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JP3963356B2 - 細幅織物 - Google Patents

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JP3963356B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細幅織物に関するものであり、より詳細には、高耐久性伸縮機能に加え、ソフトな風合いと軽量感を備えた伸縮性細幅織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
スポーツ衣料のサイドライン及びサスペンダー、インナー衣料のストラップ及びインサイドベルト、更には、医療系のサポーター、コルセット等の用途に、伸縮性のある細幅織物の利用が限りなく広がりつつある。
これまでに、伸縮性のある細幅織物として、経糸方向にゴムを織込んだ細幅織物やポリウレタン弾性繊維を織込んだ織物等が開発され、上市されている。しかしながら、これまでのゴムやポリウレタン繊維等を100%又は一部に配列したこれらの細幅織物は、風合いが硬く、ズシリとした重量感がある上、洗濯、汗の付着、塩素ガスの作用等によってゴムやポリウレタン繊維が劣化し、その結果、ストレッチバック機能やサポート力が著しく損なわれるという問題を抱えている。
【0003】
本出願人は、先に、特開2002−52273号公報において、ポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメント糸を用いた細幅織物が、クッション材用として優れたものであることを提案したが、近年、単にストレッチ機能だけではなく、よりソフトな着用感や軽量感、更には、高耐久ストレッチ機能を併せ持った細幅織物の開発が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術の有する上記の問題点を解決し、ソフトな風合いと軽量感を有すると共に、高耐久性伸縮機能及び優れた耐スナッギング性を有する細幅織物を提供することにある。
【0005】
【発明を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、上記の特性は、伸縮性繊維素材の形態と物性が大きく関与していることを究明した。この点について、さらに検討した結果、特定の繊維素材を特定の糸形態で経糸に用いることによって、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、経糸が仮撚加工糸で構成された、幅が3〜330mmの範囲の細幅織物であって、この仮撚加工糸は、二種以上のポリエステル成分からなり、その内の、少なくとも一つの成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維により構成され、経糸方向に15%伸長した時の弾性回復率が70%以上であり、かつ経方向のストレッチ率が15%以上であることを特徴とする細幅織物である。
【0006】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の細幅織物は、幅が3〜330mmの範囲にあり、厚みは任意のものである。細幅織物の代表的な例は、テープ状又はリボン状の細長い織物である。細幅織物は、一般に、スポーツ衣料のサイドライン、サスペンダー、インナー衣料のストラップ、インサイドベルト、更には、医療系のサポーター、コルセット等の用途に好適に使用される。
【0007】
本発明は、経糸に、潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維からなる仮撚加工糸を用いることが重要である。本発明で使用される潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維は、二種以上のポリエステル成分からなり、その内の、少なくとも一つの成分がポリトリメチレンテレフタレートで構成(具体的には、サイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合されたものが多い)され、熱処理によって捲縮を発現するものである。各成分の成分比、各成分の接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)等は限定されない。二種のポリエステル成分で構成されている場合の、二成分の複合比は、一般的に、質量%で70/30〜30/70が好ましい。
【0008】
潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維の総繊度は、通常、20〜340dtexであり、好ましくは44〜167dtexの範囲である。単糸繊度は、好ましくは0.5〜10dtex、より好ましくは1.5〜6dtexである。単糸繊度が0.5dtex未満の場合は、織物にした場合のストレッチ回復性が低下することがあり、10dtexを越えると風合いが硬くなる場合がある。
潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維の原糸の物性は、強度が1.8cN/dtex以上であることが好ましく、2.0〜4.0cN/dtexの範囲がより好ましい。強度が1.8cN/dtex未満の場合は、織物の引裂き強度が低くなる場合がある。伸度は25%以上であることが好ましく、30〜50%の範囲がより好ましい。
【0009】
本発明に用いられる潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維の初期引張抵抗度は10〜30cN/dtexであることが好ましく、より好ましくは20〜30cN/dtex、最も好ましくは20〜27cN/dtexである。初期引張抵抗度が10cN/dtex未満のものは製造が困難であり、30cN/dtexを越えると風合いが硬くなる傾向がある。
潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維の顕在捲縮の伸縮伸長率は10〜100%であることが好ましく、より好ましくは10〜80%、最も好ましくは10〜60%である。顕在捲縮の伸縮伸長率が10%未満になると、ストレッチ性に優れた織物が得られ難くなり、100%を越える繊維の製造は困難である。
【0010】
潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維の顕在捲縮の伸縮弾性率は80〜100%であることが好ましく、より好ましくは85〜100%、最も好ましくは85〜97%である。顕在捲縮の伸縮弾性率が80%未満では、ストレッチ回復性に優れた織物が得られにくくなる。
さらに、潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維の、100℃における熱収縮応力は0.1〜0.5cN/dtexであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.4cN/dtex、最も好ましくは0.1〜0.3cN/dtexである。100℃における熱収縮応力は、織物の精練、染色工程において捲縮を発現させるための要件である。すなわち、織物の拘束力に打ち勝って捲縮が発現するためには、100℃における熱収縮応力が0.1cN/dtex以上であることが好ましく、0.1cN/dtex未満ではストレッチ性及びストレッチ回復性に優れた織物が得られ難く、0.5cN/dtexを越える繊維の製造は困難である。
【0011】
潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維の熱水処理後の伸縮伸長率は100〜250%であることが好ましく、より好ましくは150〜250%、最も好ましくは180〜250%である。熱水処理後の伸縮伸長率が250%を越える繊維の製造は困難である。熱水処理後の伸縮弾性率は90〜100%であることが好ましく、より好ましくは95〜100%である。熱水処理後の伸長性及び伸長回復性は、最終的に染色した後のストレッチ性とストレッチ回復感に直接、影響を与える特性であり、これらの値が大きい程、ストレッチ性とストレッチ回復感に優れた織物が得られる。
【0012】
このような特性を有する潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維としては、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTという)が互いにサイドバイサイド型に複合された単糸から構成された複合繊維が好ましい。
2種類のPTTの固有粘度差は0.05〜0.40(dl/g)であることが好ましく、より好ましくは0.10〜0.35(dl/g)、最も好ましくは0.15〜0.35(dl/g)である。例えば、高粘度側の固有粘度を0.70〜1.30(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.50〜1.10(dl/g)から選択するのが好ましい。低粘度側の固有粘度は0.80(dl/g)以上が好ましく、より好ましくは0.85〜1.00(dl/g)、最も好ましくは0.90〜1.00(dl/g)である。
【0013】
この複合繊維の平均固有粘度は0.70〜1.20(dl/g)が好ましく、0.80〜1.20(dl/g)がより好ましく、0.85〜1.15(dl/g)が最も好ましく、更には0.90〜1.10(dl/g)が好ましい。
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーの値ではなく、紡糸された糸の粘度を指す。この理由は、PTT特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート(以下、PET、という)等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである。
【0014】
PTTは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上含むものをいう。したがって、第三成分として、他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、50モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、最も好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたPTTを包含する。
【0015】
PTTは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、PET、ポリブチレンテレフタレート等のPTT以外のポリエステル、又はナイロンと、PTTを別個に合成した後、ブレンドしたりしてもよい。ブレンドする際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は、質量%で50%以上である。
【0016】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。
【0017】
さらに二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
本発明に用いられる潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維の製造法については、例えば、上記の各種特開に開示されており、3000m/分以下の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法が好ましいが、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)を採用してもよい。
【0018】
繊維の形態は、長繊維のマルチフィラメントであれば、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面形状においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0019】
発明の目的を損なわない範囲内で、経糸に、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下の範囲内で、天然繊維、合成繊維等他の繊維、例えば、綿、羊毛、麻、絹等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン、精製セルロース繊維、アセテート繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、PTT等のポリエステル系繊維、ナイロン、アクリル等の各種人造繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)を長短混紡(コアヤーン、サイロフィル、ホロースピンドル等)、カバリング(シングル、ダブル)、例えば、沸水収縮率3〜10%程度の低収縮糸又は、例えば、沸水収縮率15〜30%程度の高収縮糸との混繊や交撚等により混用してもよい。
【0020】
本発明は、上記の潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維を仮撚加工糸の形態で、少なくとも経糸に用いることが重要である。
伸長方向となる経糸にこの仮撚加工糸を配置することにより、優れたストレッチ性とストレッチ回復性に加え、高いスナッギング耐久性をも付与することが可能となる。
【0021】
本発明の仮撚加工糸の物性は、強度が1.5cN/dtex以上であることが好ましく、1.8〜4.0cN/dtexの範囲であることがより好ましい。強度が1.5cN/dtex未満の場合は、織物の引裂強力が低くなることがある。弾性率は22cN/dtex未満であることが好ましく、12〜20cN/dtexであることがより好ましい。22cN/dtexを越えると、織物のソフト性が低下する場合がある。
【0022】
仮撚方法としては、ピンタイプ、フリクションタイプ、ニップベルトタイプ、エアー加撚タイプ等、いかなる方法も用いられるが、好ましくはピンタイプである。ピンタイプによると、均整なクリンプ状態が得られ易いためである。仮撚加工糸は、いわゆる2ヒーターの仮撚加工糸(セットタイプ)よりも、いわゆる1ヒーターの仮撚加工糸(ノンセットタイプ)を用いる方が、より高いストレッチ率の織物が得られるので好ましい。
【0023】
ストレッチ性に優れた仮撚加工糸を得るための、仮撚加工時の熱固定温度は150℃〜190℃の範囲が好ましく、150℃未満では、織物に加工した場合の回復性が低下し、190℃を越えると糸切れが発生しやすくなる傾向にある。
仮撚数は、次式で計算される撚係数の値が21000〜33000であることが好ましく、より好ましくは25000〜32000の範囲である。仮撚数の撚係数の値が21000未満では、得られる加工糸の捲縮性が不足して、ストレッチ性が低下する場合があり、33000を越えると仮撚工程での糸切れが増える傾向にある。
【0024】
撚係数=撚数(T/m)×√糸条の太さ(dtex)
本発明の潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維の仮撚加工糸は、加工糸を構成する各単糸が長手方向に異方向の微細捲縮が混在し、かつ、前記微細捲縮が各単糸間で相互に絡合した極めてコンパクトな形態をとる。そのために、織物に加工した場合、これまでの、捲縮が粗く、集束性に乏しい仮撚加工糸とは異なり、ストレッチ性能(ストレッチ性及びストレッチ回復性)、スナッギング耐久性及び表面平滑性において、比べものにならない程、著しく優れた効果を得ることができる。更に、この仮撚加工糸は、織物に加工した場合、ソフトな風合いや軽量感を発現させる効果がある。
【0025】
この仮撚加工糸の顕在捲縮伸長率は、好ましくは70〜300%、より好ましくは100〜300%、最も好ましくは120〜300%である。顕在捲縮伸長率が70%未満の場合、伸長性が不足することがある。顕在捲縮伸長率が70%以上の場合、熱処理による捲縮発現がより容易であるばかりでなく、平滑な細幅織物を容易に得ることができ、ひいては優れた伸長性の織物を得ることができる。顕在捲縮伸長率が300%を越える仮撚加工糸の製造は困難である。
【0026】
仮撚加工糸の顕在捲縮弾性率は、好ましくは80〜100%、より好ましくは82〜100%、最も好ましくは85〜100%である。顕在捲縮弾性率が80%未満では、伸長回復性に優れた細幅織物が得られないことがある。
この仮撚加工糸の捲縮伸長率は100〜400%であることが好ましく、より好ましくは120〜400%である。捲縮伸長率が400%を越える仮撚加工糸の製造は困難である。
【0027】
仮撚加工糸の捲縮弾性率は80〜100%であることが好ましく、より好ましくは90〜100%である。捲縮伸長率及び捲縮弾性率は、最終的に仕上がった細幅織物の伸長性とストレッチバック感に直接的に影響を与える特性であり、これらの値が大きいほど伸長性とストレッチバック感に優れた細幅織物が得られる。
この仮撚加工糸を少なくとも経糸に用いた細幅織物は、経糸方向に15%伸長した時の弾性回復率が70%以上であり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。経糸方向に15%伸長した時の弾性回復率が70%未満の場合、細幅織物の伸長回復性(戻り)が低くなって、身体への密着感(フィット感)が低下する。
【0028】
更に、15%伸長下で15分間放置した後の経糸方向の弾性回復率は70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上である。15%伸長下で15分間放置した後の経糸方向の弾性回復率が70%未満の場合、細幅織物が長時間(1回の使用であっても、繰り返し使用の場合の累積であってもよい)伸ばされた状態で使用された場合に、伸長回復性が低下しやすく、身体への密着感が低下したり、所謂、だぶついた状態となってシルエットが損なわれることがある。また、スポーツ分野や医療分野などのサポート用途ではサポート力が低下することがある。
【0029】
本発明の織物の経糸方向のストレッチ率は15%以上であり、好ましくは20%以上であり、上限は50%以下が好ましい。最も好ましいストレッチ率は20%〜40%である。ストレッチ率が15%未満である場合には、本発明の織物の有力な用途の一つであるスポーツ衣料分野において、局部的、かつ、瞬間的な運動変位に対してスムーズに追従することが困難となる。ストレッチ率が50%を越えると回復性が悪くなることがある。
【0030】
緯糸にも、このような仮撚加工糸を当然に用いることができるが、この仮撚加工糸以外の糸(モノフィラメント糸又はマルチフィラメント糸)を、必要に応じて用いることができる。例えば、一成分系のポリトリメチレンテレフタレート繊維や上記の潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維が好ましいが、その他に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維等を用いることができる。
【0031】
この場合の繊維や糸の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸等の紡績糸、モノフィラメント糸、単糸デニールが0.1〜5dtex程度のマルチフィラメント原糸(極細糸を含む)、甘撚糸〜強撚糸(例えば単糸撚糸、双糸撚糸、3子撚糸、諸撚糸等)、仮撚加工糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、流体噴射加工糸、モールヤーン、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等を用いることもできる。
【0032】
本発明の細幅織物の経糸は、仮撚加工糸を単糸撚糸又は合撚糸の形態で用いることができる。単糸に追撚を施す場合、順追撚(仮撚加工糸の加撚方向と同一方向に追撚)又は逆追撚(仮撚加工糸の加撚方向と反対方向に追撚)のいずれでもよい。順追撚の場合は、撚係数が900〜5000が好ましく、より好ましくは900〜4000、最も好ましくは900〜3000である。撚係数が900未満の場合は、経糸が毛羽立って製織が困難になることがあり、5000を越えるとストレッチ性が低下すると共に風合いが硬くなることがある。逆追撚の場合は、撚係数が900〜8000が好ましく、より好ましくは900〜7000、最も好ましくは900〜5500、さらに好ましくは900〜4500である。撚係数が900未満の場合は、経糸が毛羽立って製織が困難になることがあり、織物の表面がざらつくことあり、8000を越えるとストレッチ性が低下すると共に風合いが硬くなることがある。
【0033】
合撚糸の場合は、糸の残留トルク低減の点から、Sトルク加工糸(仮撚加工の加撚方向がS)とZトルク加工糸(仮撚加工の加撚方向がZ)とを合糸し、撚係数900〜6000で追撚するのが好ましく、より好ましくは900〜5000、最も好ましくは900〜4000である。合糸する仮撚加工糸のトルクの方向が同一の場合は合撚糸の残留トルクが大きくなり、工程性能が低下したり、ビリが発生して織物の品位が損なわれる場合がある。撚係数が900未満の場合は経糸が毛羽立って製織が困難になることがあり、6000を越えるとストレッチ性が低下すると共に風合いが硬くなることがある。
【0034】
かせ状で先染めする場合、撚係数が6000を越えると、かせ状にした時のかせ糸のビリつきが強くなって糸の取り扱いが困難になる上、糸染め工程で染斑が発生する場合もある。
撚係数における糸条の太さは、合撚糸等の複合糸の場合は、複合糸の太さをいい、その際の撚数は、下撚の有無に関わらず上撚をいう。
撚係数=撚数(T/m)×√糸条の太さ(dtex)
甘撚糸を用いる場合の撚糸法としては、リング撚糸機、イタリー撚糸機、ダブルツイスター等による方法が挙げられるが、コスト減少や品質向上(均一性)の面からダブルツイスターによる方法が好ましい。
【0035】
かせ先染糸の場合は、合撚糸をかせ状にした時のビリつき、かせの捩れがかせ状糸染め時に障害となるため、トルクバランスがとり易いS/Z合撚糸が好ましい。
追撚加工糸は必ずしも撚止めセットを必要としないが、追撚加工糸の取り扱い性をより向上させるために、真空セッター等を用いてセット温度50〜90℃で撚止めセットを行うことが有効である。セット温度は、より好ましくは60〜80℃、最も好ましくは60〜70℃である。セット温度が50℃未満では、糸のビリツキにより製織時のトラブルが発生しやすく、90℃を越えると織物のストレッチ性が低下する傾向にある。撚り止めセット時間は20〜60分が好ましい。
【0036】
経糸の撚配列については、単糸追撚糸使い、合撚糸使いの場合ともに、 S撚糸又はZ撚糸を夫々単独で配列してもよいが、S撚糸とZ撚糸を交互に配列することが好ましく、1本交互の配列がより好ましい。何れか一方向の片撚糸使いの場合、織物設計規格によっては生地がカーリングする場合がある。交互配列の場合には、解撚トルクがバランスし易いためにカーリングが起こり難くなるためである。その場合、1本交互配列では撚線反射の癖が出難いために、特に織物表面の平滑性が優れたものになる。
【0037】
本発明の細幅織物の織組織には、平組織、綾組織、朱子組織、更にこれらから誘導された変化組織等を用いることができるが、織物表面の平坦性、ストレッチ性及びその回復性能、耐磨耗性(スナッギング・ピリング)、柔軟性、審美性(見た目の美しさ)等の総合的な観点から、2/1ツイル、2/2ツイル、3/1ツイル、3/2ツイル等の綾組織や5枚朱子、8枚朱子等に代表されるコンパクトな組織や二重組織等は特に好ましく用いられる。但し、目的に応じて適宜選択すればよく、前記の組織に限定されない。
【0038】
織物の生機密度は、経糸繊度が20〜340dtexの場合、経糸密度は概ね50〜1200本/2.54cm、緯糸繊度が20〜340dtexの場合、緯糸密度は概ね30〜200本/2.54cmの範囲内で、織物組織や経緯糸繊度の組み合わせ、織物の用途等に応じて適宜設定するのが好ましいが、必ずしもこの範囲に限定されるものではない。
織物製織用の織機は、ニードル織機やシャットル織機等が用いられる。経糸の毛羽立ち防止や高速製織の点からニードル織機が好ましい。但し、ニードル織機による製織の場合には、その特異な緯入れ機構により、一つの開口内に緯糸が必ず2本打込まれる、所謂、引き揃え緯入れとなることを考慮しておく必要がある。したがって、前記の緯糸密度の例は、引き揃え緯入れされた糸を1本として見た場合の数値で示したものである。
【0039】
本発明の細幅織物は、織成後に染色仕上げ加工を施した、後染織物であっても、予め染色した先染加工糸を用いて織物を織成した、先染織物であってもよい。先染加工糸を用いた先染織物の場合は、後染の場合に較べ、織成前の加工糸の伸縮性を大きくし易い。そのために、後染織物よりも高いストレッチが得られやすく、多色化も可能になるために、色による柄出しができる利点があり、商品の利用範囲をより広げることが可能である。
【0040】
製造コストや商品特性・適用用途分野を勘案して選択するのが望ましい。
本発明の細幅織物の染色仕上げ工程については、従来の細幅織物と同様の工程を用いることができる。先染め加工法、後染め加工法ともに、本発明のの特徴である優れた伸長性と伸長回復性が損なわれないように織物の経糸方向に過剰な張力がかからないようにすることが望ましい。後染め加工法の場合、生機セットを付与する工程を採用することもできる。
【0041】
加工工程における熱セットの温度は、加工反の風合い及びセット効果(残留収縮)の点から、好ましくは130℃〜180℃、より好ましくは140℃〜170℃、最も好ましくは150℃〜160℃である。
織物の耐磨耗性を更に向上させるために、仕上げ剤として耐磨耗性に優れ、かつ、樹脂皮膜の柔軟な水溶性ポリウレタン樹脂を含浸させてもよい。更に、織物の表面平滑性及び繊維同士の滑り性を向上させて、応力分散性、弾性回復性及び耐久性を向上させるために、前記樹脂液の中にシリコーン系平滑剤をブレンドしてもよい。更に、必要に応じて撥水加工等を付与してもよい。
【0042】
【発明の実施形態】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
本発明に用いる評価法は以下のとおりである。
(1)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=Lim(ηr−1)/C
C→0
式中のηrは、純度98%以上の0−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
【0043】
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成する固有粘度とした。
【0044】
(2)初期引張抵抗度
JIS L 1013 化学繊維フィラメント糸試験方法の初期引張抵抗度の試験方法に準じ、試料の単位繊度当たり0.882mN/dtexの初荷重を掛けて引張試験を行い、得られた荷重−伸長曲線から初期引張抵抗度(cN/dtex)を算出する。任意に試料10点を採取して測定し、その平均値を求める。
【0045】
(3)伸縮伸長率及び伸縮弾性率
JIS L 1090 合成繊維フィラメントかさ高加工糸試験方法の伸縮性試験方法A法に準じて測定を行い、伸縮伸長率(%)及び伸縮弾性率(%)を算出する。任意に試料10点を採取して測定し、その平均値を求める。
顕在捲縮の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、巻取りパッケージから解舒した試料を、温度20±2℃、相対湿度65±2%の環境下で24時間放置後に測定を行う。熱水処理後の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥乾燥した試料を用いる。
【0046】
(4)熱収縮応力
熱応力測定装置(カネボウエンジニアリング(株)製、商品名KE−2)を用い、試料を20cmの長さに切り取り、両端を結んで輪を作り測定装置に装填し、初荷重0.044cN/dtex、昇温速度100℃/分の条件で収縮応力を測定し、得られた温度に対する熱収縮応力の変化曲線から100℃における熱収縮応力を読み取る。
【0047】
(5)仮撚加工糸の顕在捲縮伸長率及び顕在捲縮弾性率
(株)島津製作所製の引張試験機を用いて、つかみ間隔10cmにて仮撚加工糸を初荷重0.9×10-3CN/dtexで取り付けたのち、引張速度10cm/minで伸長し、0.0882CN/dtexの応力に達したときの伸び(%)を顕在捲縮伸長率とする。その後、再び同じ速度でつかみ間隔10cmまで収縮させたのち、再度応力−歪み曲線を描き、初荷重の応力が発現するまでの伸長長さを残留長さA(cm)とする。顕在捲縮弾性率は以下の式によって求める。
顕在捲縮弾性率=〔(10−A)/10〕×100(%)
【0048】
(6)仮撚加工糸の捲縮伸長率及び捲縮弾性率
巻き取りパッケージから解舒した仮撚加工糸を無荷重下で98℃の熱水中に20分浸漬した後、無荷重下で24時間乾燥した試料を用いた以外は、顕在捲縮伸度及び顕在捲縮弾性率の測定と同様の方法にて測定し、それぞれを捲縮伸長率、捲縮弾性率とする。
【0049】
(7)細幅織物のストレッチ率
細幅織物の経糸方向のストレッチ率は仕上げ加工反を用いて下記の方法で測定する。
(株)島津製作所製の引張試験機を用いて、つかみ幅2.5cm(織物幅が2.5cm未満の場合には、つかみ幅は有り幅)、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/minで試料を経糸方向(細幅織物の長手方向)に伸長させた時の、2.94N/cmの応力下での長さB(cm)を測定する。
ストレッチ率は以下の式にしたがって求める。
ストレッチ率=[(B−10)/10]×100%
【0050】
(8)細幅織物を15%伸長した時の弾性回復率
(株)島津製作所製の引張試験機を用いて、つかみ幅2.5cm(織物幅が2.5cm未満の場合には、つかみ幅は有り幅)、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/minで、伸長率15%まで伸長した後、同じ速度で収縮させ、応力−歪曲線を描く。収縮中、応力が0になった時の伸長長さを残留長さC(cm)とする。弾性回復率は以下の式にしたがって求める。
15%伸長時の弾性回復率=[(10−C)/10]×100%
【0051】
(9)細幅織物を経糸方向に15%伸長下で15分間放置した後の弾性回復率
(株)島津製作所製の引張試験機を用いて、つかみ幅2.5cm(織物幅が2.5cm未満の場合には、つかみ幅は有り幅)、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/minで、伸長率15%まで伸長する。この状態で15分間放置した後、同じ速度で収縮させ、応力−歪曲線を描く。収縮中、応力が0になった時の伸長長さを残留長さD(cm)とする。弾性回復率は以下の式にしたがって求める。
15%伸長下で15分間放置後の弾性回復率=[(10−D)/10]×100%
【0052】
【参考例1】
潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の製造
固有粘度の異なるサイドバイサイド型複合繊維のマルチフィラメントを以下の製造例1〜4により製造した。
【0053】
(製造例1)
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを、サイドバイサイド型複合紡糸用紡口を用いて、質量比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得た。次いで、ホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が56dtexとなるように設定して延撚し、56dtex/12fのサイドバイサイド型に貼り合わされた潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維からなるマルチフィラメントを得た。
【0054】
得られたサイドバイサイド型複合繊維マルチフィラメントの固有粘度は、高粘度側が0.90、低粘度側が0.70であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、及び100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0055】
(製造例2)
上記製造例1と同様の方法で、84dtex/24fのサイドバイサイド型複合繊維マルチフィラメントを得た。
得られた複合繊維マルチフィラメントの固有粘度は、高粘度側が0.88、低粘度側が0.70であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、及び100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0056】
(製造例3)
上記製造例1とは固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを用い、製造例1と同様の方法で紡糸して、56dtex/24fのサイドバイサイド型複合繊維マルチフィラメントを得た。
得られた複合繊維マルチフィラメントの固有粘度は、高粘度側が0.86、低粘度側が0.69であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、及び100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0057】
(製造例4)
固有粘度の異なる二種類のポリエチレンテレフタレートを用いて、56dtex/12fのサイドバイサイド型複合繊維マルチフィラメントを得た。得られた複合繊維マルチフィラメントの固有粘度は、高粘度側が0.66、低粘度側が0.50であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、及び100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0058】
(製造例5)
固有粘度が0.92の一成分のPTTマルチフィラメント84dtex/24fを製造した。
初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、及び100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0059】
【参考例2】
仮撚加工糸の製造
上記の製造例で得られた複合繊維マルチフィラメントを用いて、(株)石川製作所製IVF−338の第1ヒーター温度170℃(比較例1のみ220℃)、撚方向はZ撚、仮撚数は56dtexが3900T/m、84dtexが3200T/mの条件で仮撚加工を行った。
【0060】
製造例1の複合繊維マルチフィラメントを実施例1に、製造例2を実施例2に、製造例3を実施例3に、製造例4を比較例1に、製造例5を比較例2に、それぞれ用いた。
実施例1〜3の仮撚加工糸は、顕在捲縮伸長率180〜200%、顕在捲縮弾性率85〜90%、捲縮伸長率200〜250%、捲縮弾性率85〜93%であった。比較例1の仮撚加工糸は、顕在捲縮伸長率10%、顕在捲縮弾性率88%、捲縮伸長率130%、捲縮弾性率64%、比較例2の仮撚加工糸は、顕在捲縮伸長率65%、顕在捲縮弾性率55%、捲縮伸長率180%、捲縮弾性率80%であった。
【0061】
【実施例1】
製造例1で製造した仮撚加工糸にダブルツイスター(村田機械(株)製、DT−#308)を用いてS撚方向に180t/mの追撚を加えた後、真空セッター(日空工業(株)製)で60℃×40分の撚止めセットを施した加工糸を経糸として用い、緯糸として、レギュラーPETマルチフィラメント84dtex/36fの仮撚加工糸の無撚糸を用いて、ニードル織機により生機密度が経830本/2.54cm、緯55本/2.54cm、幅が17mmの両面5枚朱子組織(飛数:3飛)の細幅織物の生機を製織した。
【0062】
この生機を130℃で乾熱処理し、かせ状で100℃リラックス処理し、120℃で分散染料による染色を行った。次いで、低張力で130℃のシリンダー仕上げセットを行って、密度が経880本/2.54cm、緯75本/2.54cm、幅が16mmの細幅織物を得た。
得られた細幅織物は、経糸方向に36%のストレッチ率を有し、表2に示すように、15%伸長時の弾性回復率(瞬間)及び15%伸長下で15分間放置後の弾性回復率がともに極めて優れた伸長回復性を有するものであった。風合いもソフトな上、軽量感も感じられた。
【0063】
【実施例2】
製造例2で製造した仮撚加工糸にダブルツイスター((株)村田機械製、DT−#308)を用いてS撚方向に150t/mの追撚を加えた後、真空セッター(日空工業(株)製)で60℃×40分の撚止めセットを施した加工糸を経糸として用いた。それ以外は、実施例1と同様にして生機密度が経680本/2.54cm、緯56本/2.54cm、幅が17mmの両面5枚朱子組織(飛数:3飛)の細幅織物の生機を得た。次いで、実施例1と同様の仕上げ加工を行って、密度が経722本/2.54cm、緯79本/2.54cm、幅が16mmの細幅織物を得た。
【0064】
得られた細幅織物は、経糸方向に41%のストレッチ率を有し、表2に示すように、15%伸長時の弾性回復率(瞬間)及び15%伸長下で15分間放置後の弾性回復率がともに極めて優れた伸長回復性を有するものであった。風合いもソフトな上、軽量感も感じられた。
【0065】
【実施例3】
製造例3で製造した仮撚加工糸を経糸として用いた以外は実施例1と全く同様にして生機密度が経826本/2.54cm、緯55本/2.54cm、幅が17mmの両面5枚朱子組織(飛数:3飛)の細幅織物の生機を得た。次いで、実施例1と同様の仕上げ加工を行って、密度が経874本/2.54cm、緯74本/2.54cm、幅が16mmの細幅織物を得た。
【0066】
得られた細幅織物は、経糸方向に35%のストレッチ率を有し、表2に示すように、15%伸長時の弾性回復率(瞬間)及び15%伸長下で15分間放置後の弾性回復率がともに極めて優れた伸長回復性を有するものであった。風合いもソフトな上、軽量感も感じられた。
【0067】
【比較例1】
製造例4で製造した仮撚加工糸を経糸として用いた以外は実施例1と全く同様にして生機密度が経828本/2.54cm、緯55本/2.54cm、幅が17mmの両面5枚朱子組織(飛数:3飛)の細幅織物の生機を得た。次いで、染色温度を130℃とした以外は実施例1と同様にして仕上げ加工を行って、密度が経876本/2.54cm、緯61本/2.54cm、幅が16mmの細幅織物を得た。
【0068】
得られた細幅織物は、経糸方向のストレッチ率が10%と低い上、表2に示すように、15%伸長時の弾性回復率(瞬間)及び15%伸長下で15分間放置後の弾性回復率がともに極めて低いものであり、スポーツ衣料等の用途には適合しないものであった。
【0069】
【比較例2】
製造例5で得た仮撚加工糸を経糸として用いた以外は実施例2と全く同様にして生機密度が経676本/2.54cm、緯56本/2.54cm、幅が17mmの両面5枚朱子組織(飛数:3飛)の細幅織物の生機を得た。次いで、実施例1と同様の仕上げ加工を行って、密度が経718本/2.54cm、緯65本/2.54cm、幅が16mmの細幅織物を得た。
【0070】
得られた細幅織物は、経糸方向のストレッチは16%であったものの、表2に示すように、15%伸長時の弾性回復率(瞬間)及び15%伸長下で15分間放置後の弾性回復率がともに低いものであり、スポーツ衣料等の用途には適さないものであった。
【0071】
【表1】
Figure 0003963356
【0072】
【表2】
Figure 0003963356
【0073】
【発明の効果】
本発明は、ストレッチ機能だけではなく、よりソフトな着用感及び軽量感、更には、高耐久ストレッチ機能及び優れた耐スナッギング性を併せ持つ細幅織物である。
この細幅織物は、スポーツ衣料のサイドラインやサスペンダー、口ゴム、インナー衣料のストラップ、インサイドベルト、パンツのウェスト部のベルト、ゴーグル用バンド、縫い目押さえテープ、更には医療系のサポーター、コルセット等に極めて有用である。

Claims (3)

  1. 経糸が仮撚加工糸で構成された、幅が3〜330mmの範囲の細幅織物であって、この仮撚加工糸は、二種以上のポリエステル成分からなり、その内の、少なくとも一つの成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系複合繊維により構成され、経糸方向に15%伸長した時の弾性回復率が70%以上であり、かつ経方向のストレッチ率が15%以上であることを特徴とする細幅織物。
  2. 細幅織物を経糸方向に15%伸長下で15分間放置した後の弾性回復率が70%以上であることを特徴とする請求項1記載の細幅織物。
  3. 仮撚加工糸の顕在捲縮伸長率が70%以上であることを特徴とする請求項1記載の細幅織物。
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