JP2004181862A - 表面材の剥離性に優れた被覆部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面材と基材を含む構成の被覆部材であって、表面材の剥離が容易な被覆部材を提供する
【解決手段】有機および/または無機基材の片面または両面に表面材が積層された被覆部材であって、基材と表面材との間に、アルカリ液に溶解または膨潤し得る中間層が存在する被覆部材である。
【解決手段】有機および/または無機基材の片面または両面に表面材が積層された被覆部材であって、基材と表面材との間に、アルカリ液に溶解または膨潤し得る中間層が存在する被覆部材である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家電製品、建材などとして使用される被覆部材に関し、詳細には、廃棄や再利用に際し、被覆部材を構成する表面材と基材が剥離容易な被覆部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、壁材や間仕切り材などの建材では、保温性などを付与する目的で、鋼板に石膏ボードを積層した被覆部材が使用されている。また、冷蔵庫などの家電製品でも、保温性などを付与する目的で、鋼板に樹脂(例えば発泡ウレタンなど)などを積層した被覆部材の使用が盛んである。
【0003】
ところが、こうした被覆部材の使用量の増大に伴い、廃棄や再利用の問題が生じており、特に表面材/基材の分別・処理技術の開発が切望されている。
【0004】
すなわち、上記のような被覆部材では、廃棄に際し、表面材と基材を剥離することが好ましく、また表面材・基材を素材として再利用するためには、これらを剥離・分別することは不可欠である。
【0005】
しかしながら、例えば、金属板(表面材)と石膏ボード(基材)を積層した被覆部材の場合では、金属板と石膏ボードを分別する技術がほとんどなく、管理型処理(所謂埋立処理)されているのが現状である。また、家電製品に用いられる金属板(表面材)と樹脂層(基材)を積層した被覆部材にしても、樹脂層を加圧溶解などして除去するため、加圧可能な溶解容器に投入できるサイズまで裁断しなければならず、作業が煩雑で非効率的であり、また、一般には溶解用の溶剤に有機溶媒が使用されており、作業者や環境への影響の面に問題がある。
【0006】
こうした問題を解決すべく、表面材と基材の積層に用いる接着剤の改良がなされている。この接着剤は高温下で接着力を失うものであるため、被覆部材を加熱すれば、表面材を基材から容易に剥離できるが、処理条件(加熱条件)などに未解決の問題があると考えられ、実用化が進んでいない。
【0007】
また、特許文献1や特許文献2では、多孔質ボードに化粧金属板またはプラスチックシートを接着した再剥離可能な積層体を開示している。これらの積層体では、加熱雰囲気下で遠赤外線または紫外線を照射することで剥離可能な接着剤を用いており、積層体を裁断しなくても、各層の剥離・分別を容易に行うことができる。しかし、特許文献1や特許文献2の技術では、積層体を構成する各層の剥離は容易であっても、該積層体を加熱した上に遠赤外線または紫外線を照射する必要があることから、各層の剥離のために必要なエネルギー量が大きく、また、装置も大掛かりなものとなっていた。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−127290号公報
【特許文献2】
特開2002−127292号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、表面材の剥離が容易な被覆部材を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の被覆部材は、有機および/または無機基材の片面または両面に表面材が積層された被覆部材であって、基材と表面材との間に、アルカリ液に溶解または膨潤し得る中間層が存在するところに要旨を有するものであり、表面材の剥離性に優れている。なお、本発明に係る中間層は、該中間層の素材との関係で適宜選択されるアルカリ液に溶解または膨潤し得るものであればよい。
【0011】
本発明の被覆部材の基材としては、例えば、有機基材として、ウレタン樹脂層、フェノール樹脂層、およびメラミン樹脂層よりなる群から選択される少なくとも1種が、また無機基材として、石膏ボードが挙げられる。
【0012】
上記中間層は、20〜80%の空隙率を有するものであることが好ましく、このような空隙率を有する中間層としては、織布または不織布を構成材料として用いたものが挙げられる。また、上記表面材は、中間層側に凹凸形状を有するものが推奨される。このような構造の中間層や表面材を採用することで、表面材の剥離性をさらに向上させることができる。なお、表面材は、金属板が好ましい。
【0013】
また、上記中間層は、カルボキシル基を含有し、且つ該カルボキシル基の一部がアルカリ金属で中和された樹脂を素材とするものであることが好ましく、該樹脂中のカルボキシル基の0.2〜0.8当量がアルカリ金属で中和されていることが、より好ましい。中間層の素材にこのような樹脂を用いることで、アルカリ液による溶解性または膨潤性を十分に確保することができる。
【0014】
さらに、上記の被覆部材を構成するための、アルカリ液に溶解または膨潤し得る中間層が積層された表面材も、本発明に含まれる。
【0015】
【発明の実施の形態】
従来の被覆部材においては、表面材と基材は、接着剤などを用いて極めて強固に貼り合わされているため、表面材と基材の剥離は非常に困難であり、特に石膏ボードと金属板からなる被覆部材では、これらの剥離は実質的に不可能である。
【0016】
そこで、本発明者らは、このような被覆部材の表面材と基材の間に、アルカリ液に溶解または膨潤し得る中間層を設ける構成を採用し、本発明を完成させた。すなわち、本発明の被覆部材は、廃棄やリサイクルに先立ってアルカリ液浴中に浸漬すれば、上記中間層がアルカリ液に溶解または膨潤してしまうので、表面材と基材はアルカリ液中で剥離するか、該アルカリ液中では完全に剥離しなくても、僅かな応力を掛けるだけで容易に剥離することができるのである。以下、本発明の被覆部材の構成について説明する。
【0017】
本発明の被覆部材に使用される表面材としては、特に限定されず、鋼板、銅板、チタン板、Al板、その他各種合金板などの金属板;後述の有機基材で例示する熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂板などが挙げられ、中でも、金属板が好ましい。また、上記の各金属板では、めっき処理(亜鉛めっきなど)やクロメート処理などの公知の表面処理が施されていても構わない。表面材の厚みは特に限定されず、被覆部材の用途に応じて、要求される特性を確保できる厚みとすればよい。さらに、表面材は、上記例示のものを単独で用いる他、2種以上の材料を積層したものを用いてもよい。なお、本発明では、被覆部材の構成が、表面材、基材のいずれもが有機素材を構成材とする場合であって、表面材と基材の素材の主体が同種一の有機素材の場合であっても、例えば基材中に補強材(補強繊維や充填剤粒子など)が添加されている場合には、該被覆部材の廃棄・再利用に際し、表面材と基材との剥離・分別が要求されることもある。よって、このような場合にも、本発明の構成を採用することは非常に効果的である。
【0018】
本発明の被覆部材において用いられる基材も特に限定されず、種々の有機素材および/または無機素材を構成材とする基材を採用することができる。例えば、有機基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどやこれらの共重合体などのポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;ポリオキシメチレン;ポリアクリロニトリル;ポリ酢酸ビニル;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルアルコール;エチレン−ビニルアルコール共重合体;ポリエーテルケトン;ポリエーテルサルホン;ポリサルホン;ポリフェニレンサルホン;アイオノマー樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂や、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ユリア樹脂、ケイ素樹脂、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂などを主成分とするものが挙げられる。
【0019】
上記例示の有機基材のうち、従来の技術では特に表面材からの分離処理が困難であった熱硬化性樹脂製の基材、中でも、ウレタン樹脂層、フェノール樹脂層、メラミン樹脂層が好ましいものとして挙げられる。
【0020】
また、上記の例示の熱可塑性樹脂を主成分とする基材の場合、表面材からの分離処理としては、加熱して基材を溶融除去したり、基材の熱可塑性樹脂が溶解可能な有機溶媒を用いて溶解除去するなどの方法も考えられるが、前者の場合、多大な熱エネルギーを必要とするなど効率的ではなく、後者の場合、有機溶媒による人体や環境への影響が懸念される。しかしながら本発明によれば、前者のように大量のエネルギーを必要とすることもなく効率的であり、さらに水系のアルカリ液を選択すれば、後者のような人体や環境への影響も極力抑えることができるため、上記の熱可塑性樹脂製基材を用いる場合にも、本発明の構成を採用することは有効である。
【0021】
なお、上記の有機基材は、必要に応じ、公知の方法によって発泡層としてもよい。また、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、抗菌剤などの各種添加剤や、シリカ、二酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウムなどの微粒子を有機基材中に添加することもできる。
【0022】
また、無機基材としては、特に建材用途の面で需要の多い石膏ボードが一般的である。
【0023】
なお、上述の有機素材や無機素材は、単独で使用する他、被覆部材に要求される特性(機械的強度、保温性、不燃性、耐疵付性、耐汚染性など)を損なわない範囲で2種以上の素材を混合して基材としてもよく、異なる素材から形成される2層以上を積層して基材としても構わない。また、基材の厚みは特に限定されず、被覆部材の用途に応じて、要求される特性を確保できる厚みとすればよい。
【0024】
上記の中間層は、アルカリ液に溶解または膨潤し得る樹脂を素材とするものであれば特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸重合体;エチレンやプロピレンなどのオレフィンと、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸との共重合体などのカルボキシル基含有変性ポリオレフィン樹脂;などのカルボキシル基を含有する樹脂であって、そのカルボキシル基の一部がアルカリ金属で中和されたものが、好ましいものとして挙げられる。
【0025】
ただし、被覆部材の使用時に、被覆部材にかかる応力などによって中間層が破壊されると、表面材と基材が剥離してしまう。よって、こうした中間層の破壊を抑制するため、被覆部材の用途などに応じて、要求される機械的強度を満足する中間層を形成し得る樹脂を適宜選択する必要がある。
【0026】
上記のカルボキシル基含有変性ポリオレフィンとしては、エチレン−アクリル酸共重合体が特に好ましく利用できる。なお、アルカリ液による溶解性または膨潤性と、中間層とした場合の強度などを満足できるように、エチレン性不飽和カルボン酸は5〜80質量%の範囲で共重合することが好ましい。
【0027】
なお、上記の「カルボキシル基の一部がアルカリ金属で中和された」とは、樹脂中の−COOHの一部の水素原子が、NaまたはKなどのアルカリ金属原子と置換されたことを意味する。アミン、アンモニア、多価金属で中和されたものでは、アルカリ液による溶解または膨潤が不十分であるため好ましくない。
【0028】
カルボキシル基の中和度としては、樹脂中の全カルボキシル基(すなわち、「カルボキシル基+中和されたカルボキシル基」)1当量に対し、0.2当量以上0.8当量以下であることが好ましい。カルボキシル基の総量に関わらず、この中和度が0.2より小さいと、アルカリ液による溶解または膨潤が不十分となる。他方、中和度が0.8より大きいと、アルカリ液のみならず、水に対する溶解性も増大し、被覆部材の使用の際に、空気中の水分などによって被覆層の剥離が生じ易くなる。より好ましい中和度の下限は0.4、上限は0.7である。
【0029】
カルボキシル基の中和度は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、樹脂中のカルボキシル基および中和されたカルボキシル基の吸収強度を測定することによって算出することができる。
【0030】
上記のような樹脂を、シート状に成形して中間層とする。なお、本発明の被覆部材においては、中間層は20%以上80%以下の空隙率を有することが好ましい。このような空隙率の中間層を用いることで、溶解または膨潤させるべき樹脂量を減少させることができ、さらにアルカリ液との接触面積が大きくなるため、アルカリ液による溶解性または膨潤性を向上させることができる。
【0031】
中間層の空隙率が20%を下回るものでは、空隙を有する構成を採用することによる上記効果がほとんど得られない。他方、空隙率が80%を超えるものでは、中間層の機械的強度が低下し、被覆部材の使用時に中間層が破壊する場合がある。中間層の空隙率のより好ましい下限は30%、上限は70%である。
【0032】
上記の空隙率を確保する点から、アルカリ液に溶解または膨潤し得る上記の樹脂から得られる織布または不織布を、中間層の構成材料とすることが好ましい。こうした繊維状材料から中間層を形成させた場合、上記の空隙率に加えて、繊維の有する導液性により、アルカリ液が繊維を伝って中間層内部まで良好に浸透するため、表面材と基材との剥離性が極めて良好となる。
【0033】
中間層の構成織布や不織布の製造方法やその条件は特に限定されず、従来公知の方法の中から、採用する樹脂に適した方法で、上記の空隙率を達成できる条件を適宜採用すればよい。
【0034】
この他、アルカリ液に溶解し得る上記の樹脂を、シート状(フィルム状)に成形した後、上記の空隙率で孔を形成させてもよい。その方法としては、例えば、アルカリ液に溶解し得る樹脂に、他の樹脂を混合してTダイなどによってシート状に成形した後、アルカリ液に溶解または膨潤し得る樹脂を溶解せず、他の樹脂のみ溶解し得る溶媒を用いて、該他の樹脂を溶解する方法や、アルカリ液に溶解または膨潤し得る樹脂に公知の発泡剤を混合してシート状に成形し、成形と同時あるいは成形後に発泡させ、樹脂中に気泡(好ましくは連続気泡)を形成させる方法などが採用可能である。
【0035】
なお、中間層の空隙率は、例えば、断面を走査型電子顕微鏡で観察し、該断面の総面積と空隙部分の面積とから求められる該空隙部分の面積率として求めることができる。
【0036】
なお、アルカリ金属による樹脂中のカルボキシル基の中和は、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)や炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)などの水溶液に浸漬して実施すればよく、上記の織布や不織布、多孔性シートの場合には、該中和後の樹脂をこれらの形態に加工すればよい。また、後述する樹脂の溶液(好ましくは水溶液)や溶媒分散体(好ましくは水分散体)を表面材などへ塗布して中間層を形成する場合は、これらの溶液や溶媒分散体の形態で上記の水溶液などを用いて中和すればよい。
【0037】
また、中間層の、アルカリ液による溶解性または膨潤性を向上させる点では、表面材として、中間層側に凹凸形状を有するものを採用することも好ましい。このような表面材を採用すれば、中間層と接触しない表面材表面の凹部分にアルカリ液が浸入できるため、中間層とアルカリ液の接触面積が大きくなり、中間層の溶解性または膨潤性を、より向上させることができる。
【0038】
表面材の凹凸形状としては、碁盤目状に凹部分を形成させたものが好ましく、その好適サイズは、目標とする剥離性のレベルによって変動する。例えば、1マスのサイズを小さく、凹形状の深さを大きくするほど、剥離性を向上させることができる。なお、凹凸形状の形成法は、表面材の素材夫々の公知技術を採用すればよい。例えば、金属板の場合では、公知のプレス加工によって、容易に凹凸形状を形成することができる。
【0039】
本発明の被覆部材は、例えば、基材→中間層→表面材の順でこれらを積層することで製造できる。基材−中間層間、および中間層−表面材間の積層には、これらの層間密着性が低く、被覆部材の使用時において各層が剥離するような場合は、接着剤を用いることが好ましい。接着剤としては、ポリ酢酸ビニルや酢酸ビニル−エチレン共重合体などのポリ酢酸ビニル系、ポリ(メタ)アクリル酸および/またはそのエステルや、これらとポリスチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニルなどとの共重合体などのアクリル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、ポリエステル樹脂系、ゴム系、ポリオレフィン系、SBSやSIBSなどのポリスチレン系、エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系、その他公知の接着剤が挙げられ、これらから、基材、中間層および表面材の各素材に応じたものを適宜選択すればよい。接着剤の塗布量は、乾燥後の付着量として、通常、5〜100g/m2である。上記範囲を下回ると良好な接合力が得られず、上記範囲を超えるとコスト的に無駄となることがある。これらの接着剤は、水分散型、水溶液型、溶剤型、無溶剤型のいずれであってもよい。
【0040】
なお、基材や表面材の性質により、被覆部材をアルカリ液に浸漬しなくても、中間層がその形態を維持し得ない場合、具体的には、基材や表面材に用いる素材がアルカリ性を示すような場合は、中間層と基材、あるいは中間層と表面材の間に、さらに樹脂などからなる保護層を設けてもよい。また上記の接着剤を用いる場合は、該接着剤が保護層としての役割を果たし得るため、さらに保護層を設けなくても構わない。
【0041】
接着剤は、基材、中間層、または表面材に直接塗布するか、接着剤のフィルムをこれらにラミネートすることによって供給できる。塗布する場合の塗布方法は特に限定されず、ロールコーティング、スプレーコーティング、ノズルコーティング、ディップコーティング法などが採用できる。
【0042】
なお、中間層に採用した樹脂と、基材や表面材との密着性が良好で、被覆部材として使用する場合に各層間での剥離が生じない場合は、上記の接着剤は用いなくてもよい。この場合の中間層と、基材や表面材との貼り合わせは、中間層の一部を溶融させて積層する熱ラミネートや、中間層を形成する樹脂の溶液8好ましくは水溶液)や溶媒分散体(好ましくは水分散体)を用い、これを上記の接着剤と同様の方法で基材あるいは表面材に塗布後、表面材あるいは基材を積層する方法などが採用できる。この他、中間層を形成する樹脂が、例えば表面材との密着性は良好であるが、基材との密着性がよくない場合では、表面材に中間層を形成する樹脂の溶液や溶媒分散体を塗布して中間層を形成させた後、接着剤を用いて基材を積層してもよい。
【0043】
また、樹脂溶液や溶媒分散体から直接中間層を形成させる場合は、基材表面などへの塗布後、乾燥を行うが、例えば水溶液、あるいは水分散体である場合は、水を除去するため80℃以上、より好ましくは100℃以上で、適宜時間を選択して乾燥させればよい。
【0044】
中間層の量は、好ましくは0.5g/m2以上100g/m2以下、より好ましくは1g/m2以上50g/m2以下とすることが望ましい。中間層の量が少な過ぎると、基材、表面材、接着剤との密着性が不安定となる虞がある。他方、多過ぎると溶解または膨潤させるべき樹脂量が多くなり、表面材の剥離性が劣る上に、アルカリ液中で溶解・膨潤した樹脂量が増大することから、該アルカリ液の溶解能・膨潤能が早期に低下するため、該アルカリ液の使用寿命が短期間化する虞がある。
【0045】
なお、既述の通り、基材や表面材は複数の層を積層したものであってもよいが、この場合、基材や表面材の各層間にも、上記のアルカリ液に溶解または膨潤し得る樹脂から得られる層を設けてもよい。この構成の採用により、基材や表面材についても、アルカリ液への浸漬処理によって、各層毎に分離することが可能となる。
【0046】
また、上記の方法によってアルカリ液に溶解または膨潤し得る中間層が積層されてなる表面材も本発明に含まれ、該表面材の中間層表面に、上記の方法で基材を積層することで、表面材の剥離性に優れた本発明の被服部材を得ることができる。
【0047】
本発明の被覆部材の表面材表面や基材表面(基材の片面にのみ、表面材が積層されている場合)、および中間層が積層された本発明の表面材の中間層積層面と反対側の表面には、意匠性や耐傷付き性などを高めるため、公知の樹脂や紙(化粧紙)などからなる層などを、さらに設けてもよい。
【0048】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0049】
クロメート処理(Cr付着量:20mg/m2)を施した溶融亜鉛めっき鋼板(板厚:0.6mm)を表面材とし、これにアクリル酸単位が17〜18質量%(酸価120)のエチレン−アクリル酸共重合体の水分散体を主成分とする水系中間層形成用組成物を塗布し、100℃で約1分乾燥し、表面材表面に中間層を形成させた。中間層の乾燥後質量は5g/m2である。なお、中間層の主成分であるエチレン−アクリル酸共重合体中のカルボキシル基の中和は、上記の水分散体の状態で、炭酸ナトリウム水溶液を混合して行い、表1に示す中和度とした。
【0050】
次にA4サイズの石膏ボード(基材)に酢酸ビニル系接着剤を、乾燥後質量で10g/m2となるように塗布し、上記表面材と、中間層を介して貼り合わせ、被覆部材とした。得られた被覆部材について、下記に示す剥離性評価および耐水性評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
[剥離性評価]
アルカリ液として、日本パーカライジング株式会社製「ファインクリーナーL4460」を、水1リットル当たり20g溶解させた水溶液を満たした浴(50℃)中に、被覆部材を10分間浸漬した後の表面材の剥離性を以下の基準に基づいて評価した。
◎:容易に剥離できる,
○:剥離できる,
△:剥離が困難である,
×:剥離不可。
【0052】
[耐水性評価]
40℃の純水中に、被覆部材を10分間浸漬した後の表面材の剥離性を以下の基準に基づいて評価した。
◎:剥離不可,
○:剥離が困難である,
△:剥離できる,
×:容易に剥離できる。
【0053】
【表1】
【0054】
表1のNo.1〜4,6の被覆部材は、アルカリ液に溶解し得る樹脂を中間層に用いた例である。このうち、No.1〜4の被覆部材では、中間層の樹脂中のカルボキシル基の中和度が、本発明の好ましい範囲を満足しており、表面材の剥離性および耐水性のいずれもが優れている。また、No.6の被覆部材は、アルカリ液に溶解し得る樹脂を中間層に使用しているが、この樹脂中のカルボキシル基の中和度が本発明の好ましい範囲を超える例であり、表面材の剥離性には優れるものの、耐水性が低下している。
【0055】
これに対し、表1のNo.5の被覆部材は、アルカリ液に溶解し得ない樹脂を中間層に用いた例であり、アルカリ液に浸漬しても表面材を剥離することができなかった。
【0056】
【発明の効果】
本発明の被覆部材は、以上の通り、表面材と基材の間にアルカリ液に溶解または膨潤し得る中間層を設ける構成を採用しており、大きなエネルギーを付与することなしに、表面材と基材を容易に剥離できる。よって、使用後不要となった被覆部材の廃棄や、基材・表面材素材の再利用が容易である。特に実質的にリサイクルが不可能であったもの(表面材:金属板、基材:石膏ボード)においても、表面材と基材を完全に分離できるため、夫々再利用することが可能となった。
【0057】
また、本発明の構成を採用しても、アルカリ液による表面材の剥離性以外の特性が損なわれることはないため、従来の被覆部材と同様に、要求特性に応じた基材・表面材を用いて、家電製品や建材などに利用することができる。
【0058】
さらに、本発明の被覆部材では、表面材と基材の剥離に際し、該被覆部材が浸漬可能なアルカリ液を満たした容器があればよく、大掛かりな装置は不要であり、また、アルカリ液の繰り返し使用が可能である。よって、非常に低コストで、表面材と基材の剥離・分別が実施できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、家電製品、建材などとして使用される被覆部材に関し、詳細には、廃棄や再利用に際し、被覆部材を構成する表面材と基材が剥離容易な被覆部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、壁材や間仕切り材などの建材では、保温性などを付与する目的で、鋼板に石膏ボードを積層した被覆部材が使用されている。また、冷蔵庫などの家電製品でも、保温性などを付与する目的で、鋼板に樹脂(例えば発泡ウレタンなど)などを積層した被覆部材の使用が盛んである。
【0003】
ところが、こうした被覆部材の使用量の増大に伴い、廃棄や再利用の問題が生じており、特に表面材/基材の分別・処理技術の開発が切望されている。
【0004】
すなわち、上記のような被覆部材では、廃棄に際し、表面材と基材を剥離することが好ましく、また表面材・基材を素材として再利用するためには、これらを剥離・分別することは不可欠である。
【0005】
しかしながら、例えば、金属板(表面材)と石膏ボード(基材)を積層した被覆部材の場合では、金属板と石膏ボードを分別する技術がほとんどなく、管理型処理(所謂埋立処理)されているのが現状である。また、家電製品に用いられる金属板(表面材)と樹脂層(基材)を積層した被覆部材にしても、樹脂層を加圧溶解などして除去するため、加圧可能な溶解容器に投入できるサイズまで裁断しなければならず、作業が煩雑で非効率的であり、また、一般には溶解用の溶剤に有機溶媒が使用されており、作業者や環境への影響の面に問題がある。
【0006】
こうした問題を解決すべく、表面材と基材の積層に用いる接着剤の改良がなされている。この接着剤は高温下で接着力を失うものであるため、被覆部材を加熱すれば、表面材を基材から容易に剥離できるが、処理条件(加熱条件)などに未解決の問題があると考えられ、実用化が進んでいない。
【0007】
また、特許文献1や特許文献2では、多孔質ボードに化粧金属板またはプラスチックシートを接着した再剥離可能な積層体を開示している。これらの積層体では、加熱雰囲気下で遠赤外線または紫外線を照射することで剥離可能な接着剤を用いており、積層体を裁断しなくても、各層の剥離・分別を容易に行うことができる。しかし、特許文献1や特許文献2の技術では、積層体を構成する各層の剥離は容易であっても、該積層体を加熱した上に遠赤外線または紫外線を照射する必要があることから、各層の剥離のために必要なエネルギー量が大きく、また、装置も大掛かりなものとなっていた。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−127290号公報
【特許文献2】
特開2002−127292号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、表面材の剥離が容易な被覆部材を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の被覆部材は、有機および/または無機基材の片面または両面に表面材が積層された被覆部材であって、基材と表面材との間に、アルカリ液に溶解または膨潤し得る中間層が存在するところに要旨を有するものであり、表面材の剥離性に優れている。なお、本発明に係る中間層は、該中間層の素材との関係で適宜選択されるアルカリ液に溶解または膨潤し得るものであればよい。
【0011】
本発明の被覆部材の基材としては、例えば、有機基材として、ウレタン樹脂層、フェノール樹脂層、およびメラミン樹脂層よりなる群から選択される少なくとも1種が、また無機基材として、石膏ボードが挙げられる。
【0012】
上記中間層は、20〜80%の空隙率を有するものであることが好ましく、このような空隙率を有する中間層としては、織布または不織布を構成材料として用いたものが挙げられる。また、上記表面材は、中間層側に凹凸形状を有するものが推奨される。このような構造の中間層や表面材を採用することで、表面材の剥離性をさらに向上させることができる。なお、表面材は、金属板が好ましい。
【0013】
また、上記中間層は、カルボキシル基を含有し、且つ該カルボキシル基の一部がアルカリ金属で中和された樹脂を素材とするものであることが好ましく、該樹脂中のカルボキシル基の0.2〜0.8当量がアルカリ金属で中和されていることが、より好ましい。中間層の素材にこのような樹脂を用いることで、アルカリ液による溶解性または膨潤性を十分に確保することができる。
【0014】
さらに、上記の被覆部材を構成するための、アルカリ液に溶解または膨潤し得る中間層が積層された表面材も、本発明に含まれる。
【0015】
【発明の実施の形態】
従来の被覆部材においては、表面材と基材は、接着剤などを用いて極めて強固に貼り合わされているため、表面材と基材の剥離は非常に困難であり、特に石膏ボードと金属板からなる被覆部材では、これらの剥離は実質的に不可能である。
【0016】
そこで、本発明者らは、このような被覆部材の表面材と基材の間に、アルカリ液に溶解または膨潤し得る中間層を設ける構成を採用し、本発明を完成させた。すなわち、本発明の被覆部材は、廃棄やリサイクルに先立ってアルカリ液浴中に浸漬すれば、上記中間層がアルカリ液に溶解または膨潤してしまうので、表面材と基材はアルカリ液中で剥離するか、該アルカリ液中では完全に剥離しなくても、僅かな応力を掛けるだけで容易に剥離することができるのである。以下、本発明の被覆部材の構成について説明する。
【0017】
本発明の被覆部材に使用される表面材としては、特に限定されず、鋼板、銅板、チタン板、Al板、その他各種合金板などの金属板;後述の有機基材で例示する熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂板などが挙げられ、中でも、金属板が好ましい。また、上記の各金属板では、めっき処理(亜鉛めっきなど)やクロメート処理などの公知の表面処理が施されていても構わない。表面材の厚みは特に限定されず、被覆部材の用途に応じて、要求される特性を確保できる厚みとすればよい。さらに、表面材は、上記例示のものを単独で用いる他、2種以上の材料を積層したものを用いてもよい。なお、本発明では、被覆部材の構成が、表面材、基材のいずれもが有機素材を構成材とする場合であって、表面材と基材の素材の主体が同種一の有機素材の場合であっても、例えば基材中に補強材(補強繊維や充填剤粒子など)が添加されている場合には、該被覆部材の廃棄・再利用に際し、表面材と基材との剥離・分別が要求されることもある。よって、このような場合にも、本発明の構成を採用することは非常に効果的である。
【0018】
本発明の被覆部材において用いられる基材も特に限定されず、種々の有機素材および/または無機素材を構成材とする基材を採用することができる。例えば、有機基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどやこれらの共重合体などのポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;ポリオキシメチレン;ポリアクリロニトリル;ポリ酢酸ビニル;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルアルコール;エチレン−ビニルアルコール共重合体;ポリエーテルケトン;ポリエーテルサルホン;ポリサルホン;ポリフェニレンサルホン;アイオノマー樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂や、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ユリア樹脂、ケイ素樹脂、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂などを主成分とするものが挙げられる。
【0019】
上記例示の有機基材のうち、従来の技術では特に表面材からの分離処理が困難であった熱硬化性樹脂製の基材、中でも、ウレタン樹脂層、フェノール樹脂層、メラミン樹脂層が好ましいものとして挙げられる。
【0020】
また、上記の例示の熱可塑性樹脂を主成分とする基材の場合、表面材からの分離処理としては、加熱して基材を溶融除去したり、基材の熱可塑性樹脂が溶解可能な有機溶媒を用いて溶解除去するなどの方法も考えられるが、前者の場合、多大な熱エネルギーを必要とするなど効率的ではなく、後者の場合、有機溶媒による人体や環境への影響が懸念される。しかしながら本発明によれば、前者のように大量のエネルギーを必要とすることもなく効率的であり、さらに水系のアルカリ液を選択すれば、後者のような人体や環境への影響も極力抑えることができるため、上記の熱可塑性樹脂製基材を用いる場合にも、本発明の構成を採用することは有効である。
【0021】
なお、上記の有機基材は、必要に応じ、公知の方法によって発泡層としてもよい。また、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、抗菌剤などの各種添加剤や、シリカ、二酸化チタン、カオリン、炭酸カルシウムなどの微粒子を有機基材中に添加することもできる。
【0022】
また、無機基材としては、特に建材用途の面で需要の多い石膏ボードが一般的である。
【0023】
なお、上述の有機素材や無機素材は、単独で使用する他、被覆部材に要求される特性(機械的強度、保温性、不燃性、耐疵付性、耐汚染性など)を損なわない範囲で2種以上の素材を混合して基材としてもよく、異なる素材から形成される2層以上を積層して基材としても構わない。また、基材の厚みは特に限定されず、被覆部材の用途に応じて、要求される特性を確保できる厚みとすればよい。
【0024】
上記の中間層は、アルカリ液に溶解または膨潤し得る樹脂を素材とするものであれば特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸重合体;エチレンやプロピレンなどのオレフィンと、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸との共重合体などのカルボキシル基含有変性ポリオレフィン樹脂;などのカルボキシル基を含有する樹脂であって、そのカルボキシル基の一部がアルカリ金属で中和されたものが、好ましいものとして挙げられる。
【0025】
ただし、被覆部材の使用時に、被覆部材にかかる応力などによって中間層が破壊されると、表面材と基材が剥離してしまう。よって、こうした中間層の破壊を抑制するため、被覆部材の用途などに応じて、要求される機械的強度を満足する中間層を形成し得る樹脂を適宜選択する必要がある。
【0026】
上記のカルボキシル基含有変性ポリオレフィンとしては、エチレン−アクリル酸共重合体が特に好ましく利用できる。なお、アルカリ液による溶解性または膨潤性と、中間層とした場合の強度などを満足できるように、エチレン性不飽和カルボン酸は5〜80質量%の範囲で共重合することが好ましい。
【0027】
なお、上記の「カルボキシル基の一部がアルカリ金属で中和された」とは、樹脂中の−COOHの一部の水素原子が、NaまたはKなどのアルカリ金属原子と置換されたことを意味する。アミン、アンモニア、多価金属で中和されたものでは、アルカリ液による溶解または膨潤が不十分であるため好ましくない。
【0028】
カルボキシル基の中和度としては、樹脂中の全カルボキシル基(すなわち、「カルボキシル基+中和されたカルボキシル基」)1当量に対し、0.2当量以上0.8当量以下であることが好ましい。カルボキシル基の総量に関わらず、この中和度が0.2より小さいと、アルカリ液による溶解または膨潤が不十分となる。他方、中和度が0.8より大きいと、アルカリ液のみならず、水に対する溶解性も増大し、被覆部材の使用の際に、空気中の水分などによって被覆層の剥離が生じ易くなる。より好ましい中和度の下限は0.4、上限は0.7である。
【0029】
カルボキシル基の中和度は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、樹脂中のカルボキシル基および中和されたカルボキシル基の吸収強度を測定することによって算出することができる。
【0030】
上記のような樹脂を、シート状に成形して中間層とする。なお、本発明の被覆部材においては、中間層は20%以上80%以下の空隙率を有することが好ましい。このような空隙率の中間層を用いることで、溶解または膨潤させるべき樹脂量を減少させることができ、さらにアルカリ液との接触面積が大きくなるため、アルカリ液による溶解性または膨潤性を向上させることができる。
【0031】
中間層の空隙率が20%を下回るものでは、空隙を有する構成を採用することによる上記効果がほとんど得られない。他方、空隙率が80%を超えるものでは、中間層の機械的強度が低下し、被覆部材の使用時に中間層が破壊する場合がある。中間層の空隙率のより好ましい下限は30%、上限は70%である。
【0032】
上記の空隙率を確保する点から、アルカリ液に溶解または膨潤し得る上記の樹脂から得られる織布または不織布を、中間層の構成材料とすることが好ましい。こうした繊維状材料から中間層を形成させた場合、上記の空隙率に加えて、繊維の有する導液性により、アルカリ液が繊維を伝って中間層内部まで良好に浸透するため、表面材と基材との剥離性が極めて良好となる。
【0033】
中間層の構成織布や不織布の製造方法やその条件は特に限定されず、従来公知の方法の中から、採用する樹脂に適した方法で、上記の空隙率を達成できる条件を適宜採用すればよい。
【0034】
この他、アルカリ液に溶解し得る上記の樹脂を、シート状(フィルム状)に成形した後、上記の空隙率で孔を形成させてもよい。その方法としては、例えば、アルカリ液に溶解し得る樹脂に、他の樹脂を混合してTダイなどによってシート状に成形した後、アルカリ液に溶解または膨潤し得る樹脂を溶解せず、他の樹脂のみ溶解し得る溶媒を用いて、該他の樹脂を溶解する方法や、アルカリ液に溶解または膨潤し得る樹脂に公知の発泡剤を混合してシート状に成形し、成形と同時あるいは成形後に発泡させ、樹脂中に気泡(好ましくは連続気泡)を形成させる方法などが採用可能である。
【0035】
なお、中間層の空隙率は、例えば、断面を走査型電子顕微鏡で観察し、該断面の総面積と空隙部分の面積とから求められる該空隙部分の面積率として求めることができる。
【0036】
なお、アルカリ金属による樹脂中のカルボキシル基の中和は、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)や炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)などの水溶液に浸漬して実施すればよく、上記の織布や不織布、多孔性シートの場合には、該中和後の樹脂をこれらの形態に加工すればよい。また、後述する樹脂の溶液(好ましくは水溶液)や溶媒分散体(好ましくは水分散体)を表面材などへ塗布して中間層を形成する場合は、これらの溶液や溶媒分散体の形態で上記の水溶液などを用いて中和すればよい。
【0037】
また、中間層の、アルカリ液による溶解性または膨潤性を向上させる点では、表面材として、中間層側に凹凸形状を有するものを採用することも好ましい。このような表面材を採用すれば、中間層と接触しない表面材表面の凹部分にアルカリ液が浸入できるため、中間層とアルカリ液の接触面積が大きくなり、中間層の溶解性または膨潤性を、より向上させることができる。
【0038】
表面材の凹凸形状としては、碁盤目状に凹部分を形成させたものが好ましく、その好適サイズは、目標とする剥離性のレベルによって変動する。例えば、1マスのサイズを小さく、凹形状の深さを大きくするほど、剥離性を向上させることができる。なお、凹凸形状の形成法は、表面材の素材夫々の公知技術を採用すればよい。例えば、金属板の場合では、公知のプレス加工によって、容易に凹凸形状を形成することができる。
【0039】
本発明の被覆部材は、例えば、基材→中間層→表面材の順でこれらを積層することで製造できる。基材−中間層間、および中間層−表面材間の積層には、これらの層間密着性が低く、被覆部材の使用時において各層が剥離するような場合は、接着剤を用いることが好ましい。接着剤としては、ポリ酢酸ビニルや酢酸ビニル−エチレン共重合体などのポリ酢酸ビニル系、ポリ(メタ)アクリル酸および/またはそのエステルや、これらとポリスチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニルなどとの共重合体などのアクリル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、ポリエステル樹脂系、ゴム系、ポリオレフィン系、SBSやSIBSなどのポリスチレン系、エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系、その他公知の接着剤が挙げられ、これらから、基材、中間層および表面材の各素材に応じたものを適宜選択すればよい。接着剤の塗布量は、乾燥後の付着量として、通常、5〜100g/m2である。上記範囲を下回ると良好な接合力が得られず、上記範囲を超えるとコスト的に無駄となることがある。これらの接着剤は、水分散型、水溶液型、溶剤型、無溶剤型のいずれであってもよい。
【0040】
なお、基材や表面材の性質により、被覆部材をアルカリ液に浸漬しなくても、中間層がその形態を維持し得ない場合、具体的には、基材や表面材に用いる素材がアルカリ性を示すような場合は、中間層と基材、あるいは中間層と表面材の間に、さらに樹脂などからなる保護層を設けてもよい。また上記の接着剤を用いる場合は、該接着剤が保護層としての役割を果たし得るため、さらに保護層を設けなくても構わない。
【0041】
接着剤は、基材、中間層、または表面材に直接塗布するか、接着剤のフィルムをこれらにラミネートすることによって供給できる。塗布する場合の塗布方法は特に限定されず、ロールコーティング、スプレーコーティング、ノズルコーティング、ディップコーティング法などが採用できる。
【0042】
なお、中間層に採用した樹脂と、基材や表面材との密着性が良好で、被覆部材として使用する場合に各層間での剥離が生じない場合は、上記の接着剤は用いなくてもよい。この場合の中間層と、基材や表面材との貼り合わせは、中間層の一部を溶融させて積層する熱ラミネートや、中間層を形成する樹脂の溶液8好ましくは水溶液)や溶媒分散体(好ましくは水分散体)を用い、これを上記の接着剤と同様の方法で基材あるいは表面材に塗布後、表面材あるいは基材を積層する方法などが採用できる。この他、中間層を形成する樹脂が、例えば表面材との密着性は良好であるが、基材との密着性がよくない場合では、表面材に中間層を形成する樹脂の溶液や溶媒分散体を塗布して中間層を形成させた後、接着剤を用いて基材を積層してもよい。
【0043】
また、樹脂溶液や溶媒分散体から直接中間層を形成させる場合は、基材表面などへの塗布後、乾燥を行うが、例えば水溶液、あるいは水分散体である場合は、水を除去するため80℃以上、より好ましくは100℃以上で、適宜時間を選択して乾燥させればよい。
【0044】
中間層の量は、好ましくは0.5g/m2以上100g/m2以下、より好ましくは1g/m2以上50g/m2以下とすることが望ましい。中間層の量が少な過ぎると、基材、表面材、接着剤との密着性が不安定となる虞がある。他方、多過ぎると溶解または膨潤させるべき樹脂量が多くなり、表面材の剥離性が劣る上に、アルカリ液中で溶解・膨潤した樹脂量が増大することから、該アルカリ液の溶解能・膨潤能が早期に低下するため、該アルカリ液の使用寿命が短期間化する虞がある。
【0045】
なお、既述の通り、基材や表面材は複数の層を積層したものであってもよいが、この場合、基材や表面材の各層間にも、上記のアルカリ液に溶解または膨潤し得る樹脂から得られる層を設けてもよい。この構成の採用により、基材や表面材についても、アルカリ液への浸漬処理によって、各層毎に分離することが可能となる。
【0046】
また、上記の方法によってアルカリ液に溶解または膨潤し得る中間層が積層されてなる表面材も本発明に含まれ、該表面材の中間層表面に、上記の方法で基材を積層することで、表面材の剥離性に優れた本発明の被服部材を得ることができる。
【0047】
本発明の被覆部材の表面材表面や基材表面(基材の片面にのみ、表面材が積層されている場合)、および中間層が積層された本発明の表面材の中間層積層面と反対側の表面には、意匠性や耐傷付き性などを高めるため、公知の樹脂や紙(化粧紙)などからなる層などを、さらに設けてもよい。
【0048】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0049】
クロメート処理(Cr付着量:20mg/m2)を施した溶融亜鉛めっき鋼板(板厚:0.6mm)を表面材とし、これにアクリル酸単位が17〜18質量%(酸価120)のエチレン−アクリル酸共重合体の水分散体を主成分とする水系中間層形成用組成物を塗布し、100℃で約1分乾燥し、表面材表面に中間層を形成させた。中間層の乾燥後質量は5g/m2である。なお、中間層の主成分であるエチレン−アクリル酸共重合体中のカルボキシル基の中和は、上記の水分散体の状態で、炭酸ナトリウム水溶液を混合して行い、表1に示す中和度とした。
【0050】
次にA4サイズの石膏ボード(基材)に酢酸ビニル系接着剤を、乾燥後質量で10g/m2となるように塗布し、上記表面材と、中間層を介して貼り合わせ、被覆部材とした。得られた被覆部材について、下記に示す剥離性評価および耐水性評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
[剥離性評価]
アルカリ液として、日本パーカライジング株式会社製「ファインクリーナーL4460」を、水1リットル当たり20g溶解させた水溶液を満たした浴(50℃)中に、被覆部材を10分間浸漬した後の表面材の剥離性を以下の基準に基づいて評価した。
◎:容易に剥離できる,
○:剥離できる,
△:剥離が困難である,
×:剥離不可。
【0052】
[耐水性評価]
40℃の純水中に、被覆部材を10分間浸漬した後の表面材の剥離性を以下の基準に基づいて評価した。
◎:剥離不可,
○:剥離が困難である,
△:剥離できる,
×:容易に剥離できる。
【0053】
【表1】
【0054】
表1のNo.1〜4,6の被覆部材は、アルカリ液に溶解し得る樹脂を中間層に用いた例である。このうち、No.1〜4の被覆部材では、中間層の樹脂中のカルボキシル基の中和度が、本発明の好ましい範囲を満足しており、表面材の剥離性および耐水性のいずれもが優れている。また、No.6の被覆部材は、アルカリ液に溶解し得る樹脂を中間層に使用しているが、この樹脂中のカルボキシル基の中和度が本発明の好ましい範囲を超える例であり、表面材の剥離性には優れるものの、耐水性が低下している。
【0055】
これに対し、表1のNo.5の被覆部材は、アルカリ液に溶解し得ない樹脂を中間層に用いた例であり、アルカリ液に浸漬しても表面材を剥離することができなかった。
【0056】
【発明の効果】
本発明の被覆部材は、以上の通り、表面材と基材の間にアルカリ液に溶解または膨潤し得る中間層を設ける構成を採用しており、大きなエネルギーを付与することなしに、表面材と基材を容易に剥離できる。よって、使用後不要となった被覆部材の廃棄や、基材・表面材素材の再利用が容易である。特に実質的にリサイクルが不可能であったもの(表面材:金属板、基材:石膏ボード)においても、表面材と基材を完全に分離できるため、夫々再利用することが可能となった。
【0057】
また、本発明の構成を採用しても、アルカリ液による表面材の剥離性以外の特性が損なわれることはないため、従来の被覆部材と同様に、要求特性に応じた基材・表面材を用いて、家電製品や建材などに利用することができる。
【0058】
さらに、本発明の被覆部材では、表面材と基材の剥離に際し、該被覆部材が浸漬可能なアルカリ液を満たした容器があればよく、大掛かりな装置は不要であり、また、アルカリ液の繰り返し使用が可能である。よって、非常に低コストで、表面材と基材の剥離・分別が実施できる。
Claims (10)
- 有機および/または無機基材の片面または両面に表面材が積層された被覆部材であって、
基材と表面材との間に、アルカリ液に溶解または膨潤し得る中間層が存在することを特徴とする表面材の剥離性に優れた被覆部材。 - 前記有機基材が、ウレタン樹脂層、フェノール樹脂層、およびメラミン樹脂層よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の被覆部材。
- 前記無機基材が、石膏ボードである請求項1に記載の被覆部材。
- 前記中間層は、20〜80%の空隙率を有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の被覆部材。
- 前記中間層は、織布または不織布を構成材料として用いたものである請求項1〜4のいずれかに記載の被覆部材。
- 前記表面材は、前記中間層側に凹凸形状を有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の被覆部材。
- 前記中間層は、カルボキシル基を含有し、且つ該カルボキシル基の一部がアルカリ金属で中和された樹脂を素材とするものである請求項1〜6のいずれかに記載の被覆部材。
- 前記樹脂中のカルボキシル基の0.2〜0.8当量がアルカリ金属で中和されたものである請求項1〜7のいずれかに記載の被覆部材。
- 前記表面材が、金属板である請求項1〜8のいずれかに記載の被覆部材。
- 前記被覆部材を構成するための、アルカリ液に溶解または膨潤し得る中間層が積層されている表面材。
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