本発明の伸縮性たて編地において、2.54cm(1インチ)当たり55ウエールを超える密度に仕上加工されているのが好ましい。前記伸縮性たて編地が安定化されるからである。
本発明の伸縮性たて編地において、非弾性糸のランナーを弾性糸のランナーよりも大きく、かつ、非弾性糸のランナーを70〜150cm/ラック、弾性糸のランナーを50〜120cm/ラックにして編成するのが好ましい。前記伸縮性たて編地が安定化され、かつ適度に伸縮性になるからである。
本発明の伸縮性たて編地において、プレセットおよび/またはヒートセットを施されているのが好ましい。前記伸縮性たて編地が安定化され、かつ前記伸縮性たて編地の縁部のほつれが更に抑制されるからである。
本発明の伸縮性たて編地において、部分的に、他の部分よりも繊度の大きな弾性糸を編糸に用い締付パワー強化部分として編成されているのが好ましい。前記伸縮性たて編地を、部分的に締付パワーの強化部分が必要な衣料に形成する際に有用だからである。
本発明の伸縮性たて編地において、更なる弾性糸が挿入されているのが好ましい。あるいは、更なる非弾性糸が挿入されているのも好ましい。前記伸縮性たて編地に所望の緊締力を与え、伸びを抑制することができるからである。
本発明のボンデッドファブリックは、本発明の伸縮性たて編地を複数枚重ね、貼り合せて形成されているボンデッドファブリックである。このように複数枚重ねて貼り合せると、前記ボンデッドファブリックの縁部のほつれが抑制され、好ましい。また、このようなボンデッドファブリックは、薄い上に伸縮性があって、好ましい。なお、重ね、貼り合わせの際、伸縮性たて編地の編成方向が、逆方向になるように重ねて貼り合わされているのが好ましい。逆方向になるように重ねて貼り合せると、前記ボンデッドファブリックの引き裂けが更に抑制されるからである。
また、本発明のボンデッドファブリックは、本発明の伸縮性たて編地と、前記伸縮性たて編地以外の布又はフィルムとを組み合わせて重ね、貼り合せて形成されているボンデッドファブリックであってもよい。
本発明の衣料は、本発明の伸縮性たて編地を含んで形成されたことを特徴とする衣料である。この伸縮性たて編地は縁部のほつれが抑制されているので、縁部の縁始末をしなくてもよく、その衣料の縁ラインが外衣に現れ、外観を損なったり、着用感を損なわないという利点がある。この衣料は、前記伸縮性たて編地を、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度で裁断し、裁断されたままの状態で縁部始末不要な縁が衣料の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する部片を含んで形成されるのが好ましい。本発明の伸縮性たて編地は、このように裁断された部片であれば、縁始末をしなくても、縁部のほつれが更に抑制されているからである。
本発明の衣料は、本発明のボンデッドファブリックを含んで形成されたことを特徴とする衣料である。このボンデッドファブリックは縁部のほつれが抑制されているので、この衣料は縁部の縁始末をしなくてもよく、その衣料の縁ラインが外衣に現れ、外観を損なったり、着用感を損なわないという利点がある。
この衣料は、前記ボンデッドファブリックの、編み方向に対し3度以上かつ177度以下の角度で裁断し、裁断されたままの状態で縁部始末不要な縁が衣料の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する部片を含んで形成されるのが好ましい。
また、この衣料は、前記ボンデッドファブリックに含まれる伸縮性たて編地の1つの編み方向に対し、3度以上かつ177度以下の角度(γ)で裁断し、別の伸縮性たて編地の編み方向に対し、180−γ(度)の角度で同形状に裁断して、重ね合わせて貼り合せて、裁断されたままの状態で縁部始末不要な縁が衣料の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する部片を含んで形成されるのが好ましい。
また、この衣料は、前記ボンデッドファブリックに含まれる伸縮性たて編地の1つの編方向に対し、3度以上かつ177度以下の角度で裁断し、別の布、フィルム等を同形状に裁断して、重ね合わせて貼り合せて、裁断されたままの状態で縁部始末不要な縁が衣料の少なくともいずれかとなる様、その裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する部片を含んで形成されるのが好ましい。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態についてさらに説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の伸縮性たて編地の一例を示す図である。1は非弾性糸を、2は弾性糸を、矢印の方向は編地の編み方向を示す。この伸縮性たて編地は、非弾性糸1と弾性糸2が同行する1×1のトリコット組織で、非弾性糸1と弾性糸2のいずれもが開き目により編成されている伸縮性たて編地である。
本発明の伸縮性たて編地に用いる非弾性糸としては、例えば、ナイロンやポリエステルなどの合成繊維、レーヨンなどの半合成繊維のフィラメント糸を使用することができる。吸水性に富むナイロンはインナーウエア用編地の繊維として好適である。非弾性糸としては、細い方が編目を高密度にしやすい一方、細すぎると強度が弱くなってしまう。非弾性糸の繊度は、例えば33〜231dtex、好ましくは33〜154dtex、より好ましくは33〜89dtex、さらに好ましくは33〜78dtexである。非弾性糸の繊度が33〜231dtexであれば、編地を高密度にでき、かつ安定し強度のある編み組織とすることができるからである。非弾性糸の繊度は、33〜55dtexが編地を高密度にしやすく、かつ安定し強度のある編み組織とすることができるので、更に一層好ましい。
前記伸縮性たて編地に使用する弾性糸としては、特に制限はないが、例えばポリウレタン弾性糸やその被覆弾性糸を使用することができる。前記弾性糸は、細い方が編地を高密度とできる。前記弾性糸の繊度が154dtex以上となると、裁断したままで縁部始末不要な状態が実現でき、伸度が少なくなる。従って、身体に密着する衣料に使用するには弾性糸の繊度は15dtex以上154dtex以下が好ましい。前記弾性糸の繊度は、より好ましくは、15〜100dtex、更に好ましくは33〜88dtexである。一方、154dtexよりも太い弾性糸は、伸度を要求しない衣料部位に使用することができる。また、231dtex以上396dtex以下の繊度の弾性糸でも、比較的柔らかい弾性糸であれば、裁断しても裁断したままの縁部がほつれにくい状態を実現できる。このような繊度の弾性糸は、伸度は少ないが、伸度を要求しない部位には使用しうる。
本発明の伸縮性たて編地は、編密度が高いほど好ましいが、例えば2.54cm(1インチ)当たり例えば55ウエールを超える高密度、好ましくは60ウエールを超える高密度、より好ましくは65ウエールを超える高密度、さらに好ましくは70ウエール以上の高密度で編成される。このような高密度に編地を編成すれば、伸縮性たて編地の横伸びの割合が大きくなり、編目の美しさを維持しつつ、前記伸縮性たて編地の編目の安定性が向上するからである。
使用する編糸の繊度等にもよるが、具体的には、例えば総本数を3600本として130インチのラッセル編機を使用する場合、前記伸縮性たて編地の仕上巾を100〜140cm(一般的な編地では仕上巾を160cm前後)、より具体的には、110cm、120cm、130cmなどにし、可能な範囲で高密度に編成したものが、伸縮性たて編地において編目の美しさを保持しつつ、その安定性を向上するために望ましい。
本発明の伸縮性たて編地は、非弾性糸のランナーを、弾性糸のランナーよりも大きくし、かつ非弾性糸のランナーを70〜150cm/ラック、弾性糸のランナーを50〜120cm/ラックにして編成するのが好ましい。
前記非弾性糸のランナーは、好ましくは85〜120cm/ラック、より好ましくは95〜115cm/ラックの範囲である。また、前記弾性糸のランナーは、好ましくは70〜110cm/ラック、より好ましくは75〜105cm/ラックの範囲である。非弾性糸のランナーに対する弾性糸のランナーは、75〜90%程度が好ましい。非弾性糸のランナーを弾性糸のランナーより大きくすると、前記伸縮性たて編地の横方向への適度な伸縮を付与できるからである。
尚、ここで、「ランナー」とは、一定コース数(これを「ラック」と言い、通常、480コースを1ラックとする)を編むのに使用する糸の長さ(cm)を言う。
前記伸縮性たて編地における非弾性糸のランナーAと弾性糸のランナーBの比率(A/B)は、好ましくは1.15以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.3以上である。
尚、本発明で用いる裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を形成しうる伸縮性たて編地には、レース生地を含まない。
前記伸縮性たて編地は、プレセットおよび/またはヒートセットを施しておくことが好ましい。このような処理により、編地の安定性、ほつれ防止などの効果を向上することが可能だからである。なお、このプレセットおよびヒートセットは、処理の装置の形状、プレセット処理時間、ヒートセット処理時間、前記伸縮性たて編地の種類、その厚さなどにもよるが、一定の温度より高い温度、例えば180℃より高い温度、好ましくは185℃より高い温度、より好ましくは190℃〜195℃の温度範囲で行うことができる。例えば180℃より高い温度で6チャンバー構成の装置を用いると、処理時間は例えば15〜40m/分程度、好ましくは20〜26m/分程度である。
前記伸縮性たて編地においては、部分的に他の部分よりも繊度の大きな弾性糸を編糸に用い、締付パワーを強化したい編地部分を一体に編成することができる。これは、弾性糸がループを形成するトリコット編組織で編み込まれていることを意味する。例えば、このような伸縮性たて編地を加工した部片やそれを複数枚積層したボンデッドファブリックは、部分的に締付パワーの強化部分が必要な衣類や袋物などを形成する際に有用であり、製造コスト低減にも役立つ。また、前記伸縮性たて編地に弾性糸および/または非弾性糸を挿入し、その繊度や挿入糸の密度を適宜に調整して、所要の伸度や伸縮パワーの編地を編成し、あるいは編目の安定性を向上させることができる。また、ファッション性をもたせるために、適宜に柄糸を挿入してもよい。
前記伸縮性たて編地は、前記の所要の編成条件にもとづき、ラッシェル編機、トリコット編機などのシングル機やダブルラッシェル機を適宣に選択して公知の手段により容易に編成することができる。編成された編地は、付加価値を高めるため、たとえば染色加工、加熱エンボス加工やパンチング加工によって各種の模様を施すなど、必要により各種の後加工を施すことができる。
前記伸縮性たて編地は、単独で縁部のほつれが少なく、縁部の縁始末が不要である編地として使用することもできる。前記伸縮性たて編地を単独で編地として使用する際には、例えばプレセットおよび/またはヒートセットを施すのが好ましい。熱可塑性の編糸がプレセットおよび/またはヒートセットの熱により編目が安定化されるからである。
(実施の形態2)
本実施形態では、本発明のボンデッドファブリックの好ましい形態について説明する。前記伸縮性たて編地は、複数枚を貼り合わせて積層し、ボンデッドファブリックにすることもできる。このようなボンデッドファブリックは、薄地で両面の編目が美しく、リバーシブル衣類などに極めて好適に用いることができる。前記伸縮性たて編地は、貼り合わせる編地同士の編み方向を同一方向または逆方向にして貼り合わせても良いが、逆方向にして貼り合せるのが好ましい。逆方向にして貼り合せると、縁部からの引き裂きが抑制されるからである。前記伸縮性たて編地は、通常、編地の表面を外側に、裏面を貼合面とする。
前記伸縮性たて編地は、前記伸縮性たて編地以外の布またはフィルムとを組み合わせて重ね、貼り合わせてもよい。前記布としては、例えば、他のたて編地、よこ編地、ジャージ、織物、不織布などの布を目的により適宜に選択して用いることができる。なお、前記布またはフィルムの層数は、限定されない。
前記伸縮性たて編地等の貼合手段としては、例えば、直接重ねた布等を熱融着させる方法、貼り合せる布の間にウレタンフォームを挟んで融着させる融着法、アクリル系、ウレタン系、ボリエステル系あるいは溶融性パウダなどの接着剤を用いて接着する方法が挙げられる。接着剤を用いて接着する方法には、ドクター方式、ローラ方式、反転方式、スプレー方式などがあり、これらの手段を適宜に選択することができる。
本発明のボンデッドファブリックは、必要により各種の後加工を施して付加価値を高めることができる。たとえばプリント加工、加熱エンボス加工、パンチング加工やオパール加工によって所要の模様を付与し、また、ブラジャーカップなどに使用するためにモールド加工によって所要の型付けを施こしてもよい。
(実施の形態3)
本実施形態では、本発明の伸縮性たて編地を含んで形成された衣料の好ましい形態について説明する。
本発明の衣料は、本発明の伸縮性たて編地を少なくとも部分的に用いて形成されて形成されていればよく、それ以外に限定されない。
本発明の衣料において、前記伸縮性たて編地から形成された部片の衣料における上縁あるいは下縁の少なくとも一方あるいは両方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が編み方向に対して、3〜177度、好ましくは10〜120度の角度で裁断されているのが好ましい。そうすれば、ほつれが生じたり、カーリングがおこることなく、着用者の身体にフィットする衣料を形成することができるからである。
本発明の衣料において、本発明の伸縮性たて編地から形成された部片は、衣料の上下方向に上縁から下縁まで連続した伸縮性たて編地からなるのが好ましい。
本発明の衣料において、本発明の伸縮性たて編地から形成された部片の衣料における上縁あるいは下縁の少なくとも一方あるいは両方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が曲線に裁断されているのが好ましい。
本発明の衣料において本発明の伸縮性たて編地から形成された部片の衣料における上縁あるいは下縁の少なくとも一方あるいは両方が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、当該縁始末不要な縁が複数の曲線のある波形状であるのが好ましい。
本発明の衣料において、本発明のたて編地による部片の衣料における上縁および下縁の両方の縁が、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁からなり、上縁および下縁が相互に非平行である、あるいは、上縁の縁の形状と、下縁の縁の形状が異なっているのが好ましい。あるいは上縁および下縁が相互に非平行であり、かつ形状も異なっているのが好ましい。
本発明の衣料としては、ボトム衣料(例えばショーツ、ロングガードル等)、ブラジャー、水着、レオタードのトップス等が挙げられる。
ボトム衣料において、本発明のたて編地による部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、ウエストもしくは裾の少なくとも一方あるいは両方を形成している。この場合、前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、編み方向に対して、20〜80度、さらに好ましくは35〜65度の角度で裁断された縁であることが好ましい。
ブラジャー、もしくは水着あるいはレオタードのトップスにおいて、本発明の伸縮性たて編地による部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、バック布の上縁又は下縁の少なくとも一方あるいは両方の縁を形成しているのが好ましい。この場合、バック布を形成する前記部片の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、編み方向に対して例えば10〜90度の角度、好ましくは75〜90度で裁断されていてもよい。
前記裁断角度について図2を用いて説明する。
図2中、A−B−C−D−Aで囲まれた部分が、裁断した部片であるとする。矢印E、F、Gはこの編地の編方向を示している。図2のX側を「編始め側」と言い、図2のY側を「編終り側」と言う。従って、縁A−Dと、縁C−Dは、編始め側の縁と言うことになり、縁A−Bと、縁B−Cは、編終り側の縁と言うことになる。
縁の裁断角度とは、「編始め側」の縁(A−DやC−D)の場合には、縁のラインと編方向とがなす角度のうち、鋭角となる方の角度(α4やα3)を言う。また「編終り側」の縁(A−BやB−C)の場合には、縁のラインと編方向とがなす角度のうち、鈍角となる方の角度(α1やα2)を言う。
以上が、本発明における縁の裁断角度の定義であるが、説明のしやすさから、例えば図2において縁A−Bラインの裁断角度をβ1の角度を用いて説明している場合があるが、これは、縁の裁断角度の上記定義から明白なように縁A−Bラインの裁断角度としては「180度−β1度」のことであることは容易に理解される。
縁ラインの裁断角度を上述したような本発明の態様とすることにより、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁の身体へのフィット性が向上し、当該縁部分が、着用者の身体外側にカールすることを防止でき好ましい。即ち、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を、衣料の上縁又は下縁、例えば、ウエストや裾などに有する衣料は、当該縁部分が、着用者の身体外側にカールする場合がある。このようなカールを生じないようにするには、上記縁始末不要な縁となる部分の裁断ラインを、当該編地の編み方向に対し上述の角度となるように裁断することが好ましい。編地の編み方向とは、編地を編む場合の糸の供給方向に相当する。上記において編み方向に対し20〜80度とは、編み方向のラインを仮定した場合にその左右のいずれか側に20〜80度の角度であること、言い換えれば編み方向の進行方向側に角の頂点側が向いている角の角度で、編み方向の進行方向ラインに対し±20〜80度の角度である。
尚、裁断されたままで縁始末不要な縁を、身体外側にカールすることを防止する必要性の少ない部位に使用する場合には、45度を超えない範囲で裁断した縁を有する部片を使用することも好ましい。また、裁断縁を直線状ではなく、波形などに裁断した部片を使用すれば、縁部が身体外側にカールすることを防止でき好ましい。
衣類の部片を裁断する際に、複数の縁部を裁断したままで縁始末不要な縁とする場合、いずれかの箇所は、編み方向に対し3〜177度、例えば好ましい範囲の20〜80度では裁断できず、例えば編み方向に20度未満の角度で裁断せざるを得ない箇所がある。その様な縁部は波形に裁断すれば、波形のカーブとなった縁部の裁断角度を例えば好ましい範囲の20〜80度とすることもでき、縁部全体を実質的に20〜80度で裁断した効果を得られる。例えば衣料の上下方向に連続した1枚の部片を用いてショートガードルのウエストラインと裾を共に裁断したままで縁始末不要な縁とする場合など、当該衣料のデザインの関係上、両方の縁部を編み方向に対して例えば編み方向に対し20〜80度で裁断できないこともあり、かかる場合に、一方の縁を波状の縁にすることは好ましい。
特にガードルやショーツなどのボトム衣料において、上記角度で裁断した部片の縁部を、ウエストや裾に使用することが、縁部のほつれやカーリングを防止できる。
ブラジャー、もしくは水着あるいはレオタードのトップスの場合は、バック布となる部片は、編み方向に対して直角もしくは平行に対し±20度などの平行もしくは直角に近い角度で裁断を行うと、バック布の着用時に横方向に伸度を持たせることができ、着用感が向上するため好ましい。バック布はカップ脇から、フックアンドアイと呼ばれる後中心連結部に向かって幅が狭くなる略台形状であり、上縁と下縁は二等辺三角形の2つの斜辺の関係となっていることが多い。よってバック布の上縁と下縁の一方は、編み方向に対して好ましくは10〜90度、より好ましくは75〜90度で裁断する。一方の縁部の裁断角度をαとすると、他方の縁部は、(180−α)度に近い角度で裁断することとなる。例えば、直角に近い角度で裁断する場合は、バック布の下縁は100度で裁断し、上縁は80度で裁断する。編み方向に対し平行に近い角度で裁断する場合は、バック布の上縁は15度で裁断し、下縁は165度で裁断することとなる。この様に、バック布の部片を、編み方向に対して平行もしくは直角に近い角度以外の角度で裁断しても、裁断形状を複数の曲線のある波形状とすれば、縁部のほつれやカーリングが生ぜず、しかもある程度の伸度を有するために、差し支えない。「複数の曲線のある波形状」とは、単純にどちらか一方向に凸の曲線または凹の曲線ではなく、凹凸のある波線のような曲線など、どちらか一方向に凸の曲線と凹の曲線の複数の曲線が合成されて形成された、いわば、波線のような曲線のことを意味している。「複数の曲線のある波形状」とは所謂「波形状」の曲線のことを意味しているのである。波形状は規則的な単純な曲線の繰り返しからなるものに限られず、不規則な波形状であってもよい。
裁断したままの縁部の形状を波形状にする場合には、各波形状の曲線の曲率をあまり小さくしない方が引き裂き強度が低下せず、また、当該縁部のめくれなども生じにくくなり好ましい。
(実施の形態4)
本実施形態では、本発明のボンデッドファブリックを含んで形成された衣料の好ましい形態について説明する。
前記ボンデッドファブリックを用いて、衣料を形成する積層部片を作成する場合には、予め複数枚の前記伸縮性たて編地を重ねて貼り合わせてから所望の形状に裁断してもよいし、予め前記伸縮性たて編地それぞれを所定の同形状に裁断しておいて、それら複数枚を重ねて貼り合わせてもよい。いずれの場合も、貼り合せる複数枚の部片は、同形状で接合積層されて、実質的に1枚のボンデッドファブリック状態となる。よって本発明のボンデッドファブリックの部片に段差が生じない。また、1枚でもほつれの生じない本発明の伸縮性たて編地を貼り合わしているため、ボンデッドファブリックの部片の縁部がさばけたり、糸端が突出することなく、縁部を綺麗に出来る。貼り合わせの方法としては、前記のとおりである。
実施例をあげて本発明を具体的に説明する。本実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
図3は本発明の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有するたて編地をバック布に使用したブラジャーの主要部分の斜視図である。図4は図3に示したブラジャーの着用者の左側に相当するバック布部片11の裁断ラインを編地上に示した平面図である。図3において、11が伸縮性のバック布、14が土台部、15が前中心部であり、18が着用時に左右のバック布を連結するための連結部、16が乳房カップ、17がストラップ、19は左右の前中心部の縫合箇所である。バック布部と土台部と前中心部は、連続した1枚の布から形成されている。伸縮性のバック布11は、裁断されたままで縁始末不要な部片で、かつ上下方向に連続した布で形成されている。この部片を構成する経編地の編み方向は矢印23(図4参照)の示す方向である。
バック布部片11は、バック布に強度を持たせるため、バック布を形成する部片2枚を熱接着性樹脂で接着して積層し、つまりボンディングして使用しており、本発明のたて編地を編み方向が逆方向となるよう2枚積層した部片を用いた。バック布を形成する部片としては、非弾性糸としてナイロン糸44dtex、弾性糸としてポリウレタン糸78dtexを用い(混率はナイロン糸65重量%、ポリウレタン糸35重量%)、非弾性糸と弾性糸とが同行する共に1×1トリコット組織で、非弾性糸と弾性糸が共に開き目により編成されている経編地で、ウェールの編密度68/インチ(2.54cm)を用い、これら2枚の編地の編み方向が逆方向となる様に重ねて樹脂接着してから、図4の11で示されるバック布の形状に裁断してバック布部片として用いた。
そして前記バック布11の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁は、バック布の下側の縁(「下縁」と略称する)13と上側の縁12(「上縁」と略称する)の部分である。下縁13と上縁12はいずれも複数の波形のある波形状になっている。
バック布の上縁12と下縁13において、波形状の凹凸はほぼ同間隔で現れ、上縁12の波形状のうち、上方に凸形状の位置に対応する下の位置の下縁13の波形状は下方に凸形状となっており、逆に、上縁の波形状が下方に凸形状(上方には凹形状) の位置に対応する下の位置の下縁13の波形状は上方に凸形状(下方に凹形状)となり、バック布を上下に分割する線を対称にして、バック布の上縁と下縁の凹凸が、上下でほぼ対称形状となっている。また、バック布において形成される波形状の各々の波の曲線形状がゆるやかな曲線(曲率半径の大きい曲線)で、波形状の高低差が小さいいゆるやかな波長の長い波形状となっている。言いかえるならば、えんどう豆のさやの様な形状となっている。波形状が波長が長めでかつ高低差の少ないゆるやかな波形状とすることによって、バック布の身体へのフィット性を向上させ、上下縁部のめくれを防止でき、また特に波形状の谷部分からの引き裂きが生じやすくなることを防止することが出来る。
尚、バック布の上縁と下縁において、複数の波形状の波の表出する間隔は上縁と下縁でほぼ同一、また波形状の高さもほぼ同一とし、上縁と下縁で、凹凸の現れる場所をずらし、上縁の波形状のうち、上方に凸形状の位置に対応する下の位置の下縁の波形状は上方に凸形状となっており、逆に、上縁の波形状が下方に凸形状(上方には凹形状) の位置に対応する下の位置の下縁13の波形状は下方に凸形状(上方に凹形状としても良い。
また、バック布11の上緑12は、個々の波形状による凹凸を無視した場合に、全体的に下方に突出したゆるやかな曲線であり、そのゆるやかな曲線部に、ゆるやかな波の曲線部がある形状であり、バック布11の下緑13は、個々の波形状による凹凸を無視した場合に、全体的に上方に突出したゆるやかな曲線であり、そのゆるやかな曲線部に、ゆるやかな4つの波の曲線部がある形状となっている。
従って、バック布11の下側の縁13の縁ラインの方向は全体として曲線状であるので、バック布の下縁13の乳房カップ側に近い方の端と連結部18側に近い方の端を結ぶ直線と同じ方向、すなわち矢印22で示された方向であり、編み方向に対して85度の角度(裁断角度)がつけられている。上側の縁12の縁ラインの方向は、当該波形の各頂点を結ぶ直線と同じ方向、すなわち矢印21で示された方向であり、編み方向とは105度(裁断角度)の角度がつけらている。すなわち、バック布の上下の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を構成するラインは、相互に非平行とされている。尚、縁ラインが波形状となっているため、下側の縁13の縁ラインの波形状箇所は、85度を前後する角度で、上側の縁12の縁ラインの波形状箇所は、105度を前後する角度で、裁断されている。土台部14や前中心部15は、編み方向に対し、ほぼ75度の角度で裁断されている。
バック布の上縁から直線形状に突出している24は、ストラップ取り付け箇所であり、先端にストラップ17が取付けられる。ストラップ取り付け箇所24は、バック布11と連続しており、バック布と一体に裁断されている。縁部は、裁断したままで始末不要である。尚、バック布11は一番広い箇所で幅9cm、細い箇所で幅4cmとした。
尚、上縁の波形状と、下縁の波形状を波の表出が異なった間隔、あるいは異なった波の高さ、あるいは波の個数の異なる形状としても良い。
また、上縁の波形状と、下縁の波形状を波の表出が異なった間隔、かつ異なった波の高さ、かつ波の個数の異なる形状としても良い。
従来のブラジャーのバック布においては、バック布11の上下の縁に沿ってゴムテープが設けられていたが、本実施例のブラジャーのバック布11の上下の縁にはゴムテープを縫合していないので、ゴムテープによる厚みの増大がなく、着用時の胸囲まわりのシルエットをすっきりとしたシルエットにすることができると共に、ゴムテープの締め付け跡が肌に残ることがない。従って、バック布が身体にフィットして、運動時に生じるずれも最小限に防止し、着崩れも防止される。またバック布の縁部がめくれてしまうことも有効に防止できる。
バック布は前記編地が2枚積層されているので、引き裂き強度が大きく、バック布の上縁と下縁が縁部始末不要な縁であり、かつ上下方向に連続した布から形成されており、上縁から下縁に至るまで表面がフラットで段差がなく、着用時に部分的な圧迫を生じることがない。バック布部片として用いた編地は、裁断縁部がほつれの生じない布であり、かつ縁部ほつれの生じない、形状、角度、に裁断しているため、上下縁部の裁ち端が綺麗で、糸が突出することがない。
なお、これら2枚の編地の積層品を衣料を形成する部片として用いることは、ブラジャーのバック布だけではなく、ショーツ、ガードルなどのボトムや、ランジェリーや肌着を形成することも可能である。
図5は裁断されたままの状態で縁始末不要な縁を有する本発明のたて編地を使用して形成されたショーツの背面図、図6は図5に示したショーツの正面図、図7は図5、図6に示したショーツの着用者の左側に相当する前脇腹−脇−ヒップ部充当部片36の裁断ラインを編地上に示した平面図である。
図6〜図7において、36が前脇腹−脇―背面部をカバーする前脇腹−脇―ヒップ部充当部片で、上下方向に連続した段差のない1枚の部片である。37は腹部と股部をカバーする腹部−クロッチ部充当部片であり、上下方向に連続した段差のない1枚の部片からなる。左右の前脇腹−脇―ヒップ部充当部片36は、後中心の縫合ライン39で相互に縫合されており、前脇腹−脇―ヒップ部充当部片36の前側の側縁は、腹部−クロッチ部充当部片37の側縁の一部と縫合ライン40で互いに縫合されている。つまり本ショーツは、3枚の見頃部片で形成されている。
図7において、生地70中に示されたラインM―N―O―P―Q―Mはこのショーツの脇からヒップ部に用いられる着用者の左側半分の部片を得るための前脇腹−脇―ヒップ部充当部片36の裁断ラインを示したものである。
図示していないが、前脇腹−脇―ヒップ部充当部片36の右側半分の部片の形状は、左側半分の部片の形状と左右線対称となる。M−Nラインは図6の腹部−クロッチ部充当部片37の一部と縫合され、P−Qラインは図示していない前述した右側半分の部片の同様な部分と縫合されて後中心の縫合ライン39を形成することになる。O―Pラインは、腹部−クロッチ部充当部片37のクロッチ後部42と縫合される。N−Oラインが、裾ラインを形成し(N−OラインのうちN−Rラインが前裾ライン45、R−Oラインが後裾ライン43)、Q−Mラインがウエストライン44を形成する。図示していない前述した右側半分の部片36の縫製も左右対象であるので同様である。かくして図6〜図7に示したショーツを作成することができる。
前脇腹−脇―ヒップ部充当部片36および腹部−クロッチ部充当部片37は裁断されたままで縁始末不要な部片を用いている。前脇腹−脇―ヒップ部充当部片36を構成する経編地の編み方向は、矢印35の矢印が示す方向である。
前脇腹−脇―ヒップ部充当部片36および腹部−クロッチ部充当部片37は、地編部分の編組織が、図1で説明したような33dtexのナイロン糸と77dtexのポリウレタン糸とを同行させた1×1のトリコット組織で、弾性糸、非弾性糸共に開き目で、1インチ(2.54cm)当たり70ウェールの編み密度で編成されている。尚、無地の生地の表面にプリント加工により、小柄模様38を付けている。
そして前脇腹−脇―ヒップ部充当部片36の裁断されたままの状態で縁始末不要な縁が、45の前裾と43の後裾ラインの縁及び44のウエストラインの縁の部分を形成している。後裾ライン43は波形になっており、後裾ライン43の方向は当該波形の各頂点を結ぶ直線と同じ方向、すなわち矢印33で示された方向であり、編み方向35とは5度の角度がついている。前裾ライン45(N−R)は図7に示したように、上に若干凸の不規則な形状の曲線状になっている。ウエストライン44は、編み方向35の方向に対し角αが3度の角度(裁断角度)で裁断されている。従って裾ライン43とウエストライン44は、非平行となっている。
腹部−クロッチ部充当部片37の上側の縁46は前述したように、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁としている。編地としては、上記前脇腹−脇―ヒップ部充当部片36と同じ編地で同じ花柄模様を表面にプリント加工した同一の編地を用いた。
腹部−クロッチ部充当部片37は、編方向や裁断縁の方向を図示していないが、腹部−クロッチ部充当部片37の上側の縁46が編方向に対し45度の角度となるように裁断して用いた。
こうすることによって、ウエストと裾の衣料縁部を全て裁断したままで縁部始末を行っていない縁部とすることができ、かつ上下に連続した段差のない部片でショーツを形成しているため、縫製箇所を少なし、段差の少ない表面がフラットな花の小柄模様入りショーツとすることができる。特に縁部の段差をなくすことができ、裁断角度を編み方向に対し3度以上(180−3=177度以下)、さらに裁断形状を曲線あるいは波形とすることにより、ウエストラインと裾が、裁断したままでもほつれが生じず、かつカーリングすることなく身体に密着し、ずれにくく、ウエストや裾が安定した位置に保持されやすくなり好ましい。
上述の様に、裾ライン43、45やウエストライン44は、裁断されたままの状態で縁始末不要な縁になっており、縁始末が不要で、またゴムテープなどを用いていないので、ゴムテープの様に線状にウエストを強く締め付けることがなく、厚みが増大しないので着用時のウエストまわりのシルエットをすっきりとしたシルエットにすることができると共に、ゴムテープの締め付け跡が肌に残ることがない。また、上記裾まわりも同様である。前脇腹−脇−ヒップ部充当部片36および腹部−クロッチ部充当部片37は、上記編み組織に限らず、裁断したままでほつれの生じないトリコット経編地であれば、他の編組織でも良い。
表面にプリント加工を行わない無地でショーツを形成しても良い。
尚、本発明のたて編地は、ショーツの他にもロングガードルなどにも使用できる。