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JP2004148320A - 摩擦撹拌を用いた接合方法及び接合用工具 - Google Patents

摩擦撹拌を用いた接合方法及び接合用工具 Download PDF

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JP2004148320A
JP2004148320A JP2002313019A JP2002313019A JP2004148320A JP 2004148320 A JP2004148320 A JP 2004148320A JP 2002313019 A JP2002313019 A JP 2002313019A JP 2002313019 A JP2002313019 A JP 2002313019A JP 2004148320 A JP2004148320 A JP 2004148320A
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  • Mechanical Engineering (AREA)
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Abstract

【課題】重ねられたワーク同士の接合強度を向上させる。
【解決手段】アルミニウム板W1と鋼板W2とを重ねた状態で接合するに際して、鋼板W2に、予め、貫通孔10を設けておき、回転状態の回転ツール4により、その加圧をもってアルミニウム板W1のアルミ材W1−1を貫通孔10に押し込むと共に、その回転をもってそのアルミ材W1−1を塑性流動させる。そして、貫通孔10内周面の軟化に伴い、アルミ材W1−1の塑性流動に基づき貫通孔10内周面に圧接力を生じさせ、アルミ材W1−1と貫通孔10内周面との接合を行う。
【選択図】 図6

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、摩擦撹拌を用いた接合方法、及びその方法に使用する接合用工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
摩擦撹拌を用いた接合方法として、特許文献1に示すように、重ねられた板状のワークのうち、該ワークの重ね方向一方側における一方のワークに対して回転ツールを当接させて、該重ねられたワークに対して、該ワークの重ね方向に向けて加圧力を付与すると共に該加圧力の加圧方向を中心として回転力を付与するものがある。このものによれば、回転ツールの加圧と回転とに伴い、回転ツールと重ねられたワークとの間で発生される摩擦熱によりそのワークが軟化されて、そのワーク内に回転ツールが進入される。このため、その回転ツールによりワーク内における重ね面付近で塑性流動が引き起こされることになり、重ねられたワークは、その重ね面付近でスポット的に一体化することになる。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−314982号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記接合方法においては、回転ツールによって一方のワークを他方のワーク内に深く入り込ませることができず、重ねられたワーク同士の接合は、ワークの重ね面付近における浅い部分(回転ツールが塑性流動させた部分)に限られる。このため、一層の接合強度の向上が望まれている。
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その第1の技術的課題は、重ねられたワーク同士の接合強度を向上させることができる摩擦撹拌を用いた接合方法を提供することにある。
第2の技術的課題は、上記接合方法を実施する接合用工具を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記第1の技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)にあっては、
重ねられた板状のワークのうち、該ワークの重ね方向一方側における一方のワークに対して回転ツールを当接させて、該重ねられたワークに対して、該ワークの重ね方向に向けて加圧力を付与すると共に該加圧力の加圧方向を中心とした回転に基づく摩擦熱を付与する摩擦撹拌を用いた接合方法において、
前記ワークの重ね方向他方側における他方のワークに、予め、前記回転ツールの加圧領域に臨むようにして貫通孔を設け、
前記回転ツールの加圧に伴い、前記貫通孔内に前記一方のワークを押し込む構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2〜5記載の通りとなる。
【0007】
前記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項6に係る発明)にあっては、
板状の一方のワークと、接合すべき部分に貫通孔を有する板状の他方のワークとを重ねた状態で接合する接合用工具であって、
前記一方のワークに対して当接された状態でワークの重ね方向に加圧力を付与すると共に該加圧力の加圧方向を中心とした回転に基づく摩擦熱を付与する回転ツールと、該回転ツールに対向して配置され前記両ワークを前記他方のワークに当接した状態で受け止める受け具とを備え、
前記受け具が、前記他方のワークにおける貫通孔の径よりも大きな開口を有する凹所を備えている構成とされている。この請求項6の好ましい態様としては、請求項7記載の通りとなる。
【0008】
【発明の効果】
請求項1に記載された発明によれば、回転ツールの加圧に伴い、回転に基づく摩擦熱により軟化した一方のワークの一部材料が他方のワークの貫通孔に十分に押し込まれ、その貫通孔内に充填された一方のワークの一部材料が、進入してくる回転ツールにより塑性流動される。これにより、他方のワーク表面の軟化に伴い、その貫通孔内周面等に対して圧接力が生じることになり、接合が行われる。このため、強い接合が貫通孔内周面を含む広い接合面積の下で行われることになり、重ねられたワーク同士の接合強度を向上させることができることになる。
【0009】
請求項2に記載された発明によれば、貫通孔内に押し込まれた一方のワークの材料を、該貫通孔を経てワークの重ね方向他方側に押し出すと共に該貫通孔外において該貫通孔の径方向外方に拡がるようにすることから、一方のワーク材料の硬化後、他方のワークが、貫通孔から押し出され径方向外方に拡がった一方のワーク材料と、もともとの一方のワークとによって挟持された状態となる。このため、両ワークの剥離方向(ワークの板面に対して垂直方向)において特に強固な係合関係が確保されることになり、重ねられたワーク同士の接合強度を、一層向上させることができることになる。
【0010】
請求項3に記載された発明によれば、回転ツールの加圧に伴い、貫通孔周縁部に、他方のワーク外側から押圧力を付与する一方、一方のワークに押圧力が作用する領域において逃げ空間を確保することから、回転ツールに基づく摩擦熱によってワークの軟化が進むにつれて、一方のワークの一部材料が逃げ空間に逃げる一方、その一方のワークと当接する貫通孔周縁部が盛り上がって、該一方のワーク内にその他方のワークにおける盛り上がり部分が入り込むことになる。このため、両ワークのせん断方向(ワークの板面に沿う方向)において特に強固な係合関係が確保されることになり、一層、重ねられたワーク同士の接合強度を向上させることができることになる。
【0011】
請求項4に記載された発明によれば、一方のワーク及び他方のワークは異種材料であり、他方のワークに対して一方のワークが軟質材料とされていることから、一方のワーク及び他方のワークが異種材料であっても、的確に前記請求項1等と同様の作用効果を得ることができることになる。
【0012】
請求項5に記載された発明によれば、一方のワークがアルミニウム板とされ、他方のワークが鋼板とされていることから、このような異種材料であっても、的確に前記請求項1等と同様の作用効果を得ることができることになる。
【0013】
請求項6に記載された発明によれば、受け具の凹所開口が他方のワークにおける貫通孔の径よりも大きくされていることから、一方のワークの一部の材料が貫通孔を経て他方のワークの貫通孔外に押し出されると共にその該貫通孔の径方向外方に拡がることになり、前記請求項2に係る方法を具体的に実施できる接合用工具を提供できることになる。
しかも、貫通孔を経てワークの重ね方向他方側に押し出された一方のワークの材料が、貫通孔周縁部に対して回転ツール側に向けた力を作用させることになり、回転ツールに基づく摩擦熱によって他方のワーク(貫通孔内周面、内周縁部等)の軟化が進むにつれて、一方のワークと当接する貫通孔周縁部が盛り上がり易くすることができることになる。このため、一方のワーク内に他方のワークにおける盛り上がり部分が入り込み易くなり、重ねられたワーク同士の接合強度を向上させる上で好ましいものとなる。
【0014】
請求項7に記載された発明によれば、受け具における環状の突部により他方のワークに対する押圧力が得られ、回転ツールにおける環状溝により逃げ空間が得られることになり、前記請求項3に係る方法を具体的に実施できる接合用工具を提供できることになる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
先ず、本発明に係る方法を説明する前に、本発明に係る方法を実施する具体的な接合装置について説明する。
【0016】
図1は、第1実施形態に係る接合装置Aの概略構成を示しており、この接合装置Aは、例えば自動車ボディ等に用いられるアルミニウム合金等からなるアルミニウム板(一方のワーク)W1と鋼板(他方のワーク)W2とをワークWとして、その両板面を重ねた状態で接合するために用いられる。この接合装置Aは、ロボット2と、そのロボット2の手首に取付けられる接合ガン1と、それらを制御する制御盤3とを備えている。
【0017】
前記ロボット2としては、例えば汎用の6軸垂直多関節型ロボットが用いられる。このロボット2は、接合ガン1を、前記アルミニウム板W1と鋼板W2との接合位置に位置づける機能を有している。
【0018】
前記接合ガン1は、図2に示すように、前記アルミニウム板W1と鋼板W2とを接合するべく、接合用工具6として、回転ツール4と、受け具5とを備えている。回転ツール4は、接合軸X上に配設されており、この回転ツール4は、加圧軸モータ12により加圧のために上記接合軸Xに沿って昇降動されると共に、回転軸モータ11により接合軸Xを中心として回転されることになっている。上記回転軸モータ11としては、インダクションモータやサーボモータが用いることができ、上記加圧軸モータ12としては、サーボモータを用いることができる。受け具5は、前記回転ツール4に対向して配置されており、この位置状態は、略L字状のアーム13を利用し、その先端に受け具5を取付けることにより保持されている。尚、回転ツール4及び受け具5は、接合ガン1に対して着脱可能に取付けられている。
【0019】
上記接合ガン1における回転ツール4と受け具5とについて、図3に基づいて具体的に説明する。
回転ツール4は、本体部4aと、その本体部4aの先端面から突出する突出部としてのピン部4bとを一体的に有している。本体部4aは、略円柱状に形成され、その配置は、その軸心が前記接合軸Xに合致するように設定されている。ピン部4bは、その軸心が本体部4aの軸心(接合軸X)に合致するように配置されつつ、本体部4aよりも小径となるようにして突出されており、その先端面は平坦面に形成されている。この場合、この先端面の形状は、より好ましくは、曲率半径40mm程度の曲面形状がよく、これにより、回転ツール4の回転時に求心力が発生して押し込みがスムーズとなる。受け具5は、前記回転ツール4における本体部4aと略同径とされた略円柱状に形成されており、その先端部形状は、その先端周縁部にその先端に向かうに従って縮径されるようにテーパ面5aが形成され、その先端面5bは平坦面に形成されている。
【0020】
前記制御盤3は、図1に示すように、前記ロボット2にハーネス31を介して接続されると共に、前記接合ガン1に、ハーネス33、中継ボックス34、ハーネス32を介して接続されている。この制御盤3は、ロボット2の6軸と、接合ガン1における回転軸モータ11及び加圧軸モータ12の2軸の合計8軸を同期制御するように構成されている。
【0021】
次に、上記接合装置Aを用いて、ワークWの接合方法について具体的に説明する。この接合方法は、接合すべきワークWとして、異種材料のもの、特に軟質性が相対的に異なるものに対して適用できることになっており、そのうち、軟質性が低いワーク(硬度が相対的に高いもの)に取付け孔として貫通孔が形成されている。本実施形態においては、前述の如く、アルミニウム板(一方のワーク)W1,鋼板(他方のワーク)W2が接合すべきワークWとされ、そのうち、鋼板W2の接合すべき部分(重ねる部分)に貫通孔10が形成されている。
【0022】
先ず、接合すべきアルミニウム板W1と鋼板W2とが、所定の状態で所定位置に固定される。これは、ロボット2の作業領域における所定位置に固定される図示を略す治具に、アルミニウム板W1と鋼板W2とをセットすることにより行われることになっており、このセットにおいて、アルミニウム板W1と鋼板W2との接合すべき部分が互いに重ねた状態とされると共にその重ね部分に貫通孔10が位置されることになっている。
【0023】
次に、図3に示すように、接合ガン1がロボット2によって所定の接合位置に位置づけられる。すなわち、接合ガン1が、受け具5を鋼板W2に対向させるように配置させつつ、その受け具5と回転ツール4との間にワークWの接合位置を位置させるように移動され、その接合ガン1の接合軸X上にワークWの接合位置が位置される。そしてこの後、接合ガン1が移動されて、受け具5の先端面5bが鋼板W2の貫通孔10を塞ぐように該鋼板W2に当接される。
【0024】
次に、図4に示すように、回転状態の回転ツール4のピン部4bと受け具5とによりワークWが把持される。すなわち、回転ツール4は、接合軸Xを中心として回転され、その回転状態を維持しつつ受け具5に向けて移動され、回転ツール4のピン部4bと受け具5とにより、その回転ツール4の回転を維持しつつ、ワークWは把持される。これにより、ワークWとピン部4bとの間に摩擦熱が発生することになり、その摩擦熱によりワークWは軟化することになる。
【0025】
次に、図5に示すように、さらに回転ツール4が回転状態を維持しつつ受け具5に向けて移動されて、ワークWは、回転状態の回転ツール4と受け具5とにより加圧される。これにより、回転ツール4が、軟化したアルミニウム板W1内に進入するに伴い、アルミニウム板W1のアルミ材(一部材料)W1−1が鋼板W2の貫通孔10内に押し込まれることになり、アルミニウム板W1のアルミ材W1−1は貫通孔10内に充填される。
【0026】
続いて、図6に示すように、回転ツール4がさらに受け具5に向けて移動されて、そのピン部4bが貫通孔10内に進入される。これにより、ピン部4bのその軸心を中心とした回転を通じて貫通孔10内に塑性流動が生じることになり、回転ツール4(軟化熱)に基づく鋼板W2表面の軟化に伴い、貫通孔10内周面全体に対して圧接力が生じ、アルミ材W1−1と鋼板W2とは強固に接合(固相接合)される。このとき、鋼板W2の板面と本体部4aの先端面(ピン部4bと本体部4aとの段差部)との間にも、回転ツール4(本体部4a)の回転に基づく塑性流動、軟化現象が生じており、アルミニウム板W1と鋼板W2との境界面は、貫通孔10周縁部においても、強固に接合されることになる。この圧接力が生じ接合が行われる部分を、図6において、太線をもって示すと共に、その部分を符号Sをもって示す。
【0027】
この場合、受け具5のテーパ面5aと鋼板W2の貫通孔10の周縁部とが当接されて、受け具5と鋼板W2との接触面積ができるだけ小さくされており、ワークWを軟化するための軟化熱が受け具5を通じて逃げることが抑制されている。その一方、受け具5のテーパ面5aは、軟化した鋼板W2の貫通孔10周縁部をアルミニウム板W1に向けて撓ませることになり、貫通孔10の周縁部10aは、図6に示すように、軟化しているアルミニウム板W1内に進入することになる。このため、そのアルミニウム板W1内に進入した貫通孔10周縁部10aによっても、接合強度が向上される。
【0028】
この後、設定時間が経過すると、回転ツール4と受け具5とは、ワークWからそれぞれ離間され、それらは、次の処理のために待機される。この場合、回転ツール4は、回転状態が維持しつつワークWから離間される。したがって、回転ツール4及び受け具5がワークWから離間されることにより、塑性流動していたワークWは急激に冷却され、アルミニウム板W1と鋼板W2とは接合される。
【0029】
図7〜図9はは第2実施形態、図10は第3実施形態、図11は第4実施形態、図12は第5実施形態を示す。この各実施形態において、前記第1実施形態及びその他の実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0030】
図7〜図9に示す第2実施形態は、前記第1実施形態の場合よりも一層接合強度の向上を図るべく、鋼板W2をアルミニウム板W1とアルミ材W1−1で挟持したものである。この第2実施形態においては、回転ツール4に関し、本体部4aが大径部4a−1とそれよりも縮径された中径部4a−2とを有しており、この本体部4aは、大径部4a−1と中径部4a−2とにより段付き構造とされている。ピン部4bは中径部4a−2の先端面に設けられるが、この中径部4a−2の先端面には、ピン部4bを中心としてその周囲に環状溝20が形成され、この環状溝20が、中径部4a−2の先端面がアルミニウム板W1に当接したとき、アルミニウム板W1の一部材料であるアルミ材W1−1の逃げ空間を確保することになっている。
【0031】
一方、受け具5の先端面には、前記貫通孔10を通じて鋼板W2の外側にアルミ材W1−1を確保すべく、凹所21が形成されている。この凹所21は、先端に向かうに従って拡径されるように設定され、その凹所21の開口径は、貫通孔10の径よりも大きなものとされている。また、本実施形態においては、凹所21の開口周縁部に環状の突部22が設けられている。この環状の突部22は、その内周面が、凹所21内周面に滑らかに連続すべく、先端に向かうに従って拡径されると共に、その突部22の肉厚は、先端の肉厚をできるだけ薄くすべく、先端に向かうほど短くされている。
【0032】
このような回転ツール4と受け具5とを用いてアルミニウム板W1と鋼板W2とを接合する場合には、受け具5が、その凹所21が鋼板W2の貫通孔10に臨むようにしてその鋼板W2に当接され、その下で、回転ツール4によりワークWに対して加圧される。これにより、前記第1実施形態同様、ワークWに摩擦熱が発生し、ワークWは軟化することになる。
【0033】
この状態の下で、回転ツール4の加圧動作がさらに続行されると、軟化したアルミ材W1−1がピン部4bにより貫通孔10を介して受け具5の凹所21内に押し込まれることになり(図8の矢印参照)、アルミ材W1−1は、貫通孔10外において、貫通孔10の径方向外方に拡がった状態で存在し、アルミ材W1−1とアルミニウム板W1とは鋼板W2を挟持することになる。このため、機械的に強固な係合関係が確保されることになり、剥離方向において接合強度が向上されることになる。
【0034】
また、この間、貫通孔10内においては、進入してくるピン部4bの軸心を中心としてアルミ材W1−1の塑性流動が生じることになり、この塑性流動と鋼板W2の軟化とにより、貫通孔10内周面に圧接力が生じ、アルミ材W1−1と鋼板W2の貫通孔10の全内周面とは強固に接合されることになる。このとき、鋼板W2の板面と中径部4a−2の先端面、鋼板W2の板面と大径部4a−1の先端面との間にも、回転ツール4(大径部4a−1、中径部4a−2)の回転に基づく塑性流動、軟化現象が生じており、アルミニウム板W1と鋼板W2との境界面は、貫通孔10周縁部においても、強固に接合されることになる。この圧接力が生じ接合が行われる部分を、図9において、太線をもって示すと共に、その部分を符号Sをもって示す。
【0035】
上記回転ツール4の加圧動作に際しては、それに伴い、受け具5の環状の突部22が鋼板W2をアルミニウム板W1に向けて押圧することになる。このため、その押圧力に基づき、アルミニウム板W1の軟化したアルミ材W1−1が回転ツール4の環状溝20に入り込むことになる一方、受け具5の環状の突部22が鋼板W2に入り込んで、軟化した鋼板W2の貫通孔10周縁部をアルミニウム板W1に向けて撓ませることになり、その貫通孔10の周縁部10aは、図9に示すように、軟化しているアルミニウム板W1内に容易に進入することになる。このため、そのアルミニウム板W1内に大きく進入した貫通孔周縁部10aによっても、せん断方向において接合強度が向上されることになる。
【0036】
またこの接合工程の間においては、受け具5の環状の突部22と鋼板W2の貫通孔10の周縁部とが当接されて、受け具5と鋼板W2との接触面積ができるだけ小さくされている。このため、ワークWを軟化するための軟化熱が受け具5を通じて逃げることが極力抑制される。その一方、本実施形態においては、回転ツール4の大径部4a−1がアルミニウム板W1と当接して、その回転に基づき摩擦熱を増加させることになっている。このため、本実施形態においては、ワークWに対して十分な軟化熱を供給できることになっている。尚、この大径部4a−1は、アルミニウム板W1と当接することにより、単位面積当たりの加圧力を低下させ、ワークWへの回転ツール4の進入速度が過速度になることを防止している。
【0037】
そしてこの後、設定時間が経過すると、回転ツール4と受け具5とは、ワークWからそれぞれ離間され、それらは、次の処理のために待機される。この場合、回転ツール4は、回転状態が維持しつつワークWから離間される。したがって、回転ツール4及び受け具5がワークWから離間されることにより、ワークWは急激に冷却され、アルミニウム板W1と鋼板W2とは強固に接合されることになる。
【0038】
図10に示す第3実施形態は、第2実施形態の変形例を示す。この第3実施形態においては、図10に示すように、本体部4aが一定の径とされ、その先端部が段付きでないものとされている。
【0039】
図11に示す第4実施形態は、第2実施形態の変形例を示す。この第4実施形態においては、図11に示すように、受け具5における環状の突部22も、回転ツール4における環状溝20も省かれており、第2実施形態に係る接合用工具6をできるだけ簡素な構成としたものとされている。
【0040】
図12に示す第5実施形態は、ロボット2と別に設置された架台8に前記各実施形態に係る接合ガン1を取付ける一方、ロボット2によりワークWの接合のための位置決めを行うようにしたものを示している。このため、ロボット2の手首に、接合ガン1に代えて、ワークWを保持するためのハンドリングツール7が取付けられている。勿論、ロボット2は、分岐ボックス35、ハーネス31を介して制御盤3に接続され、接合ガン1は、ハーネス33、中継ボックス34、ハーネス32を介して制御盤3に接続されると共に、ハーネス33、中継ボックス34、ハーネス36を介して上記分岐ボックス35に接続されており、それらは、所定の制御が行われることになっている。
【0041】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては次のような態様を包含する。
1)鋼板W2の貫通孔10の内周面が、酸化膜により形成されていないことが好ましい。固相接合の強度を高める上で有利となるからである。
2)鋼板としては、亜鉛鋼板が好ましい。亜鉛とアルミニウムとが反応して、接合強度の向上を図ることができるからである。
3)受け具5もその軸心(接合軸X)を中心として回転させること。
4)第1実施形態において、本体部4aの先端部を段付きにして、摩擦熱をより確保すると共に、アルミニウム板W1に対する接触面積(単位面積当たりの加圧力)を変化させて、加圧速度を調整すること。
【0042】
尚、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましい或いは利点として載されたものに対応したものを提供することをも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る接合装置の概略構成を示す図。
【図2】第1実施形態に係る接合ガンの概略構成を示す図。
【図3】第1実施形態に係る接合用工具を示す図。
【図4】図3の状態に続く接合工程を示す図。
【図5】図4の状態に続く接合工程を示す図。
【図6】図5の状態に続く接合工程を示す図。
【図7】第2実施形態に係る接合用工具を示す図。
【図8】図7の状態に続く接合工程を示す図。
【図9】図8の状態に続く接合工程を示す図。
【図10】第3実施形態に係る接合用工具を示す図。
【図11】第4実施形態に係る接合用工具を示す図。
【図12】第5実施形態に係る接合装置の概略構成を示す図。
【符号の説明】
1 接合ガン
4 回転ツール
4b ピン部
5 受け具
6 接合用工具
10 貫通孔
20 環状溝(逃げ空間)
21 凹所
22 突部
W ワーク
W1 アルミニウム板
W2 鋼板

Claims (7)

  1. 重ねられた板状のワークのうち、該ワークの重ね方向一方側における一方のワークに対して回転ツールを当接させて、該重ねられたワークに対して、該ワークの重ね方向に向けて加圧力を付与すると共に該加圧力の加圧方向を中心とした回転に基づく摩擦熱を付与する摩擦撹拌を用いた接合方法において、
    前記ワークの重ね方向他方側における他方のワークに、予め、前記回転ツールの加圧領域に臨むようにして貫通孔を設け、
    前記回転ツールの加圧に伴い、前記貫通孔内に前記一方のワークを押し込む、ことを特徴とする摩擦撹拌を用いた接合方法。
  2. 請求項1おいて、
    前記貫通孔内に押し込まれた前記一方のワークの材料を、該貫通孔を経てワークの重ね方向他方側に押し出すと共に該貫通孔外において該貫通孔の径方向外方に拡がるようにする、
    ことを特徴とする摩擦撹拌を用いた接合方法。
  3. 請求項1又は2において、
    前記回転ツールの加圧に伴い、前記貫通孔周縁部に、前記他方のワーク外側から押圧力を付与する一方、前記一方のワークに前記押圧力が作用する領域において逃げ空間を確保する、
    ことを特徴とする摩擦撹拌を用いた接合方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかにおいて、
    前記一方のワーク及び他方のワークは、異種材料であり、
    前記他方のワークに対して前記一方のワークが、軟質材料とされている、
    ことを特徴とする摩擦撹拌を用いた接合方法。
  5. 請求項4において、
    前記一方のワークがアルミニウム板とされ、
    前記他方のワークが鋼板とされている、
    ことを特徴とする摩擦撹拌を用いた接合方法。
  6. 板状の一方のワークと、接合すべき部分に貫通孔を有する板状の他方のワークとを重ねた状態で接合する接合用工具であって、
    前記一方のワークに対して当接された状態でワークの重ね方向に加圧力を付与すると共に該加圧力の加圧方向を中心とした回転に基づく摩擦熱を付与する回転ツールと、該回転ツールに対向して配置され前記両ワークを前記他方のワークに当接した状態で受け止める受け具とを備え、
    前記受け具が、前記他方のワークにおける貫通孔の径よりも大きな開口を有する凹所を備えている、
    ことを特徴とする接合用工具。
  7. 請求項6において、
    前記回転ツールに、前記一方のワークに対して加圧力と回転に基づく摩擦熱とを付与する突出部と、該突出部を中心として環状に形成される環状溝とが備えられ、
    前記受け具に、前記凹所の開口周縁部に環状の突部が設けられている、
    ことを特徴とする接合用工具。
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