JP2004256192A - エレベータシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】異常時にエレベータの運転状態と気圧制御の状態に応じて適切な対応を迅速に行って乗りかご内の乗客の安全を確保する。
【解決手段】エレベータ制御装置11と気圧制御装置12とを備えたエレベータシステムにおいて、エレベータ運転状態監視部21によりエレベータ制御装置11の運転状態を監視し、気圧制御状態監視部22により気圧制御装置12の運転状態を監視する。そして、エレベータ運転または気圧制御の異常が検出された場合に、軽・重故障判断部23によって故障の重要度を判断し、救出モード切り替え部24により救出モードを切り替える。この場合、気圧制御が異常であれば、重故障と判断して乗りかご13内の換気を確保するようなモードに切り替える。これにより、超高速、高階床のエレベータのような機密性の高いエレベータにおける安全性を高めることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】エレベータ制御装置11と気圧制御装置12とを備えたエレベータシステムにおいて、エレベータ運転状態監視部21によりエレベータ制御装置11の運転状態を監視し、気圧制御状態監視部22により気圧制御装置12の運転状態を監視する。そして、エレベータ運転または気圧制御の異常が検出された場合に、軽・重故障判断部23によって故障の重要度を判断し、救出モード切り替え部24により救出モードを切り替える。この場合、気圧制御が異常であれば、重故障と判断して乗りかご13内の換気を確保するようなモードに切り替える。これにより、超高速、高階床のエレベータのような機密性の高いエレベータにおける安全性を高めることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレベータの昇降時における乗りかご内の気圧を制御する気圧制御装置を備えたエレベータシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のエレベータの超高速化、高階床化に伴い、エレベータの昇降時における乗りかご内の気圧変化を無視できなくなって来ている。乗りかご内の気圧が大きく変化すると、乗りかご内の乗客は耳に違和感を感じるなど、乗り心地が悪化する。
【0003】
従来、このような気圧変化による乗りかご内の影響を軽減するために、乗りかご内の気圧を制御するための気圧制御装置を設けて、昇降時に乗りかご内の気圧を常に最適値に保つことが考えられている(例えば、特許文献1参照)。これにより、気圧変化による違和感を解消して、乗客は快適にエレベータを利用できるようになる。今後期待される速度1000m/分、昇降行程400m級の超高速エレベータでは、このような新しい技術が必要となって来る。
【0004】
【特許文献1】
特願平10−87189号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エレベータシステムでは、何らかの異常が生じた場合に乗客の安全を確保するために即座に適切な対応が求められる。これは、例えば乗りかごの運転に支障が生じて正常に走行できない場合など、エレベータの運転自体に異常が生じた場合の他に、上述した気圧制御装置の運転に異常が生じた場合も同様である。特に、超高速エレベータでは、乗りかご内の密封性が非常に高いため、換気も兼ねている気圧制御装置に異常が発生した場合には、乗りかご内の換気を確保することが重要な問題となる。
【0006】
従来のエレベータシステムでは、エレベータの運転状態だけでなく、気圧制御装置の運転状態を含めて異常が発生した場合での安全対策について確立されていないのが現状である。
【0007】
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、異常時にエレベータの運転状態と気圧制御の状態に応じて適切な対応を迅速に行って乗りかご内の乗客の安全を確保することのできるエレベータシステムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のエレベータシステムは、エレベータの運転を制御するエレベータ制御装置と、乗りかご内に設置されたブロアを回転させて気圧を制御する気圧制御装置とを備えたエレベータシステムにおいて、上記エレベータ制御装置の運転状態を監視するエレベータ運転状態監視手段と、上記気圧制御装置の運転状態を監視する気圧制御状態監視手段と、上記エレベータ運転状態監視手段によってエレベータ運転の異常が検出された場合または上記気圧制御状態監視手段によって気圧制御の異常が検出された場合に、そのときの故障の重要度に応じて特定の救出処理を選択的に実行する救出制御手段とを具備して構成される。
【0009】
このような構成によれば、異常時にエレベータの運転状態と気圧制御の状態によって故障の重要度が判断され、その故障の重要度に応じた適切な救出処理が迅速に行われる。
【0010】
すなわち、例えば気圧制御の異常が検出された場合には、重故障であると判断され、上記乗りかご内の換気を強制的に確保するための強制換気確保モードが実行される。
【0011】
また、エレベータ運転の異常が検出された場合に、エレベータが最寄階または特定指定階へ着床可能であり、かつ、上記乗りかごのドアが正常な状態であれば、気圧制御の運転状態に関係なく軽故障であると判断され、上記乗りかごの乗客を最寄階または特定指定階で降ろすための救出運転モードが実行される。
【0012】
また、エレベータ運転の異常が検出された場合に、エレベータが最寄階または特定指定階へ着床不可の状態、または、上記乗りかごのドアが故障状態であれば、気圧制御の運転状態に応じて軽故障または重故障であると判断される。この場合、気圧制御が正常であれば軽故障であると判断され、上記気圧制御装置によって上記乗りかご内の換気を確保するための換気制御モードが実行される。一方、気圧制御が異常であれば、上記乗りかご内の換気を強制的に確保するための強制換気確保モードが実行される。
【0013】
また、停電が発生した場合には、エレベータ運転の状態および気圧制御の状態に関係なく重故障であると判断され、上記乗りかご内の換気を強制的に確保するための強制換気確保モードが実行される。
【0014】
上記強制換気確保モードでは、上記乗りかごのドアを手動操作にて制限付きで開放可能な状態にしたり、上記乗りかご内に設置されたブロアを強制回転することで、上記乗りかご内の換気が確保される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係るエレベータシステムの概略構成を示すブロック図である。このエレベータシステムは、通常のエレベータシステムに気圧システムが追加された構成を有する。通常のエレベータシステムとは、例えば群管理制御などを含むエレベータ全体の運転制御に関するシステムであって、これは機械室などに設置されたエレベータ制御装置11によって実現される。なお、このエレベータシステムについては公知であるため、ここではその詳しい説明は省略するものとする。
【0017】
また、気圧システムは、エレベータ昇降時における乗りかご13内の気圧を制御するためのシステムである。この気圧システムは、乗りかご13内の気圧を検出する気圧センサ14、乗りかご13内の気圧を上げるための吸気ブロワ15a、乗りかご13内の気圧を小さくするための排気ブロワ15b、乗りかご13とブロワ15a、15bを結ぶダクト配管16a、16b、そして、これらの機器を駆動制御する気圧制御装置12から構成される。
【0018】
気圧制御装置12は、乗りかご13内に設置されている。この気圧制御装置12は、エレベータが超高速、高階床を走行する時の乗りかご13内の気圧変化による乗り心地の悪化を改善するために、気圧センサ14によって検出される気圧と乗りかご13の走行位置、速度に基づいて、乗りかご13内に設置された吸気ブロワ15aおよび排気ブロワ15bの回転数をインバータ制御する。これにより、乗りかご内の気圧を常に最適に維持することができる。また、この気圧制御装置12は、吸気ブロワ15aおよび排気ブロワ15bを回転させることで乗りかご13内の換気を調整することも兼ねている。
【0019】
なお、エレベータ制御装置11および気圧制御装置12は、それぞれプログラムによってその動作が制御されるコンピュータによって実現される。
【0020】
図2は上記エレベータシステムの機能構成を示すブロック図である。
【0021】
本発明のエレベータシステムを機能的に示すと、上述したエレベータ制御装置11および気圧制御装置12と共に、エレベータ運転状態監視部21、気圧制御状態監視部22、軽・重故障判断部23、救出モード切り替え部24、第1のテーブル25、第2のテーブル26などから構成される。
【0022】
エレベータ制御装置11は、エレベータの運転を制御するための装置である。このエレベータ制御装置11には、エレベータの運転状態(正常/異常状態)を監視するためのエレベータ運転状態監視部21が設けられている。気圧制御装置12は、エレベータ(乗りかご13)の昇降動作に同期させて、乗りかご13内の気圧を制御する装置である。この気圧制御装置12の主な運転制御は下記の通りである。
【0023】
・気圧制御運転:図5の実曲線に示すように、超高速、高階床走行時における気圧変化(実曲線)に対し、乗りかご13内の気圧を点線の直線で示すように常に最適値に制御する。
・換気制御運転:エレベータの異常時または走行条件に応じて気圧制御ではなく、一定の風量による吸排気運転(図6に示すような一定の風量A、Bによる吸排気運転)を行い、乗りかご13内の空気を循環させて換気する。
【0024】
エレベータ制御装置11と同様に、この気圧制御装置12にも気圧制御の運転状態(正常/異常状態)を監視するための気圧制御状態監視部22が設けられている。
【0025】
また、軽・重故障判断部23、救出モード切り替え部24、第1のテーブル25、第2のテーブル26は、救出制御装置27を構成するものである。この救出制御装置27は、エレベータ運転の異常が検出された場合または気圧制御の異常が検出された場合に、そのときの故障の重要度に応じて特定の救出処理を選択的に実行する。
【0026】
軽・重故障判断部23は、エレベータ運転状態監視部21からエレベータの運転状態、気圧制御状態監視部22から気圧制御の運転状態を取得し、エレベータ運転および気圧制御の少なくとも一方の異常が検出された場合に第1のテーブル25を参照して、そのときの故障の重要度を判断する。なお、本実施形態では、故障の重要度として軽故障と重故障の2通りとする。第1のテーブル25には、異常時にエレベータの運転状態および気圧制御の運転状態に応じて軽故障または重故障として判断するための各種条件が予め登録されている。
【0027】
救出モード切り替え部24は、軽・重故障判断部23によって軽故障または重故障と判断された場合に、乗りかご13内の乗客の安全を確保するために、そのときの状況に応じて救出モードを切り替える。この救出モードとしては、例えばエレベータの走行が低速でも可能であれば、エレベータ(乗りかご13)を最寄階または特定指定階(避難階として指定された階床)まで移動させる「エレベータ救出運転モード」や、エレベータの走行が不可であれば、吸気ブロワ15aや排気ブロワ15bを回転させて乗りかご13内の換気を確保する「換気制御モード」、換気不可の場合には手動操作にてドアを開けて換気を強制的に確保する「換気強制確保モード」などがある。第2のテーブル26には、どのような状況でどの救出モードを適用するのかといったことが各種条件と共に予め登録されている。
【0028】
なお、軽・重故障判断部23、救出モード切り替え部24、第1のテーブル25、第2のテーブル26からなる救出制御装置27は、ソフトウェアによって実現されるものであり、例えばエレベータ制御装置11の一機能として設けられる。
【0029】
また、図2において、31は電源、32はインバータ装置、33は巻上機であり、これらはエレベータ制御装置11と共に機械室に設置されている。電源31は、エレベータの駆動源である。インバータ装置32は、電源31を駆動源として動作し、エレベータ制御装置11からの駆動指令に従って巻上機33を回転駆動する。この巻上機33の回転軸に設けられたシーブにはメインロープ34が巻き掛けられており、そのメインロープ34の両端部に乗りかご13と所定重量分のカウントウェイト35がそれぞれ取り付けられている。巻上機33の駆動によりシーブが回転すると、そのシーブの回転に伴い、乗りかご13とカウントウェイト35が昇降路内をつるべ式に昇降する。
【0030】
また、乗りかご13には、気圧センサ14、吸気ブロワ15a、排気ブロワ15bが設置されている。気圧センサ14によって検出された気圧は、気圧制御装置12に入力される。また、吸気ブロワ15aおよび排気ブロワ15bは気圧制御装置12から出力される駆動信号によって回転駆動する。吸気ブロワ15aの回転により乗りかご13内の吸気が行われ、排気ブロワ15bの回転により乗りかご13内の排気が行われる。
【0031】
次に、本システムの動作について説明する。
【0032】
本システムの処理動作は、(a)基本動作、(b)停電時の動作、(c)異常時の動作に分けられる。
【0033】
(a)基本動作
・エレベータ運転状態監視部21によってエレベータの運転状態(正常/異常)を監視する。エレベータ運転に異常が生じたことを検出した場合に、(c)の異常時の動作に移行する。
【0034】
・気圧制御状態監視部22によって気圧制御の運転状態(正常/異常)を監視する。気圧制御に異常が生じたことを検出した場合に、(c)の異常時の動作に移行する。
【0035】
・停電が発生したかどうかを監視する。この停電の監視は、エレベータ制御装置11側で行うものとする。停電が発生した場合には、(b)の停電時の動作に移行する。
【0036】
(b)停電時の動作
・停電が生じた場合には、エレベータ運転及び気圧制御が共に動作不能であるため、停電が解除されてエレベータが復旧するか、または、保守員が来て乗りかご13内の乗客を救出するしかない。このような場合には重故障であるとして、以下のような方法にて乗りかご13内の換気を確保するものとする。
【0037】
すなわち、停電時を含め、気圧制御装置12に異常が生じた場合には、気圧制御装置12の制御により吸気ブロワ15aや排気ブロワ15bを回転させて乗りかご13内を換気するといったことができない。そこで、例えば乗りかご13のドアを手動操作にて制限付きで開放可能な状態としたり、バッテリなどを用いて乗りかご13内に設置された吸気ブロワ15aや排気ブロワ15bを強制回転させるなどの方法により、乗りかご13内の換気を強制的に確保するものとする。これを「換気強制確保モード」と呼ぶ。
【0038】
(c)異常時の動作
・エレベータ運転の異常時において、エレベータが最寄階または特定指定階(避難階として指定された階床)への着床が不可能な場合、または、着床は可能であるが、乗りかご13のドアが故障して戸開できないような場合には、気圧制御の運転状態を確認する。その結果、気圧制御が異常であれば、そのときの状態を重故障として、上述した「換気強制確保モード」により、乗りかご13内の換気を強制的に確保して救出を待つ。
【0039】
・また、上記の状態で気圧制御が正常であれば、乗りかご13内の換気が可能であるため、直ぐには乗客は救出できないが、乗客の安全は確保できる。そこで、そのときの状態を軽故障として、気圧制御装置12の制御により吸気ブロワ15aや排気ブロワ15bを回転させて乗りかご13内の換気を確保して救出を待つ。これを「換気制御モード」と呼ぶ。
【0040】
・エレベータの運転状態が異常ではあるが、エレベータが最寄階または特定指定階への着床が可能で、しかも、ドアが正常な場合であれば(つまり、エレベータ救出運転が可能な状態)、気圧制御の運転状態に関わらず、そのときの状態を軽故障であるとして、エレベータを最寄階または特定指定階へ移動させた後、戸開して乗りかご13内の乗客を降ろす。これを「エレベータ救出運転モード」と呼ぶ。
【0041】
・エレベータ運転が正常で、気圧制御が異常である場合には、エレベータの最寄階または特定指定階への着床及び戸開が可能であるため、そのときの状態を軽故障として、上記「エレベータ救出運転モード」により乗りかご13内の乗客を救出する。
【0042】
次に、図3および図4のフローチャートを参照して、上述した本システムの動作についてさらに詳しく説明する。
【0043】
今、エレベータ制御装置11の運転制御によってエレベータが平常運転されているものとする。このとき、エレベータ(乗りかご13)の昇降動作に伴い、気圧制御装置12の運転制御によって乗りかご13内の気圧が常に最適値に維持されており、これにより昇降時の気圧変化による違和感が防止され、また、乗りかご13内の換気も確保されている。
【0044】
ここで、エレベータ運転状態監視部21によってエレベータ運転に何らかの異常が生じたことが検出されると(ステップS11のYes)、その旨が軽・重故障判断部23に伝えられる。なお、エレベータ運転の異常とは、通常の運転サービス(乗場呼びやかご呼びに応答して目的の階床に定格速度で移動するなど)を行うことができない状態のことをいう。
【0045】
軽・重故障判断部23では、異常時におけるエレベータ運転および気圧制御の状態に応じて故障の重要度が軽故障であるか重故障であるかを判断する。この場合、エレベータが最寄階または特定指定階(避難階)へ着床でき(ステップS12のYes)、かつ、乗りかご13のドアが故障していない状態であれば(ステップS13のNo)、軽・重故障判断部23は、これらを条件として第1のテーブル25を検索することにより、そのときの状態を軽故障であると判断し、その旨を救出モード切り替え部24に伝える(ステップS14)。
【0046】
救出モード切り替え部24では、軽・重故障判断部23の判断結果に基づいて、現状に合った最適な救出モードに切り替える。この場合、救出モード切り替え部24は、「エレベータ運転異常+軽故障」といった条件にて第2のテーブル26を検索することにより、「エレベータ救出運転モード」と呼ばれる特定の運転モードへの切り替えを行う(ステップS15)。これにより、エレベータ(乗りかご13)が最寄階または特定指定階に移動した後、そこで戸開することで乗りかご13内の乗客を救出することができる。
【0047】
一方、エレベータ運転の異常が検出されたときに、エレベータが最寄階または特定指定階へ着床できない状態(ステップS12のNo)、あるいは、その階に着床はできても乗りかご13のドアが故障している状態であれば(ステップS13のYes)、軽・重故障判断部23は、気圧制御状態監視部22によって監視されている気圧制御の運転状態に基づいて軽故障であるか重故障であるかを判断する。この場合、気圧制御が正常であれば(ステップS16のNo)、軽・重故障判断部23は、これらを条件として第1のテーブル25を検索することにより、そのときの状態を軽故障であると判断し、その旨を救出モード切り替え部24に伝える(ステップS17)。
【0048】
この場合には、救出モード切り替え部24では、「エレベータ運転異常+気圧制御正常+軽故障」といった条件にて第2のテーブル26を検索することにより、「換気制御モード」への切り替えを行う(ステップS18)。この「換気制御モード」により、乗りかご13内に設置された吸気ブロワ15aおよび排気ブロワ15bのうちの少なくとも一方が気圧制御装置12の制御の下で回転して乗りかご13内の換気が確保される。
【0049】
また、エレベータ運転の異常だけでなく、気圧制御も異常であれば(ステップS16のYes)、軽・重故障判断部23は重故障であると判断し、その旨を救出モード切り替え部24に伝える(ステップS19)。気圧制御の異常とは、乗りかご13に設置された吸気ブロワ15aおよび排気ブロワ15bを正常に回転させることができない状態のことをいう。このような場合には、何らかの方法によって乗りかご13内の換気を確保する必要がある。
【0050】
ここで、救出モード切り替え部24では、「エレベータ運転異常+気圧制御異常+重故障」といった条件にて第2のテーブル26を検索することにより、「換気強制確保モード」への切り替えを行う(ステップS20)。具体的には、例えば乗りかご13のドアを手動操作にて開放可能な状態としたり、バッテリなどにより乗りかご13内の吸気ブロワ15aや排気ブロワ15bを強制回転するなどして、乗りかご13内の換気を強制的に確保する。このような「換気強制確保モード」により、保守員が現場に到着するまでの間、乗りかご13内の換気を強制的に確保して乗客の安全を確保することができる。
【0051】
なお、上記換気強制確保モードにおいて、手動操作にてドアを開放可能とする方法では、乗客がドアを全開してしまう危険性があるため、例えば換気に必要な数cmだけドアを開けることができるように、手動操作によるドア開放に制限を設けておくことが好ましい。その際に、例えば「ドアを注意して開けて下さい」といったようなアナウンスを音声出力したり、画面にメッセージ表示するなどしても良い。また、乗りかご13内に非常時のみ使用可能な換気専用の小窓を設けておき、例えば「換気窓を開けて下さい」といったようなアナウンスを音声出力したり、画面にメッセージ表示するなどして、乗りかご13内の乗客に換気を促すようにしても良い。
【0052】
一方、エレベータ運転が正常であり(ステップS11のNo)、気圧制御が異常の場合には(ステップS12のYes)、軽・重故障判断部23は第1のテーブル25を参照して、そのときの状態を軽故障であると判断して、その旨を救出モード切り替え部24に伝える。救出モード切り替え部24では、第2のテーブル26を参照することで、上述した「エレベータ救出運転モード」に切り替えることにより、エレベータ(乗りかご13)を最寄階または特定指定階に移動させて乗りかご13内の乗客を救出する。
【0053】
また、停電が発生した場合には(ステップS24のYes)、エレベータの運転制御も気圧制御も働かないため、軽・重故障判断部23はそのときの状態を重故障であると判断して、その旨を救出モード切り替え部24に伝える。救出モード切り替え部24は、停電時には「換気強制確保モード」への切り替えを行い、バッテリにより乗りかご13内の吸気ブロワ15aや排気ブロワ15bを強制回転させる。これにより、保守員が現場に到着するまでの間、乗りかご13内の換気を強制的に確保して乗客の安全を確保することができる。
【0054】
このように、エレベータの運転状態と気圧制御の運転状態を監視し、異常が生じた場合にそのときの状況に応じて適切な救出モードを切り替えることで、乗りかご内の乗客の安全を確保することができる。特に、気圧制御の異常時には乗りかご内の換気を確保することを最優先とすることで、超高速、高階床のエレベータのような機密性の高いエレベータにおける安全性を高めることができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、エレベータ運転または気圧制御に異常が生じた場合に、そのときの状態に応じて軽故障であるか重故障であるかを判断するようにしたが、例えば故障の重要度をレベル1〜5に分けるなど、さらに細かく故障の重要度を判断し、その重要度別に救出モードを選択的に切り替えるようにしても良い。これは、第1のテーブル25および第2のテーブル26に、その重要度別に条件や対処方法を設定しておくことで実現できる。
【0056】
要するに、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。
【0057】
【発明の効果】
以上詳記したように本発明によれば、気圧制御装置を備えたエレベータシステムにおいて、異常時にエレベータの運転状態だけでなく、気圧制御の状態を含めて故障の重要度を判断し、その故障の重要度に応じた適切な救出処理を行うようにしたため、乗りかご内の乗客の安全を確保することができ、特に気圧制御の異常時には乗りかご内の換気を確保することを最優先とすることで、超高速、高階床のエレベータのような機密性の高いエレベータにおける安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るエレベータシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】上記エレベータシステムの機能構成を示すブロック図。
【図3】上記エレベータシステムの動作を説明するためのフローチャート。
【図4】上記エレベータシステムの動作を説明するためのフローチャート。
【図5】気圧制御運転を説明するための気圧変化量と時間との関係を示す特性図。
【図6】換気制御運転を説明するための気圧変化量と時間との関係を示す特性図。
【符号の説明】
11…エレベータ制御装置
12…気圧制御装置
13…乗りかご
14…気圧センサ
15a…吸気ブロワ
15b…排気ブロワ
16a,16b…ダクト配管
21…エレベータ運転状態監視部
22…気圧制御状態監視部
23…軽・重故障判断部
24…救出モード切り替え部
25…第1のテーブル
26…第2のテーブル
27…救出制御装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレベータの昇降時における乗りかご内の気圧を制御する気圧制御装置を備えたエレベータシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のエレベータの超高速化、高階床化に伴い、エレベータの昇降時における乗りかご内の気圧変化を無視できなくなって来ている。乗りかご内の気圧が大きく変化すると、乗りかご内の乗客は耳に違和感を感じるなど、乗り心地が悪化する。
【0003】
従来、このような気圧変化による乗りかご内の影響を軽減するために、乗りかご内の気圧を制御するための気圧制御装置を設けて、昇降時に乗りかご内の気圧を常に最適値に保つことが考えられている(例えば、特許文献1参照)。これにより、気圧変化による違和感を解消して、乗客は快適にエレベータを利用できるようになる。今後期待される速度1000m/分、昇降行程400m級の超高速エレベータでは、このような新しい技術が必要となって来る。
【0004】
【特許文献1】
特願平10−87189号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エレベータシステムでは、何らかの異常が生じた場合に乗客の安全を確保するために即座に適切な対応が求められる。これは、例えば乗りかごの運転に支障が生じて正常に走行できない場合など、エレベータの運転自体に異常が生じた場合の他に、上述した気圧制御装置の運転に異常が生じた場合も同様である。特に、超高速エレベータでは、乗りかご内の密封性が非常に高いため、換気も兼ねている気圧制御装置に異常が発生した場合には、乗りかご内の換気を確保することが重要な問題となる。
【0006】
従来のエレベータシステムでは、エレベータの運転状態だけでなく、気圧制御装置の運転状態を含めて異常が発生した場合での安全対策について確立されていないのが現状である。
【0007】
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、異常時にエレベータの運転状態と気圧制御の状態に応じて適切な対応を迅速に行って乗りかご内の乗客の安全を確保することのできるエレベータシステムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のエレベータシステムは、エレベータの運転を制御するエレベータ制御装置と、乗りかご内に設置されたブロアを回転させて気圧を制御する気圧制御装置とを備えたエレベータシステムにおいて、上記エレベータ制御装置の運転状態を監視するエレベータ運転状態監視手段と、上記気圧制御装置の運転状態を監視する気圧制御状態監視手段と、上記エレベータ運転状態監視手段によってエレベータ運転の異常が検出された場合または上記気圧制御状態監視手段によって気圧制御の異常が検出された場合に、そのときの故障の重要度に応じて特定の救出処理を選択的に実行する救出制御手段とを具備して構成される。
【0009】
このような構成によれば、異常時にエレベータの運転状態と気圧制御の状態によって故障の重要度が判断され、その故障の重要度に応じた適切な救出処理が迅速に行われる。
【0010】
すなわち、例えば気圧制御の異常が検出された場合には、重故障であると判断され、上記乗りかご内の換気を強制的に確保するための強制換気確保モードが実行される。
【0011】
また、エレベータ運転の異常が検出された場合に、エレベータが最寄階または特定指定階へ着床可能であり、かつ、上記乗りかごのドアが正常な状態であれば、気圧制御の運転状態に関係なく軽故障であると判断され、上記乗りかごの乗客を最寄階または特定指定階で降ろすための救出運転モードが実行される。
【0012】
また、エレベータ運転の異常が検出された場合に、エレベータが最寄階または特定指定階へ着床不可の状態、または、上記乗りかごのドアが故障状態であれば、気圧制御の運転状態に応じて軽故障または重故障であると判断される。この場合、気圧制御が正常であれば軽故障であると判断され、上記気圧制御装置によって上記乗りかご内の換気を確保するための換気制御モードが実行される。一方、気圧制御が異常であれば、上記乗りかご内の換気を強制的に確保するための強制換気確保モードが実行される。
【0013】
また、停電が発生した場合には、エレベータ運転の状態および気圧制御の状態に関係なく重故障であると判断され、上記乗りかご内の換気を強制的に確保するための強制換気確保モードが実行される。
【0014】
上記強制換気確保モードでは、上記乗りかごのドアを手動操作にて制限付きで開放可能な状態にしたり、上記乗りかご内に設置されたブロアを強制回転することで、上記乗りかご内の換気が確保される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係るエレベータシステムの概略構成を示すブロック図である。このエレベータシステムは、通常のエレベータシステムに気圧システムが追加された構成を有する。通常のエレベータシステムとは、例えば群管理制御などを含むエレベータ全体の運転制御に関するシステムであって、これは機械室などに設置されたエレベータ制御装置11によって実現される。なお、このエレベータシステムについては公知であるため、ここではその詳しい説明は省略するものとする。
【0017】
また、気圧システムは、エレベータ昇降時における乗りかご13内の気圧を制御するためのシステムである。この気圧システムは、乗りかご13内の気圧を検出する気圧センサ14、乗りかご13内の気圧を上げるための吸気ブロワ15a、乗りかご13内の気圧を小さくするための排気ブロワ15b、乗りかご13とブロワ15a、15bを結ぶダクト配管16a、16b、そして、これらの機器を駆動制御する気圧制御装置12から構成される。
【0018】
気圧制御装置12は、乗りかご13内に設置されている。この気圧制御装置12は、エレベータが超高速、高階床を走行する時の乗りかご13内の気圧変化による乗り心地の悪化を改善するために、気圧センサ14によって検出される気圧と乗りかご13の走行位置、速度に基づいて、乗りかご13内に設置された吸気ブロワ15aおよび排気ブロワ15bの回転数をインバータ制御する。これにより、乗りかご内の気圧を常に最適に維持することができる。また、この気圧制御装置12は、吸気ブロワ15aおよび排気ブロワ15bを回転させることで乗りかご13内の換気を調整することも兼ねている。
【0019】
なお、エレベータ制御装置11および気圧制御装置12は、それぞれプログラムによってその動作が制御されるコンピュータによって実現される。
【0020】
図2は上記エレベータシステムの機能構成を示すブロック図である。
【0021】
本発明のエレベータシステムを機能的に示すと、上述したエレベータ制御装置11および気圧制御装置12と共に、エレベータ運転状態監視部21、気圧制御状態監視部22、軽・重故障判断部23、救出モード切り替え部24、第1のテーブル25、第2のテーブル26などから構成される。
【0022】
エレベータ制御装置11は、エレベータの運転を制御するための装置である。このエレベータ制御装置11には、エレベータの運転状態(正常/異常状態)を監視するためのエレベータ運転状態監視部21が設けられている。気圧制御装置12は、エレベータ(乗りかご13)の昇降動作に同期させて、乗りかご13内の気圧を制御する装置である。この気圧制御装置12の主な運転制御は下記の通りである。
【0023】
・気圧制御運転:図5の実曲線に示すように、超高速、高階床走行時における気圧変化(実曲線)に対し、乗りかご13内の気圧を点線の直線で示すように常に最適値に制御する。
・換気制御運転:エレベータの異常時または走行条件に応じて気圧制御ではなく、一定の風量による吸排気運転(図6に示すような一定の風量A、Bによる吸排気運転)を行い、乗りかご13内の空気を循環させて換気する。
【0024】
エレベータ制御装置11と同様に、この気圧制御装置12にも気圧制御の運転状態(正常/異常状態)を監視するための気圧制御状態監視部22が設けられている。
【0025】
また、軽・重故障判断部23、救出モード切り替え部24、第1のテーブル25、第2のテーブル26は、救出制御装置27を構成するものである。この救出制御装置27は、エレベータ運転の異常が検出された場合または気圧制御の異常が検出された場合に、そのときの故障の重要度に応じて特定の救出処理を選択的に実行する。
【0026】
軽・重故障判断部23は、エレベータ運転状態監視部21からエレベータの運転状態、気圧制御状態監視部22から気圧制御の運転状態を取得し、エレベータ運転および気圧制御の少なくとも一方の異常が検出された場合に第1のテーブル25を参照して、そのときの故障の重要度を判断する。なお、本実施形態では、故障の重要度として軽故障と重故障の2通りとする。第1のテーブル25には、異常時にエレベータの運転状態および気圧制御の運転状態に応じて軽故障または重故障として判断するための各種条件が予め登録されている。
【0027】
救出モード切り替え部24は、軽・重故障判断部23によって軽故障または重故障と判断された場合に、乗りかご13内の乗客の安全を確保するために、そのときの状況に応じて救出モードを切り替える。この救出モードとしては、例えばエレベータの走行が低速でも可能であれば、エレベータ(乗りかご13)を最寄階または特定指定階(避難階として指定された階床)まで移動させる「エレベータ救出運転モード」や、エレベータの走行が不可であれば、吸気ブロワ15aや排気ブロワ15bを回転させて乗りかご13内の換気を確保する「換気制御モード」、換気不可の場合には手動操作にてドアを開けて換気を強制的に確保する「換気強制確保モード」などがある。第2のテーブル26には、どのような状況でどの救出モードを適用するのかといったことが各種条件と共に予め登録されている。
【0028】
なお、軽・重故障判断部23、救出モード切り替え部24、第1のテーブル25、第2のテーブル26からなる救出制御装置27は、ソフトウェアによって実現されるものであり、例えばエレベータ制御装置11の一機能として設けられる。
【0029】
また、図2において、31は電源、32はインバータ装置、33は巻上機であり、これらはエレベータ制御装置11と共に機械室に設置されている。電源31は、エレベータの駆動源である。インバータ装置32は、電源31を駆動源として動作し、エレベータ制御装置11からの駆動指令に従って巻上機33を回転駆動する。この巻上機33の回転軸に設けられたシーブにはメインロープ34が巻き掛けられており、そのメインロープ34の両端部に乗りかご13と所定重量分のカウントウェイト35がそれぞれ取り付けられている。巻上機33の駆動によりシーブが回転すると、そのシーブの回転に伴い、乗りかご13とカウントウェイト35が昇降路内をつるべ式に昇降する。
【0030】
また、乗りかご13には、気圧センサ14、吸気ブロワ15a、排気ブロワ15bが設置されている。気圧センサ14によって検出された気圧は、気圧制御装置12に入力される。また、吸気ブロワ15aおよび排気ブロワ15bは気圧制御装置12から出力される駆動信号によって回転駆動する。吸気ブロワ15aの回転により乗りかご13内の吸気が行われ、排気ブロワ15bの回転により乗りかご13内の排気が行われる。
【0031】
次に、本システムの動作について説明する。
【0032】
本システムの処理動作は、(a)基本動作、(b)停電時の動作、(c)異常時の動作に分けられる。
【0033】
(a)基本動作
・エレベータ運転状態監視部21によってエレベータの運転状態(正常/異常)を監視する。エレベータ運転に異常が生じたことを検出した場合に、(c)の異常時の動作に移行する。
【0034】
・気圧制御状態監視部22によって気圧制御の運転状態(正常/異常)を監視する。気圧制御に異常が生じたことを検出した場合に、(c)の異常時の動作に移行する。
【0035】
・停電が発生したかどうかを監視する。この停電の監視は、エレベータ制御装置11側で行うものとする。停電が発生した場合には、(b)の停電時の動作に移行する。
【0036】
(b)停電時の動作
・停電が生じた場合には、エレベータ運転及び気圧制御が共に動作不能であるため、停電が解除されてエレベータが復旧するか、または、保守員が来て乗りかご13内の乗客を救出するしかない。このような場合には重故障であるとして、以下のような方法にて乗りかご13内の換気を確保するものとする。
【0037】
すなわち、停電時を含め、気圧制御装置12に異常が生じた場合には、気圧制御装置12の制御により吸気ブロワ15aや排気ブロワ15bを回転させて乗りかご13内を換気するといったことができない。そこで、例えば乗りかご13のドアを手動操作にて制限付きで開放可能な状態としたり、バッテリなどを用いて乗りかご13内に設置された吸気ブロワ15aや排気ブロワ15bを強制回転させるなどの方法により、乗りかご13内の換気を強制的に確保するものとする。これを「換気強制確保モード」と呼ぶ。
【0038】
(c)異常時の動作
・エレベータ運転の異常時において、エレベータが最寄階または特定指定階(避難階として指定された階床)への着床が不可能な場合、または、着床は可能であるが、乗りかご13のドアが故障して戸開できないような場合には、気圧制御の運転状態を確認する。その結果、気圧制御が異常であれば、そのときの状態を重故障として、上述した「換気強制確保モード」により、乗りかご13内の換気を強制的に確保して救出を待つ。
【0039】
・また、上記の状態で気圧制御が正常であれば、乗りかご13内の換気が可能であるため、直ぐには乗客は救出できないが、乗客の安全は確保できる。そこで、そのときの状態を軽故障として、気圧制御装置12の制御により吸気ブロワ15aや排気ブロワ15bを回転させて乗りかご13内の換気を確保して救出を待つ。これを「換気制御モード」と呼ぶ。
【0040】
・エレベータの運転状態が異常ではあるが、エレベータが最寄階または特定指定階への着床が可能で、しかも、ドアが正常な場合であれば(つまり、エレベータ救出運転が可能な状態)、気圧制御の運転状態に関わらず、そのときの状態を軽故障であるとして、エレベータを最寄階または特定指定階へ移動させた後、戸開して乗りかご13内の乗客を降ろす。これを「エレベータ救出運転モード」と呼ぶ。
【0041】
・エレベータ運転が正常で、気圧制御が異常である場合には、エレベータの最寄階または特定指定階への着床及び戸開が可能であるため、そのときの状態を軽故障として、上記「エレベータ救出運転モード」により乗りかご13内の乗客を救出する。
【0042】
次に、図3および図4のフローチャートを参照して、上述した本システムの動作についてさらに詳しく説明する。
【0043】
今、エレベータ制御装置11の運転制御によってエレベータが平常運転されているものとする。このとき、エレベータ(乗りかご13)の昇降動作に伴い、気圧制御装置12の運転制御によって乗りかご13内の気圧が常に最適値に維持されており、これにより昇降時の気圧変化による違和感が防止され、また、乗りかご13内の換気も確保されている。
【0044】
ここで、エレベータ運転状態監視部21によってエレベータ運転に何らかの異常が生じたことが検出されると(ステップS11のYes)、その旨が軽・重故障判断部23に伝えられる。なお、エレベータ運転の異常とは、通常の運転サービス(乗場呼びやかご呼びに応答して目的の階床に定格速度で移動するなど)を行うことができない状態のことをいう。
【0045】
軽・重故障判断部23では、異常時におけるエレベータ運転および気圧制御の状態に応じて故障の重要度が軽故障であるか重故障であるかを判断する。この場合、エレベータが最寄階または特定指定階(避難階)へ着床でき(ステップS12のYes)、かつ、乗りかご13のドアが故障していない状態であれば(ステップS13のNo)、軽・重故障判断部23は、これらを条件として第1のテーブル25を検索することにより、そのときの状態を軽故障であると判断し、その旨を救出モード切り替え部24に伝える(ステップS14)。
【0046】
救出モード切り替え部24では、軽・重故障判断部23の判断結果に基づいて、現状に合った最適な救出モードに切り替える。この場合、救出モード切り替え部24は、「エレベータ運転異常+軽故障」といった条件にて第2のテーブル26を検索することにより、「エレベータ救出運転モード」と呼ばれる特定の運転モードへの切り替えを行う(ステップS15)。これにより、エレベータ(乗りかご13)が最寄階または特定指定階に移動した後、そこで戸開することで乗りかご13内の乗客を救出することができる。
【0047】
一方、エレベータ運転の異常が検出されたときに、エレベータが最寄階または特定指定階へ着床できない状態(ステップS12のNo)、あるいは、その階に着床はできても乗りかご13のドアが故障している状態であれば(ステップS13のYes)、軽・重故障判断部23は、気圧制御状態監視部22によって監視されている気圧制御の運転状態に基づいて軽故障であるか重故障であるかを判断する。この場合、気圧制御が正常であれば(ステップS16のNo)、軽・重故障判断部23は、これらを条件として第1のテーブル25を検索することにより、そのときの状態を軽故障であると判断し、その旨を救出モード切り替え部24に伝える(ステップS17)。
【0048】
この場合には、救出モード切り替え部24では、「エレベータ運転異常+気圧制御正常+軽故障」といった条件にて第2のテーブル26を検索することにより、「換気制御モード」への切り替えを行う(ステップS18)。この「換気制御モード」により、乗りかご13内に設置された吸気ブロワ15aおよび排気ブロワ15bのうちの少なくとも一方が気圧制御装置12の制御の下で回転して乗りかご13内の換気が確保される。
【0049】
また、エレベータ運転の異常だけでなく、気圧制御も異常であれば(ステップS16のYes)、軽・重故障判断部23は重故障であると判断し、その旨を救出モード切り替え部24に伝える(ステップS19)。気圧制御の異常とは、乗りかご13に設置された吸気ブロワ15aおよび排気ブロワ15bを正常に回転させることができない状態のことをいう。このような場合には、何らかの方法によって乗りかご13内の換気を確保する必要がある。
【0050】
ここで、救出モード切り替え部24では、「エレベータ運転異常+気圧制御異常+重故障」といった条件にて第2のテーブル26を検索することにより、「換気強制確保モード」への切り替えを行う(ステップS20)。具体的には、例えば乗りかご13のドアを手動操作にて開放可能な状態としたり、バッテリなどにより乗りかご13内の吸気ブロワ15aや排気ブロワ15bを強制回転するなどして、乗りかご13内の換気を強制的に確保する。このような「換気強制確保モード」により、保守員が現場に到着するまでの間、乗りかご13内の換気を強制的に確保して乗客の安全を確保することができる。
【0051】
なお、上記換気強制確保モードにおいて、手動操作にてドアを開放可能とする方法では、乗客がドアを全開してしまう危険性があるため、例えば換気に必要な数cmだけドアを開けることができるように、手動操作によるドア開放に制限を設けておくことが好ましい。その際に、例えば「ドアを注意して開けて下さい」といったようなアナウンスを音声出力したり、画面にメッセージ表示するなどしても良い。また、乗りかご13内に非常時のみ使用可能な換気専用の小窓を設けておき、例えば「換気窓を開けて下さい」といったようなアナウンスを音声出力したり、画面にメッセージ表示するなどして、乗りかご13内の乗客に換気を促すようにしても良い。
【0052】
一方、エレベータ運転が正常であり(ステップS11のNo)、気圧制御が異常の場合には(ステップS12のYes)、軽・重故障判断部23は第1のテーブル25を参照して、そのときの状態を軽故障であると判断して、その旨を救出モード切り替え部24に伝える。救出モード切り替え部24では、第2のテーブル26を参照することで、上述した「エレベータ救出運転モード」に切り替えることにより、エレベータ(乗りかご13)を最寄階または特定指定階に移動させて乗りかご13内の乗客を救出する。
【0053】
また、停電が発生した場合には(ステップS24のYes)、エレベータの運転制御も気圧制御も働かないため、軽・重故障判断部23はそのときの状態を重故障であると判断して、その旨を救出モード切り替え部24に伝える。救出モード切り替え部24は、停電時には「換気強制確保モード」への切り替えを行い、バッテリにより乗りかご13内の吸気ブロワ15aや排気ブロワ15bを強制回転させる。これにより、保守員が現場に到着するまでの間、乗りかご13内の換気を強制的に確保して乗客の安全を確保することができる。
【0054】
このように、エレベータの運転状態と気圧制御の運転状態を監視し、異常が生じた場合にそのときの状況に応じて適切な救出モードを切り替えることで、乗りかご内の乗客の安全を確保することができる。特に、気圧制御の異常時には乗りかご内の換気を確保することを最優先とすることで、超高速、高階床のエレベータのような機密性の高いエレベータにおける安全性を高めることができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、エレベータ運転または気圧制御に異常が生じた場合に、そのときの状態に応じて軽故障であるか重故障であるかを判断するようにしたが、例えば故障の重要度をレベル1〜5に分けるなど、さらに細かく故障の重要度を判断し、その重要度別に救出モードを選択的に切り替えるようにしても良い。これは、第1のテーブル25および第2のテーブル26に、その重要度別に条件や対処方法を設定しておくことで実現できる。
【0056】
要するに、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。
【0057】
【発明の効果】
以上詳記したように本発明によれば、気圧制御装置を備えたエレベータシステムにおいて、異常時にエレベータの運転状態だけでなく、気圧制御の状態を含めて故障の重要度を判断し、その故障の重要度に応じた適切な救出処理を行うようにしたため、乗りかご内の乗客の安全を確保することができ、特に気圧制御の異常時には乗りかご内の換気を確保することを最優先とすることで、超高速、高階床のエレベータのような機密性の高いエレベータにおける安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るエレベータシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】上記エレベータシステムの機能構成を示すブロック図。
【図3】上記エレベータシステムの動作を説明するためのフローチャート。
【図4】上記エレベータシステムの動作を説明するためのフローチャート。
【図5】気圧制御運転を説明するための気圧変化量と時間との関係を示す特性図。
【図6】換気制御運転を説明するための気圧変化量と時間との関係を示す特性図。
【符号の説明】
11…エレベータ制御装置
12…気圧制御装置
13…乗りかご
14…気圧センサ
15a…吸気ブロワ
15b…排気ブロワ
16a,16b…ダクト配管
21…エレベータ運転状態監視部
22…気圧制御状態監視部
23…軽・重故障判断部
24…救出モード切り替え部
25…第1のテーブル
26…第2のテーブル
27…救出制御装置
Claims (9)
- エレベータの運転を制御するエレベータ制御装置と、乗りかご内に設置されたブロアを回転させて気圧を制御する気圧制御装置とを備えたエレベータシステムにおいて、
上記エレベータ制御装置の運転状態を監視するエレベータ運転状態監視手段と、
上記気圧制御装置の運転状態を監視する気圧制御状態監視手段と、
上記エレベータ運転状態監視手段によってエレベータ運転の異常が検出された場合または上記気圧制御状態監視手段によって気圧制御の異常が検出された場合に、そのときの故障の重要度に応じて特定の救出処理を選択的に実行する救出制御手段と
を具備したことを特徴とするエレベータシステム。 - 上記救出制御手段は、気圧制御の異常が検出された場合には重故障であると判断して、上記乗りかご内の換気を強制的に確保するための強制換気確保モードを実行することを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
- 上記救出制御手段は、エレベータ運転の異常が検出された場合に、エレベータが最寄階または特定指定階へ着床可能であり、かつ、上記乗りかごのドアが正常な状態であれば、気圧制御の運転状態に関係なく軽故障であると判断して、上記乗りかごの乗客を最寄階または特定指定階で降ろすための救出運転モードを実行することを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
- 上記救出制御手段は、エレベータ運転の異常が検出された場合に、エレベータが最寄階または特定指定階へ着床不可の状態、または、上記乗りかごのドアが故障状態であれば、気圧制御の運転状態に応じて軽故障または重故障であると判断することを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
- 上記救出制御手段は、気圧制御が正常な場合には軽故障であると判断し、上記気圧制御装置によって上記乗りかご内の換気を確保するための換気制御モードを実行することを特徴とする請求項4記載のエレベータシステム。
- 上記救出制御手段は、気圧制御が異常の場合には重故障であると判断し、上記乗りかご内の換気を強制的に確保するための強制換気確保モードを実行することを特徴とする請求項4記載のエレベータシステム。
- 上記救出制御手段は、停電が発生した場合にエレベータ運転の状態および気圧制御の状態に関係なく重故障であると判断して、上記乗りかご内の換気を強制的に確保するための強制換気確保モードを実行することを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
- 上記強制換気確保モードでは、上記乗りかごのドアを手動操作にて制限付きで開放可能な状態にすることを特徴とする請求項2、6、7のいずれかに記載のエレベータシステム。
- 上記強制換気確保モードでは、上記乗りかご内に設置されたブロアを強制回転することを特徴とする請求項2、6、7のいずれかに記載のエレベータシステム。
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080520 |
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080924 |