JP2004292785A - カラーフィルター用黄色顔料組成物およびそれを着色画素部に含有してなるカラーフィルター - Google Patents
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Abstract
【課題】粘度が低く、保存安定性に優れる顔料分散液が得られるカラーフィルター用黄色顔料組成物、これを用いた透明性に優れるカラーフィルターを提供する。
【解決手段】キノフタロン系顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩とを含有するカラーフィルター用黄色顔料組成物において、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩が、キノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩であることを特徴とするカラーフィルター用黄色顔料組成物及び着色画素部に前記カラーフィルター用黄色顔料組成物を含有してなるカラーフィルター。
【選択図】 なし。
【解決手段】キノフタロン系顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩とを含有するカラーフィルター用黄色顔料組成物において、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩が、キノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩であることを特徴とするカラーフィルター用黄色顔料組成物及び着色画素部に前記カラーフィルター用黄色顔料組成物を含有してなるカラーフィルター。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶カラーディスプレー、ビデオカメラ、カラーエレクトロルミネッセントディスプレー等に使用されるカラーフィルター用黄色顔料組成物およびそれを着色画素部に含有してなるカラーフィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置に用いられるカラーフィルターは、ガラス等の透明基板上に赤色、緑色、青色の各画素部(パターンとも呼ばれる。)が形成されたものであり、赤色画素部、緑色画素部を構成する材料として、少なくとも黄色顔料C.I.Pigment Yellow138(以下「PY138」と略す。)および前記PY138スルホン酸誘導体の2種類の材料を併用することが提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1には、PY138スルホン酸誘導体としてスルホン酸またはスルホン酸アミン塩が記載されている。前記誘導体の併用により、カラーフィルターの製造に用いる顔料分散液(着色カラーペースト)の分散性がPY138を単独で使用するのに比べて若干改良されるものの、未だ顔料分散液の粘度は比較的高く、さらに保存安定性も不充分であった。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−179979号公報(第4頁段落番号0014〜0016、第6頁段落番号0043〜0046、第7頁段落番号0049、第9頁段落番号0072)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、粘度が低く、保存安定性に優れる顔料分散液が得られるカラーフィルター用黄色顔料組成物、これを用いた透明性に優れるカラーフィルターを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、前記実状に鑑みて鋭意検討した結果、キノフタロン系顔料と併用するキノフタロン系顔料のスルホン酸誘導体として、従来のキノフタロン系顔料のスルホン酸やキノフタロン系顔料のスルホン酸アミン塩ではなく、キノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩を用いることにより、前記課題を解決出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、キノフタロン系顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩とを含有するカラーフィルター用黄色顔料組成物において、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩が、キノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩であることを特徴とするカラーフィルター用黄色顔料組成物および前記カラーフィルター用黄色顔料組成物を着色画素部に含有してなるカラーフィルターに関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、キノフタロン系顔料とキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩を含有するカラーフィルター用黄色顔料組成物において、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩が、キノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩であることを特徴とするカラーフィルター用黄色顔料組成物により構成される。
【0009】
本発明で用いられるキノフタロン系顔料は、キナルジンと無水フタル酸から生成される縮合多環系顔料である。この系に属する顔料は、耐熱性、耐候性、耐溶剤性、耐薬品性等の堅牢性に優れ、カラーフィルターやインクジェット記録用水性インキ用途に使用される。
【0010】
キノフタロン系顔料としては、例えば、下記一般式(1)で示されるキノフタロンイエロー(PY138)や、その無水フタル酸残基がアルキル基やハロゲン原子で置換されたものが挙げられる。ハロゲン置換数は多いほど好ましく、さらにハロゲン原子としては合成が容易であることから、塩素原子、臭素原子であることが好ましい。より具体的には、市販キノフタロン系顔料(独国、ビー・エー・エス・エフ社製Paliotol Yellow K0961 HD等)やそれに対応するキノフタロン系粗製顔料を使用することができる。
【0011】
【化1】
【0012】
本発明で用いられるキノフタロン系顔料は、PY138であり、従来公知の製造方法、例えば、「Industrial Organic Pigments(W.Herbst、K.Hunger著)」第539頁第1行〜第9行に記載されている様に、8−アミノキナルジン1モルとテトラクロロ無水フタル酸2モルとを130〜300℃で反応させて製造することができるが、該製造方法は特に限定されるものではない。
【0013】
本発明で用いられるキノフタロン系顔料(PY138)は、一次粒子の平均粒子径が10〜100nmの範囲にあるものが好ましく、25〜50nmの範囲にあるものがより好ましい。一次粒子の平均粒子径を上記範囲に調製することにより、透明性に優れた着色画素部を有するカラーフィルターを得ることができる。
一次粒子の平均粒子径が10nm未満では、顔料の凝集性が高くなるので分散させにくく、80nmを超えると透明性が低下する傾向にある。
【0014】
本発明における一次粒子の平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡JEM−2010(日本電子(株)製)で視野内の粒子を撮影し、二次元画像上の(粗)顔料一次粒子の50個につき、その長い方の径(長径)を各々求め、それを平均した値である。この際、試料は、これを溶媒に超音波分散させてから顕微鏡で撮影する。また、透過型電子顕微鏡の代わりに走査型電子顕微鏡を使用してもよい。
【0015】
本発明において、前記着色画素部は赤色画素部、緑色画素部、青色画素部のいずれでもよいが、なかでも赤色画素部と緑色画素部が好ましい。
【0016】
緑色画素には主に緑色顔料と黄色顔料が、赤色画素には主に赤色顔料と黄色顔料が用いられて調色され、バックライトと液晶表示素子の光線透過特性に合うように緑色顔料と黄色顔料、赤色顔料と黄色顔料の含有比を調整して、要求される色特性に合うように調色される。赤色顔料(例えば、C.I.Pigment Red 254、以下「PR254」と略す。)と黄色顔料(PY138)の含有比は、赤色顔料の含有比70〜90%、黄色顔料の含有比10〜30%が好ましい。緑色顔料(例えば、C.I.Pigment Green 36、以下「PG36」と略す。)と黄色顔料(PY138)の含有比においては、緑色顔料の含有比は40〜80%、黄色顔料の含有比は20〜60%が好ましい。
【0017】
例えば、緑色画素の色特性は、色度yが大きいほど色が濃くなり、色再現性が高くなる。また、色度xは黄色顔料の含有量によって変化し、色度xが大きいほど黄色味が大きくなり、色度xが小さいほど黄色味が小さくなる。
【0018】
液晶表示装置において、赤色画素、緑色画素、青色画素を同時に点灯させて白表示した時の色度(ホワイトバランス)は重要であり、各画素においても、それぞれ目的とする色度範囲に合わせる必要がある。
【0019】
本発明の黄色顔料組成物と混合して使用することができる赤色顔料は、通常カラーフィルターの製造に用いられる赤色顔料全般である。具体的には、C.I.Pigment Red 122(「PR122」と略す、以下同様。)、同123、同149、同177、同179、同209、同224、同254等が挙げられ、なかでも色特性の点からPY177、同254が好ましい。
【0020】
さらに、本発明の黄色顔料組成物と混合して使用することができる緑色顔料は、通常カラーフィルターの製造に用いられる緑色顔料全般である。具体的には、C.I.Pigment Green 7(「PG7」と略す、以下同様。)、同10、同36、同47等が挙げられ、なかでも色特性の点からPG36が好ましい。
【0021】
従来公知の製造方法で得られたキノフタロン系顔料は、必要に応じて顔料化(本発明においては、顔料の一次粒子の平均粒子径を小さくする操作を意味する。)を行うことにより透明性が高い、着色画素部を有するカラーフィルターとすることができる。但し、顔料の微細化が進み、一次粒子の平均粒子径が前記好適な範囲を逸脱すると、上記した理由により顔料分散液の流動特性、保存安定性およびカラーフィルターの透明性、耐熱性が低下する点で好ましくない。
【0022】
本発明の顔料化方法においては特に制限はなく、(粗)顔料を分散媒に分散させると同時に顔料化を行ってもよいが、多量の有機溶剤中で(粗)顔料を加熱攪拌するソルベント処理よりも、容易に結晶成長を抑制でき、一次粒子の平均粒子径の小さい顔料が得られ、分散性に優れ、結果的に顔料分散液の粘度が低く、保存安定性に優れた、透明性が高い着色画素部を有するカラーフィルターが得られる点で、ソルベントソルトミリング処理を採用するのが好ましい。
【0023】
このソルベントソルトミリングとは、(粗)顔料と、無機塩と、有機溶剤とを混練磨砕することを意味する。具体的には、(粗)顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行う。この際の混練機としては、例えば、ニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0024】
ソルベントソルトミリング時の温度は、30〜150℃が好ましく、なかでも70〜110℃がより好ましい。また、ソルベントソルトミリング時の時間は、3〜15時間が好ましく、なかでも5〜10時間がより好ましい。
【0025】
こうして、キノフタロン系顔料、無機塩、有機溶剤を主成分として含む混合物が得られる。該混合物から前記無機塩と有機溶剤を除去、洗浄することによりキノフタロン系顔料が得られる。
【0026】
上記キノフタロン系顔料の洗浄方法としては、例えば、アルコール、イオン交換水、酸性又はアルカリ性の水溶液中にて解こう後、水あるいは温水のいずれかにより洗浄を行うことができる。この際、電導度が水あるいは温水との差において50μS/cm2以下、好ましくは20μS/cm2以下となるまで洗浄を行う。
【0027】
なかでもカラーフィルター用途において、電荷保持率(VHR)の更なる向上を目的とする場合には、ソルベントソルトミリング後の前記混合物を0.5〜10%濃度の酸性水溶液中に解こうし、40〜80℃の温水で0.5〜2時間かけて洗浄を行うことが好ましい。その結果、不純物イオンが削減され、電荷保持率の高いカラーフィルター用顔料が得られる。
【0028】
無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径が0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。この様な無機塩は、通常の無機塩を微粉砕することにより容易に得られる。
【0029】
該無機塩の使用量は、特に限定されるものではないが、(粗)顔料1質量部に対して1〜30質量部が好ましく、15〜25質量部がより好ましい。(粗)顔料に対する無機塩の使用量が多いほど顔料はより微細化する傾向にあるが、最終製品の品質、処理効率および生産効率の点で上記使用量の範囲が好ましい。
【0030】
有機溶剤としては、結晶成長を抑制し得る有機溶剤を使用することが好ましい。この様な有機溶媒としては、水溶性有機溶剤が好適に使用でき、例えば、ジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール等を用いることができる。
【0031】
該水溶性有機溶剤の使用量は、特に限定されるものではないが、粗顔料1質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
【0032】
本発明におけるキノフタロン系顔料は、必要に応じて、ロジン処理、酸性基処理、塩基性基処理等の表面処理、高分子分散剤処理、界面活性剤処理が施されているものを使用してもよい。
【0033】
本発明で用いられるキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩は、例えば、下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。Xで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子が挙げられ、各々のXは同一原子であっても異なる原子であっても良い。Mは1価、2価あるいは3価の金属原子であり、これら金属原子としては、カリウム原子、ナトリウム原子、リチウム原子、カルシウム原子、マグネシウム原子、ストロンチウム原子、アルミニウム原子等が挙げられる。
【0034】
【化2】
【0035】
尚、上記一般式(2)中、nは後記するキナルジン由来の芳香環に置換されている原子団(SO3)の数であって1〜3である。n≧2の場合、個々の原子団(SO3)は、キナルジン由来の芳香環の異なる炭素原子に結合している。また、スルホン酸基またはスルホン酸塩に相当する原子団(SO3)Mは、SO3Naや(SO3)3Alの様に電気的中性である。スルホン酸(SO3H)は1価の酸であるので、この水素原子を、水素原子以外の他の原子団Mで置換すると、n=1の時に、Mが2価の金属原子等の場合は1/2モル、3価の金属原子等の場合は、1/3モルで当量となる。
【0036】
本発明で用いられるキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩は、例えば、以下の様な従来公知の方法により合成される。キノフタロン系顔料を濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、またはこれらの混合液等に投入してスルホン化反応を行う。反応液を大量の水で希釈、あるいはアルカリ金属水溶液または金属塩水溶液で中和し、得られた懸濁液を濾過した後に水系の洗浄液で洗浄し、乾燥する。中和を行わない場合、得られるキノフタロン誘導体は酸となり、中和を行うと塩になる。
【0037】
本発明で用いられるキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩は、金属塩との混合で、例えば、金属の価数が一価の場合、水溶液中で解離しやすいため、スラリーで処理すると吸着していないスルホン酸イオンと金属イオンが濾過の際に溶け出し、処理効果が小さくなる可能性がある。そこで溶解度積が低くなる無機金属、具体的には二価の金属と結合したキノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩が好ましい。
【0038】
キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩は、本発明の黄色顔料組成物の分散性をより向上させるとともに、カラーフィルター用途で使用する場合、顔料分散液の分散性が向上して低粘度化、粘度・色度の経時安定性の向上、およびカラーフィルター着色画素部とした場合の透明性(Y値)が向上する点で、前記金属塩中の金属としては二価金属であるカルシウム、ストロンチウムが好ましい。
【0039】
キノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩の生成方法としては、例えば、以下の様な方法で生成される。キノフタロン系顔料のスルホン酸水溶液にアルカリ金属水溶液を加え、アルカリ性にして溶解させる。次いで、二価金属塩水溶液を加えて攪拌した後、酸を加えて酸析する。その後、濾過、水あるいは温水で十分に洗浄した後、乾燥してキノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩が得られる。
【0040】
またキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩は、前記金属塩の粒子径が比較的大きい場合や、さらに粒子径を小さくしたい場合には、粉砕してから使用することが可能である。
【0041】
キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩中のスルホン酸基は、金属の価数が1価、2価あるいは3価の金属化合物と反応させて、対応するスルホン酸の金属塩とすることができる。
【0042】
キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩は、前記一般式(2)の様にn=1〜3のみの成分から構成されていてもよいが、工業的には、前記合成方法において精製等を行わずに、n=0のキノフタロン系顔料をも含んだ顔料組成物として、あるいはn=1〜3のみの前記誘導体と前記した様な既存のキノフタロン系顔料とを併用して顔料組成物として、これら顔料組成物全体に含まれるスルホン酸基またはスルホン酸金属塩の含有率(平均置換基数)が0.3〜3となる様に構成されてもよい。
【0043】
また、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩の合成方法によれば、該金属塩は、スルホン酸基またはスルホン酸金属塩を分子構造中に置換基として含有することによる結晶性の低下に伴い、スルホン酸基またはスルホン酸金属塩を置換基として有さない対応するキノフタロン系顔料よりも微細なものとすることができる。
【0044】
従って、本発明で用いられるキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩は、PY138の様なキノフタロン系顔料と併用することにより、被着色物中における顔料自体の分散性を向上させ、着色物の流動性をより高めることができ、成形時等の熱収縮性をより小さくなる様に改良することが可能となる。
【0045】
本発明の黄色顔料組成物が、キノフタロン系顔料とキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩から生成される方法としては、例えば、(1)前記顔料と前記金属塩を粉体同士で混合(粉体混合)する方法、(2)ソルベントソルトミリング時に前記顔料と前記金属塩とを添加(共磨砕)する方法、(3)前記顔料に前記金属塩を染め付け処理する方法等がある。
【0046】
上記(3)の方法として、より具体的には、キノフタロン系顔料スラリー中に、キノフタロン系顔料のスルホン酸塩水溶液(キノフタロン系顔料のスルホン酸に例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水溶液を加え、pHを8〜12程度に調整して溶解させたもの。)と、二価の金属塩を含む水溶液(例えば、塩化カルシウム、塩化ストロンチウムを温水で完全に溶解したもの。)とを添加する方法(以下、「顔料スラリー染め付け処理」と略す。)である。
【0047】
同方法は、上記(1)、(2)の方法に比べてキノフタロン系顔料の粒子表面近傍にキノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩を充分に吸着させることにより、前記スルホン酸二価金属塩の添加量が少量でも顔料組成物の分散性がより向上し、透明性が高く、粘度・色度の経時変化が小さい点で好ましい。
【0048】
上記顔料スラリー染め付け処理は、特に限定されたものではないが、例えば、顔料スラリー中にキノフタロン系顔料のスルホン酸塩水溶液と、二価の金属塩を含む水溶液とを順次添加してもよいし、顔料スラリー中にあらかじめキノフタロン系顔料のスルホン酸塩水溶液を加え、次いで二価の金属塩を含む水溶液を添加してもよい。
【0049】
キノフタロン系顔料に対するキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩の添加量は、特に制限されるものではないが、前記効果の程度や色味の変化を考慮すると、質量換算で、キノフタロン系顔料100部当たりキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩0.5〜49部が好ましい。
【0050】
キノフタロン系顔料とキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩とを含む黄色顔料組成物は、必要ならば、例えば、ソルベント法やソルベントソルトミリング法等の従来公知の顔料化処理を行うことにより、より微細で粒径分布の揃った前記黄色顔料組成物を調製することができる。
【0051】
本発明の黄色顔料組成物は、従来公知の方法でカラーフィルター着色画素部、同着色画素部調製用黄色顔料の形成に用いることができる。
【0052】
カラーフィルター用着色画素部の製造方法としては、例えば、この黄色顔料組成物を熱硬化性樹脂からなる分散媒に分散させた後、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法等でガラス等の透明基板上に塗布し、次いでこの塗布膜に対して、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を溶剤等で洗浄して着色画素部、同着色画素部調製用黄色顔料を得る、フォトリソグラフィーと呼ばれる方法が挙げられる。
【0053】
その他、電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(Photovoltaic Electrodeposition)法の方法で着色画素部、同着色画素部調製用黄色顔料を形成して、カラーフィルターを製造してもよい。
【0054】
カラーフィルターの着色画素部を形成するための光硬化性組成物(顔料分散フォトレジストとも呼ばれる。)を調製するには、本発明の黄色顔料組成物と、熱可塑性樹脂と、光重合開始剤と、樹脂を溶解する有機溶剤とを必須成分として混合する。その製造方法としては、本発明の黄色顔料組成物と、有機溶剤とを必要に応じて分散剤を用いて顔料分散液(着色ペーストとも呼ばれる。)を調製してから、そこに熱可塑性樹脂等を加えて光硬化性組成物とする方法が一般的である。
【0055】
必要に応じて用いる分散剤としては、前記した様なものが挙げられる。また、レベンリグ剤、カップリング剤、カチオン系の界面活性剤なども併せて使用可能である。紫色有機顔料は、この光硬化性組成物の調製時に含ませることもできる。
【0056】
有機溶剤としては、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル、水等が挙げられる。なかでも、プロピオネート系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、窒素化合物系、ラクトン系、水等の極性溶媒で水可溶のものが好ましい。水可溶の有機溶剤を用いる場合には、それに水を併用することもできる。
【0057】
本発明の黄色顔料組成物100質量部当たり、300〜1000質量部の有機溶剤と、必要に応じて0〜100質量部の分散剤及び/または0〜100質量部の樹脂及び/または0〜20質量部のキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩とを、均一となる様に攪拌分散して顔料分散液を得ることができる。
次いでこの顔料分散液に、本発明の黄色顔料組成物1質量部当たり、熱可塑性樹脂と光硬化性化合物の合計が3〜20質量部、光硬化性化合物1質量部当たり0.05〜3質量部の光重合開始剤と、必要に応じてさらに有機溶剤を添加し、均一となる様に攪拌分散してカラーフィルターの着色画素部、同着色画素部調製用黄色顔料を形成するための光硬化性組成物を得ることができる。
【0058】
光硬化性組成物の調製に使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等が挙げられる。
【0059】
光硬化性化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3−メチルペンタンジオールジアクリレート等の様な2官能モノマー、トリメチルロールプロパトントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の比較的分子量の小さな多官能モノマー、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート等の様な比較的分子量の大きな多官能モノマーが挙げられる。
【0060】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、ベンゾイルパーオキサイド、2−クロロチオキサントン、1,3−ビス(4’−アジドベンザル)−2−プロパン、1,3−ビス(4’−アジドベンザル)−2−プロパン−2’−スルホン酸、4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルホン酸等が挙げられる。
【0061】
カラーフィルターは、平行な一対の透明電極間に液晶材料を封入し、透明電極を不連続な微細区間に分割すると共に、この透明電極上のブラックマトリクスにより格子状に区分けされた微細区間のそれぞれに、赤(R)、緑(G)及び青(B)のいずれか1色から選ばれたカラーを交互にパターン状に設ける方法あるいは基板上にカラーフィルターを形成した後、透明電極を設ける様にすることで得ることができる。
【0062】
こうして調製された着色画素部を形成するためのカラーフィルター用光硬化性組成物は、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を有機溶剤やアルカリ水等で洗浄することにより、上記着色画素部を有するカラーフィルターとなすことができる。
【0063】
本発明の黄色顔料組成物を使用して製造されたカラーフィルター用着色画素部、同着色画素部調製用黄色顔料は、透明性(Y値)がより高くなる。したがって、本発明の黄色顔料組成物は、カラーフィルター用着色画素部および同着色画素部調製用黄色顔料の形成に最適である。
【0064】
さらに上記着色画素部と青色画素部から成るカラーフィルターを使用して製造された液晶表示装置は、高色純度と高透過率を両立させた色特性と、コントラストの高い表示特性の両方を満足させることができる。
【0065】
本発明の黄色顔料組成物は、黄色を有するので、詳記したカラーフィルター用途以外にも、塗料、プラスチック、印刷インク、ゴム、レザー、捺染、電子写真用トナー、ジェットインキ、熱転写インキ等の着色に適する。
【0066】
【実施例】
次に、本発明を実施例と比較例にて具体的に説明する。以下、特に断りがない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%を意味するものとする。
【0067】
[製造例1](キノフタロン系顔料の作製)
独国ビー・エー・エス・エフ社製 Paliotol Yellow K0961 HD(PY138)200部、塩3000部、ジエチレングリコール850部をニーダーに仕込み、90℃、6時間磨砕を行った。磨砕終了後、混練物を温水に解膠し、濾過を繰り返し、電導度が温水との差において20μS/cm2になるまで洗浄を行い、キノフタロン系顔料ウェットケーキ(1)を得た。その後、乾燥、粉砕を行い、一次粒子の平均粒子径が26nmのキノフタロン系顔料195.0部を得た。
【0068】
[製造例2](キノフタロン系顔料のスルホン酸の作製)
独国ビー・エー・エス・エフ社製 Paliotol Yellow K0961 HD(PY138)20部と、98%硫酸300部とを500mlセパラブルフラスコに入れ、120℃で5時間反応させ、キノフタロン系顔料のスルホン化を行った。その後、この反応混合物を水3000部に取り出し、キノフタロン系顔料のスルホン酸を析出させて、これを30分攪拌して熟成させた後、濾過、水洗を3回繰り返し、キノフタロン系顔料のスルホン酸ウェットケーキ(2)を得た。その後、前記ウェットケーキ(2)を1%希塩酸300部で洗浄、濾過し濾液に着色が出るまで水洗を行った。その後、乾燥を行い、54.0部(収量95.9%)のキノフタロン系顔料のスルホン酸を得た。
【0069】
[製造例3](キノフタロン系顔料のスルホン酸ストロンチウム塩の作製)
製造例2で得たキノフタロン系顔料のスルホン酸ウェットケーキ(2)66.7部(染料分15%)を温水100部に解膠し、水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.5に調整した。そして、塩化ストロンチウム2.2部を10部の温水で完全に溶解して、攪拌したキノフタロン系顔料のスルホン酸ナトリウム塩水溶液に添加し、塩酸でpHを6.5に調整した。その後、濾過、十分に洗浄した後、乾燥してキノフタロン系顔料のスルホン酸ストロンチウム塩10.5部を得た。
上記キノフタロン系顔料のスルホン酸ストロンチウム塩は、CuKα線により測定した粉末X線回折図におけるブラッグ角(2θ±0.2°)=8.14°、12.24°、13.12°、26.14°に回折ピークを有していた。尚、本発明における粉末X線回折図におけるブラッグ角(2θ)は、日本工業規格JISK 0131(X線回折分析通則)に準じて求められたものである。
【0070】
[製造例4](キノフタロン系顔料のスルホン酸アミン塩の作製)
製造例2で得たキノフタロン系顔料のスルホン酸ウェットケーキ(2)66.7部(染料分15%)を温水100部に解膠し、水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.5に調整した。そして、ラウリルアミン2.5部を10%塩酸水溶液10部で完全に溶解して、攪拌したキノフタロン系顔料のスルホン酸ナトリウム塩水溶液に添加し、塩酸でpHを6.5に調整した。その後、濾過、十分洗浄した後、乾燥してキノフタロン系顔料のスルホン酸ラウリルアミン塩10.8部を得た。
【0071】
[実施例1]
製造例1で得たキノフタロン系顔料ウェットケーキ(1)38.0部(顔料分25%)と製造例2で得たキノフタロン系顔料のスルホン酸ウェットケーキ(2)33.3部(染料分15%)を温水100部に解膠し、水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.5に調整した。そして、塩化ストロンチウム1.1部を温水10部で完全に溶解して、攪拌したキノフタロン系顔料と同顔料のスルホン酸ナトリウム塩水溶液に添加し、塩酸でpHを6.5に調整した。その後、濾過、温水で十分に洗浄(電導度が温水との差において20μS/cm2以下)した後、乾燥して黄色顔料組成物(PY138にPY138のスルホン酸ストロンチウム塩を5%添加;顔料スラリー染め付け処理)10.8部を得た。同黄色顔料組成物を黄色顔料として用い、フォトリソグラフィーによりカラーフィルター着色画素部形成用光硬化性組成物(1)、同着色画素部調製用黄色顔料(2)を製造した。
【0072】
カラーフィルター用着色画素部の製造方法としては、顔料組成物10部、N,N’−ジメチルホルムアミド(有機溶剤)2.5部、ディスパービック161(ビックケミー社製分散剤)6.78部、ユーカーエステルEEP(ユニオン・カーバイド社製有機溶剤)80.80部を0.5mmφセプルビーズを加え、ペイントコンディショナー(東洋精機(株)製)で6時間分散し、顔料分散液(着色ペースト)を得た。この顔料分散液75.00部とアロニックスM7100(ポリエステルアクリレート樹脂、東亜合成化学工業(株)製、光硬化性化合物に相当する。)5.50部、KAYARAD DPHA(ジぺンタエリスレートヘキサアクリレート、日本化薬(株)製、光硬化性化合物に相当する。)5.00部、KAYACURE BP−100(ベンゾフェノン、日本化薬(株)製、光重合開始剤に相当する。)1.00部、ユーカーエステルEEP 13.5部を分散攪拌機で攪拌し、カラーフィルター用着色画素部を形成するための光硬化性組成物を得た。この組成物は1mm厚ガラスに乾燥膜厚1μmとなるように塗布した。
【0073】
次いでフォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を有機溶剤で洗浄することによりカラーフィルター用着色画素部とした。
【0074】
[実施例2]
実施例1の黄色顔料組成物に代えて、上記製造例1と3から得られた黄色顔料組成物(PY138にPY138のスルホン酸ストロンチウム塩を5%添加;粉体混合)を使用し、上記フォトリソグラフィーによりカラーフィルター着色画素部形成用光硬化性組成物(3)、同着色画素部調製用黄色顔料(4)を製造した。
【0075】
[実施例3]
実施例1の黄色顔料組成物を、それと同様の一次粒子の平均粒子径としたPG36(高臭素化銅フタロシアニン系緑色有機顔料)、PR254(ジケトピロロピロール系赤色有機顔料)に対して各々60%、80%添加してその合計が100%となる緑色顔料組成物、赤色顔料組成物を調製した。次いで上記着色画素部の製造方法に準じて、緑色および赤色の光硬化性組成物を作製し、緑色画素部および赤色画素部を形成させた。
また、上記緑色顔料組成物、赤色顔料組成物と同様の一次粒子の平均粒子径としたC.I.Pigment Blue 15:6(PB15:6、ε型銅フタロシアニン系青色有機顔料)を用いて、同着色画素部の製造方法に準じて、青色の光硬化性組成物を作製し、青色画素部を形成させた。以上得られたRGBの各画素部よりカラーフィルターを作製した。
【0076】
[比較例1]
実施例1の黄色顔料組成物に代えて、上記製造例1と2から得られた黄色顔料組成物(PY138にPY138のスルホン酸を5%添加;粉体混合)を使用し、上記フォトリソグラフィーによりカラーフィルター用着色画素部形成用光硬化性組成物(5)、同着色画素部調製用黄色顔料(6)を製造した。
【0077】
[比較例2]
実施例1の黄色顔料組成物に代えて、上記製造例1と4から得られた黄色顔料組成物(PY138にPY138のスルホン酸アミン塩を5%添加;粉体混合)を使用し、上記フォトリソグラフィーによりカラーフィルター用着色画素部形成用光硬化性組成物(7)、同着色画素部調製用黄色顔料(8)を製造した。
【0078】
上記実施例1、2および比較例1、2でそれぞれ得たカラーフィルター用着色画素部調製用黄色顔料(2)、(4)、(6)、(8)について、色味、明るさ(いずれも目視評価)、透明性(大塚電子(株)製 顕微分光光度計MCPD−3000を用いて、色座標x値、y値を算出し、両色座標x値、y値を合わせてCIE発色系色度におけるY値を測定)、膜厚(東京精密(株)製 膜厚測定機サーフコム120Aを用いて膜厚を測定)の測定を行った。これらの測定結果を表1にまとめて示す。
【0079】
【表1】
表1
【0080】
表1中、略語は以下の内容を示す。
カッコ内の数字:カラーフィルター用着色画素部調製用黄色顔料の番号
色味 :○…かなり青味を帯びている黄色
×…赤味帯びている黄色
明るさ:○…非常に明るい
×…やや暗い
【0081】
上記実施例1、2および比較例1、2でそれぞれ得たカラーフィルター用光硬化性組成物(作製2時間後;(1)、(3)、(5)、(7)、作製10日後;(9)、(10)、(11)、(12))について粘度の測定を行った。
【0082】
(カラーフィルター用光硬化性組成物の粘度測定)
上記作製の光硬化性組成物((1)、(3)、(5)、(7)、(9)、(10)、(11)、(12))について、東機産業(株)製VISCOMETER MODEL R−Lで、光硬化性組成物作製2時間後と同10日後の粘度(mPa・s)の測定を行った。これらの測定結果を表2にまとめて示す。
【0083】
【表2】
表2
【0084】
表2中、略語は以下の内容を示す。
カッコ内の数字:カラーフィルター用光硬化性組成物(作製2時間後と作製10日後)の番号
【0085】
上記実施例1、2および比較例1、2でそれぞれ得たカラーフィルター用着色画素部調製用黄色顔料について色差(△E)の測定を行った。
【0086】
(カラーフィルター用着色画素部調製用黄色顔料の色差(△E)測定)
上記作製のカラーフィルター着色画素部調製用黄色顔料((2)、(4)、(6)、(8)、(13)、(14)、(15)、(16))について、大塚電子(株)製顕微分光光度計MCPD−3000で、1日目の顔料分散液から作製した着色画素部調製用黄色顔料((2)、(4)、(6)、(8))と10日目の同調製用黄色顔料((13)、(14)、(15)、(16))の色差(△E)の測定を行った。これらの測定結果を表3にまとめて示す。
【0087】
【表3】
表3
【0088】
表3中、略語は以下の内容を示す。
カッコ内の数字:カラーフィルター用着色画素部用調製用黄色顔料(1日目の顔料分散液から作製VS同10日目から作製)の番号
【0089】
表1、2、3の結果から明らかな様に、本発明の黄色顔料組成物は、カラーフィルター用着色画素部を形成する顔料分散液の粘度の経時変化がなく(経時増粘なし)、色度の経時変化も小さいうえに、左記データ自身も比較的低く良好であることが判った。
また、同黄色顔料組成物を使用して製造された着色画素部調製用黄色顔料を着色画素部に有するカラーフィルターは透明性(Y値)が高いことが判った。さらに上記着色画素部と青色画素部から成るカラーフィルターを使用して製造された液晶表示装置は、キノフタロン系顔料のスルホン酸、同スルホン酸アミン塩を使用して、前記同様の操作で得られたカラーフィルターを使用して製造された前記表示装置に比べて、高色純度と高透過率を両立させた色特性と、コントラストの高い表示特性とを示していた。
【0090】
本発明の黄色顔料組成物の生成方法については、顔料スラリー染め付け処理が粉体混合処理に比べて透明性が高く、カラーフィルター着色画素部形成用光硬化性組成物および同着色画素部調製用黄色顔料の粘度・色度の経時変化が小さかった。
【0091】
キノフタロン系顔料のスルホン酸、同スルホン酸アミン塩をキノフタロン系顔料と併用した黄色顔料組成物は、カラーフィルター用着色画素部を形成する顔料分散液の分散性が低く、粘度・色度の経時変化も大きいことから保存安定性が不充分であることが判った。同黄色顔料組成物を使用して製造された着色画素部調製用黄色顔料を着色画素部に有するカラーフィルターは透明性(Y値)が低いことが判った。
【0092】
【発明の効果】
本発明の黄色顔料組成物によれば、キノフタロン系顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩として、キノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩を含むので、従来のキノフタロン系顔料とキノフタロン系顔料のスルホン酸、同顔料と同顔料のスルホン酸アミン塩とをそれぞれ併用する場合に比べて、カラーフィルター用着色画素部を形成するための顔料分散液の分散性がより良好で、低粘度、かつ保存安定性に優れるという格別顕著な効果を奏する。
また、同黄色顔料組成物を使用して製造されたカラーフィルター用着色画素部は透明性(Y値)がより高いという格別顕著な効果を奏する。
したがって、本発明の黄色顔料組成物は、カラーフィルター用着色画素部および同着色画素部調製用黄色顔料の形成に最適である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶カラーディスプレー、ビデオカメラ、カラーエレクトロルミネッセントディスプレー等に使用されるカラーフィルター用黄色顔料組成物およびそれを着色画素部に含有してなるカラーフィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置に用いられるカラーフィルターは、ガラス等の透明基板上に赤色、緑色、青色の各画素部(パターンとも呼ばれる。)が形成されたものであり、赤色画素部、緑色画素部を構成する材料として、少なくとも黄色顔料C.I.Pigment Yellow138(以下「PY138」と略す。)および前記PY138スルホン酸誘導体の2種類の材料を併用することが提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1には、PY138スルホン酸誘導体としてスルホン酸またはスルホン酸アミン塩が記載されている。前記誘導体の併用により、カラーフィルターの製造に用いる顔料分散液(着色カラーペースト)の分散性がPY138を単独で使用するのに比べて若干改良されるものの、未だ顔料分散液の粘度は比較的高く、さらに保存安定性も不充分であった。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−179979号公報(第4頁段落番号0014〜0016、第6頁段落番号0043〜0046、第7頁段落番号0049、第9頁段落番号0072)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、粘度が低く、保存安定性に優れる顔料分散液が得られるカラーフィルター用黄色顔料組成物、これを用いた透明性に優れるカラーフィルターを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、前記実状に鑑みて鋭意検討した結果、キノフタロン系顔料と併用するキノフタロン系顔料のスルホン酸誘導体として、従来のキノフタロン系顔料のスルホン酸やキノフタロン系顔料のスルホン酸アミン塩ではなく、キノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩を用いることにより、前記課題を解決出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、キノフタロン系顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩とを含有するカラーフィルター用黄色顔料組成物において、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩が、キノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩であることを特徴とするカラーフィルター用黄色顔料組成物および前記カラーフィルター用黄色顔料組成物を着色画素部に含有してなるカラーフィルターに関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、キノフタロン系顔料とキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩を含有するカラーフィルター用黄色顔料組成物において、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩が、キノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩であることを特徴とするカラーフィルター用黄色顔料組成物により構成される。
【0009】
本発明で用いられるキノフタロン系顔料は、キナルジンと無水フタル酸から生成される縮合多環系顔料である。この系に属する顔料は、耐熱性、耐候性、耐溶剤性、耐薬品性等の堅牢性に優れ、カラーフィルターやインクジェット記録用水性インキ用途に使用される。
【0010】
キノフタロン系顔料としては、例えば、下記一般式(1)で示されるキノフタロンイエロー(PY138)や、その無水フタル酸残基がアルキル基やハロゲン原子で置換されたものが挙げられる。ハロゲン置換数は多いほど好ましく、さらにハロゲン原子としては合成が容易であることから、塩素原子、臭素原子であることが好ましい。より具体的には、市販キノフタロン系顔料(独国、ビー・エー・エス・エフ社製Paliotol Yellow K0961 HD等)やそれに対応するキノフタロン系粗製顔料を使用することができる。
【0011】
【化1】
【0012】
本発明で用いられるキノフタロン系顔料は、PY138であり、従来公知の製造方法、例えば、「Industrial Organic Pigments(W.Herbst、K.Hunger著)」第539頁第1行〜第9行に記載されている様に、8−アミノキナルジン1モルとテトラクロロ無水フタル酸2モルとを130〜300℃で反応させて製造することができるが、該製造方法は特に限定されるものではない。
【0013】
本発明で用いられるキノフタロン系顔料(PY138)は、一次粒子の平均粒子径が10〜100nmの範囲にあるものが好ましく、25〜50nmの範囲にあるものがより好ましい。一次粒子の平均粒子径を上記範囲に調製することにより、透明性に優れた着色画素部を有するカラーフィルターを得ることができる。
一次粒子の平均粒子径が10nm未満では、顔料の凝集性が高くなるので分散させにくく、80nmを超えると透明性が低下する傾向にある。
【0014】
本発明における一次粒子の平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡JEM−2010(日本電子(株)製)で視野内の粒子を撮影し、二次元画像上の(粗)顔料一次粒子の50個につき、その長い方の径(長径)を各々求め、それを平均した値である。この際、試料は、これを溶媒に超音波分散させてから顕微鏡で撮影する。また、透過型電子顕微鏡の代わりに走査型電子顕微鏡を使用してもよい。
【0015】
本発明において、前記着色画素部は赤色画素部、緑色画素部、青色画素部のいずれでもよいが、なかでも赤色画素部と緑色画素部が好ましい。
【0016】
緑色画素には主に緑色顔料と黄色顔料が、赤色画素には主に赤色顔料と黄色顔料が用いられて調色され、バックライトと液晶表示素子の光線透過特性に合うように緑色顔料と黄色顔料、赤色顔料と黄色顔料の含有比を調整して、要求される色特性に合うように調色される。赤色顔料(例えば、C.I.Pigment Red 254、以下「PR254」と略す。)と黄色顔料(PY138)の含有比は、赤色顔料の含有比70〜90%、黄色顔料の含有比10〜30%が好ましい。緑色顔料(例えば、C.I.Pigment Green 36、以下「PG36」と略す。)と黄色顔料(PY138)の含有比においては、緑色顔料の含有比は40〜80%、黄色顔料の含有比は20〜60%が好ましい。
【0017】
例えば、緑色画素の色特性は、色度yが大きいほど色が濃くなり、色再現性が高くなる。また、色度xは黄色顔料の含有量によって変化し、色度xが大きいほど黄色味が大きくなり、色度xが小さいほど黄色味が小さくなる。
【0018】
液晶表示装置において、赤色画素、緑色画素、青色画素を同時に点灯させて白表示した時の色度(ホワイトバランス)は重要であり、各画素においても、それぞれ目的とする色度範囲に合わせる必要がある。
【0019】
本発明の黄色顔料組成物と混合して使用することができる赤色顔料は、通常カラーフィルターの製造に用いられる赤色顔料全般である。具体的には、C.I.Pigment Red 122(「PR122」と略す、以下同様。)、同123、同149、同177、同179、同209、同224、同254等が挙げられ、なかでも色特性の点からPY177、同254が好ましい。
【0020】
さらに、本発明の黄色顔料組成物と混合して使用することができる緑色顔料は、通常カラーフィルターの製造に用いられる緑色顔料全般である。具体的には、C.I.Pigment Green 7(「PG7」と略す、以下同様。)、同10、同36、同47等が挙げられ、なかでも色特性の点からPG36が好ましい。
【0021】
従来公知の製造方法で得られたキノフタロン系顔料は、必要に応じて顔料化(本発明においては、顔料の一次粒子の平均粒子径を小さくする操作を意味する。)を行うことにより透明性が高い、着色画素部を有するカラーフィルターとすることができる。但し、顔料の微細化が進み、一次粒子の平均粒子径が前記好適な範囲を逸脱すると、上記した理由により顔料分散液の流動特性、保存安定性およびカラーフィルターの透明性、耐熱性が低下する点で好ましくない。
【0022】
本発明の顔料化方法においては特に制限はなく、(粗)顔料を分散媒に分散させると同時に顔料化を行ってもよいが、多量の有機溶剤中で(粗)顔料を加熱攪拌するソルベント処理よりも、容易に結晶成長を抑制でき、一次粒子の平均粒子径の小さい顔料が得られ、分散性に優れ、結果的に顔料分散液の粘度が低く、保存安定性に優れた、透明性が高い着色画素部を有するカラーフィルターが得られる点で、ソルベントソルトミリング処理を採用するのが好ましい。
【0023】
このソルベントソルトミリングとは、(粗)顔料と、無機塩と、有機溶剤とを混練磨砕することを意味する。具体的には、(粗)顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行う。この際の混練機としては、例えば、ニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0024】
ソルベントソルトミリング時の温度は、30〜150℃が好ましく、なかでも70〜110℃がより好ましい。また、ソルベントソルトミリング時の時間は、3〜15時間が好ましく、なかでも5〜10時間がより好ましい。
【0025】
こうして、キノフタロン系顔料、無機塩、有機溶剤を主成分として含む混合物が得られる。該混合物から前記無機塩と有機溶剤を除去、洗浄することによりキノフタロン系顔料が得られる。
【0026】
上記キノフタロン系顔料の洗浄方法としては、例えば、アルコール、イオン交換水、酸性又はアルカリ性の水溶液中にて解こう後、水あるいは温水のいずれかにより洗浄を行うことができる。この際、電導度が水あるいは温水との差において50μS/cm2以下、好ましくは20μS/cm2以下となるまで洗浄を行う。
【0027】
なかでもカラーフィルター用途において、電荷保持率(VHR)の更なる向上を目的とする場合には、ソルベントソルトミリング後の前記混合物を0.5〜10%濃度の酸性水溶液中に解こうし、40〜80℃の温水で0.5〜2時間かけて洗浄を行うことが好ましい。その結果、不純物イオンが削減され、電荷保持率の高いカラーフィルター用顔料が得られる。
【0028】
無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径が0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。この様な無機塩は、通常の無機塩を微粉砕することにより容易に得られる。
【0029】
該無機塩の使用量は、特に限定されるものではないが、(粗)顔料1質量部に対して1〜30質量部が好ましく、15〜25質量部がより好ましい。(粗)顔料に対する無機塩の使用量が多いほど顔料はより微細化する傾向にあるが、最終製品の品質、処理効率および生産効率の点で上記使用量の範囲が好ましい。
【0030】
有機溶剤としては、結晶成長を抑制し得る有機溶剤を使用することが好ましい。この様な有機溶媒としては、水溶性有機溶剤が好適に使用でき、例えば、ジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール等を用いることができる。
【0031】
該水溶性有機溶剤の使用量は、特に限定されるものではないが、粗顔料1質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
【0032】
本発明におけるキノフタロン系顔料は、必要に応じて、ロジン処理、酸性基処理、塩基性基処理等の表面処理、高分子分散剤処理、界面活性剤処理が施されているものを使用してもよい。
【0033】
本発明で用いられるキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩は、例えば、下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。Xで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子が挙げられ、各々のXは同一原子であっても異なる原子であっても良い。Mは1価、2価あるいは3価の金属原子であり、これら金属原子としては、カリウム原子、ナトリウム原子、リチウム原子、カルシウム原子、マグネシウム原子、ストロンチウム原子、アルミニウム原子等が挙げられる。
【0034】
【化2】
【0035】
尚、上記一般式(2)中、nは後記するキナルジン由来の芳香環に置換されている原子団(SO3)の数であって1〜3である。n≧2の場合、個々の原子団(SO3)は、キナルジン由来の芳香環の異なる炭素原子に結合している。また、スルホン酸基またはスルホン酸塩に相当する原子団(SO3)Mは、SO3Naや(SO3)3Alの様に電気的中性である。スルホン酸(SO3H)は1価の酸であるので、この水素原子を、水素原子以外の他の原子団Mで置換すると、n=1の時に、Mが2価の金属原子等の場合は1/2モル、3価の金属原子等の場合は、1/3モルで当量となる。
【0036】
本発明で用いられるキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩は、例えば、以下の様な従来公知の方法により合成される。キノフタロン系顔料を濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、またはこれらの混合液等に投入してスルホン化反応を行う。反応液を大量の水で希釈、あるいはアルカリ金属水溶液または金属塩水溶液で中和し、得られた懸濁液を濾過した後に水系の洗浄液で洗浄し、乾燥する。中和を行わない場合、得られるキノフタロン誘導体は酸となり、中和を行うと塩になる。
【0037】
本発明で用いられるキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩は、金属塩との混合で、例えば、金属の価数が一価の場合、水溶液中で解離しやすいため、スラリーで処理すると吸着していないスルホン酸イオンと金属イオンが濾過の際に溶け出し、処理効果が小さくなる可能性がある。そこで溶解度積が低くなる無機金属、具体的には二価の金属と結合したキノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩が好ましい。
【0038】
キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩は、本発明の黄色顔料組成物の分散性をより向上させるとともに、カラーフィルター用途で使用する場合、顔料分散液の分散性が向上して低粘度化、粘度・色度の経時安定性の向上、およびカラーフィルター着色画素部とした場合の透明性(Y値)が向上する点で、前記金属塩中の金属としては二価金属であるカルシウム、ストロンチウムが好ましい。
【0039】
キノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩の生成方法としては、例えば、以下の様な方法で生成される。キノフタロン系顔料のスルホン酸水溶液にアルカリ金属水溶液を加え、アルカリ性にして溶解させる。次いで、二価金属塩水溶液を加えて攪拌した後、酸を加えて酸析する。その後、濾過、水あるいは温水で十分に洗浄した後、乾燥してキノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩が得られる。
【0040】
またキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩は、前記金属塩の粒子径が比較的大きい場合や、さらに粒子径を小さくしたい場合には、粉砕してから使用することが可能である。
【0041】
キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩中のスルホン酸基は、金属の価数が1価、2価あるいは3価の金属化合物と反応させて、対応するスルホン酸の金属塩とすることができる。
【0042】
キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩は、前記一般式(2)の様にn=1〜3のみの成分から構成されていてもよいが、工業的には、前記合成方法において精製等を行わずに、n=0のキノフタロン系顔料をも含んだ顔料組成物として、あるいはn=1〜3のみの前記誘導体と前記した様な既存のキノフタロン系顔料とを併用して顔料組成物として、これら顔料組成物全体に含まれるスルホン酸基またはスルホン酸金属塩の含有率(平均置換基数)が0.3〜3となる様に構成されてもよい。
【0043】
また、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩の合成方法によれば、該金属塩は、スルホン酸基またはスルホン酸金属塩を分子構造中に置換基として含有することによる結晶性の低下に伴い、スルホン酸基またはスルホン酸金属塩を置換基として有さない対応するキノフタロン系顔料よりも微細なものとすることができる。
【0044】
従って、本発明で用いられるキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩は、PY138の様なキノフタロン系顔料と併用することにより、被着色物中における顔料自体の分散性を向上させ、着色物の流動性をより高めることができ、成形時等の熱収縮性をより小さくなる様に改良することが可能となる。
【0045】
本発明の黄色顔料組成物が、キノフタロン系顔料とキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩から生成される方法としては、例えば、(1)前記顔料と前記金属塩を粉体同士で混合(粉体混合)する方法、(2)ソルベントソルトミリング時に前記顔料と前記金属塩とを添加(共磨砕)する方法、(3)前記顔料に前記金属塩を染め付け処理する方法等がある。
【0046】
上記(3)の方法として、より具体的には、キノフタロン系顔料スラリー中に、キノフタロン系顔料のスルホン酸塩水溶液(キノフタロン系顔料のスルホン酸に例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水溶液を加え、pHを8〜12程度に調整して溶解させたもの。)と、二価の金属塩を含む水溶液(例えば、塩化カルシウム、塩化ストロンチウムを温水で完全に溶解したもの。)とを添加する方法(以下、「顔料スラリー染め付け処理」と略す。)である。
【0047】
同方法は、上記(1)、(2)の方法に比べてキノフタロン系顔料の粒子表面近傍にキノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩を充分に吸着させることにより、前記スルホン酸二価金属塩の添加量が少量でも顔料組成物の分散性がより向上し、透明性が高く、粘度・色度の経時変化が小さい点で好ましい。
【0048】
上記顔料スラリー染め付け処理は、特に限定されたものではないが、例えば、顔料スラリー中にキノフタロン系顔料のスルホン酸塩水溶液と、二価の金属塩を含む水溶液とを順次添加してもよいし、顔料スラリー中にあらかじめキノフタロン系顔料のスルホン酸塩水溶液を加え、次いで二価の金属塩を含む水溶液を添加してもよい。
【0049】
キノフタロン系顔料に対するキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩の添加量は、特に制限されるものではないが、前記効果の程度や色味の変化を考慮すると、質量換算で、キノフタロン系顔料100部当たりキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩0.5〜49部が好ましい。
【0050】
キノフタロン系顔料とキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩とを含む黄色顔料組成物は、必要ならば、例えば、ソルベント法やソルベントソルトミリング法等の従来公知の顔料化処理を行うことにより、より微細で粒径分布の揃った前記黄色顔料組成物を調製することができる。
【0051】
本発明の黄色顔料組成物は、従来公知の方法でカラーフィルター着色画素部、同着色画素部調製用黄色顔料の形成に用いることができる。
【0052】
カラーフィルター用着色画素部の製造方法としては、例えば、この黄色顔料組成物を熱硬化性樹脂からなる分散媒に分散させた後、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法等でガラス等の透明基板上に塗布し、次いでこの塗布膜に対して、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を溶剤等で洗浄して着色画素部、同着色画素部調製用黄色顔料を得る、フォトリソグラフィーと呼ばれる方法が挙げられる。
【0053】
その他、電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(Photovoltaic Electrodeposition)法の方法で着色画素部、同着色画素部調製用黄色顔料を形成して、カラーフィルターを製造してもよい。
【0054】
カラーフィルターの着色画素部を形成するための光硬化性組成物(顔料分散フォトレジストとも呼ばれる。)を調製するには、本発明の黄色顔料組成物と、熱可塑性樹脂と、光重合開始剤と、樹脂を溶解する有機溶剤とを必須成分として混合する。その製造方法としては、本発明の黄色顔料組成物と、有機溶剤とを必要に応じて分散剤を用いて顔料分散液(着色ペーストとも呼ばれる。)を調製してから、そこに熱可塑性樹脂等を加えて光硬化性組成物とする方法が一般的である。
【0055】
必要に応じて用いる分散剤としては、前記した様なものが挙げられる。また、レベンリグ剤、カップリング剤、カチオン系の界面活性剤なども併せて使用可能である。紫色有機顔料は、この光硬化性組成物の調製時に含ませることもできる。
【0056】
有機溶剤としては、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル、水等が挙げられる。なかでも、プロピオネート系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、窒素化合物系、ラクトン系、水等の極性溶媒で水可溶のものが好ましい。水可溶の有機溶剤を用いる場合には、それに水を併用することもできる。
【0057】
本発明の黄色顔料組成物100質量部当たり、300〜1000質量部の有機溶剤と、必要に応じて0〜100質量部の分散剤及び/または0〜100質量部の樹脂及び/または0〜20質量部のキノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩とを、均一となる様に攪拌分散して顔料分散液を得ることができる。
次いでこの顔料分散液に、本発明の黄色顔料組成物1質量部当たり、熱可塑性樹脂と光硬化性化合物の合計が3〜20質量部、光硬化性化合物1質量部当たり0.05〜3質量部の光重合開始剤と、必要に応じてさらに有機溶剤を添加し、均一となる様に攪拌分散してカラーフィルターの着色画素部、同着色画素部調製用黄色顔料を形成するための光硬化性組成物を得ることができる。
【0058】
光硬化性組成物の調製に使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等が挙げられる。
【0059】
光硬化性化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3−メチルペンタンジオールジアクリレート等の様な2官能モノマー、トリメチルロールプロパトントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の比較的分子量の小さな多官能モノマー、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート等の様な比較的分子量の大きな多官能モノマーが挙げられる。
【0060】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、ベンゾイルパーオキサイド、2−クロロチオキサントン、1,3−ビス(4’−アジドベンザル)−2−プロパン、1,3−ビス(4’−アジドベンザル)−2−プロパン−2’−スルホン酸、4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルホン酸等が挙げられる。
【0061】
カラーフィルターは、平行な一対の透明電極間に液晶材料を封入し、透明電極を不連続な微細区間に分割すると共に、この透明電極上のブラックマトリクスにより格子状に区分けされた微細区間のそれぞれに、赤(R)、緑(G)及び青(B)のいずれか1色から選ばれたカラーを交互にパターン状に設ける方法あるいは基板上にカラーフィルターを形成した後、透明電極を設ける様にすることで得ることができる。
【0062】
こうして調製された着色画素部を形成するためのカラーフィルター用光硬化性組成物は、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を有機溶剤やアルカリ水等で洗浄することにより、上記着色画素部を有するカラーフィルターとなすことができる。
【0063】
本発明の黄色顔料組成物を使用して製造されたカラーフィルター用着色画素部、同着色画素部調製用黄色顔料は、透明性(Y値)がより高くなる。したがって、本発明の黄色顔料組成物は、カラーフィルター用着色画素部および同着色画素部調製用黄色顔料の形成に最適である。
【0064】
さらに上記着色画素部と青色画素部から成るカラーフィルターを使用して製造された液晶表示装置は、高色純度と高透過率を両立させた色特性と、コントラストの高い表示特性の両方を満足させることができる。
【0065】
本発明の黄色顔料組成物は、黄色を有するので、詳記したカラーフィルター用途以外にも、塗料、プラスチック、印刷インク、ゴム、レザー、捺染、電子写真用トナー、ジェットインキ、熱転写インキ等の着色に適する。
【0066】
【実施例】
次に、本発明を実施例と比較例にて具体的に説明する。以下、特に断りがない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%を意味するものとする。
【0067】
[製造例1](キノフタロン系顔料の作製)
独国ビー・エー・エス・エフ社製 Paliotol Yellow K0961 HD(PY138)200部、塩3000部、ジエチレングリコール850部をニーダーに仕込み、90℃、6時間磨砕を行った。磨砕終了後、混練物を温水に解膠し、濾過を繰り返し、電導度が温水との差において20μS/cm2になるまで洗浄を行い、キノフタロン系顔料ウェットケーキ(1)を得た。その後、乾燥、粉砕を行い、一次粒子の平均粒子径が26nmのキノフタロン系顔料195.0部を得た。
【0068】
[製造例2](キノフタロン系顔料のスルホン酸の作製)
独国ビー・エー・エス・エフ社製 Paliotol Yellow K0961 HD(PY138)20部と、98%硫酸300部とを500mlセパラブルフラスコに入れ、120℃で5時間反応させ、キノフタロン系顔料のスルホン化を行った。その後、この反応混合物を水3000部に取り出し、キノフタロン系顔料のスルホン酸を析出させて、これを30分攪拌して熟成させた後、濾過、水洗を3回繰り返し、キノフタロン系顔料のスルホン酸ウェットケーキ(2)を得た。その後、前記ウェットケーキ(2)を1%希塩酸300部で洗浄、濾過し濾液に着色が出るまで水洗を行った。その後、乾燥を行い、54.0部(収量95.9%)のキノフタロン系顔料のスルホン酸を得た。
【0069】
[製造例3](キノフタロン系顔料のスルホン酸ストロンチウム塩の作製)
製造例2で得たキノフタロン系顔料のスルホン酸ウェットケーキ(2)66.7部(染料分15%)を温水100部に解膠し、水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.5に調整した。そして、塩化ストロンチウム2.2部を10部の温水で完全に溶解して、攪拌したキノフタロン系顔料のスルホン酸ナトリウム塩水溶液に添加し、塩酸でpHを6.5に調整した。その後、濾過、十分に洗浄した後、乾燥してキノフタロン系顔料のスルホン酸ストロンチウム塩10.5部を得た。
上記キノフタロン系顔料のスルホン酸ストロンチウム塩は、CuKα線により測定した粉末X線回折図におけるブラッグ角(2θ±0.2°)=8.14°、12.24°、13.12°、26.14°に回折ピークを有していた。尚、本発明における粉末X線回折図におけるブラッグ角(2θ)は、日本工業規格JISK 0131(X線回折分析通則)に準じて求められたものである。
【0070】
[製造例4](キノフタロン系顔料のスルホン酸アミン塩の作製)
製造例2で得たキノフタロン系顔料のスルホン酸ウェットケーキ(2)66.7部(染料分15%)を温水100部に解膠し、水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.5に調整した。そして、ラウリルアミン2.5部を10%塩酸水溶液10部で完全に溶解して、攪拌したキノフタロン系顔料のスルホン酸ナトリウム塩水溶液に添加し、塩酸でpHを6.5に調整した。その後、濾過、十分洗浄した後、乾燥してキノフタロン系顔料のスルホン酸ラウリルアミン塩10.8部を得た。
【0071】
[実施例1]
製造例1で得たキノフタロン系顔料ウェットケーキ(1)38.0部(顔料分25%)と製造例2で得たキノフタロン系顔料のスルホン酸ウェットケーキ(2)33.3部(染料分15%)を温水100部に解膠し、水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.5に調整した。そして、塩化ストロンチウム1.1部を温水10部で完全に溶解して、攪拌したキノフタロン系顔料と同顔料のスルホン酸ナトリウム塩水溶液に添加し、塩酸でpHを6.5に調整した。その後、濾過、温水で十分に洗浄(電導度が温水との差において20μS/cm2以下)した後、乾燥して黄色顔料組成物(PY138にPY138のスルホン酸ストロンチウム塩を5%添加;顔料スラリー染め付け処理)10.8部を得た。同黄色顔料組成物を黄色顔料として用い、フォトリソグラフィーによりカラーフィルター着色画素部形成用光硬化性組成物(1)、同着色画素部調製用黄色顔料(2)を製造した。
【0072】
カラーフィルター用着色画素部の製造方法としては、顔料組成物10部、N,N’−ジメチルホルムアミド(有機溶剤)2.5部、ディスパービック161(ビックケミー社製分散剤)6.78部、ユーカーエステルEEP(ユニオン・カーバイド社製有機溶剤)80.80部を0.5mmφセプルビーズを加え、ペイントコンディショナー(東洋精機(株)製)で6時間分散し、顔料分散液(着色ペースト)を得た。この顔料分散液75.00部とアロニックスM7100(ポリエステルアクリレート樹脂、東亜合成化学工業(株)製、光硬化性化合物に相当する。)5.50部、KAYARAD DPHA(ジぺンタエリスレートヘキサアクリレート、日本化薬(株)製、光硬化性化合物に相当する。)5.00部、KAYACURE BP−100(ベンゾフェノン、日本化薬(株)製、光重合開始剤に相当する。)1.00部、ユーカーエステルEEP 13.5部を分散攪拌機で攪拌し、カラーフィルター用着色画素部を形成するための光硬化性組成物を得た。この組成物は1mm厚ガラスに乾燥膜厚1μmとなるように塗布した。
【0073】
次いでフォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を有機溶剤で洗浄することによりカラーフィルター用着色画素部とした。
【0074】
[実施例2]
実施例1の黄色顔料組成物に代えて、上記製造例1と3から得られた黄色顔料組成物(PY138にPY138のスルホン酸ストロンチウム塩を5%添加;粉体混合)を使用し、上記フォトリソグラフィーによりカラーフィルター着色画素部形成用光硬化性組成物(3)、同着色画素部調製用黄色顔料(4)を製造した。
【0075】
[実施例3]
実施例1の黄色顔料組成物を、それと同様の一次粒子の平均粒子径としたPG36(高臭素化銅フタロシアニン系緑色有機顔料)、PR254(ジケトピロロピロール系赤色有機顔料)に対して各々60%、80%添加してその合計が100%となる緑色顔料組成物、赤色顔料組成物を調製した。次いで上記着色画素部の製造方法に準じて、緑色および赤色の光硬化性組成物を作製し、緑色画素部および赤色画素部を形成させた。
また、上記緑色顔料組成物、赤色顔料組成物と同様の一次粒子の平均粒子径としたC.I.Pigment Blue 15:6(PB15:6、ε型銅フタロシアニン系青色有機顔料)を用いて、同着色画素部の製造方法に準じて、青色の光硬化性組成物を作製し、青色画素部を形成させた。以上得られたRGBの各画素部よりカラーフィルターを作製した。
【0076】
[比較例1]
実施例1の黄色顔料組成物に代えて、上記製造例1と2から得られた黄色顔料組成物(PY138にPY138のスルホン酸を5%添加;粉体混合)を使用し、上記フォトリソグラフィーによりカラーフィルター用着色画素部形成用光硬化性組成物(5)、同着色画素部調製用黄色顔料(6)を製造した。
【0077】
[比較例2]
実施例1の黄色顔料組成物に代えて、上記製造例1と4から得られた黄色顔料組成物(PY138にPY138のスルホン酸アミン塩を5%添加;粉体混合)を使用し、上記フォトリソグラフィーによりカラーフィルター用着色画素部形成用光硬化性組成物(7)、同着色画素部調製用黄色顔料(8)を製造した。
【0078】
上記実施例1、2および比較例1、2でそれぞれ得たカラーフィルター用着色画素部調製用黄色顔料(2)、(4)、(6)、(8)について、色味、明るさ(いずれも目視評価)、透明性(大塚電子(株)製 顕微分光光度計MCPD−3000を用いて、色座標x値、y値を算出し、両色座標x値、y値を合わせてCIE発色系色度におけるY値を測定)、膜厚(東京精密(株)製 膜厚測定機サーフコム120Aを用いて膜厚を測定)の測定を行った。これらの測定結果を表1にまとめて示す。
【0079】
【表1】
表1
【0080】
表1中、略語は以下の内容を示す。
カッコ内の数字:カラーフィルター用着色画素部調製用黄色顔料の番号
色味 :○…かなり青味を帯びている黄色
×…赤味帯びている黄色
明るさ:○…非常に明るい
×…やや暗い
【0081】
上記実施例1、2および比較例1、2でそれぞれ得たカラーフィルター用光硬化性組成物(作製2時間後;(1)、(3)、(5)、(7)、作製10日後;(9)、(10)、(11)、(12))について粘度の測定を行った。
【0082】
(カラーフィルター用光硬化性組成物の粘度測定)
上記作製の光硬化性組成物((1)、(3)、(5)、(7)、(9)、(10)、(11)、(12))について、東機産業(株)製VISCOMETER MODEL R−Lで、光硬化性組成物作製2時間後と同10日後の粘度(mPa・s)の測定を行った。これらの測定結果を表2にまとめて示す。
【0083】
【表2】
表2
【0084】
表2中、略語は以下の内容を示す。
カッコ内の数字:カラーフィルター用光硬化性組成物(作製2時間後と作製10日後)の番号
【0085】
上記実施例1、2および比較例1、2でそれぞれ得たカラーフィルター用着色画素部調製用黄色顔料について色差(△E)の測定を行った。
【0086】
(カラーフィルター用着色画素部調製用黄色顔料の色差(△E)測定)
上記作製のカラーフィルター着色画素部調製用黄色顔料((2)、(4)、(6)、(8)、(13)、(14)、(15)、(16))について、大塚電子(株)製顕微分光光度計MCPD−3000で、1日目の顔料分散液から作製した着色画素部調製用黄色顔料((2)、(4)、(6)、(8))と10日目の同調製用黄色顔料((13)、(14)、(15)、(16))の色差(△E)の測定を行った。これらの測定結果を表3にまとめて示す。
【0087】
【表3】
表3
【0088】
表3中、略語は以下の内容を示す。
カッコ内の数字:カラーフィルター用着色画素部用調製用黄色顔料(1日目の顔料分散液から作製VS同10日目から作製)の番号
【0089】
表1、2、3の結果から明らかな様に、本発明の黄色顔料組成物は、カラーフィルター用着色画素部を形成する顔料分散液の粘度の経時変化がなく(経時増粘なし)、色度の経時変化も小さいうえに、左記データ自身も比較的低く良好であることが判った。
また、同黄色顔料組成物を使用して製造された着色画素部調製用黄色顔料を着色画素部に有するカラーフィルターは透明性(Y値)が高いことが判った。さらに上記着色画素部と青色画素部から成るカラーフィルターを使用して製造された液晶表示装置は、キノフタロン系顔料のスルホン酸、同スルホン酸アミン塩を使用して、前記同様の操作で得られたカラーフィルターを使用して製造された前記表示装置に比べて、高色純度と高透過率を両立させた色特性と、コントラストの高い表示特性とを示していた。
【0090】
本発明の黄色顔料組成物の生成方法については、顔料スラリー染め付け処理が粉体混合処理に比べて透明性が高く、カラーフィルター着色画素部形成用光硬化性組成物および同着色画素部調製用黄色顔料の粘度・色度の経時変化が小さかった。
【0091】
キノフタロン系顔料のスルホン酸、同スルホン酸アミン塩をキノフタロン系顔料と併用した黄色顔料組成物は、カラーフィルター用着色画素部を形成する顔料分散液の分散性が低く、粘度・色度の経時変化も大きいことから保存安定性が不充分であることが判った。同黄色顔料組成物を使用して製造された着色画素部調製用黄色顔料を着色画素部に有するカラーフィルターは透明性(Y値)が低いことが判った。
【0092】
【発明の効果】
本発明の黄色顔料組成物によれば、キノフタロン系顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩として、キノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩を含むので、従来のキノフタロン系顔料とキノフタロン系顔料のスルホン酸、同顔料と同顔料のスルホン酸アミン塩とをそれぞれ併用する場合に比べて、カラーフィルター用着色画素部を形成するための顔料分散液の分散性がより良好で、低粘度、かつ保存安定性に優れるという格別顕著な効果を奏する。
また、同黄色顔料組成物を使用して製造されたカラーフィルター用着色画素部は透明性(Y値)がより高いという格別顕著な効果を奏する。
したがって、本発明の黄色顔料組成物は、カラーフィルター用着色画素部および同着色画素部調製用黄色顔料の形成に最適である。
Claims (4)
- キノフタロン系顔料と、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩とを含有するカラーフィルター用黄色顔料組成物において、キノフタロン系顔料のスルホン酸金属塩が、キノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩であることを特徴とするカラーフィルター用黄色顔料組成物。
- 黄色顔料組成物が、キノフタロン系顔料のスルホン酸塩水溶液と、二価金属塩水溶液と、キノフタロン系顔料スラリーから生成される黄色顔料組成物である請求項1記載のカラーフィルター用黄色顔料組成物。
- キノフタロン系顔料のスルホン酸二価金属塩が、キノフタロン系顔料のスルホン酸塩水溶液と、二価金属塩水溶液とから生成される金属塩である請求項1記載のカラーフィルター用黄色顔料組成物。
- 請求項1、2または3記載のカラーフィルター用黄色顔料組成物を着色画素部に含有してなるカラーフィルター。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003207119A JP2004292785A (ja) | 2003-02-14 | 2003-08-11 | カラーフィルター用黄色顔料組成物およびそれを着色画素部に含有してなるカラーフィルター |
Applications Claiming Priority (2)
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