JP2004061635A - 電子写真感光体 - Google Patents
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Abstract
【課題】長波長域の感度が高く、中間調再現性が優れていてしかも一定している電子写真感光体を提供すること。
【解決手段】導電性支持体上に少なくとも電荷発生材料と電荷移動材料と結着樹脂を含有する感光層を積層してなる電子写真感光体において、該電荷発生材料がオキシチタニウムフタロシアニンであって、該オキシチタニウムフタロシアニンがCuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°に最大ピークを有し、かつ他の回折ピーク強度が7.5°の回折ピーク強度に対して20%以下の強度であり、該電荷移動材料が一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【選択図】 なし
【解決手段】導電性支持体上に少なくとも電荷発生材料と電荷移動材料と結着樹脂を含有する感光層を積層してなる電子写真感光体において、該電荷発生材料がオキシチタニウムフタロシアニンであって、該オキシチタニウムフタロシアニンがCuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°に最大ピークを有し、かつ他の回折ピーク強度が7.5°の回折ピーク強度に対して20%以下の強度であり、該電荷移動材料が一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の結晶型であるオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生材料として含有し、特定の化合物を電荷移動材料として含有する電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式を採用する、ノンインパクトプリンタの露光光源としては半導体レーザーやLED等長波長の光源が主に使用されている。そのため、電子写真感光体は長波長域に感度を有する電荷発生材料を使用するのが一般的である。従来より、このような材料としてフタロシアニン系顔料がよく用いられている。このフタロシアニン系顔料はその結晶型によって感度が異なることはよく知られている。
また、近年の省電力化に伴い、プリンタ等電子写真装置の露光光源の出力を抑えるために電子写真感光体には高感度化の要求が高まっている。
【0003】
一方、電子写真感光体を製造する方法としてはさまざまな方法が検討されているが、電荷発生材料や電荷移動材料等を結着樹脂とともに溶媒に分散して塗工液をなし、それを導電性基板上に薄膜形成する方法が一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
フタロシアニン系顔料のなかで長波長域に高い感度を有するものとしてはオキシチタニウムフタロシアニンがあげられる。オキシチタニウムフタロシアニンには、いくつもの結晶型が紹介されているが、その中でも27.3°に最大回折ピークを示すものが高感度であるとされている。しかしながら、このオキシチタニウムフタロシアニンは環境依存性が高く、特に湿度の増減で感度が変化し、中間調の再現性が要求されるカラー用プリンタには不向きである。他の結晶型としては、7.6°及び28.3°に主たる回折ピークを示すα型や、26.3°に最大回折ピークを示すβ型がよく知られているが、長波長域の感度が不足しており実用的ではない。
【0005】
そこで、長波長域の感度が高く、中間調再現性が優れていてしかも一定している電子写真感光体が求められている。本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、長波長域において高感度であり、繰り返し使用しても電気特性の劣化がなく、しかも塗工液での安定性が高く塗工液を長期間使用できるオキシチタニウムフタロシアニンを含有する電子写真感光体を提供するものである。また、高い電荷発生効率を有する電荷発生材料を用いても、電荷移動材料との相性が悪いと充分な感度を得ることができないだけでなく、残留電位の上昇等が起こってしまう。電荷発生材料と電荷移動材料との相性は、さまざまな視点から研究されているが、明確に見出されてはいないのが現状である。
【0006】
一方、電子写真感光体を取り巻く市場要求としては、高感度であることもさることながら、使用環境にとらわれず、使用開始初期から寿命がくるまで高品質な画像を提供できる電子写真感光体が要求されている。現在のところ、このような高い市場要求にこたえることができる電子写真感光体は見出されておらず、そこで本発明の課題はそのような電子写真感光体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、電荷発生材料として特定のX線回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンを用い、特定化合物の電荷移動材料を用いた電子写真感光体が、前記従来の技術の問題点を解決することを見い出し、本発明を完成するに至った。
本発明者等は、感光層として塗布形成した後のオキシチタニウムフタロシアニンの結晶型を特定し、かつ特定の電荷移動材料と組み合わせることで、従来の課題を解決するに至った。
【0008】
電子写真感光体に用いるオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折スペクトルは従来、合成後所望の結晶型にした粉末状のオキシチタニウムフタロシアニン、若しくは感光層を形成する際に作成される樹脂や分散溶媒等を含んだ塗工液をペレット状にしたものを試料として測定していた。
【0009】
しかし、感光層形成前の段階でオキシチタニウムフタロアシアニンのX線回折スペクトルを測定しても、感光層中に含有されているオキシチタニウムフタロシアニンの結晶型を正確に判断できない。すなわち、感光層の形成にあたってはさまざまな外因があり、感光層形成前と形成後では回折スペクトルが異なる可能性がある。特に、電荷発生層上に電荷移動層を積層する積層型感光体においては、電荷発生材料を含有する塗工液を支持体上に塗布形成し、必要に応じて乾燥し、その後電荷移動材料を含有する塗工液を塗布して電荷移動層を形成し、乾燥して各層を固着させる工程により感光層を形成するため、乾燥工程による熱的外因、電荷移動層形成用塗工液に用いられる溶媒との接触等により電荷発生材料の回折スペクトルに影響を及ぼす。よって、実際に機能している状態の電荷発生材料の回折スペクトルを調べるためには、感光層を形成した後に電荷発生材料を取り出して測定する必要がある。
【0010】
本発明は、上記のような研究結果から得られたものであり、請求項1記載の発明は、導電性支持体上に少なくとも電荷発生材料と電荷移動材料と結着樹脂を含有する感光層を積層してなる電子写真感光体において、該電荷発生材料がオキシチタニウムフタロシアニンであって、該オキシチタニウムフタロシアニンがCuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°に最大ピークを有し、かつ他の回折ピーク強度が7.5°の回折ピーク強度に対して20%以下の強度であり、該電荷移動材料が一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0011】
7.5°以外のピークとしては、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、15.2°、22.5°、27.2°、28.6°に示すものと、9.4°、15.2°、22.5°、26.2°、27.2°、28.6°に示すものが好ましい。7.5°以外のピーク強度は、7.5°のピーク強度の20%以下であり、さらには15%以下のピーク強度であることが好ましい。
【0012】
感光層中からオキシチタニウムフタロシアニンを抽出する際に、オキシチタニウムフタロシアニンが結晶転移しないように注意しなければならない。また、感光層中にはバインダー樹脂や電荷移動材料等が含有されており、X線回折スペクトルを測定する上でそれらが障害となる。よって、バインダー樹脂や電荷移動材料等を除去し、オキシチタニウムフタロシアニンの結晶型を変えない溶媒を適宜選択する必要がある。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の電子写真感光体は、特定のX線回折スペクトルを有するオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生材料として基体上の感光層に含有させてなるものである。
【0014】
図1及び図2は、本発明に係る電子写真感光体の好ましい実施の形態の構成を示す断面図である。
【0015】
図1において、1は本発明に適用可能な機能分離型の電子写真感光体を示したものであり、導電性の基体11上に、電荷発生層12と電荷移動層13とがこの順で形成されており、これら電荷発生層12と電荷移動層13とによって感光層14が構成されている。
【0016】
電荷発生層12の形成方法としては、各種の方法を使用することができるが、例えば本発明のフタロシアニン組成物を電荷発生材料として用い、バインダー樹脂とともに適当な溶媒により分散もしくは溶解した塗布液を、所定の下地となる基体11上に塗布し、必要に応じて乾燥させて形成することができる。
【0017】
電荷移動層13は、少なくとも後述する電荷移動材料を有するものであり、この電荷移動層13は、例えば、その下地となる電荷発生層12上に電荷移動剤をバインダー樹脂を用いて結着することにより形成することができる。
【0018】
電荷移動層13の形成方法としては、各種の方法を使用することができるが、通常の場合、電荷移動材料をバインダー樹脂とともに適当な溶媒により分散もしくは溶解した塗布液を、下地となる電荷発生層12上に塗布し、乾燥させる方法を用いることができる。
【0019】
図1において、電荷発生層12と電荷移動層13を上下逆に積層させることもできる。
図2において、2は本発明に適用可能な単層型の電子写真感光体を示したものであり、基体21上に、電荷発生材料と電荷移動材料とを含有させた感光層24が形成されている。
【0020】
この電子写真感光体2は、基体21の上に本発明のオキシチタニウムフタロシアニンが電荷発生材料として用いられ、後述する電荷移動材料とバインダー樹脂中と共に混合、分散された塗布液を、下地となる基体21上に塗布し、乾燥させる方法を用いることができる。
【0021】
電子写真感光体1、2における基体11、21としては、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼、ニッケル、クロム、チタン、金、銀、銅、錫、白金、モリブデン、インジウム等の金属単体やその合金の加工体を用いることができる。
【0022】
上記金属や合金等の基体表面に、さらに蒸着、メッキ等により導電性物質の薄膜を形成してもよい。基体自体を導電性物質で構成してもよいが、非導電性のプラスチック板およびフィルム表面に、上記金属や炭素等の薄膜を蒸着、メッキ等の方法により形成し、導電性を持たせてもよい。
【0023】
また、基体として樹脂を用いる場合、樹脂中に金属粉や導電性カーボン等の導電剤を含有させたり、基体形成用樹脂として導電性樹脂を用いることもできる。
【0024】
さらに、基体にガラスを用いる場合、その表面に酸化錫、酸化インジウム、ヨウ化アルミニウムで被覆し、導電性を持たせてもよい。
【0025】
その種類や形状は、特に制限されることはなく、導電性を有する種々の材料を使用して基体11、21を構成することができる。
【0026】
一般に基体11、21としては、円筒状のアルミニウム管単体やその表面をアルマイト処理したもの、またはアルミニウム管上に樹脂層を形成したものがよく用いられる。
【0027】
この樹脂層は接着向上機能、アルミニウム管からの流れ込み電流を防止するバリヤー機能、アルミニウム管表面の欠陥被覆機能等をもつ。この樹脂層には、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ナイロン樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂等の各種樹脂を用いることができる。これらの樹脂層は、単独の樹脂で構成してもよく、2種類以上の樹脂を混合して構成してもよい。また、層中に金属化合物、カーボン、シリカ、樹脂粉末等を分散させることもできる。さらに、特性改善のために各種顔料、電子受容性物質や電子供与性物質等を含有させることもできる。
【0028】
電荷発生材料としては、CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°に最大ピークを示し、かつ他の回折ピーク強度が7.5°の回折ピーク強度に対して20%以下であるオキシチタニウムフタロシアニンが用いられる。
【0029】
なお、上記に示す回折ピークは、感光層が形成された後に感光層からオキシチタニウムフタロシアニンを抽出した状態において測定された結果である。このオキシチタニウムフタロシアニンを用いることにより、長波長域に優れた感度を有し、しかも使用環境特に湿度に影響されずに安定した特性を示す電子写真感光体を提供できる。
【0030】
感光層中には、適切な光感度波長や増感作用を得るために、本発明のオキシチタニウムフタロシアニンとともに、本発明以外のオキシチタニウムフタロシアニンやアゾ顔料等を混合させることもできる。これらは、感度の相性が良い点で望ましい。その他、例えば、モノアゾ顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ポリアゾ顔料、インジゴ顔料、スレン顔料、トルイジン顔料、ピラゾリン顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、ピリリウム塩等を用いることができる。
【0031】
感光層14、24を形成するためのバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエーテル、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ニトリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、EVA(エチレン・酢酸ビニル)樹脂、ACS(アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂及びエポキシアリレート等の樹脂がある。
【0032】
それらは単体で用いてもよいが、2種以上混合して使用することも可能である。分子量の異なった樹脂を混合して用いた場合には、硬度や耐摩耗性を改善できて好ましい。
【0033】
なお、感光層が電荷発生層と電荷移動層とからなる場合には、前記樹脂はどちらの層にも適用できる。
【0034】
塗布液に使用する溶剤には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、メトキシエタノール等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、あるいはアニソール等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等がある。特にその中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、あるいはハロゲン化炭化水素系溶媒が好ましく、これらは単独、あるいは2種以上の混合溶媒として用いることができる。
【0035】
本発明の電子写真感光体には、電荷移動材料としては一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物が含有される。
【0036】
一般式(1)
【化4】
(式中、R1及びR2は、各々独立に置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は、水素原子又は少なくとも一つのアルキル基が炭素数2以上のジアルキルアミノ基のいずれかを表す。)
【0037】
一般式(2)
【化5】
(式中、R4〜R7は、各々同一であっても異なっていてもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は置換基を有してもよいアリール基のいずれかを表し、R8は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアルケニル基若しくはアルカジエニル基、若しくは一般式(3)のいずれかを表し、mは0又は1の整数を表す。)
【0038】
一般式(3)
【化6】
(式中、R9、R10は、各々同一であっても異なっていてもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は置換基を有してもよいアリール基のいずれかを表し、nは0又は1の整数を表す。)
上記電荷移動材料は、オキシチタニウムフタロシアニンとの相性がよく、本発明の電子写真感光体は、高感度かつ低残留電位という優れた電気特性を示すものである。
一般式(1)に示す化合物において、特に式(4)及び式(5)に示す化合物がオキシチタニウムフタロシアニンとの相性がよく好ましい。
【0039】
式(4)
【化7】
【0040】
式(5)
【化8】
また、一般式(2)に示す化合物において、特に式(6)、式(7)、式(8)、式(9)に示す化合物がオキシチタニウムフタロシアニンとの相性がよく好ましい。
【0041】
式(6)
【化9】
【0042】
式(7)
【化10】
【0043】
式(8)
【化11】
【0044】
式(9)
【化12】
【0045】
また、一般式(1)から選ばれる化合物と一般式(2)から選ばれる化合物を同時に電荷移動材料として用いても、よい特性が得られて好ましい。
【0046】
上記電荷移動材料に加えて、他の電荷移動材料を含有させることもできる。他の電荷移動材料としては、ポリビニルカルバゾール、ハロゲン化ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルインドロキノキサリン、ポリビニルベンゾチオフェン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリビニルピラゾリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリジアセチレン、ポリヘプタジイエン、ポリピリジンジイル、ポリキノリン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェロセニレン、ポリペリナフチレン、ポリフタロシアニン等の導電性高分子化合物を用いることができる。又、低分子化合物として、トリニトロフルオレノン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、キノン、ジフェノキノン、ナフトキノン、アントラキノン及びこれらの誘導体、アントラセン、ピレン、フェナントレン等の多環芳香族化合物、インドール、カルバゾール、イミダゾール等の含窒素複素環化合物、フルオレノン、フルオレン、オキサジアゾール、オキサゾール、ピラゾリン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、トリフェニルアミン、エナミン、スチルベン等を使用することができる。また、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸等の高分子化合物にLiイオン等の金属イオンをドープした高分子固体電解質等も用いることができる。さらに、テトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタンで代表される電子供与性化合物と電子受容性化合物で形成された有機電荷移動錯体等も用いることができ、これらを1種だけ添加して又は2種以上の化合物を混合して添加して、所望の感光体特性を得ることができる。
【0047】
本発明の電子写真感光体1、2を製造するための塗布液には、特性を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、軟化剤、硬化剤、架橋剤等を添加して、感光体の特性、耐久性、機械特性の向上を図ることができる。特に、フェノール系酸化防止剤は感光体の耐久性向上に寄与し有用である。さらに、分散安定剤、沈降防止剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、艶消し剤等を添加すれば、感光体の仕上がり外観や、塗布液の寿命を改善できる。
加えて、感光層14、24の上に、ポリビニルホルマール樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の有機薄膜や、シランカップリング剤の加水分解物で形成されるシロキサン構造体から成る薄膜を成膜して表面保護層を設けてもよく、その場合には、感光体の耐久性が向上するので好ましい。この表面保護層は、耐久性向上以外の他の機能を向上させるために設けてもよい。
本発明の電子写真感光体が搭載される電子写真装置としては、通常、帯電方式はブラシ、ローラーなどの接触式、スコロトロン、コロトロン等の非接触式の、いずれの方式でもよく、正負いずれの帯電電荷でもよい。露光方式は、LED,LD等いずれでもよい。現像方式は、2成分、1成分、磁性/非磁性いずれでもよい。転写方式もローラー、ベルト等いずれでもよい。
【0048】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例により詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
塗布液の作成
アルキド樹脂とメラミン樹脂を6/4の重合割合で混合し、酸化チタンを混合樹脂に対する重量比1/3の割合で用意し、メチルエチルケトンに溶解分散し、下引層用塗工液を準備する。次にアルミ合金からなる円筒状基体を該下引層用塗工液に浸漬塗工し、130℃で20分乾燥し、膜厚0.8μmの下引層を形成した。
次に図3のX線回折ピークを示すβ型オキシチタニウムフタロシアニン粉末10gをガラスビーズとともにSUSポットに入れ、サンドミル分散装置で40時間乾式粉砕し、無定形のオキシチタニウムフタロシアニンとする。次いで、1,1,2−トリクロロエタン/ジクロロメタン/テトラヒドロフラン=7/2/1の割合で500ml用意し、これにポリビニルブチラール樹脂5gを溶解し、30分間ミリング後、上記SUSポットに入れ20時間分散し、得られた分散液をろ過してガラスビーズを取り去り、電荷発生層用塗布液を作成した。これを浸漬塗工後乾燥し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
次にバインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂と、電荷移動材料として、式(4)で表されるブタジエン化合物と、酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノールとを、重量比1.0:1.0:0.1で用意し、クロロホルムに溶解し、電荷移動層用塗工液を調製した。電荷発生層を形成した基体を該電荷移動層用塗工液に浸漬塗工し、100℃で60分乾燥し膜厚25.0μmの電荷移動層を形成し、電子写真感光体を作製した。
【0050】
X線回折用検体試料の作成
実施例1で得られた感光体表面に事務用カッターで円周方向とそれに交差する円筒軸方向にそれぞれ切込みを入れ、一辺が約2cmの切れ目を形成させる。その切り目の入った部分よりピンセットを用いて感光膜を剥離する。4−メトキシ−4−メチルペンタノン(PTX)15mlを50mlビーカーに入れ、その中に前記剥離膜を浸漬し、電荷移動層を完全に溶解させた後によくかき混ぜてゲル状の微細片として溶媒中に分散させる。これをテフロン(登録商標)製メンブランフィルター(Pore size 0.2μm)で吸引ろ過し、ろ過物をPTX 10mlで洗浄する。次にろ過物が内側になるようにメンブランフィルターをシリコン無反射板に密着させ、メンブランフィルターだけを剥がしてシリコン無反射板にオキシチタニウムフタロシアニンを付着させ、それを風乾しX線回折の検体試料とした。
【0051】
X線回折
上記のように作成された検体試料を測定する場合は、薄膜法にて測定しX線源としてCuKα(波長1.54178Å)を用い、X線入射角度を0.5°とした。なお、オキシチタニウムフタロシアニン粉末を測定する場合は、粉末法にて測定しX線源としてCuKα(波長1.54178Å)を用いた。検体試料のX線回折図を図4に示す。図4によると、感光層から抽出されたオキシチタニウムフタロシアニンは、7.5°に特徴的な回折ピークを示し、その他9.4°、15.2°、22.6°、27.2°、28.8°にも回折ピークを示している。さらに、わずかではあるが13.2°、24.5°、25.4°にも回折ピークを示す。回折ピーク強度は、7.5°以外のピーク強度は7.5°の回折ピーク強度の20%以下となっている。
【0052】
(実施例2)
実施例1で用いた電荷移動材料に代えて、式(5)で表される電荷移動材料を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0053】
(実施例3)
実施例1で用いられた電荷移動材料に代えて、式(5)で表される化合物と式(6)で表される化合物を重量比3/7で混合した電荷移動材料を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0054】
(実施例4)
実施例1で用いられた電荷移動材料に代えて、式(6)で表される電荷移動材料を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0055】
(実施例5)
実施例1で用いられた電荷移動材料に代えて、式(7)で表される電荷移動材料を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0056】
(実施例6)
実施例1で用いられた電荷移動材料に代えて、式(8)で表される電荷移動材料を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0057】
(実施例7)
実施例1で用いられた電荷移動材料に代えて、式(9)で表される電荷移動材料を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0058】
(比較例1〜3)
実施例1で用いられた電荷移動材料に代えて、式(10)〜式(12)で表される電荷移動材料を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。各電子写真感光体をそれぞれ比較例1〜3とした。
【0059】
式(10)
【化13】
【0060】
式(11)
【化14】
【0061】
式(12)
【化15】
【0062】
(比較例4)
実施例1で用いられた電荷発生材料に代えて、図6で表されるオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生材料として用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0063】
(比較例5)
実施例1で用いられた電荷発生材料に代えて、図7で表されるオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生材料として用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0064】
(比較例6)
実施例1で用いられた電荷発生材料に代えて、図3で表されるオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生材料として用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0065】
電子写真感光体の評価1
XEROX社製Work Centre 665の現像器位置に表面電位計を設置した改造機を用い、実施例1〜7及び比較例1〜6で得られた電子写真感光体を搭載した。
初期特性として、帯電後の感光体表面電位V0と、帯電後露光し、感光体を放置し表面電位が安定したときの残留電位Verを測定した。帯電された感光ドラムを波長780nmのレーザー光で露光し、露光後の表面電位を1/2に減衰させるエネルギー量を測定し、E1/2(μj/cm2)とした。
以上の評価を測定環境温度25℃湿度50%(N/N)、測定環境温度10℃湿度20%(L/L)、測定環境温度45℃湿度50%(H/N)の三環境で行った。結果を表1に示す。
【0066】
電子写真感光体の評価2
5Kランニング特性として、A4サイズの紙を5,000枚ランニングし、そのあとの評価1と同様に帯電電位、残留電位及び半減エネルギーを測定した。その時の測定環境は測定環境温度25℃湿度50%(N/N)で行った。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1から、実施例1〜7は半減露光量が少なく高感度であることがわかる。また、三環境における電位差及び半減エネルギー差がほとんどなく、使用環境に依存しないことがわかる。さらに、5,000枚ランニング前後のV0の差が10V以内で、Verの差は5V以内であり、かつ半減エネルギーにもほとんど差が見られす、繰り返し使用において電位安定性が非常に優れていることがわかる。比較例1及び比較例2は、全体的にVerが高く、かつ三環境におけるVerの差が大きいことがわかる。また、電荷発生材料と電荷移動材料の相性があまりよくないため、半減エネルギーが実施例よりも高くなっており、ランニング前後のVerの差も大きくなっている。
比較例3も全体的にVerが高く、かつ三環境におけるVerの差が大きいことがわかる。また、ランニング前後のV0及びVLの差が大きく、繰り返し安定性に欠けていることがわかる。
比較例4及び比較例5は半減エネルギーについては実施例と同等以上の値であるが、ランニング前後のV0の差が30〜40V程度あり、繰り返しにおける電位安定性に欠けており、高い市場要求に答えられないものである。
比較例5は半減エネルギーが極めて高く、かつランニング前後のVLの差も大きい。
【0069】
【発明の効果】
実施例と比較例の特性差からみてもわかるように、本発明の電子写真感光体は、少ない半減エネルギーであるため高感度であり、かつ使用環境に依存しない安定した電位を示し、さらにランニング後でも初期と変わらない特性を示すものであり、高い市場要求に応えられるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】積層型電子写真感光体の一例を示す断面図
【図2】単層型電子写真感光体の一例を示す断面図
【図3】β型オキシチタニウムフタロシアニン粉末のX線回折図
【図4】本発明のフタロシアニン組成物のX線回折図
【図5】本発明のフタロシアニン組成物のX線回折図
【図6】比較例4で用いたオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図
【図7】比較例5で用いたオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図
【符号の説明】
1、2 電子写真感光体
11、21 導電性基体
12 電荷発生層
13 電荷移動層
14、24 感光層
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の結晶型であるオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生材料として含有し、特定の化合物を電荷移動材料として含有する電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式を採用する、ノンインパクトプリンタの露光光源としては半導体レーザーやLED等長波長の光源が主に使用されている。そのため、電子写真感光体は長波長域に感度を有する電荷発生材料を使用するのが一般的である。従来より、このような材料としてフタロシアニン系顔料がよく用いられている。このフタロシアニン系顔料はその結晶型によって感度が異なることはよく知られている。
また、近年の省電力化に伴い、プリンタ等電子写真装置の露光光源の出力を抑えるために電子写真感光体には高感度化の要求が高まっている。
【0003】
一方、電子写真感光体を製造する方法としてはさまざまな方法が検討されているが、電荷発生材料や電荷移動材料等を結着樹脂とともに溶媒に分散して塗工液をなし、それを導電性基板上に薄膜形成する方法が一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
フタロシアニン系顔料のなかで長波長域に高い感度を有するものとしてはオキシチタニウムフタロシアニンがあげられる。オキシチタニウムフタロシアニンには、いくつもの結晶型が紹介されているが、その中でも27.3°に最大回折ピークを示すものが高感度であるとされている。しかしながら、このオキシチタニウムフタロシアニンは環境依存性が高く、特に湿度の増減で感度が変化し、中間調の再現性が要求されるカラー用プリンタには不向きである。他の結晶型としては、7.6°及び28.3°に主たる回折ピークを示すα型や、26.3°に最大回折ピークを示すβ型がよく知られているが、長波長域の感度が不足しており実用的ではない。
【0005】
そこで、長波長域の感度が高く、中間調再現性が優れていてしかも一定している電子写真感光体が求められている。本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、長波長域において高感度であり、繰り返し使用しても電気特性の劣化がなく、しかも塗工液での安定性が高く塗工液を長期間使用できるオキシチタニウムフタロシアニンを含有する電子写真感光体を提供するものである。また、高い電荷発生効率を有する電荷発生材料を用いても、電荷移動材料との相性が悪いと充分な感度を得ることができないだけでなく、残留電位の上昇等が起こってしまう。電荷発生材料と電荷移動材料との相性は、さまざまな視点から研究されているが、明確に見出されてはいないのが現状である。
【0006】
一方、電子写真感光体を取り巻く市場要求としては、高感度であることもさることながら、使用環境にとらわれず、使用開始初期から寿命がくるまで高品質な画像を提供できる電子写真感光体が要求されている。現在のところ、このような高い市場要求にこたえることができる電子写真感光体は見出されておらず、そこで本発明の課題はそのような電子写真感光体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、電荷発生材料として特定のX線回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンを用い、特定化合物の電荷移動材料を用いた電子写真感光体が、前記従来の技術の問題点を解決することを見い出し、本発明を完成するに至った。
本発明者等は、感光層として塗布形成した後のオキシチタニウムフタロシアニンの結晶型を特定し、かつ特定の電荷移動材料と組み合わせることで、従来の課題を解決するに至った。
【0008】
電子写真感光体に用いるオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折スペクトルは従来、合成後所望の結晶型にした粉末状のオキシチタニウムフタロシアニン、若しくは感光層を形成する際に作成される樹脂や分散溶媒等を含んだ塗工液をペレット状にしたものを試料として測定していた。
【0009】
しかし、感光層形成前の段階でオキシチタニウムフタロアシアニンのX線回折スペクトルを測定しても、感光層中に含有されているオキシチタニウムフタロシアニンの結晶型を正確に判断できない。すなわち、感光層の形成にあたってはさまざまな外因があり、感光層形成前と形成後では回折スペクトルが異なる可能性がある。特に、電荷発生層上に電荷移動層を積層する積層型感光体においては、電荷発生材料を含有する塗工液を支持体上に塗布形成し、必要に応じて乾燥し、その後電荷移動材料を含有する塗工液を塗布して電荷移動層を形成し、乾燥して各層を固着させる工程により感光層を形成するため、乾燥工程による熱的外因、電荷移動層形成用塗工液に用いられる溶媒との接触等により電荷発生材料の回折スペクトルに影響を及ぼす。よって、実際に機能している状態の電荷発生材料の回折スペクトルを調べるためには、感光層を形成した後に電荷発生材料を取り出して測定する必要がある。
【0010】
本発明は、上記のような研究結果から得られたものであり、請求項1記載の発明は、導電性支持体上に少なくとも電荷発生材料と電荷移動材料と結着樹脂を含有する感光層を積層してなる電子写真感光体において、該電荷発生材料がオキシチタニウムフタロシアニンであって、該オキシチタニウムフタロシアニンがCuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°に最大ピークを有し、かつ他の回折ピーク強度が7.5°の回折ピーク強度に対して20%以下の強度であり、該電荷移動材料が一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0011】
7.5°以外のピークとしては、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、15.2°、22.5°、27.2°、28.6°に示すものと、9.4°、15.2°、22.5°、26.2°、27.2°、28.6°に示すものが好ましい。7.5°以外のピーク強度は、7.5°のピーク強度の20%以下であり、さらには15%以下のピーク強度であることが好ましい。
【0012】
感光層中からオキシチタニウムフタロシアニンを抽出する際に、オキシチタニウムフタロシアニンが結晶転移しないように注意しなければならない。また、感光層中にはバインダー樹脂や電荷移動材料等が含有されており、X線回折スペクトルを測定する上でそれらが障害となる。よって、バインダー樹脂や電荷移動材料等を除去し、オキシチタニウムフタロシアニンの結晶型を変えない溶媒を適宜選択する必要がある。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の電子写真感光体は、特定のX線回折スペクトルを有するオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生材料として基体上の感光層に含有させてなるものである。
【0014】
図1及び図2は、本発明に係る電子写真感光体の好ましい実施の形態の構成を示す断面図である。
【0015】
図1において、1は本発明に適用可能な機能分離型の電子写真感光体を示したものであり、導電性の基体11上に、電荷発生層12と電荷移動層13とがこの順で形成されており、これら電荷発生層12と電荷移動層13とによって感光層14が構成されている。
【0016】
電荷発生層12の形成方法としては、各種の方法を使用することができるが、例えば本発明のフタロシアニン組成物を電荷発生材料として用い、バインダー樹脂とともに適当な溶媒により分散もしくは溶解した塗布液を、所定の下地となる基体11上に塗布し、必要に応じて乾燥させて形成することができる。
【0017】
電荷移動層13は、少なくとも後述する電荷移動材料を有するものであり、この電荷移動層13は、例えば、その下地となる電荷発生層12上に電荷移動剤をバインダー樹脂を用いて結着することにより形成することができる。
【0018】
電荷移動層13の形成方法としては、各種の方法を使用することができるが、通常の場合、電荷移動材料をバインダー樹脂とともに適当な溶媒により分散もしくは溶解した塗布液を、下地となる電荷発生層12上に塗布し、乾燥させる方法を用いることができる。
【0019】
図1において、電荷発生層12と電荷移動層13を上下逆に積層させることもできる。
図2において、2は本発明に適用可能な単層型の電子写真感光体を示したものであり、基体21上に、電荷発生材料と電荷移動材料とを含有させた感光層24が形成されている。
【0020】
この電子写真感光体2は、基体21の上に本発明のオキシチタニウムフタロシアニンが電荷発生材料として用いられ、後述する電荷移動材料とバインダー樹脂中と共に混合、分散された塗布液を、下地となる基体21上に塗布し、乾燥させる方法を用いることができる。
【0021】
電子写真感光体1、2における基体11、21としては、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼、ニッケル、クロム、チタン、金、銀、銅、錫、白金、モリブデン、インジウム等の金属単体やその合金の加工体を用いることができる。
【0022】
上記金属や合金等の基体表面に、さらに蒸着、メッキ等により導電性物質の薄膜を形成してもよい。基体自体を導電性物質で構成してもよいが、非導電性のプラスチック板およびフィルム表面に、上記金属や炭素等の薄膜を蒸着、メッキ等の方法により形成し、導電性を持たせてもよい。
【0023】
また、基体として樹脂を用いる場合、樹脂中に金属粉や導電性カーボン等の導電剤を含有させたり、基体形成用樹脂として導電性樹脂を用いることもできる。
【0024】
さらに、基体にガラスを用いる場合、その表面に酸化錫、酸化インジウム、ヨウ化アルミニウムで被覆し、導電性を持たせてもよい。
【0025】
その種類や形状は、特に制限されることはなく、導電性を有する種々の材料を使用して基体11、21を構成することができる。
【0026】
一般に基体11、21としては、円筒状のアルミニウム管単体やその表面をアルマイト処理したもの、またはアルミニウム管上に樹脂層を形成したものがよく用いられる。
【0027】
この樹脂層は接着向上機能、アルミニウム管からの流れ込み電流を防止するバリヤー機能、アルミニウム管表面の欠陥被覆機能等をもつ。この樹脂層には、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ナイロン樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂等の各種樹脂を用いることができる。これらの樹脂層は、単独の樹脂で構成してもよく、2種類以上の樹脂を混合して構成してもよい。また、層中に金属化合物、カーボン、シリカ、樹脂粉末等を分散させることもできる。さらに、特性改善のために各種顔料、電子受容性物質や電子供与性物質等を含有させることもできる。
【0028】
電荷発生材料としては、CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°に最大ピークを示し、かつ他の回折ピーク強度が7.5°の回折ピーク強度に対して20%以下であるオキシチタニウムフタロシアニンが用いられる。
【0029】
なお、上記に示す回折ピークは、感光層が形成された後に感光層からオキシチタニウムフタロシアニンを抽出した状態において測定された結果である。このオキシチタニウムフタロシアニンを用いることにより、長波長域に優れた感度を有し、しかも使用環境特に湿度に影響されずに安定した特性を示す電子写真感光体を提供できる。
【0030】
感光層中には、適切な光感度波長や増感作用を得るために、本発明のオキシチタニウムフタロシアニンとともに、本発明以外のオキシチタニウムフタロシアニンやアゾ顔料等を混合させることもできる。これらは、感度の相性が良い点で望ましい。その他、例えば、モノアゾ顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ポリアゾ顔料、インジゴ顔料、スレン顔料、トルイジン顔料、ピラゾリン顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、ピリリウム塩等を用いることができる。
【0031】
感光層14、24を形成するためのバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエーテル、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ニトリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、EVA(エチレン・酢酸ビニル)樹脂、ACS(アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂及びエポキシアリレート等の樹脂がある。
【0032】
それらは単体で用いてもよいが、2種以上混合して使用することも可能である。分子量の異なった樹脂を混合して用いた場合には、硬度や耐摩耗性を改善できて好ましい。
【0033】
なお、感光層が電荷発生層と電荷移動層とからなる場合には、前記樹脂はどちらの層にも適用できる。
【0034】
塗布液に使用する溶剤には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、メトキシエタノール等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、あるいはアニソール等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等がある。特にその中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、あるいはハロゲン化炭化水素系溶媒が好ましく、これらは単独、あるいは2種以上の混合溶媒として用いることができる。
【0035】
本発明の電子写真感光体には、電荷移動材料としては一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物が含有される。
【0036】
一般式(1)
【化4】
(式中、R1及びR2は、各々独立に置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は、水素原子又は少なくとも一つのアルキル基が炭素数2以上のジアルキルアミノ基のいずれかを表す。)
【0037】
一般式(2)
【化5】
(式中、R4〜R7は、各々同一であっても異なっていてもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は置換基を有してもよいアリール基のいずれかを表し、R8は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいアルケニル基若しくはアルカジエニル基、若しくは一般式(3)のいずれかを表し、mは0又は1の整数を表す。)
【0038】
一般式(3)
【化6】
(式中、R9、R10は、各々同一であっても異なっていてもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は置換基を有してもよいアリール基のいずれかを表し、nは0又は1の整数を表す。)
上記電荷移動材料は、オキシチタニウムフタロシアニンとの相性がよく、本発明の電子写真感光体は、高感度かつ低残留電位という優れた電気特性を示すものである。
一般式(1)に示す化合物において、特に式(4)及び式(5)に示す化合物がオキシチタニウムフタロシアニンとの相性がよく好ましい。
【0039】
式(4)
【化7】
【0040】
式(5)
【化8】
また、一般式(2)に示す化合物において、特に式(6)、式(7)、式(8)、式(9)に示す化合物がオキシチタニウムフタロシアニンとの相性がよく好ましい。
【0041】
式(6)
【化9】
【0042】
式(7)
【化10】
【0043】
式(8)
【化11】
【0044】
式(9)
【化12】
【0045】
また、一般式(1)から選ばれる化合物と一般式(2)から選ばれる化合物を同時に電荷移動材料として用いても、よい特性が得られて好ましい。
【0046】
上記電荷移動材料に加えて、他の電荷移動材料を含有させることもできる。他の電荷移動材料としては、ポリビニルカルバゾール、ハロゲン化ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルインドロキノキサリン、ポリビニルベンゾチオフェン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリビニルピラゾリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリジアセチレン、ポリヘプタジイエン、ポリピリジンジイル、ポリキノリン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェロセニレン、ポリペリナフチレン、ポリフタロシアニン等の導電性高分子化合物を用いることができる。又、低分子化合物として、トリニトロフルオレノン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、キノン、ジフェノキノン、ナフトキノン、アントラキノン及びこれらの誘導体、アントラセン、ピレン、フェナントレン等の多環芳香族化合物、インドール、カルバゾール、イミダゾール等の含窒素複素環化合物、フルオレノン、フルオレン、オキサジアゾール、オキサゾール、ピラゾリン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、トリフェニルアミン、エナミン、スチルベン等を使用することができる。また、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸等の高分子化合物にLiイオン等の金属イオンをドープした高分子固体電解質等も用いることができる。さらに、テトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタンで代表される電子供与性化合物と電子受容性化合物で形成された有機電荷移動錯体等も用いることができ、これらを1種だけ添加して又は2種以上の化合物を混合して添加して、所望の感光体特性を得ることができる。
【0047】
本発明の電子写真感光体1、2を製造するための塗布液には、特性を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、軟化剤、硬化剤、架橋剤等を添加して、感光体の特性、耐久性、機械特性の向上を図ることができる。特に、フェノール系酸化防止剤は感光体の耐久性向上に寄与し有用である。さらに、分散安定剤、沈降防止剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、艶消し剤等を添加すれば、感光体の仕上がり外観や、塗布液の寿命を改善できる。
加えて、感光層14、24の上に、ポリビニルホルマール樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の有機薄膜や、シランカップリング剤の加水分解物で形成されるシロキサン構造体から成る薄膜を成膜して表面保護層を設けてもよく、その場合には、感光体の耐久性が向上するので好ましい。この表面保護層は、耐久性向上以外の他の機能を向上させるために設けてもよい。
本発明の電子写真感光体が搭載される電子写真装置としては、通常、帯電方式はブラシ、ローラーなどの接触式、スコロトロン、コロトロン等の非接触式の、いずれの方式でもよく、正負いずれの帯電電荷でもよい。露光方式は、LED,LD等いずれでもよい。現像方式は、2成分、1成分、磁性/非磁性いずれでもよい。転写方式もローラー、ベルト等いずれでもよい。
【0048】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例により詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
塗布液の作成
アルキド樹脂とメラミン樹脂を6/4の重合割合で混合し、酸化チタンを混合樹脂に対する重量比1/3の割合で用意し、メチルエチルケトンに溶解分散し、下引層用塗工液を準備する。次にアルミ合金からなる円筒状基体を該下引層用塗工液に浸漬塗工し、130℃で20分乾燥し、膜厚0.8μmの下引層を形成した。
次に図3のX線回折ピークを示すβ型オキシチタニウムフタロシアニン粉末10gをガラスビーズとともにSUSポットに入れ、サンドミル分散装置で40時間乾式粉砕し、無定形のオキシチタニウムフタロシアニンとする。次いで、1,1,2−トリクロロエタン/ジクロロメタン/テトラヒドロフラン=7/2/1の割合で500ml用意し、これにポリビニルブチラール樹脂5gを溶解し、30分間ミリング後、上記SUSポットに入れ20時間分散し、得られた分散液をろ過してガラスビーズを取り去り、電荷発生層用塗布液を作成した。これを浸漬塗工後乾燥し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
次にバインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂と、電荷移動材料として、式(4)で表されるブタジエン化合物と、酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノールとを、重量比1.0:1.0:0.1で用意し、クロロホルムに溶解し、電荷移動層用塗工液を調製した。電荷発生層を形成した基体を該電荷移動層用塗工液に浸漬塗工し、100℃で60分乾燥し膜厚25.0μmの電荷移動層を形成し、電子写真感光体を作製した。
【0050】
X線回折用検体試料の作成
実施例1で得られた感光体表面に事務用カッターで円周方向とそれに交差する円筒軸方向にそれぞれ切込みを入れ、一辺が約2cmの切れ目を形成させる。その切り目の入った部分よりピンセットを用いて感光膜を剥離する。4−メトキシ−4−メチルペンタノン(PTX)15mlを50mlビーカーに入れ、その中に前記剥離膜を浸漬し、電荷移動層を完全に溶解させた後によくかき混ぜてゲル状の微細片として溶媒中に分散させる。これをテフロン(登録商標)製メンブランフィルター(Pore size 0.2μm)で吸引ろ過し、ろ過物をPTX 10mlで洗浄する。次にろ過物が内側になるようにメンブランフィルターをシリコン無反射板に密着させ、メンブランフィルターだけを剥がしてシリコン無反射板にオキシチタニウムフタロシアニンを付着させ、それを風乾しX線回折の検体試料とした。
【0051】
X線回折
上記のように作成された検体試料を測定する場合は、薄膜法にて測定しX線源としてCuKα(波長1.54178Å)を用い、X線入射角度を0.5°とした。なお、オキシチタニウムフタロシアニン粉末を測定する場合は、粉末法にて測定しX線源としてCuKα(波長1.54178Å)を用いた。検体試料のX線回折図を図4に示す。図4によると、感光層から抽出されたオキシチタニウムフタロシアニンは、7.5°に特徴的な回折ピークを示し、その他9.4°、15.2°、22.6°、27.2°、28.8°にも回折ピークを示している。さらに、わずかではあるが13.2°、24.5°、25.4°にも回折ピークを示す。回折ピーク強度は、7.5°以外のピーク強度は7.5°の回折ピーク強度の20%以下となっている。
【0052】
(実施例2)
実施例1で用いた電荷移動材料に代えて、式(5)で表される電荷移動材料を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0053】
(実施例3)
実施例1で用いられた電荷移動材料に代えて、式(5)で表される化合物と式(6)で表される化合物を重量比3/7で混合した電荷移動材料を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0054】
(実施例4)
実施例1で用いられた電荷移動材料に代えて、式(6)で表される電荷移動材料を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0055】
(実施例5)
実施例1で用いられた電荷移動材料に代えて、式(7)で表される電荷移動材料を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0056】
(実施例6)
実施例1で用いられた電荷移動材料に代えて、式(8)で表される電荷移動材料を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0057】
(実施例7)
実施例1で用いられた電荷移動材料に代えて、式(9)で表される電荷移動材料を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0058】
(比較例1〜3)
実施例1で用いられた電荷移動材料に代えて、式(10)〜式(12)で表される電荷移動材料を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。各電子写真感光体をそれぞれ比較例1〜3とした。
【0059】
式(10)
【化13】
【0060】
式(11)
【化14】
【0061】
式(12)
【化15】
【0062】
(比較例4)
実施例1で用いられた電荷発生材料に代えて、図6で表されるオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生材料として用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0063】
(比較例5)
実施例1で用いられた電荷発生材料に代えて、図7で表されるオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生材料として用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0064】
(比較例6)
実施例1で用いられた電荷発生材料に代えて、図3で表されるオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生材料として用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0065】
電子写真感光体の評価1
XEROX社製Work Centre 665の現像器位置に表面電位計を設置した改造機を用い、実施例1〜7及び比較例1〜6で得られた電子写真感光体を搭載した。
初期特性として、帯電後の感光体表面電位V0と、帯電後露光し、感光体を放置し表面電位が安定したときの残留電位Verを測定した。帯電された感光ドラムを波長780nmのレーザー光で露光し、露光後の表面電位を1/2に減衰させるエネルギー量を測定し、E1/2(μj/cm2)とした。
以上の評価を測定環境温度25℃湿度50%(N/N)、測定環境温度10℃湿度20%(L/L)、測定環境温度45℃湿度50%(H/N)の三環境で行った。結果を表1に示す。
【0066】
電子写真感光体の評価2
5Kランニング特性として、A4サイズの紙を5,000枚ランニングし、そのあとの評価1と同様に帯電電位、残留電位及び半減エネルギーを測定した。その時の測定環境は測定環境温度25℃湿度50%(N/N)で行った。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1から、実施例1〜7は半減露光量が少なく高感度であることがわかる。また、三環境における電位差及び半減エネルギー差がほとんどなく、使用環境に依存しないことがわかる。さらに、5,000枚ランニング前後のV0の差が10V以内で、Verの差は5V以内であり、かつ半減エネルギーにもほとんど差が見られす、繰り返し使用において電位安定性が非常に優れていることがわかる。比較例1及び比較例2は、全体的にVerが高く、かつ三環境におけるVerの差が大きいことがわかる。また、電荷発生材料と電荷移動材料の相性があまりよくないため、半減エネルギーが実施例よりも高くなっており、ランニング前後のVerの差も大きくなっている。
比較例3も全体的にVerが高く、かつ三環境におけるVerの差が大きいことがわかる。また、ランニング前後のV0及びVLの差が大きく、繰り返し安定性に欠けていることがわかる。
比較例4及び比較例5は半減エネルギーについては実施例と同等以上の値であるが、ランニング前後のV0の差が30〜40V程度あり、繰り返しにおける電位安定性に欠けており、高い市場要求に答えられないものである。
比較例5は半減エネルギーが極めて高く、かつランニング前後のVLの差も大きい。
【0069】
【発明の効果】
実施例と比較例の特性差からみてもわかるように、本発明の電子写真感光体は、少ない半減エネルギーであるため高感度であり、かつ使用環境に依存しない安定した電位を示し、さらにランニング後でも初期と変わらない特性を示すものであり、高い市場要求に応えられるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】積層型電子写真感光体の一例を示す断面図
【図2】単層型電子写真感光体の一例を示す断面図
【図3】β型オキシチタニウムフタロシアニン粉末のX線回折図
【図4】本発明のフタロシアニン組成物のX線回折図
【図5】本発明のフタロシアニン組成物のX線回折図
【図6】比較例4で用いたオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図
【図7】比較例5で用いたオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図
【符号の説明】
1、2 電子写真感光体
11、21 導電性基体
12 電荷発生層
13 電荷移動層
14、24 感光層
Claims (4)
- 導電性支持体上に少なくとも電荷発生材料と電荷移動材料と結着樹脂とを含有する感光層を積層してなる電子写真感光体において、該電荷発生材料がオキシチタニウムフタロシアニンであって、該オキシチタニウムフタロシアニンがCuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)7.5°に最大ピークを有し、かつ他の回折ピーク強度が7.5°の回折ピーク強度に対して20%以下の強度であり、該電荷移動材料が一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
一般式(1)
一般式(2)
一般式(3)
- 請求項1の電子写真感光体において、該オキシチタニウムフタロシアニンは、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、15.2°、22.5°、27.2°、28.6°に回折ピークを有すことを特徴とする電子写真感光体。
- 請求項1の電子写真感光体において、該オキシチタニウムフタロシアニンは、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.4°、15.2°、22.5°、26.2°、27.2°、28.6°に回折ピークを有すことを特徴とする電子写真感光体。
- 請求項1の電子写真感光体において、該オキシチタニウムフタロシアニンは、少なくともバインダー樹脂とともに感光層中に分散されてなり、該感光層が形成された後に感光層から抽出したオキシチタニウムフタロシアニンのCuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)が7.5°に最大ピークを有し、かつ他の回折ピーク強度が7.5°の回折ピーク強度に対して20%以下の強度であることを特徴とする電子写真感光体。
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US20100233602A1 (en) * | 2009-03-11 | 2010-09-16 | Ricoh Company, Ltd. | Electrophotographic Photoconductor |
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- 2002-07-25 JP JP2002216795A patent/JP2004061635A/ja active Pending
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