JP2004055064A - 光磁気記録媒体への情報記録再生方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁壁移動型光磁気記録媒体において、メモリ層3から磁壁移動層1への微小磁区の転写を正確且つ確実に行うための情報記録再生方法の提供。
【解決手段】記録時にプリピット領域におけるメモリ層の磁化を一方向に着磁し、更に、再生時にその着磁の方向と同一方向の初期化磁界を印加しながら再生を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】記録時にプリピット領域におけるメモリ層の磁化を一方向に着磁し、更に、再生時にその着磁の方向と同一方向の初期化磁界を印加しながら再生を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気光学効果を利用してレーザ光により情報の記録再生を行う光磁気記録媒体の情報記録再生方法に関し、特に、磁壁移動型光磁気記録媒体を用いた情報記録再生方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、書き換え可能な高密度記録方式として、半導体レーザの熱エネルギーを利用して磁性薄膜に磁区を書き込んで情報を記録し、磁気光学効果を使って記録情報を読み出す光磁気記録媒体及び記録再生装置が注目されている。また最近では、扱うデータが音声、画像、動画といったさまざまな情報に多様化し、それらの要求するデータサイズが増え続けていることから、この光磁気記録媒体の記録密度を高めて更に大容量の記録媒体とする要求が高まっている。
【0003】
一般に、光磁気ディスクなどの光磁気記録媒体の記録密度は、再生光学系のレーザ波長及び対物レンズの開口数NAに大きく依存する。すなわち、再生光学系のレーザ波長λと対物レンズの開口数NAが決まるとビームウェストの径が決まるため、信号再生可能な記録ピットの空間周波数は2NA/λ程度が限界となってしまう。
【0004】
したがって、従来の光ディスクで高密度化を実現するためには、再生光学系のレーザ波長を短くするか対物レンズの開口数を大きくする必要がある。しかしながら、レーザ波長を短くするのは素子の効率、発熱などの問題で容易ではなく、また対物レンズの開口数を大きくするとレンズとディスクとの距離が近づきすぎて衝突などの機械的な問題が生じる。
【0005】
これに対し、記録媒体の構成や再生方法を工夫して記録密度を改善する、いわゆる磁気超解像技術が開発されている。例えば、特開平7―334877号には、記録情報を保持しておくメモリ層と、再生スポット内の一部をマスクする再生層、それらの交換結合力を制御する遮断層を積層し、再生スポットを照射することによって生じる媒体上の温度分布を利用して、実質的にスポット内の一部分のみで記録情報を再生層に転写して微小磁区の再生を行う超解像方式が提案されている。
【0006】
しかしながら従来の超解像方式は、温度分布を利用して再生光スポットの一部をマスクし、すなわち実質的にピットを読み取るアパーチャを小さな領域に制限する事により解像能力を上げるという方法を取っていたため、マスクした部分の光は無駄になり再生信号振幅が小さくなるという問題があった。つまり、マスクした部分の光は再生信号に寄与しないため、分解能を上げようとしてアパーチャを狭めるほど有効に使われる光が減少し、信号レベルが減少していた。
【0007】
また、特開平6−290496号によれば、再生光の入射側に磁壁抗磁力の小さい磁壁移動層を設け、再生スポット内の温度勾配を利用して磁壁移動層の磁壁を高温側に移動させ、スポット内で磁区を拡大再生する方法が開示されている。これによれば、記録マークサイズが小さくなったとしても、磁区を拡大しながら信号再生するので再生光を有効に使うことができ、信号振幅を落とさずに解像力があげることができた。
【0008】
これら磁気記録膜の磁気的性質を利用した超解像方式はいずれも光の回折限界以上の微小な磁区を再生する方式に関するものである。一方、微小な磁区を記録する方式として一般に知られているものに、媒体上に高出力レーザを照射しながら外部磁界を変調させる磁界変調方式がある。これによれば、磁界変調のスイッチング速度を十分に速くすることで光スポットよりも小さな微小磁区を記録することが出来る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
特開平6−290496号に示された磁壁移動を利用した再生方法は、超解像方式の中でも特に線記録密度に優れた方法である。しかしながら、その優れた特性を生かすために線記録密度を上げていくと、微小磁区に関して信号の欠落という問題が生じてくる。
【0010】
これに関して、図3を用いて説明する。図3(a)は媒体中の磁気記録層の断面図、(b)は再生時の温度プロファイルを示している。
【0011】
磁壁移動再生方式における微小磁区の再生原理は、再生光照射に伴う温度上昇により、媒体が遮断層2のキュリー温度Tc2に達するとメモリ層3と磁壁移動層1との交換結合が切れ、磁壁移動層1の磁壁がスポット内の高温側に移動することによって磁区を拡大再生するものである。この時、磁壁は温度勾配に従って最高温度の位置まで動く。この時、スポット後方部分の磁化の向きは再生信号とは無関係に一定の方向となり、メモリ層をマスクする働きをもつ。以後、スポット後方部分をリアマスクと呼ぶことにする。図3においては、リアマスク部分の遷移金属副格子磁化11の向きは下向きになっている。
【0012】
再生光を通過した媒体は次第に温度が下がっていき、遮断層2のキュリー温度Tc2よりも低くなるとメモリ層3と磁壁移動層1は再び交換結合する。これによりメモリ層3に記録された情報が磁壁移動層1に転写され、次に再生光が照射されたときに再び情報再生を行うことが出来る。
【0013】
しかしながら、記録磁区が微小になってくると媒体内の交換結合力のばらつきなどにより、メモリ層3に磁区が記録されていてもそれが正確に磁壁移動層1に転写されない場合が生じる。図3の場合はリアマスクにおける遷移金属副格子磁化が下向きなので、遷移金属副格子磁化が下向きの磁区は転写されやすいが、上向きの磁区が転写されるためには磁壁移動層にブロッホ磁壁を生じさせるエネルギーが必要になるために転写が不安定になる。そのため、微小磁区のうちいくつかは欠落13となる。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の課題を解決すべくなされたものであり、記録媒体構成を複雑化することなく、光学系の分解能を超えた記録密度の信号を正確に再生することが可能な光磁気記録媒体の情報記録再生方法を提供することを目的とする。
【0015】
そして上記目的は、情報トラックに、光磁気信号による情報の記録再生に使用する部位と、アドレスやサーボ情報などを与えるための凹凸が刻まれている部位とが交互に配置されている基板上に、少なくとも、第1、第2、第3の磁性層が順次積層されている光磁気記録媒体であって、該第1の磁性層は該第3の磁性層に比べて相対的に磁壁抗磁力は小さな磁性層からなり、該第2の磁性層は、該第1の磁性層及び第3の磁性層よりもキュリー温度の低い磁性層からなる光磁気記録媒体への情報の記録及び再生方法において、
記録時に、該凹凸が刻まれている部位における該第3の磁性層の磁化を一方向に着磁すると共に、再生時には前記着磁の方向と同一方向の初期化磁界を印加しながら再生を行うことにより達成される。
【0016】
【発明の実施の形態】
(実施例)
以下、本発明の一実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1(a)は本実施例における光ディスクの断面図を示す。図1に示すように、本実施例に用いる光ディスクでは、基板101上に干渉層102、磁壁移動層1、遮断層2、メモリ層3、保護層103の順に積層している。ここで各磁性体中の矢印11は、膜中に保持された記録磁区の遷移金属副格子磁化の向きを表し、隣同士の磁化が平行でない部分には、ブロッホ磁壁12が存在する。基板101は通常ガラスあるいはポリカーボネートの様な透明な材料が使われる。これらの各層は、マグネトロンスパッタ装置による連続スパッタリング、あるいは連続蒸着などによって被着形成できる。干渉層102は磁気光学効果を高めるために設けられ、例えばSi3N4、AlN、SiO2、SiO、ZnS、MgF2などの透明な誘電材料が用いられる。保護層103は磁性層の保護のために用いられるもので、干渉層102と同様の材料が用いられる。また、媒体全体の熱構造を最適化するために、保護層103の上にさらにAl、AlTa、AlTi、AlCr、Cuなどからなる金属層を設ける場合もある。干渉層102、保護層103および必要に応じて設ける金属層に関しては、本発明の本質とは無関係であるのでここでは詳細な説明は省略する。
【0018】
メモリ層3は希土類ー鉄族元素非晶質合金、例えばTbFeCo,DyFeCo,TbDyFeCoなどの、微小な記録ピットが安定に保存できるような垂直磁気異方性の大きい材料が用いられ、記録情報はこの層の磁区が上向きか下向きかで保持される。また、ガーネット類、Pt/Co,Pd/Coなどの垂直磁化膜を用いて、他の層に磁気的に情報転写出来る構成としてもよい。
【0019】
遮断層2は、例えばGdCo、GdFeCo、GdFe、GdFeCoAl、DyFeCoAl、TbFe、TbFeCo、TbFeCoAl、TbDyFeCoAl、TbFeAlなどの希土類ー鉄族非晶質合金で、他の層よりもキュリー温度を低く設定しておく。
【0020】
磁壁移動層1は例えばGdCo、GdFeCo、GdFe、NdGdFeCoなどの垂直磁気異方性の小さな希土類ー鉄族非晶質合金や、ガーネットなどのバブルメモリ用材料が望ましい。
【0021】
これら各層のキュリー温度の関係は、
Tc1,Tc3>Tc2
なる関係を満たし、室温では交換結合によりメモリ層3に記録された磁区が磁壁移動層1まで転写されている。
【0022】
各層の膜厚は、干渉層102が20〜100nm、磁壁移動層1が20〜40nm、遮断層2が7〜20nm、メモリ層3が40〜100nm、保護層103が40〜80nmである。
【0023】
また、この構成に更に高分子樹脂からなる保護コートを付与してもよい。あるいは、成膜後の基板101を貼り合わせてもよい。また、積層の順番を逆にして記録再生時の光入射方向を基板と反対側としても良い。
【0024】
本発明の光ディスクへのデータ信号の記録は、媒体を移動させながら、メモリ層3がキュリー温度Tc3前後になるようなパワーのレーザ光を照射しながら外部磁界を変調して行う。この場合、外部磁界の変調周波数を高くすれば、光スポット径より小さい記録磁区が形成でき、その結果光の回折限界以下の周期で信号を記録する事が出来る。
【0025】
図1(b)は光ディスクにレーザ光を照射しながら、向かって右にディスクが移動したときのトラック中心における温度分布を示している。この温度プロファイルにおいて膜温度が最大となる位置は、ディスクの線速にもよるがレーザスポットの中心よりも若干後ろ側になる。図1(c)は磁壁移動層1における磁壁エネルギー密度σ1の分布を示す図である。このように、磁壁エネルギー密度σ1は温度の上昇と共に減少するので、光ディスクの移動方向に温度勾配があると、磁壁エネルギー密度σ1は最高温度位置に向かって減少していく。その結果、位置xに存在する磁壁移動層の磁壁に対して次式のような力F1が作用する。
【0026】
F1=dσ1/dx
この力F1は、磁壁エネルギーの低い方に磁壁を移動させるように作用し、磁壁移動層1は磁壁抗磁力が小さく磁壁移動度が大きいので、単独ではこの力F1によって容易に磁壁が移動する。
【0027】
図1(a)において、ディスクにまだ再生レーザ光が照射される前、すなわち室温の部分で各磁性層は垂直磁化膜であり、メモリ層3に記録された磁区は遮断層2を介して磁壁移動層1と交換結合し、磁区が転写されている。この時、各層の中に矢印で示した互いに逆向きの磁区11の間には磁壁12が存在する事になる。膜温度が上昇して遮断層2のキュリー温度Tc2になると、メモリ層3から遮断層2への交換結合は切れ、磁壁抗磁力が小さい磁壁移動層1は磁区を保持できず、温度勾配によって加わる力F1にしたがって磁壁が高温側に移動する。この時磁壁が移動する速度は、ディスクの移動速度に比べて充分に速いので、メモリ層3に記録された磁区よりも大きな磁区がレーザスポット内に得られる事になる。
【0028】
記録時においては、照射レーザ光を再生時よりも高いパワーにすることでメモリ層3のキュリー温度Tc3よりも高い温度まで媒体を昇温させ、かつ記録磁界21を記録データに応じて変調させる。これにより、記録データに応じた記録磁区を媒体に記録することが出来る。
【0029】
ところで、光磁気ディスクでは一般的に図4に示すようにディスク内の情報を管理するために、基板のマスタリングと同時にデータトラック31上の凹凸ピットとしてプリピット32を形成しておく。これは、トラックアドレス、セクタアドレスなどであり、プリピットに続くユーザデータ(光磁気記録信号)を管理するために使われる。プリピットの部分は光磁気信号のS/Nが低下するのでユーザデータの記録には用いず、また、プリピットの直後も熱的、信号品位的に安定しないためにユーザデータ記録には用いない。そこで、プリピット部とユーザデータ領域の間にプリバッファ領域を設ける。
【0030】
図2はプリピット部前後の光磁気信号を模式的に表した図で、図2(a)(b)は従来の再生信号波形である。ここで、プリピット部における光磁気信号は通常雑音が多く、しかも情報記録再生には用いないことから、説明を簡略化するためにグラウンドレベルとなるように記載している。実際の記録再生装置においても、光磁気信号にゲートをかけることで図2のような再生信号を得ることが出来る。図2(a)において、プリピット部の前後で光磁気信号のDCレベルが異なっているが、これはリアマスク部の磁化の向きが逆になっているためである。リアマスクの磁化がどちらを向くかは、プリピット部で光磁気信号が乱された直後にリアマスクがどちらの状態をとるかによって決まる。図2(a)ではプリピット部を通過した直後のリアマスクの向きが下向きだったために光磁気信号のDCレベルはマイナス方向となる。この場合、媒体がスポットを通過してTc2以下の温度に下がった後、再びメモリ層3の記録磁区が磁壁移動層1に転写される際、下向きの磁区は転写されやすいが、上向きの磁区は転写されにくい。したがって、次にこの同じ場所を再生した時には、図2(a)のように上向きの磁区に欠落が生じやすい。
【0031】
逆に図2(b)の場合はプリピット部の直後でリアマスクの磁化が上向きなので、光磁気信号のDCレベルはプラス方向で、下向きの磁区に欠落が起こりやすい。
【0032】
そこで本発明では、情報記録時にプリピット部において下向きの磁界を印加してメモリ層を初期化する。通常メモリ層はTc2付近での漏れ磁界を低減するために補償温度をTc2付近に設定するため、記録温度付近では遷移金属副格子磁化優勢となる。したがって、プリピット領域での遷移金属副格子磁化は常に下向きに磁化される。これにより、再生信号は図2(c)に示すように再生時におけるリアマスクの磁化の向きを常に下向きに揃えることができ、欠落が生じやすい磁区を一方向に揃えることができる。そして、再生時には、媒体温度がTc2以下に下がった位置で初期化方向と同じ方向の初期化磁界22を印加することで磁界転写をアシストし磁区の欠落を抑制する。一般的に、磁壁移動層の組成としては磁壁移動時の外部磁界の影響を受けにくくするためにキュリー温度と補償温度の差を小さくし、したがってTc2以下の温度では希土類元素副格子磁化優勢となる。すなわち、遷移金属副格子磁化の向きが上向きになるように転写を促進するためには、初期化磁界の向きは下向きとなる。
【0033】
初期化磁界の大きさは、大きすぎると却って下向きの磁区の転写を妨げることにもなるので、次式のように設定する。
【0034】
Hc1+Hw1>Hini>Hc1−Hw1
ここで、Hc1は磁壁移動層の保磁力、Hw1は交換結合力によって実効的に磁壁移動層に加わる磁界の強さを表している。媒体上のばらつきの中でHw1は小さく見積もって初期化磁界Hiniの大きさを設定する。
【0035】
また、磁壁移動再生を利用した情報記録を行う際、スポット後方での磁区再転写(ゴースト信号)の問題があるが、これは例えば特開2000−187898号に示すような磁壁エネルギー密度調整用の磁性層を付加することによって解決できる。この調整層の働きはメモリ層から磁壁移動層への磁区の再転写を抑制する方向に働くので、この場合においても本発明による初期化磁界印加は欠落の抑制に効果を発揮する。
【0036】
以上説明したように、本発明の光ディスク記録再生方法を用いた場合、再生レーザ光のほぼ前縁に位置する温度Tc2付近の磁区をレーザスポット内に拡大して再生した後、メモリ層から磁壁移動層への磁区の再転写時に生じる欠落を抑制することが出来るので、より安定した情報再生を行うことが出来る。
【0037】
<実験例1>
直流マグネトロンスパッタリング装置に、BドープしたSi、及びGd、Tb、Fe、Co、Alの各ターゲットを取り付け、トラッキング用の案内溝の形成されたポリカーボネート基板を基板ホルダーに固定した後、1×10−5Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をクライオポンプで真空排気した。真空排気したまま、Arガスを0.5Paとなるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、以下の通り、ターゲットをスパッタリングして各層を成膜した。なお、SiN層成膜時にはArガスに加えてN2ガスを導入し、直流反応性スパッタにより成膜した。
【0038】
最初に、下地層としてSiN層を90nm成膜した。引き続き、磁壁移動層としてGdFeCoAl層を膜厚30nm、磁壁エネルギー調整層としてTbFeを5nm、遮断層としてTbFeAl層を膜厚10nm、メモリ層としてTbFeCo層を膜厚60nmに順次成膜した。最後に、保護層としてSiN層を50nm成膜した。
【0039】
各磁性層は、Gd、Tb、Fe、Co、Alの各ターゲットに投入するパワーの比によって組成比を制御した。磁壁移動層のキュリー温度(Tc1)が300℃、補償温度が270℃程度となるように調整し、遮断層のキュリー温度(Tc2)は155℃、メモリ層のキュリー温度(Tc3)は320℃、補償温度が140℃程度となるように調整した。
【0040】
このディスクを線速3m/sで回転させながら、波長680nmのレーザ光および250oEの外部磁界を用いて情報記録再生を行った。プリピット部では外部磁界の向きを下向きとした。初期化磁界はディスクの周方向に光ヘッドと十分離れた位置に設けた磁石により発生させ、下向きに50oEとした。これにより、最短ビット長0.09umでも欠落は生じなかった。
【0041】
なお、本実験例では磁壁移動をなめらかに行うため、情報記録再生に先立って情報トラック間を高出力レーザでアニール処理し、トラック側部で磁壁が生じないような処理を施した。
【0042】
<実験例2>
次に、実験例1と同じ媒体を用いながら記録再生装置を簡略化するために、初期化磁界を記録用の磁気ヘッドと兼用させた。すなわち、プリピット部の着磁方向と同じ方向に、再生中も磁気ヘッドを動作させることによって実験例1と同じ効果を得るものである。しかしながら、この場合は磁気ヘッドが再生レーザ光と至近に位置するため、媒体は室温までは温度が下がらないうちに磁界を印加する事になり、磁壁移動層の飽和磁化が小さいので印加磁界は実験例1よりもやや大きく100oEを印加することにより同様の効果を得られた。ここで印加磁界が大きすぎると信号再生にも悪影響を及ぼすことになるが、再生温度付近での磁壁移動層の飽和磁化は、外部磁界の影響を受けにくいように小さく設定されるので、100oE程度の印加磁界ではほとんど影響を受けない。
【0043】
<実験例3>
実験例2と同じ目的で、光ヘッドのアクチュエータからの漏れ磁界を初期化磁界と兼用した。この場合も初期化磁石を別途設ける必要がないので装置を簡略化できる。
【0044】
装置の配置から、アクチュエータからの漏れ磁界も再生スポットからそれほど離すことは出来ないので、この場合も約100oEの漏れ磁界を利用して同様の効果を得ることが出来た。
【0045】
<実験例4>
次に、トラッキング方式としてサンプルサーボ方式を採用した実験を行った。基板のフォーマット以外の条件は実験例1と同じである。
【0046】
サンプルサーボ方式の場合には、トラックアドレスなどのプリピット情報よりもより狭い間隔でサーボ用のピットが打ってあり、やはりサーボピット上、あるいは直後はユーザデータ領域として使えないので、サーボピット毎にプリバッファ領域を設けて記録時の初期化を行った。これにより、実験例1と同様の効果を得ることが出来た。
【0047】
<実験例5>
実験例1と同様の積層膜を、ランド/グルーブの段差が深い基板上に形成した。これにより、成膜と同時にトラック側部を磁気的に分断し、実験例1で行った高出力レーザによるアニール処理を省略した。
【0048】
図5は本実験例の光ディスクの断面図を示しており、基板101上に深さ160nmの矩形の案内溝を形成してある。この基板上に実験例1と同様の膜処方で成膜を行った。正確にはテーパ部分にも多少膜が堆積してしまうが、ランド/グルーブ部と比較して膜厚が非常に薄くなるので段差部における磁気的な結合は無視できる。
【0049】
このディスクに、実験例1と同じ装置で情報記録再生を行ったところ、実験例1と同等の再生信号が得られ、またランド/グルーブ記録を行うことによってトラックピッチ方向の記録密度を向上させることもできた。
【0050】
<比較例>
実験例1と同様の記録媒体に対し、記録時のプリピット部での磁界印加をせず、また初期化磁界も使わずに記録再生を行った。
【0051】
再生信号は図2(a)に示すようにセクタ毎にリアマスクの磁化の方向がまちまちであり、欠落も0.09umで1E−4個程度、発生した。
【0052】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の情報記録再生方法によれば、媒体上の情報記録密度を大きく向上する事が可能で、しかもリアマスクの磁化の向きを安定化させた上で磁区の再転写を促進する方向に初期化磁界を加えたので、微小な記録磁区に対しても正確な再生信号が得ることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を表す図である。
【図2】本発明の再生波形を説明する図である。
【図3】信号の欠落を説明する図である。
【図4】本発明の基板を説明する図である。
【図5】本発明の第3の実施例で用いる基板の断面図である。
【符号の説明】
1 磁壁移動層
2 遮断層
3 メモリ層
101 基板
102 干渉層
103 保護層
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気光学効果を利用してレーザ光により情報の記録再生を行う光磁気記録媒体の情報記録再生方法に関し、特に、磁壁移動型光磁気記録媒体を用いた情報記録再生方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、書き換え可能な高密度記録方式として、半導体レーザの熱エネルギーを利用して磁性薄膜に磁区を書き込んで情報を記録し、磁気光学効果を使って記録情報を読み出す光磁気記録媒体及び記録再生装置が注目されている。また最近では、扱うデータが音声、画像、動画といったさまざまな情報に多様化し、それらの要求するデータサイズが増え続けていることから、この光磁気記録媒体の記録密度を高めて更に大容量の記録媒体とする要求が高まっている。
【0003】
一般に、光磁気ディスクなどの光磁気記録媒体の記録密度は、再生光学系のレーザ波長及び対物レンズの開口数NAに大きく依存する。すなわち、再生光学系のレーザ波長λと対物レンズの開口数NAが決まるとビームウェストの径が決まるため、信号再生可能な記録ピットの空間周波数は2NA/λ程度が限界となってしまう。
【0004】
したがって、従来の光ディスクで高密度化を実現するためには、再生光学系のレーザ波長を短くするか対物レンズの開口数を大きくする必要がある。しかしながら、レーザ波長を短くするのは素子の効率、発熱などの問題で容易ではなく、また対物レンズの開口数を大きくするとレンズとディスクとの距離が近づきすぎて衝突などの機械的な問題が生じる。
【0005】
これに対し、記録媒体の構成や再生方法を工夫して記録密度を改善する、いわゆる磁気超解像技術が開発されている。例えば、特開平7―334877号には、記録情報を保持しておくメモリ層と、再生スポット内の一部をマスクする再生層、それらの交換結合力を制御する遮断層を積層し、再生スポットを照射することによって生じる媒体上の温度分布を利用して、実質的にスポット内の一部分のみで記録情報を再生層に転写して微小磁区の再生を行う超解像方式が提案されている。
【0006】
しかしながら従来の超解像方式は、温度分布を利用して再生光スポットの一部をマスクし、すなわち実質的にピットを読み取るアパーチャを小さな領域に制限する事により解像能力を上げるという方法を取っていたため、マスクした部分の光は無駄になり再生信号振幅が小さくなるという問題があった。つまり、マスクした部分の光は再生信号に寄与しないため、分解能を上げようとしてアパーチャを狭めるほど有効に使われる光が減少し、信号レベルが減少していた。
【0007】
また、特開平6−290496号によれば、再生光の入射側に磁壁抗磁力の小さい磁壁移動層を設け、再生スポット内の温度勾配を利用して磁壁移動層の磁壁を高温側に移動させ、スポット内で磁区を拡大再生する方法が開示されている。これによれば、記録マークサイズが小さくなったとしても、磁区を拡大しながら信号再生するので再生光を有効に使うことができ、信号振幅を落とさずに解像力があげることができた。
【0008】
これら磁気記録膜の磁気的性質を利用した超解像方式はいずれも光の回折限界以上の微小な磁区を再生する方式に関するものである。一方、微小な磁区を記録する方式として一般に知られているものに、媒体上に高出力レーザを照射しながら外部磁界を変調させる磁界変調方式がある。これによれば、磁界変調のスイッチング速度を十分に速くすることで光スポットよりも小さな微小磁区を記録することが出来る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
特開平6−290496号に示された磁壁移動を利用した再生方法は、超解像方式の中でも特に線記録密度に優れた方法である。しかしながら、その優れた特性を生かすために線記録密度を上げていくと、微小磁区に関して信号の欠落という問題が生じてくる。
【0010】
これに関して、図3を用いて説明する。図3(a)は媒体中の磁気記録層の断面図、(b)は再生時の温度プロファイルを示している。
【0011】
磁壁移動再生方式における微小磁区の再生原理は、再生光照射に伴う温度上昇により、媒体が遮断層2のキュリー温度Tc2に達するとメモリ層3と磁壁移動層1との交換結合が切れ、磁壁移動層1の磁壁がスポット内の高温側に移動することによって磁区を拡大再生するものである。この時、磁壁は温度勾配に従って最高温度の位置まで動く。この時、スポット後方部分の磁化の向きは再生信号とは無関係に一定の方向となり、メモリ層をマスクする働きをもつ。以後、スポット後方部分をリアマスクと呼ぶことにする。図3においては、リアマスク部分の遷移金属副格子磁化11の向きは下向きになっている。
【0012】
再生光を通過した媒体は次第に温度が下がっていき、遮断層2のキュリー温度Tc2よりも低くなるとメモリ層3と磁壁移動層1は再び交換結合する。これによりメモリ層3に記録された情報が磁壁移動層1に転写され、次に再生光が照射されたときに再び情報再生を行うことが出来る。
【0013】
しかしながら、記録磁区が微小になってくると媒体内の交換結合力のばらつきなどにより、メモリ層3に磁区が記録されていてもそれが正確に磁壁移動層1に転写されない場合が生じる。図3の場合はリアマスクにおける遷移金属副格子磁化が下向きなので、遷移金属副格子磁化が下向きの磁区は転写されやすいが、上向きの磁区が転写されるためには磁壁移動層にブロッホ磁壁を生じさせるエネルギーが必要になるために転写が不安定になる。そのため、微小磁区のうちいくつかは欠落13となる。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の課題を解決すべくなされたものであり、記録媒体構成を複雑化することなく、光学系の分解能を超えた記録密度の信号を正確に再生することが可能な光磁気記録媒体の情報記録再生方法を提供することを目的とする。
【0015】
そして上記目的は、情報トラックに、光磁気信号による情報の記録再生に使用する部位と、アドレスやサーボ情報などを与えるための凹凸が刻まれている部位とが交互に配置されている基板上に、少なくとも、第1、第2、第3の磁性層が順次積層されている光磁気記録媒体であって、該第1の磁性層は該第3の磁性層に比べて相対的に磁壁抗磁力は小さな磁性層からなり、該第2の磁性層は、該第1の磁性層及び第3の磁性層よりもキュリー温度の低い磁性層からなる光磁気記録媒体への情報の記録及び再生方法において、
記録時に、該凹凸が刻まれている部位における該第3の磁性層の磁化を一方向に着磁すると共に、再生時には前記着磁の方向と同一方向の初期化磁界を印加しながら再生を行うことにより達成される。
【0016】
【発明の実施の形態】
(実施例)
以下、本発明の一実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1(a)は本実施例における光ディスクの断面図を示す。図1に示すように、本実施例に用いる光ディスクでは、基板101上に干渉層102、磁壁移動層1、遮断層2、メモリ層3、保護層103の順に積層している。ここで各磁性体中の矢印11は、膜中に保持された記録磁区の遷移金属副格子磁化の向きを表し、隣同士の磁化が平行でない部分には、ブロッホ磁壁12が存在する。基板101は通常ガラスあるいはポリカーボネートの様な透明な材料が使われる。これらの各層は、マグネトロンスパッタ装置による連続スパッタリング、あるいは連続蒸着などによって被着形成できる。干渉層102は磁気光学効果を高めるために設けられ、例えばSi3N4、AlN、SiO2、SiO、ZnS、MgF2などの透明な誘電材料が用いられる。保護層103は磁性層の保護のために用いられるもので、干渉層102と同様の材料が用いられる。また、媒体全体の熱構造を最適化するために、保護層103の上にさらにAl、AlTa、AlTi、AlCr、Cuなどからなる金属層を設ける場合もある。干渉層102、保護層103および必要に応じて設ける金属層に関しては、本発明の本質とは無関係であるのでここでは詳細な説明は省略する。
【0018】
メモリ層3は希土類ー鉄族元素非晶質合金、例えばTbFeCo,DyFeCo,TbDyFeCoなどの、微小な記録ピットが安定に保存できるような垂直磁気異方性の大きい材料が用いられ、記録情報はこの層の磁区が上向きか下向きかで保持される。また、ガーネット類、Pt/Co,Pd/Coなどの垂直磁化膜を用いて、他の層に磁気的に情報転写出来る構成としてもよい。
【0019】
遮断層2は、例えばGdCo、GdFeCo、GdFe、GdFeCoAl、DyFeCoAl、TbFe、TbFeCo、TbFeCoAl、TbDyFeCoAl、TbFeAlなどの希土類ー鉄族非晶質合金で、他の層よりもキュリー温度を低く設定しておく。
【0020】
磁壁移動層1は例えばGdCo、GdFeCo、GdFe、NdGdFeCoなどの垂直磁気異方性の小さな希土類ー鉄族非晶質合金や、ガーネットなどのバブルメモリ用材料が望ましい。
【0021】
これら各層のキュリー温度の関係は、
Tc1,Tc3>Tc2
なる関係を満たし、室温では交換結合によりメモリ層3に記録された磁区が磁壁移動層1まで転写されている。
【0022】
各層の膜厚は、干渉層102が20〜100nm、磁壁移動層1が20〜40nm、遮断層2が7〜20nm、メモリ層3が40〜100nm、保護層103が40〜80nmである。
【0023】
また、この構成に更に高分子樹脂からなる保護コートを付与してもよい。あるいは、成膜後の基板101を貼り合わせてもよい。また、積層の順番を逆にして記録再生時の光入射方向を基板と反対側としても良い。
【0024】
本発明の光ディスクへのデータ信号の記録は、媒体を移動させながら、メモリ層3がキュリー温度Tc3前後になるようなパワーのレーザ光を照射しながら外部磁界を変調して行う。この場合、外部磁界の変調周波数を高くすれば、光スポット径より小さい記録磁区が形成でき、その結果光の回折限界以下の周期で信号を記録する事が出来る。
【0025】
図1(b)は光ディスクにレーザ光を照射しながら、向かって右にディスクが移動したときのトラック中心における温度分布を示している。この温度プロファイルにおいて膜温度が最大となる位置は、ディスクの線速にもよるがレーザスポットの中心よりも若干後ろ側になる。図1(c)は磁壁移動層1における磁壁エネルギー密度σ1の分布を示す図である。このように、磁壁エネルギー密度σ1は温度の上昇と共に減少するので、光ディスクの移動方向に温度勾配があると、磁壁エネルギー密度σ1は最高温度位置に向かって減少していく。その結果、位置xに存在する磁壁移動層の磁壁に対して次式のような力F1が作用する。
【0026】
F1=dσ1/dx
この力F1は、磁壁エネルギーの低い方に磁壁を移動させるように作用し、磁壁移動層1は磁壁抗磁力が小さく磁壁移動度が大きいので、単独ではこの力F1によって容易に磁壁が移動する。
【0027】
図1(a)において、ディスクにまだ再生レーザ光が照射される前、すなわち室温の部分で各磁性層は垂直磁化膜であり、メモリ層3に記録された磁区は遮断層2を介して磁壁移動層1と交換結合し、磁区が転写されている。この時、各層の中に矢印で示した互いに逆向きの磁区11の間には磁壁12が存在する事になる。膜温度が上昇して遮断層2のキュリー温度Tc2になると、メモリ層3から遮断層2への交換結合は切れ、磁壁抗磁力が小さい磁壁移動層1は磁区を保持できず、温度勾配によって加わる力F1にしたがって磁壁が高温側に移動する。この時磁壁が移動する速度は、ディスクの移動速度に比べて充分に速いので、メモリ層3に記録された磁区よりも大きな磁区がレーザスポット内に得られる事になる。
【0028】
記録時においては、照射レーザ光を再生時よりも高いパワーにすることでメモリ層3のキュリー温度Tc3よりも高い温度まで媒体を昇温させ、かつ記録磁界21を記録データに応じて変調させる。これにより、記録データに応じた記録磁区を媒体に記録することが出来る。
【0029】
ところで、光磁気ディスクでは一般的に図4に示すようにディスク内の情報を管理するために、基板のマスタリングと同時にデータトラック31上の凹凸ピットとしてプリピット32を形成しておく。これは、トラックアドレス、セクタアドレスなどであり、プリピットに続くユーザデータ(光磁気記録信号)を管理するために使われる。プリピットの部分は光磁気信号のS/Nが低下するのでユーザデータの記録には用いず、また、プリピットの直後も熱的、信号品位的に安定しないためにユーザデータ記録には用いない。そこで、プリピット部とユーザデータ領域の間にプリバッファ領域を設ける。
【0030】
図2はプリピット部前後の光磁気信号を模式的に表した図で、図2(a)(b)は従来の再生信号波形である。ここで、プリピット部における光磁気信号は通常雑音が多く、しかも情報記録再生には用いないことから、説明を簡略化するためにグラウンドレベルとなるように記載している。実際の記録再生装置においても、光磁気信号にゲートをかけることで図2のような再生信号を得ることが出来る。図2(a)において、プリピット部の前後で光磁気信号のDCレベルが異なっているが、これはリアマスク部の磁化の向きが逆になっているためである。リアマスクの磁化がどちらを向くかは、プリピット部で光磁気信号が乱された直後にリアマスクがどちらの状態をとるかによって決まる。図2(a)ではプリピット部を通過した直後のリアマスクの向きが下向きだったために光磁気信号のDCレベルはマイナス方向となる。この場合、媒体がスポットを通過してTc2以下の温度に下がった後、再びメモリ層3の記録磁区が磁壁移動層1に転写される際、下向きの磁区は転写されやすいが、上向きの磁区は転写されにくい。したがって、次にこの同じ場所を再生した時には、図2(a)のように上向きの磁区に欠落が生じやすい。
【0031】
逆に図2(b)の場合はプリピット部の直後でリアマスクの磁化が上向きなので、光磁気信号のDCレベルはプラス方向で、下向きの磁区に欠落が起こりやすい。
【0032】
そこで本発明では、情報記録時にプリピット部において下向きの磁界を印加してメモリ層を初期化する。通常メモリ層はTc2付近での漏れ磁界を低減するために補償温度をTc2付近に設定するため、記録温度付近では遷移金属副格子磁化優勢となる。したがって、プリピット領域での遷移金属副格子磁化は常に下向きに磁化される。これにより、再生信号は図2(c)に示すように再生時におけるリアマスクの磁化の向きを常に下向きに揃えることができ、欠落が生じやすい磁区を一方向に揃えることができる。そして、再生時には、媒体温度がTc2以下に下がった位置で初期化方向と同じ方向の初期化磁界22を印加することで磁界転写をアシストし磁区の欠落を抑制する。一般的に、磁壁移動層の組成としては磁壁移動時の外部磁界の影響を受けにくくするためにキュリー温度と補償温度の差を小さくし、したがってTc2以下の温度では希土類元素副格子磁化優勢となる。すなわち、遷移金属副格子磁化の向きが上向きになるように転写を促進するためには、初期化磁界の向きは下向きとなる。
【0033】
初期化磁界の大きさは、大きすぎると却って下向きの磁区の転写を妨げることにもなるので、次式のように設定する。
【0034】
Hc1+Hw1>Hini>Hc1−Hw1
ここで、Hc1は磁壁移動層の保磁力、Hw1は交換結合力によって実効的に磁壁移動層に加わる磁界の強さを表している。媒体上のばらつきの中でHw1は小さく見積もって初期化磁界Hiniの大きさを設定する。
【0035】
また、磁壁移動再生を利用した情報記録を行う際、スポット後方での磁区再転写(ゴースト信号)の問題があるが、これは例えば特開2000−187898号に示すような磁壁エネルギー密度調整用の磁性層を付加することによって解決できる。この調整層の働きはメモリ層から磁壁移動層への磁区の再転写を抑制する方向に働くので、この場合においても本発明による初期化磁界印加は欠落の抑制に効果を発揮する。
【0036】
以上説明したように、本発明の光ディスク記録再生方法を用いた場合、再生レーザ光のほぼ前縁に位置する温度Tc2付近の磁区をレーザスポット内に拡大して再生した後、メモリ層から磁壁移動層への磁区の再転写時に生じる欠落を抑制することが出来るので、より安定した情報再生を行うことが出来る。
【0037】
<実験例1>
直流マグネトロンスパッタリング装置に、BドープしたSi、及びGd、Tb、Fe、Co、Alの各ターゲットを取り付け、トラッキング用の案内溝の形成されたポリカーボネート基板を基板ホルダーに固定した後、1×10−5Pa以下の高真空になるまでチャンバー内をクライオポンプで真空排気した。真空排気したまま、Arガスを0.5Paとなるまでチャンバー内に導入し、基板を回転させながら、以下の通り、ターゲットをスパッタリングして各層を成膜した。なお、SiN層成膜時にはArガスに加えてN2ガスを導入し、直流反応性スパッタにより成膜した。
【0038】
最初に、下地層としてSiN層を90nm成膜した。引き続き、磁壁移動層としてGdFeCoAl層を膜厚30nm、磁壁エネルギー調整層としてTbFeを5nm、遮断層としてTbFeAl層を膜厚10nm、メモリ層としてTbFeCo層を膜厚60nmに順次成膜した。最後に、保護層としてSiN層を50nm成膜した。
【0039】
各磁性層は、Gd、Tb、Fe、Co、Alの各ターゲットに投入するパワーの比によって組成比を制御した。磁壁移動層のキュリー温度(Tc1)が300℃、補償温度が270℃程度となるように調整し、遮断層のキュリー温度(Tc2)は155℃、メモリ層のキュリー温度(Tc3)は320℃、補償温度が140℃程度となるように調整した。
【0040】
このディスクを線速3m/sで回転させながら、波長680nmのレーザ光および250oEの外部磁界を用いて情報記録再生を行った。プリピット部では外部磁界の向きを下向きとした。初期化磁界はディスクの周方向に光ヘッドと十分離れた位置に設けた磁石により発生させ、下向きに50oEとした。これにより、最短ビット長0.09umでも欠落は生じなかった。
【0041】
なお、本実験例では磁壁移動をなめらかに行うため、情報記録再生に先立って情報トラック間を高出力レーザでアニール処理し、トラック側部で磁壁が生じないような処理を施した。
【0042】
<実験例2>
次に、実験例1と同じ媒体を用いながら記録再生装置を簡略化するために、初期化磁界を記録用の磁気ヘッドと兼用させた。すなわち、プリピット部の着磁方向と同じ方向に、再生中も磁気ヘッドを動作させることによって実験例1と同じ効果を得るものである。しかしながら、この場合は磁気ヘッドが再生レーザ光と至近に位置するため、媒体は室温までは温度が下がらないうちに磁界を印加する事になり、磁壁移動層の飽和磁化が小さいので印加磁界は実験例1よりもやや大きく100oEを印加することにより同様の効果を得られた。ここで印加磁界が大きすぎると信号再生にも悪影響を及ぼすことになるが、再生温度付近での磁壁移動層の飽和磁化は、外部磁界の影響を受けにくいように小さく設定されるので、100oE程度の印加磁界ではほとんど影響を受けない。
【0043】
<実験例3>
実験例2と同じ目的で、光ヘッドのアクチュエータからの漏れ磁界を初期化磁界と兼用した。この場合も初期化磁石を別途設ける必要がないので装置を簡略化できる。
【0044】
装置の配置から、アクチュエータからの漏れ磁界も再生スポットからそれほど離すことは出来ないので、この場合も約100oEの漏れ磁界を利用して同様の効果を得ることが出来た。
【0045】
<実験例4>
次に、トラッキング方式としてサンプルサーボ方式を採用した実験を行った。基板のフォーマット以外の条件は実験例1と同じである。
【0046】
サンプルサーボ方式の場合には、トラックアドレスなどのプリピット情報よりもより狭い間隔でサーボ用のピットが打ってあり、やはりサーボピット上、あるいは直後はユーザデータ領域として使えないので、サーボピット毎にプリバッファ領域を設けて記録時の初期化を行った。これにより、実験例1と同様の効果を得ることが出来た。
【0047】
<実験例5>
実験例1と同様の積層膜を、ランド/グルーブの段差が深い基板上に形成した。これにより、成膜と同時にトラック側部を磁気的に分断し、実験例1で行った高出力レーザによるアニール処理を省略した。
【0048】
図5は本実験例の光ディスクの断面図を示しており、基板101上に深さ160nmの矩形の案内溝を形成してある。この基板上に実験例1と同様の膜処方で成膜を行った。正確にはテーパ部分にも多少膜が堆積してしまうが、ランド/グルーブ部と比較して膜厚が非常に薄くなるので段差部における磁気的な結合は無視できる。
【0049】
このディスクに、実験例1と同じ装置で情報記録再生を行ったところ、実験例1と同等の再生信号が得られ、またランド/グルーブ記録を行うことによってトラックピッチ方向の記録密度を向上させることもできた。
【0050】
<比較例>
実験例1と同様の記録媒体に対し、記録時のプリピット部での磁界印加をせず、また初期化磁界も使わずに記録再生を行った。
【0051】
再生信号は図2(a)に示すようにセクタ毎にリアマスクの磁化の方向がまちまちであり、欠落も0.09umで1E−4個程度、発生した。
【0052】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の情報記録再生方法によれば、媒体上の情報記録密度を大きく向上する事が可能で、しかもリアマスクの磁化の向きを安定化させた上で磁区の再転写を促進する方向に初期化磁界を加えたので、微小な記録磁区に対しても正確な再生信号が得ることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を表す図である。
【図2】本発明の再生波形を説明する図である。
【図3】信号の欠落を説明する図である。
【図4】本発明の基板を説明する図である。
【図5】本発明の第3の実施例で用いる基板の断面図である。
【符号の説明】
1 磁壁移動層
2 遮断層
3 メモリ層
101 基板
102 干渉層
103 保護層
Claims (1)
- 情報トラックに、光磁気信号による情報の記録再生に使用する部位と、アドレスやサーボ情報などを与えるための凹凸が刻まれている部位とが交互に配置されている基板上に、少なくとも、第1、第2、第3の磁性層が順次積層されている光磁気記録媒体であって、該第1の磁性層は該第3の磁性層に比べて相対的に磁壁抗磁力は小さな磁性層からなり、該第2の磁性層は、該第1の磁性層及び第3の磁性層よりもキュリー温度の低い磁性層からなる光磁気記録媒体への情報の記録再生方法において、
記録時に、該凹凸が刻まれている部位における該第3の磁性層の磁化を一方向に着磁すると共に、再生時には前記着磁の方向と同一方向の初期化磁界を印加しながら再生を行うことを特徴とする情報記録再生方法。
Priority Applications (1)
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Publications (1)
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2002
- 2002-07-22 JP JP2002212463A patent/JP2004055064A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
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