JP2004162197A - 繊維製品の斑染め染色方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】不均一にカチオン化改質した繊維製品を、カチオン化改質部分とカチオン化改質されていない部分を染色する染料と、カチオン化改質部分は染色するがカチオン化改質されていない部分は染色しない二種類のアニオン染料を使用し、二色にそれぞれ染色された部分と、なだらかな勾配を有して斑染めされた部分とを有するように染色する繊維製品の斑染め染色方法であって、二種類のアニオン染料としては、直接染料と酸性染料、直接染料とセルロース繊維と親和性の低い反応染料、酸性染料とセルロース繊維と親和性の高い反応染料の三種の組合せを用いることが出来る。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不均一にカチオン化改質された部分と未改質の部分を合せ持つ繊維製品を、特定のアニオン染料で染色し、二色相のなだらかな濃度勾配を有する繊維製品の斑染め染色方法であり、しかもアニオン染料の固着率を高めて環境負荷を軽減する染色方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維製品は、消費者ニーズやファッション性の観点から通常染料または顔料によって色彩が施され製品化されるのが一般である。その染色方法は浸染と捺染に大別されるが、単一素材を用いる編織物を浸染する場合には均一な単一色相に染色すること、また、異素材の経糸と緯糸からなる交織物を浸染する場合には、経糸と緯糸を異色相に染め分けることが商品価値を決定する重要な指標となっている。
【0003】
一方、近年消費者ニーズの多様化やファッション性の向上を目的に人為的に染色斑を発生させ、新しい感性に富んだ商品の開発も行われている。人為的に染色斑を作る方法として、蝋等の物理的防染剤や有機酸等の化学防染剤を用いる方法や、酸化剤や還元剤で染料分子を分解させる抜染剤を用いる方法が知られている。これらの方法を用いて染色斑のある高品質の製品を得る為には、使用する薬品の濃度や処理温度等の工程管理に細心の注意が必要であり、簡易な新しい方法が求められていた。
【0004】
そのような方法の一つとして、ポリハロゲノポリアジン化合物またはスルファトエチルスルフォン化合物を繊維製品の官能基の一部に共有結合させ、その後染色することにより、該化合物と繊維製品の官能基が共有結合した非染色部分と、該化合物と繊維製品の官能基が反応せずその後に染色される染色部分からなり、非染色部分が全くないか、または非染色部分の密度が低い部分が濃く染色され、非染色部分の密度が高い部分が薄く染色されることにより、色彩の濃淡がある斑染めができることが開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法では同一色相の濃淡染色には対応できても、異なる二色相の染色には対応できず、また、非染色部分が生じるので未固着染料が多くなり、結果として環境負荷が大きくなる欠点を生ぜしめる。
【0005】
また、別法の立毛製品の製造法として、セルロース系繊維構造物を、アルカリ共存下セルロース系繊維と共有結合により反応しうる第四級アンモニウム塩基含有化合物を含む処理液を通過せしめ、搾液後、急速に乾燥することにより処理液にマイグレーションを起こさせ、その後に起毛して染色する方法、及びセルロース系繊維構造物を起毛した後、同様の処理を行って、繊維製品の立毛の先端部と根本部において染色濃度が異なるセルロース系繊維立毛製品を製造する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0006】
更に、セルロース系繊維構造物を、アルカリ共存下セルロース系繊維と共有結合により反応しうる第四級アンモニウム塩基含有化合物を含む処理液を通過せしめ、搾液後、急速に乾燥し処理液にマイクレーションを起こさしめ、その後に染色して、均一に自然な感じの着古した洗いざらし感を持つセルロース系繊維製品を製造方法する方法が開示されている(特許文献3参照)。しかしながら、この方法においても同一色相での濃度差の少ない濃淡染色には対応できても、異なる二色相の染色には適用できない欠点がある。
【0007】
出願人は、同一のセルロース系素材でありながら改質することで染色性に差のあるナフトール可染改質再生セルロース繊維、カチオン化改質セルロース繊維及び通常のセルロース繊維の三種を得、これらの繊維を用いて特定のアニオン染料で三色相以上の多色表現が可能なことを発明し、特願2002−147495号として出願した。しかしながら、この方法では繊維製品を斑染め染色することは出来ない。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−81131号公報(第3頁3欄5〜13行)
【特許文献2】
特開平5−5279号公報(第2頁2欄17〜29行)
【特許文献3】
特開平5−5286号公報(第1頁、要約)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、異色相染色すると同時に染料の固着率も高めて環境負荷を軽減し、従来にない感性とファッション性に優れた繊維製品を得るため、なだらかな濃度勾配を有する二色相の斑染めを行う方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、カチオン化改質剤を用いて改質後、二種類のアニオン染料を組合わせて用いることにより、同時に二色相の染色が可能となり、なだらかな濃度勾配を有する繊維製品の斑染め方法を見出し本発明に至った。
【0011】
即ち、本発明は、不均一にカチオン化改質した繊維製品を、カチオン化改質部分とカチオン化改質されていない部分を染色する染料と、カチオン化改質部分は染色するがカチオン化改質されていない部分は染色しない二種類のアニオン染料を使用し、二色にそれぞれ染色された部分と、なだらかな勾配を有して斑染めされた部分とを有するように染色することを特徴とする繊維製品の斑染め染色方法である。二種類のアニオン染料としては、直接染料と酸性染料、直接染料とセルロース繊維と親和性の低い反応染料、酸性染料とセルロース繊維と親和性の高い反応染料の三種の組合せを用いることが出来る。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の繊維製品とは織地、ニット地及びこれらが縫製された縫製品である。繊維製品を構成する素材としてはカチオン化改質剤と反応できる官能基を有する素材であれば特に制限はなく、綿、麻等の植物繊維、羊毛、絹等の動物繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、溶剤紡糸セルロース繊維等の再生セルロース繊維を用いることができる。また、これらの素材とポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維等の合成繊維を混紡、交編織した複合素材も用いることができる。
【0013】
本発明に用いるカチオン化改質剤は、水溶液として用いられる。その主成分は分子式中にクロルヒドロン基またはエポキシ基を一つ以上と第四級アンモニウム塩基を一つ以上含む化合物であり、具体的には3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドまたは下記化学式で示す化合物を用いることができる。
【0014】
【化1】
【0015】
上記化学式で示される化合物としては、例えば、1,4−ビス(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウム)ブタンジクロライド等を挙げることができる。カチオン化改質剤の処理濃度は、特に限定されないが目的とする濃淡または異色相のコントラストに応じて1g/l〜20g/lの範囲で適宜設定することができる。処理濃度が1g/l以下の場合はカチオン基の導入量が少なくなるので同色相の濃淡の差が小さくなり好ましくなく、20g/l以上の場合は濃く染色される部分のカチオン化改質剤の反応量が飽和されるのに対して、淡く染色される部分のカチオン化改質剤の反応量が多くなる結果、同色相の濃淡の差が小さくなるので好ましくない。
【0016】
これらのカチオン化改質剤の反応触媒としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物、または、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物を用いることができるが、取扱いが容易で、水溶液がアルカリである、アルカリ金属化合物水溶液を用いるのが好ましい。反応触媒水溶液の濃度は、混合水溶液のpHを10〜13にすることができる量であればよい。
【0017】
本発明はカチオン化改質剤と反応触媒の混合水溶液を繊維製品に均一に含浸させた後、不均一にカチオン化改質させるが、用いる混合水溶液の温度はカチオン化改質剤の加水分解を抑えるために5〜25℃の温度が好ましく、含浸方法としては通常用いられる浸染法またはパディング法により含浸率50〜100%にするのが好ましい。次いで、不均一にカチオン化改質させるためには含浸処理された繊維製品にシワを付与する方法が好ましく、例えば、不定型に折畳む方法、ロープ状にした後折畳む方法、ルーズキャリア等に不定形に詰込む方法等の公知の方法を適宜用いることができる。
【0018】
次いで、シワを付与した状態のまま乾燥するが、80〜120℃の温度で熱風を繊維製品に吹き付けて乾燥するのが好ましく、乾燥が終了する間にカチオン化改質反応は完結する。この乾燥工程で、カチオン化改質剤が乾燥による水分の移動と共に移動する結果、乾燥の早い部分にカチオン化剤が濃縮され、逆に乾燥の遅い部分ではカチオン化改質剤が乾燥の早い部分に移動するためカチオン化剤の濃度が薄くなり、濃度変化が生じた状態で繊維製品との反応が完結するため、結果として不均一にカチオン化改質された部分と未改質の部分を合せ持つ繊維製品が得られる。不均一にカチオン化改質された部分は、乾燥速度の速い部分から遅い部分に改質度が暫減し、なだらかな改質度勾配を有する繊維製品となる。
【0019】
この乾燥された繊維製品には、カチオン化改質剤から誘導された未反応生成物とアルカリ反応触媒が残留しているので、後処理として通常の中和処理した後、洗浄、乾燥すれば不均一にカチオン化改質された部分と未改質の部分を併せ持つ繊維製品が得られる。次いで、二種類のアニオン染料を用いて染色するが、本発明のアニオン染料とは直接染料、酸性染料、セルロース繊維と親和性の低い反応染料及びセルロース繊維と親和性の高い反応染料をいう。
【0020】
本発明で用いるセルロース繊維と親和性の低い反応染料とは、セルロース繊維への吸着の低い反応染料であり、例えば、商品名の染料冠称がプロシオンP、カヤシオンP、シバクロンPあるいはドリマレンの反応染料が挙げられ、これらから適宜選択することができる。また、本発明で用いるセルロース繊維と親和性の高い反応染料とは、セルロース繊維への吸着の高い反応染料であり、例えば、商品名の染料冠称がミカシオン、カヤシオンE、プロシオンMあるいはレバフィックスEの反応染料が挙げられ、これらから適宜選択することができる。
【0021】
上記の染料のうち直接染料と酸性染料、直接染料とセルロース繊維と親和性の低い反応染料、及び酸性染料とセルロース繊維と親和性の高い反応染料の組み合わせから一種の組合せを選んで染色することにより、不均一にカチオン化改質された部分が同一色相でなだらかな濃度勾配を有する濃淡に斑染めされ、未改質部分が任意の異色相に染色された二色相の繊維製品を得ることができる。
【0022】
本発明による染色を行い、不均一にカチオン化改質された部分が同一色相でなだらかな濃度勾配を具備する濃淡に斑染めされ、未改質部分が任意の異色相に染色される二色相の繊維製品を得る方法は、上記したアニオン染料の組合せのいずれかを用いて夫々の染色に適した条件で染色を行う。即ち、酸性染料と直接染料を用いて芒硝等の中性塩を染色助剤として温度80〜100℃で40〜60分間染色する方法、セルロース繊維と親和性の低い反応染料と直接染料を用いて芒硝等の中性塩を染色助剤として温度80〜100℃で40〜60分間染色する方法、酸性染料とセルロース繊維と親和性の高い反応染料を用いて芒硝等の中性塩及びソーダ灰等の塩基性触媒を染色助剤として用い温度50〜100℃で20〜60分間染色する方法のいずれかを適宜選択する。染色は二種の染料を同時に用いる一段染色法、夫々の染料で染色する二段染色法の何れも選択でき、染色工程の順序にも制限はない。また、要求される染色堅牢度に応じて、フィックス剤を使用することができる。
【0023】
得られる二色相の被染物は、酸性染料と直接染料を用いる方法を選択した場合には未改質の部分が直接染料で均一に染色された色相を呈し、不均一にカチオン化改質された部分は酸性染料で染色された色相と直接染料で染色された色相が重なった色相のなだらかな濃度勾配を有する濃淡の斑染めを呈する。また、セルロース繊維と親和性の低い反応染料と直接染料を用いる方法を選択した場合には、未改質の部分が直接染料で均一に染色された色相を呈し、不均一にカチオン化改質された部分はセルロース繊維と親和性の低い反応染料で染色された色相と直接染料で染色された色相が重なった色相のなだらかな濃度勾配を有する濃淡の斑染めを呈する。また、酸性染料とセルロース繊維と親和性の高い反応染料を用いる方法を選択した場合には、未改質の部分がセルロース繊維と親和性の高い反応染料で染色された色相を呈し、不均一にカチオン化改質された部分は酸性染料で染色された色相とセルロース繊維と親和性の高い反応染料で染色された色相が重なった色相のなだらかな濃度勾配を有する濃淡の斑染めを呈する。
【0024】
本発明は、カチオン化改質剤を用いて不均一にカチオン化改質し、特定のアニオン染料で染色するが、この方法を用いるとカチオン化改質した部分のアニオン染料との親和性が著しく高くなることにより、アニオン染料の固着率が高くなり、その結果、染色終了時に排出される染料の量が通常のアニオン染料の染色方法に比べて少なく、廃水処理施設での凝集沈殿に用いる薬品量の低減につながるため、環境負荷が軽減できる。
【0025】
染色工程が終了した被染物はソーピング、樹脂加工、仕上げ油剤処理等の工程に移るが、これらの工程は特に限定されるものではなく一般に用いられる方法で行うことができる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明について実施例により具体的に説明するが、本発明はこの範囲に限定されるものではない。
・染料の有効利用率の評価方法
染色液調液直後の染色液と染色終了後の染色残液を採取し、夫々を自記分光光度計(型式:UV−2450、(株)島津製作所製)を用いて最大吸収波長における吸光度を測定し、下式により染料の有効利用率を評価した。使用する染料が二種の場合はそれぞれの染料の最大吸収波長で吸光度を測定した。
【0027】
【数1】
【0028】
〔実施例1〕
1.7dtex、38mm長の溶剤紡糸再生セルロース繊維(商品名:テンセル、レンチング社製)を通常の方法で紡績し、19.68texの紡績糸を得た。これを使用して靴下編み機を用いて100cm長の靴下編地を編成し、通常の方法で一浴精練漂白した。別に有効成分が40%であるカチオン化改質剤(商品名:カチオノンUK、一方社油脂工業(株)製)40gと反応触媒(商品名:試薬水酸化ナトリウム、関東化学(株)製)3gを20℃の水に溶解させ1リッターとし、pH12.5の処理液を用意した。
【0029】
精練・漂白した靴下編地を、用意した処理液にパディング法で絞り率80%で含浸させた後、ロープ状にして不定形に折畳みシワを付与し、100℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥した。次いで、水洗した後、酢酸(商品名:試薬酢酸、関東化学(株)製)1g/l水溶液で中和処理し、水洗、遠心脱水後、100℃の温風乾燥機で5分間乾燥して不均一にカチオン化改質された部分と、未改質の部分を併せ持つ靴下編地を得て、これを試験編地とした。
【0030】
試験編地を赤色酸性染料(商品名:Sandlan Red MF−TNS、クリアラントジャパン(株)製)0.6%owf、黄色直接染料(商品名:Kayarus Supra Yellow GLS 、日本化薬(株)製)0.6%owfを含む染色液中で浴比1:20、室温で10分間処理した後、95℃迄上昇させ10分後に芒硝10g/lを添加し、浴比1:20、温度95℃で20分間処理した後、80℃まで降温させた。次いで、水洗した後、界面活性剤(商品名:アデカノールTS−800、旭電化工業(株)製)2g/lを含む処理液で、浴比1:20、温度80℃で15分間ソーピングした後、水洗、遠心脱水後、100℃で温風乾燥して染色された試験試料1を得た。
【0031】
試験試料1の不均一にカチオン化改質された部分と、未改質の部分の色相、染色液調液直後の染色液と染色終了後の染色残液の吸光度を測定した数値、及び算出した染料の有効利用率を表1に示した。
【0032】
【表1】
【0033】
試験試料1は、不定形でシワ状の濃淡に斑染めされた部分と、シワ状で淡黄色に染色された部分に染め分けられ、斑染めされた部分の濃染部は濃橙色で、淡色部は淡橙色のなだらかな濃度勾配を持つ高品位の被染物であった。これは不均一にカチオン化改質された部分が酸性染料の色相である赤色と直接染料の色相である黄色により合成色である橙色の色相に染色されたのに対して、未改質の部分が直接染料の色相である黄色のみに染色されたことによる。
【0034】
染色終了後の染色残液の黄色成分の吸光度は0.3で、赤色成分の吸光度は0.5であり、共に低い値となった。本発明の染色加工法においては染色残液中の染料が大幅に少なくなるので廃水処理施設での凝集沈殿に用いる薬品量も少なくなり、環境負荷が大幅に低減することが明らかである。
【0035】
〔実施例2〕
実施例1と同一の試験編地を赤色酸性染料(商品名:Sandlan RedMF−TNS、クリアラントジャパン(株)製)1.0%owfを含む染色液中で、浴比1:20、温度90℃で30分間染色した。次いで、水洗した後、セルロース繊維と親和性の高い紺色反応染料(商品名:Sumifix Supra Navy Blue BF gran.住友化学工業(株)製)1.0%owfを含む染色液中で浴比1:20、温度70℃で10分間処理した後、芒硝50g/lを添加し、15分経過後、更にソーダ灰20g/lを添加し40分間固着処理した後、実施例1と同条件で水洗、ソーピング、水洗、遠心脱水、温風乾燥して試験試料2を得た。
【0036】
試験試料2の不均一にカチオン化改質された部分と、未改質の部分の色相、染色液調液直後の染色液と、染色終了後の染色残液の吸光度を測定した数値、及び算出した染料の有効利用率を表2に示した。
【0037】
【表2】
【0038】
試験試料2は、不定形でシワ状の濃淡に斑染めされた部分と、シワ状で紺色に染色された部分に染め分けられ、斑染めされた部分の濃染部は濃紫色で、淡色部は紫色のなだらかな濃度勾配を持つ高品位の被染物であった。これは不均一にカチオン化改質された部分が、酸性染料の色相である赤色と反応染料の色相である紺色の合成色である紫色の色相に染色されたのに対して、未改質の部分が反応染料の色相である紺色のみに染色されたことによる。
【0039】
染色終了後の染色残液での赤色成分の吸光度は0.1で、紺色成分の吸光度は2.4であった。染色残液中の酸性染料は大幅に少なくなるので、廃水処理施設での凝集沈殿に用いる薬品量も少なくなり、環境負荷が大幅に低減する。
【0040】
〔実施例3〕
通常の条件で毛焼・糊抜・精練・漂白・マーセライズした綿100%の平織物(11.81tex×11.81tex/132本/インチ×80本/インチ)を25cm×100cmの大きさに切り取って、実施例1と同一の処理液をパディング法で絞り率80%で含浸させた後、ロープ状にし、不定形に折畳みシワを付与し、100℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥した。次いで、水洗した後、酢酸(商品名:試薬酢酸、関東化学(株)製)1g/l水溶液で中和処理し、水洗、遠心脱水後、100℃の温風乾燥機で5分間乾燥して、不均一にカチオン化改質された部分と未改質の部分を併せ持つ試験織物を作成した。
【0041】
試験織物を黄色直接染料(商品名:Sirius Yellow S−2G、ダイスタージャパン(株)製)0.3%owfとセルロース繊維と親和性の低い青色反応染料(商品名:Kayacion Blue P−3R、日本化薬(株)製)0.4%owfを含む染色液中で浴比1:20、室温で10分間処理した後、95℃迄昇温させ、10分後に芒硝10g/lを添加し、浴比1:20、温度95℃で20分間処理した後、80℃まで降温させた。次いで、実施例1と同条件で水洗、ソーピング、水洗、遠心脱水、温風乾燥して試験試料3を得た。
【0042】
試験試料3の不均一にカチオン化改質された部分と未改質の部分の色相、染色液調液直後の染色液と染色終了後の染色残液の吸光度を測定した数値、及び算出した染料の有効利用率を表3に示した。
【0043】
【表3】
【0044】
試験試料3は不定形のシワ状の濃淡に斑染めされた部分と、シワ状で淡黄色に染色された部分に染め分けられ、斑染めされた部分の濃染部は濃緑色で、淡色部は淡緑色のなだらかな濃度勾配を持つ高品位の被染物であった。これは不均一にカチオン化改質された部分が、直接染料の色相である黄色と反応染料の色相である青色による合成色である緑色の色相に染色されたのに対して、未改質の部分が直接染料の色相である黄色のみに染色されたことによる。
【0045】
染色終了後の染色残液での黄色成分の吸光度は0.1で、青色成分の吸光度は0.6であった。本発明の染色加工法においては、染色残液中の染料が大幅に少なくなるので廃水処理施設での凝集沈殿に用いる薬品量が少なくなり、環境負荷が大幅に低減する。
【0046】
〔参考例1〕
通常の条件で毛焼・糊抜・精練・漂白・マーセライズした綿100%の平織物(11.81tex×11.81tex/132本/インチ×80本/インチ)を25cm×100cmの大きさに切り取って、比較織物とした。
【0047】
実施例3と同一の試験織物と比較織物を用意し、夫々を別浴で実施例1と同一の赤色の酸性染料0.5%owf、セルロース繊維と親和性の高い赤色反応染料(商品名:Sumifix Supra Brillant Red BSF 150% gran.、住友化学工業(株)製)1.5%owfを含む染色液中で浴比1:20、温度70℃で10分間処理した後、芒硝50g/lを添加した後、15分経過後、更にソーダ灰20g/lを添加し40分間固着処理した後、実施例1と同条件で水洗、ソーピング、水洗、遠心脱水、温風乾燥して参考試料1と比較試料1を得た。
【0048】
参考試料1の不均一にカチオン化改質された部分と未改質の部分の色相、比較試料1の色相、染色液調液直後の染色液と、染色終了後の染色残液の吸光度を測定した数値、及び算出した染料の有効利用率を表4に示した。
【0049】
【表4】
【0050】
参考試料1は不定形でシワ状の濃淡に斑染めされた部分とシワ状で赤色に染色された部分に染め分けられ、斑染めの濃染部は濃赤色で淡色部は赤色のなだらかな濃度勾配を持つ高品位の被染物であった。斑染めの不定形シワ状の赤色に染色された淡染部と、未改質の赤色にシワ状で均一に染色された部分は外見上濃度差が認められ、前者の濃度が若干濃かった。比較試料1は赤色で、参考試料1の未改質の部分と外見上の染色差はほとんどなかった。
【0051】
参考試料1の染料の有効利用率は90.8%で、比較試料1の染料の有効利用率は68.6%でその差は22.2%であり、本発明の染色加工法において、カチオン化改質された参考試料1の染色残液の吸光度は1.4であるのに対して、比較試料1の染色残液の吸光度は4.8であり、明らかに染料の有効利用率及び染色残液中に廃棄された染料が本発明の染色法では少なく、廃水処理施設での薬品費低減により環境負荷が低減することは明らかである。
【0052】
【発明の効果】
本発明の繊維製品の斑染め染色加工方法によれば、カチオン化改質剤を用いて不均一なカチオン化改質をし、二種類のアニオン染料を使用して一工程もしくは二工程で染色することにより、二色相を有し自然な濃淡に斑染めされた従来にない高い感性とファッション性に優れた繊維製品を得ることができる。また、本発明の方法においては、カチオン化改質した部分のアニオン染料との親和性が著しく高くなることによりアニオン染料の固着率が高くなり、その結果環境負荷を軽減する効果がある。
Claims (4)
- 不均一にカチオン化改質した繊維製品を、カチオン化改質部分とカチオン化改質されていない部分を染色する染料と、カチオン化改質部分は染色するがカチオン化改質されていない部分は染色しない二種類のアニオン染料を使用し、二色にそれぞれ染色された部分と、なだらかな勾配を有して斑染めされた部分とを有するように染色することを特徴とする繊維製品の斑染め染色方法。
- 二種類のアニオン染料が、直接染料と酸性染料である請求項1に記載の繊維製品の斑染め染色方法。
- 二種類のアニオン染料が、直接染料とセルロース繊維と親和性の低い反応染料である請求項1に記載の繊維製品の斑染め染色方法。
- 二種類のアニオン染料が、酸性染料とセルロース繊維と親和性の高い反応染料である請求項1に記載の繊維製品の斑染め染色方法。
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