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JP2004137395A - セルロースアシレートフィルム及びその製造方法、並びに該フィルムを用いた光学フィルム、液晶表示装置及びハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents

セルロースアシレートフィルム及びその製造方法、並びに該フィルムを用いた光学フィルム、液晶表示装置及びハロゲン化銀写真感光材料 Download PDF

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JP2004137395A
JP2004137395A JP2002304422A JP2002304422A JP2004137395A JP 2004137395 A JP2004137395 A JP 2004137395A JP 2002304422 A JP2002304422 A JP 2002304422A JP 2002304422 A JP2002304422 A JP 2002304422A JP 2004137395 A JP2004137395 A JP 2004137395A
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film
cellulose acylate
liquid crystal
cellulose
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JP2002304422A
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Inventor
Takahiro Moto
本 隆裕
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Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Publication date
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Abstract

【課題】引き裂き強度、耐折強度、及び光学特性優れ、しかも長期保存安定性良好なセルロースアセテートフィルム、並びに上記特性に優れたセルロースアセテートフィルムを用いた光学フィルム、液晶表示装置、及びハロゲン化銀写真感光材料を提供する。
【解決手段】(i)セルロースアシレート、(ii)フェノール性OH基の少なくとも1つが末端に重合性基を有する置換基で置換された反応性カリックスアレーン誘導体(K)、(iii)上記反応性カリックスアレーン誘導体(K)と共重合可能な重合性モノマー(A)、及び(iv)光重合開始剤(L)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と光照射の工程とを含む一連の工程により作製されたセルロースアシレートフィルム、並びにこのセルロースアシレートフィルムを用いた光学フィルム、液晶表示装置、及びハロゲン化銀写真感光材料。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースアシレートフィルム、及び該セルロースアシレートフィルムを用いた光学フィルムに関する。
特に、本発明は、液晶表示装置等に用いられる偏光板保護フィルム、位相差フィルム、視野拡大フィルム、プラズマディスプレーに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能性光学フィルムやハロゲン化銀写真感光材料の支持体フィルムに関する。さらに、本発明は、有機ELディスプレー等に適用される各種機能フィルムを構成する光学フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアシレートフィルムは、透明で、優れた物理的、機械的性質を有し、且つ温度湿度変化に対する寸法変化が少なく、従来からハロゲン化銀感光材料フィルム用支持体、製図トレーシングフィルム、電気絶縁材料などの広い分野で使用され、最近では液晶画像表示装置の偏光板用保護フィルムとして使用されている。
【0003】
しかし、そのままでは、引裂強度、耐折強度が低く、特に低湿度の状態下では、非常に脆くなり裂け易い欠点があった。このため、これらを改良するために、セルロースアシレートの溶液流延製膜方法を用い、セルロースアシレート溶液に低分子の可塑剤(例えば、リン酸エステル類、フタル酸エステル類等)や高分子量可塑剤(例えばポリエステルエーテル、ポリエステル−ウレタン、ポリエステル等)を適宜選択して単独又は混合したドープ組成物を用いることが試みられている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。また、ポリメチルアクリレート又はメチルアクリレートのコポリマーをセルローストリアセテートと混合させて、セルロースエステルフィルムの可塑性等を付与する技術がある(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、これらの支持体でも、長期保存下の膜強度安定性、フィルムの着色等が十分でなかった。
【0004】
一方、近年、液晶画像表示装置は高精細化がますます進み、偏光板用保護フィルムとして優れた光透過性、光学的な無配向性、偏光素子との良好な接着性、優れた平面性、紫外線吸収性、帯電防止性等の性能の向上や、耐久性化が求められている。また、CRTに代わって注目を集めている液晶表示装置に用いることのできる光学的に異方性を有する光学補償フィルムは、液晶表示装置は異方性をもつ液晶材料を使用するために斜めから見ると表示性能が低下するという視野角の問題があり、更なる性能向上が望まれている。
【0005】
光学補償フィルムとしては、液晶性化合物の配向形態を固定化して得られる異方性材料が最近の主流であるが、その製造方法は従来セルロースエステルフィルムを支持体とし、その上に液晶性化合物を溶剤塗布している為、セルロースエステルフィルム中の添加剤がブリード現象によって液晶性化合物中に混入してしまい、液晶性化合物の配向を乱してしまったり、白濁させてしまなどの問題点を有していた。これらの特性を改良のするために、例えばフィルム製造中に紫外線吸収剤や帯電防止剤の添加、或いは紫外線吸収性基を含有した高分子の添加が提案されている(例えば、特許文献7、特許文献8参照)。
【0006】
また、ドープ中に重合可能なモノマーを添加し、剥離前にイオン化照射を行い製膜速度を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献9参照)が、イオン化照射による重合反応は、分子の切断などが起こり易く、不必要なまたは有害な物質が生じ、後日他に悪影響を及ぼす虞がある。
また、ドープ中に紫外線吸収性基を含む重合可能モノマーと光重合開始剤を添加し、流延工程で紫外線光照射して重合して製膜する技術が知られている(例えば、特許文献10、特許文献11参照)。
他方、近年の表示装置の開発は、表示部の大版化あるいは携帯電話等のモバイル表示装置の多用途への普及等が急速に進展し、光学フィルムへのより一層の寸度安定性や耐久性が望まれている。
【0007】
【特許文献1】
特公昭47−760号公報
【特許文献2】
特公昭43−16305号公報
【特許文献3】
特公昭44−32672号公報
【特許文献4】
特開平2−292342号公報
【特許文献5】
特開平5−197073号公報
【特許文献6】
米国特許第3,277,032号明細書
【特許文献7】
特開平6−148430号公報
【特許文献8】
特開2002−31715号公報
【特許文献9】
米国特許第3,738,924号明細書
【特許文献10】
特開2002−20410号公報
【特許文献11】
特開2002−47357号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れた引き裂き強度、耐折強度、光学特性を有し、しかも長期保存安定性良好なセルロースアセテートフィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、優れた特性を有する上記セルロースアセテートフィルムを用いた光学フィルム(偏光フィルム、光学補償フィルムなど)、液晶表示装置、及びハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成のセルロースアセテートフィルム、光学フィルム(偏光フィルム、光学補償フィルムなど)、液晶表示装置、ハロゲン化銀写真感光材料により達成される。
1.(i)セルロースアシレート、
(ii)フェノール性OH基の少なくとも1つが末端に重合性基を有する置換基で置換された反応性カリックスアレーン誘導体(K)、
(iii)上記反応性カリックスアレーン誘導体(K)と共重合可能な重合性モノマー(A)、及び
(iv)光重合開始剤(L)
を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と光照射の工程とを含む一連の工程により作製されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
2.セルロースアシレート組成物が、光安定化基を有する重合性モノマー(B)を含有することを特徴とする上記1に記載のセルロースアシレートフィルム。
3.反応性カリックスアレーン誘導体(K)、共重合可能な重合性モノマー(A)、光安定化基を有する重合性モノマー(B)が、各々ラジカル重合及び/またはカチオン重合で重合反応することを特徴とする上記1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
4.上記セルロースアシレート組成物が、微粒子を含有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
5.セルロースの水酸基の置換度が、下記式(a)〜(c)の全てを満たすことを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
式(a):2.6≦SA’+SB’≦3.0
式(b):2.0≦SA’≦3.0
式(c):  0≦SB’≦0.8
上記式中、SA’はアセチル基の置換度であり、SB’は炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。
6.上記1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする光学フィルム。
7.上記1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする液晶表示素材。
8.上記1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
9.上記1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする偏光フィルム。
10.上記1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
11.膜厚が30〜250μmの上記1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを支持体とすることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
12.(i)セルロースアシレート、
(ii)フェノール性OH基の少なくとも1つが末端に重合性基を有する置換基で置換された反応性カリックスアレーン誘導体(K)、
(iii)上記反応性カリックスアレーン誘導体(K)と共重合可能な重合性モノマー(A)、及び
(iv)光重合開始剤(L)
を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と光照射の工程とを含む一連の工程からなることを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセルロースアシレートフィルムについて、さらに詳細に説明する。
[セルロースアシレート]
本発明のセルロールアシレートフィルムは、
(i)セルロースアシレート、
(ii)フェノール性OH基の少なくとも1つが末端に重合性基を有する置換基で置換された反応性カリックスアレーン誘導体(K)、
(iii)上記反応性カリックスアレーン誘導体(K)と共重合可能な重合性モノマー(A)、及び
(iv)光重合開始剤(L)
を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と光照射の工程とを含む一連の工程により製造される。
【0011】
本発明に用いられるセルロースアシレートを製造するための原料セルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などが好ましく挙げられるが、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
【0012】
本発明においてはセルロースからエステル化してセルロースアシレートが作製されるが、好ましい上記の原料セルロースがそのまま利用できる訳ではなく、リンタやパルプを精製した精製リンタや精製高級木材パルプが用いられる。
【0013】
以上のセルロースアシレートについては、特開平10−45803号、特開平11−269304号、特開平8−231761号、特開平8−231761号、特開平10−60170号、特開平9−40792号、特開平11−5851号、特開平11−269304号、特開平9−90101号、特開昭57−182737号、特開平4−277530号、特開平11−292989号、特開平12−131524号、特開平12−137115号などの各公報に記載されており、これら公報記載のセルロースアシレートを利用することも好ましい。
【0014】
[セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製及びフィルムの作製]
次に上述のセルロース原料から製造される本発明のセルロースアシレートについて記載する。本発明のセルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記式(a)〜(c)の全てを満たすことが好ましい。
式(a):2.6≦SA’+SB’≦3.0
式(b):2.0≦SA’≦3.0
式(c):  0≦SB’≦0.8
ここで、SA’はセルロースの水酸基を置換しているアセチル基の置換度を表し、SB’はセルロースの水酸基を置換している炭素原子数3〜22のアシル基の置換度を表す。また、SAはセルロースの水酸基を置換しているアセチル基を表し、SBはセルロースの水酸基を置換している炭素原子数3〜22のアシル基を表す。
【0015】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(各位それぞれ100%のエステル化は置換度1)を意味する。本発明では、SAとSBの置換度の総和(SA’+SB’)は、より好ましくは2.7〜2.96であり、特に好ましくは2.80〜2.95である。また、SBの置換度(SB’)は0〜0.8であり、特には0〜0.6である。さらにSAとSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましく、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位のSAとSBの置換度の総和が0.8以上であり、さらには0.85以上であり、特には0.90以上であるセルロースアシレートフィルムも好ましいものとして挙げることができる。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。
【0016】
本発明に用いられるセルロースアシレートの炭素数3〜22のアシル基(SB)としては、脂肪族基でもアリール基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいSBとしては、プロピオニル、ブタノイル、ヘプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso‐ブタノイル、t‐ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、好ましいSBは、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t‐ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどである。
【0017】
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法等がある。具体的には、例えば、特開平6−32801号、同7−70202号、同10−45804号、同10−511728号、特開2001−200901号等に記載の方法が挙げられる。
【0018】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記で定義されるセルロースアシレートからなることが好ましい。「実質的に」とは、全ポリマー成分の55質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上セルロースアシレートが占めることを意味する。フィルム製造の原料としては、セルロースアシレート粒子を使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.1〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が0.2〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく扁平ないし球形に近い形状も好ましい。
【0019】
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度200〜700、好ましくは230〜550、更に好ましくは230〜350であり、特に好ましくは粘度平均重合度240〜320である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0020】
次いで、本発明に供される各重合性基含有の化合物について詳述する。
本発明の反応性カリックスアレーン(K)は、カリックスアレーンのフェノール性OHの少なくとも1つが末端に重合性基を結合した置換基で置換された化合物である。重合性基としては、ラジカル重合反応性基及びカチオン重合反応性基が挙げられる。
反応性カリックスアレーン(K)は、具体的には、下記一般式(I)で示される。
【0021】
【化1】
Figure 2004137395
【0022】
式(I)中:
Tは、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基を表す。
Lは、単結合または酸素原子とTとを連結する2価の連結基を表す。
は、水素原子または脂肪族基を表す。
は、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。
及びYは、同じでも異なってもよく、水素原子、炭化水素基、または−X−Ar基を表す。
ここで、Xは、−CH=N−、−CHNH−、−CH=CH−、−N=N−、または−COO−を表し、Arはアリール基を表す。
mは、1〜8の整数、nは0または1〜9の整数であり、m+nの和は3〜10の整数である。
【0023】
一般式(I)中のTがラジカル重合性基を表す場合、具体的には下記一般式(Ia)で表される不飽和二重結合性基が挙げられる。
【0024】
【化2】
Figure 2004137395
【0025】
式(Ia)中:
は、−COO−、−OCO−、−CONH−、またはフェニレン基(以下、フェニレン基をPhで表すこともある。なお、Phは1,2−、1,3−及び1,4−フェニレン基を含む)を表す。
及びaは同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等 )、−CN基、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)または−CHCOOR10基(R10はアルキル基を表す。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等)を表す。
【0026】
上記Tがカチオン重合性基を表す場合、具体的には、ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、エポキシ基、脂環式エポキシド基、芳香族エポキシド基、下記オキセタニル基
【0027】
【化3】
Figure 2004137395
【0028】
(ここで、R21は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す)などが挙げられる。
【0029】
好ましいLは、単結合または総原子数1〜22個の連結基(ここでいう総原子数には、炭素原子、窒素原子及びケイ素原子に結合する水素原子を除く)である。より好ましくは直接結合または総原子数1〜18の連結基である。
【0030】
Lにおける連結基としては、炭素原子−炭素原子結合(一重結合または二重結合)、炭素原子−ヘテロ原子結合(ヘテロ原子としては例えば、酸素原子、イオウ原子、窒素原子、ケイ素原子等)、ヘテロ原子−ヘテロ原子結合等から構成される原子団の任意の組合せで構成される。例えば、原子団としては下記のものが挙げられる。
【0031】
【化4】
Figure 2004137395
【0032】
ここで、Z、Zは、各々、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等 )、シアノ基、ヒドロキシル基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)等を示す。
、zは、各々、水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、トリル基等)等を示す。
連結基〔−L−〕として、例えば下記の例が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
【化5】
Figure 2004137395
【0034】
上記式において、pは0または1、mは1〜12の整数、mは2〜12の整数、nは2〜12の整数、nは2〜4の整数、nは1〜4の整数である。
【0035】
式(I)中のY及びYが炭化水素基を表す場合、該炭化水素基は脂肪族基、アリール基または複素環基である。
脂肪族基としては、炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ナノデシル基、エイコサニル基、ヘネイコサニル基、ドコサニル基等 )、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基、オクタジエニル基等 )、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基、オクタニル基、デカニル基、ドデカニル基等)、炭素数5〜22の脂環式炭化水素基(脂環式炭化水素基として単環式、多環式、架橋環式の脂肪族環状炭化水素基が挙げられ、その具体例としては、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロソナン、シクロソネン、シクロデカン、シクロデセン、シクロデカンジエン、シクロデカトリエン、シクロウンデカン、シクロドデカン、ビシクロヘプタン、ビシクロヘキサン、ビシクロヘキセン、トリシクロヘキセン、ノルカラン、ノルビナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、トリシクロヘプタン、トリシクロヘプテン、デカリン、アダマンタン等の環構造炭化水素等)が挙げられる。
これらの中で、炭素数1〜18の直鎖状、炭素原子数3〜18の分岐状、並びに炭素原子数5〜16の環状の脂肪族基がより好ましい。
【0036】
かかる脂肪族基は置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。
非金属原子団の具体的な例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、−OH基、−OR11、−SR11、−COR11、−COOR11、−OCOR11、−SO11、−NHCONHR11、−N(R12)COR11、−N(R12)SO11、−N(R13)(R14)、−CO(R13)(R14 )、−SO(R13)(R14)、−P(=O)(R15)(R16)、−OP(=O)(R15)(R16)、−Si(R17)(R18)(R19)、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜18のアリール基(アリール環としては、ベンゼン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、インデン、フルオレン、アセナフチレン、アセナフテン、ビフェニレン等 )、酸素原子、硫黄原子、窒素原子のいずれかを少なくとも1個含有する単環式若しくは多環式の環構造を有する複素環基(複素環基としては、例えば、フラニル基、テトラヒドロフラニル基、ピラニル基、ピロイル基、クロメニル基、フェノキサチイニル基、インダゾイル基、ピラゾイル基、ピリジイル基、ピラジニル基、ピリミデイニル基、インドイル基、イソインドイル基、キノニイル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基等)等が挙げられる。
【0037】
前記のアルケニル基、アルキニル基、脂環式炭化水素基、アリール基、複素環基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記の脂肪族基に導入し得る基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0038】
前記R11は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜18のアリール基、または複素環基を表す。
11における脂肪族基は、一般式(I)中のY及びYが炭化水素基を表す場合の脂肪族基と同義である。
11におけるアリール基としては、一般式(I)中のY及びYが炭化水素基を表す場合の脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、一般式(I)中のY及びYが炭化水素基を表す場合の脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
11における複素環基としては、一般式(I)中のY及びYが炭化水素基を表す場合の複素環基に導入し得る置換基として例示した複素環基と同様のものが挙げられる。かかる複素環基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、一般式(I)中のY及びYが炭化水素基を表す場合の脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
12は、水素原子またはR11基と同様のものを表す。
【0039】
前記R13及びR14は、各々独立に、水素原子、またはR11と同様のものを表し、R13とR14とは互いに結合して、N原子を含有する5員または6員の環を形成してもよい。
前記R15及びR16は、各々独立に、−OH、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜14のアリール基、または−OR11を表す。
15及びR16における脂肪族基は前記R11で表される脂肪族基と同義である。R15及びR16におけるアリール基としては、前記R11で表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記R11で表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。但し、かかる極性置換基において、R15及びR16の双方が−OHで表されることはない。
前記R17、R18及びR19は、各々独立に、炭素数1〜22の炭化水素基または−OR20を表すが、これらの置換基の内少なくとも1つは炭化水素基を表す。炭化水素基は前記Rで示される脂肪族基及びアリール基と同様のものを表し、−OR20は前記−OR11と同様の内容を表す。
【0040】
一般式(I)におけるY、Yで表されるアリール基としては、前記R11で表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。また、かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記R11で表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0041】
一般式(I)におけるY、Yで表される複素環基としては、前記R11で表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示した複素環基と同様のものが挙げられる。また、かかる複素環基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記R11で表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0042】
一般式(I)におけるY、Yが−X−Ar基を表す場合、Xは−CH=N−、−CHNH−、−CH=CH−、−N=N−または−COO−を表す。Arはアリール基を表し、具体的には置換されてもよいフェニル基が挙げられる。置換されてもよい置換基としては、前記Y、Yの脂肪族基の置換基と同様のものが挙げられ、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。
【0043】
一般式(I)におけるRが表す脂肪族基としては、炭素数1〜22の分岐状もしくは直鎖状のアルキル基、炭素数3〜22の分岐状もしくは直鎖状のアルケニル基、または炭素数3〜22の分岐状もしくは直鎖状のアルキニル基が挙げられる。
これらの脂肪族基は、置換基を有してもよく、具体的には前記したY、Yの脂肪族基が置換される置換基と同様のものが挙げられる。
は、好ましくは、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のアルケニル基が挙げられる。
【0044】
一般式(I)においてm+nは3〜10の整数である。この個数内において、一般式(I)で表されるカリックスアレーンの合成が容易である。好ましくは4〜8の整数である。
重合性基結合の単位を表すmは1〜8の整数であり、好ましくは2〜6の整数である。カリックスアレーン分子中に重合性基がこの範囲で存在することにより、光重合を経て製膜されたセルロールアシレートフィルムの膜性(耐脆性、異物がないこと、強度等)が良好となる。
本発明の反応性カリックスアレーン(K)は、従来公知の製造方法に従って製造できる。例えば特開平9−263560号公報、特開2000−256362号公報、同2002−3563号公報、同2002−8807号公報等に記載の方法等が挙げられる。
【0045】
次に、本発明の反応性カリックスアレーン(K)と共重合可能な重合性モノマー(A)について説明する。共重合可能な重合性モノマー(A)はラジカル重合性モノマー(A1)及びカチオン重合性化合物(A2)を包含する。
上記共重合可能な重合性モノマー(A)のうち、ラジカル重合性モノマー(A1)(「ラジカル重合性有機化合物」とも称する)としては、具体的に下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化6】
Figure 2004137395
【0047】
式(II)中、Vは−COO−、−OCO−、−CHOCO−、−CHCOO−、−O−、−CONHCOO−、−CONHCO−、−SO−、−CO−、−CON(Q)−、−SON(Q)−またはフェニレン基(以下フェニレン基をPhで表すこともある。ここで、Phは1,2−、1,3−及び1,4−フェニレン基を含む)を表す。また、Qは、水素原子または炭素数1〜8の置換されていてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、フロロベンジル基、メチルベンジル基、シクロヘキシルメチル基、2−エトキシエチル基、3−メトキシプロピル基等)を表す。好ましいVは、−COO−、−CONH−、−OCO−、−CHOCO−、−CHCOO−、−O−である。
、bは、同じでも異なってもよく、前記式(I)中のa、aと同一の内容を表す。
は、脂肪族基、アリール基または複素環基を表す。具体的には式(I)中のY、Yの脂肪族基、アリール基、複素環基と同一の内容のものが挙げられる。
【0048】
ラジカル重合性モノマー(A1)の他のモノマーとして、例えばビニルシクロアルカン類(ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロペンタン等);スチレン誘導体(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルベンゼンカルボン酸、クロロメチルスチレン、メトキシカルボニルスチレン、メトキシメチルスチレン、ビニルベンゼンカルボキシアミド、ビニルベンゼンスルホアミド等);アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;マレイン酸、イタコン酸の環状酸無水物;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;重合性二重結合基含有のヘテロ環化合物(具体的には、例えば高分子学会編「高分子データハンドブック−基礎編−」、p175〜184、培風舘(1986年刊)に記載の化合物、例えば、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、ビニルチオフェン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルオキサゾリン、ビニルチアゾール、N−ビニルモルホリン等)等が挙げられる。
これらモノマーに対応する繰り返し単位は、モノマーがビニルシクロアルカン類、スチレン及びその誘導体(ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ハロゲン置換スチレン、メトキシスチレン、メトキシカルボニルスチレン等)の場合は、ラジカル重合性モノマー(A1)に由来する全繰り返し単位中の50質量%以下、また、それ以外のモノマーの場合は、30質量%以下占めることが好ましい。
【0049】
次に、カチオン重合性化合物(A2)(以下、「カチオン重合性有機化合物」とも称する)について説明する。
本発明に用いられるカチオン重合性化合物(A2)は、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応及び/または架橋反応を生ずる化合物のいずれもが使用でき、代表例としては、エポキシ化合物、環状エーテル化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。本発明では前記したカチオン重合性有機化合物のうちの1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0050】
カチオン重合性有機化合物の具体例としては、エポキシ基含有の化合物(脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂等)、環状エーテルまたは環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、ビニルオキシ基含有のビニルエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和炭化水素化合物(ビニル炭化水素化合物)等を挙げることができる。
【0051】
上記した中でも、本発明では、カチオン重合性有機化合物として、エポキシ基、ビニルオキシ基含有の化合物(以下「ビニル化合物」とも称する)が好ましく用いられ、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物、1分子中に2個以上のビニルオキシ基を有するポリビニルオキシ化合物、1分子中に少なくともエポキシ基とビニルオキシ基を各々一個以上有する化合物、がより好ましく用いられる。特に、カチオン重合性有機化合物として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式ポリエポキシ化合物を含有し且つ該脂環式ポリエポキシ化合物の含有量がエポキシ化合物の全質量に基づいて30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であるエポキシ化合物(エポキシ化合物の混合物)を用いると、カチオン重合速度、厚膜硬化性、解像度、紫外線透過性などが一層良好になり、しかも樹脂組成物の粘度が低くなって製膜が円滑に行われるようになる。
【0052】
上記した脂環族エポキシ樹脂としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、或いは不飽和脂環族環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、ジシクロオクテン、トリシクロデセン等)含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。
【0053】
また、上記した脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。さらに、前記のエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどを挙げることができる。信越シリコーン社製のK−62−722や東芝シリコーン社製のUV9300等のエポキシシリコーン、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.28,497(1990)に記載されているシリコーン含有エポキシ化合物のような多官能エポキシ化合物を挙げることができる。
【0054】
また、上記した芳香族エポキシ樹脂としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価または多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のモノまたはポリグリシジルエーテルを挙げることができる。これらのエポキシド化合物として、例えば、特開平11−242101号公報中の段落番号〔0084〕〜〔0086〕記載の化合物、特開平8−277320号公報の段落番号〔0016〕〜〔0029〕記載の化合物、特開平10−158385号公報の段落番号〔0044〕〜〔0046〕記載の化合物等が挙げられる。
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0055】
環状エーテル化合物であるオキセタニル基を含有する化合物としては、分子中に含有されるオキセタニル基の数は1〜10、好ましくは1〜4である。これらの化合物は、エポキシ基含有化合物と併用することが好ましい。
具体的には、例えば特開2000−239309号明細書中の段落番号〔0024〕〜〔0025〕に記載の化合物、J.V.CRIVELLO etal、J.M.S.PUREAPPL.CHEM.、A30、p.173〜187(1993)に記載のシリコン含有のオキセタン化合物等が挙げられる。
スピロオルソエステル化合物としては、例えば特表2000−506908号等記載の化合物を挙げることができる。
【0056】
ビニル炭化水素化合物としては、スチレン、メトキシスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン等のスチレン化合物、ビニルシクロヘキサン、ビニルビシクロヘプテン等のビニル基置換脂環炭化水素化合物、前記ラジカル重合成性モノマーで記載の化合物(Vが−O−に相当の化合物)、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルビニルエーテル等のアルケニルビニルエーテル化合物、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のカチオン重合性窒素含有化合物、ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−ベンゼンジメタノールジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、サゾルシノールジビニルエーテル等の多官能ビニル化合物、Journal of PolymerScience:Part A:Polymer Chemistry,Vol.32,2895(1994)に記載されているプロペニル化合物、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.33,2493(1995)に記載されているアルコキシアレン化合物、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.34,1015(1996)に記載されているビニル化合物、Journal ofPolymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.34,2051(1996)に記載されているイソプロペニル化合物等を挙げることができる。
【0057】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジまたはトリビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0058】
本発明では、上記したカチオン重合性化合物(A2)の1種または2種以上を用いることができ、特に上述のように、ビニルエーテル類、エポキシ化合物やオキセタン化合物におけるオキシラン構造を有するものが光重合反応性や重合体の膜特性が良好になる点で好ましい。
1分子中に2個以上のカチオン重合性基を有する多官能性化合物あるいはそれを30質量%以上の割合で含むカチオン重合性混合物が、カチオン重合性有機化合物(A2)として好ましく用いられる。
【0059】
本発明のセルロースアシレート組成物は、光安定化性能を有する基を含有する重合性基含有モノマー(B)を含有することが好ましい。光安定化性能を有する基を含有する重合性モノマー(B)は、分子中に、前記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも1つの重合性基と、光安定化性能を有する有機残基(以下「光安定化基」と称する)とを含有する化合物であり、従来公知の化合物が挙げられる。
【0060】
ラジカル重合性基を含有する光安定化基を有するモノマー(以下モノマー(B1)と称することもある)は、分子中にラジカル重合性基の1〜2個と光安定化基の1個とを含む化合物が好ましく、ラジカル重合性基を一個含有がより好ましい。
カチオン重合性基を含有する光安定化基を有するモノマー(以下モノマー(B2)と称することもある)は、分子中にカチオン重合性基の1〜10個と光安定化基の少なくとも1個とを含む化合物が好ましく、光安定化基は複数個含有されてもよい。カチオン重合性基を2〜6個含有がより好ましい。
【0061】
光安定化性能を有する化合物(B)としては、例えば、大沢善次郎「高分子材料の劣化と安定化」pp235((株)シ−エムシー、1990年刊)に記載の従来公知のものが挙げられる。これらの化合物の少なくとも一つが置換された有機残基が光安定化基としてあげられる。好ましい光安定化基は、紫外線吸収性化合物を含む有機残基、ヒンダ−ドアミン骨格を含む有機残基である。紫外線吸収性化合物を含む有機残基は、波長370nm以下の紫外線の吸収性に優れ、且つ波長420nm以上の可視光の吸収が小さいものが好ましい。例えばオキシベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾトリアゾール骨格を含む基、トリアジン骨格を含む基、サリチル酸エステル骨格、シアノアクリレート骨格、またはベンゼン骨格を含む基等が挙げられ、特に紫外線の波長が320〜400nmの波長域に吸収性の良好なベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾトリアゾール骨格を含む基、s−トリアジン骨格を含む基が好ましい。
ヒンダードアミン骨格を含む有機残基としては、2−位と6−位にそれぞれ1〜2個のアルキル基を有するピペリジン環、ピペリジン環が挙げられる。特に、少なくとも一個の2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン環を含む有機残基が好ましい。
【0062】
本発明において、光安定化基を含有するモノマー(B)は、紫外線含有モノマーとヒンダードアミン含有モノマーとを共存して用いる、或いは紫外線吸収性基とヒンダードアミン骨格を含有する基とを共に含む光安定化モノマーを用いることがより好ましい。このことにより、一層の耐光性が得られる。
【0063】
具体的には、例えばベンゾフェノン系モノマーとして、米国特許4304895号、同3162676号、特開平10−1517号公報、同10−60307号公報、同10−316726号公報、同10−182743号公報、特開2001−139640号公報、同2001−139924号公報等に記載の化合物等、また、ベンゾトリアゾール系モノマーとして、例えば、ANDRES S.、CHONGLI Z.、OTTO V.、J.M.S.−PUREAPPL.、A30(9&10)、pp.741〜755(1993)、 米国特許3493539号、同4528311、特開平2−63463号公報、同8−311045号公報、同9−3133号公報、同9−5929号公報、同9−194536号公報、同10―60307号公報、国際公開94/24112号公報、特開2001−114841号公報、同2001−139924号公報等の記載の化合物、他の紫外線吸収性基含有のモノマーとして、特開平7−258166号、同8−188737号に記載の化合物が挙げられる。
【0064】
ヒンダードアミン骨格を含むモノマーとして、例えば、特開平7−70067号、同9−3133号、同10−279832、同10−235992号、同11−138729号、特表平10−116883号、特開2001−114841号等の各公報記載の化合物が挙げられる。
【0065】
例えば、紫外線吸収性モノマー(BU1)として、下式(BU1−I)で表される、紫外線吸収有機残基を含有するラジカル重合性モノマーが挙げられる。
【0066】
【化7】
Figure 2004137395
【0067】
式(BU1−I)中、V、b及びbは、各々前記一般式(II)と同義である。
及びbは、いずれか一方が水素原子であることが好ましく、水素原子以外の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基が特に好ましい。
は−V−と−Uとを連結する基を表し、単結合または2価の連結基を示す。2価の連結基としては、総原子数1〜22個の連結基(ここでいう総原子数には、炭素原子、窒素原子またはケイ素原子に結合する水素原子を除く)が挙げられる。好ましくは、Lは下記式(L2a)〜(L2d)で表されるピペリジン骨格を表す。中でも、L全体の水素原子を含まない連結にかかわる原子数が1〜20個の範囲で、且つ少なくとも一個のピペリジン骨格を含有する連結基であることがより好ましい。
【0068】
【化8】
Figure 2004137395
【0069】
式(L2a)〜(L2d)中、rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、r及びrは同じでも異なってもよく、各々水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0070】
上記式(BU1−I)中、Uは1価の紫外線吸収基含有基を示す。
紫外線吸収基含有基は、ベンゾフェノン骨格、サリチル酸骨格、ベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、またはベンゼン骨格を含む基であることが好ましく、特にベンゾフェノン骨格を含む1価の基またはベンゾトリアゾール骨格を含む1価の基が好ましい。
【0071】
【化9】
Figure 2004137395
【0072】
重合性基は、上記の式(U1−I)及び(U1−II)で示される骨格の各々のベンゼン環、ベンゾトリアゾール環、s−トリアジン環のいずれに存在していてもよい。ベンゾトリアゾール環の2位に1つのベンゼン環が結合している骨格を有する、しかもこのフェニル基の2位に水酸基を有するものが好ましい。また、重合性基を含有する基は2個以上存在していてもよいが好ましくは1個存在する。
【0073】
上記の各骨格の重合性基を含有する基の存在しない位置には置換基が1個以上存在していてもよい。その置換基としては、前記一般式(I)のY,Yに記載の置換基と同様のものが挙げられる。好ましい置換基としては、炭素数1〜18のアルキル(より好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは1〜2のアルキル)、アリール(より好ましくは炭素数6〜20の、さらに好ましくはフェニル基)、ヘテロアリール(より好ましくはピロロ、フリルもしくはチエニル)、アリールオキシ(より好ましくは炭素数6〜20のアリールオキシ)、アルコキシ(より好ましくは炭素数1〜6、さらに好ましくは1〜2のアルコキシ)、シアノ、ニトロ、またはハロゲン(より好ましくはFまたはCl、特にベンゾ環上の5位及び/または6位上に、及び/またはヒドロキシ置換フェニルの5’位上にClを有するものが好ましい)等が挙げられる。また、ベンゾ環の置換基として、それに縮合した環、例えば、ベンゾ、ピロロ、フリルまたはチエニル環を挙げることができる。置換基アルキル及びアルコキシのいずれもが、1〜5個の、好ましくは1〜2個の介在する酸素原子、イオウ原子または窒素原子を有していてもよい。
【0074】
ヒンダードアミン骨格を含有するモノマー(以下、モノマー(BH)と称することもある)は、2、6−テトラアルキルピペリジン骨格の1−位、3−位、4−位、5−位のいずれかの置換位置に直接または連結基を介して重合性基が結合してなる化合物である。例えば、下記一般式(BH−I)で示される。
【0075】
【化10】
Figure 2004137395
【0076】
式(BH−I)中のUは、下記式(U2−I)または(U2−II)を表す。
【0077】
【化11】
Figure 2004137395
【0078】
式(U2−I)及び(U2−II)中、d11及びd12は、同じでも異なってもよく、炭素数1〜4のアルキル基を表すか、またはd11及びd12は一緒になってペンタメチレン基を表す。d13は、水素原子またはシアノ基を表す。
21は、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、―C(=O)R23基(R23は、炭素数1〜18の炭化水素基)、―OCOR23基、または−OR23基を表す。
22は、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、または−OR23基を表す。
尚、上記R21及びR23の炭化水素基は、置換されてもよく、具体的には前記一般式(I)中のY、Yの炭化水素基と同一の内容を表す。
は、酸素原子またはイミノ基を表し、Yは、酸素原子、メチン基または「―L―」に直結する基を表す。
【0079】
また、ベンゾフェノン系重合性化合物及びベンゾトリアゾール系重合性化合物以外の式(BU1−I)で表される化合物としては、(2−シアノ−2−エチル−3,3−ジフェニル−ヘキシル)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0080】
本発明における、上記ラジカル重合性基含有の光安定化基を有するモノマー(B1)はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。モノマー(B1)の種類は必要に応じて適宜変更されうる。
【0081】
一方、カチオン重合性基含有の光安定化基を有するモノマー(B2)としては、分子中に1〜10個、好ましくは2〜6個のカチオン重合性基を含有するものが挙げられる。具体的には、上記式(BU1−I)または(BH−I)で表される〔C(b)H=C(b)−V−〕の代わりにエポキシ基またはビニルオキシ基を結合された化合物が挙げられる。好ましくは、上記「−U」の化学構造中の水素原子または水素原子以外の置換基に代えた該カチオン重合性基を複数含有する。
【0082】
また、本発明の光安定化基を含有する重合性化合物は、分子内に重合性基として、上記したようなラジカル重合性基及びカチオン重合性基の両方を含有していても良い。
【0083】
以下に、上記の紫外線吸収性基とヒンダートアミン基を含有する重合性化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されない。
【0084】
【化12】
Figure 2004137395
【0085】
【化13】
Figure 2004137395
【0086】
本発明のセルロースアシレート溶液(組成物)には、帯電防止能を有する置換基(帯電防止性基)を有する重合性化合物を更に共存して製膜することが好ましい。
帯電防止性基としては、帯電防止性或いはイオン導電性の作用を有するとして知られる従来公知の有機性化合物から成るものが挙げられる。
例えば、ポリオキソアルキレン基、4級アンモニウム塩の基、ホスホニウム塩の基、ホスホン酸塩の基、スルホン酸塩の基等が挙げられる。セルロースアシレートドープ組成物への溶解性、フィルムの帯電防止性能、湿度変化での帯電防止性の安定性等から、4級アンモニウム塩の基、ホスホニウム塩の基が好ましい。
【0087】
これらモノマーの具体例として、
(1)ポリオキソアルキレン基を含有するモノマー:特開平7−238115号公報、特開平8−311435号公報、同9−78056号公報、同11−194448号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0088】
(2)アルキル4級アンモニウム塩或いは含窒素複素環式4級アンモニウム塩の基を含有するモノマー:特開平6−160327号公報明細書中の段落番号〔0030〕〜〔0053〕記載の化合物、同7−118480号公報明細書中の段落番号〔0032〕〜〔0036〕に記載の繰り返し単位に相当する化合物、同7−179071号公報明細書中の段落番号〔0010〕、特表2001−507380号公報等が挙げられる。
【0089】
(3)ホスホニウム塩の基を含有するモノマー:特開平6−200239号公報明細書中の段落番号〔0012〕〜〔0014〕記載の化合物、同10−219233号公報明細書中の段落番号〔0011〕記載の化合物、同7−179071号公報等が挙げられる。
【0090】
また、帯電防止性基を有するカチオン重合性モノマーとしては、紫外線吸収性基含有モノマーの場合と同様にラジカル重合性基に代えて該カチオン重合性基が結合してなるものが挙げられる。
【0091】
更に、本発明のセルロースアシレート組成物は、分子内に2個以上のラジカル重合性基を含有する多官能モノマー(C)を含有してもよい。
多官能モノマー(C)としては、前記一般式(II)中の[CH(b)=C(b)−V−]と同様の末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。より好ましくは分子中に2〜10個、さらに好ましくは2〜6個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、またはそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。これら 多官能モノマー(C)は、モノマー(A)と共重合可能なラジカル重合性基から選ばれることが好ましい。
多官能モノマー(C)は、モノマー(A)の総使用量に対して、1質量%〜80質量%が好ましく、3質量%〜50質量%がより好ましい。
【0092】
モノマー及びその共重合体の例として従来公知の化合物が挙げられ、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類との単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0093】
カチオン重合性基含有化合物としては、1分子中のカチオン重合性基の数は2〜10個が好ましく、特に好ましくは3〜5個である。該カチオン重合性基含有化合物の分子量は3000以下であり、好ましくは200〜2000の範囲、特に好ましくは400〜1500の範囲である。分子量が小さすぎると、皮膜形成過程での揮発が問題となり、大きすぎると、セルロースアシレートドープ組成物との相溶性が悪くなり好ましくない。
【0094】
カチオン重合性基を有する多官能性化合物は前記カチオン重合性化合物と同一の内容のもの、特開平8−277320号公報記載のエポキシ化合物、特開2002−29162号公報記載のビニルオキシ基含有化合物等が挙げられる。
また、本発明の多官能性化合物は、上記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも各1種を少なくとも分子内に含有する化合物を用いることが好ましい。例えば、特開平8−277320号公報中の段落番号〔0031〕〜〔0052〕記載の化合物、特開2000−191737号公報中の段落番号〔0015〕記載の化合物等が挙げられる。本発明に供される化合物は、これらの限定されるものではない。
【0095】
本発明のセルロースアシレート組成物は、セルロースアシレートドープ組成物の粘度、反応速度、得られる製膜フィルムの力学的特性などの点から、上記したラジカル重合性有機化合物とカチオン重合性有機化合物とを、ラジカル重合性有機化合物:カチオン重合性有機化合物の質量比で、90:10〜20:80の割合で含有していることが好ましく、80:20〜30:70の割合で含有していることがより好ましい。
【0096】
本発明における全ての重合性基含有の化合物総量は、セルロースアシレート溶液全組成物(固形分)に対して、0.1質量%〜50質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.5質量%〜20質量である。
本発明の反応性カリックスアレーン(K)は、重合性基含有の化合物総量の好ましくは1質量%〜99質量%、より好ましくは5質量%〜90質量%、さらに好ましくは10質量%〜80質量%を占める。また、重合性モノマー(A)は、重合性基含有の化合物総量の好ましくは1質量%〜99質量%、より好ましくは5質量%〜90質量%、さらに好ましくは10質量%〜80質量%を占める。
また、[反応性カリックスアレーン(K)/重合性モノマー(A)]の質量比が、(5/95)〜(90/10)の範囲であることが好ましい。この範囲で、均一な面状の透明性良好で、充分な膜強度のフィルムが得られる。
【0097】
次に、本発明のセルロースアシレート組成物に用いられる光重合開始剤(L)について詳述する。
本発明の光重合開始剤(L)は、光照射により、ラジカル若しくは酸を発生する化合物である。本発明において用いられる光重合開始剤(L)は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0098】
まず、光照射により、ラジカルを発生する化合物(L1)について詳述する。
本発明において好適に用いられるラジカルを発生する化合物(L1)は、光照射によりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物である。
公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることとができる。また、ラジカルを発生する化合物は、単独または2種以上を併用して用いることができる。
ラジカルを発生する化合物としては、例えば、アミン化合物(特公昭44−20189号公報記載)、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン化合物等が挙げられる。
【0099】
上記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号、、M.P.Hutt”Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S−トリアジン化合物が挙げられる。
【0100】
より好適には、少なくとも一つのモノ、ジ、またはトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0101】
他の有機ハロゲン化合物の例として、特開平5−27830号公報公報中の段落番号〔0039〕〜〔0048〕記載のケトン類、スルフィド類、スルホン類、窒素原子含有の複素環類等が挙げられる。
【0102】
上記カルボニル化合物としては、例えば、「最新 UV硬化技術」60〜62ページ((株)技術情報協会刊、1991年)、特開平8−134404号公報の段落番号〔0015〕〜〔0016〕、同11−217518号公報の段落番号〔0029〕〜〔0031〕に記載の化合物等が挙げられ、アセトフェノン系、ヒドロキシアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサン系、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、ベンジルジメチルケタール、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
上記有機過酸化化合物としては、例えば、特開2001−139663号公報の段落番号〔0019〕に記載の化合物等が挙げられる。
【0103】
上記メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0104】
上記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各公報記載の種々の化合物等が挙げられる。
【0105】
上記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martin”Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物があげられる。例えば、前記特開2002−116539号公報の段落番号〔0022〕〜〔0027〕記載の化合物が挙げられる。
【0106】
他の有機ホウ素化合物として、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0107】
上記スルホン化合物としては、特開平5−239015号公報に記載の化合物等、上記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号公報に記載の一般式(II)及び一般式(III)で示される化合物等が挙げられる。
【0108】
これらのラジカル発生化合物は、一種のみを添加しても、二種以上を併用してもよい。添加量としては、光ラジカル重合性モノマーの全量に対し0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは1〜20質量%で添加することができる。この範囲において、ドープ組成物の経時安定性が問題なく高い重合性となる。
【0109】
次に、光重合開始剤(L)として用いることができる酸発生剤(L2)について詳述する。
酸発生剤(L2)としては、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いは、マイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等、公知の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。
酸発生剤としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物、が挙げられる。有機ハロゲン化合物、ジスルホン化合物のこれらの具体例は、前記ラジカルを発生する化合物の記載と同様のものが挙げられる。
【0110】
オニウム化合物としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、イミニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アルソニウム塩、セレノニウム塩等が挙げられ、例えば特開2002−29162号公報の段落番号〔0058〕〜〔0059〕に記載の化合物等が挙げられる。
【0111】
本発明において、特に好適に用いられる酸発生剤としては、オニウム塩が挙げられ、中でも、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が、光重合開始の光感度、化合物の素材安定性等の点から好ましい。
【0112】
酸発生剤の他の例としては、特開2002−29162号公報の段落番号〔0059〕〜〔0062〕に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、光分解してスルホン酸を発生する化合物(イミノスルフォネート等)等の化合物が挙げられる。
【0113】
これらの酸発生剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの酸発生剤は、全重合性化合物の全質量100質量部に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜20質量%、特に好ましくは1〜15質量%の割合で添加することができる。添加量が上記範囲において、ドープ組成物の安定性、重合反応性等から好ましい。
【0114】
また、本発明のセルロースアシレートドープ溶液(組成物)は、ラジカル重合性有機化合物及びカチオン重合性有機化合物の合計質量に対して、ラジカル重合開始剤を0.5〜10質量%及びカチオン重合開始剤を1〜10質量%の割合で含有していることが好ましい。より好ましくは、ラジカル重合開始剤を1〜5質量%、及びカチオン重合開始剤を2〜6質量%の割合で含有する。
更に、上記の光重合開始剤とともに、従来公知の増感剤、増感助剤を用いることもできる。
【0115】
本発明では、耐傷性やフィルムの搬送性を良好に保持するためにセルロースアシレート組成物に微粒子を添加するのが好ましい。
それらは、マット剤、ブロッキング防止剤あるいはキシミ防止剤と称されて従来から利用されている。それらは、前述の機能を呈する素材であれば特に限定されないが、これらのマット剤の好ましい具体例は、無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましい。
又、表面処理された無機微粒子もセルロースアシレート中への分散性が良好となり好ましい。処理法としては、例えば、特開昭54−57562号公報に記載の方法が挙げられる。粒子としては、例えば、特開2001−151936号公報に記載のものが挙げられる。
有機化合物としては、例えば、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、なかでも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂のなかでも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましい。
【0116】
本発明のセルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開平2001−151901号などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。さらにこれらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、セルロールアシレート全組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
【0117】
次に、本発明のセルロースアシレートを溶解する有機溶媒について記述する。
用いる溶媒としては、低級脂肪族炭化水素の塩化物や低級脂肪族アルコールが一般に使用される。低級脂肪族炭化水素の塩化物の例には、メチレンクロライドを挙げることができる。低級脂肪族アルコールの例には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びn−ブタノールが含まれる。その他の溶媒の例としては、ハロゲン化炭化水素を実質的に含まない、アセトン、炭素原子数4から12までのケトン(例えばメチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン等)、炭素原子数3〜12のエステル(例えばギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル及び2−エトキシ−エチルアセテート等)、炭素原子数1〜6のアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、t−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等)、炭素原子数3〜12のエーテル(例えばジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等)、炭素原子数5〜8の環状炭化水素類(例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等)が挙げられる。本発明においては、以上のような溶媒の中で、塩化メチレン、アセトン、酢酸メチル及びジオキソランの中から選ばれる溶媒またはこれらの混合物を主溶媒とすることが好ましい。
【0118】
また、溶媒には、酢酸メチルを主溶媒に用いて、更にケトン類、アルコール類を添加した混合溶媒をドープ調製溶媒に用いることが、セルロースアシレートの溶解性の点から好ましい。この場合、酢酸メチルを20〜90質量%、ケトン類を5〜60質量%、アルコール類を5〜30質量%の混合比で用いることが好ましい。
また、メチレンクロライドのようなハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒系として、例えば、特開2002−146043号公報の段落番号〔0021〕〜〔0025〕、特開2002−146045号公報の段落番号〔0016〕〜〔0021〕等に記載の溶媒系の例が挙げられる。
【0119】
本発明のセルロースアシレートは、有機溶媒に10〜30質量%溶解している溶液であることが好ましく、より好ましくは13〜27質量%であり、特に好ましくは15〜25質量%溶解しているセルロースアシレート溶液である。これらの濃度にセルロースアシレートを調整する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように調整してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法でも上記濃度になるように調整されれば特に問題ない。
【0120】
本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組合せで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号公報、特開昭61−106628号公報、特開昭58−127737号公報、特開平9−95544号公報、特開平10−95854号公報、特開平10−45950号公報、特開2000−53784号公報、特開平11−322946号公報、さらに特開平11−322947号公報、特開平2−276830号公報、特開2000−273239号公報、特開平11−71463号公報、特開平04−259511号公報、特開2000−273184号公報、特開平11−323017号公報、特開平11−302388号公報などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0121】
本発明のセルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率がある範囲であることが好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定した。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで 40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度 η (Pa・sec)及び−5℃の貯蔵弾性率 G’(Pa)を求めた。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。本発明では、40℃での粘度が1〜300Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が1万〜100万Paである。
【0122】
次に、本発明のセルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、セルローストリアセテートフィルム製造に供するドラム方法若しくはバンド方法と称される、従来公知の溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。バンド法を例として製膜の工程を説明すると、溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組合せはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
【0123】
ここで、本発明においては流延部の空間温度は特に限定されないが、−50〜50℃であることが好ましい。更には−30〜40℃であることが好ましい。特に低温での空間温度により流延されたセルロースアシレート溶液は、支持体の上で瞬時に冷却されゲル強度アップすることでその有機溶媒を含んだフィルムを保持することができる。これにより、セルロースアシレートから有機溶媒を蒸発させることなく、支持体から短時間で剥ぎ取りことが可能となり、高速流延が達成できるものである。なお、空間を冷却する手段としては通常の空気でもよいし窒素やアルゴン、ヘリウムなどでもよく特に限定されない。またその場合の湿度は0〜70%RHが好ましく、さらには0〜50%RHが好ましい。また、本発明ではセルロースアシレート溶液を流延する流延部の支持体の温度が−50〜130℃であり、好ましくは−30〜25℃である。流延部を本発明の温度に保つためには、流延部に冷却した気体を導入して達成してもよく、あるいは冷却装置を流延部に配置して空間を冷却してもよい。この時、水が付着しないように注意することが重要であり、乾燥した気体を利用するなどの方法で実施できる。
【0124】
流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及びまたは逐次共流延しても良い。
【0125】
上記のような二層以上の複数のセルロースアシレート溶液を共流延する方法としては、例えば、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させる方法(例えば、特開平11−198285号公報記載の方法)、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延する方法(特開平6−134933号公報記載の方法)、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出す方法(特開昭56−162617号公報記載の方法)等が挙げられる。本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0126】
得られたフィルムを支持体(バンド)から剥ぎ取り、更に乾燥させる。乾燥工程における乾燥温度は40〜250℃、特に70〜180℃が好ましい。
更に残留溶媒を除去するために、50〜160℃で乾燥させ、その場合逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましい。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載されている。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することができる。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選ぶことができる。最終仕上がりフィルムの残留溶媒量は2質量%以下、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性良好なフィルムを得る上で好ましい。これらの乾燥工程の具体的な方法は、例えば、前述の発明協会公開技報に記載の従来公知の方法及び装置のいずれを用いてもよく、特に限定されるものではない。
【0127】
本発明において光照射する工程は、ドープを流延してから乾燥が終了するまでの間の任意の場所で行えばよいが、特にドープ膜が支持体上にあるときに光照射することが好ましい。光照射の光源は、紫外線光のものであればいずれでもよく、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド灯、キセノン灯、太陽光等が挙げられる。波長350〜420nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化照射等を採用して用いることもできる。
【0128】
紫外線照射による光重合は、空気または不活性気体中で行うことができるが、ラジカル重合性化合物の重合の誘導期を短くするか、または重合率を十分に高める等のために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。照射する紫外線の照射強度は、0.1〜100mW/cm程度が好ましく、ドープ膜表面上での光照射量は100〜1000mJ/cmが好ましい。また、光照射工程でのドープ膜の温度分布は、均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、ドープ膜の面内及び層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
【0129】
本発明に従い製造されるフィルムの厚さは、5〜500μmであることが好ましく、15〜300μmであることが更に好ましく、20〜200μmであることが最も好ましい。
【0130】
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層及びバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10−3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
【0131】
アルカリ鹸化処理は、鹸化液を塗布することで行ことも好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には例えばWO02/46809号公報等に記載の方法が挙げられる。
【0132】
フィルムと乳剤層との接着を達成するために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースアシレートフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。これらの下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁に記載されている。また本発明のセルロースアシレートフィルムの機能性層についても各種の機能層が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている。
【0133】
本発明で作製されたセルロースアシレートの用途についてまず簡単に述べる。本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
【0134】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると特に効果がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。セルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(△n)とセルギャップ(d)との積(△nd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置またはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。
【0135】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。以上述べてきたこれらの詳細なセルロースアシレートフィルムの用途は発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて45頁〜59頁に詳細に記載されている。
【0136】
【実施例】
以下に本発明のセルロースアシレートについての具体的な実施例を記述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0137】
実施例1及び比較例1
<セルローストリアセテートフィルムの製造>
(実施例1)
(セルローストリアセテート溶液(D−1)の調製)
攪拌羽根を有するステンレス製溶解タンクに、下記の溶媒混合溶液によく攪拌しつつ、セルローストリアセテート粉体(平均サイズ2mm)を徐々に添加してドープを調製した。添加後、室温(25℃)に1時間放置後、35℃に3時間維持してセルローストリアセテートを膨潤させた。なお、溶媒である酢酸メチルとメチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n−ブタノールは、すべてその含水率が0.2質量%以下のものを利用した。
実施例1のドープの調製に用いた各成分の成分比を下記に示す。
【0138】
Figure 2004137395
【0139】
【化14】
Figure 2004137395
【0140】
つぎに、このドープは弱い超音波照射することで泡抜きを実施した。脱泡したドープは1.5MPaに加圧した状態で、最初公称孔径5μmの焼結金属フィルターを通過させ、ついで同じく2.5μmの焼結金属フィルターを通過させた。それぞれの1次圧、1.5、1.2であり、2次圧はそれぞれ1.0、0.8MPaであった。濾過後のドープの温度は35℃に調整してステンレス製のストックタンク内に貯蔵した。ストックタンクは中心軸にアンカー翼を有して周速0.3m/secで常時攪拌された。
【0141】
(フィルム製膜)
上記の溶解法で得られたドープを40℃にし、流延ギーサーを通して表面温度20℃とした鏡面ステンレス支持体上に流延して製膜した。
バンド上に流延されたドープは、最初に平行流の乾燥風を送り乾燥した。乾燥する際の乾燥風からのドープへの総括伝熱係数は24kcal/m・hr・℃であった。乾燥風の温度はバンド上部で140℃、下部で100℃した。
流延後5秒間は遮風装置により乾燥風が直接ドープに当らない様にし、その後、2kW高圧水銀灯を用いて、ドープ表面の全光照射量が500mJ/cmとなる条件で光照射した。しかる後に、多数のロールを有する乾燥ゾーンを搬送することで、厚さ70μmのセルロースアセテートを作製した。
【0142】
(比較例1)
実施例1のセルローストリアセテート溶液(D−1)の調製における組成分において、反応性カリックスアレーン(K−1)を除き、メチルメタクリレートを1.85質量部とした他は、実施例1と同様にして乾燥後の膜厚70μmのセルロースアセテ−トフィルムを作製した。
【0143】
<偏光子の作製>
PVAフィルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/Lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/Lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、テンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱して巻き取った。延伸開始前のPVAフィルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であった。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
得られた編光子の550nmにおける透過率43.7%、偏光度は99.97%であった。
【0144】
<偏光板の作製>
上記の各製膜したセルローストリアセテートフィルムを55℃の1.5N NaOH水溶液に1分間浸漬して両面を鹸化した後、希硫酸及び水で十分洗浄し、乾燥後それぞれのセルローストリアセテート側にポリビニルアルコール系粘着材を約30μmの厚みに塗布し、上記偏光子の両側に貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して偏光板を作成した。
【0145】
<結果>
上記の得られたセルローストリアセテートフィルム及び偏光板の性能の結果を表−Cに記載した。
【0146】
【表1】
Figure 2004137395
【0147】
表−C記載の評価項目の評価方法は以下の通りにして行った。
(1)膜の離型性
セルローストリアセテートフィルムの製膜実験中において、流延バンドからの製膜フィルムの離型性を目視観察した。
○:流延バンドから問題なく離型出来る。
×:流延バンド上に付着現象を生じ、離型されない。
【0148】
(2)ヘイズ
セルローストリアセテートフィルムのヘイズは、日本電色工業(株)製、1001DP型を用いて、90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその前後で調べた。
A:初期の値
B:経時後の値
【0149】
(3)引き裂き強度
セルローストリアセテートフィルムの引き裂き強度は、東洋精機製作所製軽過重引き裂き強度試験器を用い、ISO6383/2−1983に従って引き裂きに要する過重を評価した。90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその前後で調べた。試料サイズは50mm×64mm、25℃60%RHで2時間調整した後に実施した。
A:初期の値
B:経時後の値
【0150】
(4)異物・汚れ
セルローストリアセテートフィルムから全幅で長手方向に1mの長さに切り出し、この試料にシャーカステン上で光を透過させながらルーペで異物・汚れの有無及び大きさを観察し、下記グレードで評価した。
A:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、観察された50μm未満のものは10個以下である。
B:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが11〜30個観察された。
C:50μm以上の大きさの異物、汚れが1〜10個観察され、50μm以下のものが31〜50個観察された。
D:50μm以上の大きさの異物、汚れが11〜30個観察され、50μm以下のものが51〜99個観察された。
E:50μm以上の大きさの異物、汚れが31個以上観察され、50μm以下のものが100個以上観察された。
【0151】
(5)耐候性
各セルローストリアセテートフィルムをキセノンランプ2万ルックス、1カ月の光劣化試験(強制評価)を実施した。光劣化試験の前と後とのヘイズ値を測定し、その値の増加の有無を下記のグレードで評価した。
◎:変化が0.3%未満。
○:変化が0.3%以上で0.6%未満。
△:変化が0.6%以上で1.0%未満。
×:変化が1.0%以上。
【0152】
(6)偏光度
偏光板の偏光度は、分光光度計により可視領域における並行透過率Yp、直行透過率Ycを求め、次式に基づき偏光度Pを決定した。
P=〔(Yp−Yc)/(Yp+Yc)〕1/2
【0153】
(7)耐久性
偏光板から150mm×150mmの大きさの試料を2枚切り出し、(50℃/80%RH)の条件下に100時間曝し、クロスニコルにより偏光板の縁に発生する白抜けの面積を全体の面積に対する面積比として観察して、下記のグレードで評価した。
◎:白抜け部分が全くなかった。
○:白抜けが全体の面積に対して2%未満。
○〜△:白抜け部分が全体の面積に対して2%以上6%未満。
△:白抜け部分が全体の面積に対して5%以上10%未満。
×:白抜け部分が全体の面積に対して10%以上あった。
【0154】
本発明の実施例1のセルローストリアセテートフィルムの光学特性(ヘイズ値、異物・汚れ、等)、膜の強度(引き裂き強度)及び耐候性は良好であり、それらを用いて作製した偏光板も、偏光度、耐久性は良好であった。
一方、比較例1のセルローストリアセテートフィルムは、ヘイズ値が強制経時でやや低下し、引き裂き強度及び耐候性において低い値を示した。また、偏光板とした場合にも耐久性が不充分であった。
以上の様に、本発明のセルローストリアセテートフィルム及びそれを用いた偏光板は、優れた性能を示した。
【0155】
(実施例2〜6)
実施例1におけるセルローストリアセテートフィルム溶液(D−1)において、反応性カリックスアレーン(K−1)、モノマー(A−1)及び光重合開始剤(L−1)の代わりに、下表−Dの各化合物を同量づつ用いた他は、実施例1と同様にして、乾燥後の膜厚80μmの各セルローストリアセテートフィルム、更に各偏光板を作製した。
【0156】
【表2】
Figure 2004137395
【0157】
【表3】
Figure 2004137395
【0158】
得られた実施例2〜6の各セルローストリアセテートフィルム及び各偏光板を、実施例1と同様にして性能と評価を行った。各実施例のものは、実施例1と同等以上の性能を示し、良好であった。
【0159】
(実施例7)
(セルローストリアセテート溶液(D−7)の調製)
実施例1におけるセルローストリアセテート溶液の代わりに、下記組成で実施例1と同様にしてセルローストリアセテート溶液(D−7)を得た。
セルローストリアセテート(置換度2.82、6位アセチル基の置換度0.9
3、粘度平均重合度320、含水率0.2質量%)     20質量部
ジクロロメタン                    62質量部
アセトン                        5質量部
メタノール                       6質量部
ブタノール                       5質量部
可塑剤(C):ジペンタエリスリトールヘキサアセテート  0.7質量部
シリカ微粒子(粒径20nm)              0.1質量部
反応性カリックスアレーン(K−7)          0.50質量部
重合性モノマー:ペンタエリスリトールテトラアクリレート0.20質量部
下記光安定化モノマー(B−1)            0.30質量部
下記光安定化モノマー(B−2)            0.25質量部
下記光重合開始剤(L−7)              0.15質量部
増感助剤:N−フェニルグリシン           0.008質量部
【0160】
【化15】
Figure 2004137395
【0161】
【化16】
Figure 2004137395
【0162】
次に、上述したセルローストリアセテート溶液をスクリュー押し出し機で送液して、−70℃に保ち10分間かけて冷却しながら通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の冷媒(3M社製、 『フロリナート』を用いて実施した。そして、冷却により得られた溶液は、静止型混合器を設置した熱交換器により120℃まで温度を上昇させ、3分間保持した後冷却し50℃としてステンレス製の容器に移送し、50℃で2時間攪拌し脱泡を行った。この後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、『#63』 )で濾過し、さらに、絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ボール社製、『FH 025』 )にて濾過し、セルローストリアセテート溶液を調製した。
【0163】
(フィルム製膜)
実施例1と同様にして、膜厚60μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0164】
(偏光板の作製)
上記のフィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光板を作製した。得られたフィルム及び偏光板の性能について、実施例1と同様に評価した。その結果を表−Eに記載した。
【0165】
【表4】
Figure 2004137395
【0166】
表4に示される結果の様に、本発明のセルロースアセテートフィルムは、膜の離型性に全く問題がなく、ヘイズ値も小さくて、異物・汚れも見られなかった。また、引き裂き強度及び耐候性も極めて良好であった。偏光板の性能も良好であった。
【0167】
(実施例8〜11)
実施例7において、セルローストリアセテート溶液(D−7)の光安定化モノマー(B−1)及び(B−2)の代わりに下記表−F記載の各光安定化モノマーを用いた他は、実施例7と同様にして、セルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
【0168】
得られたセルローストリアセテートフィルム及び偏光板の性能を、実施例1と同様にして評価した結果、実施例1と同等以上の良好なものであった。
【0169】
【表5】
Figure 2004137395
【0170】
(実施例12〜14)
実施例7において、セルローストリアセテート溶液(D−7)の反応性カリックスアレーン(K−7)、重合性モノマー(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)及び光重合開始剤(L−7)の代わりに、下記構造の反応性カリックスアレーン(K−8)、重合性モノマー及び光重合開始剤(L−8)を各同量用い、また、光安定化モノマー(B−1)及び(B−2)の代わりに下記表−Gの光安定化モノマーを用いた他は、実施例7と同様にしてセルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
【0171】
【化17】
Figure 2004137395
【0172】
【表6】
Figure 2004137395
【0173】
得られたセルローストリアセテートフィルム及び偏光板の性能を、実施例1と同様にして評価した結果、実施例7と同等の良好な性能であった。
【0174】
(実施例15〜17)
実施例7のセルローストリアセテート溶液(D−7)において、重合性モノマー、光重合開始剤及び光安定化モノマーの代わりに下記表−H記載の各化合物を用いた他は、実施例7と同様にしてセルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
得られたセルローストリアセテートフィルム及び偏光板の性能を、実施例1と同様に評価した結果、実施例7と同等の良好な性能であった。
【0175】
【表7】
Figure 2004137395
【0176】
(実施例18)
特開平11−316378号公報の実施例1において、その第1透明支持体を本発明の実施例1〜18で得られたセルローストリアセテートフィルム(第2フィルム)の厚さを80μmとしたものに変更する以外は、同公報の(実施例1)と同様にして試料1〜18を作製した。得られた楕円偏光板は、優れた光学特性は優れたものであった。従って、本発明のセルローストリアセテートフィルムが光学偏光板に適応されても問題のない好ましい態様であることが明らかである。
【0177】
(実施例19)
特開平7−333433号公報の実施例1の富士写真フィルム(株)製セルローストリアセテートを、本発明の実施例1,3,7及び15のセルローストリエステルフィルムに変更する以外は、同公報の実施例1と同様にして光学補償フィルターフィルム試料を作製した。得られたフィルターフィルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルローストリアセテートフィルムが、光学的用途として優れたものであることが判る。
【0178】
(実施例20)
本発明の実施例2,5,10及び16の試料を、例えば特開平10−48420号実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置に用いたところ良好な性能が得られた。
【0179】
(実施例21)
実施例7及び17において、フィルム厚さを100μmとする以外は、実施例1と全く同様にして試料を作製した。得られたフィルム(試料)のいずれにも、特開平4−73736号公報の実施例1の(バック層組成)第一層及び第二層を付与し、カチオン系ポリマーを導電性層とするバック層を作製した。更に、得られたバック層を付与したフィルムベースの反対の面に、特開平11−38568号公報の実施例1の試料105を塗布し、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を作製した。得られたいずれのカラーフィルムからも、優れた映像が得られかつその取り扱い性においても問題のないものであった。
【0180】
【発明の効果】
本発明のセルロースアセテートフィルムは、優れた引き裂き強度、耐折強度、光学特性を有し、しかも長期保存安定性良好である。従って、本発明のセルロースアセテートフィルムは、光学フィルム、偏光フィルム、光学補償フィルム、液晶表示材、液晶表示装置、ハロゲン化銀写真感光材料などに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による流延製膜方法を実施する流延製膜ラインの一実施形態の概略図である。
【符号の説明】
11  ミキシングタンク
12  送液ポンプ
13  フィルター
14  流延ダイ
15  流延バンド
16  流延側部回転ドラム
17  非流延部側回転ドラム
18  ガイドロール
19  剥ぎ取りロール
20  ガイドロール
21  巻取りロール
22  乾燥部
23  フィルム

Claims (7)

  1. (i)セルロースアシレート、
    (ii)フェノール性OH基の少なくとも1つが末端に重合性基を有する置換基で置換された反応性カリックスアレーン誘導体(K)、
    (iii)上記反応性カリックスアレーン誘導体(K)と共重合可能な重合性モノマー(A)、及び
    (iv)光重合開始剤(L)
    を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と光照射の工程とを含む一連の工程からなることを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  2. 請求項1に記載の方法により作製されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
  3. セルロースアシレート組成物が、光安定化基を有する重合性モノマー(B)を含有することを特徴とする請求項2に記載のセルロースアシレートフィルム。
  4. 反応性カリックスアレーン誘導体(K)、共重合可能な重合性モノマー(A)、光安定化基を有する重合性モノマー(B)が、各々ラジカル重合及び/またはカチオン重合で重合反応することを特徴とする請求項2または3に記載のセルロースアシレートフィルム。
  5. 請求項2〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする光学フィルム。
  6. 請求項2〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
  7. 膜厚が30〜250μmの請求項2〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを支持体とすることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
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