JP2004264584A - トナー - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶性樹脂を用いても、定着率を高くでき、しかも低温オフセットを防止することのできるトナーを提供する。
【解決手段】結晶性樹脂が非晶性樹脂より低重量平均分子量であり、かつ微粉の(結晶性樹脂/結着樹脂)率をトナー全体の(結晶性樹脂/結着樹脂)率より大きく設定しているので、結晶性樹脂の含有率が高いトナーの粒径は小さくなる。これにより、トナー粒子の結晶性樹脂の微粉が紙繊維の孔内に入り易くなる。しかも、この微粉の結晶性樹脂は低分子量であることから、加熱により他の結着樹脂つまり大粒径の結晶性樹脂および非晶性樹脂より先に融解するようになる。したがって、微粉つまり小粒径側のトナーは比較的早いうちに紙に容易にかつ確実に浸透し、その後大粒径側のトナーの結着樹脂も融解するようになり、定着率を向上することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】結晶性樹脂が非晶性樹脂より低重量平均分子量であり、かつ微粉の(結晶性樹脂/結着樹脂)率をトナー全体の(結晶性樹脂/結着樹脂)率より大きく設定しているので、結晶性樹脂の含有率が高いトナーの粒径は小さくなる。これにより、トナー粒子の結晶性樹脂の微粉が紙繊維の孔内に入り易くなる。しかも、この微粉の結晶性樹脂は低分子量であることから、加熱により他の結着樹脂つまり大粒径の結晶性樹脂および非晶性樹脂より先に融解するようになる。したがって、微粉つまり小粒径側のトナーは比較的早いうちに紙に容易にかつ確実に浸透し、その後大粒径側のトナーの結着樹脂も融解するようになり、定着率を向上することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷などにおける静電画像を加熱定着により定着するために使用するトナーの技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法として、感光体上に静電荷像を形成し、次いで該静電荷像を現像ローラ上に担持したトナーを用いて現像し、感光体上に現像されたトナー画像を、直接、または中間転写体を介して紙等の記録媒体上に転写し、更に、記録媒体上のトナー画像を加熱ローラー等の定着部材により紙等の記録媒体に圧着加熱して定着する方法が知られている。
【0003】
ところで、このような加熱定着として、近年オイルレス定着が提案されている。そして、このオイルレス定着を実現するために、これに用いられるトナーが種々開発されている。このようなトナーの1つとして、加熱により融解したときに離型性を発揮する結晶性樹脂を用いたトナーが知られている(例えば、特許文献1を参照)。このトナーは、結着樹脂と相溶性のある結晶性樹脂を含有するポリエステル樹脂であり、通常の混練条件で満足する適度な分散性が得られる。
【特許文献1】
特開2002−284866号公報(段落番号[0002]、[0004]、[0006])
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述の特許文献1に開示のトナーに用いられている結晶性樹脂は、内部凝集力が大きく、定着溶融時に定着ローラに接着し難いため、耐高温オフセットに効果があるものの、融解したときの粘度が高くトナーが紙に浸透し難いため、低温オフセットが発生し易いという問題がある。
また、粒径のより大きなトナーほど未加熱時には紙繊維の孔内に配置し難いため、結晶性樹脂を含む粒径の大きなトナーは紙面に存在して、紙内に浸透し難い。その結果、トナー自身の凝集あるいはトナー間での接着による凝集を起こすことにより、定着率が低下し易いばかりでなく、前述と同様に低温オフセットが発生し易いという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、結晶性樹脂を用いても、定着率を高くでき、しかも低温オフセットを防止することのできるトナーを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、請求項1の発明のトナーは、結晶性樹脂と非晶性樹脂とを含む結着樹脂からなり、前記結晶性樹脂が前記非晶性樹脂より低重量平均分子量であるトナーであって、微粉の(結晶性樹脂/結着樹脂)率がトナー全体の(結晶性樹脂/結着樹脂)率より大きいことを特徴としてる。
また、請求項2の発明は、前記結晶性樹脂が非ビスフェノールA系であることを特徴としている。
更に、請求項3の発明は、前記結晶性樹脂が脂肪族単量体の重合構造であることを特徴としている。
更に、請求項4の発明は、前記結晶性樹脂の重量平均分子量が10000以下であることを特徴としている。
【0006】
【発明の作用および効果】
このように構成された本発明のトナーによれば、微粉の(結晶性樹脂/結着樹脂)率をトナー全体の(結晶性樹脂/結着樹脂)率より大きく設定しているので、結晶性樹脂の含有率が高いトナーの粒径は小さくなる。これにより、トナー粒子の結晶性樹脂の微粉が紙繊維の孔内に入り易くなる。しかも、この微粉の結晶性樹脂は低分子量であることから、加熱により他の結着樹脂つまり大粒径の結晶性樹脂および非晶性樹脂より先に融解するようになる。したがって、微粉つまり小粒径側のトナーは比較的早いうちに紙に容易にかつ確実に浸透し、やがて大粒径側のトナーの結着樹脂も融解するようになり、定着率を向上することができる。
【0007】
更に、結着樹脂と結晶性樹脂との相溶性により、大粒径側のトナーと紙繊維の孔内の小粒径トナーとに相溶性が発現する。これにより、トナーのアンカー効果が発揮され、定着率を高くすることができる。
また、小粒径側のトナーが紙に確実に浸透することで、低温オフセットを防止することができるようになる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるトナーは結晶性樹脂と非晶性樹脂とを含む結着樹脂からなる。その場合、結晶性樹脂が非晶性樹脂より低重量平均分子量に設定されている。また、本発明のトナーは、微粉のトナーにおける結着樹脂の重量部に対する結晶性樹脂の重量部の割合、すなわち(結晶性樹脂/結着樹脂)率がトナー全体における結着樹脂の重量部に対する結晶性樹脂の重量部の割合、すなわち(結晶性樹脂/結着樹脂)率より大きく設定されている。
ここで、本発明において微粉のトナーとは、トナーを小粒径側と大粒径側との2つに分級し、その小粒径側の部分のDv90がトナー全体のDv50より小さくなるトナーである。微粉トナーをトナー全体から分離するには、例えば日本ニューマチック製分級機 MDS を用いて分離し、その場合、例えば微粉の分離量がトナー全体の20wt%になるようにする。
【0009】
このように構成された本発明のトナーによれば、微粉の(結晶性樹脂/結着樹脂)率をトナー全体の(結晶性樹脂/結着樹脂)率より大きく設定しているので、結晶性樹脂の含有率が高いトナーの粒径は小さくなる。これにより、トナー粒子の結晶性樹脂の微粉が紙繊維の孔内に入り易くなる。しかも、この微粉の結晶性樹脂は、加熱により他の結着樹脂つまり大粒径の結晶性樹脂および非晶性樹脂より先に融解するようになる。これは、大粒径の結晶性樹脂が小粒径の樹脂より融解し難いことおよび非晶性樹脂の重量平均分子量が結晶性樹脂の重量平均分子量より多いため融解し難いことによる。したがって、微粉つまり小粒径側のトナーは比較的早いうちに紙に容易にかつ確実に浸透し、やがて大粒径側のトナーの結着樹脂も融解するようになる。その場合、小粒径側のトナーの粒径が5μm以下であると、普通紙の紙繊維により確実に浸透する。
また、結着樹脂と結晶性樹脂との相溶性により、大粒径側のトナーと紙繊維の孔内の小粒径トナーとに相溶性が発現する。これにより、トナーのアンカー効果が発揮され、定着率が高くなる。
更に、小粒径側のトナーが紙に確実に浸透することで、低温オフセットを防止することができるようになる。
【0010】
特に、結晶性樹脂がビスフェノールA系であると、低分子であっても非ビスフェノールA系よりも、一般に融解した樹脂の粘度が高くなり、本発明で必要とされる紙への浸透性が低くなる。このため、結晶性樹脂は非ビスフェノールA系であることが好ましい。
また、結晶性樹脂が脂肪族単量体の重合構造であると、脂肪族単量体の重合体が融解した後に、分子鎖がランダムになり、粘度が低下することで紙への浸透性がよい。一方、芳香族や環構造をもつものは、融解した後でもその環部分で樹脂どうしが整列するような分子間力が働き、浸透力が低下する。また、このような配向性をもつと後から融解し、相溶するべき非晶性樹脂と相溶しにくくなる。
更に、結晶性樹脂の重量平均分子量が10000以下であると、加熱定着時に結晶性樹脂が融解しやすくなるので、定着率を向上することができるという効果があるので、好ましい。
【0011】
本発明のトナーにおける結着樹脂に使用されるモノマーとしては、従来公知のカルボン酸成分とアルコール成分があり、例えば、ジカルボン酸成分としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、メサコン酸等の二酸、それらの酸無水物および低級アルキルエステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸、その他のジカルボン酸があげられる。3価以上のカルボン酸成分としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、それらの酸無水物および低級アルキルエステル類をあげることができる。2価のアルコール成分としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等があげられ、3価以上のアルコール成分としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどがあげられる。その場合、樹脂に結晶性を持たせるためには、分岐構造がないことが好ましく、上記樹脂のうち、特にポリオールやポリカルボン酸等の2価の脂肪族であることが好ましい。
【0012】
着色剤としては、以下に示すような、有機ないし無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭などがある。黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスエロー、ナフトールエローS、バンザーイエローG、バンザーイエロー10G、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、キノリンエローレーキ、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキなどがある。橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKMなどがある。赤色系顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピロゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどがある。紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどがある。青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどがある。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどがある。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などがある。体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどがある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料などの各種染料としては、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルーなどがある。
【0013】
また、透光性カラートナーとして用いる場合は、着色剤としては、以下に示すような、各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黄色顔料としては、C.I.10316(ナフトールイエローS)、C.I.11710(ハンザエロー10G)、C.I.11660(ハンザエロー5G)、C.I.11670(ハンザエロー3G)、C.I.11680(ハンザエローG)、C.I.11730(ハンザエローGR)、C.I.11735(ハンザエローA)、C.I.11740(ハンザエローNR)、C.I.12710(ハンザエローR)、C.I.12720(ピグメントイエローL)、C.I.21090(ベンジジンエロー)、C.I.21095(ベンジジンエローG)、C.I.21100(ベンジジンエローGR)、C.I.20040(パーマネントエローNCG)、C.I.21220(バルカンファストエロー5)、C.I.21135(バルカンファストエローR)などがある。赤色顔料としては、C.I.12055(スターリンI)、C.I.12075(パーマネントオレンジ)、C.I.12175(リソールファストオレンジ3GL)、C.I.12305(パーマネントオレンジGTR)、C.I.11725(ハンザエロー3R)、C.I.21165(バルカンファストオレンジGG)、C.I.21110(ベンジジンオレンジG)、C.I.12120(パーマネントレッド4R)、C.I.1270(パラレッド)、C.I.12085(ファイヤーレッド)、C.I.12315(ブリリアントファストスカーレット)、C.I.12310(パーマネントレッドF2R)、C.I.12335(パーマネントレッドF4R)、C.I.12440(パーマネントレッドFRL)、C.I.12460(パーマネントレッドFRLL)、C.I.12420(パーマネントレッドF4RH)、C.I.12450(ライトファストレッドトーナーB)、C.I.12490(パーマネントカーミンFB)、C.I.15850(ブリリアントカーミン6B)などがある。また、青色顔料としては、C.I.74100(無金属フタロシアニンブルー)、C.I.74160(フタロシアニンブルー)、C.I.74180(ファーストスカイブルー)などがある。
【0014】
これらの着色剤は、単独であるいは複数組合せて用いることができるが、結着樹脂100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部使用することが望ましい。20重量部より多いとトナーの定着性および透明性が低下し、一方、1重量部より少ないと所望の画像濃度が得られない虞れがある。
【0015】
本発明のトナーは、フロー軟化点(Tf)が90℃〜140℃、好ましくは100℃〜130℃、さらに好ましくは110℃〜120℃の範囲にある。フロー軟化点(Tf)が90℃より低いと耐フィルミング性に劣るものとなり、また、140℃より高いと低温定着性に劣るものとなる。
また、ガラス転移温度(Tg)は50℃〜90℃、好ましくは50℃〜80℃、さらに好ましくは55℃〜75℃の範囲にある。ガラス転移温度(Tg)が50℃より低いと保存性に劣るものとなり、また、90℃より高いとそれにともなってTfが上昇し、低温定着性に劣るものとなる。
【0016】
更に、本発明のトナーは、荷電制御剤(CCA)、必要に応じて離型剤、分散剤、磁性粒子等を含有してもよく、原料であるポリオール類に分散してもよく、また、樹脂を形成した後適宜混練により配合してもよい。
荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の荷電を与え得るものであれば、特に限定されず有機あるいは無機の各種のものを用いることができる。
【0017】
正荷電制御剤としては、例えば、ニグロシンベースEX{オリエント化学工業(株)製}、第4級アンモニウム塩P−51{オリエント化学工業(株)製}、ニグロシン ボントロンN−01{オリエント化学工業(株)製}、スーダンチーフシュバルツBB(ソルベントブラック3: Color Index 26150)、フェットシュバルツHBN(C.I. NO.26150)、ブリリアントスピリッツシュバルツTN(ファルベン・ファブリッケン・バイヤ社製)、ザボンシュバルツX(ファルベルケ・ヘキスト社製)、さらにアルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料などが挙げられる。中でも第4級アンモニウム塩P−51が好ましい。
【0018】
また、負荷電制御剤としては、例えば、オイルブラック(Color Index 26150)、オイルブラックBY{オリエント化学工業(株)製}、ボントロンS−22{オリエント化学工業(株)製}、サリチル酸金属錯体E−81{オリエント化学工業(株)製}、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH{保土谷化学工業(株)製}、ボントロンS−34{オリエント化学工業(株)製}、ニグロシンSO[オリエント化学工業(株)製]、セレスシュバルツ(R)G(ファルベン・ファブリケン・バイヤ社製)、クロモーゲンシュバルツET00(C.I.NO.14645)、アゾオイルブラック(R)(ナショナル・アニリン社製)などが挙げられる。中でも、サリチル酸金属錯体E−81が好ましい。
これらの荷電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができるが、結着樹脂に添加する荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部であり、好ましくは0.001〜3重量部である。
【0019】
離型剤としては、具体的にはパラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、天然ワックス、炭素数12以上の長鎖炭化水素鎖〔CH3(CH2)11またはCH3(CH2)12以上の脂肪族炭素鎖〕を有する長鎖カルボン酸、そのエステル脂肪酸金属塩、脂肪酸アシド、脂肪酸ビスアシド等を例示し得る。異なる低軟化点化合物を混合して用いても良い。具体的には、パラフィンワックス(日本石油社製)、パラフィンワックス(日本精蝋社製)、マイクロワックス(日本石油社製)、マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋社製)、硬質パラフィンワックス(日本精蝋社製)、PE−130(ヘキスト社製)、三井ハイワックス110P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス220P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス660P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス210P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス320P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス410P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス420P(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1141(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−2130(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−4020(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1142(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−5020(三井石油化学社製)、密ロウ、カルナバワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。脂肪酸金属塩として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム等がある。
【0020】
ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、あるいは酸化型のポリプロピレン、酸化型のポリエチレン等が挙げられる。ポリオレフィン系ワックスの具体例としては、例えば、Hoechst wax PE520、Hoechst wax PE130、Hoechstwax PE190(ヘキスト社製)、三井ハイワックス200、三井ハイワックス210、三井ハイワックス210M、三井ハイワックス220、三井ハイワックス220M(三井石油化学工業社製)、サンワックス131−P、サンワックス151−P、サンワックス161−P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst wax PED121、Hoechst wax PED153、Hoechst wax PED521、Hoechst wax PED522、同Ceridust 3620、同Ceridust VP130、同Ceridust VP5905、同Ceridust VP9615A、同Ceridust TM9610F、同Ceridust 3715(ヘキスト社製)、三井ハイワックス420M(三井石油化学工業社製)、サンワックスE−300、サンワックスE−250P(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst Wachs PP230(ヘキスト社製)、ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリプロピレンワックス、ビスコールTS−200(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリプロピレンワックスなどが例示される。これらの離型剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。必要に応じて添加される離型剤としては、セイコーインストルメント(株)製「DSC120」で測定されるDSC吸熱曲線における吸熱メインピーク値である軟化点(融点)が40〜130℃、好ましくは50〜120℃のものを使用するとよい。
【0021】
本発明におけるトナー母粒子は、上記で得た組成物を、混練・溶融した後、微粉砕手段により粉砕・分級して得られるが、その流動性を向上させる為に、流動性向上剤を外添してもよい。
流動性向上剤としては、有機系微粉末または無機系微粉末を用いることができる。例えばフツ素系樹脂粉末、すなわちフツ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末、アクリル樹脂系微粉末など;又は脂肪酸金属塩、すなわちステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛など;又は金属酸化物、すなわち酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛など;又は微粉末シリカ、すなわち湿式製法シリカ、乾式製法シリカ、それらシリカにシランカツプリング剤、チタンカツプリング剤、シリコンオイルなどにより表面処理をほどこした処理シリカなどがあり、これらは1種或いは2種以上の混合物で用いられる。
【0022】
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒユームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
SiCl4 + 2H2 + O2 → SiO2 + 4HCl
【0023】
また、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いる事によってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得る事も可能であり、それらも包含する。その粒径は平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内である事が望ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用するのが良い。本発明に用いられるケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。日本アエロジル社製の「AEROSIL 130」、以下、同 200、同300、同 380、TT600、MOX170、MOX80、COK84等が挙げられ、また、CABOT Co.社製の「Ca−O−SiL M−5」、以下、同 MS−7、同 MS−75、同 HS−5、同 EH−5等が挙げられ、また、WACKER−CHEMIE GMBH社製の「Wacker HDK N 20V15」、以下、同 N20E、同 T30、同 T40、ダウコーニングCo.社の「D−C Fine Silica」、Fransill社の「Fransol」等が挙げられる。
【0024】
更には、該ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体を用いることがより好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化方法としてはシリカ微粉体と反応、あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物などで化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の上記気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。
【0025】
その様な有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチレンジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフエニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
【0026】
その処理シリカ微粉体の粒径としては0.003〜0.1μm、0.005〜0.05μmの範囲のものを使用することが好ましい。市販品としては、タラノツクス−500(タルコ社)、AEROSIL R−972(日本アエロジル社)などがある。
流動性向上剤の添加量としては、該樹脂粒子100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。0.01重量部未満では流動性向上に効果はなく、5重量部を超えるとカブリや文字のにじみ、機内飛散を助長する。
【0027】
本発明のトナーの、結晶融解点(Tm)、ガラス転移点(Tg)、分子量、粒径等のトナーの物性値の測定方法および定着時のトナーのオフセット良好域の評価方法はそれぞれ公知の方法が採用できるが、それらの一例を後述する実施例および比較例の説明において説明する。
【0028】
(本発明の実施例および比較例)
次に、本発明のトナーを実施例および比較例により、具体的に説明する。
まず、本発明のトナーの実施例および比較例の各トナーの物性値の測定および定着時のトナーのオフセット良好域の評価について説明する。
【0029】
(1)トナーの結晶融解点(Tm)およびガラス転移点(Tg)の測定の測定
トナー10mgをアルミニウム製サンプル容器に封入し、セイコーインスツルメント(株)製 示差走査熱量測定ステーション(装置 DSC−220C/EXTRA6000PC)を使用して、トナーのTm[℃]およびTg[℃]を使用して下記の条件で測定する。
測定温度 : 20℃(測定開始温度)〜200 ℃(測定終了温度)
昇温速度 : 10 ℃/min
Tm : 結晶融解点に相当する吸熱が生じたピーク位置の温度とする。
Tg : ガラス転移点に相当する吸熱が生じたI(吸熱カーブのショルダー位置)の温度とする。
結晶量 : Tmのピーク面積とする。
【0030】
(2)分子量および分子量分布の測定
重量平均分子量(Mw)および分子量分布の測定について御教示下さい。
前に出願しましたTHF不溶分を含む場合の分子量分布の測定についての下記の記載のように御教示いただければ有り難いです。
分子量分布
5mgのトナーを5gのTHFに溶解し、樹脂成分以外のTHF不溶分およびコンタミ物質を除去するため、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターを通して、GPC用サンプルを調製する。こうして調製したサンプルを、GPCを用いて、下記の条件にて測定する。
カラム : 昭和電工(株)製「Shodex(GPC)KF806M+KF802.5」
カラム温度 : 30 ℃
溶媒 : テトラヒドロフラン(THF)
流速 : 1.0 ml/min
検出器 : UV検出器(検出波長254 nm)
標準試料 : 単分散ポリスチレン標準試料(重量平均分子量580から390万)
【0031】
(3)粒径の測定
コールターマルチサイザーIII 型(コールター社製)を用い、100μmのアパチャーチューブで粒径別相対重量分布を測定することにより求める。また、シリカ粒子等の外添剤の粒径は、電子顕微鏡法による。
【0032】
(4)オフセット良好域の評価
セイコーエプソン社製LP3000Cより定着部を外したもので、PPC用普通紙S(富士ゼロックスオフィスサプライ社製)の先端から10mmの位置に2cm×2cmの四方領域にトナーを均一に付着させて未定着パッチ(トナー付着量0.4mg/cm2)を作製した。これをコニカ製外部定着器 KL−2010(オイルパッド非装着)に定着ニップ通過時間30msで通過させる。定着温度を温度領域120〜220℃で変化させて通紙し、パッチ定着位置から定着ローラ円周分下の紙上に、目視により、低温または高温オフセット痕が生じていないと判断された温度領域をオフセット良好領域とした。
【0033】
次に、本発明のトナーの実施例および比較例について説明する。
〈トナー用樹脂の製造方法〉
まず、本発明のトナーの実施例および比較例に用いた樹脂の製造例について説明する。
【0034】
(結晶性樹脂1の作製)
1,6−ヘキサンジオール:デカメチレンジカルボン酸=65:50(モル比)とした混合物を1000重量部用意した。この混合物の1000重量部に対し、チタンテトラブトキシドを0.8重量部加え、窒素ガス導入管、脱水管、攪拌器および熱電対を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、180℃で5時間反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させた。更に、圧力8.1kPaにて1時間反応させ、ポリエステルである結晶性樹脂1を得た。この結晶性樹脂1の重量平均分子量は8100であり、Tmは71℃であった。
【0035】
(結晶性樹脂2の作製)
1,4−ブタンジオール:テレフタル酸ジメチル=50:60(モル比)とした混合物を1000重量部用意した。この混合物の1000重量部に対し、チタンテトラブトキシドを1重量部加え、前述の結晶性樹脂1の場合と同様に反応させて結晶性樹脂2を得た。この結晶性樹脂2の重量平均分子量は9200であり、Tmは77℃であった。
【0036】
(非晶性樹脂の作製)
ネオペンチルグリコール:エチレングリコール:1,4−シクロヘキサンジオール:テレフタル酸ジメチル:無水フタル酸=36:36:48:90:10(モル比)とした混合物を1000重量部用意した。この混合物の1000重量部に対し、チタンテトラブトキシドを1重量部加え、窒素ガス導入管、脱水管、攪拌器および熱電対を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、180℃で5時間反応させた後、210℃に昇温して1時間反応させた。更に、圧力8.1kPaにて1時間反応させ、非晶性樹脂を得た。この非晶性樹脂の重量平均分子量は13000であり、Tgは60℃であった。
【0037】
〈トナーの製造方法〉
(実施例1)
前述の結晶性樹脂1を10重量部、非晶性樹脂を90重量部、着色剤として顔料 Toner Magenta 6B(クラリアントジャパン社製)を5重量部、離型剤として精製カルナバワックスWAX type #1(日本ワックス社製)を1重量部、および帯電制御剤として Bontron E−84(オリヱント化学工業社製)を2重量部加えてヘンシェルミキサーで十分に均一混合した後、2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(25℃)に冷却後、粉砕機 AFG200{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 ATP200 で分級し、重量Dv50が8.1μm、個数分布で4.2μm以下が11%の大粒径側のトナーを得た。
次に、結晶性樹脂1を80重量部、非晶性樹脂を20重量部とした他は、前述の大粒径側のトナーの場合と同様にして、重量Dv50が8.1μm、個数分布で4.2μm以下が61%の小粒径側のトナーを得た。
そして、大粒径側のトナー90重量部および小粒径側のトナー10重量部の混合物に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加して、ヘンシェルミキサーで混合撹拌し、実施例1のマゼンタ色トナーを得た。
【0038】
(実施例2)
前述の実施例1の場合の結晶性樹脂1に代えて結晶性樹脂2を用いた他は、前述の実施例1の場合と全く同様にして大粒径側のトナーと小粒径側のトナーを得た。このとき、大粒径側のトナーは、重量Dv50が8.0μm、個数分布で4.2μm以下が13%であり、また小粒径側のトナーは、重量Dv50が5.4μm、個数分布で4.2μm以下が59%であった。
そして、前述の実施例1の場合と同様にして、大粒径側のトナー90重量部および小粒径側のトナー10重量部の混合物に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加して、ヘンシェルミキサーで混合撹拌し、実施例2のマゼンタ色トナーを得た。
【0039】
(実施例3)
前述の実施例1の場合の着色剤である顔料 Toner Magenta 6Bをカーボンブラック(キャボット製モーガルL)に代えた他は、実施例1の場合と全く同様にして実施例3の黒色トナーを得た。このとき、大粒径側のトナーは、重量Dv50が8.0μm、個数分布で4.2μm以下が10%であり、また小粒径側のトナーは、重量Dv50が4.9μm、個数分布で4.2μm以下が62%であった。
【0040】
(比較例1)
前述の実施例1の場合の小粒径側のトナー樹脂を大粒径側のトナーと同様に、結晶性樹脂1を10重量部、非晶性樹脂を90重量部にした他は、実施例1と同様にして比較例1のマゼンタ色トナーを得た。このとき、大粒径側のトナーにおける重量Dv50および個数分布での4.2μm以下は実施例1の場合と同じであり、また、小粒径側のトナーは、重量Dv50が5.7μm、個数分布で4.2μm以下が62%であった。
【0041】
(比較例2)
前述の実施例3の場合の小粒径側のトナー樹脂を大粒径側のトナーと同様に、結晶性樹脂1を10重量部、非晶性樹脂を90重量部にした他は、実施例3と同様にして比較例2の黒色トナーを得た。このとき、大粒径側のトナーにおける重量Dv50および個数分布での4.2μm以下は実施例3の場合と同じであり、また、小粒径側のトナーは、重量Dv50が5.0μm、個数分布で4.2μm以下が64%であった。
【0042】
これらの実施例1ないし3および比較例1および2の各トナーについて微粉/結晶比を求めるとともに、実施例および比較例の各トナーを用いて前述の定着器により定着実験を行った。この定着実験でのオフセット良好域における温度[℃]領域を前述の方法で測定した。それらの結果を、表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から明らかなように、実施例1ないし3の各トナーは、いずれも、微粉の(結晶性樹脂/結着樹脂)率がトナー全体の(結晶性樹脂/結着樹脂)率より3以上である。また、低温オフセット痕が生じない温度は140℃以上であり、比較的低い温度で良好な低温定着が可能であり、しかも、低温および高温オフセット痕が生じないオフセット良好域の温度領域の幅が40℃以上であり、比較的幅の広い温度領域を有することが認められた。
【0045】
これに対して、表1から明らかなように、比較例1および2の各トナーは、いずれも、微粉の(結晶性樹脂/結着樹脂)率がトナー全体の(結晶性樹脂/結着樹脂)率より1.0以下である。また、低温オフセット痕が生じない温度は160℃以上であり、比較的低い温度での低温定着が難しく、しかも、低温および高温オフセット痕が生じないオフセット良好域の温度領域の幅が40℃以下であり、比較的幅の狭い温度領域を有することが認められた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷などにおける静電画像を加熱定着により定着するために使用するトナーの技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法として、感光体上に静電荷像を形成し、次いで該静電荷像を現像ローラ上に担持したトナーを用いて現像し、感光体上に現像されたトナー画像を、直接、または中間転写体を介して紙等の記録媒体上に転写し、更に、記録媒体上のトナー画像を加熱ローラー等の定着部材により紙等の記録媒体に圧着加熱して定着する方法が知られている。
【0003】
ところで、このような加熱定着として、近年オイルレス定着が提案されている。そして、このオイルレス定着を実現するために、これに用いられるトナーが種々開発されている。このようなトナーの1つとして、加熱により融解したときに離型性を発揮する結晶性樹脂を用いたトナーが知られている(例えば、特許文献1を参照)。このトナーは、結着樹脂と相溶性のある結晶性樹脂を含有するポリエステル樹脂であり、通常の混練条件で満足する適度な分散性が得られる。
【特許文献1】
特開2002−284866号公報(段落番号[0002]、[0004]、[0006])
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述の特許文献1に開示のトナーに用いられている結晶性樹脂は、内部凝集力が大きく、定着溶融時に定着ローラに接着し難いため、耐高温オフセットに効果があるものの、融解したときの粘度が高くトナーが紙に浸透し難いため、低温オフセットが発生し易いという問題がある。
また、粒径のより大きなトナーほど未加熱時には紙繊維の孔内に配置し難いため、結晶性樹脂を含む粒径の大きなトナーは紙面に存在して、紙内に浸透し難い。その結果、トナー自身の凝集あるいはトナー間での接着による凝集を起こすことにより、定着率が低下し易いばかりでなく、前述と同様に低温オフセットが発生し易いという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、結晶性樹脂を用いても、定着率を高くでき、しかも低温オフセットを防止することのできるトナーを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、請求項1の発明のトナーは、結晶性樹脂と非晶性樹脂とを含む結着樹脂からなり、前記結晶性樹脂が前記非晶性樹脂より低重量平均分子量であるトナーであって、微粉の(結晶性樹脂/結着樹脂)率がトナー全体の(結晶性樹脂/結着樹脂)率より大きいことを特徴としてる。
また、請求項2の発明は、前記結晶性樹脂が非ビスフェノールA系であることを特徴としている。
更に、請求項3の発明は、前記結晶性樹脂が脂肪族単量体の重合構造であることを特徴としている。
更に、請求項4の発明は、前記結晶性樹脂の重量平均分子量が10000以下であることを特徴としている。
【0006】
【発明の作用および効果】
このように構成された本発明のトナーによれば、微粉の(結晶性樹脂/結着樹脂)率をトナー全体の(結晶性樹脂/結着樹脂)率より大きく設定しているので、結晶性樹脂の含有率が高いトナーの粒径は小さくなる。これにより、トナー粒子の結晶性樹脂の微粉が紙繊維の孔内に入り易くなる。しかも、この微粉の結晶性樹脂は低分子量であることから、加熱により他の結着樹脂つまり大粒径の結晶性樹脂および非晶性樹脂より先に融解するようになる。したがって、微粉つまり小粒径側のトナーは比較的早いうちに紙に容易にかつ確実に浸透し、やがて大粒径側のトナーの結着樹脂も融解するようになり、定着率を向上することができる。
【0007】
更に、結着樹脂と結晶性樹脂との相溶性により、大粒径側のトナーと紙繊維の孔内の小粒径トナーとに相溶性が発現する。これにより、トナーのアンカー効果が発揮され、定着率を高くすることができる。
また、小粒径側のトナーが紙に確実に浸透することで、低温オフセットを防止することができるようになる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるトナーは結晶性樹脂と非晶性樹脂とを含む結着樹脂からなる。その場合、結晶性樹脂が非晶性樹脂より低重量平均分子量に設定されている。また、本発明のトナーは、微粉のトナーにおける結着樹脂の重量部に対する結晶性樹脂の重量部の割合、すなわち(結晶性樹脂/結着樹脂)率がトナー全体における結着樹脂の重量部に対する結晶性樹脂の重量部の割合、すなわち(結晶性樹脂/結着樹脂)率より大きく設定されている。
ここで、本発明において微粉のトナーとは、トナーを小粒径側と大粒径側との2つに分級し、その小粒径側の部分のDv90がトナー全体のDv50より小さくなるトナーである。微粉トナーをトナー全体から分離するには、例えば日本ニューマチック製分級機 MDS を用いて分離し、その場合、例えば微粉の分離量がトナー全体の20wt%になるようにする。
【0009】
このように構成された本発明のトナーによれば、微粉の(結晶性樹脂/結着樹脂)率をトナー全体の(結晶性樹脂/結着樹脂)率より大きく設定しているので、結晶性樹脂の含有率が高いトナーの粒径は小さくなる。これにより、トナー粒子の結晶性樹脂の微粉が紙繊維の孔内に入り易くなる。しかも、この微粉の結晶性樹脂は、加熱により他の結着樹脂つまり大粒径の結晶性樹脂および非晶性樹脂より先に融解するようになる。これは、大粒径の結晶性樹脂が小粒径の樹脂より融解し難いことおよび非晶性樹脂の重量平均分子量が結晶性樹脂の重量平均分子量より多いため融解し難いことによる。したがって、微粉つまり小粒径側のトナーは比較的早いうちに紙に容易にかつ確実に浸透し、やがて大粒径側のトナーの結着樹脂も融解するようになる。その場合、小粒径側のトナーの粒径が5μm以下であると、普通紙の紙繊維により確実に浸透する。
また、結着樹脂と結晶性樹脂との相溶性により、大粒径側のトナーと紙繊維の孔内の小粒径トナーとに相溶性が発現する。これにより、トナーのアンカー効果が発揮され、定着率が高くなる。
更に、小粒径側のトナーが紙に確実に浸透することで、低温オフセットを防止することができるようになる。
【0010】
特に、結晶性樹脂がビスフェノールA系であると、低分子であっても非ビスフェノールA系よりも、一般に融解した樹脂の粘度が高くなり、本発明で必要とされる紙への浸透性が低くなる。このため、結晶性樹脂は非ビスフェノールA系であることが好ましい。
また、結晶性樹脂が脂肪族単量体の重合構造であると、脂肪族単量体の重合体が融解した後に、分子鎖がランダムになり、粘度が低下することで紙への浸透性がよい。一方、芳香族や環構造をもつものは、融解した後でもその環部分で樹脂どうしが整列するような分子間力が働き、浸透力が低下する。また、このような配向性をもつと後から融解し、相溶するべき非晶性樹脂と相溶しにくくなる。
更に、結晶性樹脂の重量平均分子量が10000以下であると、加熱定着時に結晶性樹脂が融解しやすくなるので、定着率を向上することができるという効果があるので、好ましい。
【0011】
本発明のトナーにおける結着樹脂に使用されるモノマーとしては、従来公知のカルボン酸成分とアルコール成分があり、例えば、ジカルボン酸成分としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、メサコン酸等の二酸、それらの酸無水物および低級アルキルエステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸、その他のジカルボン酸があげられる。3価以上のカルボン酸成分としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、それらの酸無水物および低級アルキルエステル類をあげることができる。2価のアルコール成分としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等があげられ、3価以上のアルコール成分としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどがあげられる。その場合、樹脂に結晶性を持たせるためには、分岐構造がないことが好ましく、上記樹脂のうち、特にポリオールやポリカルボン酸等の2価の脂肪族であることが好ましい。
【0012】
着色剤としては、以下に示すような、有機ないし無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭などがある。黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスエロー、ナフトールエローS、バンザーイエローG、バンザーイエロー10G、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、キノリンエローレーキ、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキなどがある。橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKMなどがある。赤色系顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピロゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどがある。紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどがある。青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどがある。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどがある。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などがある。体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどがある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料などの各種染料としては、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルーなどがある。
【0013】
また、透光性カラートナーとして用いる場合は、着色剤としては、以下に示すような、各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黄色顔料としては、C.I.10316(ナフトールイエローS)、C.I.11710(ハンザエロー10G)、C.I.11660(ハンザエロー5G)、C.I.11670(ハンザエロー3G)、C.I.11680(ハンザエローG)、C.I.11730(ハンザエローGR)、C.I.11735(ハンザエローA)、C.I.11740(ハンザエローNR)、C.I.12710(ハンザエローR)、C.I.12720(ピグメントイエローL)、C.I.21090(ベンジジンエロー)、C.I.21095(ベンジジンエローG)、C.I.21100(ベンジジンエローGR)、C.I.20040(パーマネントエローNCG)、C.I.21220(バルカンファストエロー5)、C.I.21135(バルカンファストエローR)などがある。赤色顔料としては、C.I.12055(スターリンI)、C.I.12075(パーマネントオレンジ)、C.I.12175(リソールファストオレンジ3GL)、C.I.12305(パーマネントオレンジGTR)、C.I.11725(ハンザエロー3R)、C.I.21165(バルカンファストオレンジGG)、C.I.21110(ベンジジンオレンジG)、C.I.12120(パーマネントレッド4R)、C.I.1270(パラレッド)、C.I.12085(ファイヤーレッド)、C.I.12315(ブリリアントファストスカーレット)、C.I.12310(パーマネントレッドF2R)、C.I.12335(パーマネントレッドF4R)、C.I.12440(パーマネントレッドFRL)、C.I.12460(パーマネントレッドFRLL)、C.I.12420(パーマネントレッドF4RH)、C.I.12450(ライトファストレッドトーナーB)、C.I.12490(パーマネントカーミンFB)、C.I.15850(ブリリアントカーミン6B)などがある。また、青色顔料としては、C.I.74100(無金属フタロシアニンブルー)、C.I.74160(フタロシアニンブルー)、C.I.74180(ファーストスカイブルー)などがある。
【0014】
これらの着色剤は、単独であるいは複数組合せて用いることができるが、結着樹脂100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部使用することが望ましい。20重量部より多いとトナーの定着性および透明性が低下し、一方、1重量部より少ないと所望の画像濃度が得られない虞れがある。
【0015】
本発明のトナーは、フロー軟化点(Tf)が90℃〜140℃、好ましくは100℃〜130℃、さらに好ましくは110℃〜120℃の範囲にある。フロー軟化点(Tf)が90℃より低いと耐フィルミング性に劣るものとなり、また、140℃より高いと低温定着性に劣るものとなる。
また、ガラス転移温度(Tg)は50℃〜90℃、好ましくは50℃〜80℃、さらに好ましくは55℃〜75℃の範囲にある。ガラス転移温度(Tg)が50℃より低いと保存性に劣るものとなり、また、90℃より高いとそれにともなってTfが上昇し、低温定着性に劣るものとなる。
【0016】
更に、本発明のトナーは、荷電制御剤(CCA)、必要に応じて離型剤、分散剤、磁性粒子等を含有してもよく、原料であるポリオール類に分散してもよく、また、樹脂を形成した後適宜混練により配合してもよい。
荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の荷電を与え得るものであれば、特に限定されず有機あるいは無機の各種のものを用いることができる。
【0017】
正荷電制御剤としては、例えば、ニグロシンベースEX{オリエント化学工業(株)製}、第4級アンモニウム塩P−51{オリエント化学工業(株)製}、ニグロシン ボントロンN−01{オリエント化学工業(株)製}、スーダンチーフシュバルツBB(ソルベントブラック3: Color Index 26150)、フェットシュバルツHBN(C.I. NO.26150)、ブリリアントスピリッツシュバルツTN(ファルベン・ファブリッケン・バイヤ社製)、ザボンシュバルツX(ファルベルケ・ヘキスト社製)、さらにアルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料などが挙げられる。中でも第4級アンモニウム塩P−51が好ましい。
【0018】
また、負荷電制御剤としては、例えば、オイルブラック(Color Index 26150)、オイルブラックBY{オリエント化学工業(株)製}、ボントロンS−22{オリエント化学工業(株)製}、サリチル酸金属錯体E−81{オリエント化学工業(株)製}、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH{保土谷化学工業(株)製}、ボントロンS−34{オリエント化学工業(株)製}、ニグロシンSO[オリエント化学工業(株)製]、セレスシュバルツ(R)G(ファルベン・ファブリケン・バイヤ社製)、クロモーゲンシュバルツET00(C.I.NO.14645)、アゾオイルブラック(R)(ナショナル・アニリン社製)などが挙げられる。中でも、サリチル酸金属錯体E−81が好ましい。
これらの荷電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができるが、結着樹脂に添加する荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部であり、好ましくは0.001〜3重量部である。
【0019】
離型剤としては、具体的にはパラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、天然ワックス、炭素数12以上の長鎖炭化水素鎖〔CH3(CH2)11またはCH3(CH2)12以上の脂肪族炭素鎖〕を有する長鎖カルボン酸、そのエステル脂肪酸金属塩、脂肪酸アシド、脂肪酸ビスアシド等を例示し得る。異なる低軟化点化合物を混合して用いても良い。具体的には、パラフィンワックス(日本石油社製)、パラフィンワックス(日本精蝋社製)、マイクロワックス(日本石油社製)、マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋社製)、硬質パラフィンワックス(日本精蝋社製)、PE−130(ヘキスト社製)、三井ハイワックス110P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス220P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス660P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス210P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス320P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス410P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス420P(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1141(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−2130(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−4020(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1142(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−5020(三井石油化学社製)、密ロウ、カルナバワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。脂肪酸金属塩として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム等がある。
【0020】
ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、あるいは酸化型のポリプロピレン、酸化型のポリエチレン等が挙げられる。ポリオレフィン系ワックスの具体例としては、例えば、Hoechst wax PE520、Hoechst wax PE130、Hoechstwax PE190(ヘキスト社製)、三井ハイワックス200、三井ハイワックス210、三井ハイワックス210M、三井ハイワックス220、三井ハイワックス220M(三井石油化学工業社製)、サンワックス131−P、サンワックス151−P、サンワックス161−P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst wax PED121、Hoechst wax PED153、Hoechst wax PED521、Hoechst wax PED522、同Ceridust 3620、同Ceridust VP130、同Ceridust VP5905、同Ceridust VP9615A、同Ceridust TM9610F、同Ceridust 3715(ヘキスト社製)、三井ハイワックス420M(三井石油化学工業社製)、サンワックスE−300、サンワックスE−250P(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst Wachs PP230(ヘキスト社製)、ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリプロピレンワックス、ビスコールTS−200(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリプロピレンワックスなどが例示される。これらの離型剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。必要に応じて添加される離型剤としては、セイコーインストルメント(株)製「DSC120」で測定されるDSC吸熱曲線における吸熱メインピーク値である軟化点(融点)が40〜130℃、好ましくは50〜120℃のものを使用するとよい。
【0021】
本発明におけるトナー母粒子は、上記で得た組成物を、混練・溶融した後、微粉砕手段により粉砕・分級して得られるが、その流動性を向上させる為に、流動性向上剤を外添してもよい。
流動性向上剤としては、有機系微粉末または無機系微粉末を用いることができる。例えばフツ素系樹脂粉末、すなわちフツ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末、アクリル樹脂系微粉末など;又は脂肪酸金属塩、すなわちステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛など;又は金属酸化物、すなわち酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛など;又は微粉末シリカ、すなわち湿式製法シリカ、乾式製法シリカ、それらシリカにシランカツプリング剤、チタンカツプリング剤、シリコンオイルなどにより表面処理をほどこした処理シリカなどがあり、これらは1種或いは2種以上の混合物で用いられる。
【0022】
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒユームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
SiCl4 + 2H2 + O2 → SiO2 + 4HCl
【0023】
また、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いる事によってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得る事も可能であり、それらも包含する。その粒径は平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内である事が望ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用するのが良い。本発明に用いられるケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。日本アエロジル社製の「AEROSIL 130」、以下、同 200、同300、同 380、TT600、MOX170、MOX80、COK84等が挙げられ、また、CABOT Co.社製の「Ca−O−SiL M−5」、以下、同 MS−7、同 MS−75、同 HS−5、同 EH−5等が挙げられ、また、WACKER−CHEMIE GMBH社製の「Wacker HDK N 20V15」、以下、同 N20E、同 T30、同 T40、ダウコーニングCo.社の「D−C Fine Silica」、Fransill社の「Fransol」等が挙げられる。
【0024】
更には、該ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体を用いることがより好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化方法としてはシリカ微粉体と反応、あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物などで化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の上記気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。
【0025】
その様な有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチレンジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフエニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
【0026】
その処理シリカ微粉体の粒径としては0.003〜0.1μm、0.005〜0.05μmの範囲のものを使用することが好ましい。市販品としては、タラノツクス−500(タルコ社)、AEROSIL R−972(日本アエロジル社)などがある。
流動性向上剤の添加量としては、該樹脂粒子100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。0.01重量部未満では流動性向上に効果はなく、5重量部を超えるとカブリや文字のにじみ、機内飛散を助長する。
【0027】
本発明のトナーの、結晶融解点(Tm)、ガラス転移点(Tg)、分子量、粒径等のトナーの物性値の測定方法および定着時のトナーのオフセット良好域の評価方法はそれぞれ公知の方法が採用できるが、それらの一例を後述する実施例および比較例の説明において説明する。
【0028】
(本発明の実施例および比較例)
次に、本発明のトナーを実施例および比較例により、具体的に説明する。
まず、本発明のトナーの実施例および比較例の各トナーの物性値の測定および定着時のトナーのオフセット良好域の評価について説明する。
【0029】
(1)トナーの結晶融解点(Tm)およびガラス転移点(Tg)の測定の測定
トナー10mgをアルミニウム製サンプル容器に封入し、セイコーインスツルメント(株)製 示差走査熱量測定ステーション(装置 DSC−220C/EXTRA6000PC)を使用して、トナーのTm[℃]およびTg[℃]を使用して下記の条件で測定する。
測定温度 : 20℃(測定開始温度)〜200 ℃(測定終了温度)
昇温速度 : 10 ℃/min
Tm : 結晶融解点に相当する吸熱が生じたピーク位置の温度とする。
Tg : ガラス転移点に相当する吸熱が生じたI(吸熱カーブのショルダー位置)の温度とする。
結晶量 : Tmのピーク面積とする。
【0030】
(2)分子量および分子量分布の測定
重量平均分子量(Mw)および分子量分布の測定について御教示下さい。
前に出願しましたTHF不溶分を含む場合の分子量分布の測定についての下記の記載のように御教示いただければ有り難いです。
分子量分布
5mgのトナーを5gのTHFに溶解し、樹脂成分以外のTHF不溶分およびコンタミ物質を除去するため、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターを通して、GPC用サンプルを調製する。こうして調製したサンプルを、GPCを用いて、下記の条件にて測定する。
カラム : 昭和電工(株)製「Shodex(GPC)KF806M+KF802.5」
カラム温度 : 30 ℃
溶媒 : テトラヒドロフラン(THF)
流速 : 1.0 ml/min
検出器 : UV検出器(検出波長254 nm)
標準試料 : 単分散ポリスチレン標準試料(重量平均分子量580から390万)
【0031】
(3)粒径の測定
コールターマルチサイザーIII 型(コールター社製)を用い、100μmのアパチャーチューブで粒径別相対重量分布を測定することにより求める。また、シリカ粒子等の外添剤の粒径は、電子顕微鏡法による。
【0032】
(4)オフセット良好域の評価
セイコーエプソン社製LP3000Cより定着部を外したもので、PPC用普通紙S(富士ゼロックスオフィスサプライ社製)の先端から10mmの位置に2cm×2cmの四方領域にトナーを均一に付着させて未定着パッチ(トナー付着量0.4mg/cm2)を作製した。これをコニカ製外部定着器 KL−2010(オイルパッド非装着)に定着ニップ通過時間30msで通過させる。定着温度を温度領域120〜220℃で変化させて通紙し、パッチ定着位置から定着ローラ円周分下の紙上に、目視により、低温または高温オフセット痕が生じていないと判断された温度領域をオフセット良好領域とした。
【0033】
次に、本発明のトナーの実施例および比較例について説明する。
〈トナー用樹脂の製造方法〉
まず、本発明のトナーの実施例および比較例に用いた樹脂の製造例について説明する。
【0034】
(結晶性樹脂1の作製)
1,6−ヘキサンジオール:デカメチレンジカルボン酸=65:50(モル比)とした混合物を1000重量部用意した。この混合物の1000重量部に対し、チタンテトラブトキシドを0.8重量部加え、窒素ガス導入管、脱水管、攪拌器および熱電対を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、180℃で5時間反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させた。更に、圧力8.1kPaにて1時間反応させ、ポリエステルである結晶性樹脂1を得た。この結晶性樹脂1の重量平均分子量は8100であり、Tmは71℃であった。
【0035】
(結晶性樹脂2の作製)
1,4−ブタンジオール:テレフタル酸ジメチル=50:60(モル比)とした混合物を1000重量部用意した。この混合物の1000重量部に対し、チタンテトラブトキシドを1重量部加え、前述の結晶性樹脂1の場合と同様に反応させて結晶性樹脂2を得た。この結晶性樹脂2の重量平均分子量は9200であり、Tmは77℃であった。
【0036】
(非晶性樹脂の作製)
ネオペンチルグリコール:エチレングリコール:1,4−シクロヘキサンジオール:テレフタル酸ジメチル:無水フタル酸=36:36:48:90:10(モル比)とした混合物を1000重量部用意した。この混合物の1000重量部に対し、チタンテトラブトキシドを1重量部加え、窒素ガス導入管、脱水管、攪拌器および熱電対を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、180℃で5時間反応させた後、210℃に昇温して1時間反応させた。更に、圧力8.1kPaにて1時間反応させ、非晶性樹脂を得た。この非晶性樹脂の重量平均分子量は13000であり、Tgは60℃であった。
【0037】
〈トナーの製造方法〉
(実施例1)
前述の結晶性樹脂1を10重量部、非晶性樹脂を90重量部、着色剤として顔料 Toner Magenta 6B(クラリアントジャパン社製)を5重量部、離型剤として精製カルナバワックスWAX type #1(日本ワックス社製)を1重量部、および帯電制御剤として Bontron E−84(オリヱント化学工業社製)を2重量部加えてヘンシェルミキサーで十分に均一混合した後、2軸押出機{東芝機械(株)社製}で溶融混練し、常温(25℃)に冷却後、粉砕機 AFG200{ホソカワミクロン(株)社製}で粉砕、同分級機 ATP200 で分級し、重量Dv50が8.1μm、個数分布で4.2μm以下が11%の大粒径側のトナーを得た。
次に、結晶性樹脂1を80重量部、非晶性樹脂を20重量部とした他は、前述の大粒径側のトナーの場合と同様にして、重量Dv50が8.1μm、個数分布で4.2μm以下が61%の小粒径側のトナーを得た。
そして、大粒径側のトナー90重量部および小粒径側のトナー10重量部の混合物に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加して、ヘンシェルミキサーで混合撹拌し、実施例1のマゼンタ色トナーを得た。
【0038】
(実施例2)
前述の実施例1の場合の結晶性樹脂1に代えて結晶性樹脂2を用いた他は、前述の実施例1の場合と全く同様にして大粒径側のトナーと小粒径側のトナーを得た。このとき、大粒径側のトナーは、重量Dv50が8.0μm、個数分布で4.2μm以下が13%であり、また小粒径側のトナーは、重量Dv50が5.4μm、個数分布で4.2μm以下が59%であった。
そして、前述の実施例1の場合と同様にして、大粒径側のトナー90重量部および小粒径側のトナー10重量部の混合物に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加して、ヘンシェルミキサーで混合撹拌し、実施例2のマゼンタ色トナーを得た。
【0039】
(実施例3)
前述の実施例1の場合の着色剤である顔料 Toner Magenta 6Bをカーボンブラック(キャボット製モーガルL)に代えた他は、実施例1の場合と全く同様にして実施例3の黒色トナーを得た。このとき、大粒径側のトナーは、重量Dv50が8.0μm、個数分布で4.2μm以下が10%であり、また小粒径側のトナーは、重量Dv50が4.9μm、個数分布で4.2μm以下が62%であった。
【0040】
(比較例1)
前述の実施例1の場合の小粒径側のトナー樹脂を大粒径側のトナーと同様に、結晶性樹脂1を10重量部、非晶性樹脂を90重量部にした他は、実施例1と同様にして比較例1のマゼンタ色トナーを得た。このとき、大粒径側のトナーにおける重量Dv50および個数分布での4.2μm以下は実施例1の場合と同じであり、また、小粒径側のトナーは、重量Dv50が5.7μm、個数分布で4.2μm以下が62%であった。
【0041】
(比較例2)
前述の実施例3の場合の小粒径側のトナー樹脂を大粒径側のトナーと同様に、結晶性樹脂1を10重量部、非晶性樹脂を90重量部にした他は、実施例3と同様にして比較例2の黒色トナーを得た。このとき、大粒径側のトナーにおける重量Dv50および個数分布での4.2μm以下は実施例3の場合と同じであり、また、小粒径側のトナーは、重量Dv50が5.0μm、個数分布で4.2μm以下が64%であった。
【0042】
これらの実施例1ないし3および比較例1および2の各トナーについて微粉/結晶比を求めるとともに、実施例および比較例の各トナーを用いて前述の定着器により定着実験を行った。この定着実験でのオフセット良好域における温度[℃]領域を前述の方法で測定した。それらの結果を、表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から明らかなように、実施例1ないし3の各トナーは、いずれも、微粉の(結晶性樹脂/結着樹脂)率がトナー全体の(結晶性樹脂/結着樹脂)率より3以上である。また、低温オフセット痕が生じない温度は140℃以上であり、比較的低い温度で良好な低温定着が可能であり、しかも、低温および高温オフセット痕が生じないオフセット良好域の温度領域の幅が40℃以上であり、比較的幅の広い温度領域を有することが認められた。
【0045】
これに対して、表1から明らかなように、比較例1および2の各トナーは、いずれも、微粉の(結晶性樹脂/結着樹脂)率がトナー全体の(結晶性樹脂/結着樹脂)率より1.0以下である。また、低温オフセット痕が生じない温度は160℃以上であり、比較的低い温度での低温定着が難しく、しかも、低温および高温オフセット痕が生じないオフセット良好域の温度領域の幅が40℃以下であり、比較的幅の狭い温度領域を有することが認められた。
Claims (4)
- 結晶性樹脂と非晶性樹脂とを含む結着樹脂からなり、前記結晶性樹脂が前記非晶性樹脂より低重量平均分子量であるトナーであって、
微粉の(結晶性樹脂/結着樹脂)率がトナー全体の(結晶性樹脂/結着樹脂)率より大きいことを特徴とするトナー。 - 前記結晶性樹脂は非ビスフェノールA系であることを特徴とする請求項1記載のトナー。
- 前記結晶性樹脂は脂肪族単量体の重合構造であることを特徴とする請求項1記載のトナー。
- 前記結晶性樹脂は重量平均分子量が10000以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1記載のトナー。
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US7906264B2 (en) | 2006-09-05 | 2011-03-15 | Fuji Xerox Co., Ltd. | Electrostatic latent image developing toner and method for producing the same, and electrostatic latent image developer, toner cartridge, process cartridge and image forming apparatus |
-
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