JP2004135531A - 園芸培土 - Google Patents
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Abstract
【課題】丈夫な根を育てることができる安価な園芸培土、短期間の育苗で生育の優れた苗が得られる育苗用園芸培土、及び土壌病害を防除する放線菌含有園芸培土を提供する。
【解決手段】動物質醗酵物を含有する園芸培土、育苗用である前記園芸培土、及び放線菌を含有する前記園芸培土。
【選択図】 なし
【解決手段】動物質醗酵物を含有する園芸培土、育苗用である前記園芸培土、及び放線菌を含有する前記園芸培土。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は園芸培土に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より培土の原料には腐葉、ピートモス、オガクズ、バーク堆肥、水コケ、厩肥(糞尿と敷きわらの混合物を堆積腐熟させたもの)等の土壌改良が目的の粗大有機質が使用されている。
【0003】
特許文献1や特許文献2には、有機質入り粒状培土が開示されているが、これらに開示されているのはオガクズやモミガラ等の粗大有機質で、造粒性の向上や、透水性、通気性、保水性の向上が目的である。
【0004】
特許文献3には、水稲用育苗培土の有機質として乾血粉が有用であることが開示されており、乾血粉以外の有機質資材、例えば米ぬか、油かす、魚かすなどの有機質資材を生の状態(醗酵及び分解していない状態)で用いると、微生物による分解過程を必要とするため、作物の生育が遅くなってしまうことが開示されている。また、特許文献3には、醗酵済有機質肥料を添加した水稲用育苗培土でコシヒカリを30日間育苗させた試験結果が開示されているが、乾血粉を添加した試験区に比べて、地上部乾物重、地下部乾物重、草丈、根長は、それそれ67.3%、95.9%、82.3%、68.5%に止まり、水稲用育苗培土には、醗酵済有機質肥料が好ましくないことが示されている。
【0005】
特許文献4には、土壌病害防除微生物(ストレプトマイセス・ロシェイ・エスエス・ロシェイA13)を含有する培土が開示されている。しかし微生物の添加方法は、酵母エキス・麦芽エキス培地で培養した株を育苗培土に添加する方法で行われており、微生物を培養した動物質醗酵物を培土に添加する方法は、これまで行われていない。
【0006】
【特許文献1】
特開昭49−5724号公報
【特許文献2】
特開昭51−85914号公報
【特許文献3】
特開2001−286221号公報(例えば、段落0003、段落0011、表2)
【特許文献4】
特開2002−253213号公報(例えば、実施例2)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする第1の課題は、丈夫な根を育てることができる安価な園芸培土を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする第2の課題は、短期間の育苗で生育の優れた苗が得られる育苗用園芸培土を提供することである。
【0009】
更に、本発明が解決しようとする第3の課題は、土壌病害を防除する放線菌含有園芸培土を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、培土には適していないと考えられていた動物質醗酵物を園芸培土に添加して生育試験を行ったところ、生育に優れた園芸培土が得られることを見出し、本願第1の発明を完成させるに至った。
【0011】
また、本発明者らは、この園芸培土にレタス等の種を播種して栽培したところ、短期間で、生育に優れた苗が得られることを見出し、本願第2の発明を完成させるに至った。
【0012】
更に、本発明者らは、この動物質醗酵物に放線菌を添加することにより土壌病害に対して耐候性を有する放線菌含有園芸培土が得られることを見出し、本願第3の発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本願第1の発明は以下の発明を包含する。
(1)動物質醗酵物を含有する園芸培土。
(2)動物質が、魚類(甲殻類、軟骨類を含む)、家畜類、家禽類及び獣類(海獣を含む)から選ばれる少なくとも1種の動物の体の一部又は全部である前記(1)に記載の園芸培土。
(3)動物質醗酵物が、動物質、又は動物質と植物かす類、植物油かす類、ぬか類及びアミノ酸かす類から選ばれる少なくとも1種との混合物を10日間以上醗酵させたものである前記(1)又は(2)に記載の園芸培土。
(4)動物質醗酵物が、肥料取締法で定める有機質肥料の窒素全量に換算して、1mg/培土1リットル以上含有されている前記(1)〜(3)のいずれかに記載の園芸培土。
【0014】
本願第2の発明は以下の発明を包含する。
(5)育苗用である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の園芸培土。
(6)地上部と地下部の両方の生育が優れている前記(1)〜(5)のいずれかに記載の園芸培土。
【0015】
本願第3の発明は以下の発明を包含する。
(7)放線菌を含有する前記(1)〜(6)のいずれかに記載の園芸培土。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、動物質醗酵物を含有する園芸培土に関するものである。以下に本発明を詳細に記載する。
【0017】
本発明の園芸培土は、果樹類、野菜類、花卉類等の園芸作物用の培土として使用することができる。
特に根の生育に優れた苗を育てることができるので、育苗用園芸培土としても有用である。育苗用園芸培土としては、一般の育苗培土の他、セル育苗培土が挙げられる。このセル育苗培土は、機械施用に適しているタマネギ等の根菜類や、レタス、キャベツ等の野菜類に有用である。
【0018】
本発明で使用する動物質醗酵物は、動物質単体を醗酵させたものでも、動物質に他の成分を混合して醗酵させたものでもよい。
本発明で使用する動物質とは、動物の体の一部又は全部を示し、動物の廃棄物、例えば糞尿は除外される。
【0019】
本発明で使用する動物質としては、例えば、魚類(甲殻類、軟骨類を含む)、家畜類、家禽類、獣類(海獣を含む)の体の一部又は全部、或いはこれらの動物を原料にした食品工業、繊維工業、ゼラチン工業等の加工業において副産する動物質が挙げられる。具体的には、魚かす、干魚、魚廃物、魚鱗、甲殻類質、蒸製魚鱗、肉かす、肉骨、蒸製てい角、蒸製てい角骨、蒸製毛、乾血、生骨、蒸製骨、蒸製鶏骨、蒸製皮革、鯨かま底かす、動物内臓、家禽加工くず及びこれらの粉末や副産物等が挙げられる。〔ポケット肥料要覧 農林統計協会発行 参照〕
【0020】
動物質醗酵物は、これらの動物質と、必要に応じて他の資材を混合し、醗酵させることにより得られる。醗酵期間は、通常1週間以上で、以下10日以上、15日以上、20日以上、25日以上、30日以上、35日以上の順に好ましく、40日以上醗酵させることがより好ましい。なお、蛋白質等を多く含む醗酵物の場合は、更に45日以上、50日以上、55日以上の順に醗酵期間を長くすることが好ましく、60日以上醗酵させることが最も好ましい。なお、醗酵が十分でない場合(蛋白質等の未醗酵の有機物が残っている場合)は、苗に生育障害を与えることになるので、注意を要する。動物質醗酵物は、動物質単体を醗酵させても得られるが、動物質と植物質を混合して醗酵させることが望ましい。
【0021】
ここで用いる植物質としては、植物かす類、植物油かす類、ぬか類、アミノ酸かす類やこれらの植物質を原料にした食品工業、繊維工業等の加工業において副産する植物質が挙げられる。具体的には、とうもろこしはい芽、大豆油かす、菜種油かす、わたみ油かす、落花生油かす、あまに油かす、ごま油かす、ひまし油かす、米ぬか油かす、その他の草本性植物油かす、カポック油かす、とうもろこしはい芽油かす、甘草かす、豆腐かす、えんじゅかす、窒素質グアノ、米ぬか、フスマ(麦のぬか)、醗酵米ぬか、醗酵かす、アミノ酸かす、くず植物油かす、草本性植物種子皮殻油かす、木の実油かす、コーヒーかす、くず大豆、たばこくず肥料、乾燥藻、落綿分離かす、よもぎかす、木の皮(バーク等)、稲わら、果樹かす及びこれらの粉末や副産物等が挙げられる。
【0022】
植物質の添加量は、動物質100重量部に対して、通常0〜500重量部、好ましくは0〜300重量部、より好ましくは0〜200重量部で、最も好ましくは50〜150重量部である。
【0023】
なお、必要に応じて、バーミキュライトやゼオライト等の鉱物質、炭類(例:木炭、セラッシュ炭)等の消臭材やそれ以外の第三成分を添加してもよい。第三成分の添加量は特に制限はないが、鉱物質等の第三成分を大量に加えると肥効成分が少なくなるため、動物質醗酵物の添加量を増やす必要がある。通常の園芸培土として使用する場合の鉱物質の添加量は、動物質100重量部に対して通常300重量部以下で、好ましくは100重量部以下、より好ましくは50重量部以下、最も好ましくは10重量部以下である。
【0024】
動物質醗酵物の添加量は、肥料取締法で定める有機質肥料の窒素全量〔ケルダール法によって供試試料中の窒素の量を定量し、これの供試試料の百分率(%)を窒素全量とする。(肥料分析法 農林水産省農業環境技術研究所発行)〕が、通常培土1リットル中に1mg以上含まれるように添加することが好ましく、以下、2mg以上、3mg以上、5mg以上、8mg以上、10mg以上、12mg以上、15mg以上、20mg以上、25mg以上、30mg以上、35mg以上の順含まれるように添加することが好ましく、最も好ましくは40mg以上含まれるように添加することである。これは培土1リットル中の添加量が1mg未満の場合は、動物質醗酵物が少なくなり十分に生育効果を出すことができないためである。なお、添加量の上限は特にないが、動物質醗酵物の添加量が極端に多くなると透水性や通気性等の物理性に悪影響を与えるため、50容量%を超える添加量は好ましくない。
【0025】
本発明の園芸培土に種を播種して30日間育苗させたときの地上部生体重は、醗酵物を添加しない対照園芸培土で育苗させたときの地上部生体重と比較して、生体重は同じか、それより高くなることが望ましい。通常は地上部生体重が3重量%以上高く、以下、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上の順に高いことが好ましく、最も好ましいのは20重量%以上である。
【0026】
同様に、本発明の園芸培土で30日間育苗させた苗の地下部生体重は、対照園芸培土と比較して、生体重が同じか、それより高くなることが望ましい。通常は地下部生体重が3%以上高く、以下、5%以上、10%以上、15%以上の順に高いことが好ましく、最も好ましいのは、20重量%以上である。
また、本発明の園芸培土は、地上部と地下部の両方の生育が優れていることが望ましい。
【0027】
本発明の育苗用園芸培土は、動物質醗酵物に放線菌を添加することにより、土壌病害に対して耐候性を有する放線菌含有園芸培土とすることもできる。
【0028】
対象とする土壌病害はトマト萎凋病、トマト根腐萎凋病、ナガイモ褐色腐敗病、ホウレンソウ萎凋病、イチゴ萎黄病、ユウガオつる割病、スイカつる割病、リンゴ白紋羽病、リンゴ紫紋羽病、リンゴ腐らん病、ナス半身萎凋病、ナガイモ根腐病、ダイコン苗立枯、芝の病害であるリゾクトニア・ラージパッチ等が挙げられる。
【0029】
添加する放線菌は、前記土壌病害の病原菌に対して、拮抗作用を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ストレプトミセス属やセラチア属に属する菌が挙げられる。
【0030】
なお、放線菌含有培土として使用する場合は、動物質醗酵物にバーミキュライトやゼオライト等の鉱物質を加えた方がよい。鉱物質の添加量は、動物質100重量部に対して、50〜2000重量部が好ましく、100〜1000重量部がより好ましい。
【0031】
ホウレンソウ萎凋病菌を、放線菌含有園芸培土と放線菌と醗酵物を含有しない比較園芸培土に接種し、ホウレンソウを栽培した場合、ホウレンソウの地上部生体重(g/株)は、放線菌含有園芸培土の方が比較園芸培土よりも多いことが望ましい。具体的には、比較園芸培土で栽培したホウレンソウの地上部生体重に対して、放線菌含有園芸培土で栽培したホウレンソウの地上部生体重が、1.5倍以上あることが好ましく、以下、2倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上の順に好ましく、最も好ましいのは、5倍以上である。
【0032】
有機質肥料は肥効がゆっくりであるため、根の発達がよくなることが知られている。しかし、限られた土壌(人工土壌を含む)で栽培する培土に、米ぬか、油かす、魚かす等の有機質資材を生の状態(醗酵や分解をしていない状態)で添加すると、蛋白質やアミノ酸等が分解する際に発生する有機酸の影響で、作物の初期生育が遅れたり、生育障害が発生するため、培土に有機質資材は不向きと考えられていた(例えば、特開2001−286221号公報、段落0003)。
【0033】
本発明で使用する動物質醗酵物は、添加量を増やしても作物の初期生育の遅れや生育障害が発生せず、丈夫な根を育てることができる園芸培土の資材として有用であることがわかった。
【0034】
本発明で使用する動物質醗酵物は、従来から使用されている無機質肥料と合わせて使用するとより優れた効果が得られる。具体的には、従来から販売されている培土に添加されている無機質肥料の最適添加量(例:レタス栽培において、無機質窒素の添加量で100mg/培土1リットルが最適の場合、その無機質窒素の添加量)を代えず、更に動物質醗酵物を追加すること(例:無機質窒素100mg+有機質窒素50mgとすること)で、根の生育を更に向上させることができる。
【0035】
動物質醗酵物と合わせて使用する無機質肥料は、無機質から構成される肥料で、具体的には、特種肥料(有機質肥料を除く)、窒素質肥料(有機質肥料を除く)、りん酸質肥料(有機質肥料を除く)、加里質肥料(有機質肥料を除く)、熔成複合肥料、化成肥料、配合肥料、成形複合肥料、吸着複合肥料、被覆複合肥料、副産複合肥料、液状複合肥料、家庭園芸用複合肥料、石灰質肥料、けい酸質肥料、苦土肥料、マンガン肥料、ほう素質肥料、微量要素複合肥料、農薬入り肥料等が挙げられる。
【0036】
無機質肥料の添加量は栽培する植物や添加する肥料の種類によって異なるが、窒素質肥料の添加量は、培土1リットル当たり、無機質窒素全量〔アンモニア性窒素、硝酸態窒素、尿素性窒素の合計(肥料分析法 農林水産省農業環境技術研究所発行)〕で、通常0mg以上(添加しない場合を含む)で、以下、0.1mg以上、0.2mg以上、0.5mg以上、1mg以上、2mg以上、3mg以上、5mg以上、10mg以上、20mg以上、30mg以上、50mg以上、80mg以上の順に好ましく、100mg以上であることが最も好ましい。ただし、添加量が多すぎると、地上部の生育に養分がとられ、根の生育が悪くなるので、無機質窒素全量は、通常培土1リットル当たり300mg以下で、以下250mg以下、200mg以下、180mg以下、150mg以下の順に好ましく、120mg以下であることが最も好ましい。ただし、天然土壌を使用しない育苗培土の場合は、無機質窒素全量が180mg以下であることが望ましい。
【0037】
なお、育苗用園芸培土の場合は、窒素全量の添加量が培土1リットル当たり、180mg以下であることが望ましい。これは、200mg以上添加すると苗の地上部の生育に養分が取られて、根の生育が悪くなるためである。
【0038】
【実施例】
以下、製造例、実施例及び実験例により本発明を更に具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0039】
製造例1 醗酵物Aの製造
動物質として甲殻類質であるカニガラを30重量%、植物質として、脱脂米ぬか20重量%とフスマ(小麦のぬか)15重量%、更に鉱物質としてバーミキュライト5重量%を醗酵槽に添加し、混合した後、水30重量%を更に加えて、醗酵槽で40日間醗酵させ、醗酵物Aを得た。この醗酵物は完熟しているため、未分解の蛋白質、アミノ酸、有機酸はほとんど検出されなかった。
【0040】
この醗酵物Aの肥料取締法で定める肥効成分(乾物あたり)は、窒素全量(以下、有機質窒素という)が2.5%、リン酸全量(以下、有機質リン酸という)が5.5%、加里全量(以下、有機質加里という)が2.0%、水分含有量27%であった。
【0041】
製造例2 醗酵物Bの製造
動物質として魚かすを30重量%、植物質として、脱脂米ぬか20重量%とフスマ(小麦のぬか)15重量%、更に鉱物質としてバーミキュライト5重量%を醗酵槽に添加し、混合した後、水30重量%を更に加えて、醗酵槽で60日間醗酵させ、醗酵物Bを得た。この醗酵物は完熟しているため、未分解の蛋白質、アミノ酸、有機酸はほとんど検出されなかった。
この醗酵物Bの肥効成分は、有機質窒素が4.0%、有機質リン酸が7.0%、有機質加里が2.0%、水分含有量27%であった。
【0042】
実施例1 園芸培土の製造
ライトミックスN100〔コープケミカル(株)製、天然土壌を含有しない園芸培土、肥料取締法で定めるアンモニア態窒素と硝酸態窒素の合計(以下、無機質窒素という)が100mg/培土1リットル〕に、醗酵物Aを0.5容量%〜4容量%、醗酵物Bを2容量%添加した本発明の園芸培土A1〔醗酵物A0.5容量%含有、有機質窒素:12.5mg+無機質窒素:100mg/培土1リットル〕、園芸培土A2〔醗酵物A1容量%含有、有機質窒素:25mg+無機質窒素:100mg/培土1リットル〕、園芸培土A3〔醗酵物A2容量%含有、有機質窒素:50mg+無機質窒素:100mg/培土1リットル〕、園芸培土A4〔醗酵物A4容量%含有、有機質窒素:100mg+無機質窒素:100mg/培土1リットル〕又は園芸培土B〔醗酵物B2容量%含有、有機質窒素:80mg+無機質窒素:100mg/培土1リットル〕を得た。なお、醗酵物を添加しないライトミックスN100〔無機質窒素:100mg/培土1リットル〕を対照園芸培土とした。
【0043】
比較例1 比較園芸培土の製造
ライトミックスN100に硝安石灰を添加し、比較園芸培土〔無機質窒素:200mg/培土1リットル〕を製造した。
【0044】
実験例1 レタスの栽培試験(セル用育苗培土としての試験)
連結式プラスチックポットトレー(みのる産業株式会社製:直径1.6cm、高さ2.5cm、448穴)に、対照園芸培土、園芸培土A1、A2、A3、A4、B及び比較園芸培土を詰め、常法に従ってレタス苗を30日間栽培し、レタスの地上部平均生体重(葉と茎、g/株)と地下部平均生体重(根、g/株)を調査した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
本発明の園芸培土は、醗酵物を添加していない対照園芸培土に比べて、地上部と地下部の両方の生体重が増加し、特に地下部の生体重は、120〜167%増えている。
【0047】
これに対して、動物質醗酵物に代えて、無機肥料(硝安石灰)を200mg添加した比較園芸培土は、地上部の生体重は、対照区に比べて184%と増加したが、地下部の生育は47%に留まり、移植に適した苗は得られなかった。
【0048】
実験例2 小松菜簡易発芽試験
乾重で5gの下記試料を100ml三角フラスコに秤取し、純水100mlを添加、攪拌し、65℃恒温水槽で2時間振盪し、冷却、濾過(No.2濾紙)して原液を得た。
【0049】
得られた原液を、規定倍数希釈した。深底シャーレに該シャーレにあわせた濾紙を2枚入れ、希釈液を10ml入れ、濾紙に十分しみ込ませた後、小松菜の種を25粒濾紙上に分散させた。シャーレの蓋をして、12時間毎に蛍光燈が点滅する室温25℃の人工気象室で1週間生育させ、対照区を100とした場合の発芽率(%)と根長(%)を調べた。結果を表2に示す。
〔試料〕
対照区 :純水のみ
本発明区:醗酵物A(カニガラ使用)、醗酵物B(魚かす使用)
比較区 :カニガラ、米ぬか、魚かす、菜種油かす、ひまし油かす、乾血粉
【0050】
【表2】
【0051】
醗酵物A、Bの発芽率は、いずれも対照区と同じ100%であった。根長は2倍希釈で130%と110%、4倍希釈では190%と160%で対照区より優れた生育を示し、生育の遅れ(根長が90%未満)や生育障害(根長が20%未満)は見られなかった。
【0052】
これに対して未醗酵の有機質を用いた2倍希釈では、いずれの資材も発芽率、根長が対照区より低く生育の遅れや生育障害が認められた。4倍希釈も対照区を下回り、カニガラ(発芽率:96%、根長:94%)以外で、生育の遅れ(根長が90%未満)が認められた。
【0053】
中でも魚かすは2倍希釈で発芽率0%、4倍希釈でも根長が対照区の4%と低く、典型的な生育障害が認められた。また、菜種油かす、ひまし油かすの2倍希釈でも、根長が対照区の5〜9%と低く、生育障害が認められた。
【0054】
なお、特開2001−286221号公報で、水稲用育苗培土の有機質として有用であるとされた乾血粉は、2倍希釈、4倍希釈で根長がそれぞれ72%、70%となり、生育の遅れが認められた。
【0055】
製造例3 放線菌含有醗酵物の製造
製造例1で製造した醗酵物A20重量%とバーミキュライト80重量%を混合し、オートクレーブにより121℃で15分間滅菌した。その後、滅菌した混合物の水分を20%に調整し、放線菌としてストレプトミセス・アヌルタスCK−J(受託番号:FERM P−11783)を培養させ、放線菌含有醗酵物を得た。
【0056】
実施例2 放線菌含有園芸培土の製造
げんきくん果菜200(コープケミカル(株)製、土壌含有園芸培土、無機質窒素200mg/培土1リットル)に、製造例3で製造した放線菌含有醗酵物を5容量%添加し、本発明の放線菌含有園芸培土を製造した。なお、醗酵物を添加しないげんきくん果菜200を対照園芸培土とした。
【0057】
実験例3 ホウレンソウの栽培試験
10×15×30cmのポットに実施例2で製造した放線菌含有園芸培土を添加し、ホウレンソウの種子(タキイ種苗 トライ)を1ポット当たり10粒播種した。その後17日後にホウレンソウ萎凋病菌を接種し4週間後に生育調査を行った。ホウレンソウ萎凋病菌は、市販されているPDB(ポテト、デキストロース、ブロス)培地により1週間程度培養し、接種する際には遠心分離機により濃縮した。濃縮液の分生胞子数をThoma血球計算盤で計測した。試験区は、病原菌の分生胞子が105ケ/ポット×3、106ケ/ポット×3とし、濃縮液を蒸留水で50mlに希釈し、土壌に散布した。また対照区は、105ケ/ポット×2、106ケ/ポット×2とした。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
発病指数
0:病徴なし
1:萎凋葉が全体の10%以下
2:萎凋葉が全体の10%を超え、30%以下
3:萎凋葉が全体の30%を超え、50%以下
4:萎凋葉が全体の50%を超え、70%以下
5:枯死ないし枯死寸前
発病度=Σ[(発病指数×発病個数)/(最大係数×総固体数)]×100
【0059】
放線菌含有園芸培土は、対照園芸培土に比較して発病指数、発病度とも低く、特に地上部生体重は、105ケ/ポット区で2.7倍、106ケ/ポット区では、5.4倍もの生育差を示し、萎凋病に対して効果のあることが認められた。
【0060】
【発明の効果】
本発明は、動物質醗酵物を添加するだけで根圏微生物を活性化できる園芸培土が得られるため、安価で提供することができる。
また、本発明の園芸培土は、根の丈夫な苗を育てることができるため、特に育苗用園芸培土として、有用であり、移植後の生育も優れている。
【0061】
本発明の原料として使用する動物質醗酵物は土壌病害の病原菌に対して拮抗作用を有する放線菌を培養することができるため、本発明の放線菌含有園芸培土は、土壌病害を防除する苗を育てることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は園芸培土に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より培土の原料には腐葉、ピートモス、オガクズ、バーク堆肥、水コケ、厩肥(糞尿と敷きわらの混合物を堆積腐熟させたもの)等の土壌改良が目的の粗大有機質が使用されている。
【0003】
特許文献1や特許文献2には、有機質入り粒状培土が開示されているが、これらに開示されているのはオガクズやモミガラ等の粗大有機質で、造粒性の向上や、透水性、通気性、保水性の向上が目的である。
【0004】
特許文献3には、水稲用育苗培土の有機質として乾血粉が有用であることが開示されており、乾血粉以外の有機質資材、例えば米ぬか、油かす、魚かすなどの有機質資材を生の状態(醗酵及び分解していない状態)で用いると、微生物による分解過程を必要とするため、作物の生育が遅くなってしまうことが開示されている。また、特許文献3には、醗酵済有機質肥料を添加した水稲用育苗培土でコシヒカリを30日間育苗させた試験結果が開示されているが、乾血粉を添加した試験区に比べて、地上部乾物重、地下部乾物重、草丈、根長は、それそれ67.3%、95.9%、82.3%、68.5%に止まり、水稲用育苗培土には、醗酵済有機質肥料が好ましくないことが示されている。
【0005】
特許文献4には、土壌病害防除微生物(ストレプトマイセス・ロシェイ・エスエス・ロシェイA13)を含有する培土が開示されている。しかし微生物の添加方法は、酵母エキス・麦芽エキス培地で培養した株を育苗培土に添加する方法で行われており、微生物を培養した動物質醗酵物を培土に添加する方法は、これまで行われていない。
【0006】
【特許文献1】
特開昭49−5724号公報
【特許文献2】
特開昭51−85914号公報
【特許文献3】
特開2001−286221号公報(例えば、段落0003、段落0011、表2)
【特許文献4】
特開2002−253213号公報(例えば、実施例2)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする第1の課題は、丈夫な根を育てることができる安価な園芸培土を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする第2の課題は、短期間の育苗で生育の優れた苗が得られる育苗用園芸培土を提供することである。
【0009】
更に、本発明が解決しようとする第3の課題は、土壌病害を防除する放線菌含有園芸培土を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、培土には適していないと考えられていた動物質醗酵物を園芸培土に添加して生育試験を行ったところ、生育に優れた園芸培土が得られることを見出し、本願第1の発明を完成させるに至った。
【0011】
また、本発明者らは、この園芸培土にレタス等の種を播種して栽培したところ、短期間で、生育に優れた苗が得られることを見出し、本願第2の発明を完成させるに至った。
【0012】
更に、本発明者らは、この動物質醗酵物に放線菌を添加することにより土壌病害に対して耐候性を有する放線菌含有園芸培土が得られることを見出し、本願第3の発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本願第1の発明は以下の発明を包含する。
(1)動物質醗酵物を含有する園芸培土。
(2)動物質が、魚類(甲殻類、軟骨類を含む)、家畜類、家禽類及び獣類(海獣を含む)から選ばれる少なくとも1種の動物の体の一部又は全部である前記(1)に記載の園芸培土。
(3)動物質醗酵物が、動物質、又は動物質と植物かす類、植物油かす類、ぬか類及びアミノ酸かす類から選ばれる少なくとも1種との混合物を10日間以上醗酵させたものである前記(1)又は(2)に記載の園芸培土。
(4)動物質醗酵物が、肥料取締法で定める有機質肥料の窒素全量に換算して、1mg/培土1リットル以上含有されている前記(1)〜(3)のいずれかに記載の園芸培土。
【0014】
本願第2の発明は以下の発明を包含する。
(5)育苗用である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の園芸培土。
(6)地上部と地下部の両方の生育が優れている前記(1)〜(5)のいずれかに記載の園芸培土。
【0015】
本願第3の発明は以下の発明を包含する。
(7)放線菌を含有する前記(1)〜(6)のいずれかに記載の園芸培土。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、動物質醗酵物を含有する園芸培土に関するものである。以下に本発明を詳細に記載する。
【0017】
本発明の園芸培土は、果樹類、野菜類、花卉類等の園芸作物用の培土として使用することができる。
特に根の生育に優れた苗を育てることができるので、育苗用園芸培土としても有用である。育苗用園芸培土としては、一般の育苗培土の他、セル育苗培土が挙げられる。このセル育苗培土は、機械施用に適しているタマネギ等の根菜類や、レタス、キャベツ等の野菜類に有用である。
【0018】
本発明で使用する動物質醗酵物は、動物質単体を醗酵させたものでも、動物質に他の成分を混合して醗酵させたものでもよい。
本発明で使用する動物質とは、動物の体の一部又は全部を示し、動物の廃棄物、例えば糞尿は除外される。
【0019】
本発明で使用する動物質としては、例えば、魚類(甲殻類、軟骨類を含む)、家畜類、家禽類、獣類(海獣を含む)の体の一部又は全部、或いはこれらの動物を原料にした食品工業、繊維工業、ゼラチン工業等の加工業において副産する動物質が挙げられる。具体的には、魚かす、干魚、魚廃物、魚鱗、甲殻類質、蒸製魚鱗、肉かす、肉骨、蒸製てい角、蒸製てい角骨、蒸製毛、乾血、生骨、蒸製骨、蒸製鶏骨、蒸製皮革、鯨かま底かす、動物内臓、家禽加工くず及びこれらの粉末や副産物等が挙げられる。〔ポケット肥料要覧 農林統計協会発行 参照〕
【0020】
動物質醗酵物は、これらの動物質と、必要に応じて他の資材を混合し、醗酵させることにより得られる。醗酵期間は、通常1週間以上で、以下10日以上、15日以上、20日以上、25日以上、30日以上、35日以上の順に好ましく、40日以上醗酵させることがより好ましい。なお、蛋白質等を多く含む醗酵物の場合は、更に45日以上、50日以上、55日以上の順に醗酵期間を長くすることが好ましく、60日以上醗酵させることが最も好ましい。なお、醗酵が十分でない場合(蛋白質等の未醗酵の有機物が残っている場合)は、苗に生育障害を与えることになるので、注意を要する。動物質醗酵物は、動物質単体を醗酵させても得られるが、動物質と植物質を混合して醗酵させることが望ましい。
【0021】
ここで用いる植物質としては、植物かす類、植物油かす類、ぬか類、アミノ酸かす類やこれらの植物質を原料にした食品工業、繊維工業等の加工業において副産する植物質が挙げられる。具体的には、とうもろこしはい芽、大豆油かす、菜種油かす、わたみ油かす、落花生油かす、あまに油かす、ごま油かす、ひまし油かす、米ぬか油かす、その他の草本性植物油かす、カポック油かす、とうもろこしはい芽油かす、甘草かす、豆腐かす、えんじゅかす、窒素質グアノ、米ぬか、フスマ(麦のぬか)、醗酵米ぬか、醗酵かす、アミノ酸かす、くず植物油かす、草本性植物種子皮殻油かす、木の実油かす、コーヒーかす、くず大豆、たばこくず肥料、乾燥藻、落綿分離かす、よもぎかす、木の皮(バーク等)、稲わら、果樹かす及びこれらの粉末や副産物等が挙げられる。
【0022】
植物質の添加量は、動物質100重量部に対して、通常0〜500重量部、好ましくは0〜300重量部、より好ましくは0〜200重量部で、最も好ましくは50〜150重量部である。
【0023】
なお、必要に応じて、バーミキュライトやゼオライト等の鉱物質、炭類(例:木炭、セラッシュ炭)等の消臭材やそれ以外の第三成分を添加してもよい。第三成分の添加量は特に制限はないが、鉱物質等の第三成分を大量に加えると肥効成分が少なくなるため、動物質醗酵物の添加量を増やす必要がある。通常の園芸培土として使用する場合の鉱物質の添加量は、動物質100重量部に対して通常300重量部以下で、好ましくは100重量部以下、より好ましくは50重量部以下、最も好ましくは10重量部以下である。
【0024】
動物質醗酵物の添加量は、肥料取締法で定める有機質肥料の窒素全量〔ケルダール法によって供試試料中の窒素の量を定量し、これの供試試料の百分率(%)を窒素全量とする。(肥料分析法 農林水産省農業環境技術研究所発行)〕が、通常培土1リットル中に1mg以上含まれるように添加することが好ましく、以下、2mg以上、3mg以上、5mg以上、8mg以上、10mg以上、12mg以上、15mg以上、20mg以上、25mg以上、30mg以上、35mg以上の順含まれるように添加することが好ましく、最も好ましくは40mg以上含まれるように添加することである。これは培土1リットル中の添加量が1mg未満の場合は、動物質醗酵物が少なくなり十分に生育効果を出すことができないためである。なお、添加量の上限は特にないが、動物質醗酵物の添加量が極端に多くなると透水性や通気性等の物理性に悪影響を与えるため、50容量%を超える添加量は好ましくない。
【0025】
本発明の園芸培土に種を播種して30日間育苗させたときの地上部生体重は、醗酵物を添加しない対照園芸培土で育苗させたときの地上部生体重と比較して、生体重は同じか、それより高くなることが望ましい。通常は地上部生体重が3重量%以上高く、以下、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上の順に高いことが好ましく、最も好ましいのは20重量%以上である。
【0026】
同様に、本発明の園芸培土で30日間育苗させた苗の地下部生体重は、対照園芸培土と比較して、生体重が同じか、それより高くなることが望ましい。通常は地下部生体重が3%以上高く、以下、5%以上、10%以上、15%以上の順に高いことが好ましく、最も好ましいのは、20重量%以上である。
また、本発明の園芸培土は、地上部と地下部の両方の生育が優れていることが望ましい。
【0027】
本発明の育苗用園芸培土は、動物質醗酵物に放線菌を添加することにより、土壌病害に対して耐候性を有する放線菌含有園芸培土とすることもできる。
【0028】
対象とする土壌病害はトマト萎凋病、トマト根腐萎凋病、ナガイモ褐色腐敗病、ホウレンソウ萎凋病、イチゴ萎黄病、ユウガオつる割病、スイカつる割病、リンゴ白紋羽病、リンゴ紫紋羽病、リンゴ腐らん病、ナス半身萎凋病、ナガイモ根腐病、ダイコン苗立枯、芝の病害であるリゾクトニア・ラージパッチ等が挙げられる。
【0029】
添加する放線菌は、前記土壌病害の病原菌に対して、拮抗作用を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ストレプトミセス属やセラチア属に属する菌が挙げられる。
【0030】
なお、放線菌含有培土として使用する場合は、動物質醗酵物にバーミキュライトやゼオライト等の鉱物質を加えた方がよい。鉱物質の添加量は、動物質100重量部に対して、50〜2000重量部が好ましく、100〜1000重量部がより好ましい。
【0031】
ホウレンソウ萎凋病菌を、放線菌含有園芸培土と放線菌と醗酵物を含有しない比較園芸培土に接種し、ホウレンソウを栽培した場合、ホウレンソウの地上部生体重(g/株)は、放線菌含有園芸培土の方が比較園芸培土よりも多いことが望ましい。具体的には、比較園芸培土で栽培したホウレンソウの地上部生体重に対して、放線菌含有園芸培土で栽培したホウレンソウの地上部生体重が、1.5倍以上あることが好ましく、以下、2倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上の順に好ましく、最も好ましいのは、5倍以上である。
【0032】
有機質肥料は肥効がゆっくりであるため、根の発達がよくなることが知られている。しかし、限られた土壌(人工土壌を含む)で栽培する培土に、米ぬか、油かす、魚かす等の有機質資材を生の状態(醗酵や分解をしていない状態)で添加すると、蛋白質やアミノ酸等が分解する際に発生する有機酸の影響で、作物の初期生育が遅れたり、生育障害が発生するため、培土に有機質資材は不向きと考えられていた(例えば、特開2001−286221号公報、段落0003)。
【0033】
本発明で使用する動物質醗酵物は、添加量を増やしても作物の初期生育の遅れや生育障害が発生せず、丈夫な根を育てることができる園芸培土の資材として有用であることがわかった。
【0034】
本発明で使用する動物質醗酵物は、従来から使用されている無機質肥料と合わせて使用するとより優れた効果が得られる。具体的には、従来から販売されている培土に添加されている無機質肥料の最適添加量(例:レタス栽培において、無機質窒素の添加量で100mg/培土1リットルが最適の場合、その無機質窒素の添加量)を代えず、更に動物質醗酵物を追加すること(例:無機質窒素100mg+有機質窒素50mgとすること)で、根の生育を更に向上させることができる。
【0035】
動物質醗酵物と合わせて使用する無機質肥料は、無機質から構成される肥料で、具体的には、特種肥料(有機質肥料を除く)、窒素質肥料(有機質肥料を除く)、りん酸質肥料(有機質肥料を除く)、加里質肥料(有機質肥料を除く)、熔成複合肥料、化成肥料、配合肥料、成形複合肥料、吸着複合肥料、被覆複合肥料、副産複合肥料、液状複合肥料、家庭園芸用複合肥料、石灰質肥料、けい酸質肥料、苦土肥料、マンガン肥料、ほう素質肥料、微量要素複合肥料、農薬入り肥料等が挙げられる。
【0036】
無機質肥料の添加量は栽培する植物や添加する肥料の種類によって異なるが、窒素質肥料の添加量は、培土1リットル当たり、無機質窒素全量〔アンモニア性窒素、硝酸態窒素、尿素性窒素の合計(肥料分析法 農林水産省農業環境技術研究所発行)〕で、通常0mg以上(添加しない場合を含む)で、以下、0.1mg以上、0.2mg以上、0.5mg以上、1mg以上、2mg以上、3mg以上、5mg以上、10mg以上、20mg以上、30mg以上、50mg以上、80mg以上の順に好ましく、100mg以上であることが最も好ましい。ただし、添加量が多すぎると、地上部の生育に養分がとられ、根の生育が悪くなるので、無機質窒素全量は、通常培土1リットル当たり300mg以下で、以下250mg以下、200mg以下、180mg以下、150mg以下の順に好ましく、120mg以下であることが最も好ましい。ただし、天然土壌を使用しない育苗培土の場合は、無機質窒素全量が180mg以下であることが望ましい。
【0037】
なお、育苗用園芸培土の場合は、窒素全量の添加量が培土1リットル当たり、180mg以下であることが望ましい。これは、200mg以上添加すると苗の地上部の生育に養分が取られて、根の生育が悪くなるためである。
【0038】
【実施例】
以下、製造例、実施例及び実験例により本発明を更に具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0039】
製造例1 醗酵物Aの製造
動物質として甲殻類質であるカニガラを30重量%、植物質として、脱脂米ぬか20重量%とフスマ(小麦のぬか)15重量%、更に鉱物質としてバーミキュライト5重量%を醗酵槽に添加し、混合した後、水30重量%を更に加えて、醗酵槽で40日間醗酵させ、醗酵物Aを得た。この醗酵物は完熟しているため、未分解の蛋白質、アミノ酸、有機酸はほとんど検出されなかった。
【0040】
この醗酵物Aの肥料取締法で定める肥効成分(乾物あたり)は、窒素全量(以下、有機質窒素という)が2.5%、リン酸全量(以下、有機質リン酸という)が5.5%、加里全量(以下、有機質加里という)が2.0%、水分含有量27%であった。
【0041】
製造例2 醗酵物Bの製造
動物質として魚かすを30重量%、植物質として、脱脂米ぬか20重量%とフスマ(小麦のぬか)15重量%、更に鉱物質としてバーミキュライト5重量%を醗酵槽に添加し、混合した後、水30重量%を更に加えて、醗酵槽で60日間醗酵させ、醗酵物Bを得た。この醗酵物は完熟しているため、未分解の蛋白質、アミノ酸、有機酸はほとんど検出されなかった。
この醗酵物Bの肥効成分は、有機質窒素が4.0%、有機質リン酸が7.0%、有機質加里が2.0%、水分含有量27%であった。
【0042】
実施例1 園芸培土の製造
ライトミックスN100〔コープケミカル(株)製、天然土壌を含有しない園芸培土、肥料取締法で定めるアンモニア態窒素と硝酸態窒素の合計(以下、無機質窒素という)が100mg/培土1リットル〕に、醗酵物Aを0.5容量%〜4容量%、醗酵物Bを2容量%添加した本発明の園芸培土A1〔醗酵物A0.5容量%含有、有機質窒素:12.5mg+無機質窒素:100mg/培土1リットル〕、園芸培土A2〔醗酵物A1容量%含有、有機質窒素:25mg+無機質窒素:100mg/培土1リットル〕、園芸培土A3〔醗酵物A2容量%含有、有機質窒素:50mg+無機質窒素:100mg/培土1リットル〕、園芸培土A4〔醗酵物A4容量%含有、有機質窒素:100mg+無機質窒素:100mg/培土1リットル〕又は園芸培土B〔醗酵物B2容量%含有、有機質窒素:80mg+無機質窒素:100mg/培土1リットル〕を得た。なお、醗酵物を添加しないライトミックスN100〔無機質窒素:100mg/培土1リットル〕を対照園芸培土とした。
【0043】
比較例1 比較園芸培土の製造
ライトミックスN100に硝安石灰を添加し、比較園芸培土〔無機質窒素:200mg/培土1リットル〕を製造した。
【0044】
実験例1 レタスの栽培試験(セル用育苗培土としての試験)
連結式プラスチックポットトレー(みのる産業株式会社製:直径1.6cm、高さ2.5cm、448穴)に、対照園芸培土、園芸培土A1、A2、A3、A4、B及び比較園芸培土を詰め、常法に従ってレタス苗を30日間栽培し、レタスの地上部平均生体重(葉と茎、g/株)と地下部平均生体重(根、g/株)を調査した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
本発明の園芸培土は、醗酵物を添加していない対照園芸培土に比べて、地上部と地下部の両方の生体重が増加し、特に地下部の生体重は、120〜167%増えている。
【0047】
これに対して、動物質醗酵物に代えて、無機肥料(硝安石灰)を200mg添加した比較園芸培土は、地上部の生体重は、対照区に比べて184%と増加したが、地下部の生育は47%に留まり、移植に適した苗は得られなかった。
【0048】
実験例2 小松菜簡易発芽試験
乾重で5gの下記試料を100ml三角フラスコに秤取し、純水100mlを添加、攪拌し、65℃恒温水槽で2時間振盪し、冷却、濾過(No.2濾紙)して原液を得た。
【0049】
得られた原液を、規定倍数希釈した。深底シャーレに該シャーレにあわせた濾紙を2枚入れ、希釈液を10ml入れ、濾紙に十分しみ込ませた後、小松菜の種を25粒濾紙上に分散させた。シャーレの蓋をして、12時間毎に蛍光燈が点滅する室温25℃の人工気象室で1週間生育させ、対照区を100とした場合の発芽率(%)と根長(%)を調べた。結果を表2に示す。
〔試料〕
対照区 :純水のみ
本発明区:醗酵物A(カニガラ使用)、醗酵物B(魚かす使用)
比較区 :カニガラ、米ぬか、魚かす、菜種油かす、ひまし油かす、乾血粉
【0050】
【表2】
【0051】
醗酵物A、Bの発芽率は、いずれも対照区と同じ100%であった。根長は2倍希釈で130%と110%、4倍希釈では190%と160%で対照区より優れた生育を示し、生育の遅れ(根長が90%未満)や生育障害(根長が20%未満)は見られなかった。
【0052】
これに対して未醗酵の有機質を用いた2倍希釈では、いずれの資材も発芽率、根長が対照区より低く生育の遅れや生育障害が認められた。4倍希釈も対照区を下回り、カニガラ(発芽率:96%、根長:94%)以外で、生育の遅れ(根長が90%未満)が認められた。
【0053】
中でも魚かすは2倍希釈で発芽率0%、4倍希釈でも根長が対照区の4%と低く、典型的な生育障害が認められた。また、菜種油かす、ひまし油かすの2倍希釈でも、根長が対照区の5〜9%と低く、生育障害が認められた。
【0054】
なお、特開2001−286221号公報で、水稲用育苗培土の有機質として有用であるとされた乾血粉は、2倍希釈、4倍希釈で根長がそれぞれ72%、70%となり、生育の遅れが認められた。
【0055】
製造例3 放線菌含有醗酵物の製造
製造例1で製造した醗酵物A20重量%とバーミキュライト80重量%を混合し、オートクレーブにより121℃で15分間滅菌した。その後、滅菌した混合物の水分を20%に調整し、放線菌としてストレプトミセス・アヌルタスCK−J(受託番号:FERM P−11783)を培養させ、放線菌含有醗酵物を得た。
【0056】
実施例2 放線菌含有園芸培土の製造
げんきくん果菜200(コープケミカル(株)製、土壌含有園芸培土、無機質窒素200mg/培土1リットル)に、製造例3で製造した放線菌含有醗酵物を5容量%添加し、本発明の放線菌含有園芸培土を製造した。なお、醗酵物を添加しないげんきくん果菜200を対照園芸培土とした。
【0057】
実験例3 ホウレンソウの栽培試験
10×15×30cmのポットに実施例2で製造した放線菌含有園芸培土を添加し、ホウレンソウの種子(タキイ種苗 トライ)を1ポット当たり10粒播種した。その後17日後にホウレンソウ萎凋病菌を接種し4週間後に生育調査を行った。ホウレンソウ萎凋病菌は、市販されているPDB(ポテト、デキストロース、ブロス)培地により1週間程度培養し、接種する際には遠心分離機により濃縮した。濃縮液の分生胞子数をThoma血球計算盤で計測した。試験区は、病原菌の分生胞子が105ケ/ポット×3、106ケ/ポット×3とし、濃縮液を蒸留水で50mlに希釈し、土壌に散布した。また対照区は、105ケ/ポット×2、106ケ/ポット×2とした。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
発病指数
0:病徴なし
1:萎凋葉が全体の10%以下
2:萎凋葉が全体の10%を超え、30%以下
3:萎凋葉が全体の30%を超え、50%以下
4:萎凋葉が全体の50%を超え、70%以下
5:枯死ないし枯死寸前
発病度=Σ[(発病指数×発病個数)/(最大係数×総固体数)]×100
【0059】
放線菌含有園芸培土は、対照園芸培土に比較して発病指数、発病度とも低く、特に地上部生体重は、105ケ/ポット区で2.7倍、106ケ/ポット区では、5.4倍もの生育差を示し、萎凋病に対して効果のあることが認められた。
【0060】
【発明の効果】
本発明は、動物質醗酵物を添加するだけで根圏微生物を活性化できる園芸培土が得られるため、安価で提供することができる。
また、本発明の園芸培土は、根の丈夫な苗を育てることができるため、特に育苗用園芸培土として、有用であり、移植後の生育も優れている。
【0061】
本発明の原料として使用する動物質醗酵物は土壌病害の病原菌に対して拮抗作用を有する放線菌を培養することができるため、本発明の放線菌含有園芸培土は、土壌病害を防除する苗を育てることができる。
Claims (7)
- 動物質醗酵物を含有する園芸培土。
- 動物質が、魚類(甲殻類、軟骨類を含む)、家畜類、家禽類及び獣類(海獣を含む)から選ばれる少なくとも1種の動物の体の一部又は全部である請求項1記載の園芸培土。
- 動物質醗酵物が、動物質、又は動物質と植物かす類、植物油かす類、ぬか類及びアミノ酸かす類から選ばれる少なくとも1種との混合物を10日以上醗酵させたものである請求項1又は2記載の園芸培土。
- 動物質醗酵物が、肥料取締法で定める有機質肥料の窒素全量に換算して、1mg/培土1リットル以上含有されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の園芸培土。
- 育苗用である請求項1〜4のいずれか1項に記載の園芸培土。
- 地上部と地下部の両方の生育が優れている請求項1〜5のいずれか1項に記載の園芸培土。
- 放線菌を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の園芸培土。
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2002
- 2002-10-16 JP JP2002301500A patent/JP2004135531A/ja active Pending
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