JP2004123580A - チエニルアリールアセチレン化合物 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は導電性材料、発光素子材料、光学異方体、位相差板、位相差膜等に利用可能な高複屈折率のチエニルアリールアセチレン化合物及びそれらを重合して得られる重合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶性化合物は液晶層において液体のような流動性と結晶のような規則的な分子配列を併せ持つ性質を示すことから様々な分野で応用展開が期待されており、その配向制御は工学的応用に欠かせないものとなっている。このような工学的応用に適した有用な液晶化合物の探索が必要とされている。
【0003】
また、フェニレン基もしくはシクロへキシレン基と炭素−炭素三重結合を有する化合物を用いたフィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−273205号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、簡便に合成可能であり且つ高い複屈折率を有する新規チエニルアリールアセチレン化合物を提供することである。更に、オプトエレクトロニクス分野等に適用できる、上記チエニルアリールアセチレン化合物を用いた導電性材料、発光素子材料、光学異方体、位相差板及び位相差膜を提供することでもある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、チエニルアリールアセチレン化合物が簡便に合成可能であり且つ高い複屈折率を有することを見出した。本発明はこの知見に基づきなされるに至ったものである。
すなわち、
(1)下記一般式(I)で表される化合物。
【0007】
【化3】
【0008】
(式中、Xは置換基を有していても良い炭素数4〜10の二価の芳香族基を示す。また、式中のチエニル基は置換基を有していても良い。)
(2)下記一般式(II)で表されることを特徴とする(1)項に記載の化合物。
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、R1、R2はそれぞれ独立して複数の置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルキル基を示し、Xは置換基を有していても良い炭素数4〜10の2価の芳香族基を示す。また、式中のチエニル基は置換基を有していても良い。)
(3)R1およびR2のうち少なくとも一方が架橋性置換基を有することを特徴とする(2)項に記載の化合物。
(4)R1およびR2はそれぞれ独立してアクロイルオキシ基又はメタアクロイルオキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基であることを特徴とする(2)又は(3)項に記載の化合物。
(5)前記Xが、1,4−フェニレン基又は2,6−ナフタレン基である(ただし、Xは置換基を有していても良い。)ことを特徴とする(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の化合物。
(6)(1)〜(5)項のいずれか1項記載の化合物である光学材料。
(7)(1)〜(5)項のいずれか1項記載の化合物から形成される層を含むことを特徴とする光学異方体。
(8)(1)〜(5)項のいずれか1項記載の化合物から形成される層を含むことを特徴とする位相差板。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0012】
まず、下記、一般式(I)または(II)で表される化合物(本明細書において、「本発明の化合物」と称することがある)について説明する。
【0013】
【化5】
【0014】
【化6】
【0015】
前記一般式(II)中のR1及びR2はそれぞれ独立して炭素数1〜20の直鎖または環状アルキル基を表すが、炭素数2〜14の直鎖または環状アルキル基が好ましく、炭素数2〜12の直鎖または環状アルキル基が特に好ましい。
【0016】
R1及びR2が置換基を有する場合、好ましい置換基の例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ハロゲン原子等が挙げられ、また架橋性の置換基を有することも好ましい。架橋性の置換基としてはアクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、グリシジル基、ビニルオキシ基等が好ましく、アクリロイルオキシ基及びメタアクリロイルオキシ基が特に好ましい。また、架橋性基の導入位置は特に限定されないが、R1及びR2の末端にあることが好ましい。
【0017】
前記一般式(I)または(II)中のXは炭素数4〜10、好ましくは炭素数5〜10の芳香族基を示し、より好ましくは炭素数6〜10の二価の芳香族炭化水素基、及び炭素数4〜10(好ましくは炭素数5〜10)の二価の芳香族複素環基が挙げられる。さらに好ましい例としては下記の基が挙げられる。
【0018】
【化7】
【0019】
前記一般式(I)または(II)中のXとして、特に好ましくは1,4−フェニレン基又は2,6−ナフタレン基が挙げられる。ただし、これらの芳香族基は任意の位置に1個又は複数個の置換基を有していても良い。その好ましい置換基の例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基等が挙げられ、特に好ましい例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びイソプロポキシ基が挙げられる。
【0020】
前記一般式(I)または(II)における2個のチエニル基はそれぞれ独立して1個又は複数個の置換基を有していても良い。その好ましい置換基の例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基等が挙げられ、特に好ましい例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びイソプロポキシ基が挙げられる。
【0021】
前記一般式(I)または(II)で表される化合物の具体例としては、下記のような化合物を挙げることができる。
【0022】
【化8】
【0023】
【化9】
【0024】
本発明の特に好ましい例の化合物は例えば以下に示すスキーム1の方法によって合成できる。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
スキーム1
【0026】
【化10】
(式中、R1,R2は保護基を示す。)
【0027】
まず化合物Cは、化合物A及びBをPd触媒及び塩基I存在下、40〜100℃程度の温度で12時間程度撹拌すると合成することができる。化合物Aに対し、化合物Bは当量比で1〜2当量が好ましく、更に好ましくは1〜1.2当量である。Pd触媒は化合物Aに対し0.1〜5モル%が好ましく、更に好ましくは1〜2モル%である。塩基Iは化合物Bに対し、1〜4当量が好ましく、更に好ましくは1〜2当量である。Pd触媒の例としては Pd(PPh3)4, PdCl2(PPh3)2, Pd(OAc)2−PPh3, Pd2(dba)3CHCl3−PPh3 等が好ましい(ここで、Phはフェニル基を表わす。)。また、ヨウ化第一銅を添加することが好ましく、1〜5モル%添加することが好ましい。塩基Iとしては無機及び有機塩基を採用することができ、好ましい塩基の例としてはトリエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ピリジン、ルチジン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられ、特に好ましくはジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミンである。用いる有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
【0028】
化合物Dは、化合物Cに塩基IIを作用させた後、B(OEt)3(ここで、Etはエチル基を表わす。)を加えて室温にて撹拌することにより合成できる。塩基IIは化合物Cに対し、1〜2当量が好ましく、更に好ましくは1〜1.2当量である。B(OEt)3は化合物Cに対し、1〜2当量が好ましく、更に好ましくは1〜1.2当量である。塩基IIとしては好ましい例としては、tert−ブチルリチウム、n−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、水素化ナトリウム、水素化リチウム、炭酸カリウム等が挙げられ、特に好ましくはtert−ブチルリチウム、n−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)が挙げられる。
【0029】
化合物Fは、化合物D及びEをPd触媒及び塩基III存在下、20〜80℃程度の温度で12時間程度撹拌すると合成することができる。化合物Dに対し、化合物Eは当量比で1〜2当量が好ましく、更に好ましくは1〜1.2当量である。Pd触媒は化合物Aに対し0.1〜5モル%が好ましく、更に好ましくは1〜2モル%である。塩基IIIは化合物Dに対し、1〜4当量が好ましく、更に好ましくは1〜2当量である。Pd触媒の例としては Pd(PPh3)4, PdCl2(PPh3)2, Pd(OAc)2−PPh3, Pd2(dba)3CHCl3−PPh3 等が好ましい。また、ヨウ化第一銅を添加することが好ましく、1〜5モル%添加することが好ましい。塩基IIIとしては無機及び有機塩基を採用することができ、好ましい塩基の例としてはトリエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ルチジン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、特に好ましくはトリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミンである。
【0030】
化合物Gの合成過程に於いて、TMS基の脱保護は用いる基質の種類により、プロテクティブ・グループス・イン・オルガニック・ケミストリー,(プレナムプレス)(ロンドンとニューヨーク,1973)[Protective Groups in Organic Chemistry,Plenum Press];グリーン・ティー・ダブリュ著(Green,T.W.),プロテクティブグループス・イン・オルガニック・シンセシス,(ウィリー,ニューヨーク,1981)[ Protective Groups in Organic Synthesis, Wiley New York,1981];及びペプチド類,Vol.I,シュレーダーとルブケ著(アカデミックプレス(ロンドンとニューヨーク)1965)[Peptides,Vol.I,Schrooder and Lubke,Academic Press(London and New York,1965)]に記載されている方法に従って脱保護を行うことができる。
【0031】
化合物Iの合成は、化合物Bを化合物Gに換え、化合物Aを化合物Hに換えて上記の化合物Cの合成と同様の手法で合成できる。
【0032】
化合物Jの合成過程に於いて、保護基R1及びR2の脱保護は用いる基質の種類により、前記「プロテクティブ・グループス・イン・オルガニック・ケミストリー」に記載の方法により行うことができる。
【0033】
最後に目的とする化合物Lは化合物J及びKを塩基IV存在下、30〜100℃程度の温度で12時間程度撹拌すると合成することができる。化合物Kは化合物Jに対し当量比で1〜2当量が好ましく、更に好ましくは1.1〜1.5当量である。塩基IVは化合物Jに対し、1〜4当量が好ましく、更に好ましくは1〜2当量である。好ましい塩基IVとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0034】
本発明の化合物から形成される層(層とは形状に依存せず部分又は全体を指す)を含む光学異方体、位相差板及び位相差膜は、1)支持体等に本発明の化合物を少なくとも構成成分の一部として含有してなる層を塗布し、2)ホモジニアス配向させ、3)架橋することにより製造できる。
上記本発明の化合物は、架橋性基を有するが、好ましくは、本発明の化合物7〜11を挙げることができる。上記光学異方体、位相差板及び位相差膜中における本発明の化合物は架橋していても、架橋していなくてもよい。
【0035】
ここで、支持体等は特に限定されないが、ガラス基板、高分子フイルム、反射板などが例として挙げることができる。これらの支持体等は必要に応じて配向処理を施してもよい。配向処理としては種々の一般的な方法が採用できるが、各種ポリイミド系配向膜、ポリビニルアルコール系配向膜等の液晶配向層を支持体等の上に設け、ラビングなどの配向処理行う方法が好ましい例として挙げられる。塗布する方式としては、公知の方法、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等が採用される。架橋反応には、熱あるいは電磁波による公知の種々の架橋法が採用できるが、紫外光による光重合開始剤を用いるラジカル重合が特に好ましい。また、以上にようにして製造した膜を支持体から剥離、あるいは他の支持体等に転写して用いることも可能である。なお、位相差の調整は該分子からなる層を塗布する際、膜厚を調整することで容易に行うことができる。これらのコーティング法については特開2000−105316号、同2001−21720号等の各公報に記載がある。
【0036】
次に、本発明の光学異方体、位相差板及び位相差膜等の製造過程において、該チエニルアリールアセチレン化合物を少なくとも構成成分の一部として含有してなる層に外部電場、あるいは外部磁場を印加することによって該分子を配向させてもよい。配向法としては外部電場を用いる方法が好ましく、コンタクトポーリング法(平面電極ポーリング法、電極サンドイッチポーリング法)やコロナポーリング法を採用することが好ましい。これらのポーリング法は「光・電子機能有機材料ハンドブック」、朝倉書店発行(1995年)に記載されている方法を用いることができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが,本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0038】
実施例1:化合物1の合成
まず、20.0g(79.0mmol)の(4−ブロモ−フェニルエチニル)トリメチルシラン(アルドリッチ社製)をテトラヒドロフラン(THF)200mlに溶解させ、−78℃においてn−ブチルリチウム (94.8mmol, 1.6Mヘキサン溶液)を徐々に添加した。そのまま1時間撹拌した後、トリエトキシボレート(B(OEt)3)を13.6ml (80.0mmol)加え、室温で2時間撹拌した。その後希塩酸水溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去して、4−トリメチルシラニルエチニルボロン酸 9.6g(44mmol)を得た。
【0039】
次に、4−トリメチルシラニルエチニルボロン酸 (9.6g, 44.0mmol)及び5−ブロモチオフェン−2−カルボン酸エチルエステル (11.3g, 48.4mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)100mlに溶解させ、Pd(PPh3)4(508mg, 0.44mmol)及び炭酸カリウム(9.60g, 88.0mmol)存在下、80℃において12時間撹拌した。その後、水150mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥して、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去した。その後、ヘキサン/酢酸エチル=1/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、5−(4−トリメチルシラニルエチニルフェニル)チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル(収量10.9g, 収率79%)を得た。
【0040】
次に、5−(4−トリメチルシラニルエチニルフェニル)チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル (10.9g, 34.7mmol)をTHF90mlに溶解させ、TBAF(10.8g, 41.6mmol)を滴下した。室温にて5時間撹拌した後、水100mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥して、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去し、5−(4−エチニル−フェニル)チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル(収量6.8g, 収率81%)を得た。
【0041】
次に、5−(4−エチニル−フェニル)チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル(6.8g, 28.1mmol)及び5−ブロモチオフェン−2−カルボン酸エチルエステル (8.0g, 33.7mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)50mlに溶解させ、Pd(PPh3)4(324mg, 0.28mmol)、ジエチルアミン(5.0g, 67.4mmol)及びCuI(107mg, 0.56mmol)存在下、60℃において12時間撹拌した。その後、水100mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥して、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去した。その後、ヘキサン/酢酸エチル=3/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、目的とする化合物1を得た(収量6.8g, 収率64%)。
得られた生成物の各測定値は以下のとおりである。
FAB−MS (M+H)+ = 411
1H NMR (CDCl3 , 300MHz, δ) : 1.36−1.42(t, J = 3.3Hz, 6H), 4.33−4.41(m, 4H), 7.23−7.24(d, J = 3.9Hz, 1H), 7.33−7.34(d, J = 3.9Hz, 1H), 7.54−7.57(d, J = 9.0Hz, 2H), 7.63−7.66(d, J = 8.5Hz, 2H), 7.69−7.70(d, J = 3.9Hz,1H), 7.76−7.78(d, J = 3.9Hz, 1H)
【0042】
得られた化合物を偏光顕微鏡にて観察したところ液晶性を示し、下図のような相転移温度を示した。
但し、Cは結晶相、SAはスメクチックA相、Nはネマチック相、Iは等方相を表す。
【0043】
【化11】
【0044】
この化合物1を「高分子素材の偏光顕微鏡入門」(アグネ技術センター)に記載の方法(くさびセル法)により複屈折率(複屈折率異方性)Δnを測定すると115℃、550nmの波長においてΔn=0.23であった。
したがって、化合物1は、液晶性を示し、高い複屈折率を有することが分かった。このことから、本発明の化合物は光学材料として利用可能である。
【0045】
実施例2:化合物5の合成
まず、20.0g(79.0mmol)の(4−ブロモ−フェニルエチニル)トリメチルシラン(アルドリッチ社製)をテトラヒドロフラン(THF)200mlに溶解させ、−78℃においてn−ブチルリチウム (94.8mmol, 1.6Mヘキサン溶液)を徐々に添加した。そのまま1時間撹拌した後、トリエトキシボレート(B(OEt)3)を13.6ml (80.0mmol)加え、室温で2時間撹拌した。その後希塩酸水溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去して、4−トリメチルシラニルエチニルボロン酸 9.6g(44mmol)を得た。
【0046】
次に、4−トリメチルシラニルエチニルボロン酸 (7.2g, 33.0mmol)及び5−ブロモチオフェン−2−カルボン酸オクチルエステル (12.7g, 40.0mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)80mlに溶解させ、Pd(PPh3)4(381mg, 0.33mmol)及び炭酸カリウム(9.60g, 66.0mmol)存在下、80℃において12時間撹拌した。その後、水150mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥して、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去した。その後、ヘキサン/酢酸エチル=1/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、5−(4−トリメチルシラニルエチニルフェニル)チオフェン−2−カルボン酸オクチルエステル(収量5.23g, 収率62%)を得た。
【0047】
次に、5−(4−トリメチルシラニルエチニルフェニル)チオフェン−2−カルボン酸オクチルエステル (5.23g, 20.5mmol)をTHF70mlに溶解させ、TBAF(6.43g, 24.6mmol)を滴下した。室温にて5時間撹拌した後、水90mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥して、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去し、5−(4−エチニルフェニル)チオフェン−2−カルボン酸オクチルエステル(収量5.23g, 収率75%)を得た。
【0048】
次に、5−(4−エチニルフェニル)チオフェン−2−カルボン酸オクチルエステル(5.2g, 15.4mmol)及び5−ブロモチオフェン−2−カルボン酸ブチルエステル (4.87g, 18.5mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)50mlに溶解させ、Pd(PPh3)4(220mg,0.19mmol)、ジエチルアミン(3.4g, 46.2mmol)及びCuI(72mg, 0.38mmol)存在下、60℃において12時間撹拌した。その後、水60mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥して、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去した。その後、ヘキサン/酢酸エチル=2/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、目的とする化合物5を得た(収量6.8g, 収率64%)。
得られた生成物の測定値は以下のとおりである。
FAB−MS (M+H)+ = 523
【0049】
実施例3:化合物7の合成
まず、合成例1の方法に従って化合物1を合成した。
【0050】
次に、化合物1(5.0g, 12.2mmol)をTHF / EtOH (1:1)溶液150mlに溶解させ、これに水酸化ナトリウム2gを加え、室温にて48時間撹拌した。その後1N HCl水溶液を加え、沈殿物を濾過分取した。この沈殿物を水で洗浄することでエチル基を脱保護した化合物1のジカルボン酸を得た。
【0051】
最後に、このジカルボン酸(2.3g, 6.5mmol)をアクリル酸8−メタンスルホニルオキシオクチルエステル (5.4mg, 19.5mmol)及び炭酸カリウム (4.0mg, 29.3mmol)存在下、ジメチルホルムアミド10ml中で80℃に加熱して8時間撹拌した。その後反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、抽出液を飽和炭酸水素ナトリウム水及び飽和食塩水にて洗浄した。抽出液(有機層)を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターにて濃縮し、この濃縮液をシリカゲルクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)にて精製して、化合物7を合成した(収量3.0g, 収率65%)。
得られた生成物の測定値は以下のとおりである。
FAB−MS (M+H)+ = 719
【0052】
実施例4:位相差膜の製造
日産化学(株)社製のポリイミド系配向膜(SE−150)を塗付したガラス基盤にラビング処理を施した後、下記の組成の塗付液をスピンコートにより塗付した。そして、連続的に50℃4時間乾燥および90℃3時間加熱(配向熟成)し、さらに紫外線(強度200W)を3分間照射することにより架橋し、厚さ4.4μmの位相差膜を作成した。
────────────────────────────────────
液晶層塗布液組成
────────────────────────────────────
化合物7 19.6質量%
セルロースアセテートブチレート 0.2質量%
光重合開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア651) 0.2質量%
メチルエチルケトン 80.0質量%
────────────────────────────────────
【0053】
【発明の効果】
本発明のチエニルアリールアセチレン化合物及びその架橋体は、合成が簡便であり且つ高い光学的異方性を有する。
さらに、本発明のチエニルアリールアセチレン化合物を用いた光学異方体、位相差板及び位相差膜は、熱、紫外線等に対して非常に安定であり、着色、白濁等の膜劣化が少ない。更に光学的異方性が経時変化によって、ほとんど変化しないという優れた効果を奏する。
【発明の属する技術分野】
本発明は導電性材料、発光素子材料、光学異方体、位相差板、位相差膜等に利用可能な高複屈折率のチエニルアリールアセチレン化合物及びそれらを重合して得られる重合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶性化合物は液晶層において液体のような流動性と結晶のような規則的な分子配列を併せ持つ性質を示すことから様々な分野で応用展開が期待されており、その配向制御は工学的応用に欠かせないものとなっている。このような工学的応用に適した有用な液晶化合物の探索が必要とされている。
【0003】
また、フェニレン基もしくはシクロへキシレン基と炭素−炭素三重結合を有する化合物を用いたフィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−273205号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、簡便に合成可能であり且つ高い複屈折率を有する新規チエニルアリールアセチレン化合物を提供することである。更に、オプトエレクトロニクス分野等に適用できる、上記チエニルアリールアセチレン化合物を用いた導電性材料、発光素子材料、光学異方体、位相差板及び位相差膜を提供することでもある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、チエニルアリールアセチレン化合物が簡便に合成可能であり且つ高い複屈折率を有することを見出した。本発明はこの知見に基づきなされるに至ったものである。
すなわち、
(1)下記一般式(I)で表される化合物。
【0007】
【化3】
【0008】
(式中、Xは置換基を有していても良い炭素数4〜10の二価の芳香族基を示す。また、式中のチエニル基は置換基を有していても良い。)
(2)下記一般式(II)で表されることを特徴とする(1)項に記載の化合物。
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、R1、R2はそれぞれ独立して複数の置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルキル基を示し、Xは置換基を有していても良い炭素数4〜10の2価の芳香族基を示す。また、式中のチエニル基は置換基を有していても良い。)
(3)R1およびR2のうち少なくとも一方が架橋性置換基を有することを特徴とする(2)項に記載の化合物。
(4)R1およびR2はそれぞれ独立してアクロイルオキシ基又はメタアクロイルオキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基であることを特徴とする(2)又は(3)項に記載の化合物。
(5)前記Xが、1,4−フェニレン基又は2,6−ナフタレン基である(ただし、Xは置換基を有していても良い。)ことを特徴とする(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の化合物。
(6)(1)〜(5)項のいずれか1項記載の化合物である光学材料。
(7)(1)〜(5)項のいずれか1項記載の化合物から形成される層を含むことを特徴とする光学異方体。
(8)(1)〜(5)項のいずれか1項記載の化合物から形成される層を含むことを特徴とする位相差板。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0012】
まず、下記、一般式(I)または(II)で表される化合物(本明細書において、「本発明の化合物」と称することがある)について説明する。
【0013】
【化5】
【0014】
【化6】
【0015】
前記一般式(II)中のR1及びR2はそれぞれ独立して炭素数1〜20の直鎖または環状アルキル基を表すが、炭素数2〜14の直鎖または環状アルキル基が好ましく、炭素数2〜12の直鎖または環状アルキル基が特に好ましい。
【0016】
R1及びR2が置換基を有する場合、好ましい置換基の例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ハロゲン原子等が挙げられ、また架橋性の置換基を有することも好ましい。架橋性の置換基としてはアクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、グリシジル基、ビニルオキシ基等が好ましく、アクリロイルオキシ基及びメタアクリロイルオキシ基が特に好ましい。また、架橋性基の導入位置は特に限定されないが、R1及びR2の末端にあることが好ましい。
【0017】
前記一般式(I)または(II)中のXは炭素数4〜10、好ましくは炭素数5〜10の芳香族基を示し、より好ましくは炭素数6〜10の二価の芳香族炭化水素基、及び炭素数4〜10(好ましくは炭素数5〜10)の二価の芳香族複素環基が挙げられる。さらに好ましい例としては下記の基が挙げられる。
【0018】
【化7】
【0019】
前記一般式(I)または(II)中のXとして、特に好ましくは1,4−フェニレン基又は2,6−ナフタレン基が挙げられる。ただし、これらの芳香族基は任意の位置に1個又は複数個の置換基を有していても良い。その好ましい置換基の例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基等が挙げられ、特に好ましい例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びイソプロポキシ基が挙げられる。
【0020】
前記一般式(I)または(II)における2個のチエニル基はそれぞれ独立して1個又は複数個の置換基を有していても良い。その好ましい置換基の例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基等が挙げられ、特に好ましい例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びイソプロポキシ基が挙げられる。
【0021】
前記一般式(I)または(II)で表される化合物の具体例としては、下記のような化合物を挙げることができる。
【0022】
【化8】
【0023】
【化9】
【0024】
本発明の特に好ましい例の化合物は例えば以下に示すスキーム1の方法によって合成できる。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
スキーム1
【0026】
【化10】
(式中、R1,R2は保護基を示す。)
【0027】
まず化合物Cは、化合物A及びBをPd触媒及び塩基I存在下、40〜100℃程度の温度で12時間程度撹拌すると合成することができる。化合物Aに対し、化合物Bは当量比で1〜2当量が好ましく、更に好ましくは1〜1.2当量である。Pd触媒は化合物Aに対し0.1〜5モル%が好ましく、更に好ましくは1〜2モル%である。塩基Iは化合物Bに対し、1〜4当量が好ましく、更に好ましくは1〜2当量である。Pd触媒の例としては Pd(PPh3)4, PdCl2(PPh3)2, Pd(OAc)2−PPh3, Pd2(dba)3CHCl3−PPh3 等が好ましい(ここで、Phはフェニル基を表わす。)。また、ヨウ化第一銅を添加することが好ましく、1〜5モル%添加することが好ましい。塩基Iとしては無機及び有機塩基を採用することができ、好ましい塩基の例としてはトリエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ピリジン、ルチジン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられ、特に好ましくはジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミンである。用いる有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
【0028】
化合物Dは、化合物Cに塩基IIを作用させた後、B(OEt)3(ここで、Etはエチル基を表わす。)を加えて室温にて撹拌することにより合成できる。塩基IIは化合物Cに対し、1〜2当量が好ましく、更に好ましくは1〜1.2当量である。B(OEt)3は化合物Cに対し、1〜2当量が好ましく、更に好ましくは1〜1.2当量である。塩基IIとしては好ましい例としては、tert−ブチルリチウム、n−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、水素化ナトリウム、水素化リチウム、炭酸カリウム等が挙げられ、特に好ましくはtert−ブチルリチウム、n−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)が挙げられる。
【0029】
化合物Fは、化合物D及びEをPd触媒及び塩基III存在下、20〜80℃程度の温度で12時間程度撹拌すると合成することができる。化合物Dに対し、化合物Eは当量比で1〜2当量が好ましく、更に好ましくは1〜1.2当量である。Pd触媒は化合物Aに対し0.1〜5モル%が好ましく、更に好ましくは1〜2モル%である。塩基IIIは化合物Dに対し、1〜4当量が好ましく、更に好ましくは1〜2当量である。Pd触媒の例としては Pd(PPh3)4, PdCl2(PPh3)2, Pd(OAc)2−PPh3, Pd2(dba)3CHCl3−PPh3 等が好ましい。また、ヨウ化第一銅を添加することが好ましく、1〜5モル%添加することが好ましい。塩基IIIとしては無機及び有機塩基を採用することができ、好ましい塩基の例としてはトリエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ルチジン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、特に好ましくはトリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミンである。
【0030】
化合物Gの合成過程に於いて、TMS基の脱保護は用いる基質の種類により、プロテクティブ・グループス・イン・オルガニック・ケミストリー,(プレナムプレス)(ロンドンとニューヨーク,1973)[Protective Groups in Organic Chemistry,Plenum Press];グリーン・ティー・ダブリュ著(Green,T.W.),プロテクティブグループス・イン・オルガニック・シンセシス,(ウィリー,ニューヨーク,1981)[ Protective Groups in Organic Synthesis, Wiley New York,1981];及びペプチド類,Vol.I,シュレーダーとルブケ著(アカデミックプレス(ロンドンとニューヨーク)1965)[Peptides,Vol.I,Schrooder and Lubke,Academic Press(London and New York,1965)]に記載されている方法に従って脱保護を行うことができる。
【0031】
化合物Iの合成は、化合物Bを化合物Gに換え、化合物Aを化合物Hに換えて上記の化合物Cの合成と同様の手法で合成できる。
【0032】
化合物Jの合成過程に於いて、保護基R1及びR2の脱保護は用いる基質の種類により、前記「プロテクティブ・グループス・イン・オルガニック・ケミストリー」に記載の方法により行うことができる。
【0033】
最後に目的とする化合物Lは化合物J及びKを塩基IV存在下、30〜100℃程度の温度で12時間程度撹拌すると合成することができる。化合物Kは化合物Jに対し当量比で1〜2当量が好ましく、更に好ましくは1.1〜1.5当量である。塩基IVは化合物Jに対し、1〜4当量が好ましく、更に好ましくは1〜2当量である。好ましい塩基IVとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0034】
本発明の化合物から形成される層(層とは形状に依存せず部分又は全体を指す)を含む光学異方体、位相差板及び位相差膜は、1)支持体等に本発明の化合物を少なくとも構成成分の一部として含有してなる層を塗布し、2)ホモジニアス配向させ、3)架橋することにより製造できる。
上記本発明の化合物は、架橋性基を有するが、好ましくは、本発明の化合物7〜11を挙げることができる。上記光学異方体、位相差板及び位相差膜中における本発明の化合物は架橋していても、架橋していなくてもよい。
【0035】
ここで、支持体等は特に限定されないが、ガラス基板、高分子フイルム、反射板などが例として挙げることができる。これらの支持体等は必要に応じて配向処理を施してもよい。配向処理としては種々の一般的な方法が採用できるが、各種ポリイミド系配向膜、ポリビニルアルコール系配向膜等の液晶配向層を支持体等の上に設け、ラビングなどの配向処理行う方法が好ましい例として挙げられる。塗布する方式としては、公知の方法、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等が採用される。架橋反応には、熱あるいは電磁波による公知の種々の架橋法が採用できるが、紫外光による光重合開始剤を用いるラジカル重合が特に好ましい。また、以上にようにして製造した膜を支持体から剥離、あるいは他の支持体等に転写して用いることも可能である。なお、位相差の調整は該分子からなる層を塗布する際、膜厚を調整することで容易に行うことができる。これらのコーティング法については特開2000−105316号、同2001−21720号等の各公報に記載がある。
【0036】
次に、本発明の光学異方体、位相差板及び位相差膜等の製造過程において、該チエニルアリールアセチレン化合物を少なくとも構成成分の一部として含有してなる層に外部電場、あるいは外部磁場を印加することによって該分子を配向させてもよい。配向法としては外部電場を用いる方法が好ましく、コンタクトポーリング法(平面電極ポーリング法、電極サンドイッチポーリング法)やコロナポーリング法を採用することが好ましい。これらのポーリング法は「光・電子機能有機材料ハンドブック」、朝倉書店発行(1995年)に記載されている方法を用いることができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが,本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0038】
実施例1:化合物1の合成
まず、20.0g(79.0mmol)の(4−ブロモ−フェニルエチニル)トリメチルシラン(アルドリッチ社製)をテトラヒドロフラン(THF)200mlに溶解させ、−78℃においてn−ブチルリチウム (94.8mmol, 1.6Mヘキサン溶液)を徐々に添加した。そのまま1時間撹拌した後、トリエトキシボレート(B(OEt)3)を13.6ml (80.0mmol)加え、室温で2時間撹拌した。その後希塩酸水溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去して、4−トリメチルシラニルエチニルボロン酸 9.6g(44mmol)を得た。
【0039】
次に、4−トリメチルシラニルエチニルボロン酸 (9.6g, 44.0mmol)及び5−ブロモチオフェン−2−カルボン酸エチルエステル (11.3g, 48.4mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)100mlに溶解させ、Pd(PPh3)4(508mg, 0.44mmol)及び炭酸カリウム(9.60g, 88.0mmol)存在下、80℃において12時間撹拌した。その後、水150mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥して、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去した。その後、ヘキサン/酢酸エチル=1/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、5−(4−トリメチルシラニルエチニルフェニル)チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル(収量10.9g, 収率79%)を得た。
【0040】
次に、5−(4−トリメチルシラニルエチニルフェニル)チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル (10.9g, 34.7mmol)をTHF90mlに溶解させ、TBAF(10.8g, 41.6mmol)を滴下した。室温にて5時間撹拌した後、水100mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥して、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去し、5−(4−エチニル−フェニル)チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル(収量6.8g, 収率81%)を得た。
【0041】
次に、5−(4−エチニル−フェニル)チオフェン−2−カルボン酸エチルエステル(6.8g, 28.1mmol)及び5−ブロモチオフェン−2−カルボン酸エチルエステル (8.0g, 33.7mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)50mlに溶解させ、Pd(PPh3)4(324mg, 0.28mmol)、ジエチルアミン(5.0g, 67.4mmol)及びCuI(107mg, 0.56mmol)存在下、60℃において12時間撹拌した。その後、水100mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥して、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去した。その後、ヘキサン/酢酸エチル=3/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、目的とする化合物1を得た(収量6.8g, 収率64%)。
得られた生成物の各測定値は以下のとおりである。
FAB−MS (M+H)+ = 411
1H NMR (CDCl3 , 300MHz, δ) : 1.36−1.42(t, J = 3.3Hz, 6H), 4.33−4.41(m, 4H), 7.23−7.24(d, J = 3.9Hz, 1H), 7.33−7.34(d, J = 3.9Hz, 1H), 7.54−7.57(d, J = 9.0Hz, 2H), 7.63−7.66(d, J = 8.5Hz, 2H), 7.69−7.70(d, J = 3.9Hz,1H), 7.76−7.78(d, J = 3.9Hz, 1H)
【0042】
得られた化合物を偏光顕微鏡にて観察したところ液晶性を示し、下図のような相転移温度を示した。
但し、Cは結晶相、SAはスメクチックA相、Nはネマチック相、Iは等方相を表す。
【0043】
【化11】
【0044】
この化合物1を「高分子素材の偏光顕微鏡入門」(アグネ技術センター)に記載の方法(くさびセル法)により複屈折率(複屈折率異方性)Δnを測定すると115℃、550nmの波長においてΔn=0.23であった。
したがって、化合物1は、液晶性を示し、高い複屈折率を有することが分かった。このことから、本発明の化合物は光学材料として利用可能である。
【0045】
実施例2:化合物5の合成
まず、20.0g(79.0mmol)の(4−ブロモ−フェニルエチニル)トリメチルシラン(アルドリッチ社製)をテトラヒドロフラン(THF)200mlに溶解させ、−78℃においてn−ブチルリチウム (94.8mmol, 1.6Mヘキサン溶液)を徐々に添加した。そのまま1時間撹拌した後、トリエトキシボレート(B(OEt)3)を13.6ml (80.0mmol)加え、室温で2時間撹拌した。その後希塩酸水溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去して、4−トリメチルシラニルエチニルボロン酸 9.6g(44mmol)を得た。
【0046】
次に、4−トリメチルシラニルエチニルボロン酸 (7.2g, 33.0mmol)及び5−ブロモチオフェン−2−カルボン酸オクチルエステル (12.7g, 40.0mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)80mlに溶解させ、Pd(PPh3)4(381mg, 0.33mmol)及び炭酸カリウム(9.60g, 66.0mmol)存在下、80℃において12時間撹拌した。その後、水150mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥して、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去した。その後、ヘキサン/酢酸エチル=1/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、5−(4−トリメチルシラニルエチニルフェニル)チオフェン−2−カルボン酸オクチルエステル(収量5.23g, 収率62%)を得た。
【0047】
次に、5−(4−トリメチルシラニルエチニルフェニル)チオフェン−2−カルボン酸オクチルエステル (5.23g, 20.5mmol)をTHF70mlに溶解させ、TBAF(6.43g, 24.6mmol)を滴下した。室温にて5時間撹拌した後、水90mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥して、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去し、5−(4−エチニルフェニル)チオフェン−2−カルボン酸オクチルエステル(収量5.23g, 収率75%)を得た。
【0048】
次に、5−(4−エチニルフェニル)チオフェン−2−カルボン酸オクチルエステル(5.2g, 15.4mmol)及び5−ブロモチオフェン−2−カルボン酸ブチルエステル (4.87g, 18.5mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)50mlに溶解させ、Pd(PPh3)4(220mg,0.19mmol)、ジエチルアミン(3.4g, 46.2mmol)及びCuI(72mg, 0.38mmol)存在下、60℃において12時間撹拌した。その後、水60mlを加え酢酸エチルにて抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムにて乾燥して、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去した。その後、ヘキサン/酢酸エチル=2/1混合溶媒を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーにより単離し、目的とする化合物5を得た(収量6.8g, 収率64%)。
得られた生成物の測定値は以下のとおりである。
FAB−MS (M+H)+ = 523
【0049】
実施例3:化合物7の合成
まず、合成例1の方法に従って化合物1を合成した。
【0050】
次に、化合物1(5.0g, 12.2mmol)をTHF / EtOH (1:1)溶液150mlに溶解させ、これに水酸化ナトリウム2gを加え、室温にて48時間撹拌した。その後1N HCl水溶液を加え、沈殿物を濾過分取した。この沈殿物を水で洗浄することでエチル基を脱保護した化合物1のジカルボン酸を得た。
【0051】
最後に、このジカルボン酸(2.3g, 6.5mmol)をアクリル酸8−メタンスルホニルオキシオクチルエステル (5.4mg, 19.5mmol)及び炭酸カリウム (4.0mg, 29.3mmol)存在下、ジメチルホルムアミド10ml中で80℃に加熱して8時間撹拌した。その後反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、抽出液を飽和炭酸水素ナトリウム水及び飽和食塩水にて洗浄した。抽出液(有機層)を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターにて濃縮し、この濃縮液をシリカゲルクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)にて精製して、化合物7を合成した(収量3.0g, 収率65%)。
得られた生成物の測定値は以下のとおりである。
FAB−MS (M+H)+ = 719
【0052】
実施例4:位相差膜の製造
日産化学(株)社製のポリイミド系配向膜(SE−150)を塗付したガラス基盤にラビング処理を施した後、下記の組成の塗付液をスピンコートにより塗付した。そして、連続的に50℃4時間乾燥および90℃3時間加熱(配向熟成)し、さらに紫外線(強度200W)を3分間照射することにより架橋し、厚さ4.4μmの位相差膜を作成した。
────────────────────────────────────
液晶層塗布液組成
────────────────────────────────────
化合物7 19.6質量%
セルロースアセテートブチレート 0.2質量%
光重合開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア651) 0.2質量%
メチルエチルケトン 80.0質量%
────────────────────────────────────
【0053】
【発明の効果】
本発明のチエニルアリールアセチレン化合物及びその架橋体は、合成が簡便であり且つ高い光学的異方性を有する。
さらに、本発明のチエニルアリールアセチレン化合物を用いた光学異方体、位相差板及び位相差膜は、熱、紫外線等に対して非常に安定であり、着色、白濁等の膜劣化が少ない。更に光学的異方性が経時変化によって、ほとんど変化しないという優れた効果を奏する。
Claims (8)
- R1およびR2のうち少なくとも一方が架橋性置換基を有することを特徴とする請求項2に記載の化合物。
- R1およびR2はそれぞれ独立してアクロイルオキシ基又はメタアクロイルオキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基であることを特徴とする請求項2又は3に記載の化合物。
- 前記Xが、1,4−フェニレン基又は2,6−ナフタレン基である(ただし、Xは置換基を有していても良い。)ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物である光学材料。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物から形成される層を含むことを特徴とする光学異方体。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物から形成される層を含むことを特徴とする位相差板。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007533659A (ja) * | 2004-02-25 | 2007-11-22 | メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング | 反応性メソゲン電荷輸送化合物 |
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2002
- 2002-09-30 JP JP2002288077A patent/JP2004123580A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007533659A (ja) * | 2004-02-25 | 2007-11-22 | メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング | 反応性メソゲン電荷輸送化合物 |
JP4901718B2 (ja) * | 2004-02-25 | 2012-03-21 | メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | 反応性メソゲン電荷輸送化合物 |
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