JP2004049479A - 内視鏡用トレーニング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】内視鏡の挿入技術のみならず、内視鏡を使用した治療技術の習得、及び向上を図ることができる内視鏡用トレーニング装置を提供する。
【解決手段】擬似臓器を有する内視鏡トレーニング装置において、前記擬似臓器は、その形成する2つ以上の形成層30、31で構成したことを特徴とし、また、複数層で構成される擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置において、前記擬似臓器の形成層は、その内側の層30よりも外側の層31を硬い材質で構成したことを特徴とする。
【選択図】 図18
【解決手段】擬似臓器を有する内視鏡トレーニング装置において、前記擬似臓器は、その形成する2つ以上の形成層30、31で構成したことを特徴とし、また、複数層で構成される擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置において、前記擬似臓器の形成層は、その内側の層30よりも外側の層31を硬い材質で構成したことを特徴とする。
【選択図】 図18
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内視鏡用トレーニング装置、詳しくは、内視鏡を使用した治療技術を習得することができる内視鏡用トレーニング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、一般に人体内の大腸は、内視鏡検査を行うことのできる他の臓器に比べて形状が複雑であるため、この大腸に内視鏡を挿入するには高度な技術が要求される。
【0003】
そこで、特開平10−211160号公報には、大腸用内視鏡の挿入技術を習得するために、内視鏡を挿入することができ、かつ複数種類の患者の大腸の状態を再現する手段を設けた擬似大腸臓器(人体内の大腸モデル)を有する、大腸用内視鏡の挿入練習装置が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、内視鏡下においては、粘膜内に存在するがん細胞直下の粘膜下層に局注液を注入して粘膜を剥離した後、がん細胞を含んだ粘膜のみを切除する内視鏡的粘膜切除術や、ポリープを高周波スネアで切除するポリペクトミーなどの内視鏡的治療が行われており、内視鏡の医療における役割も診断から治療へと様変わりしてきている。
【0005】
しかしながら、上記特開平10−211160号公報に提案されている発明、並びに従来種々提案されている内視鏡用トレーニング装置は、すべて、内視鏡の挿入技術の習得を目的としたものであり、内視鏡的治療、および処置の習得を目的としたものではない。
【0006】
本発明の目的は、上記事情に鑑みてなされたものであり、内視鏡の挿入技術のみならず、内視鏡を使用した治療、処置技術の習得、及び向上を図ることができる内視鏡用トレーニング装置を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段、及び作用】
上記目的を達成するために本発明による内視鏡用トレーニング装置は、擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置において、前記擬似臓器は、その形成層を2つ以上の層で構成したことを特徴とする。
【0008】
また、内視鏡用トレーニング装置は、複数層で構成される擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置において、前記擬似臓器の形成層は、その内側の層よりも外側の層を硬い材質で構成したことを特徴とする。
【0009】
さらに、内視鏡用トレーニング装置は、複数層で構成される擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置において、前記擬似臓器の形成層は、その内側の層の材質を外側の層の材質より熱伝導性の高い材質で構成したことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
先ず、本発明の実施形態を説明するに先立ち、本発明の適用される擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置の概略を説明する。なお、前記擬似臓器は、人体内の大腸の臓器を例に挙げ、前記内視鏡用トレーニング装置は、胃臓器から前記大腸臓器までの各臓器を内蔵する擬似胴体からなる人体モデルで構成されている。
【0012】
図1は、大腸用内視鏡のトレーニング装置を左斜め上方から見た外観斜視図、図2(a)(b)および、図3(a)(b)は、固定台に対して水平に回動自在に取り付けられた擬似胴体の回動軸の保持機構の拡大断面図および正面図、図4は、第2の回動軸が擬似胴体の回動中心軸から外れた位置に固設されることを示した要部拡大斜視図である。
【0013】
図1に示すように、大腸用内視鏡のトレーニング装置1は、その内部に擬似臓器を有する擬似胴体2と、固定台3と、前記擬似胴体2の一対の回動軸4と、前記固定台3の長手方向両端部の中央に起立し、前記回動軸4をそれぞれ軸支する一対の支柱5と、前記擬似胴体2の、人体下方側に相当する一端面に穿設され、内視鏡挿入口となる開口部からなる擬似肛門17と、前記擬似胴体2の上面に開閉自在に配設された腹部カバー13とで、その主要部が構成されている。
【0014】
なお、前記擬似胴体2は、図1において左方側が人体上方側、右方側が人体下方側にそれぞれ相当する。
【0015】
前記一対の回動軸4は、図2に示すように、擬似胴体2の中心軸線上に配設され、その一端がそれぞれ前記支柱5に穿設された後述する軸受け部40に回動自在に軸支され、他端は、人体上方側の端面においては、その端面中央に固定され、人体下方側においては、図1、4に示すように前記擬似肛門17を挟むようにして両端部が端面に固定されたコの字型形状をなす第2の回動軸29に連結される。つまり、この回動軸29は前記擬似胴体2の肛門側の面に、コの字型の両端部が前記回動軸4の回動中心と同じ高さの任意の位置に固定され、連結軸部の中央に回動軸4の他端が固定される。
【0016】
このように、前記擬似胴体2は、前記一対の支柱5に軸支された前記回動軸4、並びに前記第2の回動軸29により固定台3に対して回動自在に支持されており、前記トレーニング装置は、前記擬似胴体2を胴回り方向に回動自在に支持する回動機構部を備えている。
【0017】
次に、前記擬似胴体2を所定の回転角度毎に静止させて保持する保持機構部を図2(a)(b)、図3(a)(b)を用いて説明する。
図2(a)に示すように、前記回動軸4の支柱5に軸支されている部分には、内部に埋設されたクリックバネ6と、このバネ6に付勢されて外方に突出する半球状の突出部7を有するクリックストップ機構が設けられており、また、前記支柱5に設けられた円形状の軸受け部40には、それぞれが対向する位置に90度の間隔で半球状に外方に突出した4つの切欠き部8が設けられている。
【0018】
このように構成された保持機構部により、前記擬似胴体2は、図3に示すように90度ごとの回転が前記クリックバネ6の付勢により、クリック感を持たせながら切欠き部8でそれぞれの角度に静止保持することができ、これにより、実際の内視鏡検査でおこなわれる側臥位や仰臥位などの体位変換を再現するとともに、保持された状態においては、前記突出部7が前記切り欠き部8に係合しているので、安定して内視鏡のトレーニングを実施できるようになっている。
【0019】
なお、前記支柱5に穿設された前記軸受け部40の前記切欠き部8は、90度毎に4つ設けたが、これは更に切欠き部8を増やし、様々な角度の体位を再現できるようにしても良い。
【0020】
また、前記擬似胴体2の肛門側の端面に固設されている前記第2の回動軸29は、二股のコの字型を有している。これは、内視鏡を前記擬似胴体2に挿入しながらトレーニングしている場合に、内視鏡挿入部18を保持している術者の手と回動軸4が干渉することがないように工夫が施されたものである。
【0021】
さらに、術者の手と前記回動軸4が干渉しない手段としては、図4に示すように、前記第2の回動軸29の2軸を結ぶラインと前記擬似胴体2の水平面とのなす角度をθ角ずらして、より干渉を避けるようにしても良い。
【0022】
なお、前記擬似胴体2の肛門側の面に固設する上記第2の回動軸29は、二股のコの字型に形成されたものを示したが、これに限らず、術者の手と回動軸が干渉しないように、回動中心からずらした位置で、前記回動軸4の回動中心と同じ高さの位置であれば、1つの軸で固設しても良いことは云うまでもない。
【0023】
次に、前記擬似胴体2の内部構造について説明すると、図5は、内視鏡用トレーニング装置における擬似胴体の上面図、図6は、図5のVI−VI´線に沿う断面図である。
【0024】
図5、並びに図6に示すように、前記擬似胴体2の内部には、弾性体からなる大腸臓器モデル9が配設されており、また、実際の人体と同様に、周囲が弾性体からなる胃臓器モデル10、小腸臓器モデル11や膵臓臓器モデル12が実際の人体と同様に前記大腸臓器モデル9の一部を圧迫しながら配設されている。
【0025】
さらに、前述したように、弾性体からなる前記腹部カバー13が前記擬似胴体2に対して開閉自在に取り付けられており、この腹部カバー13も、前記擬似胴体2に固定した状態(腹部カバー閉状態)においては、実際の人体と同様に前記大腸臓器モデル9の一部を圧迫する構造となっている。このとき、前記腹部カバー13と前記擬似胴体2はそれぞれに設けられたマジックテープ(登録商標)14によって固定される。
【0026】
また、前記腹部カバー13は、多種多様な患者の腹部の状態を再現するために、図7に示すように、該腹部カバー13を袋状に構成し、空気などの排出や注入によって痩身や肥満の患者の状態を再現できるようにしても良い。
【0027】
このように構成すると、前記大腸臓器モデル9に対しての、他の臓器モデルや腹部カバーによる外的圧迫により、空気が先端に進みにくくなり、前記大腸臓器モデル9内で内視鏡からの送気を行っても、空気はすぐに盲腸に到達せず、実際の大腸内視鏡の挿入時の環境を再現できるようになっている。
【0028】
また、空気が先端に進みにくくする手段としては、図8に示すように、前記大腸臓器モデル9内に突起状の襞部15を交互に突出させても良い。
【0029】
次に、上記大腸臓器モデルの内部構造について説明する。
図9は、大腸用内視鏡トレーニング装置の内視鏡が挿入された状態における肛門括約筋モデルの縦断面図であり、図10は、図9の肛門括約筋モデルが擬似胴体に対して着脱自在であることを示した擬似胴体の要部斜視図である。
【0030】
図9に示すように、前記擬似肛門17は、前記大腸臓器モデル9の外部開口と、肛門括約筋モデル16と、気密リング部19と、ボックス部20から構成されており、前記大腸臓器モデル9は、肛門側端面を除いては、気密に構成されている。
【0031】
これは、前記擬似胴体2の下方側の端面に設けられた前記擬似肛門17に、弾性体からなる前記肛門括約筋モデル16が配設され、この肛門括約筋モデル16の中央に穿設された開口16aに前記内視鏡の挿入部18を挿入した状態においては、前記開口16aの内径が前記内視鏡挿入部18の外径よりも小さく設定されているので、前記大腸臓器モデル9内は気密が確保されることになる。
【0032】
この構造により、前記大腸臓器モデル9内に内視鏡挿入部を挿入している状態において、内視鏡から送気しても空気は大腸臓器モデル9外にリークすることなく前記大腸臓器モデル9内に送ることが出来、実際の内視鏡挿入状態と同等の環境を提供できるようになっている。
【0033】
さらに、前記肛門括約筋モデル16に穿設された前記開口16aは、内径方向に進むにしたがい薄肉となっており、前記大腸臓器モデル9内に空気が充満しすぎた場合には、臓器外に空気がリークする構造となっているため、前記大腸臓器モデル9内に空気が過剰に充満されることがない。
【0034】
なお、大腸内視鏡の挿入部の外径は、内視鏡の機種によって異なるため、前記肛門括約筋モデル16に穿設された前記開口16aの内径と、前記内視鏡挿入部18の外径の最適な関係を維持するために、前記肛門括約筋モデル16は、図10に示すように前記擬似胴体2に対して交換可能となっている。
【0035】
即ち、前記擬似胴体2に対して着脱自在な前記肛門括約筋モデル16は、その擬似胴体2側に、前記開口16aの外周に弾性体からなる前記気密リング部19が突設しており、前記擬似肛門17の周りに設けられた前記ボックス部20に肛門括約筋モデル16を収納したときには、この気密リング部19が圧迫されて内視鏡を挿入した際、前記大腸臓器モデル9内の気密を確保できるようになっている。
【0036】
図11は、大腸用内視鏡のトレーニング装置の大腸臓器モデルに長さの長いS字状結腸部モデルを装着した図、図12は、大腸臓器モデルに長さの短いS字状結腸部モデルを装着した図、図13は、大腸臓器モデルとS字状結腸部モデルとの嵌合方法を示した図、図14は、大腸臓器モデルとS字状結腸部モデルとの嵌合状態を示した図である。
【0037】
大腸用内視鏡の挿入は、一般にS字状結腸部が困難であると言われており、この状態を実現するために、前記大腸臓器モデル9では、S字状結腸部のみを他の部位よりも肉厚を薄くするなどして柔らかくしている。これにより、内視鏡挿入時にはS字状結腸部が伸展しやすくなり、挿入困難性を実現可能にしている。
【0038】
また、上記S字状結腸部は人種によっても異なっており、一般的に、図11に示すように日本人は長く、図12に示すように欧米人は短いと言われている。
【0039】
前記大腸内視鏡用トレーニング装置1では、様々なS字状結腸部の状態を実現可能とするため弾性体からなる前記S字状結腸部モデル21を前記大腸臓器モデル9に対して着脱自在な構成となっている。
【0040】
図13に示すように、前記S字状結腸部モデル21が取り付けられる前記大腸臓器モデル9の端部外周には弾性体からなる気密凸部22が突設されており、これに相対して前記S字状結腸部モデル21には、同じく弾性体からなる気密溝部23が突設されており、前記大腸臓器モデル9に前記S字状結腸部モデル21を取り付ける場合は、図14に示すように前記気密凸部22と前記気密溝部23を互いに嵌合させることにより、両者は密着しながら係止する。この構成により、前記大腸臓器モデル9と前記S字状結腸部モデル21は着脱自在でありながら気密を確保できるように結合されるようになっている。
【0041】
図15は、前記大腸用内視鏡のトレーニング装置において、大腸内の体液の吸引を体験する方法を示した図であり、図16は、大腸の癒着を再現する方法を示した図である。
【0042】
図15に示すように、前記大腸臓器モデル9の腸壁には全長にわたって数箇所に厚肉な注入部24が設けられており、この注入部24に注射器25の針部26を貫通させて前記大腸臓器モデル9内に液体を留置することにより、内視鏡挿入時の体液の吸引を体験することができるようになっている。また、前記注入部24は厚肉かつ、前記大腸臓器モデル9と一体な弾性体で構成されており、前記注射器25の前記針部26を抜去した後も自らの弾力で貫通孔を閉塞することができ、気密を維持することができる構造となっている。
【0043】
また、大腸用内視鏡は、挿入が困難となる原因に、開腹手術後に大腸と他臓器との癒着によって大腸のコントロールが効き難くなることがある。そこで図16に示すように、前記大腸用内視鏡のトレーニング装置1では、前記大腸臓器モデル9の外壁に全長にわたって数箇所に係止リング部27を突設する一方、前記擬似胴体2の内面や前記小腸臓器モデル11をはじめとする他臓器モデルの外壁にも数個の係止リング部27を設け、任意の位置で前記係止リング部27同士をフック28に係合させることによって、癒着を再現できる構造となっている。
【0044】
以上のように、本発明の適用される大腸用内視鏡のトレーニング装置においては、より実際の大腸に内視鏡を挿入するときと同じ状態に近づけるための様々な工夫がされている。
【0045】
次に、このように構成された大腸用内視鏡のトレーニング装置において、内視鏡的治療のトレーニングができる大腸臓器モデルの構成を説明する。
図17は、本発明の一実施の形態を示す内視鏡用トレーニング装置における大腸臓器モデルの壁構造を示した縦断面図、図18は、図17の大腸臓器モデルに注射針を使用して局注液を注入する状態を示した縦断面図、図19は、高周波スネアを使用して内壁部の膨張部を切除している状態を示した縦断面図、図20は、ポリープ部を高周波スネアを使用して切除している状態を示した縦断面図である。
【0046】
図17に示すように、本発明の一実施形態は、大腸臓器モデル9の形成壁部が、内側から外側に向かって内壁部30と外壁部31のいずれも弾性体の2層で構成されており、前記内壁部30と前記外壁部31とは重合されて弾性接着剤32で固定されている。
【0047】
ここで、内壁部30と外壁部31の特徴について述べると、前記内壁部30の材質は、前記外壁部31の材質よりも柔らかく、熱伝導性の高い材質で構成されており、前記外壁部31の材質は、前記内壁部30よりも硬く、絶縁体の材質で構成されている。
【0048】
次に、内視鏡的処置をトレーニングする場合を説明する。
まず、内視鏡挿入部を前記大腸臓器モデル9内に挿入した状態で内視鏡の処置具挿通用チャンネルを経由して、図18に示すように、注射針33の針部34を内視鏡挿入部の先端から延出させ、内壁部30を挿通して弾性接着部32に局注液を注入する。
【0049】
この時、外壁部31は前述したように硬質の材質で構成されているため、前記2層の形成層に前記針部34を穿刺しても針部34は外壁部31に突き当たり弾性接着部32に局注液を注入することが容易になる。
【0050】
一方、内壁部30は前述したように軟性の材質で構成されているため、弾性接着部32に局注液が注入された場合は、前記内壁部30が膨出し、前記大腸臓器モデル9内に隆起部を形成する。
【0051】
続いて、図19に示すように内視鏡の処置具挿通用チャンネルを経由して高周波スネア35を挿入部の先端から延出させ、前記内壁部30の膨出した隆起部に高周波スネア35のスネア部36を係止させ、この状態で高周波電流を流しながら前記隆起部を緊縛して切除する。この時、前記外壁部31は絶縁体で構成されており、高周波電流は熱伝導性の高い内壁部30に集中するため、前記外壁部31に損傷を与えることなく効率的に内壁部30の隆起部を切除することができる。
【0052】
このように前記大腸臓器モデル9の形成層を2層に構成すれば、粘膜内に存在するがん細胞直下の粘膜下層に局注液を注入して粘膜を剥離した後、がん細胞を含んだ粘膜のみを切除する内視鏡的粘膜切除術を疑似体験することができ、内視鏡治療の技術力向上のためのトレーニングを行うことができる。
【0053】
また、図20に示すように、前記内壁部30に有茎性のポリープ部37を設ければ、内視鏡的高周波スネア35を使用してポリープを切除する、所謂ポリペクトミーをトレーニングすることができる。このとき、前記外壁部31は絶縁体で構成されており、高周波電流は熱伝導性の高い前記内壁部30に集中するので、前記外壁部31に損傷を与えることなく、効率的に前記ポリープ部37を切除するトレーニングを行うことができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、大腸臓器モデルを対象としたが、これに限らず、治療を目的とした胃・十二指腸などの他の臓器モデルに適用しても良いことは勿論である。
【0055】
[付記]
以上詳述した如き本発明の実施形態によれば、以下の如き構成を得ることができる。即ち、
(1)擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置において、
前記擬似臓器は、その形成層を2つ以上の形成層で構成したことを特徴とする内視鏡用トレーニング装置。
【0056】
(2)上記2つ以上の形成層は、内側の層よりも外側の層を硬い材質で構成したことを特徴とする付記1に記載の内視鏡用トレーニング装置。
【0057】
(3)上記内側の層は、その層を構成する材質が外側の層を構成する材質より熱伝導性の高い材質であることを特徴とする付記2に記載の内視鏡用トレーニング装置。
【0058】
(4)上記外側の層は、その層を構成する材質が絶縁体であることを特徴とする付記2に記載の内視鏡用トレーニング装置。
【0059】
(5)上記内側の層と上記外側の層とは、弾性接着剤で接合されることを特徴とする付記2に記載の内視鏡用トレーニング装置。
【0060】
(6)擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置において、
上記擬似臓器を収容する擬似胴体と、
上記擬似胴体の一端面に開口された擬似肛門と、
上記擬似胴体を胴周り方向に回動自在に支持する回動機構部と、
上記擬似胴体を所定の回転角度毎に静止させて保持する保持機構部と、
を備えたことを特徴とする内視鏡用トレーニング装置。
【0061】
(7)上記回動機構部は、上記擬似胴体の両端面に固設される回動軸を有し、上記擬似肛門が開口された上記一端面側の回動軸は、上記擬似胴体の回動中心軸から外れた位置で上記一端面に固設されていることを特徴とする付記6に記載の内視鏡用トレーニング装置。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、擬似臓器の形成層を2つ以上の層にすることにより、内視鏡の挿入手技のみならず、実際の内視鏡治療を擬似的に体験でき、かつ内視鏡トレーニングモデルを使用して内視鏡的治療技術の習得、および向上を図ることができる内視鏡用トレーニング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】大腸用内視鏡のトレーニング装置を左斜め上方から見た外観斜視図、
【図2】擬似胴体の回動機構部および保持機構部の拡大断面図と正面図、
【図3】擬似胴体の回動機構部および保持機構部の動作を示す拡大断面図と正面図、
【図4】第2の回動軸が擬似胴体の回動中心軸から外れた位置に固定された状態を示す要部拡大斜視図、
【図5】内視鏡用トレーニング装置における擬似胴体の腹部カバーを外した状態を示す上面図、
【図6】図5のVI−VI´線に沿う断面図、
【図7】腹部カバーが大腸擬似臓器を圧迫している状態を示す要部断面図、
【図8】大腸擬似臓器内に襞部を配設した拡大断面図、
【図9】大腸擬似臓器の擬似肛門に装着される肛門括約筋モデルの縦断面図、
【図10】図9の肛門括約筋モデルが擬似胴体の擬似肛門に対して着脱自在に取り付けられる状態を示した擬似胴体の要部斜視図、
【図11】大腸用内視鏡のトレーニング装置における大腸臓器モデルに長さの長いS字状結腸部モデルを装着した状態を示す正面図、
【図12】大腸用内視鏡のトレーニング装置における大腸臓器モデルに長さの短いS字状結腸部モデルを装着した状態を示す正面図、
【図13】大腸臓器モデルとS字状結腸部モデルとの嵌合方法を示す要部拡大断面図、
【図14】大腸臓器モデルとS字状結腸部モデルとの嵌合状態を示す要部拡大断面図、
【図15】大腸用内視鏡のトレーニング装置における大腸内の体液の吸引を再現する方法を示した要部拡大断面図、
【図16】大腸の癒着を再現する方法を示した要部拡大正面図、
【図17】本発明の一実施の形態を示す大腸擬似臓器の壁構造を示した拡大部分縦断面図、
【図18】図17の大腸擬似臓器の形成層に注射針を使用して局注液を注入する状態を示した拡大部分縦断面図、
【図19】図18の大腸擬似臓器の形成層の隆起部に高周波スネアを使用して内壁部を切除する状態を示した拡大部分縦断面図、
【図20】大腸擬似臓器の形成層に作られたポリープ部を高周波スネアを使用して切除する状態を示した拡大部分縦断面図。
【符号の説明】
1…内視鏡用トレーニング装置
30…内壁部(形成層)
31…外壁部(形成層)
【発明の属する技術分野】
本発明は、内視鏡用トレーニング装置、詳しくは、内視鏡を使用した治療技術を習得することができる内視鏡用トレーニング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、一般に人体内の大腸は、内視鏡検査を行うことのできる他の臓器に比べて形状が複雑であるため、この大腸に内視鏡を挿入するには高度な技術が要求される。
【0003】
そこで、特開平10−211160号公報には、大腸用内視鏡の挿入技術を習得するために、内視鏡を挿入することができ、かつ複数種類の患者の大腸の状態を再現する手段を設けた擬似大腸臓器(人体内の大腸モデル)を有する、大腸用内視鏡の挿入練習装置が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、内視鏡下においては、粘膜内に存在するがん細胞直下の粘膜下層に局注液を注入して粘膜を剥離した後、がん細胞を含んだ粘膜のみを切除する内視鏡的粘膜切除術や、ポリープを高周波スネアで切除するポリペクトミーなどの内視鏡的治療が行われており、内視鏡の医療における役割も診断から治療へと様変わりしてきている。
【0005】
しかしながら、上記特開平10−211160号公報に提案されている発明、並びに従来種々提案されている内視鏡用トレーニング装置は、すべて、内視鏡の挿入技術の習得を目的としたものであり、内視鏡的治療、および処置の習得を目的としたものではない。
【0006】
本発明の目的は、上記事情に鑑みてなされたものであり、内視鏡の挿入技術のみならず、内視鏡を使用した治療、処置技術の習得、及び向上を図ることができる内視鏡用トレーニング装置を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段、及び作用】
上記目的を達成するために本発明による内視鏡用トレーニング装置は、擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置において、前記擬似臓器は、その形成層を2つ以上の層で構成したことを特徴とする。
【0008】
また、内視鏡用トレーニング装置は、複数層で構成される擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置において、前記擬似臓器の形成層は、その内側の層よりも外側の層を硬い材質で構成したことを特徴とする。
【0009】
さらに、内視鏡用トレーニング装置は、複数層で構成される擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置において、前記擬似臓器の形成層は、その内側の層の材質を外側の層の材質より熱伝導性の高い材質で構成したことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
先ず、本発明の実施形態を説明するに先立ち、本発明の適用される擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置の概略を説明する。なお、前記擬似臓器は、人体内の大腸の臓器を例に挙げ、前記内視鏡用トレーニング装置は、胃臓器から前記大腸臓器までの各臓器を内蔵する擬似胴体からなる人体モデルで構成されている。
【0012】
図1は、大腸用内視鏡のトレーニング装置を左斜め上方から見た外観斜視図、図2(a)(b)および、図3(a)(b)は、固定台に対して水平に回動自在に取り付けられた擬似胴体の回動軸の保持機構の拡大断面図および正面図、図4は、第2の回動軸が擬似胴体の回動中心軸から外れた位置に固設されることを示した要部拡大斜視図である。
【0013】
図1に示すように、大腸用内視鏡のトレーニング装置1は、その内部に擬似臓器を有する擬似胴体2と、固定台3と、前記擬似胴体2の一対の回動軸4と、前記固定台3の長手方向両端部の中央に起立し、前記回動軸4をそれぞれ軸支する一対の支柱5と、前記擬似胴体2の、人体下方側に相当する一端面に穿設され、内視鏡挿入口となる開口部からなる擬似肛門17と、前記擬似胴体2の上面に開閉自在に配設された腹部カバー13とで、その主要部が構成されている。
【0014】
なお、前記擬似胴体2は、図1において左方側が人体上方側、右方側が人体下方側にそれぞれ相当する。
【0015】
前記一対の回動軸4は、図2に示すように、擬似胴体2の中心軸線上に配設され、その一端がそれぞれ前記支柱5に穿設された後述する軸受け部40に回動自在に軸支され、他端は、人体上方側の端面においては、その端面中央に固定され、人体下方側においては、図1、4に示すように前記擬似肛門17を挟むようにして両端部が端面に固定されたコの字型形状をなす第2の回動軸29に連結される。つまり、この回動軸29は前記擬似胴体2の肛門側の面に、コの字型の両端部が前記回動軸4の回動中心と同じ高さの任意の位置に固定され、連結軸部の中央に回動軸4の他端が固定される。
【0016】
このように、前記擬似胴体2は、前記一対の支柱5に軸支された前記回動軸4、並びに前記第2の回動軸29により固定台3に対して回動自在に支持されており、前記トレーニング装置は、前記擬似胴体2を胴回り方向に回動自在に支持する回動機構部を備えている。
【0017】
次に、前記擬似胴体2を所定の回転角度毎に静止させて保持する保持機構部を図2(a)(b)、図3(a)(b)を用いて説明する。
図2(a)に示すように、前記回動軸4の支柱5に軸支されている部分には、内部に埋設されたクリックバネ6と、このバネ6に付勢されて外方に突出する半球状の突出部7を有するクリックストップ機構が設けられており、また、前記支柱5に設けられた円形状の軸受け部40には、それぞれが対向する位置に90度の間隔で半球状に外方に突出した4つの切欠き部8が設けられている。
【0018】
このように構成された保持機構部により、前記擬似胴体2は、図3に示すように90度ごとの回転が前記クリックバネ6の付勢により、クリック感を持たせながら切欠き部8でそれぞれの角度に静止保持することができ、これにより、実際の内視鏡検査でおこなわれる側臥位や仰臥位などの体位変換を再現するとともに、保持された状態においては、前記突出部7が前記切り欠き部8に係合しているので、安定して内視鏡のトレーニングを実施できるようになっている。
【0019】
なお、前記支柱5に穿設された前記軸受け部40の前記切欠き部8は、90度毎に4つ設けたが、これは更に切欠き部8を増やし、様々な角度の体位を再現できるようにしても良い。
【0020】
また、前記擬似胴体2の肛門側の端面に固設されている前記第2の回動軸29は、二股のコの字型を有している。これは、内視鏡を前記擬似胴体2に挿入しながらトレーニングしている場合に、内視鏡挿入部18を保持している術者の手と回動軸4が干渉することがないように工夫が施されたものである。
【0021】
さらに、術者の手と前記回動軸4が干渉しない手段としては、図4に示すように、前記第2の回動軸29の2軸を結ぶラインと前記擬似胴体2の水平面とのなす角度をθ角ずらして、より干渉を避けるようにしても良い。
【0022】
なお、前記擬似胴体2の肛門側の面に固設する上記第2の回動軸29は、二股のコの字型に形成されたものを示したが、これに限らず、術者の手と回動軸が干渉しないように、回動中心からずらした位置で、前記回動軸4の回動中心と同じ高さの位置であれば、1つの軸で固設しても良いことは云うまでもない。
【0023】
次に、前記擬似胴体2の内部構造について説明すると、図5は、内視鏡用トレーニング装置における擬似胴体の上面図、図6は、図5のVI−VI´線に沿う断面図である。
【0024】
図5、並びに図6に示すように、前記擬似胴体2の内部には、弾性体からなる大腸臓器モデル9が配設されており、また、実際の人体と同様に、周囲が弾性体からなる胃臓器モデル10、小腸臓器モデル11や膵臓臓器モデル12が実際の人体と同様に前記大腸臓器モデル9の一部を圧迫しながら配設されている。
【0025】
さらに、前述したように、弾性体からなる前記腹部カバー13が前記擬似胴体2に対して開閉自在に取り付けられており、この腹部カバー13も、前記擬似胴体2に固定した状態(腹部カバー閉状態)においては、実際の人体と同様に前記大腸臓器モデル9の一部を圧迫する構造となっている。このとき、前記腹部カバー13と前記擬似胴体2はそれぞれに設けられたマジックテープ(登録商標)14によって固定される。
【0026】
また、前記腹部カバー13は、多種多様な患者の腹部の状態を再現するために、図7に示すように、該腹部カバー13を袋状に構成し、空気などの排出や注入によって痩身や肥満の患者の状態を再現できるようにしても良い。
【0027】
このように構成すると、前記大腸臓器モデル9に対しての、他の臓器モデルや腹部カバーによる外的圧迫により、空気が先端に進みにくくなり、前記大腸臓器モデル9内で内視鏡からの送気を行っても、空気はすぐに盲腸に到達せず、実際の大腸内視鏡の挿入時の環境を再現できるようになっている。
【0028】
また、空気が先端に進みにくくする手段としては、図8に示すように、前記大腸臓器モデル9内に突起状の襞部15を交互に突出させても良い。
【0029】
次に、上記大腸臓器モデルの内部構造について説明する。
図9は、大腸用内視鏡トレーニング装置の内視鏡が挿入された状態における肛門括約筋モデルの縦断面図であり、図10は、図9の肛門括約筋モデルが擬似胴体に対して着脱自在であることを示した擬似胴体の要部斜視図である。
【0030】
図9に示すように、前記擬似肛門17は、前記大腸臓器モデル9の外部開口と、肛門括約筋モデル16と、気密リング部19と、ボックス部20から構成されており、前記大腸臓器モデル9は、肛門側端面を除いては、気密に構成されている。
【0031】
これは、前記擬似胴体2の下方側の端面に設けられた前記擬似肛門17に、弾性体からなる前記肛門括約筋モデル16が配設され、この肛門括約筋モデル16の中央に穿設された開口16aに前記内視鏡の挿入部18を挿入した状態においては、前記開口16aの内径が前記内視鏡挿入部18の外径よりも小さく設定されているので、前記大腸臓器モデル9内は気密が確保されることになる。
【0032】
この構造により、前記大腸臓器モデル9内に内視鏡挿入部を挿入している状態において、内視鏡から送気しても空気は大腸臓器モデル9外にリークすることなく前記大腸臓器モデル9内に送ることが出来、実際の内視鏡挿入状態と同等の環境を提供できるようになっている。
【0033】
さらに、前記肛門括約筋モデル16に穿設された前記開口16aは、内径方向に進むにしたがい薄肉となっており、前記大腸臓器モデル9内に空気が充満しすぎた場合には、臓器外に空気がリークする構造となっているため、前記大腸臓器モデル9内に空気が過剰に充満されることがない。
【0034】
なお、大腸内視鏡の挿入部の外径は、内視鏡の機種によって異なるため、前記肛門括約筋モデル16に穿設された前記開口16aの内径と、前記内視鏡挿入部18の外径の最適な関係を維持するために、前記肛門括約筋モデル16は、図10に示すように前記擬似胴体2に対して交換可能となっている。
【0035】
即ち、前記擬似胴体2に対して着脱自在な前記肛門括約筋モデル16は、その擬似胴体2側に、前記開口16aの外周に弾性体からなる前記気密リング部19が突設しており、前記擬似肛門17の周りに設けられた前記ボックス部20に肛門括約筋モデル16を収納したときには、この気密リング部19が圧迫されて内視鏡を挿入した際、前記大腸臓器モデル9内の気密を確保できるようになっている。
【0036】
図11は、大腸用内視鏡のトレーニング装置の大腸臓器モデルに長さの長いS字状結腸部モデルを装着した図、図12は、大腸臓器モデルに長さの短いS字状結腸部モデルを装着した図、図13は、大腸臓器モデルとS字状結腸部モデルとの嵌合方法を示した図、図14は、大腸臓器モデルとS字状結腸部モデルとの嵌合状態を示した図である。
【0037】
大腸用内視鏡の挿入は、一般にS字状結腸部が困難であると言われており、この状態を実現するために、前記大腸臓器モデル9では、S字状結腸部のみを他の部位よりも肉厚を薄くするなどして柔らかくしている。これにより、内視鏡挿入時にはS字状結腸部が伸展しやすくなり、挿入困難性を実現可能にしている。
【0038】
また、上記S字状結腸部は人種によっても異なっており、一般的に、図11に示すように日本人は長く、図12に示すように欧米人は短いと言われている。
【0039】
前記大腸内視鏡用トレーニング装置1では、様々なS字状結腸部の状態を実現可能とするため弾性体からなる前記S字状結腸部モデル21を前記大腸臓器モデル9に対して着脱自在な構成となっている。
【0040】
図13に示すように、前記S字状結腸部モデル21が取り付けられる前記大腸臓器モデル9の端部外周には弾性体からなる気密凸部22が突設されており、これに相対して前記S字状結腸部モデル21には、同じく弾性体からなる気密溝部23が突設されており、前記大腸臓器モデル9に前記S字状結腸部モデル21を取り付ける場合は、図14に示すように前記気密凸部22と前記気密溝部23を互いに嵌合させることにより、両者は密着しながら係止する。この構成により、前記大腸臓器モデル9と前記S字状結腸部モデル21は着脱自在でありながら気密を確保できるように結合されるようになっている。
【0041】
図15は、前記大腸用内視鏡のトレーニング装置において、大腸内の体液の吸引を体験する方法を示した図であり、図16は、大腸の癒着を再現する方法を示した図である。
【0042】
図15に示すように、前記大腸臓器モデル9の腸壁には全長にわたって数箇所に厚肉な注入部24が設けられており、この注入部24に注射器25の針部26を貫通させて前記大腸臓器モデル9内に液体を留置することにより、内視鏡挿入時の体液の吸引を体験することができるようになっている。また、前記注入部24は厚肉かつ、前記大腸臓器モデル9と一体な弾性体で構成されており、前記注射器25の前記針部26を抜去した後も自らの弾力で貫通孔を閉塞することができ、気密を維持することができる構造となっている。
【0043】
また、大腸用内視鏡は、挿入が困難となる原因に、開腹手術後に大腸と他臓器との癒着によって大腸のコントロールが効き難くなることがある。そこで図16に示すように、前記大腸用内視鏡のトレーニング装置1では、前記大腸臓器モデル9の外壁に全長にわたって数箇所に係止リング部27を突設する一方、前記擬似胴体2の内面や前記小腸臓器モデル11をはじめとする他臓器モデルの外壁にも数個の係止リング部27を設け、任意の位置で前記係止リング部27同士をフック28に係合させることによって、癒着を再現できる構造となっている。
【0044】
以上のように、本発明の適用される大腸用内視鏡のトレーニング装置においては、より実際の大腸に内視鏡を挿入するときと同じ状態に近づけるための様々な工夫がされている。
【0045】
次に、このように構成された大腸用内視鏡のトレーニング装置において、内視鏡的治療のトレーニングができる大腸臓器モデルの構成を説明する。
図17は、本発明の一実施の形態を示す内視鏡用トレーニング装置における大腸臓器モデルの壁構造を示した縦断面図、図18は、図17の大腸臓器モデルに注射針を使用して局注液を注入する状態を示した縦断面図、図19は、高周波スネアを使用して内壁部の膨張部を切除している状態を示した縦断面図、図20は、ポリープ部を高周波スネアを使用して切除している状態を示した縦断面図である。
【0046】
図17に示すように、本発明の一実施形態は、大腸臓器モデル9の形成壁部が、内側から外側に向かって内壁部30と外壁部31のいずれも弾性体の2層で構成されており、前記内壁部30と前記外壁部31とは重合されて弾性接着剤32で固定されている。
【0047】
ここで、内壁部30と外壁部31の特徴について述べると、前記内壁部30の材質は、前記外壁部31の材質よりも柔らかく、熱伝導性の高い材質で構成されており、前記外壁部31の材質は、前記内壁部30よりも硬く、絶縁体の材質で構成されている。
【0048】
次に、内視鏡的処置をトレーニングする場合を説明する。
まず、内視鏡挿入部を前記大腸臓器モデル9内に挿入した状態で内視鏡の処置具挿通用チャンネルを経由して、図18に示すように、注射針33の針部34を内視鏡挿入部の先端から延出させ、内壁部30を挿通して弾性接着部32に局注液を注入する。
【0049】
この時、外壁部31は前述したように硬質の材質で構成されているため、前記2層の形成層に前記針部34を穿刺しても針部34は外壁部31に突き当たり弾性接着部32に局注液を注入することが容易になる。
【0050】
一方、内壁部30は前述したように軟性の材質で構成されているため、弾性接着部32に局注液が注入された場合は、前記内壁部30が膨出し、前記大腸臓器モデル9内に隆起部を形成する。
【0051】
続いて、図19に示すように内視鏡の処置具挿通用チャンネルを経由して高周波スネア35を挿入部の先端から延出させ、前記内壁部30の膨出した隆起部に高周波スネア35のスネア部36を係止させ、この状態で高周波電流を流しながら前記隆起部を緊縛して切除する。この時、前記外壁部31は絶縁体で構成されており、高周波電流は熱伝導性の高い内壁部30に集中するため、前記外壁部31に損傷を与えることなく効率的に内壁部30の隆起部を切除することができる。
【0052】
このように前記大腸臓器モデル9の形成層を2層に構成すれば、粘膜内に存在するがん細胞直下の粘膜下層に局注液を注入して粘膜を剥離した後、がん細胞を含んだ粘膜のみを切除する内視鏡的粘膜切除術を疑似体験することができ、内視鏡治療の技術力向上のためのトレーニングを行うことができる。
【0053】
また、図20に示すように、前記内壁部30に有茎性のポリープ部37を設ければ、内視鏡的高周波スネア35を使用してポリープを切除する、所謂ポリペクトミーをトレーニングすることができる。このとき、前記外壁部31は絶縁体で構成されており、高周波電流は熱伝導性の高い前記内壁部30に集中するので、前記外壁部31に損傷を与えることなく、効率的に前記ポリープ部37を切除するトレーニングを行うことができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、大腸臓器モデルを対象としたが、これに限らず、治療を目的とした胃・十二指腸などの他の臓器モデルに適用しても良いことは勿論である。
【0055】
[付記]
以上詳述した如き本発明の実施形態によれば、以下の如き構成を得ることができる。即ち、
(1)擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置において、
前記擬似臓器は、その形成層を2つ以上の形成層で構成したことを特徴とする内視鏡用トレーニング装置。
【0056】
(2)上記2つ以上の形成層は、内側の層よりも外側の層を硬い材質で構成したことを特徴とする付記1に記載の内視鏡用トレーニング装置。
【0057】
(3)上記内側の層は、その層を構成する材質が外側の層を構成する材質より熱伝導性の高い材質であることを特徴とする付記2に記載の内視鏡用トレーニング装置。
【0058】
(4)上記外側の層は、その層を構成する材質が絶縁体であることを特徴とする付記2に記載の内視鏡用トレーニング装置。
【0059】
(5)上記内側の層と上記外側の層とは、弾性接着剤で接合されることを特徴とする付記2に記載の内視鏡用トレーニング装置。
【0060】
(6)擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置において、
上記擬似臓器を収容する擬似胴体と、
上記擬似胴体の一端面に開口された擬似肛門と、
上記擬似胴体を胴周り方向に回動自在に支持する回動機構部と、
上記擬似胴体を所定の回転角度毎に静止させて保持する保持機構部と、
を備えたことを特徴とする内視鏡用トレーニング装置。
【0061】
(7)上記回動機構部は、上記擬似胴体の両端面に固設される回動軸を有し、上記擬似肛門が開口された上記一端面側の回動軸は、上記擬似胴体の回動中心軸から外れた位置で上記一端面に固設されていることを特徴とする付記6に記載の内視鏡用トレーニング装置。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、擬似臓器の形成層を2つ以上の層にすることにより、内視鏡の挿入手技のみならず、実際の内視鏡治療を擬似的に体験でき、かつ内視鏡トレーニングモデルを使用して内視鏡的治療技術の習得、および向上を図ることができる内視鏡用トレーニング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】大腸用内視鏡のトレーニング装置を左斜め上方から見た外観斜視図、
【図2】擬似胴体の回動機構部および保持機構部の拡大断面図と正面図、
【図3】擬似胴体の回動機構部および保持機構部の動作を示す拡大断面図と正面図、
【図4】第2の回動軸が擬似胴体の回動中心軸から外れた位置に固定された状態を示す要部拡大斜視図、
【図5】内視鏡用トレーニング装置における擬似胴体の腹部カバーを外した状態を示す上面図、
【図6】図5のVI−VI´線に沿う断面図、
【図7】腹部カバーが大腸擬似臓器を圧迫している状態を示す要部断面図、
【図8】大腸擬似臓器内に襞部を配設した拡大断面図、
【図9】大腸擬似臓器の擬似肛門に装着される肛門括約筋モデルの縦断面図、
【図10】図9の肛門括約筋モデルが擬似胴体の擬似肛門に対して着脱自在に取り付けられる状態を示した擬似胴体の要部斜視図、
【図11】大腸用内視鏡のトレーニング装置における大腸臓器モデルに長さの長いS字状結腸部モデルを装着した状態を示す正面図、
【図12】大腸用内視鏡のトレーニング装置における大腸臓器モデルに長さの短いS字状結腸部モデルを装着した状態を示す正面図、
【図13】大腸臓器モデルとS字状結腸部モデルとの嵌合方法を示す要部拡大断面図、
【図14】大腸臓器モデルとS字状結腸部モデルとの嵌合状態を示す要部拡大断面図、
【図15】大腸用内視鏡のトレーニング装置における大腸内の体液の吸引を再現する方法を示した要部拡大断面図、
【図16】大腸の癒着を再現する方法を示した要部拡大正面図、
【図17】本発明の一実施の形態を示す大腸擬似臓器の壁構造を示した拡大部分縦断面図、
【図18】図17の大腸擬似臓器の形成層に注射針を使用して局注液を注入する状態を示した拡大部分縦断面図、
【図19】図18の大腸擬似臓器の形成層の隆起部に高周波スネアを使用して内壁部を切除する状態を示した拡大部分縦断面図、
【図20】大腸擬似臓器の形成層に作られたポリープ部を高周波スネアを使用して切除する状態を示した拡大部分縦断面図。
【符号の説明】
1…内視鏡用トレーニング装置
30…内壁部(形成層)
31…外壁部(形成層)
Claims (3)
- 擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置において、
前記擬似臓器は、その形成層を2つ以上の層で構成したことを特徴とする内視鏡用トレーニング装置。 - 複数層で構成される擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置において、
前記擬似臓器の形成層は、その内側の層よりも外側の層を硬い材質で構成したことを特徴とする内視鏡用トレーニング装置。 - 複数層で構成される擬似臓器を有する内視鏡用トレーニング装置において、
前記擬似臓器の形成層は、その内側の層の材質を外側の層の材質より熱伝導性の高い材質で構成したことを特徴とする内視鏡用トレーニング装置。
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