JP2004051912A - 防錆グリースおよび該グリース封入軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基油に、増ちょう剤と、亜硝酸塩を含まない添加剤とを配合してなる防錆グリースであって、上記基油が合成炭化水素油を基油全体に対して 10 重量%以上含み、上記添加剤が多価アルコール系エステルをグリース組成物全体に対して 0.1〜10 重量%含む防錆グリースであり、グリース封入軸受1は摺動部分に上記防錆グリース7が封入されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は防錆グリースおよびこの防錆グリースが封入されたグリース封入軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
走行中に道路上の水、塩水あるいは海水などの付着浸入が生じやすい自動車用電装補機や、常に冷却水の浸入に曝される圧延ローラなどの製鉄用機器等に用いられる転がり軸受は、発錆を抑えることが重要である。
特に、海岸での走行や、路面凍結防止のために食塩を散布した海岸での道路の走行等、自動車の使用の多様化に伴い、グリースに対する防錆性の要求が強くなってきている。
また、製鉄産業の連続鋳造設備でも使用するモールディングパウダーの変遷に伴って、冷却水中にその成分の一部が溶解し、発錆を促進させていることなど、グリースに対する防錆性能向上の要求が強まってきている。
発錆を抑えるため、転がり軸受に適当なシールやその他機構上の対策を施して、直接、錆の起因となる物質の混入を防ぐ対策が行なわれている。例えば、自動車においては、直接泥水などがかからない位置にオルタネータなどを配置したり、泥よけ等を取り付けたりの対策がなされている。しかし、転がり軸受は、機構上、完全な密封が不可能であるため、封入される潤滑グリースにも、優れた防錆性能が求められている。
【0003】
従来、防錆性に優れたグリースとして、防錆剤としての油溶性インヒビター、水溶性無機不働態化剤、非イオン界面活性化剤を配合したグリース組成物が開示されている(特開平 3−200898号)。また、オルタネータ用グリース封入転がり軸受として、不働態化酸化剤および有機スルホン酸を添加したグリース組成物が開示されている(特許番号第2557597号)。さらに防錆剤としてバリウムスルホネートを添加した軸受封入用グリース組成物が開示されている(特開平 5−140576号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水溶性無機不働態化剤として優れている亜硝酸ソーダは、第二級アミンと酸性条件下で反応して、ニトロソアミンが生成することが知られている。このニトロソアミンが環境負荷物質であることから、その使用は好ましくないが、代替添加剤がないという問題がある。
また、亜硝酸ソーダの使用量を減少させて有機スルホン酸を添加したり、バリウムスルホネートを添加したりするだけでは防錆性が不十分であるという問題がある。
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、亜硝酸塩類を使用しないでも、優れた防錆性を示す防錆グリースおよびこの防錆グリースが封入されたグリース封入軸受の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る防錆グリースは、基油に、増ちょう剤と、亜硝酸塩を含まない添加剤とを配合してなる防錆グリースであって、上記基油が合成炭化水素油を基油全体に対して 10 重量%以上含む基油であり、上記亜硝酸塩を含まない添加剤が多価アルコール系エステルをグリース組成物全体に対して 0.1〜10 重量%含む添加剤であることを特徴とする。
また、上記基油は、合成炭化水素油と、エーテル油およびエステル油から選ばれた少なくとも一つの油との混合油であることを特徴とする。上記合成炭化水素油が脂肪族系炭化水素油であることを特徴とする。
また、上記増ちょう剤がウレア系増ちょう剤であり、グリース全体に対して 5〜30 重量%配合されてなることを特徴とする。
また、上記多価アルコール系エステルは、ソルビタン脂肪酸エステルであることを特徴とする。
【0006】
本発明に係るグリース封入軸受は、摺動部分に上記防錆グリースが封入されてなることを特徴とする。
また、上記グリース封入軸受が自動車用電装補機または製鉄用機器に使用される軸受であることを特徴とする。
【0007】
基油を構成するポリ−α−オレフィンなどの脂肪族系炭化水素油は、それ自体では防錆効果を示さないが、多価アルコール系エステルと共存させることにより、亜硝酸ソーダなどの亜硝酸塩類含有しないでもグリースの防錆性能が大幅に改善できることが分かった。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に使用できる基油は合成炭化水素油を必須の成分として含む。合成炭化水素油は、炭素と水素の化合物からなる炭化水素化合物であり、ポリ−α−オレフィン油、α−オレフィンとオレフィンとの共重合体、ポリブテンなどの脂肪族系炭化水素油、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリフェニル、合成ナフテンなどの芳香族系炭化水素油がある。
【0009】
本発明に好適な合成炭化水素油は、多価アルコール系エステルとの共存により、優れた防錆効果を示す脂肪族系炭化水素油が使用できる。脂肪族系炭化水素油の中でもポリ−α−オレフィン油、α−オレフィンとオレフィンとの共重合体が好ましい。これらは、α−オレフィンの低重合体であるオリゴマーとし、その末端二重結合に水素を添加した構造である。
【0010】
合成炭化水素油は基油全体に対して 10 重量%以上含む。 10 重量%未満では多価アルコール系エステルと組み合わせて使用するときの防錆性能に劣る。基油としては合成炭化水素油のみであってもよい。
【0011】
合成炭化水素油と併用できる他の基油成分としては、通常グリースに使用される鉱油、合成油あるいはこれらの混合油が使用できる。具体的に、鉱油としてはパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油を挙げることができ、合成油としてはエステル油、エーテル油が挙げられる。
本発明においては、特にエステル油、エーテル油、またはエステル油とエーテル油との混合油が防錆グリースの耐熱性を向上させるので好ましい。
【0012】
エステル油は、分子内にエステル基を有し室温で液状を示す化合物である。好適なエステル油としてはジエステル油、ポリオールエステル油またはこれらのコンプレックスエステル油、芳香族エステル油等が挙げられる。
ジエステルは、二塩基酸とアルコールとの反応で得られる分子内にエステル基を2個有する化合物であり、例えば、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジーイソデシル(DIDA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOZ)、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOS)などが挙げられる。
【0013】
ポリオールエステル油はポリオールと一塩基酸との反応で得られる分子内にエステル基を複数個有する化合物が好ましい。ポリオールに反応させる一塩基酸は単独で用いてもよく、また混合物として用いてもよい。なお、オリゴエステルの場合には二塩基酸を用いてもよい。
ポリオールとしては、トリメチロールプロパン(TMP)、ペンタエリスリトール(PE)、ジペンタエリスリトール(DPE)、ネオペンチルグリコール(NPG)、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
一塩基酸としては、炭素数 4〜18 の一価の脂肪酸が挙げられる。例えば、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、エナント酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、牛脂酸、ステアリン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、サビニン酸、リシノール酸などが挙げられる。
【0014】
芳香族エステル油としては、芳香族多塩基酸またはその誘導体と、高級アルコールとの反応で得られる化合物が好ましい。芳香族多塩基酸としてはトリメリット酸、ビフェニルトリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸などの芳香族三塩基酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸などの芳香族四塩基酸、またはこれらの酸無水物などの誘導体が挙げられる。高級アルコールとしてはオクチルアルコール、デシルアルコール等炭素数4以上の脂肪族一価アルコールが好ましい。芳香族エステル油の例としてはトリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテートなどが挙げられる。
【0015】
上記基油に配合される増ちょう剤はウレア系増ちょう剤が好ましい。ウレア系増ちょう剤として使用するウレア化合物は、下記化1で示され、R4が芳香族系炭化水素を含む基であり、R3およびR5が炭素数 6〜12 の脂環族系炭化水素基、炭素数 6〜20 の脂肪族系炭化水素基および炭素数 6〜15 の芳香族系炭化水素から選ばれた少なくとも一つの炭化水素基である。炭素数が上記範囲未満であるとグリースの増ちょう性が劣り、R3およびR5の炭素数が上記範囲をこえると耐熱性が悪くなる。
【化1】
【0016】
R4は芳香族系炭化水素を含む二価の基であり、芳香族単環、芳香族縮合環、これらがメチレン鎖、シアヌル環、イソシアヌル環等で連結された基等が挙げられる。具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、これらジイソシアネート類の二量体、三量体等のイソシアネート基を除いた残基が挙げられる。R4が芳香族系炭化水素を含む基とすることにより、グリースの耐熱性が向上する。
【0017】
ウレア化合物は、イソシアネート化合物とアミノ化合物を反応させることにより得られる。反応性ある遊離基を残さないため、イソシアネート化合物のイソシアネート基とアミノ化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
【0018】
グリースは、基油中でイソシアネート化合物とアミノ化合物とを反応させてもよく、またあらかじめ合成されたウレア化合物を基油と混合してもよい。好ましい作製方法は、グリースの安定性を保ちやすい前者の方法である。
【0019】
上記ウレア系増ちょう剤の配合割合は、グリース全体に対して 5〜30 重量%である。 5 重量%未満では、粘度の低い液状となって漏洩しやすく軸受に密封することが困難になる。また 30 重量%をこえると固化してちょう度が 200 以下となるので、軸受封入用のグリースとして実用性がなくなる。
【0020】
本発明に使用できる多価アルコール系エステルは、多価アルコールと脂肪酸とのエステルが好ましく、多価アルコールとしてはグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、ソルビタン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ポリオキシエチレン等の脂肪族多価アルコールが挙げられる。多価アルコールとエステルを形成する脂肪酸はRCOOHで表される化合物で、Rは飽和または不飽和の炭化水素基を表す。脂肪酸としては高級脂肪酸が好ましく、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、牛脂酸、ステアリン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、サビニン酸、リシノール酸、ベヘニン酸等が挙げられる。
これら多価アルコール系エステルの中で、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、特にソルビタントリオレエートが好ましい。ポリ−α−オレフィン油と組み合わせて使用することにより、防錆性能をより向上させることができる。
【0021】
多価アルコール系エステルは、グリース組成物全体に対して 0.1〜10 重量%配合する。 0.1 重量%未満であると防錆性能が低下し、10 重量%をこえると潤滑性が低下する。
多価アルコール系エステルは単独でも錆止め用添加剤として使用することができる。また、他の錆止め用添加剤も多価アルコール系エステルと併用できる。錆止め用添加剤の配合割合は、グリース組成物全体に対して 0.1〜10 重量%である。
【0022】
多価アルコール系エステルと併用して使用できる好適な錆止め用添加剤としては有機スルホン酸塩が挙げられる。有機スルホン酸塩はスルホン酸(RSO3H)の塩であり、一般にRSO3Mとして表される。スルホン酸としては、例えば石油スルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸が挙げられる。また、Mとしては、バリウム、カルシウム、亜鉛、ナトリウム、リチウム、マグネシウム等の金属および、NH4、H2N(CH2)2NH2等のアミン等が挙げられる。上記の中でも、スルホン酸のカルシウムまたはバリウム塩が好ましい。
【0023】
本発明に係る防錆グリースは、上記の基油、増ちょう剤および多価アルコール系エステルを必須成分とするものであるが、極圧剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、油性剤等の従来のグリース用添加剤をさらに配合できる。
極圧剤を配合することにより、耐荷重性や極圧性を向上させることができる。例えば以下の化合物を使用できる。有機金属系のものとしては、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン等の有機モリブデン化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジチオリン酸亜鉛、亜鉛フェネート等の有機亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸アンチモン、ジチオリン酸アンチモン等の有機アンチモン化合物、ジチオカルバミン酸セレン等の有機セレン化合物、ナフテン酸ビスマス、ジチオカルバミン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物、ジチオカルバミン酸鉄、オクチル酸鉄等の有機鉄化合物、ジチオカルバミン酸銅、ナフテン酸銅等の有機銅化合物、マレイン酸スズ、ジブチルスズスルファイド等の有機スズ化合物、あるいは、アルカリ金属、アルカリ土類金属の有機スルホネート、フェネート、ホスホネート、金、銀、チタン、カドミウム等の有機金属化合物も必要なら使用できる。硫黄系化合物としては、ジベンジルジスルフィド等のスルフィドあるいはポリスルフィド化合物、硫化油脂類、無灰系カルバミン酸化合物類、チオウレア系化合物、もしくはチオカーボネート類等を使用できる。リン酸系極圧剤としては、トリオクチルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル等のリン酸エステル系化合物を使用できる。また、その他、塩素化パラフィン等のハロゲン系の極圧剤、あるいは、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、PTFE、硫化アンチモン、窒化硼素などの硼素化合物等の固体潤滑剤を使用することができる。これらの極圧剤の中で、ジチオカルバミン酸系化合物やジチオリン酸系化合物を好適に使用できる。
【0024】
酸化防止剤としてゴム、プラスチック、潤滑油等に添加する老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤から適宣選択して使用できる。例えば、以下の化合物が使用できる。すなわち、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、ジピリジルアミン、フェノチアジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、3、7−ジオクチルフェノチアジン、p、p −ジオクチルジフェニルアミン、N、N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N、N−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン等のアミン系化合物、2、6−ジ−tert−ジブチルフェノール等のフェノール系化合物等が使用できる。
【0025】
金属不活性化剤としては、例えばベンゾトリアゾールやトリルトリアゾール等のトリアゾール系化合物が使用できる。
油性剤としては、例えば以下の化合物が使用できる。かなわち、オレイン酸やステアリン酸等の脂肪酸、オレイルアルコール等の脂肪酸アルコール、リン酸、トリクレジルホスフェート、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸等のリン酸エステル等が使用できる。
【0026】
本発明に係るグリース封入軸受の一例を図1に示す。図1は深溝玉軸受の断面図である。
グリース封入軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この複数個の転動体4を保持する保持器5および外輪3等に固定されるシール部材6とにより構成される。少なくとも転動体4の周囲に防錆グリース7が封入される。
【0027】
防錆グリース7が亜硝酸塩を含まない添加剤を用いているので、耐環境性に優れたグリース封入軸受1が得られる。また、防錆性に優れているので、自動車用電装補機や製鉄用機器等に用いられる転がり軸受に好適に使用できる。
【0028】
【実施例】
実施例1
ポリ−α−オレフィン油(動粘度 30mm2/s(40 ℃))とアルキルジフェニルエーテル油(動粘度 97mm2/s(40 ℃))の混成油からなる基油を表1に示す配合割合で調製した。この基油を2液に分割し、その半量に4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを溶解し、残りの半量の基油に4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの2倍当量となる芳香族アミンを溶解した。なお、芳香族ジウレア化合物として表1に示す配合割合となるように4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを溶解した。4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを溶解した溶液を撹拌しながら芳香族アミン溶液を加えた後、100〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて芳香族ジウレア化合物を基油に配合した。これにソルビタントリオレエートを表1に示す配合割合で加えてさらに100〜120℃で 10 分間撹拌した。その後冷却し三本ロールで均質化し防錆グリースを得た。このグリースの錆試験を行なって防錆性能を評価した。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表1に示す。
【0029】
ASTM D 1743 に規定される錆試験法に準じて、試験条件を錆発生に対してより過酷な条件で行なった。あらかじめ有機溶剤により脱脂し、乾燥させた円錐ころ軸受30204に実施例1で得られた防錆グリースを 2.0 g 封入した後、アキシャル荷重を 98 N 加えて毎分 1800 回転で 1 分間慣らし運転した。次に、1 重量%食塩水に浸漬した後、この軸受を 40 ℃で飽和水蒸気圧に達した密封高湿容器に入れ、40 ℃で 48 時間放置した後、発錆状況を調べた。発錆状況は外輪レースを周方向に 32 等分して錆のあった区間を数え、錆発生率を測定した。試験回数n=4回の平均を錆評点とした。
【0030】
実施例2〜実施例7
実施例1に準じる方法で、表1に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリースを調製し、さらに添加剤を配合して防錆グリースを得た。なお、表中のエステル油の物性は(動粘度 33mm2/s(40 ℃))である。得られた防錆グリースを実施例1と同様に錆試験を行なって防錆性能を評価した。結果を表1に示す。
【0031】
比較例1〜比較例7
実施例1に準じる方法で、表2に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリースを調製し、さらに添加剤を配合して防錆グリースを得た。得られた防錆グリースを実施例1と同様に錆試験を行なって防錆性能を評価した。結果を表2に示す。
【0032】
【表1】
【表2】
【0033】
各実施例に示されたように本発明にかかる防錆グリースの錆発生確率は、各比較例と比べて極端に低くなっている。基油に合成炭化水素油を使用し、かつ、錆止め用添加剤として、多価アルコール系エステルを配合したことにより、錆止め性能に優れたグリースが得られた。
【0034】
【発明の効果】
本発明に係る防錆グリースは、基油が合成炭化水素油を基油全体に対して 10 重量%以上含む基油であり、亜硝酸塩を含まない添加剤として多価アルコール系エステルをグリース組成物全体に対して 0.1〜10 重量%含む、合成炭化水素油と多価アルコール系エステルとが組み合わされた防錆グリースなので、亜硝酸塩を含まなくとも優れた防錆性能が得られる。
上記基油が合成炭化水素油とエーテル油またはエステル油との混合油であるので、優れた防錆性能とともに優れた耐熱性を有するグリースとなる。
上記合成炭化水素油が脂肪族系炭化水素油であり、増ちょう剤がウレア系増ちょう剤であり、多価アルコール系エステルがソルビタン脂肪酸エステルであるので、防錆性能がより向上する。
【0035】
本発明に係るグリース封入軸受は、封入グリースが上記防錆グリースであるので、優れた防錆性能を有する軸受が得られる。その結果、自動車用電装補機または製鉄用機器に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】深溝玉軸受の断面図である。
【符号の説明】
1 グリース封入軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 防錆グリース
Claims (7)
- 基油に、増ちょう剤と、亜硝酸塩を含まない添加剤とを配合してなる防錆グリースであって、
前記基油が合成炭化水素油を基油全体に対して 10 重量%以上含む基油であり、前記亜硝酸塩を含まない添加剤が多価アルコール系エステルをグリース組成物全体に対して 0.1〜10 重量%含む添加剤であることを特徴とする防錆グリース。 - 前記基油は、合成炭化水素油と、エーテル油およびエステル油から選ばれた少なくとも一つの油との混合油であることを特徴とする請求項1記載の防錆グリース。
- 前記合成炭化水素油が脂肪族系炭化水素油であることを特徴とする請求項2記載の防錆グリース。
- 前記増ちょう剤がウレア系増ちょう剤であり、グリース全体に対して 5〜30 重量%配合されてなることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の防錆グリース。
- 前記多価アルコール系エステルは、ソルビタン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1記載の防錆グリース。
- 摺動部分にグリースが封入されてなるグリース封入軸受であって、
前記グリースが請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の防錆グリースであることを特徴とするグリース封入軸受。 - 前記グリース封入軸受が自動車用電装補機または製鉄用機器に使用される軸受であることを特徴とする請求項6記載のグリース封入軸受。
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