JP2004033897A - し尿を含む廃水の凝集処理方法とその処理装置、及び該装置を備えたコンポスト化システム - Google Patents
し尿を含む廃水の凝集処理方法とその処理装置、及び該装置を備えたコンポスト化システム Download PDFInfo
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Abstract
【課題】生態系に悪影響を及ぼさず良質のコンポストを製造可能な凝集剤を用い、安定した処理を行うことができるし尿処理における凝集処理方法及びその処理装置、及びこれを備えたコンポスト化システムを提供する。
【解決手段】し尿と浄化槽汚泥を含む廃水に生物学的硝化脱窒処理を施す硝化脱窒処理槽6と、該硝化脱窒後の廃水を固液分離する第1の固液分離装置7と、該固液分離槽にて分離された処理水をpH5〜7.5の酸性〜中性条件下にてシリカ成分と鉄成分を含有する重合凝集剤の添加により凝集処理する凝集処理装置8と、該凝集処理された廃水を固液分離する第2の固液分離装置と、前記第1の固液分離装置及び第2の固液分離装置9にて分離された余剰汚泥22及び凝集汚泥23を脱水した後に好気性発酵を行うコンポスト化設備13と、からなり、し尿と浄化槽汚泥とを含む廃水からリンを含有するコンポストを製造することを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】し尿と浄化槽汚泥を含む廃水に生物学的硝化脱窒処理を施す硝化脱窒処理槽6と、該硝化脱窒後の廃水を固液分離する第1の固液分離装置7と、該固液分離槽にて分離された処理水をpH5〜7.5の酸性〜中性条件下にてシリカ成分と鉄成分を含有する重合凝集剤の添加により凝集処理する凝集処理装置8と、該凝集処理された廃水を固液分離する第2の固液分離装置と、前記第1の固液分離装置及び第2の固液分離装置9にて分離された余剰汚泥22及び凝集汚泥23を脱水した後に好気性発酵を行うコンポスト化設備13と、からなり、し尿と浄化槽汚泥とを含む廃水からリンを含有するコンポストを製造することを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、し尿を含む廃水からリン、COD等の不純物を凝集により分離除去する凝集処理方法とその処理装置、及びこれを備えたコンポスト化システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
し尿処理施設においてはし尿と浄化槽汚泥の処理が行われており、これらの混合液は微生物による有機物やアンモニア等の分解を行った後、ろ過膜等の固液分離手段により水分と濃縮汚泥に分離し、水分をさらに凝集処理等の高度処理をして放流している。放流に際しては、環境保全の面から処理水中の汚染物質を高除去率で以って処理する必要がある一方、処理過程で発生する余剰汚泥や凝集汚泥等を有価物として再利用する必要に迫られている。
【0003】
一般に、し尿処理施設における処理は図9に示されるフローにて行われている。まず、し尿受入槽1及び浄化槽汚泥受入槽2に収集されたし尿及び浄化槽汚泥は夫々除渣スクリーン3にて除渣された後にし尿貯留槽4及び浄化槽汚泥貯留槽5に一時貯留され、これらの混合配分を調整しながら硝化脱窒処理槽6に導入される。そして、脱窒素槽・硝化槽等から構成される硝化脱窒処理槽6にてし尿と浄化槽汚泥の混合液中の有機物及び窒素を同時に除去し、固液分離装置7にて混合液中の余剰汚泥22を分離する。
【0004】
さらに、凝集処理装置8にて余剰汚泥22を分離除去した液にアルミ系凝集剤24を添加して主にリンを凝集除去した後、再び固液分離装置9にて固形分を除去し、砂ろ過・活性炭吸着搭10にて液中の微小不純物を除去し、消毒した後に放流する。
一方、前記除渣スクリーン3及び固液分離装置7、9で分離された夾雑物21、余剰汚泥22及び凝集汚泥23等の汚泥は脱水装置12に導入され、脱水処理される。脱水された汚泥は焼却処理、又は好気性菌の発酵作用によりコンポスト化処理される。
【0005】
従来、凝集処理装置8における脱リン処理には、硫酸バンドとして知られる硫酸アルミニウム、硫酸バンドの改良品であるポリ塩化アルミニウム(PAC)等のアルミ系凝集剤が広く用いられてきた。
しかしながら、医学的にアルツハイマー病を引き起こす原因物質の一つとしてアルミニウムが挙げられており、アルミ系凝集剤による処理において処理水中にアルミニウムが残留した場合、水生生物を介してアルミニウムを人体に摂取してしまう可能性もある。
【0006】
更に、社会的にリン資源の枯渇化が危惧されているが、凝集処理にアルミ系凝集剤を用いた場合には排水中から凝集汚泥として回収したリンの再利用化が困難であることが判っている。これは、リンとアルミ系凝集剤との反応による主生成物であるAl(PO4)が非常に強固な結合状態であるためにリンの分離が困難であること、またアルミ系凝集剤による凝集汚泥をコンポスト化しても肥効成分であるリン酸が植物に取り込まれにくいことを原因としている。
【0007】
そこで、近年アルミ系凝集剤に替わって鉄系凝集剤を用いる凝集処理が提案されている。しかしながら、この方法では、凝集剤の添加に伴いリンの除去率は向上するものの相対的にpHの急激な低下が見られ、後段の処理に悪影響を及ぼす可能性があるばかりでなく、中和剤の大量添加を招き処理コストの増大が免れない。また、リン除去のために鉄系凝集剤を大量に添加すると処理水が着色する可能性もある等の問題がある。
【0008】
従ってこれらの問題を解消する方法として、シリカ及び鉄系凝集剤を用いた凝集処理方法が特開平7−100470号公報、特開2001−179294公報、特開2001−179284公報にて提案されている。
これらの処理方法によれば、処理対象原水を鉄系凝集剤とシリカ系凝集剤で処理することにより、アルミニウムによる生態系への悪影響を防止できる。
【0009】
しかし、これらの凝集処理は何れも鉄系凝集剤とシリカ系凝集剤を別々に添加する方法であるため、2系列の凝集剤注入設備を設けなければならず、設備コストが嵩むという問題を包含していた。さらに、夫々の凝集剤の注入量や注入濃度を個別制御する必要が生じるため制御が困難であり、また夫々の凝集剤の注入量が微妙に異なるだけでリン除去率が大幅に左右されてしまうため処理の安定性に欠けていた。
【0010】
そこで、特開2001−70708公報では鉄系凝集剤の荷電中和能力とシリカ系凝集剤の高い架橋作用が一体となったシリカ−鉄系重合凝集剤を排水処理に適用した方法が提案されている。
かかる処理方法は、pH1ないし2の強酸性のものとした酸性ケイ酸溶液を、50℃ないし80℃に加熱した状態下において撹拌して重合ケイ酸とした後、これに塩化第2鉄を添加する方法である。これにより、環境への影響を最小限に抑えるとともに、簡単に最適な仕様の凝集剤を製造することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開2001−70708における凝集剤は下水や工場廃水等を対象にしたもので、し尿のように大量の夾雑物を含有し、かつ性状が安定していないという特性を有する複雑なし尿処理に適用することは困難であり、効果的にシリカ−鉄系重合凝集剤を適用する方法が望まれている。
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、生態系に悪影響を及ぼさず良質のコンポストを製造可能な凝集剤を用い、安定した処理を行うことができるし尿処理における凝集処理方法及びその処理装置、及びこれを備えたコンポスト化システムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
まず、本発明者らは従来技術にて利用されていたアルミ系凝集剤(Al系凝集剤)である硫酸バンド、そして従来の鉄系凝集剤の代表としてポリ硫酸鉄を挙げ、シリカ成分及び鉄成分を含有するシリカ−鉄系重合凝集剤(以下Si−Fe系重合凝集剤と称す)につき、リン、CODを含むし尿生物膜処理水を対象水として凝集処理を行い、各条件を比較してその有意性を確認した。
第1に、Si−Fe系重合凝集剤と従来のAl系凝集剤及び鉄系凝集剤を凝集処理に用いた場合の夫々のリン濃度を比較することにより、両者のリン除去率の比較を行った。その結果、図4のグラフ図に示されるように硫酸バンド、ポリ硫酸鉄及びSi−Fe系重合凝集剤の全ての凝集剤において、注入率が約170mg/L(硫酸バンド:Al2O3濃度、ポリ硫酸鉄、Si−Fe系重合凝集剤:Fe濃度)のときに全リン濃度が約0.1mg/Lとなり、Si−Fe系重合凝集剤、Al系凝集剤、鉄系凝集剤ともにリンの排水放流基準値である1mg/Lを十分に満たす値が得られた。
【0013】
第2に、Si−Fe系重合凝集剤と従来のAl系凝集剤及び鉄系凝集剤を凝集処理に用いた場合の夫々のCOD濃度を比較することにより、両者のCOD除去率の比較を行った。Si−Fe系重合凝集剤の凝集pHを弱酸性としたとき、図5のグラフ図に示されるようにSi−Fe系重合凝集剤では注入率が約170mg/LでCOD除去率が約71.5%を達成するのに対し、硫酸バンドでは注入率が約340mg/Lである場合にも、Si−Fe系重合凝集剤のCOD除去率より低い約53.4%であった。ここから、Si−Fe系重合凝集剤は少ない注入量でも高いCOD処理能力を示し、硫酸バンドの半分の注入量で10〜20%高い除去率を達成する。
【0014】
第3として、リン及びCODの除去に十分な凝集剤注入量を添加したときの夫々の処理コストを比較した。硫酸バンドの注入量を約340mg/L(従来の実機処理に準拠)、実験データに基づきSi−Fe系重合凝集剤の注入量を硫酸バンドの半量の約170mg/L(図4及び図5に基づき設定)としたときの凝集処理及び活性炭吸着処理にかかる処理コストを図6に示しており、これによればSi−Fe系重合凝集剤を使用した場合の処理コストは従来と同等またはそれ以下になることが判る。
【0015】
これらの知見によりリンを多量に含有するし尿処理において、Si−Fe系重合凝集剤を利用した凝集処理を行うことは非常に効果的で有用な方法であることが確認された。
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、請求項1記載の発明は、し尿と浄化槽汚泥を含む廃水に生物学的硝化脱窒処理を施した後に固液分離し、該固液分離後の処理水をpH5〜7.5の酸性〜中性条件下にてシリカ成分と鉄成分を含有する重合凝集剤の添加により凝集処理することを特徴とする。
【0016】
かかる発明は、凝集処理に際しSi−Fe系重合凝集剤を用いているため、シリカ系凝集剤と鉄系凝集剤を別々に添加する処理に比べて凝集剤の細かな注入制御を必要とせず、安定した処理を行うことができる。
尚、前記Si−Fe系重合凝集剤は、安定化を図った重合ケイ酸に鉄塩を導入したもので、水中で多価カチオンとして作用し、鉄塩の荷電中和能力とアニオンポリマーである重合ケイ酸の高い架橋作用とを兼ね備えた重合剤である。
【0017】
また、pH5〜7.5の酸性〜中性条件下にて凝集処理を行っているため、高除去率で以ってCOD及びリンを除去することが可能となるとともに、処理コストの増大を防ぐことができる。これは、図3のSi−Fe系重合凝集剤の凝集pHと全リン、COD除去率の関係を示すグラフ図により明らかである。つまり、Si−Fe系重合凝集剤の注入量に関らず、処理水の酸性度が高くなるほどCODの除去率が向上している。処理水が中性付近になるとリンの除去率は殆ど変化が現れないがCOD除去率が50%前後まで低下している。
【0018】
図3から、処理水は酸性度が高いほどCODの高除去率が得られることがわかるが、凝集処理後の処理水を放流するためには中性に戻さなければならず、強酸性に偏ってしまうとその後のアルカリ剤の添加等により処理コストが増大してしまう惧れがあるため、出来る限り中性に近いpHであることが好ましい。従って、COD除去率が高くかつ処理コストが嵩むことのないpH5〜7.5の酸性〜中性条件とすることが必要となる。
【0019】
また、し尿及び浄化槽汚泥には有機物及び窒素等が多く含まれているため、かかる発明のように前記凝集処理の前段で生物学的硝化脱窒処理を施すことにより、凝集処理にて効率良くリン、CODを分離除去することが可能となる。さらに、前記生物学的硝化脱窒処理の前段で固液分離処理を行い、し尿、浄化槽汚泥中の夾雑物を除去することが好ましい。
【0020】
さらに、請求項2記載の発明のように、前記重合凝集剤に含有されるシリカ成分と鉄成分のモル比(Si/Fe)が0.3〜2、好ましくは0.4〜1.7、さらに好ましくは0.5〜1.0であるとよい。このように、シリカ成分及び鉄成分のモル比を前記値に調整した重合凝集剤を用いることにより、凝集剤の添加量を低減することが可能となり処理コストを削減することができる。また架橋効果に影響するシリカの含有比が含有鉄に対して高いほど発生する凝集汚泥量が増大するため、処理効率を低下させない注入量を保持しながらシリカ含有比を最小限にすることで発生する凝集汚泥量を減少させることができる。
【0021】
また、請求項3及び4記載の発明は、前記重合凝集剤に含有される鉄成分の濃度が約10〜25g/Lであり、高濃度である方が添加量等が少なくて済む。また前記重合凝集剤の添加量が、廃水中のリン濃度(mg/L)の約10倍量以下、好適には約5倍量以下の鉄濃度(mg/L)であること特徴とする。これによりリン、CODを高除去率でかつ低処理コストで以って凝集処理を行うことができる。
【0022】
請求項5乃至8記載の発明は、かかる発明を好適に実施する装置に関する発明であって、請求項5記載の発明は、
し尿と浄化槽汚泥を含む廃水に生物学的硝化脱窒処理を施した後に固液分離により分離した処理水を、pH5〜7.5の酸性〜中性条件下に保持するpH調整手段と、シリカ成分と鉄成分を含有する重合凝集剤を添加する凝集剤供給手段と、を備え、
前記処理水を前記重合凝集剤の添加により凝集処理することを特徴とする。
このとき、前記pH調整手段を前記凝集剤供給手段と同一の構成とし、酸性を示す前記重合凝集剤の添加によりpHを前記値に調整してもよい。
【0023】
請求項6記載の発明は、前記重合凝集剤に含有されるシリカ成分と鉄成分のモル比(Si/Fe)が0.3〜2、好ましくは0.4〜1.7、さらに好ましくは0.5〜1.0であることを特徴とする。さらに、請求項7記載の発明は、前記重合凝集剤に含有される鉄成分の濃度が約10〜25g/Lであることを特徴とし、請求項8記載の発明は、前記重合凝集剤の添加量が、廃水中のリン濃度(mg/L)の約10倍量以下、好適には約5倍量以下の鉄濃度(mg/L)であることを特徴とする。
【0024】
また、し尿を主成分とする廃水は重金属等の有害物質含有量が少なくコンポスト化に適していることから前記凝集処理装置を用いたコンポスト化システムに関する発明として、請求項9記載の発明は、
し尿と浄化槽汚泥を含む廃水に生物学的硝化脱窒処理を施す硝化脱窒処理槽と、
該硝化脱窒後の廃水を固液分離する第1の固液分離装置と、
該固液分離槽にて分離された処理水をpH5〜7.5の酸性〜中性条件下にてシリカ成分と鉄成分のモル比(Si/Fe)が0.3〜2である重合凝集剤の添加により凝集処理する凝集処理装置と、
該凝集処理された廃水を固液分離する第2の固液分離装置と、
前記第1の固液分離装置及び第2の固液分離装置にて分離された余剰汚泥及び凝集汚泥を脱水した後に好気性菌により好気性発酵を行うコンポスト化設備と、からなり、
し尿と浄化槽汚泥とを含む廃水からリンを含有するコンポストを製造することを特徴とする。
【0025】
かかる発明は、前記凝集装置を具備したコンポスト化システムとすることにより、従来のAl系凝集剤を利用した凝集装置を具備したシステムに比べて非常に良質な堆肥を得ることができる。
通常、凝集処理の後にコンポスト化処理を行った場合に、凝集剤として添加されたAlの水酸化物は生物処理により溶出する正リン酸を化学的に吸着しており、植物が吸収し難い形態となって存在している。しかし、Si−Fe系重合凝集剤により凝集汚泥中に固定されたリン酸は、植物がリン酸を吸収する際に分泌する根酸(クエン酸等)により可溶化され易く、植物が吸収し易い状態となる。したがって、Si−Fe系重合凝集剤を用いることにより、非常に強固な結合状態を有するAlに比べて、肥効成分であるリン酸が植物に取り込まれやすく良質な堆肥を製造することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本発明にて処理される対象処理水は、少なくともし尿と浄化槽汚泥を含み、浄化槽汚泥には合併浄化槽汚泥を含むことができる。またし尿と浄化槽汚泥とを夫々単独で処理することも可能である。
図1は本発明の実施形態に係るコンポスト化システムの全体構成図、図2は図1の別の実施形態に係るコンポスト化システムの全体構成図である。
【0027】
図1において、かかるコンポスト化システムは、し尿受入槽1、浄化槽汚泥受入槽2、除渣スクリーン3、し尿貯留槽4、浄化槽汚泥貯留槽5、生物学的硝化脱窒処理槽6、固液分離装置7、凝集処理装置8、固液分離装置9、砂ろ過・活性炭吸着搭10、脱水処理装置12、コンポスト化設備13から構成されている。
本実施形態では、まずし尿受入槽1及び浄化槽汚泥受入槽2に収集されたし尿、浄化槽汚泥を夫々除渣スクリーン3に通して夾雑物を除去し、し尿貯留槽4及び浄化槽汚泥貯留槽5に一時貯留する。
【0028】
貯留されたし尿及び浄化槽汚泥は生物学的硝化脱窒槽処理6にて後段の凝集処理に適した混合比で混合されることが好ましく、混合物中のリン濃度、COD濃度が略一定となるような混合比とするとよい。これにより凝集剤の成分比、投入量を一定として安定した凝集処理を行うことができる。
該硝化脱窒処理槽6は、槽内温度を20〜30℃程度、pH値を約7.0〜8.0の中性に保持され、該槽内ではアンモニア態窒素を好気性条件下で微生物処理し亜硝酸あるいは硝酸態窒素まで酸化する硝化工程と、これを嫌気性条件下で窒素として還元除去する脱窒工程が行われる。
【0029】
そして、固液分離装置7によって固形物を除去された処理水は凝集処理装置8に導入され、また処理水から分離された固形物の一部は前記硝化脱窒処理槽6に返送される。
前記凝集処理装置8に導入された処理水は、凝集剤供給手段によりSi−Fe系重合凝集剤20を所定量添加されるとともに、不図示のpH調整手段によりpH値を約5.0〜7.5に調整される。前記Si−Fe系重合凝集剤はシリカ成分と鉄成分のモル比(Si/Fe)が0.3〜2、好ましくは0.4〜1.7、さらに好ましくは0.5〜1.0であるとよい。
【0030】
該凝集処理装置8にて生成した凝集汚泥23は固液分離装置9にて生物膜分離等により分離され、また該凝集汚泥を除去された処理水は砂ろ過・活性炭吸着搭10にてさらに清浄化され、必要に応じて中性にpH調整された後に放流される。
尚、前記固液分離装置7、9は膜分離方式が好ましいが、その他の機械分離方式、重力沈降方式、若しくは浮上分離方式でもよい。また、凝集反応後の固液分離装置9以降にはオゾン酸化設備を設けてもよく、さらに最終処理として消毒設備を具備することが好ましい。
【0031】
一方、前記除渣スクリーン3により分離された夾雑物21、固液分離装置7、9により分離された余剰汚泥22、凝集汚泥23は、混合されて脱水処理装置12にて脱水され、コンポスト化設備13に導入される。
前記脱水処理装置12では、混合後の汚泥の含水率がおよそ80%以下となるように脱水することが好ましい
【0032】
また前記コンポスト化設備13では、空気を供給しつつ、必要に応じ特に初期段階では反応を加速するために加温しつつ、空気供給しながら攪拌下にて好気性菌により発酵処理を行う。温度条件は、発酵菌の種類にもよるが35℃〜75℃がよく、40℃〜65℃がより好適である。
かかるコンポスト化システムにより生成したコンポストは、環境及び生態系に害を与えることがなく、また植物に与えた際に植物が分泌する根酸によりコンポスト中のリン酸が可溶化し易く、肥効成分であるリン酸を植物が吸収し易い良質な堆肥となる。
【0033】
図2は、図1の別の実施形態に係るコンポスト化システムの全体構成図であり、かかるシステムでは、図1と同様にし尿受入槽1及び浄化槽汚泥受入槽2に収集されたし尿及び浄化槽汚泥中の水分は、除渣スクリーン3、し尿貯留槽4及び浄化槽汚泥貯留槽5、硝化脱窒処理槽6、固液分離装置7、凝集処理装置8、固液分離装置9、砂ろ過・活性炭吸着搭10を経てクリーンな処理水として放流される。
一方、前記除渣スクリーン3にて分離された夾雑物21及び余剰汚泥22は、まず濃縮装置14にて水分除去された後、メタン発酵槽15に導入される。
【0034】
該メタン発酵槽15は槽内温度を約35〜55℃、pH値を約6.8〜7.5に保持することが好ましく、該槽内に投入された汚泥は嫌気性条件下で嫌気性菌の作用により加水分解、発酵され、汚泥中の有機物を二酸化炭素、メタン、硫化水素等へと還元的に分解する。
さらに、メタン発酵槽15から排出された汚泥は脱水装置16により凝集汚泥23とともに所定含水率まで脱水された後にコンポスト化設備13に導入され、コンポスト化処理される。
【0035】
このように、コンポスト化設備13の前段にメタン発酵槽15を設置することにより、有機物からメタン発酵で処理して生成されるバイオガスをエネルギー源として回収することができ、また汚泥を減量化することが可能となるためコンポストの需要に反して処理汚泥量が多い場合には好適である。他にも、発生する汚泥量が多い場合には、コンポスト化設備と焼却設備を併用することができ、夾雑物21、余剰汚泥22及び凝集汚泥23のコンポスト化設備への流量を適度に制御することも可能である。
【0036】
次に、前記コンポスト化システムに適した凝集処理装置8において、投入するSi−Fe系重合凝集剤のシリカ成分と鉄成分との各モル比におけるリン除去率、COD除去率及び汚泥発生量を下記実験例1乃至3により説明する。
本実施例では、下記表1における3種類のSi−Fe系重合凝集剤を用いて、対象処理水として下記表2におけるし尿生物膜分離液により凝集処理を行った。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
(実験例1)Si−Fe系重合凝集剤−0.5
凝集処理装置にて、Si:Feモル比が0.5:1.0、含有鉄濃度が22g/L、分子量が20万〜50万のSi−Fe系重合凝集剤を、COD濃度が約41.7mg/L、全リン濃度が約33.4mg/L、リン酸濃度が約99.4mg/Lのし尿成分膜処理水に添加後、水酸化ナトリウム溶液でpHを約7.0に調整し、急速撹拌した。急速撹拌条件は、回転数を150rpm、時間を10分とした。
その後、回転数を40rpmとし20分間緩速撹拌を行いフロックを粗大化させ、次いで30分間静置させて粗大化したフロックを重力沈降させた。尚、夫々の処理条件は表3に示されるとおりである。
かかる処理につき、Si−Fe系重合凝集剤注入量を鉄濃度167mg/L、334mg/L、668mg/Lの3条件にて行った。処理液の分析結果を図7及び図8に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
(実験例2)Si−Fe系重合凝集剤−1
Si:Feモル比が1.0:1.0、含有鉄濃度が22g/L、分子量が20万〜50万のSi−Fe系重合凝集剤において、前記実験例1と同様の処理を行った。Si−Fe系重合凝集剤注入量は同様に、鉄濃度167mg/L、334mg/L、668mg/Lの3条件にて行った。処理液の分析結果を図7及び図8に示す。
【0042】
(実験例3)Si−Fe系重合凝集剤−3
Si:Feモル比が3.0:1.0、含有鉄濃度が7g/L、分子量が20万〜50万のSi−Fe系重合凝集剤において、前記実験例1と同様の処理を行った。Si−Fe系重合凝集剤注入量は同様に、鉄濃度167mg/L、334mg/L、668mg/Lの3条件にて行った。処理液の分析結果を図7及び図8に示す。
【0043】
さらに、各実験例における発生汚泥量を表4に示す。
【表4】
【0044】
(評価)
かかる実験例1乃至3によれば、図7より処理水中のリン除去率はSi−Fe系重合凝集剤に存在するシリカ成分と鉄成分の含有比に関らず、何れの注入率においてもほぼ100%の除去率を得ることができた。また、Si−Fe系重合凝集剤を鉄濃度として対象液中のリン濃度の5倍量以上添加するとリン除去率が100%を達成した。しかし、シリカ成分に対する鉄成分のモル比が小さい、つまり鉄濃度が低いSi−Fe系重合凝集剤−3は、鉄濃度が高いSi−Fe系重合凝集剤−0.5及びSi−Fe系重合凝集剤−1と同じ注入率にする為に多く添加する必要があり、凝集剤自体の添加コストが高くなる。
【0045】
また、図8よりCOD除去率はシリカ成分の含有比が高くなると大きくなる傾向が見られるが、その除去率は何れの成分比においても大差なかった。さらに、注入率の増加にともない、COD除去率は高くなった。
また、架橋効果に影響するシリカ成分の含有比が高いほど発生する汚泥量が多くなった。
【0046】
従って、これらの実験結果及び図7、8に示さないより低いSi/Fe比での実験結果より、Si−Fe系重合凝集剤の鉄成分に対するシリカ成分のモル比は、処理効率を低下させないシリカ成分のモル比を保持しながら該シリカ成分を可能な限り小さい値としたSi/Fe=0.3〜2、好ましくは0.4〜1.7、さらに好ましくは0.5〜1.0であるとよいことが判明した。
即ち、凝集剤中の鉄濃度が大きい方が凝集剤コストを低く抑えることができ、また鉄成分に対するシリカ成分の含有比が小さくてもリン及びCODを凝集する性能は殆ど衰えず、発生する凝集汚泥も少なくなる。このとき、シリカ成分のモル比を最低でも0.3以上とすることで鉄系凝集剤を使用した場合におけるpHの急激な低下や色度の悪化等の問題を引き起こすことがない。
さらに、凝集汚泥量が少ない方が単位面積あたりのリン濃度が高くなり、コンポスト化した場合の肥効性が良好になると推測される。
【0047】
【発明の効果】
以上記載のごとく本発明によれば、高除去率で以ってCOD及びリンを除去することが可能となるとともに、処理コストの増大を防ぎ、安定した処理を行うことができる。
また、凝集処理の前段で生物学的硝化脱窒処理を施すことにより、凝集処理にて効率良くリン、CODを分離除去することが可能となる。
また、シリカ成分及び鉄成分のモル比を前記値に調整した重合凝集剤を用いることにより、凝集剤の添加量を低減することが可能となり処理コストを削減することができるとともに、発生する凝集汚泥量を減少させることができる。
さらに、かかる発明における凝集装置を具備したコンポスト化システムとすることにより、従来のAl系凝集剤を利用した凝集装置を具備したシステムに比べて非常に良質な堆肥を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るコンポスト化システムの全体構成図である。
【図2】図1の別の実施形態に係るコンポスト化システムの全体構成図である。
【図3】Si−Fe系重合凝集剤の凝集pHと全リン、COD除去率の関係を示すグラフ図である。
【図4】Si−Fe系重合凝集剤とAl系凝集剤及び鉄系凝集剤を用いた場合の排水中のリン濃度を示すグラフ図である。
【図5】Si−Fe系重合凝集剤とAl系凝集剤及び鉄系凝集剤を用いた場合の排水中のCOD除去率を示すグラフ図である。
【図6】原水中のCOD濃度と処理コストの関係を示すグラフ図である。
【図7】本発明に係るSi−Fe系重合凝集剤を用いた場合のシリカ成分と鉄成分のモル比(Si/Fe)と各注入率における全リン除去率の関係を示すグラフ図である。
【図8】本発明に係るSi−Fe系重合凝集剤を用いた場合のシリカ成分と鉄成分のモル比(Si/Fe)と各注入率におけるCOD除去率の関係を示すグラフ図である。
【図9】従来のし尿処理システムの全体構成図である。
【符号の説明】
1 し尿受入槽
2 浄化槽汚泥受入槽
3 除渣スクリーン
4 し尿貯留槽
5 浄化槽汚泥貯留槽
6 生物学的硝化脱窒処理槽
7、9 固液分離装置
8 凝集処理装置
10 砂ろ過・活性炭吸着搭
12 脱水処理装置
13 コンポスト化設備
14 濃縮装置
15 メタン発酵槽
16 脱水装置
20 シリカ−鉄系重合凝集剤
21 夾雑物
22 余剰汚泥
23 凝集汚泥
24 アルミ系凝集剤
【発明の属する技術分野】
本発明は、し尿を含む廃水からリン、COD等の不純物を凝集により分離除去する凝集処理方法とその処理装置、及びこれを備えたコンポスト化システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
し尿処理施設においてはし尿と浄化槽汚泥の処理が行われており、これらの混合液は微生物による有機物やアンモニア等の分解を行った後、ろ過膜等の固液分離手段により水分と濃縮汚泥に分離し、水分をさらに凝集処理等の高度処理をして放流している。放流に際しては、環境保全の面から処理水中の汚染物質を高除去率で以って処理する必要がある一方、処理過程で発生する余剰汚泥や凝集汚泥等を有価物として再利用する必要に迫られている。
【0003】
一般に、し尿処理施設における処理は図9に示されるフローにて行われている。まず、し尿受入槽1及び浄化槽汚泥受入槽2に収集されたし尿及び浄化槽汚泥は夫々除渣スクリーン3にて除渣された後にし尿貯留槽4及び浄化槽汚泥貯留槽5に一時貯留され、これらの混合配分を調整しながら硝化脱窒処理槽6に導入される。そして、脱窒素槽・硝化槽等から構成される硝化脱窒処理槽6にてし尿と浄化槽汚泥の混合液中の有機物及び窒素を同時に除去し、固液分離装置7にて混合液中の余剰汚泥22を分離する。
【0004】
さらに、凝集処理装置8にて余剰汚泥22を分離除去した液にアルミ系凝集剤24を添加して主にリンを凝集除去した後、再び固液分離装置9にて固形分を除去し、砂ろ過・活性炭吸着搭10にて液中の微小不純物を除去し、消毒した後に放流する。
一方、前記除渣スクリーン3及び固液分離装置7、9で分離された夾雑物21、余剰汚泥22及び凝集汚泥23等の汚泥は脱水装置12に導入され、脱水処理される。脱水された汚泥は焼却処理、又は好気性菌の発酵作用によりコンポスト化処理される。
【0005】
従来、凝集処理装置8における脱リン処理には、硫酸バンドとして知られる硫酸アルミニウム、硫酸バンドの改良品であるポリ塩化アルミニウム(PAC)等のアルミ系凝集剤が広く用いられてきた。
しかしながら、医学的にアルツハイマー病を引き起こす原因物質の一つとしてアルミニウムが挙げられており、アルミ系凝集剤による処理において処理水中にアルミニウムが残留した場合、水生生物を介してアルミニウムを人体に摂取してしまう可能性もある。
【0006】
更に、社会的にリン資源の枯渇化が危惧されているが、凝集処理にアルミ系凝集剤を用いた場合には排水中から凝集汚泥として回収したリンの再利用化が困難であることが判っている。これは、リンとアルミ系凝集剤との反応による主生成物であるAl(PO4)が非常に強固な結合状態であるためにリンの分離が困難であること、またアルミ系凝集剤による凝集汚泥をコンポスト化しても肥効成分であるリン酸が植物に取り込まれにくいことを原因としている。
【0007】
そこで、近年アルミ系凝集剤に替わって鉄系凝集剤を用いる凝集処理が提案されている。しかしながら、この方法では、凝集剤の添加に伴いリンの除去率は向上するものの相対的にpHの急激な低下が見られ、後段の処理に悪影響を及ぼす可能性があるばかりでなく、中和剤の大量添加を招き処理コストの増大が免れない。また、リン除去のために鉄系凝集剤を大量に添加すると処理水が着色する可能性もある等の問題がある。
【0008】
従ってこれらの問題を解消する方法として、シリカ及び鉄系凝集剤を用いた凝集処理方法が特開平7−100470号公報、特開2001−179294公報、特開2001−179284公報にて提案されている。
これらの処理方法によれば、処理対象原水を鉄系凝集剤とシリカ系凝集剤で処理することにより、アルミニウムによる生態系への悪影響を防止できる。
【0009】
しかし、これらの凝集処理は何れも鉄系凝集剤とシリカ系凝集剤を別々に添加する方法であるため、2系列の凝集剤注入設備を設けなければならず、設備コストが嵩むという問題を包含していた。さらに、夫々の凝集剤の注入量や注入濃度を個別制御する必要が生じるため制御が困難であり、また夫々の凝集剤の注入量が微妙に異なるだけでリン除去率が大幅に左右されてしまうため処理の安定性に欠けていた。
【0010】
そこで、特開2001−70708公報では鉄系凝集剤の荷電中和能力とシリカ系凝集剤の高い架橋作用が一体となったシリカ−鉄系重合凝集剤を排水処理に適用した方法が提案されている。
かかる処理方法は、pH1ないし2の強酸性のものとした酸性ケイ酸溶液を、50℃ないし80℃に加熱した状態下において撹拌して重合ケイ酸とした後、これに塩化第2鉄を添加する方法である。これにより、環境への影響を最小限に抑えるとともに、簡単に最適な仕様の凝集剤を製造することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開2001−70708における凝集剤は下水や工場廃水等を対象にしたもので、し尿のように大量の夾雑物を含有し、かつ性状が安定していないという特性を有する複雑なし尿処理に適用することは困難であり、効果的にシリカ−鉄系重合凝集剤を適用する方法が望まれている。
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、生態系に悪影響を及ぼさず良質のコンポストを製造可能な凝集剤を用い、安定した処理を行うことができるし尿処理における凝集処理方法及びその処理装置、及びこれを備えたコンポスト化システムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
まず、本発明者らは従来技術にて利用されていたアルミ系凝集剤(Al系凝集剤)である硫酸バンド、そして従来の鉄系凝集剤の代表としてポリ硫酸鉄を挙げ、シリカ成分及び鉄成分を含有するシリカ−鉄系重合凝集剤(以下Si−Fe系重合凝集剤と称す)につき、リン、CODを含むし尿生物膜処理水を対象水として凝集処理を行い、各条件を比較してその有意性を確認した。
第1に、Si−Fe系重合凝集剤と従来のAl系凝集剤及び鉄系凝集剤を凝集処理に用いた場合の夫々のリン濃度を比較することにより、両者のリン除去率の比較を行った。その結果、図4のグラフ図に示されるように硫酸バンド、ポリ硫酸鉄及びSi−Fe系重合凝集剤の全ての凝集剤において、注入率が約170mg/L(硫酸バンド:Al2O3濃度、ポリ硫酸鉄、Si−Fe系重合凝集剤:Fe濃度)のときに全リン濃度が約0.1mg/Lとなり、Si−Fe系重合凝集剤、Al系凝集剤、鉄系凝集剤ともにリンの排水放流基準値である1mg/Lを十分に満たす値が得られた。
【0013】
第2に、Si−Fe系重合凝集剤と従来のAl系凝集剤及び鉄系凝集剤を凝集処理に用いた場合の夫々のCOD濃度を比較することにより、両者のCOD除去率の比較を行った。Si−Fe系重合凝集剤の凝集pHを弱酸性としたとき、図5のグラフ図に示されるようにSi−Fe系重合凝集剤では注入率が約170mg/LでCOD除去率が約71.5%を達成するのに対し、硫酸バンドでは注入率が約340mg/Lである場合にも、Si−Fe系重合凝集剤のCOD除去率より低い約53.4%であった。ここから、Si−Fe系重合凝集剤は少ない注入量でも高いCOD処理能力を示し、硫酸バンドの半分の注入量で10〜20%高い除去率を達成する。
【0014】
第3として、リン及びCODの除去に十分な凝集剤注入量を添加したときの夫々の処理コストを比較した。硫酸バンドの注入量を約340mg/L(従来の実機処理に準拠)、実験データに基づきSi−Fe系重合凝集剤の注入量を硫酸バンドの半量の約170mg/L(図4及び図5に基づき設定)としたときの凝集処理及び活性炭吸着処理にかかる処理コストを図6に示しており、これによればSi−Fe系重合凝集剤を使用した場合の処理コストは従来と同等またはそれ以下になることが判る。
【0015】
これらの知見によりリンを多量に含有するし尿処理において、Si−Fe系重合凝集剤を利用した凝集処理を行うことは非常に効果的で有用な方法であることが確認された。
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、請求項1記載の発明は、し尿と浄化槽汚泥を含む廃水に生物学的硝化脱窒処理を施した後に固液分離し、該固液分離後の処理水をpH5〜7.5の酸性〜中性条件下にてシリカ成分と鉄成分を含有する重合凝集剤の添加により凝集処理することを特徴とする。
【0016】
かかる発明は、凝集処理に際しSi−Fe系重合凝集剤を用いているため、シリカ系凝集剤と鉄系凝集剤を別々に添加する処理に比べて凝集剤の細かな注入制御を必要とせず、安定した処理を行うことができる。
尚、前記Si−Fe系重合凝集剤は、安定化を図った重合ケイ酸に鉄塩を導入したもので、水中で多価カチオンとして作用し、鉄塩の荷電中和能力とアニオンポリマーである重合ケイ酸の高い架橋作用とを兼ね備えた重合剤である。
【0017】
また、pH5〜7.5の酸性〜中性条件下にて凝集処理を行っているため、高除去率で以ってCOD及びリンを除去することが可能となるとともに、処理コストの増大を防ぐことができる。これは、図3のSi−Fe系重合凝集剤の凝集pHと全リン、COD除去率の関係を示すグラフ図により明らかである。つまり、Si−Fe系重合凝集剤の注入量に関らず、処理水の酸性度が高くなるほどCODの除去率が向上している。処理水が中性付近になるとリンの除去率は殆ど変化が現れないがCOD除去率が50%前後まで低下している。
【0018】
図3から、処理水は酸性度が高いほどCODの高除去率が得られることがわかるが、凝集処理後の処理水を放流するためには中性に戻さなければならず、強酸性に偏ってしまうとその後のアルカリ剤の添加等により処理コストが増大してしまう惧れがあるため、出来る限り中性に近いpHであることが好ましい。従って、COD除去率が高くかつ処理コストが嵩むことのないpH5〜7.5の酸性〜中性条件とすることが必要となる。
【0019】
また、し尿及び浄化槽汚泥には有機物及び窒素等が多く含まれているため、かかる発明のように前記凝集処理の前段で生物学的硝化脱窒処理を施すことにより、凝集処理にて効率良くリン、CODを分離除去することが可能となる。さらに、前記生物学的硝化脱窒処理の前段で固液分離処理を行い、し尿、浄化槽汚泥中の夾雑物を除去することが好ましい。
【0020】
さらに、請求項2記載の発明のように、前記重合凝集剤に含有されるシリカ成分と鉄成分のモル比(Si/Fe)が0.3〜2、好ましくは0.4〜1.7、さらに好ましくは0.5〜1.0であるとよい。このように、シリカ成分及び鉄成分のモル比を前記値に調整した重合凝集剤を用いることにより、凝集剤の添加量を低減することが可能となり処理コストを削減することができる。また架橋効果に影響するシリカの含有比が含有鉄に対して高いほど発生する凝集汚泥量が増大するため、処理効率を低下させない注入量を保持しながらシリカ含有比を最小限にすることで発生する凝集汚泥量を減少させることができる。
【0021】
また、請求項3及び4記載の発明は、前記重合凝集剤に含有される鉄成分の濃度が約10〜25g/Lであり、高濃度である方が添加量等が少なくて済む。また前記重合凝集剤の添加量が、廃水中のリン濃度(mg/L)の約10倍量以下、好適には約5倍量以下の鉄濃度(mg/L)であること特徴とする。これによりリン、CODを高除去率でかつ低処理コストで以って凝集処理を行うことができる。
【0022】
請求項5乃至8記載の発明は、かかる発明を好適に実施する装置に関する発明であって、請求項5記載の発明は、
し尿と浄化槽汚泥を含む廃水に生物学的硝化脱窒処理を施した後に固液分離により分離した処理水を、pH5〜7.5の酸性〜中性条件下に保持するpH調整手段と、シリカ成分と鉄成分を含有する重合凝集剤を添加する凝集剤供給手段と、を備え、
前記処理水を前記重合凝集剤の添加により凝集処理することを特徴とする。
このとき、前記pH調整手段を前記凝集剤供給手段と同一の構成とし、酸性を示す前記重合凝集剤の添加によりpHを前記値に調整してもよい。
【0023】
請求項6記載の発明は、前記重合凝集剤に含有されるシリカ成分と鉄成分のモル比(Si/Fe)が0.3〜2、好ましくは0.4〜1.7、さらに好ましくは0.5〜1.0であることを特徴とする。さらに、請求項7記載の発明は、前記重合凝集剤に含有される鉄成分の濃度が約10〜25g/Lであることを特徴とし、請求項8記載の発明は、前記重合凝集剤の添加量が、廃水中のリン濃度(mg/L)の約10倍量以下、好適には約5倍量以下の鉄濃度(mg/L)であることを特徴とする。
【0024】
また、し尿を主成分とする廃水は重金属等の有害物質含有量が少なくコンポスト化に適していることから前記凝集処理装置を用いたコンポスト化システムに関する発明として、請求項9記載の発明は、
し尿と浄化槽汚泥を含む廃水に生物学的硝化脱窒処理を施す硝化脱窒処理槽と、
該硝化脱窒後の廃水を固液分離する第1の固液分離装置と、
該固液分離槽にて分離された処理水をpH5〜7.5の酸性〜中性条件下にてシリカ成分と鉄成分のモル比(Si/Fe)が0.3〜2である重合凝集剤の添加により凝集処理する凝集処理装置と、
該凝集処理された廃水を固液分離する第2の固液分離装置と、
前記第1の固液分離装置及び第2の固液分離装置にて分離された余剰汚泥及び凝集汚泥を脱水した後に好気性菌により好気性発酵を行うコンポスト化設備と、からなり、
し尿と浄化槽汚泥とを含む廃水からリンを含有するコンポストを製造することを特徴とする。
【0025】
かかる発明は、前記凝集装置を具備したコンポスト化システムとすることにより、従来のAl系凝集剤を利用した凝集装置を具備したシステムに比べて非常に良質な堆肥を得ることができる。
通常、凝集処理の後にコンポスト化処理を行った場合に、凝集剤として添加されたAlの水酸化物は生物処理により溶出する正リン酸を化学的に吸着しており、植物が吸収し難い形態となって存在している。しかし、Si−Fe系重合凝集剤により凝集汚泥中に固定されたリン酸は、植物がリン酸を吸収する際に分泌する根酸(クエン酸等)により可溶化され易く、植物が吸収し易い状態となる。したがって、Si−Fe系重合凝集剤を用いることにより、非常に強固な結合状態を有するAlに比べて、肥効成分であるリン酸が植物に取り込まれやすく良質な堆肥を製造することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本発明にて処理される対象処理水は、少なくともし尿と浄化槽汚泥を含み、浄化槽汚泥には合併浄化槽汚泥を含むことができる。またし尿と浄化槽汚泥とを夫々単独で処理することも可能である。
図1は本発明の実施形態に係るコンポスト化システムの全体構成図、図2は図1の別の実施形態に係るコンポスト化システムの全体構成図である。
【0027】
図1において、かかるコンポスト化システムは、し尿受入槽1、浄化槽汚泥受入槽2、除渣スクリーン3、し尿貯留槽4、浄化槽汚泥貯留槽5、生物学的硝化脱窒処理槽6、固液分離装置7、凝集処理装置8、固液分離装置9、砂ろ過・活性炭吸着搭10、脱水処理装置12、コンポスト化設備13から構成されている。
本実施形態では、まずし尿受入槽1及び浄化槽汚泥受入槽2に収集されたし尿、浄化槽汚泥を夫々除渣スクリーン3に通して夾雑物を除去し、し尿貯留槽4及び浄化槽汚泥貯留槽5に一時貯留する。
【0028】
貯留されたし尿及び浄化槽汚泥は生物学的硝化脱窒槽処理6にて後段の凝集処理に適した混合比で混合されることが好ましく、混合物中のリン濃度、COD濃度が略一定となるような混合比とするとよい。これにより凝集剤の成分比、投入量を一定として安定した凝集処理を行うことができる。
該硝化脱窒処理槽6は、槽内温度を20〜30℃程度、pH値を約7.0〜8.0の中性に保持され、該槽内ではアンモニア態窒素を好気性条件下で微生物処理し亜硝酸あるいは硝酸態窒素まで酸化する硝化工程と、これを嫌気性条件下で窒素として還元除去する脱窒工程が行われる。
【0029】
そして、固液分離装置7によって固形物を除去された処理水は凝集処理装置8に導入され、また処理水から分離された固形物の一部は前記硝化脱窒処理槽6に返送される。
前記凝集処理装置8に導入された処理水は、凝集剤供給手段によりSi−Fe系重合凝集剤20を所定量添加されるとともに、不図示のpH調整手段によりpH値を約5.0〜7.5に調整される。前記Si−Fe系重合凝集剤はシリカ成分と鉄成分のモル比(Si/Fe)が0.3〜2、好ましくは0.4〜1.7、さらに好ましくは0.5〜1.0であるとよい。
【0030】
該凝集処理装置8にて生成した凝集汚泥23は固液分離装置9にて生物膜分離等により分離され、また該凝集汚泥を除去された処理水は砂ろ過・活性炭吸着搭10にてさらに清浄化され、必要に応じて中性にpH調整された後に放流される。
尚、前記固液分離装置7、9は膜分離方式が好ましいが、その他の機械分離方式、重力沈降方式、若しくは浮上分離方式でもよい。また、凝集反応後の固液分離装置9以降にはオゾン酸化設備を設けてもよく、さらに最終処理として消毒設備を具備することが好ましい。
【0031】
一方、前記除渣スクリーン3により分離された夾雑物21、固液分離装置7、9により分離された余剰汚泥22、凝集汚泥23は、混合されて脱水処理装置12にて脱水され、コンポスト化設備13に導入される。
前記脱水処理装置12では、混合後の汚泥の含水率がおよそ80%以下となるように脱水することが好ましい
【0032】
また前記コンポスト化設備13では、空気を供給しつつ、必要に応じ特に初期段階では反応を加速するために加温しつつ、空気供給しながら攪拌下にて好気性菌により発酵処理を行う。温度条件は、発酵菌の種類にもよるが35℃〜75℃がよく、40℃〜65℃がより好適である。
かかるコンポスト化システムにより生成したコンポストは、環境及び生態系に害を与えることがなく、また植物に与えた際に植物が分泌する根酸によりコンポスト中のリン酸が可溶化し易く、肥効成分であるリン酸を植物が吸収し易い良質な堆肥となる。
【0033】
図2は、図1の別の実施形態に係るコンポスト化システムの全体構成図であり、かかるシステムでは、図1と同様にし尿受入槽1及び浄化槽汚泥受入槽2に収集されたし尿及び浄化槽汚泥中の水分は、除渣スクリーン3、し尿貯留槽4及び浄化槽汚泥貯留槽5、硝化脱窒処理槽6、固液分離装置7、凝集処理装置8、固液分離装置9、砂ろ過・活性炭吸着搭10を経てクリーンな処理水として放流される。
一方、前記除渣スクリーン3にて分離された夾雑物21及び余剰汚泥22は、まず濃縮装置14にて水分除去された後、メタン発酵槽15に導入される。
【0034】
該メタン発酵槽15は槽内温度を約35〜55℃、pH値を約6.8〜7.5に保持することが好ましく、該槽内に投入された汚泥は嫌気性条件下で嫌気性菌の作用により加水分解、発酵され、汚泥中の有機物を二酸化炭素、メタン、硫化水素等へと還元的に分解する。
さらに、メタン発酵槽15から排出された汚泥は脱水装置16により凝集汚泥23とともに所定含水率まで脱水された後にコンポスト化設備13に導入され、コンポスト化処理される。
【0035】
このように、コンポスト化設備13の前段にメタン発酵槽15を設置することにより、有機物からメタン発酵で処理して生成されるバイオガスをエネルギー源として回収することができ、また汚泥を減量化することが可能となるためコンポストの需要に反して処理汚泥量が多い場合には好適である。他にも、発生する汚泥量が多い場合には、コンポスト化設備と焼却設備を併用することができ、夾雑物21、余剰汚泥22及び凝集汚泥23のコンポスト化設備への流量を適度に制御することも可能である。
【0036】
次に、前記コンポスト化システムに適した凝集処理装置8において、投入するSi−Fe系重合凝集剤のシリカ成分と鉄成分との各モル比におけるリン除去率、COD除去率及び汚泥発生量を下記実験例1乃至3により説明する。
本実施例では、下記表1における3種類のSi−Fe系重合凝集剤を用いて、対象処理水として下記表2におけるし尿生物膜分離液により凝集処理を行った。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
(実験例1)Si−Fe系重合凝集剤−0.5
凝集処理装置にて、Si:Feモル比が0.5:1.0、含有鉄濃度が22g/L、分子量が20万〜50万のSi−Fe系重合凝集剤を、COD濃度が約41.7mg/L、全リン濃度が約33.4mg/L、リン酸濃度が約99.4mg/Lのし尿成分膜処理水に添加後、水酸化ナトリウム溶液でpHを約7.0に調整し、急速撹拌した。急速撹拌条件は、回転数を150rpm、時間を10分とした。
その後、回転数を40rpmとし20分間緩速撹拌を行いフロックを粗大化させ、次いで30分間静置させて粗大化したフロックを重力沈降させた。尚、夫々の処理条件は表3に示されるとおりである。
かかる処理につき、Si−Fe系重合凝集剤注入量を鉄濃度167mg/L、334mg/L、668mg/Lの3条件にて行った。処理液の分析結果を図7及び図8に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
(実験例2)Si−Fe系重合凝集剤−1
Si:Feモル比が1.0:1.0、含有鉄濃度が22g/L、分子量が20万〜50万のSi−Fe系重合凝集剤において、前記実験例1と同様の処理を行った。Si−Fe系重合凝集剤注入量は同様に、鉄濃度167mg/L、334mg/L、668mg/Lの3条件にて行った。処理液の分析結果を図7及び図8に示す。
【0042】
(実験例3)Si−Fe系重合凝集剤−3
Si:Feモル比が3.0:1.0、含有鉄濃度が7g/L、分子量が20万〜50万のSi−Fe系重合凝集剤において、前記実験例1と同様の処理を行った。Si−Fe系重合凝集剤注入量は同様に、鉄濃度167mg/L、334mg/L、668mg/Lの3条件にて行った。処理液の分析結果を図7及び図8に示す。
【0043】
さらに、各実験例における発生汚泥量を表4に示す。
【表4】
【0044】
(評価)
かかる実験例1乃至3によれば、図7より処理水中のリン除去率はSi−Fe系重合凝集剤に存在するシリカ成分と鉄成分の含有比に関らず、何れの注入率においてもほぼ100%の除去率を得ることができた。また、Si−Fe系重合凝集剤を鉄濃度として対象液中のリン濃度の5倍量以上添加するとリン除去率が100%を達成した。しかし、シリカ成分に対する鉄成分のモル比が小さい、つまり鉄濃度が低いSi−Fe系重合凝集剤−3は、鉄濃度が高いSi−Fe系重合凝集剤−0.5及びSi−Fe系重合凝集剤−1と同じ注入率にする為に多く添加する必要があり、凝集剤自体の添加コストが高くなる。
【0045】
また、図8よりCOD除去率はシリカ成分の含有比が高くなると大きくなる傾向が見られるが、その除去率は何れの成分比においても大差なかった。さらに、注入率の増加にともない、COD除去率は高くなった。
また、架橋効果に影響するシリカ成分の含有比が高いほど発生する汚泥量が多くなった。
【0046】
従って、これらの実験結果及び図7、8に示さないより低いSi/Fe比での実験結果より、Si−Fe系重合凝集剤の鉄成分に対するシリカ成分のモル比は、処理効率を低下させないシリカ成分のモル比を保持しながら該シリカ成分を可能な限り小さい値としたSi/Fe=0.3〜2、好ましくは0.4〜1.7、さらに好ましくは0.5〜1.0であるとよいことが判明した。
即ち、凝集剤中の鉄濃度が大きい方が凝集剤コストを低く抑えることができ、また鉄成分に対するシリカ成分の含有比が小さくてもリン及びCODを凝集する性能は殆ど衰えず、発生する凝集汚泥も少なくなる。このとき、シリカ成分のモル比を最低でも0.3以上とすることで鉄系凝集剤を使用した場合におけるpHの急激な低下や色度の悪化等の問題を引き起こすことがない。
さらに、凝集汚泥量が少ない方が単位面積あたりのリン濃度が高くなり、コンポスト化した場合の肥効性が良好になると推測される。
【0047】
【発明の効果】
以上記載のごとく本発明によれば、高除去率で以ってCOD及びリンを除去することが可能となるとともに、処理コストの増大を防ぎ、安定した処理を行うことができる。
また、凝集処理の前段で生物学的硝化脱窒処理を施すことにより、凝集処理にて効率良くリン、CODを分離除去することが可能となる。
また、シリカ成分及び鉄成分のモル比を前記値に調整した重合凝集剤を用いることにより、凝集剤の添加量を低減することが可能となり処理コストを削減することができるとともに、発生する凝集汚泥量を減少させることができる。
さらに、かかる発明における凝集装置を具備したコンポスト化システムとすることにより、従来のAl系凝集剤を利用した凝集装置を具備したシステムに比べて非常に良質な堆肥を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るコンポスト化システムの全体構成図である。
【図2】図1の別の実施形態に係るコンポスト化システムの全体構成図である。
【図3】Si−Fe系重合凝集剤の凝集pHと全リン、COD除去率の関係を示すグラフ図である。
【図4】Si−Fe系重合凝集剤とAl系凝集剤及び鉄系凝集剤を用いた場合の排水中のリン濃度を示すグラフ図である。
【図5】Si−Fe系重合凝集剤とAl系凝集剤及び鉄系凝集剤を用いた場合の排水中のCOD除去率を示すグラフ図である。
【図6】原水中のCOD濃度と処理コストの関係を示すグラフ図である。
【図7】本発明に係るSi−Fe系重合凝集剤を用いた場合のシリカ成分と鉄成分のモル比(Si/Fe)と各注入率における全リン除去率の関係を示すグラフ図である。
【図8】本発明に係るSi−Fe系重合凝集剤を用いた場合のシリカ成分と鉄成分のモル比(Si/Fe)と各注入率におけるCOD除去率の関係を示すグラフ図である。
【図9】従来のし尿処理システムの全体構成図である。
【符号の説明】
1 し尿受入槽
2 浄化槽汚泥受入槽
3 除渣スクリーン
4 し尿貯留槽
5 浄化槽汚泥貯留槽
6 生物学的硝化脱窒処理槽
7、9 固液分離装置
8 凝集処理装置
10 砂ろ過・活性炭吸着搭
12 脱水処理装置
13 コンポスト化設備
14 濃縮装置
15 メタン発酵槽
16 脱水装置
20 シリカ−鉄系重合凝集剤
21 夾雑物
22 余剰汚泥
23 凝集汚泥
24 アルミ系凝集剤
Claims (9)
- し尿と浄化槽汚泥を含む廃水に生物学的硝化脱窒処理を施した後に固液分離し、該固液分離後の処理水をpH5〜7.5の酸性〜中性条件下にてシリカ成分と鉄成分を含有する重合凝集剤の添加により凝集処理することを特徴とするし尿を含む廃水の凝集処理方法。
- 前記重合凝集剤に含有されるシリカ成分と鉄成分のモル比(Si/Fe)が0.3〜2であることを特徴とする請求項1記載のし尿を含む廃水の凝集処理方法。
- 前記重合凝集剤に含有される鉄成分の濃度が約10〜25g/Lであることを特徴とする請求項1若しくは2記載のし尿を含む廃水の凝集処理方法。
- 前記重合凝集剤の添加量が、廃水中のリン濃度(mg/L)の約10倍量以下の鉄濃度(mg/L)であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のし尿を含む廃水の凝集処理方法。
- し尿と浄化槽汚泥を含む廃水に生物学的硝化脱窒処理を施した後に固液分離により分離した処理水を、pH5〜7.5の酸性〜中性条件下に保持するpH調整手段と、シリカ成分と鉄成分を含有する重合凝集剤を添加する凝集剤供給手段と、を備え、
前記処理水を前記重合凝集剤の添加により凝集処理することを特徴とするし尿を含む廃水の凝集処理装置。 - 前記重合凝集剤に含有されるシリカ成分と鉄成分のモル比(Si/Fe)が0.3〜2であることを特徴とする請求項5記載のし尿を含む廃水の凝集処理方法。
- 前記重合凝集剤に含有される鉄成分の濃度が約10〜25g/Lであることを特徴とする請求項5若しくは6記載のし尿を含む廃水の凝集処理方法。
- 前記重合凝集剤の添加量が、廃水中のリン濃度(mg/L)の約10倍量以下の鉄濃度(mg/L)であることを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載のし尿を含む廃水の凝集処理方法。
- し尿と浄化槽汚泥を含む廃水に生物学的硝化脱窒処理を施す硝化脱窒処理槽と、
該硝化脱窒後の廃水を固液分離する第1の固液分離装置と、
該固液分離槽にて分離された処理水をpH5〜7.5の酸性〜中性条件下にてシリカ成分と鉄成分のモル比(Si/Fe)が0.3〜2である重合凝集剤の添加により凝集処理する凝集処理装置と、
該凝集処理された廃水を固液分離する第2の固液分離装置と、
前記第1の固液分離装置及び第2の固液分離装置にて分離された余剰汚泥及び凝集汚泥を脱水した後に好気性菌により好気性発酵を行うコンポスト化設備と、からなり、
し尿と浄化槽汚泥とを含む廃水からリンを含有するコンポストを製造することを特徴とするし尿を含む廃水の凝集処理装置を備えたコンポスト化システム。
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