JP2004104089A - 高純度アンモニアを使用した窒化物半導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)を用いたガス分析により確定される1310cm−1、1320cm−1ならびに1330cm−1の吸収波長にピークを持つ不純物を、蒸留操作等で低減した高純度アンモニアを得て、これを原材料として窒化物半導体を製造する。
【選択図】 図1
Description
【発明が属する技術分野】
本願発明は高純度アンモニアを窒素源として使用した窒化物半導体の製造方法に関し、さらに詳細に言えば、フーリエ変換赤外分光法によるガス分析で特定の吸収波長にピークが観測される不純物を所定の値以下に低減した高純度アンモニアを窒素源として使用した窒化物半導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、窒化物半導体を製造する際の窒素源には主にアンモニアが使用されており、その製造方法はMOCVD法、MBE法等である。そして、これらの方法を利用して製造した窒化物半導体の一つである窒化ガリウムを利用した青色LED、レーザ等が実用化されている。
【0003】
しかしながら、原材料であるアンモニアの純度によりこの窒化物半導体の性能は大きく左右されているのが現状である。現在、窒化物半導体の製造に使用されているアンモニアは、通常純度が99.9%以上である工業用アンモニアから酸素、水分、二酸化炭素等の不純物を除去して高純度化して使用されている。この高純度化の方法として、特開2002−37623、特開2002−37624等に開示された方法があるが、これらに示された方法で酸素、水分、二酸化炭素等の不純物を除去したアンモニアを使用して製作した窒化物半導体の性能は、他の化合物半導体の性能に比べて劣っているのが実状である。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−37623(公報第3、4頁、図1)
【特許文献2】
特開2002−37624(公報第4−8頁、図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
かかる事情から、現在窒化物半導体を製造する際に使用されている高純度化アンモニアには、酸素、水分、二酸化炭素等の不純物以外の不純物が含まれ、それが除去されていないために、それを使用して製造された窒化物半導体の性能低下をもたらしているものと推測される。そこで、本発明は酸素、水分、二酸化酸素以外の不純物で、窒化物半導体の性能に影響を与えるアンモニア中の不純物を見つけ出し、これを低減した高純度のアンモニアを使用することにより、窒化物半導体の性能を向上させることをその課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明においては、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)によるガス分析において1310cm−1、1320cm−1ならびに1330cm−1の吸収波長にピークを持つ不純物を低減し、これにより高純度化したアンモニアを窒素源として使用して、窒化物半導体を製造する。これにより窒化物半導体の性能の向上が得られる。これは、以下のようにして得られたきわめて重要な知見によるものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本願発明の発明者は、ともに水分、酸素、二酸化炭素については高純度化された2種のアンモニア(アンモニア−A及びアンモニア−B)を用意し、これらを窒素源として使用してそれぞれ窒化物半導体を製造し、これらの半導体の性能試験を行なって調べたところ、アンモニア−Aを使用した半導体は、アンモニア−Bを使用したものに比して、性能が劣っていた。
【0008】
そこで、その性能の差は、使用したアンモニアに起因するものと推定し、アンモニア−Aと、アンモニア−Bとに対しFT−IRによりガス分析を実施した。その結果を図1に示す。図から明らかなとおり、性能が劣っていた窒化物半導体の製造に使用されたアンモニアーA中には、アンモニア−Bよりも、1310cm−1、1320cm−1並びに1330cm−1の吸収波長にピークを持つ不純物がより多く観測された。また、FT−IRによるガス分析において水分、二酸化炭素に固有の吸収波長(水分:3740、3744、3760cm−1等、二酸化炭素:2200、2370、2500cm−1等)にはピークは観測されなかった。さらに酸素成分の測定の為にガスクロマトグラフ大気圧イオン化質量分析計(GC−APIMS)によりこれらのアンモニアをガス分析したところ、酸素成分は観測されなかった(0.01ppm以下)。従って、前述の1310cm−1、1320cm−1並びに1330cm−1の吸収波長にピークを持つこれらの不純物が窒化物半導体の性能に影響を与えていることが推測された。
【0009】
次いで、同じアンモニア−Aとアンモニア−Bを用いてそれぞれレーザーを作製し、その性能評価を行った。その結果を図2に性能試験結果として示す。図から明らかなとおり、アンモニア−Aを使用して作成したレーザーの方が、アンモニア−Bを使用したものより性能が劣る。この結果より、やはり1310cm−1、1320cm−1ならびに1330cm−1の吸収波長にピークを持つ不純物が窒化物半導体レーザーの性能に影響を与えていると考えられる。
【0010】
次に、更に上記の点を明確化するために、図3に示す装置により、以下の操作条件で蒸留(精留)操作を実施することにより、アンモニア−Bよりも上記した不純物を低減させたアンモニア(アンモニア−C)を用意した。すなわち図中の蒸留塔はラシヒリング充填塔であり、蒸留塔の高さは約1500mm、蒸留塔径は約55mm、操作条件としては蒸留塔圧力は約0.4MPa、還流比は約15以上である。ラシヒリング充填塔を使用した図示の如き蒸留装置は公知であり、その操作についても公知であるので、その詳細な説明は省略する。このように精留したアンモニアを用いて同じく窒化物半導体レーザーを製造し、アンモニア−Bを使用したレーザーと共にその性能試験を実施した。その結果を図4に示す。図4より明らかなとおり、アンモニア−Cを使用したレーザーはアンモニア−Bを使用したレーザーよりさらに性能が優れている。なお、ここで使用したアンモニア−B、アンモニア−CのFT−IR分析結果を図5に示す。これらから、FT−IRのガス分析による1310cm−1、1320cm−1ならびに1330cm−1の吸収波長にピークを持つ不純物が少ないほど窒化物半導体の性能が向上することがわかる。また、これらのFT−IRによるガス分析において水分、二酸化炭素に固有の吸収波長(水分:3740、3744、3760cm−1等、二酸化炭素:2200、2370、2500cm−1等)にはピークは観測されなかった。さらに酸素成分の測定の為にガスクロマトグラフ大気圧イオン化質量分析計(GC−APIMS)によりこれらのアンモニアをガス分析したところ、酸素成分は観測されなかった(0.01ppm以下)。
【0011】
又これらと同様の結果が窒化物半導体発光ダイオードにおいても得られたことは言うまでもない。因みに、図4に示した装置で、還流比が9、15、30で蒸留して得たアンモニアをFT−IR分析した結果を図6に示す。これから判るとおり、還流比9の場合は先に説明したアンモニアAと余り差異はない。そして還流比15と30の場合がアンモニア−Bとアンモニア−Cに対応していることがわかる。従って、性能に優れた窒化物半導体を製造する為の窒素源として使用するのに適した高純度アンモニアを得るには、還流比は15以上であることが望ましいことがわかる。なお、アンモニア−Bの場合のFT−IRでのガス分析による1310cm−1、1320cm−1ならびに1330cm−1の吸収波長のピーク高さは、1306cm−1付近に吸収波長を有するメタン10ppm標準ガスのピーク高さと同程度の高さである。またアンモニア−CについてのFT−IRでのガス分析による1310cm−1、1320cm−1ならびに1330cm−1の吸収波長のピーク高さは、1306cm−1付近に吸収波長を有するメタン5ppm標準ガスのピーク高さと同程度の高さである。即ち、アンモニアガス中の1310cm−1、1320cm−1ならびに1330cm−1に吸収波長を有する不純物のピーク高さが、1306cm−1に吸収波長を有するメタン10ppm標準ガスのピーク高さと同じ或いはより低い場合に、換言すれば、その不純物の濃度がメタン10ppm相当以下の濃度である場合に、そのアンモニアをチッソ源として使用して製造した窒化半導体の性能は従来に比して格段に向上することがわかる。アンモニア−Cの場合はメタン5ppm相当の濃度となる。
【0012】
次に、各種窒化物半導体の製造方法の具体的実施の形態について説明する。先ず第1の実施の形態について図7を参照して説明する。
【0013】
図7に示す窒化物半導体レーザ素子は、(0001)面n型GaN基板100,n型GaN層101,n型AlGaNクラッド層102,n型GaN光ガイド層103,発光層104,p型AlGaNキャリアブロック層105,p型GaN光ガイド層106,p型AlGaNクラッド層107,p型GaNコンタクト層108,n電極109,p電極110およびSiO2誘電体膜111から構成されている。
【0014】
まず、有機金属気相成長(MOCVD)装置を用いてn型GaN基板100上に素子構造を順次積層する。V族原料として本発明によるアンモニア−Cを、III族原料としてTMG(トリメチルガリウム)またはTEG(トリエチルガリウム)を用い、n型不純物としてSiH4を用いて、1050℃にてn型GaN層101の下地層を1μm形成する。このn型GaN層はn型GaN基板の表面モフォロジーの改善と研磨によるGaN基板表面に残留した応力歪みを緩和させてエピタキシャル成長に相応しい最表面を形成するためのものである。
【0015】
次に、III族原料としてTMA(トリメチルアルミニウム)またはTEA(トリエチルアルミニウム)を追加して、1.2μm厚のn型AlGaNクラッド層102(Si不純物濃度1×1018/cm3)を成長し、続いてn型GaN光ガイド層103(Si不純物濃度1×1018/cm3)を0.1μm成長する。ここで、n型AlGaNクラッド層102のAl組成比は0.07とした。その後、基板温度を800℃に安定させ、厚さ4nmでSiがドーピングされたGaN障壁層(Si不純物濃度は1×1018/cm3),厚さ4nmでアンドープのIN0.15Ga0.85N井戸層を一周期とした3周期の多重量子井戸活性層を交互に積層した発光層104を形成する。
【0016】
次に、基板温度を1050℃に安定させ、厚さ20nmのp型AlGaNキャリアブロック層105,厚さ0.1μmのp型GaN光ガイド層106,厚さ0.5μmのp型AlGaNクラッド層107および厚さ0.1μmのp型GaNコンタクト層108を順次成長する。ここで、p型AlGaNキャリアブロック層105のAl組成は0.3,p型AlGaNクラッド層107のAl組成は0.1とした。また、p型不純物としてMg(EtCP2Mg:ビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム)を用いることができる。
【0017】
続いて、成長を完了したウエハーをMOCVD装置より取り出し、電極を形成する。n電極109は、ウエハーの裏面にHf/Alの順序で形成し、n電極109にn型電極パッドとしてAuを蒸着した。n電極材料として、他に、Ti/Al、Ti/MoまたはHf/Au等を用いることができる。
【0018】
p電極はストライプ状にエッチングし、リッジストライプ構造とする。リッジストライプの幅は1.7μmとした。その後、SiO2誘電体膜111を200nm蒸着し、p型GaNコンタクト層108が露出するように加工し、p電極110としてPd(15nm)/Mo(15nm)/Au(200nm)を順に蒸着し、素子が完成する。
【0019】
上記の発光層104は、障壁層で始まり障壁層で終わる構成であったが、井戸層で始まり井戸層で終わる構成であってもよい。また、井戸層は、3周期に限らず、10周期以下であれば閾値電流密度を低く保つことができ、室温連続発振が可能であった。
【0020】
発明者らの知見によれば、発光層104のp型窒化物半導体層側の最外層である障壁層とp型AlGaNキャリアブロック層105との間に厚さ7nm以上35nmのアンドープInGaN層またはアンドープGaN層またはアンドープAlGaN層またはSiドープGaN層またはSiドープAlGaN層を挿入すると閾値電流密度がより低減し、好ましい。発明者らは、p型AlGaNキャリアブロック層のAl組成比が高いことにより結晶性が低下し、転位等の結晶欠陥を発生させ、その欠陥を介したスパイク拡散によりMgが発光層に侵入するモデルを考えている。このモデルによれば、前記のいずれかの層を挿入することによって、p型層からのスパイク拡散でMgが発光層に侵入することを防止することができる。また、これらの層を挿入することによって、p−nジャンクションの位置を固定することができるため、製造歩留まりを向上させることが可能となる。なお、p型AlGaNキャリアブロック層105のAl組成は0.3以外であっても差し支えない。
【0021】
比較のため、上記の製造方法を用いて、V族原料として従来のアンモニアを用いた素子を作製し、本発明の窒化物半導体レーザ素子と共にLEDモードにおけるEL発光強度を注入電流密度0.67kA/cm2の条件で測定した。本願のアンモニア−Cを用いたレーザ素子のEL発光強度は、従来のアンモニアを用いたそれと比較して強いことがわかった。任意単位の強度で比較すると、従来例の素子で13.6の発光強度であったのに対して、本発明の素子は22.3の強度を示した。従来素子に対して、本発明の素子は発光強度が1.6倍に向上していることがわかる。この測定結果は同じ注入電流密度であるため、それぞれの活性層の発光効率を直接反映していると考えられ、本発明のアンモニア−Cにより活性層の発光効率が向上していることを示している。
【0022】
次に、本実施の形態においてアンモニア−C及び従来のアンモニアを用いて作製した素子の発光層104をSIMS(二次イオン質量分析)により分析した所、アンモニア−Cを用いて作製した素子の発光層104はC,Oの他、通常アンモニア由来と考えられる重金属元素の検出量が従来のアンモニアを用いた素子より有意に低く、アンモニア−Cを用いて活性層を成長することで不純物が低減され得る。また、p型AlGaNキャリアブロック層105,p型GaN光ガイド層106,p型AlGaNクラッド層107,p型GaNコンタクト層108についても同様の傾向を示した。さらに、それぞれの素子について、注入電流密度0.67kA/cm2の条件で電圧を測定したところ、本発明のアンモニア−Cを用いた素子が3.3Vであったのに対して従来のアンモニアを用いた素子では3.9Vと高い電圧を示した。素子構造が同一であることからV族原料として用いたアンモニアの違いにより電圧の差を生じていると考えられる。通常、窒化物半導体の抵抗はn型に比べてp型が大きく、素子構造中でn型層の電圧降下はp型層に比べて十分小さく、本実施の形態で示した電圧の差はp型層での電圧降下を反映しており、本発明のアンモニア−Cを用いることでp型層のドーパントであるMgの活性化率が向上して低抵抗化し、その結果として素子の電圧が低下したと考えられる。
【0023】
ここで窒化物半導体レーザ素子構造へのAsまたはPの添加について述べる。
【0024】
本願の窒化物半導体レーザ素子構造に結晶組成としてAsを添加する場合、AsH3(アルシン)またはTBAs(ターシャリブチルアルシン)を、同様にPを添加する場合はPH3(ホスフィン)またはTBP(ターシャリブチルホスフィン)を、それぞれ用いることができる。また、窒化物半導体のN原料として、アンモニア以外にジメチルヒドラジンを用いることもできる。
【0025】
本発明の窒化物半導体レーザ素子構造中に添加されるAsまたはPの組成は、対象の窒化物半導体層を構成する元素群の総和をXとし、同じく或る窒化物半導体層に含有されたN元素の組成比をYとするとき、XはYよりも小さく、X/(X+Y)は0.3(30%)以下であり、特に0.15(15%)以下とすることが好ましい。また、元素群の総和の下限値は、1×1018/cm3以上である。元素群の総和の組成比Xが15%よりも高くなると、窒化物半導体層内の特定のある領域ごとに前記元素の組成比の異なる相分離が生じる可能性が高くなり、好ましくない。さらに元素群の総和の組成比Xが30%よりも高くなると、前記の相分離から六方晶系と立方晶系が混在する結晶系分離に移行し易くなり、結晶性の低下を招く。一方、元素群の総和の添加量が1×1018/cm3よりも小さくなると、例えば下記で述べる発光層に前記元素群が含有されたことによる効果が得られにくくなる。
【0026】
AsおよびPの元素群のうち少なくとも何れかの元素が、本発明の窒化物半導体レーザ素子の発光層に添加されると、発光層の電子と正孔の有効質量を小さく、また電子と正孔の移動度を大きくすることができる。前者は少ない電流注入量でレーザ発振のためのキャリア反転分布が得られることを意味し、後者は発光層で電子とホールが発光再結合によって消滅しても新たに電子・ホールが拡散により高速に注入されることを意味する。即ち、発光層にAsおよびPの元素群のうち何れも含有しないInGaN系窒化物半導体レーザ素子と比べて、さらに閾値電流密度が低く、自励発振特性の優れた(雑音特性に優れた)半導体レーザ素子を作製することができる。
【0027】
また、AsおよびPの元素群のうち少なくとも何れかの元素は、上記の発光層以外の層、例えば、光ガイド層,クラッド層,コンタクト層およびクラック防止層にも用いることができる。例えば、n型GaN層101とn型AlGaNクラッド層102との間にクラック防止層を挿入することができる。クラック防止層として、GaNP,GaNAs,GaNP/GaN超格子およびGaNAs/GaN超格子を用いることができる。これらの層を挿入することにより、主としてAlGaNからなるクラッド層に生じるクラックを防止することが可能となる。
【0028】
次に第2の実施の形態について説明する。図7に示す窒化物半導体レーザ素子を、実施の形態1と同様の方法で(11−20)面(M面)のn型GaN基板101を用いて作製した。ただし、V族原料として本発明のアンモニア−Cを用いた。また、n型GaN光ガイド層とp型GaN光ガイド層は、その層にAsまたはPが結晶組成として添加されても差し支えない。n型AlGaNクラッド層とp型AlGaNクラッド層のAl組成は、実施の形態1に示した値以外であっても構わないし、GaN/AlGaNからなる超格子を用いても構わない。また、AsまたはPが組成として添加されても構わない。
【0029】
この素子のLEDモードにおけるEL発光強度を注入電流密度0.67kA/cm2の条件で測定したところ、任意単位で22.3の強度を示した。実施の形態1と同様に、本発明の素子は従来のアンモニアを用いた素子に対して発光強度が1.6倍に向上していることがわかる。この測定結果はC面以外のGaN基板であっても本発明のアンモニア−Cによる効果が得られることを示している。
【0030】
次に第3の実施の形態について説明する。図1に示す窒化物半導体レーザ素子を、実施の形態1と同様の方法でC面GaN基板101を用いて作製した。ただし、基板の表面は<1−100>方向に向かって0.5°の微小な傾斜角を設けた。V族原料として本発明のアンモニア−Cを用いた。また、n型GaN光ガイド層とp型GaN光ガイド層は、その層にAsまたはPが結晶組成として添加されても差し支えない。n型AlGaNクラッド層とp型AlGaNクラッド層のAl組成は、実施の形態1に示した値以外であっても構わないし、GaN/AlGaNからなる超格子を用いても構わない。また、AsまたはPが組成として添加されても構わない。
【0031】
この素子のLEDモードにおけるEL発光強度を注入電流密度0.67kA/cm2の条件で測定したところ、任意単位で25の強度を示した。本発明の素子は従来のアンモニアを用いた素子に対して発光強度が1.8倍に向上していることがわかる。
【0032】
本実施の形態で用いる、表面に微小な傾斜を設けた基板の表面は、傾斜角により原子層程度のオーダーで一様なステップが生じている。その様子を模式的に図8に示す。表面に微小な傾斜角を設けた基板201のステップ202は、エピタキシャル成長の過程において気相から基板表面に到達したIII族原料種が優先的に吸着し、均一に成長核203を形成することで一層ずつ面で積層される2次元成長を促進する効果があると考えられる。しかし、例えば、原料由来の不純物が気相に存在する場合、ステップ部分に不純物が凝集し、却って素子特性を悪化させる場合がある。一方、本発明によるアンモニア−Cでは発光層の特性を悪化させる不純物が低減されているため、従来のアンモニアのように不純物の凝集が起こり難く、表面に微小な傾斜角を設けた基板で良好な2次元成長が実現され、その結果として非常に平坦かつ良好な発光効率を有する発光層が実現されると考えられる。
【0033】
発明者らの知見によれば、基板表面の傾斜角度は±0.1〜0.7°の範囲で最も好ましい結果が得られた。傾斜角が±0.1〜0.7°の範囲であれば、傾斜の方向が<1−100>方向または<11−20>方向のいずれであっても任意単位で25程度の発光強度が実現され得る。傾斜角が±0.1〜0.7°の範囲にあるとき、ミクロに見た表面のステップは2次元成長するのに最も適した状態であり、±0.7°より大きい傾斜ではステップの間隔が短くなるため2次元成長から島状の3次元成長に移行し始め、成長層表面に凹凸を生じる。この凹凸は発光層へ伝搬するため、Inの空間的な組成不均一を生じて発光波長分布の広がりや、吸収による発光強度低下を招き、結果として素子特性に悪影響を与える。逆に、±0.1°未満の傾斜では、ステップの間隔が長くなり、基板に存在する結晶欠陥の影響を受け易くなる。結晶欠陥は成長層に引き継がれるため、発光層中で非発光中心となり素子特性を悪化させる要因となる。
【0034】
次に第4の実施の形態について説明する。図1に示す窒化物半導体レーザ素子を、実施の形態1と同様の方法でZrB2基板101を用いて作製した。またMg,Al,Oからなるスピネル構造の基板101を用いて同様の素子を作製した。ただし、V族原料として本発明のアンモニア−Cを用いた。また、n型GaN光ガイド層とp型GaN光ガイド層は、その層にAsまたはPが結晶組成として添加されても差し支えない。n型AlGaNクラッド層とp型AlGaNクラッド層のAl組成は、実施の形態1に示した値以外であっても構わないし、GaN/AlGaNからなる超格子を用いても構わない。また、AsまたはPが組成として添加されても構わない。
【0035】
これらの素子について、LEDモードにおけるEL発光強度を注入電流密度0.67kA/cm2の条件で測定したところ、共に任意単位で22の強度を示した。実施の形態1と同様に、本発明の素子は従来のアンモニアを用いた素子に対して発光強度が1.6倍に向上していることがわかる。この測定結果はGaN以外の基板を用いたヘテロエピタキシャル成長による素子であっても、ホモ成長による素子と同様に本発明のアンモニア−Cによる効果が得られることを示している。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本願発明においては、従来使用されていた酸素、水分、二酸化炭素などを除去した高純度アンモニアからさらに、FT−IRを用いた分析により確定される1310cm−1、1320cm−1ならびに1330cm−1の吸収波長にピークを持つ不純物を低減して高純度化したアンモニアを窒素源として使用したので、従来のものよりはるかに性能が向上した窒化物半導体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】窒化物半導体を製造する際に窒素源として使用した2種のアンモニア、アンモニア−Aとアンモニア−BのFT−IR分析の結果を示すグラフである。
【図2】それぞれのアンモニアを用いて製造したレーザーの性能試験結果を示すグラフである。
【図3】本発明で使用するアンモニアを得るための蒸留装置の構成図である。
【図4】アンモニア−Bとアンモニア−Bよりも不純物を低減させたアンモニア−Cとを使用して製造したレーザーの性能試験結果を示すグラフである。
【図5】アンモニア−Bとアンモニア−CとのFT−IR分析の結果を示すグラフである。
【図6】還流比の変化による不純物の変化を示すグラフである。
【図7】窒化物半導体レーザ素子の一例を示す模式図である。
【図8】表面に微小な傾斜を設けた基板の表面及び結晶成長の様子を表す模式図である。
Claims (8)
- フーリエ変換赤外分光法によるガス分析で1310cm−1、1320cm−1ならびに1330cm−1の吸収波長にピークが観測される不純物を所定の値以下に低減した高純度アンモニアを窒素源として使用したことを特徴とする窒化物半導体の製造方法。
- 複数の窒化物半導体層からなる窒化物半導体レーザ素子であって、少なくとも単数または複数層の井戸層と障壁層から形成される量子井戸構造の活性層を有し、フーリエ変換赤外分光法によるガス分析で1310cm−1、1320cm−1ならびに1330cm−1の吸収波長にピークが観測される不純物を所定の値以下に低減した高純度アンモニアを窒素源として用い、不純物濃度を減少させることによって、量子井戸活性層の発光効率を向上し、不純物順位による光吸収を低減することを特徴とする窒化物半導体発光素子の製造方法。
- 複数の窒化物半導体層からなる窒化物半導体レーザ素子であって、少なくとも単数または複数層の井戸層と障壁層から形成される量子井戸構造の活性層を有し、フーリエ変換赤外分光法によるガス分析で1310cm−1、1320cm−1ならびに1330cm−1の吸収波長にピークが観測される不純物を所定の値以下に低減した高純度アンモニアを窒素源として用い、不純物濃度を減少させることによって、主としてp型窒化物半導体層を低抵抗化することを特徴とする窒化物半導体発光素子の製造方法。
- 窒化物半導体基板を用い、複数の窒化物半導体層からなる窒化物半導体レーザ素子であって、少なくとも単数または複数層の井戸層と障壁層から形成される量子井戸構造の活性層を有し、フーリエ変換赤外分光法によるガス分析で1310cm−1、1320cm−1ならびに1330cm−1の吸収波長にピークが観測される不純物を所定の値以下に低減した高純度アンモニアを窒素源として用いることを特徴とする窒化物半導体発光素子の製造方法。
- 窒化物半導体基板の面方位がC面あるいはM面であることを特徴とする請求項4に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
- 窒化物半導体基板表面がC面あるいはM面から傾斜の方向によらず、±0.1〜0.7°の範囲で傾斜していることを特徴とする請求項4に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
- ZrB2基板あるいはMg,Al,Oからなるスピネル構造の基板を用い、複数の窒化物半導体層からなる窒化物半導体レーザ素子であって、少なくとも単数または複数層の井戸層と障壁層から形成される量子井戸構造の活性層を有し、フーリエ変換赤外分光法によるガス分析で1310cm−1、1320cm−1ならびに1330cm−1の吸収波長にピークが観測される不純物を所定の値以下に低減した高純度アンモニアを窒素源として用いることを特徴とする窒化物半導体発光素子の製造方法。
- 複数の窒化物半導体層からなる窒化物半導体レーザ素子であって、少なくとも単数または複数層の井戸層と障壁層から形成される量子井戸構造の活性層を有し、フーリエ変換赤外分光法によるガス分析で1310cm−1、1320cm−1ならびに1330cm−1の吸収波長にピークが観測される不純物を所定の値以下に低減した高純度アンモニアを窒素源として用い、素子中の窒化物半導体層にAsまたはPを結晶組成として含むことを特徴とする窒化物半導体発光素子の製造方法。
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