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JP2004162241A - ストレッチ糸及びストレッチ織編物 - Google Patents

ストレッチ糸及びストレッチ織編物 Download PDF

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JP2004162241A JP2003119437A JP2003119437A JP2004162241A JP 2004162241 A JP2004162241 A JP 2004162241A JP 2003119437 A JP2003119437 A JP 2003119437A JP 2003119437 A JP2003119437 A JP 2003119437A JP 2004162241 A JP2004162241 A JP 2004162241A
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Abstract

【課題】しなやかな撚糸タッチ感が得られ、綾線の鮮明な表面性と良好なストレッチ性を兼ね備える織編物を提供するものである。さらには経ストレッチ織物を製造する際にノンセットで、且つノンサイジングで整経ができ、極めて工程合理性に優れた経ストレッチ織物の製造方法を提供する。
【解決手段】仮撚の撚方向と同方向に追撚された仮撚加工糸順追撚糸であって、この仮撚加工糸が二種以上のポリエステル成分からなり、その少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル繊維であることを特徴とするストレッチ糸、及びそれを用いた織編物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はストレッチ糸及びストレッチ織編物に関する。より詳細には、甘撚りでありながら、フカツキがなく、しなやかな撚糸タッチ感が得られ、表面性、ストレッチ性に優れる織編物を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は、先に、特許文献1として、ポリトリメチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸の逆追撚糸使いの織物が、優れたストレッチ性を有することを提案したが、仮撚加工糸独特のふかついた風合いが若干残るため、特に撚糸タッチでしなやかな風合いが求められる婦人アウターには用いることができなかった。一方、順追撚糸は、糸が締まって肝心のストレッチを有する織物が出ないという欠点があった。
これに対し、特許文献2には、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートであるサイドバイサイド型の潜在捲縮発現性複合繊維が開示され、既知ではあるが、甘撚りで表面性、ストレッチ性に優れた織編物は知られていないのが現状である。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−013034号公報
【特許文献2】
特開2001−040537号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、甘撚りでありながら、しなやかな撚糸タッチ感が得られ、綾線の鮮明な表面性と良好なストレッチ糸及びそれを用いたストレッチ性を兼ね備える織編物を提供するものである。さらには経ストレッチ織物を製造する際に、ノンセットで、且つノンサイジングで製経ができ、極めて工程合理性に優れた経ストレッチ織物の製造方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、加工糸の撚糸構造とストレッチ性、風合い、表面性の関係について鋭意検討した結果、特定の仮撚加工糸に特定の撚りを加えることにより、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、経糸及び又は緯糸が、仮撚加工糸の撚方向と同方向に追撚されたストレッチ糸であって、この仮撚加工糸が二種以上のポリエステル成分からなり、その少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTという)である潜在捲縮発現性ポリエステル繊維であることを特徴とするストレッチ糸及びそれを用いた織編物である。
本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、少なくとも二種のポリエステル成分で構成され、具体的には、サイドバイサイド型又は偏芯鞘芯型に接合されたものが多く、熱処理によって捲縮を発現するものである。二種のポリエステル成分で構成されている場合の複合比は、一般的に、質量%で70/30〜30/70の範囲内のものが多いが特に制限されず、また接合面形状も直線又は曲線形状のものがあるが特に限定されない。
【0006】
以下に、二種のポリエステル成分からなる繊維を例に説明する。
二種のポリエステル成分からなる場合は、二種のポリエステルポリマーをサイドバイサイド型又は偏芯鞘芯型に接合された複合繊維であり、サイドバイサイド型の場合、二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比が、1.00〜2.00の範囲が好ましく、偏芯鞘芯型の場合は、鞘ポリマーと芯ポリマーのアルカリ減量速度比が、3倍以上鞘ポリマーが速いことが好ましい。
【0007】
具体的なポリマーの組み合わせとしては、一成分がPTT、他成分がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、PTTからなる複合繊維である。ここでPTTは、テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、85%以上が1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、他のジオールまたは酸成分として、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。ポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、85%以上がエチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、他のジオールまたは酸成分として、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。又、ポリマー中に艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。ポリブチレンテレフタレートとしてはテレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、85%以上が1,4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、他のジオールまたは酸成分として、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。ポリマー中には艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。複合繊維の断面形状としては、特に、捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートが配置されると好ましい。
【0008】
このように、本発明は潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を構成するポリエステル成分の少なくとも一方がPTTであるものであり、特にPTTと共重合PTTの組み合わせや、極限粘度の異なる二種類のPTTの組み合わせが好ましい。
さらに本発明の目的達成上、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、初期引張抵抗度が、好ましくは10〜30cN/dtex、より好ましくは20〜30cN/dtex、最も好ましくは20〜27cN/dtexである。初期引張抵抗度が30cN/dtexを超えると、ソフトな風合いが得られにくく、10cN/dtex未満のものは製造が困難な場合がある。
【0009】
潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の顕在捲縮の伸縮伸長率は、好ましくは10〜100%、より好ましくは10〜80%、最も好ましくは10〜60%である。顕在捲縮の伸縮伸長率が10%未満では本発明の目的が十分に達成されない場合があり、100%を超える繊維の製造は困難な場合がある。更に、顕在捲縮の伸縮弾性率は、好ましくは80〜100%、より好ましくは85〜100%、最も好ましくは85〜97%である。顕在捲縮の伸縮弾性率が80%未満では、本発明の目的が十分に達成されない場合があり、100%を超える繊維の製造は困難な場合がある。
さらに、100℃における熱収縮応力が、好ましくは0.1〜0.5cN/dtex、より好ましくは0.1〜0.4cN/dtex、最も好ましくは0.1〜0.3cN/dtexである。100℃における熱収縮応力が0.1cN/dtex未満では、本発明の目的が十分に達成されない場合があり、0.5cN/dtexを超える繊維の製造は困難である。
【0010】
本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の熱水処理後の伸縮伸長率は、好ましくは100〜250%、より好ましくは150〜250%、最も好ましくは180〜250%である。熱水処理後の伸縮伸長率が100%未満では、本発明の目的が十分に達成されない場合があり、250%を超える繊維の製造は困難である。熱水処理後の伸縮弾性率は、好ましくは90〜100%、より好ましくは95〜100%である。熱水処理後の伸縮弾性率が90%未満では、本発明の目的が十分に達成されない場合がある。
本発明のストレッチ糸の3.5×10-3cN/dtex荷重下の伸縮伸長率は、好ましくは10〜120%、より好ましくは20〜100%、最も好ましくは30〜80%である。3.5×10-3cN/dtex荷重下の伸縮伸長率が10%未満では、ストレッチ性に乏しい場合があり、120%を超えると本発明の目的が十分に達成されない場合がある。
【0011】
このような特性を有する潜在捲縮発現性ポリエステル繊維としては、例えば固有粘度の異なる2種類のPTTが互いにサイドバイサイド型に複合された単糸から構成された複合繊維が挙げられる。
2種類のPTTの固有粘度差は、好ましくは0.05〜0.40(dl/g)、より好ましくは0.10〜0.35(dl/g)、最も好ましくは0.15〜0.35(dl/g)である。例えば、高粘度側の固有粘度を0.70〜1.30(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度を0.50〜1.10(dl/g)から選択するのが好ましい。低粘度側の固有粘度は、好ましくは0.80(dl/g)以上、より好ましくは0.85〜1.00(dl/g)、最も好ましくは0.90〜1.00(dl/g)である。
この複合繊維自体の固有粘度即ち平均固有粘度は、好ましくは0.70〜1.20(dl/g)、より好ましくは0.80〜1.20(dl/g)、さらに好ましくは0.85〜1.15(dl/g)、最も好ましくは0.90〜1.10(dl/g)である。
【0012】
本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸した糸の粘度を指す。この理由は、PTT特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである。
PTTは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより製造される。この製造過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のPTT以外のポリエステルやナイロンと、PTTを別個に製造した後、ブレンドしたりしてもよい。ブレンドする際のPTTの含有率は、質量%で50%以上、好ましくは80%以上である。
【0013】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。
さらに二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0014】
本発明に用いられる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の製造法は、特に限定されるものではないが、例えば、3000m/分以下の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法が好ましく、紡糸−延伸工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)を採用することができる。
繊維の形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面形状においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブーメラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0015】
本発明は、かかる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の仮撚加工糸およびそれを用いてストレッチ編織物とすることに特徴がある。
この仮撚加工糸の顕在捲縮伸長率は、好ましくは70〜300%、好ましくは100〜300%、最も好ましくは120〜300%である。顕在捲縮伸長率が70%未満では、本発明の目的は十分に達成されない場合がある。
この仮撚加工糸の顕在捲縮弾性率は、好ましくは80〜100%、より好ましくは82〜100%、最も好ましくは85〜100%である。顕在捲縮弾性率が80%未満では、本発明の目的が十分に達成されない場合がある。
また、この仮撚加工糸の捲縮伸長率は、好ましくは100〜400%、より好ましくは120〜400%である。捲縮弾性率は80〜100%であることが好ましく、より好ましくは90〜100%である。捲縮伸長率や捲縮弾性率がこの値未満では本発明の目的が十分に達成されない場合がある。
【0016】
仮撚加工糸を得るための仮撚方法としては、ピンタイプ、フリクションタイプ、ニップベルトタイプ、エアー加撚タイプ等、いかなる方法によるものでもよいが、好ましくはピンタイプ、ニップベルトタイプである。
仮撚加工糸は、いわゆる2ヒーターの仮撚加工糸(セットタイプ)よりも、いわゆる1ヒーターの仮撚加工糸(ノンセットタイプ)を用いる方が、本発明の目的達成上好ましい。
仮撚加工時の熱固定温度は150℃〜200℃の範囲とすることが好ましく、仮撚数(T1)は次式で計算される仮撚数の係数K1の値が21000〜33000であることが好ましく、より好ましくは25000〜32000の範囲である。
T1(T/m)=K1/(原糸の繊度:dtex)1/2
本発明は、かかる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の仮撚加工糸を用い、且つ追撚の撚方向を仮撚の撚り方向と同方向にすることに特徴がある。
驚くべきことに本願発明の加工糸順追撚糸は、これまで誰も実現しえなかった、加工糸のふかつきを抑制し、且つストレッチ率が逆追撚糸とほとんど変わらないという相反する特性を両立する特徴を有する。この驚くべき特性が得られる理由は今後の詳細な解明が必要ではあるが、本発明者等は以下のような特異な構造が関与していると推定している。
【0017】
即ち、加工糸順追撚糸の構造を解析すると、驚くべきことに各単糸は繊維軸方向の各所で「捩れループ」を形成すると共に単糸間で相互にループが複雑に交絡し合いながら、ヤーン全体として順方向に撚糸されながら、しかもヤーンの所々で逆方向に撚り線があり、その部分でくびれた構造を形成することを見出し、本発明に至ったものである。このような特異な単糸及びヤーン構造を形成する理由としては、PTTを一成分とする二成分の複合紡糸型ポリエステルを仮撚りするとPTT成分は非晶成分と共に結晶成分までも容易に加撚時に捩れ、解撚時には結晶成分は完全解撚するため、他の成分がポリエステル成分の場合は結晶成分に関与しないし、粘度違いのPTTの場合は結晶化成分量に差異があるため、自然に解撚トルクに差異が生じたバイメタル構造となり、これが順方向に追撚することでトルク力が急激に増大し、各単糸が繊維軸方向の各所で捩れループを形成し、単糸間で相互に交絡した「3次元ネットワーク構造」を形成することでヤーン全体として安定な構造が形成されると推定している。
【0018】
この3次元ネットワーク構造形成により、甘撚りでもヤーン全体に強烈に撚り構造が形成され加工糸のふかつきが解消され、強撚タッチが実現されると共に同時に捩れループの3次元ネットワーク構造が、あたかも3次元に繋ぎ合わされたバネのように、優れたストレッチ性とバック性をも発現させる。さらにヤーンに部分的に逆方向の撚りが入って適度にくびれることで、ヤーン全体でトルクがバランスされ、布帛を形成してリラックスさせた際に、撚糸タッチでしなやかな風合いと良好な綾線がえられる。また、後述するように、ビリが発生しないために撚糸セットや経糸として用いてもサイジングする必要が無いという工程合理化に優れた効果も発現する。
追撚数T2は、次式で計算される追撚係数K2が好ましくは1000〜18000、特に好ましくは3000〜13000の範囲である。
T2(T/m)=K2/(仮撚加工糸の繊度:dtex)1/2
追撚係数が1000未満では、充分な3次元ネットワーク構造が形成されず、撚糸タッチ感に劣ると共に、特に経糸使いの場合に隣接する経糸との絡み(いわゆるファスナー現象)が発生しやすく、18000を超えるとストレッチ性が低下する傾向にある。
【0019】
追撚後はスチームセット等の方法により60〜80℃程度の温度で30〜60分の撚止めセットを施してもよいが、本発明の追撚糸は、いわゆるスナール係数(3〜4以下)が低くビリ付きが少ないために撚止めセットを施すことなく用いることが可能であり、これも本発明の特徴である。
又、本発明の追撚糸を経糸に用いる場合、集束性に優れているためにノンサイジングが可能であり、平滑性を付与するオイリング程度で経糸使いが可能であり、本発明のさらなる特徴である。
【0020】
本発明のPTT繊維マルチフィラメント仮撚糸の追撚した糸の好適な繊維物性は3.5×10-3cN/dtex荷重下の伸縮伸長率が10%以上で120%以下であることが好ましい。10%未満では布帛にした際にストレッチ率が劣る場合があり、120%を超えると布帛とした際に加工糸ライクなふかついた風合いになり、きれいな綾線も得られにくい。強度は2.5cN/dtex以上さらに好ましくは2.5〜4.4cN/dtexのものが好ましく、2.5cN/dtex未満では織物にしたときの強力が不足する傾向にある。伸度は35%以上、さらに好ましくは35〜60%が好ましく、35%未満では織物にしたときのストレッチ性が不足する傾向にある。弾性率は20cN/dtex以下さらに好ましくは13〜18cN/dtexが好ましく、20cN/dtexを超えるとソフト性の乏しくなる傾向にある。20%伸長時の伸長回復率は70%以上、さらに好ましくは80〜100%が好ましく、伸長回復率が70%未満の場合には、織物に使用したときの伸びに対する回復率が悪くなる方向にある。
【0021】
本発明の効果を損なわない範囲で他の繊維と合撚または、インターレース合撚しても構わない。合撚方法としては潜在捲縮発現性ポリエステル繊維糸の仮撚加工前後にインターレース合糸して順追撚する方法が好ましい。相手糸としてはポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、アセテート繊維等の合成繊維や、キュプラ、レーヨン、綿、麻、ウール等の天然繊維が用いられる。
本発明のストレッチ糸は織物の経糸及びまたは緯糸に用いることができる。経糸または緯糸のどちらか一方に用いる場合に使用される他の糸には特に限定はなく、PTT系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、アセテート繊維等の合成繊維や、キュプラ、レーヨン、綿、麻、ウール等の天然繊維が用いられる。又、これらの織物の生機段階での密度は使用するトータル繊度や織物の組織によって異なるが、染色仕上加工によってストレッチ率15〜50%の範囲で所望するストレッチ率が得られるように適宜密度の調製を行うことが好ましい。
【0022】
また本発明の織物の種類としては、平、経並び平、ツイル、羽二重、サテン等が用いられ、特に規定はされないが、経糸と緯糸の交錯数が少ない組織の方が高ストレッチ性を発現しやすいものとなる。逆に交錯数が多い平組織などは一般に高ストレッチ性が出にくいものであるが、本発明の糸使いとすれば、表面は平滑で且つ高ストレッチを発現させることが可能である。従って本発明では、平組織、経並び平組織、ツイル組織とした時が平滑な表面を保持したまま高ストレッチ性を発現するという効果をより発揮しやすい。
本発明の織物を製織するための織機としては、エアージェットルームやウォータージェットルーム等に代表されるような流体噴射織機を初め、レピアルームやグリッパールーム、フライシャットルルームなどが使用できるが、緯方向のストレッチ性を最大限に発揮させることに加え、織物の幅方向でのストレッチ率のバラツキを抑制する点から、低張力緯入れが可能で緯糸に優しいエアージェットルームやウォータージェットルーム等の流体噴射織機、中でも特にエアージェットルームの適性は高い。
【0023】
また、PTT系潜在捲縮発現性ポリエステル仮撚加工糸等の高捲縮無撚糸をウォータージェットルームのような緯入れ搬送力の強い織機を用いて製織した場合、概して緯ヒケ等の斑が生じやすいという問題があるが、本発明の仮撚加工糸順追撚糸を用いると、このような欠点も発生せず、良好な品位の織物が容易に得られる。これも本発明の特徴の一つである。
また、緯糸の打ち込み方としては、Z/Z打ち込み(Z仮撚糸のみの打ち込み)、S/S打ち込み(S仮撚糸のみの打ち込み)、S/Z交互打ち込み(S仮撚糸とZ仮撚糸を交互に打ち込む)の何れであっても良いが、S/Z交互打ち込みの方が生地としてのトルクを減少させ、結果として平滑でカールのない織物となるのでより好ましい。
【0024】
本発明で云うストレッチ織物とは、経及びまたは緯方向にストレッチ率15%以上、特に好ましくは15〜65%を有する織物のことであるが、このストレッチ率は2.94N/cmの応力下で伸長された時の伸び(%)である。
本発明の織物に平滑な表面を保持したまま15〜65%の高ストレッチを発現させる加工方法は、生機をリラックス処理し幅入れさせた後、染色を行い、仕上げ処理を兼ねたファイナルセットを行なっていく方法である。リラックス処理に使用する装置としては、液流染色機、U型ソフサー、横型ソフサー、オープンソーパーなどを用いることができるが、オープンソーパーを用いるのが表面性と高ストレッチ発現の面からより好ましい。また、オープンソーパーによる拡布精練時の温度としては、80℃〜105℃、好ましくは、90℃〜100℃である。また染色前に中間セットを入れる方が表面平滑性を達成するためにより好ましい。その際の温度としては150〜170℃が好ましい。150℃未満ではセット性が悪く、また170℃を超えると加工糸の捲縮性が低下するのでストレッチ性低下を招くことになる。
【0025】
染色装置も特に限定されず、液流染色機、ジッガー染色機、ウインス染色機等を用いることができる。仕上げ処理剤は特に限定されないが、幅入れリラックス処理を行うと、特に表面平滑性に優れ、良好な綾線を有するストレッチ織物となるので好ましい。通常用いられる柔軟剤、撥水剤、制電剤などの使用が可能である。ファイナルセット温度は、中間セット温度と同じく150℃〜170℃が好ましい。
本発明は、かかるストレッチ糸を用いて織編物を構成するものであるが、ストレッチ糸100%で構成してもよいし、ストレッチ糸以外の単糸(無撚糸、有撚糸等)等と混用してもよい。編組織としては、ハーフトリコット、ラッセルなどの経編み、天竺、スムース、ゴム、ミラノリブ、ポンチローマなどの丸編み及び横編みの何れでも良く、ゲージは、経編みで14〜40GG、丸編みで14〜40GG、横編みで3〜22GGが好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、実施例などにより本発明を更に詳しく説明する。
なお、実施例における評価は以下の方法により測定した。
(1)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
式中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒に溶解したPTT糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成する固有粘度とする。
【0027】
(2)初期引張抵抗度
JIS−L−1013:化学繊維フィラメント糸試験方法;初期引張抵抗度の試験方法に準じ、試料の単位繊度当たり0.0882cN/dtexの初荷重を掛けて引張試験を行い、得られた荷重−伸長曲線から初期引張抵抗度(cN/dtex)を算出する。試料10点を任意に採取して測定し、それらの平均値を求めた。
(3)伸縮伸長率及び伸縮弾性率
JIS−L−1090:合成繊維フィラメントかさ高加工糸試験方法の伸縮性試験方法A法に準じて測定を行い、伸縮伸長率(%)及び伸縮弾性率(%)を算出する。試料10点を任意に採取して測定し、それらの平均値を求めた。
顕在捲縮の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、巻取りパッケージから解舒した試料を、温度20±2℃、相対湿度65±2%の環境下で24時間放置後に測定を行う。熱水処理後の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、無荷重で95℃の熱水中に15分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥乾燥した試料を用いる。3.5×10-3cN/dtex荷重下の伸縮伸長率及び伸縮弾性率は糸に3.5×10-3cN/dtexの荷重を掛けながら、95℃の熱水中に15分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥した試料を用いる。
【0028】
(4)織物のストレッチ性、回復性
JIS−L−1096:一般織物試験法伸長率A法(定速伸長法)、伸長回復率(繰り返し定速伸長法)に準拠した。但し、伸長回復率は、伸長率A法で求めた伸びの100%まで試料を伸長する。
ORIENTEC(株)製の引張試験機(型式:RTC−1210A)を用いて、試料(幅5cm×長さ1m)にかかる重力に相当する荷重を初荷重としてかけ、把持間隔20cm(L0)、引張速度20cm/分で試料を所望の方向に伸長させ、14.7N(1.5kgf、300gf/cm)の荷重がかかるまで伸長し、長さ(L1)を読みとる。その後、1分間放置後、同速度で元の位置に戻し、3分間放置する。再び同速度で伸長し、初荷重と同じ荷重がかかった時点の長さ(L2)を読みとる。
ストレッチ率及び回復率は以下の式によって求める。
ストレッチ率(%)=〔(L1−L0)/L0〕×100
回復率(%)=〔(L1−L2)/(L1−L0)〕×100
(5)破断強度、破断伸度
JIS−L−1013に基づいて測定した。
【0029】
(6)交絡数の測定
米国特許第2985995号明細書に記載されている測定方法に準拠して得た値であり、試料長約1mの交絡点下端に1.8×10-3cN/dtex(0.2g/d)の荷重を吊るして試料を垂下し、試料上方の糸束中央部に直径約0.7mmのクロムメッキを施したフックを挿入して虫ピンなどで支えながら挿入位置より上方の交絡部で止められるまで一旦静かに下降させて、その下降長L(cm)を測定する。これを繰り返し、50回測定し、平均L(バー)から100/L(バー)によって得られた値である。尚、フックの下降速度は1cm/secである。
(7)表面平滑性
当業に5年以上従事したことのある経験者5人がモニターになり、官能評価を行い、下記の4段階の判定を行った。
◎;極めて平滑な表面である
○;概ね平滑な表面である
△;やや平滑性に劣った表面である
×;シボ等が発生しており平滑性に劣る
【0030】
(8)風合い評価
当業に5年以上従事したことのある経験者5人がモニターになり、官能評価を行い、下記の4段階の判定を行った。
◎;最も撚糸タッチ感があり、優れている
○;ほぼ撚糸タッチ感を有し、良好な風合いである
△;やや撚糸タッチ感に劣り、フカツキ感あり
×;加工糸ライクな風合いである
(9)外観評価(綾線)
当業に5年以上従事したことのある経験者5人がモニターになり、官能評価を行い、下記の4段階の判定を行った。
◎;極めて綾線がはっきりしている
○;概ね綾線が出ている
△;やや綾線が見えずらい
×;綾線が全く見えない
【0031】
【参考例】
潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の製造
(製造例1)
サイドバイサイド型複合紡糸用紡口を用いて、固有粘度の異なる二種類のPTTを、質量比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得た。次いで、ホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が84dtexとなるように設定して延撚し、84dtex/36fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。
得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は、高粘度側が0.90、低粘度側が0.70であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、及び100℃における熱収縮応力はそれぞれ23cN/dtex、25%/89%、204%/99%、0.21cN/dtexであった。
【0032】
(製造例2)
固有粘度の異なる二種類のポリエチレンテレフタレートを用いて84dtex/36fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は、高粘度側が0.66、低粘度側が0.50であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、及び100℃における熱収縮応力はそれぞれ71cN/dtex、1%/100%、70%/95%、0.08cN/dtexであった。
【0033】
(製造例3)
サイドバイサイド型複合紡糸用紡口を用いて、固有粘度の異なる二種類のPTTを、質量比率1:1でサイドバイサイド型に紡糸温度265℃で押出し、紡糸−延伸−巻取機を用いて93dtex/36fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメント未延伸糸を得た。尚、巻取条件は以下の通り行った。
第一ゴデットロール速度:2000m/分
第一ゴデットロール温度:60℃
第二ゴデットロール速度:2000m/分
第二ゴデットロール温度:120℃
得られた複合マルチフィラメント未延伸糸の固有粘度は、高粘度側が1.05、低粘度側が0.80であった。破断強度、破断伸度、及び100℃における熱収縮応力はそれぞれ1.5cN/dtex、100%、0.02cN/dtexであった
【0034】
【実施例1】
固有粘度が0.9のPTTを紡糸温度265℃、紡糸速度1200m/分で未延伸糸を得、次いで、ホットロール温度60℃、ホットプレート温度140℃、延伸倍率3倍、延伸速度800m/分で延撚して、56dtex/24fの延伸糸を得た。延伸糸の強伸度、弾性率並びに10%伸長時の伸長回復率は、各々3.1cN/dtex、46%、26.5cN/dtex並びに98%であった。上記方法で得られた56dtex/24fのPTT繊維を経糸として用い、更に製造例1で得られた84dtex/36fの潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を、ピンタイプ仮撚機を用いて仮撚数3400T/m(仮撚係数は31161となる)で仮撚した後、村田機械製のダブルツイスターDT−310を用いて仮撚方向と同方向に600T/m追撚(追撚係数は、5499となる。以下順追撚という)した。この糸の3.5×10-3cN/dtex荷重下の伸縮伸長率は60%であり、ビリツキはほとんど見られず、セットなしでも経糸及び緯糸として充分に使用可能なものであった。これをセットなしで緯糸として用い、エアージェットルームZA−103(津田駒工業(株)製)にて500rpmの回転速度でS/Z交互に打ち込んで、経151本/2.54cm、緯111本/2.54cm密度の2/2ツイル織物の生機を得た。得られた生機品位は緯斑もなく、良好(合格品)であった。本生機を、オープンソーパーを用いて95℃で精練、リラックスし、テンターを用い160℃で中間セットした後、液流染色機にて120℃の分散染料による染色を行い、160℃でファイナルセットし、経251本/2.54cm、緯116本/2.54cmの布帛を得た。
得られた布帛は、しなやかな撚糸タッチの風合いを有し、且つ表1に示すように、表面平滑性に極めて優れ、緯方向に高ストレッチ性を有するものであった。
【0035】
【比較例1】
実施例1において、緯糸に追撚方向を仮撚り方向と逆の方向に600t/m(撚り係数=5499)追撚し、60℃で40分スチームセットする以外は全て同様にして行い、布帛を得た。この糸の3.5×10-3cN/dtex荷重下の伸縮伸長率は82%であった。
得られた布帛は表1に示すように、ストレッチ性はあるが、加工糸織物独特のふかついたタッチが残り、綾線が乱れたものであった。
【比較例2】
実施例1において、緯糸に実施例1で使用した84dtex/36fの潜在捲縮発現性ポリエステル繊維仮撚加工糸を無撚のままSとZを1本交互に打ち込む以外は全く同様にして行い、布帛を得た。この潜在捲縮発現性ポリエステル繊維仮撚加工糸の3.5×10-3cN/dtex荷重下の伸縮伸長率は140%であった。得られた布帛の結果を表1に示す。
【0036】
【実施例2】
実施例1において、緯糸に仮撚方向と同じ方向に250T/m(追撚係数は2291となる)追撚した順追撚糸を用いる以外は全く同様にして経127本/2.54cm、緯111本/2.54cmの布帛を得た。この順追撚糸の3.5×10-3cN/dtex荷重下の伸縮伸長率は100%であった。得られた布帛の結果を表1に示す。
【実施例3】
実施例1において、緯糸の追撚数を仮撚方向と同方向に1800T/m(追撚係数は16497)とした以外は全て同じようにして行い実施例3の布帛を得た。この糸の3.5×10-3cN/dtex荷重下の伸縮伸長率は11%であった。得られた布帛の評価結果を表1に示す。
【0037】
【実施例4】
実施例1で用いた潜在捲縮発現性ポリエステルの仮撚加工糸の順追撚糸Z600t/m(撚係数5499)をスチームセットすることなしにノンサイジングで部分整経機を用い経糸を準備したが、ビリツキもなく工程性は良好であった。同じ糸を緯糸として用い、エアージェットルームの織機に掛け製織を行ったが製織性は極めて良好であった。ここで得られた2/2ツイル組織の経111本/2.54cm、緯111本/2.54cmの生機を、オープンソーパーを用いて95℃で精練、テンターを用い160℃で中間セットした後、液流染色機にて120℃の分散染料による染色を行い、160℃でファイナルセットし、経159本/2.54cm、緯165本/2.54cmの布帛を得た。得られた布帛の評価結果を表1に示す。
【0038】
【実施例5】
実施例2において、緯糸として綿糸36S/−を用いる以外は全く同様にて製織し、経110本/2.54cm、緯80本/2.54cmの生機を得た。この生機を毛焼き後、連続糊抜きした後、液流染色機を用いて100℃で精練・リラックス処理し、テンターで160℃の中間セットを行った後、液流染色機で120℃の分散染料染色を行った。次いでシルケット加工を行い、Pad−スチーム還元の綿の連続染色をした後、柔軟剤を付与し、サンフォライズ加工を実施して経120本/2.54cm、緯114本/2.54cmの布帛を得た。評価結果を表1に示す。
【0039】
【実施例6】
実施例1で用いた84dtex/36fの潜在捲縮発現性ポリエステルの仮撚加工糸と56dtex/30fの銅アンモニアレーヨン糸をインタレーサーの付いたパーンワインダーNO.303(村田機械製)を用いて混繊引き揃えし、インタレーサー圧0.3MPaにて110個/mの交絡を付与した。村田機械製のダブルツイスターDT−310を用いて仮撚方向と同方向に1000T/m、追撚し(追撚係数=11832)た。この糸の3.5×10-3cN/dtex荷重下の伸縮伸長率は14%であった。これをセットなしで緯糸としてS/Z交互に打ち込んで、経134本/2.54cm、緯87本/2.54cm密度の2/2ツイル織物の生機を得た。本生機を、オープンソーパーを用いて95℃で精練、リラックスし、テンターを用い160℃で中間セットした後、分散染料/直接染料、1浴染色を、液流染色機を用いて実施する以外は同様にして染色を行い、160℃でファイナルセットし、経233本/2.54cm、緯95本/2.54cmの布帛を得た。得られた布帛は、しなやかな撚糸タッチの風合いを有し、且つ表1に示すように、表面平滑性に極めて優れ、緯方向に高ストレッチ性を有するものであった。
【0040】
【比較例3】
実施例1において、実施例1で用いた製造例1の84dtex/36fのPTT系潜在捲縮発現性ポリエステルの替わりに製造例2の84dtex/36fのポリエチレンテレフタレート系潜在捲縮発現性ポリエステルに置き換える以外は全く同様にして行い、布帛を得た。この時に緯糸に用いた糸の3.5×10-3cN/dtex荷重下の伸縮伸長率は9%であった。評価結果を表1に示す。
【比較例4】
実施例1において、実施例1で用いた製造例1の84dtex/36f潜在捲縮発現性ポリエステルの替わりに、実施例1のPTT56dtex/24fと全く同様の方法で得られたPTT単独の84dtex/36fに置き換える以外は全く同様にして行い、布帛を得た。この時に緯糸に用いた糸の3.5×10-3cN/dtex荷重下の伸縮伸長率は7%であった。評価結果を表1に示す。
【0041】
【実施例7】
実施例1において織り組織を2/2ツイルから経120本/2.54cm、緯96本/2.54cmの平組織に変える以外は実施例1と全く同様に行い経160本/2.54cm、緯105本/2.54cmの織物を得た。評価結果を表1に示す。
【実施例8】
実施例1で用いた製造例1の84dtex/36f潜在捲縮発現性ポリエステルの仮撚加工糸の順追撚糸600t/m(追撚係数=5499)を用い、32ゲージの丸編み機にて45コース、44ウェルの密度で、スムース編地を作製した。このスムース編地を精練後、サーキュラー染色機を用い120℃で20分間染色を行い、次いで150℃で乾燥した。それを解反して有り幅で170℃×30秒のファイナルセットを行い、49コース、54ウェルの布帛を得た。評価結果を表1に示す。
【0042】
【実施例9】
製造例3で得られたPTT複合未延伸糸を村田機械製作所(株)製の33H仮撚機を用い、糸速度300m/分、仮撚数3230T/m(仮撚係数は31161となる)、延伸比1.1、第1フィード率−1%、第1ヒーター温度165℃、第2フィード率−3%の条件で仮撚を行い、更に村田機械製のダブルツイスターDT−310を用いて仮撚方向と同方向に150T/m追撚(追撚係数は、1375となる)した。この糸の3.5×10-3cN/dtex荷重下の伸縮伸長率は90%であり、ビリツキはほとんど見られず、セットなしでも緯糸として充分に使用可能なものであった。これを緯糸として用い、ウオータージェットルームZW−303(津田駒工業(株)製)にて、500rpmの回転速度で実施例1と同一規格の経糸にS/Z交互に打ち込んで、経151本/2.54cm、緯111本/2.54cm密度の2/2ツイル織物の生機を得た結果を表1に示す。得られた生機品位は緯斑もなく、良好(合格品)であった。
【0043】
【比較例5】
実施例9で用いた仮撚加工糸を、無撚のまま緯糸として用い、ウオータージェットルームZW−303(津田駒工業(株)製)にて、500rpmの回転速度で実施例1と同一規格の経糸にS/Z交互に打ち込んで、経151本/2.54cm、緯111本/2.54cm密度の2/2ツイル織物の生機を得た結果を表1に示す。得られた生機品位は緯ヒケが非常に多く、不合格品であった。
【0044】
【表1】
Figure 2004162241
【0045】
【発明の効果】
本発明により、仮撚の撚方向と同方向に追撚された順追撚糸であって、この仮撚加工糸が二種以上のポリエステル成分からなり、その一成分がPTTである潜在捲縮発現性ポリエステル繊維であることを特徴とするストレッチ糸及び該ストレッチ糸で構成された織編物を適用することができ、該ストレッチ糸を用いることを特徴とした織編物は、高ストレッチで且つ極めて平滑な表面を有し、しなやかな撚糸タッチ感の風合いが得られ、婦人アウター、カジュアル、スポーツ、ユニホーム等の衣料に好適なものである。

Claims (5)

  1. 仮撚の撚方向と同方向に追撚された仮撚加工糸順追撚糸であって、この仮撚加工糸順追撚糸が二種以上のポリエステル成分からなり、その少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル繊維であることを特徴とするストレッチ糸。
  2. 3.5×10-3cN/dtex荷重下の伸縮伸長率が10〜120%であることを特徴とする請求項1に記載のストレッチ糸。
  3. 請求項1又は2に記載のストレッチ糸が、経糸及び又は緯糸に用いられてなることを特徴とするストレッチ織編物。
  4. 仮撚加工糸の顕在捲縮伸長率が70%以上であることを特徴とする請求項3に記載のストレッチ織編物。
  5. 潜在捲縮発現性ポリエステル繊維が下記(a)〜(c)を満足することを特徴とする請求項3又は4に記載のストレッチ織編物。
    (a)初期引張抵抗度が10〜30cN/dtex
    (b)顕在捲縮の伸縮伸長率が10〜100%、且つ顕在捲縮の伸縮弾性率が80〜100%
    (c)100℃における熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtex
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