JP2004284832A - 窒化ケイ素系焼結体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体製造機械、化学プラント、非鉄金属製造機械、溶接ロボット等の分野において利用される微細な粒子からなる窒化ケイ素系焼結体の作製。
【構成】窒化ケイ素あるいはサイアロンの焼結体であって、平均粒径100nm以下の窒化ケイ素粒子と平均粒径100nm以下のアルミニウム粒子が凝集した複合粉末の焼結体からなることを特徴とする窒化ケイ素系焼結体。平均粒径±50nmの範囲内の粒子の量が85体積%以上を占め、かつ粒径300nmを超える粒子の量が3体積%以下であるように焼結する。
【選択図】 なし
【構成】窒化ケイ素あるいはサイアロンの焼結体であって、平均粒径100nm以下の窒化ケイ素粒子と平均粒径100nm以下のアルミニウム粒子が凝集した複合粉末の焼結体からなることを特徴とする窒化ケイ素系焼結体。平均粒径±50nmの範囲内の粒子の量が85体積%以上を占め、かつ粒径300nmを超える粒子の量が3体積%以下であるように焼結する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、微細な粒子からなる窒化ケイ素焼結体の作製に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、半導体製造機械、化学プラント、非鉄金属製造機械、溶接ロボット等の分野において利用される微細な粒子からなる窒化ケイ素系焼結体の作製に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
窒化ケイ素焼結体は、低温および高温において高強度、高硬度等の優れた特性を有しているが、機械部品を製造する際には、加工が難しい。金属の場合は、多くの場合、塑性加工が可能であり、研削加工も容易であるが、セラミックスの場合は、硬度が高いため、通常、焼結後の塑性加工は不可能である。切削加工は可能であるが、ダイヤモンド工具を用いるため、加工コストが高くなる。
【0003】
このようなセラミックスの加工コストを下げるため、超塑性を利用して、後加工により部品を製造する研究が盛んに行われている。これは、超微細な粒子からなる焼結体であれば、外部応力下で容易に変形するという現象を利用するものである。これまでに、アルミナ、ムライト、ジルコニアのような酸化物セラミックスについては実用化に近いレベルの材料が開発されている。
【0004】
一方、高温で使用される機械部品として数多くの分野に実用化が望まれている窒化ケイ素については、化学気相合成法により作製した微細な窒化ケイ素/炭化ケイ素粉末を、低温短時間で焼結した窒化ケイ素/炭化ケイ素複合材料(特許文献1)、市販のサブミクロン粉末を低温、短時間で焼結したα/βサイアロン(非特許文献1)、市販のβ型のサブミクロン粉末から微細な粒子のみを取り出し、これを焼結したβ型窒化ケイ素材料、が超塑性を有する焼結体として報告されている(特許文献2)。いずれも、できるだけ微細な原料粉末を低温・短時間で焼結することにより、微細な粒子からなる焼結体を作製し、超塑性を実現している。その超塑性の発現温度は、低くても1450℃であり、実用化のためにはさらに温度を低くする必要がある。
【0005】
近年、原料粉体を遊星ミルで激しく粉砕することにより、微細な粉体を作製し、これを焼結することで、微細な粒子からなる焼結体を作製する技術が報告されている。このように作製した窒化ケイ素のプリフォームを1300℃〜1500℃の温度で30%以上85%未満の塑性加工を行うことで、平均粒径が100nm以下であり強度が加工前の80%以上の焼結体が作製できることが報告されている(特許文献3)。
【0006】
しかし、本材料では、原料粉体の粉砕中に粉末表面が酸化され、不純物酸素量が増えるため、焼結体中の粒界相が多くなり、高温での特性に問題がある。また、同様の方法で市販のサブミクロン粉に金属チタンを添加して粉砕を行うと、平均粒径20nmの窒化ケイ素と焼結助剤粒子と平均粒径10nmのチタン粒子からなる複合粒子が作製され(特許文献4)、この粉末を焼結することにより、中低温域で高強度をもつ窒化ケイ素/窒化チタン複合材料を作製できることが報告されている(特許文献5)。しかし、この材料では、熱処理による窒化ケイ素粒子の粒成長を窒化チタンが阻害するため、機械特性の制御が難しい。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−197003号公報
【特許文献2】
特開平8−12443号公報
【特許文献3】
特開平11−139878号公報
【特許文献4】
特開平9−208324号公報
【特許文献5】
特開平10−338576号公報
【0008】
【非特許文献1】
J.Am.Ceram.Soc.75号、1073ページ(1992)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
一般に市販されている窒化ケイ素粉末は、平均粒径が0.5ミクロン程度で、粒度分布は広い。特許文献2(特開平8−12443号公報)記載の発明では、これらの粉末から小粒径のものだけを沈殿法等で回収し、原料粉末として用い、粒径が小さな窒化ケイ素焼結体を作製しているが、この場合、超塑性の最低温度は1450℃である。一方、特許文献3(特開平11−139878号公報)記載の発明で採用されている、メカニカルグラインディング法では、不活性雰囲気中の粉砕であっても、不純物酸素が増え、焼結後の材料の高温特性に問題がある。
【0010】
特許文献5(特開平10−338576号公報)記載の発明では、粉砕時のTiの添加により、酸化の問題は防げるが、作製される材料は基本的に複合材料であり、第2相粒子が存在することから、塑性変形後に熱処理を施しても、第2相粒子の阻害により、窒化ケイ素粒子の大幅な粒成長は望めない。これでは、塑性変形後の熱処理による、高強度化・高靭化は難しいことになり、実用化の妨げとなる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記のように、従来の窒化ケイ素焼結体は、粒径が大きいため、塑性加工に要する温度が高すぎたり、粉砕時に原料粉体が酸化したり、塑性加工時の粒成長抑制のために添加した第2相が、加工後の熱処理においても窒化ケイ素の粒成長を抑制するため、高強度化・高靭性化が難しいことから、超塑性を用いて加工を行い、実用材料を作製することは実質的に不可能であった。
【0012】
そこで、本発明者らは、焼結助剤を混合した市販のサブミクロン窒化ケイ素粉末に、金属アルミニウム粉末を添加し、これらをメカニカルグラインディング法にて粉砕・複合化し、この複合粉末を圧粉成形して、焼結することにより、上記の課題を解決できることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、(1)窒化ケイ素あるいはサイアロンの焼結体であって、平均粒径100nm以下の窒化ケイ素粒子と平均粒径100nm以下のアルミニウム粒子が凝集した複合粉末の焼結体からなることを特徴とする窒化ケイ素系焼結体、である。
【0014】
また、本発明は、(2)平均粒径±50nmの範囲内の粒子の量が85体積%以上を占め、かつ粒径300nmを超える粒子の量が3体積%以下であることを特徴とする上記(1)に記載の窒化ケイ素系焼結体、である。
【0015】
また、本発明は、(3)相対密度が95%以上であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の窒化ケイ素系焼結体、である。
【0016】
また、本発明は、(4)平均粒径100nm以下の窒化ケイ素粒子と平均粒径100nm以下のアルミニウム粒子が凝集した複合粉末を作製し、この複合粉末を用いて圧粉成形体を作製し、これを1400℃から1700℃の温度に加熱して焼結することを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の窒化ケイ素系焼結体の製造方法、である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の窒化ケイ素焼結体は、平均粒径100nm以下の結晶粒子で構成される窒化ケイ素あるいはサイアロンから構成される焼結体であり、このような組織を達成することにより、1300℃での超塑性加工を実現でき、かつ塑性加工温度までは機械特性が大きく低下しない材料を作製することができる。
【0018】
このような焼結体を製造する方法としては、平均粒径がともに100nm以下の窒化ケイ素粒子とアルミニウム粒子の複合粉末からなる圧粉成形体を1400℃から1700℃で、窒素雰囲気中にて加熱、焼結する。焼結温度が1400℃未満では緻密化が十分に進行せず、緻密な焼結体を得られない。また1700℃を超えると、粒成長が顕著になり、焼結後の超塑性加工は不可能である。窒化ケイ素粒子とアルミニウム粒子の平均粒径は小さいほど望ましいが、メカニカルグラインディング法では、5nm以下に微細化することは難しい。
【0019】
焼結に供する粉体は、以下のように作製する。窒化ケイ素粉末は、市販の平均粒径0.5ミクロン程度の粉末を用いる。現在市販されている粒度が細かい粉末は、平均粒径0.5ミクロン程度であり、原料粉末の粒径が大きいと、メカニカルグラインディングによる粉砕・複合化の後も、十分粉砕されていない粒子が残存しやすく、この大きな粒子が焼結中に粒成長の核になり、均一に粒径が細かい焼結体が得られない。この窒化ケイ素粉末に、2重量%から12重量%の焼結助剤を加え、窒化ケイ素製のポットとボールを用いて、有機溶媒を分散媒として、ボールミル混合する。遊星ミルを用いることで、効率的に混合することができる。焼結助剤の添加例としては、5重量%の酸化イットリウムと2重量%の酸化アルミニウムの組み合わせ、5重量%の酸化イットリウムと2重量%の酸化マグネシウムなどが好ましい例である。
【0020】
このように作製した混合粉末を乾燥、解砕した後、さらに所定量のアルミニウム金属粉末を添加し、窒化ケイ素製のポットとジルコニア製のボールを用い、高純度窒素ガスを封入し、乾式にて、メカニカルグラインディング処理による粉砕を行う。アルミニウム金属粉末の粒径は、ミクロンレベルのものは爆発等の危険や不純物酸素の問題から取り扱いが難しく、100ミクロンレベルのものは他の粉末との均一混合が難しいことから、数十ミクロンレベルが望ましい。焼結の際に、均一な組織を得るためには、窒化ケイ素と複合化した後も粒度が揃っていることが必要であり、ガスアトマイズ粉のように、粒子形状が球形で、粒度が揃っている粉末を用いることが望ましい。添加量は、3重量%から15重量%が適当であり、添加量が少ないと窒化ケイ素粉末と焼結助剤の粉砕が十分に進行せず、多すぎると焼結中に窒化アルミニウムが残存し、緻密化が難しくなる。5から10重量%が望ましい。
【0021】
粉体にかかる加速度は150G程度、処理時間は4時間を必要とする。加速度が小さかったり、処理時間が短いと、窒化ケイ素とアルミニウムのそれぞれの粒子の平均粒径が100nm以下にならない。粉砕中、窒化ケイ素粒子は金属アルミニウム粒子中に入り込むことで、粉砕が促進され、かつ、周囲をアルミニウムで覆われることにより粉砕中の酸化が防止される。
【0022】
粉砕前後の粉体を粉末X線回折法を用いて分析すると、窒化ケイ素の各ピークは高さが低くなっていることから、窒化ケイ素粒子が微細化されている。また、アルミニウムのピークは消滅しており、アルミニウム粒子が微細化し、非晶質化した。電子顕微鏡により粉体を観察すると、粒径約50nmの窒化ケイ素粒子が観察された。
【0023】
この窒化ケイ素粒子とアルミニウム粒子が凝集・複合化した粉体を、放電プラズマ焼結装置を用いて、高純度窒素雰囲気中、昇温速度約300℃毎分で、1500℃まで加熱、5分間保持し、炉冷した。この焼結体を粉砕し、粉末X線回折法により分析したところ、α窒化ケイ素とαサイアロンが検出された。研磨面をプラズマエッチングして、走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、約80nmの窒化ケイ素粒子が観察された。
【0024】
この焼結体の相対密度は96%であった。焼結時の相対密度が95%未満であると、その後の超塑性加工の際に、粒成長が起きやすい。焼結体の粒径は微細であると同時に、分布がシャープであることが必要で、粒径分布がブロードであると、超塑性変形中に粒径差による粒成長が発生し、加工に必要な応力が高くなり、加工硬化の原因となる。平均粒径±50nmの範囲内の粒子の量が85体積%以上を占め、かつ粒径300nmを超える粒子の量が3体積%以下であれば、加工硬化を起こさずに超塑性変形が可能である。
【0025】
【実施例】
実施例1
平均粒径が0.5μmの窒化ケイ素粉末に、焼結助剤として窒化ケイ素粉末に対する重量%で6重量%の酸化イットリウム、1重量%の酸化アルミニウムを添加し、窒化ケイ素製のポットとボールを用い、エタノール中で、4時間、遊星ミルを用いて混合した。この混合粉体を乾燥後、平均粒径約20μmのアルミニウム粉末を5.3重量%添加し、窒化ケイ素製のポットと酸化ジルコニウム製のボールを用い、高純度窒素を封入して、150Gの加速度で、メカニカルグラインディング処理により4時間、混合・粉砕を行い、試料1を得た。
【0026】
粉末X線回折法により分析した結果、窒化ケイ素のピーク高さが低下していた。電子顕微鏡観察により、窒化ケイ素の粒径を、大まかに測定すると約80nmであった。表1に示すとおり、混合・粉砕時間を延長すると、粒径は細かくなる傾向にある(試料2)が、混合・粉砕時間が短かったり(比較例3)、加える加速度が低いと、窒化ケイ素のピーク高さは変化せず、粉砕が進行していない。
【0027】
【表1】
【0028】
試料1の粉末を、窒素雰囲気中、30MPaの圧力を負荷し、昇温速度約300℃毎分、最高温度1500℃、5分間保持の後、炉冷して、試料5を得た。表2に示すように、焼結温度が低いと(比較例6)、緻密化が不十分であり、焼結温度が高いと、粒成長が起こってしまう(比較例7)。また、アルミニウム添加量が多すぎると焼結中にアルミニウムの窒化により生成したAlNが残存し、緻密化が十分に進行しない(比較例8)。
【0029】
【表2】
【0030】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明により、微細な粒子から成る窒化ケイ素系焼結体を作製することができる。この焼結体は、圧縮または引っ張り応力を加えると大きな変形を起こし、1300℃でも超塑性加工が可能な窒化ケイ素焼結体が実現される。また、粒成長を抑制する第2相を含まないことから、超塑性加工後の熱処理による機械特性の制御が可能である。さらに、耐摩耗性に優れ、化学的に安定な精密機械部品としての利用が可能となる。
【発明の属する技術分野】
この発明は、微細な粒子からなる窒化ケイ素焼結体の作製に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、半導体製造機械、化学プラント、非鉄金属製造機械、溶接ロボット等の分野において利用される微細な粒子からなる窒化ケイ素系焼結体の作製に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
窒化ケイ素焼結体は、低温および高温において高強度、高硬度等の優れた特性を有しているが、機械部品を製造する際には、加工が難しい。金属の場合は、多くの場合、塑性加工が可能であり、研削加工も容易であるが、セラミックスの場合は、硬度が高いため、通常、焼結後の塑性加工は不可能である。切削加工は可能であるが、ダイヤモンド工具を用いるため、加工コストが高くなる。
【0003】
このようなセラミックスの加工コストを下げるため、超塑性を利用して、後加工により部品を製造する研究が盛んに行われている。これは、超微細な粒子からなる焼結体であれば、外部応力下で容易に変形するという現象を利用するものである。これまでに、アルミナ、ムライト、ジルコニアのような酸化物セラミックスについては実用化に近いレベルの材料が開発されている。
【0004】
一方、高温で使用される機械部品として数多くの分野に実用化が望まれている窒化ケイ素については、化学気相合成法により作製した微細な窒化ケイ素/炭化ケイ素粉末を、低温短時間で焼結した窒化ケイ素/炭化ケイ素複合材料(特許文献1)、市販のサブミクロン粉末を低温、短時間で焼結したα/βサイアロン(非特許文献1)、市販のβ型のサブミクロン粉末から微細な粒子のみを取り出し、これを焼結したβ型窒化ケイ素材料、が超塑性を有する焼結体として報告されている(特許文献2)。いずれも、できるだけ微細な原料粉末を低温・短時間で焼結することにより、微細な粒子からなる焼結体を作製し、超塑性を実現している。その超塑性の発現温度は、低くても1450℃であり、実用化のためにはさらに温度を低くする必要がある。
【0005】
近年、原料粉体を遊星ミルで激しく粉砕することにより、微細な粉体を作製し、これを焼結することで、微細な粒子からなる焼結体を作製する技術が報告されている。このように作製した窒化ケイ素のプリフォームを1300℃〜1500℃の温度で30%以上85%未満の塑性加工を行うことで、平均粒径が100nm以下であり強度が加工前の80%以上の焼結体が作製できることが報告されている(特許文献3)。
【0006】
しかし、本材料では、原料粉体の粉砕中に粉末表面が酸化され、不純物酸素量が増えるため、焼結体中の粒界相が多くなり、高温での特性に問題がある。また、同様の方法で市販のサブミクロン粉に金属チタンを添加して粉砕を行うと、平均粒径20nmの窒化ケイ素と焼結助剤粒子と平均粒径10nmのチタン粒子からなる複合粒子が作製され(特許文献4)、この粉末を焼結することにより、中低温域で高強度をもつ窒化ケイ素/窒化チタン複合材料を作製できることが報告されている(特許文献5)。しかし、この材料では、熱処理による窒化ケイ素粒子の粒成長を窒化チタンが阻害するため、機械特性の制御が難しい。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−197003号公報
【特許文献2】
特開平8−12443号公報
【特許文献3】
特開平11−139878号公報
【特許文献4】
特開平9−208324号公報
【特許文献5】
特開平10−338576号公報
【0008】
【非特許文献1】
J.Am.Ceram.Soc.75号、1073ページ(1992)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
一般に市販されている窒化ケイ素粉末は、平均粒径が0.5ミクロン程度で、粒度分布は広い。特許文献2(特開平8−12443号公報)記載の発明では、これらの粉末から小粒径のものだけを沈殿法等で回収し、原料粉末として用い、粒径が小さな窒化ケイ素焼結体を作製しているが、この場合、超塑性の最低温度は1450℃である。一方、特許文献3(特開平11−139878号公報)記載の発明で採用されている、メカニカルグラインディング法では、不活性雰囲気中の粉砕であっても、不純物酸素が増え、焼結後の材料の高温特性に問題がある。
【0010】
特許文献5(特開平10−338576号公報)記載の発明では、粉砕時のTiの添加により、酸化の問題は防げるが、作製される材料は基本的に複合材料であり、第2相粒子が存在することから、塑性変形後に熱処理を施しても、第2相粒子の阻害により、窒化ケイ素粒子の大幅な粒成長は望めない。これでは、塑性変形後の熱処理による、高強度化・高靭化は難しいことになり、実用化の妨げとなる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記のように、従来の窒化ケイ素焼結体は、粒径が大きいため、塑性加工に要する温度が高すぎたり、粉砕時に原料粉体が酸化したり、塑性加工時の粒成長抑制のために添加した第2相が、加工後の熱処理においても窒化ケイ素の粒成長を抑制するため、高強度化・高靭性化が難しいことから、超塑性を用いて加工を行い、実用材料を作製することは実質的に不可能であった。
【0012】
そこで、本発明者らは、焼結助剤を混合した市販のサブミクロン窒化ケイ素粉末に、金属アルミニウム粉末を添加し、これらをメカニカルグラインディング法にて粉砕・複合化し、この複合粉末を圧粉成形して、焼結することにより、上記の課題を解決できることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、(1)窒化ケイ素あるいはサイアロンの焼結体であって、平均粒径100nm以下の窒化ケイ素粒子と平均粒径100nm以下のアルミニウム粒子が凝集した複合粉末の焼結体からなることを特徴とする窒化ケイ素系焼結体、である。
【0014】
また、本発明は、(2)平均粒径±50nmの範囲内の粒子の量が85体積%以上を占め、かつ粒径300nmを超える粒子の量が3体積%以下であることを特徴とする上記(1)に記載の窒化ケイ素系焼結体、である。
【0015】
また、本発明は、(3)相対密度が95%以上であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の窒化ケイ素系焼結体、である。
【0016】
また、本発明は、(4)平均粒径100nm以下の窒化ケイ素粒子と平均粒径100nm以下のアルミニウム粒子が凝集した複合粉末を作製し、この複合粉末を用いて圧粉成形体を作製し、これを1400℃から1700℃の温度に加熱して焼結することを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の窒化ケイ素系焼結体の製造方法、である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の窒化ケイ素焼結体は、平均粒径100nm以下の結晶粒子で構成される窒化ケイ素あるいはサイアロンから構成される焼結体であり、このような組織を達成することにより、1300℃での超塑性加工を実現でき、かつ塑性加工温度までは機械特性が大きく低下しない材料を作製することができる。
【0018】
このような焼結体を製造する方法としては、平均粒径がともに100nm以下の窒化ケイ素粒子とアルミニウム粒子の複合粉末からなる圧粉成形体を1400℃から1700℃で、窒素雰囲気中にて加熱、焼結する。焼結温度が1400℃未満では緻密化が十分に進行せず、緻密な焼結体を得られない。また1700℃を超えると、粒成長が顕著になり、焼結後の超塑性加工は不可能である。窒化ケイ素粒子とアルミニウム粒子の平均粒径は小さいほど望ましいが、メカニカルグラインディング法では、5nm以下に微細化することは難しい。
【0019】
焼結に供する粉体は、以下のように作製する。窒化ケイ素粉末は、市販の平均粒径0.5ミクロン程度の粉末を用いる。現在市販されている粒度が細かい粉末は、平均粒径0.5ミクロン程度であり、原料粉末の粒径が大きいと、メカニカルグラインディングによる粉砕・複合化の後も、十分粉砕されていない粒子が残存しやすく、この大きな粒子が焼結中に粒成長の核になり、均一に粒径が細かい焼結体が得られない。この窒化ケイ素粉末に、2重量%から12重量%の焼結助剤を加え、窒化ケイ素製のポットとボールを用いて、有機溶媒を分散媒として、ボールミル混合する。遊星ミルを用いることで、効率的に混合することができる。焼結助剤の添加例としては、5重量%の酸化イットリウムと2重量%の酸化アルミニウムの組み合わせ、5重量%の酸化イットリウムと2重量%の酸化マグネシウムなどが好ましい例である。
【0020】
このように作製した混合粉末を乾燥、解砕した後、さらに所定量のアルミニウム金属粉末を添加し、窒化ケイ素製のポットとジルコニア製のボールを用い、高純度窒素ガスを封入し、乾式にて、メカニカルグラインディング処理による粉砕を行う。アルミニウム金属粉末の粒径は、ミクロンレベルのものは爆発等の危険や不純物酸素の問題から取り扱いが難しく、100ミクロンレベルのものは他の粉末との均一混合が難しいことから、数十ミクロンレベルが望ましい。焼結の際に、均一な組織を得るためには、窒化ケイ素と複合化した後も粒度が揃っていることが必要であり、ガスアトマイズ粉のように、粒子形状が球形で、粒度が揃っている粉末を用いることが望ましい。添加量は、3重量%から15重量%が適当であり、添加量が少ないと窒化ケイ素粉末と焼結助剤の粉砕が十分に進行せず、多すぎると焼結中に窒化アルミニウムが残存し、緻密化が難しくなる。5から10重量%が望ましい。
【0021】
粉体にかかる加速度は150G程度、処理時間は4時間を必要とする。加速度が小さかったり、処理時間が短いと、窒化ケイ素とアルミニウムのそれぞれの粒子の平均粒径が100nm以下にならない。粉砕中、窒化ケイ素粒子は金属アルミニウム粒子中に入り込むことで、粉砕が促進され、かつ、周囲をアルミニウムで覆われることにより粉砕中の酸化が防止される。
【0022】
粉砕前後の粉体を粉末X線回折法を用いて分析すると、窒化ケイ素の各ピークは高さが低くなっていることから、窒化ケイ素粒子が微細化されている。また、アルミニウムのピークは消滅しており、アルミニウム粒子が微細化し、非晶質化した。電子顕微鏡により粉体を観察すると、粒径約50nmの窒化ケイ素粒子が観察された。
【0023】
この窒化ケイ素粒子とアルミニウム粒子が凝集・複合化した粉体を、放電プラズマ焼結装置を用いて、高純度窒素雰囲気中、昇温速度約300℃毎分で、1500℃まで加熱、5分間保持し、炉冷した。この焼結体を粉砕し、粉末X線回折法により分析したところ、α窒化ケイ素とαサイアロンが検出された。研磨面をプラズマエッチングして、走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、約80nmの窒化ケイ素粒子が観察された。
【0024】
この焼結体の相対密度は96%であった。焼結時の相対密度が95%未満であると、その後の超塑性加工の際に、粒成長が起きやすい。焼結体の粒径は微細であると同時に、分布がシャープであることが必要で、粒径分布がブロードであると、超塑性変形中に粒径差による粒成長が発生し、加工に必要な応力が高くなり、加工硬化の原因となる。平均粒径±50nmの範囲内の粒子の量が85体積%以上を占め、かつ粒径300nmを超える粒子の量が3体積%以下であれば、加工硬化を起こさずに超塑性変形が可能である。
【0025】
【実施例】
実施例1
平均粒径が0.5μmの窒化ケイ素粉末に、焼結助剤として窒化ケイ素粉末に対する重量%で6重量%の酸化イットリウム、1重量%の酸化アルミニウムを添加し、窒化ケイ素製のポットとボールを用い、エタノール中で、4時間、遊星ミルを用いて混合した。この混合粉体を乾燥後、平均粒径約20μmのアルミニウム粉末を5.3重量%添加し、窒化ケイ素製のポットと酸化ジルコニウム製のボールを用い、高純度窒素を封入して、150Gの加速度で、メカニカルグラインディング処理により4時間、混合・粉砕を行い、試料1を得た。
【0026】
粉末X線回折法により分析した結果、窒化ケイ素のピーク高さが低下していた。電子顕微鏡観察により、窒化ケイ素の粒径を、大まかに測定すると約80nmであった。表1に示すとおり、混合・粉砕時間を延長すると、粒径は細かくなる傾向にある(試料2)が、混合・粉砕時間が短かったり(比較例3)、加える加速度が低いと、窒化ケイ素のピーク高さは変化せず、粉砕が進行していない。
【0027】
【表1】
【0028】
試料1の粉末を、窒素雰囲気中、30MPaの圧力を負荷し、昇温速度約300℃毎分、最高温度1500℃、5分間保持の後、炉冷して、試料5を得た。表2に示すように、焼結温度が低いと(比較例6)、緻密化が不十分であり、焼結温度が高いと、粒成長が起こってしまう(比較例7)。また、アルミニウム添加量が多すぎると焼結中にアルミニウムの窒化により生成したAlNが残存し、緻密化が十分に進行しない(比較例8)。
【0029】
【表2】
【0030】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明により、微細な粒子から成る窒化ケイ素系焼結体を作製することができる。この焼結体は、圧縮または引っ張り応力を加えると大きな変形を起こし、1300℃でも超塑性加工が可能な窒化ケイ素焼結体が実現される。また、粒成長を抑制する第2相を含まないことから、超塑性加工後の熱処理による機械特性の制御が可能である。さらに、耐摩耗性に優れ、化学的に安定な精密機械部品としての利用が可能となる。
Claims (4)
- 窒化ケイ素あるいはサイアロンの焼結体であって、平均粒径100nm以下の窒化ケイ素粒子と平均粒径100nm以下のアルミニウム粒子が凝集した複合粉末の焼結体からなることを特徴とする窒化ケイ素系焼結体。
- 平均粒径±50nmの範囲内の粒子の量が85体積%以上を占め、かつ粒径300nmを超える粒子の量が3体積%以下であることを特徴とする請求項1記載の窒化ケイ素系焼結体。
- 相対密度が95%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の窒化ケイ素系焼結体。
- 平均粒径100nm以下の窒化ケイ素粒子と平均粒径100nm以下のアルミニウム粒子が凝集した複合粉末を作製し、この複合粉末を用いて圧粉成形体を作製し、これを1400℃から1700℃の温度に加熱して焼結することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の窒化ケイ素系焼結体の製造方法。
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