JP2004276632A - コーナリングパワーの算出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コーナリングパワーの算出方法は、所望の操舵入力を行なって計測されたスリップ角の時系列データと、その時の前記装着タイヤの横力の時系列データとを用いて周波数分析を行う周波数分析工程と、少なくともスリップ角に対する前記装着タイヤの横力の振幅比を求める演算工程と、この振幅比を少なくとも用いてコーナリングパワーを求める算出工程とを有する。前記スリップ角の時系列データは、装着タイヤのホイールに取り付けられた対地速度センサによって2方向の対地速度を計測することによって求められたデータであるのが好ましい。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、4輪自動車等の車両走行中の装着タイヤのコーナリングパワーを求めるコーナリングパワーの算出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、自動車の運動性能の高性能化に対応して、装着タイヤに求められる操縦性能も高性能化が要求されている。
一般に、タイヤの操縦性能は、スリップ角が1度の時のタイヤの回転軸に作用する横力(コーナリングパワー)や、このスリップ角度を大きくした時に横力が最大となる最大横力を、室内ドラムや室内エンドレスベルト上を走行させて計測して評価される。タイヤの操縦性能の評価において、コーナリングパワーが大きく、自動車の4輪に装着されるタイヤのコーナリングパワーのバランス(アンダーステア特性やニュートラルステア特性やオーバーステア特性)が良好であること、しかも、各輪にかかる荷重の変動によって生じる上記バランスの変動も小さいことが望まれている。また、最大横力も可能な限り大きいことも望まれている。
【0003】
一方、実際の路面(実路)上に自動車を走行させて、自動車の走行中に作用する装着タイヤのコーナリングパワーや4輪のコーナリングパワーのバランスを精度よく求め、タイヤの操縦性能を評価することも行なわれている。
【0004】
例えば、走行中の自動車の装着タイヤのコーナリングパワーは、自動車のホイールの回転軸を中心とする3方向の力(荷重、横力および前後力)を検出するとともにこの3方向を回転軸とする回転トルクを計測する6分力計ロードセルをホイールに設け、また、車両の横加速度やヨーレートや操舵角等を計測するセンサーを設け、操舵角を一定に維持して定常円旋回を行って計測中の荷重におけるコーナリングパワーを求める。
また、下記特許文献1では、装着タイヤの前後輪舵角、実横加速度、実ヨーレートおよび車速(走行速度)等の計測データに基づいて装着タイヤのコーナリングパワーを算出する技術を開示している。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−144267号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述の定常円旋回を行ってコーナリングパワーを求める方法では、定常円旋回を行なう際、計測される車両の横力やスタビリティファクタ等の計測結果および車両の重心位置から装着タイヤまでの距離等の車両諸元を用いて演算することで装着タイヤのスリップ角を算出するので、概略のスリップ角しか求めることができず、しかも、本来発生する各車輪のトウ角変化やコンプライアンスステアが無視される。そのため、算出されたスリップ角を用いて求められるコーナリングパワーは、精度の高いものではない。
このように、精度の高いコーナリングパワーを求めることができないため、例えば、室内で計測されるコーナリングパワーと相関が十分に得られない他、タイヤ仕様の変更に伴って生じるコーナリングパワーの差異を正確にとらえることができないといった問題があった。
さらに、定常円旋回では、定常時のコーナリングパワーしか求めることはできず、任意の操舵入力時にスリップ角に対して遅れて発生する横力に基づいたコーナリングパワーを精度高く求めることもできない。
【0007】
一方、上記特許文献1では、自動車の左右輪の装着タイヤのコーナリングパワーの合計値である等価値を、車両2輪モデルを用いて算出するにすぎない。そのため、左右輪のうち一方の装着タイヤのコーナリングパワーは、上記算出された等価値から、所定の配分係数を用いて算出する必要がある。しかし、この配分係数は、予めコーナリングパワーの荷重依存性に基づいて設定される係数であるため、各輪のコーナリングパワーを求めるために、予め求めるべきコーナリングパワーの荷重依存性を求めなければならないといった不都合が生じる。そのため、配分係数を室内ドラム等で予め得られたコーナリングパワーの荷重依存性に基づいて定めなければならず、走行車両中の装着タイヤ単体のコーナリングパワーを、走行車両中の計測データから直接算出することはできない。
さらに、左右輪の装着タイヤのコーナリングパワーの等価値を算出する際に用いる車両2輪モデルは、コーナリングパワーは自動車の走行速度によらず一定とするが、実際、コーナリングパワーは走行速度に応じて変化するものであり、車両走行中の装着タイヤのコーナリングパワーを精度高く求めることができない。
【0008】
そこで、本発明は、走行車両中の装着タイヤのコーナリングパワーを、所望の入力操舵時のコーナリングパワーを、しかも精度高く求めることのできるコーナリングパワーの算出方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、走行車両中の装着タイヤのコーナリングパワーを求めるコーナリングパワーの算出方法であって、操舵入力を行なって計測されたスリップ角の時系列データと、前記操舵入力時の前記装着タイヤの横力の時系列データとを用いて周波数分析を行い、前記スリップ角に対する前記装着タイヤの横力の振幅比を少なくとも求める周波数分析工程と、この振幅比を少なくとも用いてコーナリングパワーを求める算出工程とを有することを特徴とするコーナリングパワーの算出方法を提供する。
【0010】
ここで、前記スリップ角の時系列データは、装着タイヤのホイールに取り付けられた対地速度センサで得られる2方向の対地速度を用いて計測されたデータであるのが好ましい。
【0011】
また、前記操舵入力は、複数の操舵周波数の成分を含み、前記周波数分析工程は、前記振幅比の他に、前記装着タイヤの横力のスリップ角に対する位相角を求める工程であって、この求められる前記振幅比および前記位相角は、前記操舵周波数に対する依存性を表す周波数特性を有するのが好ましい。その際、前記算出工程は、スリップ角に対する前記装着タイヤの横力の応答を1次遅れ系とし、前記振幅比および前記位相角の前記周波数特性から、前記1次遅れ系のパラメータを同定することによって前記コーナリングパワーを求めるのが好ましい。
【0012】
また、前記操舵入力は、操舵周波数が略一定のスラローム操舵入力あるいは正弦波操舵入力であって、前記周波数分析工程は、スリップ角あるいは横力において周波数成分の最も大きいピーク周波数における前記振幅比の値を求め、前記算出工程は、前記周波数分析工程で求められた前記振幅比の値を前記コーナリングパワーとするのも、同様に好ましい。
その際、前記算出工程は、前記操舵入力によって走行車両中の横加速度が0.5G以下で、走行速度が80(km/時)以上の場合、前記周波数分析工程で求められた前記振幅比の値を前記コーナリングパワーとするのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のコーナリングパワーの算出方法について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
【0014】
図1(a),(b)は、本発明におけるコーナリングパワーの算出方法を実施するシステムの概念を示す図である。
図1(a)に示すシステムは、車両の車輪10のホイール12に装着された、左前輪にかかる荷重と横力を計測する分力計14と、装着タイヤの向きと路面の移動方向との間の角度であるスリップ角を計測するホイール12に取り付けられたスリップ角計測装置16と、計測された横力と荷重とスリップ角の時系列データを記録する、車室内に設けられたデータロガー18とを有する。
ここで、荷重とは、図1(a)中の上下方向(Z方向)のホイール回転軸にかかる力であり、横力とは、図1(a)中の紙面に垂直方向(Y方向)のホイール回転軸にかかる力である。
【0015】
分力計14は、圧電素子を用いたものや、歪みゲージを用いたもの等、ホイール回転軸にかかる少なくとも荷重と横力を計測できる分力計であればいずれであってもよい。
スリップ角計測装置16は、ホイール12に装着された装着タイヤの向きと路面の移動方向との間の角度であるスリップ角を計測する装置で、図2にその構成が示されている。図2に示すスリップ角計測装置16は、レンズ16a、アパーチャ16b、ハーフミラー16c、フォトアレイ16d,16e、アンプ・フィルタ16fおよび演算回路16gを有する。スリップ角計測装置16は、ホイール12の上方のフェンダー部に取り付けられた固定治具と、ホイール12の回転軸周りに取り付けられたユニバーサル取付治具とを介して、ホイール12に取り付けられる。従って、スリップ角計測装置16の向きはホイール12の蛇角による向きと常に一致する。
【0016】
スリップ角計測装置16では、路面に投影した光の反射光がレンズ16aでフォトアレイ16d,16eに集束される。アパーチャ16bは、車両の前方に対して45度の方位方向の2方向にスリットを配したものである。ハーフミラー16cは、路面投影像をフォトアレイ16d,16eに分離する。フォトアレイ16d,16eはそれぞれ、光電素子の前面に、お互いに直交する方向に周期的な光遮断パターンが形成された格子をレンズ系を介して設けたCORREVITセンサによって構成される。なお、上記格子の光遮断パターンに対して直交する方向に、測定対象物が移動すると、対地速度センサであるフォトアレイ16d,16eから、移動速度(対地速度)に比例した周波数を成分として持つ出力信号が出力される。フォトアレイ16d,16eの格子の光遮断パターンは、アパーチャ16bでスリット規制された2方向の各々の移動速度を計測するように構成される。
アンプ・フィルタ16fは、得られた出力信号を増幅すると共に、トラッキングフィルタによる処理によって周波数成分が求められ、アパーチャ16bで規制された2方向の各々の移動速度が算出される。演算回路16gでは、算出された移動速度がキャリブレーションされて、車両前方方向および側方方向の移動速度が求められ、前方方向および側方方向の移動速度からスリップ角の信号が出力される。このように、スリップ角は、ホイールに取り付けられた対地速度センサであるフォトアレイ16d,16eによって、上記出力信号から互いに直交する2方向の対地速度を求めることによって計測される。
なお、スリップ角計測装置16として、例えば、DATRON社製のDATRON V−SENSORが好適に挙げられる。
【0017】
このような分力計14およびスリップ角計測装置16を計測対象とする装着タイヤの車輪やホイールに取り付けられる。
一方、車室内にはデータロガー18が配され、計測された横力や荷重やスリップ角の時系列データを記録する。
このようにして記録された時系列データは、計測のための走行が終了すると、データロガー18から呼び出されて、処理装置20に送られる。
処理装置20は、図1(b)に示すように、コーナリングパワーを算出する装置であって、FFT処理部22と、平均荷重算出部24と、パラメータ同定部26とを有する。
FFT処理部22、平均荷重算出部24およびパラメータ同定部26の作用は後述するが、これらの部位は、プログラムを実行することによって各部位が機能するコンピュータによって構成されてもよいし、専用回路によって構成されてもよい。
【0018】
このようなシステムにおいて、本発明のコーナリングパワーの算出方法を実施する。
図3は、本発明におけるコーナリングパワーの算出方法を示すフローチャートである。
本発明におけるコーナリングパワーの算出方法は、自動車等の車両の走行中における装着タイヤのコーナリングパワーを精度高く算出する方法であり、図1(a)に示すように、算出すべきコーナリングパワーの装着タイヤの車輪10に、分力計14を装着するとともに、装着タイヤのホイール12にスリップ角計測装置16を取り付ける。
【0019】
まず、車両を運転するドライバによって所望の操舵入力が与えられる(ステップ50)。操舵入力は、例えば、ランダム操舵入力や正弦波の周期が次第に速くなる掃引型の正弦波操舵入力等が挙げられる。図4(a)は、掃引型の正弦波操舵入力の例を示す。
次に、ホイールに取り付けられたスリップ角計測装置16からスリップ角の信号が出力され、また、分力計14から横力および荷重の信号が出力され、この信号がデータロガー18に時系列データとして記録される。その際、装着タイヤのホイール12にかかる荷重の時系列データも同時にデータロガー18に記録される。
このようにしてスリップ角、横力および荷重の計測が行なわれる(ステップ52)。
スリップ角、横力および荷重の計測は車両を走行させて操舵入力を与えることによって行なわれてデータロガー18に記録され、車両の走行終了後、データロガー18からスリップ角および横力の時系列データが呼び出される。
【0020】
このように、スリップ角の時系列データは、ホイール12の向きを基準にしてスリップ角を求めるので、従来のようにトー変化やコンプライアンスステアを含まないスリップ角と異なり、トー変化やコンプライアンスステアを含んだスリップ角を計測することができる。
【0021】
このようにして計測されたスリップ角の時系列データと、横力の時系列データの周波数分析が行なわれる(ステップ54)。具体的には、スリップ角に対する横力の伝達関数が求められる。伝達関数は、FFT処理部22において算出される。
一方、ステップ52で得られた装着タイヤにかかる荷重の時系列データが呼び出されて、コーナリングパワーを算出するために用いる時系列データと同時刻の荷重データの時間平均値(平均荷重)が平均荷重算出部24において算出される(ステップ56)。
こうして得られた伝達関数のゲインと位相のデータとして、振幅比と位相角の周波数依存性のデータが取得される(ステップ58)。図4(b)には振幅比の周波数依存性データが、図4(c)には位相角の周波数依存性データの一例が示されている。
【0022】
次に、パラメータ同定部26において、振幅比と位相角の周波数依存性のデータが、下記式(1)および(2)に示す1次遅れ系、すなわち、スリップ角に対する装着タイヤの横力の応答を1次遅れ系で表したタイヤモデルによってカーブフィットされ、式(1)や(2)に表されるパラメータCP、T1が同定(抽出)される。
パラメータの同定方法は特に限定されないが、例えば、位相角の周波数依存性のデータに式(2)で表される曲線をカーブフィットさせて、パラメータT1を求め、このパラメータT1を式(1)に代入してパラメータCPを求める方法や、伝達関数が下記式(3)のように表されることを利用し、伝達関数の実数部および虚数部の値を同時に用いて最小2乗法によってパラメータCPおよびT1を一度に同定する方法を用いてもよい。
なお、カーブフィットのために用いるタイヤモデルは、1次遅れ系であるが、本発明においては、1次遅れ系に限定されず、2次遅れ系であってもよい。
【0023】
【数1】
【数2】
【数3】
【0024】
こうして求められたパラメータCPは、ステップ56で算出された平均荷重における装着タイヤのコーナリングパワーとして取得される(ステップ62)。
このように、図3に示す方法では、車両が直線路を走行中、ランダム操舵入力や掃引型の正弦波操舵入力等所望の操舵入力が用いられるので、従来のようにテストコース等のような広い場所で定常円旋回を行なってコーナリングパワーを求める必要がない。しかも、車両の走行速度を自由に設定してコーナリングパワーを求めることができるので、低速時から高速時のコーナリングパワーを自在に求めることができる。さらに、スリップ角計測装置16を用いて、ホイールの向きと路面の移動方向との成す角度を計るので、トー変化やコンプライアンスステアを含んだ実際のスリップ角を求めることができ、コーナリングパワーを精度高く求めることができる。しかも、所望の操舵入力によるコーナリングパワーを求めることができる。
【0025】
上記例は、スリップ角に対する装着タイヤの横力の応答を1次遅れ系で表したタイヤモデルによって、パラメータ同定を行ない、コーナリングパワーを求めるものであるが、本発明は、さらに、図3に示すフローのうち、ステップ58〜ステップ62の替わりに、図5に示すように、ステップ64およびステップ66を行なってもよい。但し、ステップ64およびステップ66を行なうのは、横加速度が0.5G以下、走行速度が80km/時以上の時であることが好ましい。より好ましくは、横加速度が0.3G以下、走行速度が100km/時以上であるのがよい。
横加速度を0.5G以下とするのは、これより大きな横加速度の場合、スリップ角に対する装着タイヤの横力の変化が非線形となり、コーナリングパワーが、スリップ角に対する横力が線形で表されるスティフネスの定義から外れるからである。一方、走行速度を80km/時以上とするのは、この走行速度より小さいと操舵開始時の装着タイヤの変形による緩和時間が無視できなくなり、位相遅れに基づくパラメータT1が大きくなるからである。
【0026】
このような方法では、ステップ50における操舵入力として、正弦波形操舵入力やスラローム操舵入力が選択される。スラローム操舵入力は、周波数が一定であり、入力の振幅が必ずしも一定でない入力形態をいう。
ステップ52においてスリップ角、横力および荷重の計測が成された後、スリップ角と横力についてステップ54で周波数分析が行なわれる。その後、スリップ角の周波数成分が最も高いピーク周波数における振幅比の値を取得する(ステップ64)。この場合、スリップ角におけるピーク周波数は、横力における周波数成分の最も高くなるピーク周波数と一致するため、どちらを用いてもよい。
一方、ステップ56では、装着タイヤにかかる荷重の時系列データが、時間平均され、時間平均値が算出される。
このようにして得られた振幅比の値が、ステップ56で求められた、荷重の時間平均値におけるコーナリングパワーとして取得される(ステップ66)。
上記振幅比の値をコーナリングパワーと見なすことができるのは、上述したように、横加速度が0.5G以下であり、略スリップ角に対して横力が線形的に変化する領域であって、操舵開始時の装着タイヤの変形による緩和時間が無視できるからである。すなわち、緩和時間が短く、パラメータT1が小さくなるからである。
【0027】
図6(a)〜(c)には、205/65R15のタイヤサイズで内圧が200kPaのホイールに組まれた装着タイヤを、トヨタ自動車製クラウン3.0の右前輪に装着し、走行速度100km/時において0.2Hzのスラローム操舵入力を入力した時の時系列データを示している。
図6(a)は装着タイヤのスリップ角の時系列データを、図6(b)は装着タイヤの横力の時系列データを、図6(c)は装着タイヤにかかる荷重の時系列データをそれぞれ示している。
このような時系列データを周波数分析を行なって、例えば、スリップ角におけるピーク周波数(0.2Hz)での振幅比の値を求める。図6(a)〜(c)の例では、荷重358kgf時における振幅比の値が118.2169(kgf/度)となる。
【0028】
一方、図6(a)と図6(b)の間の位相角を求め、上記式(2)に従って、パラメータT1を求め、さらに、上記式(1)に従ってパラメータCPを求めることによってコーナリングパワーを算出した場合、コーナリングパワーは118.2528(kgf/度)、パラメータT1は0.019633(秒)となり、ピーク周波数(0.2Hz)における振幅比の値から求めたコーナリングパワー118.2169(kgf/度)と略同等の値を示す。
このように、最大横加速度が0.5G以下、走行速度が80km/時以上の時、スリップ角あるいは横力において周波数成分の最も大きいピーク周波数における振幅比の値を求め、この振幅比の値をコーナリングパワーとすることができ、計算の算出が極めて簡略化される。
【0029】
【実施例】
上記コーナリングパワーの算出方法で求められたコーナリングパワーが妥当であるか否かを調べるために、装着タイヤを室内エンドレスベルト上で走行させた時のコーナリングパワーとを比較した。
調べたタイヤは、タイヤサイズが205−65R15で、タイヤ構造やトレッドパターン等のタイヤ仕様の異なる種々のタイヤ(タイヤA〜E)について調べた。タイヤ内圧は200kPaとした。一方、上記方法における走行車両としてトヨタ自動車製クラウン3.0を用い、走行速度100km/時としてスラローム操舵入力を行なった。一方、室内エンドレスベルト上の走行試験も、同一の荷重条件および操舵入力条件で行なった。
本発明の方法を用いて得られたコーナリングパワーと室内エンドレスベルト上で走行させた時のコーナリングパワーの結果を下記表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1によると、本発明による方法で算出した種々のタイヤのコーナリングパワーは、荷重条件および操舵入力条件を同じにして室内エンドレスベルト上で走行させた時のコーナリングパワーと2%の誤差があるものの、極めて相関が高く、本発明による方法で求められたコーナリングパワーは妥当であることがわかった。なお、上記2%の誤差は、測定に用いられた路面の違いによるものと考えられる。また、タイヤ仕様の違いによるコーナリングパワーの差異が、室内エンドレスベルト上で走行させた時のタイヤ仕様の違いによるコーナリングパワーの差異と極めて良好に対応し、タイヤ仕様によるコーナリングパワーの差異を正確に捉えることができた。したがって、本発明の方法を用いて、走行車両における所望の操舵入力、あるいは、所望の走行速度時の装着タイヤのコーナリングパワーを精度高く求めることができる。
【0032】
以上、本発明のコーナリング算出方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0033】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、操舵入力時のスリップ角の時系列データと、その時の装着タイヤの横力の時系列データとを用いて周波数分析を行い、少なくともスリップ角に対する装着タイヤの横力の振幅比を求め、この振幅比を少なくとも用いてコーナリングパワーを求めるので、所望の走行速度によるコーナリングパワーを求めることができる。さらに、所望の操舵入力を与えてコーナリングパワーを求めることができる。従って、高速時のコーナリングパワーをテストコースのような広い場所で定常円旋回を行なう必要もない。
しかも、スリップ角の時系列データは、装着タイヤのホイールに取り付けられた対地速度センサで得られた2方向の対地速度を用いて計測されたデータであるので、トウ角変化やコンプライアンスステアを含んだスリップ角が求められ、精度の高いスリップ角、さらには、精度の高いコーナリングパワーを算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a),(b)は、本発明のコーナリングパワーの算出方法を実施するシステムの概略を説明する図である。
【図2】本発明のコーナリングパワー算出方法を実施するために用いるスリップ角計測装置の一例を示す構成図である。
【図3】本発明のコーナリングパワーの算出方法の一例を示すフローチャートである。
【図4】(a)〜(c)は、本発明のコーナリングパワー算出方法で得られるデータの一例を示す図である。
【図5】本発明のコーナリングパワー算出方法の他の例の要部を示すフローチャートである。
【図6】(a)〜(c)は、本発明のコーナリングパワー算出方法で得られるデータの他の例を示す図である。
【符号の説明】
10 車輪
12 ホイール
14 分力計
16 スリップ角計測装置
16a レンズ
16b アパーチャ
16c ハーフミラー
16d,16e フォトアレイ
16f アンプ・フィルタ
16g 演算回路
18 データロガー
20 処理装置
22 FFT処理部
24 平均荷重算出部
26 パラメータ同定部
Claims (6)
- 走行車両中の装着タイヤのコーナリングパワーを求めるコーナリングパワーの算出方法であって、
操舵入力を行なって計測されたスリップ角の時系列データと、前記操舵入力時の前記装着タイヤの横力の時系列データとを用いて周波数分析を行い、前記スリップ角に対する前記装着タイヤの横力の振幅比を少なくとも求める周波数分析工程と、
この振幅比を少なくとも用いてコーナリングパワーを求める算出工程とを有することを特徴とするコーナリングパワーの算出方法。 - 前記スリップ角の時系列データは、装着タイヤのホイールに取り付けられた対地速度センサで得られる2方向の対地速度を用いて計測されたデータであることを特徴とする請求項1に記載のコーナリングパワーの算出方法。
- 前記操舵入力は、複数の操舵周波数の成分を含み、
前記周波数分析工程は、前記振幅比の他に、前記装着タイヤの横力のスリップ角に対する位相角を求める工程であって、この求められる前記振幅比および前記位相角は、前記操舵周波数に対する依存性を表す周波数特性を有することを特徴とする請求項1または2に記載のコーナリングパワーの算出方法。 - 前記算出工程は、スリップ角に対する前記装着タイヤの横力の応答を1次遅れ系とし、前記振幅比および前記位相角の前記周波数特性から、前記1次遅れ系のパラメータを同定することによって前記コーナリングパワーを求めることを特徴とする請求項3に記載のコーナリングパワーの算出方法。
- 前記操舵入力は、操舵周波数が略一定のスラローム操舵入力あるいは正弦波操舵入力であって、
前記周波数分析工程は、スリップ角あるいは横力において周波数成分の最も大きいピーク周波数における前記振幅比の値を求め、
前記算出工程は、前記周波数分析工程で求められた前記振幅比の値を前記コーナリングパワーとすることを特徴とする請求項1または2に記載のコーナリングパワーの算出方法。 - 前記算出工程は、前記操舵入力によって走行車両中の横加速度が0.5G以下で、走行速度が80(km/時)以上の場合、前記周波数分析工程で求められた前記振幅比の値を前記コーナリングパワーとすることを特徴とする請求項5に記載のコーナリングパワーの算出方法。
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