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JP2004218145A - インクジェットプリント用基材およびその製造方法 - Google Patents

インクジェットプリント用基材およびその製造方法 Download PDF

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JP2004218145A JP2003007132A JP2003007132A JP2004218145A JP 2004218145 A JP2004218145 A JP 2004218145A JP 2003007132 A JP2003007132 A JP 2003007132A JP 2003007132 A JP2003007132 A JP 2003007132A JP 2004218145 A JP2004218145 A JP 2004218145A
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Abstract

【課題】破れにくく、裂けにくく、折れ跡がつきにくい上に、耐水性に優れ、しかも繊維の特徴を損なわず、屋内および屋外でも使用できるインクジェットプリント用繊維布帛であって、凹凸のある繊維布帛や、インクが裏通りするような薄手の繊維布帛なども使用でき、インクジェット方式でのプリント性に優れたインクジェットプリント用基材を提供する。
【解決手段】本発明のインクジェットプリント用基材10は、繊維布帛11と、繊維布帛11の少なくとも片面に貼り合せられたインク吸収層12とを有し、インク吸収層12が無機系粉体または有機系粉体を含むであって、繊維布帛11とインク吸収12層とがラミネートされたものである。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリント用基材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリント用基材には、一般的に、紙やフィルムが用いられてきた。インクジェットプリント用基材として用いられる紙やフィルムにおいては、にじみを防止し、発色性をアップさせてプリント性を向上させる目的で、プリント面にクレー、炭酸カルシウム、タルクなどの充填材と澱粉、ポリビニルアルコールなどの糊剤との組成物からなる塗工液で表面処理することがあり、これにより印画性の優れたものも開発されている。
しかしながら、紙やフィルムでは折れ跡が発生し易く、破れたり、裂けたりし易かった。特に、紙では、水等に濡れることを前提としていないため耐水性に劣り、そのままではOA用紙等の屋内での利用に限定され、用途が制限されていた。
【0003】
この問題を解決するために、繊維布帛を用いたインクジェットプリント用基材が検討されている。しかしながら、繊維布帛は繊維組織が粗いために、紙やフィルムに比較して平滑性に乏しくて凹凸があり、プリントに十分に適していなかった。さらには、インクジェット方式によるインク滴は、ある一点から周辺の広い範囲へ毛細管現象によって浸透するが、繊維布帛を用いたインクジェットプリント用基材では、内部に浸透する傾向が大きすぎてかえってプリント性を低下させることがあった。
また、一般に繊維布帛は柔らかいため、硬さ、ハリ、コシがある紙やフィルムのように支持体を設けずにインクジェットプリントすることが困難である上に、インクジェットプリントの際の圧力で繊維布帛が動き、プリント位置がずれることがあった。また、繊維布帛によっては、繊維布帛をインクが印刷面からその裏面に通過する裏通り現象を生じることがあり、使用できる繊維布帛が限定されていた。
このため、繊維布帛に印刷する場合には、凹凸の影響を受けにくいスクリーン印刷をするのが一般的であり、その際、顔料や染料を元糊、バインダーに混合したある程度高い粘度を有するインクを使用することで、毛細管現象による浸透(泣き出し現象)を防ぐなどの対策が採られていた。また、スクリーン印刷は、テーブル、ベルトに貼り付けた状態で印刷をするので、繊維布帛の硬さ、ハリ、コシが小さいことの影響を受けることがなかった。しかしながら、スクリーン印刷では、トレース等による製版でスクリーンを準備する必要があり、複雑な工程を経なければならず、また、機械装置も大がかりなものとなる。
【0004】
ところで、繊維布帛が、紙、フィルムに近いような、平滑な表面外観、硬さ、ハリ、コシを有していたとしても、にじみ防止やプリント性を向上させるための改善が必要である。
その改善方法としては、例えば、多孔性微粉末をポリウレタン樹脂に配合させた樹脂液を繊維布帛にコーティングして湿式凝固させた技術が開示されている(特許文献1)。また、一次粒子が網目構造や鎖状となっている気相法シリカを含む樹脂液を含浸またはコーティングする技術が開示されている(特許文献2)。
また、表面の平滑性を高めることを目的として、下記の紙の技術を繊維布帛に応用することが考えられる。すなわち、インク吸収層に相当する樹脂層を形成した後、乾燥途中で平滑なフィルムを重ね合わせて乾燥後に平滑なフィルムを剥離するという合成紙の技術(特許文献3)、軽質炭酸カルシウム含有樹脂をキャストコーティングした後に、鏡面加工された円筒外面を圧接させる中性紙の技術(特許文献4)。また、少なくとも2層以上からなるインク吸収層に相当する樹脂層を形成した和紙やキャンパス地の技術(特許文献5)を適用する。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−017579号
【特許文献2】
特開2001−089981号
【特許文献3】
特開平09−136483号
【特許文献4】
特開2001−146070号
【特許文献5】
特開2001−328364号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1または特許文献2に記載の技術では、樹脂液を含浸やダイレクトコーティングするので、繊維表面から内部にまで樹脂液がしみこむようになり、例えば、表面が平滑性のある繊維布帛であれば、にじみ防止やプリント性が向上するものの、凹凸のある繊維布帛を用いた場合には樹脂液をしみこませても表面の凹凸は残るので印刷が困難であった。また、薄手の繊維布帛の裏通り現象を解決できず、使用可能な繊維布帛が限定されていた。さらに、裏通り現象を抑制するために厚くコーティングした場合には、繊維布帛の特徴を損ねていた。
また、樹脂液をダイレクトコーティングやキャストコーティングした場合には、繊維表面から内部にまで樹脂液がしみこみやすいので、特許文献3,4の技術のように平滑な面を圧接しても、凹凸の大きい繊維布帛や、インクが裏通りするような薄手の繊維布帛を用いたインクジェットプリント用基材表面を平滑にすることは困難であった上に、薄手の繊維布帛では樹脂層が支持体としての役目を果たすことはなかった。また、特許文献5の技術のように、2層以上からなるインク吸収層を設けることは、工程が増えるだけでなく、薄手の繊維布帛を用いた場合にはインクの裏通り現象を解決できないといった問題を有していた。つまり、特許文献3〜5に記載の技術を、繊維布帛を用いたインクジェットプリント用基材の製造に適用することは難しかった。
【0007】
本発明は前記事情を鑑みてなされたものであり、破れにくく、裂けにくく、折れ跡がつきにくい上に、耐水性に優れ、しかも繊維の特徴を損なわず、屋内および屋外でも使用できるインクジェットプリント用繊維布帛であって、凹凸のある繊維布帛や、インクが裏通りするような薄手の繊維布帛なども使用でき、インクジェット方式でのプリント性に優れたインクジェットプリント用基材を提供することを目的とする。さらには、その製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェットプリント用基材は、繊維布帛と、繊維布帛の少なくとも片面に貼り合せられたインク吸収層とを有し、前記インク吸収層が無機系粉体または有機系粉体を含むであって、繊維布帛とインク吸収層とがラミネートされたものであることを特徴とする。
本発明のインクジェットプリント用基材においては、前記インク吸収層がさらに顔料を含むことができる。
また、前記インク吸収層がポリウレタン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂を含むことができる。
【0009】
本発明のインクジェットプリント用基材の製造方法は、繊維布帛と、無機系粉体または有機系粉体を含むインク吸収層とをラミネート加工することを特徴とする。
本願請求項5のインクジェットプリント用基材の製造方法は、無機系粉体または有機系粉体を含む樹脂液を離型シート上に付与し、インク吸収層を形成する工程と、前記インク吸収層上に接着剤を付与し、この接着剤を介してインク吸収層上に繊維布帛を貼り合わせる工程と、離型シートを剥離する工程とを有することを特徴とする。
また、本願請求項6のインクジェットプリント用基材の製造方法は、無機系粉体または有機系粉体を含む樹脂液を離型シート上に付与し、インク吸収層を形成する工程と、繊維布帛上に接着剤を付与し、この接着剤を介して繊維布帛上にインク吸収層を貼り合わせる工程と、離型シートを剥離する工程とを有することを特徴とする。
上述したインクジェットプリント用基材の製造方法においては、前記樹脂液が、ポリウレタン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂を含むことができる。
【0010】
本発明では、インク吸収層(本発明ではインク吸収層をなす樹脂層とは、インク吸収層と支持層等の双方の役目もするものであって、1層で併用するものでも2層以上に分担されているものでもよい)と繊維布帛とをラミネート加工によって貼り合わせてインクジェットプリント用基材を得ることで目的が達成される。
すなわち、含浸やダイレクトコーティングによってインク吸収層を形成しようとすると、例えば、繊維布帛に凹凸があった場合、インク吸収層としての役目も果たすべき樹脂液は、繊維布帛の表面に凹凸が残ったままで内部にまで浸透する。その結果、インクジェットプリント用基材の断面においては、インク吸収層と繊維布帛の層は、場所によって厚さが異なることとなり、いわゆる、住みわけが明確でなくなってしまう。
これに対して、本発明は、平滑なインク吸収層(樹脂層)をあらかじめ形成して、繊維布帛に貼り合せる方法であるので、住みわけが明確となり、さらに、インク吸収層である樹脂層が支持体としての役目も果たして繊維布帛を支えることができる。その結果、繊維布帛に凹凸を有している場合であっても、インクが裏通りするような薄手の繊維布帛であっても、紙、フィルムと同等に平滑性を有し、インクジェットプリントの際の圧力による動きを阻止し、プリント場所の固定化もされるので、あらゆる繊維布帛に対応できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェットプリント用基材の一例について説明する。図1に示すように、インクジェットプリント用基材10は、繊維布帛11と、繊維布帛11の少なくとも片面に貼り合せられたインク吸収層12とを有し、インク吸収層12が無機系粉体または有機系粉体を含むものであり、繊維布帛11とインク吸収層12とがラミネートされたものである。なお、図示例ではインク吸収層12が片面のみに貼り合わせられているが、両面に貼り合わせられてもよい。繊維布帛の両面にインク吸収層が設けられていれば、両面にプリントできる。
【0012】
繊維布帛11としては、綿、レーヨン、麻等のセルロース繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのホモポリエステル、ポリエステルの繰り返し単位を構成する酸性分にイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸またはアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを共重合したポリエステル繊維、ナイロン6・6、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6にポリアルキレングリコール、ジカルボン酸やアミンなどを共重合したポリアミド繊維、パラフェニレンテレフタルアミドおよび芳香族エーテルとの共重合に代表されるアラミド繊維、ポリアクリルニトリル繊維、サルフォン系繊維から構成されたもの、あるいは、これら繊維と他の繊維とを複合したものである。
特に、繊維布帛11としては、プリント加工時およびプリント後の製品の温度、湿度等の変動に対する寸法安定性からすればポリエステル繊維からなるものが好ましい。
また、上述した繊維には、原糸の製造工程や加工工程での生産性、繊維特性を改善するために、通常使用されている各種添加剤、加工剤を含んでもよい。このような添加剤、加工剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、粘着剤、顔料、難燃剤、防炎剤などが挙げられる。
【0013】
繊維布帛11の形態としては、織物、編物および不織布のいずれでもよいが、引裂強力(JIS L 1096 ペンジュラム法) の値がタテ、ヨコともに0.98N以上であることが好ましい。0.98N未満では強度的に劣ることがあり、紙やフィルムと同程度の強度でしかなく、破れ易く、実用性が低下するばかりでなく、本発明の効果を十分に発揮できない可能性もある。一方、前述の範囲であれば、インクが裏通りするような薄手の繊維布帛、密度の低い繊維布帛やメッシュ状のものも十分に使用することができる。
【0014】
このような繊維布帛11の上に形成されるインク吸収層12は、無機系粉体または有機系粉体を含有する層であり、無機系粉体または有機系粉体は、樹脂中に分散している。
ここで、無機系粉体、有機系粉体としては特に制限はないが、インクの吸収性向上のために、多孔性の無機系粉体または有機系粉体であることが好ましい。多孔性の無機系粉体としては、例えば、シリカ(合成シリカ、天然シリカ)、クレー、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられる。特に、粒径および細孔径が一定している合成シリカを用いれば、プリントの再現性が高い。
有機系粉体としては、例えば、セルロース、ナイロン、ポリアミノ酸等の粉体を用いることができる。この中では、セルロース粉末がインクの吸収量が大きく、また発色性に優れているので特に好ましい。
【0015】
多孔性の無機系粉体および有機系粉体の粒径は、0.5〜30μmであることが好ましい。0.5μm未満ではプリント物の白化現象が強くなりすぎることがあり、30μmを超えると加工欠点が発生し易く、加工性に問題が生じることがある。
無機系粉体または有機系粉体の含有量は、粉体の種類や組み合わせなどによっても異なるが、インク吸収層12中の樹脂(固形分)質量に対して、5〜120質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがさらに好ましい。120質量%を超えると、繊維布帛11本来の風合、柔軟性が損なわれるおそれがあり、また、5質量%未満であると、にじみ防止やプリント性を十分に向上させることができないことがある。
【0016】
インク吸収層12には、プリント性をより向上させるために、顔料が含まれていてもよく、特に白顔料が含まれていることが好ましい。白顔料が含まれていれば、インク吸収層12の発色性をより向上させるばかりでなく、白度向上による品質向上も図れる。インク吸収層12中の顔料の含有量は、インク吸収層12中の樹脂(固形分)質量に対して、10〜50質量%の範囲であることが好ましい。含有量が10質量%未満であると、顔料の添加効果を十分に発揮できないことがあり、50質量%を超えると、繊維布帛の風合いを低下させることがある。
【0017】
インク吸収層12に含まれる樹脂としては特に制限はなく、一般的な合成樹脂を用いることができるが、塗工性、物性、コストなどを考慮すると、ポリウレタン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂が好ましい。樹脂の形態としては、溶剤に溶解したものや水に乳化分散したエマルジョン状のものが好ましく使用される。
なお、後述する接着剤にもポリウレタン系樹脂が用いられる場合には、インク吸収層を構成するポリウレタン系樹脂は、インク吸収層の剥離を防止するために、接着剤に使用されるものより分子量が大きいことが好ましい。
また、インク吸収層12には架橋剤が含まれていてもよく、架橋剤により樹脂が架橋された場合には、耐摩擦性など耐久性が向上する。
【0018】
インク吸収層12の厚さは特に制限されないが、10〜90μmであることが好ましい。インク吸収層12の厚さが10μm未満であると、インク吸収層としての役目を十分に果たさないばかりでなく、薄手の繊維布帛を用いた場合に支持体としての役目も十分に果たせないことがあり、90μmを超えると、風合や表面外観などの繊維布帛11の特徴を損なうおそれがある。
【0019】
このようなインク吸収層12は、ラミネートされる前に予め作製される。インク吸収層12の作製方法としては、後述するインクジェットプリント用基材の製造方法の説明で詳述するが、通常、離型シート上に無機系粉体または有機系粉体を含む樹脂液を塗工し、乾燥する方法が採用される。ここで、離型シートとは、離型紙または離型フィルムのことであり、樹脂が接着しないように表面処理が施されたものである。
【0020】
上述した繊維布帛11とインク吸収層12とはラミネート加工により圧着される。ラミネート加工方法については、後述するインクジェットプリント用基材の製造方法の説明で詳述する。
このようにラミネートされたものは、インク吸収層12の構成成分が繊維布帛11内に入り込む量が少ないからインク吸収層を薄くでき、繊維布帛11の特徴を損なわない。
【0021】
繊維布帛11とインク吸収層12とは、それらの間に接着剤13を介してラミネートされてもよい。接着剤13としては、熱圧着して繊維布帛11とインク吸収層12とを接着できれば特に制限されないが、ポリウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂であることが好ましい。また、接着剤13は、2液タイプ、1液ウエットタイプなどいずれであってもよい。さらに、ポリウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂の接着剤13に架橋剤が含まれていてもよく、架橋剤としてはイソシアネート化合物が好ましい。
【0022】
また、接着剤13には無機系粉体または有機系粉体が含まれていてもよい。その際、無機系粉体または有機系粉体としては、インク吸収層に含まれるものと同様のものを用いることができる。ただし、接着性が高くなることから、接着剤13中の無機系粉体または有機系粉体は少ない方が好ましく、さらに、インク吸収層12中の含有量より少ない方が好ましい。
【0023】
さらに、接着剤13には、インクジェットプリント用基材10の難燃性を向上させるために、難燃剤を含有させてもよい。接着剤13中の難燃剤の量は、難燃性を付与することができれば制限はないが、接着性に関しては少ない方が好ましい。
なお、このような接着剤13は、単に繊維布帛11とインク吸収層12(樹脂層)とを接着させるだけでなく、クッション的な機能も有している。
【0024】
以上説明したインクジェットプリント用基材10は、インク吸収層12を有しており、インク吸収性が向上しているだけでなく、インク吸収層12が支持体としての役目も果たして繊維布帛11を支持しているので、紙やフィルムを用いた場合の欠点である破れ易さ、裂け易さ、折れ跡のつき易さを大きく改善している。しかも、耐水性に優れ、かつ繊維布帛11の特徴を損なわないため、使用環境は屋内外を問わず、適用性に優れている。また、インク吸収層12は樹脂層であるから柔軟であり、耐揉み性、耐摩擦性などの機械的特性が優れている。
さらに、従来では強度、プリント性、施工性を改善するために裏打ちが必要であった繊維布帛を裏打ちなしで使用することができる。特に、凹凸を有する繊維布帛やインクが裏通りするような薄手の繊維布帛であっても、ラミネート加工によって紙、フィルムと同程度に平滑なインク吸収層を形成することができ、プリント性が向上するだけでなく、インクジェットプリントの際の圧力による動きを抑制し、プリント場所の固定化もされるので、十分にインクジェットプリント用基材として使用できる上に、より多種の繊維布帛を適用できるようになる。
【0025】
そして、このようなインクジェットプリント用基材10は、OA用途、テキスタイル用途のみならず、屋内外の垂れ幕や懸垂幕の広告・宣伝用途、さらに、壁紙やカーテン、ロールカーテン、ブラインドの建築用途などにも好適に利用できる。
【0026】
次に、本発明のインクジェットプリント用基材の製造方法の実施形態例について図面を参照して説明する。
本発明のインクジェットプリント用基材の製造方法は、繊維布帛とインク吸収層とをラミネート加工する方法である。その具体例について、以下の第1の実施形態例および第2の実施形態例にて説明する。
【0027】
(第1実施形態例)
まず、図2に示すように、離型シート14の上に、無機系粉体または有機系粉体を含有する樹脂液を付与し、乾燥させて樹脂層であるインク吸収層12を形成させる。次いで、図3に示すように、インク吸収層12の上に接着剤13を付与する。接着剤13を付与する際には、図示例のように、インク吸収層12全面に接着剤13を付与してもよいし、点状または格子状に付与してもよい。次いで、接着剤13の上に繊維布帛11を載せ、これらを熱圧着して離型シートとインク吸収層と接着剤と繊維布帛11とからなる積層シート15を得る。そして、インク吸収層12から離型シート14から剥離して、図1に示すようなインクジェットプリント用基材10を得る。
【0028】
上述した第1の実施形態例の製造方法において、無機系粉体または有機系粉体を含有する樹脂液を調製する方法としては無機系粉体または有機系粉体を均一に分散できれば特に制限されないが、例えば、樹脂を溶剤に溶解させた後、得られた溶解液または樹脂液に無機系粉体または有機系粉体を添加し、均一になるよう混合する方法などが挙げられる。
また、樹脂液を離型シート14の上に付与する方法、インク吸収層の上に接着剤を付与する方法については特に限定されず、例えば、樹脂液をロールコータ、バーコータ、コンマコータを用いて付与する方法などが挙げられる。
また、繊維布帛11とインク吸収層12との熱圧着の方法については、特に制限はないが、温度100〜120℃の範囲で、例えば、圧力0.4MPaで、ニップロールを用いて熱圧着する方法などが挙げられる。
【0029】
上述した第1の実施形態例の製造方法にあっては、離型シート14上に形成された無機系粉体または有機系粉体を含むインク吸収層12上に、繊維布帛11を貼り合わせるので、繊維布帛11の種類に限定されることなくインク吸収層12を形成させることができる。すなわち、より多種の繊維布帛を適用できるようになる。また、このような方法では、インク吸収層12の厚さを一定にしたまま貼り合わせるから、表面が平滑になり、プリント性を向上させることができる。
また、インク吸収層12と繊維布帛11とを熱圧着するため、繊維布帛11中にインク吸収層が入り込みにくく、インク吸収層12(樹脂層)を薄くすることができ、繊維布帛11の表面外観、風合を損なうことなく、軽量化できる。
【0030】
(第2実施形態例)
まず、図2に示すように、離型シート14の上に、無機系粉体または有機系粉体を含有する樹脂液を付与し、乾燥させて樹脂層であるインク吸収層12を形成させる。次いで、図5に示すように、繊維布帛11の上に接着剤13を付与する。接着剤13を付与する際には、図示例のように、繊維布帛11全面に接着剤を付与してもよいし、点状または格子状に付与してもよい。次いで、図4に示すように、接着剤13を介して離型シート14と一体のインク吸収層12を合わせて、これら熱圧着して離型シート14とインク吸収層12と接着剤13と繊維布帛11とからなる積層シート15を得る。そして、インク吸収層12から離型シート14を剥離して、図1に示すようなインクジェットプリント用基材10を得る。
【0031】
第2の実施形態例においても、第1の実施形態例と同様にして、無機系粉体または有機系粉体を含有する樹脂液を調製することができる。また、樹脂液を離型シート14の上に付与する方法、インク吸収層12の上に接着剤13を付与する方法、インク吸収層12と繊維布帛11との熱圧着の方法についても第1の実施形態例と同様の方法を採用できる。
【0032】
上述した第2の実施形態例の製造方法にあっては、繊維布帛11上に、離型シート14上に形成された無機系粉体または有機系粉体を含むインク吸収層12を貼り合わせるので、接着剤13を付与できる全ての繊維布帛を適用できるようになる。また、このような方法であれば、インク吸収層12の厚さを一定にしたまま貼り合わせるから、表面が平滑になり、プリント性を向上させることができる。
さらに、インク吸収層12と繊維布帛11とを熱圧着するため、繊維布帛11中にインク吸収層が入り込みにくく、インク吸収層12(樹脂層)を薄くすることができ、繊維布帛の表面外観、風合を損なうことなく、軽量化できる。
なお、第2の実施形態例では、繊維布帛11に過度に接着剤13が浸透しないよう、ペーパーカレンダーなどを使用して前処理しておくことが好ましい。
【0033】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本実施例においては、「部」とは、「質量部」のことであり、「%」とは、「質量%」のことである。
【0034】
[実施例1](薄手の繊維布帛をラミネートしたもの)
75デニール/72フィラメントのポリエステル繊維が縦116本/インチ、緯85本/インチに打ちこまれ、目付けが90g/cm のポリエステル平織物をノニオン系界面活性剤にて精練し、180℃で1分間熱処理して繊維布帛を得た。
次いで、シリカ粉末(平均粒径9μm)25 部(富士シリシア製)と、ポリウレタン樹脂20部と、N,N‐ジメチルホルムアミド30部とトルエン50部との混合溶媒(以下、DMF/TOLという)100部とからなる無機系粉末含有ポリウレタン樹脂液を調製した。次いで、この無機系粉末含有ポリウレタン樹脂液を離型紙上にコンマコータで塗布し、120℃で3分間乾燥して樹脂層であるインク吸収層を形成させた。このインク吸収層の厚さは30μmであり、無機系粉末含有率は125%であった。
【0035】
次いで、2液ポリウレタン樹脂30部、架橋剤イソシアネート12部、メチルエチルケトン58部からなる接着剤溶液を調製した。そして、この接着剤溶液をインク吸収層の上に、厚さ15μmになるようコンマコータで塗布し、120℃で3分間乾燥して接着剤層を形成させた。次いで、接着剤層の上にポリエステル平織物を貼り合せ、これらを温度120℃、圧力0.4MPaにて熱圧着して積層シートを得た。
そして、得られた積層シートを60℃に加温した部屋に24時間放置して接着剤の硬化を十分行った後、インク吸収層から離型紙を剥離して、インクジェットプリント用基材を得た。
【0036】
このようにして得られたインクジェットプリント用基材を、以下のように評価した。その評価結果を表1に示す。
目付け :JIS L‐1096(6.4.2法)により求めた。
厚さ :JIS L‐1096(6.5法)により求めた。
耐摩耗性 :JIS L‐1096(6.17.1 A−2法)に準じて測定した。
耐揉み性 :JIS L‐1096(103法)に準じ、プリントされたインクジェットプリント用基材を洗濯回数5回、洗剤を使用しないで洗濯した後、プリント品の状態を評価した。
プリント性:オンデマンド方式のインクジェットプリンタ(印字精度:360dpi印字/インチ、インク:溶剤系顔料インク(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック))によりフルカラー画像を印画し、その品位を評価した。
【0037】
【表1】
Figure 2004218145
【0038】
[比較例1](薄手の繊維布帛にダイレクトコーティングしたもの)
実施例1と同様のポリエステル平織物に、シリカ粉末含有ウレタン樹脂溶液をコンマコータによって直接塗布し、120℃で乾燥させてインク吸収層を形成させてインクジェットプリント用基材を得た。その際、乾燥後のインク吸収層の厚さが15μmとなるようにした。このようにして得られたインクジェットプリント用基材の評価結果を表1に示す。
【0039】
[比較例2](薄手の繊維布帛に湿式コーティングしたもの)
実施例1と同様のポリエステル平織物に、シリカ粉末含有ウレタン樹脂溶液をコンマコータによって直接塗布し、次いで、水中(20℃)に浸漬し、10分間ゲル化させた。次いで、80℃にて10分間湯洗いし、熱風乾燥後、 150℃で2分間熱処理してインクジェットプリント用基材を得た。その際、乾燥後のインク吸収層の厚さが10μmとなるようにした。このようにして得られたインクジェットプリント用基材の評価結果を表1に示す。
【0040】
[実施例2](凹凸のある繊維布帛をラミネートしたもの)
200デニール/72フィラメントのポリエステル繊維からなり、目付けが190g/cm のポリエステル綾織物を、ノニオン系界面活性剤にて精練し、180℃で1分間熱処理した。このポリエステル綾織物は凹凸を有していた。
次いで、シリカ粉末 (平均粒径9μm)12.5 部 (富士シリシア製)と、ポリウレタン樹脂20部と、N,N‐ジメチルホルムアミド30部とトルエン50部との混合溶媒(以下、DMF/TOLという)100部とからなる無機系粉末含有ポリウレタン樹脂液を調製した。次いで、この無機系粉末含有ポリウレタン樹脂液を離型紙上にコンマコータで塗布し、120℃で3分間乾燥して樹脂層であるインク吸収層を得た。このインク吸収層の厚さは30μm、無機系粉末含有率は60%であった。
【0041】
次いで、2液ポリウレタン樹脂30部、架橋剤イソシアネート12部、メチルエチルケトン58部からなる接着剤溶液を調製した。そして、この接着剤溶液をインク吸収層上に、厚さ15μmになるようコンマコータで塗布し、120℃で3分間乾燥して接着剤層を形成させた。次いで、接着剤層の上にポリエステル綾織物を貼り合せ、温度120℃、圧力0.4MPaにて熱圧着して積層シートを得た。
そして、得られた積層シートを60℃に加温した部屋に24時間放置して接着剤の硬化を十分行った後、インク吸収層から離型紙を剥離して、インクジェットプリント用基材を得た。このようにして得られたインクジェットプリント用基材の評価結果を表1に示す。
【0042】
[比較例3](凹凸のある繊維布帛にダイレクトコーティングしたもの)
実施例2と同様のポリエステル綾織物に、シリカ粉末含有ウレタン樹脂溶液をコンマコータによって直接塗布し、120℃で乾燥させてインク吸収層を形成させてインクジェットプリント用基材を得た。その際、乾燥後のインク吸収層の厚さが15μmとなるようにした。このようにして得られたインクジェットプリント用基材の評価結果を表1に示す。
【0043】
[比較例4](凹凸のある繊維布帛に湿式コーティングしたもの)
実施例2と同様のポリエステル綾織物に、シリカ粉末含有ウレタン樹脂溶液をコンマコータによって直接塗布し、次いで、水中(20℃)に浸漬し、10分間ゲル化させた。次いで、80℃にて10分間湯洗いし、熱風乾燥後、 150℃で2分間熱処理して、インクジェットプリント用基材を得た。その際、乾燥後のインク吸収層の厚さが10μmとなるようにした。このようにして得られたインクジェットプリント用基材の評価結果を表1に示す。
【0044】
実施例1,2のインクジェットプリント用基材は、ラミネート加工で作製されているので、薄手の繊維布帛を用いた場合(実施例1)であっても、凹凸を有する繊維布帛を用いた場合(実施例2)であっても、表面が平滑なインク吸収層が設けられており、プリント性に優れていた。また、インク吸収層を薄くできたので、柔軟であり、摩耗性、揉み性に優れていた。
一方、薄手の繊維布帛を用いた比較例1,2のインクジェットプリント用基材は、ラミネート加工で作製されていなかったので、インクが裏通りしてプリント性に劣っていた。
また、凹凸を有する繊維布帛を用いた比較例3,4のインクジェットプリント用基材は、ラミネート加工で作製されていなかったので、表面平滑性が低く、インクが滲んでおりプリント性に劣っていた。
【0045】
【発明の効果】
本発明のインクジェットプリント用基材によれば、インク吸収性が向上してプリント性が向上するだけでなく、破れにくく、裂けにくく、折れ跡がつきにくい。しかも、耐水性に優れるので、使用環境は屋内外を問わず、適用性に優れている。また、柔軟であるから、耐揉み性、耐摩擦性などの機械的特性が優れている。さらには、凹凸を有する繊維布帛、薄手の繊維布帛であっても使用することができ、より多種の繊維布帛を適用できるようになる。
また、本発明のインクジェットプリント用基材の製造方法によれば、凹凸を有する繊維布帛、薄手の繊維布帛であっても使用することができ、より多種の繊維布帛を適用できるようになる。また、表面が平滑になり、プリント性を向上させることができる。しかも、インク吸収層を薄くすることができ、繊維布帛の表面外観、風合を損なうことなく、軽量化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェットプリント用基材の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のインクジェットプリント用基材の製造方法の一工程を説明する断面図である。
【図3】本発明のインクジェットプリント用基材の製造方法の一工程を説明する断面図である。
【図4】本発明のインクジェットプリント用基材の製造方法の一工程を説明する断面図である。
【図5】本発明のインクジェットプリント用基材の製造方法の一工程を説明する断面図である。
【符号の説明】
10 インクジェットプリント用基材
11 繊維布帛
12 インク吸収層
13 接着剤
14 離型シート
15 積層シート

Claims (7)

  1. 繊維布帛と、繊維布帛の少なくとも片面に貼り合せられたインク吸収層とを有し、前記インク吸収層が無機系粉体または有機系粉体を含むインクジェットプリント用基材であって、
    繊維布帛とインク吸収層とがラミネートされたものであることを特徴とするインクジェットプリント用基材。
  2. 前記インク吸収層がさらに顔料を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリント用基材。
  3. 前記インク吸収層がポリウレタン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットプリント用基材。
  4. 繊維布帛と、無機系粉体または有機系粉体を含むインク吸収層とをラミネート加工することを特徴とするインクジェットプリント用基材の製造方法。
  5. 無機系粉体または有機系粉体を含む樹脂液を離型シート上に付与してインク吸収層を形成する工程と、
    前記インク吸収層上に接着剤を付与し、この接着剤を介してインク吸収層上に繊維布帛を貼り合わせる工程と、
    離型シートを剥離する工程とを有することを特徴とする請求項4に記載のインクジェットプリント用基材の製造方法。
  6. 無機系粉体または有機系粉体を含む樹脂液を離型シート上に付与してインク吸収層を形成する工程と、
    繊維布帛上に接着剤を付与し、この接着剤を介して繊維布帛上にインク吸収層を貼り合わせる工程と、
    離型シートを剥離する工程とを有することを特徴とする請求項4に記載のインクジェットプリント用基材の製造方法。
  7. 前記樹脂液が、ポリウレタン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする請求項5または6に記載のインクジェットプリント用基材の製造方法。
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