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JP2004278905A - 加熱調理器並びに加熱制御方法。 - Google Patents

加熱調理器並びに加熱制御方法。 Download PDF

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JP2004278905A JP2003070695A JP2003070695A JP2004278905A JP 2004278905 A JP2004278905 A JP 2004278905A JP 2003070695 A JP2003070695 A JP 2003070695A JP 2003070695 A JP2003070695 A JP 2003070695A JP 2004278905 A JP2004278905 A JP 2004278905A
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Abstract

【課題】調理器具にフッ素樹脂等のコーティングがされている場合において、予熱時に高温の調理を可能とすると共にコーティングを保護すること。
【解決手段】調理器具を加熱する加熱手段と、予熱時の温度変化パターンである予熱パターンの使用の有無を選択する選択手段とを備える。そして、この選択手段の選択結果に基づいて、予熱パターンが選択された場合には、例えば、フッ素コーティング等を保護するためにコーティング保護に適した温度変化でかつ高温も使える予熱パターンで加熱手段を制御し(ステップS3)、非選択の場合には通常の加熱パターンに基づいて加熱手段を制御する(ステップS4)という2つの制御モードを持つ制御手段を備えた。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、加熱調理器並びに加熱制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フッ素樹脂コーティングを保護するために、調理器の加熱温度をフッ素樹脂コーティングの耐久温度以下に制御する調理器があった。
例えば、専用釜とその上面を覆う放熱板を有する炊飯器では、放熱板にフッ素コーティングを施すとともに、この放熱板の温度をフッ素樹脂の耐久温度以下に保つことにより、樹脂コーティングを保護している(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−164066号公報(第0039項、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような従来の炊飯器では、調理器自体のフッ素樹脂コーティングを保護するものであり、フライパン、鍋等の特性の異なる汎用的な器を加熱するものでない。
また、現在、誘導加熱調理器が普及しつつあるが、このような加熱調理器に上述のようなフッ素樹脂コーティングを保護する加熱制御を適用することを想定した場合でも、以下に説明するような問題がある。
【0005】
つまり、上述のような加熱制御では、加熱の上限温度をフッ素樹脂の耐久温度以下(この例では250℃)に制御することにより、フッ素樹脂の特性劣化を防いでいた。しかしこの温度はフッ素樹脂加工器具での一般的な調理法である焼き物や炒め物に充分な予備加熱温度(予熱温度)とは言えない。そもそも焼き物の調理において味をよくするには食材内部のうま味成分流出を少なく抑える必要がある。そのため食材表面をすばやく焼き固めたり(例えば、ステーキを焼く場合等)、食材表面の水分と油を素早く交代させる(例えば、焼飯、野菜炒め)などしてうま味成分を閉じ込める必要がある。こうした調理特性から焼き物や炒め物に使用する調理器具においては食材投入後ただちに加熱が開始されるよう食材投入前に空の状態で器具温度を上げておくのが一般的である(予熱)。例えば、焼飯に必要な調理器具の初期温度は300℃以上である。もう1つの特性として300℃以上の高温が必要なのは初回の食材投入時だけである点があげられる。食材表面の熱加工により成分流出を抑えた後は、過剰な焦げの進展をおさえつつ食材内部まで火をとおすため200℃台での加熱に移行するのが一般的である。
上述のような調理の状況を考慮すると、従来のフッ素樹脂保護の過加熱防止制御を加熱調理器に適用した場合、フライパン等の器の温度がフッ素樹脂耐久温度以下の比較的低温に抑えられてしまうため、炒め物、焼き物等の高温を必要とする料理に適さないという問題があった。
また、そもそも調理器具の常識として、フッ素加工等のノンスティック加工が施された調理器具はコーティング保護のため、金属ヘラなどを使用してはならないということのほか、高温調理には不適で180から200℃以下の温度で使用しなければならないといわれていた。
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、調理器具のコーティングを保護しつつ高温での調理に適した加熱調理器並びに調理器具のコーティング保護に適した加熱制御方法を得ることを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の加熱調理器は、調理器具を加熱する加熱手段と、予熱時の温度変化パターンである予熱パターンの使用の有無を選択する選択手段と、この選択手段の選択結果に基づいて、前記予熱パターンが選択された場合には、前記予熱パターンに基づいて前記加熱手段を制御し、非選択の場合には、他の加熱パターンに基づいて前記加熱手段を制御する制御手段と、を備えたものである。
【0007】
この発明の加熱制御方法は、制御手段が加熱調理器の加熱手段の出力を制御することにより調理器具を加熱する加熱制御方法であって、前記制御手段の制御により、前記調理器具に使用されるコーティング材の融点温度未満かつ耐久温度を超える温度に前記調理器具を加熱する第1の加熱ステップと、この第1の加熱ステップ終了後、前記調理器具の温度を前記耐久温度以下の連続使用温度域内に維持する第2の加熱ステップとを備えたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
次に、この発明の実施の形態1について説明する。この実施の形態では、加熱調理器として誘導加熱調理器の例を説明する。図1は、この実施の形態1の加熱調理器の概観、図2は各種回路を示す機能ブロック図である。加熱調理器の筐体1正面には、出力調整ノブ2が設けられており、調理者がこのノブを調節することにより、出力(火力)を調節することができる。筐体1の上面には、出力を発光ダイオード、液晶表示装置などの表示装置により、出力や予熱完了時期を表示する表示部3や、フライパン等の調理器具を加熱する加熱部4、調理者が予熱モードの選択をするためのボタン5が設けられている。
【0009】
一方、筐体1内部には、図2に示すように誘導加熱を行うヒータ12、このヒータ11に供給する電流を制御するヒータ制御回路11、ヒータ制御回路11や他の回路を制御する制御部10があり、この制御部10の制御に基づいて調理器具の加熱が行われる。また、制御部10には、各種素子と制御部10とのインタフェース処理を行うI/Oコントローラ13(Input Output Controller)が接続され、このI/Oコントローラ13により、調理器具の温度を測定する温度センサ14、ボタン5、出力調整ノブ2の他、主電源のスイッチ15の入出力信号の制御が行われる。
【0010】
次に、図3及び図4に基づいて、この加熱調理器の動作を説明する。まず、電源が投入され調理開始(ステップS1)となると、制御部10は調理者による加熱モードの選択を調べる。ここで、選択手段としてボタン5が調理者により押下されるとモード2が選択され、制御部10は予熱モードでヒータ12を制御する(ステップS3)。一方、ボタン5が押下されなかった場合には、制御部10は通常運転モードでヒータ12を制御する(ステップS4)。
【0011】
ここで、予熱モードと通常運転モードでの加熱制御は、図4に示すように異なる。
まず、通常運転モードでは、破線t2で示すように調理開始から調理器具の温度が上昇し、リミッタ発動温度TL1に到達したところで、温度上昇が止まる。なすわち、調理器具温度が温度TL1以下となるように制御される(制御部10による過加熱防止機能)。このときのヒータ12の出力P2は、図上三角印でマークされた線のように推移し、制御部10は調理開始から温度がリミッタ発動温度TL1に達するまで、ほぼ100%の出力(若しくは、高出力)を出すようにヒータ12を制御する。温度がリミッタ発動温度TL1に達したことを温度センサ14からの信号によって検知すると、制御部10はこの温度センサ14の信号に基づいてヒータ12の出力を下げ、以降、温度がリミッタ発動温度TL1以下となるように出力を調整する。
この通常運転モードでは、上述のような温度変化をもつ加熱パターンを用いるため、炒め物に代表されるような高温が必要ない料理、例えば、煮物等に適している。
【0012】
一方、予熱モードにおいては、制御部10は、調理器具の温度が一時的にリミッタ発動温度TL1を超えるようにヒータ12を制御する。図4中、予熱モードの温度は、実線t1で示めされ、ヒータ12の出力P1は丸印でマークされている。図に示されるように予熱時間中(調理開始から所定の時間まで)は、調理器具の温度がリミッタ発動温度TL1以上になっても、制御部10はリミッタ発動温度TL1による温度制限を行わず、調理器具の温度上昇を許す。そして、リミッタ発動温度TL1以上の予熱温度が所定時間続いた後(例えば、10秒〜30秒間)、制御部10は調理器具の温度をリミッタ発動温度TL1以下に下げるように、ヒータ12出力を下げ、以降、調理器具温度がリミッタ発動温度TL1以下となるように、出力を制御する(過加熱防止機能)。このように、予熱モードにおいては、一旦、予熱時において一旦高い温度で加熱し、その後、通常の温度に戻すように調理器具の温度を変化させる予熱パターンを用いる。そのため、予熱モードは炒め物のような比較的高温の調理をする場合に適している。
【0013】
なお、以上は、いわゆる空焚きの状態で出力調整ノブ2が100%出力を指示している場合について説明したが、予熱モードの予熱時間以外では、制御部10は出力調整ノブ2の指示に従って、出力調整を行う。
最後に、調理が終わって、調理者によりスイッチ15がオフにされると、調理終了となる(ステップS5)。
【0014】
以上のように、この実施の形態の加熱調理器では、選択手段の選択結果に応じて、予熱時の加熱モードを切り替えるため、加熱モードの選択によって調理器具または調理方法に応じた加熱を行うことができる。
また、予熱モードにおいて、一時的にリミッタ温度以上に調理器具を加熱するため、高温の調理が可能となり、炒め物・焼き物等の調理初期に高温が必要な料理に適した加熱調理器を得ることができる。
【0015】
また、所定時間後にリミッタ温度以下となるように、温度を下げることにより、調理器具の寿命を延ばすこともできる。例えば、樹脂加工された調理器具では、長時間耐久温度以上の温度域を使用すると、ある時間を超えたところからフッ素樹脂の特性の劣化が早まってしまい、調理器具の寿命を縮めてしまう結果となる。一方、比較的短時間であれば特性の劇的劣化は発生せず、長時間高温で料理した場合と異なり、温度を下げることによって樹脂特性を復元させることができるため、調理器具の寿命を延ばすことができる。
【0016】
実施の形態2.
実施の形態2は、調理者がボタン5を押下することにより予熱モードで自動運転を開始するとともに、予熱が適温となるタイミングを調理者に知らせる加熱調理器の例である。
図5は、この実施の形態2における加熱制御処理を示すフローチャートである。まず、スイッチ15がオンとなり電源が入ると(ステップS11)、制御部10は、ボタン5が押下されたかを調べる(ステップS12)。ここで、ボタン5が押下されていた場合には、制御部10は、自動運転を開始し、ヒータ12が最高出力で運転するように指令を出す(出力の自動設定、ステップS13)。ここで、表示部3等に予熱モードで運転中であることを表示するようにしてもよい。
【0017】
次に、制御部10は、予熱モードの設定温度に到達する時間を予測し、設定温度到達時になるまで、若しくは到達時から所定時間前になるまで待機し、加熱を続ける(ステップS14)。ここで、設定温度への到達時は、調理開始から所定時間経過後として予測してもよいし、温度センサ14が検知した温度の上昇率または実測値から予測してもよい。
【0018】
次に、制御部10は、設定温度に到達するタイミングを調理者に報知する(ステップS15)。報知は、表示部3の点灯状態を変化させることで行うが、図示しないブサーや、合成音声をスピーカから出力することによって行ってもよい。また、報知は、設定温度に到達した時の他、例えば、到達時の数秒〜数十秒前からカウントダウン形式で断続的に報知するような方法で行ってもよいし、図6に示すように、予熱モードの開始時から予熱完了時までカウントダウンを行うようにしてもよい(この場合には、ステップS14の待機処理は行わない)。
【0019】
報知が終了すると、制御部10はヒータ12の出力を低下させる(ステップS17)。例えば、出力を40〜50%に抑えたり、温度センサ4出力に応じて出力調整することにより、例えば、260℃のリミッタ発動温度を保持する処理を行ったりする。なお、ステップS13及びステップS17の予熱モード時の出力制御処理や予熱パターンは、図4に示した通りである。
【0020】
出力低下処理が終了すると、制御部10は、表示部3等に表示されていた予熱モード運転中の表示を消し、自動運転を解除する。
次に、制御部10は出力調整ノブ2の調整が行われたかを調べ、行われていない場合には、そのままの出力を継続するが(ステップS20)、所定時間が経過すると加熱を中止しスタンバイ状態に戻る(ステップS21)。
一方、出力調整ノブ2の操作が行われていた場合には、通常運転モードに移行し、出力調整ノブの設定に合わせた出力で運転を行う(ステップS23)。なお、通常運転モードの出力調整についても、予熱モードと同様に図4に示した通りである。
【0021】
また、ステップS12でボタン5が押されなかった場合には、制御部10は出力調整ノブ2が調節されたかを検出する(ステップS22)。ここで、操作が行われていない場合にはステップS12に戻り、調節が行われていた場合には、このノブ2の指示に従って通常運転モードでの運転を開始する(ステップS23)。
【0022】
図7は、予熱モードの予熱パターンを示す一例である。ここで、被加熱対象の調理器具は、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)でコーティングされており、樹脂特性上連続使用可能な耐久温度が260℃、樹脂の軟化が始まる融点が327℃、熱分解が始まる熱分解温度が390℃である。
ここで、耐久温度以下は連続使用が可能な領域で、調理器具を長時間この温度帯で使用しても特性の劣化が極めて少なく、長寿命が得られる温度領域である。この温度領域は、調理器具の取扱い説明書等に連続使用温度範囲として記載されているため、これまで慎重な調理者は、調理中は耐久温度以下となるよう注意し、通常、中火以下で調理するようにしていた。
【0023】
耐久温度を超えたところから融点未満の温度領域は、断続使用が可能な温度領域であり、調理中フッ素樹脂の特性を発揮でき、かつ短時間の使用であればフッ素樹脂の傷みを充分抑制できる。
温度が融点以上(軟化温度領域)になると、フッ素樹脂の軟化が始まり、フッ素樹脂が傷つき易くなる。従って、傷対策が取られておらず、また、調理中に調理者がヘラ等を使用する場合には、この温度領域は使用しないほうが調理器具の寿命を延ばすことができる。
熱分解温度以上(熱分解温度領域)は、熱分解によってフッ素樹脂特性の恒久的変化が発生する温度で、一旦変化してしまうと温度を下げても特性は復帰しない。また、ガスが発生する場合もあり、PTFEのコーティングがされている調理器具では使用してはいけない温度領域である。
また、A〜Cに示す期間が予熱時間であり約60秒〜70秒、予熱モードの運転が行われる。ここで、リミッタ発動温度TL1は耐久温度260℃である。
【0024】
次に、加熱パターンを説明する。
加熱が開始されると、調理器具の材質によっても多少の誤差はあるが、予熱モードでは加熱開始から徐々に調理器具の温度t1が上昇し、連続使用可能温度領域を通過して約40秒〜50秒(B点)で耐久温度(260℃)以上になる。ここで、予熱時間の温度は断続使用可能温度領域(耐久温度260℃を超えた温度〜融点327℃未満)に抑えられる。温度が融点を超えるとフッ素樹脂の軟化が始まり、樹脂が柔らかくなってしまうため、コーティングが傷つきやすくまた剥げやすくなってしまう。そこで、予熱モードでは調理器具の温度が焼き物や炒め物の調理に充分な初期温度でかつ、コーティングを傷めない温度領域内に入るようにヒータ12の出力が制御される。この制御は、制御部10が温度センサ14の出力に基づき或いは予めプログラムされたヒータ12の出力設定によって、ヒータ12の出力調整を行うことにより実行される。なお、プログラム、予熱モードでの予熱パターン、通常モードの加熱パターンや、ヒータ出力パターンなどは制御部10のメモリに記憶されている。
【0025】
一方、断続使用可能温度領域では、融点に近い温度であるため、短時間の使用であればフッ素樹脂の特性を維持し実用上樹脂の傷みも充分に抑制することができるが、この温度域で長時間の使用するとフッ素樹脂が痛み始め、寿命を短くしてしまう。そのため、予熱として炒め物や焼き物等の調理の初期段階が終わった後は、制御部10は、自動的に出力を抑えた制御を行って次第に温度t1を下げていく(図7のDで示す期間)。(なお、参考までに耐久温度に基づく出力のリミッタがない場合の温度t3の変化を図7に併記する)。
【0026】
以上のような加熱制御を行うことにより、炒め物や焼き物等に必要な十分な温度と調理器具の長寿命化の両方を達成することができる。
特に、予熱時間に使用される断続使用可能温度領域では、炒め物や焼き物に十分な温度を得られるため、上述のように食材表面をすばやく焼き固めたり(例えば、ステーキを焼く場合等)、食材表面の水分と油を素早く交代させる(例えば、焼飯、野菜炒め)などしてうま味成分を閉じ込めることができるという効果がある。
また、焼き固め等の調理の初期段階が終わった後は、制御部10は、調理器具の温度を自動的に連続使用可能な温度領域に下げるため、長時間の使用でも樹脂の傷みを抑え、器具の寿命を延ばすことができる。
【0027】
この実施の形態2では、予熱時間を約60〜70秒としたが、樹脂の特性に応じて傷みを抑制できる時間であれば、どのような時間設定にしてもかまわない。また、予熱時間経過後の温度設定は260℃に限らず、それ以下の温度設定にすることができる。例えば、一般的な調理に必要な180℃〜200℃を上限として、温度調節ノブ2の設定値に合わせた温度にするとよい。
【0028】
実施の形態3.
実施の形態1及び2では、通常運転モードにおいて、調理器具温度をリミッタ発動温度TL1以下に抑える加熱制御を行ったが、この実施の形態3では、通常運転モードでリミッタ発動温度TL1を超える温度帯を使用し、コーティング保護モードでリミッタ発動温度TL1以下とする加熱制御を行う。また、予熱時間の温度上昇率を通常運転モードより低く抑えることにより、調理器具の傷みを抑制する加熱制御を行う。
この実施の形態3のハードウェア構成は、基本的に実施の形態1と同様であるので、異なる部分について図8及び図9を用いて説明する。
【0029】
図3の処理と同様に、調理者が選択手段(ボタン5)によりコーティング保護モードを選択すると、制御部10がこれを検知し、コーティング保護モードの運転が開始される(ステップS31)。このコーティング保護モードでは、図9のt1で示すように加熱開始からの温度上昇率が通常モードの温度上昇率よりも低く抑えられている。制御部10は、通常モードの最大出力P2に比べて低い出力P1を出すようにヒータ12に指令し、上述のように温度上昇率を比較的低く制御する。調理器具温度がリミッタ発動温度TL1に近づくと、制御部10はヒータ12の出力を落とし、温度が耐久温度以内に収まるように制御を行う。このとき、図4に示したように、出力の連続的変化により温度をコントロールすることもできるし、図9に示したように、出力P2を断続的にON/OFF制御し、温度をコントロールしてもかまわない。
【0030】
選択手段で通常モードが選択された場合には、制御部10は図9のt2に示すとおり、保護モードに比べて高い温度上昇率となるように、ヒータ12の出力を制御する。このとき、温度t2は、出力調節ノブの設定に従ってコーティングの耐久温度を超える温度にすることができる。この通常運転モードでは、コーティングの損傷の心配がない鉄鍋等を使用する場合に有効で、高温で炒め物や焼き物の調理をすることができる。
【0031】
以上のようにこの実施の形態3によれば、高温での調理とコーティングの保護とを実現することができる。また、コーティング保護モードでは、調理開始からの温度上昇を低く抑えることにより、コーティングの損傷や剥がれを効果的に抑制することができる。通常、調理器具のコーティングはベースとなる金属の表面に異なる熱膨張率を有するコーティング材料を塗布するため、ベースとコーティング材料との熱膨張率の違いにより、急速な加熱をした場合には、コーティング材料が剥がれ易くなる。特に、誘導加熱調理器では、まずベースとなる金属部分がガスコンロ等を使用した場合と比べて急激に加熱され、この熱が次第にコーティング材に伝播するため、加熱初期にはベースとコーティング材との間で温度差や膨張率の差が大きくなる。そのため、普通に加熱するとコーティングが剥がれ易くなってしまう。しかし、この実施の形態のようにゆっくり加熱する場合には、ベースと温度差が小さくなりコーティングも剥がれ難くなる。他の調理器を使った場合にも同様のことが言えるが、誘導加熱調理器の場合にはその傾向が強く特に有効である。
【0032】
なお、上述の説明では、保護モードでの温度上昇率を通常モードでの最高温度上昇率よりも低い設定にしたが、出力は基本的に出力調整ノブ5の設定に従うこととし、温度上昇率が予め定められた値以上となることが予測された場合に、出力を抑えるように制御してもよい。
また、温度上昇率を抑えることによってコーティングを保護するという効果を狙う場合には、通常モードにおいて保護モードより高い温度(耐久温度以上)を使用できることは必須ではない。
また、温度センサ14は、調理器具の温度を測定しているが、加熱が急速である場合には、熱伝播速度等の関係で測定値が実際の調理器具温度よりも低くなってしまう可能性がある。このような場合には、温度が上昇しすぎてコーティングを傷めてしまうが、この実施の形態のように温度上昇率を緩やかにすると、調理器具の実際の温度と測定値(予測値)との誤差が少なくなり、過加熱を効果的に抑制できる。
【0033】
実施の形態4.
実施の形態4は、予熱モードにおいて温度上昇率を抑える点で実施の形態3と同様であるが、さらに、調理タイミングを知らせる報知機能を備える。
図10に基づいて、この実施の形態4の動作について説明する。なお、基本的動作は図5と同様であるため、異なる部分を中心に説明する。コーティング材は実施の形態2と同様にフッ素樹脂(PTFE)である。
【0034】
電源が入れられボタン5が押下されると(ステップS21)、制御部10は実施の形態3で説明したとおり、温度上昇率が通常運転モードよりも低くなるように、ヒータ12の出力を制御する(ステップS31)。そして、調理器具の温度を予測し、設定温度到達を調理者に報知する(ステップS4〜6)。このとき、図11に示したように、温度t1は断続使用が可能な温度領域となる(ただし、温度上昇率は低率)。また、調理者は、報知によって食材の投入タイミングを知ることができるため、非常に便利である。
【0035】
予熱時間を過ぎると、実施の形態2で説明したのと同様に温度は連続運転可能領域に下げられ、フッ素樹脂を保護しつつ高温での調理が可能となる。この例では、耐久温度260℃以下の約180℃に温度を下げ、これ以上温度が上昇しないようにコントロールしている。
一方、ステップS2でボタン5が押されず、通常運転モードが開始された場合には、制御部10は、ステップS31での温度上昇率よりも高い温度上昇率となるように、ヒータ12を制御する(ステップS121)。これにより、高速な加熱を可能にする。このときの最高温度は、図11のt2で示すように、予熱モードでの予熱時間経過後の最高温度と同様に設定されている。なお、設定温度はこれに限らず図9のように、高い温度(耐久温度以上)に設定してもよい。
また、このステップS121で調理器具が設定温度に達した場合には、予熱モード(ステップS4、5)と同様に報知するようにしてもよい。
【0036】
以上のようにこの発明によれば、モード選択により温度上昇率を低く抑えるため、フッ素樹脂などの樹脂コーティングの損傷を効果的に抑制することができる。また、食材の投入タイミングの報知を行うため、温度上昇率の違いによる適温への到達時間が変わっても、調理者は迷わずに済む。
【0037】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上述の説明に限らずこの発明の趣旨を逸脱しない範囲で、様々な変形を行うことができる。
例えば、加熱調理器は、誘導加熱調理器に限らず他の加熱調理器(例えばガスコンロ等)を用いてもよい。
また、実施の形態1、2では、予熱モードと通常運転モードとを選択手段で切り替えるようにしたが、コーティングの保護と高温調理の両立という観点では、選択手段は必ずしも必要ではなく、基本的に予熱モードで動作するようにしてもかまわない。
また、通常はコーティングを保護できるモードで動作し、選択手段によって選択された場合に、コーティング保護を意識しない加熱パターンを用いてもよい。
選択手段は、ボタン5に限らず他のデバイスを用いることもできる。調理者に分かり易いよう、選択手段には、「予熱」の他に、「フッ素加工」、「コーティング保護」、「炒め物」、「焼き物」、「ゆっくり加熱」等をコーティングの保護するモードを選択するために、表示するとよい。また、逆に、それ以外のモードを選択するため「鍋物」、「煮物」、「鉄鍋」、「急速加熱」、「炒め物」(図9の通常モードを選ぶ場合)等を表示してもよい。
また、選択手段は、調理者がその度選択せず、デフォルトでモードを設定するようにしたり、調理器具の種類が認識できる場合には、自動的に設定するようにしてもよい。
【0038】
報知手段による報知は、液晶表示装置、EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の視覚的報知装置のほか、スピーカ、ブザーによる報知装置、ノブが飛び出すなどの形態が変化することによって報知する装置などさまざまなものが使用できる。
また、耐久温度以下設定されたリミッタ発動温度TL1に加えて、耐久温度を超える温度であって、コーティング材の融点又は熱分解温度以下の温度を選択し、リミッタ発動温度TL2として設定することもできる。例えば、制御部10は、温度センサ14の出力値を監視し、この出力値に基づいて(例えば、出力値が所定値以上になった場合や、温度の上昇率を考慮した温度予測値等に基づいて)、予熱モード、通常モードを含め、調理器具の温度がこのリミッタ発動温度TL2以下となるように、ヒータ12の出力を調整する。これにより、調理器具の損傷を防止することができる。
【0039】
予熱時間は、60〜70秒である必要は必ずしもなく、コーティング材の断続使用可能時間内で、適宜時間を変更することできる。
なお、各図において、同一の符号は同一又は相当の部分を表している。
【0040】
【発明の効果】
この発明は、以上に説明したように構成されているので、調理器具のコーティングを保護することができる。
【0041】
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による加熱調理器の斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1による加熱調理器の機能ブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1による加熱制御のフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1による加熱パターンを示す特性図である。
【図5】この発明の実施の形態2による加熱制御のフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2による表示部の表示パターンを示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2による加熱パターンを示す特性図である。
【図8】この発明の実施の形態3による加熱制御のフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態3による加熱パターンを示す特性図である。
【図10】この発明の実施の形態4による加熱制御のフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態4による加熱パターンを示す特性図である。
【符号の説明】
1 筐体、 2 出力調節ノブ、 3 表示部、 4 加熱部、 5 ボタン、 10 制御部、 11 ヒータ制御回路、 12 ヒータ、 13 I/Oコントローラ、 14 温度センサ、 15 スイッチ

Claims (11)

  1. 調理器具を加熱する加熱手段と、
    予熱時の温度変化パターンである予熱パターンの使用の有無を選択する選択手段と、
    この選択手段の選択結果に基づいて、前記予熱パターンが選択された場合には、前記予熱パターンに基づいて前記加熱手段を制御し、非選択の場合には、他の加熱パターンに基づいて前記加熱手段を制御する制御手段と、
    を備えた加熱調理器。
  2. 前記制御手段は、加熱状態が予め定められた上限温度以下となるように前記加熱手段の出力を制御する過加熱防止機能を備えるとともに、前記選択手段の決定結果に基づいて、前記上限温度より上の温度域を一時的に使用すし、所定時間経過後は前記上限温度以下を使用するように前記予熱パターンを制御すること特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
  3. 前記制御手段により制御される報知手段を備え、
    前記制御手段は、前記調理器具の温度に基づいて、前記温度が予め定められた予熱温度以上になった場合に前記報知手段に報知動作を行なわせることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱調理器。
  4. 前記報知手段は、前記調理器具が前記予熱温度に達するまでの時期を、段階的に報知することを特徴とする請求項3に記載の加熱調理器。
  5. 前記加熱手段の出力レベルを設定する入力手段を備えるとともに、
    前記制御手段は、前記選択手段により予熱パターンが選択された場合には、前記出力レベルを予め定められた値に自動設定し、非選択の場合には、前記入力手段により設定された出力レベルに基づいてた加熱パターンを使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の加熱調理器。
  6. 前記予熱パターンは、予熱温度がフッ素樹脂の耐久温度を超え融点温度未満の温度であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の加熱調理器。
  7. 前記制御手段は、フッ素樹脂の融点温度を前記上限温度として前記加熱パターンを制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の加熱調理器。
  8. 前記予熱パターンは、前記他の加熱パターンより温度上昇率が低いパターンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の加熱調理器。
  9. 制御手段が加熱調理器の加熱手段の出力を制御することにより調理器具を加熱する加熱制御方法であって、
    前記制御手段の制御により、前記調理器具に使用されるコーティング材の融点温度未満かつ耐久温度を超える温度に前記調理器具を加熱する第1の加熱ステップと、
    この第1の加熱ステップ終了後、前記調理器具の温度を前記耐久温度以下の連続使用温度域内に維持する第2の加熱ステップとを備えた加熱制御方法。
  10. 前記調理器具の温度情報に基づいて、前記調理器具の温度が前記融点温度未満かつ耐久温度を超える温度域となるタイミングを報知する報知ステップを備え、
    前記第2の加熱ステップは、前記報知ステップの報知後に実行されることを特徴とする請求項9に記載の加熱制御方法。
  11. 前記第1のステップにおいて、前記制御手段は、前記調理器具の温度を260℃超327度未満とすることを特徴とする請求項9又は10に記載の加熱制御方法。
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