JP2004111255A - 固体高分子型燃料電池の運転方法および運転システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】イオン導電体となる電解質と該電解質の両側に設けられた一対の電極とからなる電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成された固体高分子型燃料電池の運転方法を、固体高分子型燃料電池を構成する構成部材に含まれる炭素材料の酸化の程度を測定する酸化程度測定ステップと、酸化程度測定ステップで測定された測定値に基づいて固体高分子型燃料電池が予め定められた酸化反応促進領域にあるかどうかの判断を行い、固体高分子型燃料電池が該酸化反応促進領域にあると判断された場合には、固体高分子型燃料電池を酸化反応促進領域から回避させるよう運転条件を制御する運転制御ステップとを含んで構成する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池の運転方法および運転システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスの電気化学反応により電気を発生させる燃料電池は、発電効率が高く、排出されるガスがクリーンで環境に対する影響が極めて少ないことから、近年、発電用、低公害の自動車用電源等、種々の用途が期待されている。燃料電池は、その電解質により分類することができ、例えば、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、固体高分子型燃料電池等が知られている。
【0003】
なかでも、固体高分子型燃料電池は、80℃程度の低温で作動させることができるため、他の種類の燃料電池と比較して取扱いが比較的容易であり、また、出力密度が極めて大きいことから、その利用が期待されるものである。固体高分子型燃料電池は、通常、プロトン導電性のある高分子膜を電解質とする。電解質の両側にそれぞれ燃料極、酸素極となる一対の電極が設けられ電極接合体が構成される。電極接合体をセパレータで挟持した単セルが発電単位となる。そして、水素や炭化水素等の燃料ガスを燃料極に、酸素や空気等の酸化剤ガスを酸素極にそれぞれ供給し、ガスと電解質と電極との3相界面において電気化学的な反応を進行させることにより電気を取り出す。
【0004】
しかし、固体高分子型燃料電池では、上記燃料極、酸素極に供給された各々のガスの一部が、電気化学反応に寄与することなく互いに電解質内部を拡散し、対極の電極上でその電極に供給されたガスと混合するという、いわゆるクロスリークが問題となる。クロスリークが生じると、電池電圧の低下や、エネルギー効率の低下を招く。さらには、クロスリークによる燃焼反応で、電解質である高分子膜に孔があき、電池を作動させることができなくなるおそれもある。
【0005】
一方で、電池の内部抵抗を小さくし、出力をより高くするという観点から、電解質である高分子膜の薄膜化が検討されている。しかし、高分子膜を薄くすると、ガスが拡散し易くなるため、上記クロスリークの問題はより深刻なものとなる。また、薄膜化により高分子膜自体の機械的強度が低下することに加え、高分子膜の製造時にピンホール等が発生し易くなる。これら、高分子膜自体の欠陥もクロスリーク増大の要因の一つとなる。
【0006】
特に、高出力型の大型電池では、電解質となる高分子膜を薄くし、かつその面積を大きくする必要があるため、上記クロスリークの問題は深刻となる。したがって、電池の運転初期におけるクロスリークが小さいこと、また、長期間の運転においてもクロスリークが増加しないことが望まれる。
【0007】
このような実状の中、クロスリークを抑制し、長期間の安定した運転を実現すべく種々の検討がなされている。例えば、セル電圧のばらつきが一定の値以下となるように、負荷電流、空気流量等の諸量を制御しながら燃料電池を運転する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。また、参照極と燃料極との電位差もしくは参照極と空気極との電位差を検知し、その検知信号に基づいて燃料電池の作動条件を制御する方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−208161号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2001−338667号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載されているいずれの方法も、セル電圧または各電極の電位変動をモニターしているにすぎないため、クロスリークの抑制には充分ではない。したがって、エネルギー効率を高く維持したまま長期間の安定した運転を実現することは困難である。
【0011】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、クロスリークの増加が小さく、長期間にわたり安定して運転することのできる固体高分子型燃料電池の運転方法を提供することを課題とする。また、そのような固体高分子型燃料電池の運転システムを提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、固体高分子型燃料電池におけるクロスリークの抑制について検討した結果、固体高分子型燃料電池を構成する構成部材に含まれる炭素材料の酸化が、上述したクロスリーク増加の原因の一つであるという知見を得た。
【0013】
一般に、固体高分子型燃料電池では、構成部材である電極やセパレータに炭素材料が使用されている。例えば、燃料極および酸素極は、各電極の触媒を含む触媒層と、ガスが拡散可能な多孔質材料からなる拡散層との二層から構成される。ここで、各電極の触媒層における触媒には、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維等の炭素材料に白金を担持させたものが多く用いられる。拡散層は、触媒層の表面に、カーボンクロス、カーボンペーパー等を圧着等することで形成される。また、セパレータとしては、板状の焼成カーボンや成形カーボンの他、基材表面に炭化物の被膜を形成したもの等が用いられる。炭素材料は、電位が高くなると熱力学的に不安定となり、さらに、高温という条件が重なると酸化速度が著しく増加する。以下に、炭素材料の酸化のメカニズムを示す。
【0014】
高電位状態での炭素材料の酸化反応は、次式(1)で表される。
C+2H2O→CO2+4H++4e−・・・(1)
ここで、25℃における式(1)の熱力学的な平衡電位E0は、プールベダイヤグラム(Pourbaix diagram)より、次式(2)で表される。
E25℃=0.207−0.0591×pH+0.0148×logP(CO2)・・・(2)
絶対温度T(K)では、25℃の標準生成自由エネルギー変化がそのまま使えると近似して、絶対温度T(K)における式(1)の熱力学的な平衡電位ETは、次式(3)、(4)で表される。
ET=0.207−RT/4F×ln{(H+)4P(CO2)}・・・(3)
ET=0.207−1.98×10−4×T×pH+4.96×10−5×T×logP(CO2)・・・(4)
(T:絶対温度、R:ガス定数、F:ファラディ定数)
式(4)より、例えば、pH値が2、P(CO2)=1、T=353.15(K)である場合、
E353.15=0.067(V vs.SHE)と計算される。
【0015】
一方、無負荷状態での酸素極における反応は、次式(5)で表される。
2H2O→O2+4H++4e−・・・(5)
上記同様に、25℃および絶対温度T(K)における式(5)の熱力学的な平衡電位E0は、それぞれ次式(6)、(7)で表される。
E25℃=1.228−0.0591×pH+0.0148×logP(O2)・・・(6)
ET=1.228−1.98×10−4×T×pH+4.96×10−5×T×logP(O2)・・・(7)
通常の負荷運転時における酸素極では、上記式(5)の反応の逆反応が優先的に生じる。また、燃料極における反応は、次式(8)で表される。
2H2→4H++4e−・・・(8)
しかしながら、水素の供給が充分ではなく、式(8)の反応が制限された場合には、酸素極では式(5)の反応の平衡が成り立たない。その結果、酸素極では、式(1)の反応と次式(9)で表される反応が生じる。
O2+2H2O+4e− →4OH−・・・(9)
25℃における式(9)の熱力学的な平衡電位E0は、上記式(2)と同様に、次式(10)で表される。
E25℃=0.401−0.0591×pH+0.0148×logP(O2)・・・(10)
炭素材料の酸化は、式(1)の酸化反応と式(9)の還元反応とが組み合わさったものとして捉えることができる。常温より低い温度では、式(9)の反応速度は小さい。したがって、常温より低い温度では、炭素材料の酸化速度は、式(9)の反応律速となるため極めて小さい。ところが、白金等の酸素還元反応を促進する触媒の存在下では、常温下であっても式(9)の反応速度は大きくなり、高温下では更に大きくなる。すなわち、高温下、電極の触媒層において白金と共存する炭素材料の酸化速度は極めて大きくなる。このように、Pt−Cの局部電池が形成されるという上記メカニズムによって、炭素材料は酸化される。
【0016】
上記式(1)からわかるように、炭素材料の酸化反応により炭素材料は消耗する。例えば、電極の触媒層における炭素材料が消耗することにより、触媒層中に微小な空洞を生じる他、電解質との接合面に切り欠きを生じる。これにより、触媒層と電解質との接合状態が悪化し、電解質への応力集中を招く。また、炭素材料の酸化による発熱により、電解質に局部的なヒートスポットが生じるおそれもある。このように、炭素材料が酸化、消耗することにより、クロスリークが発生し易くなると考えられる。
【0017】
本発明の固体高分子型燃料電池の運転方法は、イオン導電体となる電解質と該電解質の両側に設けられた一対の電極とからなる電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成された固体高分子型燃料電池の運転方法であって、前記固体高分子型燃料電池を構成する構成部材に含まれる炭素材料の酸化の程度を測定する酸化程度測定ステップと、前記酸化程度測定ステップで測定された測定値に基づいて該固体高分子型燃料電池が予め定められた酸化反応促進領域にあるかどうかの判断を行い、該固体高分子型燃料電池が該酸化反応促進領域にあると判断された場合には、該固体高分子型燃料電池を該酸化反応促進領域から回避させるよう運転条件を制御する運転制御ステップとを含んで構成される。
【0018】
すなわち、本発明の固体高分子型燃料電池の運転方法は、炭素材料の酸化の程度を測定しながら運転し、炭素材料の酸化反応が促進される領域を回避するように運転条件を制御する運転方法である。炭素材料の酸化を抑制することで、上述した触媒層の切り欠き等が発生し難くなり、電解質への応力集中が抑制される。また、電解質における局部的なヒートスポットも生じ難くなる。その結果、クロスリークを有効に抑制することができる。
【0019】
また、本発明の固体高分子型燃料電池の運転方法によれば、炭素材料が消耗し難いため、電極と電解質、電極とセパレータの接触状態が良好となる。さらに、炭素材料に含まれていたFe、Ni、Cu等の不純物が溶出し難くなるため、それら不純物イオンによる電極の被毒も抑制される。また、上記不純物イオンと電解質の高分子を構成するスルホン酸基とのプロトン交換も抑制されるため、電解質の導電性の低下が抑制され、内部抵抗の増加が小さくなる。
【0020】
このように、炭素材料の酸化反応が抑制されるように運転条件を制御することで、クロスリークの発生や内部抵抗の増加を抑制することができる。したがって、本発明の固体高分子型燃料電池の運転方法によれば、エネルギー効率を高く維持したまま、固体高分子型燃料電池を長期間にわたり安定して運転することができる。
【0021】
また、本発明の固体高分子型燃料電池の運転システムは、イオン導電体となる電解質と該電解質の両側に設けられた一対の電極とからなる電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成された固体高分子型燃料電池の運転システムであって、前記固体高分子型燃料電池を構成する構成部材に含まれる炭素材料の酸化の程度を測定する酸化程度測定手段と、前記酸化程度測定手段により測定された測定値に基づいて前記固体高分子型燃料電池が予め定められた酸化反応促進領域にあるかどうかの判断を行い、該固体高分子型燃料電池が該酸化反応促進領域にあると判断された場合には、該固体高分子型燃料電池を該酸化反応促進領域から回避させるよう運転条件を制御する運転制御手段とを備える。
【0022】
本発明の固体高分子型燃料電池の運転システムによれば、上述した本発明の固体高分子型燃料電池の運転方法を実施することができる。すなわち、酸化程度測定手段により酸化の程度を測定し、運転制御手段により炭素材料の酸化反応が抑制されるように運転条件を制御することで、クロスリークの発生や内部抵抗の増加を抑制することができる。したがって、本発明の固体高分子型燃料電池の運転システムは、エネルギー効率を高く維持したまま、固体高分子型燃料電池を長期間にわたり安定して運転するシステムとなる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の固体高分子型燃料電池の運転方法の実施形態と運転システムの実施形態とを順に説明する。なお、本発明の固体高分子型燃料電池の運転方法および運転システムは、下記の実施形態に限定されるものではない。本発明の固体高分子型燃料電池の運転方法および運転システムは、下記実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【0024】
〈固体高分子型燃料電池の運転方法〉
本発明の運転方法の運転対象となる固体高分子型燃料電池は、イオン導電体となる電解質と該電解質の両側に設けられた一対の電極とからなる電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成される。つまり、本発明の運転方法の運転対象となる固体高分子型燃料電池は、電解質と一対の電極とセパレータとを備えるという点で、一般に知られている固体高分子型燃料電池の構成に従うものである。
【0025】
通常、電解質には、イオン導電性のある高分子膜が用いられる。高分子膜の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、全フッ素系スルホン酸膜、全フッ素系ホスホン酸膜、全フッ素系カルボン酸膜や、含フッ素炭化水素系グラフト膜、全炭化水素系グラフト膜、全芳香族膜等の炭化水素系電解質膜等を用いることができる。特に、耐久性等を考慮した場合には、全フッ素系電解質膜を用いることが望ましい。なかでも、電解質としての性能が高いという理由から、全フッ素系スルホン酸膜を用いることが望ましい。全フッ素系スルホン酸膜の一例として、「ナフィオン」(登録商標、デュポン社製)の商品名で知られる、スルホン酸基を有するパーフルオロビニルエーテルとテトラフルオロエチレンとの共重合体膜が挙げられる。
【0026】
一対の電極となる燃料極および酸素極は、それぞれ、白金等をカーボン粒子に担持させた触媒を含む触媒層と、カーボンクロス等のガスが拡散可能な多孔質材料からなる拡散層との二層から構成される。この場合、電解質となる高分子膜の両表面に触媒層と拡散層とを形成して電極接合体とすればよい。例えば、各電極の触媒を、電解質となる高分子膜の材料である高分子を含む液に分散し、その分散液を高分子膜の両表面に塗布、乾燥等して触媒層を形成する。そして、形成した各触媒層の表面に、カーボンクロス等を圧着等することで拡散層を形成し、電極接合体とすればよい。また、電極接合体を挟持するセパレータとしては、集電性能が高く、酸化水蒸気雰囲気下でも安定な焼成カーボンや成形カーボン等を用いればよい。
【0027】
本発明の固体高分子型燃料電池の運転方法は、酸化程度測定ステップと、運転制御ステップとを含む。酸化程度測定ステップでは、上記電極やセパレータ等の固体高分子型燃料電池を構成する構成部材に含まれる炭素材料の酸化の程度を測定する。運転制御ステップでは、酸化程度測定ステップで測定された測定値に基づいて、固体高分子型燃料電池が酸化反応促進領域にあるかどうかの判断を行い、固体高分子型燃料電池が酸化反応促進領域にあると判断された場合には、固体高分子型燃料電池を酸化反応促進領域から回避させるよう運転条件を制御する。以下、上記二つのステップを各実施形態において詳しく説明する。
【0028】
(1)第一実施形態
上述した炭素材料の酸化のメカニズムから、電池の作動温度、酸素極の電位およびpH値が炭素材料の酸化反応に大きく関与すると考えられる。したがって、本実施形態では、酸化程度測定ステップにおいて、固体高分子型燃料電池の作動温度、酸素極の電位、および酸素極における水分のpH値の少なくとも1つ以上を測定することにより炭素材料の酸化の程度を測定する。ここで、上記電池の作動温度等の測定値は、酸化の程度を直接数値として表すものではない。しかし、本明細書では、酸化の程度を把握するためのデータを測定することをも「酸化の程度を測定する」と表現している。なお、燃料極の電位は、通常0V近傍と考えられる。この電位は、上記式(4)で算出されるCO2生成の平衡電位ETより卑な電位である。よって、燃料極における炭素材料の酸化速度は、酸素極におけるそれと比較して小さい。つまり、燃料極における炭素材料は、陰分極により防食されている。よって、ここでは、酸素極における炭素材料の酸化を主として考える。
【0029】
本実施形態では、運転制御ステップにおいて、上記測定された温度値、酸素極の電位値、および酸素極における水分のpH値の少なくとも1つ以上に基づいて固体高分子型燃料電池が酸化反応促進領域にあるかどうかの判断を行うことになる。判断手法の一例を挙げる。例えば、電池の作動温度と酸素極の電位との関係から、炭素材料の酸化の程度の判断基準となる酸化反応促進領域を予め設定しておくことで、測定された温度値と酸素極の電位値とから容易に酸化反応促進領域であるかどうかを判断することができる。ここで、酸化反応促進領域の設定の一態様を示す。図1に、電池の作動温度と酸素極の電位との関係において定められた酸化反応促進領域例を示す。図中、横軸は酸素極の電位、縦軸は電池の作動温度であり、斜線で示した領域が酸化反応促進領域となる。図1に示す酸化反応促進領域は、電極の拡散層となるカーボンクロスの材料である黒鉛を、pH2の硫酸水溶液中で電位と温度とを変化させて定電位電解し、その際に流れる電流密度を測定することにより求めた。なお、酸化反応促進領域の設定基準については、後の第三実施形態で説明する。図1より、例えば、電池の作動温度が80℃、かつ酸素極の電位が0.8Vという条件にて発電している場合は、酸化反応促進領域内となる。よって、そのような条件下では固体高分子型燃料電池電池を長時間運転しないことが望ましい。つまり、本態様では、酸化程度測定ステップにおいて測定された温度値が80℃であり、かつ酸素極の電位値が0.8Vである場合には、固体高分子型燃料電池が酸化反応促進領域にあると判断され、固体高分子型燃料電池を酸化反応促進領域から回避させるよう運転条件が制御される。運転条件の制御については後述する。
【0030】
判断手法のもう一つの例を挙げる。例えば、予備実験より、予め酸化反応促進領域と判断するための基準値を設定しておくことで、所定の測定値がその基準値を超えた場合に酸化反応促進領域であると判断することができる。基準値の設定の一例として、本発明者は、固体高分子型燃料電池の作動温度と酸素極の電位と酸素極における水分のpH値とから、炭素材料の酸化の程度を判断することのできる実験式を見出した。すなわち、固体高分子型燃料電池の作動温度と酸素極の電位と該酸素極における水分のpH値とを測定し、測定された温度値が60℃を超え、かつ、測定された電位値が次式V=0.8−1.98×10−4×T×pH[T:セルの絶対温度(K)、pH:酸素極における水分のpH値]で計算される電位値(V vs.SHE)を超えている場合には、固体高分子型燃料電池が酸化反応促進領域にあると判断するものである。ここで、燃料極の電位およびpH値の変動が小さく、燃料極の電位が0V vs.SHE近傍にある場合には、酸素極の電位はセル電圧と置き換えることが可能である。したがって、実際には、電池の作動温度とセル電圧と酸素極における水分のpH値を測定することで、酸化の程度を測定することができる。つまり、酸化程度測定ステップにおいて測定された温度値が60℃を超え、かつセル電圧値が上記式から計算される値を超えた場合には、固体高分子型燃料電池が酸化反応促進領域にあると判断され、固体高分子型燃料電池を酸化反応促進領域から回避させるよう運転条件が制御される。
【0031】
ここで、制御される運転条件は、特に限定されるものではない。例えば、作動温度、運転スタック数、燃料ガスや酸化剤ガスの供給量および燃料ガスや酸化剤ガスの分圧等を適宜調整すればよい。固体高分子型燃料電池を酸化反応促進領域から回避させるためには、例えば、固体高分子型燃料電池の冷却水流量を増加したり、ラジエータファンにより強制冷却することにより、電池の作動温度を低くすればよい。また、酸素供給量を減らして、酸素のストイキ値(酸素供給量/発電電流から計算される理論酸素消費量)を1.5以下にすることにより、酸素極の電位を低下させればよい。
【0032】
(2)第二実施形態
本実施形態では、酸化程度測定ステップにおいて、固体高分子型燃料電池の作動温度と出力と電流密度とを測定することにより、炭素材料の酸化の程度を測定する。そして、運転制御ステップにおいて、測定された温度値における予め定められた出力Wと電流密度Iとの関係がdW/dI>0となる領域を酸化反応促進領域とする。以下に、上記酸化反応促進領域の設定の考え方を説明する。
【0033】
図2にセル電圧および出力の電流依存性をモデルで示す。図中、横軸は電流密度(I)、縦軸はセル電圧(V)と出力(W)である。出力と電流密度との関係を表すW−I曲線より、出力と電流密度との関係は、図中(A)と(B)との二つの領域に分けられる。図中(A)の領域は、dW/dI>0となる領域である。この領域では、セル電圧がOCV(開路電圧:Open Circuit Voltage)に近く高い値となる。一方(B)の領域は、dW/dI≦0となる領域である。この領域ではセル電圧が比較的低い値となる。
【0034】
例えば、固体高分子型燃料電池を動力用電源として用いる場合には、出力の大きさが重要となる。ここでは、ある出力(W0)が要求された場合を考える。図2において、出力がW0の場合、それを満足できる電流密度は(A)、(B)二つの領域に存在し、それぞれIa、Ibとなる。ここで、dW/dI≦0となる(B)領域の電流密度Ibを採用した場合、セル電圧は低い値となる。上述したように、燃料極の電位が0V vs.SHE近傍にある場合には、セル電圧は酸素極の電位と置き換えることが可能である。よって、dW/dI≦0となる領域の電流密度Ibを採用した場合には、酸素極の電位は低くなる。その結果、炭素材料の酸化は抑制される。一方、dW/dI>0となる(A)領域の電流密度Iaを採用した場合には、酸素極の電位が高くなる。したがって、dW/dI>0となる領域は、酸化反応促進領域として回避することが望ましい。
【0035】
このように、本実施形態では、運転制御ステップにおいて、測定された温度値と出力値と電流密度値とに基づいて、固体高分子型燃料電池がdW/dI>0となる領域にあるかどうかの判断を行う。そして、固体高分子型燃料電池がdW/dI>0となる領域にあると判断された場合には、酸化反応促進領域から回避させるよう運転条件が制御される。運転条件の制御については、上記第一実施形態と同様にすればよい。例えば、ある出力が要求され、そのままの運転条件ではdW/dI>0となると判断された場合には、運転スタック数を減らすことで、dW/dI≦0となる領域での運転が可能となる。すなわち、運転スタック数を減らすと電池電圧が低下するため、要求された出力を満足させるためには、電流密度を大きくしなければならない。その結果、dW/dI≦0となる領域の電流密度が採用されることになる。また、要求された出力より大きな出力で運転することにより、dW/dI>0となる領域を回避してもよい。この場合には、二次電池やキャパシター等の充電器を併用し、余剰の電力を蓄えておくことが望ましい。
【0036】
(3)第三実施形態
本実施形態では、炭素材料の酸化の程度を、炭素材料酸化センサーにより測定する。そして、運転制御ステップにおいて、炭素材料酸化センサーにより測定された測定値に基づいて固体高分子型燃料電池が酸化反応促進領域にあるかどうかの判断を行う。判断手法の一例として、例えば、炭素材料酸化センサーにより測定された測定値が予め定められた基準値を超えた場合に、固体高分子型燃料電池が酸化反応促進領域にあると判断することができる。
【0037】
使用される炭素材料酸化センサーは、特に限定されるものではない。例えば、電気化学センサーを使用して、酸素極における炭素材料の酸化速度を電気化学的方法により測定することができる。電気化学的方法としては、例えば、定電位電解法、分極抵抗法、ガルバニックカップル法等がある。定電位電解法や分極抵抗法を採用する場合には、電気化学センサーは、作用電極と対極と参照電極との三電極系となる。また、ガルバニックカップル法を採用する場合には、電気化学センサーは、作用電極と対極との二電極系となる。ここで、電気化学センサーにおける作用電極の材料には、比較的耐食性に優れた炭素材料として、グラシーカーボン、黒鉛、カーボンクロス等を用いることが望ましい。また、対極の材料には、耐食性に優れ、抵抗が小さくそれ自身が分極し難いことから、Pt、Au、SUS、グラシーカーボン、黒鉛等の材料を用いることが望ましい。参照電極には、高温での安定性に優れる水素電極、塩化銀電極、安定化ジルコニア等の固体電解質を用いた電極等を用いることが望ましい。なお、予め上記水素電極等の標準電極との電位差を検定しておくことで、対極と同様、Pt、Au、SUS、グラシーカーボン、黒鉛等の材料を用いた電極を参照電極とすることもできる。
【0038】
固体高分子型燃料電池を構成する構成部材に含まれる炭素材料のうち、最も貴な電位がかかるのは、酸素極の触媒層に含まれる炭素材料であると考えられる。したがって、電気化学センサーは、酸素極近傍に設置することが望ましい。例えば、セルの内部、酸素極からの排出ガス系内等に設置すればよい。
【0039】
上記電気化学センサーにより測定された測定値に基づいて、固体高分子型燃料電池が酸化反応促進領域にあるかどうか判断するために、本実施形態では、固体高分子型燃料電池を6000時間連続運転した時に、炭素材料の約10%が消耗されると予想される電流密度を基準値として採用する。上記式(1)に示したように、4ファラディ(F)で1モルの炭素(C)が酸化され、1モルの二酸化炭素(CO2)が生成する。例えば、0.1μA/cm2の電流密度で6000時間運転した場合、流れる電気量は、[0.1×10−6×6000×3600/96500=2.24×10−5(F)]となる。Cの1モルは12gであり、4Fで1モルが酸化されるから、Cの消耗重量は、[2.24×10−5/4×12=5.6×10−5(g/cm2)=56(μg/cm2)]と計算される。ここで、酸素極の触媒層に含まれる炭素材料の重量を約500μg/cm2とすると、[56/500×100=11(%)]より、約10%の炭素材料が消耗したことになる。 本実施形態では、電気化学センサーにより測定された電流密度が0.1μA/cm2を超えた場合には、固体高分子型燃料電池が酸化反応促進領域にあると判断される。なお、第一実施形態で説明した図1の酸化反応促進領域(斜線部分)は、各電極材料を黒鉛とした三電極系の電気化学センサーにより測定された電流密度が0.1μA/cm2を超える領域である。
【0040】
また、炭素材料酸化センサーとして、酸素極における一酸化炭素および二酸化炭素の濃度値を測定するガスセンサーを使用することができる。上述のように、炭素材料が酸化すると、二酸化炭素が生成される。また、副反応として一酸化炭素も生成されると考えられる。したがって、これら一酸化炭素および二酸化炭素の濃度を測定することにより、炭素材料の酸化の程度を測定することができる。この場合、ガスセンサーは、一酸化炭素および二酸化炭素を検出できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、赤外線式、半導体式のガスセンサーを使用すればよい。そして、測定された一酸化炭素および二酸化炭素の濃度と、炭素材料の酸化速度との関係から、酸化反応促進領域にあるかどうかの判断基準となる所定の基準値を設定する。そして、ガスセンサーの測定値が、設定された基準値を超えた場合に、固体高分子型燃料電池が酸化反応促進領域にあると判断すればよい。
【0041】
本実施形態においても、運転制御ステップにおいて、固体高分子型燃料電池が酸化反応促進領域にあると判断された場合には、固体高分子型燃料電池を酸化反応促進領域から回避させるよう運転条件が制御される。運転条件の制御については、上記第一および第二実施形態と同様にすればよい。
【0042】
〈固体高分子型燃料電池の運転システム〉
まず、本発明の一実施形態である固体高分子型燃料電池の運転システムの構成を説明する。図3に、上記第三実施形態における固体高分子型燃料電池の運転システムの概略を示す。図3に示すように、固体高分子型燃料電池の運転システム1は、制御対象となる固体高分子型燃料電池2と、電圧測定装置3と、セル温度測定装置4と、pH測定装置5と、炭素材料酸化センサー6と、制御ユニット7とを備える。
【0043】
固体高分子型燃料電池2は、電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成されている。電極接合体は、電解質とその両側に設けられた燃料極および酸素極とからなる。固体高分子型燃料電池2の上流側には、水素ボンベ8および空気圧縮機9が設けられている。燃料ガスとしての水素ガスは、水素ボンベ8から水素圧力調整バルブ81、水素吸気バルブ82を介して固体高分子型燃料電池2の燃料極に供給される。酸化剤ガスとしての空気は、加湿器91により加湿された後、空気圧縮機9から固体高分子型燃料電池2の酸素極に供給される。燃料極で反応に使用されなかった水素ガスは、固体高分子型燃料電池2の下流側に設けられた水素気液分離器83により、水素と生成水とに分離されて排出される。酸素極で反応に使用されなかった空気は、固体高分子型燃料電池2の下流側に設けられた空気気液分離器92により、空気と生成水とに分離されて排出される。
【0044】
電圧測定装置3は、固体高分子型燃料電池2のセル電圧を測定する。ここで、セル電圧は、ほぼ酸素極の電位に等しいと考えられる。このため、電圧測定装置3は酸素極の電位測定装置に相当する。セル温度測定装置4は、固体高分子型燃料電池2のセル温度を測定する。pH測定装置5は、空気気液分離器92における生成水の滞留部に設置されている。そして、酸素極から排出された生成水のpH値を測定する。炭素材料酸化センサー6は、空気気液分離器92における生成水の滞留部に設置されている。炭素材料酸化センサー6は、三電極系の電気化学センサーであり、ポテンシオスタット(図示せず)により作用電極の電位が一定に保たれている。図4に、炭素材料酸化センサー6の構成を模式的に示す。図4に示すように、炭素材料酸化センサー6は、作用電極61と対極62と参照電極63とがエポキシ樹脂に埋め込まれてなる。ここで、作用電極61と対極62と参照電極63とは、いずれも黒鉛からなる。本実施形態では、炭素材料酸化センサー6が酸化程度測定手段として機能する。
【0045】
本実施形態では、電圧測定装置3、セル温度測定装置4、pH測定装置5、炭素材料酸化センサー6を備えるが、本発明の運転システムは、これらのすべてを必要とするものではない。これらの中から、必要に応じて適宜選択して酸化程度測定手段として用いればよい。
【0046】
運転制御手段として機能する制御ユニット7は、炭素材料酸化センサー6等により測定された測定値をデジタル信号に変換するA/D変換器と、コンピュータと、出力された電気信号を処理する駆動回路とを備える。電圧測定装置3、セル温度測定装置4、pH測定装置5、炭素材料酸化センサー6により測定された測定値は、A/D変換器によりそれぞれデジタル信号に変換され、それらのデジタル信号はインターフェースを介してコンピュータに入力される。コンピュータで、炭素材料酸化センサー6により測定された測定値に基づいて固体高分子型燃料電池が予め定められた酸化反応促進領域にあるかどうかの判断が行われる。そして、固体高分子型燃料電池が酸化反応促進領域にあると判断された場合には、インターフェースを介して出力された電気信号が駆動回路により処理され、制御対象となる装置に送られる。
【0047】
【実施例】
実際に単セルの固体高分子型燃料電池を作製し、上述した本発明の実施形態である運転システムにより運転試験を行って、クロスリークの程度を調査した。以下、固体高分子型燃料電池の作製、運転試験およびクロスリーク速度の評価について説明する。
【0048】
〈固体高分子型燃料電池の作製〉
酸素極および燃料極の触媒として、白金がカーボンブラックに担持された触媒を用いた。上記触媒を、電解質であるナフィオン115(商品名、デュポン社製)のアルコール分散液に混合してペースト状とした。このペーストを拡散層となるカーボンクロスの表面に塗布、乾燥して、酸素極および燃料極とした。次いで、これら酸素極および燃料極を、電解質となるナフィオン膜(膜厚約50μm)の両表面にそれぞれ120℃でホットプレスして電極接合体を形成し、焼成カーボン製のセパレータで挟持して単セルの固体高分子型燃料電池を作製した。なお、電極接合体にかかる締結圧力を、感圧試験紙で別途測定した結果、最大で8kgf/cm2であった。
〈固体高分子型燃料電池の運転試験〉
上記作製した固体高分子型燃料電池を、上記図3に示した運転システムによって運転した。固体高分子型燃料電池の運転は、制御する運転条件を変えて二通り行った。すなわち、実施例1として、負荷を制御して運転し、実施例2として作動温度を制御して運転した。上記図3に示すように、炭素酸化センサー6は、酸素極の排出ガスラインの空気気液分離器92に設置されている。また、作用電極の電位は、ポテンシオスタット64により1V vs.SHEに保持されている。なお、予めpH2の希硫酸中で作用電極の電位を検定したところ、0.49Vvs.SHEであった。
【0049】
固体高分子型燃料電池の運転条件は、作動温度を80℃、水素バブラ温度を85℃、空気バブラ温度を70℃に設定した。また、燃料極には、燃料ガスとして水素を背圧約0.1MPa、ストイキ値の1.5倍量で供給した。酸素極には、酸化剤ガスとして空気を背圧約0.1MPa、ストイキ値の2倍量で供給した。そして、負荷を0.1A/cm2と1.0A/cm2とで10分ごとに変化させるパターン運転を行い(20分で1サイクル)、24時間ごとに運転を停止して、クロスリークを測定した。
【0050】
運転中、炭素酸化センサーの出力電流が0.1μA/cm2を超えた場合には、酸化反応促進領域にあると判断した。そして、一つは、運転条件の一つである負荷を強制的に1.0A/cm2に移行させ、過剰な電流はニッケル−水素蓄電池に充電させた(実施例1)。また、もう一つは、水冷ジャケットの弁を開放し、作動温度を60℃以下に冷却した(実施例2)。
【0051】
クロスリークの測定は、以下の方法で行った。運転を停止した後、両極に窒素ガスを流してパージした。その後、燃料極に窒素ガスを供給して圧力を0.2MPa(ゲージ圧)とした。酸素極は大気開放とした。両極間の差圧を0.2MPaとしてから3分後の燃料極の圧力を測定した。燃料極の単位時間当たりの圧力減少速度をクロスリーク速度とした。
【0052】
また、比較例として、上記本発明の運転システムによらずに、上記作製した固体高分子型燃料電池を運転した。つまり、炭素酸化センサーを設けず、酸化反応促進領域にあるかどうかの判断を行わない点以外は、上記運転条件と同様に運転した。そして、上記同様に、クロスリーク速度を求めた。
【0053】
〈クロスリーク速度の評価〉
上記三種類の運転について、96時間後のクロスリーク速度を比較した。すると、実施例1および実施例2の運転におけるクロスリーク速度は、比較例のそれと比較して、約1/2となっていた。つまり、本発明の運転システムにより固体高分子型燃料電池を運転することにより、クロスリークの増加が抑制され、長期間にわたり安定して運転できることが確認された。
【0054】
【発明の効果】
本発明の固体高分子型燃料電池の運転方法は、炭素材料の酸化の程度を測定しながら運転し、炭素材料の酸化反応が促進される領域を回避するように運転条件を制御する運転方法である。炭素材料の酸化反応が抑制されるように運転条件を制御することで、クロスリークの発生や内部抵抗の増加を抑制することができる。したがって、本発明の固体高分子型燃料電池の運転方法によれば、エネルギー効率を高く維持したまま、固体高分子型燃料電池を長期間にわたり安定して運転することができる。
【0055】
また、本発明の固体高分子型燃料電池の運転システムによれば、上記本発明の固体高分子型燃料電池の運転方法を簡便に実施することができる。したがって、本発明の固体高分子型燃料電池の運転システムによれば、クロスリークの発生や内部抵抗の増加を抑制することができ、その結果、エネルギー効率を高く維持したまま、固体高分子型燃料電池を長期間にわたり安定して運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電池の作動温度と酸素極の電位との関係において定められた酸化反応促進領域を示す。
【図2】セル電圧および出力の電流依存性をモデルで示す。
【図3】本発明の一実施形態として、第三実施形態における固体高分子型燃料電池の運転システムの概略を示す。
【図4】炭素材料酸化センサーの一例である三電極系の電気化学センサーの構成を模式的に示す。
【符号の説明】
1:固体高分子型燃料電池の運転システム 2:固体高分子型燃料電池
3:電圧測定装置 4:セル温度測定装置 5:pH測定装置
6:炭素材料酸化センサー 7:制御ユニット
Claims (11)
- イオン導電体となる電解質と該電解質の両側に設けられた一対の電極とからなる電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成された固体高分子型燃料電池の運転方法であって、
前記固体高分子型燃料電池を構成する構成部材に含まれる炭素材料の酸化の程度を測定する酸化程度測定ステップと、
前記酸化程度測定ステップで測定された測定値に基づいて該固体高分子型燃料電池が予め定められた酸化反応促進領域にあるかどうかの判断を行い、該固体高分子型燃料電池が該酸化反応促進領域にあると判断された場合には、該固体高分子型燃料電池を該酸化反応促進領域から回避させるよう運転条件を制御する運転制御ステップと
を含む固体高分子型燃料電池の運転方法。 - 前記酸化程度測定ステップにおいて、前記炭素材料の酸化の程度を前記固体高分子型燃料電池の作動温度、酸素極の電位、および該酸素極における水分のpH値の少なくとも1つ以上を測定することにより測定し、
前記運転制御ステップにおいて、測定された温度値、酸素極の電位値、および酸素極における水分のpH値の少なくとも1つ以上に基づいて該固体高分子型燃料電池が前記酸化反応促進領域にあるかどうかの判断を行う請求項1に記載の固体高分子型燃料電池の運転方法。 - 前記酸化程度測定ステップにおいて、前記炭素材料の酸化の程度を前記固体高分子型燃料電池の作動温度と酸素極の電位と該酸素極における水分のpH値とを測定することにより測定し、
前記運転制御ステップにおいて、
測定された温度値が60℃を超え、かつ、
測定された電位値が次式
V=0.8−1.98×10−4×T×pH [T:セルの絶対温度(K)、pH:酸素極における水分のpH値]
で計算される電位値(V vs.SHE)を超えている場合には、該固体高分子型燃料電池が前記酸化反応促進領域にあると判断する請求項2に記載の固体高分子型燃料電池の運転方法。 - 前記酸化程度測定ステップにおいて、前記炭素材料の酸化の程度を前記固体高分子型燃料電池の作動温度と出力と電流密度とを測定することにより測定し、
前記運転制御ステップにおいて、測定された温度値における予め定められた出力Wと電流密度Iとの関係がdW/dI>0となる領域を前記酸化反応促進領域とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池の運転方法。 - 前記酸化程度測定ステップにおいて、前記炭素材料の酸化の程度を炭素材料酸化センサーにより測定し、
前記運転制御ステップにおいて、該炭素材料酸化センサーにより測定された測定値が予め定められた基準値を超えた場合に前記固体高分子型燃料電池が前記酸化反応促進領域にあると判断する請求項1に記載の固体高分子型燃料電池の運転方法。 - 前記炭素材料酸化センサーは電気化学センサーであり、酸素極における炭素材料の酸化速度を電気化学的方法により測定する請求項5に記載の固体高分子型燃料電池の運転方法。
- 前記炭素材料酸化センサーは、酸素極における一酸化炭素および二酸化炭素の濃度値を測定するガスセンサーである請求項5に記載の固体高分子型燃料電池の運転方法。
- 前記運転制御ステップにおいて、前記固体高分子型燃料電池を前記酸化反応促進領域から回避させるために制御される運転条件は、該固体高分子型燃料電池の作動温度、運転スタック数、燃料ガスの供給量、酸化剤ガスの供給量、燃料ガスの分圧および酸化剤ガスの分圧から選ばれる一種以上である請求項1に記載の固体高分子型燃料電池の運転方法。
- イオン導電体となる電解質と該電解質の両側に設けられた一対の電極とからなる電極接合体がセパレータを介して複数個積層されて構成された固体高分子型燃料電池の運転システムであって、
前記固体高分子型燃料電池を構成する構成部材に含まれる炭素材料の酸化の程度を測定する酸化程度測定手段と、
前記酸化程度測定手段により測定された測定値に基づいて前記固体高分子型燃料電池が予め定められた酸化反応促進領域にあるかどうかの判断を行い、該固体高分子型燃料電池が該酸化反応促進領域にあると判断された場合には、該固体高分子型燃料電池を該酸化反応促進領域から回避させるよう運転条件を制御する運転制御手段と
を備える固体高分子型燃料電池の運転システム。 - 前記酸化程度測定手段は、炭素材料酸化センサー、セル温度測定装置、酸素極の電位測定装置、および該酸素極における水分のpH測定装置の少なくとも1つ以上を含む請求項9に記載の固体高分子型燃料電池の運転システム。
- 前記運転制御手段により、前記固体高分子型燃料電池を前記酸化反応促進領域から回避させるために制御される運転条件は、該固体高分子型燃料電池の作動温度、運転スタック数、燃料ガスの供給量、酸化剤ガスの供給量、燃料ガスの分圧および酸化剤ガスの分圧から選ばれる一種以上である請求項9に記載の固体高分子型燃料電池の運転システム。
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