JP2004282514A - 圧電共振子回路およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体集積回路と圧電薄膜共振子を集積化した圧電共振子回路を提供する。
【解決手段】CMOS回路がダメージを受けて特性劣化することなく、 エアーギャップの音響絶縁構造を形成するよう、この犠牲層の材料としてゲルマニウム(Ge)を用いること、およびこれを除去するために過酸化水素水(H2O2)を用いてエッチングすること、を基本とした工程によって半導体集積回路上にエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子を形成する。
【選択図】 図6
【解決手段】CMOS回路がダメージを受けて特性劣化することなく、 エアーギャップの音響絶縁構造を形成するよう、この犠牲層の材料としてゲルマニウム(Ge)を用いること、およびこれを除去するために過酸化水素水(H2O2)を用いてエッチングすること、を基本とした工程によって半導体集積回路上にエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子を形成する。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は圧電薄膜共振子と半導体集積回路によって構成される電子デバイスに関する。また半導体集積回路上の同一基板上に音響絶縁構造のためのエアーギャップを有する圧電薄膜共振子を形成する製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電薄膜共振子の音響絶縁構造のためにエアーギャップが必要である。従来技術によるエアーギャップを有する構造の圧電薄膜共振子は、エアーギャップを作製のために犠牲層材料として無機物では酸化シリコンや銅、チタン、有機物ではポリイミドやフォトレジストが主に用いられていた。これらの犠牲層材料では、以下の述べるような理由により半導体集積回路と一体で形成することが出来ない問題があり、別の基板に単独でこれらの素子を作って、組み合わせて用いていた。このためRF回路で使用する圧電共振子回路は、半導体集積回路と圧電薄膜共振子を実装して用いるため、部品形状が大きくなり、モジュール化した素子は特性のばらつきが大きいなどの欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
半導体集積回路を有するウエーハ基板上にこれら圧電薄膜共振子を集積化して回路と一体化できると、圧電共振子回路が小型化でき、またこの特性が向上して、性能ばらつきも小さいものができる。また、量産効果により低コスト化できるので、モノリシック化することで多大な効果が期待できる。従来技術の、エアーギャップを形成するための犠牲層材料は、無機物では酸化シリコン、銅、チタンなどである。これらの犠牲層を除去するために酸もしくはアルカリのエッチング溶液が使われるが、CMOS回路などの半導体集積回路上にこれらの犠牲層を形成した場合に、上記のエッチング液に対して、半導体集積回路を保護することが難しく、完全に保護するためには、プロセス工程が煩雑になる上に、歩留まりが低下する問題が生じていた。これを改善するために犠牲層材料を新規導入したい課題があった。
【0004】
一方、有機物の犠牲層材料であるポリイミドやフォトレジストなどは、高温のプロセス温度に耐えないこと、また、高真空でスパッタなどにより高品質の圧電薄膜共振子材料を成膜する場合には、上記、犠牲層材料の有機物に起因する酸素や炭素の不純物原子が成膜層に多量に含まれて、膜質が劣化し、圧電薄膜共振子の性能が十分に得られないという問題があった。これを改善するために犠牲層材料を新規導入したい課題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明はCMOS回路などの半導体集積回路を有するウエーハ基板上に圧電薄膜共振子を集積化した構成によって得られる圧電共振子回路であることを特徴とする。この構造を形成するために、エアーギャップの音響絶縁構造の形成に、この犠牲層の材料としてゲルマニウム(Ge)を基本としたものを用いること、およびこれを除去するために過酸化水素水(H2O2)を基本としたものを用いてエッチングすること、を基本とした工程によって圧電薄膜共振子を形成することを特徴とする。これにより製造工程中にCMOS回路がダメージを受けて特性が劣化する不良がなく、高真空で圧電薄膜共振子材料を成膜した膜質は高品質なものがえられ、半導体集積回路の上面または近傍に特性の優れたエアーギャップの音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子をモノリシックで形成することが可能になった。犠牲層材料としてのゲルマニウムとこれを除去するためのエッチング液である過酸化水素水は半導体集積回路を構成する材料にとって無害であり、集積回路基板上へ本共振子を形成するプロセスにとって、製造上のマッチング性が優れている特徴を有する。
【0006】
【発明の実施の形態】
実施例1
図1は本発明の1実施例であるエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子の断面図である。シリコンやガラスなどの基板5上にエアーギャップ100を有し、この上にはSiO2などの絶縁膜層4、Ptなどの下部電極3、AlNなどの圧電薄膜層2、およびPtなどの上部電極1の積層構造によって圧電薄膜共振子6を構成することを特徴としている。圧電薄膜共振子6はAuなどからなる電極パッド5A,5Bによって電気信号が印加され、動作する。
【0007】
なお、本発明では、エアーギャップ100を形成する前に用いている、ゲルマニウムを基本とする犠牲層材料は耐熱性に優れ、上記、SiO2,AlN,Pt,Auなどの材料を高温下の良好な条件で形成でき、また、過酸化水素水を基本とする溶液で犠牲層の除去する工程では、これら材料に変質や劣化を与えることがないので、エアーギャップ音響絶縁構造を有する、高性能のデバイスを確実に製作できる特徴がある。本発明によれば、基板材料や配線材料および圧電材料を最適なものに選定する作業において犠牲層の除去でこれらが制約されないことが特徴である。このため、本発明による素子を実装する場合においてもこのプロセスを最適化することができる特徴がある。例えば、半田材(In,Snなど)で素子を固定した後から、犠牲層を除去することが可能になり、これによって組立てが容易になる特徴がある。
【0008】
図2から図5は本発明の1実施例であるエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子の主要製造工程における断面図である。この製造方法の一例を以下に述べる。
【0009】
図2は、シリコンやガラスなどのウエーハ基板10を示す。基板の材料の選択は自由であり、CMOS回路を作り込んだシリコン基板やGaAsIC基板にも適用可能である。
【0010】
図3は、犠牲層材料であるゲルマニウムを蒸着によって所定の領域にパターン99を形成したものである。このパターンは基板上に全面のゲルマニウムを成膜後、フォトレジストをマスクに、過酸化水素水(H2O2)を用いてエッチング、あるいはフォトレジストパターンにゲルマニウムを成膜後、リフトオフ、のいずれかのプロセスによって形成される。
【0011】
図4は、図3の表面にまず、絶縁層となるSiO2層4領域を形成し、続いて、下部電極用のPt層3領域を形成し、この上に順番に、圧電薄膜層であるAlN層2の領域と上部電極用のPt層1の領域を形成したものである。続いて、下部電極と上部電極の一部に接して、Ti−Auなどからなる電極パッド5A,5Bをそれぞれ形成したものである。
【0012】
図5は、このウエーハ基板を過酸化水素水のエッチング液に浸漬してゲルマニウム99を完全に除去し、圧電薄膜共振子の部分にエアーギャップを形成したものである。このように製作されたデバイスの電極端子に電気信号が印加され、圧電薄膜共振子がバンドパスフィルタなどのデバイスとして使われる。
【0013】
ゲルマニウムを基本とした材料と過酸化水素水を基本とした溶液の組合せによって、容易にエアーギャップを形成できるので、本発明の製造方法は超高周波回路に用いられているエアーギャップ配線の形成にも適用できることは言うまでもない。また、エアーギャップの構造は両持ち梁に限ることなく、片持ち梁によるスプリング構造などの作成に適用できることは、自明である。
【0014】
実施例2
図6は本発明の他の実施例であるエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子56とCMOS回路(アンプ回路など)41とを一体に集積化した構造を有する圧電共振子回路60の断面図である。Si基板に集積回路を通常の工程により形成したウエーハ上に、エアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子が形成されていることに特徴がある。圧電共振素子は、集積回路の近傍か上面の、どの領域でも形成できる。一体で集積化された圧電薄膜共振子は周波数の高い領域まで使用できること、制御回路の集積により温度特性、ドリフト特性などの向上が図れることなど、デバイスの性能向上や特性改善の効果と、デバイス容積を小さくしたことによる高歩留まり、低コストの効果がある。
【0015】
図7から図13は本発明の他の実施例であるエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子とCMOS回路(アンプ回路など)とを一体に集積化した構造を有する圧電共振子回路の主要製造工程における断面図である。この製造方法の一例を以下に述べる。
【0016】
図7は、Si基板40上に半導体集積回路の製造プロセスによってCMOS回路41を形成したものである。また、この一部領域42は圧電薄膜共振子を形成するための領域である。
【0017】
図8は、この基板上の一部領域42内に犠牲層材料であるゲルマニウムパターン199を形成したものである。ゲルマニウムはSi基板40と直接接触した構造を図示してあるが、この下に絶縁膜があってもよい。
【0018】
図9は、さらにこの上面に酸化膜54をCVDで堆積して形成したものである。
【0019】
図10は、SiO2層54上に、下部電極用のPt層53領域を形成し、この上に順番に、圧電薄膜層であるAlN層52の領域と上部電極用のPt層51の領域を形成したものである。
【0020】
図11は、CMOS回路41の絶縁膜を貫通してCMOS回路の電極部にスルーホール62を形成したものである。
【0021】
図12は、デバイスの電極間を配線するために、Al電極57、58,59をそれぞれの領域に形成したものである。
【0022】
図13は最終の製造工程である、犠牲層エッチングを行い、エアーギャップ200を形成したものである。ゲルマニウム犠牲層199は過酸化水素水の溶液によって容易に除去でき、この溶液は集積回路を構成している他の材料をアタックしないので集積回路の性能劣化や信頼性低下の原因になることがない特徴を有する。この犠牲層エッチングは通常、ウエーハ状態で行うことが多いが、エアーギャップにすると素子の強度が弱い構造体をもつ圧電共振子回路の場合には、チップに切出して、マウントに組み立てた後にこれら一連の作業を行って、エアーギャップを形成してもよい。
【0023】
以上、集積回路とエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子を集積回路の基板上に一体化した構造および製造方法を述べたが、本発明の構造および製造方法によれば、集積回路の製造方法は従来の手順や材料構成であり、また、AlNの成膜が約350℃の温度で形成できるので圧電薄膜共振子の性能がよく、従来の単体で製造する条件を崩さなく集積素子を形成できるところに本発明の特徴がある。
【0024】
また、本発明の実施例では述べていないが、集積回路の構成にはCMOS回路に限定されるものではなく、バイポーラやBiCMOSあるいはGaAsICの基板上の一部にエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子を集積化して、高性能な圧電共振子回路が構成されることはいうまでもない。
【発明の効果】
本発明により、圧電薄膜共振子とCMOS回路とを集積化することが容易になる。一体で集積化された圧電薄膜共振子は周波数の高い領域まで使用できること、制御回路の集積により温度特性、ドリフト特性などの向上が図れることなど、デバイスの性能向上や特性改善の効果と、デバイス容積を小さくしたことによる高歩留まり、低コストの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子の断面図。
【図2】実施例1、図1のエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子を製作する工程におけるウエーハ基板の断面図。
【図3】実施例1、図2のウエーハ基板に犠牲層材料であるゲルマニウムのパターンを形成した断面図。
【図4】実施例1、図3のウエーハ基板に犠牲層と圧電薄膜共振子の構造体を形成した断面図。
【図5】実施例1、図4のウエーハ基板から犠牲層を除去してエアーギャップを形成した圧電薄膜共振子の構造体の断面図。
【図6】実施例2のエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子とCMOS回路とを一体に集積化した構造を有する圧電共振回路の断面図。
【図7】実施例2、図6の圧電共振回路を製造する工程においてSi基板上にCMOS回路を形成した断面図。
【図8】実施例2の製造方法における図7の上面に、犠牲層であるパターンを形成した断面図。
【図9】実施例2の製造方法における図8の上面に、絶縁膜である酸化膜を形成した断面図。
【図10】実施例2の製造方法における図9の上面に、圧電薄膜共振子の構造を形成した断面図。
【図11】実施例2の製造方法における図10の上面に、CMOS回路の電極用スルーホールを形成した断面図。
【図12】実施例2の製造方法における図11の上面に、配線用Al電極を形成した断面図。
【図13】実施例2の製造方法における図12の上面にある、犠牲層を除去し圧電共振回路を形成した断面図。
【符号の説明】
1,51:上部電極
2、52:圧電薄膜層
3,53:下部電極
4、54:絶縁膜層
5、10,40:基板
5A、5B:電極パッド
6、56:圧電薄膜共振子
10、200:エアーギャップ
41:CMOS回路
99,199:犠牲層
60:圧電共振子回路
【発明の属する技術分野】
本発明は圧電薄膜共振子と半導体集積回路によって構成される電子デバイスに関する。また半導体集積回路上の同一基板上に音響絶縁構造のためのエアーギャップを有する圧電薄膜共振子を形成する製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電薄膜共振子の音響絶縁構造のためにエアーギャップが必要である。従来技術によるエアーギャップを有する構造の圧電薄膜共振子は、エアーギャップを作製のために犠牲層材料として無機物では酸化シリコンや銅、チタン、有機物ではポリイミドやフォトレジストが主に用いられていた。これらの犠牲層材料では、以下の述べるような理由により半導体集積回路と一体で形成することが出来ない問題があり、別の基板に単独でこれらの素子を作って、組み合わせて用いていた。このためRF回路で使用する圧電共振子回路は、半導体集積回路と圧電薄膜共振子を実装して用いるため、部品形状が大きくなり、モジュール化した素子は特性のばらつきが大きいなどの欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
半導体集積回路を有するウエーハ基板上にこれら圧電薄膜共振子を集積化して回路と一体化できると、圧電共振子回路が小型化でき、またこの特性が向上して、性能ばらつきも小さいものができる。また、量産効果により低コスト化できるので、モノリシック化することで多大な効果が期待できる。従来技術の、エアーギャップを形成するための犠牲層材料は、無機物では酸化シリコン、銅、チタンなどである。これらの犠牲層を除去するために酸もしくはアルカリのエッチング溶液が使われるが、CMOS回路などの半導体集積回路上にこれらの犠牲層を形成した場合に、上記のエッチング液に対して、半導体集積回路を保護することが難しく、完全に保護するためには、プロセス工程が煩雑になる上に、歩留まりが低下する問題が生じていた。これを改善するために犠牲層材料を新規導入したい課題があった。
【0004】
一方、有機物の犠牲層材料であるポリイミドやフォトレジストなどは、高温のプロセス温度に耐えないこと、また、高真空でスパッタなどにより高品質の圧電薄膜共振子材料を成膜する場合には、上記、犠牲層材料の有機物に起因する酸素や炭素の不純物原子が成膜層に多量に含まれて、膜質が劣化し、圧電薄膜共振子の性能が十分に得られないという問題があった。これを改善するために犠牲層材料を新規導入したい課題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明はCMOS回路などの半導体集積回路を有するウエーハ基板上に圧電薄膜共振子を集積化した構成によって得られる圧電共振子回路であることを特徴とする。この構造を形成するために、エアーギャップの音響絶縁構造の形成に、この犠牲層の材料としてゲルマニウム(Ge)を基本としたものを用いること、およびこれを除去するために過酸化水素水(H2O2)を基本としたものを用いてエッチングすること、を基本とした工程によって圧電薄膜共振子を形成することを特徴とする。これにより製造工程中にCMOS回路がダメージを受けて特性が劣化する不良がなく、高真空で圧電薄膜共振子材料を成膜した膜質は高品質なものがえられ、半導体集積回路の上面または近傍に特性の優れたエアーギャップの音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子をモノリシックで形成することが可能になった。犠牲層材料としてのゲルマニウムとこれを除去するためのエッチング液である過酸化水素水は半導体集積回路を構成する材料にとって無害であり、集積回路基板上へ本共振子を形成するプロセスにとって、製造上のマッチング性が優れている特徴を有する。
【0006】
【発明の実施の形態】
実施例1
図1は本発明の1実施例であるエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子の断面図である。シリコンやガラスなどの基板5上にエアーギャップ100を有し、この上にはSiO2などの絶縁膜層4、Ptなどの下部電極3、AlNなどの圧電薄膜層2、およびPtなどの上部電極1の積層構造によって圧電薄膜共振子6を構成することを特徴としている。圧電薄膜共振子6はAuなどからなる電極パッド5A,5Bによって電気信号が印加され、動作する。
【0007】
なお、本発明では、エアーギャップ100を形成する前に用いている、ゲルマニウムを基本とする犠牲層材料は耐熱性に優れ、上記、SiO2,AlN,Pt,Auなどの材料を高温下の良好な条件で形成でき、また、過酸化水素水を基本とする溶液で犠牲層の除去する工程では、これら材料に変質や劣化を与えることがないので、エアーギャップ音響絶縁構造を有する、高性能のデバイスを確実に製作できる特徴がある。本発明によれば、基板材料や配線材料および圧電材料を最適なものに選定する作業において犠牲層の除去でこれらが制約されないことが特徴である。このため、本発明による素子を実装する場合においてもこのプロセスを最適化することができる特徴がある。例えば、半田材(In,Snなど)で素子を固定した後から、犠牲層を除去することが可能になり、これによって組立てが容易になる特徴がある。
【0008】
図2から図5は本発明の1実施例であるエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子の主要製造工程における断面図である。この製造方法の一例を以下に述べる。
【0009】
図2は、シリコンやガラスなどのウエーハ基板10を示す。基板の材料の選択は自由であり、CMOS回路を作り込んだシリコン基板やGaAsIC基板にも適用可能である。
【0010】
図3は、犠牲層材料であるゲルマニウムを蒸着によって所定の領域にパターン99を形成したものである。このパターンは基板上に全面のゲルマニウムを成膜後、フォトレジストをマスクに、過酸化水素水(H2O2)を用いてエッチング、あるいはフォトレジストパターンにゲルマニウムを成膜後、リフトオフ、のいずれかのプロセスによって形成される。
【0011】
図4は、図3の表面にまず、絶縁層となるSiO2層4領域を形成し、続いて、下部電極用のPt層3領域を形成し、この上に順番に、圧電薄膜層であるAlN層2の領域と上部電極用のPt層1の領域を形成したものである。続いて、下部電極と上部電極の一部に接して、Ti−Auなどからなる電極パッド5A,5Bをそれぞれ形成したものである。
【0012】
図5は、このウエーハ基板を過酸化水素水のエッチング液に浸漬してゲルマニウム99を完全に除去し、圧電薄膜共振子の部分にエアーギャップを形成したものである。このように製作されたデバイスの電極端子に電気信号が印加され、圧電薄膜共振子がバンドパスフィルタなどのデバイスとして使われる。
【0013】
ゲルマニウムを基本とした材料と過酸化水素水を基本とした溶液の組合せによって、容易にエアーギャップを形成できるので、本発明の製造方法は超高周波回路に用いられているエアーギャップ配線の形成にも適用できることは言うまでもない。また、エアーギャップの構造は両持ち梁に限ることなく、片持ち梁によるスプリング構造などの作成に適用できることは、自明である。
【0014】
実施例2
図6は本発明の他の実施例であるエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子56とCMOS回路(アンプ回路など)41とを一体に集積化した構造を有する圧電共振子回路60の断面図である。Si基板に集積回路を通常の工程により形成したウエーハ上に、エアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子が形成されていることに特徴がある。圧電共振素子は、集積回路の近傍か上面の、どの領域でも形成できる。一体で集積化された圧電薄膜共振子は周波数の高い領域まで使用できること、制御回路の集積により温度特性、ドリフト特性などの向上が図れることなど、デバイスの性能向上や特性改善の効果と、デバイス容積を小さくしたことによる高歩留まり、低コストの効果がある。
【0015】
図7から図13は本発明の他の実施例であるエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子とCMOS回路(アンプ回路など)とを一体に集積化した構造を有する圧電共振子回路の主要製造工程における断面図である。この製造方法の一例を以下に述べる。
【0016】
図7は、Si基板40上に半導体集積回路の製造プロセスによってCMOS回路41を形成したものである。また、この一部領域42は圧電薄膜共振子を形成するための領域である。
【0017】
図8は、この基板上の一部領域42内に犠牲層材料であるゲルマニウムパターン199を形成したものである。ゲルマニウムはSi基板40と直接接触した構造を図示してあるが、この下に絶縁膜があってもよい。
【0018】
図9は、さらにこの上面に酸化膜54をCVDで堆積して形成したものである。
【0019】
図10は、SiO2層54上に、下部電極用のPt層53領域を形成し、この上に順番に、圧電薄膜層であるAlN層52の領域と上部電極用のPt層51の領域を形成したものである。
【0020】
図11は、CMOS回路41の絶縁膜を貫通してCMOS回路の電極部にスルーホール62を形成したものである。
【0021】
図12は、デバイスの電極間を配線するために、Al電極57、58,59をそれぞれの領域に形成したものである。
【0022】
図13は最終の製造工程である、犠牲層エッチングを行い、エアーギャップ200を形成したものである。ゲルマニウム犠牲層199は過酸化水素水の溶液によって容易に除去でき、この溶液は集積回路を構成している他の材料をアタックしないので集積回路の性能劣化や信頼性低下の原因になることがない特徴を有する。この犠牲層エッチングは通常、ウエーハ状態で行うことが多いが、エアーギャップにすると素子の強度が弱い構造体をもつ圧電共振子回路の場合には、チップに切出して、マウントに組み立てた後にこれら一連の作業を行って、エアーギャップを形成してもよい。
【0023】
以上、集積回路とエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子を集積回路の基板上に一体化した構造および製造方法を述べたが、本発明の構造および製造方法によれば、集積回路の製造方法は従来の手順や材料構成であり、また、AlNの成膜が約350℃の温度で形成できるので圧電薄膜共振子の性能がよく、従来の単体で製造する条件を崩さなく集積素子を形成できるところに本発明の特徴がある。
【0024】
また、本発明の実施例では述べていないが、集積回路の構成にはCMOS回路に限定されるものではなく、バイポーラやBiCMOSあるいはGaAsICの基板上の一部にエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子を集積化して、高性能な圧電共振子回路が構成されることはいうまでもない。
【発明の効果】
本発明により、圧電薄膜共振子とCMOS回路とを集積化することが容易になる。一体で集積化された圧電薄膜共振子は周波数の高い領域まで使用できること、制御回路の集積により温度特性、ドリフト特性などの向上が図れることなど、デバイスの性能向上や特性改善の効果と、デバイス容積を小さくしたことによる高歩留まり、低コストの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子の断面図。
【図2】実施例1、図1のエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子を製作する工程におけるウエーハ基板の断面図。
【図3】実施例1、図2のウエーハ基板に犠牲層材料であるゲルマニウムのパターンを形成した断面図。
【図4】実施例1、図3のウエーハ基板に犠牲層と圧電薄膜共振子の構造体を形成した断面図。
【図5】実施例1、図4のウエーハ基板から犠牲層を除去してエアーギャップを形成した圧電薄膜共振子の構造体の断面図。
【図6】実施例2のエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子とCMOS回路とを一体に集積化した構造を有する圧電共振回路の断面図。
【図7】実施例2、図6の圧電共振回路を製造する工程においてSi基板上にCMOS回路を形成した断面図。
【図8】実施例2の製造方法における図7の上面に、犠牲層であるパターンを形成した断面図。
【図9】実施例2の製造方法における図8の上面に、絶縁膜である酸化膜を形成した断面図。
【図10】実施例2の製造方法における図9の上面に、圧電薄膜共振子の構造を形成した断面図。
【図11】実施例2の製造方法における図10の上面に、CMOS回路の電極用スルーホールを形成した断面図。
【図12】実施例2の製造方法における図11の上面に、配線用Al電極を形成した断面図。
【図13】実施例2の製造方法における図12の上面にある、犠牲層を除去し圧電共振回路を形成した断面図。
【符号の説明】
1,51:上部電極
2、52:圧電薄膜層
3,53:下部電極
4、54:絶縁膜層
5、10,40:基板
5A、5B:電極パッド
6、56:圧電薄膜共振子
10、200:エアーギャップ
41:CMOS回路
99,199:犠牲層
60:圧電共振子回路
Claims (4)
- エアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子を半導体素子または半導体集積回路を有する同一基板上に形成した構成を有することを特徴とした圧電共振子回路。
- エアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子をSi、GaAsなどの半導体基板、およびガラス、セラミックスなどの絶縁体基板上に形成した構成を有することを特徴とした圧電共振子回路。
- 半導体基板上に半導体素子または半導体集積回路を形成する工程と、同一半導体基板上に圧電薄膜共振子を形成する工程とからなる圧電共振子回路の製造方法。
- 請求項1と2記載のエアーギャップ音響絶縁構造を有する圧電薄膜共振子を形成する工程において、圧電薄膜共振子構造をゲルマニウム材料を基本とする犠牲層パターン上に形成する工程と、該犠牲層を製造の最終工程において過酸化水素水を基本とする溶液で除去する工程とによって形成される製造方法を特徴とする圧電共振子回路の製造方法。
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