イソオクタデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸、ジ−イソオクタデシルオキシオクタオキシプロピレンリン酸等の分岐アルキルオキシポリオキシプロピレンリン酸のアルカリ金属(Na、K等)塩あるいはアルカリ土類金属(Ca、Ba等)塩が挙げられる。
【0090】
これらのリン酸エステル塩類は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、単量体混合物を乳化重合する過程で、リン酸エステルにアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水酸化物を添加し、中和して、所望のリン酸エステル塩としてもよい。
また、このリン酸エステル塩は、モノアルキルエステル、ジアルキルエステルの混合物であってもよい。その場合、モノアルキルエステル、ジアルキルエステルの混合量比は特に限定されない。また、非リン酸エステルの界面活性剤が含まれていてもよい。
【0091】
このような、リン酸エステル塩を含む界面活性剤の好ましい市販品としては、三洋化成工業(株)製のNC−718、東邦化学工業(株)製のフォスファノールLS−529、フォスファノールRS−610NA、フォスファノールRS−620NA、フォスファノールRS−630NA、フォスファノールRS−640NA、フォスファノールRS−650NA、フォスファノールRS−660NA、花王(株)製のラテムルP−0404、ラテムルP−0405、ラテムルP−0406、ラテムルP−0407等が挙げられる。
【0092】
乳化液中の単量体混合物を重合するには、例えば、反応容器に重合開始剤を投入して、重合温度まで昇温した後、乳化液を供給して重合する。重合開始剤としては、公知のものが使用できるが、その具体例としては、過酸化物、アゾ系開始剤、又は酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。また、これらの中でもレドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0093】
このようにして得られた多層構造を有する重合体を含有するアクリル樹脂ラテックスの粘度は、0.1〜1500mPa・sであることが好ましく、0.1〜1000mPa・s以下であることがより好ましい。アクリル樹脂ラテックスの粘度が0.1mP・s以上のとき、その後のアクリル樹脂の分離処理が容易となり、1500mPa・s以下のときアクリル樹脂ラテックスを濾過する際に目詰まりが生じにくい。
【0094】
また、アクリル樹脂ラテックス中の多層構造を有する重合体の平均粒子径としては、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の機械特性、透明性がともに優れることから、0.08〜0.2μmであることが好ましい。
アクリル樹脂ラテックスの固形分は、特に限定されないが、アクリル樹脂ラテックスの濾過性、生産効率が高いことから、20〜50質量%の範囲が好ましい。
【0095】
上述したアクリル樹脂ラテックスの製造方法で得られたアクリル樹脂ラテックスは、主に粒子径が0.03〜1μmの粒子からなるものであるが、凝集物や浮遊物の他に重合時における微細凝集物の発生などにより、粒子径が1〜200μmの範囲に分布する巨大なポリマー粒子も含有している。これらの凝集物、浮遊物および巨大なポリマー粒子は、フィルム状にした際にフィッシュアイ等の原因となり、最終的に得られるアクリル樹脂成形体の外観を損なうため、除去する必要がある。巨大ポリマー粒子を除去する装置としては、例えば、円筒型濾過室内の内側面に円筒型の濾材を配し、該濾材内に攪拌翼を配した遠心分離型濾過装置、水平に設置された濾材が、該濾材の表面を基準として水平方向の円運動、及び垂直方向の振幅運動する濾過装置等が挙げられる。
【0096】
アクリル樹脂ラテックス中から多層構造を有する重合体を含む固形物を分離回収する方法としては、特に限定されないが、塩析、酸析凝固、噴霧乾燥、又は凍結乾燥等が挙げられる。これらの方法によれば、多層構造を有する重合体を含む固形物を粉状で回収できる。
【0097】
上述した分離回収方法の中でも、好ましい分離回収方法としては、例えば、線速度0.5m/秒以下となるように攪拌され、濃度0.1〜20質量%の酢酸カルシウムを含む水溶液からなる凝固剤溶液中に、アクリル樹脂ラテックスを流し込んで凝固させる方法が挙げられる。その際、凝固粉を得るための凝固剤溶液の温度は、ポリマーを形成し得る単量体の種類、量又は攪拌による剪断力などの凝固条件の影響を受けるため一概には決定できないが、80℃以上が好ましく、より好ましくは80〜100℃であるのが良い。凝固液温度が80℃以上のとき、凝固粉の含水量が低く、また微粉量も多くないので、生産性が悪化するといった問題が起こらない。一方、100℃以下のとき、耐圧仕様にする必要がなく、コスト高ともならない。また、酢酸カルシウム水溶液の濃度は、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。0.1質量%以上のとき、安定してポリマーを回収でき、凝固粉の含水率が高くなることもない。一方、20質量%以下のとき、酢酸カルシウム溶液の温度変化により酢酸カルシウムが析出することもない。
【0098】
アクリル樹脂ラテックスを凝固して得られた多層構造を有する重合体を含む固形物(湿潤状ポリマー)は、通常、固形物質量に対して1〜100倍程度の水で水洗される。その後、遠心脱水機やデカンタ脱水機により脱水後、圧搾脱水機や流動乾燥機などを用いて乾燥させる。このときの乾燥は、凝固粉の含水量が低いほど乾燥速度が速くなり、効率的である。
多層構造を有する重合体を含む固形物の残存金属含有量は500ppm以下であることが好ましい。残存金属含有量が500ppm以下であると、さらに耐水白化性が向上する傾向にあり、また、微量であるほど耐水白化性は向上する。
【0099】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムには、必要に応じて、公知の一般的な配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、抗菌剤及び防かび等を含むことができる。
本発明で用いられるアクリル樹脂フィルムの製造法としては、公知のTダイ法やインフレーション法などの溶融押出法、カレンダー法及び溶液流延法などいずれの方法を用いても良いが、経済性の点からTダイ法が好ましい。
【0100】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムは、他の基材上に積層することもできる。積層体製造に使用する基材としては、例えば樹脂成形品が挙げられる。この成形品を構成する樹脂としては、本発明のアクリル樹脂フィルムと溶融接着可能なものであればよく、例えば、ABS樹脂、ASA樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系樹脂又はこれらを主成分とする樹脂が挙げられる。中でも、接着性の点からABS樹脂、ASA樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、又はこれらを主成分とする樹脂が好ましく、特に、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂又はこれらを主成分とする樹脂がより好ましい。
【0101】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムを二次元形状の基材上に積層する場合、熱融着できる基材に対しては熱ラミネーション等の公知の方法を用いることができる。艶消しが好まれる場合には、エンボス加工された加熱ロールを使用しての熱ラミネーション法が一般的である。三次元形状の基材上に積層成形する場合は、インサート成形法やインモールド成形法等の公知の成形方法を用いることができる。中でも、生産性の観点からインモールド成形法が特に好ましい。また、共押出による積層も可能である。
【0102】
熱融着し難いポリオレフィン樹脂、熱硬化性樹脂、ガラス、鋼板、木材、布、紙等の基材に対しては、接着性の層を介在させることで、アクリル樹脂フィルムと基材を積層成形することができる。
また、本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムを積層してなる積層体は、アクリル樹脂フィルムと基材との間に必要に応じて中間層を設けることもできる。必要に応じて用いる中間層としては、印刷層、メッキ層、接着層、着色樹脂層等が挙げられる。
このように基材の表面にフィルムを設ける方法は、高価な特定波長吸収剤および紫外線吸収剤を効率よく表面に分散させることができる点でも、非常に有益な方法である。
【0103】
本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムを積層した積層体は、色素増感型太陽電池の前面フィルター等に用いることができ、また、従来からアクリル樹脂フィルムが被覆されていた家電の筐体、車輌内装部材、内装用建築材料、壁紙、化粧板、玄関ドア、窓枠、巾木等にも用いることができる。
特に、本発明の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルムの特徴である近紫外吸収性、透明性、耐候性等を最大限に利用できる用途としては、問題となる色素増感型太陽電池の保護部材等である。色素増感型太陽電池の保護部材として本発明のアクリル樹脂フィルムを積層してなる積層体を用いる場合は、特に優れた近紫外吸収能を発揮させることができる。
【0104】
図1は、本発明のアクリル樹脂フィルムを被覆した色素増感型太陽電池を表した模式図である。図1において符号1は本発明のアクリル樹脂フィルムを表す。2はガラス、プラスチック等の基板、3は透明導電膜、4はTiO2、SrTiO2、SnO2、ZnO、WO3、Nb2O5等からなる金属酸化物半導体電極、5はルテニウムビピリジル、亜鉛ポリフィリン、銅フタロシアニン、クロロフィル、ローズベンガル、エオシン等の色素、6はI−/I3 −、Br−/Br3 −等の酸化還元対を有する電解質、7はPt等からなる対向電極である。この太陽電池は上記2〜7よりなるセルに本発明のアクリル樹脂フィルム1を貼り合わせることによって形成される。光は図1の上方から入射する。
【0105】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中「部」とあるのは「質量部」を表す。また、実施例中の略号は以下のとおりである。
メチルメタクリレート:MMA
ブチルアクリレート:BA
アリルメタクリレート:AMA
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート:BD
t−ブチルハイドロパーオキサイド:tBH
クメンハイドロパーオキサイド:CHP
n−オクチルメルカプタン:n−OM
また、実施例中で用いた評価方法は下記の通りである。
【0106】
(1)乳化液中の分散相(多層構造を有する重合体)の平均粒子径測定
ガラス板上に乳化液を1滴滴下し、光学顕微鏡にて乳化液中の分散相20個の直径を計測し、これらの平均値より平均粒子径を求めた。
【0107】
(2)多層構造を有する重合体の質量平均粒子径
乳化重合にて得られた多層構造を有する重合体のポリマーラテックスを大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700を用い、動的光散乱法で測定し求めた。
【0108】
(3)スケール量
乳化重合後、重合槽および攪拌機に付着したスケールおよびラテックス中に浮遊しているスケールを500μmの目開きのメッシュにて回収して水洗、乾燥後その質量を測定した。この質量を重合槽に仕込んだ単量体混合物の総量により除してスケール量の割合を百分率で示した。
【0109】
(4)多層構造を有する重合体のゲル含有率
秤量した多層構造を有する重合体をアセトン溶媒中還流下で抽出処理し、この抽出処理液を遠心分離により分別した。次いで、得られた固形分を乾燥後、質量測定(抽出後質量)し、以下の式にて求めた。
ゲル含有率(%)=(抽出後質量(g)/抽出前質量(g))×100。
【0110】
(5)透明性
JIS K6714に準拠して村上色彩研究所製の反射・透過率計HR100を使用して全光線透過率及びヘイズを測定した。
【0111】
(6)吸収特性
島津製作所製の分光光度計UVmini−1240を使用してフィルムの分光光線透過率を測定した。
【0112】
(実施例1)
(アクリル樹脂(A)の製造)
攪拌機を備えた容器にイオン交換水8.5部を仕込んだ後、MMA0.3部、BA4.5部、BD0.2部、AMA0.05部、CHP0.025部からなる第1の単量体混合物を投入し、攪拌混合した。次いで、乳化剤として「フォスファノールRS−610NA」(東邦化学工業社製;商品名)1.1部を攪拌しながら上記容器に投入し、再度20分間攪拌を継続し、乳化液を調製した。得られた乳化液中の分散相の平均粒子径は、10μmであった。
次に、冷却器付き反応容器内にイオン交換水186.5部を投入し、これを70℃に昇温し、さらに、イオン交換水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部、EDTA0.0003部を加えて調製した混合物を一括投入した。
【0113】
続いて、窒素下で撹拌しながら、乳化液を8分間かけて反応容器に滴下した後、15分間反応を継続させて最内層重合体(A−a)を得た。続いて、MMA1.5部、BA22.5部、BD1.0部、AMA0.25部からなる第2の単量体混合物をCHP0.016部と共に90分間かけて反応容器に添加した後、60分間反応を継続させて架橋弾性重合体(A−b)を含む二層架橋ゴム弾性体を得た。
【0114】
続いて、MMA6部、BA4部、AMA0.075部、およびCHP0.0125部の第3の単量体混合物を45分間かけて反応容器に滴下した後、60分間反応を継続させて中間層重合体(A−c)を形成させた。
続いて、MMA55.2部、BA4.8部、n−OM0.19部、およびtBH0.08部からなる第4の単量体混合物を140分間かけて反応容器に滴下した後、60分間反応を継続させて最外層重合体(A−d)を形成して多層構造を有する重合体を含有するアクリル樹脂ラテックスを得た。重合後測定したスケール量は0.001%であり、質量平均粒子径は0.12μmであった。
【0115】
得られた多層構造を有する重合体を含有するアクリル樹脂ラテックスを、酢酸カルシウム1質量%を300部含有する水溶液中に投入して塩析させ、水洗し、分離回収後、乾燥して粉体状のアクリル樹脂(A)を得た。アクリル樹脂(A)のゲル含有率は60質量%であった。
このようにして得たアクリル樹脂(A)100部に対して、インドール系特定波長吸収剤(「ボナソーブUA−3901」(オリヱント化学工業社製;商品名))1.5部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(「アデカスタブLA−31RG」(旭電化工業社製;商品名))2.1部、抗酸化剤として「アデカスタブAO−50」(旭電化工業社製;商品名)0.1部をヘンシェルミキサーで混合した。
【0116】
得られた混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製PCM−30)に供給し、混練してペレットを得た。上記の方法で製造したペレットを80℃で一昼夜乾燥し、この乾燥ペレットを、300mm幅のTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)に供給して50μm厚さのフィルムを製膜した。その際の条件は、シリンダー温度200℃〜240℃、Tダイ温度250℃、冷却ロール温度70℃であった。評価結果を表1に示す。
【0117】
(実施例2)
実施例1において、特定波長吸収剤をアゾメチン系特定波長吸収剤(「ボナソーブUA−3701」(オリヱント化学工業社製;商品名))に変更する以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0118】
(実施例3)
実施例1において、紫外線吸収剤をトリアジン系紫外線吸収剤(「チヌビン1577」(チバスペシャリティケミカルズ社製;商品名)1部に変更する以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0119】
(実施例4)
実施例1において、紫外線吸収剤をベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(「チヌビン234」(チバスペシャリティケミカルズ社製;商品名))2.9部に変更する以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0120】
(実施例5)
実施例1において、紫外線吸収剤を1部、特定波長吸収剤を0.5部にする以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0121】
(実施例6)
実施例1において、紫外線吸収剤を0.5部、特定波長吸収剤を0.5部にする以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0122】
(実施例7)
実施例1において、特定波長吸収剤を添加しない以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0123】
(実施例8)
実施例1において、特定波長吸収剤を添加せずに紫外線吸収剤を4.4部にする以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0124】
(実施例9)
実施例1において、紫外線吸収剤を添加しない以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0125】
(比較例1)
実施例1において、特定波長吸収剤をおよび紫外線吸収剤を添加しない以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0126】
(比較例2)
実施例1において、特定波長吸収剤を添加せずに紫外線吸収剤を1部にする以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0127】
(比較例3)
実施例1において、紫外線吸収剤を添加せずに特定波長吸収剤を0.08部にする以外は、実施例1と同様の手順でフィルムを得た。評価結果を表1に示す。表1の結果より、実施例1〜9で作製した紫外線吸収剤および特定波長吸収剤の少なくとも一つを含有するアクリル樹脂フィルムは、波長380nmでの光線透過率が10%以下であり、波長480nmでの光線透過率は90%以上となっている。これに対して、比較例1〜3で作製したアクリル樹脂フィルムはこれらの吸収剤を含有していないため、波長380nmでの光線透過率が10%を大きく超えていることが分かる。
【0128】
【表1】
【0129】
【発明の効果】
本発明により、光線透過率が波長380nmで10%以下かつ波長480nmで90%以上であり、耐候変色性および透明性が良好な色素増感型太陽電池保護用のアクリル樹脂フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の保護用アクリル樹脂フィルムを被覆した色素増感型太陽電池を表した模式図である。
【符号の説明】
1 アクリル樹脂フィルム
2 基板
3 透明導電膜
4 金属酸化物半導体電極
5 色素
6 酸化還元対を有する電解質
7 対向電極
Claims (3)
- 光線透過率が波長380nmで10%以下、かつ波長480nmで90%以上であることを特徴とする色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルム。
- ベンゾトリアゾール系およびトリアジン系の紫外線吸収剤の少なくとも一種類を含有することを特徴とする請求項1記載の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルム。
- インドール系およびアゾメチン系の特定波長吸収剤の少なくとも一種類を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の色素増感型太陽電池保護用アクリル樹脂フィルム。
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