JP2004103108A - 磁気記録媒体の製造方法、カーボン膜評価方法およびカーボン膜評価装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】非磁性支持体上に少なくとも金属性薄膜及びカーボン保護膜を積層形成する磁気記録媒体の製造方法において、使用される環境に応じたカーボン保護膜を成膜することができるようにする。
【解決手段】一方面に透明基板を付着させた厚さ2〜6nmのラマン光増強基体の他方面に厚さ3nm〜20nmのSiO2を成膜し、該SiO2膜を前記カーボン保護膜上に接触させ、レーザー励起によるラマン分光器によって、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定し、前記測定された表面増強ラマンスペクトルに基づいて、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を、0.1〜1.0に保つことにより、前記カーボン保護膜の膜質を一定に制御する。
【選択図】 図3
【解決手段】一方面に透明基板を付着させた厚さ2〜6nmのラマン光増強基体の他方面に厚さ3nm〜20nmのSiO2を成膜し、該SiO2膜を前記カーボン保護膜上に接触させ、レーザー励起によるラマン分光器によって、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定し、前記測定された表面増強ラマンスペクトルに基づいて、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を、0.1〜1.0に保つことにより、前記カーボン保護膜の膜質を一定に制御する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非磁性支持体上に金属磁性薄膜とカーボン膜とが形成された、いわゆる金属薄膜型の磁気記録媒体の製造方法、カーボン膜の評価方法、およびカーボン膜評価装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、磁気記録媒体としては、非磁性支持体上に酸化物磁性粉末あるいは合金磁性粉末等の粉末磁性材料を塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂等の有機結合剤中に分散せしめた磁性塗料を、乾燥することにより作製される、いわゆる塗布型の磁気記録媒体が広く使用されている。
【0003】
これに対して、高密度記録への要求の高まりと共に、Co−Ni合金、Co−Cr合金、Co−O等の金属磁性材料を、メッキや真空薄膜形成手段(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーディング法など)によって非磁性支持体上に直接被着した、いわゆる金属磁性薄膜型の磁気記録媒体が提案されて注目を集めている。
【0004】
この金属磁性薄膜型の磁気記録媒体は抗磁力や角形比等に優れ、短波長での電磁変換特性に優れるばかりでなく、磁性層の厚みを極めて薄く出来るため、記録減磁や再生時の厚み損失が著しく小さいこと、磁性層中に非磁性材であるその結合剤を混入する必要が無いため磁性材料の充填密度を高めることが出来るなど、数々の利点を有している。
【0005】
さらに、この種の磁気記録媒体の電磁変換特性を向上させ、より大きな出力を得ることが出来るようにするため、該磁気記録媒体の磁性層を形成するに際し、磁性層を斜めに蒸着する、いわゆる斜方蒸着が提案され実用化されている。
【0006】
ところで、上述したような磁気記録媒体においては、耐久性や耐錆性に問題があるといわれており、これらの課題を解決するために、磁性層表面を酸化させたり、真空成膜法を用いて、金属磁性薄膜上に保護膜を設けたり、さらにこの上に潤滑剤を塗布したりしている。
【0007】
また、今後の更なる高密度化の流れから、スペーシング損失を少なくするため、磁気記録媒体表面は平滑化される傾向にある。この磁気記録媒体の平滑化に伴い磁気ヘッドー媒体間の摩擦力は増大し、磁気記録媒体に生じるせん断力は大きくなる。このように摺動耐久性の面で厳しくなる状況の中、耐久性を向上させる目的で磁性層表面に保護膜を形成する技術の検討がなされている。
【0008】
保護膜としては、カーボン膜、石英(SiO2)膜、ジルコニア(ZrO2)膜等が検討されており、なかでもダイヤモンド構造を有する硬質カーボン膜(ダイヤモンドライクカーボン膜;以下DLC膜と称する)は、摺動耐久性に非常に優れ、今後、保護膜の主流になるものと考えられる。
【0009】
なお、このDLC膜としては、スパッタリング法や化学的気相成長(CVD)法によって成膜されるが、スパッタリング法は膜形成速度が比較的遅い事から、工業的にはCVD法を用いる方が有利である。
【0010】
スパッタリング法では、先ず、電場や磁場を利用してArガスなどの不活性ガスの電離(プラズマ化)を行う。さらに、電離されたArイオンを加速し、その運動エネルギーによりターゲットの原子をはじき出す。そして、そのはじき出された原子を基板上に堆積し、目的とする膜を形成する。これに対して、CVD法は、電場や磁場を用いて発生させたプラズマのエネルギーを利用して原料となる気体の分解、合成などの化学反応を起こさせ、膜を形成する化学的プロセスである。
【0011】
このDLC膜の膜質を評価する方法としては、ラマン分光による方法が知られている。ラマン分光法とはレーザー発振器から発振されたレーザー光を基体に照射し、その基体上で生じるラマン散乱光を分光器を用いてスペクトル解析を行うものである。DLC膜のラマン分光の場合、カーボンの結合状態としてSP2結合(平面構造)とSP3結合(正四面体構造)の微結晶粒子からなり、1300cm−1〜1500cm−1付近にブロードなピークを示す。このラマン分光の分析深さは分析目的のレーザー透過性に影響をうけるが、カーボン膜の場合、数十〜数百nmである。
【0012】
DLC膜の極表面を分析する手法として、他にXPS(X線光電子分光分析法)があるが、測定対象を大気中に保管することによる表面汚染の影響が大きく、この影響を取り除く為のイオンエッチング処理などはカーボンの構造を破壊する為、成膜途上での使用に限られる。
【0013】
ところで、近年、MR(magnetoresistive)型のヘッド(異方性磁気抵抗効果を利用したヘッド)(以下MRヘッドと称する)を用いる上記磁気記録媒体が開発されてきている。MRヘッドを用いると再生感度が良くなるので出力(磁性層厚)は小さくて良い。逆に、磁性層が厚いと再生出力が高すぎてMRヘッドが飽和して再生波形が歪んでしまい、結果として高いS/Nが得られない等の理由から磁性層の薄膜化が進んでいる。一方、カーボン保護膜は対応するヘッドとの関係から、硬質カーボンからより有機物に近い軟質カーボンまで様々な種類の保護膜が求められている。
【0014】
このように、磁性層が数十nmと非常に薄い場合にはRaman分光法による分析深さがベースフィルムまで達する為に、カーボン保護膜の信号がベースフィルムからの信号に消されてしまう。また、カーボン膜が有機物の方へ移行すると、カーボン膜からの信号強度が微弱になるため、測定が困難になる。
【0015】
そこで、カーボン保護膜上に厚さ10nmのラマン光増強基体を付着させた表面増強ラマンスペクトルを用いて,1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度G、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Dの比(D/G)を用いてカーボン膜質を評価する表面増強ラマン分光法が試みられている。
【0016】
構造的に異なるカーボンの全ての散乱ピークが認められる1000cm−1〜1800cm−1において、特定のピーク強度とカーボン膜の密度には良好な相関が認められる。また、測定対象物にラマン光増強基体を付着させた表面増強ラマンスペクトルは、その分析深さが数nmと浅くなり、感度も102〜106と大きく向上する。
【0017】
したがって、表面増強ラマン分光法による観測を行い、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度と1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度に基づいてカーボン保護膜の成膜条件の制御を行うことにより、均一な密度を有するカーボン保護膜が形成される。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
このように,磁性層が薄いMRヘッド対応の磁気記録媒体において表面増強ラマン分光法は保護膜の膜質を調査,管理する上で極めて有効な手法である。しかしながら、保護膜上にラマン光増強基体を成膜すると被測定物を破壊検査することとなり、また、測定物上にラマン光増強基体を成膜するために被測定物を成膜装置内に設置しなければならず、被測定物に形状などの制限が生じる。
【0019】
また,測定ごとに同一のラマン光増強基体を作製しなければならず,その膜質を極めて高精度に管理しなければならない。
【0020】
また、ラマン光増強基体に用いられる金属は一般に酸化などの外部の影響を受けやすく、それにより表面増強ラマン分光のデータに影響を及ぼし、膜質の定量化を妨げる原因となっていた。
【0021】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものでその目的は、使用される環境に応じたカーボン保護膜を成膜することができる磁気記録媒体の製造方法、カーボン膜評価方法およびカーボン膜評価装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為の本発明の磁気記録媒体の製造方法は、非磁性支持体上に少なくとも金属性薄膜及びカーボン保護膜を積層形成する磁気記録媒体の製造方法において、前記カーボン保護膜上に、一方の面に透明基板を付着させた厚さ2〜6nmのラマン光増強基体の他方の面を接触させる工程と、レーザー励起によるラマン分光器によって、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する工程と、前記測定された表面増強ラマンスペクトルに基づいて前記カーボンの膜質を制御する制御工程とを備えたことを特徴としている。
【0023】
また本発明の磁気記録媒体の製造方法は、非磁性支持体上に少なくとも金属性薄膜及びカーボン保護膜を積層形成する磁気記録媒体の製造方法において、一方の面に透明基板を付着させた厚さ2〜6nmのラマン光増強基体の他方の面に厚さ3nm〜20nmのSiO2を成膜し、該SiO2膜を前記カーボン保護膜上に接触させる工程と、レーザー励起によるラマン分光器によって、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する工程と、前記測定された表面増強ラマンスペクトルに基づいて前記カーボンの膜質を制御する制御工程とを備えたことを特徴としている。
【0024】
また前記制御工程は、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を、0.1〜1.0に保つことにより、前記カーボン保護膜の膜質を一定に保つ工程を含んでいることを特徴としている。
【0025】
また前記制御工程は、前記カーボン保護膜を成膜する際のラインスピードを制御することによりカーボン保護膜の膜質を制御する工程を含んでいることを特徴としている。
【0026】
また前記制御工程は、前記カーボン保護膜を成膜する際の反応管内の圧力を制御することによりカーボン保護膜の膜質を制御する工程を含んでいることを特徴としている。
【0027】
また本発明のカーボン膜評価方法は、カーボン保護膜上に、一方の面に透明基板を付着させた厚さ2〜6nmのラマン光増強基体の他方の面を接触させる工程と、レーザー励起によるラマン分光器によって、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する工程とを備え、前記測定された表面増強ラマンスペクトルに基づいて前記カーボンの膜質を評価することを特徴としている。
【0028】
また本発明のカーボン膜評価方法は、一方の面に透明基板を付着させた厚さ2〜6nmのラマン光増強基体の他方の面に厚さ3nm〜20nmのSiO2を成膜し、該SiO2膜をカーボン保護膜上に接触させる工程と、レーザー励起によるラマン分光器によって、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する工程とを備え、前記測定された表面増強ラマンスペクトルに基づいて前記カーボンの膜質を評価することを特徴としている。
【0029】
また1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を求める工程を備えたことを特徴としている。
【0030】
また本発明のカーボン膜評価装置は、厚さ2〜6nmのラマン光増強基体の一方の面に透明基板を付着して構成され、該ラマン光増強基体の他方の面がカーボン保護膜に接触される膜質評価治具と、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する表面増強ラマン分光手段と、前記測定されたスペクトルから、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を求める演算手段とを備え、前記求められたラマンスペクトルの強度比(D/G)に基づいて前記カーボン保護膜の膜質を評価することを特徴としている。
【0031】
また本発明のカーボン膜評価装置は、厚さ2〜6nmのラマン光増強基体の一方の面に透明基板を付着し、他方の面に厚さ3nm〜20nmのSiO2を成膜して構成され、該SiO2膜がカーボン保護膜に接触される膜質評価治具と、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する表面増強ラマン分光手段と、前記測定されたスペクトルから、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を求める演算手段とを備え、前記求められたラマンスペクトルの強度比(D/G)に基づいて前記カーボン保護膜の膜質を評価することを特徴としている。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態例を説明する。本発明が適用される磁気記録媒体は例えば図1に示すように、非磁性支持体1上に磁性層2が形成され、この上にカーボン保護膜3が形成されて構成される。
【0033】
本実施形態は、いわゆる金属磁性薄膜型の磁気記録媒体について、カーボン膜の膜質制御を適正に行う為に適用されるものであるが、磁気記録媒体における非磁性支持体や金属磁性薄膜といった構成材料に限定はない。
【0034】
例示するならば、非磁性支持体1の材質としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート、セルロースブチレート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド等の高分子材料の他、アルミニウム合金、チタン合金等の軽金属、アルミナガラスなどのセラミックなどがあげられる。非磁性支持体にAl合金板やガラス板等の剛性を有する基板を使用した場合には、基板表面にアルマイト処理等の酸化皮膜やNi−P皮膜等を形成してその表面を硬くするようにしてもよい。
【0035】
磁性層2を構成する金属磁性材料としては、Fe、Co、Ni等の金属やCo−Ni系合金、Co−Pt系合金、Co−Pt−Ni系合金、Fe−Co系合金、Fe−Ni系合金、Fe−Co−Ni系合金、Fe−Ni−B系合金、Fe−Co−B系合金、Fe−Co−Ni−B系合金等からなる面内磁化記録金属磁性膜やCo−Cr系合金薄膜が例示される。
【0036】
金属磁性薄膜は、これら金属磁性材料の単層膜であってもよいし、層毎に組成あるいは成膜条件をかえた多層膜であってもよい。さらには非磁性支持体と金属磁性薄膜の間に下地層を設けたり、多層膜の場合には各層間に中間層を設ける事で、付着力の向上、抗磁性の制御などを行うようにしても良い。
【0037】
金属磁性薄膜を形成する為の薄膜形成技術としては、真空下で強磁性材料を加熱蒸発させ非磁性支持体上に沈着させる真空蒸着法や、強磁性金属材料の蒸発を放電中で行うイオンプレーディング法、アルゴンを主成分とする雰囲気中でグロー放電を起こし生じたアルゴンイオンでターゲット表面の原子を叩き出すスパッタ法等、いわゆるPVD(物理的気相成長)技術が用いられる。
【0038】
このような磁性層2上には、摺動耐久性を付与すると共に外部の湿気などから磁性層2を保護する為に、カーボン保護膜3が設けられる。
【0039】
ここで、カーボン膜とは、スパッタリング法によって成膜されたカーボン膜であっても、炭化水素 系ガスを用いたCVD法によって成膜されたカーボン膜であっても良い。なお、スパッタリング法としては、マグネトロンスパッタ法や対向ターゲット法があげられ、CVD法としてはプラズマCVD法、ECRプラズマCVD法、アークジェットプラズマCVD法があげられる。次に表面増強ラマン分光法の説明をする。
【0040】
表面増強ラマン分光法は、銀や金などの金属表面の吸着した分子でラマン強度が著しく増大して観測される現象として1974、年Fleischmannらによって発明され、数nmオーダーの最表面分析とラマン感度の増大を得ることができる事を特徴としている。この方法で得られるラマンスペクトルは、分析深さは異なるが、通常のラマン分光と同様の振動モードが得られる。
【0041】
カーボン素材を構造的に分類すると、ダイヤモンド、グラファイトおよびその中間状態にあると考えられるアモルファスカーボンに分ける事が出来る。ラマン分光はこれらのカーボンに対して特異的に高感度であり、存在量の変化に敏感に変化する。
【0042】
通常、ラマン散乱測定装置は励起光源、試料部、分散系、検出器の4つの部分からなる。励起光源にはイオンガス(Ar,He−Ne,Kr)レーザーが用いられる。試料部は試料照射、散乱光の集光の光学系からなっている。ラマン散乱光は集光レンズまたは集光ミラーで分光器スリット上に集められる。この散乱光は単一分光器を直列に接続したダブルモノクロメーターで分散され、検出器で検知される。検出器には光電子倍増管が使用されるが、近年、光マルチチャンネル検出器が用いられるようになっている。光マルチチャンネル検出器はスペクトルを同時測定できるので、測定時間が数秒ですむという利点を有する。
【0043】
本発明者は、通常のラマン測定では検出できない、磁性層厚が数十nmで構成されている磁気記録媒体のカーボン保護膜や、有機物成分の多いカーボン膜について、カーボン保護膜上に、厚さ4nmのラマン光増強基体を付着させた透明金属を、カーボン膜側にラマン光増強基体が接するように配置して,表面増強ラマンスペクトルを用いて評価することに着目した。
【0044】
検証の結果、表面増強ラマン分光法によって得られる信号、すなわち1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度G(graphite)と、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度D(disorder)と、カーボン膜の膜質には良好な相関性が見られることが判明した。かかる評価法によれば、ラマン分光法では測定できなかったカーボン保護膜の膜質制御、評価を行う事ができる。
【0045】
本実施形態例では、表面増強ラマンによる観測を行い、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度G、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Dに基づいてカーボン膜の膜質(硬度)を制御する。
【0046】
また、表面増強ラマン分光法による観測を行い、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度と1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度比に基づいてカーボン保護膜の膜質を制御する。
【0047】
具体的には、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Dとの比(D/G)を0.1〜1.0に保つ。
【0048】
ここで、前記強度比D/Gを0.1〜1.0とするのはこの範囲よりも値が小さくなると摩擦が大きくなり耐久性が低下すること、逆にこの範囲よりも値が大きくなると磁気ヘッドなどにダメージを与える事、などによる。
【0049】
すなわち前記強度比D/Gはカーボン膜の硬さの指標となる。
【0050】
上記ラマンスペクトル強度面積のフィードバックによりコントロールする成膜条件としては、ラインスピードや反応管内の圧力などを挙げることができる。
【0051】
以下、本発明の具体的な実施形態例について説明するが、本発明はこの実施形態例に限定されるものではない。図2は、本実施形態例においてカーボン保護膜形成に用いたプラズマCVD連続膜形成装置の一例を示すものである。この図2において、磁気記録媒体11は、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に酸素ガスを導入しながらCoを蒸着して部分酸化強磁性金属薄膜を形成したものである。
【0052】
上記プラズマCVD連続形成装置は、ガイドロール12や巻き出しロール13、巻き取りロール14、反応管15を備える。反応管15の内部には電極16が組み込まれている。原料となる炭化水素系を主成分としたガスは、放電ガス導入口18から導入される。
【0053】
この反応管15と対向して円筒状の回転可能な対向電極19が設置されている。磁気記録媒体11は、この対向電極19に巻き付けられ、反応管15内部にて磁気記録媒体11の表面にカーボン保護膜が形成される。上記プラズマCVD連続膜形成装置は、真空排気系20や真空槽21を有する。
【0054】
上記プラズマCVD連続膜形成装置を用い、非磁性支持体上に金属磁性薄膜とカーボン膜とが形成されてなる磁気テープを作製した。具体的には、厚さ6μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、Coを蒸着源に用いた真空蒸着を行う事により、膜厚50nmの金属磁性薄膜を成膜した。金属磁性薄膜の成膜条件は下記の通りである。
【0055】
金属磁性薄膜の成膜条件
成膜装置:連続巻き取り式蒸着装置
蒸着源:Co100%
蒸着粒子の入射角:45°〜90°
導入ガス:酸素ガス
蒸着時真空度:2×10−2Pa
そして、この蒸着膜表面に、プラズマCVD装置を用いてカーボン保護膜を成膜することで磁気記録媒体を作製した。
【0056】
CVD条件を以下に示す。
【0057】
反応ガス:i−C4H8
反応ガスの圧力:30Pa
プラズマ電極の直流電圧:1.2kV
テープ送り速度:3m/min
表面増強ラマン分光分析:厚さ0.5mmの平面ガラス基板上に銀を2〜10nm の範囲で蒸着し、それをカーボン保護膜が成膜されている原反上に密着させ,次の条件で測定を行った。
【0058】
装置:Renishaw社 日本電子 JRS−SYS1000(D)
光源:Ar+レーザー(波長514.5nm)
光源出力:2.5mW
試料上での出力:0.33mW
レーザービーム径:21μm
測定波長:1000cm−1〜1800cm−1
そして、バックコートにはカーボンを主体とする材料を厚さ0.5μmに塗布した。カーボン保護膜の表面には潤滑剤としてフッ素系材料を塗布した。これらのテープを裁断した。まず、銀膜厚の異なるサンプル1〜6に対するラマン光強度の比較を行い、その結果を次の表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1から、表面増強ラマン効果を充分に得るためにはAgの膜厚として2〜6nmが適正であるといえる。
【0061】
これらサンプルについて、実用特性の評価として、シャトル走行試験、スチル耐久試験、摩耗試験を行った。評価方法は下記の通りである。尚、各試験には、ソニー社製、MicroMVカムコーダー(商品名DCR−IP7)を使用した。
【0062】
シャトル走行試験:40℃、30%RH環境下で10分間の信号を1回記録した後、99回これを再生し、結果は初期出力に対する100パス目の出力をdB表示した。 このレベルダウン量は、−3dB以内であれば、内蔵される信号増幅回路によ り画質に影響を与えない。
【0063】
スチル耐久性試験:−5℃の環境下でスチル状態のまま保持し、結果を初期出
力に対して−3dBになるまでの時間で表した。
【0064】
摩耗試験:−5℃の環境下でシャトル走行を60分×300回行い,MRヘッドの摩耗量より算出した。なお, ヘッドの摩耗量が1μmを超えると,電磁変換特性に
多大なる影響をあたえる。
【0065】
実施形態例としてガラス基板上に銀を4nm蒸着したものを密着させて表面増強ラマン分光法によってカーボン膜質の評価を行った一例を図3に示す。
【0066】
比較例としてラマン分光法によってカーボン膜質の評価を行った結果を図4に示す。諸特性の測定結果を次の表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
表2によれば、強度比D/Gが0.1〜1.0の範囲内であるサンプル2、3は、シャトル走行性、スチル耐久性、摩耗性のいずれにおいても優秀な性能を示すことがわかる。
【0069】
この表2の結果からも明らかなように、表面増強ラマン分光法では従来測定が困難であった、磁性層の極薄い磁気記録媒体のカーボン保護膜の膜質評価を行う事が可能である。さらにD/G比を規定の範囲にする事によって摺動耐久性、信頼性などに優れた媒体を提供する事が可能である。
【0070】
次に本発明の他の実施形態例を説明する。
【0071】
本発明者は通常のラマン測定では検出できない磁性層厚が数十nmで構成されている磁気記録媒体のカーボン保護膜や、有機物成分の多いカーボン膜について、カーボン保護膜上に、透明基体上に厚さ4nmのラマン光増強基体を、 さらにその上にSiO2を3〜20nmの厚さで付着させた透明基板を、カーボン膜側にSiO2膜が接するように配置して、表面増強ラマンスペクトルを用いて評価することに着目した。
【0072】
検証の結果、表面増強ラマン分光法によって得られる信号、すなわち1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度と、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度と、カーボン膜の膜質には良好な相関性が見られることが判明した。かかる評価法によれば、ラマン分光法では測定できなかったカーボン保護膜の膜質制御、評価を行う事ができる。
【0073】
また、SiO2層を付与することによって、機械的損傷や大気中のガスによる酸化,腐食を避けることでき、長期間に渡り安定した膜質制御、評価を行うことができる。
【0074】
ここで、SiO2層の厚さを3〜20nmとしたのは、3nm以下では十分な保護層として機能せず、酸化してしまうためであり、20nm以上ではラマン光が評価対象物にまで達せず、表面増強ラマンスペクトルが得られない為である。
【0075】
本実施形態例では、上記表面増強ラマンによる観測を行い、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度G、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Dに基づいてカーボン膜の膜質を制御する。
【0076】
また、表面増強ラマン分光法による観測を行い、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Dとの比D/Gに基づいてカーボン保護膜の膜質を制御する。
【0077】
具体的には、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度G、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Dの比(D/G)を0.1〜1.0に保つ。
【0078】
ここで、D/Gを0.1〜1.0とするのはこの範囲よりも値が小さくなると摩擦が大きくなり耐久性が低下すること、逆にこの範囲よりも値が大きくなると磁気ヘッドなどにダメージを与えること、などによる。
【0079】
上記ラマンスペクトル強度面積のフィードバックによりコントロールする成膜条件としては、ラインスピードや反応管内の圧力などを挙げることができる。
【0080】
以下、具体的な実施形態例について説明するが、本発明はこの実施形態例に限定されるものではない。本実施形態例において、カーボン保護膜の形成には、例えば前記と同様に図2のプラズマCVD連続膜形成装置が用いられる。
【0081】
図2のプラズマCVD連続膜形成装置を用い、非磁性支持体上に金属磁性薄膜とカーボン膜とが形成されてなる磁気テープを作製した。具体的には、厚さ6μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、Coを蒸着源に用いた真空蒸着を行う事により、膜厚50nmの金属磁性薄膜を成膜した。金属磁性薄膜の成膜条件は下記の通りである。
【0082】
金属磁性薄膜の成膜条件
成膜装置:連続巻き取り式蒸着装置
蒸着源:Co100%
蒸着粒子の入射角:45°〜90°
導入ガス:酸素ガス
蒸着時真空度:2×10−2Pa
そして、この蒸着膜表面に、プラズマCVD装置を用いてカーボン保護膜を成膜することで磁気記録媒体を作製した。CVD条件を以下に示す。
【0083】
反応ガス:i−C4H8
反応ガスの圧力:30Pa
プラズマ電極の直流電圧;1.2kV
テープ送り速度:3m/min
そして、バックコートにはカーボンを主体とする材料を厚さ0.5μmに塗布した。カーボン保護膜の表面には潤滑剤としてフッ素系材料を塗布した。これらのテープを裁断した。こうしてテープ化されたサンプルに表面増強ラマン分光での測定を行った。
【0084】
測定は実施形態例、比較例に示される表面増強ラマン用治具(透明基板、ラマン増強基体、SiO2層から成る膜質評価治具)を測定対象のテープのカーボン保護膜上にラマン光増強基体側を接するようにして密着させ、次の条件で測定を行った。
【0085】
装置:Renishaw社 日本電子 JRS−SYS1000(D)
光源:Ar+レーザー(波長514.5nm)
光源出力:2.5mW
試料上での出力:0.33mW
レーザービーム径:21μm
測定波長:1000cm−1〜1800cm−1
実施形態例1:厚さ0.5mmの平面ガラス基板上に銀を6nm 蒸着し、さらに5nm のSiO2をスパッタにて成膜した。
【0086】
実施形態例2:厚さ0.8mmの平面ガラス基板上に銀を2nm 蒸着し、さらに10 nmのSiO2をスパッタにて成膜した。
【0087】
比較例1:厚さ0.5mmの平面ガラス基板上に銀を4nm 蒸着した。
【0088】
比較例2:厚さ0.8mmの平面ガラス基板上に銀を4nm 蒸着し、さらに2nmのSiO2をスパッタにて成膜した。
【0089】
比較例3:厚さ0.8mmの平面ガラス基板上に銀を4nm 蒸着し、さらに30 nmのSiO2をスパッタにて成膜した。
【0090】
SiO2の保護層としての役割を調べるために、前記治具を成膜後に上記の条件で測定を行い、その後加速環境として65℃90RH%の環境に6日間保持し再度、上記の測定を行いラマン強度の劣化量を測定した(dB表示)。その結果を次の表3に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
前記実施形態例1を用いた場合の表面増強ラマン分光法によってカーボン膜質の評価を行った一例を図5に示す。
【0093】
表3から、本発明で規定している3nm〜20nmの厚さでSiO2を成膜した実施形態例1、2は、ラマン強度の劣化量は少なく、SiO2が保護層としての役割を果たしていることがわかる。
【0094】
この結果からも明らかなように、保護層(SiO2)のついた表面増強ラマン用治具を用いることで,従来測定が困難であった、磁性層の極薄い磁気記録媒体のカーボン保護膜の膜質評価を再現性よく行う事が可能である。さらにD/G比を規定の範囲にする事によって摺動耐久性、信頼性などに優れた媒体を提供する事が可能である。
【0095】
尚、本発明のラマン増強基体としては、銀に限らず、パラジウム、白金、プラチナ系等を使用しても良く、その場合も前記と同様の作用、効果を奏する。
【0096】
また本発明は磁気テープに限らず、ハードディスク等の他の磁気記録媒体に適用することもできる。また本発明は磁気記録媒体に限らず、例えば金型の摩耗を防ぐため表面にDLC膜を付着させたものに適用し、カーボンの膜質を評価することもできる。これらの場合も前記と同様の作用、効果を奏する。
【0097】
【発明の効果】
(1)以上のように請求項1〜8に記載の発明によれば、従来、測定が困難であった磁性層の極薄い磁気記録媒体のカーボン保護膜の膜質評価を、再現性よく行うことができ、この評価に基づいてカーボンの膜質を制御することによって、摺動耐久性に優れ、かつ電磁変換出力が一定である磁気記録媒体が得られる。さらには、信頼性が特に必要とされるデータストリーマやビデオライブラリ等の特別な用途にも耐え得る磁気記録テープの大量提供が可能である。
(2)また請求項2、4、6、8に記載の発明によれば、厚さ3nm〜20nmのSiO2が保護膜として作用し、ラマン光増強基体として用いられる金属が酸化などの外部の影響を受けることを防ぐ。このためラマン強度の劣化を防止することができ、より正確にカーボン保護膜の膜質を評価することができる。これによって、摺動耐久性、信頼性などがより優れた磁気記録媒体を製造することができる。
(3)また請求項9〜14に記載の発明によれば、カーボン保護膜の膜質評価を再現性よく行うことができる。このため本発明を、例えば、従来、測定が困難であった磁性層の極薄い磁気記録媒体に適用した場合も、カーボン保護膜の膜質を正確に評価することができ、これによって摺動耐久性、信頼性などに優れた磁気記録媒体を提供することができる。
(4)また請求項10、12、14に記載の発明によれば、厚さ3nm〜20nmのSiO2が保護膜として作用し、ラマン光増強基体として用いられる金属が酸化などの外部の影響を受けることを防ぐ。このためラマン強度の劣化を防止することができ、より正確にカーボン保護膜の膜質を評価することができる。
(5)また請求項13、14に記載の発明によれば、ラマン光増強基体は膜質評価治具に形成され、それを評価対象物であるカーボン膜に接触させるように構成しているので、カーボン保護膜にラマン光増強基体を成膜する必要がない。このため成膜室に入れる必要がなくなり、形状などの制限を受けることがなくなる。さらに、ラマン光増強基体を測定ごとに成膜する必要がなくなる為、ラマン光増強基体の成膜条件を厳しく制御する必要もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される磁気記録媒体の模式的断面図。
【図2】カーボン保護膜形成に用いられるプラズマCVD膜連続形成装置の一例を示す構成図。
【図3】本発明の一実施形態例によりカーボン膜質の評価を行った際の表面増強ラマンスペクトルを示す特性図。
【図4】ラマン分光法によりカーボン膜質の評価を行った際のラマンスペクトルの一例を示す特性図。
【図5】本発明の他の実施形態例によりカーボン膜質の評価を行った際の表面増強ラマンスペクトルを示す特性図。
【符号の説明】
1…非磁性支持体、2…磁性層、3…カーボン保護膜、11…磁気記録媒体、12…ガイドロール、13…巻き出しロール、14…巻き取りロール、15…反応管、16…電極、18…放電ガス導入口、19…対向電極、20…真空排気系、21…真空槽。
【発明の属する技術分野】
本発明は、非磁性支持体上に金属磁性薄膜とカーボン膜とが形成された、いわゆる金属薄膜型の磁気記録媒体の製造方法、カーボン膜の評価方法、およびカーボン膜評価装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、磁気記録媒体としては、非磁性支持体上に酸化物磁性粉末あるいは合金磁性粉末等の粉末磁性材料を塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂等の有機結合剤中に分散せしめた磁性塗料を、乾燥することにより作製される、いわゆる塗布型の磁気記録媒体が広く使用されている。
【0003】
これに対して、高密度記録への要求の高まりと共に、Co−Ni合金、Co−Cr合金、Co−O等の金属磁性材料を、メッキや真空薄膜形成手段(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーディング法など)によって非磁性支持体上に直接被着した、いわゆる金属磁性薄膜型の磁気記録媒体が提案されて注目を集めている。
【0004】
この金属磁性薄膜型の磁気記録媒体は抗磁力や角形比等に優れ、短波長での電磁変換特性に優れるばかりでなく、磁性層の厚みを極めて薄く出来るため、記録減磁や再生時の厚み損失が著しく小さいこと、磁性層中に非磁性材であるその結合剤を混入する必要が無いため磁性材料の充填密度を高めることが出来るなど、数々の利点を有している。
【0005】
さらに、この種の磁気記録媒体の電磁変換特性を向上させ、より大きな出力を得ることが出来るようにするため、該磁気記録媒体の磁性層を形成するに際し、磁性層を斜めに蒸着する、いわゆる斜方蒸着が提案され実用化されている。
【0006】
ところで、上述したような磁気記録媒体においては、耐久性や耐錆性に問題があるといわれており、これらの課題を解決するために、磁性層表面を酸化させたり、真空成膜法を用いて、金属磁性薄膜上に保護膜を設けたり、さらにこの上に潤滑剤を塗布したりしている。
【0007】
また、今後の更なる高密度化の流れから、スペーシング損失を少なくするため、磁気記録媒体表面は平滑化される傾向にある。この磁気記録媒体の平滑化に伴い磁気ヘッドー媒体間の摩擦力は増大し、磁気記録媒体に生じるせん断力は大きくなる。このように摺動耐久性の面で厳しくなる状況の中、耐久性を向上させる目的で磁性層表面に保護膜を形成する技術の検討がなされている。
【0008】
保護膜としては、カーボン膜、石英(SiO2)膜、ジルコニア(ZrO2)膜等が検討されており、なかでもダイヤモンド構造を有する硬質カーボン膜(ダイヤモンドライクカーボン膜;以下DLC膜と称する)は、摺動耐久性に非常に優れ、今後、保護膜の主流になるものと考えられる。
【0009】
なお、このDLC膜としては、スパッタリング法や化学的気相成長(CVD)法によって成膜されるが、スパッタリング法は膜形成速度が比較的遅い事から、工業的にはCVD法を用いる方が有利である。
【0010】
スパッタリング法では、先ず、電場や磁場を利用してArガスなどの不活性ガスの電離(プラズマ化)を行う。さらに、電離されたArイオンを加速し、その運動エネルギーによりターゲットの原子をはじき出す。そして、そのはじき出された原子を基板上に堆積し、目的とする膜を形成する。これに対して、CVD法は、電場や磁場を用いて発生させたプラズマのエネルギーを利用して原料となる気体の分解、合成などの化学反応を起こさせ、膜を形成する化学的プロセスである。
【0011】
このDLC膜の膜質を評価する方法としては、ラマン分光による方法が知られている。ラマン分光法とはレーザー発振器から発振されたレーザー光を基体に照射し、その基体上で生じるラマン散乱光を分光器を用いてスペクトル解析を行うものである。DLC膜のラマン分光の場合、カーボンの結合状態としてSP2結合(平面構造)とSP3結合(正四面体構造)の微結晶粒子からなり、1300cm−1〜1500cm−1付近にブロードなピークを示す。このラマン分光の分析深さは分析目的のレーザー透過性に影響をうけるが、カーボン膜の場合、数十〜数百nmである。
【0012】
DLC膜の極表面を分析する手法として、他にXPS(X線光電子分光分析法)があるが、測定対象を大気中に保管することによる表面汚染の影響が大きく、この影響を取り除く為のイオンエッチング処理などはカーボンの構造を破壊する為、成膜途上での使用に限られる。
【0013】
ところで、近年、MR(magnetoresistive)型のヘッド(異方性磁気抵抗効果を利用したヘッド)(以下MRヘッドと称する)を用いる上記磁気記録媒体が開発されてきている。MRヘッドを用いると再生感度が良くなるので出力(磁性層厚)は小さくて良い。逆に、磁性層が厚いと再生出力が高すぎてMRヘッドが飽和して再生波形が歪んでしまい、結果として高いS/Nが得られない等の理由から磁性層の薄膜化が進んでいる。一方、カーボン保護膜は対応するヘッドとの関係から、硬質カーボンからより有機物に近い軟質カーボンまで様々な種類の保護膜が求められている。
【0014】
このように、磁性層が数十nmと非常に薄い場合にはRaman分光法による分析深さがベースフィルムまで達する為に、カーボン保護膜の信号がベースフィルムからの信号に消されてしまう。また、カーボン膜が有機物の方へ移行すると、カーボン膜からの信号強度が微弱になるため、測定が困難になる。
【0015】
そこで、カーボン保護膜上に厚さ10nmのラマン光増強基体を付着させた表面増強ラマンスペクトルを用いて,1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度G、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Dの比(D/G)を用いてカーボン膜質を評価する表面増強ラマン分光法が試みられている。
【0016】
構造的に異なるカーボンの全ての散乱ピークが認められる1000cm−1〜1800cm−1において、特定のピーク強度とカーボン膜の密度には良好な相関が認められる。また、測定対象物にラマン光増強基体を付着させた表面増強ラマンスペクトルは、その分析深さが数nmと浅くなり、感度も102〜106と大きく向上する。
【0017】
したがって、表面増強ラマン分光法による観測を行い、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度と1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度に基づいてカーボン保護膜の成膜条件の制御を行うことにより、均一な密度を有するカーボン保護膜が形成される。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
このように,磁性層が薄いMRヘッド対応の磁気記録媒体において表面増強ラマン分光法は保護膜の膜質を調査,管理する上で極めて有効な手法である。しかしながら、保護膜上にラマン光増強基体を成膜すると被測定物を破壊検査することとなり、また、測定物上にラマン光増強基体を成膜するために被測定物を成膜装置内に設置しなければならず、被測定物に形状などの制限が生じる。
【0019】
また,測定ごとに同一のラマン光増強基体を作製しなければならず,その膜質を極めて高精度に管理しなければならない。
【0020】
また、ラマン光増強基体に用いられる金属は一般に酸化などの外部の影響を受けやすく、それにより表面増強ラマン分光のデータに影響を及ぼし、膜質の定量化を妨げる原因となっていた。
【0021】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものでその目的は、使用される環境に応じたカーボン保護膜を成膜することができる磁気記録媒体の製造方法、カーボン膜評価方法およびカーボン膜評価装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為の本発明の磁気記録媒体の製造方法は、非磁性支持体上に少なくとも金属性薄膜及びカーボン保護膜を積層形成する磁気記録媒体の製造方法において、前記カーボン保護膜上に、一方の面に透明基板を付着させた厚さ2〜6nmのラマン光増強基体の他方の面を接触させる工程と、レーザー励起によるラマン分光器によって、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する工程と、前記測定された表面増強ラマンスペクトルに基づいて前記カーボンの膜質を制御する制御工程とを備えたことを特徴としている。
【0023】
また本発明の磁気記録媒体の製造方法は、非磁性支持体上に少なくとも金属性薄膜及びカーボン保護膜を積層形成する磁気記録媒体の製造方法において、一方の面に透明基板を付着させた厚さ2〜6nmのラマン光増強基体の他方の面に厚さ3nm〜20nmのSiO2を成膜し、該SiO2膜を前記カーボン保護膜上に接触させる工程と、レーザー励起によるラマン分光器によって、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する工程と、前記測定された表面増強ラマンスペクトルに基づいて前記カーボンの膜質を制御する制御工程とを備えたことを特徴としている。
【0024】
また前記制御工程は、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を、0.1〜1.0に保つことにより、前記カーボン保護膜の膜質を一定に保つ工程を含んでいることを特徴としている。
【0025】
また前記制御工程は、前記カーボン保護膜を成膜する際のラインスピードを制御することによりカーボン保護膜の膜質を制御する工程を含んでいることを特徴としている。
【0026】
また前記制御工程は、前記カーボン保護膜を成膜する際の反応管内の圧力を制御することによりカーボン保護膜の膜質を制御する工程を含んでいることを特徴としている。
【0027】
また本発明のカーボン膜評価方法は、カーボン保護膜上に、一方の面に透明基板を付着させた厚さ2〜6nmのラマン光増強基体の他方の面を接触させる工程と、レーザー励起によるラマン分光器によって、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する工程とを備え、前記測定された表面増強ラマンスペクトルに基づいて前記カーボンの膜質を評価することを特徴としている。
【0028】
また本発明のカーボン膜評価方法は、一方の面に透明基板を付着させた厚さ2〜6nmのラマン光増強基体の他方の面に厚さ3nm〜20nmのSiO2を成膜し、該SiO2膜をカーボン保護膜上に接触させる工程と、レーザー励起によるラマン分光器によって、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する工程とを備え、前記測定された表面増強ラマンスペクトルに基づいて前記カーボンの膜質を評価することを特徴としている。
【0029】
また1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を求める工程を備えたことを特徴としている。
【0030】
また本発明のカーボン膜評価装置は、厚さ2〜6nmのラマン光増強基体の一方の面に透明基板を付着して構成され、該ラマン光増強基体の他方の面がカーボン保護膜に接触される膜質評価治具と、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する表面増強ラマン分光手段と、前記測定されたスペクトルから、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を求める演算手段とを備え、前記求められたラマンスペクトルの強度比(D/G)に基づいて前記カーボン保護膜の膜質を評価することを特徴としている。
【0031】
また本発明のカーボン膜評価装置は、厚さ2〜6nmのラマン光増強基体の一方の面に透明基板を付着し、他方の面に厚さ3nm〜20nmのSiO2を成膜して構成され、該SiO2膜がカーボン保護膜に接触される膜質評価治具と、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する表面増強ラマン分光手段と、前記測定されたスペクトルから、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を求める演算手段とを備え、前記求められたラマンスペクトルの強度比(D/G)に基づいて前記カーボン保護膜の膜質を評価することを特徴としている。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態例を説明する。本発明が適用される磁気記録媒体は例えば図1に示すように、非磁性支持体1上に磁性層2が形成され、この上にカーボン保護膜3が形成されて構成される。
【0033】
本実施形態は、いわゆる金属磁性薄膜型の磁気記録媒体について、カーボン膜の膜質制御を適正に行う為に適用されるものであるが、磁気記録媒体における非磁性支持体や金属磁性薄膜といった構成材料に限定はない。
【0034】
例示するならば、非磁性支持体1の材質としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート、セルロースブチレート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド等の高分子材料の他、アルミニウム合金、チタン合金等の軽金属、アルミナガラスなどのセラミックなどがあげられる。非磁性支持体にAl合金板やガラス板等の剛性を有する基板を使用した場合には、基板表面にアルマイト処理等の酸化皮膜やNi−P皮膜等を形成してその表面を硬くするようにしてもよい。
【0035】
磁性層2を構成する金属磁性材料としては、Fe、Co、Ni等の金属やCo−Ni系合金、Co−Pt系合金、Co−Pt−Ni系合金、Fe−Co系合金、Fe−Ni系合金、Fe−Co−Ni系合金、Fe−Ni−B系合金、Fe−Co−B系合金、Fe−Co−Ni−B系合金等からなる面内磁化記録金属磁性膜やCo−Cr系合金薄膜が例示される。
【0036】
金属磁性薄膜は、これら金属磁性材料の単層膜であってもよいし、層毎に組成あるいは成膜条件をかえた多層膜であってもよい。さらには非磁性支持体と金属磁性薄膜の間に下地層を設けたり、多層膜の場合には各層間に中間層を設ける事で、付着力の向上、抗磁性の制御などを行うようにしても良い。
【0037】
金属磁性薄膜を形成する為の薄膜形成技術としては、真空下で強磁性材料を加熱蒸発させ非磁性支持体上に沈着させる真空蒸着法や、強磁性金属材料の蒸発を放電中で行うイオンプレーディング法、アルゴンを主成分とする雰囲気中でグロー放電を起こし生じたアルゴンイオンでターゲット表面の原子を叩き出すスパッタ法等、いわゆるPVD(物理的気相成長)技術が用いられる。
【0038】
このような磁性層2上には、摺動耐久性を付与すると共に外部の湿気などから磁性層2を保護する為に、カーボン保護膜3が設けられる。
【0039】
ここで、カーボン膜とは、スパッタリング法によって成膜されたカーボン膜であっても、炭化水素 系ガスを用いたCVD法によって成膜されたカーボン膜であっても良い。なお、スパッタリング法としては、マグネトロンスパッタ法や対向ターゲット法があげられ、CVD法としてはプラズマCVD法、ECRプラズマCVD法、アークジェットプラズマCVD法があげられる。次に表面増強ラマン分光法の説明をする。
【0040】
表面増強ラマン分光法は、銀や金などの金属表面の吸着した分子でラマン強度が著しく増大して観測される現象として1974、年Fleischmannらによって発明され、数nmオーダーの最表面分析とラマン感度の増大を得ることができる事を特徴としている。この方法で得られるラマンスペクトルは、分析深さは異なるが、通常のラマン分光と同様の振動モードが得られる。
【0041】
カーボン素材を構造的に分類すると、ダイヤモンド、グラファイトおよびその中間状態にあると考えられるアモルファスカーボンに分ける事が出来る。ラマン分光はこれらのカーボンに対して特異的に高感度であり、存在量の変化に敏感に変化する。
【0042】
通常、ラマン散乱測定装置は励起光源、試料部、分散系、検出器の4つの部分からなる。励起光源にはイオンガス(Ar,He−Ne,Kr)レーザーが用いられる。試料部は試料照射、散乱光の集光の光学系からなっている。ラマン散乱光は集光レンズまたは集光ミラーで分光器スリット上に集められる。この散乱光は単一分光器を直列に接続したダブルモノクロメーターで分散され、検出器で検知される。検出器には光電子倍増管が使用されるが、近年、光マルチチャンネル検出器が用いられるようになっている。光マルチチャンネル検出器はスペクトルを同時測定できるので、測定時間が数秒ですむという利点を有する。
【0043】
本発明者は、通常のラマン測定では検出できない、磁性層厚が数十nmで構成されている磁気記録媒体のカーボン保護膜や、有機物成分の多いカーボン膜について、カーボン保護膜上に、厚さ4nmのラマン光増強基体を付着させた透明金属を、カーボン膜側にラマン光増強基体が接するように配置して,表面増強ラマンスペクトルを用いて評価することに着目した。
【0044】
検証の結果、表面増強ラマン分光法によって得られる信号、すなわち1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度G(graphite)と、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度D(disorder)と、カーボン膜の膜質には良好な相関性が見られることが判明した。かかる評価法によれば、ラマン分光法では測定できなかったカーボン保護膜の膜質制御、評価を行う事ができる。
【0045】
本実施形態例では、表面増強ラマンによる観測を行い、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度G、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Dに基づいてカーボン膜の膜質(硬度)を制御する。
【0046】
また、表面増強ラマン分光法による観測を行い、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度と1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度比に基づいてカーボン保護膜の膜質を制御する。
【0047】
具体的には、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Dとの比(D/G)を0.1〜1.0に保つ。
【0048】
ここで、前記強度比D/Gを0.1〜1.0とするのはこの範囲よりも値が小さくなると摩擦が大きくなり耐久性が低下すること、逆にこの範囲よりも値が大きくなると磁気ヘッドなどにダメージを与える事、などによる。
【0049】
すなわち前記強度比D/Gはカーボン膜の硬さの指標となる。
【0050】
上記ラマンスペクトル強度面積のフィードバックによりコントロールする成膜条件としては、ラインスピードや反応管内の圧力などを挙げることができる。
【0051】
以下、本発明の具体的な実施形態例について説明するが、本発明はこの実施形態例に限定されるものではない。図2は、本実施形態例においてカーボン保護膜形成に用いたプラズマCVD連続膜形成装置の一例を示すものである。この図2において、磁気記録媒体11は、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に酸素ガスを導入しながらCoを蒸着して部分酸化強磁性金属薄膜を形成したものである。
【0052】
上記プラズマCVD連続形成装置は、ガイドロール12や巻き出しロール13、巻き取りロール14、反応管15を備える。反応管15の内部には電極16が組み込まれている。原料となる炭化水素系を主成分としたガスは、放電ガス導入口18から導入される。
【0053】
この反応管15と対向して円筒状の回転可能な対向電極19が設置されている。磁気記録媒体11は、この対向電極19に巻き付けられ、反応管15内部にて磁気記録媒体11の表面にカーボン保護膜が形成される。上記プラズマCVD連続膜形成装置は、真空排気系20や真空槽21を有する。
【0054】
上記プラズマCVD連続膜形成装置を用い、非磁性支持体上に金属磁性薄膜とカーボン膜とが形成されてなる磁気テープを作製した。具体的には、厚さ6μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、Coを蒸着源に用いた真空蒸着を行う事により、膜厚50nmの金属磁性薄膜を成膜した。金属磁性薄膜の成膜条件は下記の通りである。
【0055】
金属磁性薄膜の成膜条件
成膜装置:連続巻き取り式蒸着装置
蒸着源:Co100%
蒸着粒子の入射角:45°〜90°
導入ガス:酸素ガス
蒸着時真空度:2×10−2Pa
そして、この蒸着膜表面に、プラズマCVD装置を用いてカーボン保護膜を成膜することで磁気記録媒体を作製した。
【0056】
CVD条件を以下に示す。
【0057】
反応ガス:i−C4H8
反応ガスの圧力:30Pa
プラズマ電極の直流電圧:1.2kV
テープ送り速度:3m/min
表面増強ラマン分光分析:厚さ0.5mmの平面ガラス基板上に銀を2〜10nm の範囲で蒸着し、それをカーボン保護膜が成膜されている原反上に密着させ,次の条件で測定を行った。
【0058】
装置:Renishaw社 日本電子 JRS−SYS1000(D)
光源:Ar+レーザー(波長514.5nm)
光源出力:2.5mW
試料上での出力:0.33mW
レーザービーム径:21μm
測定波長:1000cm−1〜1800cm−1
そして、バックコートにはカーボンを主体とする材料を厚さ0.5μmに塗布した。カーボン保護膜の表面には潤滑剤としてフッ素系材料を塗布した。これらのテープを裁断した。まず、銀膜厚の異なるサンプル1〜6に対するラマン光強度の比較を行い、その結果を次の表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1から、表面増強ラマン効果を充分に得るためにはAgの膜厚として2〜6nmが適正であるといえる。
【0061】
これらサンプルについて、実用特性の評価として、シャトル走行試験、スチル耐久試験、摩耗試験を行った。評価方法は下記の通りである。尚、各試験には、ソニー社製、MicroMVカムコーダー(商品名DCR−IP7)を使用した。
【0062】
シャトル走行試験:40℃、30%RH環境下で10分間の信号を1回記録した後、99回これを再生し、結果は初期出力に対する100パス目の出力をdB表示した。 このレベルダウン量は、−3dB以内であれば、内蔵される信号増幅回路によ り画質に影響を与えない。
【0063】
スチル耐久性試験:−5℃の環境下でスチル状態のまま保持し、結果を初期出
力に対して−3dBになるまでの時間で表した。
【0064】
摩耗試験:−5℃の環境下でシャトル走行を60分×300回行い,MRヘッドの摩耗量より算出した。なお, ヘッドの摩耗量が1μmを超えると,電磁変換特性に
多大なる影響をあたえる。
【0065】
実施形態例としてガラス基板上に銀を4nm蒸着したものを密着させて表面増強ラマン分光法によってカーボン膜質の評価を行った一例を図3に示す。
【0066】
比較例としてラマン分光法によってカーボン膜質の評価を行った結果を図4に示す。諸特性の測定結果を次の表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
表2によれば、強度比D/Gが0.1〜1.0の範囲内であるサンプル2、3は、シャトル走行性、スチル耐久性、摩耗性のいずれにおいても優秀な性能を示すことがわかる。
【0069】
この表2の結果からも明らかなように、表面増強ラマン分光法では従来測定が困難であった、磁性層の極薄い磁気記録媒体のカーボン保護膜の膜質評価を行う事が可能である。さらにD/G比を規定の範囲にする事によって摺動耐久性、信頼性などに優れた媒体を提供する事が可能である。
【0070】
次に本発明の他の実施形態例を説明する。
【0071】
本発明者は通常のラマン測定では検出できない磁性層厚が数十nmで構成されている磁気記録媒体のカーボン保護膜や、有機物成分の多いカーボン膜について、カーボン保護膜上に、透明基体上に厚さ4nmのラマン光増強基体を、 さらにその上にSiO2を3〜20nmの厚さで付着させた透明基板を、カーボン膜側にSiO2膜が接するように配置して、表面増強ラマンスペクトルを用いて評価することに着目した。
【0072】
検証の結果、表面増強ラマン分光法によって得られる信号、すなわち1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度と、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度と、カーボン膜の膜質には良好な相関性が見られることが判明した。かかる評価法によれば、ラマン分光法では測定できなかったカーボン保護膜の膜質制御、評価を行う事ができる。
【0073】
また、SiO2層を付与することによって、機械的損傷や大気中のガスによる酸化,腐食を避けることでき、長期間に渡り安定した膜質制御、評価を行うことができる。
【0074】
ここで、SiO2層の厚さを3〜20nmとしたのは、3nm以下では十分な保護層として機能せず、酸化してしまうためであり、20nm以上ではラマン光が評価対象物にまで達せず、表面増強ラマンスペクトルが得られない為である。
【0075】
本実施形態例では、上記表面増強ラマンによる観測を行い、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度G、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Dに基づいてカーボン膜の膜質を制御する。
【0076】
また、表面増強ラマン分光法による観測を行い、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Dとの比D/Gに基づいてカーボン保護膜の膜質を制御する。
【0077】
具体的には、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度G、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するスペクトルの強度Dの比(D/G)を0.1〜1.0に保つ。
【0078】
ここで、D/Gを0.1〜1.0とするのはこの範囲よりも値が小さくなると摩擦が大きくなり耐久性が低下すること、逆にこの範囲よりも値が大きくなると磁気ヘッドなどにダメージを与えること、などによる。
【0079】
上記ラマンスペクトル強度面積のフィードバックによりコントロールする成膜条件としては、ラインスピードや反応管内の圧力などを挙げることができる。
【0080】
以下、具体的な実施形態例について説明するが、本発明はこの実施形態例に限定されるものではない。本実施形態例において、カーボン保護膜の形成には、例えば前記と同様に図2のプラズマCVD連続膜形成装置が用いられる。
【0081】
図2のプラズマCVD連続膜形成装置を用い、非磁性支持体上に金属磁性薄膜とカーボン膜とが形成されてなる磁気テープを作製した。具体的には、厚さ6μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、Coを蒸着源に用いた真空蒸着を行う事により、膜厚50nmの金属磁性薄膜を成膜した。金属磁性薄膜の成膜条件は下記の通りである。
【0082】
金属磁性薄膜の成膜条件
成膜装置:連続巻き取り式蒸着装置
蒸着源:Co100%
蒸着粒子の入射角:45°〜90°
導入ガス:酸素ガス
蒸着時真空度:2×10−2Pa
そして、この蒸着膜表面に、プラズマCVD装置を用いてカーボン保護膜を成膜することで磁気記録媒体を作製した。CVD条件を以下に示す。
【0083】
反応ガス:i−C4H8
反応ガスの圧力:30Pa
プラズマ電極の直流電圧;1.2kV
テープ送り速度:3m/min
そして、バックコートにはカーボンを主体とする材料を厚さ0.5μmに塗布した。カーボン保護膜の表面には潤滑剤としてフッ素系材料を塗布した。これらのテープを裁断した。こうしてテープ化されたサンプルに表面増強ラマン分光での測定を行った。
【0084】
測定は実施形態例、比較例に示される表面増強ラマン用治具(透明基板、ラマン増強基体、SiO2層から成る膜質評価治具)を測定対象のテープのカーボン保護膜上にラマン光増強基体側を接するようにして密着させ、次の条件で測定を行った。
【0085】
装置:Renishaw社 日本電子 JRS−SYS1000(D)
光源:Ar+レーザー(波長514.5nm)
光源出力:2.5mW
試料上での出力:0.33mW
レーザービーム径:21μm
測定波長:1000cm−1〜1800cm−1
実施形態例1:厚さ0.5mmの平面ガラス基板上に銀を6nm 蒸着し、さらに5nm のSiO2をスパッタにて成膜した。
【0086】
実施形態例2:厚さ0.8mmの平面ガラス基板上に銀を2nm 蒸着し、さらに10 nmのSiO2をスパッタにて成膜した。
【0087】
比較例1:厚さ0.5mmの平面ガラス基板上に銀を4nm 蒸着した。
【0088】
比較例2:厚さ0.8mmの平面ガラス基板上に銀を4nm 蒸着し、さらに2nmのSiO2をスパッタにて成膜した。
【0089】
比較例3:厚さ0.8mmの平面ガラス基板上に銀を4nm 蒸着し、さらに30 nmのSiO2をスパッタにて成膜した。
【0090】
SiO2の保護層としての役割を調べるために、前記治具を成膜後に上記の条件で測定を行い、その後加速環境として65℃90RH%の環境に6日間保持し再度、上記の測定を行いラマン強度の劣化量を測定した(dB表示)。その結果を次の表3に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
前記実施形態例1を用いた場合の表面増強ラマン分光法によってカーボン膜質の評価を行った一例を図5に示す。
【0093】
表3から、本発明で規定している3nm〜20nmの厚さでSiO2を成膜した実施形態例1、2は、ラマン強度の劣化量は少なく、SiO2が保護層としての役割を果たしていることがわかる。
【0094】
この結果からも明らかなように、保護層(SiO2)のついた表面増強ラマン用治具を用いることで,従来測定が困難であった、磁性層の極薄い磁気記録媒体のカーボン保護膜の膜質評価を再現性よく行う事が可能である。さらにD/G比を規定の範囲にする事によって摺動耐久性、信頼性などに優れた媒体を提供する事が可能である。
【0095】
尚、本発明のラマン増強基体としては、銀に限らず、パラジウム、白金、プラチナ系等を使用しても良く、その場合も前記と同様の作用、効果を奏する。
【0096】
また本発明は磁気テープに限らず、ハードディスク等の他の磁気記録媒体に適用することもできる。また本発明は磁気記録媒体に限らず、例えば金型の摩耗を防ぐため表面にDLC膜を付着させたものに適用し、カーボンの膜質を評価することもできる。これらの場合も前記と同様の作用、効果を奏する。
【0097】
【発明の効果】
(1)以上のように請求項1〜8に記載の発明によれば、従来、測定が困難であった磁性層の極薄い磁気記録媒体のカーボン保護膜の膜質評価を、再現性よく行うことができ、この評価に基づいてカーボンの膜質を制御することによって、摺動耐久性に優れ、かつ電磁変換出力が一定である磁気記録媒体が得られる。さらには、信頼性が特に必要とされるデータストリーマやビデオライブラリ等の特別な用途にも耐え得る磁気記録テープの大量提供が可能である。
(2)また請求項2、4、6、8に記載の発明によれば、厚さ3nm〜20nmのSiO2が保護膜として作用し、ラマン光増強基体として用いられる金属が酸化などの外部の影響を受けることを防ぐ。このためラマン強度の劣化を防止することができ、より正確にカーボン保護膜の膜質を評価することができる。これによって、摺動耐久性、信頼性などがより優れた磁気記録媒体を製造することができる。
(3)また請求項9〜14に記載の発明によれば、カーボン保護膜の膜質評価を再現性よく行うことができる。このため本発明を、例えば、従来、測定が困難であった磁性層の極薄い磁気記録媒体に適用した場合も、カーボン保護膜の膜質を正確に評価することができ、これによって摺動耐久性、信頼性などに優れた磁気記録媒体を提供することができる。
(4)また請求項10、12、14に記載の発明によれば、厚さ3nm〜20nmのSiO2が保護膜として作用し、ラマン光増強基体として用いられる金属が酸化などの外部の影響を受けることを防ぐ。このためラマン強度の劣化を防止することができ、より正確にカーボン保護膜の膜質を評価することができる。
(5)また請求項13、14に記載の発明によれば、ラマン光増強基体は膜質評価治具に形成され、それを評価対象物であるカーボン膜に接触させるように構成しているので、カーボン保護膜にラマン光増強基体を成膜する必要がない。このため成膜室に入れる必要がなくなり、形状などの制限を受けることがなくなる。さらに、ラマン光増強基体を測定ごとに成膜する必要がなくなる為、ラマン光増強基体の成膜条件を厳しく制御する必要もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される磁気記録媒体の模式的断面図。
【図2】カーボン保護膜形成に用いられるプラズマCVD膜連続形成装置の一例を示す構成図。
【図3】本発明の一実施形態例によりカーボン膜質の評価を行った際の表面増強ラマンスペクトルを示す特性図。
【図4】ラマン分光法によりカーボン膜質の評価を行った際のラマンスペクトルの一例を示す特性図。
【図5】本発明の他の実施形態例によりカーボン膜質の評価を行った際の表面増強ラマンスペクトルを示す特性図。
【符号の説明】
1…非磁性支持体、2…磁性層、3…カーボン保護膜、11…磁気記録媒体、12…ガイドロール、13…巻き出しロール、14…巻き取りロール、15…反応管、16…電極、18…放電ガス導入口、19…対向電極、20…真空排気系、21…真空槽。
Claims (14)
- 非磁性支持体上に少なくとも金属性薄膜及びカーボン保護膜を積層形成する磁気記録媒体の製造方法において、
厚さ2〜6nmのラマン光増強基体を付着させた透明基板を前記カーボン保護膜上に接触させる工程と、
レーザー励起によるラマン分光器によって、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する工程と、
前記測定された表面増強ラマンスペクトルに基づいて前記カーボンの膜質を制御する制御工程と
を備えたことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。 - 非磁性支持体上に少なくとも金属性薄膜及びカーボン保護膜を積層形成する磁気記録媒体の製造方法において、
厚さ2〜6nmのラマン光増強基体を付着させた透明基板に厚さ3nm〜20nmのSiO2を成膜した治具を、前記カーボン保護膜上に接触させる工程と、
レーザー励起によるラマン分光器によって、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する工程と、
前記測定された表面増強ラマンスペクトルに基づいて前記カーボンの膜質を制御する制御工程と
を備えたことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。 - 前記制御工程は、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を、0.1〜1.0に保つことにより、前記カーボン保護膜の膜質を一定に保つ工程を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 前記制御工程は、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を、0.1〜1.0に保つことにより、前記カーボン保護膜の膜質を一定に保つ工程を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 前記制御工程は、前記カーボン保護膜を成膜する際のラインスピードを制御することによりカーボン保護膜の膜質を制御する工程を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 前記制御工程は、前記カーボン保護膜を成膜する際のラインスピードを制御することによりカーボン保護膜の膜質を制御する工程を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 前記制御工程は、前記カーボン保護膜を成膜する際の反応管内の圧力を制御することによりカーボン保護膜の膜質を制御する工程を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 前記制御工程は、前記カーボン保護膜を成膜する際の反応管内の圧力を制御することによりカーボン保護膜の膜質を制御する工程を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 厚さ2〜6nmのラマン光増強基体を付着させた透明基板を前記カーボン保護膜上に接触させる工程と、
レーザー励起によるラマン分光器によって、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する工程とを備え、
前記測定された表面増強ラマンスペクトルに基づいて前記カーボンの膜質を評価することを特徴とするカーボン膜評価方法。 - 厚さ2〜6nmのラマン光増強基体を付着させた透明基板に厚さ3nm〜20nmのSiO2を成膜した治具を、カーボン保護膜上に接触させる工程と、レーザー励起によるラマン分光器によって、前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する工程とを備え、
前記測定された表面増強ラマンスペクトルに基づいて前記カーボンの膜質を評価することを特徴とするカーボン膜評価方法。 - 1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を求める工程を備えたことを特徴とする請求項9に記載のカーボン膜評価方法。
- 1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を求める工程を備えたことを特徴とする請求項10に記載のカーボン膜評価方法。
- 厚さ2〜6nmのラマン光増強基体を付着して構成された透明基板がカーボン保護膜に接触される膜質評価治具と、
前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する表面増強ラマン分光手段と、
前記測定されたスペクトルから、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を求める演算手段とを備え、
前記求められたラマンスペクトルの強度比(D/G)に基づいて前記カーボン保護膜の膜質を評価することを特徴とするカーボン膜評価装置。 - 厚さ2〜6nmのラマン光増強基体を付着して、さらに厚さ3nm〜20nmのSiO2を成膜して構成された透明基板がカーボン保護膜に接触される膜質評価治具と、
前記カーボン保護膜の表面増強ラマンスペクトルを測定する表面増強ラマン分光手段と、
前記測定されたスペクトルから、1550cm−1以上1650cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Gと、1350cm−1以上1450cm−1以下にピークを有するラマンスペクトルの強度Dの比(D/G)を求める演算手段とを備え、
前記求められたラマンスペクトルの強度比(D/G)に基づいて前記カーボン保護膜の膜質を評価することを特徴とするカーボン膜評価装置。
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WO2011093090A1 (ja) * | 2010-01-29 | 2011-08-04 | ベックマン コールター, インコーポレイテッド | 分析装置及び分析方法 |
CN109489567A (zh) * | 2017-09-12 | 2019-03-19 | 通用汽车环球科技运作有限责任公司 | 通过拉曼光谱分析确定碳涂敷金属基板上的亚微米碳涂层的厚度 |
CN114062342A (zh) * | 2020-07-30 | 2022-02-18 | 顶极科技股份有限公司 | 一种半导体制程零配件的质变检测系统和方法 |
-
2002
- 2002-09-10 JP JP2002263471A patent/JP2004103108A/ja active Pending
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