JP2004144707A - 有害有機物質の抽出分析方法及びその装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】土壌中の有害有機物質の分析を行う際、土壌採取現場で土壌の採取、有害有機物質の抽出操作、及び有害有機物質の分析操作の一連の作業を容易に短時間で行えるようにする。
【解決手段】土壌捕獲部22を土壌中に挿入して土壌を所定量捕獲する。この状態で土壌捕獲部の周囲に配設された電気ヒーター23で捕獲土壌を有害有機物質の沸点に応じた温度に加熱して、捕獲土壌中に含まれる物質をガス化成分とする。このガス化成分はキャピラリーカラム14を介して、土壌捕獲現場に停車する車に搭載された分析装置12に送られる。分析装置ではガス化成分から有害有機物質を特定して有害有機物質の分析を行う。
【選択図】 図2
【解決手段】土壌捕獲部22を土壌中に挿入して土壌を所定量捕獲する。この状態で土壌捕獲部の周囲に配設された電気ヒーター23で捕獲土壌を有害有機物質の沸点に応じた温度に加熱して、捕獲土壌中に含まれる物質をガス化成分とする。このガス化成分はキャピラリーカラム14を介して、土壌捕獲現場に停車する車に搭載された分析装置12に送られる。分析装置ではガス化成分から有害有機物質を特定して有害有機物質の分析を行う。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土壌中に含まれるダイオキシン等の有害有機物質を抽出分析するための方法及び装置に関し、特に、土壌採取現場で直ちに有害有機物質の抽出及び分析を行うことのできる方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、土壌中に含まれる有害有機物質(例えば、ダイオキシン)を抽出して、分析する際には、採取現場でダイオキシン類(以下単にDXNと呼ぶ)が含まれる土壌を採取した後、現場から離れた分析室において、ガラス器具及びトルエン等の有機溶媒を用いて採取土壌からDXNの抽出を行い、抽出媒体からシリンジ等でDXNを含む試料を採取して、ガスクロクロマトグラフィーで試料からDXN以外の物質を分離し、質量分析計でDXNを定量化している。
【0003】
上述のようなDXNの抽出及び分析を行う際の手法として、現場で採取した土壌(ダイオキシン類存在媒体)からDXNを抽出する際には、充填容器に土壌を充填し、ボンベからのキャリアガスを充填容器に流す。この際、加熱炉によって充填容器内の土壌を約200℃〜約300℃に加熱して、土壌中のDXNをガス化する。ガス化したDXNは充填容器を通過するキャリアガスに随伴されて、キャリアガスとともに吸収ビンに入り、吸収ビン中の有機溶媒に捕獲される。前述のようにして、試料を採取して、ガスクロクロマトグラフィーで試料からDXN以外の物質を分離し、質量分析計でDXNを定量化する(特許文献1参照)
【0004】
一方、DXNを分析する手法として、ある瞬間に生成したイオンパケットに対して基準時間を設定し、質量数に対応した飛行時間を計測して質量を分析する飛行時間型質量分析法が知られており、この飛行時間型質量分析法において、基準時間からずれて生成したイオンがノイズとして検出されて計測感度の低下となるという不具合を防止するため、質量分析装置における飛行時間計測に同期して、サンプルガスのイオン化を停止するようにしている(特許文献2参照)
【0005】
【特許文献1】
特開2000−180316公報(第4ページ〜第5ページ、第2図及び第3図)
【0006】
【特許文献2】
特開2002−170517公報(第4ページ、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1に記載されたDXNの抽出においては、DXNをガス化してキャリアガスに随伴させて、吸収ビン中の有機溶媒に捕獲して、DXNの抽出を行っているものの、現場で採取した土壌を、分析室において充填容器に充填した後、前述のような抽出操作を行う必要があり、しかも抽出した後、さらに分析操作を行わなければならず、土壌の採取、DXN抽出操作、及びDXN分析操作を連続的に行うことが難しい。つまり、最終的にDXNの分析を行うまで時間が掛かるばかりでなく、土壌の採取、DXN抽出操作、及びDXN分析操作の一連の作業が煩雑で面倒であるという課題がある。
【0008】
さらに、特許文献1に記載されたDXNの抽出においては、土壌中に含まれるDXNが極めて微量であることを考慮すると、現場で土壌を採取した後、DXN抽出を行うまでに時間が経過しているから、つまり、土壌を採取した後直ちに土壌中に含まれるDXNを抽出することができないから、土壌中のDXNを精度よく定量化することができないという課題がある。
【0009】
一方、特許文献2に記載された分析手法においては、基準時間からずれて生成したイオンがノイズとして検出されることを防止しているものの、特許文献1と同様に、土壌の採取、DXN抽出操作、及びDXN分析操作を連続的に行うことが難しく、最終的にDXNの分析を行うまで時間が掛かるばかりでなく、土壌の採取、DXN抽出操作、及びDXN分析操作の一連の作業が煩雑で面倒であるという課題がある。さらに、現場で土壌を採取した後、DXN抽出を行うまでに時間が経過しているから、土壌中のDXNを精度よく定量化することができないという課題がある。
【0010】
本発明の目的は、土壌の採取、DXN等有害有機物質の抽出操作、及びDXN等有害有機物質の分析操作の一連の作業が容易で短時間に有害有機物質の分析を行うことのできる有害有機物質抽出分析方法及びその装置を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は土壌中の有害物質を精度よく分析することのできる有害有機物質抽出分析方法及びその装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、土壌中に含まれる有害有機物質を前記土壌中から抽出して分析する有害有機物質の抽出分析方法であって、前記土壌の採取現場で前記土壌中に含まれる物質をガス化又はフラグメント化した後ガス化してガス化成分とするガス化ステップと、該ガス化成分を搬送管を介して前記土壌の採取現場に停止する車に搭載された分析装置に送る搬送ステップと、前記分析装置によって前記ガス化成分から前記有害有機物質を特定して前記有害有機物質の分析を前記土壌の採取現場で行う分析ステップとを有することを特徴とする有害有機物質の抽出分析方法が得られる。
【0013】
このように、土壌の採取現場で土壌中に含まれる物質をガス化して又はフラグメント化してガス化成分とした後、土壌の採取現場に停止する車に搭載された分析装置に搬送管を介してガス化成分を送り、ガス化成分から有害有機物質を特定して有害有機物質の分析を行うようにすれば、土壌採取現場で、土壌の採取、有害有機物質の抽出操作、及び有害有機物質の分析操作の一連の作業を容易にしかも短時間に行うことができることになる。
【0014】
さらに、本発明によれば、土壌中に含まれる有害有機物質を前記土壌中から抽出して分析する有害有機物質の抽出分析装置であって、前記土壌の採取現場で前記土壌中に含まれる物質をガス化してガス化成分とするガス化装置と、前記土壌の採取現場に停止する車に搭載されるとともに前記ガス化装置に搬送管を介して接続され、前記ガス化成分から前記有害有機物質を特定して前記有害有機物質の分析を行う分析装置とを有することを特徴とする有害有機物質の抽出分析装置が得られる。
【0015】
このように、土壌の採取現場で土壌中に含まれる物質をガス化してガス化成分とした後、土壌の採取現場に停止する車に搭載された分析装置に搬送管を介してガス化成分を送り、ガス化成分から有害有機物質を特定して有害有機物質の分析を行うようにすれば、土壌採取現場で、土壌の採取、有害有機物質の抽出操作、及び有害有機物質の分析操作の一連の作業を容易にしかも短時間に行うことができるばかりでなく、現場で採取した土壌から直ちに有害有機物質を抽出・分析できる結果、土壌中の有害物質を精度よく分析することができることなる。
【0016】
前記ガス化装置は、例えば、前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、前記捕獲土壌を前記有害有機物質の沸点に応じた温度に加熱して前記捕獲土壌中に含まれる物質を前記ガス化成分とする加熱手段とを有し、前記土壌捕獲部を前記搬送管に接続する。そして、前記加熱手段は、例えば、電気ヒーター又はマイクロ波を前記捕獲土壌に照射するマグネトロンである。また、本発明では、前記土壌捕獲部内に不活性ガスを送入して前記ガス化成分を前記不活性ガスに随伴させて前記搬送管を介して前記分析装置に送る不活性ガス送入手段を有している。
【0017】
このようにして、土壌捕獲部を土壌中に挿入して土壌を所定量捕獲した後、その状態で捕獲土壌を有害有機物質の沸点に応じた温度に加熱して捕獲土壌中に含まれる物質をガス化成分とするようにすれば、容易に搬送管を介して分析装置に捕獲土壌中に含まれる物質を送ることができる。
【0018】
また、前記ガス化装置は、例えば、前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、前記土壌捕獲部内に有機溶媒を送入する送入手段と、前記捕獲土壌を前記有機溶媒の蒸発温度以上に加熱して前記土壌中に含まれる物質を前記有機溶媒とともにガス化して前記ガス化成分とする加熱手段とを有し、前記土壌捕獲部を前記搬送管に接続する。そして、前記送入手段によって前記有機溶媒とともに不活性ガスを前記土壌捕獲部に送入して前記ガス化成分を前記不活性ガスに随伴させて前記搬送管を介して前記分析装置に送る。
【0019】
このように、土壌捕獲部内に有機溶媒を送入して、捕獲土壌を有機溶媒の蒸発温度以上に加熱して土壌中に含まれる物質を有機溶媒とともにガス化するようにすれば、土壌中の有害有機物質を効率よくガス化・抽出することができることになる。
【0020】
本発明によれば、土壌中に含まれる有害有機物質を前記土壌中から抽出して分析する有害有機物質の抽出分析装置であって、前記土壌の採取現場で前記土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化してガス化成分とするガス化装置と、前記土壌の採取現場に停止する車に搭載されるとともに前記ガス化装置に搬送管を介して接続され、前記ガス化成分から前記有害有機物質を特定して前記有害有機物質の分析を行う分析装置とを有することを特徴とする有害有機物質の抽出分析装置が得られる。
【0021】
このように、土壌の採取現場で土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化してガス化成分とした後、土壌の採取現場に停止する車に搭載された分析装置に搬送管を介してガス化成分を送り、ガス化成分から有害有機物質を特定して有害有機物質の分析を行うようにすれば、土壌採取現場で、土壌の採取、有害有機物質の抽出操作、及び有害有機物質の分析操作の一連の作業を容易にしかも短時間に行うことができるという効果があり、そして、フラグメント化した後ガス化して分析装置に送っているから、土壌中の有害物質をさらに精度よく分析することができる。
【0022】
前記ガス化装置は、例えば、前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、前記捕獲土壌を前記有害有機物質がフラグメント化される温度に加熱して前記土壌中に含まれる物質を前記ガス化成分とする加熱手段とを有し、前記土壌捕獲部を前記搬送管に接続する。そして、前記過熱手段は電気ヒーター又はマイクロ波を前記捕獲土壌に照射するマグネトロンである。
【0023】
また、前記ガス化装置は、前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、前記捕獲土壌を空隙としてプラズマ放電を発生させて前記捕獲土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化して前記ガス化成分とするプラズマ発生手段とを有するようにしてもよい。
【0024】
さらに、前記ガス化装置は、前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、前記捕獲土壌に対して中性子を照射して前記捕獲土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化して前記ガス化成分とする中性子発生手段とを有するようにしてもよく、前記ガス化装置は、前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、前記捕獲土壌に対して紫外線を照射して該紫外線によって前記捕獲土壌中に生成されるオゾンあるいはヒドロキシルラジカル(いわゆるOHラジカル)によって前記捕獲土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化して前記ガス化成分とする紫外線照射手段とを有するようにしてもよい。
【0025】
加えて、前記ガス化装置は、前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、前記捕獲土壌に対して電子線を照射して該電子線によって前記捕獲土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化して前記ガス化成分とする電子線照射手段とを有するようにしてもよい。そして、いずれの場合でも、例えば、前記土壌捕獲部内に不活性ガスを送入して前記ガス化成分を前記不活性ガスに随伴させて前記搬送管を介して前記分析装置に送る。この際、前記不活性ガスとともに土壌捕獲部内に有機溶媒を送入するようにしてもよい。このように、フラグメント化する際においても、土壌捕獲部内に有機溶媒を送入すれば、フラグメント化された有害物質を効率よくガス化・抽出することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0027】
図1を参照して、本発明の実施の形態による有害物質抽出分析装置は有害物質抽出装置(以下単に抽出装置と呼ぶ:ガス化装置)11及び有害物質分析装置(以下単に分析装置と呼ぶ)12を有しており、これら抽出装置11及び分析装置12は、例えば、有害物質測定車(以下単に車と呼ぶ)13に搭載されている。そして、分析装置12は、例えば、ガスクロマトグラフィー及び質量分析計が一体となったGC/MS装置12a及びデータ処理装置12bを有している。
【0028】
以下の説明では、有害有機物質としてダイオキシン類(DXN)を土壌から抽出・分析する例について説明するが、DXN以外の他の有害有機物質についても同様にして、抽出・分析することができる。
【0029】
土壌中のDXNを抽出・分析する際には、DXNの抽出を行うべき現場に車13を移動させる。現場に到着すると、抽出装置11を車13から下ろして、抽出装置11とGC/MS装置12aとをチューブ等の管部材で接続する。管部材として、例えば、キャピラリーチューブ(キャピラリーカラム:搬送管)14が用いられる。
【0030】
ここで、図2も参照して、抽出装置11は、絶縁性の抽出装置筐体21を有しており、この抽出筐体21は、外周面21a及び内周面21bを有する筒形状体であり、外周面21a及び内周面21bで規定される空間はその両端(図中上面及び下面)で閉じられている。
【0031】
一方、内周面21bで規定される空間には、例えば、カップ形状の絶縁性土壌捕獲部22がその底面を上側にして配設されており、土壌捕獲部22の側面は内周面21bに固着されている。そして、内周面21b及び土壌捕獲部22の側面には多数の流通孔22aが形成されている。
【0032】
前述の外周面21a及び内周面21bで規定される空間には電気ヒーター23が内周面21bを囲むようにして配置されており、この電気ヒーター23はケーブル(図示せず)を介して車13に搭載された車載電源(図示せず)に電源スイッチ(図示せず)を介して接続される。また、車13にはアルゴン(Ar)等の不活性ガスが充填されたボンベ等の不活性ガス源(図示せず)が搭載されており、この不活性ガス源はバルブ(車13に備えられる:図示せず)を介して外周面21aと内周面21bとによって規定される空間に送入管(図示せず)によって連結される。
【0033】
なお、土壌捕獲部22の上面にはキャピラリーカラム14がコネクタ(図示せず)を介して取り付けられ、これによって、キャピラリーカラム14は土壌捕獲部22内に連通することになる。
【0034】
土壌を採取する際には、土壌捕獲部22の開口面を下側に向けて、抽出装置筐体21を土壌中に挿入する。これによって、土壌捕獲部22内には開口面から土壌が挿入され、土壌が土壌捕獲部22に捕獲される。土壌捕獲部22に捕獲される土壌の量は抽出装置筐体21の挿入量によるが、例えば、20グラム程度である。
【0035】
上述のようにして、土壌捕獲部22に土壌を捕獲した後、電源スイッチをオンして電気ヒーター23で土壌捕獲部22を側面から加熱する。加熱温度はDXN沸点が300〜400℃であることを考慮して、300〜400℃とする。この際、バルブを開いて不活性ガス源から不活性ガスを外周面21aと内周面21bとによって規定される空間に送る。そして、不活性ガスは流通孔を介して土壌捕獲部22内に流れ、さらに、キャピラリーカラム14の方向に流出する。
【0036】
電気ヒーター23の加熱に応じて捕獲された土壌中の有機成分等(当然DXNを含む)はガス化して、ガス状有機成分は不活性ガスに伴われて、キャピラリーカラム14を介してGC/MS装置12aに達する。GC/MS装置12aにおいて、不活性ガスに随伴されたガス化有機成分からDXN以外の有機成分(物質)を分離した後、質量分析計でDXNを定量化する。その後、DXNに関するデータはデータ処理装置12bに送られて、各種データ処理が行われることになる。
【0037】
このように、上述の例では、現場で、つまり、オンサイトで採取した土壌中のDXNを直ちに抽出・分析することができ、その結果、土壌の採取、DXNの抽出操作、及びDXNの分析操作の一連の作業を容易にしかも短時間に行うことができるばかりでなく、土壌中のDXNを精度よく分析することができることになる。
【0038】
ところで、DXNは、例えば、温度400℃〜900℃で加熱すると、所謂フラグメント化して、ガス化することが知られている。ここで、フラグメント化とは、有機物質を分解して、低分子量化することを意味する。そして、化学種(有機物質)によって分解・低分子量化する経路は決まっており、DXNでは、親分子(つまり、DXN)から−COCl,−2COClが抜けたものに低分子量化することが知られている(例えば、Collision Energy,Collision Gas,and Collision Gas Pressure Effects on the Formation of 2,3,7,8−Tetrachlorodibenzo−p−dioxn and 2,3,7,8−Tetrachlorodibenzo−p−dioxn Product Ions(Anal.Chem.1991,63,713−721参照)。そして、フラグメント化したDXNを抽出して分析すれば、より精度よくDXNを分析して定量化することができる。
【0039】
そこで、ここでは、電気ヒーター23で土壌捕獲部22を側面から加熱する際、熱温度を400〜900℃とする。これによって、電気ヒーター23の加熱に応じて、捕獲された土壌中の有機成分等(当然DXNを含む)をフラグメント化・ガス化して、低分子量化された有機成分を不活性ガスに随伴させて、キャピラリーカラム14を介してGC/MS装置12aに導入する。GC/MS装置12aにはおいては、不活性ガスに随伴された低分子量化された有機成分から、DXNが低分子量化された物質(低分子量化DXNと呼ぶ)以外の有機成分(物質)を分離した後、質量分析計で低分子量化DXNを定量化する。その後、低分子量化DXNに関するデータはデータ処理装置12bに送られて、DXNの質量に換算された後、各種データ処理が行われる。
【0040】
さらに、所定の有機溶媒(例えば、トルエン)はDXNを抽出する際に用いられる。つまり、トルエンはDXNを抽出する際に用いられ、DXNはトルエンに良く溶けるという性質がある。そこで、ここでは、前述のトルエンを不活性ガスとともに、外周面21aと内周面21bとによって規定される空間に送る。トルエン等の有機溶媒を送入する際には、車13に備えられた有機溶媒容器(図示せず)からバルブ(図示せず)を介して、不活性ガス源からの不活性ガスとともにトルエンが外周面21aと内周面21bとによって規定される空間に送られる。そして、不活性ガス及びトルエンは流通孔を介して土壌捕獲部22内に流れる。
【0041】
電気ヒーター23で土壌捕獲部22を側面から加熱する際、加熱温度はトルエンの蒸発温度よりも高く設定される(ここでは、例えば、加熱温度は約100℃に設定される)。このように、加熱温度を規定すると、土壌捕獲部22に流入したトルエンは蒸発することになり、蒸発したトルエンは土壌中の有機成分(当然DXNを含む)を伴って、不活性ガスとともに、キャピラリーカラム14を介してGC/MS装置12aに達する。
【0042】
GC/MS装置12aにおいては、不活性ガスに随伴されたトルエン及び有機成分からDXN以外の有機成分(物質)を分離した後、質量分析計でDXNを定量化する。その後、DXNに関するデータはデータ処理装置12bに送られて、各種データ処理が行われる。
【0043】
このようにして、トルエン等の有機溶媒を不活性ガスとともに土壌捕獲部22に流せば、トルエンはDXNを効率よく抽出するから、土壌中のDXNを効率よく抽出することができることになる。
【0044】
図2に示す例では、電気ヒーターを用いて、捕獲した土壌中の有機成分(DXN等)をガス化するか又はフラグメント化した後ガス化して、キャピラリーカラム14を介して分析装置12に導入するようにしたが、図4に示すように、プラズマ放電現象を用いて、捕獲した土壌中の有機成分をフラグメント化した後ガス化して分析装置12に導入するようにしてもよい。
【0045】
図3を参照して、図3において、図2に示す抽出装置11と同一の構成要素については同一の参照番号を付す。図示の例では、土壌捕獲部22の中心軸に沿って針状の電極(針電極)31が挿通されており、さらに、土壌捕獲部22の周面には、土壌捕獲部22の周面を取り囲むようにして誘電体32が配設されている。そして、土壌捕獲部22の上面にはキャピラリーカラム14がコネクタを介して取り付けられる。
【0046】
なお、図2で説明した不活性ガス源から土壌捕獲部22内に不活性ガスを送るための送入管は誘電体32を貫通して土壌捕獲部22内に臨んでいる。この際、この貫通部分は絶縁材で絶縁されることになる。
【0047】
図2で説明したようにして、土壌捕獲部22に捕獲された土壌からDXNを含む有機成分を抽出する際には、まず、不活性ガスを土壌捕獲部22に送り、土壌を乾燥させる(なお、この際には、キャピラリーカラム14とGC/MS装置12aとの接続を断つことが望ましい)。予め規定された時間不活性ガスを土壌捕獲部22に送った後、車載電源(図示せず)によって針電極31と誘電体32との間に高電圧(例えば、5kV〜15kV程度)を印加する。
【0048】
これによって、針電極31と誘電体32との間にプラズマを発生させる。つまり、土壌捕獲部22に捕獲された土壌を空隙としてプラズマを発生させる。捕獲土壌中に含まれる有機成分(有機物質)はプラズマ中の電子によって低分子量化(フラグメント化)されることになり、プラズマ放電による熱によってガス化される。このガス化有機成分は不活性ガスに伴われて、キャピラリーカラム14を介してGC/MS装置12aに達する。
【0049】
GC/MS装置12aにおいては、不活性ガスに随伴され低分子量化された有機成分から、低分子量化DXN以外の有機成分(物質)を分離した後、質量分析計で低分子量化DXNを定量化する。その後、低分子量化DXNに関するデータはデータ処理装置12bに送られて、DXNの質量に換算された後、各種データ処理が行われることになる。
【0050】
さらに、プラズマ放電を用いる代わりに、中性子によって捕獲土壌中の有機成分等をフラグメント化してガス化するようにしてもよい。この際には、図4に示すように、土壌捕獲部22の周面を囲むようにして、中性子源41を配置する(この際には、中性子源41から放出される中性子が土壌捕獲部22外に漏れることがないようにする必要がある)。なお、中性子源41として、例えば、セシウム、ストロンチウム、ラジウム等が用いられ、これら中性子源41は封止体内に封止され、土壌捕獲部22に捕獲された土壌に対してのみ中性子を放出することになる。
【0051】
捕獲土壌中に含まれる有機成分(有機物質)は中性子源41から放出される中性子によってフラグメント化され、ガス化されることになり、このガス化有機成分は不活性ガスに伴われて、キャピラリーカラム14を介してGC/MS装置12aに達する。GC/MS装置12aにはおいては、不活性ガスに随伴され低分子量化された有機成分から、低分子量化DXN以外の有機成分を分離した後、質量分析計で低分子量化DXNを定量化する。その後、低分子量化DXNに関するデータはデータ処理装置12bに送られて、DXNの質量に換算された後、各種データ処理が行われることになる。
【0052】
また、中性子源41の代わりに、紫外線ランプを用いるようにしてもよい。この場合においても、紫外線ランプを土壌捕獲部22の周面を囲むように配置して、車載電源から紫外線ランプに電力を供給し、紫外線ランプから放射される紫外線(真空において波長が130nm〜400nm程度)を、土壌捕獲部22に捕獲された土壌に照射する。そして、紫外線によって、オゾンあるいはヒドロキシルラジカル(いわゆるOHラジカル)を発生させる。このオゾンあるいはヒドロキシルラジカル(いわゆるOHラジカル)によって捕獲土壌中の有機成分を分解し、有機成分をフラグメント化・ガス化する。
【0053】
加えて、図3で説明したプラズマ放電に代えて、電子線を捕獲土壌に照射するようにしてもよい。この際には、図5に示すように、土壌捕獲部22の中心軸に沿って電極51を挿通し、さらに、土壌捕獲部22の周面に、土壌捕獲部22の周面を取り囲むようにして電極52を配設する。そして、土壌捕獲部22の上面にはキャピラリーカラム14がコネクタを介して取り付けられる。
【0054】
図2で説明したようにして土壌捕獲部22に捕獲された土壌からDXNを含む有機成分を抽出する際には、車載電源によって電極51及び52の間に高電圧を印加すると、これによって発生した電子線が土壌捕獲部22に捕獲された土壌に照射されることになる。捕獲土壌中に含まれる有機成分等は電子線によってフラグメント化・ガス化されて、ガス化有機成分は不活性ガスに伴われて、キャピラリーカラム14を介してGC/MS装置12aに達する。
【0055】
さらに、図示はしないが、マグネトロンを用いて捕獲土壌にマイクロ波を照射して、捕獲土壌を加熱して、捕獲土壌中の有機成分等をフラグメント化・ガス化するようにしてもよい。この際には、土壌捕獲部22の周面を取り囲むようにしてマグネトロンが配置されることになり、その電源は車載電源から供給される。
【0056】
なお、プラズマ放電、中性子源、紫外線、電子線、及びマイクロ波を用いて捕獲土壌中の有機成分(DXNを含む)をフラグメント化・ガス化して抽出する際においても、トルエン等の有機溶媒を不活性ガスとともに捕獲土壌に送り込むようにしてもよい。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、土壌の採取現場で土壌中に含まれる物質をガス化してガス化成分とした後、土壌の採取現場に停止する車に搭載された分析装置に搬送管を介してガス化成分を送り、ガス化成分から有害有機物質を特定して有害有機物質の分析を行うようにしたから、土壌採取現場で、土壌の採取、有害有機物質の抽出操作、及び有害有機物質の分析操作の一連の作業を容易にしかも短時間に行うことができるという効果があり、さらに、現場で採取した土壌から直ちに有害有機物質を抽出・分析できる結果、土壌中の有害物質を精度よく分析することができるという効果がある。
【0058】
本発明では、土壌捕獲部を土壌中に挿入して土壌を所定量捕獲した後、その状態で捕獲土壌を有害有機物質の沸点に応じた温度に加熱して捕獲土壌中に含まれる物質をガス化成分とするようにしたから、容易に搬送管を介して分析装置に捕獲土壌中に含まれる物質を送ることができるという効果がある。
【0059】
本発明では、土壌捕獲部内に有機溶媒を送入して、捕獲土壌を有機溶媒の蒸発温度以上に加熱して土壌中に含まれる物質を有機溶媒とともにガス化するようにしたから、土壌中の有害有機物質を効率よくガス化・抽出することができるという効果がある。
【0060】
本発明では、土壌の採取現場で土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化してガス化成分とした後、土壌の採取現場に停止する車に搭載された分析装置に搬送管を介してガス化成分を送り、ガス化成分から有害有機物質を特定して有害有機物質の分析を行うようにしたから、土壌採取現場で、土壌の採取、有害有機物質の抽出操作、及び有害有機物質の分析操作の一連の作業を容易にしかも短時間に行うことができるという効果があり、フラグメント化した後ガス化して分析装置に送っているから、土壌中の有害物質をさらに精度よく分析することができるという効果がある。そして、フラグメント化する際においても、土壌捕獲部内に有機溶媒を送入すれば、フラグメント化された有害物質を効率よくガス化・抽出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による有害有機物質抽出分析装置の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す有害有機物質抽出分析装置で用いられる抽出装置の例を示す概要図である。
【図3】図1に示す有害有機物質抽出分析装置で用いられる抽出装置の例を示す概要図である。
【図4】図1に示す有害有機物質抽出分析装置で用いられる抽出装置の例を示す概要図である。
【図5】図1に示す有害有機物質抽出分析装置で用いられる抽出装置の例を示す概要図である。
【符号の説明】
11 有害物質抽出装置
12 有害物質分析装置
13 有害物質測定車
14 キャピラリーチューブ(キャピラリーカラム)
21 抽出装置筐体
22 土壌捕獲部
23 電気ヒーター
【発明の属する技術分野】
本発明は、土壌中に含まれるダイオキシン等の有害有機物質を抽出分析するための方法及び装置に関し、特に、土壌採取現場で直ちに有害有機物質の抽出及び分析を行うことのできる方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、土壌中に含まれる有害有機物質(例えば、ダイオキシン)を抽出して、分析する際には、採取現場でダイオキシン類(以下単にDXNと呼ぶ)が含まれる土壌を採取した後、現場から離れた分析室において、ガラス器具及びトルエン等の有機溶媒を用いて採取土壌からDXNの抽出を行い、抽出媒体からシリンジ等でDXNを含む試料を採取して、ガスクロクロマトグラフィーで試料からDXN以外の物質を分離し、質量分析計でDXNを定量化している。
【0003】
上述のようなDXNの抽出及び分析を行う際の手法として、現場で採取した土壌(ダイオキシン類存在媒体)からDXNを抽出する際には、充填容器に土壌を充填し、ボンベからのキャリアガスを充填容器に流す。この際、加熱炉によって充填容器内の土壌を約200℃〜約300℃に加熱して、土壌中のDXNをガス化する。ガス化したDXNは充填容器を通過するキャリアガスに随伴されて、キャリアガスとともに吸収ビンに入り、吸収ビン中の有機溶媒に捕獲される。前述のようにして、試料を採取して、ガスクロクロマトグラフィーで試料からDXN以外の物質を分離し、質量分析計でDXNを定量化する(特許文献1参照)
【0004】
一方、DXNを分析する手法として、ある瞬間に生成したイオンパケットに対して基準時間を設定し、質量数に対応した飛行時間を計測して質量を分析する飛行時間型質量分析法が知られており、この飛行時間型質量分析法において、基準時間からずれて生成したイオンがノイズとして検出されて計測感度の低下となるという不具合を防止するため、質量分析装置における飛行時間計測に同期して、サンプルガスのイオン化を停止するようにしている(特許文献2参照)
【0005】
【特許文献1】
特開2000−180316公報(第4ページ〜第5ページ、第2図及び第3図)
【0006】
【特許文献2】
特開2002−170517公報(第4ページ、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1に記載されたDXNの抽出においては、DXNをガス化してキャリアガスに随伴させて、吸収ビン中の有機溶媒に捕獲して、DXNの抽出を行っているものの、現場で採取した土壌を、分析室において充填容器に充填した後、前述のような抽出操作を行う必要があり、しかも抽出した後、さらに分析操作を行わなければならず、土壌の採取、DXN抽出操作、及びDXN分析操作を連続的に行うことが難しい。つまり、最終的にDXNの分析を行うまで時間が掛かるばかりでなく、土壌の採取、DXN抽出操作、及びDXN分析操作の一連の作業が煩雑で面倒であるという課題がある。
【0008】
さらに、特許文献1に記載されたDXNの抽出においては、土壌中に含まれるDXNが極めて微量であることを考慮すると、現場で土壌を採取した後、DXN抽出を行うまでに時間が経過しているから、つまり、土壌を採取した後直ちに土壌中に含まれるDXNを抽出することができないから、土壌中のDXNを精度よく定量化することができないという課題がある。
【0009】
一方、特許文献2に記載された分析手法においては、基準時間からずれて生成したイオンがノイズとして検出されることを防止しているものの、特許文献1と同様に、土壌の採取、DXN抽出操作、及びDXN分析操作を連続的に行うことが難しく、最終的にDXNの分析を行うまで時間が掛かるばかりでなく、土壌の採取、DXN抽出操作、及びDXN分析操作の一連の作業が煩雑で面倒であるという課題がある。さらに、現場で土壌を採取した後、DXN抽出を行うまでに時間が経過しているから、土壌中のDXNを精度よく定量化することができないという課題がある。
【0010】
本発明の目的は、土壌の採取、DXN等有害有機物質の抽出操作、及びDXN等有害有機物質の分析操作の一連の作業が容易で短時間に有害有機物質の分析を行うことのできる有害有機物質抽出分析方法及びその装置を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は土壌中の有害物質を精度よく分析することのできる有害有機物質抽出分析方法及びその装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、土壌中に含まれる有害有機物質を前記土壌中から抽出して分析する有害有機物質の抽出分析方法であって、前記土壌の採取現場で前記土壌中に含まれる物質をガス化又はフラグメント化した後ガス化してガス化成分とするガス化ステップと、該ガス化成分を搬送管を介して前記土壌の採取現場に停止する車に搭載された分析装置に送る搬送ステップと、前記分析装置によって前記ガス化成分から前記有害有機物質を特定して前記有害有機物質の分析を前記土壌の採取現場で行う分析ステップとを有することを特徴とする有害有機物質の抽出分析方法が得られる。
【0013】
このように、土壌の採取現場で土壌中に含まれる物質をガス化して又はフラグメント化してガス化成分とした後、土壌の採取現場に停止する車に搭載された分析装置に搬送管を介してガス化成分を送り、ガス化成分から有害有機物質を特定して有害有機物質の分析を行うようにすれば、土壌採取現場で、土壌の採取、有害有機物質の抽出操作、及び有害有機物質の分析操作の一連の作業を容易にしかも短時間に行うことができることになる。
【0014】
さらに、本発明によれば、土壌中に含まれる有害有機物質を前記土壌中から抽出して分析する有害有機物質の抽出分析装置であって、前記土壌の採取現場で前記土壌中に含まれる物質をガス化してガス化成分とするガス化装置と、前記土壌の採取現場に停止する車に搭載されるとともに前記ガス化装置に搬送管を介して接続され、前記ガス化成分から前記有害有機物質を特定して前記有害有機物質の分析を行う分析装置とを有することを特徴とする有害有機物質の抽出分析装置が得られる。
【0015】
このように、土壌の採取現場で土壌中に含まれる物質をガス化してガス化成分とした後、土壌の採取現場に停止する車に搭載された分析装置に搬送管を介してガス化成分を送り、ガス化成分から有害有機物質を特定して有害有機物質の分析を行うようにすれば、土壌採取現場で、土壌の採取、有害有機物質の抽出操作、及び有害有機物質の分析操作の一連の作業を容易にしかも短時間に行うことができるばかりでなく、現場で採取した土壌から直ちに有害有機物質を抽出・分析できる結果、土壌中の有害物質を精度よく分析することができることなる。
【0016】
前記ガス化装置は、例えば、前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、前記捕獲土壌を前記有害有機物質の沸点に応じた温度に加熱して前記捕獲土壌中に含まれる物質を前記ガス化成分とする加熱手段とを有し、前記土壌捕獲部を前記搬送管に接続する。そして、前記加熱手段は、例えば、電気ヒーター又はマイクロ波を前記捕獲土壌に照射するマグネトロンである。また、本発明では、前記土壌捕獲部内に不活性ガスを送入して前記ガス化成分を前記不活性ガスに随伴させて前記搬送管を介して前記分析装置に送る不活性ガス送入手段を有している。
【0017】
このようにして、土壌捕獲部を土壌中に挿入して土壌を所定量捕獲した後、その状態で捕獲土壌を有害有機物質の沸点に応じた温度に加熱して捕獲土壌中に含まれる物質をガス化成分とするようにすれば、容易に搬送管を介して分析装置に捕獲土壌中に含まれる物質を送ることができる。
【0018】
また、前記ガス化装置は、例えば、前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、前記土壌捕獲部内に有機溶媒を送入する送入手段と、前記捕獲土壌を前記有機溶媒の蒸発温度以上に加熱して前記土壌中に含まれる物質を前記有機溶媒とともにガス化して前記ガス化成分とする加熱手段とを有し、前記土壌捕獲部を前記搬送管に接続する。そして、前記送入手段によって前記有機溶媒とともに不活性ガスを前記土壌捕獲部に送入して前記ガス化成分を前記不活性ガスに随伴させて前記搬送管を介して前記分析装置に送る。
【0019】
このように、土壌捕獲部内に有機溶媒を送入して、捕獲土壌を有機溶媒の蒸発温度以上に加熱して土壌中に含まれる物質を有機溶媒とともにガス化するようにすれば、土壌中の有害有機物質を効率よくガス化・抽出することができることになる。
【0020】
本発明によれば、土壌中に含まれる有害有機物質を前記土壌中から抽出して分析する有害有機物質の抽出分析装置であって、前記土壌の採取現場で前記土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化してガス化成分とするガス化装置と、前記土壌の採取現場に停止する車に搭載されるとともに前記ガス化装置に搬送管を介して接続され、前記ガス化成分から前記有害有機物質を特定して前記有害有機物質の分析を行う分析装置とを有することを特徴とする有害有機物質の抽出分析装置が得られる。
【0021】
このように、土壌の採取現場で土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化してガス化成分とした後、土壌の採取現場に停止する車に搭載された分析装置に搬送管を介してガス化成分を送り、ガス化成分から有害有機物質を特定して有害有機物質の分析を行うようにすれば、土壌採取現場で、土壌の採取、有害有機物質の抽出操作、及び有害有機物質の分析操作の一連の作業を容易にしかも短時間に行うことができるという効果があり、そして、フラグメント化した後ガス化して分析装置に送っているから、土壌中の有害物質をさらに精度よく分析することができる。
【0022】
前記ガス化装置は、例えば、前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、前記捕獲土壌を前記有害有機物質がフラグメント化される温度に加熱して前記土壌中に含まれる物質を前記ガス化成分とする加熱手段とを有し、前記土壌捕獲部を前記搬送管に接続する。そして、前記過熱手段は電気ヒーター又はマイクロ波を前記捕獲土壌に照射するマグネトロンである。
【0023】
また、前記ガス化装置は、前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、前記捕獲土壌を空隙としてプラズマ放電を発生させて前記捕獲土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化して前記ガス化成分とするプラズマ発生手段とを有するようにしてもよい。
【0024】
さらに、前記ガス化装置は、前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、前記捕獲土壌に対して中性子を照射して前記捕獲土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化して前記ガス化成分とする中性子発生手段とを有するようにしてもよく、前記ガス化装置は、前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、前記捕獲土壌に対して紫外線を照射して該紫外線によって前記捕獲土壌中に生成されるオゾンあるいはヒドロキシルラジカル(いわゆるOHラジカル)によって前記捕獲土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化して前記ガス化成分とする紫外線照射手段とを有するようにしてもよい。
【0025】
加えて、前記ガス化装置は、前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、前記捕獲土壌に対して電子線を照射して該電子線によって前記捕獲土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化して前記ガス化成分とする電子線照射手段とを有するようにしてもよい。そして、いずれの場合でも、例えば、前記土壌捕獲部内に不活性ガスを送入して前記ガス化成分を前記不活性ガスに随伴させて前記搬送管を介して前記分析装置に送る。この際、前記不活性ガスとともに土壌捕獲部内に有機溶媒を送入するようにしてもよい。このように、フラグメント化する際においても、土壌捕獲部内に有機溶媒を送入すれば、フラグメント化された有害物質を効率よくガス化・抽出することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0027】
図1を参照して、本発明の実施の形態による有害物質抽出分析装置は有害物質抽出装置(以下単に抽出装置と呼ぶ:ガス化装置)11及び有害物質分析装置(以下単に分析装置と呼ぶ)12を有しており、これら抽出装置11及び分析装置12は、例えば、有害物質測定車(以下単に車と呼ぶ)13に搭載されている。そして、分析装置12は、例えば、ガスクロマトグラフィー及び質量分析計が一体となったGC/MS装置12a及びデータ処理装置12bを有している。
【0028】
以下の説明では、有害有機物質としてダイオキシン類(DXN)を土壌から抽出・分析する例について説明するが、DXN以外の他の有害有機物質についても同様にして、抽出・分析することができる。
【0029】
土壌中のDXNを抽出・分析する際には、DXNの抽出を行うべき現場に車13を移動させる。現場に到着すると、抽出装置11を車13から下ろして、抽出装置11とGC/MS装置12aとをチューブ等の管部材で接続する。管部材として、例えば、キャピラリーチューブ(キャピラリーカラム:搬送管)14が用いられる。
【0030】
ここで、図2も参照して、抽出装置11は、絶縁性の抽出装置筐体21を有しており、この抽出筐体21は、外周面21a及び内周面21bを有する筒形状体であり、外周面21a及び内周面21bで規定される空間はその両端(図中上面及び下面)で閉じられている。
【0031】
一方、内周面21bで規定される空間には、例えば、カップ形状の絶縁性土壌捕獲部22がその底面を上側にして配設されており、土壌捕獲部22の側面は内周面21bに固着されている。そして、内周面21b及び土壌捕獲部22の側面には多数の流通孔22aが形成されている。
【0032】
前述の外周面21a及び内周面21bで規定される空間には電気ヒーター23が内周面21bを囲むようにして配置されており、この電気ヒーター23はケーブル(図示せず)を介して車13に搭載された車載電源(図示せず)に電源スイッチ(図示せず)を介して接続される。また、車13にはアルゴン(Ar)等の不活性ガスが充填されたボンベ等の不活性ガス源(図示せず)が搭載されており、この不活性ガス源はバルブ(車13に備えられる:図示せず)を介して外周面21aと内周面21bとによって規定される空間に送入管(図示せず)によって連結される。
【0033】
なお、土壌捕獲部22の上面にはキャピラリーカラム14がコネクタ(図示せず)を介して取り付けられ、これによって、キャピラリーカラム14は土壌捕獲部22内に連通することになる。
【0034】
土壌を採取する際には、土壌捕獲部22の開口面を下側に向けて、抽出装置筐体21を土壌中に挿入する。これによって、土壌捕獲部22内には開口面から土壌が挿入され、土壌が土壌捕獲部22に捕獲される。土壌捕獲部22に捕獲される土壌の量は抽出装置筐体21の挿入量によるが、例えば、20グラム程度である。
【0035】
上述のようにして、土壌捕獲部22に土壌を捕獲した後、電源スイッチをオンして電気ヒーター23で土壌捕獲部22を側面から加熱する。加熱温度はDXN沸点が300〜400℃であることを考慮して、300〜400℃とする。この際、バルブを開いて不活性ガス源から不活性ガスを外周面21aと内周面21bとによって規定される空間に送る。そして、不活性ガスは流通孔を介して土壌捕獲部22内に流れ、さらに、キャピラリーカラム14の方向に流出する。
【0036】
電気ヒーター23の加熱に応じて捕獲された土壌中の有機成分等(当然DXNを含む)はガス化して、ガス状有機成分は不活性ガスに伴われて、キャピラリーカラム14を介してGC/MS装置12aに達する。GC/MS装置12aにおいて、不活性ガスに随伴されたガス化有機成分からDXN以外の有機成分(物質)を分離した後、質量分析計でDXNを定量化する。その後、DXNに関するデータはデータ処理装置12bに送られて、各種データ処理が行われることになる。
【0037】
このように、上述の例では、現場で、つまり、オンサイトで採取した土壌中のDXNを直ちに抽出・分析することができ、その結果、土壌の採取、DXNの抽出操作、及びDXNの分析操作の一連の作業を容易にしかも短時間に行うことができるばかりでなく、土壌中のDXNを精度よく分析することができることになる。
【0038】
ところで、DXNは、例えば、温度400℃〜900℃で加熱すると、所謂フラグメント化して、ガス化することが知られている。ここで、フラグメント化とは、有機物質を分解して、低分子量化することを意味する。そして、化学種(有機物質)によって分解・低分子量化する経路は決まっており、DXNでは、親分子(つまり、DXN)から−COCl,−2COClが抜けたものに低分子量化することが知られている(例えば、Collision Energy,Collision Gas,and Collision Gas Pressure Effects on the Formation of 2,3,7,8−Tetrachlorodibenzo−p−dioxn and 2,3,7,8−Tetrachlorodibenzo−p−dioxn Product Ions(Anal.Chem.1991,63,713−721参照)。そして、フラグメント化したDXNを抽出して分析すれば、より精度よくDXNを分析して定量化することができる。
【0039】
そこで、ここでは、電気ヒーター23で土壌捕獲部22を側面から加熱する際、熱温度を400〜900℃とする。これによって、電気ヒーター23の加熱に応じて、捕獲された土壌中の有機成分等(当然DXNを含む)をフラグメント化・ガス化して、低分子量化された有機成分を不活性ガスに随伴させて、キャピラリーカラム14を介してGC/MS装置12aに導入する。GC/MS装置12aにはおいては、不活性ガスに随伴された低分子量化された有機成分から、DXNが低分子量化された物質(低分子量化DXNと呼ぶ)以外の有機成分(物質)を分離した後、質量分析計で低分子量化DXNを定量化する。その後、低分子量化DXNに関するデータはデータ処理装置12bに送られて、DXNの質量に換算された後、各種データ処理が行われる。
【0040】
さらに、所定の有機溶媒(例えば、トルエン)はDXNを抽出する際に用いられる。つまり、トルエンはDXNを抽出する際に用いられ、DXNはトルエンに良く溶けるという性質がある。そこで、ここでは、前述のトルエンを不活性ガスとともに、外周面21aと内周面21bとによって規定される空間に送る。トルエン等の有機溶媒を送入する際には、車13に備えられた有機溶媒容器(図示せず)からバルブ(図示せず)を介して、不活性ガス源からの不活性ガスとともにトルエンが外周面21aと内周面21bとによって規定される空間に送られる。そして、不活性ガス及びトルエンは流通孔を介して土壌捕獲部22内に流れる。
【0041】
電気ヒーター23で土壌捕獲部22を側面から加熱する際、加熱温度はトルエンの蒸発温度よりも高く設定される(ここでは、例えば、加熱温度は約100℃に設定される)。このように、加熱温度を規定すると、土壌捕獲部22に流入したトルエンは蒸発することになり、蒸発したトルエンは土壌中の有機成分(当然DXNを含む)を伴って、不活性ガスとともに、キャピラリーカラム14を介してGC/MS装置12aに達する。
【0042】
GC/MS装置12aにおいては、不活性ガスに随伴されたトルエン及び有機成分からDXN以外の有機成分(物質)を分離した後、質量分析計でDXNを定量化する。その後、DXNに関するデータはデータ処理装置12bに送られて、各種データ処理が行われる。
【0043】
このようにして、トルエン等の有機溶媒を不活性ガスとともに土壌捕獲部22に流せば、トルエンはDXNを効率よく抽出するから、土壌中のDXNを効率よく抽出することができることになる。
【0044】
図2に示す例では、電気ヒーターを用いて、捕獲した土壌中の有機成分(DXN等)をガス化するか又はフラグメント化した後ガス化して、キャピラリーカラム14を介して分析装置12に導入するようにしたが、図4に示すように、プラズマ放電現象を用いて、捕獲した土壌中の有機成分をフラグメント化した後ガス化して分析装置12に導入するようにしてもよい。
【0045】
図3を参照して、図3において、図2に示す抽出装置11と同一の構成要素については同一の参照番号を付す。図示の例では、土壌捕獲部22の中心軸に沿って針状の電極(針電極)31が挿通されており、さらに、土壌捕獲部22の周面には、土壌捕獲部22の周面を取り囲むようにして誘電体32が配設されている。そして、土壌捕獲部22の上面にはキャピラリーカラム14がコネクタを介して取り付けられる。
【0046】
なお、図2で説明した不活性ガス源から土壌捕獲部22内に不活性ガスを送るための送入管は誘電体32を貫通して土壌捕獲部22内に臨んでいる。この際、この貫通部分は絶縁材で絶縁されることになる。
【0047】
図2で説明したようにして、土壌捕獲部22に捕獲された土壌からDXNを含む有機成分を抽出する際には、まず、不活性ガスを土壌捕獲部22に送り、土壌を乾燥させる(なお、この際には、キャピラリーカラム14とGC/MS装置12aとの接続を断つことが望ましい)。予め規定された時間不活性ガスを土壌捕獲部22に送った後、車載電源(図示せず)によって針電極31と誘電体32との間に高電圧(例えば、5kV〜15kV程度)を印加する。
【0048】
これによって、針電極31と誘電体32との間にプラズマを発生させる。つまり、土壌捕獲部22に捕獲された土壌を空隙としてプラズマを発生させる。捕獲土壌中に含まれる有機成分(有機物質)はプラズマ中の電子によって低分子量化(フラグメント化)されることになり、プラズマ放電による熱によってガス化される。このガス化有機成分は不活性ガスに伴われて、キャピラリーカラム14を介してGC/MS装置12aに達する。
【0049】
GC/MS装置12aにおいては、不活性ガスに随伴され低分子量化された有機成分から、低分子量化DXN以外の有機成分(物質)を分離した後、質量分析計で低分子量化DXNを定量化する。その後、低分子量化DXNに関するデータはデータ処理装置12bに送られて、DXNの質量に換算された後、各種データ処理が行われることになる。
【0050】
さらに、プラズマ放電を用いる代わりに、中性子によって捕獲土壌中の有機成分等をフラグメント化してガス化するようにしてもよい。この際には、図4に示すように、土壌捕獲部22の周面を囲むようにして、中性子源41を配置する(この際には、中性子源41から放出される中性子が土壌捕獲部22外に漏れることがないようにする必要がある)。なお、中性子源41として、例えば、セシウム、ストロンチウム、ラジウム等が用いられ、これら中性子源41は封止体内に封止され、土壌捕獲部22に捕獲された土壌に対してのみ中性子を放出することになる。
【0051】
捕獲土壌中に含まれる有機成分(有機物質)は中性子源41から放出される中性子によってフラグメント化され、ガス化されることになり、このガス化有機成分は不活性ガスに伴われて、キャピラリーカラム14を介してGC/MS装置12aに達する。GC/MS装置12aにはおいては、不活性ガスに随伴され低分子量化された有機成分から、低分子量化DXN以外の有機成分を分離した後、質量分析計で低分子量化DXNを定量化する。その後、低分子量化DXNに関するデータはデータ処理装置12bに送られて、DXNの質量に換算された後、各種データ処理が行われることになる。
【0052】
また、中性子源41の代わりに、紫外線ランプを用いるようにしてもよい。この場合においても、紫外線ランプを土壌捕獲部22の周面を囲むように配置して、車載電源から紫外線ランプに電力を供給し、紫外線ランプから放射される紫外線(真空において波長が130nm〜400nm程度)を、土壌捕獲部22に捕獲された土壌に照射する。そして、紫外線によって、オゾンあるいはヒドロキシルラジカル(いわゆるOHラジカル)を発生させる。このオゾンあるいはヒドロキシルラジカル(いわゆるOHラジカル)によって捕獲土壌中の有機成分を分解し、有機成分をフラグメント化・ガス化する。
【0053】
加えて、図3で説明したプラズマ放電に代えて、電子線を捕獲土壌に照射するようにしてもよい。この際には、図5に示すように、土壌捕獲部22の中心軸に沿って電極51を挿通し、さらに、土壌捕獲部22の周面に、土壌捕獲部22の周面を取り囲むようにして電極52を配設する。そして、土壌捕獲部22の上面にはキャピラリーカラム14がコネクタを介して取り付けられる。
【0054】
図2で説明したようにして土壌捕獲部22に捕獲された土壌からDXNを含む有機成分を抽出する際には、車載電源によって電極51及び52の間に高電圧を印加すると、これによって発生した電子線が土壌捕獲部22に捕獲された土壌に照射されることになる。捕獲土壌中に含まれる有機成分等は電子線によってフラグメント化・ガス化されて、ガス化有機成分は不活性ガスに伴われて、キャピラリーカラム14を介してGC/MS装置12aに達する。
【0055】
さらに、図示はしないが、マグネトロンを用いて捕獲土壌にマイクロ波を照射して、捕獲土壌を加熱して、捕獲土壌中の有機成分等をフラグメント化・ガス化するようにしてもよい。この際には、土壌捕獲部22の周面を取り囲むようにしてマグネトロンが配置されることになり、その電源は車載電源から供給される。
【0056】
なお、プラズマ放電、中性子源、紫外線、電子線、及びマイクロ波を用いて捕獲土壌中の有機成分(DXNを含む)をフラグメント化・ガス化して抽出する際においても、トルエン等の有機溶媒を不活性ガスとともに捕獲土壌に送り込むようにしてもよい。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、土壌の採取現場で土壌中に含まれる物質をガス化してガス化成分とした後、土壌の採取現場に停止する車に搭載された分析装置に搬送管を介してガス化成分を送り、ガス化成分から有害有機物質を特定して有害有機物質の分析を行うようにしたから、土壌採取現場で、土壌の採取、有害有機物質の抽出操作、及び有害有機物質の分析操作の一連の作業を容易にしかも短時間に行うことができるという効果があり、さらに、現場で採取した土壌から直ちに有害有機物質を抽出・分析できる結果、土壌中の有害物質を精度よく分析することができるという効果がある。
【0058】
本発明では、土壌捕獲部を土壌中に挿入して土壌を所定量捕獲した後、その状態で捕獲土壌を有害有機物質の沸点に応じた温度に加熱して捕獲土壌中に含まれる物質をガス化成分とするようにしたから、容易に搬送管を介して分析装置に捕獲土壌中に含まれる物質を送ることができるという効果がある。
【0059】
本発明では、土壌捕獲部内に有機溶媒を送入して、捕獲土壌を有機溶媒の蒸発温度以上に加熱して土壌中に含まれる物質を有機溶媒とともにガス化するようにしたから、土壌中の有害有機物質を効率よくガス化・抽出することができるという効果がある。
【0060】
本発明では、土壌の採取現場で土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化してガス化成分とした後、土壌の採取現場に停止する車に搭載された分析装置に搬送管を介してガス化成分を送り、ガス化成分から有害有機物質を特定して有害有機物質の分析を行うようにしたから、土壌採取現場で、土壌の採取、有害有機物質の抽出操作、及び有害有機物質の分析操作の一連の作業を容易にしかも短時間に行うことができるという効果があり、フラグメント化した後ガス化して分析装置に送っているから、土壌中の有害物質をさらに精度よく分析することができるという効果がある。そして、フラグメント化する際においても、土壌捕獲部内に有機溶媒を送入すれば、フラグメント化された有害物質を効率よくガス化・抽出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による有害有機物質抽出分析装置の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す有害有機物質抽出分析装置で用いられる抽出装置の例を示す概要図である。
【図3】図1に示す有害有機物質抽出分析装置で用いられる抽出装置の例を示す概要図である。
【図4】図1に示す有害有機物質抽出分析装置で用いられる抽出装置の例を示す概要図である。
【図5】図1に示す有害有機物質抽出分析装置で用いられる抽出装置の例を示す概要図である。
【符号の説明】
11 有害物質抽出装置
12 有害物質分析装置
13 有害物質測定車
14 キャピラリーチューブ(キャピラリーカラム)
21 抽出装置筐体
22 土壌捕獲部
23 電気ヒーター
Claims (17)
- 土壌中に含まれる有害有機物質を前記土壌中から抽出して分析する有害有機物質の抽出分析方法であって、
前記土壌の採取現場で、前記土壌中に含まれる物質をガス化又はフラグメント化した後ガス化してガス化成分とするガス化ステップと、
該ガス化成分を、搬送管を介して前記土壌の採取現場に停止する車に搭載された分析装置に送る搬送ステップと、
前記分析装置によって前記ガス化成分から前記有害有機物質を特定して前記有害有機物質の分析を前記土壌の採取現場で行う分析ステップとを有し、
前記土壌の採取現場で前記有害有機物質の抽出及び分析を行うようにしたことを特徴とする有害有機物質の抽出分析方法。 - 土壌中に含まれる有害有機物質を前記土壌中から抽出して分析する有害有機物質の抽出分析装置であって、
前記土壌の採取現場で前記土壌中に含まれる物質をガス化してガス化成分とするガス化装置と、
前記土壌の採取現場に停止する車に搭載されるとともに前記ガス化装置に搬送管を介して接続され、前記ガス化成分から前記有害有機物質を特定して前記有害有機物質の分析を行う分析装置とを有することを特徴とする有害有機物質の抽出分析装置。 - 前記ガス化装置は、
前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、
前記捕獲土壌を前記有害有機物質の沸点に応じた温度に加熱して前記捕獲土壌中に含まれる物質を前記ガス化成分とする加熱手段とを有し、
前記土壌捕獲部は前記搬送管に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の有害有機物質の抽出分析装置。 - 前記加熱手段は電気ヒーター又はマイクロ波を前記捕獲土壌に照射するマグネトロンであることを特徴とする請求項3に記載の有害有機物質の抽出分析装置。
- 前記土壌捕獲部内に不活性ガスを送入して、前記ガス化成分を前記不活性ガスに随伴させて前記搬送管を介して前記分析装置に送る不活性ガス送入手段を有することを特徴とする請求項3に記載の有害有機物質の抽出分析装置。
- 前記ガス化装置は、
前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、
前記土壌捕獲部内に有機溶媒を送入する送入手段と、
前記捕獲土壌を前記有機溶媒の蒸発温度以上に加熱して前記土壌中に含まれる物質を前記有機溶媒とともにガス化して前記ガス化成分とする加熱手段とを有し、
前記土壌捕獲部は前記搬送管に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の有害有機物質の抽出分析装置。 - 前記加熱手段は電気ヒーター又はマイクロ波を前記捕獲土壌に照射するマグネトロンであることを特徴とする請求項6に記載の有害有機物質の抽出分析装置。
- 前記送入手段は、前記有機溶媒とともに不活性ガスを前記土壌捕獲部に送入して前記ガス化成分を前記不活性ガスに随伴させて前記搬送管を介して前記分析装置に送るようにしたことを特徴とする請求項6に記載の有害有機物質の抽出分析装置。
- 土壌中に含まれる有害有機物質を前記土壌中から抽出して分析する有害有機物質の抽出分析装置であって、
前記土壌の採取現場で前記土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化してガス化成分とするガス化装置と、
前記土壌の採取現場に停止する車に搭載されるとともに前記ガス化装置に搬送管を介して接続され、前記ガス化成分から前記有害有機物質を特定して前記有害有機物質の分析を行う分析装置とを有することを特徴とする有害有機物質の抽出分析装置。 - 前記ガス化装置は、
前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、
前記捕獲土壌を前記有害有機物質がフラグメント化される温度に加熱して前記土壌中に含まれる物質を前記ガス化成分とする加熱手段とを有し、
前記土壌捕獲部は前記搬送管に接続されていることを特徴とする請求項9に記載の有害有機物質の抽出分析装置。 - 前記加熱手段は電気ヒーター又はマイクロ波を前記捕獲土壌に照射するマグネトロンであることを特徴とする請求項10に記載の有害有機物質の抽出分析装置。
- 前記ガス化装置は、
前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、
前記捕獲土壌を空隙としてプラズマ放電を発生させて前記捕獲土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化して前記ガス化成分とするプラズマ発生手段とを有し、
前記土壌捕獲部は前記搬送管に接続されていることを特徴とする請求項9に記載の有害有機物質の抽出分析装置。 - 前記ガス化装置は、
前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、
前記捕獲土壌に対して中性子を照射して前記捕獲土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化して前記ガス化成分とする中性子発生手段とを有し、
前記土壌捕獲部は前記搬送管に接続されていることを特徴とする請求項9に記載の有害有機物質の抽出分析装置。 - 前記ガス化装置は、
前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、
前記捕獲土壌に対して紫外線を照射して該紫外線によって前記捕獲土壌中に生成されるオゾンあるいはヒドロキシルラジカル(いわゆるOHラジカル)によって前記捕獲土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化して前記ガス化成分とする紫外線照射手段とを有し、
前記土壌捕獲部は前記搬送管に接続されていることを特徴とする請求項9に記載の有害有機物質の抽出分析装置。 - 前記ガス化装置は、
前記土壌中に挿入され前記土壌を所定量捕獲して捕獲土壌とする土壌捕獲部と、
前記捕獲土壌に対して電子線を照射して該電子線によって前記捕獲土壌中に含まれる物質をフラグメント化した後ガス化して前記ガス化成分とする電子線照射手段とを有し、
前記土壌捕獲部は前記搬送管に接続されていることを特徴とする請求項9に記載の有害有機物質の抽出分析装置。 - 前記土壌捕獲部内に不活性ガスを送入して、前記ガス化成分を前記不活性ガスに随伴させて前記搬送管を介して前記分析装置に送る不活性ガス送入手段を有することを特徴とする請求項10〜15のいずれかに記載の有害有機物質の抽出分析装置。
- 前記不活性ガス送入手段は、前記不活性ガスとともに土壌捕獲部内に有機溶媒を送入するようにしたことを特徴とする請求項16に記載の有害有機物質の抽出分析装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002312544A JP2004144707A (ja) | 2002-10-28 | 2002-10-28 | 有害有機物質の抽出分析方法及びその装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN113984490A (zh) * | 2021-08-26 | 2022-01-28 | 四川航天系统工程研究所 | 利用侵彻生热诱导分析地外天体土壤挥发分的系统及方法 |
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2002
- 2002-10-28 JP JP2002312544A patent/JP2004144707A/ja not_active Withdrawn
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