JP2004099689A - 含フッ素多環式化合物、それを原料とした高分子化合物、及びそれを用いたフォトレジスト材料 - Google Patents
含フッ素多環式化合物、それを原料とした高分子化合物、及びそれを用いたフォトレジスト材料 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004099689A JP2004099689A JP2002261323A JP2002261323A JP2004099689A JP 2004099689 A JP2004099689 A JP 2004099689A JP 2002261323 A JP2002261323 A JP 2002261323A JP 2002261323 A JP2002261323 A JP 2002261323A JP 2004099689 A JP2004099689 A JP 2004099689A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- fluorine
- formula
- represented
- compound
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
- 0 CCC(CCC(C)(C)C*(C)C1C(*(*)C*(CC)CC)C2C=CC1C2)*(CC)CC Chemical compound CCC(CCC(C)(C)C*(C)C1C(*(*)C*(CC)CC)C2C=CC1C2)*(CC)CC 0.000 description 2
Landscapes
- Materials For Photolithography (AREA)
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
- Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)
Abstract
【課題】新規な含フッ素化合物及びそれを用いた高分子化合物を提供する。
【解決手段】トリシクロ骨格を有し、かつ高いフッ素含量とヒドロキシ基を含有させた特定の化合物として一連の新規な含フッ素トリシクロノネン化合物、及びそれらの単量体を用いた高分子化合物を合成した。高いフッ素含量を有しながら、同一分子内に極性基を持たせることにより、幅広い波長領域すなわち真空紫外線から光通信波長域にいたるまで高い透明性を有し、かつ基板への密着性や高い成膜性を併せ持ち、また、脂環式構造を持たせることにより、高いエッチング耐性を有する新規な重合性単量体である含フッ素トリシクロノネン化合物、およびそれを用いた高分子化合物を見い出した。
【選択図】 なし
【解決手段】トリシクロ骨格を有し、かつ高いフッ素含量とヒドロキシ基を含有させた特定の化合物として一連の新規な含フッ素トリシクロノネン化合物、及びそれらの単量体を用いた高分子化合物を合成した。高いフッ素含量を有しながら、同一分子内に極性基を持たせることにより、幅広い波長領域すなわち真空紫外線から光通信波長域にいたるまで高い透明性を有し、かつ基板への密着性や高い成膜性を併せ持ち、また、脂環式構造を持たせることにより、高いエッチング耐性を有する新規な重合性単量体である含フッ素トリシクロノネン化合物、およびそれを用いた高分子化合物を見い出した。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な含フッ素トリシクロノネン化合物およびそれを用いた高分子化合物に関する。特に最近活発に研究されている真空紫外波長域のフォトレジスト材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素系化合物は、フッ素の持つ撥水性、撥油性、低吸水性、耐熱性、耐候性、耐腐食性、透明性、感光性、低屈折率性、低誘電性などの特徴から先端材料分野を中心として幅広い応用分野で使用または開発が続けられている。特に各波長における透明性挙動の特徴を生かした場合、コーティング分野で応用されており、低屈折率性と可視光の透明性を応用した反射防止膜、高波長帯(光通信波長帯)での透明性を応用した光デバイス、紫外線領域(特に真空紫外波長域)での透明性を応用したレジスト材料などの分野で活発な研究開発が行われている。これらの応用分野において共通の高分子設計としては、できるだけ多くのフッ素を導入することで各使用波長での透明性を実現しつつ、基板への密着性、高いガラス転移点(硬度)を実現させようとするものである。しかしながら、材料設計としてフッ素含量を高める工夫により各波長での透明性を高めることは種々提案されているが、フッ素含有単量体そのものに同時に親水性、密着性を高める工夫や高Tgを得る工夫をしている例は少ない。最近になって、特に真空紫外線領域の次世代F2レジスト分野においてヒドロキシ基含有のフッ素系スチレン(例えば、非特許文献1参照)や、ヒドロキシ基含有のフッ素系ノルボルネン化合物(例えば、非特許文献2参照)が発表されたことで、フッ素を含有し、かつヒドロキシ基の極性を共存させる考え方が見られるようになってきた。しかしながら、まだまだ反射防止膜に必要とされる十分な低屈折率が得られてなく、または光通信波長での透明性も十分でなく、または紫外線での透明性とエッチング耐性の両立が不十分であったりと改善するべき要因は多く存在している。また、重合反応性についても従来のフッ素系ノルボルネン化合物は、ノルボルネン環に直接フッ素原子、トリフルオロメチル基等の電子吸引性基を有し重合性二重結合の電子密度が低下することから、低収率であったり、材料として充分な分子量を得ることができなかったりと高分子化合物合成の面でも課題が残っていた。従ってこれら既存の化合物が発揮しうる機能は必ずしも充分ではなく、更に優れた高分子化合物を効率よく与え得る新規な単量体あるいはその原料の創出が望まれていた。
【0003】
【非特許文献1】
T. H. Fedynyshyn, A. Cabral, et al, J. Photopolym. Sci. Technol., 15, 655−666(2002)
【非特許文献2】
S. Ishikawa, T. Itani, et al, J. Photopolym. Sci. Technol., 14, 603−612 (2001)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高いフッ素含量を有しながら、同一分子内に極性基を持たせることで、幅広い波長領域すなわち真空紫外線から光通信波長域にいたるまで高い透明性を有し、かつ基板への密着性や高い成膜性を併せ持ち、また脂環式構造を持たせることで高いエッチング耐性を有する新規な重合性単量体である含フッ素トリシクロノネン化合物、およびそれを用いた高分子化合物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決するための鋭意検討を重ねた結果、トリシクロ骨格を有し、かつ高いフッ素含量とヒドロキシ基を含有させた特定の化合物として一連の新規な含フッ素トリシクロノネン化合物、及びそれらの単量体を用いた高分子化合物を合成し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、下記記載の1〜10の含フッ素トリシクロノネン化合物、11記載の高分子化合物、12記載のレジスト材料である。
1:
一般式(1)、または一般式(2)
【0007】
【化11】
【0008】
【化12】
【0009】
(式中R1、R2は、直鎖状、分岐状、或いは環状構造を含んでもよいアルキル基であり、その一部がフッ素化されていてもよい。また、R1、R2は、同一であっても異なっていてもよい。R3は、水素原子、塩素原子、フッ素原子、直鎖状、分岐状、或いは環状構造を含んでもよいアルキル基であり、一部がフッ素化されていてもよく、ヒドロキシル基を含有していてもよい。R4、R5は水素原子、炭素数1〜25の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基を含む基であって、その一部にフッ素原子、酸素原子、カルボニル結合を含んでもよい。また、R4、R5は同一であっても異なっていてもよい。尚、aは、1〜8の整数で表され、b、cは0〜1の整数で表される。d、e、fは0以上の整数で表され、e+f≧1、d+e+f=2aで表される。)で表される含フッ素化合物。
2:
一般式(3)
【0010】
【化13】
【0011】
(式中R1〜R5は、一般式(1)における意味と同じ。R6は、請求項1記載のR3と同じ意味であり、R3、R6は同一であっても異なっていてもよい。また、R3、R6に原子がなく二重結合となってもよい。尚、k、l、m、nは0〜1の整数で表され、少なくともm、或いはnのどちらか一方が1である。)で表される含フッ素化合物。
3:
式(4)
【0012】
【化14】
【0013】
で表される含フッ素トリシクロノネン化合物。
4:
式(5)
【0014】
【化15】
【0015】
で表される含フッ素トリシクロノネン化合物。
5:
式(6)
【0016】
【化16】
【0017】
で表される含フッ素トリシクロノネン化合物。
6:
式(7)
【0018】
【化17】
【0019】
で表される含フッ素トリシクロノネン化合物。
7:
式(8)
【0020】
【化18】
【0021】
で表される含フッ素トリシクロノネン化合物。
8:
式(9)
【0022】
【化19】
【0023】
で表される含フッ素トリシクロノネン化合物。
9:
式(10)
【0024】
【化20】
【0025】
で表される含フッ素トリシクロノネン化合物。
10:R4、R5のうち少なくともひとつに酸不安定性基(酸不安定性基は酸脱離基であって、一部に酸素原子、カルボニル結合、フッ素原子を含んでもよい。)を含有した上記1〜9のいずれかに記載の含フッ素化合物。
11:上記1〜10のいずれかに記載の重合性単量体を用いて重合または共重合された高分子化合物。
12:上記11記載の高分子化合物を含有したレジスト材料。
【0026】
本発明の新規な含フッ素トリシクロノネン化合物を用いて合成した高分子化合物は、撥水性、撥油性、低吸水性、耐熱性、耐候性、耐腐食性、透明性、感光性などの機能を有するものとなり、特に最近活発に研究されている真空紫外波長域のフォトレジスト材料に適するものとなる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の含フッ素トリシクロノネン化合物について説明する。本発明の、一般式(1)、または一般式(2)
【0028】
【化21】
【0029】
【化22】
【0030】
で表される化合物は、ノルボルネン環に直接環状脂肪族炭化水素基を融合させた多環式化合物である。また、その環内に、少なくとも1つヘキサフルオロカルビノール基を併せ持つ化合物である。一般に、フッ素含有量の増加と共に、紫外線領域から近赤外線領域に至るまでの幅広い波長領域での透明性の向上や、屈折率の低下が誘起されることが知られているが、一方、基板との密着性の低下や、成膜性の低下も誘起される。しかしながら、一般式(1)、または一般式(2)に示される化合物は、R4、或いはR5を水素原子とすることで同一分子内にフッ素原子と水酸基を含有させることができることから、基板との高い密着性、また高い成膜性をも併せ持たせることを可能とした。
【0031】
また、トリシクロノネン骨格とすることで、重合性二重結合からより遠い位置にフッ素原子を配置させることが可能であり、従来のフッ素系ノルボルネン化合物と比べ、多くのフッ素原子の導入を行っても重合反応性への影響は少なく、望む高分子化合物を得ることを可能とした。また、トリシクロノネンのような環状構造は、レジスト材料で必要なエッチング耐性に寄与する。
【0032】
本発明による一般式(1)、または一般式(2)に示される化合物において、R1、R2は、炭素原子1〜25の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基、或いは芳香族炭化水素基である。但し、高分子材料として用いる場合、炭素数が多くなるに連れ立体障害による重合性の低下や、透明性の低下、屈折率の増加が起こることから、炭素数は1〜5がより好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピル基、イソプロピル基、ブチレン基、sec−ブチレン基等が挙げられる。尚、水素原子の一部もしくは全てがフッ素原子で置換されていてもよい。
【0033】
また、R3に使用できる炭素数1〜25の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、sec−ペンチル基,ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、エチルヘキシル基、ノルボルネル基、アダマンチル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、エチニル基、フェニル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基などが例示できる。但し、高分子材料として用いる場合、炭素数が多くなるに連れ立体障害による重合性の低下や、透明性の低下、屈折率の増加が起こることから、炭素数は1〜5がより好ましい。尚、上記官能基の一部または全部がフッ素原子で置換されたものでもよい。
【0034】
本発明によるR4、R5は、水素原子、炭素数1〜25の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基であって、フッ素原子、酸素原子、カルボニル結合を含んでもよい。R4、R5の構造は特に制限されないが、使用目的によりその構造を変更できる。かかる目的としては、有機溶媒やアルカリ水溶液への溶解性、高いガラス転移点、ハンダ耐熱性を目的とした架橋反応性、光酸発生剤によるポジ型感光性やエッチング耐性などの特徴を付与させることであり、本発明の応用分野ごとに使い分けることが可能である。
【0035】
本発明のR4、R5に使用できる炭素数1〜25の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、sec−ペンチル基,ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、エチルヘキシル基、ノルボルネル基、アダマンチル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、エチニル基、フェニル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基などが例示でき、上記官能基の一部または全部がフッ素原子で置換されたものでもよい。また、酸素原子を含むものとしてアルコキシカルボニル基、アセタール基、アシル基等を挙げることができ、アルコキシカルボニル基としてはtert−ブトキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基等を例示できる。アセタール基としては、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、ベンジルオキシエチル基、フェネチルオキシエチル基、エトキシプロピル基、ベンジルオキシプロピル基、フェネチルオキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシイソブチル基の鎖状のエーテルやテトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等の環状エーテルが挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができる。更に、上記置換基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたものを使用することもできる。
【0036】
次に、本発明のR4、R5に使用できる酸不安定性基について説明する。本発明による酸不安定性基は、R4、R5のうちの一部または全部に適用される。R4、R5の酸不安定基とは、いわゆる酸脱離基であって、その一部に酸素原子、カルボニル結合、フッ素原子を含んでもよい。
【0037】
本発明に使用できる酸不安定性基としては、光酸発生剤や加水分解などの効果で脱離が起きる基であれば特に制限なく使用できるが、具体的な例示を挙げるとするならば、アルキコキシカルボニル基、アセタール基、シリル基、アシル基等を挙げることができる。アルコキシカルボニル基としてはtert−ブトキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基等を例示できる。アセタール基としては、メトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、ベンジルオキシエチル基、フェネチルオキシエチル基、エトキシプロピル基、ベンジルオキシプロピル基、フェネチルオキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシイソブチル基などが挙げられる。またR2、R3が水素原子である場合、その水酸基に対してビニルエーテルを付加させたアセタール基を使用することもできる。シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基、i−プロピルジメチルシリル基、メチルジ−i−プロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メチルジ−t−ブチルシリル基、トリ−t−ブチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができる。更に、これらの酸不安定基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたものを使用することもできる。
【0038】
酸不安定性基を使用する目的としては、その酸不安性基によるポジ型感光性および波長300nm以下の遠赤外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線もしくは電子線の露光後のアルカリ水溶液への溶解性を発現させることであり、その官能基にフッ素原子を持つものは透明性を、環状構造を含むものはエッチング耐性や高ガラス転移点などの特徴をさらに付与させるためで、本発明の応用分野ごとに使い分けることが可能である。
【0039】
次に本発明による高分子化合物について説明する。本発明の高分子化合物とは、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、式(4)〜(10)で示される含フッ素多環式化合物を単独重合、或いは共重合せしめた高分子材料のことである。
【0040】
本発明の重合性含フッ素化合物と共重合可能な単量体を具体的に例示するならば、少なくとも、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、含フッ素アリルエーテル、オレフィン、含フッ素オレフィン、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、二酸化硫黄から選ばれた一種類以上の単量体との共重合が好適である。
【0041】
本発明で使用できるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとしてはエステル側鎖について特に制限なく使用できるが、公知の化合物を例示するならば、メチルアクリレート又はメタクリレート、エチルアクリレート又はメタクリレート、n−プロピルアクリレート又はメタクリレート、イソプロピルアクリレート又はメタクリレート、n−ブチルアクリレート又はメタクリレート、イソブチルアクリレート又はメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート又はメタクリレート、n−オクチルアクリレート又はメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート又はメタクリレート、ラウリルアクリレート又はメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート又はメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート又はメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール基を含有したアクリレート又はメタクリレート、さらにアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの不飽和アミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルコキシシラン含有のビニルシランやアクリル酸またはメタクリル酸エステル、tert−ブチルアクリレート又はメタクリレート、3−オキソシクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、アダマンチルアクリレート又はメタクリレート、アルキルアダマンチルアクリレート又はメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート又はメタクリレート、ラクトン環やノルボルネン環などの環構造を有したアクリレートまたはメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などが使用できる。さらにα位にシアノ基を含有した上記アクリレート類化合物や、類似化合物としてマレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などを共重合することも可能である。
【0042】
また、本発明で使用できる含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステルとしては、フッ素原子またはフッ素原子を有する基がアクリルのα位に含有した単量体、またはエステル部位にフッ素原子を含有した置換基からなるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルであって、α位とエステル部ともにフッ素を含有した含フッ素化合物も好適である。さらにα位にシアノ基が導入されていてもよい。例えば、α位に含フッ素アルキル基が導入された単量体としては、上述した非フッ素系のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのα位にトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ノナフルオロ−n−ブチル基などが付与された単量体が好適に採用され、その場合のエステル部位には必ずしもフッ素を含有する必要はない。α−トリフルオロメチルアクリル酸アルキルエステルを共重合成分として使用した場合には、重合体の収率が比較的高く、また得られるポリマーの有機溶媒に対する溶解性が良好で好ましく採用される。
【0043】
一方、そのエステル部位にフッ素を含有する単量体としては、エステル部位としてパーフルオロアルキル基、フルオロアルキル基であるフッ素アルキル基や、またエステル部位に環状構造とフッ素原子を共存する単位であって、その環状構造が例えばフッ素原子、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロカルビノール基などで置換された含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環、含フッ素シクロヘプタン環等を有する単位などを有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルである。またエステル部位が含フッ素のt−ブチルエステル基であるアクリル酸またはメタクリル酸のエステルなども使用可能である。これらの含フッ素の官能基は、α位の含フッ素アルキル基と併用した単量体を用いることも可能である。そのような単位のうち特に代表的なものを単量体の形で例示するならば、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルアクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルメタクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルメタクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレート、6−[3、3、3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルアクリレート、6−[3、3、3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イル 2−(トリフルオロメチル)アクリレート、6−[3、3、3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルメタクリレート、1、4−ビス(1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルアクリレート、1、4−ビス(1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリレート、1、4−ビス(1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシル 2−トリフルオロメチルアクリレート、などが挙げられる。
【0044】
更に、本発明に使用できるスチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物としてはスチレン、フッ素化スチレン、ヒドロキシスチレンなどの他、ヘキサフルオロカルビノール基やその水酸基を修飾した官能基が一つ又は複数個結合した化合物が使用できる。すなわち、フッ素原子またはトリフルオロメチル基で水素を置換したスチレンまたはヒドロキシスチレン、α位にハロゲン、アルキル基、含フッ素アルキル基が結合した上記スチレン、パーフルオロビニル基含有のスチレンなどが好ましく使用可能である。
【0045】
また、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、含フッ素アリルエーテルとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基を含有してもよいアルキルビニルエーテルあるいはアルキルアリルエーテルなどが使用できる。また、シクロヘキシル基、ノルボルネル基、芳香環やその環状構造内に水素やカルボニル結合を有した環状型ビニル、アリルエーテルや、上記官能基の水素の一部または全部がフッ素原子で置換された含フッ素ビニルエーテル、含フッ素アリルエーテルも使用できる。
【0046】
なお、ビニルエステル、ビニルシラン、オレフィン、含フッ素オレフィン、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物やその他の重合性不飽和結合を含有した化合物であれば特に制限なく使用することが可能である。オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、イソブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどを、含フッ素オレフィンとしてはフッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテンなどが例示できる。
【0047】
ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物は、一核または複数の核構造を有するノルボルネン単量体である。この際、含フッ素オレフィン、アリルアルコール、含フッ素アリルアルコール、ホモアリルアルコール、含フッ素ホモアリルアルコールがアクリル酸、α−フルオロアクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、メタクリル酸、本明細書で記載したすべてのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステル、2−(ベンゾイルオキシ)ペンタフルオロプロパン、2−(メトキシエトキシメチルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(テトラヒドロキシピラニルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(ベンゾイルオキシ)トリフルオロエチレン、2−(メトキメチルオキシ)トリフルオロエチレンなどの不飽和化合物と、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンとのDiels−Alder付加反応で生成するノルボルネン化合物で、3−(5−ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2−イル)−1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2−プロパノール等が例示できる。
【0048】
なお、以上の共重合性化合物は単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0049】
本発明の含フッ素化合物の共重合組成比としては特に制限はなく採用されるが、10〜100%の間で選択することが好ましい。更に好ましくは30〜100%であり、30%未満では応用分野の波長域によっては十分な透明性や成膜性が発現しない。
【0050】
本発明にかかる高分子化合物の重合方法としては、一般的に使用される方法であれば特に制限されないが、ラジカル重合、イオン重合などが好ましく、場合により、配位アニオン重合、リビングアニオン重合、開環メタセシス重合、ビニレン重合などを使用することも可能である。
【0051】
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル開始源の存在下で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合または乳化重合などの公知の重合方法により、回分式、半連続式または連続式のいずれかの操作で行えばよい。
【0052】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてアゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられ、とくにアゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド、i−ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等が好ましい。
【0053】
重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。また、重合反応においては、重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、ラジカル重合を阻害しないものが好ましく、代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル系、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤などがある。また水、エーテル系、環状エーテル系、フロン系、芳香族系、などの種々の溶媒を使用することも可能である。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。また、メルカプタンのような分子量調整剤を併用してもよい。共重反応の反応温度はラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源により適宜変更され、通常は20〜200度が好ましく、特に30〜140度が好ましい。
【0054】
一方、開環メタセシス重合は、共触媒存在下、IV、V、VI、VII属の遷移金属触媒を用いればよく、溶媒存在下、公知の方法を用いればよい。
【0055】
重合触媒としては特に限定されるものではないが、例としてTi系、V系、
Mo系、W系触媒が挙げられ、特に、塩化チタン(IV)、塩化バナジウム(IV)、バナジウムトリスアセチルアセトナート、バナジウムビスアセチルアセトナートジクロリド、塩化モリブデン(VI)、塩化タングステン(VI)などが好ましい。触媒量としては、使用モノマーに対して10mol%から0.001mol%、好ましくは、1mol%から0.01mol%である。
【0056】
共触媒としては、アルキルアルミニウム、アルキルすずなどが挙げられ、特に、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−3−メチルブチルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−3−メチルペンチルアルミニウム、トリ−4−メチルペンチルアルミニウム、トリ−2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ−3−メチルヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルアルミニウム類、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジアイオダイド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライドなどのモノアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、プロピルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライドなどのアルキルアルミニウムセスキクロライド類などのアルミニウム系や、テトラ−n−ブチルすず、テトラフェニルすず、トリフェニルクロロすずなどが例示できる。共触媒量は、遷移金属触媒に対してモル比で、100当量以下、好ましくは30当量以下の範囲である。
【0057】
また、重合溶媒としては重合反応を阻害しなければよく、代表的なものとして、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素などが例示できる。また、これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。反応温度は、通常は−70から200度が好ましく、特に−30から60度が好ましい。
【0058】
ビニレン重合は、共触媒存在下、鉄、ニッケル、ロジウム、パラジウム、白金などのVIII属の遷移金属触媒や、ジルコニウム、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステンなどのIVBからVIB属の金属触媒を用いればよく、溶媒存在下、公知の方法を用いればよい。
【0059】
重合触媒としては特に限定されるものではないが、例として特に、鉄(II)クロライド、鉄(III)クロライド、鉄(II)ブロマイド、鉄(III)ブロマイド、鉄(II)アセテート、鉄(III)アセチルアセトナート、フェロセン、ニッケロセン、ニッケル(II)アセテート、ニッケルブロマイド、ニッケルクロライド、ジクロロヘキシルニッケルアセテート、ニッケルラクテート、ニッケルオキサイド、ニッケルテトラフルオロボレート、ビス(アリル)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ニッケル(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナートテトラハイドレート、ニッケル(II)トリフルオロアセチルアセトナートジハイドレート、ニッケル(II)アセチルアセトナートテトラハイドレート、塩化ロジウム(III)、ロジウムトリス(トリフェニルホスフィン)トリクロライド、パラジウム(II)ビス(トリフルオロアセテート)、パラジウム(II)ビス(アセチルアセトナート)、パラジウム(II)2−エチルヘキサノエート、パラジウム(II)ブロマイド、パラジウム(II)クロライド、パラジウム(II)アイオダイド、パラジウム(II)オキサイド、モノアセトニトリルトリス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)テトラフルオロボレート、テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)テトラフルオロボレート、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート、パラジウムビス(アセトニトリル)ジクロライド、パラジウムビス(ジメチルスルホキサイド)ジクロライド、プラチニウムビス(トリエチルホスフィン)ハイドロブロマイドなどのVIII属の遷移金属類や、塩化バナジウム(IV)、バナジウムトリスアセチルアセトナート、バナジウムビスアセチルアセトナートジクロリド、トリメトキシ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(IV)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどのIVBからVIB属の遷移金属類が好ましい。触媒量としては、使用モノマーに対して10mol%から0.001mol%、好ましくは、1mol%から0.01mol%である。
【0060】
共触媒としては、アルキルアルミノキサン、アルキルアルミニウムなどが挙げられ、特に、メチルアルミノキサン(MAO)や、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−3−メチルブチルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−3−メチルペンチルアルミニウム、トリ−4−メチルペンチルアルミニウム、トリ−2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ−3−メチルヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルアルミニウム類、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジアイオダイド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライドなどのモノアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、プロピルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライドなどのアルキルアルミニウムセスキクロライド類などが例示できる。共触媒量は、メチルアルミノキサンの場合、Al換算で50から500当量、その他アルキルアルミニウムの場合、遷移金属触媒に対してモル比で、100当量以下、好ましくは30当量以下の範囲である。
【0061】
また、重合溶媒としては重合反応を阻害しなければよく、代表的なものとして、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−シクロヘキシルピロリドンなどが例示できる。また、これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。反応温度は、通常は−70から200度が好ましく、特に−40から80度が好ましい。
【0062】
このようにして得られる本発明にかかる高分子化合物の溶液または分散液から、媒質である有機溶媒または水を除去する方法としては、公知の方法のいずれも利用できるが、例を挙げれば再沈殿ろ過または減圧下での加熱留出等の方法がある。
【0063】
得られた本発明の高分子化合物の数平均分子量としては、通常、1,000〜100,000、好ましくは3,000〜50,000の範囲が適切である。
【0064】
次に本発明による応用分野について記述する。本発明はコーティング用途を基本としており、通常は本発明の高分子化合物を有機溶媒に溶解させて成膜させることで応用に供する。したがって、使用する有機溶媒としては高分子化合物が可溶であれば特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類やエチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、又はジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類、キシレン、トルエンなどの芳香族系溶媒、フロン、代替フロン、パーフルオロ化合物、ヘキサフルオロイソプロピルアルコールなどのフッ素系溶剤、塗布性を高める目的で高沸点弱溶剤であるターペン系の石油ナフサ溶媒やパラフィン系溶媒などが使用可能である。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0065】
本発明によるレジスト材料としては、酸の作用によりアルカリ水溶液に対する溶解性が変化する溶解抑制剤と高分子化合物の双方を含有するもの、または、高分子化合物に溶解抑制剤が組み込まれたものであり、これらは、特に、ポジ型レジスト材料として好適となり、最近の半導体の微細化に対応した248nmKrFまたは193nmArFエキシマレーザーまたは157nmに代表される真空紫外領域のF2レーザー用ポジ型レジスト、電子ビームレジスト、X線用のレジストとしても好適である。すなわち、酸の作用によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が変化する溶解抑制剤は、一般式(1)、または一般式(2)のR4、R5の少なくともひとつが酸不安定基になるようにしたものであるが、その構造は特に制限なく使用可能である。一般的な酸不安定基としては前述した酸不安定基であり、酸によって切断される官能基である。このような溶解抑制剤を用いた高分子化合物は活性エネルギー線が照射される前にはアルカリ性水溶液に不溶もしくは難溶であって、活性エネルギー線を照射したことにより酸発生剤から発生した酸により加水分解されアルカリ性水溶液に対して溶解性を示すようになる。
【0066】
本発明組成物に用いられる光酸発生剤については特に制限はなく、化学増幅型レジストの酸発生剤として用いられるものの中から、任意のものを選択して使用することができる。このような酸発生剤の例としては、ビススルホニルジアゾメタン類、ニトロベンジル誘導体類、オニウム塩類、ハロゲン含有トリアジン化合物類、シアノ基含有オキシムスルホネート化合物類、その他のオキシムスルホネート化合物などが挙げられる。これらの酸発生剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その含有量は、高分子化合物100重量部に対して、通常0.5〜20重量部の範囲で選ばれる。この量が0.5重量部未満では像形成性が不十分であるし、20重量部を超えると均一な溶液が形成されにくく、保存安定性が低下する傾向がみられる。
【0067】
本発明のレジストの使用方法としては、従来のフォトレジスト技術のレジストパターン形成方法が用いられるが、好適に行うには、まずシリコンウエーハのような支持体上に、レジスト組成物の溶液をスピンナーなどで塗布し、乾燥して感光層を形成させ、これに露光装置などにより、エキシマレーザー光を所望のマスクパターンを介して照射し、加熱する。次いでこれを現像液、例えば0.1から10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液などを用いて現像処理する。この形成方法でマスクパターンに忠実なパターンを得ることができる。
【0068】
本発明の応用分野は、さらに所望により混和性のある添加物、例えば付加的樹脂、クエンチャー、可塑剤、安定剤、着色剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、相溶化剤、密着剤、酸化防止剤などの種々添加剤を含有させることができる。
【0069】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0070】
「実施例1」 一般式(3)に示す化合物の合成
【0071】
【化23】
【0072】
一般式(3)で示される化合物は、式(11)の2,5−ノルボルナジエンと一般式(12)で表される含フッ素オレフィンの[2+2]光付加反応により誘導される。光源は高圧水銀ランプを用い、また反応器はパイレックス(R)製ガラスチューブ、或いはパイレックス(R)製試験管を用いることで合成可能である。また別法として、2,5−ノルボルナジエンの光異性化体であるクラドリシクレンと一般式(12)で表される含フッ素オレフィンとの熱的付加反応からも誘導できる。
【0073】
実験例として、式(6)の合成法について説明する。
【0074】
10mlパイレックス(R)製ガラスチューブに、1,1,1,6,6,6−ヘキサフルオロ−2,6−ジトリフルオロメチル−3−ヘキシン−2,6−ジオール(2.66g)、2,5−ノルボルナジエン(0.68g)、ベンゾフェノン(33.4mg)を混合した。この反応管をドライアイスアセトンバスに浸し、脱気、窒素置換を行った後、40から45度の水浴に浸し高圧水銀ランプにて7時間光照射した。この混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/10)により分離精製し、化合物(6)(2.57g,収率77%)を得た。
【0075】
得られた化合物はガスクロマトグラフィーにて2種の異性体を与えるため、核磁気共鳴法のみによる化合物の同定は困難となるが、1H−NMRにおいて二重結合のプロトン(δ:6.27)、橋頭位のプロトン(δ:3.02)が観測されること、また質量分析法により親イオンが検出(EI法:m/e 452(M+))されたことから、望む化合物(6)の生成を確認した。
【0076】
式(4)、(5)、(7)〜(10)についても上記実験法と同様の操作で行った。結果を以下の表1に示した。
【0077】
【表1】
【0078】
「実施例2」 式(7)の開環重合体の合成
【0079】
【化24】
【0080】
還流冷却管、攪拌子を備えた三口フラスコに、塩化タングステン(VI)(9.0mg)、テトラフェニルすず(18.1mg)、トルエン(3.8ml)を加え、室温で15分間攪拌し溶媒の色が変化したことを確認した。この溶液に式(7)で表される化合物(1.00g)のトルエン(15.2ml)溶液を加え、60度のオイルバスで加熱して40時間反応させた。この重合液を室温に冷却後、メタノール(0.2ml)を添加し触媒をクエンチした。続いてこの溶液を大過剰のn−ヘキサン/メタノール混合溶液(100/1)に投入して1時間攪拌した。得られた沈澱物を濾過回収し、50度で18時間真空乾燥した。得られたポリマーの構造は1H−NMRおよび19F−NMRから、分子量に関して(Mw、Mn、Mw/Mn)はGPC分析(標準ポリスチレン)から求めた。結果を表2に示した。
【0081】
「実施例3」 式(7)の重合体の合成
【0082】
【化25】
【0083】
窒素雰囲気下のドライボックス中、10mlパイレックス(R)ガラス管に式(7)で表される化合物(1.00g)を入れ、トルエン(1.0ml)に溶解させた。この溶液に、ニッケルアセチルアセトナートのトルエン溶液(1mmol/l)(4.3ml)、メチルアルミノキサン−トルエン溶液(Al含量8.5wt%)(1.4ml)の順に室温で添加後ドライボックス内から取り出し、ガラス管を封管した。この溶液を40度水浴中で20時間振とうした後、重合液を、大過剰のn−ヘキサン/メタノール混合溶液(100/1)に投入して1時間攪拌した。得られた沈澱物を濾過回収し、50度で18時間真空乾燥した。得られたポリマーの構造は1H−NMRおよび19F−NMRから、分子量に関して(Mw、Mn、Mw/Mn)はGPC分析(標準ポリスチレン)から求めた。結果を表2に示した。
【0084】
「実施例4」 式(7)と式(21)の共重合体
【0085】
【化26】
【0086】
式(7)で示される化合物(1.00g)と式(21)で示される化合物(0.59g)を用い、実施例3と同様の方法で重合を行った。結果を表2に示した。
【0087】
「実施例5」 式(6)と式(22)の共重合体
【0088】
【化27】
【0089】
還流冷却管、攪拌子を備えた三口フラスコに、式(6)で示される化合物(1.00g)、式(22)の無水マレイン酸(0.22g)、酢酸n−ブチル(0.24g)を混合し溶解させた。この溶液に重合開始剤としてAIBN(14.5mg)を添加し、60度のオイルバスで加熱して20時間反応させた。反応後、重合溶液を大過剰のn−ヘキサンに投入して攪拌した。生成した沈澱を濾過回収し、50度で18時間真空乾燥した。得られたポリマーの組成は1H−NMRおよび19F−NMRから、分子量に関して(Mw、Mw/Mn)はGPC分析(標準ポリスチレン)から求めた。結果を表2に示した。
【0090】
「実施例6」 式(7)と式(23)の共重合体
【0091】
【化28】
【0092】
式(7)で示される化合物(1.00g)と式(23)で示される化合物(0.42g)を用い、実施例5と同様の方法で重合を行った。結果を表2に示した。
【0093】
「実施例7」 式(7)と式(24)の共重合体
【0094】
【化29】
【0095】
50mlSUS耐圧反応管に、式(7)で示される化合物(1.00g)と酢酸n−ブチル(0.24g)、AIBN(14.1mg)を添加し密封した。次に反応管をドライアイスアセトンバスで充分に冷却し、式(24)のテトラフルオロエチレン(0.21g)を導入した。この反応管を60度のオイルバスで加熱して20時間反応させた後、重合溶液を大過剰のn−ヘキサンに投入して攪拌した。生成した沈澱を濾過回収し、50度で18時間真空乾燥した。得られたポリマーの組成は1H−NMRおよび19F−NMRから、分子量に関して(Mw、Mw/Mn)はGPC分析(標準ポリスチレン)から求めた。結果を表2に示した。
【0096】
「実施例8」 式(10)と式(23)の共重合体
【0097】
【化30】
【0098】
式(10)で示される化合物(1.00g)と式(23)で示される化合物(0.30g)を用い、実施例5と同様の方法で重合を行った。結果を表2に示した。
【0099】
「実施例9」 式(10)と式(25)の共重合体
【0100】
【化31】
【0101】
式(10)で示される化合物(1.00g)と式(25)で示される化合物(0.65g)を用い、実施例5と同様の方法で重合を行った。結果を表2に示した。
【0102】
「実施例10」 式(7)と式(23)と式(26)の共重合体
【0103】
【化32】
【0104】
式(7)で示される化合物(1.00g)と式(23)で示される化合物(0.84g)と式(26)で示される化合物(0.19g)を用い、実施例5と同様の方法で重合を行った。結果を表2に示した。
【0105】
「実施例11」 式(8)、式(9)の混合物と式(22)と式(27)の共重合体
【0106】
【化33】
【0107】
式(8)、式(9)で示される混合物(1.00g)と式(22)で示される化合物(0.41g)と式(27)で示される化合物(0.26g)を用い、実施例5と同様の方法で重合を行った。結果を表2に示した。
【0108】
【表2】
【0109】
「実施例12」
実施例6、8、10の高分子化合物をプロピレングリコールメチルアセテートに溶解させ、固形分14%になるように調整した。さらに高分子化合物100重量部に対して、酸発生剤としてみどり化学製トリフェニルスルフォニウムトリフレート(TPS105)を2重量部になるように溶解し、2種類のレジスト溶液を調整した。これらをスピンコートし、膜厚100ナノメータの光透過率を波長157nmにて測定したところ、実施例6、8、10に対しそれぞれ65%、69%、71%であり、真空紫外域の波長で高い透明性を発現した。
【0110】
次いで、全レジスト溶液を孔径0.2mのメンブランフィルターでろ過した後、各組成物溶液をシリコンウェハー上にスピンコートし膜厚250ナノメータのレジスト膜を得た。110度でプリベークを行った後、フォトマスクを介して248nm紫外線での露光を行ったのち、120度でポストエクスポーザーベークを行った。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、23度で1分間現像したところ、高解像のパターン形状が得られ、現像欠陥もほとんど見られなかった。
【0111】
【発明の効果】
本発明により、撥水性、撥油性、低吸水性、耐熱性、耐候性、耐腐食性、透明性、感光性などを有する機能性高分子化合物の単量体あるいはその原料等として有用な新規な含フッ素多環式化合物が提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な含フッ素トリシクロノネン化合物およびそれを用いた高分子化合物に関する。特に最近活発に研究されている真空紫外波長域のフォトレジスト材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素系化合物は、フッ素の持つ撥水性、撥油性、低吸水性、耐熱性、耐候性、耐腐食性、透明性、感光性、低屈折率性、低誘電性などの特徴から先端材料分野を中心として幅広い応用分野で使用または開発が続けられている。特に各波長における透明性挙動の特徴を生かした場合、コーティング分野で応用されており、低屈折率性と可視光の透明性を応用した反射防止膜、高波長帯(光通信波長帯)での透明性を応用した光デバイス、紫外線領域(特に真空紫外波長域)での透明性を応用したレジスト材料などの分野で活発な研究開発が行われている。これらの応用分野において共通の高分子設計としては、できるだけ多くのフッ素を導入することで各使用波長での透明性を実現しつつ、基板への密着性、高いガラス転移点(硬度)を実現させようとするものである。しかしながら、材料設計としてフッ素含量を高める工夫により各波長での透明性を高めることは種々提案されているが、フッ素含有単量体そのものに同時に親水性、密着性を高める工夫や高Tgを得る工夫をしている例は少ない。最近になって、特に真空紫外線領域の次世代F2レジスト分野においてヒドロキシ基含有のフッ素系スチレン(例えば、非特許文献1参照)や、ヒドロキシ基含有のフッ素系ノルボルネン化合物(例えば、非特許文献2参照)が発表されたことで、フッ素を含有し、かつヒドロキシ基の極性を共存させる考え方が見られるようになってきた。しかしながら、まだまだ反射防止膜に必要とされる十分な低屈折率が得られてなく、または光通信波長での透明性も十分でなく、または紫外線での透明性とエッチング耐性の両立が不十分であったりと改善するべき要因は多く存在している。また、重合反応性についても従来のフッ素系ノルボルネン化合物は、ノルボルネン環に直接フッ素原子、トリフルオロメチル基等の電子吸引性基を有し重合性二重結合の電子密度が低下することから、低収率であったり、材料として充分な分子量を得ることができなかったりと高分子化合物合成の面でも課題が残っていた。従ってこれら既存の化合物が発揮しうる機能は必ずしも充分ではなく、更に優れた高分子化合物を効率よく与え得る新規な単量体あるいはその原料の創出が望まれていた。
【0003】
【非特許文献1】
T. H. Fedynyshyn, A. Cabral, et al, J. Photopolym. Sci. Technol., 15, 655−666(2002)
【非特許文献2】
S. Ishikawa, T. Itani, et al, J. Photopolym. Sci. Technol., 14, 603−612 (2001)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高いフッ素含量を有しながら、同一分子内に極性基を持たせることで、幅広い波長領域すなわち真空紫外線から光通信波長域にいたるまで高い透明性を有し、かつ基板への密着性や高い成膜性を併せ持ち、また脂環式構造を持たせることで高いエッチング耐性を有する新規な重合性単量体である含フッ素トリシクロノネン化合物、およびそれを用いた高分子化合物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決するための鋭意検討を重ねた結果、トリシクロ骨格を有し、かつ高いフッ素含量とヒドロキシ基を含有させた特定の化合物として一連の新規な含フッ素トリシクロノネン化合物、及びそれらの単量体を用いた高分子化合物を合成し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、下記記載の1〜10の含フッ素トリシクロノネン化合物、11記載の高分子化合物、12記載のレジスト材料である。
1:
一般式(1)、または一般式(2)
【0007】
【化11】
【0008】
【化12】
【0009】
(式中R1、R2は、直鎖状、分岐状、或いは環状構造を含んでもよいアルキル基であり、その一部がフッ素化されていてもよい。また、R1、R2は、同一であっても異なっていてもよい。R3は、水素原子、塩素原子、フッ素原子、直鎖状、分岐状、或いは環状構造を含んでもよいアルキル基であり、一部がフッ素化されていてもよく、ヒドロキシル基を含有していてもよい。R4、R5は水素原子、炭素数1〜25の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基を含む基であって、その一部にフッ素原子、酸素原子、カルボニル結合を含んでもよい。また、R4、R5は同一であっても異なっていてもよい。尚、aは、1〜8の整数で表され、b、cは0〜1の整数で表される。d、e、fは0以上の整数で表され、e+f≧1、d+e+f=2aで表される。)で表される含フッ素化合物。
2:
一般式(3)
【0010】
【化13】
【0011】
(式中R1〜R5は、一般式(1)における意味と同じ。R6は、請求項1記載のR3と同じ意味であり、R3、R6は同一であっても異なっていてもよい。また、R3、R6に原子がなく二重結合となってもよい。尚、k、l、m、nは0〜1の整数で表され、少なくともm、或いはnのどちらか一方が1である。)で表される含フッ素化合物。
3:
式(4)
【0012】
【化14】
【0013】
で表される含フッ素トリシクロノネン化合物。
4:
式(5)
【0014】
【化15】
【0015】
で表される含フッ素トリシクロノネン化合物。
5:
式(6)
【0016】
【化16】
【0017】
で表される含フッ素トリシクロノネン化合物。
6:
式(7)
【0018】
【化17】
【0019】
で表される含フッ素トリシクロノネン化合物。
7:
式(8)
【0020】
【化18】
【0021】
で表される含フッ素トリシクロノネン化合物。
8:
式(9)
【0022】
【化19】
【0023】
で表される含フッ素トリシクロノネン化合物。
9:
式(10)
【0024】
【化20】
【0025】
で表される含フッ素トリシクロノネン化合物。
10:R4、R5のうち少なくともひとつに酸不安定性基(酸不安定性基は酸脱離基であって、一部に酸素原子、カルボニル結合、フッ素原子を含んでもよい。)を含有した上記1〜9のいずれかに記載の含フッ素化合物。
11:上記1〜10のいずれかに記載の重合性単量体を用いて重合または共重合された高分子化合物。
12:上記11記載の高分子化合物を含有したレジスト材料。
【0026】
本発明の新規な含フッ素トリシクロノネン化合物を用いて合成した高分子化合物は、撥水性、撥油性、低吸水性、耐熱性、耐候性、耐腐食性、透明性、感光性などの機能を有するものとなり、特に最近活発に研究されている真空紫外波長域のフォトレジスト材料に適するものとなる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の含フッ素トリシクロノネン化合物について説明する。本発明の、一般式(1)、または一般式(2)
【0028】
【化21】
【0029】
【化22】
【0030】
で表される化合物は、ノルボルネン環に直接環状脂肪族炭化水素基を融合させた多環式化合物である。また、その環内に、少なくとも1つヘキサフルオロカルビノール基を併せ持つ化合物である。一般に、フッ素含有量の増加と共に、紫外線領域から近赤外線領域に至るまでの幅広い波長領域での透明性の向上や、屈折率の低下が誘起されることが知られているが、一方、基板との密着性の低下や、成膜性の低下も誘起される。しかしながら、一般式(1)、または一般式(2)に示される化合物は、R4、或いはR5を水素原子とすることで同一分子内にフッ素原子と水酸基を含有させることができることから、基板との高い密着性、また高い成膜性をも併せ持たせることを可能とした。
【0031】
また、トリシクロノネン骨格とすることで、重合性二重結合からより遠い位置にフッ素原子を配置させることが可能であり、従来のフッ素系ノルボルネン化合物と比べ、多くのフッ素原子の導入を行っても重合反応性への影響は少なく、望む高分子化合物を得ることを可能とした。また、トリシクロノネンのような環状構造は、レジスト材料で必要なエッチング耐性に寄与する。
【0032】
本発明による一般式(1)、または一般式(2)に示される化合物において、R1、R2は、炭素原子1〜25の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基、或いは芳香族炭化水素基である。但し、高分子材料として用いる場合、炭素数が多くなるに連れ立体障害による重合性の低下や、透明性の低下、屈折率の増加が起こることから、炭素数は1〜5がより好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピル基、イソプロピル基、ブチレン基、sec−ブチレン基等が挙げられる。尚、水素原子の一部もしくは全てがフッ素原子で置換されていてもよい。
【0033】
また、R3に使用できる炭素数1〜25の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、sec−ペンチル基,ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、エチルヘキシル基、ノルボルネル基、アダマンチル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、エチニル基、フェニル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基などが例示できる。但し、高分子材料として用いる場合、炭素数が多くなるに連れ立体障害による重合性の低下や、透明性の低下、屈折率の増加が起こることから、炭素数は1〜5がより好ましい。尚、上記官能基の一部または全部がフッ素原子で置換されたものでもよい。
【0034】
本発明によるR4、R5は、水素原子、炭素数1〜25の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基であって、フッ素原子、酸素原子、カルボニル結合を含んでもよい。R4、R5の構造は特に制限されないが、使用目的によりその構造を変更できる。かかる目的としては、有機溶媒やアルカリ水溶液への溶解性、高いガラス転移点、ハンダ耐熱性を目的とした架橋反応性、光酸発生剤によるポジ型感光性やエッチング耐性などの特徴を付与させることであり、本発明の応用分野ごとに使い分けることが可能である。
【0035】
本発明のR4、R5に使用できる炭素数1〜25の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、sec−ペンチル基,ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、エチルヘキシル基、ノルボルネル基、アダマンチル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、エチニル基、フェニル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基などが例示でき、上記官能基の一部または全部がフッ素原子で置換されたものでもよい。また、酸素原子を含むものとしてアルコキシカルボニル基、アセタール基、アシル基等を挙げることができ、アルコキシカルボニル基としてはtert−ブトキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基等を例示できる。アセタール基としては、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、ベンジルオキシエチル基、フェネチルオキシエチル基、エトキシプロピル基、ベンジルオキシプロピル基、フェネチルオキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシイソブチル基の鎖状のエーテルやテトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等の環状エーテルが挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができる。更に、上記置換基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたものを使用することもできる。
【0036】
次に、本発明のR4、R5に使用できる酸不安定性基について説明する。本発明による酸不安定性基は、R4、R5のうちの一部または全部に適用される。R4、R5の酸不安定基とは、いわゆる酸脱離基であって、その一部に酸素原子、カルボニル結合、フッ素原子を含んでもよい。
【0037】
本発明に使用できる酸不安定性基としては、光酸発生剤や加水分解などの効果で脱離が起きる基であれば特に制限なく使用できるが、具体的な例示を挙げるとするならば、アルキコキシカルボニル基、アセタール基、シリル基、アシル基等を挙げることができる。アルコキシカルボニル基としてはtert−ブトキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基等を例示できる。アセタール基としては、メトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、ベンジルオキシエチル基、フェネチルオキシエチル基、エトキシプロピル基、ベンジルオキシプロピル基、フェネチルオキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシイソブチル基などが挙げられる。またR2、R3が水素原子である場合、その水酸基に対してビニルエーテルを付加させたアセタール基を使用することもできる。シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基、i−プロピルジメチルシリル基、メチルジ−i−プロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メチルジ−t−ブチルシリル基、トリ−t−ブチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができる。更に、これらの酸不安定基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたものを使用することもできる。
【0038】
酸不安定性基を使用する目的としては、その酸不安性基によるポジ型感光性および波長300nm以下の遠赤外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線もしくは電子線の露光後のアルカリ水溶液への溶解性を発現させることであり、その官能基にフッ素原子を持つものは透明性を、環状構造を含むものはエッチング耐性や高ガラス転移点などの特徴をさらに付与させるためで、本発明の応用分野ごとに使い分けることが可能である。
【0039】
次に本発明による高分子化合物について説明する。本発明の高分子化合物とは、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、式(4)〜(10)で示される含フッ素多環式化合物を単独重合、或いは共重合せしめた高分子材料のことである。
【0040】
本発明の重合性含フッ素化合物と共重合可能な単量体を具体的に例示するならば、少なくとも、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、含フッ素アリルエーテル、オレフィン、含フッ素オレフィン、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、二酸化硫黄から選ばれた一種類以上の単量体との共重合が好適である。
【0041】
本発明で使用できるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとしてはエステル側鎖について特に制限なく使用できるが、公知の化合物を例示するならば、メチルアクリレート又はメタクリレート、エチルアクリレート又はメタクリレート、n−プロピルアクリレート又はメタクリレート、イソプロピルアクリレート又はメタクリレート、n−ブチルアクリレート又はメタクリレート、イソブチルアクリレート又はメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート又はメタクリレート、n−オクチルアクリレート又はメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート又はメタクリレート、ラウリルアクリレート又はメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート又はメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート又はメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール基を含有したアクリレート又はメタクリレート、さらにアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの不飽和アミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルコキシシラン含有のビニルシランやアクリル酸またはメタクリル酸エステル、tert−ブチルアクリレート又はメタクリレート、3−オキソシクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、アダマンチルアクリレート又はメタクリレート、アルキルアダマンチルアクリレート又はメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート又はメタクリレート、ラクトン環やノルボルネン環などの環構造を有したアクリレートまたはメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などが使用できる。さらにα位にシアノ基を含有した上記アクリレート類化合物や、類似化合物としてマレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などを共重合することも可能である。
【0042】
また、本発明で使用できる含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステルとしては、フッ素原子またはフッ素原子を有する基がアクリルのα位に含有した単量体、またはエステル部位にフッ素原子を含有した置換基からなるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルであって、α位とエステル部ともにフッ素を含有した含フッ素化合物も好適である。さらにα位にシアノ基が導入されていてもよい。例えば、α位に含フッ素アルキル基が導入された単量体としては、上述した非フッ素系のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのα位にトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ノナフルオロ−n−ブチル基などが付与された単量体が好適に採用され、その場合のエステル部位には必ずしもフッ素を含有する必要はない。α−トリフルオロメチルアクリル酸アルキルエステルを共重合成分として使用した場合には、重合体の収率が比較的高く、また得られるポリマーの有機溶媒に対する溶解性が良好で好ましく採用される。
【0043】
一方、そのエステル部位にフッ素を含有する単量体としては、エステル部位としてパーフルオロアルキル基、フルオロアルキル基であるフッ素アルキル基や、またエステル部位に環状構造とフッ素原子を共存する単位であって、その環状構造が例えばフッ素原子、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロカルビノール基などで置換された含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環、含フッ素シクロヘプタン環等を有する単位などを有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルである。またエステル部位が含フッ素のt−ブチルエステル基であるアクリル酸またはメタクリル酸のエステルなども使用可能である。これらの含フッ素の官能基は、α位の含フッ素アルキル基と併用した単量体を用いることも可能である。そのような単位のうち特に代表的なものを単量体の形で例示するならば、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルアクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルメタクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルメタクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレート、6−[3、3、3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルアクリレート、6−[3、3、3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イル 2−(トリフルオロメチル)アクリレート、6−[3、3、3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルメタクリレート、1、4−ビス(1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルアクリレート、1、4−ビス(1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリレート、1、4−ビス(1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシル 2−トリフルオロメチルアクリレート、などが挙げられる。
【0044】
更に、本発明に使用できるスチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物としてはスチレン、フッ素化スチレン、ヒドロキシスチレンなどの他、ヘキサフルオロカルビノール基やその水酸基を修飾した官能基が一つ又は複数個結合した化合物が使用できる。すなわち、フッ素原子またはトリフルオロメチル基で水素を置換したスチレンまたはヒドロキシスチレン、α位にハロゲン、アルキル基、含フッ素アルキル基が結合した上記スチレン、パーフルオロビニル基含有のスチレンなどが好ましく使用可能である。
【0045】
また、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、含フッ素アリルエーテルとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基を含有してもよいアルキルビニルエーテルあるいはアルキルアリルエーテルなどが使用できる。また、シクロヘキシル基、ノルボルネル基、芳香環やその環状構造内に水素やカルボニル結合を有した環状型ビニル、アリルエーテルや、上記官能基の水素の一部または全部がフッ素原子で置換された含フッ素ビニルエーテル、含フッ素アリルエーテルも使用できる。
【0046】
なお、ビニルエステル、ビニルシラン、オレフィン、含フッ素オレフィン、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物やその他の重合性不飽和結合を含有した化合物であれば特に制限なく使用することが可能である。オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、イソブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどを、含フッ素オレフィンとしてはフッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテンなどが例示できる。
【0047】
ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物は、一核または複数の核構造を有するノルボルネン単量体である。この際、含フッ素オレフィン、アリルアルコール、含フッ素アリルアルコール、ホモアリルアルコール、含フッ素ホモアリルアルコールがアクリル酸、α−フルオロアクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、メタクリル酸、本明細書で記載したすべてのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステル、2−(ベンゾイルオキシ)ペンタフルオロプロパン、2−(メトキシエトキシメチルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(テトラヒドロキシピラニルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(ベンゾイルオキシ)トリフルオロエチレン、2−(メトキメチルオキシ)トリフルオロエチレンなどの不飽和化合物と、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンとのDiels−Alder付加反応で生成するノルボルネン化合物で、3−(5−ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2−イル)−1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2−プロパノール等が例示できる。
【0048】
なお、以上の共重合性化合物は単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0049】
本発明の含フッ素化合物の共重合組成比としては特に制限はなく採用されるが、10〜100%の間で選択することが好ましい。更に好ましくは30〜100%であり、30%未満では応用分野の波長域によっては十分な透明性や成膜性が発現しない。
【0050】
本発明にかかる高分子化合物の重合方法としては、一般的に使用される方法であれば特に制限されないが、ラジカル重合、イオン重合などが好ましく、場合により、配位アニオン重合、リビングアニオン重合、開環メタセシス重合、ビニレン重合などを使用することも可能である。
【0051】
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル開始源の存在下で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合または乳化重合などの公知の重合方法により、回分式、半連続式または連続式のいずれかの操作で行えばよい。
【0052】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてアゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられ、とくにアゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド、i−ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等が好ましい。
【0053】
重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。また、重合反応においては、重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、ラジカル重合を阻害しないものが好ましく、代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル系、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤などがある。また水、エーテル系、環状エーテル系、フロン系、芳香族系、などの種々の溶媒を使用することも可能である。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。また、メルカプタンのような分子量調整剤を併用してもよい。共重反応の反応温度はラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源により適宜変更され、通常は20〜200度が好ましく、特に30〜140度が好ましい。
【0054】
一方、開環メタセシス重合は、共触媒存在下、IV、V、VI、VII属の遷移金属触媒を用いればよく、溶媒存在下、公知の方法を用いればよい。
【0055】
重合触媒としては特に限定されるものではないが、例としてTi系、V系、
Mo系、W系触媒が挙げられ、特に、塩化チタン(IV)、塩化バナジウム(IV)、バナジウムトリスアセチルアセトナート、バナジウムビスアセチルアセトナートジクロリド、塩化モリブデン(VI)、塩化タングステン(VI)などが好ましい。触媒量としては、使用モノマーに対して10mol%から0.001mol%、好ましくは、1mol%から0.01mol%である。
【0056】
共触媒としては、アルキルアルミニウム、アルキルすずなどが挙げられ、特に、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−3−メチルブチルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−3−メチルペンチルアルミニウム、トリ−4−メチルペンチルアルミニウム、トリ−2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ−3−メチルヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルアルミニウム類、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジアイオダイド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライドなどのモノアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、プロピルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライドなどのアルキルアルミニウムセスキクロライド類などのアルミニウム系や、テトラ−n−ブチルすず、テトラフェニルすず、トリフェニルクロロすずなどが例示できる。共触媒量は、遷移金属触媒に対してモル比で、100当量以下、好ましくは30当量以下の範囲である。
【0057】
また、重合溶媒としては重合反応を阻害しなければよく、代表的なものとして、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素などが例示できる。また、これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。反応温度は、通常は−70から200度が好ましく、特に−30から60度が好ましい。
【0058】
ビニレン重合は、共触媒存在下、鉄、ニッケル、ロジウム、パラジウム、白金などのVIII属の遷移金属触媒や、ジルコニウム、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステンなどのIVBからVIB属の金属触媒を用いればよく、溶媒存在下、公知の方法を用いればよい。
【0059】
重合触媒としては特に限定されるものではないが、例として特に、鉄(II)クロライド、鉄(III)クロライド、鉄(II)ブロマイド、鉄(III)ブロマイド、鉄(II)アセテート、鉄(III)アセチルアセトナート、フェロセン、ニッケロセン、ニッケル(II)アセテート、ニッケルブロマイド、ニッケルクロライド、ジクロロヘキシルニッケルアセテート、ニッケルラクテート、ニッケルオキサイド、ニッケルテトラフルオロボレート、ビス(アリル)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ニッケル(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナートテトラハイドレート、ニッケル(II)トリフルオロアセチルアセトナートジハイドレート、ニッケル(II)アセチルアセトナートテトラハイドレート、塩化ロジウム(III)、ロジウムトリス(トリフェニルホスフィン)トリクロライド、パラジウム(II)ビス(トリフルオロアセテート)、パラジウム(II)ビス(アセチルアセトナート)、パラジウム(II)2−エチルヘキサノエート、パラジウム(II)ブロマイド、パラジウム(II)クロライド、パラジウム(II)アイオダイド、パラジウム(II)オキサイド、モノアセトニトリルトリス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)テトラフルオロボレート、テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)テトラフルオロボレート、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート、パラジウムビス(アセトニトリル)ジクロライド、パラジウムビス(ジメチルスルホキサイド)ジクロライド、プラチニウムビス(トリエチルホスフィン)ハイドロブロマイドなどのVIII属の遷移金属類や、塩化バナジウム(IV)、バナジウムトリスアセチルアセトナート、バナジウムビスアセチルアセトナートジクロリド、トリメトキシ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(IV)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどのIVBからVIB属の遷移金属類が好ましい。触媒量としては、使用モノマーに対して10mol%から0.001mol%、好ましくは、1mol%から0.01mol%である。
【0060】
共触媒としては、アルキルアルミノキサン、アルキルアルミニウムなどが挙げられ、特に、メチルアルミノキサン(MAO)や、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−3−メチルブチルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−3−メチルペンチルアルミニウム、トリ−4−メチルペンチルアルミニウム、トリ−2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ−3−メチルヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルアルミニウム類、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジアイオダイド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライドなどのモノアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、プロピルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライドなどのアルキルアルミニウムセスキクロライド類などが例示できる。共触媒量は、メチルアルミノキサンの場合、Al換算で50から500当量、その他アルキルアルミニウムの場合、遷移金属触媒に対してモル比で、100当量以下、好ましくは30当量以下の範囲である。
【0061】
また、重合溶媒としては重合反応を阻害しなければよく、代表的なものとして、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−シクロヘキシルピロリドンなどが例示できる。また、これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。反応温度は、通常は−70から200度が好ましく、特に−40から80度が好ましい。
【0062】
このようにして得られる本発明にかかる高分子化合物の溶液または分散液から、媒質である有機溶媒または水を除去する方法としては、公知の方法のいずれも利用できるが、例を挙げれば再沈殿ろ過または減圧下での加熱留出等の方法がある。
【0063】
得られた本発明の高分子化合物の数平均分子量としては、通常、1,000〜100,000、好ましくは3,000〜50,000の範囲が適切である。
【0064】
次に本発明による応用分野について記述する。本発明はコーティング用途を基本としており、通常は本発明の高分子化合物を有機溶媒に溶解させて成膜させることで応用に供する。したがって、使用する有機溶媒としては高分子化合物が可溶であれば特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類やエチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、又はジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類、キシレン、トルエンなどの芳香族系溶媒、フロン、代替フロン、パーフルオロ化合物、ヘキサフルオロイソプロピルアルコールなどのフッ素系溶剤、塗布性を高める目的で高沸点弱溶剤であるターペン系の石油ナフサ溶媒やパラフィン系溶媒などが使用可能である。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0065】
本発明によるレジスト材料としては、酸の作用によりアルカリ水溶液に対する溶解性が変化する溶解抑制剤と高分子化合物の双方を含有するもの、または、高分子化合物に溶解抑制剤が組み込まれたものであり、これらは、特に、ポジ型レジスト材料として好適となり、最近の半導体の微細化に対応した248nmKrFまたは193nmArFエキシマレーザーまたは157nmに代表される真空紫外領域のF2レーザー用ポジ型レジスト、電子ビームレジスト、X線用のレジストとしても好適である。すなわち、酸の作用によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が変化する溶解抑制剤は、一般式(1)、または一般式(2)のR4、R5の少なくともひとつが酸不安定基になるようにしたものであるが、その構造は特に制限なく使用可能である。一般的な酸不安定基としては前述した酸不安定基であり、酸によって切断される官能基である。このような溶解抑制剤を用いた高分子化合物は活性エネルギー線が照射される前にはアルカリ性水溶液に不溶もしくは難溶であって、活性エネルギー線を照射したことにより酸発生剤から発生した酸により加水分解されアルカリ性水溶液に対して溶解性を示すようになる。
【0066】
本発明組成物に用いられる光酸発生剤については特に制限はなく、化学増幅型レジストの酸発生剤として用いられるものの中から、任意のものを選択して使用することができる。このような酸発生剤の例としては、ビススルホニルジアゾメタン類、ニトロベンジル誘導体類、オニウム塩類、ハロゲン含有トリアジン化合物類、シアノ基含有オキシムスルホネート化合物類、その他のオキシムスルホネート化合物などが挙げられる。これらの酸発生剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その含有量は、高分子化合物100重量部に対して、通常0.5〜20重量部の範囲で選ばれる。この量が0.5重量部未満では像形成性が不十分であるし、20重量部を超えると均一な溶液が形成されにくく、保存安定性が低下する傾向がみられる。
【0067】
本発明のレジストの使用方法としては、従来のフォトレジスト技術のレジストパターン形成方法が用いられるが、好適に行うには、まずシリコンウエーハのような支持体上に、レジスト組成物の溶液をスピンナーなどで塗布し、乾燥して感光層を形成させ、これに露光装置などにより、エキシマレーザー光を所望のマスクパターンを介して照射し、加熱する。次いでこれを現像液、例えば0.1から10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液などを用いて現像処理する。この形成方法でマスクパターンに忠実なパターンを得ることができる。
【0068】
本発明の応用分野は、さらに所望により混和性のある添加物、例えば付加的樹脂、クエンチャー、可塑剤、安定剤、着色剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、相溶化剤、密着剤、酸化防止剤などの種々添加剤を含有させることができる。
【0069】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0070】
「実施例1」 一般式(3)に示す化合物の合成
【0071】
【化23】
【0072】
一般式(3)で示される化合物は、式(11)の2,5−ノルボルナジエンと一般式(12)で表される含フッ素オレフィンの[2+2]光付加反応により誘導される。光源は高圧水銀ランプを用い、また反応器はパイレックス(R)製ガラスチューブ、或いはパイレックス(R)製試験管を用いることで合成可能である。また別法として、2,5−ノルボルナジエンの光異性化体であるクラドリシクレンと一般式(12)で表される含フッ素オレフィンとの熱的付加反応からも誘導できる。
【0073】
実験例として、式(6)の合成法について説明する。
【0074】
10mlパイレックス(R)製ガラスチューブに、1,1,1,6,6,6−ヘキサフルオロ−2,6−ジトリフルオロメチル−3−ヘキシン−2,6−ジオール(2.66g)、2,5−ノルボルナジエン(0.68g)、ベンゾフェノン(33.4mg)を混合した。この反応管をドライアイスアセトンバスに浸し、脱気、窒素置換を行った後、40から45度の水浴に浸し高圧水銀ランプにて7時間光照射した。この混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/10)により分離精製し、化合物(6)(2.57g,収率77%)を得た。
【0075】
得られた化合物はガスクロマトグラフィーにて2種の異性体を与えるため、核磁気共鳴法のみによる化合物の同定は困難となるが、1H−NMRにおいて二重結合のプロトン(δ:6.27)、橋頭位のプロトン(δ:3.02)が観測されること、また質量分析法により親イオンが検出(EI法:m/e 452(M+))されたことから、望む化合物(6)の生成を確認した。
【0076】
式(4)、(5)、(7)〜(10)についても上記実験法と同様の操作で行った。結果を以下の表1に示した。
【0077】
【表1】
【0078】
「実施例2」 式(7)の開環重合体の合成
【0079】
【化24】
【0080】
還流冷却管、攪拌子を備えた三口フラスコに、塩化タングステン(VI)(9.0mg)、テトラフェニルすず(18.1mg)、トルエン(3.8ml)を加え、室温で15分間攪拌し溶媒の色が変化したことを確認した。この溶液に式(7)で表される化合物(1.00g)のトルエン(15.2ml)溶液を加え、60度のオイルバスで加熱して40時間反応させた。この重合液を室温に冷却後、メタノール(0.2ml)を添加し触媒をクエンチした。続いてこの溶液を大過剰のn−ヘキサン/メタノール混合溶液(100/1)に投入して1時間攪拌した。得られた沈澱物を濾過回収し、50度で18時間真空乾燥した。得られたポリマーの構造は1H−NMRおよび19F−NMRから、分子量に関して(Mw、Mn、Mw/Mn)はGPC分析(標準ポリスチレン)から求めた。結果を表2に示した。
【0081】
「実施例3」 式(7)の重合体の合成
【0082】
【化25】
【0083】
窒素雰囲気下のドライボックス中、10mlパイレックス(R)ガラス管に式(7)で表される化合物(1.00g)を入れ、トルエン(1.0ml)に溶解させた。この溶液に、ニッケルアセチルアセトナートのトルエン溶液(1mmol/l)(4.3ml)、メチルアルミノキサン−トルエン溶液(Al含量8.5wt%)(1.4ml)の順に室温で添加後ドライボックス内から取り出し、ガラス管を封管した。この溶液を40度水浴中で20時間振とうした後、重合液を、大過剰のn−ヘキサン/メタノール混合溶液(100/1)に投入して1時間攪拌した。得られた沈澱物を濾過回収し、50度で18時間真空乾燥した。得られたポリマーの構造は1H−NMRおよび19F−NMRから、分子量に関して(Mw、Mn、Mw/Mn)はGPC分析(標準ポリスチレン)から求めた。結果を表2に示した。
【0084】
「実施例4」 式(7)と式(21)の共重合体
【0085】
【化26】
【0086】
式(7)で示される化合物(1.00g)と式(21)で示される化合物(0.59g)を用い、実施例3と同様の方法で重合を行った。結果を表2に示した。
【0087】
「実施例5」 式(6)と式(22)の共重合体
【0088】
【化27】
【0089】
還流冷却管、攪拌子を備えた三口フラスコに、式(6)で示される化合物(1.00g)、式(22)の無水マレイン酸(0.22g)、酢酸n−ブチル(0.24g)を混合し溶解させた。この溶液に重合開始剤としてAIBN(14.5mg)を添加し、60度のオイルバスで加熱して20時間反応させた。反応後、重合溶液を大過剰のn−ヘキサンに投入して攪拌した。生成した沈澱を濾過回収し、50度で18時間真空乾燥した。得られたポリマーの組成は1H−NMRおよび19F−NMRから、分子量に関して(Mw、Mw/Mn)はGPC分析(標準ポリスチレン)から求めた。結果を表2に示した。
【0090】
「実施例6」 式(7)と式(23)の共重合体
【0091】
【化28】
【0092】
式(7)で示される化合物(1.00g)と式(23)で示される化合物(0.42g)を用い、実施例5と同様の方法で重合を行った。結果を表2に示した。
【0093】
「実施例7」 式(7)と式(24)の共重合体
【0094】
【化29】
【0095】
50mlSUS耐圧反応管に、式(7)で示される化合物(1.00g)と酢酸n−ブチル(0.24g)、AIBN(14.1mg)を添加し密封した。次に反応管をドライアイスアセトンバスで充分に冷却し、式(24)のテトラフルオロエチレン(0.21g)を導入した。この反応管を60度のオイルバスで加熱して20時間反応させた後、重合溶液を大過剰のn−ヘキサンに投入して攪拌した。生成した沈澱を濾過回収し、50度で18時間真空乾燥した。得られたポリマーの組成は1H−NMRおよび19F−NMRから、分子量に関して(Mw、Mw/Mn)はGPC分析(標準ポリスチレン)から求めた。結果を表2に示した。
【0096】
「実施例8」 式(10)と式(23)の共重合体
【0097】
【化30】
【0098】
式(10)で示される化合物(1.00g)と式(23)で示される化合物(0.30g)を用い、実施例5と同様の方法で重合を行った。結果を表2に示した。
【0099】
「実施例9」 式(10)と式(25)の共重合体
【0100】
【化31】
【0101】
式(10)で示される化合物(1.00g)と式(25)で示される化合物(0.65g)を用い、実施例5と同様の方法で重合を行った。結果を表2に示した。
【0102】
「実施例10」 式(7)と式(23)と式(26)の共重合体
【0103】
【化32】
【0104】
式(7)で示される化合物(1.00g)と式(23)で示される化合物(0.84g)と式(26)で示される化合物(0.19g)を用い、実施例5と同様の方法で重合を行った。結果を表2に示した。
【0105】
「実施例11」 式(8)、式(9)の混合物と式(22)と式(27)の共重合体
【0106】
【化33】
【0107】
式(8)、式(9)で示される混合物(1.00g)と式(22)で示される化合物(0.41g)と式(27)で示される化合物(0.26g)を用い、実施例5と同様の方法で重合を行った。結果を表2に示した。
【0108】
【表2】
【0109】
「実施例12」
実施例6、8、10の高分子化合物をプロピレングリコールメチルアセテートに溶解させ、固形分14%になるように調整した。さらに高分子化合物100重量部に対して、酸発生剤としてみどり化学製トリフェニルスルフォニウムトリフレート(TPS105)を2重量部になるように溶解し、2種類のレジスト溶液を調整した。これらをスピンコートし、膜厚100ナノメータの光透過率を波長157nmにて測定したところ、実施例6、8、10に対しそれぞれ65%、69%、71%であり、真空紫外域の波長で高い透明性を発現した。
【0110】
次いで、全レジスト溶液を孔径0.2mのメンブランフィルターでろ過した後、各組成物溶液をシリコンウェハー上にスピンコートし膜厚250ナノメータのレジスト膜を得た。110度でプリベークを行った後、フォトマスクを介して248nm紫外線での露光を行ったのち、120度でポストエクスポーザーベークを行った。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、23度で1分間現像したところ、高解像のパターン形状が得られ、現像欠陥もほとんど見られなかった。
【0111】
【発明の効果】
本発明により、撥水性、撥油性、低吸水性、耐熱性、耐候性、耐腐食性、透明性、感光性などを有する機能性高分子化合物の単量体あるいはその原料等として有用な新規な含フッ素多環式化合物が提供される。
Claims (12)
- 一般式(1)、または一般式(2)
- R4、R5のうち少なくともひとつに酸不安定性基(酸不安定性基は酸脱離基であって、一部に酸素原子、カルボニル結合、フッ素原子を含んでもよい。)を含有した請求項1〜9のいずれか1項に記載の含フッ素化合物。
- 請求項1〜10項のいずれかに記載の重合性単量体を用いて重合または共重合された高分子化合物。
- 請求項11記載の高分子化合物を含有したレジスト材料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002261323A JP2004099689A (ja) | 2002-09-06 | 2002-09-06 | 含フッ素多環式化合物、それを原料とした高分子化合物、及びそれを用いたフォトレジスト材料 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002261323A JP2004099689A (ja) | 2002-09-06 | 2002-09-06 | 含フッ素多環式化合物、それを原料とした高分子化合物、及びそれを用いたフォトレジスト材料 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004099689A true JP2004099689A (ja) | 2004-04-02 |
Family
ID=32261733
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002261323A Pending JP2004099689A (ja) | 2002-09-06 | 2002-09-06 | 含フッ素多環式化合物、それを原料とした高分子化合物、及びそれを用いたフォトレジスト材料 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004099689A (ja) |
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7511169B2 (en) | 2005-04-06 | 2009-03-31 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Sulfonate salts and derivatives, photoacid generators, resist compositions, and patterning process |
US7527912B2 (en) | 2006-09-28 | 2009-05-05 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Photoacid generators, resist compositions, and patterning process |
US7531290B2 (en) | 2005-10-31 | 2009-05-12 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Sulfonate salts and derivatives, photoacid generators, resist compositions, and patterning process |
US7556909B2 (en) | 2005-10-31 | 2009-07-07 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Sulfonate salts and derivatives, photoacid generators, resist compositions, and patterning process |
US7569324B2 (en) | 2006-06-27 | 2009-08-04 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Sulfonate salts and derivatives, photoacid generators, resist compositions, and patterning process |
US7928262B2 (en) | 2006-06-27 | 2011-04-19 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Sulfonate salts and derivatives, photoacid generators, resist compositions, and patterning process |
JP2013053139A (ja) * | 2011-08-09 | 2013-03-21 | Central Glass Co Ltd | 含フッ素芳香族化合物およびその製造方法 |
-
2002
- 2002-09-06 JP JP2002261323A patent/JP2004099689A/ja active Pending
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7511169B2 (en) | 2005-04-06 | 2009-03-31 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Sulfonate salts and derivatives, photoacid generators, resist compositions, and patterning process |
US7919226B2 (en) | 2005-04-06 | 2011-04-05 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Sulfonate salts and derivatives, photoacid generators, resist compositions, and patterning process |
US7531290B2 (en) | 2005-10-31 | 2009-05-12 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Sulfonate salts and derivatives, photoacid generators, resist compositions, and patterning process |
US7556909B2 (en) | 2005-10-31 | 2009-07-07 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Sulfonate salts and derivatives, photoacid generators, resist compositions, and patterning process |
US7569324B2 (en) | 2006-06-27 | 2009-08-04 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Sulfonate salts and derivatives, photoacid generators, resist compositions, and patterning process |
US7928262B2 (en) | 2006-06-27 | 2011-04-19 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Sulfonate salts and derivatives, photoacid generators, resist compositions, and patterning process |
US8030515B2 (en) | 2006-06-27 | 2011-10-04 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Sulfonate salts and derivatives, photoacid generators, resist compositions, and patterning process |
US7527912B2 (en) | 2006-09-28 | 2009-05-05 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Photoacid generators, resist compositions, and patterning process |
JP2013053139A (ja) * | 2011-08-09 | 2013-03-21 | Central Glass Co Ltd | 含フッ素芳香族化合物およびその製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5018743B2 (ja) | 含フッ素化合物とその高分子化合物 | |
JP4410508B2 (ja) | 含フッ素化合物とその高分子化合物 | |
JP5223775B2 (ja) | 液浸レジスト用撥水性添加剤 | |
KR101067970B1 (ko) | 불소계 환상 화합물, 불소계 중합성 단량체, 불소계 고분자화합물 및 그것을 사용한 레지스트 재료 및 패턴 형성방법 | |
JP5577684B2 (ja) | 含フッ素重合性単量体、含フッ素重合体、レジスト材料及びパターン形成方法 | |
JP2005029527A5 (ja) | ||
JP3999030B2 (ja) | 含フッ素重合性単量体およびそれを用いた高分子化合物、反射防止膜材料 | |
JP4079893B2 (ja) | 含フッ素環状化合物、含フッ素高分子化合物、それを用いたレジスト材料及びパターン形成方法 | |
WO2010123000A1 (ja) | トップコート組成物 | |
JP5556160B2 (ja) | トップコート組成物 | |
JP4557500B2 (ja) | フッ素系環状化合物 | |
JP4557502B2 (ja) | フッ素系環状化合物、フッ素系重合性単量体、フッ素系高分子化合物並びにそれを用いたレジスト材料及びパターン形成方法 | |
JP2004323422A5 (ja) | ||
JP2004099689A (ja) | 含フッ素多環式化合物、それを原料とした高分子化合物、及びそれを用いたフォトレジスト材料 | |
JP5352996B2 (ja) | 含フッ素高分子化合物とそれを用いたコーティング用組成物 | |
US7781602B2 (en) | Fluorinated cyclic compound, polymerizable fluoromonomer, fluoropolymer, resist material comprising the same, and method of forming pattern with the same | |
JP4770780B2 (ja) | 含フッ素重合性単量体の製造方法 |