しかしながら、上述の如くスイングアームにおける挿通孔を塞ぐためにクロスビーム等の補強部材を取り付けることは、該スイングアームの重量、特にバネ下重量の増加の原因となるため好ましいものではない。
また、上記アッパーリンク式構造の場合は、クッションアームが直線状をなし、その両端をスイングアームとクッションユニットに連結し、中間を車体側連結リンクで引っ張る構造になっているため、クッションアームに大きな引っ張り力が働くことになる。このため、クッションアームは、車体側連結リンクによる引っ張りに十分耐えることができるだけの高剛性にしてクッションユニットの性能を低下させないようにすることが求められる。しかも可能な限り軽量化し、かつクッションアームが揺動するとき、クッションユニットと干渉しないようにすることも必要である。
さらに、クッションユニットの端部にリザーブタンクを設ける場合は、クッションアームやスイングアームさらには後輪等との干渉を避けるように配慮する必要がある。そのうえ、クッションユニットをスイングアームに設けた貫通穴に通して配設する場合は、その際における取付性を良好にする必要がある。しかも貫通穴を可及的に小さくしてスイングアームの剛性を低下させないようにすることも望まれる。
そこでこの発明は、車両のスイングアーム式懸架装置において、スイングアームの軽量化及び高剛性化を図ると共に、クッションユニットのストロークを確保してクッション性能の設定自由度を高めることを目的とする。また、アッパーリンク形式の後輪懸架装置等において、リンクの剛性を高くしてクッション性能を向上させることを目的とする。
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、一対のアーム部(例えば実施例のアーム部137)をクロスメンバ(例えば実施例のクロスメンバ140)で連結して構成されるスイングアーム(例えば実施例のスイングアーム121)の前端部が、車体側(例えば実施例のセンタフレーム113、パワーユニット108)に設けられたピボット軸(例えば実施例のピボット軸114)に揺動可能に取り付けられ、前記スイングアームの後端部には車輪(例えば実施例の後輪122)が取り付けられ、前記スイングアームにクッションユニット(例えば実施例のクッションユニット123)の一端部が取り付けられ、該クッションユニットの他端部がリンク機構(例えば実施例のリンク機構124,224)を介して前記車体側に取り付けられてなる車両のスイングアーム式懸架装置(例えば実施例のスイングアーム式懸架装置120,220)において、前記クロスメンバの後方に前記クッションユニットを配置したことを特徴とする。
また、請求項2に記載した発明は、前部両側のアーム部(例えば実施例のアーム部237)がクロスメンバ(例えば実施例のクロスメンバ240)で連結され後部一側には片持ちアーム部(例えば実施例の片持ちアーム部237A)を有する片持ち式のスイングアーム(例えば実施例のスイングアーム221)の前端部が、車体側(例えば実施例のセンタフレーム113、パワーユニット108)に設けられたピボット軸(例えば実施例のピボット軸114)に揺動可能に取り付けられ、前記スイングアームの後端部には車輪(例えば実施例の後輪122)が取り付けられ、前記スイングアームにクッションユニット(例えば実施例のクッションユニット123)の一端部が取り付けられ、該クッションユニットの他端部がリンク機構(例えば実施例のリンク機構124)を介して前記車体側に取り付けられてなる車両のスイングアーム式懸架装置(例えば実施例のスイングアーム式懸架装置320)において、前記クロスメンバの後方に前記クッションユニットを配置したことを特徴とする。
これらスイングアーム式懸架装置によれば、クッションユニットがスイングアームのクロスメンバの後方に配置されることで、クッションユニットを通す挿通孔をクロスメンバから廃止することができる。
すなわち、請求項3に記載した発明のように、前記クッションユニットの車体後方部が空間的に開放することとなり、クッションユニットと後輪とを接近させることが可能となる。
また、スイングアームの揺動中心からクッションユニットまでの距離が長くなり、後輪車軸の変位量に対するクッションユニットのストロークの割合を効率良く増加させることができる。
請求項4に記載した発明は、前記リンク機構が、前記スイングアームの上部に揺動可能に取り付けられると共に前記クッションユニットの他端部が取り付けられるクッションアーム(例えば実施例のクッションアーム125)と、該クッションアームに一端部が取り付けられ他端部が前記車体側のピボット軸よりも下方の部位に取り付けられる車体側連結リンク(例えば実施例の車体側連結リンク126)とを備え、該車体側連結リンクの挿通孔(例えば実施例の挿通孔141)を前記クロスメンバに設けたことを特徴とする。
このスイングアーム式懸架装置によれば、クロスメンバには車体側連結リンクのみを挿通させる挿通孔を設ければよく、クッションユニットを通す場合と比べてクロスメンバの挿通孔を大幅に縮小させることができる。
請求項5に記載した発明は、前記スイングアームとクッションアームとの連結部(例えば実施例の上部ブラケット127)を前記挿通孔の前方に設けたことを特徴とする。
このスイングアーム式懸架装置によれば、スイングアームとクッションアームとの連結部を挿通孔よりも前方に設けることで、クッションユニットとスイングアームとの間に渡って設けられるクッションアームを長くすることができ、リンク機構の設計自由度を向上させることができる。
請求項6に記載した発明は、一端をピボット軸(例えば実施例のピボット軸114)により車体フレーム(例えば実施例の車体フレーム105)へ揺動自在に取付け、他端に車輪(例えば実施例の後輪122)を支持したスイングアーム(例えば実施例のスイングアーム121)と、このスイングアームと車体フレームの間に上下方向へ設けられ、下端部を直接スイングアームへ取付けたクッションユニット(例えば実施例のクッションユニット123)と、このクッションユニットの上端部とスイングアームの上部とを連結するクッションアーム(例えば実施例のクッションアーム125)と、このクッションアームと車体フレームとを連結する車体側連結リンク(例えば実施例の車体側連結リンク126)とを備えた車両のスイングアーム式懸架装置(例えば実施例のスイングアーム式懸架装置120)において、前記クッションアームにおける、前記スイングアームとの連結点を第一の連結点(例えば実施例の第一の連結点131A)、前記車体側連結リンクとの連結点を第二の連結点(例えば実施例の第二の連結点132A)、前記クッションユニットとの連結点を第三の連結点(例えば実施例の第三の連結点133A)としたとき、前記第二の連結点は、前記第一及び第三の各連結点の中間に位置するとともに、前記第一の連結点側へオフセットされていることを特徴とする。
このスイングアーム式懸架装置によれば、クッションアームによりスイングアームの揺動をクッションユニットへ伝達してストロークさせる際におけるレバー比をかせぐことができる。
また、上記課題を解決するためスイングアーム式懸架装置に係る請求項7の発明は、一端をピボット軸により車体フレームへ揺動自在に取付け、他端に車輪を支持したスイングアームと、このスイングアームと車体フレームの間に上下方向へ設けられ、下端部を直接スイングアームへ取付けたクッションユニットと、このクッションユニットの上端部とスイングアームの上部とを連結するクッションアームと、このクッションアームと車体フレームとを連結する車体側連結リンクとを備えた車両のスイングアーム式懸架装置において、前記車体側連結リンクは、その一端を前記クッションアームの側面視における長さ方向の中間部よりもオフセットされた位置へ連結し、前記クッションアームは、側面視略弓形状をなすことを特徴とする。
請求項8の発明は上記請求項7において、前記クッションアームにおける、前記スイングアームとの連結点を第一の連結点、前記車体側連結リンクとの連結点を第二の連結点、前記クッションユニットとの連結点を第三の連結点としたとき、前記第二の連結点が、前記第一及び第三の各連結点の中間に位置するとともに、前記第一の連結点側へオフセットされていることを特徴とする。
請求項9の発明は上記請求項7において、前記クッションアームにおける、前記スイングアームとの連結点を第一の連結点、前記車体側連結リンクとの連結点を第二の連結点、前記クッションユニットとの連結点を第三の連結点としたとき、前記第一及び第二の連結点を結んだ直線よりも、前記第三の連結点が前記車体側連結リンク側へずれて位置するように、前記クッションアームの前記クッションユニットと連結する端部が曲がっていることを特徴とする。
請求項10の発明は上記請求項7において、前記車体側連結リンクの一端部を前記クッションアームの中間部と連結し、他端部を前記車体フレームの前記ピボット軸より下方位置へ連結するとともに、前記車体側連結リンクを車体中心から見て左右対称に二本配置したことを特徴とする。
請求項11の発明は上記請求項7において、前記クッションユニットは下端部に取付けられたリザーブタンクを備えるとともに、このリザーブタンクを前記スイングアームの下方に配設したことを特徴とする。
請求項12の発明は上記請求項11において、前記のリザーブタンクの筒部を長さ方向が車幅方向となるように横置き配置したことを特徴とする。
請求項13の発明は、一端をピボット軸により車体フレームへ揺動自在に取付け、他端に車輪を支持したスイングアームと、このスイングアームと車体フレームの間に上下方向へ設けられ、下端部を直接スイングアームへ取付けたクッションユニットと、このクッションユニットの上端部とスイングアームの上部とを連結するクッションアームと、このクッションアームと車体フレームとを連結する車体側連結リンクとを備えた車両のスイングアーム式懸架装置において、前記車体側連結リンクの車体フレームとの連結点が、前記クッションユニットの下端部よりも上方にあることを特徴とする。
請求項1及び請求項2に記載した発明によれば、クッションユニットをクロスメンバの後方に配置したことでクッションユニットを通す挿通孔を無くすことができるため、スイングアームの剛性を高めることができ、かつスイングアームの最適設計による軽量化を図ることができる。
また、クッションユニットがスイングアームのクロスメンバの後方に配置されることで、後輪車軸の変位量に対するクッションユニットのストロークの割合を増加させることが可能となり、減衰力の設定が容易になると共に各リンクへの負担が軽減され、クッション性能の設定自由度を高めることができると共に、各リンクの最適設計による軽量化を図ることができる。
請求項3に記載した発明によれば、クッションユニットの車体後方部が空間的に開放されることで、クッションユニットと後輪とを接近させることができるため、ホイールベースを短縮して車体の小型化を図ることができる。
請求項4に記載した発明によれば、クロスメンバの挿通孔を大幅に縮小させることが可能となり、スイングアームの剛性を高めると共に最適設計による軽量化を図ることができる。しかも、自動二輪車の組み立て時には車体側連結リンクが挿通孔に挿通されていることで揺動範囲が規制され、車体側へ取り付け性が向上する。
請求項5に記載した発明によれば、スイングアームとクッションアームとの連結部を貫通孔よりも前方に設けることでリンク機構の設計自由度を向上させることが可能となり、後輪車軸の変位量に対するクッションユニットのストローク量を変化させる等、クッション性能を容易に設定することができる。
請求項6に記載した発明によれば、クッションユニットをストロークさせる際のレバー比をかせぐことができるため、スイングアームの小さな揺動でクッションユニットを大きくストロークさせることができる。すなわち、減衰力の設定が容易になると共に各リンクへの負担が軽減され、クッション性能の設定自由度を高めることができると共に、各リンクの最適設計による軽量化を図ることができる。
請求項7の発明によれば、車体側連結リンクによりクッションアームの長さ方向中間部に荷重が加えられるが、クッションアームを車体側連結リンクの連結する側と反対側へ突に湾曲した側面視略弓形状とすることで、中間部へ車体側連結リンクから大きな荷重が加えられても、これに十分に耐えることができる。このためクッションアームは車体側連結リンクによる力の荷重方向に対して剛性を大きくすることができる。その結果、懸架装置全体の剛性が上がるため、良好なクッション性能を維持できる。そのうえ、クッションアームはクッションユニットとの干渉を避けることができる。
請求項8の発明によれば、クッションアームにおいて、車体側連結リンクが連結する第二の連結点が、スイングアーム及びクッションユニットと連結する第一及び第三の各連結点の中間に位置するとともに、スイングアームとの連結点である第一の連結点側へオフセットされているので、クッションアームによりスイングアームの揺動をクッションユニットへ伝達してストロークさせる際におけるレバー比をかせぐことができ、スイングアームの小さな揺動でクッションユニットを大きくストロークさせることができる。
請求項9の発明によれば、クッションアームは、第一及び第二の連結点を結んだ直線よりも、第三の連結点が車体側連結リンク側へずれて位置するように、クッションユニットと連結する端部が曲がっているので、クッションユニットとの干渉をより確実に避けることができる。
請求項10の発明によれば、車体側連結リンクを車体中心から見て左右対称に二本配置したので、車体側連結リンクを高剛性にでき、かつ懸架装置の作動性を良好にすることができる。
請求項11の発明によれば、リザーブタンクをクッションユニットの下部に取付けてスイングアームの下方へ配置したので、クッションアーム及びスイングアーム上方の車体側との干渉を避けて配置できる。しかも、スイングアームに設けたクッション取付用の穴にリザーブタンク入れることなく、スイングアームの下方からクッションユニットを取付けることが可能になる。このため、取付性が向上するとともに、スイングアームのクッション取付用の穴を可及的に小さくでき、スイングアームの剛性確保を容易にする。
請求項12の発明によれば、リザーブタンクを横置きにしたので、十分な地上クリアランスの確保ができる。また、後輪に近接配置できるとともに、クッションユニットが揺動しても後輪との位置関係はほぼ一定であるから後輪との干渉を回避できる。
請求項13の発明によれば、車体フレームにおけるピボット軸周辺の部位(センタフレーム)の上下長を短縮でき、車体フレームの軽量化を図ることができる。また、クッションユニットからの荷重入力点がピボット軸に近接することで、リンク機構の効率を向上させると共に、センタフレーム下部に発生するモーメントを小さくすることができる。
図1は本発明に係るスイングアーム式懸架装置を備えた自動二輪車(車両)の側面図である。本図に示すように、自動二輪車101の前輪102を軸支するフロントフォーク103はステアリングステム104を介して車体フレーム105のヘッドパイプ106に操舵可能に取り付けられる。車体フレーム105のメインフレーム107の下部にはエンジン及び変速機からなる車体側としてのパワーユニット108が取り付けられ、メインフレーム107の上部には燃料タンク109が取り付けられる。また、メインフレーム107の後部に接続されるシートレール110の上部には運転者用のシート111及び後部搭乗者用のピリオンシート112が各々取り付けられる。そして、メインフレーム107の後端に連なるセンタフレーム(車体側)113には本発明に係るスイングアーム式懸架装置120が取り付けられる。
スイングアーム式懸架装置120は、センタフレーム113に設けられたピボット軸114にスイングアーム121の前端部を揺動可能に取り付け、このスイングアーム121の後端部には後輪(車輪)122を回転可能に取り付け、スイングアーム121にクッションユニット123の下端部を取り付けると共にクッションユニット123の上端部をセンタフレーム113の下端部にリンク機構124を介して取り付けてなるものである。
また、リンク機構124は、スイングアーム121の上部に揺動可能に取り付けられると共にクッションユニット123の上端部が取り付けられるクッションアーム125と、このクッションアーム125に上端部が取り付けられる一方下端部がセンタフレーム113のピボット軸114よりも下方の部位に取り付けられる車体側連結リンク126とを備えるものである。
そして、クッションユニット123がその上下端部を近接離反させるようストロークすることで、後輪122及びスイングアーム121に入力される負荷を吸収するようになっている。なお、ピボット軸114は後輪122の車軸(以下、後輪車軸ということがある)115と同様に車幅方向と平行に設けられる。
図2に示すように、スイングアーム121の上部には上部ブラケット(連結部)127が設けられ、この上部ブラケット127にクッションアーム125の前端部が第一連結軸131により回動可能に連結される。また、クッションアーム125の後端部とクッションユニット123の上端部とは第三連結軸133により回動可能に連結される。クッションアーム125の前後端部間には車体側連結リンク126の上端部が第二連結軸132により回動可能に連結され、車体側連結リンク126の下端部がセンタフレーム113の下端部に設けられたリンク取り付け部129に第四連結軸134により連結される。スイングアーム121の下部には下部ブラケット128が設けられ、この下部ブラケット128にクッションユニット123の下端部が第五連結軸135により連結される。なお、各連結軸131,132,133,134,135はピボット軸114と平行に設けられる。
図3を併せて参照して説明すると、スイングアーム121は、並列に設けられる一対のアーム部137,137の前部をクロスメンバ140で連結して構成されるものである。具体的には、各アーム部137は後方に位置するほど車幅方向で緩やかに広がるように形成され、これらの下面には前後端に渡る補強フレーム138がそれぞれ接合される(図2参照)。そして、各アーム部137の前端部が車幅方向に延在するピボットパイプ139により結合され、かつピボットパイプ139の後方に設けられるクロスメンバ140により各アーム部137及び補強フレーム138の前部が結合されて、スイングアーム121が一体に構成される。
クロスメンバ140の後方寄りの部位には略上下方向に沿う挿通孔141が形成され、この挿通孔141内に車体側連結リンク126が配置される。なお、車体側連結リンク126は車幅方向で対向する二枚の板状部材で構成される。車体側連結リンク126は、その上端部がスイングアーム121の上面(アーム部137の上面)よりも上方に突出し、下端部がスイングアーム121の下面(補強フレーム138の下面)よりも下方に突出している。また、車体側連結リンク126は、その両端部の各連結軸132,134の中心を結ぶ長手方向の軸線126Aが略垂直となるように配置される。
また、クロスメンバ140の後方であって後輪122の前方にはクッションユニット123が配置される。つまり、一対のアーム部137,137の前部を連結するクロスメンバ140は単一であり、クッションユニット123と後輪122との間にはクロスメンバ140が設けられていない。したがって、スイングアーム121におけるクッションユニット123よりも車体後方の部位が空間的に開放されることとなる。これにより、クッションユニット123と後輪122とを接近させることが可能となり、自動二輪車101のホイールベースを短縮させることが可能となる。
クッションユニット123は、その上端部がスイングアーム121の上面よりも上方に突出し、下端部がスイングアーム121の下面よりも下方に突出している。また、クッションユニット123は、その両端部の各連結軸133,135の中心を結ぶ長手方向(伸縮方向)の軸線123Aが略垂直となるよう、つまり車体側連結リンク126と略平行となるように配置される。
ここで、車体側連結リンク126をその軸線126Aと垂直に切った断面はクッションユニット123をその軸線123Aと垂直に切った断面と比べて小さく、したがって、挿通孔141はクッションユニット123を通す場合と比べて小さく形成される。
また、車体側連結リンク126とセンタフレーム113との連結点、つまり第四連結軸134の中心は、スイングアーム121の下部ブラケット128とクッションユニット123の下端部との連結点、つまり第五連結軸135の中心よりも上方に位置している。これにより、センタフレーム113の上下長が短縮され、車体フレーム105が軽量化される。また、クッションユニット123からの荷重入力点がピボット軸114に近接することで、リンク機構124の効率が向上すると共に、センタフレーム113下部に発生するモーメントが小さくなる。
クッションユニット123は、シリンダ143が上側でシリンダ143内のピストン(図示略)と共にストロークするピストンロッド144が下側となるように配置されたダンパー(減衰装置)145と、シリンダ143の上端部及びピストンロッド144の下端部にそれぞれ設けられたフランジ部143a,144a間に所定の初期荷重となるようにセットされた懸架スプリング146とを有する。シリンダ143の上方にはクッションアーム125との連結部147が、ピストンロッド144の下方には下部ブラケット128との連結部148が各々設けられ、これら各連結部147,148を近接離反させるようにクッションユニット123がストロークし、そのストローク速度に比例した減衰力を発生させる。なお、149はシリンダ143内に充填されるガスのリザーブタンクである。
上部ブラケット127はスイングアーム121の上面から上方へ突出するように形成され、スイングアーム121の前端部近傍であってクッションユニット123及び挿通孔141よりも前方に配置される。また、下部ブラケット128はスイングアーム121の下面から下方へ突出するように形成され、クロスメンバ140の後方であってクッションユニット123の下端部に対応する部位に配置される。
上部ブラケット127とクッションユニット123の上端部との間にはクッションアーム125が配設され、クッションアーム125の両端部間であって上部ブラケット127寄りの部位には車体側連結リンク126の上端部が連結される。これにより、クッションアーム125の第二連結軸132及び第三連結軸133の各中心を結ぶ軸線25Aの長さは、第二連結軸132及び第一連結軸131の各中心を結ぶ軸線25Bの長さよりも長く設定される。すなわち、第一連結軸131の中心を第一の連結点131A、第二連結軸132の中心を第二の連結点132A、第三連結軸133の中心を第三の連結点133Aとすると、第二の連結点132Aは、第一及び第三の各連結点131A,133Aの中間に位置すると共に、第一の連結点131A側へオフセットされている。
またここで、図2はスイングアーム式懸架装置120のクッションユニット123が最大伸び位置にある状態(全伸状態)を示し、この状態において、クッションアーム125の軸線125Aとクッションユニット123の軸線123Aとが形成する角度Rは鋭角とされる。
次に、この実施例におけるスイングアーム式懸架装置120の作用について説明する。
図4はスイングアーム式懸架装置120のクッションユニット123が最大縮み位置にある状態(全屈状態)を示す。なお、図中鎖線で示すスイングアーム121はクッションユニット123全伸状態での位置(図2における位置)を示す。
本図に示すように、スイングアーム121が車体側(車体フレーム105及びパワーユニット108)に対してピボット軸114を中心として後輪122を上方に移動させる方向に揺動すると、スイングアーム121と共に上部ブラケット127及び下部ブラケット128がピボット軸114を中心とする円弧に沿って上方へ移動する。このとき、上部ブラケット127と連結されるクッションアーム125の前端部も上方へ移動するが、クッションアーム125の上部ブラケット127の後方の部位は車体側連結リンク126の上端部と連結されており、かつ車体側連結リンク126の下端部は車体側に連結されているため、クッションアーム125はその前端部が上昇すると第二連結軸132を中心として後端部を下方に移動させるように揺動する。
したがって、クッションユニット123の上端部がクッションアーム125の後端部により下方に押し下げられる一方、クッションユニット123の下端部は下部ブラケット128により上方に押し上げられることとなり、クッションユニット123がストロークし、ダンパー145により減衰されつつ懸架スプリング146により荷重を受ける。
このとき、クッションユニット123がスイングアーム121のクロスメンバ140の後方に配置されることで、スイングアーム121の揺動中心であるピボット軸114からクッションユニット123までの距離が長くなり、スイングアーム121の後端部に支持される後輪122の車軸15の変位量に対するクッションユニット123のストローク量の割合を容易に増加させることができる。後輪車軸115の変位量に対するクッションユニット123のストロークの割合が増加すれば、減衰力の設定自由度が向上すると共にリンク機構124への負担を軽減することができる。
また、クッションユニット123がクロスメンバ140の後方に配置されることで、挿通孔141には車体側連結リンク126のみが挿通されることとなるため、従来のようにクッションユニット123がクロスメンバ140を貫通していた場合と比べて挿通孔141を大幅に縮小することができ、スイングアーム121の剛性を高めることができる。
さらに、クッションユニット123の上端部とスイングアーム121の上部ブラケット127との間にはクッションアーム125が配設されるが、クッションユニット123がクロスメンバ140の後方に配置され、かつ上部ブラケット127がスイングアーム121のピボット軸114近傍の部位に配置されるため、クッションアーム125を長くすることができ、リンク機構124の設計自由度を向上させることができる。
具体的には、クッションアーム125の第二連結軸132及び第三連結軸133間の軸線125Aの長さを第二連結軸132及び第一連結軸131間の軸線125Bの長さよりも長く設定することで、クッションアーム125が第二連結軸132を中心に揺動する際に前端部の移動量に対する後端部の移動量を増加させることができ、後輪車軸115の変位量に対するクッションユニット123のストロークを増加させることができる。すなわち、第二連結軸132の中心である第二の連結点132Aが、第一及び第三連結軸131,133の各中心である第一及び第三の各連結点131A,133Aの中間に位置するとともに、第一の連結点131A側へオフセットされていることで、クッションアーム125によりクッションユニット123をストロークさせる際のレバー比をかせぐことができる。
しかも、クッションアーム125の軸線125Aとクッションユニット123の軸線123Aとが形成する角度Rは、クッションユニット123全伸状態では鋭角であったのに対し、クッションユニット123の縮み量が増加するにつれてその角度を増し、クッションユニット123全屈状態では略直角となるように設定されている。このため、クッションユニット123全屈状態に近づくにつれてクッションアーム125がクッションユニット123を効率良く押し下げる、つまり、クッションユニット123のストロークを増加させることとなり、クッションユニット123の最大縮み位置付近では、後輪車軸115の変位量に対するクッションユニット123のストロークの割合が増加するようになっている。
なお、上部ブラケット127及びクッションアーム125をピボット軸114に近接させて配置しているため、ピボット軸114周辺のモーメントを小さくすることができる。また、センタフレーム113のリンク取り付け部129が側面視で挿通孔141の下方まで後方に延出され、かつこのリンク取り付け部129に連結された車体側連結リンク126がクロスメンバ140の挿通孔141に挿通され略直立した姿勢でクッションアーム125に連結されるため、車体側連結リンク126の長さを最小限の長さに抑えることができる。さらに、車体側連結リンク126と共にクッションユニット123も略直立した姿勢で配置されるため、これらの配置スペースの前後長を抑えてホイールベースの短縮を図ることができる。
図5はスイングアーム式懸架装置120における後輪車軸115の変位量とクッションユニット123のストローク量との関係を示すグラフである。なお、縦軸はクッションユニット123のストローク量を、横軸は後輪車軸115の上下方向の変位量を表す。
同図に示すように、クッションユニット123全伸状態から後輪車軸115が変位し始めた際には、クッションユニット123のストローク量は後輪車軸115の変位量の増加に伴いほぼ直線的に増加する。そして、後輪車軸115の変位量がさらに増加してクッションユニット123全屈状態に近づくと、後輪車軸115の変位量の増加に対するクッションユニット123のストローク量の増加の割合(レシオ)が次第に大きくなる。つまり、このスイングアーム式懸架装置120では、後輪車軸115が上方へ変位することに伴い、クッションユニット123のストローク量が次第に増加する、すなわち、クッションユニット123のストローク速度が増加するようになっている。これにより、クッションユニット123の縮み量が少ないとき(例えば乗車1G状態等)には減衰力が減少して乗り心地が良好となり、クッションユニット123の最大縮み位置付近では減衰力が増加してクッションユニット123の底付き防止等が図られている。
次いで、スインクアーム式懸架装置120の車体側への取り付けについて説明すると、生産ラインで自動二輪車101を組み立てる場合には、サブライン等でスイングアーム121にクッションユニット123、クッションアーム125、車体側連結リンク126、及び後輪122等を取り付けたスイングアーム式懸架装置120をサブアセンブリとして小組することで、クッションユニット123の両端部をスイングアーム121に対して位置決めしておくことができる。このため、メインラインで車体側にサブアセンブリを組み付ける場合にはスイングアーム121及び車体側連結リンク126を車体側に取り付けるのみとなり、自動二輪車101の組み立てを容易に行うことができる。しかも、車体側連結リンク126はクロスメンバ140の挿通孔141に挿通されることで揺動範囲が規制されるため、サブアセンブリ組み付け時に車体側連結リンク126を車体側へ取り付け易くなっている。
上記実施例によれば、クッションユニット123がスイングアーム121のクロスメンバ140の後方に配置されることで、スイングアーム121の揺動中心であるピボット軸114からクッションユニット123までの距離が長くなり、後輪車軸115の変位量に対するクッションユニット123のストロークの割合を増加させることができる。このため、減衰力の設定が容易になると共にリンク機構124への負担が軽減され、クッション性能の設定自由度を高めることができると共に、リンク機構124の最適設計による軽量化を図ることができる。
また、クッションユニット123をクロスメンバ140の後方に配置したことで、挿通孔141には車体側連結リンク126のみが挿通されることとなり、クロスメンバ140の挿通孔141を大幅に縮小できる。このため、スイングアーム121を高剛性とし、かつ最適設計による軽量化を図ることができる。しかも、自動二輪車101の組み立て時には車体側連結リンク126の揺動が規制されて車体側へ取り付け易くなる。
さらに、クッションユニット123がクロスメンバ140の後方に配置されると共に上部ブラケット127がスイングアーム121のピボット軸114近傍の部位に配置されることでクッションアーム125を長くすることができ、リンク機構124の設計自由度を向上させることができる。このため、後輪車軸115の変位量に対するクッションユニット123のストローク量を変化させる等、クッション性能を容易に設定することができる。
ここで、上記実施例の変形例として、例えば図6に示すスイングアーム式懸架装置220のように、スイングアーム121の上部ブラケット227にクッションユニット123の上端部を取り付けると共に、クッションユニット123の下端部をセンタフレーム113の下端部にリンク機構224を介して取り付けてなるものであってもよい。ここで、リンク機構224は、クッションユニット123の下端部をスイングアーム121の下部ブラケット228に連結されたクッションアーム225に取り付け、このクッションアーム225をセンタフレーム113のピボット軸114よりも下方の部位(リンク取り付け部229)に連結された車体側連結リンク226に取り付けてなるものである。この場合、車体側連結リンク226はスイングアーム121の下方に配置されることとなるため、クロスメンバ140の挿通孔を廃止することができ、スイングアーム121をより一層高剛性とすることができる。
また、上記実施例の他の変形例として、図7に示すスイングアーム式懸架装置320のように、片持ち式のスイングアーム221を用いたものであってもよい。具体的には、スイングアーム221は、前部両側のアーム部237,237がピボットパイプ239及びクロスメンバ240で連結され、後部一側には片持ちアーム部237Aを有するものである。そして、スイングアーム式懸架装置320は、スイングアーム221の前端部を前記センタフレーム(車体側)113のピボット軸114に揺動可能に取り付け、スイングアーム221の後端部には前記後輪(車輪)122を取り付け、スイングアーム221に前記クッションユニット123の下端部を取り付けると共にクッションユニット123の上端部をセンタフレーム113の下端部に前記リンク機構124を介して取り付けてなるものである。クロスメンバ240に設けられた挿通孔241には前記車体側連結リンク126が配置され、クロスメンバ240の後方であって後輪122の前方にはクッションユニット123が配置される。このため、前記スイングアーム式懸架装置120と同様、クッション性能の設定自由度を高めると共にリンク機構124及びスイングアーム221の最適設計による軽量化を図ることができる。ここで、上記スイングアーム221とリンク機構224とを組み合わせることも可能である。
さらに、パワーユニット108の後部にピボット軸及びリンク取り付け部を設け、そのピボット軸及びリンク取り付け部にスイングアーム121,221及び車体側連結リンク126,226をそれぞれ取り付けるようにしてもよい。さらにまた、車体フレーム105(センタフレーム113)とパワーユニット108との少なくとも一方にスイングアーム121,221及び車体側連結リンク126,226が取り付けられるようにしてもよい。このとき、センタフレーム113が車体フレーム105と別体であってもよい。
また、挿通孔141,241はクロスメンバ140,240に形成するものではなく、クロスメンバを前後に分割して配置することで生じる間隔を利用するようにしてもよい。
次に、この発明の第二実施例について説明する。
図8は、本実施例における自動二輪車の側面形状を示す。図中の符号1は前輪、2はフロントフォーク、3はヘッドパイプ、4はハンドル、5はメインフレーム、6はセンタフレーム、7はピボット軸、8はスイングアーム、9は後輪、10は後輪懸架装置(スイングアーム式懸架装置)である。
また、符号11はフェアリング、12は吸気ダクト、13は導風フラップ、14はエアクリーナ、15はラジエタ、16はV型エンジンである。エンジン16は前後気筒の谷間において、エアクリーナ14の後端から吸気するようになっている。17は燃料タンク、18はシートである。
図9は後輪懸架装置10の部分の側面形状を示す。後輪懸架装置10は、センタフレーム6に対してピボット軸7により前端を揺動自在に支持された側面視略台形状のスイングアーム8と、このスイングアーム8の前部と交差するように上下方向に長く配置されたクッションユニット20とリンク機構より構成される。
リンク機構はスイングアーム8の上部へ一端を回動自在に支持され、他端をクッションユニット20の上端部へ回動自在に連結されたクッションアーム21と、このクッションアーム21の中間部とセンタフレーム6の下部背面側に設けられたボス6aとを連結する車体側連結リンク22からなる。
クッションユニット20はクッションアーム21が連結されるトップ部23と、このトップ部23と一体に進退動するピストンロッド24により作動するダンパ25と、トップ部23とダンパ25のボトム部25aとの間に設けられるクッションスプリング26及びダンパ25のボトム部25aから延出するリザーブタンク27とを備える。ボトム部25aは、クッションブラケット28によりスイングアーム8の前側底部へ取付けられている。
ピボット軸7と後輪車軸9aを結んだ線をスイングアーム8のスイング中心線とし、クッションユニット20の伸び切り位置におけるものをA、最縮み位置におけるものをBとすれば、ABの間でスイングアーム8はピボット軸7を中心に揺動する。この揺動に伴って、クッションユニット20はスイングアーム8と共に揺動するが、クッションアーム21は車体側連結リンク22により反時計回り方向へ揺動するため、例えば、縮み側では、クッションユニット20がクッションアーム21により縮められて減衰力を発揮し、ダンパ25とクッションスプリング26により後輪9側から入力される衝撃荷重を吸収する。
図10は、後輪懸架装置10の詳細構造を示すため、一部を断面にして示す図である。スイングアーム8の前部中央には、上下へ開放されたクッション取付穴30が貫通形成され、その中をクッションユニット20が上下に通されている。クッションユニット20は、平面視で後述する車体中心線Cと平行に配置されるとともに、クッションユニット20の中心線Dが車体中心線Cと重なるように配置されている。この図においてクッションユニット20は伸び切り状態(第一実施例における全伸状態)を示す。
スイングアーム8の底部には、クッションユニット20の軸線Dと略直交する面をなすように、図示の側面視で略三角形状をなすように下方へ突出するブラケット取付段部31が形成され、ここへクッションブラケット28がボルト32により下方から締結される。クッションブラケット28は上向きに開放された略椀状をなし、内部に設けられた軸受33により、ボトム部25aから下方へ突出するジョイント部25bを回動自在に支持し、クッションユニット20が軸受33によりジョイント部25bを中心にしてトップ部23側が揺動自在になっている。
軸受33はカラー34の内側に収容され、カラー34の内側に設けられた凹面を摺動自在である。カラー34の内側下部は軸受33の抜け止め構造が設けられている。カラー34の外周面にはネジ溝が形成され、クッションブラケット28の底部に設けられた貫通穴内へ上方から挿入され、下方へ突出した端部をナット34aで締結することによりクッションブラケット28の底部へ固定される。
リザーブタンク27はボトム部25aの下端部よりクッションブラケット28を貫通してクッションブラケット28の後方へ出て、ここで略筒状をなすタンク部はその軸線を車幅方向へ向けた状態で横置き配置されている。クッションブラケット28の横幅はクッション取付穴30の開口幅よりも広く、かつ後輪9との間に十分なクリアランスdを形成する(図9参照)。
29a及び29bはスイングアーム8の内部に一体形成された上下方向へ延びるリブである。このうちリブ29aは階段状に屈曲し、そのうちの略水平をなす平面部はクッション取付穴30の上部開口より下方へ引き込んだ段42部をなし、この段部42に臨むスイングアーム8の一部が立壁35をなす。この立壁35にはクッションアーム21の後端部21aが第一取付軸36で連結されている。
車体側連結リンク22は後述するように左右一対で平行する棒状をなし、クッションユニット20のクッション取付穴30内を斜め上下方向へ配され。側面視でスイングアーム8と交差している。車体側連結リンク22の上端22aはクッションアーム21の中間部21bを左右から挟み、第二取付軸37で相互に連結される。クッション取付穴30に臨む前後の内壁は、車体側連結リンク22の揺動を許容できるように、前側璧部の下部及び後側璧部をなすリブ29aの段部42との肩部がそれぞれ逃げ斜面30a及び30bになっている。
クッションアーム21の前端21cは後述するように二股状をなしてトップ部23の先端突出部23aを左右から挟み、第三取付軸38で連結されている。
また、車体側連結リンク22の下端部22bはボス6aに対して取付軸39で連結されている。これらの取付軸は長尺ボルト等で適宜構成される。
図中の17aは燃料タンク17の後端部から連続してシート18の下方へ伸びるタンク延長部であり、その底部17bはトップ部23及びクッションユニット20との干渉を避けるべく上方へ凹んでいる。
図11はスイングアーム8の側面視形状、図12はスイングアーム8の平面視形状を示す。これらの図において、スイングアーム8は前半部8aで左右が連結一体化されている。前半部8a及び後半部8bの基本的部分は、軽合金等からなる複数の分割部材を溶接して中空状に形成されている。図11に示す符号40はピボット軸7を通すピボットパイプ部、41はチェーン(図示省略)を通すための側面凹部である。
また、ブラケット取付段部31は、スイングアーム8の一部をなす後述する中央底部8fの底部と一体成形され、その一部にボス部31aが設けられ、このボス部31aにクッションションブラケット28を取付けるボルト32の締結相手となるナット部31bが形成されている。
図12に示すように、前半部8aの中央にクッション取付穴30が上下方向へ貫通して形成され、後半部8bは後輪9の左右を囲むように二股状に枝分かれした形状をなしている。前半部8aの左右には、中央部分に対して別体に形成された側面張り出し部8c,8d及び8e等が溶接で一体化されている。また、図12のCは車体組立状時における車体中心線である。
図12に示すように、クッション取付穴30の後方には上方へ開放された凹部状をなして段部42が設けられ、この上面に平行する一対の立壁35が前後方向及び上方へ向かって延びるように一体成形され、この一対の立壁35間に入れられたクッションアーム21の後端部21aが第一取付軸36で立壁35へ連結されるようになっている。
図13は図11の6−6線断面であり、一対の立壁35には、クッションアーム21の後端部21aを取付けるための第一取付軸36を通す通し穴44が形成され、かつ、この通し穴44の軸線上となる側面張り出し部8cには貫通穴45が側面に開口して形成され、さらに段部42が形成される中央上部8gの側面壁46にも通し穴44に対応する通し穴47が設けられている。これらの通し穴44及び47を通して車体側方から第一取付軸36を差し込んでクッションアーム21の後端部21aを立壁35へ連結するようになっている。
図示されたスイングアーム8の前半部8aは、中央部分が上から、中央上部8g、中央中間部8h及び中央下部8fを重ねて溶接一体化するとともに、それぞれの側面に対して、図の左側から側面張り出し部8c,右側から同8d及び8eを溶接にて一体化することにより組み立てられる。後半部8b側も同様の構造をなす。なお、側面張り出し部8d及び8eは上下に分離され、その間にチェーンライン用の凹部空間が形成されている。また、中央下部8fの車幅方向中央部は上方へ突の湾曲断面をなす凹溝が前後方向へ延びて形成される。なお、スイングアーム8は、このような溶接により組み立てるばかりでなく、軽合金の鋳造等、適宜材料及び適宜製法で形成できる。
図14はクッションアーム21の側面視形状、図15は同平面視形状を示す。クッションアーム21は軽合金の鋳造等、適宜材料及び適宜製法で形成され、側面視略弓形形状をなす。ここで略弓形形状とは、クッションアーム21の側面視形状が図の上方へ突に湾曲する形状をなすことをいう。但し、この湾曲形状とは、上縁部54のように大略R状をなすもの、及び下縁部55のように略屈曲形状をなすものでもよい。
図15に示すように、クッションアーム21の後端部21a及び中間部21bはボス形状をなし、前端部21cは二股状をなす。それぞれは取付時に車体中心線Cに沿って配設されるリブ50によって連結されるとともに、平行する貫通穴51,52,53が車幅方向へ貫通して形成されている。各貫通穴内には図示を省略する取付軸が通される。
なお、前端部21cの二股部における一方側にはナット部54が一体に形成され、二股部に先端突出部23aを入れ、他方側からボルト状の第三取付軸38を貫通穴53へ通して先端のネジ部をナット部54へ締結するようになっている。また、中間部21bは車幅方向寸法が最も長く、トップ部23を含むクッションユニット20の最大外径よりも長くなっている。さらに、リブ50の左右両側は肉抜き凹部54とされ、クッションアーム22全体の軽量化を図っている。
図14に示すように、これら各取付軸の中心を点O1〜O3とする。また、点O1とO3間の中心線をp、点O1とO2間をq、点O2とO3間をrとする。q<rなる関係があり、レバー比p/qが1より大きな任意の比に設定されている。
車体側連結リンク22の引っ張り力が作用する点O2は直線pよりも図の上方へずれている。また、上縁部54は、点O2より上方を通って後端部21aと前端部21cを図の上方へ突に湾曲して大略一つのR状に結んでいる。上縁部54の湾曲は、車体側連結リンク22による引っ張り方向Eと反対側へ突になっている。クッションアーム21の下縁部55も、一つのR状ではないが、やはり点O2より下側を通る屈曲した曲線状に湾曲して後端部21aと前端部21cを結んでいる。さらに、直線r及びqの交点である点O2は、直線pを2等分した点Pよりも点O1側へ寸法tなる量でオフセット配置されている。uは点Pを通る直線pの二等分線である。
下縁部55のうち、中間部21bとクッションアーム21の後端部21a間の後部55aは略直線状をなすとともに直線pよりも図の下側に位置する。一方、中間部21bと前端部21c間は、前端部21c近傍まで後部55aのほぼ直線状延長部に相当する中間部55bをなす。中間部55bは大部分が直線pよりも図の上側に位置する。中間部55bより前方部分は屈曲して斜めに前端21cへつながる前部55cをなす。前部55cは、後部55aと中間部55bを近似させた仮想直線sの延長よりも引っ張り方向E側へ突出するように曲がっている。仮想直線sは後端部21a及び中間部21bの各円形部外周に対する共通接線にもほぼ相当する。このとき、点O3は直線sはもとより直線pよりも引っ張り方向E側へずれた位置にある。
図16は車体側連結リンク22の側面視形状、図17は同平面視形状を一部断面にて示す。これらの図に示すように、車体側連結リンク22も軽合金の鋳造等、適宜材料及び適宜製法にて成形され、左右一対のアーム部60と、それぞれの一端を連結するクロス部61とからなる。車体側連結リンク22を車体中心Cから見て、アーム部60を左右対称に2本配置し、クッションアーム21を挟んで連結されている。左右のアーム部60間の距離は、クッションアーム21の最も幅広となる中間部21bの幅と同程度であり、クッションユニット20の外径よりも大きくなっている。
アーム部60は中実状に形成され、その一端部である上端22aに相当する部分には第二取付軸37のための貫通穴62が形成され、クッションアーム21の中間部21bにおける貫通穴52と同軸で合わせられる。また、クロス部61は車体側連結リンク22の下端部22bをなし、ここには左右方向へ延びる貫通穴63が形成され、ここに図示しないベアリングを介して取付軸39が貫通される。取付軸39の中心を点O4とする。
ここで、車体側連結リンク22とセンタフレーム6との連結点、つまり取付軸39の中心O4は、スイングアーム8のクッションブラケット28とクッションユニット20の下端部であるジョイント部25bとの連結点、つまりジョイント部25bの回動(揺動)中心よりも上方に位置している。これにより、センタフレーム6の上下長が短縮され、リンク機構の効率が向上し、センタフレーム6へのモーメントが小さくなる。
図18はクッションユニット20を取付時における車体後方側から見た外形形状を示す図である。この図に明らかなように、ボトム部25aの下部にリザーブタンク27がボルト70により締結一体化されている。リザーブタンク27は、円筒状をなし、その軸線Fがクッションユニット20の軸線Dと直交して図の左右方向となるように横向きになっている。
次に作用を説明する。図19は、後輪懸架装置10の動作を示す図である。スイングアームがクッションユニット20の伸び切りとなるAの位置にあるとき、クッションユニット20は下端をスイングアームへ固定されているため、トップ部23が最も上方へ伸び出した実線の位置にある。このとき、点O1とO3を結ぶ直線pと、クッションユニット20の中心線Dとのなす角(対角で示す)はαをなす。この鋭角αの程度は仕様に応じて適宜に設定される。
スイングアームが伸び切り位置Aから最縮み位置Bへ向かって縮み側へ揺動すると、ピボット軸7を中心に図の反時計回りに揺動する。このとき、クッションユニット20及びクッションアーム21もスイングアームと一体に揺動するが、車体側連結リンク22は一端をボス6aに連結されているため、クッションアーム21をさらに大きく反時計回り方向へ回動させ、その先端21cがクッションユニット20のトップ部23の先端突出部23aを下方へ押し込んで縮める。
やがてスイングアームのスイング中心線がB位置となり、クッションユニット20が仮想線で示す最縮み状態(第一実施例における全屈状態)となると、クッションユニット20は前傾して先端突出部23aはセンタフレーム6の肩部に近接し、点O3は当初位置よりもかなり下方に位置し、中心線Dと直線pのなす角は大略直角近傍まで増大する。
また、スイングアームの揺動角が増大するにしたがって、直線pとクッションユニット20の中心線Dとのなす角αが次第に増大するから、点O1を中心として半径を直線pとする点O3が描く円弧における点O3の接線が次第にクッションユニット20の中心線Dと平行な状態に近づく。このため、クッションユニット20のトップ部23を押す点O3の中心線D上における移動変化量は、スイングアームの揺動角が増大するにしたがって漸増することになり、スイングアームの揺動角変化に対してクッションユニット20のストローク量が非線形的に変化するプログレッシブ効果を発揮する。
このとき、クッションアーム21は、上縁部54側が車体側連結リンク22の引っ張り力が作用する点O2を囲むように引っ張り方向Eと反対側へ突に湾曲する側面視で略弓形状をなしているので、車体側連結リンク22の引っ張り荷重方向に対して十分な剛性を有する。その結果、懸架装置全体の剛性が上がるため、良好なクッション性能を維持できる。しかも、高剛性のアッパーリンク形式を形成することができる。また、同程度の剛性で足りる場合にはより軽量化できる。さらに下縁部55側も上縁部54側に似せたR形状にすれば、側面視における上下縁部54,55間の幅が狭くなるから、やはり軽量化が可能になる。
そのうえ、前述のように、伸び切り状態における直線pとクッションユニット20の中心線Dとのなす角αを鋭角にしておくことが好ましいが、このようにすると、一般的には、クッションユニット20のトップ部23とクッションアーム21の前端部21cとが干渉を生じ易くなる。しかし、本実施例では、クッションユニット20に連結するクッションアーム21の長さ方向端部である前端部21cのうち、前部55cが仮想直線sの延長よりもクッションユニット20の縮み方向へ斜めに屈曲して突出するようにしたので、クッションアーム21の前端部21cが作動時にクッションユニット20と干渉することをより確実に避けることができる。
しかも、図19から明らかなように、点O3の位置は、伸び切り位置Aにおける位置が最も上方となり、縮み側へ向かって次第に低くなる。したがって、伸び切り位置Aにて、クッションアーム21及びクッションユニット20のトップ部23等が、スイングアームの上方に位置する他の車体側部材と干渉しないように設定すれば、その後スイングアームが上方へ揺動しても、これらの部材間における干渉を避けることができる。
また、車体側連結リンク22を車体中心Cから見て、アーム部60を左右対称に2本配置したので、クッションユニット20は剛性が高くなる。そのうえ、車体中心Cから見て車体側連結リンク22が左右対称に配置されるので、クッションユニット20の作動を正確にすることができる。しかも、左右のアーム部60間の距離は、最も幅広となる中間部21bの車幅方向寸法と同程度以上となるから、車体側連結リンク22もクッションユニット20と干渉しないようにできる。
さらに、リザーブタンク27をクッションユニット20の下部に取付けてスイングアーム8の下方へ配置したので、クッションアーム21及びスイングアーム8上方の車体側部材、例えば、燃料タンク17等との干渉を避けて配置でき、アッパーリンク形式のレイアウトが容易になる。
しかも、スイングアーム8に設けたクッション取付穴30にリザーブタンク27入れることなく、スイングアーム8の下方からクッションユニット20だけをクッション取付穴30へ入れ、クッションブラケット28をスイングアーム8の取付ブラケット取付段部31へボルト止めすることにより、リザーブタンク27をクッション取付穴30内へ通過させることなく取付けできる。このため、取付性及びメンテナンス性が向上するとともに、スイングアーム8のクッション取付穴30を可及的に小さくでき、スイングアーム8の剛性確保を容易にする。
また、クッションアーム21において、車体側連結リンク22の連結点である点O2が、スイングアーム8及びクッションユニット20との各連結点であるO1及びO3の中間に位置するとともに、スイングアーム8との連結点である点O1側へオフセットされているので、クッションアーム21によりスイングアーム8の揺動をクッションユニット20へ伝達してストロークさせる際におけるレバー比をかせぐことができ、スイングアーム8の小さな揺動でクッションユニット20を大きくストロークさせることができる。
そのうえ、リザーブタンク27を横置きにしたので、リザーブタンク27をスイングアーム8の下方へ配置したにもかかわらず十分な地上クリアランスを確保できる。また、後輪9に近接配置できるとともに、クッションユニット8が揺動しても後輪9との位置関係はほぼ一定であるから後輪9との干渉を回避して配置でき、リザーブタンク27をスイングアーム8の下方配置する場合におけるレイアウトを容易にするとともに、ホイールベース設定の自由度を増大させることができる。
なお、本願発明は上記各実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、クッションアームの略弓形形状として、上縁部54及び下縁部55の両方をほぼ一様のR形状にすることもでき、反対に一様に変化せず不規則に変化する形状にすることもできる。要は、中間部が引っ張り方向と反対側へ突に湾曲し、相対的に長さ方向両端が引っ張り方向へ延びていれば足りる。さらに、自動二輪車以外の例えばバギー車等の各種車両にも適用できる。またスイングアーム式であれば、前輪懸架装置に対しても利用可能である。