JP2004182348A - 高所作業車のブーム作動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コントローラ60のバルブ制御部61は、位置検出装置(起伏角度検出器91、長さ検出器92、旋回角度検出器93及びコントローラ60の位置算出部62)によりブーム30の先端部が許容作業範囲Rの限界領域S内に達していることが検出されている状態でブーム操作レバー51のブーム30を倒伏させる操作が行われたときには、初めにブーム30を収縮作動させ、続いてブーム30の倒伏作動を収縮作動と連動して行わせる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、起伏、伸縮動自在に設けられた伸縮ブームの先端部に作業台を有して構成される高所作業車のブーム作動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
伸縮ブーム式の高所作業車は、走行体上に起伏動自在に設けられた伸縮ブームにより作業者搭乗用の作業台を移動自在に構成した車両であり、電線や橋梁のメンテナンス作業や建築物或いは船舶の壁塗り作業等、種々の高所での作業に用いられている。このような高所作業車に備えられたブーム作動制御装置には、転倒モーメントにより走行体が転倒しない条件下でのみブームの起伏及び伸縮作動(場合によっては旋回作動も)を許容するとともに、このような条件を逸脱するブーム作動を規制する安全装置が組み込まれているのが一般的であり、これにより作業の安全が図られている。
【0003】
このような安全装置の構成には大別して二種あり、一つは走行体に作用する転倒モーメントを逐次算出してこれを予め定めた許容モーメントと比較し、転倒モーメントが許容モーメントを超えるようなブームの作動を規制するもの(モーメント規制)である。もう一つは、検出したブームの先端部の位置(或いは作業台の位置)と予め定めた許容作業範囲とを比較し、ブームの先端部がその許容作業範囲から逸脱するようなブームの作動を規制するようにしたものである(作業範囲規制)。後者の作業範囲規制における許容作業範囲はブームの旋回姿勢(旋回角度)ごとに設定されることもあり、この場合には走行体の側方に設定される許容作業範囲が最も小さいものとなる。
【0004】
上記作業範囲規制による安全装置が組み込まれたブーム作動制御装置では、ブームの先端部の現在位置が許容作業範囲の外縁内方に定められた所定の限界領域内に達している状態で、ブームの先端部をその許容作業範囲(限界領域)から逸脱させる方向のブーム操作がなされたときには、そのブーム操作信号をキャンセルし、或いは、そのようなブーム操作に応じたブーム作動が行われないように、関連する油圧アクチュエータへの油圧供給を遮断するようになっており、これにより走行体の転倒を未然に防止する構成となっている。
【0005】
また、このような作業範囲規制の一例として、ブームを倒伏作動させている途中等において、ブームの先端部が許容作業範囲の上記限界領域内に達してしまった場合に、ブームの作動を停止させてしまうのではなく、ブームの先端部が許容作業範囲から逸脱しないようにブームを収縮作動させながらブームの倒伏作動を続行させるようにした、いわゆるノンストップ形の作業範囲規制が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような形態の作業範囲規制によれば、所要のブーム倒伏作動をブームの停止を伴うことなく行うことができるので、高い作業効率が得られるという利点がある。
【0006】
【特許文献1】
特公平4−19159号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来のノンストップ形の作業範囲規制では、ブームの先端部が許容作業範囲の限界領域内に達している状態でブームを倒伏作動させる操作入力が行われたときには、ブームの倒伏作動とともにブームの収縮作動を行わせてブームの先端部が許容作業範囲から逸脱するのを防止するのであるが、ブームの倒伏速度が大きい場合であって、これにブームの収縮が追い付けないときには、ブームの先端部は許容作業範囲の外側に移動することとなり、結果としてブームの先端部が許容作業範囲から逸脱してしまう事態が起こり得た。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、ブームの先端部又は作業台が許容作業範囲の外縁内方に定められた所定の限界領域内に達している状態でブームの倒伏操作入力が行われた場合に、ブームの先端部又は作業台が許容作業範囲(限界領域)から逸脱する事態を確実に防止して作業の安全性を向上させることが可能な構成の高所作業車のブーム作動制御装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するため、本発明に係る高所作業車のブーム作動制御装置は、走行体と、走行体上に起伏、伸縮動自在に設けられた伸縮ブームと、伸縮ブームの先端部に取り付けられた作業台と、伸縮ブームを起伏、伸縮動させる指令を行う指令手段(例えば、実施形態におけるブーム操作レバー51)と、伸縮ブームの先端部又は作業台の位置を検出する位置検出手段(例えば、実施形態における起伏角度検出器91、長さ検出器92、旋回角度検出器93及びコントローラ60の位置算出部62からなる位置検出装置)と、指令手段による指令に応じ、位置検出手段により検出された伸縮ブームの先端部又は作業台の位置が予め定めた許容作業範囲から逸脱しない範囲で伸縮ブームの作動制御を行うブーム作動制御手段(例えば、実施形態におけるコントローラ60のバルブ制御部61)とを備え、位置検出手段により伸縮ブームの先端部又は作業台が許容作業範囲の外縁内方に定められた所定の限界領域内に達していることが検出されている状態で指令手段による伸縮ブームを倒伏させる指令が行われたとき、伸縮ブームの先端部又は作業台が限界領域(例えば、実施形態における許容作業範囲Rの限界領域S)内にある間は、ブーム作動制御手段が、伸縮ブームの倒伏作動のみならず伸縮ブームの収縮作動も行わせる構成を有する高所作業車のブーム作動制御装置において、位置検出手段により伸縮ブームの先端部又は作業台が所定の限界領域内に達していることが検出されている状態で指令手段による伸縮ブームを倒伏させる指令が行われたとき、ブーム作動制御手段は、初めに伸縮ブームを収縮作動させ、続いて伸縮ブームの倒伏作動を収縮作動と連動して行わせるようになっている。ここで、上記のように伸縮ブームの倒伏作動の前に行う伸縮ブームの収縮作動は、伸縮ブームを単純に収縮作動させるものと、伸縮ブームの収縮作動を倒伏作動と連動して行うものとのいずれであってもよい。
【0010】
本発明に係る高所作業車のブーム作動制御装置では、伸縮ブームの先端部又は作業台が予め定めた許容作業範囲の外縁内方に定められた所定の限界領域内に達している状態で伸縮ブームの倒伏操作入力が行われた場合、ブームの先端部又は作業台が上記限界領域内にある間は、伸縮ブームの倒伏作動のみならず伸縮ブームの収縮作動も行われるのであるが、その倒伏作動と収縮作動との連動作動の前には伸縮ブームの収縮作動が行われるようになっている。このため従来のように、伸縮ブームの先端部又は作業台が許容作業範囲の限界領域内にある状態で伸縮ブームの倒伏作動が行われた場合に、伸縮ブームの収縮作動が伸縮ブームの倒伏作動に追い付けずに伸縮ブームの先端部又は作業台を限界領域から逸脱させてしまう事態を防止することができ、作業の安全性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る高所作業車のブーム作動制御装置における上記ブーム作動制御手段は、位置検出手段により伸縮ブームの先端部又は作業台が所定の限界領域内に達していることが検出されている状態で行われた指令手段による伸縮ブームの倒伏作動指令が、この指令に基づいて行う伸縮ブームの倒伏作動と連動させる伸縮ブームの収縮作動の作動速度が予め定められた制限速度を超えるものである場合には、指令手段による指令に拘わらず、伸縮ブームの収縮速度が制限速度内となるようにブームの倒伏作動速度を制限してブームの倒伏作動と収縮作動との連動作動を行わせるようになっていることが好ましい。このような構成であれば、伸縮ブームの先端部又は作業台が許容作業範囲の限界領域内に静止している状態から伸縮ブームを速い速度で倒伏させる操作入力(指令手段の操作)が行われた場合、若しくは伸縮ブームを早い速度で倒伏させる操作入力が行われているときに、ブームの先端部又は作業台が限界領域内に入ってしまったような場合でも、ブームの先端部又は作業台が限界領域内にある間は伸縮ブームの倒伏作動を低速に抑えることができるようになるため、伸縮ブームの倒伏作動と収縮作動とが連動して行われる場合であっても、伸縮ブームの収縮作動が倒伏作動に追い付けずに伸縮ブームの先端部又は作業台が許容作業範囲の限界領域から逸脱してしまう事態を確実に防止することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図2は本発明の一実施形態に係るブーム作動制御装置を備えた高所作業車の側面図である。本高所作業車1はタイヤ車輪11,11,…を備えて運転キャビン12から走行運転操作が可能なトラック式の走行体10と、走行体10上に設けられた旋回体20と、この旋回体20から上方に延びて設けられた支柱21の上部にフートピン22により上下揺動自在に取り付けられた伸縮ブーム(以下、単にブームと称する)30と、このブーム30の先端部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台40とを有して構成されている。
【0013】
旋回体20は走行体10の後部に上下軸まわり360度回動自在に取り付けられており、走行体10に内蔵された旋回モータ23を油圧駆動することにより水平旋回作動させることができる。ブーム30は基端ブーム30aと、中間ブーム30bと、先端ブーム30cとが入れ子式に構成されており、内部に設けられた伸縮シリンダ31を油圧駆動することによりブーム30全体を伸縮作動させることができる。また、ブーム30は基端ブーム30aと支柱21との間に跨設された起伏シリンダ24を油圧駆動することにより上下面内で起伏作動させることができる。
【0014】
先端ブーム30cの先端部には垂直ポスト保持金具32が取り付けられており、この垂直ポスト保持金具32には揺動ピン33を介して垂直ポスト34の下端部が取り付けられている。この垂直ポスト34はブーム30内に設けられた図示しないポスト保持装置により、ブーム30の起伏角度によらず常時垂直姿勢が保持される構成となっている。
【0015】
作業台40は作業者が搭乗する箱状の作業台本体41と、この作業台本体41に取り付けられた作業台保持ブラケット42とを有して構成されており、作業台保持ブラケット42は自身に内蔵されたベアリング(図示せず)を介して垂直ポスト34の上端部に回動自在に取り付けられている。作業台保持ブラケット42の内部には首振りモータ43が設けられており、この首振りモータ43を油圧作動させて垂直ポスト34の周囲に設置されたリングギヤ(図示せず)に噛合するピニオンギヤ(図示せず)を駆動することにより作業台40全体を垂直ポスト34まわりに首振り作動させることができるようになっている。ここで、垂直ポスト34は上記のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台本体41の床面は常時水平に保持される。
【0016】
走行体10の前後左右各箇所には作業中の走行体10を安定状態に支持するためのアウトリガジャッキ13,13,…が設けられている。各アウトリガジャッキ13は上下方向に延びたアウタージャッキ(シリンダチューブ)13aと、このアウタージャッキ13a内に設けられて下方向に伸縮自在なインナージャッキ(ピストンロッド)13bと、インナージャッキ13bの下端部に揺動自在に取り付けられたジャッキパッド13cとを有して構成されており、各アウトリガジャッキ13においてインナージャッキ13bを下方に移動(伸長)させ、ジャッキパッド13cを地面に接地させて突っ張らせることにより走行体10を持ち上げ状態に支持させることができる。また、各アウトリガジャッキ13は走行体10の側方に張り出させることも可能であり、より高い走行体10の安定が得られるようになっている。なお、これらアウトリガジャッキ13,13,…の作動操作は走行体10の後部に備えられたジャッキ操作レバー14の操作により行われる。
【0017】
作業台40上に備えられた操作ボックス50内には、図3に示すように、ブーム30の起伏、伸縮、旋回操作を行うためのブーム操作レバー51と、作業台40の首振り操作を行うための作業台首振り操作レバー52とが設けられている。また、この操作ボックス50内には、後述するブーム30の作動規制が行われているときに作業者に注意を喚起する警報ランプ57と警報ブザー58が設けられている。
【0018】
ブーム操作レバー51は自動復帰位置である垂直位置を中立位置として前方(向こう側)、後方(手前側)、左方及び右方へ傾動操作することが可能であるとともに、軸回り左及び右方向に捻り操作をすることが可能である。ここで、ブーム操作レバー51を中立位置から前方に傾動操作したときにはブーム30を倒伏作動させることができ、中立位置から後方に傾動操作したときにブーム30を起仰作動させることができる。また、ブーム操作レバー51を中立位置から右方に傾動操作したときにはブーム30を伸長作動させることができ、中立位置から左方に傾動操作したときにはブーム30を収縮作動させることができる。更に、ブーム操作レバー51を中立位置から左回り(反時計回り)に捻り操作したときにはブーム30を(旋回体20を)左回りに旋回作動させることができ、中立位置から右回り(時計回り)に捻り操作したときにはブーム30を右回りに旋回作動させることができる。
【0019】
作業台首振り操作レバー52は自動復帰位置である垂直位置を中立位置として左方及び右方に傾動操作することが可能である。ここで、作業台首振り操作レバー52を中立位置から左方に傾動操作したときには作業台40を右回り(時計回り)に首振り作動させることができ、中立位置から右方に傾動操作したときには作業台40を左回り(反時計回り)に首振り作動させることができる。なお、ブーム30及び作業台40の各方向の作動速度は、対応するレバーの操作量(傾動量)にほぼ比例して大きくなるようになっており、作業者はこれら両レバー51,52の操作量を所望に調節することにより、最適の作動速度を選んでブーム30及び作業台40の作動操作を行うことができる。
【0020】
図1は本高所作業車1におけるブーム30及び作業台40の作動系統を示すブロック図である。ブーム操作レバー51の前後傾動方向の操作状態(操作方向及び操作量)、左右傾動方向の操作状態、左右捻り方向の操作状態はそれぞれブーム操作レバー51の基部に設けられた起伏検知ポテンショメータ53、伸縮検知ポテンショメータ54、旋回検知ポテンショメータ55により検知され、これらポテンショメータ53,54,55より出力される信号がブーム起伏信号、ブーム伸縮信号、ブーム旋回信号として走行体10内に設置されたコントローラ60のバルブ制御部61に入力される。また、作業台首振り操作レバー52の左右傾動方向の操作状態は作業台首振り操作レバー52の基部に設けられた首振り検知ポテンショメータ56により検知され、このポテンショメータ56より出力される信号が作業台首振り信号として同じくコントローラ60のバルブ制御部61に入力される。
【0021】
コントローラ60のバルブ制御部61は、起伏検知ポテンショメータ53より出力されたブーム起伏信号に基づいて起伏シリンダ24に対応する第1制御バルブV1を電磁駆動し、伸縮検知ポテンショメータ54より出力されたブーム伸縮信号に基づいて第1伸縮シリンダ31に対応する第2制御バルブV2を電磁駆動する。またバルブ制御部61は、旋回検知ポテンショメータ55より出力されたブーム旋回信号に基づいて旋回モータ23に対応する第3制御バルブV3を電磁駆動し、首振り検知ポテンショメータ56より出力された作業台首振り信号に基づいて首振りモータ43に対応する第4制御バルブV4を電磁駆動する。
【0022】
走行体10内に設けられた油圧ポンプPより吐出される作動油は上記第1〜第4制御バルブV1,V2,V3,V4経由で起伏シリンダ24、伸縮シリンダ31、旋回モータ23及び首振りモータ43に供給されるようになっている。コントローラ60のバルブ制御部61により駆動された第1〜第4制御バルブV1,V2,V3,V4の各スプール(図示せず)はブーム操作レバー51及び作業台首振り操作レバー52の各操作方向に応じた方向へ、その操作量に応じたスプール開度になるように動作するため、結果として、起伏シリンダ24、伸縮シリンダ31、旋回モータ23及び首振りモータ43へ送られる作動油の方向とその流量とがブーム操作レバー51又は作業台首振り操作レバー52の操作に応じて制御される。このため、起伏シリンダ24、伸縮シリンダ31、旋回モータ23及び首振りモータ43はブーム操作レバー51及び作業台首振り操作レバー52の操作方向に対応した方向に、その操作量に応じた作動速度で作動することとなる。なお、ここでは作業台40の首振り動作が、作業台首振り操作レバー52の操作信号を受けたコントローラ60が上記第4制御バルブV4のスプールを駆動することにより行われるようになっているが、この第4制御バルブV4のスプールはコントローラ60を介することなく、作業台首振り操作レバー52の操作により直接動かされる構成になっていてもよい。
【0023】
本高所作業車1は上記のような構成であるため、作業台40に搭乗した作業者は、ブーム操作レバー51を操作することによりブーム30を所望の作動速度で起伏、伸縮、旋回させることができるとともに、作業台首振り操作レバー52を操作することにより作業台40を垂直ポスト34まわりに所望の作動速度で首振りさせることができ、自らのレバー操作により作業台40を所望に移動させて任意の位置での作業を行うことが可能である。
【0024】
また、コントローラ60には位置算出部62及び許容作業範囲データ記憶部63が設けられている。位置算出部62は基端ブーム30a内に設けられてブーム30の起伏角度を検出する起伏角度検出器91、基端ブーム30aの先端部に設けられてブーム30の長さを検出する長さ検出器92及び走行体10内に設けられてブーム30の旋回角度を検出する旋回角度検出器93からの各検出情報に基づいて走行体10の所定の基準位置に対するブーム30の先端部の位置を算出する部分であり、その結果をバルブ制御部61に出力するとともに、旋回角度検出器93において検出されたブーム30の旋回角度の情報を後述の許容作業範囲データ記憶部63に出力する。なお、この位置算出部62は、上記検出器91,92,93とともにブーム30の先端部の位置を検出する位置検出装置を構成する。
【0025】
コントローラ60の許容作業範囲データ記憶部63は、ブーム30の旋回姿勢(旋回角度)ごとの許容作業範囲データを記憶している部分である。この許容作業範囲データ記憶部63は、位置算出部62を経由して送られてくる旋回角度検出器93からの検出情報に基づいて、そのときのブーム30の旋回姿勢に応じた許容作業範囲データ(許容作業範囲のデータ)を選択してバルブ制御部61に出力する。
【0026】
バルブ制御部61は、位置検出装置において算出されたブーム30の先端部の現在位置と、許容作業範囲データ記憶部63より与えられるブーム30の旋回姿勢に応じた許容作業範囲とを比較し、ブーム30の先端部が許容作業範囲の外縁内方に定められた所定の限界領域内に達しているか否かの判断を行う。そして、ブーム30の先端部が許容作業範囲の上記限界領域内に達していると判断しているときには、ブーム30の先端部を許容作業範囲(限界領域)から逸脱させるようなブーム操作信号(前述のブーム起伏信号、ブーム伸縮信号、ブーム旋回信号)を無視する(或いは、そのようなブーム操作に応じたブーム30の作動が行われないように、関連する油圧アクチュエータへの油圧供給を遮断する)。これによりブーム30の作動は強制停止されるので、ブーム30の先端部が許容作業範囲から逸脱することはない。したがって、転倒モーメントが過大になって走行体10が転倒に至ることはなく、作業の安全が図られる。また、前述した操作ボックス50上の警報ランプ57及び警報ブザー58はコントローラ60のバルブ制御部61と電気的に繋がっており、バルブ制御部61が上記のようにブーム30の先端部が許容作業範囲の上記限界領域内に達していると判断しているときには、警報ランプ57を点灯させるとともに、警報ブザー58より警報音を発生させて作業台40上の作業者に注意を喚起する。
【0027】
図4は、或るブーム30の旋回姿勢(及びアウトリガジャッキ13の張り出し幅)に対応して走行体10の側方に設定される許容作業範囲の一例を示したものである。ここでは、図中に斜線で縁取りした領域が許容作業範囲Rに該当する。そして、この許容作業範囲Rの外縁内方に位置する領域(図4では、許容作業範囲Rの最も外側の外縁に沿って帯状に延びて位置した領域)Sが、ブーム30の先端部を移動させることができる限界の領域(限界領域)となる。なお、以下、説明の便宜上、許容作業範囲R内であって限界領域Sでない領域を通常作業範囲R’と称することにする。
【0028】
また、コントローラ60のバルブ制御部61は、上記のようにブーム30の先端部が許容作業範囲Rの限界領域S内に達していると判断している状態においてブーム30を倒伏させるブーム操作信号の入力を受けたときには、ブーム30の先端部が上記限界領域S内にある間は、ブーム30の倒伏作動に優先してブーム30の収縮作動を行うようになっている。すなわち、ブーム30の先端部が上記限界領域S内にある間は、ブーム30の倒伏作動の前に単純なブーム30の収縮作動を行う、或いは、ブーム30の収縮作動の割合が倒伏作動の割合よりも大きくなるように設定したうえで、ブーム30の収縮作動をブーム30の倒伏作動と連動して行うようになっている。
【0029】
図5は、上記のように、ブーム30の先端部が許容作業範囲Rの限界領域S内に達している状態でブーム30を倒伏させるブーム操作信号の入力を受けた場合に、バルブ制御部61が行う制御内容に対応するブーム30の先端部の移動軌跡を示す図であり、図5(A)は、その制御内容がブーム30を倒伏作動させる前にブーム30を単純に収縮作動させるものである場合の例であり、ブーム30の先端部の移動軌跡はA1→A2→A3→…となる。また、図5(B)は、バルブ制御部61が行う制御内容が、ブーム30の収縮作動をブーム30の倒伏作動と連動して行うものである場合の例であり、ブーム30の先端部の移動軌跡はB1→B2→B3→…となる。ここで、後者の制御例において行う、ブーム30の収縮作動の割合と倒伏作動の割合との設定は、具体的には、ブーム30を倒伏させるブーム操作が行われた時点でのブーム30の先端部の通常作業範囲R’からの逸脱量の大きさ(これは、位置検出装置により検出されるブーム30の先端部の位置と許容作業範囲Rとの比較から得られる)と、ブーム操作レバー51の前方への傾動量(ブーム30を倒伏させる方向の傾動量)とに基づいて行われる。なお、これらブーム30の作動は、ブーム30の先端部が限界領域S内にある(停止している)状態からブーム操作レバー51の傾動操作(ブーム30を倒伏させる傾動操作)が行われた場合のみならず、既にブーム操作レバー51の傾動操作が行われていて、ブーム30の先端部が移動している途中で限界領域Sに入った場合との両方において行われる。
【0030】
このように、本高所作業車1に備えられたブーム作動制御装置では、ブーム30の先端部が予め定めた許容作業範囲Rの外縁内方に定められた所定の限界領域S内に達している状態でブーム30の倒伏操作入力が行われた場合、ブーム30の先端部が限界領域S内にある間は、ブーム30の倒伏作動のみならずブーム30の収縮作動も行われるのであるが、その倒伏作動と収縮作動との連動作動の前にはブーム30の収縮作動(単純な収縮作動若しくは倒伏作動と連動して行う収縮作動)が行われるようになっている。このため従来のように、ブーム30の先端部が許容作業範囲Rの限界領域S内にある状態でブーム30の倒伏作動が行われた場合に、ブーム30の収縮作動がブーム30の倒伏作動に追い付けずにブーム30の先端部を限界領域Sから逸脱させてしまう事態を防止することができ、作業の安全性を向上させることができる。特に、上記後者の制御例(ブーム30の倒伏作動と連動してブーム30の収縮作動を行う制御)においては、ブーム30の倒伏作動は停止されることなく続行されるので、作業効率の面で優れている。
【0031】
また、上述の後者の制御例(ブーム30の収縮作動をブーム30の倒伏作動と連動して行う制御)を採用する場合には、コントローラ60のバルブ制御部61は、位置検出装置によりブーム30の先端部が上記限界領域S内に達していることが検出されている状態で行われたブーム操作レバー51の操作によるブーム30の倒伏作動指令(操作)が、この指令に基づいて行うブーム30の倒伏作動と連動させるブーム30の収縮作動の作動速度が予め定められた制限速度を超えるものである場合(具体的には、前方への傾動操作量が大き過ぎる場合)には、ブーム操作レバー51の操作による上記指令に拘わらず、ブーム30の収縮速度が上記制限速度内となるようにブーム30の倒伏作動速度を制限してブーム30の倒伏作動と収縮作動との連動作動を行わせるようになっていることが好ましい。
【0032】
このような構成であれば、ブーム30の先端部が許容作業範囲Rの限界領域S内に静止している状態からブーム30を速い速度で倒伏させるブーム操作レバー51の操作が行われた場合、若しくはブーム30を速い速度で倒伏させる入力が行われているときに、ブーム30の先端部が限界領域S内に入ってしまったような場合でも、ブーム30の先端部が限界領域S内にある間はブーム30の倒伏作動を低速に抑えることができるようになるため、ブーム30の倒伏作動と収縮作動とが連動して行われる場合であっても、ブーム30の収縮作動が倒伏作動に追い付けずにブーム30の先端部が許容作業範囲Rの限界領域Sから逸脱してしまう事態を確実に防止することができる。
【0033】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示されたものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、許容作業範囲Rは位置算出部62を経由して送られてくる旋回角度検出器93からの検出情報に基づいて許容作業範囲データ記憶部63が選択して設定するとしていたが、これは許容作業範囲がブーム30の旋回角度ごとに定められている場合の例であり、許容作業範囲がブーム30の旋回角度によらず一定であるのであれば、このように旋回角度検出器93からの検出情報に基づいて許容作業範囲が定められる構成とはならない。また、許容作業範囲がブーム30の旋回角度のみならず、アウトリガジャッキ13の張り幅も条件等して定められるのであれば、アウトリガジャッキ13の張り幅を検出するアウトリガジャッキ張り幅検出器を備えるとともに、その検出情報を許容作業範囲データ記憶部63に送るようにし、このアウトリガジャッキ13の張り幅の値にも基づいて、許容作業範囲が定められる構成となる。
【0034】
また、上述の実施形態では、位置検出装置がブーム30の先端部の位置を検出し、コントローラ60のバルブ制御部61はこの位置検出装置により検出されたブーム30の先端部の位置と予め定めた許容作業範囲とを比較してブーム30の先端部が許容作業範囲の限界に達しているか否かを判断する構成であったが、位置検出装置が作業台40の位置を検出するものとし、コントローラ60のバルブ制御部61がこの位置検出装置により検出された作業台40の位置と予め定めた許容作業範囲とを比較して作業台40が許容作業範囲の限界に達しているか否かを判断する構成としてもよい。
【0035】
また、上述の実施形態では、許容作業範囲は作業台の積載重量等を条件として定められるものではなかったが、本発明ではこのような許容作業範囲の定め方を除外するものではなく、許容作業範囲が作業台の積載重量等の条件により変化する構成であっても、本発明に係るブーム作動制御装置を適用できることは勿論可能である。
【0036】
また、上述の実施形態で示した高所作業車1はタイヤ車輪により走行する構成であったが、これは必ずしもタイヤ車輪により走行するものでなくてもよく、クローラ装置等により走行するものであってもよい。或いは軌道走行用車輪を備えて軌道上を走行する軌道走行用の高所作業車、更にはタイヤ車輪と軌道走行用車輪との両方を備えた軌陸両用の高所作業車等であってもよい。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る高所作業車のブーム作動制御装置では、伸縮ブームの先端部又は作業台が予め定めた許容作業範囲の外縁内方に定められた所定の限界領域内に達している状態で伸縮ブームの倒伏操作入力が行われた場合、ブームの先端部又は作業台が上記限界領域内にある間は、伸縮ブームの倒伏作動のみならず伸縮ブームの収縮作動も行われるのであるが、その倒伏作動と収縮作動との連動作動の前には伸縮ブームの収縮作動が行われるようになっている。このため従来のように、伸縮ブームの先端部又は作業台が許容作業範囲の限界領域内にある状態で伸縮ブームの倒伏作動が行われた場合に、伸縮ブームの収縮作動が伸縮ブームの倒伏作動に追い付けずに伸縮ブームの先端部又は作業台を限界領域から逸脱させてしまう事態を防止することができ、作業の安全性を向上させることができる。
【0038】
また、本発明に係る高所作業車のブーム作動制御装置における上記ブーム作動制御手段は、位置検出手段により伸縮ブームの先端部又は作業台が所定の限界領域内に達していることが検出されている状態で行われた指令手段による伸縮ブームの倒伏作動指令が、この指令に基づいて行う伸縮ブームの倒伏作動と連動させる伸縮ブームの収縮作動の作動速度が予め定められた制限速度を超えるものである場合には、指令手段による指令に拘わらず、伸縮ブームの収縮速度が制限速度内となるようにブームの倒伏作動速度を制限してブームの倒伏作動と収縮作動との連動作動を行わせるようになっていることが好ましい。このような構成であれば、伸縮ブームの先端部又は作業台が許容作業範囲の限界領域内に静止している状態から伸縮ブームを速い速度で倒伏させる操作入力(指令手段の操作)が行われた場合、若しくは伸縮ブームを早い速度で倒伏させる操作入力が行われているときに、ブームの先端部又は作業台が限界領域内に入ってしまったような場合でも、ブームの先端部又は作業台が限界領域内にある間は伸縮ブームの倒伏作動を低速に抑えることができるようになるため、伸縮ブームの倒伏作動と収縮作動とが連動して行われる場合であっても、伸縮ブームの収縮作動が倒伏作動に追い付けずに伸縮ブームの先端部又は作業台が許容作業範囲の限界領域から逸脱してしまう事態を確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るブーム作動制御装置を備えた高所作業車におけるブーム及び作業台の作動系統を示すブロック図である。
【図2】上記ブーム作動制御装置を備えた高所作業車の側面図である。
【図3】作業台上の操作ボックス内に設けられたブーム操作レバーと作業台首振り操作レバーの外観を示す斜視図である。
【図4】或るブームの旋回角度姿勢に対応して走行体の側方に設定されるブームの先端部の移動できる領域(許容作業範囲)を例示する図である。
【図5】ブームの先端部が許容作業範囲の限界領域内に達している状態でブームを倒伏させるブーム操作信号の入力を受けた場合に、バルブ制御部が行う制御内容に対応するブームの先端部の移動軌跡を示す図であり、(A)はブームを倒伏作動させる前にブームを収縮作動させる場合の例、(B)はブームの収縮作動をブームの倒伏作動と連動して行う場合の例である。
【符号の説明】
1 高所作業車
10 走行体
20 旋回体
30 伸縮ブーム
40 作業台
51 ブーム操作レバー
52 作業台首振り操作レバー
60 コントローラ
61 バルブ制御部
62 位置算出部
63 許容作業範囲データ記憶部
91 起伏角度検出器
92 長さ検出器
93 旋回角度検出器
R 許容作業範囲
S 許容作業範囲の限界領域
Claims (2)
- 走行体と、
前記走行体上に起伏、伸縮動自在に設けられた伸縮ブームと、
前記伸縮ブームの先端部に取り付けられた作業台と、
前記伸縮ブームを起伏、伸縮動させる指令を行う指令手段と、
前記伸縮ブームの先端部又は前記作業台の位置を検出する位置検出手段と、
前記指令手段による前記指令に応じ、前記位置検出手段により検出された前記伸縮ブームの先端部又は前記作業台の位置が予め定めた許容作業範囲から逸脱しない範囲で前記伸縮ブームの作動制御を行うブーム作動制御手段とを備え、
前記位置検出手段により前記伸縮ブームの先端部又は前記作業台が前記許容作業範囲の外縁内方に定められた所定の限界領域内に達していることが検出されている状態で前記指令手段による前記伸縮ブームを倒伏させる指令が行われたとき、前記伸縮ブームの先端部又は前記作業台が前記限界領域内にある間は、前記ブーム作動制御手段が、前記伸縮ブームの倒伏作動のみならず前記伸縮ブームの収縮作動も行わせる構成を有する高所作業車のブーム作動制御装置において、
前記位置検出手段により前記伸縮ブームの先端部又は前記作業台が前記所定の限界領域内に達していることが検出されている状態で前記指令手段による前記伸縮ブームを倒伏させる指令が行われたとき、前記ブーム作動制御手段は、初めに前記伸縮ブームを収縮作動させ、続いて前記伸縮ブームの倒伏作動を収縮作動と連動して行わせることを特徴とする高所作業車のブーム作動制御装置。 - 前記ブーム作動制御手段は、前記位置検出手段により前記伸縮ブームの先端部又は前記作業台が前記所定の限界領域内に達していることが検出されている状態で行われた前記指令手段による前記伸縮ブームの倒伏作動指令が、この指令に基づいて行う前記伸縮ブームの倒伏作動と連動させる前記伸縮ブームの収縮作動の作動速度が予め定められた制限速度を超えるものである場合には、前記指令手段による前記指令に拘わらず、前記伸縮ブームの収縮速度が前記制限速度内となるように前記ブームの倒伏作動速度を制限して前記ブームの倒伏作動と収縮作動との連動作動を行わせることを特徴とする請求項1記載の高所作業車のブーム作動制御装置。
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