JP2004226632A - 接合基板及び光回路基板並びにその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高精度で密着性よく接合された接合基板及びそれを用いた光回路基板ならびにその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる接合基板は、光透過性基板1と光透過性基板に対向して設けられた光透過性基板11を備えている。光透過性基板1と光透過性基板11には凹部5が設けられ、その中にレーザー光により溶融可能な接合部材3が形成されている。接合部材3と光透過性基板1の間には接合部材より高い融点を有し、接合力の高い下地層2が形成されている。さらに凹部5から光透過性基板1の端部まで、空気穴6が形成されている。本発明にかかる接合基板は光透過性基板1側からレーザー光を照射している。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明にかかる接合基板は、光透過性基板1と光透過性基板に対向して設けられた光透過性基板11を備えている。光透過性基板1と光透過性基板11には凹部5が設けられ、その中にレーザー光により溶融可能な接合部材3が形成されている。接合部材3と光透過性基板1の間には接合部材より高い融点を有し、接合力の高い下地層2が形成されている。さらに凹部5から光透過性基板1の端部まで、空気穴6が形成されている。本発明にかかる接合基板は光透過性基板1側からレーザー光を照射している。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光透過性基板と基板を接合した接合基板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の光通信技術の発達により、基板上に光導波路等の光素子を備えた光デバイスが利用されている。この光導波路にレーザー光を効率よく集光させるため、光透過性基板の一部にマイクロレンズを形成することが考えられる。例えば、ガラス基板の一部を曲面とすることにより、光導波路にレーザー光を集光させることができる。しかし、1枚のガラス基板では、その厚さにより制限を受けるため十分に集光できない場合がある。このため、2枚のマイクロレンズを有する基板を接合して、2つのレンズを組み合わせて、集光させる方法が考えられる。
【0003】
この2枚の光透過性基板を接合させる方法には、従来から回路基板等に用いられている異種あるいは同種の基板を接合する方法を利用することが考えられる。この回路基板にはガラス等の光透過性基板、金属基板、セラミック基板等の多数の種類が用いられ、同種又は異種の基板を接合させている。以下、従来から用いられている回路基板の接合方法を利用する場合の問題点について説明する。
【0004】
例えば、Si基板とパイレックス(登録商標)ガラス基板の接合に用いられている陽極接合やSi基板とSi基板との接合に用いられている直接接合、界面接合がある。しかし、陽極接合、直接接合では高温状態としなければならないため、基板に金属配線パターンが設けられている場合は金属が溶融してしまうという問題点があった。また接合させる光透過性基板の材質が耐熱性を有するものに限定されてしまう。さらに陽極接合では高電圧が必要となってしまい処理が複雑化する。また、界面接合は室温で処理することも可能であるが真空処理やフッ酸処理等の複雑な処理が必要であった。
【0005】
この他の方法としては接着剤による接合が考えられる。この方法では室温環境下で手軽に接着することができる。しかし耐熱性が低く、有機系の接着剤を用いた場合は環境に対する悪影響が生じるという問題点がある。さらに、基板間に接着剤が残存して間隙が生じる。この接着剤を平坦に塗布することは困難であるため、光透過性基板が部分的に浮き上がってしまい隙間が生じ、平行に接合させることができなかった。この基板の高さ方向の位置ずれにより、マイクロレンズの光学特性が劣化するという問題があった。すなわち、マイクロレンズを透過する光の焦点が光導波路の位置からずれて光を光導波路に効率よく集光することができなかった。
【0006】
また、ガラス基板とガラス基板との間に光吸収薄材を設け、光を照射し接合させる方法が提案されている(例えば、特許文献1)しかし、この方法でも光透過性基板間に光吸収材が残存するため、高さ方向の位置ずれが生じ、マイクロレンズの光学特性を劣化させるということもあった。
【0007】
セラミックスと金属の取り付け方法ではあるが、セラミックスの表面に凹部を設け、その凹部に金属ろう材を配し、その部分を加熱してろう材を溶融し金属部材を接合する方法が提案されている(例えば、特許文献2)しかし、ろう材ではガラス等の光透過性基板との接合では十分な接合を得ることができないという問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−120259号公報
【特許文献2】
特開昭60−103083号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の基板の接合方法では、高精度で2枚の基板を密着性よく接合させることが困難であるという問題点があった。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、高精度で密着性よく接合がされた接合基板及びそれを用いた光回路基板並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる接合基板は、第1の基板(例えば、本発明の実施の形態にかかる光透過性基板1)と、前記第1の基板に設けられた凹部(例えば、本発明の実施の形態にかかる凹部5)と、前記第1の基板の凹部が設けられた面と対向して設けられた第2の基板(例えば、本発明の実施の形態にかかる光透過性基板11)と、前記凹部の中に形成された接合部材を備え、前記第1の基板または第2の基板の少なくともいずれか一方を透過する波長のレーザー光を照射することにより接合されたものである。これにより、高精度の接合を密着性よく行うことができる。
【0012】
前記接合部材と前記凹部の間に設けられ前記接合部材よりも第1の基板に対する接合力が高い材料により形成された下地層をさらに有する請求項1記載の接合基板。これにより、密着性を向上することができる。
【0013】
上述の接合基板において、前記接合部材と前記凹部の間に設けられ前記接合部材よりも第2の基板に対する接合力が高い材料により形成された下地層をさらに有することが望ましい。これにより、密着性を向上することができる。
上述の接合基板において前記第2の基板の前記第1の基板の凹部に対向する位置に接合部材を有する凹部を前記第2の基板上にさらに備えることが望ましい。これにより、密着性を向上することができる。
上述の接合基板において、前記第2の基板に設けられた前記接合部材と前記第2の基板の間に設けられ、前記接合部材よりも第2の基板に対する接合力が高い材料により形成された下地層を前記さらに有することが望ましい。これにより、密着性を向上することができる。
【0014】
上述の接合基板において前記凹部から前記第1の基板の端部まで設けられた空気穴をさらに備えていてもよい。これにより、レーザー照射時に凹部の空気の膨張による影響を防ぐことができる。
【0015】
上述の接合基板の好適な実施の形態は前記接合部材がAu、Sn、Al、Pb又はZnの少なくとも1種類を有する金属層若しくは合金層を備えるものである。これにより、低融点での溶融が可能になる。
【0016】
上述の接合基板の好適な実施の形態は前記下地層がCr、Ti、Pt又はAuの少なくとも1種類を有し、前記接合部材より高い融点を有するものである。これにより、接合強度を向上することができる。
【0017】
本発明にかかる光回路基板は上述のいずれかの接合基板と、前記接合基板に形成された光素子を備えたものである。
【0018】
さらに上述の光回路基板はダイシングすることにより光モジュールに用いることが好適である。
【0019】
本発明にかかる接合基板の製造方法は第1の基板と第2の基板が接合された接合基板の製造方法であって、前記第1の基板に凹部を設けるステップと、前記凹部に接合部材を形成するステップと、前記第1の基板の凹部が設けられた面と第2の基板を対向させるステップと、前記第1の基板又は第2の基板の少なくともいずれか一方が光透過性を有し、当該光透過性を有する基板を介して前記凹部にレーザー光を照射するステップを備えるものである。これにより、高精度で密着性よく基板を接合することができる。
【0020】
上述の接合基板の製造方法において前記凹部を設けるステップが、第1の基板にレジストを塗布するステップと、前記凹部を設ける箇所のレジストを除去するステップと、前記レジストが除去された箇所の前記第1の基板をエッチングにより前記凹部を設けるステップを備え、前記接合部材を形成するステップが、前記レジストの上及び前記凹部に前記接合部材を形成するステップと、前記レジストを除去するステップを有することが望ましい。これにより、容易に接合部材を第1の基板の表面以下にすることができる。
【0021】
上述の製造方法において前記凹部と前記接合部材との間に下地層を形成するステップをさらに備えることが望ましい。これにより、密着性を向上することができる。
【0022】
上述の製造方法において前記第2の基板に第2の下地層を形成するステップをさらに備えることが望ましい。これにより、密着性を向上することができる。
【0023】
本発明にかかる接合基板の製造方法は第1の基板と第2の基板を接合させる接合基板の製造方法であって、前記第1の基板に凹部を設けるステップと、前記第2の基板における前記凹部に対応する位置に接合部材を形成するステップと、前記第1の基板と第2の基板を対向させるステップと、前記第1の基板又は第2の基板の少なくともいずれか一方が光透過性を有し、当該光透過性を有する基板を介して前記凹部にレーザー光を照射するステップを備えるものである。これにより、光透過性基板を高精度で密着性よく接合させることが可能になる。
【0024】
上述の製造方法において前記凹部に下地層を形成するステップをさらに備えることが望ましい。これにより、接合強度を向上することができる。
【0025】
上述の製造方法において前記第2の基板と前記接合部材との間に下地層を形成するステップをさらに備えることが望ましい。これにより、接合強度を向上することができる。
【0026】
本発明にかかる光回路基板の製造方法は第1の基板と第2の基板が接合された光回路基板であって、第1の基板又は第2の基板に光素子を形成するステップを備え、前記第1の基板と前記第2の基板を上述のいずれかの接合基板の製造方法により接合するものである。
本発明にかかる光モジュールの製造方法は上述の光回路基板の製造方法により接合基板を製造するステップと、前記接合基板をダイシングするステップを有するものである。
【0027】
本発明にかかる光透過性部材の接合方法は第1の部材と光透過性部材を有する第2の部材を接合させる光透過性部材の接合方法であって、前記第2の部材に凹部を設けるステップと、前記凹部に接合部材を形成するステップと、前記接合部を第1の部材に当接させるステップと、前記凹部にレーザー光を照射するステップを有するものである。これにより、高精度で密着性よく固定することが可能になる。
【0028】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態1.
本発明の実施の形態1にかかる接合基板の構成について図1、図2を用いて説明する。図1は本実施の形態にかかる接合基板の構成を示す平面図である。図2は本実施の形態にかかる接合基盤の構成を示す断面図であり、図1のA−A断面図である。1は光透過性基板、2は下地層、3は接合部材、5は凹部、6は空気穴、7はマイクロレンズ、8はアライメントマーク、9はレーザー光、11は光透過性基板である。
【0029】
光透過性基板1と光透過性基板11の中央付近にはマイクロレンズ7が設けられている。このマイクロレンズ7は光透過性基板1と光透過性基板11の対向する面の中央付近が各々凸レンズ形状に加工されることにより形成される。また光透過性基板1と光透過性基板11にはマイクロレンズ7の両側に凹部5が設けられている。光透過性基板1と光透過性基板11はアライメントマーク8によって位置合わせされる。光透過性基板1及び光透過性基板11に設けられた凹部5には接合部材3及び下地層2が設けられている。光透過性基板1側から紫外線のレーザー光9を凹部に照射して、接合部材3を溶融し光透過性基板1と光透過性基板11を接合させている。
【0030】
光透過性基板1には光の吸収が少ないガラス基板、石英基板等が用いられている。あるいはポリイミド基板を用いてもよい。またレーザー光を透過する材質であればよいのでニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、Ta2O5、Al2O3等のものを用いてもよい。レーザー光の波長を1100nm以上さらに望ましくは1300nm以上とすれば、この波長に対して吸収の少ないSi基板を用いることができる。また、基板の一部が光透過性を有する基板であってもよい。本実施の形態では光透過性基板1及び光透過性基板11も同じ石英から形成される。
【0031】
この石英等からなる光透過性基板1にマイクロレンズ7を形成する。マイクロレンズ7の形成には通常の方法を用いることができる。例えば、リソグラフでレジストを円形にパターンニングし、さらにレジスト部以外にCrを蒸着で0.3μm形成する。レジストを熱処理して球状化した後、ドライエッチングによりレンズのパターンを石英に転写する。マイクロレンズを形成後、Crを除去する。このようにしてマイクロレンズ7を形成することができる。もちろんこれ以外の方法を用いて基板と一体的にマイクロレンズ7を形成することも可能である。光透過性基板11にも同様の方法でマイクロレンズ7を形成している。本実施の形態ではさらに別の位置にリフトオフ法で位置合わせのためのアライメントマーク8を形成している。
【0032】
次に光透過性基板1に凹部5、下地層2、接合部材3を設ける工程について図3を用いて説明する。図3は製造工程を示す断面図である。図1、図2で付した符号と同一の符号は同一の構成を示すため、説明を省略する。4はレジストである。まず図3(a)に示すようにレジスト4のパターンを形成する。レジスト4は通常の露光、現像工程でパターニングすることができる。ポジ型レジスト、ネガ型レジストのどちらを用いてもよい。凹部5を形成する箇所に開口を有するようなパターンを形成する。そして、ドライエッチング、ウェットエッチング、プラズマ処理、物理的研磨等の方法を用いて、光透過性基板1に凹部5を形成する。中でも、エッチングによる方法が微細な凹部5を形成できるため、微細な加工が要求される場合に好適である。この凹部5を形成した状態は図3(b)に示すようになる。
【0033】
さらに蒸着、スパッタ、めっき処理などにより下地層2を設ける。この下地層2は光透過性基板1に対する接合力が接合部材3よりも高い材料により構成される。下地層2としては例えば、Ti、Pt、Au、Cr等の金属層あるいはこれらの合金層を用いることができる。また単層であってもよく、上述の金属層を積層してもよい。これにより、下地層2と光透過性基板1が強固に接合される。微細凹部への形成が容易である点及び接合力による点から蒸着法、スパッタ法により形成することが望ましい。この下地層2の上から接合部材3を設ける。例えば、接合部材3にはAu、Sn、Pb、Al、Zn等の金属層あるいはAu−Sn等のこれらの合金をめっき、蒸着、スパッタ処理により形成する。これにより、下地層2と接合部材3の金属が拡散接合されるため、接合部材3と光透過性基板1を直接接合する場合よりも、接合強度が高くなる。接合部材3はレーザー光の吸収率が高い材料とすることにより、短時間で接合を行うことができるようになる。また、接合部材3は下地層2より低い融点で溶融可能な金属材料を用いることが望ましい。この下地層2と接合部材3を形成した状態は図3(c)に示すようになる。
【0034】
次にレジスト4を除去するためフッ酸などを用いてリフトオフ処理を行う。この際レジスト4の上に設けられている下地層2及び接合部材3も同時に除去することができる。従って、凹部5のみに下地層2及び接合部材3が形成された状態となる。この状態を図3(d)に示す。以上の処理により、凹部5に下地層2と接合部材3が形成される。このようにリフトオフ法を用いることによって、容易に光透過性基板1の表面以下に接合部材3を形成することができる。従って、光透過性基板1と光透過性基板11を対向させて接合させた場合であっても、高さ方向の位置ずれを防ぐことができる。
【0035】
同様に光透過性基板11にも凹部5を設け、下地層2及び接合部材3を形成する。そして、図2に示すように光透過性基板1の凹部5が設けられている面と光透過性基板11の凹部5が設けられている面を対向させる。光透過性基板1の凹部5と光透過性基板11の凹部5は対向する位置に形成されている。この際にアライメントマーク8を用いることにより、正確に位置合わせすることができる。そして、光透過性基板1側から凹部5にレーザー光9を照射する。レーザー光9は下地層2に照射され、この下地層2を加熱する。この加熱に伴って、接合部材3の温度も上昇し、接合部材3の温度が融点以上となり接合部材3は溶融する。なお、下地層2は接合部材3より融点が高いため、溶融しない。そして、光透過性基板1の凹部5に設けられた接合部材3と光透過性基板11の凹部5に設けられた接合部材3が拡散する。レーザー光の照射を止めることにより、接合部材3の温度が融点以下になり、溶融状態から固体状態に戻り両基板の接合部材3が結合される。これにより、両基板を接合させることが出来る。もちろん違う方向から凹部5にレーザー光を照射してもよいし、下地層2がレーザー光9を透過する場合は接合部材3に直接照射、加熱されることになる。
【0036】
さらに下地層2がレーザー光9を吸収する場合であっても、下地層2の一部に開口を設けて直接接合部材3を照射してもよい。また、レーザー光9のパワー、波長等を調整することにより、常温環境下における短時間の接合が可能となる。さらにレーザー照射される領域が狭いことから、基板に熱膨張などの影響を及ぼさずに接合することができ、接合時間の短縮化を図ることができる。これにより、生産性も向上する。特に光透過性基板1の吸収が小さい波長のレーザー光9を用いることにより、基板の熱膨張の影響を小さくすることができる。また、光透過性基板1と光透過性基板11の両方に凹部5を設け、下地層2及び接合部材3を形成することにより、より強固な接合をすることが可能になる。
【0037】
また、凹部5の中に下地層2及び接合部材3を設けることにより、基板表面を平坦にすることができる。従って、2枚の基板を平行に接合することができる。これにより、高精度の接合が可能になりマイクロレンズ7の光学特性を劣化させることなく接合することができる。さらに、有機系接着剤ではなく金属材料を用いているため、環境に対する悪影響がなく長期間の保存での劣化もない。またUV樹脂等を用いて接合するよりも耐熱性も高く、後の工程で高温プロセス(ハンダリフロー等の電子回路実装技術等)を用いても位置ずれを起こすことがない。また、多数の基板の接合も容易に行うことができる。
【0038】
また、本実施の形態では図2に示すように凹部5から基板端まで空気穴6を設けている。この空気穴6はエッチング、物理的研磨等により光透過性基板1又は光透過性基板11に形成することが出来る。レーザーの照射で凹部5に含まれる空気が熱により膨張した場合であっても、空気が空気穴6から抜けていき、基板の接合に対する影響を防ぐことができる。これにより高精度で密着性の優れた接合を行うことが可能になる。
【0039】
接合部材3は光透過性基板1の表面の高さまで設ける必要はない。すなわち接合部材3を光透過性基板5の表面以下として凹部5に隙間を設けることも可能である。これにより、レーザー照射時の溶融により、接合部材3が熱膨張しても基板への影響を防ぐことができ、位置ずれが生じない。このようにして、より高精度に接合された接合基板を製造することができる。また、レーザー光9を照射するだけで接合することができるので、基板を多数積層した場合であっても接合を容易に行うことができる。
【0040】
本発明の実施の形態2.
実施の形態1では光透過性基板1及び光透過性基板11の両方とも石英からなる光透過性の基板を用いたが、一方が光透過性基板で他方が金属基板、セラミック基板等の光を透過しない基板である場合であっても接合することが可能である。本実施の形態では金属基板と光透過性基板の接合基板の一例を示している。図4は本実施の形態にかかる接合基板の構成を示す断面図であり、凹部周辺の拡大図である。図1、図2で付した符号と同一の符号は同一の構成を示すため説明を省略する。15は金属基板である。
【0041】
本実施の形態では金属基板15と光透過性基板1の接合部分を示しており、その他の構成は実施の形態1と同様であるため説明を省略する。本実施の形態では金属基板15を用いているため、接合部材3の金属が直接拡散接合される。よって、金属基板15には蒸着、スパッタ等により下地層を設けなくても密着性良く接合することが出来る。これにより、図4に示されるように光透過性基板1側にのみに凹部5を設けることにより実施の形態1と同様に接合基板を製造することができる。
【0042】
さらに光透過性基板1側からレーザー光を照射することにより、一方が光透過性基板1であって、他方が光を透過しない金属基板15である場合でも、実施の形態1と同様に精度良く接合することができる。また、金属基板15の代わりにセラミック基板を接合させる場合でも同様に接合することができる。セラミック基板との密着性が低い場合は実施の形態1と同様にセラミック基板に接合力の高い下地層2を設けてもよい。
【0043】
このような金属基板(セラミック基板)と光透過性基板の接合は基板の接合以外にも利用することができる。例えば、金属鏡筒内に円柱状の光透過性のガラスレンズを固定する際にも利用することができる。図5、図6を用いて金属鏡筒内に円柱型のガラスレンズを設けたレンズユニットの製造方法について説明する。図5はレンズユニットの構成を示す斜視図である。図6(a)はレンズユニットの横方向の断面図である。図6(b)はレンズユニットの高さ方向の断面図である。図1、図2で付した符号と同一の符号は同一の構成を示すため説明を省略する。17は金属鏡筒、18はレーザー照射口、19はガラスレンズである。
【0044】
円柱型のガラスレンズ19を金属鏡筒17の所定の位置まで挿入する。ガラスレンズ19には実施の形態1と同様に凹部5が設けられており、凹部5の中に下地層2、接合部材3が形成されている。金属鏡筒17にはこの凹部5にレーザー光を照射可能な位置にレーザー照射口18が設けられている。このレーザー照射口18から凹部5にレーザー光を照射し、接合部材3を溶融して接合する。一箇所に限らず二箇所以上に凹部5とレーザー照射口18を設けて複数箇所で接合してもよい。このように、基板の接合だけでなく金属鏡筒17とガラスレンズ19の接合にも利用することができ、レンズユニットを容易に製造することができる。ガラスレンズ19の凹部5内に接合部材3を形成することによって、接合部材がガラスレンズ19の表面以下となり金属鏡筒17内に容易に挿入することができ、精度よく接合させることが可能となる。もちろん、ガラスレンズ19は円柱型に限らず他の形状でもよい。
【0045】
本実施の形態にかかる金属部材と光透過性部材の接合方法は円柱型レンズ以外の形状、構成に対しても利用することができる。この場合、光透過性部材に設けられた凹部に接合部材を形成する。そして、その接合部材を金属部材に当接させて、レーザー光を照射すればよい。金属部材に限らずセラミック部材と光透過性部材を接合する接合方法に対しても利用することができる。このように接合することにより高精度で密着性よく接合することができる。
【0046】
発明の実施の形態3.
本実施の形態は上述の実施の形態で示した光透過性基板11側の構成を変更したものであり、これ以外の構成及び製造方法は上述の実施の形態と同様であるため説明を省略する。上述の実施の形態では凹部5に対応する位置にのみ下地層2が形成されていたが、本実施の形態では光透過性基板11の全面に下地層2を設けている。この構成について図7を用いて説明する。図7は凹部周辺の断面図である。図1、図2で付した符号と同一の符号は同一の構成を示すため説明を省略する。
【0047】
本実施の形態では光透過性基板11の表面に下地層2が形成されている。この下地層2は上述の実施の形態と同様に蒸着、スパッタ等により形成する。なお、マイクロレンズ7が設けられている部分の下地層2については、エッチングにより除去する。蒸着、スパッタでは面全体に均一に下地層2を形成することでき、また接合部材3のように溶融して面全体の均一性が劣化することがない。従って、下地層2が設けられている面を光透過性基板1の表面と接触させた状態で接合しても、高さ方向の位置ずれがなく、精度良く接合することが可能である。また図8に示すように光透過性基板11に下地層2を形成し、その上に凹部5に対応する接合部材3を形成した構成でもよい。このような構成であっても同様の効果を得ることが出来る。もちろん光透過性基板1側の表面に下地層2を設けても同様の効果を得ることができる。
【0048】
実施例1.
本実施例では光透過性基板同士を接合した接合基板の別の形態を示す。図9は本実施例にかかる接合基板の構成を示す凹部周辺の断面図である。図1、2で示した符号と同一の符号は同一の構成を示すので説明を省略する。本実施例にかかる接合基板は図1、図2に示した接合基板と凹部5周辺以外は同様の構成をしているため、説明を省略する。以下の接合基板の製造手順について説明する。
【0049】
実施の形態1と同様にマイクロレンズ7を光透過性基板1に形成した。より詳細にはリソグラフでレジストを円形にパターンニングし、さらにレジスト部以外にCrを蒸着で0.3μm形成した。レジストを熱処理して球状化した後、ドライエッチングによりマイクロレンズのパターンを石英に転写した。マイクロレンズを形成後、Crを除去した。以上の処理により、レンズ頂部が基板表面より低くなった基板一体型レンズを形成することが出来た。
【0050】
本実施例では、実施の形態1と同様に光透過性基板1に凹部5、下地層2、接合部材3を形成した。以下にその形成方法について詳細に説明する。光透過性基板1の上にレジスト4を塗布し、露光、現像により所定のパターンニングを行った。パターニングされた基板を硝酸第2セリウムアンモニウムに漬けて、パターニングされた領域だけCr膜をエッチバックした。以上の操作により、光透過性基板1に凹部5を形成する箇所のパターニングを行った。次にバッファードフッ酸に浸漬し、Cr膜が除去された部分のみ石英をエッチングして凹部5を設けた。凹部5の深さは0.3μmとした。
【0051】
本実施例では下地層2にTi、Pt、Auの3層を用いた。接合部材3にAu−Snを用いた。これらの膜厚はTi/Pt/Au/Au−Sn=0.1/0.1/0.3/1.0μmとなるように蒸着した。そしてリフトオフによりレジスト及びCr膜を除去した。以上の手順により図9に示すようにエッチングされた凹部5の部分にのみ下地層2と接合部材3(Ti/Pt/Au/Au−Sn)が形成され、基板表面より1.5μmの深さに接合部材3(Au−Sn層)が形成することができた。上述のように最下層をTiとすることにより、光透過性基板1との密着性を上げることができた。またPt層を設けることにより、TiにAuが拡散するのを防ぐことができた。AuはAu−Sn層との密着性を上げるために設けた。接合部材3は下地層2より融点を低くするためAu−Snとした。また、Au−Snは後のプロセス温度に影響を受けないようにすることが望ましい。また下地層2、接合部材3は上記の材料に限定されるものではない。例えば、接合部材3にはAu、Sn、Zn、Al、Pb又はこれらの合金を用いることもできる。
【0052】
本実施例では対向する光透過性基板11に凹部5を設けずに下地層2及び接合部材3を設けた。この下地層2と接合部材3により光透過性基板11の表面から突出する凸部16を形成した。この下地層2と接合部材3は光透過性基板1と同様にTi/Pt/Au/Au−Sn=0.1/0.1/0.3/1.0μmとなるように蒸着した。光透過性基板1と光透過性基板11を対向させた際に凹部5と同じ位置になるように凸部16をパターニングした。これにより、基板を接合する際に嵌合させることが出来た。そして、光透過性基板1側から凹部5にレーザー光9を照射し、接合部材3を結合させた。本実施例では光透過性基板1に設けられた凹部5と光透過性基板11に設けられた凸部16の位置は正確に一致しており、また凸凹が嵌合するために基板間に隙間が生じなかった。このような構成によっても実施の形態1と同様に接合基板を形成することも可能であった。本実施の形態では凸部16と凹部5をアライメントマークとして利用すること可能である。なお、本実施の形態で示した詳細な下地層2と接合部材3の構成を他の実施の形態において用いることが可能である。
【0053】
実施例2.
本実施例にかかる光回路基板について図10について説明する。図10は光回路基板の構成を示す断面図である。図1、図2で付した符号と同一の符号は同一の構成を示すので説明を省略する。12は半導体基板、13は面発光レーザー、14は光導波路である。本実施例にかかる光回路基板は光透過性基板11、光透過性基板1、半導体基板12の3層の基板から構成され、さらに光透過性基板11には光導波路14を設けた。半導体基板12はGaAs半導体であった。光透過性基板11及び光透過性基板1は実施の形態1と同様に石英基板であり、マイクロレンズ7をその中央付近に形成した。半導体基板12には面発光レーザー13(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を設けた。半導体基板12の面発光レーザー13が設けられている面には回路(図示せず)や配線(図示せず)が設けられおり、面発光レーザー13を駆動することができるようになっている。半導体基板12の面発光レーザー13が設けられている面と反対側の面には実施の形態1で説明した光透過性基板1を設けた。さらに光透過性基板1のマイクロレンズ7が設けられている面には光透過性基板11を設けた。面発光レーザー13から出射された光はマイクロレンズ7に入射されるように、光透過性基板1と半導体基板12は位置合わせして、接合した。マイクロレンズ7に入射した光は、光透過性基板11に設けられた光導波路14に集光されるようになっている。光を効率よく光導波路14に集光するためには、半導体基板12と光透過性基板1の接合及び光透過性基板1と光透過性基板11の接合を精度よく行い、面発光レーザー13、マイクロレンズ7、光導波路14の光軸を合わせる必要があるため、以下に示す工程で製造した。
【0054】
半導体基板12にレジストをパターニングし、エッチングにより所定の位置に凹部5を設けた。下地層2にはTi、Pt、Auの3層を蒸着した。接合部材3にはAu−Snを蒸着した。リフトオフ法でレジストを除去すると共に下地層2と接合部材3をパターニングした。それぞれの厚みはTi/Pt/Au/Au−Sn=0.1/0.1/0.3/1.0μmとした。なお、光透過性基板1にも同様に半導体基板12と接合する面及び光透過性基板11と接合する面の所定の位置に凹部5を形成した。凹部5には下地層2にTi、Pt、Auを、接合部材3にAu−Snを蒸着し、リフトオフ法でパターニングした。それぞれの厚みはTi/Pt/Au/Au−Sn=0.1/0.1/0.3/1.0μmとした。また光透過性基板11にも所定の位置に凹部5を設け、下地層Ti、Pt、Auと接合部材Au−Snを蒸着し、リフトオフ法でパターニングした。それぞれの厚みはTi/Pt/Au/Au−Sn=0.1/0.1/0.3/1.0μmとした。
【0055】
まず、半導体基板12と光透過性基板1を対向させ、凹部5にレーザー光を照射して接合部材3を溶融させ、半導体基板12と光透過性基板1を接合させた。さらに光透過性基板1のマイクロレンズ7が設けられている面と光透過性基板11のマイクロレンズ7が設けられている面を対向させ同様に接合させた。このように本発明は積層の基板の接合にも利用することが出来た。もちろん、3枚の基板を一度に位置合わせさせ、それぞれの凹部に順次又は同時にレーザー光を照射して接合させてもよい。このようにしても、高精度の接合を行うことができ、光回路基板の光学特性を向上させることができる。もちろん接合させる基板の枚数は3枚に限らず2枚又は4枚以上でもよい。
【0056】
なお、図10に示す例では、接合部は、光透過性基板11と光透過性基板1間及び光透過性基板1と半導体基板12間とで基板の主面に垂直な方向から見たときに重なるような位置に配置されているが、これに限らず互いにずらしてもよい。これにより、基板の上方からレーザー光を照射したとき、各接合部分に照射することができるため、一度に多数の基板を対向させて接合することができ製造工程を簡略化することができる。
【0057】
その他の実施の形態.
本発明は上述した実施例だけに限られず、様々な変更が可能である。例えば、実施の形態ではマイクロレンズ7が設けられている光透過性基板について説明したが、これに限定されるものではない。例えば面発光レーザー、フォトダイオード、LED、CCD、光導波路、マイクロミラー、マイクロフィルター、マイクロプリズム、光スイッチ等の光素子等が形成されていてもよい。もちろんマイクロレンズがアレイ状に設けられたマイクロレンズアレイ等を備える光透過性基板に利用することもできる。本発明は精度良く接合することができるため、高精度の位置合わせが要求される光モジュール、光デバイス等の光回路基板に用いることが好適である。さらに多数の光素子等が設けられた接合基板をダイシングしても多数の光デバイス、光モジュールを形成してもよい。光素子を一括して形成することが出来るため、生産性を向上することができる。もちろん、光素子以外の素子、回路が設けられている基板又は光素子が設けられていない基板に対しても利用することができる。
【0058】
なお、上述の例では基盤の上方からレーザー光を照射したが、これに限らず空気穴6の部分から照射するようにしてもよい。これにより。下地層6に妨げられることなく、直接接合部材3に対してレーザー光を照射することができる。また、下地層2は必ずしも凹部5の内側全域に設ける必要はない。即ち、凹部5の一部に下地層2を設けない領域を設けなくても良い。下地層2が設けられていない領域をレーザー光で照射することにより、直接に接合部材3に対してレーザー光を照射することができる。このように直接接合部材3にレーザー光を照射することにより、照射時間を短縮化することができる。
【0059】
凹部を設ける箇所に制限はなく、光素子等が設けられていない箇所に設ければよい。凹部の形状、大きさ、数にも特に制限はなく、必要な接合度を得ることができるよう形状、大きさ、数を調整すればよい。またそれぞれの実施の形態で示した接合基板の製造方法を組み合わせて用いることも可能である。
【0060】
上述のような接合方法を用いることにより、常温環境下で密着性の高い接合が可能となる。また基板表面より下に接合部材が設けられているため、高さ方向の位置ずれが生じない。さらに、レーザー照射により接合部材のみ溶融されて接合されるため、基板の温度上昇が低く熱膨張による水平方向の基板の位置ずれを抑えることが出来る。これにより、高精度の接合を行うことができる。このような接合方法は積層での基板接合も容易に行うことができる。有機系の接着剤、樹脂等を使用していないため、環境に対しての悪影響もない。さらに、長期間保存での劣化もなく、耐熱性も高いため、後の工程でハンダリフロー等の高温プロセスを用いても接合部に影響がない。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、高精度で密着性よく接合がされた接合基板及びそれを用いた光回路基板ならびにその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる接合基板の構成を示す上面図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる接合基板の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる接合基板の形成工程を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2にかかる接合基板の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかるレンズユニットの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかるレンズユニットの構成を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3にかかる接合基板の構成を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3にかかる接合基板の別の構成を示す断面図である。
【図9】本発明の実施例1にかかる接合基板の構成を示す断面図である。
【図10】本発明の実施例にかかる光回路基板の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 光透過性基板、2 下地層、3 接合部材、4 レジスト、5凹部、
6 空気穴、7 マイクロレンズ、8 アライメントマーク、
11 光透過性基板、12 GaAs基板、13 面発光レーザー、
14 光導波路、15 金属基板、16 凸部、17 金属鏡筒、
18 レーザー照射口、19 ガラスレンズ
【発明の属する技術分野】
本発明は、光透過性基板と基板を接合した接合基板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の光通信技術の発達により、基板上に光導波路等の光素子を備えた光デバイスが利用されている。この光導波路にレーザー光を効率よく集光させるため、光透過性基板の一部にマイクロレンズを形成することが考えられる。例えば、ガラス基板の一部を曲面とすることにより、光導波路にレーザー光を集光させることができる。しかし、1枚のガラス基板では、その厚さにより制限を受けるため十分に集光できない場合がある。このため、2枚のマイクロレンズを有する基板を接合して、2つのレンズを組み合わせて、集光させる方法が考えられる。
【0003】
この2枚の光透過性基板を接合させる方法には、従来から回路基板等に用いられている異種あるいは同種の基板を接合する方法を利用することが考えられる。この回路基板にはガラス等の光透過性基板、金属基板、セラミック基板等の多数の種類が用いられ、同種又は異種の基板を接合させている。以下、従来から用いられている回路基板の接合方法を利用する場合の問題点について説明する。
【0004】
例えば、Si基板とパイレックス(登録商標)ガラス基板の接合に用いられている陽極接合やSi基板とSi基板との接合に用いられている直接接合、界面接合がある。しかし、陽極接合、直接接合では高温状態としなければならないため、基板に金属配線パターンが設けられている場合は金属が溶融してしまうという問題点があった。また接合させる光透過性基板の材質が耐熱性を有するものに限定されてしまう。さらに陽極接合では高電圧が必要となってしまい処理が複雑化する。また、界面接合は室温で処理することも可能であるが真空処理やフッ酸処理等の複雑な処理が必要であった。
【0005】
この他の方法としては接着剤による接合が考えられる。この方法では室温環境下で手軽に接着することができる。しかし耐熱性が低く、有機系の接着剤を用いた場合は環境に対する悪影響が生じるという問題点がある。さらに、基板間に接着剤が残存して間隙が生じる。この接着剤を平坦に塗布することは困難であるため、光透過性基板が部分的に浮き上がってしまい隙間が生じ、平行に接合させることができなかった。この基板の高さ方向の位置ずれにより、マイクロレンズの光学特性が劣化するという問題があった。すなわち、マイクロレンズを透過する光の焦点が光導波路の位置からずれて光を光導波路に効率よく集光することができなかった。
【0006】
また、ガラス基板とガラス基板との間に光吸収薄材を設け、光を照射し接合させる方法が提案されている(例えば、特許文献1)しかし、この方法でも光透過性基板間に光吸収材が残存するため、高さ方向の位置ずれが生じ、マイクロレンズの光学特性を劣化させるということもあった。
【0007】
セラミックスと金属の取り付け方法ではあるが、セラミックスの表面に凹部を設け、その凹部に金属ろう材を配し、その部分を加熱してろう材を溶融し金属部材を接合する方法が提案されている(例えば、特許文献2)しかし、ろう材ではガラス等の光透過性基板との接合では十分な接合を得ることができないという問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−120259号公報
【特許文献2】
特開昭60−103083号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の基板の接合方法では、高精度で2枚の基板を密着性よく接合させることが困難であるという問題点があった。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、高精度で密着性よく接合がされた接合基板及びそれを用いた光回路基板並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる接合基板は、第1の基板(例えば、本発明の実施の形態にかかる光透過性基板1)と、前記第1の基板に設けられた凹部(例えば、本発明の実施の形態にかかる凹部5)と、前記第1の基板の凹部が設けられた面と対向して設けられた第2の基板(例えば、本発明の実施の形態にかかる光透過性基板11)と、前記凹部の中に形成された接合部材を備え、前記第1の基板または第2の基板の少なくともいずれか一方を透過する波長のレーザー光を照射することにより接合されたものである。これにより、高精度の接合を密着性よく行うことができる。
【0012】
前記接合部材と前記凹部の間に設けられ前記接合部材よりも第1の基板に対する接合力が高い材料により形成された下地層をさらに有する請求項1記載の接合基板。これにより、密着性を向上することができる。
【0013】
上述の接合基板において、前記接合部材と前記凹部の間に設けられ前記接合部材よりも第2の基板に対する接合力が高い材料により形成された下地層をさらに有することが望ましい。これにより、密着性を向上することができる。
上述の接合基板において前記第2の基板の前記第1の基板の凹部に対向する位置に接合部材を有する凹部を前記第2の基板上にさらに備えることが望ましい。これにより、密着性を向上することができる。
上述の接合基板において、前記第2の基板に設けられた前記接合部材と前記第2の基板の間に設けられ、前記接合部材よりも第2の基板に対する接合力が高い材料により形成された下地層を前記さらに有することが望ましい。これにより、密着性を向上することができる。
【0014】
上述の接合基板において前記凹部から前記第1の基板の端部まで設けられた空気穴をさらに備えていてもよい。これにより、レーザー照射時に凹部の空気の膨張による影響を防ぐことができる。
【0015】
上述の接合基板の好適な実施の形態は前記接合部材がAu、Sn、Al、Pb又はZnの少なくとも1種類を有する金属層若しくは合金層を備えるものである。これにより、低融点での溶融が可能になる。
【0016】
上述の接合基板の好適な実施の形態は前記下地層がCr、Ti、Pt又はAuの少なくとも1種類を有し、前記接合部材より高い融点を有するものである。これにより、接合強度を向上することができる。
【0017】
本発明にかかる光回路基板は上述のいずれかの接合基板と、前記接合基板に形成された光素子を備えたものである。
【0018】
さらに上述の光回路基板はダイシングすることにより光モジュールに用いることが好適である。
【0019】
本発明にかかる接合基板の製造方法は第1の基板と第2の基板が接合された接合基板の製造方法であって、前記第1の基板に凹部を設けるステップと、前記凹部に接合部材を形成するステップと、前記第1の基板の凹部が設けられた面と第2の基板を対向させるステップと、前記第1の基板又は第2の基板の少なくともいずれか一方が光透過性を有し、当該光透過性を有する基板を介して前記凹部にレーザー光を照射するステップを備えるものである。これにより、高精度で密着性よく基板を接合することができる。
【0020】
上述の接合基板の製造方法において前記凹部を設けるステップが、第1の基板にレジストを塗布するステップと、前記凹部を設ける箇所のレジストを除去するステップと、前記レジストが除去された箇所の前記第1の基板をエッチングにより前記凹部を設けるステップを備え、前記接合部材を形成するステップが、前記レジストの上及び前記凹部に前記接合部材を形成するステップと、前記レジストを除去するステップを有することが望ましい。これにより、容易に接合部材を第1の基板の表面以下にすることができる。
【0021】
上述の製造方法において前記凹部と前記接合部材との間に下地層を形成するステップをさらに備えることが望ましい。これにより、密着性を向上することができる。
【0022】
上述の製造方法において前記第2の基板に第2の下地層を形成するステップをさらに備えることが望ましい。これにより、密着性を向上することができる。
【0023】
本発明にかかる接合基板の製造方法は第1の基板と第2の基板を接合させる接合基板の製造方法であって、前記第1の基板に凹部を設けるステップと、前記第2の基板における前記凹部に対応する位置に接合部材を形成するステップと、前記第1の基板と第2の基板を対向させるステップと、前記第1の基板又は第2の基板の少なくともいずれか一方が光透過性を有し、当該光透過性を有する基板を介して前記凹部にレーザー光を照射するステップを備えるものである。これにより、光透過性基板を高精度で密着性よく接合させることが可能になる。
【0024】
上述の製造方法において前記凹部に下地層を形成するステップをさらに備えることが望ましい。これにより、接合強度を向上することができる。
【0025】
上述の製造方法において前記第2の基板と前記接合部材との間に下地層を形成するステップをさらに備えることが望ましい。これにより、接合強度を向上することができる。
【0026】
本発明にかかる光回路基板の製造方法は第1の基板と第2の基板が接合された光回路基板であって、第1の基板又は第2の基板に光素子を形成するステップを備え、前記第1の基板と前記第2の基板を上述のいずれかの接合基板の製造方法により接合するものである。
本発明にかかる光モジュールの製造方法は上述の光回路基板の製造方法により接合基板を製造するステップと、前記接合基板をダイシングするステップを有するものである。
【0027】
本発明にかかる光透過性部材の接合方法は第1の部材と光透過性部材を有する第2の部材を接合させる光透過性部材の接合方法であって、前記第2の部材に凹部を設けるステップと、前記凹部に接合部材を形成するステップと、前記接合部を第1の部材に当接させるステップと、前記凹部にレーザー光を照射するステップを有するものである。これにより、高精度で密着性よく固定することが可能になる。
【0028】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態1.
本発明の実施の形態1にかかる接合基板の構成について図1、図2を用いて説明する。図1は本実施の形態にかかる接合基板の構成を示す平面図である。図2は本実施の形態にかかる接合基盤の構成を示す断面図であり、図1のA−A断面図である。1は光透過性基板、2は下地層、3は接合部材、5は凹部、6は空気穴、7はマイクロレンズ、8はアライメントマーク、9はレーザー光、11は光透過性基板である。
【0029】
光透過性基板1と光透過性基板11の中央付近にはマイクロレンズ7が設けられている。このマイクロレンズ7は光透過性基板1と光透過性基板11の対向する面の中央付近が各々凸レンズ形状に加工されることにより形成される。また光透過性基板1と光透過性基板11にはマイクロレンズ7の両側に凹部5が設けられている。光透過性基板1と光透過性基板11はアライメントマーク8によって位置合わせされる。光透過性基板1及び光透過性基板11に設けられた凹部5には接合部材3及び下地層2が設けられている。光透過性基板1側から紫外線のレーザー光9を凹部に照射して、接合部材3を溶融し光透過性基板1と光透過性基板11を接合させている。
【0030】
光透過性基板1には光の吸収が少ないガラス基板、石英基板等が用いられている。あるいはポリイミド基板を用いてもよい。またレーザー光を透過する材質であればよいのでニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、Ta2O5、Al2O3等のものを用いてもよい。レーザー光の波長を1100nm以上さらに望ましくは1300nm以上とすれば、この波長に対して吸収の少ないSi基板を用いることができる。また、基板の一部が光透過性を有する基板であってもよい。本実施の形態では光透過性基板1及び光透過性基板11も同じ石英から形成される。
【0031】
この石英等からなる光透過性基板1にマイクロレンズ7を形成する。マイクロレンズ7の形成には通常の方法を用いることができる。例えば、リソグラフでレジストを円形にパターンニングし、さらにレジスト部以外にCrを蒸着で0.3μm形成する。レジストを熱処理して球状化した後、ドライエッチングによりレンズのパターンを石英に転写する。マイクロレンズを形成後、Crを除去する。このようにしてマイクロレンズ7を形成することができる。もちろんこれ以外の方法を用いて基板と一体的にマイクロレンズ7を形成することも可能である。光透過性基板11にも同様の方法でマイクロレンズ7を形成している。本実施の形態ではさらに別の位置にリフトオフ法で位置合わせのためのアライメントマーク8を形成している。
【0032】
次に光透過性基板1に凹部5、下地層2、接合部材3を設ける工程について図3を用いて説明する。図3は製造工程を示す断面図である。図1、図2で付した符号と同一の符号は同一の構成を示すため、説明を省略する。4はレジストである。まず図3(a)に示すようにレジスト4のパターンを形成する。レジスト4は通常の露光、現像工程でパターニングすることができる。ポジ型レジスト、ネガ型レジストのどちらを用いてもよい。凹部5を形成する箇所に開口を有するようなパターンを形成する。そして、ドライエッチング、ウェットエッチング、プラズマ処理、物理的研磨等の方法を用いて、光透過性基板1に凹部5を形成する。中でも、エッチングによる方法が微細な凹部5を形成できるため、微細な加工が要求される場合に好適である。この凹部5を形成した状態は図3(b)に示すようになる。
【0033】
さらに蒸着、スパッタ、めっき処理などにより下地層2を設ける。この下地層2は光透過性基板1に対する接合力が接合部材3よりも高い材料により構成される。下地層2としては例えば、Ti、Pt、Au、Cr等の金属層あるいはこれらの合金層を用いることができる。また単層であってもよく、上述の金属層を積層してもよい。これにより、下地層2と光透過性基板1が強固に接合される。微細凹部への形成が容易である点及び接合力による点から蒸着法、スパッタ法により形成することが望ましい。この下地層2の上から接合部材3を設ける。例えば、接合部材3にはAu、Sn、Pb、Al、Zn等の金属層あるいはAu−Sn等のこれらの合金をめっき、蒸着、スパッタ処理により形成する。これにより、下地層2と接合部材3の金属が拡散接合されるため、接合部材3と光透過性基板1を直接接合する場合よりも、接合強度が高くなる。接合部材3はレーザー光の吸収率が高い材料とすることにより、短時間で接合を行うことができるようになる。また、接合部材3は下地層2より低い融点で溶融可能な金属材料を用いることが望ましい。この下地層2と接合部材3を形成した状態は図3(c)に示すようになる。
【0034】
次にレジスト4を除去するためフッ酸などを用いてリフトオフ処理を行う。この際レジスト4の上に設けられている下地層2及び接合部材3も同時に除去することができる。従って、凹部5のみに下地層2及び接合部材3が形成された状態となる。この状態を図3(d)に示す。以上の処理により、凹部5に下地層2と接合部材3が形成される。このようにリフトオフ法を用いることによって、容易に光透過性基板1の表面以下に接合部材3を形成することができる。従って、光透過性基板1と光透過性基板11を対向させて接合させた場合であっても、高さ方向の位置ずれを防ぐことができる。
【0035】
同様に光透過性基板11にも凹部5を設け、下地層2及び接合部材3を形成する。そして、図2に示すように光透過性基板1の凹部5が設けられている面と光透過性基板11の凹部5が設けられている面を対向させる。光透過性基板1の凹部5と光透過性基板11の凹部5は対向する位置に形成されている。この際にアライメントマーク8を用いることにより、正確に位置合わせすることができる。そして、光透過性基板1側から凹部5にレーザー光9を照射する。レーザー光9は下地層2に照射され、この下地層2を加熱する。この加熱に伴って、接合部材3の温度も上昇し、接合部材3の温度が融点以上となり接合部材3は溶融する。なお、下地層2は接合部材3より融点が高いため、溶融しない。そして、光透過性基板1の凹部5に設けられた接合部材3と光透過性基板11の凹部5に設けられた接合部材3が拡散する。レーザー光の照射を止めることにより、接合部材3の温度が融点以下になり、溶融状態から固体状態に戻り両基板の接合部材3が結合される。これにより、両基板を接合させることが出来る。もちろん違う方向から凹部5にレーザー光を照射してもよいし、下地層2がレーザー光9を透過する場合は接合部材3に直接照射、加熱されることになる。
【0036】
さらに下地層2がレーザー光9を吸収する場合であっても、下地層2の一部に開口を設けて直接接合部材3を照射してもよい。また、レーザー光9のパワー、波長等を調整することにより、常温環境下における短時間の接合が可能となる。さらにレーザー照射される領域が狭いことから、基板に熱膨張などの影響を及ぼさずに接合することができ、接合時間の短縮化を図ることができる。これにより、生産性も向上する。特に光透過性基板1の吸収が小さい波長のレーザー光9を用いることにより、基板の熱膨張の影響を小さくすることができる。また、光透過性基板1と光透過性基板11の両方に凹部5を設け、下地層2及び接合部材3を形成することにより、より強固な接合をすることが可能になる。
【0037】
また、凹部5の中に下地層2及び接合部材3を設けることにより、基板表面を平坦にすることができる。従って、2枚の基板を平行に接合することができる。これにより、高精度の接合が可能になりマイクロレンズ7の光学特性を劣化させることなく接合することができる。さらに、有機系接着剤ではなく金属材料を用いているため、環境に対する悪影響がなく長期間の保存での劣化もない。またUV樹脂等を用いて接合するよりも耐熱性も高く、後の工程で高温プロセス(ハンダリフロー等の電子回路実装技術等)を用いても位置ずれを起こすことがない。また、多数の基板の接合も容易に行うことができる。
【0038】
また、本実施の形態では図2に示すように凹部5から基板端まで空気穴6を設けている。この空気穴6はエッチング、物理的研磨等により光透過性基板1又は光透過性基板11に形成することが出来る。レーザーの照射で凹部5に含まれる空気が熱により膨張した場合であっても、空気が空気穴6から抜けていき、基板の接合に対する影響を防ぐことができる。これにより高精度で密着性の優れた接合を行うことが可能になる。
【0039】
接合部材3は光透過性基板1の表面の高さまで設ける必要はない。すなわち接合部材3を光透過性基板5の表面以下として凹部5に隙間を設けることも可能である。これにより、レーザー照射時の溶融により、接合部材3が熱膨張しても基板への影響を防ぐことができ、位置ずれが生じない。このようにして、より高精度に接合された接合基板を製造することができる。また、レーザー光9を照射するだけで接合することができるので、基板を多数積層した場合であっても接合を容易に行うことができる。
【0040】
本発明の実施の形態2.
実施の形態1では光透過性基板1及び光透過性基板11の両方とも石英からなる光透過性の基板を用いたが、一方が光透過性基板で他方が金属基板、セラミック基板等の光を透過しない基板である場合であっても接合することが可能である。本実施の形態では金属基板と光透過性基板の接合基板の一例を示している。図4は本実施の形態にかかる接合基板の構成を示す断面図であり、凹部周辺の拡大図である。図1、図2で付した符号と同一の符号は同一の構成を示すため説明を省略する。15は金属基板である。
【0041】
本実施の形態では金属基板15と光透過性基板1の接合部分を示しており、その他の構成は実施の形態1と同様であるため説明を省略する。本実施の形態では金属基板15を用いているため、接合部材3の金属が直接拡散接合される。よって、金属基板15には蒸着、スパッタ等により下地層を設けなくても密着性良く接合することが出来る。これにより、図4に示されるように光透過性基板1側にのみに凹部5を設けることにより実施の形態1と同様に接合基板を製造することができる。
【0042】
さらに光透過性基板1側からレーザー光を照射することにより、一方が光透過性基板1であって、他方が光を透過しない金属基板15である場合でも、実施の形態1と同様に精度良く接合することができる。また、金属基板15の代わりにセラミック基板を接合させる場合でも同様に接合することができる。セラミック基板との密着性が低い場合は実施の形態1と同様にセラミック基板に接合力の高い下地層2を設けてもよい。
【0043】
このような金属基板(セラミック基板)と光透過性基板の接合は基板の接合以外にも利用することができる。例えば、金属鏡筒内に円柱状の光透過性のガラスレンズを固定する際にも利用することができる。図5、図6を用いて金属鏡筒内に円柱型のガラスレンズを設けたレンズユニットの製造方法について説明する。図5はレンズユニットの構成を示す斜視図である。図6(a)はレンズユニットの横方向の断面図である。図6(b)はレンズユニットの高さ方向の断面図である。図1、図2で付した符号と同一の符号は同一の構成を示すため説明を省略する。17は金属鏡筒、18はレーザー照射口、19はガラスレンズである。
【0044】
円柱型のガラスレンズ19を金属鏡筒17の所定の位置まで挿入する。ガラスレンズ19には実施の形態1と同様に凹部5が設けられており、凹部5の中に下地層2、接合部材3が形成されている。金属鏡筒17にはこの凹部5にレーザー光を照射可能な位置にレーザー照射口18が設けられている。このレーザー照射口18から凹部5にレーザー光を照射し、接合部材3を溶融して接合する。一箇所に限らず二箇所以上に凹部5とレーザー照射口18を設けて複数箇所で接合してもよい。このように、基板の接合だけでなく金属鏡筒17とガラスレンズ19の接合にも利用することができ、レンズユニットを容易に製造することができる。ガラスレンズ19の凹部5内に接合部材3を形成することによって、接合部材がガラスレンズ19の表面以下となり金属鏡筒17内に容易に挿入することができ、精度よく接合させることが可能となる。もちろん、ガラスレンズ19は円柱型に限らず他の形状でもよい。
【0045】
本実施の形態にかかる金属部材と光透過性部材の接合方法は円柱型レンズ以外の形状、構成に対しても利用することができる。この場合、光透過性部材に設けられた凹部に接合部材を形成する。そして、その接合部材を金属部材に当接させて、レーザー光を照射すればよい。金属部材に限らずセラミック部材と光透過性部材を接合する接合方法に対しても利用することができる。このように接合することにより高精度で密着性よく接合することができる。
【0046】
発明の実施の形態3.
本実施の形態は上述の実施の形態で示した光透過性基板11側の構成を変更したものであり、これ以外の構成及び製造方法は上述の実施の形態と同様であるため説明を省略する。上述の実施の形態では凹部5に対応する位置にのみ下地層2が形成されていたが、本実施の形態では光透過性基板11の全面に下地層2を設けている。この構成について図7を用いて説明する。図7は凹部周辺の断面図である。図1、図2で付した符号と同一の符号は同一の構成を示すため説明を省略する。
【0047】
本実施の形態では光透過性基板11の表面に下地層2が形成されている。この下地層2は上述の実施の形態と同様に蒸着、スパッタ等により形成する。なお、マイクロレンズ7が設けられている部分の下地層2については、エッチングにより除去する。蒸着、スパッタでは面全体に均一に下地層2を形成することでき、また接合部材3のように溶融して面全体の均一性が劣化することがない。従って、下地層2が設けられている面を光透過性基板1の表面と接触させた状態で接合しても、高さ方向の位置ずれがなく、精度良く接合することが可能である。また図8に示すように光透過性基板11に下地層2を形成し、その上に凹部5に対応する接合部材3を形成した構成でもよい。このような構成であっても同様の効果を得ることが出来る。もちろん光透過性基板1側の表面に下地層2を設けても同様の効果を得ることができる。
【0048】
実施例1.
本実施例では光透過性基板同士を接合した接合基板の別の形態を示す。図9は本実施例にかかる接合基板の構成を示す凹部周辺の断面図である。図1、2で示した符号と同一の符号は同一の構成を示すので説明を省略する。本実施例にかかる接合基板は図1、図2に示した接合基板と凹部5周辺以外は同様の構成をしているため、説明を省略する。以下の接合基板の製造手順について説明する。
【0049】
実施の形態1と同様にマイクロレンズ7を光透過性基板1に形成した。より詳細にはリソグラフでレジストを円形にパターンニングし、さらにレジスト部以外にCrを蒸着で0.3μm形成した。レジストを熱処理して球状化した後、ドライエッチングによりマイクロレンズのパターンを石英に転写した。マイクロレンズを形成後、Crを除去した。以上の処理により、レンズ頂部が基板表面より低くなった基板一体型レンズを形成することが出来た。
【0050】
本実施例では、実施の形態1と同様に光透過性基板1に凹部5、下地層2、接合部材3を形成した。以下にその形成方法について詳細に説明する。光透過性基板1の上にレジスト4を塗布し、露光、現像により所定のパターンニングを行った。パターニングされた基板を硝酸第2セリウムアンモニウムに漬けて、パターニングされた領域だけCr膜をエッチバックした。以上の操作により、光透過性基板1に凹部5を形成する箇所のパターニングを行った。次にバッファードフッ酸に浸漬し、Cr膜が除去された部分のみ石英をエッチングして凹部5を設けた。凹部5の深さは0.3μmとした。
【0051】
本実施例では下地層2にTi、Pt、Auの3層を用いた。接合部材3にAu−Snを用いた。これらの膜厚はTi/Pt/Au/Au−Sn=0.1/0.1/0.3/1.0μmとなるように蒸着した。そしてリフトオフによりレジスト及びCr膜を除去した。以上の手順により図9に示すようにエッチングされた凹部5の部分にのみ下地層2と接合部材3(Ti/Pt/Au/Au−Sn)が形成され、基板表面より1.5μmの深さに接合部材3(Au−Sn層)が形成することができた。上述のように最下層をTiとすることにより、光透過性基板1との密着性を上げることができた。またPt層を設けることにより、TiにAuが拡散するのを防ぐことができた。AuはAu−Sn層との密着性を上げるために設けた。接合部材3は下地層2より融点を低くするためAu−Snとした。また、Au−Snは後のプロセス温度に影響を受けないようにすることが望ましい。また下地層2、接合部材3は上記の材料に限定されるものではない。例えば、接合部材3にはAu、Sn、Zn、Al、Pb又はこれらの合金を用いることもできる。
【0052】
本実施例では対向する光透過性基板11に凹部5を設けずに下地層2及び接合部材3を設けた。この下地層2と接合部材3により光透過性基板11の表面から突出する凸部16を形成した。この下地層2と接合部材3は光透過性基板1と同様にTi/Pt/Au/Au−Sn=0.1/0.1/0.3/1.0μmとなるように蒸着した。光透過性基板1と光透過性基板11を対向させた際に凹部5と同じ位置になるように凸部16をパターニングした。これにより、基板を接合する際に嵌合させることが出来た。そして、光透過性基板1側から凹部5にレーザー光9を照射し、接合部材3を結合させた。本実施例では光透過性基板1に設けられた凹部5と光透過性基板11に設けられた凸部16の位置は正確に一致しており、また凸凹が嵌合するために基板間に隙間が生じなかった。このような構成によっても実施の形態1と同様に接合基板を形成することも可能であった。本実施の形態では凸部16と凹部5をアライメントマークとして利用すること可能である。なお、本実施の形態で示した詳細な下地層2と接合部材3の構成を他の実施の形態において用いることが可能である。
【0053】
実施例2.
本実施例にかかる光回路基板について図10について説明する。図10は光回路基板の構成を示す断面図である。図1、図2で付した符号と同一の符号は同一の構成を示すので説明を省略する。12は半導体基板、13は面発光レーザー、14は光導波路である。本実施例にかかる光回路基板は光透過性基板11、光透過性基板1、半導体基板12の3層の基板から構成され、さらに光透過性基板11には光導波路14を設けた。半導体基板12はGaAs半導体であった。光透過性基板11及び光透過性基板1は実施の形態1と同様に石英基板であり、マイクロレンズ7をその中央付近に形成した。半導体基板12には面発光レーザー13(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を設けた。半導体基板12の面発光レーザー13が設けられている面には回路(図示せず)や配線(図示せず)が設けられおり、面発光レーザー13を駆動することができるようになっている。半導体基板12の面発光レーザー13が設けられている面と反対側の面には実施の形態1で説明した光透過性基板1を設けた。さらに光透過性基板1のマイクロレンズ7が設けられている面には光透過性基板11を設けた。面発光レーザー13から出射された光はマイクロレンズ7に入射されるように、光透過性基板1と半導体基板12は位置合わせして、接合した。マイクロレンズ7に入射した光は、光透過性基板11に設けられた光導波路14に集光されるようになっている。光を効率よく光導波路14に集光するためには、半導体基板12と光透過性基板1の接合及び光透過性基板1と光透過性基板11の接合を精度よく行い、面発光レーザー13、マイクロレンズ7、光導波路14の光軸を合わせる必要があるため、以下に示す工程で製造した。
【0054】
半導体基板12にレジストをパターニングし、エッチングにより所定の位置に凹部5を設けた。下地層2にはTi、Pt、Auの3層を蒸着した。接合部材3にはAu−Snを蒸着した。リフトオフ法でレジストを除去すると共に下地層2と接合部材3をパターニングした。それぞれの厚みはTi/Pt/Au/Au−Sn=0.1/0.1/0.3/1.0μmとした。なお、光透過性基板1にも同様に半導体基板12と接合する面及び光透過性基板11と接合する面の所定の位置に凹部5を形成した。凹部5には下地層2にTi、Pt、Auを、接合部材3にAu−Snを蒸着し、リフトオフ法でパターニングした。それぞれの厚みはTi/Pt/Au/Au−Sn=0.1/0.1/0.3/1.0μmとした。また光透過性基板11にも所定の位置に凹部5を設け、下地層Ti、Pt、Auと接合部材Au−Snを蒸着し、リフトオフ法でパターニングした。それぞれの厚みはTi/Pt/Au/Au−Sn=0.1/0.1/0.3/1.0μmとした。
【0055】
まず、半導体基板12と光透過性基板1を対向させ、凹部5にレーザー光を照射して接合部材3を溶融させ、半導体基板12と光透過性基板1を接合させた。さらに光透過性基板1のマイクロレンズ7が設けられている面と光透過性基板11のマイクロレンズ7が設けられている面を対向させ同様に接合させた。このように本発明は積層の基板の接合にも利用することが出来た。もちろん、3枚の基板を一度に位置合わせさせ、それぞれの凹部に順次又は同時にレーザー光を照射して接合させてもよい。このようにしても、高精度の接合を行うことができ、光回路基板の光学特性を向上させることができる。もちろん接合させる基板の枚数は3枚に限らず2枚又は4枚以上でもよい。
【0056】
なお、図10に示す例では、接合部は、光透過性基板11と光透過性基板1間及び光透過性基板1と半導体基板12間とで基板の主面に垂直な方向から見たときに重なるような位置に配置されているが、これに限らず互いにずらしてもよい。これにより、基板の上方からレーザー光を照射したとき、各接合部分に照射することができるため、一度に多数の基板を対向させて接合することができ製造工程を簡略化することができる。
【0057】
その他の実施の形態.
本発明は上述した実施例だけに限られず、様々な変更が可能である。例えば、実施の形態ではマイクロレンズ7が設けられている光透過性基板について説明したが、これに限定されるものではない。例えば面発光レーザー、フォトダイオード、LED、CCD、光導波路、マイクロミラー、マイクロフィルター、マイクロプリズム、光スイッチ等の光素子等が形成されていてもよい。もちろんマイクロレンズがアレイ状に設けられたマイクロレンズアレイ等を備える光透過性基板に利用することもできる。本発明は精度良く接合することができるため、高精度の位置合わせが要求される光モジュール、光デバイス等の光回路基板に用いることが好適である。さらに多数の光素子等が設けられた接合基板をダイシングしても多数の光デバイス、光モジュールを形成してもよい。光素子を一括して形成することが出来るため、生産性を向上することができる。もちろん、光素子以外の素子、回路が設けられている基板又は光素子が設けられていない基板に対しても利用することができる。
【0058】
なお、上述の例では基盤の上方からレーザー光を照射したが、これに限らず空気穴6の部分から照射するようにしてもよい。これにより。下地層6に妨げられることなく、直接接合部材3に対してレーザー光を照射することができる。また、下地層2は必ずしも凹部5の内側全域に設ける必要はない。即ち、凹部5の一部に下地層2を設けない領域を設けなくても良い。下地層2が設けられていない領域をレーザー光で照射することにより、直接に接合部材3に対してレーザー光を照射することができる。このように直接接合部材3にレーザー光を照射することにより、照射時間を短縮化することができる。
【0059】
凹部を設ける箇所に制限はなく、光素子等が設けられていない箇所に設ければよい。凹部の形状、大きさ、数にも特に制限はなく、必要な接合度を得ることができるよう形状、大きさ、数を調整すればよい。またそれぞれの実施の形態で示した接合基板の製造方法を組み合わせて用いることも可能である。
【0060】
上述のような接合方法を用いることにより、常温環境下で密着性の高い接合が可能となる。また基板表面より下に接合部材が設けられているため、高さ方向の位置ずれが生じない。さらに、レーザー照射により接合部材のみ溶融されて接合されるため、基板の温度上昇が低く熱膨張による水平方向の基板の位置ずれを抑えることが出来る。これにより、高精度の接合を行うことができる。このような接合方法は積層での基板接合も容易に行うことができる。有機系の接着剤、樹脂等を使用していないため、環境に対しての悪影響もない。さらに、長期間保存での劣化もなく、耐熱性も高いため、後の工程でハンダリフロー等の高温プロセスを用いても接合部に影響がない。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、高精度で密着性よく接合がされた接合基板及びそれを用いた光回路基板ならびにその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる接合基板の構成を示す上面図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる接合基板の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる接合基板の形成工程を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2にかかる接合基板の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかるレンズユニットの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかるレンズユニットの構成を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3にかかる接合基板の構成を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3にかかる接合基板の別の構成を示す断面図である。
【図9】本発明の実施例1にかかる接合基板の構成を示す断面図である。
【図10】本発明の実施例にかかる光回路基板の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 光透過性基板、2 下地層、3 接合部材、4 レジスト、5凹部、
6 空気穴、7 マイクロレンズ、8 アライメントマーク、
11 光透過性基板、12 GaAs基板、13 面発光レーザー、
14 光導波路、15 金属基板、16 凸部、17 金属鏡筒、
18 レーザー照射口、19 ガラスレンズ
Claims (20)
- 凹部が設けられた第1の基板と、
前記第1の基板の凹部が設けられた面と対向して設けられた第2の基板と、
前記凹部の中に形成され、レーザー光により溶融可能な接合部材を備え、
前記第1の基板または第2の基板の少なくともいずれか一方を透過する波長のレーザー光を前記凹部に照射することにより接合された接合基板。 - 前記接合部材と前記凹部の間に設けられ前記接合部材よりも第1の基板に対する接合力が高い材料により形成された下地層をさらに有する請求項1記載の接合基板。
- 前記接合部材と前記凹部の間に設けられ前記接合部材よりも第2の基板に対する接合力が高い材料により形成された下地層を前記第2の基板上に有する請求項1記載の接合基板。
- 前記第2の基板の前記第1の基板の凹部に対向する位置に接合部材を有する凹部をさらに備えた請求項1又は2記載の接合基板。
- 前記第2の基板に設けられた前記接合部材と前記第2の基板の間に設けられ、前記接合部材よりも第2の基板に対する接合力が高い材料により形成された下地層をさらに有する請求項4記載の接合基板。
- 前記凹部から前記第1の基板の端部まで設けられた空気穴をさらに備える請求項1乃至3いずれかに記載の接合基板。
- 前記接合部材がAu、Sn、Al、Pb又はZnの少なくとも1種類を有する金属層もしくは合金層を備えることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の接合基板。
- 前記下地層がCr、Ti、Pt又はAuの少なくとも1種類を有し、前記接合部材より高い融点を有することを特徴とする請求項2乃至7いずれかに記載の接合基板。
- 請求項1乃至8いずれか記載の接合基板と、
前記接合基板に形成された光素子を備える光回路基板。 - 請求項9記載の光回路基板をダイシングすることにより得られる光モジュール。
- 第1の基板と第2の基板が接合された接合基板の製造方法であって、
前記第1の基板に凹部を設けるステップと、
前記凹部に接合部材を形成するステップと、
前記第1の基板の凹部が設けられた面と第2の基板を対向させるステップと、前記第1の基板又は第2の基板の少なくともいずれか一方が光透過性を有し、当該光透過性を有する基板を介して前記凹部にレーザー光を照射するステップを備える接合基板の製造方法。 - 前記凹部を設けるステップが、
第1の基板にレジストを塗布するステップと、
前記凹部を設ける箇所のレジストを除去するステップと、
前記レジストが除去された箇所の前記第1の基板をエッチングにより前記凹部を形成するステップを備え、
前記接合部材を形成するステップが、
前記レジストの上及び前記凹部に前記接合部材を形成するステップと、
前記レジストを除去するステップを有する請求項11記載の接合基板の製造方法。 - 前記凹部と前記接合部材との間に下地層を形成するステップを備える請求項11記載の接合基板の製造方法。
- 前記第2の基板に下地層を形成するステップを備える請求項11乃至13いずれかに記載の接合基板の製造方法。
- 第1の基板と第2の基板が接合された接合基板の製造方法であって、
前記第1の基板に凹部を設けるステップと、
前記第2の基板における前記凹部に対応する位置に接合部材を形成するステップと、
前記第1の基板と第2の基板を対向させるステップと、
前記第1の基板又は第2の基板の少なくともいずれか一方が光透過性を有し、当該光透過性を有する基板を介して前記凹部にレーザー光を照射するステップを備える接合基板の製造方法。 - 前記凹部に下地層を形成するステップを備える請求項15記載の接合基板の製造方法。
- 前記第2の基板と前記接合部材との間に下地層を形成するステップを備える請求項15又は16記載の接合基板の製造方法。
- 第1の基板と第2の基板が接合された光回路基板の製造方法であって、
第1の基板又は第2の基板の少なくともいずれか一方に光素子を形成するステップを備え、
前記第1の基板と前記第2の基板を請求項11乃至17いずれかに記載の接合基板の製造方法により接合された光回路基板の製造方法。 - 請求項18記載の光回路基板の製造方法により光回路基板を製造するステップと、
前記接合基板をダイシングするステップを有する光モジュールの製造方法。 - 第1の部材と光透過性部材を有する第2の部材を接合させる光透過性部材の接合方法であって、
前記第2の部材に凹部を設けるステップと、
前記凹部に接合部材を形成するステップと、
前記接合部を第1の部材に当接させるステップと、
前記凹部にレーザー光を照射するステップを有する光透過性部材の接合方法。
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