JP2004100851A - 焼結軸受とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐食性に優れ、かつ製品の寸法精度を確保することが可能で、動圧発生溝の加工が簡易な焼結合金を提供する。
【解決手段】銅を含有する原料粉末を成形すると共に焼結(S2)して焼結合金本体を形成し、この焼結合金本体に錫鍍金の鍍金(S4)処理を施した後サイジング(S5)し、同時に転写により錫鍍金層53に動圧発生溝61を形成する。サイジング時に錫鍍金層が圧縮され、錫鍍金層がほぼ均一な厚さに形成され、同時に、前記サイジングにより前記錫鍍金を圧縮して該錫鍍金により焼結合金本体の外面に開口する気孔が塞がれる。しかも、焼結合金本体を加工することなく、動圧発生溝を設けることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】銅を含有する原料粉末を成形すると共に焼結(S2)して焼結合金本体を形成し、この焼結合金本体に錫鍍金の鍍金(S4)処理を施した後サイジング(S5)し、同時に転写により錫鍍金層53に動圧発生溝61を形成する。サイジング時に錫鍍金層が圧縮され、錫鍍金層がほぼ均一な厚さに形成され、同時に、前記サイジングにより前記錫鍍金を圧縮して該錫鍍金により焼結合金本体の外面に開口する気孔が塞がれる。しかも、焼結合金本体を加工することなく、動圧発生溝を設けることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼結軸受とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガソリンエンジン用モータ式燃料ポンプが図13に断面図で例示される構造を持つことが知られている。すなわち、図示される通り上記燃料ポンプ1は、ケーシング2内において、モータ3の両端部に固設した回転軸4が軸受5に支持され、前記回転軸4の一方端部にはインペラ6が挿入され、かつ前記インペラ6、モータ3(アーマチュア)の外周面、および軸受5と回転軸4との間の図示しない隙間に沿って狭い間隙のガソリン流通路(図示せず)が形成された構造を有し、前記モータ3の回転でインペラ6が回転し、このインペラ6の回転でガソリンがケーシング2内に取り込まれ、取り込まれたガソリンはインペラ6、モータ3の外周面、および軸受と回転軸との間の図示しない隙間に沿って形成されたガソリン流通路を通って送り出され、別設のガソリンエンジンに送り込まれるように作動するものである。なお、図13では両軸受5,5の外周部を微量の燃料が通過し、インペラ6で昇圧されたガソリンはケーシング2内のガソリン通路を通してモータ3の外周面のところまで到達する。
【0003】
上記の燃料ポンプ1の構造部材である軸受5には、銅系の焼結合金が用いられ、この焼結合金の製造においては、銅を含有する原料粉末を圧縮して圧粉体を形成し、この圧粉体を焼結して焼結合金本体を形成し、この焼結合金本体に再圧縮であるサイジングを行い、所定寸法に仕上げるようにしている。
【0004】
そして、前記軸受5は燃料に晒された環境で使用されるため、燃料に対する耐食性を考慮して、上記のように銅を含有する原料粉末を用いた銅系の焼結合金が用いられている。しかし、このように銅系の焼結合金であっても、硫黄やその化合物が混ざった燃料や、蟻酸や酢酸等の有機酸が混ざった燃料を使用すると腐食により寿命が低下する問題がある。
【0005】
そこで、従来の銅鉛合金軸受には、軸受の耐腐食性を向上させるために、銅鉛合金軸受の内外表面に、錫、鉛またはこれらの合金の鍍金を施すことが有効である(例えば、特許文献1の公報第0005段)、と記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−202938号公報
【特許文献2】
特開平10−141358公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、例えば10μm以下の寸法精度を要求される製品では、鍍金処理前のサイジングにより寸法公差内に収まったとしても、その後に施した鍍金層の厚さのばらつきにより寸法精度を確保できない問題がある。
【0008】
ところで、軸受において、摺動面に動圧発生溝を形成したものが知られており、例えば従来の動圧軸受装置には、回転部材が回転した際における動圧発生溝のポンピング作用により潤滑液体に動圧力を発生させ、その動圧力によって回転部材の支承を行わせ(例えば、特許文献2の第0002段)、その動圧発生溝は、NC旋盤により切削バイトなどの加工工具(例えば、特許文献2の第0016段)を用いて形成される。
【0009】
そして、上述した焼結合金に動圧発生溝を設ける場合も、切削加工が必要となり、1本1本の溝を正確に切削加工する必要があるため、製造工程が複雑になるという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決しようとするもので、耐食性に優れ、かつ製品の寸法精度を確保することが可能で、動圧発生溝の加工が簡易な焼結軸受とその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の焼結合金は、前記目的を達成するために、原料粉末を成形すると共に焼結してなる軸受本体に、鍍金層を設けた焼結軸受において、前記鍍金層が動圧発生溝を有するものである。
【0012】
鍍金層の動圧発生溝により、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができる。そして、鍍金層により耐食性が向上し、さらに、焼結合金本体を加工することなく、動圧発生溝を設けることができ、その加工も容易となる。
【0013】
請求項2の発明は、原料粉末を成形すると共に焼結してなる軸受本体に、鍍金層を設けた焼結軸受において、前記軸受本体の軸方向端面の少なくとも一方に、前記鍍金層よりなる鍍金ワッシャ部材を一体に設けたものである。
【0014】
鍍金ワッシャ部材が軸受本体と一体とされることにより、焼結金属製の軸受本体と他の樹脂製のワッシャ部材との間の相対回転が抑止され、鍍金ワッシャ部材と他のワッシャとの摺動、あるいは鍍金ワッシャ部材とスナップリングとの摺動となるので、軸受本体との摺動によるワッシャ部材の摩耗を確実に防止することができる。また、鍍金ワッシャ部材によって軸受本体の端面を封孔することができるので、軸受端面からのオイル漏れを効果的に防止することができる。
【0015】
また、請求項3の発明は、前記鍍金層が動圧発生溝を有するものである。
【0016】
鍍金層の動圧発生溝により、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができる。そして、焼結合金本体を加工することなく、動圧発生溝を設けることができ、その加工も容易となる。
【0017】
また、請求項4の発明は、請求項1又は3の焼結軸受において、前記動圧発生溝は、前記鍍金層を有する軸受本体をサイジングして該鍍金層に転写されたものである。
【0018】
動圧発生溝を鍍金層に転写するから、極めて簡易かつ正確に動圧発生溝を設けることができる。しかも、鍍金層を有する軸受本体をサイジングするから、鍍金層を合せた製品寸法を所定の寸法公差内に仕上げることができる。さらに、サイジングにより鍍金層が圧縮され、鍍金層がほぼ均一な厚さに形成され、同時に、圧縮された鍍金層が軸受本体外面の気孔を封止する。
【0019】
また、請求項5の発明は、請求項1〜4の発明において、前記原料粉末が銅系で、前記鍍金層が錫系である。
【0020】
耐食性を有する錫鍍金層により銅系の軸受本体を覆うことにより、高い耐食性を備えた軸受を得ることができる。また、錫鍍金層に設けた動圧発生溝により、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができる。そして、銅系の焼結合金と錫鍍金とを組み合わせることにより、硫黄やその化合物に対する耐食性と蟻酸や酢酸等の有機酸に対する耐食性の両者を備えたものとなる。
【0021】
また、請求項6の焼結軸受の製造方法は、前記目的を達成するために、原料粉末を成形すると共に焼結して軸受本体を形成し、この軸受本体に鍍金層を設けた後サイジングし、前記鍍金層に動圧発生溝を形成する方法である。
【0022】
この方法を用いることにより、サイジング時に鍍金層が圧縮され、鍍金層がほぼ均一な厚さに形成され、同時に、前記サイジングにより前記鍍金層を圧縮して該鍍金層により軸受本体の外面に開口する気孔を塞ぐから、圧縮された鍍金層が軸受本体外面の気孔を封止し、鍍金層による被覆性が向上する。また、鍍金層を有する軸受本体をサイジングするから、鍍金層を合せた製品寸法を所定の寸法公差内に仕上げることができる。
【0023】
また、鍍金層に設けた動圧発生溝により、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができる。しかも、軸受本体を加工することなく、動圧発生溝を設けることができ、その加工も容易となる。
【0024】
また、請求項7の製造方法は、請求項6の製造方法において、前記サイジングと同時に前記鍍金層に前記動圧発生溝を転写する製造方法である。
【0025】
サイジングにより動圧発生溝を鍍金層に転写するから、極めて簡易かつ正確に動圧発生溝を形成することができる。
【0026】
さらに、請求項8の製造方法は、請求項7の製造方法において、前記原料粉末が銅系で、前記鍍金層が錫系である。
【0027】
銅系の焼結合金と錫鍍金とを組み合わせることにより、硫黄やその化合物に対する耐食性と蟻酸や酢酸等の有機酸に対する耐食性の両者を備えた焼結軸受が得られる。
【0028】
【発明の実施形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1〜図7は本発明の第1実施形態を示し、焼結合金本体の原料には、Cu−Ni−Zn−C系やCu−Sn−C系等のものを用いることができる。尚、以下、焼結合金として前記軸受5を例に説明する。図2及び図3に示すように、軸受5は、略円筒形の軸受本体たる焼結合金本体51からなり、その中央には前記回転軸4が回転摺動する円筒状の摺動面52が形成され、さらに、その焼結合金本体51の露出した外面全てを覆う錫鍍金層53を備え、この錫鍍金層53が動圧発生溝61を有する。尚、本発明において錫鍍金とは、錫又は錫合金の鍍金を含むものである。また、後述するように転写により動圧発生溝61を形成する場合、鍍金層53は焼結合金である焼結合金本体51より柔らかいものを用いることが好ましい。
【0029】
前記軸受5の焼結合金本体51には、一例として、質量%で、Zn:10〜25%、Ni:10〜25%、P :0.1〜0.9%、C :1〜8%、を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成、並びに5〜25%の気孔率を有する黒鉛分散型Cu基焼結合金を用いることができ、また、それ以外の組成の黒鉛分散型Cu基焼結合金を用いることもできる。
【0030】
その製造方法につき、図1を参照して説明すると、例えば、焼結合金本体51に用いる原料粉末は金属を主成分とするものであって、いずれも水アトマイズ法により形成され、かつ45μmの平均粒径を有する5種類のCu−Ni−Zn合金粉末、すなわちCu−15.8%Ni−18.3%Zn合金粉末、Cu−16.9%Ni−18.0%Zn合金粉末、Cu−18.8%Ni−18.4%Zn合金粉末、Cu−17.4%Ni−16.4%Zn合金粉末、およびCu−17.3%Ni−19.9%Zn合金粉末(以上5種類)、45μmの平均粒径を有する水アトマイズCu−P合金(P:33%含有)粉末、さらに75μmの平均粒径を有する黒鉛粉末を用意し、これら原料粉末を所定の配合組成に配合し、V型ミキサーで40分間混合する混合(S1:ステップ1)処理を行った後、150〜300MPaの範囲内の所定の圧力でプレスにより所定形状の圧粉体に成形(S2)し、この圧粉体をアンモニア分解ガス雰囲気中、750〜900℃の範囲内の所定の温度に40分間保持の条件で焼結(S3)することにより、黒鉛分散型Cu基焼結合金で構成され軸受5を製造した。この結果得られた軸受5を光学顕微鏡(200倍)を用いて観察したところ、いずれもCu−Ni−Zn合金の固溶体相からなる素地にCu−P合金と黒鉛が微細に分散分布し、かつ気孔も存在する組織を示した。このようにして得られた黒鉛分散型Cu基焼結合金製の軸受5は、これの素地を形成するCu−Ni−Zn合金のもつすぐれた強度および耐食性と相俟って、ガソリンの高圧高速流に曝された環境下ですぐれた耐摩耗性を発揮するようになり、また、この黒鉛分散型Cu基焼結合金製軸受を使用したモータ式燃料ポンプは硫黄又はその化合物を不純物に含む燃料に対してもすぐれた寿命を有するものとなる。
【0031】
本発明では、一層の耐食性向上をはかるため、焼結(S3)処理後、焼結合金本体51に鍍金(S4)処理を行う。この鍍金(S4)処理では、電気鍍金法等により、焼結合金本体51の外面に厚さ15〜25μ程度の錫(Sn)を含む鍍金層53を形成する。
【0032】
鍍金処理後、軸受5を再圧縮であるサイジング(S5)して所定寸法に仕上げる。一例として、図4及び図5はサイジングに用いる矯正用金型装置11を示し、この矯正用金型装置11は、上下方向を軸方向(プレス上下軸方向)としており、ダイ12、コアロッド13、下パンチ14および上パンチ15を備えている。ダイ12はほぼ円筒形状で、このダイ12内にほぼ円柱形状のコアロッド13が同軸的に位置している。下パンチ14は、ほぼ円筒形状で、ダイ12およびコアロッド13間に下方から上下動自在に嵌合している。上パンチ15は、ほぼ円筒形状で、ダイ12およびコアロッド13間に上方から上下動自在にかつ挿脱自在に嵌合するものである。そして、図4に示すように、ダイ12内に前記軸受5を充填し、この軸受5の貫通孔である摺動面52にコアロッド13を挿入配置した状態で、上下方向から上,下パンチ13,14により軸受5を加圧して所定の寸法に矯正する。
【0033】
本発明の特徴的な構成として、前記矯正用金型装置11には、前記コアロッド13のサイジング面たる外周面に、前記動圧発生溝61を形成する転写部21を設けている。そして、この転写部21は、前記動圧発生溝61の形状に対応した凸部に形成されており、転写部21の高さは錫鍍金層53に形成する動圧発生溝61の深さに対応する。また、動圧発生溝61は、コアロッド13以外にも、軸受5の摺動面となる両側端面及び外周面に設けることができ、この場合は対応する摺動面を形成する上,下パンチ15,14のサイジング面及びダイ12のサイジング面に転写部を設ければよい。尚、サイジング面とはサイジングされるもの(この例では軸受5)に当接する面である。
【0034】
ここで、サイジング前の錫鍍金層53とサイジング後の錫鍍金層53の状態を確認するため、複数の焼結合金本体51を複数製作して組織の拡大写真を撮影した。実際には、20個の焼結合金本体51を鍍金処理まで同一条件で形成した後、半数の10個の焼結体本体51にサイジングを行った。
【0035】
そして、それら10個の焼結合金本体51を図3に示したように切断し、摺動面52の組織の拡大写真を撮影した。これによりサイジングを行わなかった10個の焼結合金本体51では、摺動面52における錫鍍金層53の厚さの平均は約20μmであり、サイジングを行った10個の焼結合金本体51では、摺動面52における錫鍍金層53の厚さの平均は約12μmであった。このようにサイジングをすると錫鍍金層53の厚さが薄くなって引き伸ばされ、この引き伸ばされた部分の鍍金層53により気孔54の開口部54Aが塞がれる。
【0036】
サイジングを行わなかった焼結合金本体51では、図6に示すように、摺動面52に開口部54Aを有する気孔54があり、これは鍍金による封孔が不十分な箇所である。また、錫鍍金層53の外面に凹凸が見られ、この凹凸は錫鍍金層53の厚さのばらつきにより形成されたものである。
【0037】
これに対して、サイジングを行った焼結合金本体51では、図7に示すように、摺動面52に開口する気孔54の開口部54Aが錫鍍金層53により塞がれ、同時に錫鍍金層53の外面も凹凸の少ないものとなった。また、断面形状においても、転写部21により動圧発生溝61が良好に転写形成されることが確認できた。
【0038】
このように鍍金後にサイジング(S5)を行うことにより、錫鍍金層53を圧縮して押し広げ、該錫鍍金層53により焼結合金本体51の外面に開口する気孔54が塞がれ、錫鍍金層53による被覆性が向上する。また、サイジング(S5)により錫鍍金層53の外面を平坦に形成すると共に、ほぼ均一な厚さに仕上げることができ、しかも、転写によるから動圧発生溝61を正確かつ簡易に形成することができる。
【0039】
また、銅系の原料粉末を用いた焼結合金本体51には、錫系以外にニッケル系,亜鉛系,銅系の鍍金層を設けることができる。また、鉄系の原料粉末を用いた焼結合金本体51には、錫系,亜鉛系や錫と亜鉛系の鍍金層を設けることができる。
【0040】
このように本実施形態では、請求項1に対応して、原料粉末を成形すると共に焼結してなる軸受本体たる焼結合金本体51に、鍍金層たる錫鍍金層53を設けた焼結軸受において、錫鍍金層53が動圧発生溝61を有するから、錫鍍金層53に設けた動圧発生溝61により、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができ、しかも、焼結合金本体51を加工することなく、動圧発生溝61を設けることができる。
【0041】
また、このように本実施形態では、請求項4に対応して、動圧発生溝61は、錫鍍金層53を有する軸受本体たる焼結合金本体51をサイジング(S5)して該錫鍍金層53に転写されたものであるから、動圧発生溝61を錫鍍金層53に転写するから、極めて簡易かつ正確に動圧発生溝61を設けることができる。しかも、錫鍍金層53を有する焼結合金本体51をサイジングするから、錫鍍金層53を合せた製品寸法を所定の寸法公差内に仕上げることができる。さらに、サイジング(S5)により錫鍍金層53が圧縮され、錫鍍金層53がほぼ均一な厚さに形成され、同時に、圧縮された錫鍍金が焼結合金本体51外面の気孔54を封止封止し、錫鍍金層53による被覆性が向上する。そして、動圧発生溝55と焼結合金本体54とは錫鍍金層53により気密性が保たれているから、回転時、動圧発生溝55における動圧発生が確実に行われる。
【0042】
また、このように本実施形態では、請求項5に対応して、原料粉末が銅系で、鍍金層53が錫系であるから、耐食性を有する錫鍍金層53により銅系の軸受本体たる焼結合金本体51を覆うことにより、高い耐食性を備えた軸受5を得ることができる。また、錫鍍金層53に設けた動圧発生溝61により、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができる。しかも、軸受本体を加工することなく、動圧発生溝61を設けることができ、その加工も容易となる。そして、銅系の焼結合金と錫鍍金とを組み合わせることにより、硫黄やその化合物に対する耐食性と蟻酸や酢酸等の有機酸に対する耐食性の両者を備えたものとなる。
【0043】
このように本実施形態では、請求項6に対応して、原料粉末を成形すると共に焼結して軸受本体たる焼結合金本体51を形成し、この焼結合金本体51に表面処理を施した後サイジング(S5)し、表面処理の層たる錫鍍金層53に動圧発生溝61を形成するから、サイジング(S5)時に錫鍍金層53が圧縮され、錫鍍金層53がほぼ均一な厚さに形成され、同時に、サイジング(S5)により錫鍍金を圧縮して該錫鍍金により焼結合金本体51の外面に開口する気孔54を塞ぐから、圧縮された錫鍍金層53が焼結合金本体51外面の気孔54を封止し、錫鍍金層53による被覆性が向上する。また、錫鍍金層53を有する焼結合金本体51をサイジング(S5)するから、錫鍍金層53を合せた製品寸法を所定の寸法公差内に仕上げることができる。
【0044】
しかも、錫鍍金層53に設けた動圧発生溝61により、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができる。しかも、焼結合金本体51を加工することなく、動圧発生溝61を設けることができ、その加工も容易となる。
【0045】
また、このように本実施形態では、請求項7に対応して、サイジング(S5)と同時に錫鍍金層53に動圧発生溝61を転写するから、極めて簡易かつ正確に動圧発生溝61を形成することができる。
【0046】
さらに、このように本実施形態では、請求項8に対応して、原料粉末が銅系で、錫鍍金層53が錫系であるから、銅系の焼結合金と錫鍍金とを組み合わせることにより、硫黄やその化合物に対する耐食性と蟻酸や酢酸等の有機酸に対する耐食性の両者を備えた焼結合金たる軸受5を製造することができる。
【0047】
図8は本発明の第2実施形態を示し、上記第1実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、前記回転軸4の代わりに同様の製法により焼結合金本体51Aである固定軸4Aを形成し、固定軸4Aの外周面に設けた錫鍍金層53に、サイジングにより動圧発生溝61を形成したものであり、その固定軸4Aに筒状回転体71を回転可能に設け、該筒状回転体71にインペラ6を設けてモータ3を構成したものであり、筒状回転体71が回転することにより動圧発生溝61に動圧が発生する。
【0048】
このように固定軸4Aの摺動面たる外周面に筒状回転体71が摺動しながら回転するものであり、固定軸4Aは摺動部材であり、このように固定された摺動部材に動圧発生溝61を設けても良く、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0049】
図9は本発明の第3実施形態を示し、上記各実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例の軸受5は、金属を主体とする原料粉末を所定の配合組成に配合し、その原料粉末を混合する混合(S1:ステップ1)処理を行った後、所定の圧力でプレスにより所定形状の圧粉体に成形(S2)し、この圧粉体を焼結(S3)することにより、焼結合金本体51Bを形成し、この焼結合金本体51Bの一方の端面71Aに、錫系などの鍍金層53を設けた鍍金ワッシャ部材72を一体に設け、この鍍金ワッシャ部材72を一体に設けた焼結合金本体51Bを、再圧縮であるサイジング(S5)して所定寸法に仕上げてなる。尚、この例では、摺動面である端面71Aのみに鍍金ワッシャ部材72を設けている。
【0050】
前記軸受5は、シャフトSを回転可能に支持し、多孔質の焼結合金本体51Bに潤滑油を保持するとともに、この潤滑油をシャフトSの回転により内周面71Bから滲出させることができる。シャフトSは、図9に示す矢印方向のスラスト荷重を受け、シャフトSに対して圧入されたスナップリングRが複数のワッシャWA、WB、WCを介して軸受5に当接することにより、スラスト方向の移動が規制されている。
【0051】
なお、この焼結合金本体51Bは、側面71Cが球面状に形成されていることにより、自動調芯が可能ないわゆる球軸受である。
【0052】
前記鍍金ワッシャ部材72の厚さTは、0.1ミリ以上とすることが好ましい。また、前記厚さTは、端面71Aと鍍金ワッシャ部材72の外面との寸法である。なお、鍍金ワッシャ部材72は、内周面71BがシャフトSの周面に摺動しないようにシャフトSの外径より大きい内径(ルーズフィット)とされるとともに、外径を可能な限り大きく形成されている。すなわち鍍金ワッシャ部材72は、内周面72AがシャフトSの周面に接触しない形状とされることにより、シャフトSの回転方向の力を受けないように構成されている。また、鍍金ワッシャ部材72の外径を、直接当接しているワッシャWCよりも大きく形成されることにより、ワッシャWCが焼結合金本体51Bの端面71Aに接触、摺動して摩耗することが防止されている。
【0053】
このように焼結合金本体51Bに鍍金ワッシャ部材72を一体に設けた後、サイジング(S5)を行い、このサイジング(S5)により焼結合金本体51Bを所定寸法に矯正した後、焼結合金本体51Bに油を供給して含油する。また、上述したように、サイジング(S5)により錫鍍金層53を焼結合金本体51Bの表面に密着されることができる。
【0054】
なお、ワッシャWAをシャフトSに圧入してスナップリングRとワッシャWAとを一体に回転させて、ワッシャWB、WCをシャフトSに対してルーズフィットとすることにより、摺動面は、ワッシャWAとワッシャWBとが接する面およびワッシャWCと鍍金ワッシャ部材72とが接する面とすることができるので、ワッシャWAとスナップリングRとの摺動を抑制し、ワッシャWAの摩耗を小さくすることができる。
【0055】
このように本実施形態では、請求項2に対応して、原料粉末を成形すると共に焼結してなる軸受本体たる焼結合金本体51Bに、鍍金層たる錫鍍金層53を設けた焼結軸受5において、焼結合金本体51Bの軸方向端面71Aの少なくとも一方に、錫鍍金層53よりなる鍍金ワッシャ部材72を一体に設けたものであるから、鍍金ワッシャ部材72が焼結合金本体51Bと一体とされることにより、焼結合金本体51Bと他の樹脂製のワッシャ部材72との間の相対回転が抑止され、鍍金ワッシャ部材72と他のワッシャとの摺動、あるいは鍍金ワッシャ部材72とスナップリングとの摺動となるので、焼結合金本体51Bとの摺動による鍍金ワッシャ部材72の摩耗を確実に防止することができる。また、鍍金ワッシャ部材72によって焼結合金本体51Bの端面71Aを封孔することができるので、軸受端面71Aからのオイル漏れを効果的に防止することができる。
【0056】
図10〜図12は本発明の第4実施形態を示し、上記各実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例は、第3実施形態の錫鍍金ワッシャ部材72が動圧発生溝81を有し、同図に示すように、錫鍍金層53の円弧部53Aの間には、動圧発生溝81が等間隔毎に円周方向に複数並設させており、この動圧発生溝81は、サイジング(S5)と同時に、錫鍍金層53に該動圧発生溝81をプレス転写することにより形成され、動圧発生溝81における錫鍍金層53の厚さは、円弧部53Aにおける錫鍍金層53の厚さTより薄い。なお、この動圧発生溝81は中心部に向かって次第に幅狭に形成され、動圧発生溝81の円弧部4Aと動圧発生溝6とが交互に並んで全体に渦巻き状となる。
【0057】
図12はサイジングに用いる矯正用金型装置41の要部の拡大断面図であり、該矯正用金型装置41の基本構成は図4に示したものと同一であり、前記上パンチ15のサイジング面たる先端面に、前記動圧発生溝81を形成する転写部82を設けている。そして、この転写部82は、前記動圧発生溝81の形状に対応した凸部に形成されており、転写部82の高さは錫鍍金層53に形成する動圧発生溝81の深さに対応する。
【0058】
このように本実施形態では、鍍金ワッシャ部材72を設けたものであり、請求項2に対応して、上記実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0059】
また、このように本実施形態では、請求項3に対応して、錫鍍金層53が動圧発生溝81を有するものであるから、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができる。そして、焼結合金本体51Bを加工することなく、動圧発生溝81を設けることができ、その加工も容易となる。
【0060】
また、焼結合金本体51Bに錫鍍金層53を設けた後サイジングし、錫鍍金層53に動圧発生溝81を形成し、また、サイジングと同時に錫鍍金層53に動圧発生溝81を転写するから、請求項5及び6に対応して、上記各実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0061】
尚、銅系の焼結合金本体51Bの全外面に錫鍍金層53を設けてもよく、この場合は、蟻酸や酢酸等の有機酸を含む燃料中などで使用しても、全外面が耐久性に優れたものとなる。
【0062】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、動圧発生溝の形状や位置などは適宜選定可能である。また、また、本発明は原料粉末に銅又は銅合金を含むものが好適であるが、それ以外のものにお適用可能である。また、軸受は、実施形態のものに限らず種々の形状のもの適用可能である。
【0063】
【発明の効果】
請求項1の焼結合金は、原料粉末を成形すると共に焼結してなる軸受本体に、鍍金層を設けた焼結軸受において、前記鍍金層が動圧発生溝を有するものであり、軸受本体を加工することなく、動圧発生溝を設けることができ、その加工も容易となる。
【0064】
請求項2の発明は、原料粉末を成形すると共に焼結してなる軸受本体に、鍍金層を設けた焼結軸受において、前記軸受本体の軸方向端面の少なくとも一方に、前記鍍金層よりなる鍍金ワッシャ部材を一体に設けたものであり、ワッシャやシャフト、焼結軸受等の部品寿命を長くするとともに、摺動面へ摩耗粉が入り込むことによる焼き付き等の現象を回避することができる。また、鍍金ワッシャ部材により軸受本体の端面からの潤滑油漏れが抑制されるので、周辺部品の汚染を防止することができる。
【0065】
また、請求項3の発明は、請求項2の効果に加えて、前記鍍金層が動圧発生溝を有するものであり、軸受本体を加工することなく、動圧発生溝を設けることができ、その加工も容易となる。
【0066】
また、請求項4の発明は、請求項1又は3の効果に加えて、前記動圧発生溝は、前記鍍金層を有する軸受本体をサイジングして該鍍金層に転写されたものであり、極めて簡易かつ正確に動圧発生溝を設けることができる。
【0067】
また、請求項5の発明は、請求項1〜4の効果に加えて、前記原料粉末が銅系で、前記鍍金層が錫系であり、耐食性を有する錫鍍金層により銅系の軸受本体を覆うことにより、高い耐食性を備えた軸受を得ることができる。
【0068】
また、請求項6の焼結軸受の製造方法は、原料粉末を成形すると共に焼結して軸受本体を形成し、この軸受本体に鍍金層を設けた後サイジングし、前記鍍金層に動圧発生溝を形成する方法であり、サイジング時に鍍金層が圧縮され、鍍金層がほぼ均一な厚さに形成され、同時に、前記サイジングにより前記鍍金層を圧縮して該鍍金層により軸受本体の外面に開口する気孔を塞ぐから、圧縮された鍍金層が軸受本体外面の気孔を封止し、鍍金層による被覆性が向上する。
【0069】
また、請求項7の製造方法は、請求項6の効果に加えて、前記サイジングと同時に前記鍍金層に前記動圧発生溝を転写する製造方法であるから、極めて簡易かつ正確に動圧発生溝を形成することができる。
【0070】
さらに、請求項8の製造方法は、請求項7の効果に加えて、前記原料粉末が銅系で、前記鍍金層が錫系であるから、銅系の焼結合金と錫鍍金とを組み合わせることにより、硫黄やその化合物に対する耐食性と蟻酸や酢酸等の有機酸に対する耐食性の両者を備えた焼結軸受が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す製造方法を説明するフローチャート図である。
【図2】同上、焼結合金本体の斜視図である。
【図3】同上、一部を拡大した焼結合金の断面図である。
【図4】同上、サイジングを説明する断面図である。
【図5】同上、サイジングを説明する要部の拡大断面図である。
【図6】同上、サイジング前の錫鍍金層の拡大断面図である。
【図7】同上、サイジング後の錫鍍金層の拡大断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態を示すガソリンエンジン用モータ式燃料ポンプの説明図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示すシャフトと焼結軸受の断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態を示す軸受本体の平面図である。
【図11】同上、シャフトと焼結軸受の断面図である。
【図12】同上、サイジングを説明する要部の拡大断面図である。
【図13】ガソリンエンジン用モータ式燃料ポンプの概略断面図である。
【符号の説明】
1 軸受(焼結合金)
51,51A,51B 焼結合金本体
52 摺動面
53 錫鍍金層(鍍金層)
61,81 動圧発生溝
72 鍍金ワッシャ部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼結軸受とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガソリンエンジン用モータ式燃料ポンプが図13に断面図で例示される構造を持つことが知られている。すなわち、図示される通り上記燃料ポンプ1は、ケーシング2内において、モータ3の両端部に固設した回転軸4が軸受5に支持され、前記回転軸4の一方端部にはインペラ6が挿入され、かつ前記インペラ6、モータ3(アーマチュア)の外周面、および軸受5と回転軸4との間の図示しない隙間に沿って狭い間隙のガソリン流通路(図示せず)が形成された構造を有し、前記モータ3の回転でインペラ6が回転し、このインペラ6の回転でガソリンがケーシング2内に取り込まれ、取り込まれたガソリンはインペラ6、モータ3の外周面、および軸受と回転軸との間の図示しない隙間に沿って形成されたガソリン流通路を通って送り出され、別設のガソリンエンジンに送り込まれるように作動するものである。なお、図13では両軸受5,5の外周部を微量の燃料が通過し、インペラ6で昇圧されたガソリンはケーシング2内のガソリン通路を通してモータ3の外周面のところまで到達する。
【0003】
上記の燃料ポンプ1の構造部材である軸受5には、銅系の焼結合金が用いられ、この焼結合金の製造においては、銅を含有する原料粉末を圧縮して圧粉体を形成し、この圧粉体を焼結して焼結合金本体を形成し、この焼結合金本体に再圧縮であるサイジングを行い、所定寸法に仕上げるようにしている。
【0004】
そして、前記軸受5は燃料に晒された環境で使用されるため、燃料に対する耐食性を考慮して、上記のように銅を含有する原料粉末を用いた銅系の焼結合金が用いられている。しかし、このように銅系の焼結合金であっても、硫黄やその化合物が混ざった燃料や、蟻酸や酢酸等の有機酸が混ざった燃料を使用すると腐食により寿命が低下する問題がある。
【0005】
そこで、従来の銅鉛合金軸受には、軸受の耐腐食性を向上させるために、銅鉛合金軸受の内外表面に、錫、鉛またはこれらの合金の鍍金を施すことが有効である(例えば、特許文献1の公報第0005段)、と記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−202938号公報
【特許文献2】
特開平10−141358公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、例えば10μm以下の寸法精度を要求される製品では、鍍金処理前のサイジングにより寸法公差内に収まったとしても、その後に施した鍍金層の厚さのばらつきにより寸法精度を確保できない問題がある。
【0008】
ところで、軸受において、摺動面に動圧発生溝を形成したものが知られており、例えば従来の動圧軸受装置には、回転部材が回転した際における動圧発生溝のポンピング作用により潤滑液体に動圧力を発生させ、その動圧力によって回転部材の支承を行わせ(例えば、特許文献2の第0002段)、その動圧発生溝は、NC旋盤により切削バイトなどの加工工具(例えば、特許文献2の第0016段)を用いて形成される。
【0009】
そして、上述した焼結合金に動圧発生溝を設ける場合も、切削加工が必要となり、1本1本の溝を正確に切削加工する必要があるため、製造工程が複雑になるという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決しようとするもので、耐食性に優れ、かつ製品の寸法精度を確保することが可能で、動圧発生溝の加工が簡易な焼結軸受とその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の焼結合金は、前記目的を達成するために、原料粉末を成形すると共に焼結してなる軸受本体に、鍍金層を設けた焼結軸受において、前記鍍金層が動圧発生溝を有するものである。
【0012】
鍍金層の動圧発生溝により、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができる。そして、鍍金層により耐食性が向上し、さらに、焼結合金本体を加工することなく、動圧発生溝を設けることができ、その加工も容易となる。
【0013】
請求項2の発明は、原料粉末を成形すると共に焼結してなる軸受本体に、鍍金層を設けた焼結軸受において、前記軸受本体の軸方向端面の少なくとも一方に、前記鍍金層よりなる鍍金ワッシャ部材を一体に設けたものである。
【0014】
鍍金ワッシャ部材が軸受本体と一体とされることにより、焼結金属製の軸受本体と他の樹脂製のワッシャ部材との間の相対回転が抑止され、鍍金ワッシャ部材と他のワッシャとの摺動、あるいは鍍金ワッシャ部材とスナップリングとの摺動となるので、軸受本体との摺動によるワッシャ部材の摩耗を確実に防止することができる。また、鍍金ワッシャ部材によって軸受本体の端面を封孔することができるので、軸受端面からのオイル漏れを効果的に防止することができる。
【0015】
また、請求項3の発明は、前記鍍金層が動圧発生溝を有するものである。
【0016】
鍍金層の動圧発生溝により、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができる。そして、焼結合金本体を加工することなく、動圧発生溝を設けることができ、その加工も容易となる。
【0017】
また、請求項4の発明は、請求項1又は3の焼結軸受において、前記動圧発生溝は、前記鍍金層を有する軸受本体をサイジングして該鍍金層に転写されたものである。
【0018】
動圧発生溝を鍍金層に転写するから、極めて簡易かつ正確に動圧発生溝を設けることができる。しかも、鍍金層を有する軸受本体をサイジングするから、鍍金層を合せた製品寸法を所定の寸法公差内に仕上げることができる。さらに、サイジングにより鍍金層が圧縮され、鍍金層がほぼ均一な厚さに形成され、同時に、圧縮された鍍金層が軸受本体外面の気孔を封止する。
【0019】
また、請求項5の発明は、請求項1〜4の発明において、前記原料粉末が銅系で、前記鍍金層が錫系である。
【0020】
耐食性を有する錫鍍金層により銅系の軸受本体を覆うことにより、高い耐食性を備えた軸受を得ることができる。また、錫鍍金層に設けた動圧発生溝により、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができる。そして、銅系の焼結合金と錫鍍金とを組み合わせることにより、硫黄やその化合物に対する耐食性と蟻酸や酢酸等の有機酸に対する耐食性の両者を備えたものとなる。
【0021】
また、請求項6の焼結軸受の製造方法は、前記目的を達成するために、原料粉末を成形すると共に焼結して軸受本体を形成し、この軸受本体に鍍金層を設けた後サイジングし、前記鍍金層に動圧発生溝を形成する方法である。
【0022】
この方法を用いることにより、サイジング時に鍍金層が圧縮され、鍍金層がほぼ均一な厚さに形成され、同時に、前記サイジングにより前記鍍金層を圧縮して該鍍金層により軸受本体の外面に開口する気孔を塞ぐから、圧縮された鍍金層が軸受本体外面の気孔を封止し、鍍金層による被覆性が向上する。また、鍍金層を有する軸受本体をサイジングするから、鍍金層を合せた製品寸法を所定の寸法公差内に仕上げることができる。
【0023】
また、鍍金層に設けた動圧発生溝により、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができる。しかも、軸受本体を加工することなく、動圧発生溝を設けることができ、その加工も容易となる。
【0024】
また、請求項7の製造方法は、請求項6の製造方法において、前記サイジングと同時に前記鍍金層に前記動圧発生溝を転写する製造方法である。
【0025】
サイジングにより動圧発生溝を鍍金層に転写するから、極めて簡易かつ正確に動圧発生溝を形成することができる。
【0026】
さらに、請求項8の製造方法は、請求項7の製造方法において、前記原料粉末が銅系で、前記鍍金層が錫系である。
【0027】
銅系の焼結合金と錫鍍金とを組み合わせることにより、硫黄やその化合物に対する耐食性と蟻酸や酢酸等の有機酸に対する耐食性の両者を備えた焼結軸受が得られる。
【0028】
【発明の実施形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1〜図7は本発明の第1実施形態を示し、焼結合金本体の原料には、Cu−Ni−Zn−C系やCu−Sn−C系等のものを用いることができる。尚、以下、焼結合金として前記軸受5を例に説明する。図2及び図3に示すように、軸受5は、略円筒形の軸受本体たる焼結合金本体51からなり、その中央には前記回転軸4が回転摺動する円筒状の摺動面52が形成され、さらに、その焼結合金本体51の露出した外面全てを覆う錫鍍金層53を備え、この錫鍍金層53が動圧発生溝61を有する。尚、本発明において錫鍍金とは、錫又は錫合金の鍍金を含むものである。また、後述するように転写により動圧発生溝61を形成する場合、鍍金層53は焼結合金である焼結合金本体51より柔らかいものを用いることが好ましい。
【0029】
前記軸受5の焼結合金本体51には、一例として、質量%で、Zn:10〜25%、Ni:10〜25%、P :0.1〜0.9%、C :1〜8%、を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成、並びに5〜25%の気孔率を有する黒鉛分散型Cu基焼結合金を用いることができ、また、それ以外の組成の黒鉛分散型Cu基焼結合金を用いることもできる。
【0030】
その製造方法につき、図1を参照して説明すると、例えば、焼結合金本体51に用いる原料粉末は金属を主成分とするものであって、いずれも水アトマイズ法により形成され、かつ45μmの平均粒径を有する5種類のCu−Ni−Zn合金粉末、すなわちCu−15.8%Ni−18.3%Zn合金粉末、Cu−16.9%Ni−18.0%Zn合金粉末、Cu−18.8%Ni−18.4%Zn合金粉末、Cu−17.4%Ni−16.4%Zn合金粉末、およびCu−17.3%Ni−19.9%Zn合金粉末(以上5種類)、45μmの平均粒径を有する水アトマイズCu−P合金(P:33%含有)粉末、さらに75μmの平均粒径を有する黒鉛粉末を用意し、これら原料粉末を所定の配合組成に配合し、V型ミキサーで40分間混合する混合(S1:ステップ1)処理を行った後、150〜300MPaの範囲内の所定の圧力でプレスにより所定形状の圧粉体に成形(S2)し、この圧粉体をアンモニア分解ガス雰囲気中、750〜900℃の範囲内の所定の温度に40分間保持の条件で焼結(S3)することにより、黒鉛分散型Cu基焼結合金で構成され軸受5を製造した。この結果得られた軸受5を光学顕微鏡(200倍)を用いて観察したところ、いずれもCu−Ni−Zn合金の固溶体相からなる素地にCu−P合金と黒鉛が微細に分散分布し、かつ気孔も存在する組織を示した。このようにして得られた黒鉛分散型Cu基焼結合金製の軸受5は、これの素地を形成するCu−Ni−Zn合金のもつすぐれた強度および耐食性と相俟って、ガソリンの高圧高速流に曝された環境下ですぐれた耐摩耗性を発揮するようになり、また、この黒鉛分散型Cu基焼結合金製軸受を使用したモータ式燃料ポンプは硫黄又はその化合物を不純物に含む燃料に対してもすぐれた寿命を有するものとなる。
【0031】
本発明では、一層の耐食性向上をはかるため、焼結(S3)処理後、焼結合金本体51に鍍金(S4)処理を行う。この鍍金(S4)処理では、電気鍍金法等により、焼結合金本体51の外面に厚さ15〜25μ程度の錫(Sn)を含む鍍金層53を形成する。
【0032】
鍍金処理後、軸受5を再圧縮であるサイジング(S5)して所定寸法に仕上げる。一例として、図4及び図5はサイジングに用いる矯正用金型装置11を示し、この矯正用金型装置11は、上下方向を軸方向(プレス上下軸方向)としており、ダイ12、コアロッド13、下パンチ14および上パンチ15を備えている。ダイ12はほぼ円筒形状で、このダイ12内にほぼ円柱形状のコアロッド13が同軸的に位置している。下パンチ14は、ほぼ円筒形状で、ダイ12およびコアロッド13間に下方から上下動自在に嵌合している。上パンチ15は、ほぼ円筒形状で、ダイ12およびコアロッド13間に上方から上下動自在にかつ挿脱自在に嵌合するものである。そして、図4に示すように、ダイ12内に前記軸受5を充填し、この軸受5の貫通孔である摺動面52にコアロッド13を挿入配置した状態で、上下方向から上,下パンチ13,14により軸受5を加圧して所定の寸法に矯正する。
【0033】
本発明の特徴的な構成として、前記矯正用金型装置11には、前記コアロッド13のサイジング面たる外周面に、前記動圧発生溝61を形成する転写部21を設けている。そして、この転写部21は、前記動圧発生溝61の形状に対応した凸部に形成されており、転写部21の高さは錫鍍金層53に形成する動圧発生溝61の深さに対応する。また、動圧発生溝61は、コアロッド13以外にも、軸受5の摺動面となる両側端面及び外周面に設けることができ、この場合は対応する摺動面を形成する上,下パンチ15,14のサイジング面及びダイ12のサイジング面に転写部を設ければよい。尚、サイジング面とはサイジングされるもの(この例では軸受5)に当接する面である。
【0034】
ここで、サイジング前の錫鍍金層53とサイジング後の錫鍍金層53の状態を確認するため、複数の焼結合金本体51を複数製作して組織の拡大写真を撮影した。実際には、20個の焼結合金本体51を鍍金処理まで同一条件で形成した後、半数の10個の焼結体本体51にサイジングを行った。
【0035】
そして、それら10個の焼結合金本体51を図3に示したように切断し、摺動面52の組織の拡大写真を撮影した。これによりサイジングを行わなかった10個の焼結合金本体51では、摺動面52における錫鍍金層53の厚さの平均は約20μmであり、サイジングを行った10個の焼結合金本体51では、摺動面52における錫鍍金層53の厚さの平均は約12μmであった。このようにサイジングをすると錫鍍金層53の厚さが薄くなって引き伸ばされ、この引き伸ばされた部分の鍍金層53により気孔54の開口部54Aが塞がれる。
【0036】
サイジングを行わなかった焼結合金本体51では、図6に示すように、摺動面52に開口部54Aを有する気孔54があり、これは鍍金による封孔が不十分な箇所である。また、錫鍍金層53の外面に凹凸が見られ、この凹凸は錫鍍金層53の厚さのばらつきにより形成されたものである。
【0037】
これに対して、サイジングを行った焼結合金本体51では、図7に示すように、摺動面52に開口する気孔54の開口部54Aが錫鍍金層53により塞がれ、同時に錫鍍金層53の外面も凹凸の少ないものとなった。また、断面形状においても、転写部21により動圧発生溝61が良好に転写形成されることが確認できた。
【0038】
このように鍍金後にサイジング(S5)を行うことにより、錫鍍金層53を圧縮して押し広げ、該錫鍍金層53により焼結合金本体51の外面に開口する気孔54が塞がれ、錫鍍金層53による被覆性が向上する。また、サイジング(S5)により錫鍍金層53の外面を平坦に形成すると共に、ほぼ均一な厚さに仕上げることができ、しかも、転写によるから動圧発生溝61を正確かつ簡易に形成することができる。
【0039】
また、銅系の原料粉末を用いた焼結合金本体51には、錫系以外にニッケル系,亜鉛系,銅系の鍍金層を設けることができる。また、鉄系の原料粉末を用いた焼結合金本体51には、錫系,亜鉛系や錫と亜鉛系の鍍金層を設けることができる。
【0040】
このように本実施形態では、請求項1に対応して、原料粉末を成形すると共に焼結してなる軸受本体たる焼結合金本体51に、鍍金層たる錫鍍金層53を設けた焼結軸受において、錫鍍金層53が動圧発生溝61を有するから、錫鍍金層53に設けた動圧発生溝61により、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができ、しかも、焼結合金本体51を加工することなく、動圧発生溝61を設けることができる。
【0041】
また、このように本実施形態では、請求項4に対応して、動圧発生溝61は、錫鍍金層53を有する軸受本体たる焼結合金本体51をサイジング(S5)して該錫鍍金層53に転写されたものであるから、動圧発生溝61を錫鍍金層53に転写するから、極めて簡易かつ正確に動圧発生溝61を設けることができる。しかも、錫鍍金層53を有する焼結合金本体51をサイジングするから、錫鍍金層53を合せた製品寸法を所定の寸法公差内に仕上げることができる。さらに、サイジング(S5)により錫鍍金層53が圧縮され、錫鍍金層53がほぼ均一な厚さに形成され、同時に、圧縮された錫鍍金が焼結合金本体51外面の気孔54を封止封止し、錫鍍金層53による被覆性が向上する。そして、動圧発生溝55と焼結合金本体54とは錫鍍金層53により気密性が保たれているから、回転時、動圧発生溝55における動圧発生が確実に行われる。
【0042】
また、このように本実施形態では、請求項5に対応して、原料粉末が銅系で、鍍金層53が錫系であるから、耐食性を有する錫鍍金層53により銅系の軸受本体たる焼結合金本体51を覆うことにより、高い耐食性を備えた軸受5を得ることができる。また、錫鍍金層53に設けた動圧発生溝61により、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができる。しかも、軸受本体を加工することなく、動圧発生溝61を設けることができ、その加工も容易となる。そして、銅系の焼結合金と錫鍍金とを組み合わせることにより、硫黄やその化合物に対する耐食性と蟻酸や酢酸等の有機酸に対する耐食性の両者を備えたものとなる。
【0043】
このように本実施形態では、請求項6に対応して、原料粉末を成形すると共に焼結して軸受本体たる焼結合金本体51を形成し、この焼結合金本体51に表面処理を施した後サイジング(S5)し、表面処理の層たる錫鍍金層53に動圧発生溝61を形成するから、サイジング(S5)時に錫鍍金層53が圧縮され、錫鍍金層53がほぼ均一な厚さに形成され、同時に、サイジング(S5)により錫鍍金を圧縮して該錫鍍金により焼結合金本体51の外面に開口する気孔54を塞ぐから、圧縮された錫鍍金層53が焼結合金本体51外面の気孔54を封止し、錫鍍金層53による被覆性が向上する。また、錫鍍金層53を有する焼結合金本体51をサイジング(S5)するから、錫鍍金層53を合せた製品寸法を所定の寸法公差内に仕上げることができる。
【0044】
しかも、錫鍍金層53に設けた動圧発生溝61により、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができる。しかも、焼結合金本体51を加工することなく、動圧発生溝61を設けることができ、その加工も容易となる。
【0045】
また、このように本実施形態では、請求項7に対応して、サイジング(S5)と同時に錫鍍金層53に動圧発生溝61を転写するから、極めて簡易かつ正確に動圧発生溝61を形成することができる。
【0046】
さらに、このように本実施形態では、請求項8に対応して、原料粉末が銅系で、錫鍍金層53が錫系であるから、銅系の焼結合金と錫鍍金とを組み合わせることにより、硫黄やその化合物に対する耐食性と蟻酸や酢酸等の有機酸に対する耐食性の両者を備えた焼結合金たる軸受5を製造することができる。
【0047】
図8は本発明の第2実施形態を示し、上記第1実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、前記回転軸4の代わりに同様の製法により焼結合金本体51Aである固定軸4Aを形成し、固定軸4Aの外周面に設けた錫鍍金層53に、サイジングにより動圧発生溝61を形成したものであり、その固定軸4Aに筒状回転体71を回転可能に設け、該筒状回転体71にインペラ6を設けてモータ3を構成したものであり、筒状回転体71が回転することにより動圧発生溝61に動圧が発生する。
【0048】
このように固定軸4Aの摺動面たる外周面に筒状回転体71が摺動しながら回転するものであり、固定軸4Aは摺動部材であり、このように固定された摺動部材に動圧発生溝61を設けても良く、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0049】
図9は本発明の第3実施形態を示し、上記各実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例の軸受5は、金属を主体とする原料粉末を所定の配合組成に配合し、その原料粉末を混合する混合(S1:ステップ1)処理を行った後、所定の圧力でプレスにより所定形状の圧粉体に成形(S2)し、この圧粉体を焼結(S3)することにより、焼結合金本体51Bを形成し、この焼結合金本体51Bの一方の端面71Aに、錫系などの鍍金層53を設けた鍍金ワッシャ部材72を一体に設け、この鍍金ワッシャ部材72を一体に設けた焼結合金本体51Bを、再圧縮であるサイジング(S5)して所定寸法に仕上げてなる。尚、この例では、摺動面である端面71Aのみに鍍金ワッシャ部材72を設けている。
【0050】
前記軸受5は、シャフトSを回転可能に支持し、多孔質の焼結合金本体51Bに潤滑油を保持するとともに、この潤滑油をシャフトSの回転により内周面71Bから滲出させることができる。シャフトSは、図9に示す矢印方向のスラスト荷重を受け、シャフトSに対して圧入されたスナップリングRが複数のワッシャWA、WB、WCを介して軸受5に当接することにより、スラスト方向の移動が規制されている。
【0051】
なお、この焼結合金本体51Bは、側面71Cが球面状に形成されていることにより、自動調芯が可能ないわゆる球軸受である。
【0052】
前記鍍金ワッシャ部材72の厚さTは、0.1ミリ以上とすることが好ましい。また、前記厚さTは、端面71Aと鍍金ワッシャ部材72の外面との寸法である。なお、鍍金ワッシャ部材72は、内周面71BがシャフトSの周面に摺動しないようにシャフトSの外径より大きい内径(ルーズフィット)とされるとともに、外径を可能な限り大きく形成されている。すなわち鍍金ワッシャ部材72は、内周面72AがシャフトSの周面に接触しない形状とされることにより、シャフトSの回転方向の力を受けないように構成されている。また、鍍金ワッシャ部材72の外径を、直接当接しているワッシャWCよりも大きく形成されることにより、ワッシャWCが焼結合金本体51Bの端面71Aに接触、摺動して摩耗することが防止されている。
【0053】
このように焼結合金本体51Bに鍍金ワッシャ部材72を一体に設けた後、サイジング(S5)を行い、このサイジング(S5)により焼結合金本体51Bを所定寸法に矯正した後、焼結合金本体51Bに油を供給して含油する。また、上述したように、サイジング(S5)により錫鍍金層53を焼結合金本体51Bの表面に密着されることができる。
【0054】
なお、ワッシャWAをシャフトSに圧入してスナップリングRとワッシャWAとを一体に回転させて、ワッシャWB、WCをシャフトSに対してルーズフィットとすることにより、摺動面は、ワッシャWAとワッシャWBとが接する面およびワッシャWCと鍍金ワッシャ部材72とが接する面とすることができるので、ワッシャWAとスナップリングRとの摺動を抑制し、ワッシャWAの摩耗を小さくすることができる。
【0055】
このように本実施形態では、請求項2に対応して、原料粉末を成形すると共に焼結してなる軸受本体たる焼結合金本体51Bに、鍍金層たる錫鍍金層53を設けた焼結軸受5において、焼結合金本体51Bの軸方向端面71Aの少なくとも一方に、錫鍍金層53よりなる鍍金ワッシャ部材72を一体に設けたものであるから、鍍金ワッシャ部材72が焼結合金本体51Bと一体とされることにより、焼結合金本体51Bと他の樹脂製のワッシャ部材72との間の相対回転が抑止され、鍍金ワッシャ部材72と他のワッシャとの摺動、あるいは鍍金ワッシャ部材72とスナップリングとの摺動となるので、焼結合金本体51Bとの摺動による鍍金ワッシャ部材72の摩耗を確実に防止することができる。また、鍍金ワッシャ部材72によって焼結合金本体51Bの端面71Aを封孔することができるので、軸受端面71Aからのオイル漏れを効果的に防止することができる。
【0056】
図10〜図12は本発明の第4実施形態を示し、上記各実施形態と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例は、第3実施形態の錫鍍金ワッシャ部材72が動圧発生溝81を有し、同図に示すように、錫鍍金層53の円弧部53Aの間には、動圧発生溝81が等間隔毎に円周方向に複数並設させており、この動圧発生溝81は、サイジング(S5)と同時に、錫鍍金層53に該動圧発生溝81をプレス転写することにより形成され、動圧発生溝81における錫鍍金層53の厚さは、円弧部53Aにおける錫鍍金層53の厚さTより薄い。なお、この動圧発生溝81は中心部に向かって次第に幅狭に形成され、動圧発生溝81の円弧部4Aと動圧発生溝6とが交互に並んで全体に渦巻き状となる。
【0057】
図12はサイジングに用いる矯正用金型装置41の要部の拡大断面図であり、該矯正用金型装置41の基本構成は図4に示したものと同一であり、前記上パンチ15のサイジング面たる先端面に、前記動圧発生溝81を形成する転写部82を設けている。そして、この転写部82は、前記動圧発生溝81の形状に対応した凸部に形成されており、転写部82の高さは錫鍍金層53に形成する動圧発生溝81の深さに対応する。
【0058】
このように本実施形態では、鍍金ワッシャ部材72を設けたものであり、請求項2に対応して、上記実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0059】
また、このように本実施形態では、請求項3に対応して、錫鍍金層53が動圧発生溝81を有するものであるから、回転により動圧が発生し、回転部材を支承することができる。そして、焼結合金本体51Bを加工することなく、動圧発生溝81を設けることができ、その加工も容易となる。
【0060】
また、焼結合金本体51Bに錫鍍金層53を設けた後サイジングし、錫鍍金層53に動圧発生溝81を形成し、また、サイジングと同時に錫鍍金層53に動圧発生溝81を転写するから、請求項5及び6に対応して、上記各実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0061】
尚、銅系の焼結合金本体51Bの全外面に錫鍍金層53を設けてもよく、この場合は、蟻酸や酢酸等の有機酸を含む燃料中などで使用しても、全外面が耐久性に優れたものとなる。
【0062】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、動圧発生溝の形状や位置などは適宜選定可能である。また、また、本発明は原料粉末に銅又は銅合金を含むものが好適であるが、それ以外のものにお適用可能である。また、軸受は、実施形態のものに限らず種々の形状のもの適用可能である。
【0063】
【発明の効果】
請求項1の焼結合金は、原料粉末を成形すると共に焼結してなる軸受本体に、鍍金層を設けた焼結軸受において、前記鍍金層が動圧発生溝を有するものであり、軸受本体を加工することなく、動圧発生溝を設けることができ、その加工も容易となる。
【0064】
請求項2の発明は、原料粉末を成形すると共に焼結してなる軸受本体に、鍍金層を設けた焼結軸受において、前記軸受本体の軸方向端面の少なくとも一方に、前記鍍金層よりなる鍍金ワッシャ部材を一体に設けたものであり、ワッシャやシャフト、焼結軸受等の部品寿命を長くするとともに、摺動面へ摩耗粉が入り込むことによる焼き付き等の現象を回避することができる。また、鍍金ワッシャ部材により軸受本体の端面からの潤滑油漏れが抑制されるので、周辺部品の汚染を防止することができる。
【0065】
また、請求項3の発明は、請求項2の効果に加えて、前記鍍金層が動圧発生溝を有するものであり、軸受本体を加工することなく、動圧発生溝を設けることができ、その加工も容易となる。
【0066】
また、請求項4の発明は、請求項1又は3の効果に加えて、前記動圧発生溝は、前記鍍金層を有する軸受本体をサイジングして該鍍金層に転写されたものであり、極めて簡易かつ正確に動圧発生溝を設けることができる。
【0067】
また、請求項5の発明は、請求項1〜4の効果に加えて、前記原料粉末が銅系で、前記鍍金層が錫系であり、耐食性を有する錫鍍金層により銅系の軸受本体を覆うことにより、高い耐食性を備えた軸受を得ることができる。
【0068】
また、請求項6の焼結軸受の製造方法は、原料粉末を成形すると共に焼結して軸受本体を形成し、この軸受本体に鍍金層を設けた後サイジングし、前記鍍金層に動圧発生溝を形成する方法であり、サイジング時に鍍金層が圧縮され、鍍金層がほぼ均一な厚さに形成され、同時に、前記サイジングにより前記鍍金層を圧縮して該鍍金層により軸受本体の外面に開口する気孔を塞ぐから、圧縮された鍍金層が軸受本体外面の気孔を封止し、鍍金層による被覆性が向上する。
【0069】
また、請求項7の製造方法は、請求項6の効果に加えて、前記サイジングと同時に前記鍍金層に前記動圧発生溝を転写する製造方法であるから、極めて簡易かつ正確に動圧発生溝を形成することができる。
【0070】
さらに、請求項8の製造方法は、請求項7の効果に加えて、前記原料粉末が銅系で、前記鍍金層が錫系であるから、銅系の焼結合金と錫鍍金とを組み合わせることにより、硫黄やその化合物に対する耐食性と蟻酸や酢酸等の有機酸に対する耐食性の両者を備えた焼結軸受が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す製造方法を説明するフローチャート図である。
【図2】同上、焼結合金本体の斜視図である。
【図3】同上、一部を拡大した焼結合金の断面図である。
【図4】同上、サイジングを説明する断面図である。
【図5】同上、サイジングを説明する要部の拡大断面図である。
【図6】同上、サイジング前の錫鍍金層の拡大断面図である。
【図7】同上、サイジング後の錫鍍金層の拡大断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態を示すガソリンエンジン用モータ式燃料ポンプの説明図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示すシャフトと焼結軸受の断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態を示す軸受本体の平面図である。
【図11】同上、シャフトと焼結軸受の断面図である。
【図12】同上、サイジングを説明する要部の拡大断面図である。
【図13】ガソリンエンジン用モータ式燃料ポンプの概略断面図である。
【符号の説明】
1 軸受(焼結合金)
51,51A,51B 焼結合金本体
52 摺動面
53 錫鍍金層(鍍金層)
61,81 動圧発生溝
72 鍍金ワッシャ部材
Claims (8)
- 原料粉末を成形すると共に焼結してなる軸受本体に、鍍金層を設けた焼結軸受において、前記鍍金層が動圧発生溝を有することを特徴とする焼結軸受。
- 原料粉末を成形すると共に焼結してなる軸受本体に、鍍金層を設けた焼結軸受において、前記軸受本体の軸方向端面の少なくとも一方に、前記鍍金層よりなる鍍金ワッシャ部材を一体に設けたことを特徴とする焼結軸受。
- 前記鍍金層が動圧発生溝を有することを特徴とする請求項2記載の焼結軸受。
- 前記動圧発生溝は、前記鍍金層を有する軸受本体をサイジングして該鍍金層に転写されたものであることを特徴とする請求項1又は3記載の焼結軸受。
- 前記原料粉末が銅系で、前記鍍金層が錫系であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼結軸受。
- 原料粉末を成形すると共に焼結して軸受本体を形成し、この軸受本体に鍍金層を設けた後サイジングし、前記鍍金層に動圧発生溝を形成することを特徴とする焼結軸受の製造方法。
- 前記サイジングと同時に前記鍍金層に前記動圧発生溝を転写することを特徴とする請求項6記載の焼結軸受の製造方法。
- 前記原料粉末が銅系で、前記鍍金層が錫系であることを特徴とする請求項6又は7記載の焼結軸受の製造方法。
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2002
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