JP2004075962A - ポリアミド樹脂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】加圧加熱重縮合を経由して、分子量が高い高融点ポリアミド樹脂を得ること。
【解決手段】ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸を主要成分として含有するジカルボン酸から構成されるポリアミド樹脂の製造方法であって、脂肪族ジアミンの総モル数A、ジカルボン酸の総モル数Bの比A/Bが1.01〜1.06となるように組成を調整した原料を、水の共存下、重合系内の圧力が10〜30kg/cm2、最高到達温度が150〜300℃となる条件で加圧加熱重縮合して、硫酸相対粘度が1.05〜1.60を満足する低次縮合物を得る工程と、その低次縮合物を高重合度化する工程からなることを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸を主要成分として含有するジカルボン酸から構成されるポリアミド樹脂の製造方法であって、脂肪族ジアミンの総モル数A、ジカルボン酸の総モル数Bの比A/Bが1.01〜1.06となるように組成を調整した原料を、水の共存下、重合系内の圧力が10〜30kg/cm2、最高到達温度が150〜300℃となる条件で加圧加熱重縮合して、硫酸相対粘度が1.05〜1.60を満足する低次縮合物を得る工程と、その低次縮合物を高重合度化する工程からなることを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸を主要成分として含有するジカルボン酸から、加圧加熱重縮合を経由して誘導される、分子量が高いポリアミド樹脂の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、耐熱性、機械特性に優れたポリアミドとして高融点ポリアミドが注目されている。その例として、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)が知られているが、ナイロン46を加圧加熱重縮合によって製造する際には、テトラメチレンジアミン成分が熱により環化してピロリジンを生成し、これが重合を阻害するという課題があった。そこで、あらかじめ、ピロリジン含有量が少なく、かつ過剰のアミノ末端基を有する低分子量プレポリマーを作成し、これを水蒸気雰囲気下で固相重合する製造方法が、特開昭56−149430号公報、および特開昭56−146431号公報に開示されている。
【0003】
一方、ヘキサメチレンジアミンと2−メチルペンタメチレンジアミンの混合物からなる脂肪族ジアミンと、テレフタル酸とテレフタル酸およびイソフタル酸の混合物群から選択される芳香族ジカルボン酸から構成される半芳香族ポリアミドの製造方法が、特表平8−500150号公報に開示されている。該公報では、加圧加熱重合プロセスにおける圧力や重合のプロファイルを制御することによって、高融点画分の少ないポリアミドを得る方法を提供しているが、このようなポリアミドは芳香族成分が多いために、反応容器内で高重合度化すると吐出不可能であったり、ポリマーの融点が熱分解温度に近く、融点以上での長時間の熱履歴が分解や劣化を引き起こす原因になり得ると考えられる。
【0004】
従って、高融点ポリアミドを製造する際には、加圧加熱重合時の熱履歴を極力抑制したプロセスを利用することが好適であると考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、先に結晶性に優れるペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸を主要成分として含有するジカルボン酸から構成されるポリアミド樹脂を提案したが、この高耐熱ポリアミドの特性を十分に発現し、有用な材料として製造するためには、原料の仕込み組成比、さらには重縮合過程におけるポリマーの熱履歴を制御することが重要であることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、
(1)ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸を主要成分として含有するジカルボン酸から構成されるポリアミド樹脂の製造方法であって、脂肪族ジアミンの総モル数をA、ジカルボン酸の総モル数をBとしたとき、その比A/Bが1.01以上1.06以下となるように組成を調整した原料を、水の共存下、重合系内の圧力が10kg/cm2以上30kg/cm2以下、最高到達温度が150℃以上300℃以下となる条件で加圧加熱重縮合して、硫酸相対粘度が1.05以上1.60以下を満足する低次縮合物を得る工程と、その低次縮合物を高重合度化する工程からなることを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法。
【0007】
(2)低次縮合物を高重合度化する工程が、低次縮合物を150℃以上低次縮合物の融点未満の温度で固相重合することを特徴とする(1)記載のポリアミド樹脂の製造方法。
【0008】
(3)低次縮合物を高重合度化する工程が、溶融押出機を用いることを特徴とする(1)記載のポリアミド樹脂の製造方法。
から構成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明は、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミン、テレフタル酸を主要成分として含有するジカルボン酸から、加圧加熱重縮合を経由して、分子量の高いポリアミド樹脂を得ようとするものである。本発明では、加圧加熱重縮合時の熱履歴を極力抑制し、かつ反応容器からのポリマーの吐出を容易にするため、加圧加熱重縮合によって低次縮合物を得る工程と、その低次縮合物を高分子量化する工程からなることが特徴である。ここで、加圧加熱重縮合とは、原料を水の共存下で加熱して、発生する水蒸気により、重合系内を加圧状態として低次縮合物を生成させる工程である。ジアミン成分とジカルボン酸成分から構成されるポリアミド樹脂を製造する際には、モノマーあるいは、それらの塩中の全アミノ基量と全カルボキシル基量が等量になるように原料組成比を調整するのが通常であるが、本発明では、原料成分としてジアミン成分を過剰に仕込んで重合を行うことが必要である。加圧加熱重縮合においては、高温で重縮合反応を行うため、ジアミン成分が重合系内から揮発する、また、ペンタメチレンジアミンが脱アンモニア反応により環化するなどの理由で、重合の進行に伴い、重合系内では、全カルボキシル基量に対する全アミノ基量が少なくなる。そのため、原料を調整する段階で、あらかじめ特定量のジアミン成分を過剰に添加して、重合系内のアミノ基量を制御しようとすることが必要である。本発明では、原料として使用する、ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有するジアミン成分の総モル数をA、テレフタル酸を主要成分として含有するジカルボン酸成分の総モル数をBとしたとき、その比A/Bが1.01以上1.06以下となるように原料組成比を調整することが必要であり、1.01以上1.04以下となるように原料組成比を調整することがより好ましい。A/Bが1.01未満の場合には、重合系内の全アミノ基量が、全カルボキシル基量よりも極めて少なく、低次縮合物の分子量が極めて小さくなるため、高分子量化工程において十分に高分子量のポリマーが得られにくくなる。一方、A/Bが1.06より大きい場合には、重合系内の全カルボキシル基量が、全アミノ基量よりも極めて少なく、低次縮合物の分子量が極めて小さくなるため、高分子量化工程において十分に高分子量のポリマーが得られにくくなる。更にジアミン成分の揮散量も増加し、生産性、環境の点からも好ましくない。
【0011】
本発明では、ポリアミドの加圧加熱重縮合において通常必要とされる、重合系内を加圧状態で保持して、低次縮合物を生成させる工程を経由するため、水共存下で行うことが必要である。水の仕込量は、原料と水をあわせた全仕込量に対して10重量%以上70重量%以下とすることが好ましい。水が10重量%未満の場合には、ナイロン塩の均一溶解に時間がかかり、過度の熱履歴がかかる傾向があり好ましくない。逆に、水が70重量%より多い場合には、水の除去に多大な熱エネルギーが費やされ、低次縮合物を生成させるのに、時間がかかるため、好ましくない。さらに、加圧状態で保持する圧力は、10kg/cm2以上30kg/cm2以下とすることが好ましい。10kg/cm2未満に保持する場合には、ジアミン成分が重合系外へ揮発し易いため好ましくない。また、30kg/cm2より高く保持する場合には、重合系内の温度を高くする必要があり、結果としてジアミン成分が系外へ揮発し易くなるため好ましくない。
【0012】
本発明のポリアミドの加圧加熱重縮合において、ジアミン成分の揮発や、ペンタメチレンジアミンの脱アンモニア反応による環化を抑制するためには、加圧状態においてポリマーが受ける熱履歴を極力小さくすることが重要であり、その手段として、重合系内の最高到達温度を特定の温度領域に制御する必要がある。本発明では、重合系内の最高到達温度を、150℃以上300℃以下にすることが必要であり、200℃以上300℃以下にすることがより好ましい。最高到達温度が150℃未満の場合には、低次縮合物の分子量が極めて低く、固相重合や溶融押出機による高分子量化工程において十分に高分子量のポリマーが得られにくくなる。また、300℃より高い温度の場合には、ジアミン成分の揮発やペンタメチレンジアミンの環化が促進される傾向がある。
【0013】
本発明において、加圧加熱重縮合後に得られる低次縮合物の硫酸相対粘度は、1.05以上1.60以下に制御することが必要である。ここで、硫酸相対粘度とは、濃度を0.01g/mlとした98%硫酸溶液の25℃における相対粘度(ηr)を示す。硫酸相対粘度が1.05未満の場合には、高分子量化工程において十分に高分子量のポリマーが得られにくく、好ましくない。また、硫酸相対粘度が1.60より大きい場合には、加圧加熱重縮合後に、反応容器から吐出不可能となる傾向があるため好ましくない。
【0014】
本発明においては、加圧加熱重縮合後に得られる低次縮合物の高分子量化工程として、固相重合あるいは溶融押出機を用いることができる。固相重合は、150℃以上低次縮合物の融点未満の温度範囲で、真空中、あるいは不活性ガス中で加熱することにより行うことが好ましい。150℃未満の温度では、高分子量化する速度が遅く、長時間を必要とするので好ましくない。また、溶融押出機による高分子量化は、低次縮合物の融点よりも10℃以上40℃以下高い温度で行うことが好ましい。低次縮合物の融点+10℃よりも低い温度で溶融押出する場合には、低次縮合物が溶融するのに長時間必要となり、効率が低下するため好ましくない。また、低次縮合物の融点+40℃より高い温度で溶融押出する場合には、低次縮合物が分解する傾向があるため好ましくない。
【0015】
本発明において主要成分とは、構成成分のうち、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸の全モル数が少なくとも90モル%以上、好ましくは95モル%以上含むポリアミドを言う。本発明のポリアミド樹脂の融点が330℃よりも高い場合には、溶融成形が困難となるので、本発明においては、脂肪族ジアミン中のヘキサメチレンジアミン成分が全脂肪族ジアミンに対して30モル%以上、68モル%以下になるように混合して使用することが好ましい。脂肪族ジアミン中のヘキサメチレンジアミン成分が30モル%未満、68モル%より多い場合は、ポリアミド樹脂の融点が330℃より大きくなり、溶融成形が困難となるため好ましくない。
【0016】
本発明のポリアミド樹脂を製造する際には、構成成分のうち10モル%未満、好ましくは5モル%未満で他の成分を共重合することができる。代表的な共重合成分としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸のような脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)メタンのような脂環式ジアミン、キシリレンジアミンのような芳香族ジアミンなどが挙げられる。
【0017】
本発明の原料となるペンタメチレンジアミンの製法に制限はないが、例えば、2−シクロヘキセン−1−オンなどのビニルケトン類を触媒としてリジンから合成する方法(Chemistry Letters,893(1986)、特公平4−10452)や、リジン脱炭酸酵素を用いてリジンから転換する方法などが既に提案されている。前者の方法では、反応温度が約150℃と高いのに対し、後者の方法は100℃未満であり、後者の方法を用いる方が、副反応をより低減でき、より純度の高いペンタメチレンジアミンが得られると考えられるため、原料としては後者の方法によって得られたペンタメチレンジアミンを用いることが好ましい。
【0018】
後者の方法で使用するリジン脱炭酸酵素は、リジンをペンタメチレンジアミンに転換させる酵素であり、Escherichia coli K12株をはじめとするエシェリシア属微生物のみならず、多くの生物に存在することが知られている。
【0019】
使用するのが好ましいリジン脱炭酸酵素は、これらの生物に存在するものを使用することができ、リジン脱炭酸酵素の細胞内での活性が上昇した組換え細胞由来のものも使用できる。
【0020】
組換え細胞としては、微生物、動物、植物、または昆虫由来のものが好ましく使用できる。例えば動物を用いる場合、マウス、ラットやそれらの培養細胞などが用いられる。植物を用いる場合、例えばシロイヌナズナ、タバコやそれらの培養細胞が用いられる。また、昆虫を用いる場合、例えばカイコやその培養細胞などが用いられる。また、微生物を用いる場合、例えば、大腸菌などが用いられる。
【0021】
また、リジン脱炭酸酵素を複数種組み合わせて使用しても良い。
【0022】
このようなリジン脱炭酸酵素を持つ微生物としては、バシラス・ハロドゥランス(Bacillus halodurans)、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)、セレノモナス・ルミナンチウム(Selenomonas ruminantium)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、ストレプトマイセス・コエリカーラ(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・ピロサス(Streptomyces pilosus)、エイケネラ・コロデンス(Eikenella corrodens)、イユバクテリウム・アシダミノフィルム(Eubacterium acidaminophilum)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)、ナイセリア・メニンギチデス(Neisseria meningitidis)、テルモプラズマ・アシドフィルム(Thermoplasma acidophilum)、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)またはコリネバクテリウム・グルタミカス(Corynebacteriumglutamicum)等が挙げられる。
【0023】
リジン脱炭酸酵素を得る方法に特に制限はないが、例えば、リジン脱炭酸酵素を有する微生物や、リジン脱炭酸酵素の細胞内での活性が上昇した組換え細胞などを適当な培地で培養し、増殖した菌体を回収し、休止菌体として用いることも可能であり、また当該菌体を破砕して無細胞抽出液を調製して用いることも可能であり、また必要に応じて精製して用いることも可能である。
【0024】
リジン脱炭酸酵素を抽出するために、リジン脱炭酸酵素を有する微生物や組換え細胞を培養する方法に特に制限はないが、例えば微生物を培養する場合、使用する培地は、炭素源、窒素源、無機イオンおよび必要に応じその他有機成分を含有する培地が用いられる。例えば、E.coliの場合しばしばLB培地が用いられる。炭素源としては、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フラクトース、アラビノース、マルトース、キシロース、トレハロース、リボースや澱粉の加水分解物などの糖類、グリセロール、マンニトールやソルビトールなどのアルコール類、グルコン酸、フマール酸、クエン酸やコハク酸等の有機酸類を用いることができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。有機微量栄養素としては、各種アミノ酸、ビタミンB1等のビタミン類、RNA等の核酸類などの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。それらの他に、必要に応じて、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。
【0025】
培養条件にも特に制限はなく、例えばE.coliの場合、好気条件下で16〜72時間程度実施するのが良く、培養温度は30℃〜45℃に、特に好ましくは37℃に、培養pHは5〜8に、特に好ましくはpH7に制御するのがよい。なおpH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、さらにアンモニアガス等を使用することができる。
【0026】
増殖した微生物や組換え細胞は、遠心分離等により培養液から回収することができる。回収した微生物や組換え細胞から無細胞抽出液を調整するには、通常の方法が用いられる。すなわち、微生物や組換え細胞を超音波処理、ダイノミル、フレンチプレス等の方法にて破砕し、遠心分離により菌体残渣を除去することにより無細胞抽出液が得られる。
【0027】
無細胞抽出液からリジン脱炭酸酵素を精製するには、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、等電点沈殿、熱処理、pH処理等酵素の精製に通常用いられる手法が適宜組み合わされて用いられる。精製は、完全精製である必要は必ずしもなく、リジン脱炭酸酵素以外のリジンの分解に関与する酵素、生成物であるペンタメチレンジアミンの分解酵素等の夾雑物が除去できればよい。
【0028】
リジン脱炭酸酵素によるリジンからペンタメチレンジアミンへの変換は、上記のようにして得られるリジン脱炭酸酵素を、リジンに接触させることによって行うことができる。
【0029】
反応溶液中のリジンの濃度については、特に制限はない。
【0030】
リジン脱炭酸酵素の量は、リジンをペンタメチレンジアミンに変換する反応を触媒するのに十分な量であればよい。
【0031】
反応温度は、通常、28〜55℃、好ましくは40℃前後である。
【0032】
反応pHは、通常、5〜8、好ましくは、約6である。ペンタメチレンジアミンが生成するにつれ、反応溶液はアルカリ性へ変わるので、反応pHを維持するために無機あるいは有機の酸性物質を添加することが好ましい。好ましくは塩酸を使用することができる。
【0033】
反応には静置または攪拌のいずれの方法も採用し得る。
【0034】
リジン脱炭酸酵素は固定化されていてもよい。
反応時間は、使用する酵素活性、基質濃度などの条件によって異なるが、通常、1〜72時間である。また、反応は、リジンを供給しながら連続的に行ってもよい。
【0035】
このように生成したペンタメチレンジアミンを反応終了後、反応液から採取する方法としては、イオン交換樹脂を用いる方法や沈殿剤を用いる方法、溶媒抽出する方法、単蒸留する方法、その他通常の採取分離方法が採用できる。
【0036】
本発明によって製造されたポリアミド樹脂には、充填材、他種ポリマーなどを添加することができる。充填材としては一般に樹脂用フィラーとして用いられる公知のものが用いられ、本発明のポリアミド樹脂組成物の強度、剛性、耐熱性、寸法安定性などを改良できる。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、タルク、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、モンモリロナイト、アスベスト、アルミノシリケート、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、シリカなどが挙げられる。これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種類以上用いることも可能である。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で処理して使用してもよい。また、モンモリロナイトについては、有機アンモニウム塩で層間イオンをカチオン交換した有機化モンモリロナイトを用いてもよい。ポリアミド樹脂を補強するには、前記充填材の中でも、特にガラス繊維、炭素繊維が好ましい。
【0037】
また他種ポリマーとしては、他のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリスチレン等を挙げることができ、本発明のポリアミド樹脂の耐衝撃性を改良するには、オレフィン系化合物および/または共役ジエン系化合物を重合して得られる(共)重合体などの変性ポリオレフィンが好ましく用いられる。
【0038】
上記(共)重合体としては、エチレン系共重合体、共役ジエン系重合体、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体などが挙げられる。
【0039】
ここで、エチレン系共重合体とは、エチレンと他の単量体との共重合体および多元共重合体をさし、エチレンと共重合する他の単量体としては炭素数3以上のα−オレフィン、非共役ジエン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、α,β−不飽和カルボン酸およびその誘導体などの中から選択することができる。
【0040】
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルペンテン−1、オクタセン−1などが挙げられ、プロピレン、ブテン−1が好ましく使用できる。非共役系ジエンとしては5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−クロチル−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−メチル−5−ビニルノルボルネンなどのノルボルネン化合物、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、4,7,8,9−テトラヒドロインデン、1,5−シクロオクタジエン1,4−ヘキサジエン、イソプレン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、11−トリデカジエンなどが挙げられ、好ましくは5−メチリデン−2−ノルブルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどである。α,β−不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ブテンジカルボン酸などが挙げられ、その誘導体としてはアルキルエステル、アリールエステル、グリシジルエステル、酸無水物、イミドを例として挙げることができる。
【0041】
また、共役ジエン系重合体とは少なくとも1種以上の共役ジエンを構成成分とする重合体であり、例えば1,3−ブタジエンの如き単独重合体や1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンから選ばれる1種以上の単量体の共重合体などが挙げられる。これらの重合体の不飽和結合の一部または全部が水添により還元されているものも好ましく使用できる。
【0042】
共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体とは共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素からなるブロック共重合体またはランダム共重合体であり、これを構成する共役ジエンの例としては前記の単量体が挙げられ、特に1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。芳香族ビニル炭化水素の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、中でもスチレンが好ましく使用できる。また、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体の芳香環以外の二重結合以外の不飽和結合の一部または全部が水添により還元されているものも好ましく使用できる。
【0043】
また、ポリアミド系エラストマーやポリエステル系エラストマーを用いることもできる。これらの耐衝撃性改良材は2種以上併用することも可能である。
【0044】
このような耐衝撃性改良剤の具体例としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ヘキセン−1共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、未水添または水添スチレン/イソプレン/スチレントリブロック共重合体、未水添または水添スチレン/ブタジエン/スチレントリブロック共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、(「g」はグラフトを表わす、以下同じ)、エチレン/メタクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−マレイミド共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−N−フェニルマレイミド共重合体およびこれら共重合体の部分ケン化物、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ビニルアセテート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/ビニルアセテート/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/グリシジルエーテル共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/2,5−ノルボルナジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−N−フェニルマレイミド共重合体、エチレン/ブテン−1−g−N−フェニルマレイミド共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/イソプレン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、ナイロン12/ポリテトラメチレングリコール共重合体、ナイロン12/ポリトリメチレングリコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート/ポリトリメチレングリコール共重合体などを挙げることができる。この中で、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体がさらに好ましく、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体が特に好ましい。
【0045】
さらに、本発明のポリアミド樹脂には、各種添加剤、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)を任意の時点で添加することができる。
【0046】
本発明のポリアミド樹脂は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、溶融紡糸、フィルム成形などの任意の成形方法により、所望の形状に成形でき、特に機械部品、自動車部品などの樹脂成形品として使用することができる。
【0047】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0048】
[相対粘度(ηr)測定]
98%硫酸中、0.01g/ml濃度、25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定を行った。
【0049】
参考例1(リジン脱炭酸酵素の調整)
E.coli JM109株の培養は以下のように行った。まず、この菌株をLB培地5mlに1白金耳植菌し、30℃で24時間振とうして前培養を行った。
【0050】
次に、LB培地50mlを500mlの三角フラスコに入れ、予め115℃、10分間蒸気滅菌した。この培地に前培養した上記菌株を植え継ぎ、振幅30cmで、180rpmの条件下で、1N塩酸水溶液でpHを6.0に調整しながら、24時間培養した。こうして得られた菌体を集め、超音波破砕および遠心分離により無細胞抽出液を調製した。これらのリジン脱炭酸酵素活性の測定を定法に従って行った(左右田健次,味園春雄,生化学実験講座,vol.11上,P.179−191(1976))。
【0051】
リジンを基質とした場合、本来の主経路と考えられるリジンモノオキシゲナーゼ、リジンオキシダーゼおよびリジンムターゼによる転換が起こり得るので、この反応系を遮断する目的で75℃で5分間、E.coli JM109株の無細胞抽出液を加熱した。さらにこの無細胞抽出液を40%飽和および55%飽和硫酸アンモニウムにより分画した。こうして得られた粗精製リジン脱炭酸酵素溶液を用いて、リジンからペンタメチレンジアミンの生成を行った。
【0052】
参考例2(ペンタメチレンジアミンの製造)
50mM リジン塩酸塩(和光純薬工業製)、0.1mM ピリドキサルリン酸(和光純薬工業製)、40mg/L−粗精製リジン脱炭酸酵素(参考例1で調製)となるように調製した水溶液1000mlを、0.1N塩酸水溶液でpHを5.5〜6.5に維持しながら、45℃で48時間反応させ、ペンタメチレンジアミン塩酸塩を得た。この水溶液に水酸化ナトリウムを添加することによってペンタメチレンジアミン塩酸塩をペンタメチレンジアミンに変換し、クロロホルムで抽出して、減圧蒸留(8mmHg、70℃)することにより、ペンタメチレンジアミンを得た。
【0053】
参考例3(ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の塩(5T塩)の調製)
参考例2のペンタメチレンジアミンの水溶液を、60℃のウォーターバスに浸して撹拌しているところに、テレフタル酸を添加していき、テレフタル酸添加量に対する水溶液のpH変化を調べ、中和点を求めると、pH7.24であった。pHが7.24になるように、ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩を調製した。
【0054】
参考例4(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の塩(6T塩)の調製)
ヘキサメチレンジアミンの水溶液を、60℃のウォーターバスに浸して撹拌しているところに、テレフタル酸を添加していき、テレフタル酸添加量に対する水溶液のpH変化を調べ、中和点を求めると、pH7.14であった。pHが7.14になるように、ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩を調製した。
【0055】
実施例1〜4、比較例1〜3
参考例3で調製したペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩、参考例4で調製したヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩、および過剰ジアミン成分としてペンタメチレンジアミンの10wt%水溶液を、表1に示した組成となるように配合し、さらに全仕込量に対して水含有量が30wt%になるように、水を反応容器に仕込み、密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力が所定の圧力に到達した後、缶内圧力を、所定の圧力に2時間保持した。その後、反応容器から内容物を水中に吐出した。これを120℃で24時間真空乾燥して、低次縮合物を得た。得られた低次縮合物を260℃で12時間固相重合するか、あるいは30mmφのベント式二軸押出機で340℃で溶融押出して、ポリアミド樹脂を得た。
【0056】
実施例5、比較例4
全仕込量に対して、水含有量が10wt%になるように水を反応容器に仕込む以外は実施例1と同様の方法でポリアミド樹脂を得た。
【0057】
【表1】
【0058】
【発明の効果】
本発明により、ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸を主要成分として含有する芳香族ジカルボン酸から、加圧加熱重縮合を経由して、分子量が高いポリアミド樹脂を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸を主要成分として含有するジカルボン酸から、加圧加熱重縮合を経由して誘導される、分子量が高いポリアミド樹脂の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、耐熱性、機械特性に優れたポリアミドとして高融点ポリアミドが注目されている。その例として、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)が知られているが、ナイロン46を加圧加熱重縮合によって製造する際には、テトラメチレンジアミン成分が熱により環化してピロリジンを生成し、これが重合を阻害するという課題があった。そこで、あらかじめ、ピロリジン含有量が少なく、かつ過剰のアミノ末端基を有する低分子量プレポリマーを作成し、これを水蒸気雰囲気下で固相重合する製造方法が、特開昭56−149430号公報、および特開昭56−146431号公報に開示されている。
【0003】
一方、ヘキサメチレンジアミンと2−メチルペンタメチレンジアミンの混合物からなる脂肪族ジアミンと、テレフタル酸とテレフタル酸およびイソフタル酸の混合物群から選択される芳香族ジカルボン酸から構成される半芳香族ポリアミドの製造方法が、特表平8−500150号公報に開示されている。該公報では、加圧加熱重合プロセスにおける圧力や重合のプロファイルを制御することによって、高融点画分の少ないポリアミドを得る方法を提供しているが、このようなポリアミドは芳香族成分が多いために、反応容器内で高重合度化すると吐出不可能であったり、ポリマーの融点が熱分解温度に近く、融点以上での長時間の熱履歴が分解や劣化を引き起こす原因になり得ると考えられる。
【0004】
従って、高融点ポリアミドを製造する際には、加圧加熱重合時の熱履歴を極力抑制したプロセスを利用することが好適であると考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、先に結晶性に優れるペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸を主要成分として含有するジカルボン酸から構成されるポリアミド樹脂を提案したが、この高耐熱ポリアミドの特性を十分に発現し、有用な材料として製造するためには、原料の仕込み組成比、さらには重縮合過程におけるポリマーの熱履歴を制御することが重要であることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、
(1)ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸を主要成分として含有するジカルボン酸から構成されるポリアミド樹脂の製造方法であって、脂肪族ジアミンの総モル数をA、ジカルボン酸の総モル数をBとしたとき、その比A/Bが1.01以上1.06以下となるように組成を調整した原料を、水の共存下、重合系内の圧力が10kg/cm2以上30kg/cm2以下、最高到達温度が150℃以上300℃以下となる条件で加圧加熱重縮合して、硫酸相対粘度が1.05以上1.60以下を満足する低次縮合物を得る工程と、その低次縮合物を高重合度化する工程からなることを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法。
【0007】
(2)低次縮合物を高重合度化する工程が、低次縮合物を150℃以上低次縮合物の融点未満の温度で固相重合することを特徴とする(1)記載のポリアミド樹脂の製造方法。
【0008】
(3)低次縮合物を高重合度化する工程が、溶融押出機を用いることを特徴とする(1)記載のポリアミド樹脂の製造方法。
から構成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明は、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミン、テレフタル酸を主要成分として含有するジカルボン酸から、加圧加熱重縮合を経由して、分子量の高いポリアミド樹脂を得ようとするものである。本発明では、加圧加熱重縮合時の熱履歴を極力抑制し、かつ反応容器からのポリマーの吐出を容易にするため、加圧加熱重縮合によって低次縮合物を得る工程と、その低次縮合物を高分子量化する工程からなることが特徴である。ここで、加圧加熱重縮合とは、原料を水の共存下で加熱して、発生する水蒸気により、重合系内を加圧状態として低次縮合物を生成させる工程である。ジアミン成分とジカルボン酸成分から構成されるポリアミド樹脂を製造する際には、モノマーあるいは、それらの塩中の全アミノ基量と全カルボキシル基量が等量になるように原料組成比を調整するのが通常であるが、本発明では、原料成分としてジアミン成分を過剰に仕込んで重合を行うことが必要である。加圧加熱重縮合においては、高温で重縮合反応を行うため、ジアミン成分が重合系内から揮発する、また、ペンタメチレンジアミンが脱アンモニア反応により環化するなどの理由で、重合の進行に伴い、重合系内では、全カルボキシル基量に対する全アミノ基量が少なくなる。そのため、原料を調整する段階で、あらかじめ特定量のジアミン成分を過剰に添加して、重合系内のアミノ基量を制御しようとすることが必要である。本発明では、原料として使用する、ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有するジアミン成分の総モル数をA、テレフタル酸を主要成分として含有するジカルボン酸成分の総モル数をBとしたとき、その比A/Bが1.01以上1.06以下となるように原料組成比を調整することが必要であり、1.01以上1.04以下となるように原料組成比を調整することがより好ましい。A/Bが1.01未満の場合には、重合系内の全アミノ基量が、全カルボキシル基量よりも極めて少なく、低次縮合物の分子量が極めて小さくなるため、高分子量化工程において十分に高分子量のポリマーが得られにくくなる。一方、A/Bが1.06より大きい場合には、重合系内の全カルボキシル基量が、全アミノ基量よりも極めて少なく、低次縮合物の分子量が極めて小さくなるため、高分子量化工程において十分に高分子量のポリマーが得られにくくなる。更にジアミン成分の揮散量も増加し、生産性、環境の点からも好ましくない。
【0011】
本発明では、ポリアミドの加圧加熱重縮合において通常必要とされる、重合系内を加圧状態で保持して、低次縮合物を生成させる工程を経由するため、水共存下で行うことが必要である。水の仕込量は、原料と水をあわせた全仕込量に対して10重量%以上70重量%以下とすることが好ましい。水が10重量%未満の場合には、ナイロン塩の均一溶解に時間がかかり、過度の熱履歴がかかる傾向があり好ましくない。逆に、水が70重量%より多い場合には、水の除去に多大な熱エネルギーが費やされ、低次縮合物を生成させるのに、時間がかかるため、好ましくない。さらに、加圧状態で保持する圧力は、10kg/cm2以上30kg/cm2以下とすることが好ましい。10kg/cm2未満に保持する場合には、ジアミン成分が重合系外へ揮発し易いため好ましくない。また、30kg/cm2より高く保持する場合には、重合系内の温度を高くする必要があり、結果としてジアミン成分が系外へ揮発し易くなるため好ましくない。
【0012】
本発明のポリアミドの加圧加熱重縮合において、ジアミン成分の揮発や、ペンタメチレンジアミンの脱アンモニア反応による環化を抑制するためには、加圧状態においてポリマーが受ける熱履歴を極力小さくすることが重要であり、その手段として、重合系内の最高到達温度を特定の温度領域に制御する必要がある。本発明では、重合系内の最高到達温度を、150℃以上300℃以下にすることが必要であり、200℃以上300℃以下にすることがより好ましい。最高到達温度が150℃未満の場合には、低次縮合物の分子量が極めて低く、固相重合や溶融押出機による高分子量化工程において十分に高分子量のポリマーが得られにくくなる。また、300℃より高い温度の場合には、ジアミン成分の揮発やペンタメチレンジアミンの環化が促進される傾向がある。
【0013】
本発明において、加圧加熱重縮合後に得られる低次縮合物の硫酸相対粘度は、1.05以上1.60以下に制御することが必要である。ここで、硫酸相対粘度とは、濃度を0.01g/mlとした98%硫酸溶液の25℃における相対粘度(ηr)を示す。硫酸相対粘度が1.05未満の場合には、高分子量化工程において十分に高分子量のポリマーが得られにくく、好ましくない。また、硫酸相対粘度が1.60より大きい場合には、加圧加熱重縮合後に、反応容器から吐出不可能となる傾向があるため好ましくない。
【0014】
本発明においては、加圧加熱重縮合後に得られる低次縮合物の高分子量化工程として、固相重合あるいは溶融押出機を用いることができる。固相重合は、150℃以上低次縮合物の融点未満の温度範囲で、真空中、あるいは不活性ガス中で加熱することにより行うことが好ましい。150℃未満の温度では、高分子量化する速度が遅く、長時間を必要とするので好ましくない。また、溶融押出機による高分子量化は、低次縮合物の融点よりも10℃以上40℃以下高い温度で行うことが好ましい。低次縮合物の融点+10℃よりも低い温度で溶融押出する場合には、低次縮合物が溶融するのに長時間必要となり、効率が低下するため好ましくない。また、低次縮合物の融点+40℃より高い温度で溶融押出する場合には、低次縮合物が分解する傾向があるため好ましくない。
【0015】
本発明において主要成分とは、構成成分のうち、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸の全モル数が少なくとも90モル%以上、好ましくは95モル%以上含むポリアミドを言う。本発明のポリアミド樹脂の融点が330℃よりも高い場合には、溶融成形が困難となるので、本発明においては、脂肪族ジアミン中のヘキサメチレンジアミン成分が全脂肪族ジアミンに対して30モル%以上、68モル%以下になるように混合して使用することが好ましい。脂肪族ジアミン中のヘキサメチレンジアミン成分が30モル%未満、68モル%より多い場合は、ポリアミド樹脂の融点が330℃より大きくなり、溶融成形が困難となるため好ましくない。
【0016】
本発明のポリアミド樹脂を製造する際には、構成成分のうち10モル%未満、好ましくは5モル%未満で他の成分を共重合することができる。代表的な共重合成分としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸のような脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)メタンのような脂環式ジアミン、キシリレンジアミンのような芳香族ジアミンなどが挙げられる。
【0017】
本発明の原料となるペンタメチレンジアミンの製法に制限はないが、例えば、2−シクロヘキセン−1−オンなどのビニルケトン類を触媒としてリジンから合成する方法(Chemistry Letters,893(1986)、特公平4−10452)や、リジン脱炭酸酵素を用いてリジンから転換する方法などが既に提案されている。前者の方法では、反応温度が約150℃と高いのに対し、後者の方法は100℃未満であり、後者の方法を用いる方が、副反応をより低減でき、より純度の高いペンタメチレンジアミンが得られると考えられるため、原料としては後者の方法によって得られたペンタメチレンジアミンを用いることが好ましい。
【0018】
後者の方法で使用するリジン脱炭酸酵素は、リジンをペンタメチレンジアミンに転換させる酵素であり、Escherichia coli K12株をはじめとするエシェリシア属微生物のみならず、多くの生物に存在することが知られている。
【0019】
使用するのが好ましいリジン脱炭酸酵素は、これらの生物に存在するものを使用することができ、リジン脱炭酸酵素の細胞内での活性が上昇した組換え細胞由来のものも使用できる。
【0020】
組換え細胞としては、微生物、動物、植物、または昆虫由来のものが好ましく使用できる。例えば動物を用いる場合、マウス、ラットやそれらの培養細胞などが用いられる。植物を用いる場合、例えばシロイヌナズナ、タバコやそれらの培養細胞が用いられる。また、昆虫を用いる場合、例えばカイコやその培養細胞などが用いられる。また、微生物を用いる場合、例えば、大腸菌などが用いられる。
【0021】
また、リジン脱炭酸酵素を複数種組み合わせて使用しても良い。
【0022】
このようなリジン脱炭酸酵素を持つ微生物としては、バシラス・ハロドゥランス(Bacillus halodurans)、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)、セレノモナス・ルミナンチウム(Selenomonas ruminantium)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、ストレプトマイセス・コエリカーラ(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・ピロサス(Streptomyces pilosus)、エイケネラ・コロデンス(Eikenella corrodens)、イユバクテリウム・アシダミノフィルム(Eubacterium acidaminophilum)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)、ナイセリア・メニンギチデス(Neisseria meningitidis)、テルモプラズマ・アシドフィルム(Thermoplasma acidophilum)、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)またはコリネバクテリウム・グルタミカス(Corynebacteriumglutamicum)等が挙げられる。
【0023】
リジン脱炭酸酵素を得る方法に特に制限はないが、例えば、リジン脱炭酸酵素を有する微生物や、リジン脱炭酸酵素の細胞内での活性が上昇した組換え細胞などを適当な培地で培養し、増殖した菌体を回収し、休止菌体として用いることも可能であり、また当該菌体を破砕して無細胞抽出液を調製して用いることも可能であり、また必要に応じて精製して用いることも可能である。
【0024】
リジン脱炭酸酵素を抽出するために、リジン脱炭酸酵素を有する微生物や組換え細胞を培養する方法に特に制限はないが、例えば微生物を培養する場合、使用する培地は、炭素源、窒素源、無機イオンおよび必要に応じその他有機成分を含有する培地が用いられる。例えば、E.coliの場合しばしばLB培地が用いられる。炭素源としては、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フラクトース、アラビノース、マルトース、キシロース、トレハロース、リボースや澱粉の加水分解物などの糖類、グリセロール、マンニトールやソルビトールなどのアルコール類、グルコン酸、フマール酸、クエン酸やコハク酸等の有機酸類を用いることができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。有機微量栄養素としては、各種アミノ酸、ビタミンB1等のビタミン類、RNA等の核酸類などの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。それらの他に、必要に応じて、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。
【0025】
培養条件にも特に制限はなく、例えばE.coliの場合、好気条件下で16〜72時間程度実施するのが良く、培養温度は30℃〜45℃に、特に好ましくは37℃に、培養pHは5〜8に、特に好ましくはpH7に制御するのがよい。なおpH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、さらにアンモニアガス等を使用することができる。
【0026】
増殖した微生物や組換え細胞は、遠心分離等により培養液から回収することができる。回収した微生物や組換え細胞から無細胞抽出液を調整するには、通常の方法が用いられる。すなわち、微生物や組換え細胞を超音波処理、ダイノミル、フレンチプレス等の方法にて破砕し、遠心分離により菌体残渣を除去することにより無細胞抽出液が得られる。
【0027】
無細胞抽出液からリジン脱炭酸酵素を精製するには、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、等電点沈殿、熱処理、pH処理等酵素の精製に通常用いられる手法が適宜組み合わされて用いられる。精製は、完全精製である必要は必ずしもなく、リジン脱炭酸酵素以外のリジンの分解に関与する酵素、生成物であるペンタメチレンジアミンの分解酵素等の夾雑物が除去できればよい。
【0028】
リジン脱炭酸酵素によるリジンからペンタメチレンジアミンへの変換は、上記のようにして得られるリジン脱炭酸酵素を、リジンに接触させることによって行うことができる。
【0029】
反応溶液中のリジンの濃度については、特に制限はない。
【0030】
リジン脱炭酸酵素の量は、リジンをペンタメチレンジアミンに変換する反応を触媒するのに十分な量であればよい。
【0031】
反応温度は、通常、28〜55℃、好ましくは40℃前後である。
【0032】
反応pHは、通常、5〜8、好ましくは、約6である。ペンタメチレンジアミンが生成するにつれ、反応溶液はアルカリ性へ変わるので、反応pHを維持するために無機あるいは有機の酸性物質を添加することが好ましい。好ましくは塩酸を使用することができる。
【0033】
反応には静置または攪拌のいずれの方法も採用し得る。
【0034】
リジン脱炭酸酵素は固定化されていてもよい。
反応時間は、使用する酵素活性、基質濃度などの条件によって異なるが、通常、1〜72時間である。また、反応は、リジンを供給しながら連続的に行ってもよい。
【0035】
このように生成したペンタメチレンジアミンを反応終了後、反応液から採取する方法としては、イオン交換樹脂を用いる方法や沈殿剤を用いる方法、溶媒抽出する方法、単蒸留する方法、その他通常の採取分離方法が採用できる。
【0036】
本発明によって製造されたポリアミド樹脂には、充填材、他種ポリマーなどを添加することができる。充填材としては一般に樹脂用フィラーとして用いられる公知のものが用いられ、本発明のポリアミド樹脂組成物の強度、剛性、耐熱性、寸法安定性などを改良できる。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、タルク、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、モンモリロナイト、アスベスト、アルミノシリケート、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、シリカなどが挙げられる。これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種類以上用いることも可能である。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で処理して使用してもよい。また、モンモリロナイトについては、有機アンモニウム塩で層間イオンをカチオン交換した有機化モンモリロナイトを用いてもよい。ポリアミド樹脂を補強するには、前記充填材の中でも、特にガラス繊維、炭素繊維が好ましい。
【0037】
また他種ポリマーとしては、他のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリスチレン等を挙げることができ、本発明のポリアミド樹脂の耐衝撃性を改良するには、オレフィン系化合物および/または共役ジエン系化合物を重合して得られる(共)重合体などの変性ポリオレフィンが好ましく用いられる。
【0038】
上記(共)重合体としては、エチレン系共重合体、共役ジエン系重合体、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体などが挙げられる。
【0039】
ここで、エチレン系共重合体とは、エチレンと他の単量体との共重合体および多元共重合体をさし、エチレンと共重合する他の単量体としては炭素数3以上のα−オレフィン、非共役ジエン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、α,β−不飽和カルボン酸およびその誘導体などの中から選択することができる。
【0040】
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルペンテン−1、オクタセン−1などが挙げられ、プロピレン、ブテン−1が好ましく使用できる。非共役系ジエンとしては5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−クロチル−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−メチル−5−ビニルノルボルネンなどのノルボルネン化合物、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、4,7,8,9−テトラヒドロインデン、1,5−シクロオクタジエン1,4−ヘキサジエン、イソプレン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、11−トリデカジエンなどが挙げられ、好ましくは5−メチリデン−2−ノルブルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどである。α,β−不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ブテンジカルボン酸などが挙げられ、その誘導体としてはアルキルエステル、アリールエステル、グリシジルエステル、酸無水物、イミドを例として挙げることができる。
【0041】
また、共役ジエン系重合体とは少なくとも1種以上の共役ジエンを構成成分とする重合体であり、例えば1,3−ブタジエンの如き単独重合体や1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンから選ばれる1種以上の単量体の共重合体などが挙げられる。これらの重合体の不飽和結合の一部または全部が水添により還元されているものも好ましく使用できる。
【0042】
共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体とは共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素からなるブロック共重合体またはランダム共重合体であり、これを構成する共役ジエンの例としては前記の単量体が挙げられ、特に1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。芳香族ビニル炭化水素の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、中でもスチレンが好ましく使用できる。また、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体の芳香環以外の二重結合以外の不飽和結合の一部または全部が水添により還元されているものも好ましく使用できる。
【0043】
また、ポリアミド系エラストマーやポリエステル系エラストマーを用いることもできる。これらの耐衝撃性改良材は2種以上併用することも可能である。
【0044】
このような耐衝撃性改良剤の具体例としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ヘキセン−1共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、未水添または水添スチレン/イソプレン/スチレントリブロック共重合体、未水添または水添スチレン/ブタジエン/スチレントリブロック共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、(「g」はグラフトを表わす、以下同じ)、エチレン/メタクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−マレイミド共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−N−フェニルマレイミド共重合体およびこれら共重合体の部分ケン化物、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ビニルアセテート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/ビニルアセテート/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/グリシジルエーテル共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/2,5−ノルボルナジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−N−フェニルマレイミド共重合体、エチレン/ブテン−1−g−N−フェニルマレイミド共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/イソプレン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、ナイロン12/ポリテトラメチレングリコール共重合体、ナイロン12/ポリトリメチレングリコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート/ポリトリメチレングリコール共重合体などを挙げることができる。この中で、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体がさらに好ましく、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体が特に好ましい。
【0045】
さらに、本発明のポリアミド樹脂には、各種添加剤、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)を任意の時点で添加することができる。
【0046】
本発明のポリアミド樹脂は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、溶融紡糸、フィルム成形などの任意の成形方法により、所望の形状に成形でき、特に機械部品、自動車部品などの樹脂成形品として使用することができる。
【0047】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0048】
[相対粘度(ηr)測定]
98%硫酸中、0.01g/ml濃度、25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定を行った。
【0049】
参考例1(リジン脱炭酸酵素の調整)
E.coli JM109株の培養は以下のように行った。まず、この菌株をLB培地5mlに1白金耳植菌し、30℃で24時間振とうして前培養を行った。
【0050】
次に、LB培地50mlを500mlの三角フラスコに入れ、予め115℃、10分間蒸気滅菌した。この培地に前培養した上記菌株を植え継ぎ、振幅30cmで、180rpmの条件下で、1N塩酸水溶液でpHを6.0に調整しながら、24時間培養した。こうして得られた菌体を集め、超音波破砕および遠心分離により無細胞抽出液を調製した。これらのリジン脱炭酸酵素活性の測定を定法に従って行った(左右田健次,味園春雄,生化学実験講座,vol.11上,P.179−191(1976))。
【0051】
リジンを基質とした場合、本来の主経路と考えられるリジンモノオキシゲナーゼ、リジンオキシダーゼおよびリジンムターゼによる転換が起こり得るので、この反応系を遮断する目的で75℃で5分間、E.coli JM109株の無細胞抽出液を加熱した。さらにこの無細胞抽出液を40%飽和および55%飽和硫酸アンモニウムにより分画した。こうして得られた粗精製リジン脱炭酸酵素溶液を用いて、リジンからペンタメチレンジアミンの生成を行った。
【0052】
参考例2(ペンタメチレンジアミンの製造)
50mM リジン塩酸塩(和光純薬工業製)、0.1mM ピリドキサルリン酸(和光純薬工業製)、40mg/L−粗精製リジン脱炭酸酵素(参考例1で調製)となるように調製した水溶液1000mlを、0.1N塩酸水溶液でpHを5.5〜6.5に維持しながら、45℃で48時間反応させ、ペンタメチレンジアミン塩酸塩を得た。この水溶液に水酸化ナトリウムを添加することによってペンタメチレンジアミン塩酸塩をペンタメチレンジアミンに変換し、クロロホルムで抽出して、減圧蒸留(8mmHg、70℃)することにより、ペンタメチレンジアミンを得た。
【0053】
参考例3(ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の塩(5T塩)の調製)
参考例2のペンタメチレンジアミンの水溶液を、60℃のウォーターバスに浸して撹拌しているところに、テレフタル酸を添加していき、テレフタル酸添加量に対する水溶液のpH変化を調べ、中和点を求めると、pH7.24であった。pHが7.24になるように、ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩を調製した。
【0054】
参考例4(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の塩(6T塩)の調製)
ヘキサメチレンジアミンの水溶液を、60℃のウォーターバスに浸して撹拌しているところに、テレフタル酸を添加していき、テレフタル酸添加量に対する水溶液のpH変化を調べ、中和点を求めると、pH7.14であった。pHが7.14になるように、ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩を調製した。
【0055】
実施例1〜4、比較例1〜3
参考例3で調製したペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩、参考例4で調製したヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩、および過剰ジアミン成分としてペンタメチレンジアミンの10wt%水溶液を、表1に示した組成となるように配合し、さらに全仕込量に対して水含有量が30wt%になるように、水を反応容器に仕込み、密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力が所定の圧力に到達した後、缶内圧力を、所定の圧力に2時間保持した。その後、反応容器から内容物を水中に吐出した。これを120℃で24時間真空乾燥して、低次縮合物を得た。得られた低次縮合物を260℃で12時間固相重合するか、あるいは30mmφのベント式二軸押出機で340℃で溶融押出して、ポリアミド樹脂を得た。
【0056】
実施例5、比較例4
全仕込量に対して、水含有量が10wt%になるように水を反応容器に仕込む以外は実施例1と同様の方法でポリアミド樹脂を得た。
【0057】
【表1】
【0058】
【発明の効果】
本発明により、ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸を主要成分として含有する芳香族ジカルボン酸から、加圧加熱重縮合を経由して、分子量が高いポリアミド樹脂を得ることができる。
Claims (3)
- ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸を主要成分として含有するジカルボン酸から構成されるポリアミド樹脂の製造方法であって、脂肪族ジアミンの総モル数をA、ジカルボン酸の総モル数をBとしたとき、その比A/Bが1.01以上1.06以下となるように組成を調整した原料を、水の共存下、重合系内の圧力が10kg/cm2以上30kg/cm2以下、最高到達温度が150℃以上300℃以下となる条件で加圧加熱重縮合して、硫酸相対粘度が1.05以上1.60以下を満足する低次縮合物を得る工程と、その低次縮合物を高重合度化する工程からなることを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法。
- 低次縮合物を高重合度化する工程が、低次縮合物を150℃以上低次縮合物の融点未満の温度で固相重合することを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂の製造方法。
- 低次縮合物を高重合度化する工程が、溶融押出機を用いることを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂の製造方法。
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